(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081671
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】タンパク質を含む食用微小押し出し製品の製造方法、それにより得られる組成物およびその使用
(51)【国際特許分類】
A23L 5/00 20160101AFI20240611BHJP
A23J 3/26 20060101ALI20240611BHJP
A23J 3/00 20060101ALI20240611BHJP
A23J 3/14 20060101ALI20240611BHJP
A23J 3/04 20060101ALI20240611BHJP
A23L 13/00 20160101ALI20240611BHJP
【FI】
A23L5/00 A
A23J3/26
A23J3/00 502
A23J3/14
A23J3/04 502
A23L5/00 M
A23L13/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024035456
(22)【出願日】2024-03-08
(62)【分割の表示】P 2021506678の分割
【原出願日】2019-08-06
(31)【優先権主張番号】18382598.3
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】521050856
【氏名又は名称】ノバミート テック,エセ.エレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シオンティ,ジュゼッペ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】肉の機械的特性に類似する圧縮および引張ヤング率を有する食用微小押し出し製品、並びにその製造方法を提供する。
【解決手段】食用微小押し出し製品は、1つ以上の粘弾性の微小押し出し要素を含み、前記微小押し出し要素が、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒を含んでおり、前記微小押し出し要素の総重量に対するタンパク質の重量パーセンテージが19%~49%であり、前記微小押し出し要素の総重量に対する食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージが0.2%~40%であり、前記微小押し出し要素の総重量に対する食用溶媒の重量パーセンテージが少なくとも45%であって、前記食用溶媒は前記微小押し出し要素の100重量%までの残余であり、1つ以上の前記微小押し出し要素が、10μm~1000μmの断面幅を有する。
【選択図】
図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を含む食用微小押し出し製品を製造するための方法であって、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および適切な食用溶媒を含み、方法は、
(i)適切な食用溶媒中にタンパク質、および食用擬塑性ポリマーを含む粘弾性組成物を提供するステップであって、前記粘弾性組成物は、19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%の食用溶媒を含み、両方のパーセンテージは前記粘弾性組成物の総重量に対するものであり、前記食用溶媒は前記粘弾性組成物の100重量%までの残余である、ステップと、
(ii)前記粘弾性組成物を、10μm~1000μmの幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しして、1つまたは複数の微小押し出し要素を得るステップと;
(iii)前記食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように、微小押し出し要素を含む2つ以上の層を積み重ねるステップ;または代替として、2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられるステップと、
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(ii)および(iii)のいずれか1つの後に、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、細胞および前記細胞の抽出物、ならびにこれら全ての化合物および/または細胞および/または細胞抽出物の組み合わせからなるリストから選択される1種または複数種の添加剤を添加するステップ(iv)をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(ii)および(iii)の後に、層内の微小押し出し要素の間および/または微小押し出し要素の層上に、1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸、およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む組成物、および/または軟骨材料を含む組成物、および/または骨材料を含む組成物を追加するステップ(v)をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記粘弾性組成物が、食用擬塑性ポリマー、19%~49%w/wの重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%w/wの食用溶媒を含み、両方のパーセンテージは前記粘弾性組成物の総重量に対するものであり、前記溶媒は前記粘弾性組成物の100%w/wまでの残余であり、前記粘弾性組成物は、6μm未満~600μm未満の粒子サイズの均一な分布を有し、
(a)前記タンパク質、前記食用擬塑性ポリマー、および前記食用溶媒を容器内で混合すること、ならびに
(b)温度を20℃から95℃未満の温度に上げ、1分~30分の期間攪拌および温度を維持しながら、10g~4000gの遠心力に1つまたは複数の攪拌サイクルを任意選択で複数の方向に適用すること
により得ることができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記粘弾性組成物が、0.16Hzの周波数および23℃の温度で、45%~90%w/wの食用微小押し出し可能組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定された場合、損失弾性率G”よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa以上であり、損失弾性率G”は350Pa以上であり、前記粘弾性組成物のG”/G'比
は0.24~0.88である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記粘弾性組成物の貯蔵弾性率G'が、1700Pa~140000Paであり、前記
粘弾性組成物の損失弾性率G”が、350Pa~40000Paであり、前記粘弾性組成物のG’’/G'比が、0.24~0.88である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質の重量パーセンテージが、25%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージが、少なくとも45%である、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記タンパク質が、動物由来タンパク質、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記タンパク質が、動物タンパク質である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
動物タンパク質が、昆虫タンパク質である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記タンパク質が、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記粘弾性組成物の総重量に対する食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージが、0.2%~40%であり、食用溶媒の重量パーセンテージが、少なくとも45%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記食用擬塑性ポリマーが、多糖、擬塑性タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記擬塑性ポリマーが、アルギン酸およびアルギン酸の食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナンならびにそれらの組み合わせから選択される多糖類である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記粘弾性組成物が、細胞および/または前記細胞の抽出物をさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備える、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法により得ることができる食用微小押し出し製品であって、前記食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、前記食用微小押し出し製品の引張ヤング率は、5.0×103Pa~11.0×106Paであり、前記圧縮弾性率および引張ヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定される、食用微小押し出し製品。
【請求項17】
前記微小押し出し要素が、微小押し出しシート、微小押し出しフィラメント、およびそれらの組み合わせから選択される、請求項16に記載の食用微小押し出し製品。
【請求項18】
各層の前記微小押し出し要素の2つ以上の間および/または微小押し出し要素の前記層の1つまたは複数の間に、1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸、およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む組成物、および/または軟骨材料を含む組成物、および/または骨材料を含む組成物を含む、請求項16から17のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【請求項19】
肉代替品としての、請求項16から18のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品の使用。
【請求項20】
肉類似品としての、請求項16から18のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品の使用。
【請求項21】
適切な食用溶媒中に、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質であって、植物由来タンパク質、昆虫タンパク質、藻類由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択されるタンパク質と、全粘弾性組成物に対する重量パーセンテージで0.5%~40%の、アルギン酸塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、およびそれらの組み合わせから選択される食用擬塑性多糖とを含む食用粘弾性微小押し出し可能組成物であって、前記粘弾性組成物は、前記組成物の総重量に対して少なくとも45重量%の食用溶媒を含む、食用粘弾性微小押し出し可能組成物。
【請求項22】
0.16Hzの周波数および23℃の温度で、45%~90%w/wの食用微小押し出し可能組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり、損失弾性率G’’は350Pa超であり、前記粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24~0.8
8である、請求項16に記載の食用粘弾性微小押し出し可能組成物。
【請求項23】
食用擬塑性ポリマー、19%~49%w/wの重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%w/wの食用溶媒であって、前記粘弾性組成物の100%w/wまでの残余である食用溶媒を含む、粘弾性微小押し出し可能組成物であって、両方のパーセンテージは前記粘弾性組成物の総重量に対するものであり、前記粘弾性組成物は、6μm未満~600μm未満の粒子サイズの均一な分布を有し、
(a)前記タンパク質、前記食用擬塑性ポリマー、および前記食用溶媒を容器内で混合すること、ならびに
(b)温度を20℃から95℃未満の温度に上げ、1分~30分の期間攪拌および温度を維持しながら、10g~4000gの遠心力に1つまたは複数の攪拌サイクルを任意選択で複数の方向に適用すること
により得ることができる、粘弾性微小押し出し可能組成物。
【請求項24】
請求項16から18のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品の部分、ならびに1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む固化組成物の部分、および/または軟骨材料を含む固化組成物の部分、および/または骨材料を含む部分を含む、食用複合製品であって、脂肪および/または軟骨材料および/または骨材料を含む組成物の前記部分は、前記食用微小押し出し製品の部分と隣接して接触している、食用複合製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年8月7日に出願された欧州特許出願第18382598.3号の利益を主張する。
【0002】
本発明は、食品産業の分野に関する。特に、肉代替品およびカスタマイズ可能な食品としてのタンパク質ベースの製品の分野に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質は全ての生物の基本的な成分であり、健康的な食事のためのタンパク質栄養素は、動物および植物の両方の起源の食品から得ることができる。欧州委員会の科学知識サービス(2017)の「健康増進および疾病予防の知識ゲートウェイ(Health Promotion and Disease Prevention Knowledge Gateway)」レポートによると、様々なタンパク質栄養素を含む混合食は、人体の正しい機能の基本であり、体の酵素活性の条件、免疫、細胞シグナル伝達、および筋肉の働きを提供する。タンパク質の構成要素であるアミノ酸の中で、それらのグループは不可欠アミノ酸(IAA)または必須アミノ酸(EAA)と呼ばれており、人体はそれらを自分で合成することができないため、体がその生理学的機能を果たすための食事にそれらを提供する必要がある。世界のいくつかの農村地域の植物ベースの食事に一般的な低品種の食品は、食事によるタンパク質の不足を引き起こす可能性がある。一方、ほとんどの西洋(ヨーロッパを含む)の食事は、いずれもIAAの十分な摂取量を提供することができる、植物由来の様々なタンパク質の組合せおよび動物ベースの食品に基づいているため、タンパク質の摂取量の点で高品質である。タンパク質欠乏症の結果には、特に栄養失調または飢饉の影響を受けている国での精神的能力の低下およびクワシオルコル等の病気が含まれる。身体活動のレベルが正常な成人男性および女性の1日あたりの食事によるタンパク質の推奨摂取量は、体重1キログラムあたり約0.80~0.83gであるが、小児および妊婦の推奨量は、それぞれ体の成長および母乳の分泌を補助するためにそれよりも多い。高齢者の特別な場合では、彼らの毎日の食事は、若い成人の場合よりもタンパク質摂取量に関して同等以上であることが推奨されるが、それはタンパク質欠乏の傾向に依存する。
【0004】
家畜から動物由来のタンパク質のほとんどを取得する現在の戦略は、気候変動に重要な役割を果たしているため、世界人口の増加(FAOによると2050年には96億人になると予想される)、およびその結果としての植物由来および動物由来の両方のタンパク質の需要の増加は、気候変動に対する影響に関連して考慮される必要がある。畜産は、輸送よりもさらに地球温暖化に貢献している(車、トラック、飛行機、電車および船を含む全ての輸送手段を合わせたものよりも40%多い)。最近では、家畜産業が全人類の人為的温室効果ガス(GHG)排出量の14.5%を占めていると推定されている。これらには、37%の人為起源のメタンおよび65%の亜酸化窒素が含まれ、それぞれCO2のGWP(地球温暖化係数)の23倍および296倍になる。牛肉、牛乳生産、豚肉および家禽に関連する家畜活動は、このセクターからの総GHG排出量のそれぞれ41、20、9および8パーセントに寄与し、残りの寄与は肥料の貯蔵、加工、および家畜由来製品の輸送によるものである。さらに、家畜は淡水の汚染および利用可能性、生物多様性、土地劣化、砂漠化、ならびに森林破壊に大きな影響を及ぼし、後者はほとんどのGHG排出量を生み出す土地関連の変化活動である。様々な食事パターンの環境への影響が調査され、ビーガン食が最も影響が少ないことが分かった。さらに、植物ベースの農業は、食肉生産のための農業よりも、淡水の使用、必要な土地の量、および発生する廃棄物に関して、環境へ
の影響がはるかに少ないことが知られている。
【0005】
世界の公衆衛生の改善のための様々なタンパク質栄養素を含む食事の寄与、およびより持続可能な農業および家畜システムに向けた動きの重要性に関する前述の議論を考えると、動物から生産された肉に代わる健康的な代替戦略を見出す必要性が基本的かつ緊急のようである。
【0006】
最近、家畜の肉に代わるものがいくつか登場した。大豆等の植物ベースの成分を使用して肉を模倣するものもあれば、細胞を足場および成長因子と組み合わせていわゆるクリーンミート製品を生成する組織工学の技術に基づくものもある。
【0007】
特許文献1(2017)において、Fraserらは、肉の風味に似た、調理時に牛肉に関連した香りの化合物を生成するヘム含有タンパク質を含む植物ベースの食品を開示した。しかしながら、肉の風味を模倣するための植物ベースのタンパク質の使用に基づく現在の技術は、動物由来の繊維質肉の堅さ、繊維質テクスチャ、および弾力性を模倣することができない。実際、肉の機械的特性およびテクスチャの主な理由の1つは、その典型的な異方性によるものである。
【0008】
植物ベースの食品の成形等の従来の技術は、生きている動物の肉に典型的な繊維の異方性分布および配向を模倣できないため、動物の本来の組織を模倣することはできない。植物ベースの材料を成形する場合、得られた型のネットワーク微細構造は、肉の典型的な異方性微細構造とは大きく異なる。
【0009】
非特許文献1により、伝統的な動物の肉の食感によりよく似せる試みにおいて、植物タンパク質(大豆タンパク質分離物およびグルテン)の粒状混合物を含む繊維質の構造パターンが開発され、開示された。Krintirasらは、同軸シリンダを備えるデバイスにおいて単純なせん断流および熱を加えることにより、異方性繊維を備え、肉に似た繊維構造を得ることができることを示した。繊維は、2つのシリンダ全体の材料の流れの方向に沿って整列する。この材料は、優れた肉代替品と見なされているが、それでも非常にテクスチャのある繊維質の肉には似ていない。さらに、特別な装置が必要である。
【0010】
特許文献2(2014)において、Forgacsらは、バイオインクと呼ばれる生体適合性インクに埋め込まれた生細胞による3Dプリンティングのプロセスであるバイオプリンティング(bioprinting)に基づく戦略を含む、層の形態で互いに凝集した非ヒト細胞(特に筋細胞)を含む複数の多細胞体として形成された組織工学による食用肉製品を形成する方法を開示した。しかしながら、組織工学に基づく技術では、実験室で動物細胞を培養して、生きている動物の肉と同様の細胞構造を産生させる必要がある。さらに、現在の組織工学技術は、天然の動物組織と比較して単純化された人工組織しか生成することができない。組織工学技術は、細胞レベルで天然の組織構造を模倣するように細胞を誘導しようとするが、これらの戦略では、実験室で大規模な細胞培養を維持する必要があり、これは非常に費用がかかり、複雑であり、通常、培養細胞にいわゆるウシ胎児血清(FBS)の形態で、それらの成長を可能にする動物由来の大量のタンパク質を提供することが必要である。
【0011】
特許文献3(2016)において、Kuoらは、伸縮式押し出し装置を介した3D印刷によって食品を製造することができる、複数のカプセルホルダを備える積層造形プリンタシステムを開示した。
【0012】
他の著者らもまた、タンパク質および繊維質食品材料の印刷適性を評価した。一例は、非特許文献2において製造および開示されたスナック製品である。Lilleらは、デン
プン、脱脂乳、半脱脂乳、これらの食用組成物の組み合わせ、ライ麦ふすま、オート麦、ソラマメ等の、様々な濃度のタンパク質および/または糖を含む様々な食用組成物の印刷適性を評価した。これらの組成物の多くについて、貯蔵弾性率(G')および損失弾性率
(G’’)および位相角の値を含む粘弾性特性が測定され、最終的に、印刷に使用可能であり、印刷後にさらに自立性を有する組成物は1900Pa未満のG'を有するべきであ
ることを決定付けた。その他の場合には、高粘度の組成物による押出機の閉塞または成分の相分離が生じた。印刷された構造は、nScrypt技術(nScrypt,Inc、フロリダ州オーランド)に基づくVTTのミクロンスケールのディスペンシング環境、およびレイヤーごとの手法で3D構造を堆積するようにノズルをガイドするCAD制御のxyzモーション制御システムを用いて作製された。Lilleらはまた、自立能力の観点からの印刷材料の機能、ならびに印刷後の凍結乾燥およびオーブンでの加熱の効果を評価した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第9808029-B2号
【特許文献2】米国特許第8703216-B2号
【特許文献3】米国特許出願公開第2016135493-A1号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Krintirasら、「On the use of Couette Cell technology for large scale production of textured soy-based meat replacers」、Journal of Food Engineering-2016、第169巻、205~213頁
【非特許文献2】Lilleら、「Applicability of protein and fibre-rich food materials in extrusion-based 3D printing」、Journal of Food Engineering-2017、http://dx.doi.org/10.1016/j.jfoodeng.201704.034
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
さらに、容易に製造および処理することができる食用繊維材料を得るために多くの努力がなされてきた。しかしながら、高繊維質の材料組成のレオロジーパラメータでは、部分的に繊維質の異方性食品(肉)に似たテクスチャを得るために、Couetteセル等の特定のデバイスが必要である。さらに、これらのレオロジー特性は、3D印刷デバイスが使用される場合、押出機の閉塞を暗に意味し、したがって、高繊維質食品を印刷することが非常に困難であり、3D印刷戦略は柔らかいテクスチャを有する食用組成物(スナック、チョコレートパターン、ピザベース等)に限定されている。植物ベースの製品を製造する既存の技術では、生きている動物の肉の風味、外観、堅さ、繊維質テクスチャおよび弾力性を同時に模倣することは不可能である。組織工学に基づくクリーンミート技術には、プロセスのコスト、複雑さ、時間を要する特性を含む、一連の欠点がある。
【0016】
したがって、特に動物の肉の生産を低減しながら、全ての必須栄養素を提供することができる追加のプロセスおよび材料が必要であり、これらの材料は、上述の欠点を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
驚くべきことに、特定の粘弾性組成物または材料の組み合わせは、一度微小押し出しさ
れると、自立特性を有しながら微小押し出しされ得、また粘弾性組成物から作製された微小押し出し要素を含む層の特定の配置は、結果として、伝統的な肉に似た最終的なテクスチャおよび機械的特性を有する食用製品、または高繊維質の堅さを有する食品の種類を提供することが見出された。したがって、様々な動物および植物の天然組織の特定の機械的および栄養的特性を模倣するために、望ましい栄養特性(粘弾性材料の組成による)、三次元(3D)形状、巨視的および微視的形態、堅さ、引張および圧縮応力下の両方での弾性、ならびにテクスチャを有する製品が得られた。
【0018】
したがって、以下の例に示され、図示されるように、食用微小押し出し製品の機械的特性の多くは、有用な肉代替品、肉類似品、または粘弾性組成物によって提供される栄養素の所望の組成を含むことができる組織工学肉としてそれを作製する。
【0019】
したがって、本発明の第1の態様は、粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を含む食用微小押し出し製品を製造するための方法に関し、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および適切な食用溶媒を含み、方法は、
(i)適切な食用溶媒中にタンパク質、および食用擬塑性ポリマーを含む粘弾性組成物を提供するステップであって、粘弾性組成物は、19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%の食用溶媒を含み、両方のパーセンテージは粘弾性組成物の総重量に対するものであり、前記食用溶媒は粘弾性組成物の100重量%までの残余である、ステップと、
(ii)粘弾性組成物を、10μm~1000μmの幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しして、1つまたは複数の微小押し出し要素を得るステップと;
(iii)食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように、微小押し出し要素を含む2つ以上の層を積み重ねるステップ;または代替として、2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられるステップと
を含む。
【0020】
この方法を実行する特定の様式については、次のセクションで詳述される。
本発明は、粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備える食用微小押し出し製品に関し、またそれを提供し、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマーおよび適切な食用溶媒を含み、
-微小押し出し要素の総重量に対するタンパク質の重量パーセンテージは、19%~49%であり、微小押し出し要素の総重量に対する食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%であり、
-微小押し出し要素は、10μm~1000μmの断面幅を有し、
-食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、食用微小押し出し製品の引張ヤング率は、5.0×103Pa~11.0×106Paであり、圧縮弾性率および引張ヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定され;
-微小押し出し要素の2つ以上の層は、食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように積み重ねられ;または代替として、2つ以上の層は、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられる。
【0021】
したがって、本発明の第2の態様は、上記で定義された方法により得ることができる食用微小押し出し製品であり、前記製品は、以前に定義された粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備え、食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、食用微小押し出し製品の引張ヤング率は、5.0×103Pa~1
1.0×106Paであり、圧縮弾性率および引張ヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定される。
【0022】
これらの圧縮弾性率およびヤング率は、食用微小押し出し製品の他の特徴、すなわち要素および微小押し出し要素の層の積み重ねの断面と組み合わせた、粘弾性微小押し出し要素が作製される粘弾性組成物の定性的および定量的特徴から生じる。
【0023】
この食用微小押し出し製品は、その食用性および栄養特性に影響を与えない様々な機械的ステップおよび任意選択で化学的ステップを通じて得られる。さらに、微小押し出しは、粘弾性組成物を、微小押し出し要素が作製される3D印刷用の注入可能なインクとして使用して、3D印刷によって実行することができる。これは、適切な溶媒中、特に水中のタンパク質および擬塑性ポリマーを含む前記粘弾性組成物のレオロジー特性によるものである。
【0024】
本発明のさらに別の態様は、肉代替品としての、上記で定義された食用微小押し出し製品の使用である。この態様はまた、本発明の第1の態様の食用微小押し出し製品を含むか、またはそれからなる肉代替品として配合することができる。動物由来の肉(ステーキ、ソーセージ等)および肉代替品の両方の混合物を得るために、本発明による「肉代替品」は、動物由来の本物の肉を低減するまたは「置き換える」ように使用される製品である。
【0025】
本発明のさらに別の態様は、肉類似品としての、上記で定義された食用微小押し出し製品の使用である。この態様はまた、本発明の第1の態様の食用微小押し出し製品を含むか、またはそれからなる肉類似品として配合することができる。「肉類似品」は一般に、代替肉、肉代用品、模擬肉、偽肉、模造肉、菜食主義者用の肉、植物ベースの肉またはビーガン肉として理解され、特定種類の肉のある特定の美的品質(テクスチャ、風味、外観等)または化学的特徴に近い。「肉代替品」と呼ばれることもある(Krintirasら、上記を参照)。
【0026】
本発明の1つの成功は、上記で開示されたように、自立型微小押し出し要素を得るために微小押し出しされ得る特定の定性的粘弾性組成物の効果的な組み合わせ、および2つ以上の層内の微小押し出し要素の配置である。この粘弾性組成物は、擬塑性ポリマーの存在による微小押し出しを可能にする適切な粘弾性パラメータを有する。擬塑性ポリマーは、ずり流動化を伴うポリマー化合物、またはせん断ひずみ下で粘度が低下するポリマー化合物である。
【0027】
驚くべきことに、特定の粘弾性パラメータを有する溶媒中(すなわち水中)のタンパク質および擬塑性ポリマーの新たな混合物が、第1の態様の食用微小押し出し製品の調製に使用するのに特に良好であることが見出された。したがって、タンパク質含有量が高く(組成物中19%~49%)、食用溶媒中に食用擬塑性ポリマーも含む、特定の新たな粘弾性組成物もまた開発されている。パラメトリックに定義すると、これらの新たな粘弾性組成物は、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、前記G'およびG’’は、0.16Hzの周波数および23℃の温度で、および45%~90%w/wの組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定され、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり
、損失弾性率G’’は350Pa超であり、粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24~
0.88である。この比は、損失正接(tan(δ))としても知られる。
【0028】
したがって、本発明の別の態様は、適切な食用溶媒中に、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質であって、植物由来タンパク質、昆虫タンパク質、藻類由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせか
ら選択されるタンパク質と;全粘弾性組成物に対する重量パーセンテージで0.2%~40%の、アルギン酸塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、およびそれらの組み合わせから選択される食用擬塑性多糖とを含む食用粘弾性微小押し出し可能組成物であり、粘弾性組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも45重量%の食用溶媒を含む。重量の残余は、粘弾性組成物の100%までの溶媒である。
【0029】
この粘弾性組成物は微小押し出しし可能であり、したがって、微小押し出しされるオリフィスの幅または直径の60%未満の成分(すなわち、タンパク質、食用溶媒および擬塑性ポリマー)の混合物の粒子サイズの均一な分布を有する。均一な分布とは、粒子の90重量%超が、微小押し出しされるオリフィスの幅または直径の60%未満の粒子サイズを有することを意味する。
【0030】
したがって、粘弾性組成物が10μm~1000μmの範囲の特定の幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しされる場合、粘弾性組成物は、6μm未満~600μm未満の粒子サイズの均一な分布を有する。したがって、微小押し出しされるオリフィスの幅もしくは直径が10μmの場合、粒子の90重量%超が6μm未満の粒子サイズを有し、または、微小押し出しされるオリフィスの幅もしくは直径が1000μmの場合、粒子の90重量%超が600μm未満の粒子サイズを有する。
オリフィスの幅または直径のこの60%により、本発明の方法のステップ(ii)において使用される押出機の閉塞が回避される。
【0031】
高い重量パーセンテージのタンパク質および擬塑性ポリマーの混合物は相分離する傾向があり、したがって押出機の詰まりおよび/または微小押し出しされる材料の分解に起因して押し出しが不可能となるため、タンパク質含有量が高い(19%~49%)粘弾性組成物、および粒子サイズの均一な分布を有する擬塑性ポリマーを得ることは簡単ではない。一方、混合物は、一度微小押し出されると動物ベースの(または肉のような)繊維質材料のおいしさ(口当たり)およびテクスチャを保証するためにタンパク質構造を保存しなければならない。
【0032】
発明者は、驚くべきことに、混合物中の重量パーセンテージが19%~49%のタンパク質、擬塑性ポリマー、および混合物の100%までの残余を占める少なくとも45%の食用溶媒の混合物が、
(a)タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒を容器内で混合すること;ならびに
(b)室温(すなわち20℃)から95℃未満に温度を上げる間に高い遠心力に攪拌を加え、1分(min)から30分(min)の期間、攪拌および温度を維持すること
により得ることができることを発見した。
【0033】
激しい攪拌にもかかわらず、タンパク質構造は、構造的および官能的特性を失うほどの程度まで損傷を受けなかったが、混合物は、微小押出機を詰まらせることなく通過するのに十分なサイズを有する粒子によって構成されていた。
【0034】
これらの高い重力は通常、セラミック分野において、セメントまたはセラミック材料の均一な混合物を得るために使用される。しかしながら、繊維質材料としてタンパク質を含む組成物におけるそれらの使用は、タンパク質に対する変性効果のために推奨されない。
【0035】
したがって、本発明の別の態様は、食用擬塑性ポリマー、19%~49%w/wの重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%w/wの食用溶媒であって、粘弾性組成物の100%w/wまでの残余である食用溶媒を含む、新たな食用粘弾性微小押し
出し可能組成物であり、両方のパーセンテージは粘弾性組成物の総重量に対するものであり、粘弾性組成物は、6μm未満~600μm未満の粒子サイズの均一な分布を有し、
(a)タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒を容器内で混合すること;ならびに
(b)温度を20℃から95℃未満の温度に上げ、1分~30分の期間攪拌および温度を維持しながら、10g~4000gの遠心力または相対遠心力(rcf)に1つまたは複数の攪拌サイクルを任意選択で複数の方向に適用すること
により得ることができる。
【0036】
約10gの相対遠心力は、半径10cmのロータで毎分300回転(rpm)に相当する。4000gは約6000rpm、すなわち5976rpmに相当する。約60gの相対遠心力は、半径10cmのロータで毎分730回転(rpm)に相当する。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1A】25w/w%の米タンパク質、5w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび70w/w%の水で構成される、微小押し出し可能な配合物(粘弾性組成物)を示す図である。
【
図1B】55w/w%の米タンパク質および45w/w%の水で構成される、微小押し出し不可能な配合物を示す図である。
【0038】
【
図2A】25w/w%の米タンパク質、5w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび70w/w%の水で構成される、自立型微小押し出しフィラメントを生成する配合物の例を示す図である。
【
図2B】5w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび95w/w%の水で構成される、非自立型微小押し出しフィラメントを生成する配合物を示す図である。
【0039】
【
図3A】異なる組成および粘弾性率を有する2つの多層微小押し出し製品の3D微小押し出し印刷のプロセスを示す図である。
【
図3B】異なる組成および粘弾性率を有する2つの多層微小押し出し製品の3D微小押し出し印刷のプロセスを示す図である。
図3Aおよび
図3Bに示される生成物は、25w/w%の米タンパク質、5%のアルギン酸ナトリウム、および70w/w%の水(
図3A)、ならびに20w/w%の米タンパク質、5%のアルギン酸ナトリウム、および75w/w%の水(
図3B)を含む組成物を使用して生成された。
【0040】
【
図4】XY分布を示す図であり、X軸およびY軸は、それぞれアルギン酸ナトリウムおよび米タンパク質濃度を表し、3D印刷可能な配合物は、曲線1、2、3および4によって画定される領域に含まれる。
【0041】
【
図5A】本発明による食用微小押し出し製品を調製するために使用される配合物の粘弾性特性の測定を実例的に示す図である。
【
図5B】Pa単位の応力振幅(σ)の関数として測定された、貯蔵(G')および損失(G')粘弾性率(Pa単位)の代表的な測定値を示す図である。
図5Bのグラフは、本発明による20w/w%の米タンパク質、5w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび75w/w%の水を含む組成物に対して行われた振幅掃引試験の代表的な測定値を示す。
【0042】
【
図6】XY分布を示す図であり、X軸およびY軸は、それぞれアルギン酸ナトリウムおよび米タンパク質濃度を表し、3D印刷可能な配合物(A-H)は、
図4で前述したように曲線1、2、3および4で画定される領域に含まれる。組成物のそれぞれに関連する値[G'、G’’、|η
*|、tan(δ)]は、それらの粘弾性パラメータを要約したものである。
【0043】
【
図7A】食用微小押し出し製品の引張応力下での機械的特性の測定を実例的に示す図である。
【
図7B】製品が引張応力を受けたときの工学的応力-ひずみ曲線の代表的な測定値を示す図である。
図7Bの工学的応力-ひずみ曲線は、25w/w%の米タンパク質、25w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび50w/w%の水を含む組成物を使用して生成された製品に対して行われた代表的な引張試験を示す。応力はMPaで示され、ひずみはmm/mmで示される。
【0044】
【
図8A】食用微小押し出し製品の圧縮応力下での機械的特性の測定を実例的に示す図である。
【
図8B】製品が圧縮応力を受けたときの工学的応力-ひずみ曲線の代表的な測定値を示す図である。
図8Bの工学的応力-ひずみ曲線は、25w/w%の米タンパク質、25w/w%のアルギン酸ナトリウムおよび50w/w%の水を含む組成物を使用して生成された製品に対して行われた代表的な圧縮試験を示す。応力はMPaで示され、ひずみはmm/mmで示される。
【0045】
【
図9】本発明による食用微小押し出し製品の圧縮弾性率および引張ヤング率の範囲を表すグラフである。影付きの長方形は、製品がカバーする範囲を表す。
【0046】
【
図10A】選択された製品の微細構造の代表的な走査型電子顕微鏡画像を、上面図の視野角から200倍の倍率で示す図である。
【
図10B】選択された製品の微細構造の代表的な走査型電子顕微鏡画像を、横方向の視野角から200倍の倍率で示す図である。これらの画像に示されている製品は、25w/w%の米タンパク質、25%のアルギン酸ナトリウム、および50w/w%の水で構成されていた。
【0047】
【
図11A】選択された製品の微細構造の代表的な走査型電子顕微鏡画像を、200倍の倍率で示す図である。
【
図11B】選択された製品の微細構造の代表的な走査型電子顕微鏡画像を、15000倍の倍率で示す図である。
図11Bは、
図11Aに示されているのと同じ画像の拡大図を表し、より高い倍率では、単一の微小押し出しフィラメントの内側に含まれているナノ繊維の方向への整列を観察することができた。
【0048】
【
図12】肉類似製品の3D微小押し出し印刷プロセスを実例的に示す図であり、肉類似製品は、2つの異なる組成物を使用して生成され、それぞれ別個の押出機内にあり、各層で2つの押出機を交互に使用した。具体的には、この例で使用される押出機の1つは、25w/w%のRP、5w/w%のSA、および70w/w%の水の組成を有する層を生成し、他方の押出機は、25w/w%のRP、25w/w%のSA、および50w/w%の水の組成を有する層を生成した。
【0049】
【
図13】12.5w/w%の米タンパク質、12.5w/w%のエンドウ豆タンパク質、5w/w%のSAおよび70w/w%の水の組成物を使用して生成された、完成した食用多層微小押し出し肉類似製品の例を示す図である。
【0050】
【
図14A】鶏胸肉の一部と比較した、この実施例に記載の製品の鍋での調理プロセス中に得られた代表的な画像を示す図である。
【
図14B】鶏胸肉の一部と比較した、この実施例に記載の製品の鍋での調理プロセス中に得られた代表的な画像を示す図である。
【0051】
【
図15】75w/w%の水、20w/w%のエンドウ豆タンパク質(PP)および5w/w%のカラギーナン(CG)で構成され、自立型微小押し出しフィラメントを生成する微小押し出し可能な粘弾性配合物の例を示す図である。
【0052】
【
図16】73w/w%の水、25w/w%のエンドウ豆タンパク質(PP)、2%のジェランガム(GG)を含む粘弾性組成物を使用して生成された多層微小押し出し製品の3D微小押し出し印刷のプロセスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明の詳細な説明
本出願において使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当技術分野で知られている通常の意味で理解されるものとする。本出願において使用されるある特定の用語の他のより具体的な定義は以下に記載されており、他に明示的に定められた定義がより広い定義を提供しない限り、明細書および特許請求の範囲全体に均一に適用されることを意図している。
【0054】
説明によれば、「粘弾性組成物」または「粘弾性材料」(同義語として交換可能に使用される)は、粘弾性挙動を有する組成物である。粘弾性は、変形時に粘性特性と弾性特性の両方を示す材料の特性である。水等の粘性材料は、せん断流に抵抗し、応力が加えられると時間とともに直線的にひずむ。弾性材料は伸ばされるとひずみ、応力が取り除かれるとすぐに元の状態に戻る。粘弾性材料は、これらの特性の両方の要素を有し、したがって時間依存的なひずみを示す。弾性は通常、規則正しい固体の結晶面に沿って伸びる結合の結果であるが、粘度は非晶質材料内の原子または分子の拡散の結果である。粘弾性は、せん断レオメトリーを使用して、小さな振動応力を印加し、生じるひずみを測定することで調査される。粘弾性材料の貯蔵および損失弾性率は、弾性部分を表す貯蔵エネルギー、および粘性部分を表す熱として放散されるエネルギーの尺度である。同様に、これは「せん断貯蔵(G')」および「せん断損失(G’’)」弾性率の同義語としても定義され、使
用される。レオロジーでは、ずり流動化は、せん断ひずみ下または時間の経過とともに粘度が低下する流体の非ニュートン挙動である。これは、(現在の説明のように)擬塑性挙動の同義語と見なされることがあり、通常、チキソトロピー等の時間依存的効果を除外するものとして定義される。ずり流動化挙動は、一般に、低分子量の純粋な液体、またはショ糖や塩化ナトリウム等の小分子の理想溶液では見られないが、ポリマー溶液および溶融ポリマー、ならびに複雑な液体および懸濁液、例えばケチャップ、ホイップクリーム、血液、塗料、およびネイルポリッシュにおいてよく見られる。
【0055】
粘弾性特性は、せん断応力下でのレオロジー測定によって決定される。この分析は、多層製品の形態で適切に微小押し出しされ得る組成物の最適な粘弾性特性を評価するのに役立つ。この目的で使用される具体的なデバイスは、通常23℃で動作する、Haake Mars IIIレオメータ(Thermo Fisher Scientific、USA)等のレオメータである。測定システムは、壁の滑りを回避し、測定される組成物のグリップを強化するために、一対の平行な鋸歯状のプレートからなる。タンパク質および擬塑性ポリマーを含む、この説明において開示された組成物の粘弾性特性を測定するために、5Nの垂直力を有する圧縮応力が印加された(以下の例を参照)。振動試験を行って、粘弾性率(貯蔵弾性率G'および損失弾性率G’’)、複素粘度係数(|η*|)、お
よび粘弾性率間の関係を決定付けるtan(δ)=G’’/G'として測定される損失正
接(tan(δ))(ここではG’’/G'比とも呼ばれる)を測定した。この目的のた
めに、振幅掃引試験および周波数掃引試験の2つの異なる種類の振動試験が行われる。振幅掃引試験では、周波数がf=1Hzに固定され、印加応力(σ)の振幅が0.005Paから2Paに増加されて、粘弾性線形領域(VLR)が区切られるが、これは粘弾性率が応力振幅に依存せず、通常弾性率の一定値が観察される領域である。次いで、周波数掃
引試験が行われ、この試験では、印加応力がVLR内の値に固定され、周波数が変更される。周波数掃引試験により、周波数の変化下での粘弾性率の挙動を評価することができる。損失正接tan(δ)は、0.15Hzで測定される。
【0056】
材料の圧縮弾性率は、材料に印加される圧縮応力と対応する圧縮ひずみとの関係を特徴付け、2つのクランプ間で材料を圧迫または圧縮することがどれほど簡単であるかを本質的に定義する。ヒドロゲル等のネットワーク内に大量の液体を含むポリマーベースの材料の場合、圧縮応力下での粘弾性機械的挙動の分析は、一般に、材料を非拘束圧縮試験にかけることによって分析される。そのような液体で膨潤した材料に対して非拘束圧縮試験を実行する場合、圧縮弾性率は典型的に、調査において指定された定義済みひずみ値(例えば15%のひずみ)に対応する工学的応力-ひずみ曲線の勾配としての、固定された低速変位速度で材料を圧縮することで計算される。
【0057】
引張ヤング率(または単にヤング率)は、張力下の固体材料の剛性の尺度である材料の機械的パラメータである。このパラメータは、一軸引張応力を受けたときの食用製品の挙動に関する情報を提供する。これは、一軸変形の線形弾性領域における材料の応力(単位面積あたりの力)とひずみ(比例変形)との間の関係を定義する。ヤング率Eは、工学的応力-ひずみ曲線の弾性(初期、線形)部分において、工学的引張応力σを工学的伸長ひずみεで割ることによって計算され得る。
【0058】
この説明における食用微小押し出し製品の機械的パラメータの決定は、既知の標準的な方法を使用して実行された。食用微小押し出し製品の機械的抵抗を評価するために、引張および圧縮応力下での機械的挙動を、500Nロードセンサ(MTS Bionix358、USA)を備えたサーボ油圧試験システムを使用して、23℃および45%~90w/w%の範囲の食用製品中の溶媒含有量(水または水和グレード)で評価した。引張ヤング率(EY)、破壊時の工学的応力(σB)および破壊時の工学的ひずみ(εB)の値は、一軸引張応力下で計算され、圧縮弾性率(EC)の値は、非拘束一軸圧縮応力下で計算された。クランプの変位速度は、実験中一定に保たれ、引張試験および圧縮試験の両方で1mm/分に等しかった。ヤング率は、工学的応力-ひずみ曲線の最初の線形部分の勾配として計算され、一方破壊時の工学的応力(σB)および破壊時の工学的ひずみ(εB)は破壊の時点で決定され、続いて応力値が急速に減少した。圧縮試験では、圧縮弾性率は、15%ひずみでの応力-ひずみ曲線の勾配から決定された。同等の測定様式には、10%~60%のひずみでの応力-ひずみ曲線の傾きが含まれる。
【0059】
「異方性」は方向に依存する特性であり、「等方性」とは対照的に、異なる方向で異なる特性を意味する。これは、異なる軸に沿って測定した場合の、材料の物理的または機械的特性(吸光度、屈折率、導電率、引張強度等)の差として定義され得る。異方性の例は、木材または肉に見られ、これは粒子を横断するよりも粒子に沿って壊れやすい。食用製品の層を形成する微小押し出し要素のいくつかの特定の配置により、製品は、伝統的な動物生産の肉で同様に生じるように、ある方向に沿って別の方向よりも分割しやすいという意味で異方性を有する。これは、食用製品の2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられている場合に該当する。
【0060】
「食用」および「その食用塩」という表現は、摂取することができ(食品グレード)、食用製品中の他の成分と適合性のある材料、組成物、またはビヒクル(溶媒)を指す。これは、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性、または合理的な利益/リスク比に見合った他の問題もしくは合併症なしに、人間および動物が使用するためのものでなければならない。
【0061】
本明細書において、「2つ以上の層が微小押し出し要素である」と述べられる場合、層
は、粘弾性組成物で作製された微小押し出し要素を含むことが理解されるべきである。この表現は、層がこれらの微小押し出し要素のみで構成もしくは適合化されていること、または微小押し出し要素に加えて他の食用材料も層に含まれることを含む。同様に、「粘弾性組成物で作製された微小押し出し要素」という表現は、前記粘弾性組成物で作製された微小押し出し要素に関する。
【0062】
「垂直断面」に関して、本明細書に従い、積層を垂直に切断し、異なる積層を視覚化することを可能にする断面として理解されるべきである。
【0063】
本明細書で使用される場合、粘弾性組成物に関連する「粒子サイズ」という用語は、特徴的な物理的寸法を指す。例えば、実質的に球形である粒子の場合、粒子のサイズは粒子の直径に対応する。繊維質タンパク質が使用される場合に一般的に見られる不完全な球形の場合、押し出し中に楕円体粒子がそれらの長軸を押し出し方向に平行に配向させるため、サイズは一般に楕円体の短軸に対応する。粒子のセットを特定のサイズのものとして言及する場合、セットは、指定されたサイズ付近のサイズの分布を有し得ることが企図される。したがって、本明細書で使用される場合、粒子のサイズまたは粒子サイズは、サイズの分布のピークサイズ等のサイズの分布の様式を指し得る。さらに、繊維質タンパク質が使用される場合に一般的に見られる不完全な球形の場合、直径は、物体を含む球形または本体の同等の直径である。この直径は一般に「流体力学的直径」と呼ばれ、その測定は、Wyatt MoebiusをAtlasセル加圧システムまたはMalvernorの他のレーザー回折粒子サイズ分析器システムと組み合わせて使用して実行され得る。透過型電子顕微鏡(TEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)の画像もまた、直径に関する情報を提供する。別の方法として、粒子サイズは、粒子サイズが篩分け法によって測定される篩保持法を使用して測定され得る。この篩分け方法によれば、粒子サイズおよび/または粒子サイズの分布が測定される材料は、円形篩ユニットを含む篩に導入される。各篩分けユニットは特定の細孔径を有し、材料の損失を回避するために、細孔径は、篩分けユニットのそれぞれが密閉して互いに近接するように、最大のものから最小のものへと編成される。篩分けユニットは、材料が全ての篩分けユニットを達成するように所定の時間(すなわち5分間)振動にさらされ、材料は試験の終わりに全ての篩分けユニットに沿って異なるフラクションで分配される。最後に、篩分けユニットの重量が測定され、各フラクションの重量パーセンテージが計算される。
【0064】
粒子サイズの均一な分布は、異なる粒子サイズのセットに関連するが、特定のサイズまたは特定のサイズのグループ(すなわち固定値よりも低い)の割合が高い(少なくとも90%)。
【0065】
本明細書で使用される場合、成分の「%w/w」、「wt%」、または「重量パーセンテージ」という用語は、組成物の総重量、または具体的に言及されている場合は他の成分の総重量に対する単一成分の量を指す。
【0066】
上で示されたように、本発明は、第1の態様として、粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を含む食用微小押し出し製品を製造するための方法を包含し、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および適切な食用溶媒を含み、方法は、
(i)適切な食用溶媒中にタンパク質、および食用擬塑性ポリマーを含む粘弾性組成物を提供するステップであって、粘弾性組成物は、19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%の食用溶媒を含み、両方のパーセンテージは粘弾性組成物の総重量に対するものであり、食用溶媒は粘弾性組成物の100重量%までの残余である、ステップと;
(ii)粘弾性組成物を、10μm~1000μmの幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しして、1つまたは複数の微小押し出し要素を得るステップと;
(iii)食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように、微小押し出し要素を含む2つ以上の層を積み重ねるステップ;または代替として、2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられるステップと
を含む。
【0067】
したがって、粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備える食用微小押し出し製品が提供され、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマーおよび適切な食用溶媒を含み、
-微小押し出し要素の総重量に対するタンパク質の重量パーセンテージは、19%~49%であり、微小押し出し要素の総重量に対する食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%であり、前記食用溶媒は粘弾性組成物の100重量%までの残余であり;
-微小押し出し要素は、10μm~1000μmの断面幅を有し;
-食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、食用微小押し出し製品のヤング率は、5.0×103Pa~11.0×106Paであり、前記圧縮弾性率およびヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定され;
-微小押し出し要素の2つ以上の層は、食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように積み重ねられ;または代替として、2つ以上の層は、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられる。
【0068】
次いで、上で示されたように、別の態様は、上記で定義された方法により得ることができる食用微小押し出し製品であり、製品は、以前に定義された粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備え、方法により、食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、食用微小押し出し製品の引張ヤング率は、5.0×103Pa~11.0×106Paであり、圧縮弾性率および引張ヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定される。
【0069】
換言すれば、それはまた、
(i)適切な食用溶媒中に、タンパク質および食用擬塑性ポリマーを含む粘弾性組成物を提供するステップであって、粘弾性組成物は、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%の食用溶媒を含み、前記食用溶媒は粘弾性組成物の100重量%までの残余である、ステップと;
(ii)粘弾性組成物を、10μm~1000μmの幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しして、1つまたは複数の微小押し出し要素を得るステップと;
(iii)食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように、微小押し出し要素を含む2つ以上の層を積み重ねるステップ;または代替として、2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられるステップと
により、本発明の食用微小押し出し製品の一部を形成する。
【0070】
この食用微小押し出し製品は、上記の値の範囲内の圧縮弾性率および引張ヤング率を有する。
【0071】
「交差する微小押し出し要素」に関して、要素のうちの少なくとも2つが同じ平面内で交差していることを理解されたい。対照的に、「重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素」は、接触して交差しているが異なる平面にあり、一方の要素が他方の要素
の上に配置されている要素に関連する。
【0072】
食用微小押し出し製品の圧縮弾性率およびヤング率は、45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定されると述べられる場合、食用製品のこの2つの機械的特性の測定が、溶媒が水で構成される場合、製品が水和形態であるときに実行されることを意味し、この溶媒は、無機塩、ビタミンおよび他の食用添加物等の追加の成分を含み得る。したがって、2つの機械的特性の値は、乾燥、調理、凍結、または凍結乾燥の任意の他のプロセスが実行される前の値である。
【0073】
次の項は、第1および第2の態様の具体的な実施形態に関する。
【0074】
具体的な実施形態において、第2の態様による食用微小押し出し製品は、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および適切な食用溶媒を含む粘弾性組成物で作製され、粘弾性組成物に対するタンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒の重量パーセンテージは、微小押し出し要素の場合と同じパーセンテージである。
【0075】
別の具体的な実施形態において、第2の態様の食用微小押し出し製品は、2~500層、より具体的には2~100層の微小押し出し要素を含む。より具体的な実施形態において、これは、10~50層の微小押し出し要素を含む。さらにより具体的には、これは、10~20層の微小押し出し要素を含む。
【0076】
微小押し出し要素を含む食用微小押し出し製品の層は、実際に、これらの微小押し出し要素の平面内の特定の配置によって構成される。したがって、層は、特に微小押し出し要素から形成され、これらの要素は、10μm~1000μmの断面幅を有する。以下に示されるように、微小押し出し用のオリフィスの形状に応じて、要素は、長方形もしくは正方形の断面または円形の断面を有する。この後者の場合、層の10μm~1000μmの幅は、円形断面を有する要素の直径によって画定される幅となる。長方形、正方形、または円形の断面に加えて、代替の断面は、楕円形の断面、星型の断面、菱形の断面、およびその他の多面体型の断面を含む。実際に、この説明によれば、「断面幅」という表現は、幅が長方形/正方形の高さ、または直接円の直径である長方形もしくは正方形の断面または円形の断面とは異なる場合、幅は、断面が多面体形状を有する場合、微小押し出し要素の断面が外接する円周の直径に関連する。例えば、断面が星型の場合、幅は星に外接する円周の直径によって画定される。一方、楕円形断面の微小押し出し要素の場合、幅は、微小押し出し要素が微小押し出し要素の層を構成(または形成)するためにどのように配置されるかに応じて、短軸または長軸の長さのいずれかとなる。
【0077】
別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素の幅は、100μm~900μmであり、より具体的には200μm~800μmであり、さらにより具体的には400μm~600μmである。別のより具体的な実施形態において、微小押し出し要素の幅は、400、450、500、550、および600μmから選択される。この幅は、微小押し出しフィラメントである微小押し出し要素の直径(または断面)に対応する。
【0078】
本発明による食用微小押し出し製品の具体的な実施形態において、微小押し出し要素は、微小押し出しシート、微小押し出しフィラメント、平行に配置されて層を形成するシートおよびフィラメントの両方、ならびにそれらの組み合わせから選択される。この組み合わせにより、層内でそれを形成する微小押し出し要素は等しくても異なっていてもよく、したがって微小押し出しシートおよび微小押し出しフィラメントの組み合わせの選択肢を含むことが理解されるべきである。これらの組み合わせは、繊維質の肉のテクスチャに似た食用微小押し出し製品、したがって異方性の繊維分布を組織化することを目的としている。
【0079】
別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素は、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられ、動物の多くの骨格筋線維の配向に類似している。実際に、様々な動物の骨格筋(または横紋筋とも呼ばれる)の筋線維は細長い形状を示す細胞であり、そのような要素の束はしばしば好ましい平行方向に配置されて、線維束と呼ばれる構造を形成し、これは筋周膜と呼ばれる受動的な構造に囲まれている。そのような線維束は、筋肉束を形成するためにグループとして配置されるが、好ましくは筋肉の長軸と同じ方向に配向され、いわゆる平行筋を形成し得る。
【0080】
別の具体的な実施形態において、微小押し出し製品は、複数の微小押出機またはマイクロノズルで構成される押出機またはノズルを介した押し出しから得られる層内の要素を含み、そのようにして、押し出し要素は、10μm~1000μmの幅を有する複数の多角形で構成され、複数の交差した多角形を示す押し出し要素の断面を画定する。この実施形態において、層内の押し出し要素は、10μm~1000μmの幅を有する複数の微小要素で構成され得る。
【0081】
換言すれば、押出機またはノズルが複数の微小押出機またはマイクロノズルで構成される場合、微小押し出し要素は指定されたサイズ(10μm~1000μmの幅)内にある。例えば、押し出し要素は、長方形の形状を有する複数の微小押出機から製造され、そのような微小押出機は、異なって配向され、最終的にらせんの最終断面積を画定する。
【0082】
それぞれ第1および第2の態様による方法または食用微小押し出し製品の別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素の総重量に対するタンパク質の重量パーセンテージ、または粘弾性組成物中のタンパク質の重量パーセンテージは、25%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%である。別の具体的な実施形態において、タンパク質の重量パーセンテージは、29%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%である。粘弾性組成物中のタンパク質および食用溶媒の重量パーセンテージは、微小押し出しに使用される粘弾性組成物中のタンパク質または溶媒の量として定義される。
【0083】
本発明の第1の態様の方法または第2の態様による食用微小押し出し製品の別の具体的な実施形態において、タンパク質は、動物由来タンパク質、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。実際に、粘弾性組成物がタンパク質を含むと述べられる場合、同じ起源または異なる起源からの1つまたは複数のタンパク質の種類を包含すると理解されるべきである。細菌由来タンパク質および酵母由来タンパク質の場合、これらの生物および細胞に固有のタンパク質と同様に、生物工学的プロセスによってこれらの生物および細胞で産生され得るタンパク質が包含されるべきである。
【0084】
本発明の第1の態様の方法または第2の態様による食用微小押し出し製品の別の具体的な実施形態において、タンパク質は、非ヒト動物由来タンパク質、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0085】
具体的な非ヒト動物由来タンパク質は、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、およびウマ等の非ヒト哺乳動物;ニワトリおよびシチメンチョウ等の家禽;昆虫タンパク質;魚のタンパク質;ならびにそれらの組み合わせから選択される。非ヒト動物由来のタンパク質は、筋肉組織に直接由来するタンパク質だけでなく、牛乳に由来する乳製品等、これらの動物から得ることができる化合物にも関連する。特に興味深いのは、一般に牛由来のヘム基を含むタンパク質(またはヘム含有タンパク質)である。具体的な植物起源タンパク質は、果実
タンパク質、トウモロコシ、米、小麦、大豆、大麦、オート麦、ソルガム、ライ麦、ライ小麦、フォリオ(folio)等の穀物タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。また、植物、酵母、藻類、または細菌由来のヘム含有タンパク質も特に興味深い。
【0086】
第1の態様の方法、または第2の態様の食用微小押し出し製品の別の具体的な実施形態において、タンパク質は、非ヒト動物タンパク質である。さらにより具体的な実施形態において、タンパク質は、昆虫タンパク質である。
【0087】
本発明による方法または食用微小押し出し製品の具体的な実施形態において、タンパク質は、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。この具体的な実施形態では、ビーガン製品(すなわち動物タンパク質を含まない)が得られる。
【0088】
第1の態様および第2の態様による方法または食用微小押し出し製品の別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素の総重量に対する食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージ、または前記微小押し出し要素に適合する粘弾性組成物中の食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージは、0.2%~40%であり、食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%である。
【0089】
より具体的な実施形態において、食用擬塑性ポリマーは、
-多糖類、より具体的にはコーンスターチスターチ、カウピースターチ、ライススターチ、クズスターチおよび他のスターチを含むスターチ、イナゴ豆ガム、タラガム、グアーガム、キサンタンガム、カラギーナンおよびその誘導体、例えばカッパカラギーナン、フルセララートおよびイオタカラギーナン、カラヤガム、ジェランガム、脱アセチル化ジェランガム、高アクリル(弾性)ジェランガム、硬質(低アクリル)ジェランガム、アラビアガム、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩、例えばアルギン酸ナトリウム、および誘導体、例えばアルギン酸ジアルデヒドおよび酸化アルギン酸塩、カードラン、コンニャクまたはコンニャクグルコマンナン、フェヌグリークガム、セルロースおよびその誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロース、ナノフィブリル化セルロースまたはセルロースナノ繊維、バクテリアセルロース、キチン、キトサン、ペクチン、高メトキシルペクチン、低メトキシルペクチン、グリコサミノグリカン、例えばヒアルロナン、寒天、アガロース、デキストラン、プルラン、カードラン、ならびにそれらの組合せからなる群からのもの;
-擬塑性タンパク質、より具体的には乳タンパク質濃縮物、バターミルク、ベータラクトグロブリン、卵白粉末、乳清タンパク質、コラーゲン、ゼラチン、ゼラチンメタクリレート、糖タンパク質、滑液に含まれるタンパク質、例えばアルブミンおよびグロブリン、ウシ血清のタンパク質、ならびにそれらの組み合わせからなる群からのもの;ならびに多糖類および擬塑性タンパク質の組み合わせから選択される。
【0090】
より具体的な実施形態において、擬塑性ポリマーは、コーンスターチ、クズスターチ、イナゴ豆ガム、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩、例えばアルギン酸ナトリウム、タラガム、カッパカラギーナン、フルセララート、イオタカラギーナン、カードラン、コンニャク、セルロースおよびその誘導体、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースまたはメチルセルロース、ペクチン、バクテリアセルロース、カラヤガム、グアーガム、ジェランガム、高アクリル(弾性)ジェランガム、硬質(低アクリル)ジェランガム、アラビアガム、キチン、キトサン、キサンタンガム、寒天、アガロース、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されうる多糖類である。
【0091】
別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の任意の実施形態と組み合わせて、擬塑性ポリマーは、擬塑性タンパク質、より具体的には、米タンパク質、麻タンパク質、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、フィブロネクチン、オステオポンチン、カロブタンパク質、エンドウ豆タンパク質、小麦タンパク質、スピルリナタンパク質、オート麦タンパク質、大豆タンパク質、レンチルタンパク質、乳清タンパク質、ピーナツタンパク質、マングビーン、およびそれらの組み合わせからなる群からのものである。
【0092】
実際に、擬塑性ポリマーは、擬塑性挙動を有する他の化合物を伴う可能性がある。擬塑性挙動を有するこれらの化合物は、微小押し出し要素(または方法において提供される粘弾性組成物)中の唯一の擬塑性化合物として使用され得る。ポリマー性擬塑性化合物ではない擬塑性化合物は、擬塑性脂質、特にレシチン、バター、オメガ-3脂肪酸、ショ糖エステル、食品グレードの動物油、ならびにヤシ、ココナツ、カノーラ、ホホバ、トウモロコシ、およびヒマワリ油を含む植物油;擬塑性流体、特に滑液、ウシ血清、粒子の懸濁液、マイクロ粒子およびナノ粒子、ならびにそれらの組み合わせから選択される。他の擬塑性化合物または組成物は、ショ糖エステル、チーズ、ジャム、ケチャップ、マヨネーズ、スープ、タフィー、およびヨーグルトから選択される。
【0093】
第1および第2の態様のさらにより具体的な実施形態において、擬塑性ポリマーは、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナンおよびそれらの組み合わせから選択される多糖類である。全ての多糖類は食用グレードである。第1および第2の態様のさらにより具体的な実施形態において、擬塑性ポリマーは、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチンおよびそれらの組み合わせから選択される多糖類である。全ての多糖類は食用グレードである。
【0094】
さらに、より具体的な実施形態において、擬塑性ポリマーは、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩であり、異なる長さのアルギン多糖鎖を含む。したがって、擬塑性ポリマーは、分子量の異なるアルギン酸(または塩)鎖の混合物である。
【0095】
この特定のアルギン酸ナトリウムは、異なる長さ、したがって異なる分子量の多糖鎖の混合物であり、粘弾性組成物または微小押し出し要素のいずれかの粘度は、高剪断速度で特に低く、一方、粘度は、低剪断速度で増加する。微小押し出しプロセス中には、高いせん断速度が存在する。微小押し出し要素が支持体上に堆積されると、低い剪断速度が存在する、または剪断速度が存在せず、粘弾性組成物の組成のために、それは自立する。
【0096】
「自立型」に関して、一旦任意の所望の形状(円形断面のシートまたはフィラメント)に微小押し出しされた後、微小押し出し要素はその形状を広げも失いもしないことを理解されたい。自立機能は、液体としての挙動のために微小押し出しすることができ、支持体上に堆積すると固体として挙動する粘弾性組成物の結果である。
【0097】
より具体的な実施形態において、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩は、4Pa.s~5000Pa.sの粘度を有する。より具体的には、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩は、100Pa.s~1200Pa.sの粘度を有し、さらにより具体的には、粘度は、200Pa.s~800Pa.sである。別の具体的な実施形態において、アルギン酸またはアルギン酸の食用塩は、300Pas.S、350Pa.s、400Pa.s、450Pa.s、500Pa.s、550Pa.s、600Pa.s、650Pa.s、700Pa.s、750Pa.s、および800Pa.sからなる群から選択される粘度を有する。この粘度は、動的粘度計において、水中1%のアルギン酸の組成物で25℃で測定された動的粘度として定義される。
【0098】
アルギン酸の具体的な食用塩には、アルギン酸のアルカリ塩またはアルカリ土類塩、およびそれらの組み合わせが含まれる。より具体的には、アルギン酸のナトリウム塩(アルギン酸ナトリウム)である。
【0099】
本発明の第1および第2の態様の別の具体的な実施形態において、食用溶媒は、飲料水、果汁、肉汁、およびそれらの組み合わせから選択される。実際に、それは、タンパク質および擬塑性ポリマーと混合して均質化されたペーストを得ることができる任意の食用液体であり得る。より具体的には、飲料水であり、これは、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される追加の食用化合物を任意選択で含む。
【0100】
別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の任意の実施形態と組み合わせて、粘弾性組成物は、0.16Hzおよび23℃の温度で、45%~90%w/wの組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートからなるレオメータで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり、損失弾性率G’’は350Pa超であり、粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24
~0.88である。より具体的な実施形態において、貯蔵弾性率G'は2000Pa超で
あり、損失弾性率G’’は1000Pa超である。
【0101】
第1の態様による食用微小押し出し製品のより具体的な実施形態において、粘弾性組成物の貯蔵弾性率G'は、2000Pa~140000Paの値を有し、粘弾性組成物の損
失弾性率G’’は、1000Pa~40000Paの値を有し;粘弾性組成物のG’’/G'比は、0.24~0.88である。
【0102】
本発明の食用微小押し出し製品は、特に、タンパク質含有量および擬塑性ポリマーに加えて、それらが目的の追加の食用化合物を含む、カスタマイズ可能な食用材料として考えられる。したがって、別の具体的な実施形態において、食用微小押し出し製品は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、細胞および前記細胞の抽出物、ならびにこれら全ての化合物および/または細胞および/または細胞抽出物の組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤をさらに含む微小押し出し要素に適合する粘弾性組成物から作製される。
【0103】
したがって、方法は、ステップ(i)において、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、細胞および前記細胞の抽出物、ならびにこれら全ての化合物および/または細胞および/または細胞抽出物の組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤をさらに含む粘弾性組成物を提供することを含む。
【0104】
より具体的な実施形態において、細胞は、動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、および細胞の抽出物、ならびにこれら全ての細胞および/または細胞抽出物の組み合わせから選択される。別の具体的な実施形態において、細胞は、非ヒト動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、および細胞の抽出物、ならびにこれら全ての細胞および/または細胞抽出物の組み合わせから選択される。さらに別の具体的な実施形態において、細胞は、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、および細胞の抽出物、ならびにこれら全ての細胞および/または細胞抽出物の組み合わせから選択される。
【0105】
「細胞抽出物」は、目的の細胞を溶解し、細胞壁、DNAゲノムおよびその他の破片を遠心分離することによって得られる細胞化合物の混合物である。残りは、リボソーム、ア
ミノアシルtRNAシンテターゼ、翻訳開始因子および伸長因子、ヌクレアーゼ等を含む必要な細胞機構である。現在使用されている一般的な細胞抽出物は、大腸菌(ECE)、ウサギ網状赤血球(RRL)、小麦胚芽(WGE)、および昆虫細胞(ICE)から作製される。これらの抽出物は全て市販されている。酵母抽出物は、細胞の内容物を抽出する(そして細胞壁を取り除く)ことによって作製される酵母製品の一般名であり、それらは、食品添加物もしくは香料として、または細菌培地の栄養素として使用される。代替として、オメガ-3脂肪酸の濃縮およびカプセル化された形態を運ぶ成分(Cubiq Smart Omega-3等)、または動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、細胞の抽出物、ならびに細胞および/または細胞の抽出物の組み合わせからのタンパク質または低脂肪タンパク質で構成される成分(細胞培養および細胞ベースの肉代用成分および代替成分(Cubiq Smart Fat等)を含む)である。
【0106】
さらに押し出される粘弾性組成物への細胞または細胞抽出物の添加は、組成物で作製される微小押し出し要素をさらに得るために、組成物の押し出し性特性を維持することを可能にする。
【0107】
本明細書において動物タンパク質または動物細胞が開示される場合、それらはまた、単離されたヒト細胞または単離されたヒトタンパク質を含む。これらのヒト細胞および/またはタンパク質の供給源は、特に確立された細胞培養物からであり、および/または組換え技術から得られる。ヒトタンパク質および/または細胞の使用は、例えば、ヒトによってより良好に吸収されるヒト組換えヘモグロビンまたはエリスロポエチンの使用を可能にする。タンパク質を含む本発明の方法または食用微小押し出し可能製品の具体的な実施形態は、治療効果があっても、目的の細胞、細胞抽出物、およびタンパク質を含み得るカスタマイズされた食用製品として考えられる。
【0108】
芳香化化合物の中で、ビーフ-チキンまたは他の肉類似品、関連する芳香、またはマーキングフレーバー等の肉関連の芳香が好ましい。これらの芳香の多くは揮発性化合物であり、特に食用製品を調理したときに生じる。これらの揮発性化合物の例には、2-メチル-フラン、ビス(2-メチル-3-フリル)ジスルフィド、2-ペンチル-フラン、3,3´-ジチオビス-2-メチル-フラン、2,5-ジメチル-ピラジン、2-メチル-3-フランチオール、ジヒドロ-3-(2H)-チオフェノン、5-メチル-2-チオフェンカルボキサルデヒド、3-メチル-2-チオフェンカルボキサルデヒド、2-メチル-チアゾール、硫化ジメチル、デカナール、5-エチルジヒドロ-2(3H)-フラノン、ジヒドロ-5-ペンチル-2(3H)-フラノン、2-オクタノン、3,5-オクタジエン-2-オン、p-クレゾール、ヘキサン酸、二酢酸水素ナトリウム、コハク酸、2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)、ヒドロキシル-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン(フロノール)、酒石酸、4-ヒドロキシ-2,5-ジメチル-3(2H)-フラノン、3-フェニル-プロペナール(シアンニミックアルデヒド(ciannimic aldehyde))、またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0109】
上述のカテゴリー内の具体的な他の食用添加物には、グルコース、リボース、フルクトース、ラクトース、キシロース、アラビノース、グルコース-6-ホスフェート、マルトース、およびガラクトース、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される追加の糖、ならびにシステイン、シスチン、チアミン、メチオニン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される追加の単離されたアミノ酸が含まれる。他の添加剤は、酢酸、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アルファリノレン酸、ガンマリノレン酸、アラキジン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、およびエルカ酸のうちの1つまたは複数から選択される。
【0110】
これらの添加剤は全て、具体的な実施形態において、微小押し出し要素が形成される粘弾性組成物の一部を形成するか、または粘弾性組成物に含まれる。別の具体的な実施形態において、粘弾性組成物が微小押し出しされた後、添加剤が添加される。
【0111】
したがって、第1の態様による方法の具体的な実施形態において、方法は、ステップ(ii)および(iii)のいずれか1つの後に、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、細胞および細胞の抽出物、ならびにこれら全ての化合物および/または細胞および/または細胞抽出物の組み合わせからなるリストから選択される1種または複数種の添加剤を添加する、より具体的には細胞播種のプロセスにより細胞および細胞抽出物を添加するステップ(iv)をさらに含む。
【0112】
これらの1種または複数種の添加剤は、微小押し出し要素への注入、インクジェット、滴下、レーザー支援放出もしくは噴霧によって、または前記添加剤を含む組成物を既に微小押し出し要素に微小押し出しすることによって添加される。
【0113】
さらに別の具体的な実施形態において、食用微小押し出し製品は、治療有効量の治療化合物(薬物)を含み、治療有効量は、投与されたときに、対処されている疾患の症状の1つ以上の発症を予防するか、またはある程度軽減するのに十分な量であることを意味する。当然ながら、本発明に従って投与される化合物の特定の用量は、投与される化合物、投与経路、処置される特定の状態、および同様の考慮事項を含む、症例を取り巻く特定の状況によって決定される。治療化合物の例には、特に、抗生物質化合物が含まれる。
【0114】
粘弾性組成物が微小押し出しされた後に添加される添加剤を含む食用微小押し出し製品の具体的な実施形態において、添加剤は、特に、動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、細胞の抽出物、ならびに細胞および/または細胞の抽出物の組み合わせから選択される細胞である。より具体的には、非ヒト動物細胞、植物細胞、藻類細胞、酵母細胞、細菌細胞、細胞の抽出物、ならびに細胞および/または細胞の抽出物の組み合わせから選択される細胞である。
【0115】
さらに別の具体的な実施形態において、食用微小押し出し製品は、真核細胞または原核細胞を含み、真核細胞は、酵母細胞、藻類細胞、昆虫細胞、哺乳動物細胞(ヒトおよび非ヒト哺乳動物細胞を含む)、家禽細胞またはそれらの組み合わせから選択され、原核細胞は、プロバイオティクス用途の食用細菌である。哺乳動物細胞の中で、食用微小押し出し製品は、特に、ウシ細胞、ウサギ細胞、ブタ細胞、ヒツジ細胞、ヤギ細胞、およびウマ細胞から選択される細胞を含む。他の非ヒト動物細胞は、ニワトリまたはシチメンチョウの細胞等の家禽細胞;昆虫細胞;および魚細胞、ならびにそれらの組み合わせから選択される。
【0116】
第1および第2の態様の別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素またはそれに適合する粘弾性組成物は、25重量パーセンテージの1種または複数種のタンパク質、5重量パーセンテージの1種または複数種の擬塑性ポリマー、特に擬塑性多糖類、および食用溶媒としての飲料水を含み、前記水は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される追加の食用化合物を任意選択で含み、飲料水または添加剤を含む飲料水の重量パーセンテージは、粘弾性組成物または前記粘弾性組成物から適合化された微小押し出し要素の総重量に対して70%である。
【0117】
本発明による方法および得られる製品の別の具体的な実施形態において、微小押し出し要素、またはそれに適合し、方法のステップ(i)において提供される粘弾性組成物は、
25重量パーセンテージの1種または複数種のタンパク質、25重量パーセンテージの1種または複数種の擬塑性ポリマー、特に擬塑性多糖類、および食用溶媒としての飲料水を含み、前記水は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される追加の食用化合物を任意選択で含み、飲料水または添加剤を含む飲料水の重量パーセンテージは、粘弾性組成物または前記粘弾性組成物から適合化された微小押し出し要素の総重量に対して50%である。
【0118】
第1の態様の食用製品のさらにより具体的な実施形態において、粘弾性組成物または微小押し出し要素は、25%の米タンパク質、および25%のアルギン酸ナトリウム、および粘弾性組成物の100重量%となるまで溶媒(特に水)の残余を含み、製品は、7.15×103Pa~4.5×106Paおよびヤング率0.12×106Pa~9.5×106Paの積層の圧縮弾性率およびヤング率を有し、前記圧縮弾性率およびヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の最終溶媒量で測定される。すなわち、圧縮弾性率およびヤング率は、45%から90%の水(または溶媒)の量の水和(または溶媒和)形態の食用微小押し出し製品で測定され、粘弾性組成物中の前記水(または溶媒)は、2つ以上の層の微小押し出し要素を形成する。
【0119】
第2の態様の食用微小押し出し製品のさらに別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の実施形態のいずれかと組み合わせて、層を形成する微小押し出し要素は、イオン性架橋剤から選択される、特に
-カリウムイオン、特にCaCl2、CaCO3、CaSO4からのカルシウムイオン、および二価カチオンイオン性架橋剤、例えばグルコン酸乳酸カルシウム、グルコノデルタラクトン、およびそれらの組み合わせ、および/または、
-特にエチレングリコールジメタクリレート、メタクリル酸またはN-イソプロピルアクリルアミド、グリシジルアクリレート、およびそれらの組み合わせから選択されるラジカル重合用の架橋化合物;および/または
-特にグリセロール、トランスグルタミナーゼ、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼ、スルフヒドリルオキシダーゼ、ゲニピン、加水分解性ポリロタキサン、アジピン酸ジヒドラジド、パラホルムアルデヒド、もしくは1級アミンと1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド/N-ヒドロキシスクシンイミドとの架橋カルボン酸、およびそれらの組み合わせから選択される共有結合架橋剤;および/または
-高分子架橋剤、特にポリ(エチレングリコール)-プロピオンジアルデヒド;および/または、
-特に1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、ジビニルスルホン、1,6-ヘキサンジブロミドおよびそれらの組み合わせから選択される付加反応による架橋剤;および/または
-特に光開始剤の添加によって架橋されたメタクリレート化ポリマーから、より具体的には2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、イルガキュアD2959、およびリチウムフェニル-2,4,6-トリメチルベンゾイルホスフィネート、およびそれらの組み合わせから選択される光架橋戦略のための架橋剤
から選択される架橋剤化合物を含む。
【0120】
微小押し出し要素中に架橋剤化合物を含む第2の態様のこの具体的な実施形態は、ステップ(ii)または(iii)の後に、架橋剤を含む組成物が前記微小押し出し要素に添加される、特に滴下により添加される方法の具体的な実施形態によって得ることができる。
【0121】
架橋剤がカルシウムイオン等の二価カチオンを含む特定の場合において、これらは、1
つの結合のみを形成し得るナトリウム等の一価イオンと対照的に2つの結合を形成することができるため、特にアルギン酸塩ポリマー(またはカルボン酸基等のアニオン基を含む他のポリマー)を架橋することができる。アルギン酸塩が塩化カルシウム溶液と接触する時間が長くなるほど、より多くの架橋が形成されるため、ゲルはより硬くなる。また、カルシウムイオンの濃度に応じて、ゲルは熱可逆性(低濃度)または非熱可逆性(高濃度)のいずれかになる。具体的な実施形態において、架橋剤はCaCl2であり、これは、50~300mM、より具体的には100mM~150mMの塩化カルシウム濃度を有する溶液を使用して、微小押し出し製品に滴下して添加される。
【0122】
第1および第2の態様のより具体的な実施形態において、2つ以上の層のいくつかは、平行に隣接して配置された粘弾性組成物の微小押し出しフィラメントで作製され、層の表面における微小押し出しフィラメントのパーセンテージ(充填密度パーセンテージ)は、25%~100%である。別の具体的な実施形態において、層の表面における微小押し出しフィラメントのパーセンテージは、35%~100%である。より具体的には、これは40%~100%である。より具体的な実施形態において、これは60%~100%である。層が粘弾性組成物の微小押し出しフィラメントで作製されている、またはそれを含むこの具体的な実施形態において、これらのフィラメントは、単位表面あたりの微小押し出し要素のいくつかの密度で配置され得る。したがって、層表面の単位あたりの微小押し出しフィラメントのパーセンテージが100%未満の場合、フィラメントは平行に配置されるが、接触していないため、フィラメント間に空きスペースが生じる。反対に、層表面の単位あたりの微小押し出しフィラメントのパラメータが100%に等しい場合、これは、層が、平行に配置されてそれぞれが互いに隣接するフィラメントと接触するフィラメントによって構成されることを意味する。
【0123】
微小押し出し要素がフィラメントである、すなわちそれらがその断面層よりも高い長手方向断面を有する糸の形態であるこの具体的な実施形態において、それらは、10μm~1000μm、より具体的には100μm~900μm、さらにより具体的には200μm~800μm、さらにより具体的には400μm~600μmの直径を有する円系断面を有する。より具体的な実施形態において、それらは、400、450、500、550、および600μmから選択される直径を有する円形断面を有する。
【0124】
微小押し出しプロセスの間、ポリマー化合物、現在の場合ではタンパク質および擬塑性ポリマーは、押し出し方向に沿って平行に配置されたままである。これにより、配向したナノ要素を含む微小押し出し要素が生成され、その全てが異方性挙動ならびに肉のテクスチャおよび堅さを備えた機械的特性を提供する。したがって、より具体的な実施形態において、食用微小押し出し製品は、特に肉のナノ繊維に似た様式の配向ナノ要素を含む微小押し出しフィラメントを含む。
【0125】
第1および第2の態様の別の具体的な実施形態において、2つ以上の層が微小押し出しフィラメントを含み、層は、複数の繊維層を有する食用材料の垂直断面が、他の積層の微小押し出しフィラメントに対して異なって配向された1層の微小押し出しフィラメントを示すように積み重ねられる。特に、層を形成する微小押し出しフィラメントは、異なる層の間で重ね合わされて異なって配向されているように見えるか、または層内で交差しているように見える。この後者の交差する微小押し出しフィラメントの場合、それらは微小押し出しされて平行に配置され、次いで横方向の微小押し出しフィラメントが2つ以上の平行フィラメントを結合して配置される。
【0126】
方法の具体的な実施形態において、ステップ(i)の前に、粘弾性組成物を均質化するステップがあり、これは、粘弾性組成物が、タンパク質および擬塑性ポリマーを食用溶媒中で混合して、相分離しない均質な組成物を得ることによって調製されることを意味する
。
【0127】
より具体的には、この均質な組成物は、タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒を容器内で混合すること;ならびに温度を20℃から95℃未満の温度に上げ、1分~30分の期間撹拌および温度を維持しながら、10g~4000gの遠心力または相対遠心力に1つまたは複数の撹拌サイクルを任意選択で複数の方向に適用することにより達成される。
【0128】
より具体的には、混合および攪拌は、二重非対称遠心システムで行われる。驚くべきことに、高速攪拌(または重力印加)にもかかわらず、タンパク質に損傷を与えることはなく、タンパク質は、微小押し出しされると繊維質材料としての特性を維持する。
【0129】
第1の態様の方法の別の具体的な実施形態において、ステップ(ii)は、20℃~90℃、より具体的には25℃~50℃、さらにより具体的には25℃~30℃の室温で行われる。別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の任意の方法実施形態と組み合わせて、ステップ(ii)は、ピストンによって粘弾性組成物に圧力を印加することによって実行される。別の具体的な実施形態において、ステップ(ii)は、微小押し出しされた要素が5℃~15℃の温度で冷却されるように行われる。
【0130】
方法のより具体的な実施形態において、それは3D印刷によって行われ、層は、10μm~1000μmの直径を有するノズルから得られる微小押し出しフィラメントとして適合化される。より具体的には、直径は、10μm~900μmである。さらにより具体的には、直径は、200μm~800μm、さらにより具体的には400μm~600μm、さらにより具体的には400、450、500、550、および600μmから選択される。
【0131】
方法の別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の任意の実施形態と組み合わせて、方法は、ステップ(ii)および(iii)の後に、層内の微小押し出し要素の間および/または微小押し出し要素の層上に、1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸、およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む組成物、および/または軟骨材料および/もしくは骨材料を含む組成物を追加するステップ(v)をさらに含む。
【0132】
「軟骨材料」という用語は、動物の軟骨を構成する特定の細胞、軟骨細胞、およびタンパク質に関連する。タンパク質の中には、コラーゲンタンパク質、エラスチン、ならびにプロテオグリカン、糖タンパク質およびグリコサミノグリカン等の軟骨細胞外マトリックス化合物がある。
【0133】
「骨材料」という用語は、破骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、コラーゲンタンパク質等の骨細胞外マトリックス化合物、および沈殿した無機物質および無機塩、特にヒドロキシアパタイトを含む骨組織に関連する。
【0134】
方法のこの具体的な実施形態は、各層の微小押し出し要素の2つ以上の間および/または微小押し出し要素の層の1つまたは複数の間に、1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸、およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む組成物、および/または軟骨材料を含む組成物を含む食用微小押し出し製品を提供する。
【0135】
この食用微小押し出し製品は、通常肉のタンパク質繊維の間に配置されている脂肪、および肉のタンパク質繊維に付随する軟骨組織を模倣している。したがって、それは、特定
の組成およびパラメータの特徴、さらに脂肪および/または軟骨組織および/または骨材料の一部を有する、第1の態様の食用微小押し出し製品を含む製品として理解されるべきである。
【0136】
本発明はまた、本発明の第2の態様による食用微小押し出し製品の部分、ならびに1種もしくは複数種のトリグリセリド、コレステロール、1種もしくは複数種のリン脂質、1種もしくは複数種の脂肪酸およびそれらの組み合わせから選択される脂肪を含む固化組成物の部分、および/または軟骨材料を含む固化組成物の部分、および/または骨材料を含む部分を含む、食用複合製品に関し、脂肪および/または軟骨材料および/または骨材料を含む組成物の部分は、食用微小押し出し製品の部分と隣接して接触している。
【0137】
この複合食用製品は、まず第2の態様に従って食用微小押し出し製品を製造し、次いで、通常は添加すると固化する液体の形態の1つまたは複数の脂肪または軟骨または骨の部分を追加することによって製造され得、この脂肪または軟骨または骨の部分は、材料の固有の付着のために以前に定義された微小押し出し食用製品の部分に隣接して付着したままである。
【0138】
別の実施形態において、本発明による複合食用製品は、バイオプリンティングフレッシュ法(bioprinting fresh method)(または押し出しフレッシュ法(extrusion fresh method))を使用して製造することができ、粘弾性組成物の押し出しは、液体、ヒドロゲルまたはゲル媒体、例えば以前に定義された脂肪および/または軟骨材料を含む、またはそれらからなる液体、ヒドロゲルまたはゲル中で行われ、液体またはゲルは、任意選択で食用塩を含む。この特定の方法では、微小押し出し要素ならびに微小押し出し要素および/または食用微小押し出し製品の層は、液体、ヒドロゲルまたはゲルに埋め込まれ、微小押し出し製品の自立特性が向上する。
【0139】
本発明による複合食用製品の別の具体的な実施形態において、骨材料を含む組成物の一部がさらに含まれる。この具体的な実施形態は、獣医学的目的の食用製品として適切である。例としては、家畜(すなわち犬、猫)向けの食用製品がある。
【0140】
定義される複合製品は、肉のタンパク質繊維またはタンパク質領域の間の脂肪および/または軟骨材料を含む、動物由来の本物の肉製品に似ている。
【0141】
本発明はまた、第1の態様の食用製品を得るために微小押し出しされる特定の新たな粘弾性組成物を包含する。これらの新たな食用粘弾性微小押し出し可能組成物は、適切な食用溶媒中に、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質であって、植物由来タンパク質、特に穀物タンパク質、果実タンパク質、種子タンパク質および豆類タンパク質、昆虫タンパク質、藻類由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択されるタンパク質と;全粘弾性組成物に対する重量パーセンテージで0.2%~40%の、アルギン酸またはその食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナン、およびそれらの組み合わせから選択される食用擬塑性多糖とを含み、粘弾性組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも45重量%の食用溶媒を含む。重量の残余は、粘弾性組成物の100%までの溶媒である。
【0142】
粘弾性微小押し出し可能組成物の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の実施形態のいずれかと組み合わせて、タンパク質は、粘弾性組成物の総重量に対して20%~40%の重量パーセンテージである。より具体的な実施形態において、タンパク質の重量パーセンテージは、20%~30%である。より具体的な実施形態において、タンパク質の重量パーセンテージは、25%である。別のより具体的な実施形態において、
タンパク質は穀物由来であり、より具体的には米タンパク質であり、粘弾性組成物の総重量に対して25%の重量パーセンテージである。
【0143】
粘弾性微小押し出し可能組成物の別の具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の実施形態のいずれかと組み合わせて、食用擬塑性ポリマーは、組成物の総重量に対して20%~40%、より具体的には20%~30%の重量パーセンテージである。より具体的な実施形態において、食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージは、25%である。別のより具体的な実施形態において、粘弾性微小押し出し可能組成物に以前に列挙された全てのパーセンテージで含まれる食用擬塑性ポリマーは、アルギン酸ナトリウムである。
【0144】
別の具体的な実施形態において、粘弾性微小押し出し可能組成物は、25%の米タンパク質、25%のアルギン酸ナトリウム、および組成物の100%までの添加剤を含む食用溶媒を含む。
【0145】
具体的な実施形態において、任意選択で上記または下記の粘弾性組成物の任意の実施形態と組み合わせて、溶媒は飲料水であり、別の具体的な実施形態において、粘弾性組成物は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、細胞またはその抽出物、ならびにこれらの化合物および/または細胞および/または細胞抽出物の組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤を含む。別の具体的な実施形態において、粘弾性組成物は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、動物細胞またはその抽出物、植物細胞またはその抽出物、酵母細胞またはその抽出物、細菌細胞またはその抽出物、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤を含む。
【0146】
具体的な実施形態において、溶媒は飲料水であり、別の具体的な実施形態において、粘弾性組成物は、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤を含む。
【0147】
上述のカテゴリーの中の具体的な食用添加物には、グルコース、リボース、フルクトース、ラクトース、キシロース、アラビノース、グルコース-6-ホスフェート、マルトース、およびガラクトース、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される追加の糖、ならびにシステイン、シスチン、チアミン、メチオニン、およびそれらの2つ以上の混合物から選択される追加の単離されたアミノ酸が含まれる。
【0148】
本発明の粘弾性組成物のより具体的な実施形態において、粘弾性組成物は、0.16Hzおよび23℃の温度で、45%~90%w/wの組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートからなるレオメータで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり、損失弾性率G’’は350Pa超であり、粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24~0.88である。より具体的な実施
形態において、貯蔵弾性率G'は2000Pa超であり、損失弾性率G’’は1000P
a超である。より具体的な実施形態において、粘弾性組成物の貯蔵弾性率G'は、200
0Pa~140000Paの値を有し、粘弾性組成物の損失弾性率G’’は、1000Pa~40000Paの値を有し;粘弾性組成物のG’’/G'比は、0.24~0.88
である。
【0149】
別の具体的な実施形態において、粘弾性組成物の粒子サイズは、100μm~300μm、より具体的には200μm~240μmである。別のより具体的な実施形態において
、粒子サイズは、200μm~240μm未満である。200μm~240μm未満の粒子サイズの均一な分布を有する粘弾性組成物は、400μmの幅または直径のオリフィスを通して微小押し出しするのに適している。
【0150】
粘弾性組成物の特徴に関連する本発明の第1および第2の態様の他の具体的な実施形態もまた、本発明のこの他の態様に適用される。
【0151】
本発明の別の態様は、食用擬塑性ポリマー、19%~49%w/wの重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%w/wの食用溶媒であって、粘弾性組成物の100%w/wまでの残余である食用溶媒を含む、粘弾性微小押し出し可能組成物であり、両方のパーセンテージは粘弾性組成物の総重量に対するものであり、前記粘弾性組成物は、6μm未満~600μm未満の粒子サイズの均一な分布を有し、
(a)タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒を容器内で混合すること;ならびに
(b)温度を20℃から95℃未満の温度に上げ、1分~30分の期間撹拌および温度を維持しながら、10g~4000gの遠心力または相対遠心力に1つまたは複数の攪拌サイクルを任意選択で複数の方向に適用すること
により得ることができる。
【0152】
以前に詳述したように、タンパク質重量パーセンテージが高いこの粘弾性微小押し出し可能組成物は、適用された方法による均一な組成物であり、相分離しせず、これは、タンパク質フラクションおよび擬塑性ポリマーが均一に分配されるか、または食用溶媒に溶解されることを意味する。
【0153】
ステップ(a)および(b)を含む前の方法で得られるこの組成物の具体的な実施形態において、遠心力または相対遠心力は、300g~4000g、より具体的には400g(半径10cmのロータで2500rpm)~4000gである。さらにより具体的な実施形態において、遠心力または相対遠心力は、400g~1000gである。特に使用される相対遠心力は900gであり、これは、半径10cmのロータで3500rpmに相当する。他の具体的な値は、60g、100g、150g、200g、250g、300g、350g、400g、450g、500g、550g、600g、650g、700g、750g、800g、850g、900g、950g、1000g、1500g、2000g、2500g、3000g、3500gおよび4000gから選択される。
【0154】
別の具体的な実施形態において、任意選択で以前に開示されたように得ることができる粘弾性組成物の上記または下記の任意の実施形態と組み合わせて、温度は、60℃~90℃の値に上昇される。より具体的には、温度は、60℃、65℃、70℃、72℃、75℃、80℃、および90℃から選択される値である。
【0155】
特定の温度を使用して、組成物の低温殺菌が行われている間、タンパク質の保存(非変性)が達成される。これらの温度範囲は、擬塑性ポリマーの非分解もまた保証する。
【0156】
ステップ(a)および(b)を含む前の方法で得ることができるこの組成物の具体的な実施形態において、タンパク質の重量パーセンテージは、25%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%であり、組成の100%までの残余である。さらにより具体的な実施形態において、タンパク質の重量パーセンテージは、29%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%であり、組成物の100%までの残余である。
【0157】
別の具体的な実施形態において、以前に開示された方法により得ることができる粘弾性
組成物の粒子サイズは、100μm~300μm、より具体的には200μm~240μmである。別のより具体的な実施形態において、粒子サイズは、200μm~240μm未満である。200μm~240μm未満の粒子サイズの均一な分布を有する粘弾性組成物は、400μmの幅または直径のオリフィスを通して微小押し出しするのに適している。
【0158】
粘弾性組成物の特徴に関連する本発明の第1および第2の態様の他の具体的な実施形態もまた、以前に開示されたように得ることができる粘弾性組成物に適用される。
【0159】
したがって、具体的な実施形態において、タンパク質は、動物由来タンパク質、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。より具体的な実施形態において、タンパク質は、動物タンパク質、より具体的には非ヒト動物タンパク質である。さらにより具体的な実施形態において、タンパク質は、昆虫タンパク質である。
【0160】
粘弾性微小押し出し可能組成物の別の具体的な実施形態において、タンパク質は、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される。
【0161】
さらに別の具体的な実施形態において、以前に開示され、10g~4000gの特定の重力での撹拌を含む方法により得ることができる粘弾性微小押し出し可能組成物は、0.16Hzおよび23℃の温度で、45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり、損失弾性率G’’は350Pa超であり、粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24~0.88である。
【0162】
第1および第2の態様の粘弾性組成物について言及された具体的な添加剤は、以前に開示され、特定の重力での撹拌を含む方法により得ることができるこの新たな粘弾性組成物にも適用される。
【0163】
本発明のいくつかの態様の粘弾性微小押し出し可能組成物は、カスタマイズ可能な食用製品の家庭内(家屋内)または工業生産のための3Dプリンタおよび/または工業用押出機に「インク」として適用され得る商品または代替可能製品として考えられる。
【0164】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して、「含む」という単語およびその単語の変化形は、他の技術的特徴、添加剤、成分、またはステップを除外することを意図するものではない。さらに、「含む」という言葉は、「からなる」の場合を包含する。本発明の追加の目的、利点、および特徴は、本明細書を検討することで当業者に明らかになるか、または本発明の実践によって学ぶことができる。以下の実施例および図面は、例示として提供されており、本発明を限定することを意図するものではない。さらに、本発明は、本明細書に記載の具体的な好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを包含する。
【実施例0165】
以下に、本発明の食用微小押し出し製品のいくつかの例が開示される。
実施例1
米タンパク質およびアルギン酸ナトリウムを含む粘弾性組成物。粘弾性組成物で印刷された食用微小押し出し製品。
材料
【0166】
これらの例に記載されている食用組成物の製造のために使用された材料は、水、米タン
パク質、エンドウ豆タンパク質、およびアルギン酸ナトリウムであった。米タンパク質(PURYA GmbH、ドイツ)、エンドウ豆タンパク質(Raab Vital Food GmbH、ドイツ)、およびアルギン酸ナトリウム(Special Ingredients Ltd、英国)は、可溶性粉末の形で購入され、それぞれの製造業者によって食用であることが認定されていた。アルギン酸ナトリウムは、海藻から抽出された天然多糖類であり、美食学で広く使用されており、強力な擬塑性挙動を有するヒドロゲルを形成するために使用され得る。成分の具体的な仕様は以下の通りである。
製造業者による米タンパク質粉末100gあたりの栄養成分:
エネルギー:(1,529.30kJ/361,30kcal)、脂肪:(3.5g、そのうち飽和脂肪1.9g)、炭水化物(0.5g、そのうち糖0.5g)、繊維(3.9g)、タンパク質(83g)、塩(0.5g)
製造業者によるエンドウ豆タンパク質粉末100gあたりの栄養成分:
エネルギー:(1774kJ/420kcal)、脂肪(8.0g、そのうち飽和脂肪2.0g)、炭水化物(4.9g、そのうち糖<0.5g)、繊維(4.2g)、タンパク質(80g)、塩(1.1g)、リン(910mg)、鉄(27mg)。
【0167】
この例で使用されたSAは、製造業者によると、1%のw/v濃度および20℃の温度で測定した場合、200~600cPs(粘度計)の粘度を有していた。
組成物の調製
【0168】
一例では、米タンパク質(RP)をアルギン酸ナトリウム(SA)および食用溶媒としての飲料水と混合した。脱イオン水、蒸留水、油および/または果汁等の他の食用溶媒を使用することができ、必要に応じて全て任意選択で無機塩および他の添加物を含む。これらの成分を使用して、様々なヒドロゲル組成物(RP-SA)を生成した。この目的のために、一定量のRPおよびSAを水と混合し、別個のポリプロピレン容器に入れた。試験された配合物は、RPおよびSA量のいくつかの異なる組み合わせを有し、2つの成分のそれぞれは、0w/w%から60w/w%の範囲の濃度範囲であった。ポリプロピレン容器をParafilm(登録商標)(Sigma-Aldrich、ドイツ)で密封し、ミキサー(SpeedMixer DAC150.1FVZ;FlackTek、ドイツ)で3500RPMで10分間、得られたヒドロゲルが均質化するまで混合した。
微小押し出しの評価
【0169】
薄い断面積を通して微小押し出しされる組成物の能力を、微小押し出し試験によって評価した。この例では、この能力は、3ccのシリンジ、プランジャ、ノズル内径0.41mmの精密チップ(Nordson EFD Optimum;Nordson、英国)、および高粘度ペースト(組成物)を押し出すために機械的に強化された特別設計のピストン(Fundacio CIM、スペイン)で構成されるシステムを使用して分析された。スパチュラを使用してシリンジにRP-SA組成物を充填し、これらをフィラメントの形態でプレート上に手動で微小押し出しし、内径0.41mmのノズルを通してどの組成物を適切に微小押し出しできるかを評価した。
【0170】
本発明に記載の技術を使用して、擬塑性タンパク質(もしくはタンパク質の混合物)および水で構成される、または代替としてタンパク質の混合物(もしくは複数のタンパク質の混合物)および擬塑性ポリマー(もしくは擬塑性ポリマーの混合物)および水で構成される、可変粘度の微小押し出し可能な均質ペーストを生成することが可能である。
図1Aは、25w/w%のRP、5w/w%のSAおよび70w/w%の水で構成される、粘弾性組成物(または微小押し出し可能配合物)の例を示す。
図1Bは、45w/w%のRPおよび55w/w%の水で構成される、微小押し出し不可能な配合物の例(比較例)を示す。
【0171】
3D印刷によって多層構造を生成する可能性を評価するために、自立型連続要素の形態で微小押し出しされ得る組成物を選択することが可能である。この例では、RP-SA組成物が多層自立構造を形成する能力を、上で詳述された同じ押し出しシステムを使用して評価した。この試験のために選択された微小押し出し可能なRP-SA粘弾性組成物は、前の段落で説明した微小押し出し試験に合格したものであり、生成されたフィラメントは、それらの自立能力を分析するためにプレート上に手動で堆積された。
図2Aは、25w/w%のRP、5w/w%のSAおよび70w/w%の水で構成される、自立型微小押し出しフィラメントを生成する粘弾性組成物または配合物の例を示す。
図2Bは、5w/w%のSAおよび95w/w%の水で構成される、非自立型微小押し出しフィラメントを生成する粘弾性組成物または配合物(比較例)を示す。
多層微小押し出し製品の製作
【0172】
多層構造を形成することができる微小押し出し可能食用粘弾性組成物を使用して、自動製造プロセスにより本発明の食用微小押し出し構築物または製品を製作した。この例では、微小押し出しされた自立構造を形成することが実証されたRP-SA組成物を選択して、直接インク微小押し出しし技術によって多層食用3Dプリント製品を生成した。直径12mm、高さ10mmの円筒形構造のCADモデルを、SolidWorksソフトウェア(SolidWorks Corp.、米国)を使用して設計した。次いで、Slic3r gコード生成器のフリーソフトウェアを使用して、印刷パラメータを定義し、この作業で使用される特別設計の3Dプリンタ(BCN3D+Dual Paste Caster;Fundacio CIM、スペイン)でサポートされるプログラミング言語である所望のgコードを生成した。この例で円筒形製品の製作に使用されるgコードは、直交充填パターン、40%の充填密度(すなわち、印刷された微小押し出しフィラメント間の空きスペースを画定するように微小押し出しフィラメントが配置された)、0.41mmの高さ(すなわち、微小押し出しフィラメントは410μmの直径または断面を有していた)、および10mm/秒の印刷速度を提供するように設計された。他の微小押し出しパラメータ(容量3ccのシリンジ、0.41mmの精密チップノズル直径、プランジャおよびピストンを含む)は、この章の前項で説明した微小押し出し試験に使用したものと同じであった。
図3(AおよびB)は、異なる組成および粘弾性率を有する2つの多層食用微小押し出し製品の3D微小押し出し印刷のプロセスを示す。
図3Aおよび
図3Bに示される製品は、25w/w%のRP、5%のSA、および70w/w%の水(
図3A)、ならびに25w/w%のRP、25w/w%のSA、および50w/w%の水(
図3B)を含む粘弾性組成物を使用して生成された。
【0173】
この例では、上記の試験により、RP-SA組成物が3D印刷によって多層微細構造の食用製品を生成する能力を評価することができた。
図4は、XY分布を示し、X軸およびY軸は、それぞれアルギン酸ナトリウム(0~40%の範囲)および米タンパク質(0~49%の範囲)の濃度を表し、3D印刷可能な配合物は、この例で得られたデータ点をフィッティングすることにより生成された曲線1、2、3および4によって画定される領域に含まれる。以下は、OriginPro 8 Software(OriginLab、米国)の曲線フィッティングツールを使用して得られたこの例の曲線の方程式である。
曲線1(正方形):y=[38.01
×exp(-x/3.51)-2.77]
曲線2(円):y=[14x+34.33]
曲線3(三角形):y=0
曲線4(逆三角形):y=[-28.47
*exp(-x/-39.96)+77.61]
【0174】
この例では、印刷プロセスの後、選択した3D印刷製品を室温で架橋プロセスに供した。この例では、SAのイオン架橋を開始するために、製品を23℃で約1分間、CaCl2溶液(水中150mM)の液滴で覆った。次いで、製品をウェルプレートに移し、15
0mMのCaCl2溶液にさらに4分間浸漬して架橋プロセスを完了させ、最後に製品を水で洗浄した。CaCl2による架橋は、SAの球形化のために美食学で広く使用されている技術であり、SA含有ヒドロゲル構造を含むいくつかのヒドロゲルに対して強化された機械的抵抗を提供することができる。架橋に適した濃度は、50~300mMである。
【0175】
擬塑性ポリマーとしてSAを含むエンドウ豆タンパク質(PP)を使用した場合、上記および下記に示す同じ結果が得られた(データは示さず)。
選択された粘弾性組成物のレオロジー評価
【0176】
せん断応力下でのレオロジー測定により、選択した微小押し出し可能粘弾性組成物の粘弾性特性を分析することが可能である。この分析は、多層製品の形態で適切に微小押し出しされ得る組成物の最適な粘弾性特性を評価するのに役立つ。この例では、3D印刷可能な組成物の粘弾性特性を、Haake Mars IIIレオメータ(Thermo Fisher Scientific、米国)を使用して23℃で評価した。測定システムは、壁の滑りを回避し、ヒドロゲル組成物(タンパク質(RP)および擬塑性ポリマー(SA)を含む粘弾性組成物)のグリップを強化するために、一対の平行な鋸歯状のプレートからなっていた。測定を開始する前に、ヒドロゲルが5Nの垂直力で圧縮応力に応答するまで、上部プレートを下げた。この方法を使用すると、この例の全ての場合で、プレート間のギャップは約300μmであった。振動試験を行って、粘弾性率(貯蔵弾性率G'
および損失弾性率G’’)、複素粘度係数(|η*|)、および粘弾性率間の関係を決定付けるtan(δ)=G’’/G'として測定される損失正接(tan(δ))を測定し
た。この目的のために、振幅掃引試験および周波数掃引試験の2つの異なる種類の振動試験を行った。振幅掃引試験では、周波数をf=1Hzに固定し、印加応力(σ)の振幅を0.005Paから2Paに増加させて、粘弾性線形領域(VLR)を区切ったが、これは粘弾性率が応力振幅に依存せず、通常弾性率の一定値が観察される領域である。次いで、周波数掃引試験を行い、この試験では、印加応力をVLR内の値に固定し、周波数を変更した。周波数掃引試験により、周波数の変化下での粘弾性率の挙動を評価することができる。損失正接tan(δ)は、0.16Hz(1rad/秒)で測定した。全ての試験において、測定ランプの各ステップでの正弦波応力を8周期の振動に相当する時間維持し、最後の5周期で粘弾性率を記録し、過渡値を破棄した。組成物の機械的特性は、組成物の含水量が全ての場合で45%~90w/w%の範囲であった場合、その水和形態の組成物で測定された(すなわち、組成物は、空気乾燥、オーブン乾燥、臨界点乾燥またはフリーズドライ等の脱水プロセス後に測定されなかった)。
図5Aは、配合物の粘弾性特性の測定を実例的に示す。
図5Bは、応力振幅(σ)の関数として測定された、貯蔵(G')
および損失(G')粘弾性率の代表的な測定値を示す。
図5Bのグラフは、20w/w%
のRP、5w/w%のSAおよび75w/w%の水を含む組成物に対して行われた振幅掃引試験の代表的な測定値を示す。
【0177】
さらに
図6においてXY分布が示されており、X軸およびY軸は、それぞれアルギン酸ナトリウムおよび米タンパク質濃度を表し、評価された3D印刷可能な配合物(A-H)は、
図4で前述したように曲線1、2、3および4で画定される領域に含まれる。組成物のそれぞれに関連する値、具体的にはG'、G’’、|η
*|およびtan(δ)を、組
成物のレオロジー特性を評価するために計算し、上で詳述したように測定した。
多層微小押し出し製品の機械的特性評価
【0178】
食用微小押し出し製品の機械的抵抗を評価するために、引張および圧縮応力下でのそれらの機械的挙動を測定することが可能である。この例では、500Nロードセンサを備えたサーボ油圧試験システム(MTS Bionix358、米国)を使用して、23℃での引張および圧縮応力下の製品の機械的特性を評価した。製品の機械的特性は、製品の含水量が全ての場合で45%~90w/w%の範囲であった場合、その水和形態の製品で測
定された(すなわち、製品は、空気乾燥、オーブン乾燥、臨界点乾燥またはフリーズドライ等の脱水プロセス後に測定されなかった)。引張ヤング率(EY)、破壊時の工学的応力(σB)および破壊時のひずみ(εB)の値は、一軸引張荷重下で計算され、圧縮弾性率(EC)の値は、非拘束一軸圧縮応力下で計算された。クランプの変位速度は、実験中一定に保たれ、引張試験および圧縮試験の両方で1mm/分に等しかった。
【0179】
引張試験では、直方体形状の3D印刷製品を、10mmの幅、80mmの長さおよび1.2mmに等しい高さを有するように設計した。製品を、引張応力の方向に沿った長さでクランプした。試験機のクランプ間の距離は、20mmに設定した。したがって、引張応力を受けた試料の体積は、10mm(幅)×20mm(長さ)×1.2mm(厚さ)の寸法を有していた。試験片の残りの部分をクランプでつかみ、試料を23℃で1mm/分の一定のクロスヘッド速度で引張応力に供した。ヤング率は、応力-ひずみ曲線の最初の線形部分の勾配として計算され、一方破壊時の工学的応力(σ
B)および破壊時の工学的ひずみ(ε
B)は破壊の時点で決定され、続いて応力値が急速に減少した。
図7Aは、本発明の食用微小押し出し製品の引張応力下での機械的特性の測定を実例的に示す。
図7Bは、製品が引張応力を受けたときの工学的応力-ひずみ曲線の代表的な測定値を示す。
図7Bの工学的応力-ひずみ曲線は、25w/w%のRP、25w/w%のSAおよび50w/w%の水を含む組成物を使用して生成された製品に対して行われた代表的な引張試験を示す。
【0180】
圧縮試験では、円筒形の3D印刷製品を、12mmの直径および15mmに等しい高さを有するように設計した。円筒の丸い基部が無潤滑で不浸透性の圧縮プレートと接触するように試料を配置した。次いで、試料を23℃で1mm/分の一定のクロスヘッド速度で非拘束圧縮応力に供した。圧縮弾性率は、15%ひずみでの工学的応力-ひずみ曲線の勾配から決定された。同等の測定様式には、10%~60%のひずみでの工学的応力-ひずみ曲線の傾きの測定が含まれる。
図8Aは、食用微小押し出し製品の圧縮応力下での機械的特性の測定を実例的に示す。
図8Bは、製品が圧縮応力を受けたときの工学的応力-ひずみ曲線の代表的な測定値を示す。
図8Bの工学的応力-ひずみ曲線は、25w/w%のRP、25w/w%のSAおよび50w/w%の水を含む組成物を使用して生成された製品に対して行われた代表的な圧縮試験を示す。
食品工学のための多層微小押し出し製品の可能な用途
【0181】
引張応力および圧縮応力に対する製品の抵抗の評価は、食品工学用途におけるこの例で生成された微小押し出し多層製品の可能性を証明している。具体的には、この例で生成された製品は、いくつかの種類の肉を含む様々な天然の食用材料の同じ範囲で、引張および圧縮応力下で弾性率を示した。
図9は、この例の食用製品(
図4および
図6の曲線1、2、3および4により画定される領域への粘弾性組成物を有する本発明の製品)の圧縮弾性率およびヤング率の範囲を表すグラフを示す。影付きの長方形は、製品がカバーする範囲を表す。小さい透明な長方形は、文献による特定の食用材料の圧縮弾性率および引張弾性率を表している。
【0182】
引張ヤング率
-マグロ-Ey=50kPa(Ogawaら、「Measurement of You
ng's Modulus and Poisson´s Ratio of Tuna Fish」。Japan Society of Refrigerating and
Air Conditioning Engineers、第9巻、第3号、283~290ページ(2011)による);
-成牛の筋肉-Ey最長筋(LM)=15kPa、Ey半最長筋(SM)=10kPa;若い雄牛の筋肉-Ey最長筋=8kPa、Ey半膜様筋=7.5kPa(M-R.Lapinら、「Substrate elasticity affects bovine
satellite cell activation kinetics in vitro」、J Anim Sci.-2013、第91(5)巻、2083~2090頁、doi:10.2527/jas.2012-5732による)。
-牛レバー-Ey=0.94kPa(Chenら、「Young's modulus
measurements of soft tissues with application to elasticity imaging」、IEEE Transactions on Ultrasonics,Ferroelectrics,and
Frequency Control、第43巻、第1号(1996).doi:10.1109/58.484478による)。
-ニュージーランド白ウサギ長指伸筋(EDL)の筋肉-Ey縦方向試験=447kPa-Ey横方向試験=22.4kPa(Morrowら、「Transversely isotropic tensile material properties of skeletal muscle tissue」 J Mech Behav Biomed Mater.2010 Jan;3(1):124-9.doi:10.1016/j.jmbbm.2009.03.004による)。
【0183】
圧縮弾性率
-調理済み鶏胸肉-119-150kPa、(U-Chupajら、「Differences in textural properties of cooked caponized and broiler chicken breast meat」、Science-2017、第1巻;96(7)、2491~2500頁。doi:10.3382/ps/pex006による)。
-チキンナゲットクラム-3MPa(Jahanbakhshian Nら、「Measurement and prediction of the mechanical
properties of a two-component food during freezing.」、International Journal of Food Properties-2017、第20(3)巻、S3088~S3095頁。doi:10.1080/10942912.2016.1247856による)。
-牛の広背筋(LD)-3kPa(Chen Eら、「Ultrasound elasticity measurements of beef muscle」、IEEE
Ultrasonics Symposium ULTSYM-94、第3巻(1994)、1459~1462。doi:10.1109/ULTSYM.1994.401867による)。
-牛の筋肉(Segars Rら、「Textural characteristics of beef muscles」、Journal of Texture Studies 5(1974)283~297。doi:10.1111/j.1745-4603.1974.tb01436.xによる)
Ec大腿二頭筋(BF):生=6~34kPa 調理済み=20~122kPa
Ec中臀筋(GM):生=7~28kPa 調理済み=140~230kPa
Ec背最長筋(LD):生=19~62kPa 調理済み=105~144kPa
Ec大腰筋(PM):生=30~130kPa 調理済み=190~266kPa
Ec大腿直筋(RF):生=12~27kPa 調理済み=156~215kPa
【0184】
食用材料の引張ヤング率および圧縮弾性率の値によると、この例で生成された製品は、牛の筋肉およびマグロの肉を含む多くの種類の肉の特性と一致し、微小押し出し多層製品の肉類似品としての潜在的な有用性を裏付けている。この
図9から推測され得るように、製品の機械的特性は、様々な牛の筋肉およびレバー、ウサギの筋肉、鶏胸肉およびチキンナゲット、ならびにマグロからの肉を含む様々な種類の肉(グラフの透明な領域)と同じオーダーの大きさである。微小押し出し製品のこの特性は、肉または魚類似品としての生成された製品の潜在的な有用性を裏付けている。色付きの長方形は、この例で説明されて
いる製品が包含する弾性係数の範囲を表している。透明な長方形は、様々な肉および魚の、文献において測定されている弾性率の値を表している。
多層微小押し出し製品の顕微鏡評価
【0185】
食用の微小押し出し多層製品の分析は、最適な粘弾性組成物および微小押し出しパラメータを選択して、マクロ構造レベルでCADモデルの初期寸法により良く似た三次元構造を生成し、微細構造レベルで高品質の微小押し出し要素を提供するのに役立つ。この例では、3D印刷製品の構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)を使用して微視的観点から特徴付けた。この目的のために、製品を、液体窒素中での凍結、フリーズドライ(Cryodos;Telstar、スペイン)、縦方向および横方向の平面での切断、アルミニウムスタブへの設置、および炭素によるスパッタコーティング(Sputter Coater SCD005;BAL-TEC、リヒテンシュタイン)のプロセスによってSEM可視化用に調製した。コーターSCD005;BAL-TEC、リヒテンシュタイン)。次に、製品を走査型電子顕微鏡(Neon40;Zeiss、ドイツ)で観察した。
図10Aおよび
図10Bは、選択された製品の微細構造の10kVおよび200倍の倍率で撮影された代表的な走査型電子顕微鏡画像を、それぞれ上面図および横方向の視野角から示す図である。これらの画像に示されている製品は、25w/w%のRP、25w/w%のSA、および50w/w%の水を含む高粘度の組成物を選択して生成された。これらの例の製品のSEM画像は、gcodeファイルで微細構造が設計された様相と比較して、製品内のマイクロフィラメントが設計された適切なパターンおよび規則的方向、ならびにフィラメントの直径およびフィラメント内の多孔性の適切な寸法を維持することを示した。さらに、これらの例で説明されている円筒形の製品をデジタルノギスで測定した巨視的な幾何学的評価では、製品がCADファイルで設計されたものと同じマクロ構造を、高さおよびベース直径の両方で維持することが示され、製品の形状に対する大幅な収縮または膨張の影響は示されなかった。
【0186】
微小押し出しフィラメントのそれぞれの内側におけるナノメートル繊維の好ましい異方性分布の存在を観察するために、選択した組成物中のナノ繊維の配向を、より高い倍率(15000倍)でSEM画像を撮って評価した。
図11Aおよび
図11Bは、選択された製品の微細構造の5kVで撮影された代表的な走査型電子顕微鏡画像を、それぞれ200倍および15000倍の倍率で示す図である。
図11Bは、
図11Aに示されているのと同じ画像の拡大図を表し、より高い倍率では、単一の微小押し出しフィラメントの内側に含まれているナノ繊維の方向への整列を観察することができた。ナノ繊維の配向は、マイクロフィラメントと同じ方向に向いていた。これらの画像に示されている製品は、25w/w%のRP、5w/w%のSA、および70w/w%の水で構成されていた。
多層微小押し出し肉類似製品の製作
【0187】
本発明に記載の技術を使用して、ビーフステーキに似た三次元形状、ならびに堅さ、完全性、変形能、弾性、および肉特有の繊維質のテクスチャの点での肉模倣機械的特性を有する、複雑な形状の多層微小押し出し製品を製作することが可能である。この例では、SolidWorksソフトウェア(SolidWorks Corp.、米国)を使用して、ビーフステーキ型構造のCADモデルを設計した。次いで、本明細書の前の例で説明したように、Slic3r gコード生成器のフリーソフトウェアを使用して、印刷パラメータを定義し、所望のgコードを生成した。特別設計の3Dプリンタ(BCN3D+Dual Paste Caster;Fundacio CIM、スペイン)を使用して、この例では10~100グラムの範囲内の可変重量の様々な製品を生成した。これに関して、この技術を使用して様々な重量および寸法の製品を生成することができる。円筒形製品の製作に使用されるgコードは、35%の充填密度(35%の層の表面にある微小押し出しフィラメントのパーセンテージ)および0.41の層高さを提供するように設計された。他の主要な印刷パラメータの大部分は、この章の前のセクションの例で詳述された
ものと同様であった。ただし、いくつかのパラメータを前の例とは異なるように、具体的には、異なる充填パターン(層を変えるときの異なる角度配向を有する直線、ヒルベルト曲線パターン、ハニカム構造等)、外周の有無、より高い印刷速度(5~60mm/秒)、5ccまたは10ccの容量の2つの大きなシリンジ(Nordson EFD Optimum;Nordson、英国)、および異なる押出機および組成物により異なる層を生成するために、または異なる押出機および組成物で同じ層の異なる部分を生成するために、交互に、または逐次的に使用され得る2つの別個の連係した微小押出機を用いて設計することが可能であった。
図12は、肉類似製品の3D微小押し出し印刷プロセスを実例的に示し、肉類似製品は、2つの異なる組成物を使用して生成され、それぞれ別個の押出機内にあり、各層で2つの押出機を交互に使用した。具体的には、この例で使用される押出機の1つは、25w/w%のRP、5w/w%のSA、および70w/w%の水の組成を有する層を生成し、他方の押出機は、25w/w%のRP、25w/w%のSA、および50w/w%の水の組成を有する層を生成した。
全ての必須アミノ酸を含む肉類似製品の作製。
【0188】
本発明に記載の技術は、栄養特性の点でも動物の肉に類似した肉類似製品の生成を達成すること、すなわち、栄養素の中でも、栄養価の範囲内の全ておよび選択されたビタミン、ミネラルおよび脂質を含むことができる製品を製作することを可能にした。この例では、本発明を使用して、全ての必須アミノ酸を含むが、非動物起源のタンパク質のみを使用する製品を生成することができる。この例では、本発明に記載の技術を使用して、米タンパク質とエンドウ豆タンパク質の両方を含む組成物を使用して、非動物ベースの起源のみから全ての必須アミノ酸を含む多層微小押し出し肉類似製品を生成した。
図13は、12.5w/w%の米タンパク質、12.5w/w%のエンドウ豆タンパク質、5w/w%のSAおよび70w/w%の水の組成物を使用して生成された、完成した多層微小押し出し肉類似製品の例を示す。別の例では、植物ベースの起源からの全ての必須アミノ酸、および選択された炭水化物、脂肪、ビタミン、ミネラル、食物繊維および食用赤色染料を含む肉類似製品を、本発明に記載の方法を使用して製作した。
実施例2
本発明の食用微小押し出し製品の低温殺菌および調理
肉類似製品の低温殺菌
【0189】
本発明に記載の方法論によって得られた製品を保管および包装する可能性を実証するために、これらの例からの選択された製品を、72℃~80℃の温度に1時間供するか、または代替としてサイクル当たり30分間の72℃までの3サイクルに供した。その後、製品は巨視的形態に有意な変化を示さなかった。この試験は、本明細書に記載の技術で得られた製品に低温殺菌プロセスを適用できることを実証することを目的としており、これにより、本発明に記載の技術は、保管、包装および輸送目的で、製品の貯蔵寿命を延ばすことが重要である特定の用途にとって興味深いものになる。
肉類似製品の調理評価
【0190】
本発明の実施例で生成された多層微小押し出し製品の挙動を評価するために、肉類似製品を、鍋、オーブン、電子レンジ、および蒸気調理によって調理した。一例では、12.5w/w%の米タンパク質、12.5w/w%のエンドウ豆タンパク質、5w/w%のSA、および70w/w%の水を含む組成物を使用して生成された多層微小押し出し製品を、同じ調理プロセスを使用して鶏胸肉の断片と並行して鍋で調理し、調理後の2つの食品の挙動を比較した。調理時間は5~10分まで変化させ、調理は小さじ1杯のエクストラバージンオリーブオイルの存在下および非存在下の両方で行った。選択した微小押し出し製品および鶏胸肉を調理した後、2つの食品を観察して食べてみると、それらは、全て様々な肉食品に特有の特性である堅さ、完全性、変形能、弾力性および繊維質のテクスチャの点で、同様の特性を備えていることが分かった。
図14Aおよび
図14Bは、鶏胸肉の
一部と比較した、この実施例に記載の製品の鍋での調理プロセス中に得られた代表的な画像を示す。
図14Aでは、本発明に従って生成された製品が画像の右側に配置され、鶏胸肉が画像の右側に配置されている。
図14Bでは、本発明に従って生成された別の製品が画像の下部に配置され、鶏胸肉が画像の上部に配置されている。
【0191】
それらから作製された全ての組成物および食用製品は、自立能力を示した。粘弾性組成物は、回転レオロジー試験下で擬塑性特性を示し、これは良好な印刷適性に貢献した。印刷プロセスの速度は、10mm/秒~50mm/秒の間で変化させた。印刷された食用製品は、特定のずり流動化特性のために3D形状を維持した。
【0192】
図示されるように、CaCl2等の架橋剤の添加は、食用微小押し出し製品の機械的特性を改善した。
【0193】
したがって、まったく新しい生体模倣製品が印刷技術により開発された。肉を模倣した3D印刷食品は、肉のような外観および味を有していたが、天然の非動物ベース成分のみを使用した。
【0194】
印刷食品のテクスチャおよび味への望ましい変更だけでなく、その栄養仕様にも応じて、植物ベース材料および藻類ベース材料の両方を含む、様々な非動物ベース成分を選択することができる。実際に、特定の成分を液体または固体形態で印刷可能な混合物に添加することにより、粘弾性組成物および/または食用微小押し出し製品に含まれる非動物ベースのタンパク質、炭水化物および脂肪の種類および量を制御することが可能である。
【0195】
さらに、上記で定義された方法を使用すると、所望のマクロ形状を定義し、情報を3Dプリンタまたは微小押し出し装置の要素に送信するだけで、複雑な3次元構造で食品の高速で再現性のある印刷(または他の種類の微小押し出し)を達成することができ、これは他の手法では達成できない。ビーフステーキの構造等の非常に複雑な構造を印刷することもまた可能である。
【0196】
例からの結論として、本発明は、定義された食用粘弾性組成物および特定の微小押し出しプロセスの使用により、特に様々な種類の肉を含む異なる食品の同じ桁の機械的特性を有する多層微小押し出し食品を製造することを可能にすることが実証された。さらに、本発明は、三次元マクロ形状、製品内の微小要素の定義されたパターンおよび分布、ならびに微小要素および製品の両方に含まれるナノ繊維の異方性配向に関して所望のカスタマイズされた特性を示す多層(少なくとも2層)の食用微小押し出し製品の製作を可能にする。さらに、高い様々なタンパク質の含有量、ならびに含水量およびその他の栄養素の明確かつ調整可能な量を有するように、粘弾性組成物および多層微小押し出し製品の栄養価をカスタマイズすることが可能であった。特に、様々な種類の肉の栄養特性の範囲内の栄養特性を有する粘弾性組成物および多層微小押し出し製品を製造することが可能である。一例では、個人化された栄養価および全ての必須アミノ酸を有する食用肉類似体の製造が説明されており、植物由来の天然成分の食用材料のみを含む組成物を使用する可能性が追加されている。肉の特徴的なテクスチャ、堅さ、および栄養価を模倣する微小押し出し食用三次元製品を生成する能力、ならびに非動物由来の成分のみを使用する可能性により、3つの主な理由から本発明は興味深い。第一に、これは、様々なタンパク質および特定の栄養素の量を含む食事に適した製品を生成することにより、世界の公衆衛生の改善に貢献する。第二に、この技術は、バランスの取れた食事に必要な必須アミノ酸、ミネラルおよびビタミン等のある特定の栄養素の不足という一般的な問題と戦うために、地球上の農村地域で消費される食品の栄養成分を改善することを目的としている。この技術で製造された食品は、低温殺菌および包装し、保管してアクセスできない領域に輸送することができ、食品の正しい保存を可能にする。第三に、これは、動物から生産された肉の健康的な代替
戦略を見つけることが基本的かつ緊急であると思われるため、より持続可能な農業および家畜システムに向けた社会的および経済的な動きを促進する。
実施例3
エンドウ豆タンパク質およびカラギーナン、またはエンドウ豆タンパク質およびジェランガムを含む粘弾性組成物。粘弾性組成物で印刷された食用微小押し出し製品。
材料
【0197】
これらの例に記載されている食用組成物の製造のために、使用された材料は、水、エンドウ豆タンパク質、カラギーナン、およびジェランガムであった。エンドウ豆タンパク質(Raab Vital Food GmbH、ドイツ)、カラギーナン(Sigma-Aldrich)、およびジェランガム(Sigma-Aldrich)は、可溶性粉末の形態で購入され、それぞれの製造業者によって食用であることが認定されていた。カラギーナンは海藻から抽出される天然の多糖類であり、美食学で広く使用されており、ゲル化、増粘、安定化の特性に使用され得る。ジェランガムは、細菌発酵から生成される多糖類であり、食品のゲル化、テクスチャ化、および安定剤として美食学でいくつかの用途がある。カラギーナンおよびジェランガムの両方を使用して、強力な擬塑性挙動を示すヒドロゲルを形成することができる。
組成物の調製
【0198】
実施例1に記載のプロセスを使用して、エンドウ豆タンパク質(PP)を、カラギーナン(CG)、またはジェランガム(GG)、またはアルギン酸ナトリウム(SA)のいずれか、および食用溶媒としての飲料水(または飲用水)と混合した。脱イオン水、蒸留水、油および/または果汁等の他の食用溶媒を使用することができ、必要に応じて全て任意選択で無機塩および他の添加物を含む。これらの成分を使用して、様々なヒドロゲル組成物(PP-CGおよびPP-GG)を生成した。この目的のために、一定量のPPおよびCG(またはGG)を水と混合し、別個のポリプロピレン容器に入れた。試験した配合物は、
a)73w/w%の水、25w/w%のPPおよび2w/w%のCG
b)75w/w%の水、20w/w%のPPおよび5w/w%のCG
c)73w/w%の水、25w/w%のPPおよび2w/w%のGG
d)75w/w%の水、20w/w%のPPおよび5w/w%のGG
e)73w/w%の水、25w/w%のPPおよび2w/w%のSA
f)75w/w%の水、20w/w%のPPおよび5w/w%のSA
で構成されていた。
【0199】
ポリプロピレン容器をParafilm(登録商標)(Sigma-Aldrich、ドイツ)で密封し、ミキサー(SpeedMixer DAC 150.1 FVZ;FlackTek、ドイツ)で3500RPMで10分間、得られたヒドロゲルが均質化するまで混合した。
微小押し出しの評価および多層微小押し出し製品の製作
【0200】
本明細書の実施例1の「微小押し出しの評価」の項に記載されているのと同じプロセスを使用して、組成物をフィラメントの形態で首尾よく微小押し出しし、組成物が内径0.41mm、または代替として0.84mmのノズルを通して適切に微小押し出しされ得ることを示した。
【0201】
本発明に記載の技術を使用して、タンパク質、擬塑性ポリマーおよび水の混合物からなる、可変の粘度を有する均質なペーストを生成し、組成物を適切に微量押し出しすることが可能である。
図15は、75w/w%の水、20w/w%のPPおよび5w/w%のCGで構成される微小押し出し可能な粘弾性配合物の例を示す。
【0202】
さらに、本明細書の実施例1の「多層微小押し出し製品の製作」の項で説明したのと同じプロセスを使用して、上記のPP-CGおよび代替としてPP-GG組成物が、3D微小押し出し印刷プロセス等の微小押し出しプロセスにより多層自立構造を形成する可能性が示された。一例として、
図16に示される製品は、73w/w%の水、25w/w%のPP、2%のGGを含む粘弾性組成物を使用して生成された。この例では、上記の試験により、微小押し出し自動化プロセスによって多層微細構造の食用製品を生成する組成物の能力を評価することができた。
【0203】
PPを同じ配合でRPで置き換えた場合にも、同様の結果が得られた。
実施例4
細胞を含む食用微小押し出し製品の生成
細胞を含む微小押し出し可能組成物の生成
【0204】
これらの例において記載されている食用組成物の製造のために、使用された材料は、水、リン酸緩衝生理食塩水、ゼラチンおよびアルギン酸ナトリウムであった。ゼラチン(Type B Rousselot)およびアルギン酸ナトリウム(Special Ingredients Ltd、または代替としてBioChemica Panreac
A3249)は、可溶性粉末の形態で購入された。アルギン酸ナトリウムは海藻から抽出された生体適合性の天然多糖類であり、ゼラチンはコラーゲンタンパク質の変性に由来する生体適合性の天然成分である。これらは食用材料であり、美食学で広く使用されており、両方を使用して擬塑性挙動を有するヒドロゲルを形成することができる。
【0205】
アルギン酸ナトリウム(SA)、ゼラチン(GEL)およびリン酸緩衝生理食塩水(PBS、Sigma-Aldrich)を使用して、微小押し出し可能組成物を生成した。病原菌を減らすために低温殺菌プロセスを使用したが、このために、アルギン酸塩およびゼラチンの粉末を別個に秤量し、少し開いた2つのガラス容器に入れ、30分間72℃の3サイクルに供した。代替として、アルギン酸塩およびゼラチンを、低圧の酸素ガスを用いたプラズマ曝露プロセスに供し、材料を滅菌した。
【0206】
微小押し出し可能組成物(各試料2グラム)を調製するために、本明細書の実施例1の「組成物の調製」の項に記載のように、配合物を3500rpmで10分間混合した。一例では、78w/w%のPBS(Sigma-Aldrich)、20w/w%のゼラチンおよび2w/w%のアルギン酸塩で構成される配合物を使用した。別の例では、PBSを水で置き換えた。
【0207】
細胞を埋め込む微小押し出し可能な製剤(バイオインクとしても定義可能)を生成するために、5×106の哺乳動物細胞/mLを組成物に添加し、少量の250μLの細胞培養培地(DMEM高グルコース、Thermo Fisher Scientific)に懸濁した。次いで、細胞を手動でバイオインクに埋め込み、細胞懸濁液およびバイオインクをスパチュラで穏やかに混合するか、または2つの接続されたシリンジのシステムを介して混合した。代替として、事前に混合された組成物を、自動遠心システムを使用して10gまたは60g(rcf)~100gの速度で細胞と混合し、細胞に損傷を与えることなく均質な組成物を得ることができる。
【0208】
別の例では、同じ微小押し出し可能配合物を生成したが、細胞を組成物に埋め込むことはなかった(細胞播種用のインクとしても定義可能)。
【0209】
食用微小押し出し細胞埋め込み製品および細胞が播種された製品の微小押し出しおよび製作プロセス
本明細書の実施例1の「多層微小押し出し肉類似製品の製作」の項で説明されているように、3D微小押し出し印刷プロセスを使用して、食用微小押し出し細胞ベース肉代替品を製造するために、細胞埋め込み配合物を使用した。
【0210】
別の例では、細胞を含まない食用微小押し出し組成物(細胞播種用のインク)を、バイオインクについて説明したのと同じ3D微小押し出し印刷プロセスで処理した。次いで、5×106の哺乳類細胞/mLを少量の250μLの細胞培養培地(DMEM高グルコース、Thermo Fisher Scientific)に懸濁し、微小押し出し製品上に播種した。
【0211】
その後、微小押し出し製品を、室温で10分間、100mMのCaCl2を含むDMEM高グルコース細胞培養培地で架橋した。次いで、試料を室温で非添加DMEM高グルコース細胞培養培地で3回洗浄して、試料から過剰のCaCl2を排出し、食用細胞ベース肉代替製品を細胞培養用のインキュベータに6ウェルプレート内で保存し、添加DMEM高グルコース細胞培養培地に浸漬し、様々な期間培養し、48時間ごとに細胞培養培地を交換した。
【0212】
多層細胞ベース微小押し出し製品の顕微鏡評価
微小押し出し試料内に埋め込まれた、または播種された哺乳動物細胞の細胞生存率を評価するために、食用多層細胞ベース製品の分析を行った。一例では、Live-Dead法(Live-Dead細胞画像化キット、Invitrogen)をインキュベーション時間から48時間で使用して、製品中の細胞の存在および生存率を評価した。
【0213】
画像化法を行うために、試料を室温でDMEM細胞培養培地の溶液で洗浄した。陰性対照試料を調製するために、一部の製品を0.1%Triton(10mLの細胞培養培地+10μLのTriton)に37度浸漬した。次いで、試料をLive-Dead溶液(10mLのPBS+5μLのカルセイン-AM+20μLのヨウ化プロピジウム)に浸漬し、37度で20分間インキュベートした。PBSで洗浄した後、共焦点顕微鏡(ライカ)で評価した。顕微鏡画像(図示せず)は、バイオインクに埋め込まれた細胞を含む試料、および微小押し出し製品に播種された細胞を含む試料が生細胞を含むことを示した。死細胞のパーセンテージ(赤の点)と比較して、生細胞のパーセンテージ(緑の点)に関して、試料内で高い細胞生存率を観察することができた。
細胞播種試料および細胞埋め込み試料の両方の場合の微小押し出し製品中の生細胞のパーセンテージの分析は、両方の場合で高い細胞生存率を示した。結果は、表1に示されるように、細胞播種試料の細胞の平均79%が生存しており、細胞埋め込み試料の細胞の平均75%が生存していることを示した。
【0214】
【0215】
本発明のさらなる態様/実施形態は、以下の項目に見出すことができる。
【0216】
項目1-粘弾性微小押し出し要素の2つ以上の層を備える食用微小押し出し製品であって、各押し出し要素は、タンパク質、食用擬塑性ポリマーおよび適切な食用溶媒を含み、-微小押し出し要素の総重量に対するタンパク質の重量パーセンテージは、19%~49
%であり、微小押し出し要素の総重量に対する食用溶媒の重量パーセンテージは、少なくとも45%であり;
-微小押し出し要素は、10μm~1000μmの断面幅を有し;
-食用微小押し出し製品の圧縮弾性率は、1.0×103Pa~5.0×106Paであり、食用微小押し出し製品の引張ヤング率は、5.0×103Pa~11.0×106Paであり、前記圧縮弾性率および引張ヤング率は、サーボ油圧試験システムにおいて、1mm/分に等しいクランプ変位速度で、23℃で、および45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で測定され;
-微小押し出し要素の2つ以上の層は、食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように積み重ねられ;または代替として、2つ以上の層は、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられる、食用微小押し出し製品。
【0217】
項目2-タンパク質、食用擬塑性ポリマー、および適切な食用溶媒を含む粘弾性組成物で作製され、粘弾性組成物に対するタンパク質、食用擬塑性ポリマー、および食用溶媒の重量パーセンテージは、微小押し出し要素の場合と同じパーセンテージである、項目1に記載の食用微小押し出し製品。
【0218】
項目3-微小押し出し要素が、微小押し出しシート、微小押し出しフィラメント、およびそれらの組み合わせから選択される、項目1または2に記載の食用微小押し出し製品。
【0219】
項目4-タンパク質の重量パーセンテージが、25%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージが、少なくとも45%である、項目1から3のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0220】
項目5-タンパク質の重量パーセンテージが、29%~49%であり、食用溶媒の重量パーセンテージが、少なくとも45%である、項目1から3のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0221】
項目6-タンパク質が、非ヒト動物由来タンパク質、植物由来タンパク質、藻類由来タンパク質、酵母由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される、項目1から5のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0222】
項目7-微小押し出し要素の総重量に対する食用擬塑性ポリマーの重量パーセンテージが、0.2%~40%であり、食用溶媒の重量パーセンテージが、少なくとも45%である、項目1から6のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0223】
項目8-食用擬塑性ポリマーが、多糖、擬塑性タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択される、項目1から7のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0224】
項目9-擬塑性ポリマーが、アルギン酸およびアルギン酸の食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチンならびにそれらの組み合わせから選択される多糖類である、項目8に記載の食用微小押し出し製品。
【0225】
項目10-前記粘弾性組成物が、0.16Hzおよび23℃の温度で、45%~90%w/wの食用微小押し出し製品中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し;貯蔵弾性率G'は1700Pa以上であり、損失弾性率G’’は350Pa以上であり、前記粘弾性組成物のG’’/G'
比は0.24~0.88である、項目2から9のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0226】
項目11-粘弾性組成物の貯蔵弾性率G'が、1700Pa~140000Paであり
、粘弾性組成物の損失弾性率G’’が、350Pa~40000Paであり、粘弾性組成物のG’’/G'比が、0.24~0.88である、項目10に記載の食用微小押し出し
製品。
【0227】
項目12-粘弾性微小押し出し要素または粘弾性組成物が、エモリエント、フレーバー化合物、芳香化化合物、脂質、着色剤、金属キレート剤、少数元素、ビタミン、無機塩、およびそれらの組み合わせからなるリストから選択される食用添加剤をさらに含む、項目1から11のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0228】
項目13-層が、平行に隣接して配置された微小押し出しフィラメントで作製され、層の表面における微小押し出しフィラメントのパーセンテージは、25%~100%である、項目1から12のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品。
【0229】
項目14。項目1から13のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品を製造するための方法であって、
(i)適切な食用溶媒中に、タンパク質および食用擬塑性ポリマーを含む粘弾性組成物を提供するステップであって、前記粘弾性組成物は、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質、および少なくとも45%の食用溶媒を含み、前記食用溶媒は粘弾性組成物の100重量%までの残余である、ステップと;
(ii)粘弾性組成物を、10μm~1000μmの幅または直径を有するオリフィスを通して微小押し出しして、1つまたは複数の微小押し出し要素を得るステップと;
(iii)食用微小押し出し製品の垂直断面が、層内の交差した微小押し出し要素、本発明の一部、食用微小押し出し製品、もしくは異なる層間に重ね合わされて異なって配向された微小押し出し要素を示すように、微小押し出し要素を含む2つ以上の層を積み重ねるステップ;または代替として、2つ以上の層が、層間の微小押し出し要素が平行に配向されるように積み重ねられるステップと
を含む方法。
【0230】
項目15。肉代替品としての、項目1から13のいずれか一項に記載の食用微小押し出し製品の使用。
【0231】
項目16。適切な食用溶媒中に、粘弾性組成物の総重量に対して19%~49%の重量パーセンテージのタンパク質であって、植物由来タンパク質、昆虫タンパク質、藻類由来タンパク質、細菌由来タンパク質、およびそれらの組み合わせから選択されるタンパク質と;全粘弾性組成物に対する重量パーセンテージで0.5%~40%の、アルギン酸塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、およびそれらの組み合わせから選択される食用擬塑性多糖とを含む食用粘弾性微小押し出し可能組成物であって、粘弾性組成物は、組成物の総重量に対して少なくとも45重量%の食用溶媒を含む、食用粘弾性微小押し出し可能組成物。
【0232】
項目17-0.16Hzおよび23℃の温度で、45%~90%w/wの食用微小押し出し可能組成物中の溶媒量で一対の平行な鋸歯状プレートで測定された場合、損失弾性率G’’よりも高い貯蔵弾性率G'を有し、貯蔵弾性率G'は1700Pa超であり、損失弾性率G’’は350Pa超であり、前記粘弾性組成物のG’’/G'比は0.24~0.
88である、項目16に記載の食用粘弾性微小押し出し可能組成物。
引用リスト
【0233】
特許文献
-米国特許第9808029-B2号(2017)
-米国特許第8703216-B2号(2014)
-米国特許出願公開第2016135493-A1号(2016)
非特許文献
【0234】
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-Lilleら、「Applicability of protein and fibre-rich food materials in extrusion-based 3D printing」、Journal of Food Engineering-2017、http://dx.doi.org/10.1016/j.jfoodeng.201704.034。
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-Jahanbakhshian Nら、「Measurement and prediction of the mechanical properties of a
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-Segars Rら、「Textural characteristics of beef muscles」、Journal of Texture Studies5(1974)283~297、doi:10.1111/j.1745-4603.1974.tb01436.x
前記擬塑性ポリマーが、アルギン酸、およびアルギン酸の食用塩、キサンタンガム、グリコサミノグリカン、アガロース、ジェランガム、ペクチン、カラギーナンならびにそれらの組み合わせから選択される多糖類である、請求項7に記載の食用微小押し出し製品。
前記粘弾性組成物の貯蔵弾性率G'が、1700Pa~140000Paであり、前記粘弾性組成物の損失弾性率G”が、350Pa~40000Paであり、前記粘弾性組成物のG”/G'比が、0.24~0.88である、請求項9に記載の食用微小押し出し製品。