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特開2024-81630不安定電力源に結合された電解槽の制御
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081630
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】不安定電力源に結合された電解槽の制御
(51)【国際特許分類】
   C25B 15/025 20210101AFI20240611BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20240611BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240611BHJP
【FI】
C25B15/025
C25B1/04
C25B9/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023206534
(22)【出願日】2023-12-06
(31)【優先権主張番号】63/430,393
(32)【優先日】2022-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】517094840
【氏名又は名称】ソーラーエッジ テクノロジーズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】トマー ケステンベルグ
(72)【発明者】
【氏名】バルク シュヴァルツ
(72)【発明者】
【氏名】ラーナン セマー
(72)【発明者】
【氏名】オデット ナーオル
【テーマコード(参考)】
4K021
【Fターム(参考)】
4K021AA01
4K021BA02
4K021CA05
4K021DC01
4K021DC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】不安定電力源(variable power source)と電解槽とを結合するためのシステム、デバイス、及び方法を提供する。
【解決手段】水素発生のための水電解システムが提供され、電解槽が制御デバイスを介して不安定電力源に結合される。制御デバイスは、電解槽の寿命を延ばすために電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成される。少なくとも1つの動作パラメータは、電解槽の電気的動作点(状態)を含み、制御デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節して、電気的動作点(例えば、電圧及び電流)及び電解槽への入力電力に整合させる。制御デバイスは、モジュール構成及びホットスワップ機能を有する制御ユニットを備えてもよい。制御デバイスは、電解槽をある状態から別の状態にするための動作パラメータ変更を生成する状態変化平滑化方法を含んでもよい。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解槽の動作パラメータの変更を実施する通知を受け取ることと、
前記電解槽の初期状態を取得して記憶することと、
前記変更を前記電解槽に適用することと、
前記電解槽の第2の動作パラメータを監視することと、
前記第2の動作パラメータの予想応答を反映する、監視対象の前記第2の動作パラメータの値を計算することと、
監視対象の前記第2の動作パラメータが前記予想応答に適合することを、前記値が示す場合に、前記初期状態及び前記変更を、許容変更テーブルに記憶することと、
監視対象の前記第2の動作パラメータが前記予想応答に適合しないことを、前記値が示す場合に、前記初期状態における第2の変更を減少させる通知を送信することと、を含む、方法。
【請求項2】
電解槽の動作パラメータの変更を実施する通知を受け取ることと、
前記電解槽の初期状態を取得することと、
前記変更及び前記初期状態に基づいて中間状態及び最終状態を推定することと、
前記中間状態及び前記最終状態の各状態について、
前記中間状態及び前記最終状態の各々について許容変更のテーブルを取得することと、
前の状態と次の状態との間の平滑化した変更を計算することと、
前記平滑化した変更を前記電解槽に適用することと、を含む、方法。
【請求項3】
前記電解槽の第2の動作パラメータを監視し、
前記第2の動作パラメータの予想応答を反映する、監視対象の前記第2の動作パラメータの値を計算し、
監視対象の前記第2の動作パラメータが前記予想応答に適合することを、前記値が示す場合に、前記初期状態及び前記変更を、許容変更テーブルに記憶し、
監視対象の前記第2の動作パラメータが前記予想応答に適合しないことを、前記値が示す場合に、前記初期状態における第2の変更を減少させる通知を送信する、動作を更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
不安定電力源に接続された電解槽を動作させるためのデバイスであって、前記デバイスは制御回路を備え、前記制御回路は、前記電解槽の動作パラメータに変更を適用するように構成され、前記変更は、動作パラメータ値の連続的な変更を含み、前記変更は、閾値変化率未満の変化率を含み、前記変更は、閾値二次変化率未満の二次変化率を含む、デバイス。
【請求項5】
前記変化率は連続的である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記制御回路は、コントローラ又はプロセッサと、前記制御回路に接続されたリポジトリとを備え、前記リポジトリは、前記電解槽に前記変更を適用するように構成されたコントローラ又はプロセッサ命令を含む、請求項4又は5に記載のデバイス。
【請求項7】
前記制御回路は、前記電解槽に前記変更を適用するように構成された能動素子及び受動素子を備える、請求項4~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記制御回路は、前記電解槽に前記変更を適用するように構成された受動素子を備える、請求項4~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記受動素子は、インダクタ又はコンデンサを含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記受動素子は、前記不安定電力源と前記電解槽との間で直列である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項11】
前記受動素子は、前記不安定電力源と前記電解槽との間で並列である、請求項8に記載のデバイス。
【請求項12】
前記変更は電圧制御変更を含む、請求項4~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記変更は電流制御変更を含む、請求項4~12のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項14】
前記変更は、少なくとも部分的に、線形関数、放物線関数、円関数、楕円関数、シグモイド関数、ロジスティック関数、双曲線関数、指数関数、スプライン関数、多項式関数、又は二次関数の少なくとも一部に従う、請求項4~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記変更はステップを含み、前記ステップは、電力変換器のデジタルアナログ変換器及び増幅回路によって決定され、前記デバイスは、前記デジタルアナログ変換器と、前記増幅回路と、前記電力変換器とを備える、請求項4~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本開示は、不安定電力源(variable power source)と電解槽とを結合するためのシステム、デバイス、及び方法に関する。「電解槽(electrolyser)」の代替スペリングは、「電解槽(electrolyzer)」であり得る。
【0002】
電気化学的水分解としても知られる水の電気分解は、電気を使用して、電気分解によって水を酸素と水素ガスに分解するプロセスである。このようにして放出された水素ガスは、水素燃料として使用することができる。酸性媒体中での水電解の半電池反応を以下の式(1)及び(2)に示し、アルカリ性媒体中での水電解の半電池反応を以下の式(3)及び(4)に示す。
【0003】
【化1】
【0004】
標準的な温度及び圧力での水の水素及び酸素への分解は、熱力学的な観点からは好ましくない場合がある。したがって、反応が起こるために電力の入力が必要とされる場合がある。水の電気分解は、分散された水素発生を可能にし、そのプロセスは、多数の既存の再生可能エネルギー技術(とりわけ、太陽光、風力、バイオマス、水力、潮力、波力、及び地熱技術)と適合し得る。水の電気分解は、酸性又はアルカリ性の液体電解質システム、並びに、水が固体の酸性又はアルカリ性媒体を通って流れる高分子電解質膜(polymer electrolyte membrane、PEM)を組み込んだ固体システムに基づくことができる。液体電解質電解槽の効率は、典型的には多くのタイプの再生可能エネルギー源の特性である非定常的な直流(direct current、DC)電圧又は電流による悪影響を受けるが、PEM電解槽は、大きな電力入力変動を受け入れることができ、したがって光起電力(photovoltaic、PV)太陽光及び風力などの不安定な電力源との直接統合が可能になる。固体酸化物形電解セル(solid oxide electrolyser cell、SOEC)は、再生可能エネルギー源と組み合わせることができる。SOECは、固体酸化物又はセラミック、電解質を使用し、再生モードで動作する、固体酸化物燃料電池に基づくことができる。
【発明の概要】
【0005】
以下に、開示される態様の簡略化された概要を、これらの態様の基本的な理解を提供するために提示する。本概要は、これらの態様の包括的な概説ではない。本概要は、鍵となる要素若しくは重要な要素を特定すること、又は本開示の範囲を叙述することを意図していない。
【0006】
本開示の態様は、不安定電力源と、不安定電力源に機能的に(operatively)接続された電解槽と、電解槽の動作パラメータを制御してその寿命を延ばすように構成された制御デバイスとを含む、水素発生のための水電解システムに関する。動作パラメータという語句は、電圧、電流、電力、温度、圧力、流量などの電解槽が動作する物理的又は電気的パラメータを指し、制御は、動作パラメータの値を変化させることにより実施される。制御デバイスは、とりわけ、不安定電力源の出力電力を調節して、それを電解槽の電気的動作点(状態)に整合させるように構成され、電気的動作点は、電解槽の寿命を延ばすように選択することができる。態様は更に、システムにとって有用なデバイス、及びシステムを動作させる方法に関する。本明細書で使用する場合、用語「整合」は、実質的に等しいことを意味する。
【0007】
電解槽は、カソードとアノードとの間に配置された膜を含む、少なくとも1つの電極-膜アセンブリ(electrode-membrane assembly、MEA)を含む。カソード及びアノードは、適切な触媒、例えば、それぞれ水素発生触媒及び酸素発生触媒を含んでもよい。電極は、炭素ベースであってもよいガス拡散層(gas diffusion layer、GDL)を含んでもよい。膜は、プロトン交換膜又はアニオン交換膜などのポリマー交換膜であってもよい。電解槽セルは、集電体及び/又はフロープレートを含む追加の構成要素を含んでもよい。
【0008】
電解槽の構成要素は、長期間にわたるサイクル中に劣化する場合がある。例えば、膜は化学的劣化を受ける場合があり、その劣化は、とりわけその厚さの減少において顕在化する場合がある。膜が薄くなると、カソード及びアノードでそれぞれ発生する水素及び酸素が膜を横断してMEAの反対側に移動し、それにより水素発生効率を低下させる場合があり、爆発を生じさせる場合さえある。化学的劣化及び膜の薄化の結果として、膜に穿孔が生じる確率が増加し、短絡につながる場合がある。カソード及びアノード触媒はまた、特に、触媒充填が小さい場合、及び/又は電気分解が一定でない電流変動下で動作する場合、化学的劣化を被り、電圧損失につながる場合がある。バイポーラプレートはまた、例えば、界面接触抵抗を増加させる腐食に起因して、動作時間にわたって化学的変化を受ける場合がある。
【0009】
再生可能エネルギー発生システムは、遠隔地に位置する場合があり、その結果、そのようなシステムに結合される電解槽は、頻繁な交換を避けるために、十分な耐久性を有する場合がある。電解槽の構成要素の劣化は、水素発生及び水電解プロセスのエネルギー効率に悪影響を及ぼし、再生可能エネルギー水素システムの水素発生の全体的なコストを増加させる。
【0010】
電解槽セルの性能、並びにその劣化速度は、とりわけ、例えば、入力電圧、電流密度、温度、及び電解質又は水の流量を含む、電解槽の動作パラメータに依存する。電解槽寿命を延ばすための動作パラメータは、電解槽の性能を改善するために必要な動作パラメータとは異なる場合がある。例えば、水分解プロセスのより高いエネルギー効率を提供する、より高い電流密度では、OER触媒の分解は、より低い電流密度の場合よりも高くなる場合がある。例えば、膜への電気化学的ストレスを最小限に抑えるように電解槽を動作させることは、電解槽電流又は電圧の突然の変化を防止することにより行うことができる。例えば、セルを高温で動作させることにより、過電圧を低減させることによって生成される水素の量を増加させることができるが、膜の劣化に起因して、電解槽セルの寿命の低下を引き起こす場合がある。より高い温度で及び/又は一定でない電流値で動作させることも、触媒劣化を加速させる場合がある。
【0011】
したがって、電解槽のサイクル寿命を延ばすために、電気的動作点を含む、不安定電力源に結合され得る電解槽の動作パラメータを制御することができる。本開示の特徴による制御デバイスは、不安定電力源によって電解槽に供給される電流密度及び/又は電圧を調整することができる。制御デバイスは、電解槽の動作温度、電解質又は水の流量、並びに水素及び/又は酸素の圧力のうちの1つ以上を制御してもよい。前述の動作パラメータは、動作パラメータと電解槽セルの寿命との関連性を表す計算及び/又は経験的データ(例えば、履歴的に測定されたデータ)から導出され得る、所定の値に基づいて調整されてもよい。制御デバイスは、電解槽の健康状態(state-of-health、SOH)に関連する少なくとも1つのパラメータのリアルタイム監視を実施し、少なくとも1つのパラメータの測定に基づいて動作パラメータを選択してもよい。電解槽のSOHを評価するために監視及び使用され得るパラメータは、とりわけ、定電流動作時のセル電圧、内部セル抵抗又はインピーダンス、電解質出口温度、入口と出口との間の電解質温度勾配、及び出口電解質の化学組成を含み得る。制御デバイスは、様々な動作パラメータに対して電解槽のパフォーマンスを分析し、複数のそのような電解槽の分析されたデータに基づいて動作パラメータを調整するように構成された、機械学習アルゴリズムを含んでもよい。制御デバイスは、不安定電力源の予測出力電力に基づいて電解槽の動作パラメータを選択してもよい。
【0012】
制御デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節して、高速及び低速の電力変化を管理してもよい。電解槽の寿命を延ばすために、出力電力を調整して電解槽の電気的動作点に合わせるプロセスを簡略化するために、最初に、不安定電力源によって生成される電力を平滑化してベースライン電力を得てもよい。例えば、制御デバイスは、コンデンサ又は二次電池などのエネルギー貯蔵デバイスを使用して、高速電力変化(例えば、数秒にわたって生じる電力変化)を平滑化してもよい。例えば、急速な過剰電力を使用して貯蔵デバイスを充電してもよく、電力が目標ベースラインを下回る場合は、貯蔵デバイスを放電させて不足電力を補ってもよい。低速電力変化(例えば、数分にわたって生じる電力変化)もまた、適切なエネルギー貯蔵システムによって管理されてもよい。制御デバイスは、余剰電力がある場合に、出力電力をグリッドにエクスポートし、不安定電力源と貯蔵デバイスとを組み合わせた出力電力が十分ではない場合に、グリッドから電力をインポートして、電解槽に電気的動作点を提供する、ように構成されてもよい。
【0013】
複数の電解槽にわたってSOHを揃えるプロセスは、「SOHバランシング」と呼ばれる場合がある。複数の電解槽間で電力のバランスをとって、所望の水素発生速度を得るプロセスは、「電力バランシング」と呼ばれる場合がある。制御デバイス及び制御ユニットは、SOHバランシング及び電力バランシングを提供するように構成されてもよい。電力バランシングは、寿命末期に複数の電解槽間で交換時間を揃えて、交換中における水素発生のまかれた時間(sown time)を最小限に抑えるのに有益な場合がある。
【0014】
典型的には、複数の電解槽セルを一緒に積層して電解槽スタックを形成してもよい。制御デバイスは、スタック全体の動作パラメータを制御してもよい。システムは、複数の電解槽スタックを含んでもよい。このような場合、制御デバイスは、スタックの各々を個別に制御してもよい。制御デバイスは、例えば、予測電力出力が全てのスタックを動作させるには不十分な場合、又は1つ以上のスタックのSOHが、それらが休止又は再生手順を経ることを示す場合、1つ以上のスタックをシャットダウンする一方で、他のスタックを動作させ続けてもよい。制御デバイスは、各スタックのSOHを他のスタックのSOHと比較し、比較に基づいて各スタックの好ましい動作パラメータを選択してもよい。例えば、より良好なSOHを有するスタックは、より高い電流密度で動作させてもよい一方で、より劣ったSOHを有するスタックは、より低い電流密度で動作させてもよく、又はシステム動作の特定の時間数にわたって全く動作させなくてもよい。
【0015】
電解槽を制御する場合、各電解槽は、異なる動作パラメータ、電気的動作点、又は状態で動作されてもよい。これらの用語は、用語の使用状況に応じて、交換可能に使用されてもよい。電解槽の状態は、電解槽の操作マニュアルで定義されてもよく、又は経験的に(試運転又は動作中に)決定されてもよい。例えば、電解槽が連続動作している場合、電解槽の状態は、試運転期間中に経験的に決定されてもよい。電解槽の各動作状態は、電解槽電流、電圧、温度、圧力、流量などの動作パラメータの許容範囲を含む。これら範囲は、これら範囲内での電解槽動作が連続的又は一貫したものとなるような、各動作パラメータに対して許容される上限及び下限を含む。ある状態から別の状態への電解槽の状態の遷移が実施される場合、電圧、電流、温度、圧力、流量などの電解槽の動作パラメータが制御されてもよい。電圧、電流、温度、圧力、又は流量などの制御されている動作パラメータにおける連続的な変更であって、第1の状態から第2の状態へと滑らかに変化する変更が、遷移を実施するために使用されてもよい。動作パラメータを第1の値から第2の値に滑らかに変化させるために、シグモイド関数を使用して、動作パラメータの時間的変化に追従するように動作パラメータをデジタル的に調整してもよい。動作パラメータを第1の値から第2の値に滑らかに変化させるために、区分的に滑らかな曲線のセットを使用してもよい。例えば、第1の期間は、ゼロからある所定の値への動作パラメータの増加するスルーレートを有し、第2の期間は、動作パラメータの線形増加を有し、次いで、減少してゼロに戻るスルーレートを有してもよい。区分的に滑らかな曲線のセットはまた、所定の閾値に適合する動作パラメータの加速度などの2次微分を有してもよい。
【0016】
電解槽の動作中、水素発生速度は、電解槽の動作パラメータを引き延ばすように選択されてもよい。例えば、水素発生速度は、寿命を延長させ、総水素発生を増加させるように選択されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明及びその利点のより完全な理解が、添付の図面を考慮して以下の説明を参照することにより得ることができるが、添付の図面では、同様の参照番号は同様の特徴を示している。
図1A】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスを介してPVアレイに接続された電解槽を含む水電解システムを示す。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスを介してPVアレイに接続された電解槽を含む水電解システムを概略的に示し、ここでPVアレイは、電気グリッド及び負荷に接続されてもよい。
図2A】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスを介して複数のPVアレイに接続された複数の電解槽スタックを含む水電解システムを概略的に示す。
図2B】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスの直列に接続された複数の制御ユニットを介して、複数の電力源に直列に接続された複数の電解槽スタックを含む水電解システムを概略的に示す。
図2C】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスの直列に接続された複数の制御ユニットと、直列に接続された複数のオプティマイザとを介して、複数の電力源に直列に接続された複数の電解槽スタックを含む水電解システムを概略的に示す。
図2D】本発明のいくつかの実施形態による、制御デバイスの並列に接続された複数の制御ユニットと、直列に接続された複数のオプティマイザとを介して、複数の電力源に接続された複数の電解槽スタックを含む水電解システムを概略的に示す。
図2E】電解槽用の制御ユニットを概略的に示す。
図2F】電解槽の動作パラメータ変更のための直列回路を概略的に示す。
図2G】電解槽の動作パラメータ変更のための並列回路を概略的に示す。
図3A】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽を動作させる方法のステップを概略的に示す。
図3B】本発明のいくつかの実施形態による、少なくとも1つのSOH関連パラメータを監視することを含む、不安定電力源に結合された電解槽を動作させる方法のステップを概略的に示す。
図3C】本発明のいくつかの実施形態による、複数の不安定電力源に結合された複数の電解槽を動作させる方法のステップを概略的に示す。
図4A】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更を決定する方法のステップを概略的に示す。
図4B】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更を使用する方法のステップを概略的に示す。
図4C】発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作状態遷移を実装する方法のステップを概略的に示す。
図5A】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の2つの状態間において無遅延の動作パラメータ変更を適用するプロットを概略的に示す。
図5B】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の複数の状態間において無遅延の動作パラメータ変更プロセスを適用するプロットを概略的に示す。
図6A】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の第1の動作パラメータ変更の第1の遅延の測定のプロットを概略的に示す。
図6B】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の第2の動作パラメータ変更の第2の遅延の測定のプロットを概略的に示す。
図6C】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の第3の動作パラメータ変更の第3の遅延の測定のプロットを概略的に示す。
図7】本発明のいくつかの実施形態による、ホットスタートからの不安定電力源に結合された電解槽の第4の動作パラメータ変更の遅延の測定のプロットを概略的に示す。
図8】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更減少(シャットオフ)の遅延の測定のプロットを概略的に示す。
図9】本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更の遅延のプロットを、新品時及び長期使用後について概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての学術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。
【0019】
水素発生のための水電解システム、デバイス、及び方法が開示され、これは、不安定電力源と、電解槽と、制御デバイスとを備え、電解槽は、制御デバイスを介して不安定電力源に機能的に接続されてもよい。典型的には、電解槽を不安定電力源と組み合わせる場合、プロセス全体の経済効率が考慮される場合がある。例えば、不安定電力源からの最大出力が変動し得る場合であっても、そのような最大出力を利用することによって電解槽を高効率で動作させることができるように、費用効率の高い水素発生システムを設計することができる。
【0020】
水電解システムは、不安定電力源によって電力供給されてもよい。水電解システムは、水素発生の経済的効率又はプロセスのエネルギー効率に加えて、電解槽及びエネルギー源の動作のパラメータを制御する。電解槽の動作パラメータ、例えば、これらに限定されないが、電流密度又は電圧、温度、電解質又は水の流量、並びに水素及び/又は酸素圧力が、膜、電極、又はフロープレートなどの電解槽の異なる構成要素の耐久性に著しく影響を及ぼす場合があり、それにより、電解槽寿命を減少させ、又は安全上の問題を引き起こすことさえある。制御デバイスは、電解槽の寿命を延ばすために電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成されてもよい。不安定電力源から直接電力を受け取る電解槽の動作電圧又は電流は、電力源の電力出力に直接依存する。例えば、不安定電力源によって供給される不十分な電力(移動する雲によって引き起こされる太陽電池アレイにおける部分的な遮光、又は風力タービンにおける悪天候パラメータの結果であり得る)に起因した、電圧の急激な低下、又は更には電解槽のシャットダウンが、膜に悪影響を及ぼす場合があり、膜の薄化又は更には穿孔につながる場合がある。電力の急激な減少から電解槽を保護することが重要な場合がある。これに対して、不安定電力源が最適な気象パラメータで動作し、電解槽に十分な電力を供給している場合であっても、過度に高い電流密度で電解槽を動作させることによって、膜を破壊する場合がある。制御デバイスは、電解槽の電気的動作点を制御するように構成されてもよい。具体的には、制御デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節して、それを電解槽の所定の入力電流又は電圧に整合させるように構成されてもよい。所定の入力電流又は電圧は、電解槽の寿命を増加又は減少させるように選択される場合がある。
【0021】
例えば、SOHバランシング複数電解槽の場合、複数の電解槽の寿命のタイミングを揃えて、電解槽の交換中の水素発生のダウンタイムを最小限に抑えてもよい。複数の電解槽のSOHバランシングはまた、古い電解槽を段階的に除去することを可能にし、したがって古い電解槽を新しいより効率的な電解槽と交換することができる。
【0022】
動作中の複数の電解槽間の電力バランシングは、修理及び交換のタイミングを揃えるのに役立つ場合がある。複数の電解槽間の電力バランシングにより、各電解槽への電力を、水素発生を最大化すること、寿命を最大化すること、修理タイミングを揃えること、又は交換タイミングを揃えることなどの所与の動作目標のために、各電解槽が受け入れることができる電力に揃えることが可能となり得る。
【0023】
本明細書で交換可能に使用される用語「電気的動作点」、「ターゲット電気的動作点」、及び「好ましい電気的動作点」は、電解槽の入力電圧及び電流(又は電流密度)のいずれか1つを指し、動作電圧とその結果としての電流との関係、又は動作電流(又は電流密度)と、その結果としての電圧との関係は、電解槽の分極(I-V)曲線によって定義できる。
【0024】
電流密度が電解槽セルの表面積によって正規化された電流であると理解されるので、用語「電流」及び「電流密度」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0025】
用語「寿命」は、本明細書で使用される場合、電解槽を交換する必要性が生じるまで、又は閾値未満の劣化した性能を示すまでの動作時間数を指す場合がある。用語「寿命」は、電解槽がその公称電圧で動作することができる動作時間数を指す場合がある。用語「寿命」は、電解槽がその公称電流で動作することができる動作時間数を指す場合がある。
【0026】
用語「寿命を増加させる」は、本明細書で使用される場合、電解槽の動作時間を少なくとも約1%増加させることを指す場合があり、そのとき、電解槽は、その寿命の全体にわたって、少なくとも特定の時間数にわたって、公称電圧又は公称電流以外のパラメータで動作する。用語「寿命を増加させる」は、電解槽の動作時間を、少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約7%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、又は少なくとも約20%増加させることを指す場合がある。
【0027】
用語「公称電圧」は、本明細書で使用される場合、電解槽が動作するように構成され得る電圧として電解槽の製造業者によって提供される電圧を指す。公称電圧は、典型的には、約70~80%の電圧効率に対応する。
【0028】
用語「公称電流」は、本明細書で使用される場合、電解槽が動作するように構成され得る電流密度として電解槽の製造業者によって提供される電流密度を指す。
【0029】
用語「不安定電力源」は、本明細書で使用される場合、例えば、その電力生産能力がその環境に依存するゆえに、電力発生が一定ではない場合があるエネルギー源を指す。不安定電力源は、再生可能エネルギー源であってもよい。水電解システムにおいて使用できる不安定電力源の非限定的な例としては、光起電力(PV)電力源、太陽熱エネルギー(solar thermal energy、STE)電力源、風力電力源、潮力電力源、不安定な電気グリッド、及び波力電力源が挙げられる。光起電力発電は、発電される電力が周囲光に比例するため間欠的な場合がある。風力発電は、一定ではない場合がある風力に依存する。潮力は、潮の満ち引きと共に変動し、波力は、広く変動し得る波の力に依存する。電気グリッドは、(主回路遮断器によって制限されるような)固定グリッド電力が電解槽と他の不安定な負荷との間で共有される場合に不安定であり得る。したがって、残りのグリッド電力は不安定であり、不安定電力源と見なすことができる。電解槽は、残りの不安定グリッド電力から動作されてもよい。本明細書の不安定電力源の例の多くは、例においてPVシステムを使用しているが、本明細書で説明されるデバイス、システム、及び方法は、任意の不安定電力源に適用されることを理解されたい。
【0030】
不安定電力源は、PV電力源であってもよい。用語「PV電力源」は、本明細書で使用される場合、単一のPVパネル又はPVパネルの組合せ(本明細書では、文脈が別段の指示をしない限り、「PVアレイ」とも呼ばれる)を指す場合がある。用語「PV電力源」は、直流(DC)-DC変換器などの変換器モジュールに機能的に取り付けられたPVパネルを包含することができ、これは、本明細書では「オプティマイザ」又は「電力オプティマイザ」とも呼ばれる。用語「PVパネル」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の太陽電池、複数の半導体接合のセル、薄膜及び/又はバルク材料の、及び/又は異なる材料の、異なる方法(例えば、直列、並列、直列/並列)で接続された太陽電池、のいずれかを含む。複数のPVパネルが使用される場合、それらは、例えば変換器モジュールを使用することにより、それらの最大電力点(maximum power point、MPP)で動作されてもよい。
【0031】
ここで図1Aを参照すると、この図面は、本明細書の開示のいくつかの実施形態による、水電解システム101を概略的に示す。システム101は、不安定電力源(例えば、PVアレイ103)と、電解槽105と、不安定電力源103と電解槽105との間を機能的に接続する制御デバイス107とを含む。制御デバイス107は、電解槽105の少なくとも1つの動作パラメータを制御して、その寿命を延ばすように構成されてもよく、少なくとも1つの動作パラメータは、電解槽105の電気的動作点を含む。制御デバイス107は、不安定電力源103の出力電力を調節して、電解槽105の電気的動作点に整合させる。
【0032】
水電解システムは、水から水素を生成するために太陽エネルギーを用いるオフグリッドシステムであってもよい。このようなシステムは、例えば、燃料電池ベースの車両用の燃料補給システムとして使用されてもよい。生成された水素は、異なる場所での使用のために収集及び輸送されてもよい。本明細書に記載される水電解システムは、電気グリッド及び電気負荷のうちの少なくとも1つに機能的に接続されてもよく、不安定電力源は、電解槽に電力を供給して水素を発生させることと並行して、住宅用又は商業用に電力を供給してもよい。グリッド接続システムは、必要に応じて、ユーティリティグリッドから電力を受け取って、不安定電力源により供給される電力を補ってもよい。不安定電力源は、グリッド及び負荷のうちの少なくとも1つに機能的に接続されてもよい。電解槽は、グリッドに機能的に接続されてもよい。接続は、制御デバイスによって実装されてもよい。
【0033】
本明細書で交換可能に使用される用語「電気グリッド」及び「グリッド」は、交流(alternating current、AC)電力源を指す。
【0034】
本明細書で交換可能に使用される用語「電気負荷」及び「負荷」は、不安定電力源から電力を吸収することが可能であり得る任意のデバイス又はデバイス群を指す。
【0035】
水電解システムは、限定はしないが、高分子電解質膜水電解槽(polymer electrolyte membrane water electrolyser)、液体電解質電解槽(liquid electrolyte electrolyser)、及び固体酸化物形電解セル(SOEC)などの任意のタイプの電解槽を含むことができる。電解槽は、プロトン交換膜水電解槽及びアニオン交換膜水電解槽から選択することができる。
【0036】
電解槽の1つ以上の構成要素の劣化を抑制するために、好ましい電気的動作点レベルが選択されてもよい。電解槽は、典型的には、(使用される電解槽技術に応じて)膜又はセパレータによって分離されたカソード及びアノードを含む少なくとも1つの電解槽セルを含む。セパレータは、アルカリ水電解槽及び酸性水電解槽における、それぞれ液体アルカリ電解質又は液体酸性電解質と共に使用されてもよい。セパレータは、多孔質の薄膜であって、電解質イオンの通過を可能にする一方で、電気絶縁性であることにより、電極間の電気的短絡を回避するものであり得る。セパレータは、アノード及びカソードでそれぞれ生成された酸素及び水素のクロスオーバーを防止して、水素発生効率の低下を回避し、潜在的な安全性リスクを防止するように構成することができる。
【0037】
高分子電解質膜(PEM)などの膜は、プロトンの伝導、生成物ガスの分離、及び電極の電気絶縁の役割を担い得る固体高分子電解質(solid polymer electrolyte、SPE)を有する、固体システムにおいて使用することができる。例えば、プロトンを伝導するプロトン交換膜が、プロトン交換膜水電解槽において使用されてもよく、アニオンを伝導するアニオン交換膜が、アニオン交換膜水電解槽において用いられてもよい。高分子電解質膜の使用は、ラジカル攻撃並びにその後の膜の薄化及び官能基の喪失よって引き起こされる膜の化学的劣化により生じ得る水素及び酸素のクロスオーバーによって妨げられる場合がある。膜劣化の深刻度は、電解槽の動作時間、並びに電解槽の特定の動作パラメータ、例えば高電流密度での動作、に依存する場合がある。
【0038】
電解槽のカソード及びアノードは、金属電極の形態であってもよく、又はそれぞれ水素発生反応及び酸素発生反応に触媒作用を及ぼすように構成された触媒を含有してもよい。触媒及び適切な添加剤は、導電性支持体に、例えば、金属メッシュ、又はカーボン紙若しくは布を有するガス拡散層に、適用されてもよい。代わりに、触媒は膜上に直接適用されてもよい。電解槽の最適でない動作パラメータが、カソード及び/又はアノードの劣化を加速し、それにより電解槽寿命が減少する場合がある。例えば、低温アルカリ電気分解では、動作を最小セル電位に維持することにより、電極の劣化を低減させることができる。
【0039】
電解槽セルは、カソード及びアノードへ又はカソード及びアノードから電子を伝導するための集電体と、電解質及び/又は水の流れのためのフロープレートとを含んでもよい。これら追加の構成要素もまた、電解槽の動作パラメータに応じて劣化を受ける場合がある。
【0040】
水電解システムの制御デバイスが電解槽の動作パラメータを制御することによって、電解槽の様々な構成要素の劣化を軽減することができる。制御は、少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを備える制御デバイスを使用することによって実施されてもよい。エネルギー貯蔵デバイスは、コンデンサ、バッテリ、フローバッテリ、燃料電池、フライホイール、及びそれらの任意の組合せから選択されてもよい。好ましくは、制御デバイスは、コンデンサ及びバッテリのうちの少なくとも1つを含む。適切なコンデンサの非限定的な例としては、電気二重層コンデンサ、ファラッドコンデンサ(farad capacitor)、表面実装コンデンサ、単層コンデンサ、セラミックコンデンサ、及びタンタルコンデンサが挙げられる。用語「電気二重層」は、本明細書で使用される場合、二重層コンデンサ、電気化学コンデンサ、スーパーキャパシタ、及びウルトラキャパシタのうちのいずれか1つを包含することを意図している。適切な電池の非限定的な例としては、リチウムイオン電池、リチウムポリマー電池、リチウム硫黄電池、リチウム空気電池、ナトリウムイオン電池、マグネシウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、カリウムイオン電池、アルミニウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池、及び鉛酸蓄電池が挙げられる。
【0041】
制御デバイスは、急速充電エネルギー貯蔵デバイスであってもよい少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを備えてもよい。用語「急速充電」は、本明細書で使用される場合、電池を参照する場合、3C以上の充電速度を有する電池を意味し、Cは1時間当たりの総電池容量である。急速充電デバイスは、電気二重層コンデンサ及びリチウムイオン電池から選択されてもよい。
【0042】
制御デバイスは、例えば、1A/時間以上の容量を有するバッテリなどの大容量エネルギー貯蔵デバイスであってもよい、少なくとも1つのエネルギー貯蔵デバイスを備えてもよい。
【0043】
制御デバイスは、少なくとも1つの急速充電エネルギー貯蔵デバイス及び少なくとも1つの大容量エネルギー貯蔵デバイスを備えてもよい。急速充電エネルギー貯蔵デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節することを支援して、電解槽の動作中の(数秒の範囲内の)高速出力変化を緩和して、例えば、電解槽寿命に悪影響を及ぼし得る電解槽の動作電圧又は電流の変動を防止するための、電気的動作点を提供することができる。大容量エネルギー貯蔵デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節することを支援して、その(数分の範囲の)緩慢な変化を緩和して、電気的動作点を提供することができる。例えば、不安定電力源の出力電力が不十分になったときに、大容量エネルギー貯蔵デバイスは放電して、電圧又は電流を最適ではない値に減少させる又は電解槽をシャットダウンする必要なく、電解槽に電力を供給して、所望の動作電圧又は電流を維持することができる。大容量エネルギー貯蔵デバイスはまた、不安定電力源の過剰な出力電力を貯蔵するために充電されて、電解槽に提供される出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させてもよい。
【0044】
システムの動作目標を最適化するのに十分な時間及び十分な電力のために、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを使用して、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスの電力を用いて電解槽を動作させるのに十分なエネルギーが利用可能になるまで、不安定電力源から十分なエネルギーを貯蔵してもよい。例えば、低電力PVシステム(例えば、毎日5時間にわたって電力を供給する5kWのPVシステム)は、20日間の期間にわたって大型エネルギー貯蔵デバイス(例えば、500kWhのバッテリシステムなど)にエネルギーを供給することができ、その後、電解槽は、貯蔵期間よりも短い期間(例えば、2日間の連続動作時間)にわたって高電力レート(例えば10kW)で動作される。
【0045】
電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを効果的に制御するための、制御デバイスの1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスの動作は、適切な回路、1つ以上のセンサ、及び/又は1つ以上の電力変換デバイスによって可能にすることができる。例えば、制御デバイスは、コントローラと、不安定電力源の出力電力に関連するパラメータ(例えば、電流及び電圧)を感知し、感知及び/又は計算された電力をコントローラに報告するように構成されたセンサと、不安定電力源の出力電力の少なくとも一部分を電解槽の好ましい電気的動作点に変換するように構成された電力変換器とを含んでもよい。コントローラは、好ましい電気的動作点及び出力電力の少なくとも一部分を設定することを含む、制御デバイスの動作における様々なステップを、自動的に実施するように構成されたアルゴリズムを実行してもよい。コントローラは、データ(パラメータ及び/又はコマンド、例えば、アルゴリズムを実装するためのコード等)を記憶するための可読メモリ、例えばデジタルメモリ、を含んでもよい。加えて、コントローラは、記憶されたデータを処理及び分析するように構成された機械学習アルゴリズムを含んでもよく及び/又は実行してもよい。
【0046】
可変貯蔵デバイスの出力電力は、第1の部分と第2の部分とに分割されてもよい。例えば、不安定電力源の出力電力が電解槽の電気的動作点よりも高い場合、電力の少なくとも一部分は、電気的動作点がコントローラによって設定された後に、電力変換器によって変換され、電解槽に供給され得る、第1の部分であってもよい。コントローラは、不安定電力源の出力電力の第2の部分を、エネルギー貯蔵デバイス、グリッド、及び負荷のうちの少なくとも1つに移行させることを可能にするように構成されてもよい。不安定電力源の出力電力が電解槽の電気的動作点よりも著しく高くない場合、電力変換器は、不安定電力源の全出力電力を電解槽の電気的動作点に変換するように構成されてもよい。コントローラは、例えば、出力電力が電解槽の電気的動作点に実質的に等しい又はそれよりも低い場合に、電力変換器を介して不安定電力源によって供給される電力に加えて、エネルギー貯蔵デバイス及びグリッドのうちの少なくとも1つから電解槽への電力の移行を可能にするように構成されてもよい。
【0047】
用語「電力変換器」は、本明細書で使用される場合、電圧制御又は電流制御の交流(AC)-DC又はDC-DC変換器、例えば、バック変換器、ブースト変換器、バックブースト変換器、フルブリッジ変換器、フライバック変換器、ハーフブリッジ変換器、フルブリッジ変換器、又は当技術分野で公知の電力変換/逆変換のための任意の他の回路を指す。電力変換器は、電流制御モードと電圧制御モードとの間で切り替えることができるDC-DC変換器を含んでもよい。電力変換器は、DC-DC変換器及びAC-DC変換器を含んでもよい。
【0048】
制御デバイスは、例えば、不安定電力源をグリッド若しくは負荷に接続するための及び/又は電解槽をグリッドに接続するための1つ以上のAC-DC変換器又はDC-ACインバータを含んでもよい。負荷がDC動作負荷である場合、制御デバイスは、不安定電力源を負荷に接続するためのDC-DC変換器を含んでもよい。電解槽は、グリッドに接続するためのDC-AC接続を含んでもよい。制御デバイスは、PVパネル温度及び放射照度値(irradiance value)に依存する最大電力点を連続的に追跡することによりPVアレイ出力電力を最大化するように構成された1つ以上の電力オプティマイザを含んでもよい。
【0049】
電解槽の動作、電力源、グリッドからの電力、負荷への電力、及びエネルギー貯蔵デバイスへの電力を監視することは、負荷及び電解槽の将来の電力需要を予測するためのパターンを提供し、電解槽及びエネルギー貯蔵デバイスを制御して、利用可能な電力源及び負荷要件に関する将来の予測される変化を考慮することを可能にできる。例えば、既知の負荷が将来必要となる場合、電力をエネルギー貯蔵デバイスに格納し、必要なときに負荷に供給することができ、それにより、電解槽が好ましい動作パラメータで動作し続けることが可能になる。
【0050】
ここで図1Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、水電解システム201を概略的に示す。システム201は、不安定電力源(例えば、PVアレイ203)、電解槽205、及び電解槽205を不安定電力源203に接続する制御デバイス207を含む。制御デバイス207は、エネルギー貯蔵デバイス209及び追加の電子構成要素を含む。制御デバイス207は、不安定電力源203を電気グリッド211及び電気負荷213に接続することができる。制御デバイス207は、不安定電力源203の出力電力が電解槽205の電気的動作点よりも大きい場合に、不安定電力源203の出力電力を、電解槽205と、エネルギー貯蔵デバイス209、電気グリッド211、及び負荷213のうちの少なくとも1つとの間で分割し、それにより出力電力を電解槽205の電気的動作点に整合させるように構成されてもよい。制御デバイス205は、不安定電力源203の出力電力が電解槽205の電気的動作点よりも小さい場合に、不安定電力源203の出力電力に加えて、エネルギー貯蔵デバイス209及び電気グリッド211のうちの少なくとも1つから電解槽205への電力の送達を促進し、それにより出力電力を電解槽205の電気的動作点に整合させるように構成されてもよい。制御デバイス207は、センサ215、例えば、電流センサ、電圧センサ、温度センサ、圧力センサ、及び電力センサを含んでもよい。制御デバイス207は、スイッチ及び電力バス216を含んで、必要に応じて複数の電解槽を直列又は並列に接続及び切断することを可能にしてもよい。制御デバイス207は、電解槽の動作パラメータ及び動作状態の管理を実施するコントローラ又は制御回路217を含んでもよい。制御デバイス207は、変換器219、例えばDC電解槽によって使用されるDC電力源を変換するためのDC-DC変換器、又はDC電解槽によって使用されるAC電力源を変換するための交流(AC)-DC変換器を含んでもよい。
【0051】
上述したように、電解槽の電気的動作点を制御することは、電解槽の動作電圧及び動作電流のうちの少なくとも1つを制御することを含んでもよい。電解槽は、定常状態条件で(例えば、定電圧で又は定電流で)動作させてもよい。代わりに、電解槽は、パルス直流電流又は電圧を利用する交互電解モードで動作されてもよい。したがって、動作電流又は電圧の振幅を制御することに加えて、定常状態条件で動作する場合、電解槽の電気的動作点の追加の特徴が制御されてもよい。例えば、従来のパルス幅変調(pulse width modulation、PMW)を利用することによって、波形のタイプ、デューティサイクル、及び周波数を含む複数の従属変数が変更されてもよい。加えて、動作電流又は電圧を、周期的な位相で時間に対して線形に変化させてもよい。電解槽の動作電圧及び動作電流のうちの少なくとも1つを制御することは、動作電圧又は動作電流の振幅、動作電圧又は動作電流が変化される速度、動作電圧又は動作電流の波形のタイプ、波形のデューティサイクル、及び波形の周波数、のうちの少なくとも1つを制御することを含んでもよい。例えば、電流及び/又は電圧を制御して、電解槽膜への電気化学的ストレスを最小限に抑えてもよい。
【0052】
動作電流又は電圧の前述した特徴に対する制御は、コントローラ、電力変換器、及び任意選択でエネルギー貯蔵デバイスによって実施されてもよい。コントローラは、振幅、波形タイプ、デューティサイクル、及び周波数を設定してもよく、電力変換器は、コントローラによって提供される命令に基づいて、不安定な電力デバイスの出力電力の少なくとも一部分を受け取り、それを電解槽の電気的動作点に変換してもよい。エネルギー貯蔵デバイスは、動作電流又は電圧を減少させる必要がある場合に過剰な出力電力を貯蔵することによって、及び動作電流又は電圧を増加させる必要がある場合に追加電力を供給することによって、動作電圧又は動作電流が変化する速度を制御することを可能にし得る。
【0053】
水電解システムの制御デバイスは、不安定電力源の予測出力電力に基づいて、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成されてもよい。予測出力電力は、例えば、機械学習アルゴリズムと、エネルギー出力に影響を及ぼす検出可能パラメータとを使用することにより計算できる。例えば、PV電力源を使用する場合、予測出力電力は、とりわけ時刻及び気象条件に依存する照明強度に基づく場合がある。風力タービン効率もまた、気象データに基づいて予測できる。
【0054】
不安定電力源の現在の出力電力が、特定の動作パラメータにて、例えば比較的高い電流密度にて、電解槽を動作させることを可能にすることにより、水素発生効率が増加する場合であっても、その動作パラメータは、電解槽寿命を向上させるために予測出力電力に基づいて調整することができ、その結果、水素発生が減少する。例えば、PVアレイの出力電力が夕方に低下することが予想される場合、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、出力電力の実際の減少によって引き起こされる突然のシャットダウンの代わりに、日没前に電解槽を徐々にシャットダウンするための動作電流又は電圧の先制的な緩慢な減少を含んでもよい。制御デバイスは、夜間又は悪天候状況が予想される場合に、電解槽を最大で約10%の電流効率で動作させるために、動作電流又は電圧を徐々に減少させてもよい。電解槽を動作させるための電力は、エネルギー貯蔵デバイスによって供給されてもよい。電解槽を非常に低い電流で動作させることは、水素発生に関しては非効率的であるが、電解槽の寿命を延ばすことができる。したがって、不安定電力源の予測出力電力を使用することにより、有利なことに、電解槽の動作パラメータの調整を、そのような変化が出力電力の実際の状態によって必要とされ得る前に行うことができ、それにより、電解槽がその耐久性に悪影響を及ぼす非最適条件で動作する状況を減少させる又は更には排除することができる。
【0055】
水電解システムの制御デバイスは、電解槽の動作温度、電解質又は水の流量、水素及び/又は酸素の圧力、並びにそれらの任意の組合せなどであるがこれらに限定されない、電解槽の追加の動作パラメータを制御してもよい。
【0056】
温度は、特にPEM電解槽にとって、電解槽の効率及び耐久性に影響を及ぼし得る重要な動作パラメータであり得る。PEM電解槽内での高い動作温度及び電流密度が、膜及び電極の老化を加速させる場合がある。高温はまた、水素及び酸素のクロスオーバーの増加をもたらす場合がある。用語「電解槽の動作温度」は、本明細書で使用される場合、電解槽から流れ、電解槽内で行われるプロセスによって影響を受ける場合がある、電解質又は水の温度とは対照的に、制御できる温度、例えば電解槽セル内に流入する電解質又は水の温度を指す。
【0057】
電解質又は水の流量、並びにカソード及びアノードにおけるガス圧力又は組成もまた、電解槽の耐久性に影響を及ぼし得る。例えば、電解質又は水の流量が電解槽温度を制御できるので、耐久性に対するその影響は、温度の影響と同様であり得る。
【0058】
追加の動作パラメータは、電解槽の電気的動作点に影響を及ぼし得る。例えば、電解槽をより高い電流密度で動作させることにより、電解槽の温度が増加し、それにより、電解槽の様々な構成要素の劣化が加速される。電解槽をより高い温度で動作させることが指定される場合、電解槽の寿命への悪影響を低減させるため、電解槽の電流密度を低減させてもよい。したがって、制御デバイスは、前述した追加の動作パラメータを考慮して、不安定電力源の出力電力を調節して、それを電解槽の電気的動作点に整合させるように構成されてもよい。例えば、コントローラは、電解槽の動作電流又は電圧、及び動作温度を設定するように構成されてもよく、動作電流又は電圧は動作温度に依存し、したがって、不安定電力源の出力電力を調節することもまた、電解槽の動作温度に依存する場合がある。
【0059】
制御デバイスは、電解槽の動作温度、電解質又は水の流量、並びに水素及び/又は酸素の圧力を含む、少なくとも1つの追加の動作パラメータを測定するように構成されたセンサを含んでもよい。好適なセンサの非限定的な例としては、熱電対、赤外線センサ、薄膜熱センサ、流量計、圧力変換器、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。センサを使用して、前述した追加の動作パラメータを制御してもよい。制御デバイスは、水サイクル及び/又は熱交換器などの前述した少なくとも1つの追加の動作パラメータを制御するための手段を含んでもよい。
【0060】
電解槽の電気的動作点及び上に列挙した追加の動作パラメータを含む、電解槽の寿命を増加させるための電解槽の少なくとも1つの動作パラメータに対する制御は、動作パラメータの所定の値に基づいてもよい。制御デバイス、具体的にはコントローラは、動作パラメータを設定するためにコントローラによって使用され得るルックアップテーブルを含んでもよい。
【0061】
所定の値は、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との関連性を表すモデルから導出されてもよい。所定値は、異なる動作パラメータの組合せと電解槽寿命との関連性を表すモデルから導出されてもよい。例えば、モデルは、少なくとも1つの動作パラメータと、限定はしないが、膜、セパレータ、カソード、アノード、集電体、又はフロープレートなどの電解槽の1つ以上の構成要素の劣化との関連性を表してもよい。モデルは、動作電流又は電圧と、電解槽の動作温度と、膜の耐久性との関連性を表してもよい。
【0062】
加えて又は代わりに、所定の値は、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との関連性を表す経験的/測定されたデータから導出されてもよい。例えば、経験的/測定されたデータは、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽の1つ以上の構成要素の劣化との関連性を示し得る。電解槽の特定の動作条件と特定の構成要素の劣化との関係を確立するために、様々なタイプの試験を実施してもよい。適切な試験の非限定的な例としては、電解槽の劣化に対する様々な動作パラメータの長期効果を評価することを可能にする加速劣化試験が挙げられるが、この試験は比較的短い期間にわたって行ってもよい。
【0063】
加えて又は代わりに、所定の値は、水電解システムにおいて以前に使用された又は現在使用されているものと同じ種類の複数の電解槽から得られたデータから導出されてもよい。コントローラの機械学習アルゴリズムは、そのデータを分析して、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との間の相関を評価し、この相関に基づいて少なくとも1つの動作パラメータの所定の値を提供するように構成されてもよい。
【0064】
複数の電解槽から得られたデータは、水電解システムの動作の全体を通して制御デバイスによって測定された、上で列挙したような1つ以上の動作パラメータを含んでもよい。
【0065】
所定の値は、公称電力の所定の割合にて、所定の時間数にわたって、電解槽を動作させることを可能にするように構成されてもよい。電解槽を交換する必要が生じるまでに、電解槽が一定の時間数にわたって動作することを確実にするために、電解槽の一定の動作パラメータがその動作寿命の一定の期間にわたって前述した所定の値に設定されてもよいことが、モデル、経験的/測定されたデータ又は機械学習アルゴリズムに基づいて確立されてもよい。例えば、特定のタイプの電解槽が、0時間の動作と100時間の動作との間で動作される場合は、第1の電流密度及び/又は第1の電圧並びに第1の温度で動作されてもよく、100時間の動作と300時間の動作との間で動作される場合は、第2の電流密度及び/又は第2の電圧並びに第2の温度で動作されてもよいことが、予め決定されてもよい。
【0066】
制御デバイスは、電解槽の健康状態(SOH)に関連する少なくとも1つのパラメータのリアルタイム監視を実施し、そのパラメータに基づいて少なくとも1つの動作パラメータを制御してもよい。
【0067】
用語「監視」、「感知」、「評価」、及び「測定」は、本明細書では交換可能に使用される。
【0068】
健康状態関連パラメータという用語は、本明細書で使用される場合、電解槽などの電気化学デバイス、又は電解槽スタックなどの電気化学デバイスの組合せの状態を、その理想的な状態、例えば、ユーザによる動作前の、製造業者によって提供されるその初期状態と比較した性能指数を指す。電気化学デバイスの健康状態は、抵抗値、インピーダンス、コンダクタンス、容量、電圧、電流、及び電力を受け入れる又は引き出す能力などであるが、これらに限定されない、様々な電気化学的パラメータに基づいて決定されてもよい。電解槽構成要素の物理的又は化学的状態に関連する追加のパラメータを使用して、そのSOHを評価することもできる。制御デバイスによって監視され得る適切なSOH関連パラメータの非限定的例は、定電流動作時の電解槽電圧、定電位動作時の電解槽電流、内部セル抵抗又はインピーダンス、電解質の温度、電解質の導電率、電解質の化学組成、及びそれらの任意の組合せを含む。例えば、高動作電圧は、電解槽の劣化の兆候であり得る性能損失を示す場合がある。これに対して、低動作電圧は、膜の薄化により可能になり得る水素又は酸素のクロスオーバーから生じる場合がある。電解槽の過度に高い温度は、電解槽の劣化に起因する高い抵抗損の兆候であり得る。電解槽の出口から流れる電解質又は水に見られる膜成分、例えば、フルオロポリマーベースのPEMからのフッ化物イオンが、膜又はセパレータの分解の指標として機能し得る。
【0069】
(電解槽の動作温度とは対照的に)電解槽の温度に言及する場合、それは、電解槽の出口から流れる電解質の温度、電解槽の入口と出口との間の電解槽の温度の勾配、及び膜又はセパレータ中の電解質の温度のうちのいずれか1つを含み得る。
【0070】
制御デバイスは、SOH関連パラメータを測定するように構成された少なくとも1つのデバイスを含んでもよい。例えば、温度は、熱電対、赤外線センサ、及び薄膜熱センサのうちの1つ以上によって測定されてもよい。(定電流動作時の)電解槽電圧及び/又は(定電位動作時の)電解槽電流は、分極曲線(I-V曲線)、PEMストリップと組み合わされたダイナミック水素電極(dynamic hydrogen electrode、DHE)、水素基準電極(hydrogen reference electrode、HRE)、及び固体電解質接続(solid electrolyte connection)のうちの1つ以上により評価できる。内部セル抵抗又はインピーダンスは、分極曲線(I-V曲線)、PEMストリップと組み合わされたダイナミック水素電極(DHE)、水素基準電極(HRE)、固体電解質接続、及び電気化学的インピーダンス分光法(electrochemical impedance spectroscopy、EIS)のうちの1つ以上により評価できる。電解質の化学組成は、フッ化物選択電極を使用することにより評価できる。
【0071】
電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、動作パラメータの所定の値と電解槽のSOH関連パラメータとの間の相関に基づいてもよい。所定値は、少なくとも1つの動作パラメータとSOH関連パラメータとの関連性を表すモデルから導出されてもよい。所定の値は、少なくとも1つの動作パラメータとSOH関連パラメータとの関連性を表す経験的/測定されたデータから導出されてもよい。
【0072】
所定の値は、測定されたSOH関連パラメータに著しく影響を及ぼすことなく、電解槽を公称電力の所定の割合で動作させることを可能にするように構成されてもよい。用語「著しく影響を及ぼすことなく」は、本明細書で使用される場合、約1%未満であってもよいSOH関連パラメータの変化を指す場合がある。用語「著しく影響を及ぼすことなく」は、約5%未満であってもよいSOH関連パラメータの変化を指す場合がある。用語「著しく影響を及ぼすことなく」は、約10%未満であってもよいSOH関連パラメータの変化を指す場合がある。測定されたSOH関連パラメータによって表されるその寿命に著しく影響を及ぼすことなく電解槽が動作することを確実にするために、電解槽の特定の動作パラメータが、測定されたSOH関連パラメータに関する前述の所定の値に設定されてもよいことが、モデル又は経験的/測定データに基づいて確立されてもよい。例えば、特定のタイプの電解槽を、測定されたSOH関連パラメータがXである場合は、第1の電流密度及び/又は第1の電圧、並びに第1の温度で動作させてもよく、測定されたSOH関連パラメータがXよりも10%超大きい又は小さい場合は、第2の電流密度及び/又は第2の電圧、並びに第2の温度で動作させてもよいことが予め決定されてもよい。したがって、いつ少なくとも1つの動作パラメータを調整する必要があるかを確立するために、SOH関連パラメータの絶え間ない監視が必要な場合がある。
【0073】
制御デバイスの機械学習アルゴリズムは、水電解システムにおいて以前に用いられたものと同じ種類の複数の電解槽から得られたデータを分析して、この複数の電解槽の少なくとも1つの動作パラメータとSOH関連パラメータとの間の相関を評価するように構成されてもよい。少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、SOH関連パラメータの測定値及び前述した相関の分析に基づいてもよい。機械学習アルゴリズムは、現在の電解槽の以前の動作データを分析して、この電解槽の少なくとも1つの動作パラメータとSOH関連パラメータとの間の相関を評価するように構成されてもよい。機械学習アルゴリズムは、フィードバックループを含んでもよく、ここで、少なくとも1つの動作パラメータは、SOH関連パラメータに影響を及ぼし、少なくとも1つの動作パラメータは、SOH関連パラメータの測定値に基づいて調整されてもよい。
【0074】
複数の電解槽から得られるデータは、水電解システムの動作の全体を通して制御デバイスによって測定された、上で列挙したような1つ以上の動作パラメータ及びSOH関連パラメータを含んでもよい。
【0075】
制御デバイスは、SOH関連パラメータを繰り返し監視し、その後、少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成されてもよい。制御デバイスは、SOH関連パラメータを連続的に監視するように構成されてもよい。
【0076】
例えば、電解槽を定電流モードで動作させてもよく、制御デバイスは、電解槽の電圧をその動作全体にわたって監視してもよく、電流は電解槽の少なくとも1つの動作パラメータであってもよく、電圧は電解槽のSOH関連パラメータであってもよい。したがって、制御デバイスは、測定された電圧に基づいて電流を繰り返し調整してもよい。代わりに、電解槽を定電位モードで動作させてもよく、制御デバイスは、電解槽の電流をその動作全体にわたって監視してもよい。別の例では、電解槽を定電位モードで動作させてもよく、制御デバイスは、電解槽の出口から流れる電解質又は水の温度をその動作全体にわたって監視してもよい。電圧は、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータであってもよく、温度は、電解槽のSOH関連パラメータであってもよく、それにより、電圧は、測定された温度に基づいて繰り返し調整されてもよい。
【0077】
機械学習アルゴリズムは、SOH関連パラメータを分析して、電解槽の1つ以上の構成要素のうちの特定の構成要素の劣化を検出するように構成されてもよい。制御デバイスは、少なくとも1つの動作パラメータを調整して、前述した1つ以上の構成要素のうちの特定の構成要素の寿命を延ばすように構成されてもよい。
【0078】
例えば、電解槽の電気的動作点は、膜の寿命を増加させるように選択されてもよい。電気的動作点は、最大約75%の電流効率を供給する一定の電流又は電圧で電解槽を動作させることを可能にする動作電流又は電圧を含んでもよい。
【0079】
例えば、寿命は、電解槽を、ある間隔で、ある時間にわたって停止することにより増加できる。例えば、寿命は、電解槽の水素生成を、ある間隔で、ある時間にわたって減らすことにより増加できる。
【0080】
例えば、電気的動作点は、カソード及びアノードのうちの少なくとも1つの寿命を増加させるように選択できる。電気的動作点は、電解槽を約0%~約10%の電流効率で動作させるように、動作電圧又は動作電流を小さくすることを含んでもよい。
【0081】
更に別の例では、電気的動作点は、不安定電力源の出力電力及びエネルギー貯蔵デバイスの電力が電気的動作点よりも低い場合、又はSOH関連パラメータが臨界値よりも低下又は上昇した場合、ゼロの動作電圧又は動作電流を含んでもよい。この臨界値は、膜の薄化に関連する場合がある。
【0082】
少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、SOH関連パラメータが臨界値よりも低下又は上昇したときに、動作電流を低下させること又は電解槽を一時的にシャットダウンすることを含んでもよい。SOH関連パラメータは、臨界値よりも上昇する電解槽電圧であってもよい。臨界値は、カソード不活性化、アノード不活性化、及び膜又はセパレータのイオン伝導率の低下のうちの1つ以上に関連し得る。
【0083】
用語「臨界値」は、相対的スケールにおける値を指してもよく、ここで、より高い値がより良好なSOHを意味する。電気的動作点は、SOH関連パラメータが臨界値よりも低下したときに、ゼロの動作電圧又は動作電流を含んでもよい。
【0084】
水電解システムは、一緒に積層されて電解槽スタックを形成する複数の電解槽(又は電解槽セル)を含んでもよい。好ましくは、制御デバイスは、スタックの動作パラメータを全体的に制御する。
【0085】
水電解システムは、複数の電解槽スタックを含んでもよい。水素発生のための水電解システムが提供されてもよく、システムは、複数の不安定電力源と、複数の電解槽スタックと、制御デバイスとを含み、電解槽スタックの少なくとも一部が制御デバイスを介して不安定電力源に機能的に接続され、制御デバイスは、寿命を延ばすように、複数の電解槽スタックの少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成されてもよく、少なくとも1つの動作パラメータは電解槽スタックの電気的動作点を含み、制御デバイスは、複数の不安定電力源の出力電力を調節して、それを複数の電解槽スタックの電気的動作点に整合させる。
【0086】
各電解槽スタックは、制御デバイスを介して、対応する不安定電力源に機能的に接続されてもよい。制御デバイスは、各不安定電力源の出力電力を調節して、対応する電解槽スタックの電気的動作点に整合させることができる。
【0087】
複数の不安定電力源は、直列及び/又は並列の電気的接続で構成されて、複数の電解槽スタックに出力電力を供給してもよい。制御デバイスは、電気接続構成のタイプ(直列又は並列)を変化させて、複数の不安定電力源の出力電力を複数の電解槽の電気的動作点に整合させてもよい。
【0088】
制御デバイスは、上で詳述したように、エネルギー貯蔵デバイス、コントローラ、センサ、及び電力変換器を含んでもよい。各電解槽スタックを個別に制御するために、制御デバイスは複数の制御ユニットを含んでもよく、各制御ユニットはコントローラ、センサ及び電力変換器を含む。不安定電力源は、そのようなユニットを介して、対応する電解槽制御ユニットに個別に接続されてもよい。制御デバイスは、複数の不安定電力源の出力電力を個別に調節して、それを複数の対応する電解槽スタックの電気的動作点に整合させるように構成されてもよい。
【0089】
複数の制御ユニットを有する制御デバイスであって、各制御ユニットがコントローラ、センサ及び電力変換器を備える制御デバイスは、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスを含んでもよく、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスは、必要なときに複数の制御ユニットによって使用されて、電力を貯蔵及び放出してもよい。各制御ユニットは、個々のエネルギー貯蔵デバイスを含んでもよく、その結果、エネルギー貯蔵デバイスは、制御ユニット、及びその対応する不安定電力源と電解槽スタックとの対のみによって使用されてもよい。制御ユニットは、モジュール式であって、制御デバイス内においてホットスワップ機能を可能にして、保守によるダウンタイムを減らすこと及び水素発生を維持することが可能であってもよい。
【0090】
複数の不安定電力源は、電気グリッド及び負荷のうちの少なくとも1つに機能的に接続されてもよい。制御デバイスは、複数の不安定電力源を電気グリッド及び/又は負荷に接続してもよい。制御デバイスは、AC-DC変換器又はDC-ACインバータを含んでもよい。
【0091】
電解槽スタックの少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、上で詳述したように、動作パラメータの所定値に基づいてもよい。好ましくは、複数の電解槽セルを含むスタックが関与する場合、前述した所定値は、単一セルに対してより好適なモデル又は経験的/測定データからではなく、同じシステムの以前に動作された電解槽スタックの機械学習分析から導出されてもよい。
【0092】
少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、上で詳述したように、制御デバイスによる電解槽スタックの健康状態(SOH)関連パラメータのリアルタイム監視に基づいてもよい。前述したSOH関連パラメータは、スタック内の異なる電解槽セル間で変動する場合があるが、SOH関連パラメータの単一の値、例えば各セルのSOH関連パラメータの平均値が、スタックに割り当てられてもよい。
【0093】
制御デバイスは、例えば、予測電力出力が全てのスタックを動作させるには不十分であるかも知れない場合、又は1つ以上のスタックのSOHが、それらが休止又は再生手順を経ることを示す場合、1つ以上のスタックをシャットダウンする一方で、他のスタックを動作させ続けてもよい。制御デバイスの機械学習アルゴリズムは、異なる電解槽スタックのSOHを比較し、その比較に基づいて、各電解槽スタックの動作パラメータを選択するように構成されてもよい。異なる電解槽スタックのSOH間に著しい差がある場合、より良好なSOHを有する電解槽スタックは、より高い電流密度で動作させてもよい一方で、劣ったSOHを有するスタックは、特定の期間にわたって、又は異なるスタックのSOH間の差が著しくなくなるまで、より低い電流密度で動作させるか又は全く動作させなくてもよい。したがって、制御デバイスは、個々の電解槽スタックの寿命を延ばすことを手助けするだけでなく、その電解槽スタックの耐久性の観点で水電解システム全体の動作を調和させることもできる。
【0094】
ここで図2Aを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム301を概略的に示す。システム301は、複数の不安定電力源(PVアレイ)303a、303b、303c、303d、及び303eを含む。不安定電力源303a、303b、303c、303d、及び303eは、それらの間で直列及び/又は並列に電気的に接続されてもよい。システム301は、複数の電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eを含んでもよい。電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eもまた、それらの間で直列及び/又は並列に電気的に接続されてもよい。電解槽スタックは、制御デバイス307を介して不安定電力源に機能的に接続されている。制御デバイス307は、不安定電力源(PVアレイ)303a、303b、303c、303d、及び303eの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの電気的動作点に整合させてもよい。例えば、制御デバイス307は、不安定電力源303aの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305aの電気的動作点に整合させ、不安定電力源303bの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305bの電気的動作点に整合させ、不安定電力源303cの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305cの電気的動作点に整合させ、不安定電力源303dの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305dの電気的動作点に整合させ、不安定電力源303eの出力電力を調節して、それを電解槽スタック305eの電気的動作点に整合させてもよい。代わりに、制御デバイスは、直列及び/又は並列に接続された不安定電力源303a、303b、303c、303d、及び303eの出力電力を組み合わせ、次いでそれを分割して、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの電気的動作点に整合させることにより、PVアレイの出力電力を調節してもよい。
【0095】
制御デバイス307は、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの各々の少なくとも1つの動作パラメータを独立に制御して、各電解槽スタックの寿命を延ばすことができる。制御デバイス307は、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの各々のSOH関連パラメータを監視するように構成されてもよい。制御デバイス307は、コントローラ307a、スイッチ307b、電力バス307c、電力デバイス307d、センサ307e、及び電気エネルギー貯蔵デバイス307fを含んでもよい。
【0096】
不安定電力源303a、303b、303c、303d、及び303eの出力電力は、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの間で均等に分割されてもよい。代わりに、不安定電力源303a、303b、303c、303d、及び303eの出力電力は、各スタックの電気的動作点に応じて、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの間で不均等に分割されてもよい。例えば、いくつかの電解槽スタックは、より低い電流密度又はより低い電圧で動作されてもよく、他の電解槽スタックは、より高い電流密度又はより高い電圧で動作されてもよい。例えば、これらスタックの測定されたSOH関連パラメータを考慮したときに、残りのスタックがシャットダウンされ得る状況、及び/又は、不安定電力源303a、303b、303c、303d、及び303eの出力電力(又は予測出力電力)が複数の電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの電気的動作点よりも著しく低くなり得る場合に、出力電力は、電解槽スタック305a、305b、305c、305d、及び305eの一部のみに供給されてもよい。
【0097】
ここで図2Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム401を概略的に示す。システム401は、複数の不安定電力源403a、403b、403c、403d、及び403eを含んでもよい。システム401は、複数の電解槽スタック405a、405b、405c、405d、及び405eを含んでもよい。システム401は、複数の制御ユニット407a、407b、407c、407d、及び407eを含む制御デバイス407を含んでもよい。不安定電力源403a、403b、403c、403d、及び403eは、それらの間で直列に電気的に接続されてもよい。電解槽スタック405aは、制御デバイス407の制御ユニット407aを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。同様に、電解槽スタック405bは制御デバイス407の制御ユニット407bを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック405cは制御ユニット407cを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック405dは制御ユニット407dを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック405eは制御ユニット407eを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。電解槽スタック405a、405b、405c、405d、及び405eは、制御ユニット407a、407b、407c、407d、及び407eを介して、それらの間で直列に電気的に接続されてもよい。各制御ユニットは、複数の不安定電力源の出力電力を個別に制御して、その対応する電解槽スタックの電気的動作点に整合させてもよい。
【0098】
ここで図2Cを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム501を概略的に示す。システム501は、複数の不安定電力源503a、503b、503c、503d、及び503eを含む。システム501は、複数の電解槽スタック505a、505b、505c、505d、及び505eを含んでもよい。システム501は、複数の制御ユニット507a、507b、507c、507d、及び507eと、複数のオプティマイザ509a、509b、509c、509d、及び509eとを含む、制御デバイス507を含んでもよい。不安定電力源503aは、電力源503aの出力電力を最大化するように構成されてもよい、制御デバイス507のオプティマイザ509aに機能的に接続されてもよい。同様に、不安定電力源503bはオプティマイザ509bに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503cはオプティマイザ509cに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503dはオプティマイザ509dに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503eはオプティマイザ509eに機能的に接続されてもよい。オプティマイザ509a、509b、509c、509d、及び509eは、それらの間で直列に電気的に接続されてもよい。電解槽スタック505aは、制御デバイス507の制御ユニット507aを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。同様に、電解槽スタック505bは制御デバイス507の制御ユニット507bを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505cは制御ユニット507cを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505dは制御ユニット507dを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505eは制御ユニット507eを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。制御ユニット507a、507b、507c、507d、及び507eは、それらの間で直列に電気的に接続されてもよい。各オプティマイザは、その対応する不安定電力源を個別に制御して最大出力電力を提供してもよく、各制御ユニットは、その対応する電解槽スタックの電気的動作点を個別に制御して、複数の不安定電力源の出力電力を調節して、それを特定の電解槽スタックの電気的動作点に整合させてもよい。
【0099】
ここで図2Dを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム511を概略的に示す。システム511は、複数の不安定電力源503a、503b、503c、503d、及び503eを含む。システム511は、複数の電解槽スタック505a、505b、505c、505d、及び505eを含んでもよい。システム511は、制御デバイス519と、複数の制御ユニット517a、517b、517c、517d、及び517eと、複数のオプティマイザ509a、509b、509c、509d、及び509eと、を含んでもよい。不安定電力源503aは、電力源503aの出力電力を最大化するように構成されてもよい、制御デバイス507のオプティマイザ509aに機能的に接続されてもよい。同様に、不安定電力源503bはオプティマイザ509bに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503cはオプティマイザ509cに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503dはオプティマイザ509dに機能的に接続されてもよく、不安定電力源503eはオプティマイザ509eに機能的に接続されてもよい。オプティマイザ509a、509b、509c、509d、及び509eは、それらの間で直列に制御デバイス519の入力に電気的に接続されてもよい。電解槽スタック505aは、制御デバイス519の制御ユニット517aを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。同様に、電解槽スタック505bは制御デバイス519の制御ユニット517bを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505cは制御ユニット517cを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505dは制御ユニット517dを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよく、電解槽スタック505eは制御デバイス519の制御ユニット517eを介して複数の不安定電力源に機能的に接続されてもよい。制御ユニット517a、517b、517c、517d、及び517eは、それらの間で並列に制御デバイス519の出力に電気的に接続されてもよい。各オプティマイザは、その対応する不安定電力源を個別に制御して最大出力電力を提供してもよく、各制御ユニットは、その対応する電解槽スタックの電気的動作点を個別に制御して、複数の不安定電力源の出力電力を調節して、それを特定の電解槽スタックの電気的動作点に整合させてもよい。制御デバイス519は、コントローラ519a、スイッチ519b、電力バス519c、電力デバイス519d、センサ519e、急速電気エネルギー貯蔵デバイス519f、及び大容量電気エネルギー貯蔵デバイス519gを含んでもよい。
【0100】
ここで図2Eを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム521を概略的に示す。制御デバイスは、1つ以上の制御ユニット527を含んでもよい。制御ユニット527は、電解槽525を不安定電力源523に機能的に接続するように構成される。制御ユニット527は、制御回路531、スイッチング回路532、データ記憶リポジトリ533、1つ以上のエネルギー貯蔵デバイス534、センサ535、電力変換器536、及び通信回路537を備えてもよい。電力変換器536は、不安定電力源の出力電力の第1の部分を電解槽スタックの電気的動作点に変換するように構成されてもよい。制御回路531は、電気的動作点と、出力電力の第1の部分とを設定するように構成されてもよい。制御ユニット527は、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御して、電解槽の寿命を延ばすように構成されてもよく、少なくとも1つの動作パラメータは、電解槽スタックの電気的動作点を含む。センサ535は、不安定電力源の出力電力を感知し、感知された電力を制御回路531のコントローラに報告するように構成されてもよい。センサ535は、温度、気圧、流量、電流、電圧、及び補助機器(ポンプ、熱交換器、コンプレッサなど)への電力を感知するように構成されてもよい。
【0101】
制御デバイスは、電解槽の動作温度、電解質又は水の流量、並びに水素及び/又は酸素の圧力などの電解槽の動作パラメータを測定するように構成された1つ以上のセンサを含んでもよい。好適なセンサの非限定的な例としては、熱電対、赤外線センサ、薄膜熱センサ、流量計、圧力変換器、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。センサを使用して、前述した追加の動作パラメータを制御してもよい。制御デバイスは、水サイクル及び/又は熱交換器などの動作パラメータを制御するための手段を含んでもよい。
【0102】
制御デバイスは、限定はしないが、電圧、電流、内部セル抵抗又はインピーダンス、電解質の温度、電解質の導電率、電解質の化学組成、及びそれらの任意の組合せなどの電解槽のSOH関連パラメータを測定するように構成された少なくとも1つのデバイスを含んでもよい。好適なデバイスの非限定的な例としては、熱電対、赤外線センサ、薄膜熱センサ、ポテンシオスタット、電流計、PEMストリップと組み合わせたダイナミック水素電極(DHE)、水素基準電極(HRE)、固体電解質接続、フッ化物選択電極、及びこれらの任意の組合せが挙げられる。
【0103】
ここで図2Fを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム540を概略的に示す。水電解システム540は、電力源541の出力541a及び541bと、電解槽スタック542の入力542a及び542bとの間に直列にインピーダンス回路543を含んでもよい。インピーダンス回路543は、比較器、オペアンプ、インダクタ、抵抗器、コンデンサなどの能動及び受動素子を含んでもよい。インピーダンス回路543は、例えば、スイッチに対して直列に接続された1つ以上のインダクタを使用することなどにより、電解槽スタック542が受け取る電流の変化に制限を設けるように構成されてもよく、この場合、電解槽の電圧に基づいて異なるインピーダンスが接続される。
【0104】
ここで図2Gを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による水電解システム550を概略的に示す。水電解システム550は、電力源551の出力551a及び551bと、電解槽スタック552の入力552a及び552bとの間に直列にインピーダンス回路553を含んでもよい。インピーダンス回路553は、比較器、オペアンプ、インダクタ、抵抗器、コンデンサなどの能動及び受動素子を含んでもよい。インピーダンス回路553は、例えば、スイッチに対して直列に接続された1つ以上のインダクタを使用することなどにより、電解槽スタック552が受け取る電流の変化に制限を設けるように構成されてもよく、この場合、電解槽の電圧に基づいて異なるインピーダンスが接続される。
【0105】
不安定電力源に結合された電解槽を動作させる方法が開示される。本方法は、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御して、電解槽の寿命を延ばすことを含み、少なくとも1つの動作パラメータは電解槽の電気的動作点を含み、本方法は、不安定電力源の出力電力を調節して、それを電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。
【0106】
ここで図3Aを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽を動作させるための例示的な方法600のステップを概略的に示す。ステップ601は、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点と比較することを含む。出力電力は、実際に測定された電力又は予測された電力であり得る。電気的動作点は、所定の値に基づいてもよい。
【0107】
ステップ601において不安定電力源の出力電力が電気的動作点よりも高い場合、出力電力が電気的動作点よりも大幅に高いかどうかを評価することを含むステップ603が実施されてもよい。ステップ603において出力電力が電気的動作点よりも大幅に高くない場合、ステップ605及び/又は607が実施されてもよい。ステップ605は、DC-DC変換器を使用して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。ステップ607は、余剰電力を貯蔵するために急速充電エネルギー貯蔵デバイスを充電して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。ステップ603において出力電力が電気的動作点よりも大幅に高い場合、大容量エネルギー貯蔵デバイスを使用して余剰電力を貯蔵して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させてもよい(ステップ609a)。余剰出力電力は、電気グリッド(ステップ609b)及び負荷(ステップ609c)のうちの少なくとも1つに供給されてもよい。余剰電力の量以外のパラメータも使用して、DC-DC変換器、急速充電エネルギー貯蔵デバイス、大容量エネルギー貯蔵デバイス、電気グリッド、及び負荷のうちの1つ以上の中から選択してもよい。
【0108】
ステップ601において不安定電力源の出力電力が電気的動作点よりも低い場合、ステップ611又は613が実施されてもよい。ステップ611は、電解槽をシャットダウンすることを含む。電解槽は、特定の期間にわたってシャットダウンされてもよい。ステップ613は、追加電力を引き出して、出力電力を電気的動作点に整合させることを含む。不安定電力源及び電解槽のオングリッド/オフグリッド場所(on-grid/off-grid location)、並びに/又は容量及びグリッド電力コストに応じて、追加電力が、大容量エネルギー貯蔵デバイスによって供給されてもよく(ステップ615a)、又は電気グリッドから引き出されてもよい(ステップ615b)。ステップ611又はステップ613の選択も、同じ考慮事項に基づいて行われてもよい。例えば、追加電力の量が多く、グリッド電力が高価な場合、ステップ611(例えば、電解槽を一定期間にわたってシャットダウンすること)が実施されてもよい。追加電力の量が少なく、グリッド電力が高価な場合、ステップ613及び615aが選択されてもよく、追加電力は大容量エネルギー貯蔵デバイスによって供給される。追加電力の量が多く、グリッド電力が安価な場合、ステップ613及び615bが実施されてもよく、追加電力は電気グリッドから引き出される。
【0109】
出力電力を電気的動作点に整合させることは、電解槽の動作電流又は電圧、動作電圧又は動作電流を変更する速度、動作電圧又は動作電流の波形のタイプ、波形のデューティサイクル、及び波形の周波数のうちの1つ以上を制御することを含んでもよいことが強調されるべきである。したがって、ステップ601は、不安定電力源の出力電力を評価して、上記の動作パラメータのうちの1つ以上が満たされ得るかどうかをチェックすることを含んでもよい。
【0110】
ここで図3Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽を動作させるための例示的な方法700のステップを概略的に示す。ステップ701は、電解槽のSOHパラメータを測定して、その電気的動作点を確立することを含む。ステップ702は、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点と比較することを含む。出力電力は、実際に測定された電力又は予測された電力であり得る。
【0111】
ステップ702において不安定電力源の出力電力が電気的動作点よりも高い場合、出力電力が電気的動作点よりも大幅に高いかどうかを評価することを含むステップ703が実施されてもよい。ステップ703において出力電力が電気的動作点よりも大幅に高くない場合、ステップ705及び/又は707が実施されてもよい。ステップ705は、DC-DC変換器を使用して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。ステップ707は、余剰電力を貯蔵するために急速充電エネルギー貯蔵デバイスを充電して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。ステップ703において出力電力が電気的動作点よりも大幅に高い場合、大容量エネルギー貯蔵デバイスを使用して余剰電力を貯蔵して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させてもよい(ステップ709a)。余剰出力電力は、電気グリッド(ステップ709b)及び負荷(ステップ709c)のうちの少なくとも1つに供給されてもよい。
【0112】
ステップ702において不安定電力源の出力電力が電気的動作点よりも低い場合、SOH関連パラメータを評価することを含むステップ710が実施される。電解槽のSOHが悪いと見なされる場合、電解槽をシャットダウンすることを含むステップ711が実施されてもよい。電解槽のSOHが良好であると見なされる場合、ステップ713が実施されてもよく、これは追加電力を引き出して出力電力を電気的動作点に整合させることを含む。追加電力は、大容量エネルギー貯蔵デバイスにより供給されてもよく(ステップ715a)、又は電気グリッドから引き出されてもよい(ステップ715b)。
【0113】
ここで図3Cを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、複数の不安定電力源に結合された複数の電解槽スタックを動作させるための例示的な方法800のステップを概略的に示す。ステップ801は、各電解槽スタックのSOHパラメータを測定して、その電気的動作点を確立することを含む。いくつかのスタックの測定されたSOH関連パラメータが、ステップ802における臨界値を下回る場合、これらのスタックをシャットダウンすることを含むステップ802aが実施される。SOHが臨界値を下回るスタックは、0ワット(又は0アンペア/cmの電流密度)の電気的動作点を有すると見なすことができる。
【0114】
ステップ803は、複数の不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点と比較することを含む。複数の不安定電力源は、直列及び/又は並列に電気的に接続されてもよい。出力電力は、複数の不安定電力源の実際に測定した電力であってもよく、又は予測された電力であってもよい。
【0115】
ステップ803において、複数の不安定電力源の出力電力が(SOH関連パラメータが臨界値を上回るスタックについての)総電気的動作点よりも高い場合、複数の不安定電力源の出力電力が複数の電解槽スタックの総電気的動作点よりも大幅に高いかどうかを評価することを含むステップ804が実施されてもよい。ステップ804において出力電力が電気的動作点よりも大幅に高くない場合、ステップ805及び/又は807が実施されてもよい。ステップ805は、DC-DC変換器を使用して、不安定電力源の出力電力を電解槽の電気的動作点に整合させることを含む。ステップ807は、余剰電力を貯蔵するために急速充電エネルギー貯蔵デバイスを充電して、複数の不安定電力源の出力電力を複数の電解槽スタックの総電気的動作点に整合させることを含む。ステップ804において、出力電力が電気的動作点よりも大幅に高い場合、1つ以上の大容量エネルギー貯蔵デバイスを使用して余剰電力を貯蔵し、複数の不安定電力源の出力電力を複数の電解槽スタックの総電気的動作点に整合させてもよい(ステップ809a)。余剰出力電力は、電気グリッド(ステップ809b)及び負荷(ステップ809c)のうちの少なくとも1つに供給されてもよい。
【0116】
ステップ803において、複数の不安定電力源の出力電力が総電気的動作点よりも低い場合、異なる電解槽スタックのSOH関連パラメータを比較することを含むステップ810が実施される。この比較に応じて、ステップ811又は813が実施されてもよい。ステップ811は、劣ったSOHを有する1つ以上の電解槽スタックをシャットダウンすることを含む。例えば、ある電解槽スタックのSOHが臨界値を上回り、出力電力が総電気的動作点よりも高い場合、本方法は、調整された出力パウダーを不安定電力源から当該スタックに送達すること(例えば、電解槽スタックを動作させること)を含む。しかしながら、出力電力が総電気的動作点よりも低い場合、本方法は、劣ったSOHを有する電解槽スタックをシャットダウンし、調整された出力電力をより良好なSOHを有するスタックのみに供給することを含んでもよい(ステップ813)。不十分な出力電力は、大容量エネルギー貯蔵デバイスから追加電力を引き出すことによって補われてもよく(ステップ815a)、又は電気グリッドから引き出されてもよい(ステップ815b)。出力電力調整に続いて、ステップ817にて、電力が残りの電解槽スタック間で分割されてもよく、各電解槽の動作パラメータ、例えば、動作電圧若しくは電流、動作電圧若しくは動作電流の変化率 動作電圧若しくは動作電流の波形のタイプ、波形のデューティサイクル、又は波形の周波数が、測定されたSOH関連パラメータに基づいて設定される。本明細書で使用される場合、動作パラメータの変化率は、その動作パラメータの時間に対する一次導関数であり、一次変化率と称される場合がある。本明細書で使用される場合、動作パラメータの二次変化率は、その動作パラメータの時間に対する二次導関数であり、動作パラメータの加速度と称される場合がある。
【0117】
電解槽の動作の制御中に、動作パラメータが変更されてもよい。一般に、例えば始動、シャットダウン、又は生産レベル変更の際など、電解槽の動作パラメータが第1の状態から第2の状態に変更される場合、電圧又は電流などの動作パラメータが変更される。例えば、水素発生速度の増加、ライフタイム水素発生量の増加、耐用寿命の増加、保守間隔の減少、平均故障間隔の減少、及び信頼性の増加のために、電解槽の動作を改善するために、センサを使用して電解槽の動作パラメータを監視して、性能を低下させ得る電解槽への電気化学的ストレスを防止してもよい。電気化学的ストレスは、動作パラメータの変更に応答した遅れ又は時間遅延と相関することがあり、動作パラメータを監視し、遅延に関連する値を計算することにより、遅延を減少させる遷移を記録し、電解槽を動作させることができる。例えば、電流制御変換器が、電解槽の1つの状態から別の状態への遷移に電流変更を適用する場合、電流変更を制御して、寿命を延長すること又は水素発生を最大化することなどの動作目標に到達することができる。これらは「許容変更(permitted change)」と称される場合があり、電解槽の寿命にわたって動作を改善するために使用できる。本明細書で使用される場合、用語「IV値」は、電解槽の動作パラメータ又は状態の変化を制御するために使用される電流値又は電圧値を指す。用語「IV値」、「動作パラメータ」、「動作条件」、「電気的動作点」、及び「動作点」は、所与の時間における電解槽の動作制御の少なくともいくつかの値を指す場合があり、「IV値変更」、「許容変更」は、ある期間にわたる電解槽の動作制御の値の時間発展を指す場合がある。電解槽の動作制御は、電解槽電圧、電解槽電流(電圧及び電流が電力を定義する)、補助機器の動作(電圧、電流、又は電力)、圧力、温度、流量などを含んでもよい。本明細書に記載されるデバイス、方法、及びシステムは、電解槽を動作させるために使用されるこれら動作制御のいずれに適用されてもよいが、電解槽電圧及び電流が特に注目される。これら技術及びデバイスは、他の動作制御(例えば、補助機器の動作、つまり電圧、電流、又は電力、圧力、温度、流量など)のいずれにも使用できることが理解される。
【0118】
本明細書で使用される場合、電解槽動作「状態」は、特定の電気的動作点設定又は設定点を意味する。電解槽動作状態は、全定格電力又は電圧の5パーセントから全定格電力又は電圧までの生産率を伴う水素生産状態の範囲を含んでもよい。場合によっては、過電力範囲は、保守、動作、又は最適な寿命管理のために有益であり得る。コールドスタートは、コールド状態から動作状態への遷移を記述する。ホットスタートは、補助機器(例えば、ヒータ、コンプレッサ)を使用して電解槽を予熱及び加圧する、動作状態への最適なターンオン遷移を記述する。開回路電圧(open circuit voltage、OCV)状態は、低発熱量(lower heating value、LHV)-OCV状態及び高発熱量(higher heating value、HHV)状態に基づき得る。
【0119】
これら状態間の遷移、又は動作状態の範囲内での遷移は、最小の電気化学的劣化で各遷移を実施するために、いくつかの部分を含んでもよい。例えば、供給電流のスルーレートを加速して、電流に対する電圧遅延が最小となるようにすることにより、電流制御電解槽は、僅かな劣化で第1の状態から第2の状態に遷移できる。次いで、スルーレートは、電解槽の許容変更の較正を行うなど、動作に入る前に実施される試運転期間中に決定された閾値未満に留めることにより、劣化を最小限に抑えるように選択できる。いったん電流及び電圧が遷移の目標状態に揃うと、電気的動作点に達する前に電流の減速が実施されてもよい。加速度、スルーレート、及び減速度は、滑らかで連続的な遷移を可能にする値及び数式を使用して定義できる。ある状態から別の状態への滑らかな遷移を確実にするためには、制御パラメータ(例えば、電圧、電流、又は電力)の遷移は連続的であり、1次微分は連続的である。加えて、スルーレート閾値(第1微分)及び加速度閾値(第2微分)は、動作パラメータ遅延を最小限に抑えるため、試運転中に決定されてもよい。例えば、遷移中、動作パラメータ遅延は、式(5)の数式などの指数的関係に従う、電流に対する電圧の遅延としてモデル化できる:
【0120】
【数1】
遅延の他に、動作パラメータドリフトが、電解槽の動作中に及び寿命全体にわたって現れる場合がある。アノード層又はカソード層の長期劣化に関連し得るこれらドリフトを、線形モデルを使用して定量化できる。
【0121】
以下の図面は、本明細書で説明される滑らかな状態遷移の方法を実装できるデバイス及び方法の例示的な開示を示す。
【0122】
ここで図4Aを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更を試験するための方法900のステップを概略的に示す。ステップ901のように、電流又は電圧(IV)変更などの動作パラメータ変更、例えばプロセッサから送信されたコマンド又はメッセージが受け取られる。ステップ902のように、電解槽の初期状態が取得され記録される。ステップ903のように、IV変更は電解槽に適用され、結果として生じる電解槽の応答は、センサを使用して監視される。センサは、電解槽の第2のパラメータ、例えば、電圧、電流、温度、電力、補助デバイス(例えば、電解槽を加熱又は冷却するために使用されるデバイス)への電力、圧力、水流、及び水素発生、を監視してもよい。ステップ904のように、監視される第2のパラメータを使用して、時間に対する、例えば数秒又は数分にわたる、第2のパラメータの応答の形で、遅延が計算される。例えば、第2のパラメータは、1秒~60分間にわたって、又はその間の任意の部分範囲にわたって監視される。監視は、第2のパラメータの応答が線形になるまで継続される。ステップ905のように、第2のパラメータの遅延が閾値と比較され、遅延が許容範囲内である場合、ステップ906のように、初期状態及び遷移が許容変更として記憶される。遅延が許容範囲内にない場合、ステップ907のように、初期状態及び減少された変更が記憶され、方法900の将来の反復において試験される。
【0123】
方法900の繰り返し反復は、複数の初期状態に対して実施され、許容変更が、本明細書で説明されるように遅延を計算することにより見つけられ、許容変更。許容される動作パラメータ変更の記録を使用して、電解槽を制御することができ、許容される動作パラメータ変更は、試運転中の較正と同様に、必要に応じて監視及び更新されてもよい。
【0124】
ここで図4Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の無遅延の動作パラメータ変更を使用するための方法920のステップを概略的に示す。ステップ921のように、第1の状態から第2の状態への遷移のコマンド又は要求が受け取られる。922のように、動作パラメータを監視するように構成されたセンサから値を受け取ることにより、電解槽の初期状態が取得され、初期状態及び要求された遷移に基づいて最終状態が推定される。ステップ923のように、初期状態と最終状態との間の範囲における許容変更が取得される。ステップ924のように、許容変更に基づいて、区分的に平滑化されたIV変更が計算される。ステップ925のように、より滑らかなIV変更が電解槽に適用され、センサを使用して動作パラメータが監視される。ステップ926のように、遅延が計算され、ステップ927のように、遅延は閾値と比較される。ステップ928のように、遅延が閾値に適合する場合、成功した遷移がログに記憶される。遅延が閾値に適合しない場合、ステップ929のように、許容IV変更は減少され、初期状態、及び減少されたIV変更が閾値への適合性について試験されていないというフラグと共に、許容変更に記憶される。この初期状態から、この遷移が次に要求された場合、減少された変更が適用されてもよく、図4Aの方法900のように遅延が再び計算されてもよい。
【0125】
ここで図4Cを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作状態遷移を実装するための方法940のステップを概略的に示す。ステップ941のように、例えば、所与の予測された電力利用可能性の制約下で複数の電解槽の動作を変化させるために、制御デバイスの高位論理関数(higher logical function)により、初期状態から最終状態への遷移の要求が決定されてもよい。ステップ942のように、制御されている特定の電解槽の状態機械に従って、初期状態と最終状態との間の中間状態がチェックされる。中間状態が存在しない場合、ステップ943bのように、単一ステップ遷移が実施される。中間状態が存在する場合、各中間状態について、ステップ943aのように、許容変更がデータ記憶リポジトリから取得され、ステップ944のように、遷移にわたる各状態変化の間で平滑化されたIV変更が計算される。ステップ945のように、全てのステップについての平滑化されたIV変更が組み合わされて、完全な変更プロセスになり、ステップ946のように、完全な変更プロセスが電解槽に適用される。
【0126】
ここで図5Aを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の2つの状態S1とS2との間における動作パラメータ変更の時間に対するプロット1004を概略的に示す。例えば、プロット1004は、方法900及び920に従って決定されてもよい。電解槽の初期動作状態S1と最終動作状態S2との間の遷移中に、電流又は電圧制御における平滑化された変更は、3つの期間、すなわち期間1001、期間1002、及び期間1003を有し得る。期間1001中(時間1001aまで)に、IV曲線1004のスルーレート1006は、変更の開始時のゼロから期間1001の終了時のスルーレート値1006vまで増加し得る。スルーレート値1006vは、閾値スルーレート値1006tよりも低く、電解槽の劣化減少の恩恵を受けることができる。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に線形に増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に放物線関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に円関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に楕円関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間にシグモイド関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間にロジスティック関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間にスプライン関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に双曲線関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に多項式関数に従って増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に指数関数的に増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、領域1001の間に二次関数的に増加してもよい。例えば、スルーレート1006は、単調増加に従って増加してもよい。これは、状態S1からスルーレート値1006vへの滑らかな遷移を確実にし、これが期間1002全体にわたって(時間1002aまで)維持され得る。第3の期間1003の間、スルーレートは再びゼロに向かって低下し、その結果、電解槽は時間1003aにおいて新しいIVパラメータ値1008を有する状態S2になる。
【0127】
動作パラメータ曲線を平滑化して3次スプライン関数などのスプライン関数にする場合、本明細書で説明するように、連続的な値変化、変化率閾値、及び2次微分閾値を伴う、最初の状態から最後の状態への変化を提供する、値変化の開始及び終了に関する速度、並びに制御点に関する制約が使用されてもよい。
【0128】
時間に対する加速度(2次微分)の絶対値のプロット1007が、加速度の閾値1007tを下回る1007vの値に達し得る。加速度を1007t未満に制限することにより、電解槽の劣化を更に減少させることができる。
【0129】
ここで図5Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の状態S11、S12、S13及びS14の間における動作パラメータ変更プロセス適用のプロット1010を概略的に示す。例えば、プロット1004は、方法900、920、及び940に従って決定されてもよい。状態S11から状態S14への遷移の要求が、許容変更においてチェックされ、その間に中間ステップS12及びS13があると判定された場合、IV変更は、7つの期間1011、1012、1013、1014、1015、1016、及び1017を含み得る。期間1001の間、スルーレートは、ゼロから、時間T1及びIV値P1で開始する期間1012の許容されるスルーレートまで増加し得る。期間1012の間、IV値は、時間T2においてP2に増加し、状態S2は、期間1013中に通過し、スルーレートは、時間T3においてIV値P3で開始する期間1014の間に、許容されるスルーレートに減少する。この例では、期間1014中の許容されるスルーレートは、期間1012中よりも低いが、他の例では、他の例示的な状態間で、異なる許容されたスルーレート及び許容された加速度値を示してもよく、いくつかの変更はスルーレートを増加させ、いくつかは減少させる。時間T4において、IV値はP4であり、スルーレートは、期間1015中に時間T5におけるIV値P5までに増加する。状態S13は、期間1015中に通過する。他の例では、遅れは、許容変更によって決定される場合、特定の状態で実装されてもよい。スルーレートが期間1016中に許容されるスルーレートに達すると、IV値は増加して時間T6においてP6になる。期間1017中、スルーレートは減少して時間T7及びIV値P7においてゼロになり、電解槽は状態S14になる。上述したように、スルーレートの変更は、連続的かつ単調に増加する異なる関数に従ってもよい。IV値又はスルーレートにおける不連続性は、電解槽の劣化を増加させ得る。
【0130】
ここで図6Aを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の、時間に対する第1の動作パラメータ変更1101の第1の遅延の計算を概略的に示す。この例では、プロット1101の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1102とプロット1101の値との間の面積として測定され、1102の値から1101の値を減算することにより測定できる。この例では、この面積1103の値は0.130ボルト秒(volt-seconds)である。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき、電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度など)、及び1.4ボルトの開始電圧であった。
【0131】
ここで図6Bを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の第2の動作パラメータ変更1111の第2の遅延の計算を概略的に示す。この例では、プロット1111の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1112とプロット1111の値との間の面積として測定され、1112の値から1111の値を減算することにより測定できる。この例では、この面積1113の値は0.0224ボルト秒である。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき、電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度など)、及び1.55ボルトの開始電圧であった。
【0132】
ここで図6Cを参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の第3の動作パラメータ変更1121の第3の遅延の計算を概略的に示す。この例では、プロット1121の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1122とプロット1121の値との間の面積として測定され、1122の値から1121の値を減算することにより測定できる。この例では、この面積1123の値は0.0140ボルト秒である。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度など)、及び1.68ボルトの開始電圧であった。
【0133】
ここで図7を参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、ホットスタートからの不安定電力源に結合された電解槽の第4の動作パラメータ変更1130の遅延の計算を概略的に示す。この例では、電解槽は、期間1131、1132、及び1133中に、いくつかの異なる動作パラメータを経る。期間1131の間、プロット1130は時間1131aまで漸近的に増加する。期間1132の間、プロット1130は、時間1132aまで指数関数的に増加する。期間1133の間、プロット1130は、遷移が完了するまで漸近的に増加する。図6A図6Cの例のように、プロット1130の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1132とプロット1130の値との間の面積として測定され、1132の値から1130の値を減算することにより測定できる。この例では、この面積1133の値は13.5ボルト秒である。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき、電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度なと)、及びゼロボルトの開始電圧(ホットスタート)であった。例えば、(ステップ関数の代わりに)図5Bのプロットが電流波形として電解槽に適用された場合、電解槽の電圧の応答は同様の形状を有し、非常に小さい遅延を示すことになる。電圧を電流に揃え、フィッティングし、それらの間の距離を測定することにより、遅延を2つの曲線間の面積として計算することができる。電圧を電流に対してプロットすることにより、線形相関は遅延がないことを示すが、プロットが線形性から離れるほど遅延は大きくなる。IVプロットの線形性の測定値を使用して、遅延を計算することができ、より線形性の強い電流変更プロファイルが、電解槽に、より小さいストレスを生成することになる。
【0134】
ここで図8を参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の、動作パラメータ変更減少(シャットオフ)1141の遅延の計算を概略的に示す。図6A図7の例のように、プロット1141の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1143とプロット1141の値との間の面積1142として測定され、1143の値から1141の値を減算することにより測定できる。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき、電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度など)、及び1.845ボルトの開始電圧であった。
【0135】
ここで図9を参照すると、この図面は、本発明のいくつかの実施形態による、不安定電力源に結合された電解槽の動作パラメータ変更の遅延の計算を、新品時1151及び長期使用後1161について概略的に示す。図6A図8の例のように、プロット1151又は1161の終了部分に対して線形相関が実施される。遅延は、相関の外挿されたトレンドライン1153又は1163と、プロット1141又は1161の値との間の面積1152又は1162として測定され、1153又は1163の値から1151又は1161の値を減算することにより測定できる。遅延を示すためにステップ関数を用いて電流を増加させたとき、電解槽の初期状態は、標準的な動作パラメータ(例えば、圧力、温度など)であり、開始電圧は、1151については1.48ボルト、1161については1.72ボルトであった。プロット1151及び1161を、以下の双指数(biexponential)関数にフィッティングさせ:
【0136】
【数2】
得られたパラメータを表1に示す。
【0137】
【表1】
ここで、y0は式(6)におけるモデルのy切片であり、A1及びt1は第1指数のパラメータであり、A2及びt2は第2指数のパラメータである。パラメータt2は、高速指数関数的上昇の時定数を反映する。プロット1151は、新しいサイクル中のより小さい遅延を示すより速い時定数(より低いt2値)でフィッティングされ、プロット1161は、長期間使用後のより大きい遅延(より高いt2値)を示すフィッティングである。プロット1151と、1151の後半にフィッティングされた線形モデルとの間の面積1152は、0.63ボルト秒の面積を有する。プロット1161と、1161の後半にフィッティングされた線形モデルとの間の面積1162は、1.15ボルト秒の面積を有し、プロット1151に対してより大きい遅延を示す。
【0138】
同様に、遅延を計算する他の例が、指数をプロット1101、1111、1121、又は1131のいずれかにフィッティングし、時定数をメトリックとして使用することにより実施できる。同様に、遅延を計算する別の例が、2つの指数の和をプロット1101、1111、1121、又は1131のいずれかにフィッティングし、遅延の値として2つの時定数のうちのより速い方(より低い値)を使用することによるものであってもよい。同様に、遅延を計算する別の例が、初期サブ期間後から始めて(例えば、総IV変更時間の1~10パーセント後に始めて)プロット1101、1111、1121、又は1131のいずれかに線をフィッティングすることと、遅延の値としての線形フィッティングの最良部分(goodness)とによるものであってもよい。同様に、遅延を計算する別の例が、初期サブ期間後から始めて(例えば、総IV変更時間の1~10パーセント後に始めて)プロット1101、1111、1121、又は1131のいずれかにn次多項式関数をフィッティングすることと、遅延の値としての線形フィッティングの最良部分とによるものであってもよい。遅延の値が電解槽ストレスの増加と共に増加する場合、許容されるIV変更の遅延値は閾値を下回るであろう。遅延の値が電解槽ストレスの増加と共に減少する場合、許容されるIV変更の遅延値は閾値を上回るであろう。
【0139】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、別段の明確な指示がない限り、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「エネルギー貯蔵デバイス」への言及は、複数のそのようなエネルギー貯蔵デバイス及び当業者に知られているその等価物などを含む。用語「及び」又は用語「又は」は、別段の明確な指示がない限り、一般に「及び/又は」を含む意味で使用されることに留意され得る。
【0140】
本明細書で使用される場合、用語「複数」は、2つ以上を意味する。
【0141】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、量、持続時間などの測定可能な値を指す場合、指定された値から±10%、より好ましくは±5%、更により好ましくは±1%、更により好ましくは±0.1%の変動を包含することを意図しているが、その理由は、開示される方法を実施するにはそのような変動が適切だからである。
【0142】
以下は、本開示の条項である。
条項1.
不安定電力源と、
電解槽と、
制御デバイスと、を備えるシステムであって、
電解槽は、制御デバイスを介して不安定電力源に機能的に接続され、
制御デバイスは、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成され、少なくとも1つの動作パラメータは、電解槽に供給される電流、電圧、及び入力電力のうちの少なくとも1つを含み、電流、電圧、及び入力電力の各々は、電解槽の動作状態に対するそれぞれの許容範囲内にあり、制御デバイスは、不安定電力源の出力電力を調節して、電解槽に供給される入力電力に整合させる、システム。
条項2.制御デバイスは、
コントローラと、
不安定電力源の出力電力の第1の部分を変換し、第1の部分を電解槽に供給するように構成された電力変換器と、
不安定電力源の出力電力を感知するように構成されたセンサと、を更に備え、
コントローラは、
センサのセンサ値を監視し、
センサ値及び許容範囲に従って、第1の部分の電圧又は電流を設定するように構成される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項3.システムは、電気グリッド及び負荷のうちの少なくとも1つに機能的に接続される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項4.制御デバイスは、エネルギー貯蔵デバイスを備える、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項5.エネルギー貯蔵デバイスは、少なくとも1つの急速充電エネルギー貯蔵デバイス及び少なくとも1つの大容量エネルギー貯蔵デバイスを備える、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項6.制御デバイスは、不安定電力源の出力電力が、電解槽への入力電力の許容範囲よりも高い場合に、不安定電力源の出力電力を、電解槽と、エネルギー貯蔵デバイス、電気グリッド、及び負荷のうちの少なくとも1つとの間で分割し、それにより出力電力を電解槽への入力電力に整合させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項7.制御デバイスは、不安定電力源の出力電力が電解槽への入力電力よりも低い場合に、不安定電力源の出力電力に加えて、エネルギー貯蔵デバイス及び電気グリッドのうちの少なくとも1つからの電解槽への電力の送達を促進し、それにより出力電力を電解槽への入力電力に整合させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項8.電解槽は、カソード、アノード、及びカソードとアノードとの間に配置された膜又はセパレータを備え、膜及びセパレータは、カソードをアノードから電気的に絶縁するように構成され、電解質又は水イオンが膜及びセパレータを通過することを可能にするように構成される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項9.少なくとも1つの動作パラメータは更に、電解槽の動作温度、電解質又は水の流量、水素及び/又は酸素の圧力、並びにそれらの任意の組合せからなる群から選択される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項10.少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、動作パラメータの所定の値に基づく、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項11.所定の値は、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との関連性を表すモデルから導出される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項12.所定の値は、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との関連性を表す測定データから導出される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項13.制御デバイスは、少なくとも1つの動作パラメータと電解槽寿命との間の相関を分析するように構成された機械学習アルゴリズムを含み、所定の値は、複数の電解槽の分析データから導出される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項14.少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、制御デバイスによる、電解槽の健康状態(SOH)関連パラメータのリアルタイム監視に基づく、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項15.SOH関連パラメータは、定電流動作時の電解槽電圧、定電位動作時の電解槽電流、内部セル抵抗又はインピーダンス、電解質の温度、電解質の導電率、電解質の化学組成、及びそれらの任意の組合せからなる群から選択される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項16.機械学習アルゴリズムは、少なくとも1つの動作パラメータと、複数の以前に動作させた電解槽のSOH関連パラメータとの間の相関を分析するように構成され、少なくとも1つの動作パラメータを制御することは、SOH関連パラメータの現在の値と、前述した相関の分析とに基づく、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項17.電解槽は、高分子電解質膜水電解槽、液体電解質電解槽、及び固体酸化物形電解セルからなる群から選択される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項18.電解槽は、プロトン交換膜水電解槽及びアニオン交換膜水電解槽から選択される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項19.不安定電力源は、光起電力(PV)電力源、太陽熱エネルギー(STE)電力源、風力電力源、潮力電力源、不安定な電気グリッド、及び波力電力源からなる群から選択される、関連する条項のいずれかに記載のシステム。
条項20.不安定電力源に結合された電解槽を動作させる方法であって、方法は、電解槽の少なくとも1つの動作パラメータを制御して電解槽の寿命を延ばすことを含み、少なくとも1つの動作パラメータは電解槽の動作状態を含み、方法は、不安定電力源の出力電力を調節して、電解槽への入力電力に整合させることを含む、方法。
条項21.
複数の不安定電力源と、
複数の電解槽スタックと、
制御デバイスと、を備えるシステムであって、
電解槽スタックの少なくとも一部は、制御デバイスを介して、対応する不安定電力源に機能的に接続され、制御デバイスは、複数の電解槽スタックの少なくとも1つの動作パラメータを制御するように構成され、少なくとも1つの動作パラメータは、複数の電解槽スタックに供給される電流、電圧、及び入力電力のうちの少なくとも1つを含み、電流、電圧、及び入力電力の各々が、複数の電解槽スタックの動作状態に対するそれぞれの許容範囲内にあり、制御デバイスは、複数の不安定電力源の出力電力を調節して、複数の電解槽スタックへの入力電力に整合させる、システム。
条項22.複数の電解槽スタック間で、複数の電解槽スタックへの入力電力のバランスをとって、複数の電解槽スタックが交換又は寿命状態に達することを可能にする、関連するいずれかの条項に記載のシステム。
条項23.複数の電解槽スタック間で、複数の電解槽スタックへの入力電力のバランスをとって、複数の電解槽スタックの総水素発生速度を増加させる、関連するいずれかの条項に記載のシステム。
条項24.複数の電解槽スタック間で、複数の電解槽スタックへの入力電力のバランスをとって、複数の電解槽スタックを増加された効率で動作させる、関連するいずれかの条項に記載のシステム。
条項25.複数の電解槽スタック間で、複数の電解槽スタックへの入力電力のバランスをとって、複数の電解槽スタックを増加された寿命で動作させる、関連するいずれかの条項に記載のシステム。
条項26.複数の電解槽スタックへの入力電力は、将来の出力電力の予測される利用可能性に基づいて制御される、関連するいずれかの条項に記載のシステム。
条項27.電解槽を不安定電力源に機能的に接続するための制御デバイスであって、制御デバイスは、
1つ以上のエネルギー貯蔵デバイスと、
コントローラと、
不安定電力源の出力電力を感知し、感知された電力をコントローラに報告するように構成されたセンサと、
不安定電力源の出力電力の第1の部分を電解槽スタックへの入力電力に変換するように構成された電力変換器であって、コントローラは、電解槽スタックの動作状態及び出力電力の第1の部分を設定するように構成された、電力変換器と、を備え、
制御デバイスは、電解槽スタックの少なくとも1つの動作パラメータ変更を制御するように構成される、制御デバイス。
条項28.コントローラは、電解槽の動作パラメータを連続的に変化させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載の制御デバイス。
条項29.コントローラは、電解槽の動作パラメータを、閾値変化率未満の変化率で変化させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載の制御デバイス。
条項30.コントローラは、電解槽の動作パラメータを、閾値二次変化率未満の二次変化率で変化させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載の制御デバイス。
条項31.コントローラは、電解槽の動作パラメータを滑らかに変化させるように構成される、関連する条項のいずれかに記載の制御デバイス。
条項32.
電解槽の動作パラメータの変更を実施する通知を受け取ることと、
電解槽の初期状態を取得して記憶することと、
変更を電解槽に適用することと、
電解槽の第2の動作パラメータを監視することと、
第2の動作パラメータの予想応答を反映する、監視対象の第2の動作パラメータの値を計算することと、
監視対象の第2の動作パラメータが予想応答に適合することを、値が示す場合に、初期状態及び変更を、許容変更テーブルに記憶することと、
監視対象の第2の動作パラメータが予想応答に適合しないことを、値が示す場合に、初期状態における第2の変更を減少させる通知を送信することと、を含む、方法。
条項33.
電解槽の動作パラメータの変更を実施する通知を受け取ることと、
電解槽の初期状態を取得することと、
変更及び初期状態に基づいて中間状態及び最終状態を推定することと、
中間状態及び最終状態の各状態について、
中間状態及び最終状態の各々について許容変更のテーブルを取得することと、
前の状態と次の状態との間の平滑化した変更を計算することと、
平滑化した変更を電解槽に適用することと、を含む、方法。
条項34.
電解槽の第2の動作パラメータを監視し、
第2の動作パラメータの予想応答を反映する、監視対象の第2の動作パラメータの値を計算し、
監視対象の第2の動作パラメータが予想応答に適合することを、値が示す場合に、初期状態及び変更を、許容変更テーブルに記憶し、
監視対象の第2の動作パラメータが予想応答に適合しないことを、値が示す場合に、初期状態における第2の変更を減少させる通知を送信する、動作を更に含む、関連する条項のいずれかに記載の方法。
条項35.不安定電力源に接続された電解槽を動作させるためのデバイスであって、デバイスは制御回路を備え、制御回路は、電解槽の動作パラメータに変更を適用するように構成され、変更は、動作パラメータ値の連続的な変更を含み、変更は、閾値変化率未満の変化率を含み、変更は、閾値二次変化率未満の二次変化率を含む、デバイス。
条項36.変化率は連続的である、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項37.制御回路は、コントローラ又はプロセッサと、制御回路に接続されたリポジトリとを備え、リポジトリは、電解槽に変更を適用するように構成されたコントローラ又はプロセッサ命令を含む、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項38.制御回路は、電解槽に変更を適用するように構成された能動素子及び受動素子を備える、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項39.制御回路は、電解槽に変更を適用するように構成された受動素子を含む、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項40.受動素子は、インダクタ又はコンデンサを含む、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項41.受動素子は、不安定電力源と電解槽との間で直列である、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項42.受動素子は、不安定電力源と電解槽との間で並列である、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項43.変更は電圧制御変更を含む、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項44.変更は電流制御変更を含む、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項45.変更は、少なくとも部分的に、線形関数、放物線関数、円関数、楕円関数、シグモイド関数、ロジスティック関数、双曲線関数、指数関数、スプライン関数、多項式関数、又は二次関数の少なくとも一部に従う、関連する条項のいずれかに記載のデバイス。
条項46.変更はステップを含み、ステップは、電力変換器のデジタルアナログ変換器及び増幅回路によって決定され、デバイスは、デジタルアナログ変換器と、増幅回路と、電力変換器とを備える、請求項35~45のいずれか一項に記載のデバイス。
【0143】
本発明を具体的に説明してきたが、当業者であれば、多くの変更及び修正を行うことができることを理解するであろう。したがって、本発明は、具体的に説明される例及び図面に限定されるものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲及び概念は、以下の特許請求の範囲を参照することによって、より容易に理解され得る。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図2F
図2G
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図7
図8
図9
【外国語明細書】