(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081657
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】新規IL-21プロドラッグおよびそれを使用する方法
(51)【国際特許分類】
C07K 14/54 20060101AFI20240611BHJP
C07K 14/715 20060101ALI20240611BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240611BHJP
C07K 7/00 20060101ALI20240611BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240611BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
C07K14/54
C07K14/715
C07K19/00
C07K7/00
C12N15/12 ZNA
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024033739
(22)【出願日】2024-03-06
(62)【分割の表示】P 2021503843の分割
【原出願日】2019-07-25
(31)【優先権主張番号】62/703,383
(32)【優先日】2018-07-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520347328
【氏名又は名称】アスクジーン・ファーマ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AskGene Pharma, Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【弁理士】
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】ユエフォン・ルゥ
(72)【発明者】
【氏名】ユィ・チュンシャオ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】IL-21プロドラッグおよびその製造方法および免疫系の刺激または癌もしくは感染症の処置のための、その使用方法を提供する。
【解決手段】ヒトIL-21アゴニストポリペプチド、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、該マスキング部分がヒトIL-21アゴニストポリペプチドに結合し、該ヒトIL-21アゴニストポリペプチドの生物学的活性を阻害し、該ヒトIL-21アゴニストポリペプチドが担体部分と融合しており、そして該マスキング部分がヒトIL-21アゴニストポリペプチドまたは担体部分に開裂可能ペプチドリンカーを介して融合している、プロドラッグを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチド、マスキング部分および担体部分を含むプロドラッグであって、ここで、
該マスキング部分がヒトIL-21アゴニストポリペプチドに結合し、該ヒトIL-21アゴニストポリペプチドの生物学的活性を阻害し、
該ヒトIL-21アゴニストポリペプチドが担体部分と融合しており、そして
該マスキング部分がヒトIL-21アゴニストポリペプチドまたは担体部分に開裂可能ペプチドリンカーを介して融合している、
プロドラッグ。
【請求項2】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドが配列番号1または配列番号1と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項3】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドがD18、Q19、E109およびK117から選択される位置に1以上の変異を含む(ナンバリングは配列番号1に従う)、請求項2に記載のプロドラッグ。
【請求項4】
IL-21アゴニストポリペプチドが配列番号2、3、4および5から選択されるアミノ酸配列を有する、請求項1に記載のプロドラッグ。
【請求項5】
マスキング部分がヒトIL-21受容体の細胞外ドメイン(ECD)またはその機能的アナログを含む、請求項1~4の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項6】
IL-21受容体がIL-21RαまたはIL-21Rγである、請求項5に記載のプロドラッグ。
【請求項7】
IL-21受容体ECDが配列番号6もしくは7または配列番号6もしくは7と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項6に記載のプロドラッグ。
【請求項8】
第二サイトカイン部分をさらに含む、請求項1~7の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項9】
第二サイトカイン部分が
(i) 配列番号8または配列番号8と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトIL-2アゴニストポリペプチド、
(ii)ヒトIL-7アゴニストポリペプチド、
(iii)ヒトIL-9アゴニストポリペプチド、
(iv)配列番号9または配列番号9と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトIL-15アゴニストポリペプチド、
(v)ヒトIL-15アゴニストポリペプチドおよびヒトIL-15受容体アルファスシドメインまたは
(vi)配列番号27または配列番号27と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を含むヒトCCL19ポリペプチド
である、請求項8に記載のプロドラッグ。
【請求項10】
第二サイトカイン部分に結合し、第二サイトカイン部分の生物学的活性を阻害する第二マスキング部分をさらに含み、ここで、第二マスキング部分は第二サイトカイン部分にまたは担体部分に開裂可能ペプチドリンカーを介して融合している、請求項8または9に記載のプロドラッグ。
【請求項11】
第二マスキング部分がIL-2受容体ベータサブユニットのECDまたはその機能的アナログ、IL-7受容体のECDまたはその機能的アナログおよびIL-9受容体のECDまたはその機能的アナログから選択される、請求項10に記載のプロドラッグ。
【請求項12】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドおよび/または第二サイトカイン部分が非開裂可能ペプチドリンカーを介して担体部分に融合している、請求項1~11の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項13】
非開裂可能ペプチドリンカーが配列番号29~33から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項12に記載のプロドラッグ。
【請求項14】
開裂可能ペプチドリンカーがウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーター(uPA)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)2またはMMP9の基質配列を含む、請求項1~13の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項15】
開裂可能ペプチドリンカーが(i)uPAおよびMMP2の両者、(ii)uPAおよびMMP9の両者または(iii)uPA、MMP2およびMMP9の基質配列を含む、請求項14に記載のプロドラッグ。
【請求項16】
開裂可能ペプチドリンカーが配列番号11~26から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項14に記載のプロドラッグ。
【請求項17】
開裂可能ペプチドリンカーが腫瘍部位またはその周囲環境に位置する1以上のプロテアーゼにより開裂可能であり、開裂が腫瘍部位または周囲環境でのプロドラッグの活性化をもたらす、請求項1~16の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項18】
担体部分がPEG分子、アルブミン、アルブミンフラグメント、抗体Fcドメインまたは抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項1~17の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項19】
担体部分がL234AおよびL235A(「LALA」)変異(EUナンバリング)を含む抗体Fcドメインまたは抗体である、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項20】
担体部がノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体Fcドメインまたは抗体であり、
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスキング部分が、抗体Fcドメインの異なるポリペプチド鎖または抗体の異なる重鎖に融合しており、そして所望により
第二サイトカイン部分および第二マスキング部分も、抗体Fcドメインの異なるポリペプチド鎖または抗体の異なる重鎖に融合している、
請求項18または19に記載のプロドラッグ。
【請求項21】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスキング部分がFcドメインの2つの異なるポリペプチド鎖のC末端または抗体の2つの異なる重鎖のC末端に融合している、請求項20に記載のプロドラッグ。
【請求項22】
ヒトIL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスキング部分がFcドメインの2つの異なるポリペプチド鎖のN末端または抗体の2つの異なる重鎖のN末端に融合している、請求項20に記載のプロドラッグ。
【請求項23】
第二サイトカイン部分および第二マスキング部分がヒトIL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスキング部分からのFcドメインの2つの異なるポリペプチド鎖の逆の末端または抗体の2つの異なる重鎖の逆の末端に融合している、請求項21および22に記載のプロドラッグ。
【請求項24】
ノブ・イントゥ・ホール変異がFcドメインのポリペプチド鎖または抗体の重鎖にT366Y「ノブ」変異およびFcドメインの他のポリペプチドまたは抗体の他の重鎖にY407T「ホール」変異(EUナンバリング)を含む、請求項20~23の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項25】
ノブ・イントゥ・ホール変異が「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349Cおよび/またはT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異(EUナンバリング)を含む、請求項20~23の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項26】
担体部分がグアニル酸シクラーゼC(GCC)、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、癌胎児性抗原(CEA)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、PD1、クローディン18.2、クローディン6、5T4、BCMA、PD-L1、PD-1、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPアルファ)、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)およびEPCAMから選択される1以上の抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである、請求項18~25の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項27】
該プロドラッグが、アミノ酸配列がそれぞれ
配列番号36および38、
配列番号37および38、
配列番号39および41、
配列番号40および41、
配列番号42および44、
配列番号43および44、
配列番号45および47または
配列番号46および47
を含む2つのポリペプチド鎖を含む、請求項20に記載のプロドラッグ。
【請求項28】
アミノ酸配列がそれぞれ配列番号48および49を含む2つの重鎖ポリペプチドおよび配列番号50または51を含む2つの軽鎖ポリペプチドを含む、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項29】
担体部分がFAPαまたは5T4に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントであり、所望により腫瘍壊死因子(TNF)リガンドファミリーメンバーまたは4-1BBリガンドまたはそのフラグメントの2つまたは3つのエクトドメインをさらに含む、請求項18に記載のプロドラッグ。
【請求項30】
請求項1~29の何れかに記載のプロドラッグおよび薬学的に許容される添加物を含む、医薬組成物。
【請求項31】
請求項1~29の何れかに記載のプロドラッグをコードするポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項31に記載のポリヌクレオチドを含む1以上の発現ベクター。
【請求項33】
請求項32に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項34】
uPA、MMP2および/またはMMP9をコードする遺伝子が宿主細胞でノックアウトされている、請求項33に記載の宿主細胞。
【請求項35】
請求項1~29の何れかに記載のプロドラッグを製造する方法であって、
請求項33または34に記載の宿主細胞(ここで、宿主細胞は哺乳動物細胞である)をプロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し、そして
プロドラッグを単離することを含む、
方法。
【請求項36】
処置を必要とする患者における癌もしくは感染症を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、患者に治療有効量の請求項30に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項37】
処置を必要とする患者における癌もしくは感染症の処置または免疫系の刺激に使用するための、請求項1~29の何れかに記載のプロドラッグ。
【請求項38】
処置を必要とする患者における癌もしくは感染症の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造における、請求項1~29の何れかに記載のプロドラッグの使用。
【請求項39】
患者がHIV、HBV、HCVまたはHPV感染;または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有する、請求項36に記載の方法、請求項37に記載の使用のためのプロドラッグまたは請求項38に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互援用
本出願は、2018年7月25日出願の米国仮出願62/703,383に基づく優先権を主張し、その内容を引用により全体として本明細書に包含させる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提供されている配列表を含む。配列表は引用により全体として本明細書に包含させる。2019年7月22日に作成したASCIIコピーは名称025471_WO003_SL.txtであり、サイズ189,683バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は、腫瘍部位で活性化可能である新規IL-21プロドラッグに関する。該新規プロドラッグの使用方法が本発明にさらに含まれる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
インターロイキン-21(IL-21)は、活性化CD4+ T細胞、T-濾胞性ヘルパー細胞およびナチュラルキラーT(NKT)細胞により産生される(Spolski and Leonard, Ann Rev Immunol. (2008) 26:57008)。IL-21は種々のクラスのリンパ系細胞の増殖、分化および細胞毒性に多面的効果を発揮することが示されている。より最近、IL-21は、CD4+ T細胞から、炎症状態および自己免疫疾患の発症と関連するT細胞のサブセットであるTヘルパー17(TH17)細胞への分化に重要な役割を有することがさらに示されている(Korn et al., Nature (2007) 448(7152):484-87; Nurieva et al., Nature (2007) 448(7152):480-83)。
【0005】
IL-21の受容体複合体は、固有鎖IL-21Rαと共通鎖γC(またはRγ)からなり、該共通鎖は5つの他のサイトカイン、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9およびIL-15と共有される(Spolski and Leonard, supra)。ヒトIL-21はIL-21Rαに極めて高い親和性で結合し(KD 約70pM; Zhang et al., Biochem Biophys Res Commun. (2003) 300(2):291-6)、一方IL-21Rγに比較的低い親和性で結合する(KD 約160μM)。
【0006】
組み換えIL-21は、固形腫瘍の処置についていくつかの臨床治験で試験されている(Zarkavelis et al., Transl Cancer Res. (2017) 6(Suppl 2):S328-30)。治験の一つで、最大耐容用量が200μg/kgで確立された(Schmidt et al., Clin Cancer Res. (2010) 16(21):5312-19)。それ故に、他のサイトカイン治療と同様、全身毒性はIL-21の治療投与量を重く制限し得る。さらに、IL-21は、その受容体IL-21Rαに極めて高い親和性で結合するため、インビボで「PKシンク」に遭遇し得る(Zhang et al., supra)。その結果、IL-21で患者における最適薬物動態(PK)および暴露の達成が困難であり得る。IL-21のアナログは米国特許8,211,420およびKan et al., J Biol Chem. (2010) 285(16):12223-31に記載されている。しかしながら、アナログの一部はγC結合親和性が選択的に低減され、IL-21アンタゴニストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
より腫瘍部位選択的であり、PKおよび有効性が改善し、同時に重篤な副作用を引き起こすことが少ない、IL-21ベースの癌治療を開発する必要性がまだある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、サイトカイン部分、マスキング部分および担体部分を含むIL-21プロドラッグであって、ここで、該サイトカイン部分がIL-21アゴニストポリペプチドであり、該マスキング部分がサイトカイン部分に結合して、サイトカイン部分の生物学的活性を阻害し(例えば、サイトカイン部分が標的細胞上のその受容体と結合するのを阻止するまたはサイトカイン部分の1以上の生物学的活性、例えば、T細胞およびNK細胞などの免疫細胞によるインターフェロン-γ分泌の刺激を低減する)、そして、該サイトカイン部分が担体部分に融合しており、そして該マスキング部分はサイトカイン部分にまたは担体部分に開裂可能ペプチドリンカーを介して融合している、プロドラッグを提供する。ある実施態様において、マスキング部分はIL-21受容体アルファ(IL-21Rα)細胞外ドメイン(ECD)またはその機能的アナログを含む。
【0009】
ある実施態様において、サイトカイン部分は、野生型ヒトIL-21またはそのムテイン、例えば、配列番号1または配列番号1と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含むものなどのヒトIL-21アゴニストポリペプチドである。ある実施態様において、ヒトIL-21アゴニストポリペプチドは、D18、Q19、E109およびK117(ナンバリングは配列番号1に従う)から選択される位置に1以上の変異を含む。特定の実施態様において、ヒトIL-21アゴニストポリペプチドは配列番号1、2、3、4および5から選択されるアミノ酸配列を含む。
【0010】
ある実施態様において、本プロドラッグのマスキング部分は、ヒトIL-21RαのECDまたはその機能的アナログを含む。さらなる実施態様において、マスキング部分は、(i)ペプチドリンカーを介して一緒に融合された2コピーのヒトIL-21RαのECDまたはその機能的アナログまたは(ii)ペプチドリンカーを介してヒトIL-21RγのECDまたはその機能的アナログに融合したヒトIL-2RβのECDまたはその機能的アナログを含む。ある実施態様において、ヒトIL-21RγのECDまたはその機能的アナログは、配列番号7または配列番号7と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含む。特定の実施態様において、ヒトIL-21RαのECDまたはその機能的アナログは、配列番号6または配列番号6と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含む。
【0011】
ある実施態様において、プロドラッグは、さらに第二サイトカイン部分に結合し、該第二サイトカイン部分の生物学的活性を阻害する第二マスキング部分を含み、ここで、該第二マスキング部分は該第二サイトカイン部分にまたは担体部分に開裂可能ペプチドリンカーを介して融合している。特定の実施態様において、第二マスキング部分はIL-2受容体ベータサブユニットのECDまたはその機能的アナログ、IL-7受容体のECDまたはその機能的アナログおよびIL-9受容体のECDまたはその機能的アナログから選択される。
【0012】
本プロドラッグのある実施態様において、サイトカイン部分は、配列番号29~33から選択されるような、非開裂可能ペプチドリンカーを介して担体部分に融合している。
【0013】
本プロドラッグのある実施態様において、マスキング部分を担体部分に直接的にまたは間接的に(例えば、サイトカイン部分を介して)結合させる開裂可能ペプチドリンカーは、ウロキナーゼ型プラスミノーゲンアクティベーター(uPA)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)2またはMMP9の基質配列を含む。さらなる実施態様において、開裂可能ペプチドリンカーは、(i)uPAおよびMMP2の両者、(ii)uPAおよびMMP9の両者または(iii)uPA、MMP2およびMMP9の基質配列を含む。特定の実施態様において、開裂可能ペプチドリンカーは、配列番号11~26から選択されるアミノ酸配列を含む。ある実施態様において、開裂可能ペプチドリンカーは腫瘍部位またはその周囲環境に位置する1以上のプロテアーゼにより開裂可能であり、開裂は腫瘍部位または周囲環境でのプロドラッグの活性化をもたらす。
【0014】
本プロドラッグのある実施態様において、担体部分は、PEG分子、脂肪酸鎖、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)またはそのフラグメント、抗体Fcドメインまたは抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の実施態様において、担体部分は、IgG1抗体Fcドメインまたは変異L234AおよびL235A(「LALA」)(EUナンバリング)を含む抗体または変異228P/L234A/L235A(PAA)を含むIgG4 Fcドメインである。Tam et al., Antibodies (2017) 6(12):1-34に記載されているようなFc機能性の低減に至る他の変異も、Fcドメインまたは抗体のFcを担体部分として使用するとき、導入し得る。
【0015】
特定の実施態様において、担体部分は、ノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体Fcドメインまたは抗体であり、ここで、サイトカイン部分およびマスキング部分は、抗体Fcドメインの異なるポリペプチド鎖または抗体の異なる重鎖に融合している。ある実施態様において、サイトカイン部分およびマスキング部分は、Fcドメインの2つの異なるポリペプチド鎖のC末端または抗体の2つの異なる重鎖のC末端に融合している。他の実施態様において、サイトカイン部分およびマスキング部分は、Fcドメインの2つの異なるポリペプチド鎖のN末端または抗体の2つの異なる重鎖のN末端に融合している。ある実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異は、Fcドメインのポリペプチド鎖または抗体の重鎖にT366Y「ノブ」変異およびFcドメインの他のポリペプチドまたは抗体の他の重鎖にY407T「ホール」変異(EUナンバリング)を含む。ある実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349Cおよび/またはT366W変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異(EUナンバリング)を含む。
【0016】
特定の実施態様において、プロドラッグは、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号36および38;配列番号37および38;配列番号39および41;配列番号40および41;配列番号42および44;配列番号43および44;配列番号45および47;または配列番号46および47を含む2つのポリペプチド鎖を含む。
【0017】
ある実施態様において、担体部分は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、癌胎児性抗原(CEA)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、PD1、クローディン18.2、クローディン6、5T4、BCMA、PD-L1、PD-1、線維芽細胞活性化タンパク質アルファ(FAPアルファ)、黒色腫関連コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(MCSP)および上皮細胞接着分子(EPCAM)から選択される1以上の抗原に特異的に結合する抗体またはその抗原結合フラグメントである。特定の実施態様において、担体部分は、FAPアルファまたは5T4に結合する抗体またはそのフラグメントである。
【0018】
特定の実施態様において、担体部分は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号48および配列番号49を含む2つの重鎖ポリペプチドを含む抗体であり、ここで、該抗体は配列番号50または51に示すアミノ酸配列を有する軽鎖ポリペプチド鎖を含む。
【0019】
ある実施態様において、プロドラッグは、TNFリガンドファミリーメンバーまたはそのフラグメントの2つまたは3つのエクトドメインまたは4-1BBリガンドまたはそのフラグメントの2つまたは3つのエクトドメインをさらに含む。
【0020】
ある実施態様において、プロドラッグは、次の(i)配列番号8または配列番号8と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含むヒトIL-2アゴニストポリペプチドまたは(ii)ヒトIL-7アゴニストポリペプチドまたは(iii)ヒトIL-9アゴニストポリペプチドまたは(iv)配列番号9または配列番号9と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含むヒトIL-15アゴニストポリペプチドまたは(v)ヒトIL-15アゴニストポリペプチドおよびIL-15受容体アルファスシドメインまたは(vi)配列番号27と少なくとも90%(例えば、少なくとも95パーセント、96パーセント、97パーセント、98パーセントまたは99パーセント)同一であるアミノ酸配列を含むCCL19ポリペプチドから選択される第二エフェクターポリペプチドをさらに含む。
【0021】
他の実施態様において、プロドラッグは、第二サイトカインアゴニストポリペプチドなどの第二エフェクターポリペプチドおよび所望によりこの第二エフェクターポリペプチドに結合する第二マスキング部分をさらに含む。このようなプロドラッグの例は、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号42および配列番号44を含む2つのポリペプチド鎖を含む。他の例は、プロドラッグが、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号43および配列番号44を含む2つのポリペプチド鎖を含むときである。他の例は、プロドラッグが、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号45および配列番号47を含む2つのポリペプチド鎖であるときである。さらに他の例は、プロドラッグが、アミノ酸配列がそれぞれ配列番号46および配列番号47を含む2つのポリペプチド鎖であるときである。
【0022】
他の態様において、本発明は、本プロドラッグをコードするポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含む発現ベクターおよび該発現ベクターを含む宿主細胞(例えば、CHO、NS0細胞および293T細胞などの哺乳動物宿主細胞)を提供する。本発明はまた、哺乳動物宿主細胞をプロドラッグの発現を可能とする条件下で培養し、該プロドラッグを単離することを含む、本プロドラッグの製造法も提供する。
【0023】
本発明はまた、処置を必要とする患者(例えば、ヒト患者)における癌もしくは感染症を処置するまたは免疫系を刺激する方法であって、該患者に治療有効量の本発明のIL-21プロドラッグまたは医薬組成物を投与することを含む、方法も提供する。患者は、例えば、ウイルス感染(例えば、HIV、HBV、HCVまたはHPV感染)または乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸直腸癌および胃癌からなる群から選択される癌を有し得る。ここでまた提供されるのは、本方法において癌もしくは感染症の処置または免疫系の刺激に使用するIL-21プロドラッグ;本方法において癌もしくは感染症の処置または免疫系の刺激のための医薬の製造におけるIl-21プロドラッグの使用;および1以上の投与単位の本Il-21プロドラッグを含む、製品(例えば、キット)である。
【0024】
本発明の他の特性、目的および利点は、次の詳細な記載から明らかである。しかしながら、詳細な記載は、本発明の実施態様および態様を示しているが、限定ではなく、説明のためのみに示すことは理解されるべきである。本発明の範囲内の種々の変化および修飾は、詳細な記載から当業者に明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、担体がFcドメインであるヘテロ二量体IL-21プロドラッグを示す。Fcドメインの2つの鎖はノブ・イントゥ・ホール変異を含む。
【0026】
【
図2】
図2は、担体がFcドメインにノブ・イントゥ・ホール変異を含む抗体である、四量体IL-21プロドラッグを示す。
【0027】
【
図3】
図3Aは、(i)IL-21ポリペプチドおよびその対応するマスクおよび(ii)IL-2ムテインおよびその対応するマスクを含むヘテロ二量体IL-21プロドラッグを示す。
図3Bは、(i)IL-21ポリペプチドおよびその対応するマスクおよび(ii)IL-15ポリペプチド、IL-15Rαスシドメインおよび対応するマスクを含むIL-21プロドラッグを含む。
【0028】
【
図4】
図4は、2つの4-1BBLエクトドメインを有するIL-21プロドラッグを示す。
【0029】
【
図5】
図5A~Cは、精製後のIL-21プロドラッグAのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)HPLC分析を示す。
【0030】
【
図6】
図6は、プロテアーゼマトリクスメタロプロテイナーゼ-2(MMP2)で活性化前および後のIL-21プロドラッグのSDS-PAGE分析を示す。プロドラッグAは野生型IL-21ポリペプチドを示し、一方プロドラッグBは変異Q19KおよびE109Rを有するIL-21ムテインを含む。
【0031】
【
図7】
図7Aおよび7Bは、プロテアーゼMMP2で活性化前および後のIL-21プロドラッグの細胞ベースの生物学的活性アッセイの結果を示す。
図7Aは野生型IL-21を含むIL-21プロドラッグAの結果を示す。
図7BはIL-21ムテインを含むIL-21プロドラッグBの結果を示す。
【0032】
【
図8】
図8は、プロテアーゼMMP2で活性化前および後のPD-1-IL-21プロドラッグの細胞ベースの生物学的活性アッセイの結果を示す。
【0033】
【
図9】
図9は、融合分子の抗PD-1抗体がPD-L1介在PD-1シグナル伝達を遮断する能力を評価するPD-1レポーターアッセイの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0034】
発明の詳細な記載
本明細書および添付する特許請求の範囲で使用する単数表現、「または」および「その」は、文脈に明らかに反しない限り、複数物を含む。
【0035】
ここでの値またはパラメータへの「約」の付加は、その値またはパラメータ自体を包含する変動を含む(および記載する)。例えば、「約X」なる記載は、「X」を含む。さらに、ある一連の数値の前の「約」の使用は、その一連の記載する数値の各々の「約」を含む。例えば、「約X、YまたはZ」なる記載は、「約X、約Yまたは約Z」を含むことを意図する。
【0036】
用語「抗原結合部分」は、抗原に特異的に結合する一つのポリペプチドまたは一組の相互作用するポリペプチドをいい、抗体(例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異的抗体、二重特異的または二特異的抗体、抗イディオタイプ抗体または二機能性ハイブリッド抗体)またはその抗原結合フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド架橋Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)または二重特異性抗体、一本鎖抗体およびイムノアドヘシンなどのFc含有ポリペプチド)を含むが、これらに限定されない。ある実施態様において、抗体はどの重鎖アイソタイプ(例えば、IgG、IgA、IgM、IgEまたはIgD)またはサブタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4)であってもよい。ある実施態様において、抗体はどの軽鎖アイソタイプ(例えば、カッパまたはラムダ)であってもよい。抗体はヒト、非ヒト(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヤギまたは他の非ヒト動物)、キメラ(例えば、非ヒト可変領域およびヒト定常領域を有する)またはヒト化(例えば、非ヒトCDRおよびヒトフレームワークおよび定常領域を有する)であり得る。ある実施態様において、抗体は誘導体化抗体である。
【0037】
用語「サイトカインアゴニストポリペプチド」は、野生型サイトカインまたはそのアナログをいう。野生型サイトカインのアナログは、野生型サイトカインと同じ生物学的特異性(例えば、同じ受容体に結合および同じ標的細胞を活性化)を有するが、アナログの活性レベルは野生型サイトカインのものと異なり得る。アナログは、例えば、野生型サイトカインのムテイン(すなわち、変異ポリペプチド)であってよく、野生型サイトカインに対して少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ、少なくとも7つ、少なくとも8つ、少なくとも9つまたは少なくとも10の変異を含み得る。
【0038】
用語「サイトカインアンタゴニスト」または「サイトカインマスク」は、サイトカインに結合し、それによりアンタゴニストまたはマスクに結合されている間、サイトカインが標的細胞表面のその受容体に結合するおよび/または生物学的機能を発揮するのを阻止する、部分(例えば、ポリペプチド)をいう。サイトカインアンタゴニストまたはマスクの例は、サイトカインと接触するサイトカインの天然受容体の細胞外ドメイン由来のポリペプチドを含むが、これに限定されない。
【0039】
用語「有効量」または「治療有効量」は、特定の障害、状態または疾患の処置(例えば、その症状の1以上の改善、軽減、低減および/または遅延)に十分な化合物または組成物の量をいう。癌などの疾患に対して、有効量は、癌の発症または進行を遅らせる(例えば、腫瘍増殖速度低減および/または腫瘍血管形成、転移または癌細胞の末梢臓器への浸潤遅延または予防)、類上皮細胞数を減少させる、癌を退縮させる(例えば、腫瘍の縮小または根絶)および/または癌発生または再発を予防または遅延させるのに十分な量であり得る。有効量を、1回以上で投与し得る。
【0040】
用語「機能的アナログ」は、対照分子と同じ生物学的特異性(例えば、同じリガンドに結合)および/または活性(例えば、標的細胞の活性化または阻害)を有する分子をいう。
【0041】
2つのポリペプチド配列に関する用語「融合」または「融合体」は、主鎖ペプチド結合を介する2つのポリペプチド配列の結合をいう。2つのポリペプチドは、直接的にまたは1以上のアミノ酸長であり得るペプチドリンカーを介して融合され得る。融合ポリペプチドは、間にペプチドリンカーのためのコード配列を伴いまたは伴わずに、2つの融合パートナーの各コード配列を含むコード配列から、組み換え操作により製造し得る。ある実施態様において、融合は化学的結合を含む。
【0042】
用語「薬学的に許容される添加物」は、組成物中の成分についていうとき、その添加物が、ヒト対象を含む対象の処置のために、該対象への過度の有害副作用なく、かつ活性医薬成分(API)の生物学的活性に影響することなく、投与するのに適するものを意味する。
【0043】
用語「プロドラッグ」は、インビボで活性化されるまで不活性である治療分子をいう。
【0044】
用語「対象」は哺乳動物をいい、ヒト、ペット(例えば、イヌまたはネコ)、農業用動物(例えば、ウシまたはウマ)、齧歯類または霊長類を含むが、これらに限定されない。
【0045】
ここで使用する「処置」または「処置する」は、有益なまたは所望の臨床的結果を得るための手段である。有益なまたは所望の臨床的結果は、次の、疾患に起因する1以上の症状の軽減、疾患の程度の低減、疾患状態の改善、疾患の安定化(例えば、疾患の悪化または進行の予防または遅延)、疾患拡散(例えば、転移)の予防または遅延、疾患再発の予防または遅延、疾患の部分的または完全寛解の提供、疾患の処置に必要な1以上の他の医薬の用量の減少、患者のクオリティ・オブ・ライフの改善および/または生存延長の1以上を含むが、これらに限定されない。本発明の方法は、処置のこれら態様の何れか1以上を意図する。
【0046】
ここに記載する種々の実施態様の一つ、いくつかまたは全ての性質を組み合わせて、本発明の他の実施態様を形成し得ることは理解される。以下で使用するセクションの表題は全体の構成説明のためのみものであり、それに続いて記載される事項を限定すると解釈されてはならない。
【0047】
IL-21プロドラッグ
本発明は、インビボで代謝されて活性IL-21治療剤となる、IL-21プロドラッグを提供する。IL-21プロドラッグは、先のIL-21治療剤と比較して、少ない副作用、良好なインビボPKプロファイル(例えば、長い半減期)および良好な標的特異性を有し、より効果的である。本IL-21プロドラッグは、担体部分に架橋し、IL-21アンタゴニスト(マスキング部分またはサイトカインマスク)によりマスク(結合)されたIL-21アゴニストポリペプチド(サイトカイン部分)を含む。例えば、IL-21Rαの細胞外ドメインであり得るIL-21アンタゴニストを、サイトカイン部分にまたは担体部分に開裂可能リンカー(例えば、開裂可能ペプチドリンカー)を介して架橋し得る。マスクは、マスクが結合している間、サイトカイン部分の生物学的機能を阻害する。プロドラッグは、リンカーの開裂と続くプロドラッグからのサイトカインマスクの遊離により患者の標的部位(例えば、腫瘍部位または周囲環境)で活性化され、先にマスクされていたサイトカイン部分が露出され、サイトカイン部分が標的細胞上のその受容体に結合し、標的細胞にその生物学的機能を発揮することができる。ある実施態様において、IL-21プロドラッグの担体は、標的部位の抗原に結合する、抗体などの抗原結合部分である。
【0048】
ある実施態様において、本IL-21プロドラッグは、体内の担体により標的とされる標的部位で代謝されて、活性となる。さらなる実施態様において、プロドラッグにおける担体は、IL-21プロドラッグが患者の腫瘍部位に送達され、サイトカインマスクを担体またはサイトカイン部分に結合するリンカーの開裂を介して局所的(例えば、腫瘍微小環境ないまたはその近辺)に代謝され、サイトカイン部分を標的細胞のその受容体と相互作用できるようにし、局所的に標的免疫細胞を刺激するように、腫瘍抗原を標的とする抗体である。
【0049】
A. プロドラッグのサイトカイン部分
IL-21プロドラッグはIL-21アゴニストポリペプチド(サイトカイン部分)、担体(担体部分)およびIL-21アンタゴニスト(マスキング部分)を含み得て、ここで、IL-21アゴニストポリペプチドは直接的にまたはリンカー(例えば、開裂可能または非開裂可能ペプチドリンカー)を介して担体と融合しており、IL-21アンタゴニストはIL-21アゴニストポリペプチドまたは担体に開裂可能ペプチドリンカーを介して架橋している。本IL-21プロドラッグにおいて、IL-21アゴニストポリペプチドは、野生型ヒトIL-21(例えば、配列番号1)などの野生型IL-21ポリペプチドまたはヒトIL-21由来の、例えば、配列番号2~5から選択されるアミノ酸配列を有するものなどのIL-21ムテインであり得る。IL-21ムテインは、野生型IL-21と比較して、IL-21RαまたはIL-21RαRγに対する顕著に減少した親和性を有し得る。ある実施態様において、IL-21ムテインは、高親和性IL-2Rαに対して、野生型IL-21と比較して、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍、300倍、500倍、1,000倍または10,000倍低い結合親和性を有する。特に断らない限り、ここに記載するIL-21およびIL-21ムテインにおける全ての残基番号は、配列番号1のナンバリングに従う。
【0050】
B. IL-21プロドラッグのマスキング部分
本プロドラッグにおけるIL-21アンタゴニスト、すなわち、マスキング部分は、プロドラッグのサイトカイン部分に結合し、サイトカイン部分をマスキングし、その生物学的機能を阻止する、ペプチドまたは抗体または抗体フラグメントであり得る。
【0051】
例として、IL-21アンタゴニストは、IL-21と結合し、IL-21のその受容体への結合を妨害し、マスクしている間、IL-21部分の生物学的活性を低減させる、ペプチドおよび抗体を含み得る。ある実施態様において、IL-21アンタゴニストは、ヒトIL-21RαまたはヒトIL-21Rγ由来のものなどのIL-21RαまたはIL-21Rγ細胞外ドメインまたはその機能的アナログ(例えば、配列番号6または7)を含む。ある実施態様において、IL-21アンタゴニストは、ペプチドライブラリーのスクリーニングにより同定されたペプチドを含む。ある実施態様において、IL-21アンタゴニストは、IL-21またはIL-21ムテインのIL-21受容体への結合を遮断する抗体またはそのフラグメントを含む。
【0052】
ある実施態様において、本プロドラッグにおけるIL-21アンタゴニストは、IL-21Rα細胞外ドメイン(ECD)である。本発明者らは、IL-21Rα ECDをプロテアーゼにより開裂したとき、IL-21Rα ECDに対するIL-21アゴニストポリペプチドの高結合親和性にも関わらず、IL-21アゴニストポリペプチドの細胞ベースの活性がほぼ完全に回復したことを驚くべきことに発見した。
【0053】
C. プロドラッグの担体部分
本IL-21プロドラッグの担体部分は、抗原結合部分または抗原結合部分ではない部分であり得る。担体部分は、サイトカインアゴニストポリペプチドの血清半減期などのPKプロファイルを改善し得て、またサイトカインアゴニストポリペプチドを、体内の腫瘍部位などの標的部位に向かわせ得る。
【0054】
1. 抗原結合担体部分
担体部分は、抗体またはその抗原結合フラグメントまたはイムノアドヘシンであり得る。ある実施態様において、抗原結合部分は、2つの重鎖および2つの軽鎖を有する完全長抗体、Fabフラグメント、Fab’フラグメント、F(ab’)2フラグメント、Fvフラグメント、ジスルフィド架橋Fvフラグメント、単一ドメイン抗体、ナノボディまたは一本鎖可変フラグメント(scFv)である。ある実施態様において、抗原結合部分は二特異的抗原結合部分であり、2つの異なる抗原または同じ抗原の2つの異なるエピトープに結合し得る。抗原結合部分は、サイトカインアゴニストポリペプチドに相加的および潜在的に相乗的治療有効性を提供し得る。
【0055】
IL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスクは、抗原結合部分の軽鎖および/または重鎖のN末端またはC末端に融合させ得る。例として、IL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスクは、抗体重鎖もしくはその抗原結合フラグメントまたは抗体軽鎖もしくはその抗原結合フラグメントに融合させ得る。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドの一端を、抗体の重鎖の一方または両方のC末端に融合させ、IL-21マスクを、開裂可能ペプチドリンカーを介してIL-21アゴニストポリペプチドの他の末端に融合させる。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドを、抗体の重鎖の一つのC末端に融合させ、IL-21マスクを開裂可能ペプチドリンカーを介して抗体の他の重鎖のC末端に融合させ、ここで、2つの重鎖は、該2つの異なる重鎖の特異的対形成を可能にする変異を含む。
【0056】
ヘテロ二量体を形成する戦略は周知である(例えば、Spies et al., Mol Imm. (2015) 67(2)(A):95-106参照)。例えば、プロドラッグにおける2つの重鎖ポリペプチドは、「ノブ・イントゥ・ホール」変異を介して安定なヘテロ二量体を形成し得る。「ノブ・イントゥ・ホール」変異は、抗体重鎖のヘテロ二量体形成を促進するためになされて、二特異的抗体の産生のために一般に使用される(例えば、米国特許8,642,745参照)。例えば、抗体のFcドメインは、「ノブ鎖」のCH3ドメインにT366W変異を含み、「ホール鎖」のCH3ドメインにT366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。CH3ドメイン間のさらなる鎖間ジスルフィド架橋も、例えば、「ノブ鎖」のCH3ドメインにY349C変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにE356CまたはS354C変異を導入することにより、使用できる(例えば、Merchant et al., Nature Biotech (1998) 16:677-81参照)。他の実施態様において、抗体部分は、2つのCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにE356C、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を含み得る。ある実施態様において、抗体部分は、2つのCH3ドメインの一方にY349Cおよび/またはT366W変異および他方のCH3ドメインにS354C(またはE356C)、T366S、L368Aおよび/またはY407V変異を、一方のCH3ドメインにさらなるY349C変異および他方のCH3ドメインにさらなるE356CまたはS354C変異と共に含んでよく、鎖間ジスルフィド架橋を形成する(ナンバリングは常にKabatのEUインデックスによる;Kabat et al., “Sequences of Proteins of Immunological Interest,” 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。EP1870459A1に記載されているような他のノブ・イントゥ・ホールテクノロジーをこれとは別にまたはこれに加えて使用し得る。それ故に、抗体部分のノブ・イントゥ・ホール変異の他の例は、「ノブ鎖」のCH3ドメインにR409D/K370E変異および「ホール鎖」のCH3ドメインにD399K/E357K変異を有する(EUナンバリング)。
【0057】
ある実施態様において、プロドラッグの抗体部分は、そのFcドメインにL234AおよびL235A(「LALA」)変異を含む。LALA変異は、補体結合および固定ならびにFcγ依存的ADCCを排除する(例えば、Hezareh et al. J. Virol. (2001) 75(24):12161-8参照)。さらなる実施態様において、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えて、LALA変異が抗体部分に存在する。
【0058】
ある実施態様において、抗体部分は、FcドメインにM252Y/S254T/T256E(「YTE」)変異を含む。YTE変異は、血清半減期、組織分布およびIgG1の活性の同時調節を可能とする(Dall’Acqua et al., J Biol Chem. (2006) 281:23514-24; and Robbie et al., Antimicrob Agents Chemother. (2013) 57(12):6147-53参照)。さらなる実施態様において、YTE変異が、ノブ・イントゥ・ホール変異に加えて抗体部分に存在する。特定の実施態様において、抗体部分は、YTE、LALAおよびノブ・イントゥ・ホール変異またはこれらの何らかの組み合わせを含む。
【0059】
抗原結合部分は、免疫細胞、例えば、T細胞、NK細胞およびマクロファージなどの細胞の表面の抗原に結合するかまたはサイトカインに結合することができる。例えば、抗原結合部分はPD-1、LAG-3、TIM-3、TIGIT、CTLA-4またはTGF-ベータに結合でき、抗体であり得る。抗体は、免疫細胞を活性化し、その抗癌活性を増強する能力を有し得る。
【0060】
抗原結合部分は、腫瘍細胞の表面の抗原に結合し得る。例えば、抗原結合部分はFAPアルファ、5T4、Trop-2、PD-L1、HER-2、EGFR、クローディン18.2、DLL-3、GCP3または癌胎児性抗原(CEA)に結合でき、抗体であり得る。抗体はADCC活性を有しても、有していなくてもよい。抗体はまた細胞毒性薬物にさらにコンジュゲートし得る。
【0061】
ある実施態様において、抗原結合部分は、グアニル酸シクラーゼC(GCC)、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、クローディン18.2、クローディン6、BCMAまたはEPCAMに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3の上皮細胞増殖因子(EGF)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、DLL3のデルタ/Serrate/Lag2(DSL)様ドメインに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分は、GPC3の374番目のアミノ酸の後ろに位置するエピトープに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分はGPC3のヘパリン硫酸グリカンに結合する。ある実施態様において、抗原結合部分はクローディン18.2に結合し、クローディン18.1に結合しない。ある実施態様において、抗原結合部分は、クローディン18.2より少なくとも10倍弱い結合親和性でクローディン18.1に結合する。
【0062】
抗原結合部分の例は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598およびその抗原結合フラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブまたはパニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントと少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントの抗体重鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体重鎖を有する。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33(またはそのヒト化バージョン)、抗EGFR抗体mAb806(またはそのヒト化バージョン)、抗dPNAG抗体F598またはそのフラグメントの抗体軽鎖と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有する抗体軽鎖を有する。抗原結合部分はIL-2アゴニストポリペプチドに融合される。ある実施態様において、抗原結合部分は、トラスツズマブ、リツキシマブ、ブレンツキシマブ、セツキシマブ、パニツムマブ、GC33、抗EGFR抗体mAb806または抗dPNAG抗体F598の6つの相補性決定領域(CDR)を含む。
【0063】
多数のCDR線引き(delineation)が当分野で知られ、ここに包含させる。当業者は、重鎖または軽鎖可変領域の配列に基づき、ある線引きのCDRを容易に決定できる。「Kabat」CDRは配列変動性に基づくものであり、最も一般に使用される(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))。「Chothia」CDRは、構造ループの位置をいう(Chothia & Lesk, J. Mol. Biol. (1987) 196:901-917)。「AbM」CDRは、Kabat CDRとChothiaのループ構造の妥協であり、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアにより使用される。「Contact」CDRは、入手可能な複合体結晶構造の分析に基づく。これらCDRの各々からの残基を、一般的抗体ナンバリングスキームを引用して、下の表1に示す。ここで特に断らない限り、抗体のアミノ酸番号は、CDR線引きがKabat、Chothia、AbMまたはContactスキームを引用してなされたときを含み、Kabat et al., supraに記載のKabatナンバリングスキームをいう。このナンバリングシステムを使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのフレームワーク領域(FR)またはCDRの短縮または挿入に応じて、アミノ酸を少なくまたは多く含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後ろに一アミノ酸挿入(Kabatにより残基52a)および重鎖FR残基82の後ろに挿入残基(例えば、Kabatにより残基82a、82bおよび82cなど)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、ある抗体について、該抗体の配列と「標準」Kabat番号付配列の相同性の領域のアラインメントにより決定され得る。
【表1】
【0064】
ある実施態様において、CDRは「伸長CDR」であり、異なるスキームにより開始または終結する領域を含む。例えば、伸長CDR次のとおりであり得る。L24-L36、L26-L34またはL26-L36(VL-CDR1);L46-L52、L46-L56またはL50-L55(VL-CDR2);L91-L97(VL-CDR3);H47-H55、H47-H65、H50-H55、H53-H58またはH53-H65(VH-CDR2);および/またはH93-H102(VH-CDR3)。
【0065】
ある実施態様において、抗原結合部分はHER2に結合し、配列番号52と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号53と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号52からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号53からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0066】
ある実施態様において、抗原結合部分はCD20に結合し、配列番号54と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号55と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号54からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号55からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0067】
ある実施態様において、抗原結合部分はCD30に結合し、配列番号56と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号57と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号56からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号57からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0068】
ある実施態様において、抗原結合部分はEGFRに結合し、配列番号58もしくは60と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号59もしくは61と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは配列番号58および59からのCDR1、CDR2およびCDR3または配列番号60および61からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0069】
ある実施態様において、抗原結合部分はc-METに結合し、配列番号62と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号63と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号62からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号63からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0070】
ある実施態様において、抗原結合部分はGPC3に結合し、配列番号64と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号65と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号64からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号65からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0071】
ある実施態様において、抗原結合部分はクローディン18.2に結合し、配列番号66と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号67と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号66からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号67からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0072】
ある実施態様において、抗原結合部分はFAPアルファに結合し、配列番号80もしくは81と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号82と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは配列番号80または81からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号82からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0073】
ある実施態様において、抗原結合はFAPアルファに結合し、配列番号83と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインおよび配列番号84と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号84からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号84からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0074】
ある実施態様において、抗原結合部分はPDL1に結合し、配列番号89と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号90と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号89からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号90からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0075】
ある実施態様において、抗原結合部分は5T4に結合し、配列番号87もしくは88と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインおよび配列番号85もしくは86と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインまたはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号87または88からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号85または86からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0076】
ある実施態様において、抗原結合部分はTrop-2に結合し、KASQDVSIAVA(配列番号68)のアミノ酸配列を含むCDR1、SASYRYT(配列番号69)のアミノ酸配列を含むCDR2およびQQHYITPLT(配列番号70)のアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域;およびNYGMN(配列番号71)のアミノ酸配列を含むCDR1、WINTYTGEPTYTDDFKG(配列番号72)のアミノ酸配列を含むCDR2およびGGFGSSYWYFDV(配列番号73)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域を含む。
【0077】
ある実施態様において、抗原結合部分はメソテリンに結合し、SASSSVSYMH(配列番号74)のアミノ酸配列を含むCDR1、DTSKLAS(配列番号75)のアミノ酸配列を含むCDR2およびQQWSGYPLT(配列番号76)のアミノ酸配列を含むCDRを含む軽鎖可変領域;およびGYTMN(配列番号77)のアミノ酸配列を含むCDR1、LITPYNGASSYNQKFRG(配列番号78)のアミノ酸配列を含むCDR2およびGGYDGRGFDY(配列番号79)のアミノ酸配列を含むCDRを含む重鎖可変領域を含む。
【0078】
ある実施態様において、抗原結合部分はPD-1に結合し、配列番号50と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号91と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号50からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号91からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0079】
ある実施態様において、抗原結合部分はPD-1に結合し、配列番号92と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する軽鎖またはそのフラグメントおよび配列番号93と少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%同一性を有するアミノ酸配列を有する重鎖またはそのフラグメントを含む。ある実施態様において、抗原結合ドメインは、配列番号92からのCDR1、CDR2およびCDR3および配列番号93からのCDR1、CDR2およびCDR3を含む。
【0080】
ある実施態様において、抗原結合部分は1つ、2つまたは3つの抗原結合ドメインを含む。例えば、抗原結合部分は二特異的であり、HER2、HER3、EGFR、5T4、FAPアルファ、Trop-2、GPC3、VEGFR2、クローディン18.2およびPD-L1からなる群から選択される2つの異なる抗原に結合する。ある実施態様において、該二特異的抗原結合部分は、HER2の2つの異なるエピトープに結合する。
【0081】
2. 他の担体部分
他の非抗原結合担体部分を本プロドラッグで使用し得る。例えば、抗体Fcドメイン(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4 Fc)、ポリマー(例えば、PEG)、アルブミン(例えば、ヒトアルブミン)またはそのフラグメントまたはナノ粒子が使用され得る。
【0082】
例として、IL-21アゴニストポリペプチドおよびそのアンタゴニストを抗体Fcドメインに融合させて、Fc融合タンパク質を形成し得る。ある実施態様において、IL-21アゴニストポリペプチドを、Fcドメインポリペプチド鎖の一方のC末端またはN末端に融合(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)させ、サイトカインマスクを開裂可能ペプチドリンカーを介して他のFcドメインポリペプチド鎖の対応するC末端またはN末端に融合させ、ここで、2つのFcドメインポリペプチド鎖は、2つの異なるFc鎖の特異的対形成を可能とする変異を含む。ある実施態様において、Fcドメインは、上記ノブ・イントゥ・ホール変異を含む。さらなる実施態様において、Fcドメインは、上記YTEおよび/またはLALA変異も含み得る。
【0083】
プロドラッグの担体部分は、アルブミン(例えば、ヒト血清アルブミン)またはそのフラグメントを含み得る。ある実施態様において、担体部分は、約10以上、20以上、30以上、40以上、50以上、60以上、70以上、80以上、90以上、100以上、120以上、140以上、160以上、180以上、200以上、250以上、300以上、350以上、400以上、450以上、500以上または550以上のアミノ酸長であるアルブミンフラグメント(例えば、ヒト血清アルブミンフラグメント)を含む。ある実施態様において、アルブミンフラグメントは約10アミノ酸~約584アミノ酸長(例えば約10~約20、約20~約40、約40~約80、約80~約160、約160~約250、約250~約350、約350~約450または約450~約550アミノ酸長)である。ある実施態様において、アルブミンフラグメントはSudlow IドメインまたはそのフラグメントまたはSudlow IIドメインまたはそのフラグメントを含む。
【0084】
D. プロドラッグのリンカー成分
IL-21アゴニストポリペプチドを、ペプチドリンカーを用いてまたは用いずに担体部分に融合させ得る。ペプチドリンカーは開裂不可能であり得る。ある実施態様において、ペプチドリンカーは配列番号29~33から選択される。特定の実施態様において、ペプチドリンカーは、アミノ酸配列GGGGSGGGGSGGGGS(配列番号31)を含む。
【0085】
IL-21マスクサイトカイン部分または担体に開裂可能リンカーを介して融合させ得る。開裂可能リンカーは1以上の(例えば、2つまたは3つの)開裂可能部分(CM)を含み得る。各CMは、レグマイン、プラスミン、TMPRSS-3/4、MMP2、MMP9、MT1-MMP、カテプシン、カスパーゼ、ヒト好中球エラスターゼ、ベータ-セクレターゼ、uPAおよびPSAから選択される酵素またはプロテアーゼの基質であり得る。開裂可能リンカーの例は、配列番号11~26から選択されるアミノ酸配列を含むものを含むが、これらに限定されない。例として、開裂可能ペプチドリンカーを使用して、IL-21Rγ ECDをIL-21 Rα-サブユニットECDに結合させる。好ましくは、一方のIL-21Rα-サブユニットECDを他方のα-サブユニットECDに結合させて、二量体を形成する開裂可能ペプチドリンカーがある。
【0086】
E. さらなるエフェクターポリペプチドを有するIL-21プロドラッグ
特定の実施態様において、IL-21プロドラッグは、第二サイトカイン部分などの第二エフェクターポリペプチドをさらに含む。このような場合、プロドラッグは、第二エフェクターポリペプチドに結合し、生物学的活性を阻害する第二マスキング部分をさらに含み得る。
【0087】
例として、IL-21アゴニストポリペプチドおよびそのマスクを、Fcドメインの一端の別のFc鎖に融合させ得て、一方第二サイトカイン部分およびそのマスクを、Fcドメインの他端で別のFc鎖と融合させ得て、ここで、マスクは、開裂可能ペプチドリンカーを介してFc鎖に融合される。ある実施態様において、2つのFcドメインポリペプチド鎖は、2つの異なるFc鎖の特異的対形成を可能とする変異を含む。
【0088】
2つのエフェクターポリペプチドおよび2つのマスキング部分を含むプロドラッグは、アミノ酸配列がそれぞれ(i)配列番号42および44;(ii)配列番号43および44;(iii)配列番号45および47;または(iv)配列番号46および47を含む2つのポリペプチド鎖を含むものを含む。IL-2アゴニストポリペプチド(第二エフェクターポリペプチド)およびその対応するマスクを含むIL-21プロドラッグの構造の例を
図3Aに示す。IL-15アゴニストポリペプチド、スシドメインおよびその対応するマスクを含むIL-21プロドラッグの構造の例を
図3Bに示す。
【0089】
ある実施態様において、IL-21プロドラッグは、腫瘍壊死因子(TNF)スーパーファミリーメンバーのリガンドのエクトドメインの1以上の(例えば、2つまたは3つの)コピーをさらに含む。ある実施態様において、TNFスーパーファミリーメンバーは4-1BBである。2コピーの4-1BBリガンド(4-1BBL)エクトドメインをさらに含む例示的IL-21プロドラッグの構造を
図4に示す。IL-21プロドラッグの担体は、腫瘍で発現される抗原、例えば、FAPまたは5T4に結合する抗体である。
【0090】
IL-21アゴニストポリペプチド、サイトカインマスク、担体、ペプチドリンカーおよびプロドラッグの特定の、非限定的例を、下の配列セクションに示す。さらに、本発明のプロドラッグは、周知の組み換えテクノロジーにより製造され得る。例えば、プロドラッグのポリペプチド鎖のコード配列を含む1以上の発現ベクターを哺乳動物宿主細胞(例えば、CHO細胞)にトランスフェクトし、該細胞を該コード配列の発現を可能とする条件下で培養し、発現されたポリペプチドをプロドラッグ複合体に組み立て得る。プロドラッグを不活性に維持するために、uPA、MMP2および/またはMMP9を全くまたはほとんど発現しない宿主細胞を使用し得る。ある実施態様において、宿主細胞は、これらプロテアーゼをコードする遺伝子のヌル変異(ノックアウト)を含み得る。
【0091】
医薬組成物
本発明のプロドラッグおよびムテイン(すなわち、活性医薬成分またはAPI)を含む医薬組成物を、凍結乾燥製剤または水溶液の形態の所望の程度の純度を有するAPIと1以上の任意の薬学的に許容される添加物(例えば、 Remington's Pharmaceutical Sciences, 16th Edition., Osol, A. Ed. (1980)参照)の混合により製造し得る。薬学的に許容される添加物(または担体)は、一般に用いる投与量および濃度で対象に非毒性であり、例えば、リン酸、クエン酸、コハク酸、ヒスチジン、酢酸または他の無機または有機酸またはその塩を含む緩衝液;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;ヘキサメトニウムクロライド;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンなどのアミノ酸;スクロース、グルコース、マンノースまたはデキストリンを含む単糖、二糖および他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成カウンターイオン;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);および/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含むが、これらに限定されない。
【0092】
緩衝液は、特に、安定性がpH依存的であるならば、治療有効性を最適化する範囲内にpHを制御するために使用される。緩衝液は、好ましくは約50mM~約250mMの範囲の濃度で存在する。本発明で使用する適当な緩衝剤は、クエン酸、リン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、グルコン酸、シュウ酸、乳酸および酢酸などの有機および無機両方の酸およびその塩を含む。さらに、緩衝液は、ヒスチジンおよびTrisのようなトリメチルアミン塩を含み得る。
【0093】
防腐剤は微生物の増殖を抑えるために加え、一般に0.2%~1.0%(w/v)の範囲で存在する。本発明で使用するのに適当な防腐剤は、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロライド;塩化ヘキサメトニウム;ベンザルコニウムハロゲン化物(例えば、クロライド、ブロマイド、アイオダイド)、塩化ベンゼトニウム;チメロサール、フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール、3-ペンタノールおよびm-クレゾールを含む。
【0094】
張性剤は、「安定化剤」としても知られることもあり、組成物の液体の張性を調節または維持するために使用される。タンパク質および抗体などの大型の、荷電生体分子と使用するとき、アミノ酸側鎖の荷電基と相互作用し、それにより分子間および分子内相互作用の可能性を低減できるため、「安定化剤」と称されることがある。張性剤は、他の成分の相対量を考慮して、0.1%~25重量%以上、好ましくは1%~5重量%の任意の量で存在し得る。好ましい張性剤は、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトールおよびマンニトールなどの多価糖アルコール、好ましくは三価またはそれ以上の糖アルコールを含む。
【0095】
非イオン性界面活性剤または洗剤(「湿潤剤」としても知られる)は、治療剤の溶解を助けるためおよび治療タンパク質を撹拌誘発凝集から保護するために存在し、これはまた製剤が活性治療タンパク質または抗体の変性を起こすことなくせん断表面応力に曝されることも可能とする。非イオン性界面活性剤は、約0.05mg/ml~約1.0mg/ml、好ましくは約0.07mg/ml~約0.2mg/mlの範囲で存在する。
【0096】
適当な非イオン性界面活性剤は、ポリソルベート(20、40、60、65、80など)、ポリオキサマー(184、188など)、PLURONIC(登録商標)ポリオール、TRITON(登録商標)、ポリオキシエチレンソルビタンモノエーテル(TWEEN(登録商標)-20、TWEEN(登録商標)-80など)、ラウロマクロゴール400、ポリオキシル40ステアレート、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、50および60、モノステアリン酸グリセロール、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースを含む。使用できるイオン性洗浄剤は、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルソジウムスルホサクシネートおよびジオクチルナトリウムスルホネートを含む。カチオン性洗浄剤は、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウムを含む。
【0097】
医薬担体、添加物または希釈剤の選択は、意図する投与経路および標準的製剤作業に基づいて選択され得る。医薬組成物は、さらに任意の適当な結合剤、流動化剤、懸濁化剤、コーティング剤または可溶化剤を含み得る。
【0098】
送達系が異なれば、異なる組成物/製剤要件が存在し得る。例として、本発明において有用な医薬組成物は、ミニポンプを使用してまたは粘膜経路により、例えば、経鼻スプレーまたは吸入用エアロゾルまたは摂取可能溶液としてまたは組成物が、例えば、静脈内、筋肉内または皮下経路により送達されるための注射用形態に製剤される非経腸で投与されるように製剤され得る。
【0099】
ある実施態様において、本発明の医薬組成物は凍結乾燥タンパク質製剤である。他の実施態様において、医薬組成物は水性液体製剤であり得る。
【0100】
処置方法
IL-21プロドラッグを、抗原結合ドメインにより結合される抗原によって、疾患の処置に使用し得る。ある実施態様において、IL-21プロドラッグを癌の処置に使用する。ある実施態様において、IL-21プロドラッグを感染症の処置に使用する。
【0101】
ある実施態様において、対象における疾患(例えば癌、寄生虫感染症、ウイルス感染症または細菌感染症)を処置する方法であって、該対象に有効量のIL-21プロドラッグを投与することを含む、方法が提供される。
【0102】
ある実施態様において、癌は固形癌である。ある実施態様において、癌は血液癌または固形腫瘍である。処置され得る癌の例は、白血病、リンパ腫、腎臓癌、膀胱癌、尿路癌、頸部癌、脳癌、頭頸部癌、皮膚癌、子宮癌、精巣癌、食道癌、肝臓癌、結腸直腸癌、胃癌、扁平上皮細胞癌腫、前立腺癌、膵臓癌、非小細胞肺癌のような肺癌、胆管細胞癌、乳癌および卵巣癌を含むが、これらに限定されない。
【0103】
ある実施態様において、IL-21プロドラッグを、ウイルス感染症の処置に使用する。ある実施態様において、ウイルス感染症を引き起こすウイルスは、C型肝炎ウイルス(HCV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)またはヒトパピローマウイルス(HPV)である。ある実施態様において、抗原結合部分はウイルス抗原に結合する。
【0104】
ある実施態様において、IL-21プロドラッグを、敗血症などの細菌感染の処置に使用する。ある実施態様において、細菌感染症を引き起こす細菌は薬物耐性細菌である。ある実施態様において、抗原結合部分は細菌抗原に結合する。
【0105】
一般に、本医薬組成物の投与量および投与経路は、標準的実務に従って、対象の体格および状態に従って、決定される。ある実施態様において、医薬組成物を、経口、経皮、吸入、静脈内、動脈内、筋肉内、創傷部位への直接適用、手術部位への適用、腹腔内、坐薬、皮下、皮内、経皮、噴霧療法、胸膜内、脳室内、関節内、眼内、頭蓋内または髄腔内を含むあらゆる経路により対象に投与する。ある実施態様において、組成物を対象に静脈内投与する。
【0106】
ある実施態様において、医薬組成物の投与量は一用量または反復用量である。ある実施態様において、対象に1日1回、1日2回、1日3回または1日4回またはそれ以上投与する。ある実施態様において、1週間以内に約1回以上(例えば約2回、3回、4回、5回、6回または7回以上)投与する。ある実施態様において、医薬組成物を毎週、2週に1回、3週に1回、4週に1回、3週中2週について毎週または4週中3週について毎週投与する。ある実施態様において、複数用量を数日、数週、数か月または数年にわたり与える。ある実施態様において、一連の処置は約1以上の用量(例えば約2、3、4、5、7、10、15または20以上の用量)である。
【0107】
本明細書で特に断らない限り、本発明と関連して使用する科学的および技術的用語は、当業者に一般に理解されている意味を有する。例示的方法および材料を下に記載するが、ここに記載するものに類似するまたは等価の方法および材料も本発明の実施または試験に際して使用できる。矛盾があるときは、本明細書に含まれる定義が支配する。一般に、ここに記載する、細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医化学および薬化学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションと関連しておよびその化学と関連して使用する命名法は周知のものであり、当分野で一般に使用される。酵素反応および精製技術は、当分野で一般に実行されるとおりまたはここに記載するとおり、製造業者の仕様に従い実施される。さらに、文脈から他の解釈が必要でない限り、単数表現は複数を含み、複数表現は単数を含む。本明細書および実施態様をとおして、用語「有する」および「含む」または「有し」、「有して」、「含み」または「含んで」などのその変形は、記載する整数または整数群を含むと解釈されるが、他のあらゆる整数または整数群を除外しないと理解される。ここに記載する本発明の態様およびバリエーションは「からなる」および/または「から本質的になる」態様およびバリエーションを含む。ここに記載する全ての刊行物および他の参考文献は、全体として引用により本明細書に包含させる。多数の文献が引用されているが、これらの引用は、これらの文献の何れかが当分野の技術常識の一部を構成することを認めるものではない。
【0108】
例示的実施態様
本発明のさらなる特定の実施態様を、次のとおり記載する。これらの実施態様は、本明細書に記載する組成物および方法を説明することを意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない。
1. IL-21アゴニストポリペプチド(A)、マスキング部分(MM)、担体(C)および少なくとも1つの開裂可能ペプチドリンカーを含むIL-21のプロドラッグであって、ここで、:
a) 該IL-21アゴニストポリペプチド(A)が配列番号1と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有し;
b) 該マスキング部分(MM)がIL-21受容体細胞外ドメイン、そのアナログおよびIL-21受容体細胞外ドメインとガンマ鎖の細胞外ドメインの融合タンパク質から選択され;
c) 該担体がアルブミン、アルブミンフラグメント、Fcおよび抗体から選択され;そして
d) 該開裂可能ペプチドリンカーが該マスキング部分(MM)を担体またはIL-21アゴニストポリペプチドに結合している、
プロドラッグ。
2. 該IL-21アゴニストポリペプチド(A)が配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトIL-21またはそのアナログであり、ここで、該アナログはD18、E109、K117およびまたはK119に1以上の変異を含み、そして、該変異は配列番号1のアミノ酸配列を有するヒトIL-21のナンバリングに従い記載される、実施態様1のプロドラッグ。
3. 該IL-21アゴニストポリペプチド(A)が配列番号2~5から選択されるアミノ酸配列を有する、実施態様1のプロドラッグ。
4. IL-21受容体細胞外ドメインが配列番号6と少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%同一であるアミノ酸配列を有し、そして、該ガンマ鎖が配列番号7に示すアミノ酸配列を有する、実施態様1~3のプロドラッグ。
5. 該開裂可能ペプチドリンカーが配列番号11~26から選択されるアミノ酸配列を有する、実施態様1~4のプロドラッグ。
6. 該担体(C)がアルブミンまたはそのフラグメントである、実施態様1~5のプロドラッグ。
7. 該担体(C)がFcフラグメントである、実施態様1~5のプロドラッグ。
8. 該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、一つのFcフラグメントのC末端に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介して第二FcフラグメントのC末端に融合しており、そして、Fc融合タンパク質が「ノブ・イントゥ・ホール」変異によりヘテロ二量体を形成している、実施態様7のプロドラッグ。
9. 該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、一つのFcフラグメントのN末端に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介して第二FcフラグメントのN末端に融合しており、そして、上記該二つのFc融合タンパク質が「ノブ・イントゥ・ホール」変異によりヘテロ二量体を形成している、実施態様7のプロドラッグ。
10. 該担体(C)が抗体である、実施態様1~6のプロドラッグ。
11. 該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、該抗体の重鎖のN末端に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介して軽鎖のN末端に融合している、実施態様10のプロドラッグ。
12. 該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、該抗体の一つの重鎖のC末端に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介して第二の重鎖のC末端に融合しており、そして上記重鎖融合タンパク質が「ノブ・イントゥ・ホール」変異によりヘテロ二量体を形成している、実施態様10のプロドラッグ。
13. 該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、該抗体の一つの重鎖のN末端に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介して第二の重鎖のN末端に融合しており、そして上記該2つの重鎖融合タンパク質が「ノブ・イントゥ・ホール」変異によりヘテロ二量体を形成する、実施態様10のプロドラッグ。
14. 一つの該IL-21アゴニストポリペプチドが、所望によりペプチドリンカーを介して、該抗体の重鎖のC末端の各々に融合しており、該マスキング部分(MM)が開裂可能ペプチドリンカーを介してIL-21アゴニストポリペプチドのC末端に融合している、実施態様10のプロドラッグ。
15. 該抗体が癌細胞上の1以上の抗原に結合する、実施態様10~14のプロドラッグ。
16. 該抗体がヒトPD-L1またはCD47に対する抗体である、実施態様10~14のプロドラッグ。
17. 該抗体が抗CEA抗体PR1A3、ヒト化PR1A3および抗FAP-アルファ抗体シブロツズマブ(BIBH1)から選択される、実施態様10~14のプロドラッグ。
18. 該抗体がグアニル酸シクラーゼC(GCC)、糖鎖抗原19-9(CA19-9)、糖タンパク質A33(gpA33)、ムチン1(MUC1)、癌胎児性抗原(CEA)、インシュリン様増殖因子1受容体(IGF1-R)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2(HER2)、ヒト上皮細胞増殖因子受容体3(HER3)、デルタ様タンパク質3(DLL3)、デルタ様タンパク質4(DLL4)、上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、グリピカン-3(GPC3)、c-MET、血管内皮細胞増殖因子受容体1(VEGFR1)、血管内皮細胞増殖因子受容体2(VEGFR2)、ネクチン-4、Liv-1、糖タンパク質NMB(GPNMB)、前立腺特異的膜抗原(PSMA)、Trop-2、炭酸脱水酵素IX(CA9)、エンドセリンB受容体(ETBR)、前立腺の6回膜貫通上皮抗原1(STEAP1)、葉酸受容体アルファ(FR-α)、SLITおよびNTRK様タンパク質6(SLITRK6)、炭酸脱水酵素VI(CA6)、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼファミリーメンバー3(ENPP3)、メソテリン、栄養芽細胞糖タンパク質(TPBG)、CD19、CD20、CD22、CD33、CD40、CD56、CD66e、CD70、CD74、CD79b、CD98、CD123、CD138、CD352、CD47、シグナル制御タンパク質アルファ(SIRPα)、PD1、クローディン18.2、クローディン6およびFAP-アルファ、BCMAおよびEPCAM、CD3、TGF-ベータ、LAG3、TIM3、TIGITおよびCTLA-4から選択される1以上の抗原に結合する、実施態様10~14のプロドラッグ。
19. 配列番号27と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するCCL19ポリペプチドをさらに含む、実施態様10~18のプロドラッグ。
20. 該開裂可能ペプチドリンカーが腫瘍部位またはその周囲環境でみられる1種以上のプロテアーゼにより開裂可能である、実施態様1~19のプロドラッグ。
21. 該プロドラッグが腫瘍部位で活性化される、実施態様1~19のプロドラッグ。
22. 該抗体がPD-L1に結合し、ここで、該PD-L1抗体がアテゾリズマブ、デュルバルマブ、アベルマブから選択される、実施態様16のプロドラッグ。
23. 該抗体がPD-1に結合し、ここで、該抗PD-1抗体がニボルマブおよびペムブロリズマブから選択される、実施態様10~14のプロドラッグ。
24. IL-21活性が腫瘍部位またはその周囲領域で活性化可能であるかまたは少なくとも200%増加されるIL-21のプロドラッグであって、
a) 二つの同一軽鎖および第一重鎖と第二重鎖を含む、PD-L1に結合する抗体であって、ここで、該重鎖が「ノブ・アンド・ホール」変異を含む、抗体;
b) 所望によりアミノ酸配列(GGGGS)n(ここで、n=1、2、3および4)(配列番号97)を有するペプチドリンカーを介して、該抗体の第一重鎖のC末端に融合している、IL-21アゴニストポリペプチド;
c) 1つまたは2つのIL-21受容体細胞外ドメインの細胞外ドメインを含む、マスキング部分(MM);および
d) 該マスキング部分(MM)を該抗体の第二の重鎖のC末端に結合させる開裂可能ペプチドリンカー
を含み、
ここで、該IL-21アゴニストポリペプチドは配列番号1~5から選択されるアミノ酸配列を含み;そして、該IL-21受容体ベータサブユニット細胞外ドメインは配列番号6のアミノ酸配列を有する、
プロドラッグ。
25. IL-21活性が腫瘍部位またはその周囲領域で活性化可能であるかまたは少なくとも200%増加されるIL-21のプロドラッグであって、
a) 二つの同一軽鎖および第一重鎖と第二重鎖を含む、CD47に結合する抗体であって、ここで、該重鎖が「ノブ・アンド・ホール」変異を含む、抗体;
b) 所望によりアミノ酸配列(GGGGS)n(ここで、n=1、2、3および4)(配列番号97)を有するペプチドリンカーを介して、該抗体の第一重鎖のC末端に融合している、IL-21アゴニストポリペプチド;
c) 1つまたは2つのIL-21受容体細胞外ドメインの細胞外ドメインを含む、マスキング部分(MM);および
d) 該マスキング部分(MM)を該抗体の第二の重鎖のC末端に結合させる開裂可能ペプチドリンカー
を含み、
ここで、該IL-21アゴニストポリペプチドは配列番号1~5から選択されるアミノ酸配列を含み;そして、該IL-21受容体ベータサブユニット細胞外ドメインは配列番号6のアミノ酸配列を有する、
プロドラッグ。
26. 実施態様1~25のプロドラッグのアルブミン融合タンパク質、Fc融合タンパク質、軽鎖融合タンパク質または重鎖融合タンパク質をコードする、ポリヌクレオチド。
27. 実施態様26のポリヌクレオチドを含む、発現ベクター。
28. 実施態様27のベクターでトランスフェクトされた、宿主細胞。
29. 実施態様28の宿主細胞を培養することを含む、実施態様1~25の該プロドラッグを製造する方法。
30. 活性成分として実施態様1~25のプロドラッグを含む、医薬組成物。
31.乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌または胃癌または感染症を処置する方法であって、乳癌、肺癌、膵臓癌、食道癌、髄様甲状腺癌、卵巣癌、子宮癌、前立腺癌、精巣癌、結腸癌、直腸癌または胃癌または感染症を有するヒト対象に、実施態様30の該医薬組成物を投与することを含む、方法。
32. 投与される投与量が0.1~18mg/kgである、実施態様31の方法。
33. 投与量が0.1mg/kg、0.2mg/kg、0.5mg/kg、1mg/kg、2mg/kg、3mg/kg、4mg/kg、5mg/kg、6mg/kg、8mg/kg、10mg/kgおよび15mg/kgからなる群から選択される、実施態様31の方法。
34. 投与量が、ヒト対象に(i)毎週;(ii)隔週;(iii)1週間治療、その後2週間、3週間または4週間休薬;(iv)2週間治療、その後1週間、2週間、3週間または4週間休薬;(v)3週間治療、その後1週間、2週間、3週間、4週間または5週間休薬;(vi)4週間治療、その後1週間、2週間、3週間、4週間または5週間休薬;(vii)5週間治療、その後1週間、2週間、3週間、4週間または5週間休薬;および(viii)毎月からなる群から選択されるサイクルのスケジュールで、週1回または2回投与される、実施態様33の方法。
【0109】
本発明がよりよく理解され得るために、次の実施例を示す。これらの実施例は説明のみを目的とし、本発明の範囲をいかなる方法でも限定すると解釈してはならない。
【実施例0110】
実施例1:HEK293細胞を使用するIL-21プロドラッグの一過性トランスフェクション
発現プラスミドを、PEI(ポリエチレンイミン)を使用して、3×106細胞/mlフリースタイルHEK293細胞に2.5~3μg/mlで共トランスフェクトした。FcベースのIL-21プロドラッグ(AおよびB)について、Fc-IL-21融合ポリペプチドとFc-マスキング部分融合ポリペプチドは、1:2比であった。抗体ベースのIL-21プロドラッグについて、ノブ重鎖(IL-21アゴニストポリペプチド含有)およびホール重鎖(マスキング部分含有)および軽鎖DNAは2:1:2モル比であった。細胞培養物を、トランスフェクション6日後、9,000rpmで45分間遠心分離し、続いて0.22μM濾過することにより回収した。
【0111】
2つのIL-21プロドラッグ(AおよびB)が発現された。プロドラッグAは、それぞれ配列番号94および38を有する2つのポリペプチドからなる。プロドラッグBは、それぞれ配列番号95および38を有する2つのポリペプチドからなる。それらの対応する対照であるマスキング部分がないFc-IL-21融合体分子も発現させた。配列番号を表2に記載する。
【表2】
【0112】
実施例2:FcベースのIL-21プロドラッグの精製
FcベースのIL-21プロドラッグAおよびBのタンパク質の精製を、プロテインA親和性、Capto Adhere(フロースルーモード)およびCapto SP ImpResの3クロマトグラフィー工程を使用して実施した。簡潔には、一過性発現細胞培養物の上清を、サンプル適用前に25mM Tris-HCl、30mM NaCl、pH7.8(緩衝液A)で平衡化したプロテインAカラムに充填した。カラムを5カラム体積の緩衝液Aで洗浄し、結合タンパク質を50mM 酢酸、pH3.6で溶出した。溶出したタンパク質のpHを、1M Tris塩基を使用して5.2に調節し、50mM 酢酸、30mM NaCl、pH5.2(緩衝液B)で平衡化したCapto Adhereカラムに充填した。フロースルーを回収し、さらに緩衝液Bで平衡化したCapto SP ImpResカラムに充填した。カラムを5カラム体積の緩衝液Bで洗浄し、結合タンパク質を、30カラム体積の50mM 酢酸、1M NaCl、pH5.2(緩衝液C)の0%~100%勾配で溶出した。各工程からの溶出サンプルをHPLC-SECで分析した。凝集が10%未満のCapto SP ImpRes工程のフラクションを、さらなる分析のために貯留した。
【0113】
実施例3:SEC-HPLC分析
SEC-HPLCを、Tosoh BioscienceのTSKgel G3000SWXLカラム(7.8mmID×30cm、5μm粒子サイズ)を有するAgilent 1100 SeriesのHPLCシステムを使用して実施した。100μlまでのサンプルを負荷した。カラムを200mM K
3PO
4、250mM KCl、pH6.5の緩衝液で流した。カラムを室温、流速は0.5ml/分で流した。タンパク質溶出を220nmおよび280nm両者でモニターした。IL-21プロドラッグAの工程内プールをSEC-HPLCにより分析した。
図5Aは、プロテインAカラムプールのアッセイ結果を示し、
図5BはCapto Adhereカラムプールのアッセイ結果を示し、そして
図5CはCapto Sp ImpResカラムプールのアッセイ結果を示す。データは、プロテインAカラム精製プロドラッグが、一部凝集体を伴う主ピークからなることを示す(
図5A)。SEC-HPLCで分析して約80%の主ピーク純度を有した。凝集体は、続くクロマトグラフィー工程により顕著に減少し、Capto SP Impresプールは、SEC-HPLCで試験して98%を超える生成物純度を示した(
図5C)。
【0114】
実施例4:SDS-PAGE分析
10μlの培養上清または10~20μgの精製タンパク質サンプルを、還元剤を含むまたは含まないBolt
TM LDSサンプル緩衝液(Novex)と混合した。サンプルを70℃で3分間加熱し、次いでNuPAGE
TM 4~12%BisTris Gel(Invitrogen)に負荷した。ゲルをNuPAGE
TM MOPS SDS 展開緩衝液(Invitrogen)で200ボルトで40分間流し、次いでクマシーで染色した。
図6に示すとおり、プロドラッグAおよびBの精製サンプルを、プロテアーゼMMP-2処理したものと共に(下記参照)SDS-PAGE分析で分析した。データは、プロドラッグAおよびプロドラッグB両者のマスキング部分はプロテアーゼ消化により完全に除去され、活性化分子が予測された分子量で移動することを示す。
【0115】
実施例5:タンパク分解性処理
プロテアーゼであるヒトMMP2、ヒトMMP9、マウスMMP2およびマウスMMP9をR&D systemsから購入した。10μg~50μgのプロドラッグと1μgのヒトMMP2、ヒトMMP9、マウスMMP2またはマウスMMP9を、2mM CaCl
2および10μM ZnCl
2含有HBS緩衝液(20mM HEPES、150mM NaCl、pH7.4)中、37℃で12時間インキュベーションすることにより、プロテアーゼ消化を実施した。消化前および後のプロドラッグをSDS-PAGE(
図6)および細胞ベースの活性アッセイ(下記参照)により分析した。
【0116】
¥
実施例6:細胞ベースの活性アッセイ
プロテアーゼ消化前および同消化後のプロドラッグおよび対照サンプルを、細胞ベースの活性アッセイにより試験した。簡潔には、NK92細胞を、L-グルタミン、10%ウシ胎児血清、10%非必須アミノ酸、10%ピルビン酸ナトリウムおよび55μM ベータ-メルカプトエタノール添加RPMI-1640培地で増殖させた。NK92細胞は非接着性であり、1×10
5~1×10
6細胞/mlで100ng/mlのIL-2を含む培地に維持した。共通して、細胞を週2回分けた。バイオアッセイのために、細胞を継代後48時間以上で使用するのが最良であった。IL-21機能的活性を、NK92細胞を5×10
4細胞/ウェルで、サンプルの連続希釈物と共に一定量のIL-2存在下で2日間培養することにより決定した。次いで、上清をELISAによりインターフェロン-γについてアッセイした。結果を
図7Aおよび7Bに示す。データは、プロドラッグのバイオアッセイ活性がプロテアーゼMMP2処理により顕著に増加したことを示す。
【0117】
プロテアーゼ処理(または活性化)プロドラッグは、マスキング部分、すなわち、IL-21Rα ECDがプロテアーゼ処理サンプルから除去されていなくても、対照Fc-IL-21融合体分子と類似する活性を示した。驚くべきことに、IL-21がIL-21Rαに極めて高い親和性(約70pMのKD)で結合することを考えると、プロテアーゼ消化により除去されたマスキング部分の存在はIL-21バイオアッセイを妨害するようには見えなかった。
【0118】
実施例7:抗PD-1抗体-IL-21プロドラッグ融合体分子
抗PD-1抗体ベースのIL-21プロドラッグを、二つの同一軽鎖(配列番号50に示すアミノ酸配列を有する)、第一重鎖ポリペプチド鎖(配列番号48に示すアミノ酸配列を有する)および第二重鎖ポリペプチド鎖(配列番号49に示すアミノ酸配列を有する) を用いて構築した。分子を発現および精製した。対照として、マスクがない抗PD-1抗体-IL-21融合体分子も発現および精製した。活性化前および活性化後のサイトカインプロドラッグの細胞ベースの活性アッセイを、上記と同じ方法を使用して試験した。データを
図8に示す。結果は、活性化前のIL-21活性がごくわずかであったことを示す。活性化後、IL-21活性は、PD-1-IL-21融合体分子におけるIL-21に類似した。
【0119】
抗PD-1抗体の活性も、PD1/PD-L1遮断レポーターアッセイを使用して活性化前および活性化後に試験した。PD-L1介在PD1シグナル伝達を遮断する抗PD-1抗体の能力を、2つの操作細胞株を使用して測定した。第一は、ヒトPD-L1およびT細胞受容体アクティベーター両者を発現するCHO-K1細胞株(CHO-K1/TCRA/PD-L1, BPS Bioscience cat #60536)であった。第二細胞株(PD1/NFAT, BPS Bioscience cat # 60535)は、PD-1およびNFATホタルルシフェラーゼレポーターを発現するJurkat T細胞株であった。CHO-K1細胞のT細胞受容体アクティベーターはJurkat細胞を活性化し、NFATルシフェラーゼレポーターを発現させる。しかしながら、CHO-K1細胞がPD-L1も発現するため、PD-1を介するシグナル伝達がNFAT活性化を阻止する。PD-L1/PD-1相互作用遮断は、NFAT活性化およびルシフェラーゼ活性を回復させる。
【0120】
本アッセイを実施するために、CHO-K1/TCRA/PD-L1細胞を96ウェル平底プレートに、35,000細胞/ウェルで50μLアッセイ培地(RPMI-1640、10%ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2-メルカプトエタノールおよびゲンタマイシン)で播種した。一夜培養後、培養培地を除去し、サンプルおよび標準(standards)を、2倍濃度で50μL/ウェルで加えた。プレートを20分間インキュベートし、40,000 PD1/NFAT細胞を各ウェルに50μLで加えた。プレートを6時間、37℃でインキュベートした。プレートを室温で5分間冷却し、100μL/ウェルルシフェラーゼ試薬(Pierce Firefly Luc One-Step Glow Assay Kit, Thermo Scientific cat #16197)を加えた。プレートを15分間インキュベートし、次いで発光をルミノメーターで測定した。
【0121】
アッセイ結果(
図9)は、融合分子の抗PD-1抗体がその生物学的機能性を保持することを示す。
【0122】
実施例8:同系腫瘍モデルでのインビボ有効性試験
6週齢Balb/cマウス(Taconic Biosciences)に、1×106 CT26/18.2細胞を皮下注射する。7日後、腫瘍をデジタルキャリパーを使用して測定し、腫瘍体積を計算した(V=(ab2)p/6、式中bは測定した2次元長の短い方)。次いで、全群がほぼ同じ平均腫瘍サイズ(約100mm3)となるように、マウスを処置群に無作為化する。次いで、マウスをプラセボまたは試験サンプル0.5~5mg/kgの100μlで腹腔内注射により処置する。投与を7日目、9日目、11日目、13日目、15日目および18日目に行った。腫瘍を2~3日毎に測定し、腫瘍が2000mm3に達したら、マウスを屠殺する。
【0123】
上記非限定的実施例は、開示される主題のより完全な理解を容易にするために、説明のみを目的として提供される。これらの実施例は、抗体、医薬組成物または癌、神経変性または感染症処置における方法および使用に関するものを含み、本明細書に記載する実施態様の何れも限定すると解釈してはならない。
【0124】
【0125】
【0126】
【0127】
【0128】
【0129】
配列番号6 - IL-21受容体ECD(ソース:uniprot.org/uniprot/Q9HBE5)
【化6】
【0130】
配列番号7 - ヒトIL-21 Rγ ECD
【化7】
【0131】
【0132】
【0133】
配列番号10 - ヒトIL-15 Rαスシドメイン
【化10】
【0134】
配列番号11~17 - MMP2/MMP9開裂可能ペプチドリンカー
【化11】
【0135】
配列番号18~26 - ウロキナーゼプラスミノーゲンアクティベーター(uPA)開裂可能ペプチドリンカー
【化12】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
配列番号36 - ノブ変異を有するFc - IL-21
【化18】
ここで、n=0、1、2、3、4または5。
【0142】
配列番号37 - ノブ変異を有するFc - IL-21ムテイン
【化19】
ここで、n=0、1、2、3、4または5。
【0143】
配列番号38 - ホール変異を有するFc - IL-21受容体ECD
【化20】
【0144】
配列番号39 - IL-21 - ノブ変異を有するFc
【化21】
ここで、n=0、1、2、3、4または5。
【0145】
配列番号40 - IL-2ムテイン- ノブ変異を有するFc
【化22】
ここで、n=0、1、2、3、4または5。
【0146】
配列番号41 - IL-21Rα ECD - ホール変異を有するFc
【化23】
【0147】
配列番号42 - IL-15-スシ - ノブ変異を有するFc - IL-21
【化24】
ここで、n1=0、1、2、3、4または5;n2=0、1、2、3、4または5;およびn3=0、1、2、3、4または5。
【0148】
配列番号43 - IL-2アナログ - ノブ変異を有するFc - IL-21ムテイン
【化25】
ここで、n1=0、1、2、3、4または5;およびn2=0、1、2、3、4または5。
【0149】
配列番号44 - IL-2Rβ ECD - ホール変異を有するFc - IL-21Rα ECD
【化26】
【0150】
配列番号45 - IL-21 - ノブ変異を有するFc - スシ-IL-15
【化27】
ここで、n1=0、1、2、3、4または5;n2=0、1、2、3、4または5;およびn3=0、1、2、3、4または5。
【0151】
配列番号46 - IL-21ムテイン - ノブ変異を有するFc - IL-2アナログ
【化28】
ここで、n1=0、1、2、3、4または5;およびn2=0、1、2、3、4または5。
【0152】
配列番号47 - IL-21Rα ECD - ホール変異を有するFc - IL-2Rβ ECD
【化29】
【0153】
配列番号48 - ノブ変異を有するPD1-HC - IL-21
【化30】
【0154】
配列番号49 - ホール変異を有するPD1-HC - IL-21Rα ECD
【化31】
【0155】
【0156】
配列番号51 - PD1-LC - IL-2基底
【化33】
ここで、X
aa88はNおよびAから選択されるアミノ酸であり、X
aa126はQ、H、WまたはAから選択されるアミノ酸である。
【0157】
【0158】
【0159】
【0160】
【0161】
配列番号56 - ブレンツキシマブ軽鎖
【化38】
【0162】
配列番号57 - ブレンツキシマブ重鎖
【化39】
【0163】
【0164】
【0165】
【0166】
【0167】
配列番号62 - 抗c-MET抗体軽鎖
【化44】
【0168】
配列番号63 - 抗c-MET抗体重鎖
【化45】
【0169】
【0170】
【0171】
配列番号66 - 抗クローディン18.2抗体軽鎖
【化48】
【0172】
配列番号67 - 抗クローディン18.2抗体重鎖
【化49】
【0173】
配列番号68 - 抗Trop-2抗体軽鎖CDR1
【化50】
【0174】
配列番号69 - 抗Trop-2抗体軽鎖CDR2
【化51】
【0175】
配列番号70 - 抗Trop-2抗体軽鎖CDR3
【化52】
【0176】
配列番号71 - 抗Trop-2抗体重鎖CDR1
【化53】
【0177】
配列番号72 - 抗Trop-2抗体重鎖CDR2
【化54】
【0178】
配列番号73 - 抗Trop-2抗体重鎖CDR3
【化55】
【0179】
配列番号74 - 抗メソテリン抗体軽鎖CDR1
【化56】
【0180】
配列番号75 - 抗メソテリン抗体軽鎖CDR2
【化57】
【0181】
配列番号76 - 抗メソテリン抗体軽鎖CDR3
【化58】
【0182】
配列番号77 - 抗メソテリン抗体重鎖CDR1
【化59】
【0183】
配列番号78 - 抗メソテリン抗体重鎖CDR2
【化60】
【0184】
配列番号79 - 抗メソテリン抗体重鎖CDR3
【化61】
【0185】
配列番号80 - 抗FAPバージョン1 LC
【化62】
【0186】
配列番号81 - 抗FAP LCバージョン2
【化63】
【0187】
【0188】
配列番号83 - FAPアルファ抗体BIBH1のヒト化軽鎖可変ドメイン
【化65】
【0189】
配列番号84 - ヒト化重鎖可変ドメインFAPアルファ抗体BIBH1
【化66】
【0190】
配列番号85 - ヒト化H8抗5T4バージョン1 VH
【化67】
【0191】
配列番号86 - ヒト化H8抗5T4 VHバージョン2
【化68】
【0192】
配列番号87 - ヒト化H8抗5T4バージョン1 VL
【化69】
【0193】
配列番号88 - ヒト化H8抗5T4 VLバージョン2
【化70】
【0194】
配列番号89 - 抗PDL1アテゾリズマブLC
【化71】
【0195】
配列番号90 - 抗PDL1アテゾリズマブHC
【化72】
【0196】
配列番号91 - 抗PD-1 ニボルマブHC
【化73】
【0197】
配列番号92 - 抗PD-1 ペムブロリズマブLC
【化74】
【0198】
配列番号93 - 抗PD-1 ペムブロリズマブHC
【化75】
【0199】
配列番号94 - ノブ変異を有するFc- IL-21
【化76】
【0200】
配列番号95 - ノブ変異を有するFc - IL-21ムテインQ19K/E109R
【化77】
【0201】
配列番号96 - ホール変異を有するIgG1 Fc
【化78】
【0202】
配列番号97 - ペプチドリンカー
【化79】
ここで、n=1、2、3および4