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特開2024-81687反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081687
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20240611BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240611BHJP
   G03F 1/54 20120101ALI20240611BHJP
   G03F 1/48 20120101ALI20240611BHJP
   G03F 1/80 20120101ALI20240611BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F7/20 521
G03F7/20 503
G03F1/54
G03F1/48
G03F1/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024043545
(22)【出願日】2024-03-19
(62)【分割の表示】P 2023569982の分割
【原出願日】2023-08-23
(31)【優先権主張番号】P 2022136730
(32)【優先日】2022-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】谷口 和丈
(72)【発明者】
【氏名】中川 真徳
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エッチングマスク膜の酸素濃度比率を所定以下に低減したことで、ドライエッチング過程でのCD変化を抑制しながらも、静電破壊の発生を防止した反射型マスクブランクを提供する。
【解決手段】多層反射膜2、吸収体膜4及びエッチングマスク膜6をこの順に備えた反射型マスクブランク100であって、前記吸収体膜が、バッファ層42と吸収層44とを含み、前記エッチングマスク膜が元素Xと酸素とを含有し、ここで、前記エッチングマスク膜において、酸素の含有量を元素X及び酸素の合計含有量で除した酸素濃度比率を定義した場合に、前記エッチングマスク膜の前記吸収層側における酸素濃度比率が、前記エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高く、前記元素Xがタンタル及びケイ素から選択される少なくとも一種を含む、反射型マスクブランクである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層反射膜、吸収体膜及びエッチングマスク膜をこの順に備えた反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜が、バッファ層と、該バッファ層に対してエッチング耐性を有する吸収層とを含み、
前記エッチングマスク膜が、前記吸収層に対してエッチング耐性を有するとともに、元素Xと酸素(O)とを含有し、
ここで、前記エッチングマスク膜において酸素(O)の含有量(原子%)を元素X及び酸素(O)の合計含有量(原子%)で除した酸素濃度比率を定義した場合に、前記エッチングマスク膜の前記吸収層側における酸素濃度比率が、前記エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高く、
前記元素Xが、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種を含む、反射型マスクブランク。
【請求項2】
前記エッチングマスク膜の前記吸収層とは反対の表面側における酸素濃度比率が、前記エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高い、請求項1に記載の反射型マスクブランク。
【請求項3】
前記エッチングマスク膜の膜厚が6nm~30nmである、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項4】
前記バッファ層の膜厚に対する前記エッチングマスク膜の膜厚の比が0.1~15である、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項5】
第1の前記エッチングマスク膜の上に第2のエッチングマスク膜を備え、前記第2のエッチングマスク膜がクロム(Cr)を含有する、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項6】
前記バッファ層が、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項7】
前記吸収層が、クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくとも一種を含む、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項8】
前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に保護膜を備える、請求項1又は2に記載の反射型マスクブランク。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有する反射型マスク。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する方法であって、前記エッチングマスク膜をドライエッチングしてエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程とを含む、反射型マスクの製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の反射型マスクを露光装置にセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有する、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造などに使用される露光用マスクを製造するための原版である反射型マスクブランク、反射型マスク及びその製造方法、並びに半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置製造における露光装置の光源の種類は、波長436nmのg線、同365nmのi線、同248nmのKrFレーザ、同193nmのArFレーザと、波長を徐々に短くしながら進化してきており、より微細なパターン転写を実現するため、波長が13.5nm近傍の極端紫外線(EUV:Extreme Ultra Violet)を用いたEUVリソグラフィが開発されている。EUVリソグラフィでは、EUV光に対して透明な材料が少ないことから、反射型のマスクが用いられる。この反射型マスクでは、低熱膨張基板上に露光光を反射する多層反射膜が形成され、該多層反射膜を保護するための保護膜の上に、所望の転写パターンが形成されたマスク構造を基本構造としている。また、転写パターンの構成から、代表的なものとして、EUV光を十分吸収する比較的厚い吸収体パターンからなるバイナリ型反射マスクと、EUV光を光吸収により減光させ、且つ多層反射膜からの反射光に対してほぼ位相が反転(約180°の位相反転)した反射光を発生させる比較的薄い吸収体パターンからなる位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)がある。この位相シフト型反射マスク(ハーフトーン位相シフト型反射マスク)は、透過型光位相シフトマスクと同様に、位相シフト効果によって高い転写光学像コントラストが得られるので解像度向上効果がある。また、位相シフト型反射マスクの吸収体パターン(位相シフトパターン)の膜厚が薄いことから精度良く微細な位相シフトパターンを形成できる。
【0003】
反射型マスクを製造するための原版である反射型マスクブランクは、典型的には、基板上に、露光光を反射するための多層反射膜と、ドライエッチングや電子線(EB)を用いた欠陥修正などから多層反射膜を保護するための保護膜と、吸収体パターンを形成するための吸収体膜と、該吸収体膜をパターンエッチングするためのマスクとなるエッチングマスク膜とを有している。また、吸収体膜は、EUV光を吸収/減光する吸収体膜と保護膜との間のエッチング選択比が十分高くない場合に、パターン形成時のドライエッチングで下層の多層反射膜にダメージを与えないよう保護するバッファ層を有するものが主流である。
【0004】
ところで、EUVリソグラフィでは、光透過率の関係から多数の反射鏡からなる投影光学系が用いられている。このような投影光学系では、反射型マスクに対しEUV光を斜めから入射させて、これらの複数の反射鏡が投影光(露光光)を遮らないようにしている。露光光の入射角度は、投影光学系の開口数(NA)の向上に伴い、より大きな斜入射角度(例えば6°以上)にする方向で検討が進められている。しかし、マスク面に対し露光光が斜めから入射される投影光学系では、転写形成されるパターンの寸法や位置の精度を低下させるシャドーイング効果の問題がある。
【0005】
シャドーイング効果は、主に吸収体パターンの立体構造に起因する。そのため、吸収体膜を可能な限り薄膜化することにより、シャドーイング効果を低減することができる。しかし、吸収体膜を薄くすると露光光を十分吸収できなくなり、また、吸収体パターンからの望ましくない反射光が転写精度に悪影響を及ぼしかねず、吸収体膜の薄層化には限界がある。
【0006】
そのような背景を受け、例えば特許文献1には、吸収体膜が、バッファ層と、バッファ層の上に設けられた吸収層とを有し、バッファ層が、タンタル(Ta)又はケイ素(Si)を含有する材料からなり、吸収層が、EUV光(例えば、波長13.5nm)の消衰係数が比較的大きいクロム(Cr)を含有する材料からなる反射型マスクブランクが開示されている。この構成により、従来よりも吸収体膜の膜厚を薄くしても、EUV光の反射率が2%以下の吸収体パターンを実現できることが確認されている。
【0007】
更に特許文献1では、バッファ層をパターニングしたときにエッチングマスク膜も同時に除去できるようにするために、エッチングマスク膜がバッファ層と同種のタンタル(Ta)又はケイ素(Si)を含有する材料からなることが開示されている。
【0008】
例えば、タンタル(Ta)を含有するエッチングマスク膜をパターンニングする際にはフッ素(F)系のガスが用いられる。しかし、フッ素(F)系のガスをエッチングマスク膜のドライエッチングに用いた場合、レジスト膜のエッチング速度が比較的高く、そのためレジスト膜のみではエッチングマスク膜を微細で高精度にパターニングすることが難しい。これに関連し、例えば特許文献2には、クロム(Cr)を含有する吸収層上にエッチングマスク膜としてのハードマスク層を備え、このハードマスク層が、吸収層をパターニングするためのタンタル(Ta)系の第1のハードマスク層と、第1のハードマスク層をパターニングするためのクロム(Cr)系の第2のハードマスク層とを備えるフォトマスクが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2020/175354号
【特許文献2】米国特許出願公開第2021/0405519号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
一般に、酸素を含むエッチングガスを用いたドライエッチング過程でのCD(Critical Dimension)変化を抑制するために、エッチングマスク膜は酸化物であることが好ましい。その一方で、例えばタンタル系のエッチングマスク膜に含まれる酸素濃度が高い場合には、電気抵抗率が高くなり、反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造過程において、過度な帯電が生じ、その結果、静電破壊に起因した致命欠陥の発生頻度が高くなるという課題が生じた。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、エッチングマスク膜の少なくとも底部における酸素濃度比率よりも、エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率を低減したことで、ドライエッチング過程でのCD変化を抑制しながらも、静電破壊の発生を防止した反射型マスクブランク、及び反射型マスクブランクにより作製される反射型マスク、及び反射型マスクの製造方法、並びに反射型マスクを用いた半導体装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0013】
(構成1)
本発明の構成1は、多層反射膜、吸収体膜及びエッチングマスク膜をこの順に備えた反射型マスクブランクであって、
前記吸収体膜が、バッファ層と、該バッファ層に対してエッチング耐性を有する吸収層とを含み、
前記エッチングマスク膜が、前記吸収層に対してエッチング耐性を有するとともに、元素Xと酸素(O)とを含有し、
ここで、前記エッチングマスク膜において酸素(O)の含有量(原子%)を元素X及び酸素(O)の合計含有量(原子%)で除した酸素濃度比率を定義した場合に、前記エッチングマスク膜の前記吸収層側における酸素濃度比率が、前記エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高く、
前記元素Xが、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種を含む、反射型マスクブランクである。
【0014】
(構成2)
本発明の構成2は、前記エッチングマスク膜の前記吸収層とは反対の表面側における酸素濃度比率が、前記エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高い、構成1の反射型マスクブランクである。
【0015】
(構成3)
本発明の構成3は、前記エッチングマスク膜の膜厚が6nm~30nmである、構成1又は2の反射型マスクブランクである。
【0016】
(構成4)
本発明の構成4は、前記バッファ層の膜厚に対する前記エッチングマスク膜の膜厚の比が0.1~15である、構成1~3の何れかの反射型マスクブランクである。
【0017】
(構成5)
本発明の構成5は、第1の前記エッチングマスク膜の上に第2のエッチングマスク膜を備え、前記第2のエッチングマスク膜がクロム(Cr)を含有する、構成1~4の何れかの反射型マスクブランクである。
【0018】
(構成6)
本発明の構成6は、前記バッファ層が、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種を含む、構成1~5の何れかの反射型マスクブランクである。
【0019】
(構成7)
本発明の構成7は、前記吸収層が、クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくとも一種を含む、構成1~6の何れかの反射型マスクブランクである。
【0020】
(構成8)
本発明の構成8は、前記多層反射膜と前記吸収体膜との間に保護膜を備える、構成1~7の何れかの反射型マスクブランクである。
【0021】
(構成9)
本発明の構成9は、構成1~8の何れかの反射型マスクブランクにおける前記吸収体膜がパターニングされた吸収体パターンを有する反射型マスクである。
【0022】
(構成10)
本発明の構成10は、構成1~8の何れかの反射型マスクブランクから反射型マスクを製造する方法であって、前記エッチングマスク膜をドライエッチングしてエッチングマスク膜パターンを形成する工程と、前記エッチングマスク膜パターンをマスクにして前記吸収体膜をパターニングする工程とを含む、反射型マスクの製造方法である。
【0023】
(構成11)
本発明の構成11は、構成9に記載の反射型マスクを露光装置にセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有する、半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、エッチングマスク膜の少なくとも底部における酸素濃度比率よりも、エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率を低減したことで、ドライエッチング過程でのCD変化を抑制しながらも、静電破壊に起因した致命欠陥の発生を防止することができる反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、エッチングマスク膜が所定の酸素濃度比率を有することにより、吸収体膜のパターンエッチングに合わせてエッチングマスク膜のエッチング速度を調整することができる。そのため、ドライエッチング過程において、吸収体膜表面又は多層反射膜を保護する保護膜にダメージを与えない反射型マスクブランク及び反射型マスクの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、エッチング過程でのCD変化が抑制された、微細で高精度の吸収体パターンを有する反射型マスクを提供することができる。また、本発明によれば、前記反射型マスクを用いることで微細で高精度な転写パターンが形成された半導体装置を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による反射型マスクブランクの概略構成を説明するための断面模式図である。
図2】反射型マスクブランクの層構成の一例を説明するための断面模式図である。
図3】反射型マスクブランクの層構成の他の例を説明するための断面模式図である。
図4A】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための断面模式図である。
図4B】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
図4C】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
図4D】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
図4E】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
図4F】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
図4G】反射型マスクブランクから反射型マスクを作製する工程を説明するための更なる断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。また、図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付してその説明を簡略化ないし省略することがある。
【0027】
本明細書において、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上面に接触する場合だけでなく、その基板や膜の上面に接触しない場合も含む。すなわち、基板や膜の「上に」とは、その基板や膜の上方に新たな膜が形成される場合や、その基板や膜との間に他の膜が介在している場合を含む。また、「上に」とは、必ずしも鉛直方向における上側を意味するものではなく、基板や膜の厚み方向における相対的な位置関係を示しているに過ぎない。
【0028】
<反射型マスクブランクの構成>
図1は、本発明の一実施形態による反射型マスクブランク100の構成を説明するための断面模式図である。同図に示されるように、反射型マスクブランク100は、基板1と、第1主面(表面)側に形成され、露光光であるEUV光を反射する多層反射膜2と、該多層反射膜2を保護するために設けられる保護膜3と、EUV光を吸収する吸収体膜4と、エッチングマスク膜6とを有し、これらがこの順で積層される。本実施形態の反射型マスクブランク100では、吸収体膜4が、バッファ層42と、バッファ層42の上に設けられた吸収層44とを有する。また、基板1の第2主面(裏面)側には、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。
【0029】
反射型マスクブランク100は、裏面導電膜5が形成されていない構成を含むことができる。また、上記反射型マスクブランク100は、エッチングマスク膜6の上にレジスト膜11を形成したレジスト膜付きマスクブランクの構成を含むことができる。
【0030】
以下、本発明の一実施形態による反射型マスクブランク100の各層の構成を具体的に説明する。
【0031】
<<基板>>
基板1は、EUV光による露光時の熱による転写パターン(後述の吸収体パターン)の歪みを防止するため、0±5ppb/℃の範囲内の低熱膨張係数を有するものが好ましく用いられる。この範囲の低熱膨張係数を有する素材としては、例えば、SiO-TiO系ガラス、多成分系ガラスセラミックス等を用いることができる。
【0032】
基板1の転写パターンが形成される側の第1主面は、少なくともパターン転写精度、位置精度を得る観点から高平坦度となるように表面加工されている。EUV露光の場合、基板1の転写パターンが形成される側の主表面の132mm×132mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。また、吸収体膜4が形成される側と反対側の第2主面は、露光装置にセットするときに静電チャックされる面であって、142mm×142mmの領域において、平坦度が0.1μm以下であることが好ましく、更に好ましくは0.05μm以下、特に好ましくは0.03μm以下である。
【0033】
また、基板1の転写パターンが形成される第1主面の表面粗さ(表面平滑度)は、二乗平均平方根粗さ(Rq)で0.1nm以下であることが好ましい。なお表面粗さは、原子間力顕微鏡で測定することができる。
【0034】
更に、基板1は、その上に形成される膜(多層反射膜2など)の膜応力による変形を防止するために、高い剛性を有しているものが好ましい。特に、65GPa以上の高いヤング率を有しているものが好ましい。
【0035】
<<多層反射膜>>
多層反射膜2は、屈折率の異なる元素を主成分とする複数の層が周期的に積層された多層構成を有している。一般的に、多層反射膜2は、高屈折率材料である軽元素又はその化合物の薄膜(高屈折率層)と、低屈折率材料である重元素又はその化合物の薄膜(低屈折率層)とが交互に40~60周期程度積層された多層膜からなる。多層反射膜2を形成するために、基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に複数周期積層してもよい。この場合、一つの(高屈折率層/低屈折率層)の積層構造が1周期となる。
【0036】
なお、多層反射膜2の最上層、すなわち多層反射膜2の基板1と反対側の表面層は、高屈折率層であることが好ましい。基板1側から高屈折率層と低屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が低屈折率層となる。しかし、低屈折率層が多層反射膜2の表面である場合、低屈折率層が容易に酸化されることで多層反射膜の表面の反射率が減少してしまうので、その低屈折率層の上に高屈折率層を形成することが好ましい。一方、基板1側から低屈折率層と高屈折率層をこの順に積層する場合は、最上層が高屈折率層となる。その場合は、最上層の高屈折率層が多層反射膜2の表面となる。
【0037】
多層反射膜2に含まれる高屈折率層は、例えばケイ素(Si)を含む材料からなる層である。高屈折率層は、Si単体を含んでもよく、Si化合物を含んでもよい。Si化合物は、ケイ素(Si)と、ボロン(B)、炭素(C)、窒素(N)、酸素(O)及び水素(H)を含むSi化合物でもよい。Siを含む層を高屈折率層として使用することによって、EUV光の反射率に優れたEUVリソグラフィ用反射型マスク200が得られる。
【0038】
多層反射膜2に含まれる低屈折率層は、遷移金属を含む材料からなる層である。低屈折率層に含まれる遷移金属は、例えばモリブデン(Mo)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、及び白金(Pt)から選択される金属単体、又はこれらの合金が用いられる。
【0039】
例えば、波長13~14nmのEUV光のための多層反射膜2としては、好ましくは、Mo膜とSi膜を交互に40~60周期程度積層したMo/Si多層膜を用いることができる。
【0040】
このような多層反射膜2の単独での反射率は、例えば65%以上である。多層反射膜2の反射率の上限は、例えば73%である。なお、多層反射膜2に含まれる層の厚み及び周期は、ブラッグの法則を満たすように選択することができる。なお、多層反射膜2の各構成層の厚み及び周期は、露光波長により適宜選択すればよく、ブラッグ反射の法則を満たすように選択される。多層反射膜2において高屈折率層及び低屈折率層はそれぞれ複数存在するが、高屈折率層同士、そして低屈折率層同士の厚みが同じでなくてもよい。また、多層反射膜2の最表面のSi層の膜厚は、反射率を低下させない範囲で調整することができる。最表面のSi(高屈折率層)の膜厚は、3nm~10nmとすることができる。
【0041】
多層反射膜2は、イオンビームスパッタ法により形成できる。例えば、多層反射膜2がMo/Si多層膜である場合、イオンビームスパッタ法により、Moターゲットを用いて、膜厚が3nm程度のMo膜を基板1の上に形成する。次に、Siターゲットを用いて、膜厚が4nm程度のSi膜を形成する。このような操作を繰り返すことによって、Mo/Si膜が40~60周期積層した多層反射膜2を形成することができる。このとき、多層反射膜2の基板1と反対側の表面層はSiを含む層(Si膜)である。1周期のMo/Si膜の厚みは7nmとなる。また、多層反射膜2の成膜の際に、イオン源からクリプトン(Kr)イオン粒子を供給して、イオンビームスパッタリングを行うことにより多層反射膜2を形成してもよい。
【0042】
<<保護膜>>
反射型マスクブランク100は、多層反射膜2と吸収体膜4との間に、保護膜3を有することが好ましい。多層反射膜2上に保護膜3が形成されていることにより、反射型マスクブランク100を用いて反射型マスク200(EUVマスク)を製造する際の多層反射膜2表面へのダメージを抑制することができるので、EUV光に対する反射率特性が良好となる。
【0043】
保護膜3は、後述する反射型マスク200の製造工程におけるドライエッチング及び洗浄から多層反射膜2を保護するために、多層反射膜2の上に形成される。また、電子線(EB)を用いた吸収体パターン4aの黒欠陥修正の際の多層反射膜2の保護も兼ね備える。保護膜3は、エッチャント、及び洗浄液等に対して耐性を有する材料で形成される。
【0044】
ここで、図1では保護膜3が単一の層の場合を示しているが、2層以上の積層構造とすることもできる。
【0045】
例えば、保護膜3は、Ruを主成分として含む材料により構成することができる。すなわち、保護膜3の材料は、Ru金属単体、Rh金属単体、Ruにチタン(Ti)、ニオブ(Nb)、ロジウム(Rh)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、ホウ素(B)、ランタン(La)、コバルト(Co)、及びレニウム(Re)などから選択される少なくとも1種の金属を含有したRu合金、及びそれらに窒素(N)を含む材料が挙げられる。
【0046】
このような保護膜3は、特に、吸収体膜4のうちのバッファ層42を、酸素を含まない、フッ素系ガス(F系ガス)又は塩素系ガス(Cl系ガス)のドライエッチングでパターニングする場合に有効である。保護膜3は、フッ素系ガス又は塩素系ガスを用いたドライエッチングにおける保護膜3に対するバッファ層42のエッチング選択比(バッファ層42のエッチング速度/保護膜3のエッチング速度)が1.5以上、好ましくは3以上となる材料で形成されることが好ましい。
【0047】
保護膜3の厚みは、その保護膜3としての機能を果たすことができる限り特に制限されない。EUV光の反射率の観点から、保護膜3の厚みは、好ましくは、1.0nm~8.0nm、より好ましくは、1.5nm~6.0nmである。
【0048】
保護膜3の成膜方法として、例えば、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、反応性スパッタリング法、気相成長法(CVD)及び真空蒸着法が挙げられる。保護膜3は、多層反射膜2の成膜後に、イオンビームスパッタリング法によって連続的に成膜してもよい。
【0049】
<<吸収体膜>>
上述した多層反射膜2又は保護膜3の上には、EUV光を吸収又は消衰させるための吸収体膜4が形成される。例えばバイナリ型反射マスクを作製するための反射型マスクブランク100では、微細で高精度な吸収体パターン(転写パターン)を得るために吸収体膜4の膜厚は可能な限り薄いほうが好ましい。そのため、吸収体膜4の材料は、EUV光の吸収率が高い(反射率が小さい)ものが好ましい。また、位相シフト型反射マスクを作製するための反射型マスクブランク100においても、吸収体膜4は、比較的薄い吸収体パターンでEUV反射光の位相を反転させるため、吸収率が高い材料で形成されることが好ましい。
【0050】
更に、本実施形態による反射型マスクブランク100において、吸収体膜4は、バッファ層42と、バッファ層42の上(基板1とは反対側)に設けられた吸収層44とを有する。
【0051】
本実施形態の吸収体膜4のうち、吸収層44の材料としては、EUV光を吸収する機能を有し、エッチング等により加工が可能(好ましくは塩素(Cl)系ガス及び/又はフッ素(F)系ガスのドライエッチングでエッチング可能)であり、保護膜3及び後述のエッチングマスク膜6に対してエッチング選択比が高い材料とすることができる。そのような機能を有するものとして、パラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、タンタル(Ta)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、銅(Cu)、テルル(Te)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1つの金属、2以上の金属を含む合金又はこれらの化合物を好ましく用いることができる。化合物は、上記金属又は合金に、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び/又はホウ素(B)を含んでもよい。
吸収層44の材料は、例えばクロム(Cr)及び/又はルテニウム(Ru)を含有することが好ましい。Cr又はRuを含有する薄膜が、Ruを主成分として含む保護膜3の表面に接して配置される場合、吸収層44と保護膜3のエッチング選択比が高くないという問題が生じる。そのため、本実施形態による反射型マスクブランク100では、吸収層44と保護膜3との間に、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも1種を含む材料からなるバッファ層42が配置されている。
【0052】
一実施形態において、バッファ層42の材料は、タンタル(Ta)を含む。また、バッファ層42の材料は、タンタル(Ta)と、酸素(O)、窒素(N)及びホウ素(B)から選ばれる1以上の元素とを含有することが好ましい。タンタル(Ta)を含むバッファ層42の材料として、具体的には、Ta、TaN、TaO、TaON、TaB、TaBN、TaBO、TaBONなどを挙げることができる。
また、タンタル(Ta)を含むバッファ層42の材料として、さらにパラジウム(Pd)、銀(Ag)、白金(Pt)、金(Au)、イリジウム(Ir)、タングステン(W)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、ハフニウム(Hf)、鉄(Fe)、銅(Cu)、テルル(Te)、亜鉛(Zn)、マグネシウム(Mg)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、モリブデン(Mo)、ニオブ(Nb)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)及びケイ素(Si)から選ばれる少なくとも1つの金属、2以上の金属を含んでもよい。
【0053】
バッファ層42の材料をTaと、N及びBから選ばれる少なくとも一つの元素とを含む材料とする場合、バッファ層42中のTa含有量は、50原子%以上であり、70原子%以上とすることができる。バッファ層42中のTa含有量は、95原子%以下であり、65原子%以下とすることができる。バッファ層42中のNとBの合計の含有量は、50原子%以下であり、30原子%以下とすることができる。バッファ層42中のNとBの合計の含有量は、5原子%以上とすることができる。Nの含有量はBの含有量よりも少ない方が好ましい。Nの含有量が少ない方が塩素ガスでのエッチング速度が速くなり、バッファ層42を除去しやすいからである。
【0054】
また、バッファ層42の材料をTaとOとを含む材料とする場合、バッファ層42中のTa含有量は、50原子%以上であり、70原子%以上とすることができる。バッファ層42中のTa含有量は、95原子%以下であり、65原子%以下とすることができる。バッファ層42中のO含有量は、70原子%以下であり、60原子%以下とすることができる。バッファ層42中のO含有量は、エッチング容易性の観点から10原子%以上であり、20原子%以上とすることができる。
【0055】
他の実施形態において、バッファ層42は、ケイ素(Si)を含む材料で形成されてもよい。また、バッファ層42の材料は、ケイ素(Si)と、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)及び水素(H)から選択される少なくとも一つの元素とを含むことが好ましい。
【0056】
ケイ素(Si)を含む材料として、具体的には、SiO、SiN、SiON、SiC、SiCO、SiCN、SiCON、MoSi、MoSiO、MoSiN、及びMoSiONなどを挙げることができる。Siを含む材料として、SiO、SiN又はSiONを用いることが好ましい。なお、材料は、本発明の効果が得られる範囲で、Si以外の半金属又は金属を含有することができる。また、金属Si化合物としては、モリブデンシリサイドを用いることができる。
【0057】
バッファ層42の膜厚は、吸収体膜4のエッチングの際に保護膜3にダメージを与えない範囲において、後述するエッチングマスク膜6と同程度かそれよりも薄くしてもよい。具体的に、バッファ層42の膜厚は、2nm~50nmが好ましく、4nm~30nmであることができる。
【0058】
バッファ層42は、上述したようにタンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも1種を含む材料から形成されることにより、例えば、酸素を含まない、フッ素系ガス又は塩素系ガスによりエッチングすることができる。また、そのような材料からなるバッファ層42は、Ruを主成分とする保護膜3に対し十分なエッチング耐性を有することができる。
【0059】
次に、バッファ層42の上に接して配置される吸収層44は、以下詳細に説明するように、クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくとも1種を含む材料とすることができる。これにより、吸収層44は、バッファ層42に対しエッチング耐性を有するとともに、従来よりもその膜厚を薄くしても、吸収体膜(位相シフト膜)としての光学特性を満たすことができる。
【0060】
ここで、A層がB層に対し「エッチング耐性」を有するとは、A層をマスクとしてB層をエッチングするに際して、A層のエッチング速度よりも、B層のエッチング速度のほうが十分速いことをいう。より具体的に、B層のエッチング速度/A層のエッチング速度の式で定義される、A層に対するB層のエッチング選択比が1.5以上である場合、好ましくは3以上である場合に、A層がB層に対し「エッチング耐性」を有するということができる。
【0061】
一実施形態において、吸収層44の材料は、クロム(Cr)単体、又はクロム(Cr)と、窒素(N)、酸素(O)及び炭素(C)から選択される少なくとも一つの元素とを含むCr化合物である。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrC、CrON、CrCO、CrCN、CrCON、CrBN、CrBC、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどが挙げられる。吸収層44の消衰係数を大きくするためには、酸素を含まない材料とすることができる。この場合、塩素系ガスに関するエッチング選択比を上げることも可能である。酸素を含まないCr化合物として、例えばCrN、CrC、CrCN、CrBN、CrBC及びCrBCNなどが挙げられる。Cr化合物のCr含有量は、50原子%以上100原子%未満であることが好ましく、80原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。なお、本明細書において、「酸素を含まない」又は「実質的に酸素を含まない」とは、化合物における酸素の含有量が10原子%以下、好ましくは5原子%以下であるものが該当する。
【0062】
他の実施形態において、吸収層44は、ルテニウム(Ru)単体、ルテニウム(Ru)と、窒素(N)及び酸素(O)から選択される少なくとも一つの元素とを含むRu化合物を含む材料で形成されてもよい。Ru化合物としては、例えば、RuN、RuON及びRuOなどが挙げられる。
【0063】
また、吸収層44の材料は、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)を含むRuCr系化合物であってもよい。Ru系化合物は、結晶化した構造になりやすく、加工性能に悪影響を及ぼす。すなわち、結晶化した金属の結晶粒子は、吸収体パターンを形成する際に側壁ラフネスが大きくなりやすく、そのため、吸収体膜4はアモルファスであることが好ましい。吸収層44の材料としてルテニウム(Ru)にクロム(Cr)を添加することにより、結晶構造をアモルファス化するとともに、加工特性を向上させることができる。また、ルテニウム(Ru)及びクロム(Cr)に加えて、更に窒素(N)及び酸素(O)から選択される少なくとも一つの元素が含まれることにより、結晶構造をよりアモルファス化することができる。RuCr系化合物としては、例えば、RuCrN、RuCrON及びRuCrOなどが挙げられる。Ru及びCrの組成範囲(原子比率)は、Ru:Cr=40:1~1:20とすることができ、40:1~3:7とすることができる。
また、吸収層44の材料は、ルテニウム(Ru)と、タンタル(Ta)又は白金(Pt)を含むRuTa系化合物又はRuPt系化合物であってもよい。RuTa系化合物又はRuPt系化合物に、更に窒素(N)、酸素(O)及びホウ素(B)から選択される少なくとも一つの元素を含んでもよい。RuTa系化合物としては、例えば、RuTaN、RuTaON、RuTaO、RuTaB、RuTaBN、RuTaBO及びRuTaBNOなどが挙げられる。RuPt系化合物としては、例えば、RuPtN、RuPtON、RuPtO、RuPtB、RuPtBN、RuPtBO及びRuPtBNOなどが挙げられる。RuTa系化合物のRu含有量は、30原子%以上100原子%未満であることが好ましく、40原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。RuPt系化合物のRu含有量は、30原子%以上100原子%未満であることが好ましく、40原子%以上100原子%未満であることがより好ましい。
【0064】
クロム(Cr)及びルテニウム(Ru)から選択される少なくとも一種の元素を含有する吸収層44は、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスによりエッチングすることができる。また、吸収層44をフッ素系のガスと酸素ガスとの混合ガスによりエッチングしてもよい。
【0065】
吸収層44の膜厚は、10nm~70nmであることが好ましく、20nm~60nmであることがより好ましい。また、バッファ層42と吸収層44とを加えた吸収体膜4の全体の膜厚は、15nm~75nmであることが好ましく、25nm~65nmであることがより好ましい。
【0066】
また、吸収体膜4(吸収層44)の表面には、酸化層を形成してもよい。吸収体膜4(吸収層44)の表面に酸化層を形成することにより、得られる反射型マスク200の吸収体パターン4aの洗浄耐性を向上させることができる。酸化層の厚みは、1.0nm以上が好ましく、1.5nm以上がより好ましい。また、酸化層の厚みは、5nm以下が好ましく、3nm以下がより好ましい。酸化層の厚みが1.0nm未満の場合には薄すぎて効果が期待できず、5nmを超えるとマスク検査光に対する表面反射率に与える影響が大きくなり、所定の表面反射率を得るための制御が難しくなる。
【0067】
酸化層の形成方法は、吸収体膜4(吸収層44)が成膜された後のマスクブランクに対して、温水処理、オゾン水処理、酸素を含有する気体中での加熱処理、酸素を含有する気体中での紫外線照射処理及びOプラズマ処理等を行うことなどが挙げられる。また、吸収体膜4(吸収層44)を成膜後に吸収体膜4(吸収層44)の表面が大気に晒される場合、表層に自然酸化による酸化層が形成されることがある。特に、場合によっては、膜厚が1~2nmの酸化層が形成される。
【0068】
<<エッチングマスク膜>>
本実施形態の反射型マスクブランク100においては、吸収体膜4をパターニングするためのマスク(「ハードマスク」ともいう)となるエッチングマスク膜6が形成される。エッチングマスク膜6は、上述の吸収層44の上面に接して配置され、その吸収層44に対しエッチング耐性を有するエッチングマスク膜61を有している。また、反射型マスクブランク100は、吸収層44に接して配置されるエッチングマスク膜61を第1のエッチングマスク膜とし、更に、その第1のエッチングマスク膜61に対してエッチング耐性を有する第2のエッチングマスク膜62を有するものでもよい。
【0069】
例えば図2に示される層構成例1のように、第1のエッチングマスク膜61は、所定の元素Xと酸素(O)とを含有する組成傾斜膜からなる。更に、第1のエッチングマスク膜61は、例えば図3に示される層構成例2のように、所定の元素Xと酸素(O)とを含有する層64、65と、実質的に酸素(O)を含有しない層66を一部に含むものでもよい。
【0070】
上述した層構成例1及び2の何れの実施形態においても、第1のエッチングマスク膜61に含有される所定の元素Xは、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種の元素を含む。第1のエッチングマスク膜61の材料は、上述の元素Xと、酸素(O)、窒素(N)及びホウ素(B)から選択される少なくとも一つの元素とを含むことが好ましい。具体的には、TaO、TaON、TaBO、TaBON、SiO、SiON、SiBO、SiBONなどが挙げられる。
【0071】
第1のエッチングマスク膜61の材料をTaとOとを含む材料とする場合、第1のエッチングマスク膜61中のTa含有量は、50原子%以上であり、70原子%以上とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のTa含有量は、95原子%以下であり、65原子%以下とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のO含有量は、70原子%以下であり、60原子%以下とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のO含有量は、2原子%以上であり、6原子%以上とすることができる。
【0072】
第1のエッチングマスク膜61の材料をSiとOとを含む材料とする場合、第1のエッチングマスク膜61中のSi含有量は、25原子%以上であり、40原子%以上とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のSi含有量は、80原子%以下であり、60原子%以下とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のO含有量は、70原子%以下であり、60原子%以下とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のO含有量は、10原子%以上であり、20原子%以上とすることができる。
【0073】
また、エッチングマスク膜61の材料は、上述したように、所定の元素Xを含むとともに、膜厚方向において所定の濃度比率プロファイルで酸素(O)を含むことが好ましい。エッチングマスク膜61が、所定の酸素濃度比率を有することにより、後述するように、バッファ層42のドライエッチング過程において、保護膜3(保護膜3がない場合には多層反射膜2)又は吸収層44へのダメージを防止することができる。
【0074】
第1のエッチングマスク膜61は、タンタル(Ta)及びケイ素(Si)から選択される少なくとも一種の元素を含むことにより、フッ素系ガスでエッチング及び除去することができる。フッ素系ガスとしては、CF、CHF、C、C、C、C、CH、CHF、C、SF、及びF等を用いることができる。また、これらのエッチングガスは、必要に応じて、更に、He及び/又はArなどの不活性ガスを含むことができる。
【0075】
本明細書において、エッチングマスク膜61における、上述の少なくとも一種の元素Xの合計の含有量に対して存在する酸素濃度比率は、次の式(1)で定義される。
【数1】

ここで、上記の定義式(1)において、変数Xは、エッチングマスク膜61を構成する金属元素の合計含有量(原子%)、変数Oは酸素の含有量(原子%)を示す。
【0076】
エッチングマスク膜6を構成する各成分の含有量は走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDX)によって測定することができる。
【0077】
本発明の好適な実施形態の反射型マスクブランク100において、第1のエッチングマスク膜61の吸収層44の側における酸素濃度比率が、該エッチングマスク膜61の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高い。また、第1のエッチングマスク膜61の吸収層44とは反対側における酸素濃度比率が、該エッチングマスク膜の膜厚中心における酸素濃度比率よりも高いことが好ましい。第1のエッチングマスク膜61の表層及び底部を所定以上の酸素濃度比率とし、第1のエッチングマスク膜61の膜厚中心における酸素濃度比率を所定以下とすることにより、ドライエッチング過程でのCD変化を抑制しつつ、静電破壊の発生を防止することがより容易になる。
【0078】
また、第1のエッチングマスク膜61の吸収層44の側における酸素濃度比率は、該エッチングマスク膜61の吸収層44とは反対側における酸素濃度比率と同じかそれよりも高くすることができる。第1のエッチングマスク膜61がTaを含む材料の場合、フッ素系ガスによるエッチングにおいて、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44の選択比を高くすることができる。
【0079】
また、第1のエッチングマスク膜61の吸収層44とは反対側における酸素濃度比率は、該エッチングマスク膜61の吸収層44の側における酸素濃度比率よりも高くすることができる。この場合、第2のエッチングマスク膜62を、酸素ガスを含む塩素系ガスでエッチングする際に生じる酸化膨張をより抑制することができ、第1のエッチングマスク膜61の太りに起因するCD変化を抑制することが可能となる。
【0080】
これらの特性は、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1における酸素濃度比率と、第1のエッチングマスク膜61と第2のエッチングマスク膜62との界面位置x2又はエッチングマスク膜61の表面位置x2における酸素濃度比率と、第1のエッチングマスク膜61の膜厚方向における中心位置x3における酸素濃度比率との大小関係で規定することができる。
【0081】
すなわち、これらを比較式で表記すると、
膜厚中心x3でのO/(X+O)比率 < 界面x1でのO/(X+O)比率;
膜厚中心x3でのO/(X+O)比率 < 界面(表面)x2でのO/(X+O)比率;
であることが好ましい。
また、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44の選択比を高くするために、界面(表面)x2でのO/(X+O)比率 ≦ 界面x1でのO/(X+O)比率とすることができる。また、第1のエッチングマスク膜61の太りに起因するCD変化を抑制するために、界面x1でのO/(X+O)比率 < 界面(表面)x2でのO/(X+O)比率とすることができる。
【0082】
反射型マスクブランク100の好適な実施形態において、第1のエッチングマスク膜61の膜厚中心位置x3における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)は70%以下であり、50%以下とすることができる。
【0083】
また、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)は5%以上であり、10%以上とすることができる。また、上記(O/(X+O)比率)は、90%以下であり、80%以下とすることができる。
【0084】
また、第1のエッチングマスク膜61の中心位置x3における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)に対する、吸収層44との界面位置x1における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)の差は、5%以上であり、10%以上とすることができる。また、上記(O/(X+O)比率)の差は、85%以下であり、75%以下とすることができる。
【0085】
また、第1のエッチングマスク膜61と第2のエッチングマスク膜62との界面位置x2又は第1のエッチングマスク膜61の表面位置x2における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)は、1%以上であり、5%以上とすることができる。また、上記(O/(X+O)比率)は、85%以下であり、75%以下とすることができる。
【0086】
また、第1のエッチングマスク膜61の中心位置x3における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)に対する、第1のエッチングマスク膜61と第2のエッチングマスク膜62との界面位置x2又は第1のエッチングマスク膜61の表面位置x2における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)の差は、1%以上であり、5%以上とすることができる。また、上記(O/(X+O)比率)の差は、80%以下であり、70%以下とすることができる。
【0087】
本実施形態の反射型マスクブランク100によれば、第1のエッチングマスク膜61の中心位置x3における酸素濃度比率(O/(X+O)比率)を所定以下に低減したことで、ドライエッチング過程でのCD変化を抑制しながらも、静電破壊に起因する致命欠陥の発生を防止することができる。また、エッチングマスク膜61の酸素濃度比率を規定したことにより、バッファ層42のパターンエッチングの進行に合わせてエッチングマスク膜61のエッチング速度を調整することができ、それにより、バッファ層42のドライエッチング過程における保護膜3又は吸収層44へのダメージを抑制することができる。
【0088】
上述した酸素濃度比率(O/(X+O)比率)の大小関係は、EDXの他に、X線光電子分光法(XPS)によっても評価することが可能である。また、これらの分析結果と透過型電子顕微鏡(TEM)を組み合わせることによって評価することも可能である。また、これらで測定されたデータを公知の近似関数を用いてフィッティング処理をすることで、上記の各層間の界面位置x1、x2及びエッチングマスク膜61の中心位置x3などを判定することができる。
なお、本明細書においては、エッチングマスク膜61の酸素濃度比率(O/(X+O)比率)の大小関係に関しては、EDXによる数値を記載しており、各膜を構成する元素の含有量に関しては、XPSによる数値を記載している。
【0089】
通常、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面付近では各層の成分(元素)が相互拡散している。ここでは、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1を判定するため、吸収層44に含まれる金属元素の合計含有量が、膜厚方向xにおいて変曲する変曲点x1を界面の位置x1として判定する手法を採用した。具体的には、次のようにして、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1を測定することができる。
【0090】
先ず、第1のエッチングマスク膜61から吸収層44にわたる膜厚方向xにおいて、吸収層44に含まれる金属元素の合計含有量(原子%)を測定する。ここで、金属元素の合計含有量とは、吸収層44が例えばCrNの場合にはCr含有量であり、吸収層44が例えばRuCrNの場合にはRuCr含有量である。次に、測定した合計含有量のデータをカーブフィッティングした関数y_abs(x)を得る。
【0091】
このカーブフィッティングは、S字型の関数を用いた公知の近似手法を採用することができる。S字型の近似関数は、一般的に、S字形状のプロファイルの近似に利用される。S字型の近似関数として、3次以上の多項式関数、シグモイド関数、誤差関数、指数関数又は正弦関数などから選ばれる奇関数を用いることができる。
【0092】
第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1を判定するために、吸収層44に含まれる金属元素の含有量をカーブフィッティングするための膜厚方向xの範囲(x1a~x1b)を、次のようにして決定することができる。
【0093】
第1のエッチングマスク膜61内にあるフィッティング範囲の始点(x=x1a)は、吸収層44との界面位置x1の近くであって、第1のエッチングマスク膜61を構成する元素Xの合計含有量(原子%)が最大値となる位置に設定することができる。ここで、元素Xの合計含有量とは、エッチングマスク膜61が例えばTaBOの場合にはTa含有量であり、エッチングマスク膜61が例えばSiOの場合にはSi含有量であり、エッチングマスク膜61が例えばTaSiOの場合にはTaSi含有量である。
【0094】
吸収層44内にあるフィッティング範囲の終点(x=x1b)は、第1のエッチングマスク膜61との界面位置x1の近くであって、吸収層44を構成する金属元素の合計含有量(原子%)が最大値となる位置に設定することができる。
【0095】
吸収層44を構成する金属元素の合計含有量の変曲点x1は、y_abs(x)を2階微分した値がゼロとなる、下記の二次導関数方程式(2)の解として求めることができる。
【0096】
【数2】
【0097】
なお、高次のS字型関数を用いて近似して得た方程式(2)を満たす解(変曲点)が2つ以上存在する場合には、金属含有量の測定データを三次関数で近似し、該三次近似関数を2階微分して得た二次導関数方程式の解に最も近い変曲点を、真の界面位置x1と推定することができる。
【0098】
上述のようにして求めた金属元素の含有量近似プロファイルの変曲点x1は、第1のエッチングマスク膜61の成分優位から吸収層44の成分優位に切り替わる位置(膜厚方向の深さ)を意味している。したがって、この演算された変曲点の位置x1を、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との間の界面位置x1とみなすことができる。
【0099】
エッチングマスク膜6が第2のエッチングマスク膜62を有する場合には、第2のエッチングマスク膜62と第1のエッチングマスク膜61との界面位置x2も、上述したカーブフィッティング手法を準用して、優位成分が切り替わる変曲点の位置に基づいて判定することができる。すなわち、第2のエッチングマスク膜62と第1のエッチングマスク膜61との間の界面位置x2を判定するために、第2のエッチングマスク膜62を構成する金属元素の合計含有量を近似するフィッティングカーブ関数y_em2(x)を演算し、y_em2(x)を2階微分した値がゼロとなる二次導関数方程式の解として求められる変曲点x2の位置を、界面位置x2とみなすことができる。
【0100】
上述した第1のエッチングマスク膜61の膜厚は、6nm~30nmであり、8nm~20nmとすることができる。また、上述のバッファ層42の膜厚に対する、第1のエッチングマスク膜61の膜厚の比は、0.1~15であり、0.3~10とすることができる。
【0101】
Ta及びOを含有する第1のエッチングマスク膜61は、酸素ガス(O)及び希ガス雰囲気中でTaターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、Si及びOを含有する第1のエッチングマスク膜61は、酸素ガス(O)及び希ガス雰囲気中でSiターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。このとき、酸素ガス(O)の供給量を制御したり、又は供給する酸素ガスを他のガスに替えて制御したりすることによって、上述した酸素濃度比率プロファイルの所定の傾斜組成を有するエッチングマスク膜61を形成することができる(例えば図2に示される層構成例1)。また、エッチングマスク膜61を2層構造又は3層構造とすることによって、上述した酸素濃度比率プロファイルを有する構成とすることもできる。例えば、層64、層65及び層66の3層構造として、酸素を含む層64及び層65と、実質的に酸素を含まない層66とを形成することもできる(例えば図3に示される層構成例2)。
【0102】
また、第1のエッチングマスク膜61と接する吸収層44の表層の酸素濃度を調整することによって、第1のエッチングマスク膜61と吸収層44との界面位置x1における酸素濃度比率を調整することができる。第1のエッチングマスク膜61と接する第2のエッチングマスク膜62の底部の酸素濃度を調整することによって、第1のエッチングマスク膜61と第2のエッチングマスク膜62との界面位置x2における酸素濃度比率を調整することができる。
【0103】
本実施形態による反射型マスクブランク100は、上述したように、第1のエッチングマスク膜61の上に第2のエッチングマスク膜62を形成してもよい。その場合、第2のエッチングマスク膜62の材料は、クロム(Cr)又はCr化合物であることが好ましい。Cr化合物の例としては、クロム(Cr)と、窒素(N)、酸素(O)、炭素(C)及び水素(H)から選択される少なくとも一つの元素とを含む材料が挙げられる。具体的に、第2のエッチングマスク膜62は、CrN、CrO、CrC、CrON、CrOC、CrCN又はCrOCNを含むことが好ましい。
【0104】
第2のエッチングマスク膜62中のCr含有量は、30原子%以上であり、40原子%以上とすることができる。第1のエッチングマスク膜61中のCr含有量は、95原子%以下であり、90原子%以下とすることができる。
【0105】
第2のエッチングマスク膜62の膜厚は、3nm~20nmであり、5nm~15nmとすることができる。
【0106】
第2のエッチングマスク膜62は、Cr系ターゲットを用いたスパッタリングにより形成することができる。また、第2のエッチングマスク膜62は、クロムを含むことにより、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスでエッチング及び除去することができる。
【0107】
<<レジスト膜>>
本実施形態の反射型マスクブランク100は、エッチングマスク膜6の上にレジスト膜11を有することができる。すなわち、本実施形態の反射型マスクブランク100には、レジスト膜11を有する形態も含まれる。本実施形態の反射型マスクブランク100では、適切な材料及び/又は適切な膜厚の吸収体膜4(バッファ層42及び吸収層44)及びエッチングガスを選択することにより、レジスト膜11の薄膜化も可能である。
【0108】
レジスト膜11の材料としては、例えば化学増幅型レジスト(CAR)を用いることができる。レジスト膜11をパターニングし、吸収体膜4(バッファ層42及び吸収層44)をエッチングすることにより、所定の転写パターンを有する反射型マスク200を製造することができる。
【0109】
<<裏面導電膜>>
基板1の第2主面(裏面)側(多層反射膜2形成面の反対側)には、一般的に、静電チャック用の裏面導電膜5が形成される。静電チャック用の裏面導電膜5に求められる電気的特性(シート抵抗)は通常100Ω/□(Ω/Square)以下である。裏面導電膜5の形成方法は、例えばマグネトロンスパッタリング法やイオンビームスパッタリング法により、クロム(Cr)、タンタル(Ta)等の金属や合金のターゲットを使用して形成することができる。
【0110】
裏面導電膜5のクロム(Cr)を含む材料は、Crにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、及び炭素(C)から選択される少なくとも一種の元素を含有したCr化合物であることが好ましい。Cr化合物としては、例えば、CrN、CrON、CrCN、CrCON、CrBN、CrBON、CrBCN及びCrBOCNなどを挙げることができる。
【0111】
裏面導電膜5のタンタル(Ta)を含む材料としては、Ta(タンタル)、Taを含有する合金、又はこれらの何れかにホウ素(B)、窒素(N)、酸素(O)、及び炭素(C)の少なくとも一つを含有したTa化合物を用いることが好ましい。Ta化合物としては、例えば、TaB、TaN、TaO、TaON、TaCON、TaBN、TaBO、TaBON、TaBCON、TaHf、TaHfO、TaHfN、TaHfON、TaHfCON、TaSi、TaSiO、TaSiN、TaSiON、及びTaSiCONなどを挙げることができる。
【0112】
タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料としては、その表層に存在する窒素(N)が少ないことが好ましい。具体的には、タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5の表層の窒素の含有量は、5原子%未満であることが好ましく、実質的に表層に窒素を含有しないことがより好ましい。タンタル(Ta)又はクロム(Cr)を含む材料の裏面導電膜5において、表層の窒素の含有量が少ない方が、耐摩耗性が高くなるためである。
【0113】
裏面導電膜5は、タンタル(Ta)及びホウ素(B)を含む材料からなることが好ましい。裏面導電膜5が、Ta及びBを含む材料からなることにより、耐摩耗性及び薬液耐性を有する導電膜23を得ることができる。裏面導電膜5が、Ta及びBを含む場合、B含有量は5~30原子%であることが好ましい。裏面導電膜5の成膜に用いるスパッタリングターゲット中のTa及びBの比率(Ta:B)は95:5~70:30であることが好ましい。
【0114】
裏面導電膜5の膜厚は、静電チャック用としての機能を満足する限り特に限定されないが、通常10nmから200nmである。また、この裏面導電膜5はマスクブランク100の第2主面側の応力調整も兼ね備えていて、第1主面側に形成された各種膜からの応力とバランスをとって、平坦な反射型マスクブランク100が得られるように調整されている。
【0115】
<反射型マスク200及びその製造方法>
本実施形態の反射型マスクブランク100を使用して、反射型マスク200を製造する方法の概要を以下説明する。
【0116】
先ず、反射型マスクブランク100を準備して、その第1主面の吸収体膜4の上に形成されたエッチングマスク膜6の上に、レジスト膜11を形成する(図4A)。レジスト膜11の形成には、化学増幅型レジスト(CAR)を用いることができる。
【0117】
このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成する(図4B)。
【0118】
次に、レジストパターン11aをマスクにして、第2のエッチングマスク膜62のドライエッチングを、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いて行うことで、マスクパターン62aを形成する(図4C)。
【0119】
レジストパターン11aを酸素アッシングで剥離後、マスクパターン62aをマスクにして、第1のエッチングマスク膜61のドライエッチングを、フッ素系ガスを用いて行うことで、マスクパターン61aを形成する(図4D)。
【0120】
次に、マスクパターン61aをマスクにして、吸収層44のドライエッチングを、塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いて行うことで、吸収層パターン44aを形成する(図4E)。この塩素系ガスと酸素ガスとの混合ガスを用いたドライエッチング工程において、第2のエッチングマスク膜62のマスクパターン62aは除去される。
【0121】
その後、フッ素系ガスを用いたドライエッチングにより、吸収層パターン44aをマスクにしてバッファ層42をパターニングする。それと同工程において、フッ素系ガスで、第1のエッチングマスク膜61のマスクパターン61aを除去する(図4F)。
【0122】
第1のエッチングマスク膜61のマスクパターン61aを除去した後、吸収体パターン4aにおいてバッファ層42が完全にエッチングされていない場合は、その残部を、塩素系ガスを用いて完全に除去することができる(図4G)。
【0123】
最後に、純水又は酸性やアルカリ性の水溶液を用いたウェット洗浄を行うことで、本実施形態の反射型マスク200が製造される。なお、ウェット洗浄後に必要に応じてマスク欠陥検査を行い、マスク欠陥修正を適宜行うことができる。
【0124】
このようにして製造された反射型マスク200は、反射型マスクブランク100における吸収体膜4がパターニングされた吸収体パターン4aを有する。反射型マスク200の吸収体パターン4aがEUV光を吸収し、吸収体パターン4aの開口部でEUV光を反射することができるため、所定の光学系を用いてEUV光を反射型マスク200に照射することにより、所定の微細な転写パターンを被転写物に対して転写することができる。
【0125】
本実施形態の反射型マスク200及びその製造方法によれば、反射型マスクブランク100におけるエッチングマスク膜61の酸素濃度比率を規定したことにより、バッファ層42のパターンエッチングの進行に合わせてエッチングマスク膜61のエッチング速度を調整することができる。それにより、CD変化を抑制しながら、バッファ層42のドライエッチング過程における保護膜3又は吸収層44へのダメージを抑制することができる。したがって、微細な転写パターンが高精度に形成された吸収体パターン4aを有する反射型マスク200を提供することができる。
【0126】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態の半導体装置の製造方法は、EUV光を発する露光光源を有する露光装置に、本実施形態の反射型マスク200をセットし、被転写基板上に形成されているレジスト膜に転写パターンを転写する工程を有する。
【0127】
本実施形態の反射型マスク200を使用してEUV露光を行うことにより、半導体基板上に反射型マスク200上の吸収体パターン4aに基づく所望の転写パターンを、シャドーイング効果による転写寸法精度の低下を抑えて形成することができる。また、吸収体パターン4aが、側壁ラフネスの少ない微細で高精度なパターンであるため、高い寸法精度で所望のパターンを半導体基板上に形成できる。このリソグラフィ工程に加え、被加工膜のエッチング、絶縁膜及び導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の電子回路が形成された半導体装置を製造することができる。
【0128】
より詳しく説明すると、EUV露光装置は、EUV光を発生するレーザープラズマ光源、照明光学系、マスクステージ系、縮小投影光学系、ウエハステージ系、及び真空設備等から構成される。光源にはデブリトラップ機能と露光光以外の長波長の光をカットするカットフィルタ及び真空差動排気用の設備等が備えられている。照明光学系と縮小投影光学系は反射型ミラーから構成される。EUV露光用反射型マスク200は、その第2主面に形成された導電膜により静電吸着されてマスクステージに載置される。
【0129】
EUV光源の光は、照明光学系を介して反射型マスク200垂直面に対して6°から8°傾けた角度で反射型マスク200に照射される。この入射光に対する反射型マスク200からの反射光は、入射とは逆方向にかつ入射角度と同じ角度で反射(正反射)し、通常1/4の縮小比を持つ反射型投影光学系に導かれ、ウエハステージ上に載置されたウエハ(半導体基板)上のレジストへの露光が行われる。この間、少なくともEUV光が通る場所は真空排気される。また、この露光にあたっては、マスクステージとウエハステージを縮小投影光学系の縮小比に応じた速度で同期させてスキャンし、スリットを介して露光を行うスキャン露光が主流となっている。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、半導体基板上にレジストパターンを形成することができる。本発明では、シャドーイング効果の小さな薄膜で、しかも側壁ラフネスの少ない高精度な吸収体パターン4aを持つマスクが用いられている。このため、半導体基板上に形成されたレジストパターンは高い寸法精度を持つ所望のものとなる。そして、このレジストパターンをマスクとして使用してエッチング等を実施することにより、例えば半導体基板上に所定の配線パターンを形成することができる。このような露光工程や被加工膜加工工程、絶縁膜や導電膜の形成工程、ドーパント導入工程、あるいはアニール工程等その他の必要な工程を経ることで、半導体装置が製造される。
【0130】
本実施形態の半導体装置の製造方法によれば、吸収体膜4の膜厚を薄くしながらもEUV光の吸収率が高く、かつ、微細で高精度な吸収体パターン4aを形成した反射型マスク200を、半導体装置の製造のために用いることができる。そのため、微細で且つ高精度の転写パターンを有する半導体装置を製造することができる。
【実施例0131】
[実施例1]
実施例1の反射型マスクブランク100は、図1に示すように、裏面導電膜5と、基板1と、多層反射膜2と、保護膜3と、吸収体膜4と、エッチングマスク膜6とを有する。吸収体膜4はバッファ層42及び吸収層44からなる。
【0132】
先ず、実施例1の反射型マスクブランク100について説明する。なお、下記の説明において、成膜した薄膜の元素組成は、X線光電子分光法(XPS)により測定した。また、酸素濃度比率(O/(X+O)比率)は、走査透過電子顕微鏡(STEM)を用いたエネルギー分散型X線分析法(EDX)により測定し、上述したフィッティングを行うことにより求めた。
【0133】
第1主面及び第2主面の両主表面が研磨された6025サイズ(約152mm×152mm×6.35mm)の低熱膨張ガラス基板であるSiO-TiO系ガラス基板を準備し基板1とした。平坦で平滑な主表面となるように、粗研磨加工工程、精密研磨加工工程、局所加工工程、及びタッチ研磨加工工程よりなる研磨を行った。
SiO-TiO系ガラス基板1の第2主面(裏面)に、CrN膜からなる裏面導電膜5をマグネトロンスパッタリング(反応性スパッタリング)法により下記の条件にて形成した。裏面導電膜5は、Crターゲットを用いて、アルゴン(Ar)ガスと窒素(N)ガスの混合ガス雰囲気で、20nmの膜厚となるように成膜した。
【0134】
次に、裏面導電膜5が形成された側と反対側の基板1の主表面(第1主面)上に、多層反射膜2を形成した。基板1上に形成される多層反射膜2は、波長13.5nmのEUV光に適した多層反射膜2とするために、モリブデン(Mo)とケイ素(Si)からなる周期多層反射膜とした。多層反射膜2は、MoターゲットとSiターゲットを使用し、クリプトン(Kr)ガス雰囲気中でイオンビームスパッタリング法により基板1上にMo層およびSi層を交互に積層して形成した。先ず、Si膜を4.2nmの膜厚で成膜し、続いて、Mo膜を2.8nmの膜厚で成膜した。これを1周期とし、同様にして40周期積層し、最後にSi膜を4.0nmの膜厚で成膜し、多層反射膜2を形成した。
【0135】
引き続き、Arガス雰囲気中で、RuNbターゲット(Ru:Nb=80at%:20at%)を使用したDCマグネトロンスパッタリング法によりRuNb膜からなる保護膜3を3.5nmの膜厚で成膜した。
【0136】
次に、保護膜3の上にバッファ層42及び吸収層44からなる吸収体膜4を形成した。なお、表1に、実施例1のバッファ層42、吸収層44、エッチングマスク膜6の材料及び膜厚を示す。
具体的には、まず、DCマグネトロンスパッタリング法により、TaBN膜からなるバッファ層42を形成した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、表1に示すように、10nmの膜厚で成膜した。TaBN膜の元素比率は、Taが88原子%、Bが5原子%、Nが7原子%であった。
【0137】
次に、マグネトロンスパッタリング法により、CrN膜からなる吸収層44を形成した。CrN膜は、Crターゲットを用いて、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて、反応性スパッタリングで、表1に示すように、36nmの膜厚で成膜した。CrN膜の元素比率は、Crが88原子%、Nが12原子%であった。
次に、DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収層44の上に、TaBO膜からなる第1のエッチングマスク膜61を形成した。TaBO膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、表1に示すように、16nmの膜厚で成膜した。このとき、混合ガス雰囲気におけるOガスの供給量を変えることによって、表2に示す膜厚方向に酸素濃度比率が異なる組成傾斜膜が得られた。
【0138】
次に、第1のエッチングマスク膜61の上に、CrOCN膜からなる第2のエッチングマスク膜62を形成した。CrOCN膜は、Crターゲットを用いて、Arガス、COガス及びNガス雰囲気中で、反応性スパッタリング法により、6nmの膜厚となるように成膜した。CrOCN膜の元素比率は、Crが38原子%、Oが39原子%、Cが11原子%、Nが12原子%であった。
【0139】
以上のようにして、実施例1の反射型マスクブランク100を製造した。
【0140】
次に、上記実施例1の反射型マスクブランク100を用いて、実施例1の反射型マスク200を製造した。
反射型マスクブランク100の第2のエッチングマスク膜62の上に、レジスト膜11を50nmの厚さで形成した(図4A)。レジスト膜11の形成には、化学増幅型レジスト(CAR)を用いた。このレジスト膜11に所望のパターンを描画(露光)し、更に現像、リンスすることによって所定のレジストパターン11aを形成した(図4B)。次に、レジストパターン11aをマスクにして、CrOCN膜(第2のエッチングマスク膜62)をClガスとOガスの混合ガスを用いて行うことで、マスクパターン62aを形成した(図4C)。次に、レジストパターン11aを酸素アッシングで剥離後に、マスクパターン62aをマスクにして、TaBO膜(第1のエッチングマスク膜61)のドライエッチングを、CFガスとHeガスの混合ガスを用いて行うことで、マスクパターン61aを形成した(図4D)。マスクパターン61aをマスクにして、CrN膜(吸収層44)のドライエッチングを、ClガスとOガスの混合ガスを用いて行うことで、吸収層パターン44aを形成した(図4E)。このとき、CrOCN膜も同時に剥離した。
【0141】
その後、CFガスとHeガスを用いたドライエッチングにより、吸収層パターン44aをマスクにしてバッファ層42をパターニングした。このとき、TaBO膜からなるマスクパターン61aも同時に除去した(図4F)。バッファ層42の残部をClガスで除去した(図4G)。最後に純水(DIW)を用いたウェット洗浄を行って、実施例1の反射型マスク200を製造した。
【0142】
実施例1の反射型マスク200の製造に用いた反射型マスクブランク100において、第1のエッチングマスク膜61は、表2に示す通り、膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x1でのO/(X+O)比率、及び膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x2でのO/(X+O)比率を満たすものであった。そのため、第1のエッチングマスク膜61に対して、過度な帯電を防ぎ、静電破壊に起因する致命欠陥の発生を防止することができた。また、第1のエッチングマスク膜61のCD変化を抑制することができ、吸収体パターン4aは、設計値±6nm以下のCDとすることができた。
【0143】
また、実施例1で作製した反射型マスク200をEUVスキャナにセットし、半導体基板上に被加工膜とレジスト膜が形成されたウエハに対してEUV露光を行った。そして、この露光済レジスト膜を現像することによって、被加工膜が形成された半導体基板上にレジストパターンを形成した。このレジストパターンをエッチングにより被加工膜に転写し、また、絶縁膜および導電膜の形成、ドーパントの導入、並びにアニールなど種々の工程を経ることで、所望の特性を有する半導体デバイスを製造することができた。
【0144】
[実施例2]
実施例2では、第1のエッチングマスク膜61を除き、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク100、反射型マスク200を製造し、また、実施例1と同様の方法で半導体デバイスを製造した。
【0145】
DCマグネトロンスパッタリング法により、吸収層44の上に、TaBO膜、TaBN膜及びTaBO膜の順に積層された積層膜からなる第1のエッチングマスク膜61を形成した。TaBO膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで成膜した。TaBN膜は、TaB混合焼結ターゲットを用いて、ArガスとNガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで成膜した。これにより、表2に示す酸素濃度比率を有する積層膜が得られた。
【0146】
実施例2の反射型マスク200の製造に用いた反射型マスクブランク100において、第1のエッチングマスク膜61は、表2に示す通り、膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x1でのO/(X+O)比率、及び膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x2でのO/(X+O)比率を満たすものであった。そのため、第1のエッチングマスク膜61に対して、過度な帯電を防ぎ、静電破壊に起因する致命欠陥の発生を防止することができた。また、第1のエッチングマスク膜61のCD変化を抑制することができ、吸収体パターン4aは、設計値±6nm以下のCDとすることができた。
【0147】
[実施例3]
実施例3では、第1のエッチングマスク膜61を除き、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク100、反射型マスク200を製造し、また、実施例1と同様の方法で半導体デバイスを製造した。
【0148】
RFマグネトロンスパッタリング法により、吸収層44の上に、SiO膜からなる第1のエッチングマスク膜61を形成した。SiO膜は、Siターゲットを用いて、ArガスとOガスの混合ガス雰囲気にて反応性スパッタリングで、表1に示すように、20nmの膜厚で成膜した。このとき、混合ガス雰囲気におけるOガスの供給量を変えることによって、表2に示す膜厚方向に酸素濃度比率が異なる組成傾斜膜が得られた。
【0149】
実施例3の反射型マスク200の製造に用いた反射型マスクブランク100において、第1のエッチングマスク膜61は、表2に示す通り、膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x1でのO/(X+O)比率、及び膜厚中心x3でのO/(X+O)比率<界面x2でのO/(X+O)比率を満たすものであった。そのため、第1のエッチングマスク膜61に対して、過度な帯電を防ぎ、静電破壊に起因する致命欠陥の発生を防止することができた。また、第1のエッチングマスク膜61のCD変化を抑制することができ、吸収体パターン4aは、設計値±6nm以下のCDとすることができた。
【0150】
[比較例1]
比較例1では、第1のエッチングマスク膜61を除き、実施例1と同様の構造と方法で、反射型マスクブランク100、反射型マスク200を製造し、また、実施例1と同様の方法で半導体デバイスを製造した。
【0151】
比較例1の反射型マスク200の製造に用いた反射型マスクブランク100において、第1のエッチングマスク膜61の膜厚中心x3、界面x1及び界面x2でのO/(X+O)比率は、65%で均一であった。そのため、第1のエッチングマスク膜61に対して、その静電破壊電圧を超える過度な帯電が生じ、反射型マスクを不良とする致命欠陥が生じてしまった。また、第1のエッチングマスク膜61のCD変化を抑制することができず、吸収体パターン4aは、設計値±6nmを超えるCDとなった。
【0152】
【表1】
【0153】
【表2】
【符号の説明】
【0154】
1 基板
2 多層反射膜
3 保護膜
4 吸収体膜
4a 吸収体パターン
5 裏面導電膜
6 エッチングマスク膜
11 レジスト膜
42 バッファ層
44 吸収層
61 第1のエッチングマスク膜
62 第2のエッチングマスク膜
100 反射型マスクブランク
200 反射型マスク
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図4G