(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081699
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】局所アブレーションのためのシステム、装置及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240611BHJP
A61N 1/362 20060101ALI20240611BHJP
A61B 34/20 20160101ALI20240611BHJP
【FI】
A61B18/14
A61N1/362
A61B34/20
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024044755
(22)【出願日】2024-03-21
(62)【分割の表示】P 2021576127の分割
【原出願日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】62/863,588
(32)【優先日】2019-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/828,593
(32)【優先日】2020-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】ビスワナサン、ラジュ
(72)【発明者】
【氏名】ロング、ゲイリー エル.
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気穿孔アブレーション治療のためのシステム、装置及び方法を提供すること。
【解決手段】装置は、組織壁の近傍に配置可能な遠位部を含む線形シャフトを含み得る。線形シャフトは、組織壁の近傍に遠位部を配置するために偏向するように構成され得る。装置は、線形シャフトの遠位部に配置された複数の電極を含むことができ、複数の電極は、組織壁に対する遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを組織壁内に生じさせるパルス電場を生成するように構成される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織壁の近傍に配置可能な遠位部を含む線形シャフトであって、前記組織壁の近傍に前記遠位部を配置するために偏向可能であるように構成される線形シャフトと、
前記遠位部に配置された複数の電極であって、
遠位電極のセットと、
前記遠位電極のセットの近位に配置された近位電極のセットであって、前記線形シャフトの第1の長さは、前記近位電極のセットの近位電極の少なくとも1つの隣接する対を隔て、前記線形シャフトの第2の長さは、前記遠位電極のセットの最近位の遠位電極から前記近位電極のセットの最遠位の近位電極を隔てる、近位電極のセットと
を含む複数の電極と、
前記複数の電極に結合される複数のリードであって、各リードは、絶縁破壊を伴うことなく、少なくとも約700Vの電位差に耐えるように構成される絶縁体を有する、複数のリードと
を含むアブレーション装置と、
前記アブレーション装置に動作可能に結合される信号生成器であって、前記複数の電極が、前記組織壁に対する前記遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを前記組織壁内に生じさせることができるパルス電場エネルギーを生成するように、第1の極性を有する前記遠位電極のセットからの少なくとも1つの遠位電極と、前記第1の極性と反対の第2の極性を有する前記近位電極のセットとを作動させるように構成される信号生成器と
を備えるシステム。
【請求項2】
前記近位電極のセットは、2つの近位電極を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記遠位電極のセットは、少なくとも、前記線形シャフトの先端部に配置された遠位先端部電極を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記遠位電極のセットは、
前記線形シャフトの先端部に配置された遠位先端部電極と、
前記遠位先端部電極の近位に配置された1つ以上の遠位電極であって、前記線形シャフトの第3の長さは、前記遠位先端部電極と、前記1つ以上の遠位電極の隣接する遠位電極とを隔てる、1つ以上の遠位電極と
を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記2つの近位電極は、前記複数のリードからの第1のリードを使用して一緒に配線されているとともに、前記遠位先端部電極と前記1つ以上の遠位電極とは、前記複数のリードからの第2のリードを使用して一緒に配線される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記2つの近位電極は、前記複数のリードからの第1のリードを使用して一緒に配線されており、前記遠位先端部電極は、前記複数のリードからの第2のリードを使用して独立して配線されているとともに、前記1つ以上の遠位電極は、前記複数のリードからの第3のリードを使用して独立して又は一緒に配線される、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記アブレーション装置は、前記線形シャフトを偏向させるために作動されるように構成されるプルワイヤを更に含み、前記プルワイヤは、前記線形シャフトの前記遠位部に沿った位置に結合される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記線形シャフトの前記第1の長さ及び前記線形シャフトの前記第2の長さのそれぞれは、0.5mm~12mmである、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記線形シャフトの前記第1の長さに対する前記線形シャフトの前記第2の長さの比率は、1~20である、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
位置決め中に前記線形シャフトの前記遠位部の位置を追跡するように構成される追跡装置であって、電場又は磁場の少なくとも1つを生成するように構成される場生成器を含む追跡装置を更に含み、
前記アブレーション装置は、前記線形シャフトの前記遠位部の前記位置を判定するために、生成された場に応じて信号のセットを受信するように構成される、前記遠位部に配置されたセンサを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所アブレーションのためのシステム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組織治療のためのパルス電場の生成は、過去20年にわたって実験室から臨床応用に移行している一方、組織に対する高電圧の短パルス及び大きい電場の影響は、過去40年以上にわたって研究されてきた。短時間の直流高電圧を組織に印加すると、典型的には1センチメートルあたり数百ボルトの範囲の局所的な高電場を生成し、細胞膜に孔を生じさせることにより細胞膜を破壊する場合がある。この電気駆動による孔の生成又は電気穿孔の明確なメカニズムについて研究が続けられているが、比較的短時間の且つ大きい電場を印加すると、細胞膜の脂質二重層に不安定性が生じ、細胞膜に局所的な間隙又は孔の分布を発生させると考えられている。この電気穿孔は、膜に印加された電場が閾値よりも大きければ、孔が閉じずに開いたままとなるように不可逆的であり得、それにより膜を越えた生体分子物質の交換が可能となり、ネクローシス及び/又はアポトーシス(細胞死)につながる。その後、周囲組織は、自然に治癒することができる。
【0003】
パルス直流電圧は、適切な状況下で電気穿孔を促すことができるが、健康な組織の損傷を最小限にしながら、関心領域内の心内膜組織に選択的に高直流電圧電気穿孔アブレーション治療を効果的に送達する、薄く、可撓性があり、非外傷性の装置に対する満たされていない必要性が残っている。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するためのシステム、装置及び方法について説明する。一般に、軟組織(例えば、心組織)にパルス電場アブレーションを適用するための装置(例えば、カテーテル)は、複数の遠位に配置された電極を有する線形可撓性本体を含み得る。いくつかの実施形態では、装置は、局所焼灼巣を形成するために使用され得る。
【0005】
いくつかの実施態様において、システムは、アブレーション装置及び信号生成器を含む。アブレーション装置は、組織壁の近傍に配置可能な遠位部を含む線形シャフトであって、組織壁の近傍に遠位部を配置するために偏向するように構成される線形シャフトと、遠位部に配置された複数の電極であって、遠位電極のセットと、遠位電極のセットの近位に配置された近位電極のセットであって、近位電極のセットからの各近位電極は、近位電極のセットからの隣接する近位電極から、線形シャフトの第1の長さだけ、間隔を隔てて配置されており、近位電極のセットからの最遠位の近位電極は、遠位電極のセットからの最近位の遠位電極から、線形シャフトの第2の長さだけ、間隔を隔てて配置される、近位電極のセットとを含む複数の電極と、複数の電極に結合される複数のリードであって、各リードは、絶縁破壊を伴うことなく少なくとも約700Vの電位差に耐えるように構成される絶縁体を有する、複数のリードと、を含む。信号生成器は、アブレーション装置に動作可能に結合されるとともに、複数の電極が、組織壁に対する遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを組織壁内に生じさせるパルス電場エネルギーを生成するように、第1の極性を有する遠位電極のセットからの少なくとも1つの遠位電極と、第1の極性と反対の第2の極性を有する近位電極のセットとを作動させるように構成される。
【0006】
いくつかの実施態様において、装置は、組織壁の近傍に配置可能な遠位部を含む線形シャフトであって、組織壁の近傍に遠位部を配置するために偏向するように構成される線形シャフトと、遠位部に配置された複数の電極であって、組織壁に対する遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを組織壁内に生じさせるパルス電場を生成するように構成されており、線形シャフトの先端部に配置された遠位先端部電極を含む遠位電極のセットと、遠位電極のセットの近位に配置された近位電極のセットであって、近位電極のセットからの各近位電極は、近位電極のセットからの隣接する近位電極から、線形シャフトの第1の長さだけ、間隔を隔てて配置されており、近位電極のセットからの最遠位の近位電極は、遠位電極のセットからの最近位の遠位電極から、線形シャフトの第2の長さだけ、間隔を隔てて配置されており、線形シャフトの第1の長さは、線形シャフトの第2の長さよりも小さい、近位電極のセットとを含む複数の電極と、複数の電極に結合される複数のリードであって、複数のリードからの各リードは、(1)その対応する絶縁体の絶縁破壊を伴うことなく、且つ(2)第1の極性を有する遠位電極のセットが作動され、及び第1の極性と反対の第2の極性を有する近位電極のセットが作動されて、パルス電場を集合的に生成するように、少なくとも700Vの振幅を有する電圧出力を複数の電極に送達するように構成される、複数のリードとを含む。
【0007】
いくつかの実施態様において、方法は、アブレーション装置の線形シャフトを、線形シャフトの遠位部が組織壁の近傍にあるように対象者の心臓の心臓腔内に位置決めすることであって、アブレーション装置は、遠位部に配置された複数の電極を含み、複数の電極は、遠位電極のセット及び近位電極のセットを含み、近位電極のセットからの各近位電極は、線形シャフトの第1の長さだけ、近位電極のセットからの隣接する近位電極から間隔を隔てて配置されており、近位電極のセットからの最遠位の近位電極は、線形シャフトの第2の長さだけ、遠位電極のセットからの最近位の遠位電極から間隔を隔てて配置される、位置決めすることと、信号生成器を使用して、少なくとも約700Vの電圧振幅を有するパルス波形を生成することと、複数の電極が、組織壁に対する遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを組織壁内に生じさせるパルス電場を集合的に生成するように、第1の極性を有するパルス波形を遠位電極のセットに、且つ第1の極性と反対の第2の極性を有するパルス波形を近位電極のセットに送達することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態による電気穿孔システムのブロック図。
【
図2】実施形態による組織アブレーションの方法を示す図。
【
図3】実施形態による組織アブレーションの方法を示す図。
【
図4】実施形態によるアブレーションカテーテルの遠位端の概略図を示す図。
【
図5】実施形態による、組織の近傍に配置されたアブレーションカテーテルの電極によって生成された電場を示す図。
【
図6】実施形態による、組織の近傍に配置されたアブレーションカテーテルの電極によって生成された電場を示す図。
【
図7】実施形態による、組織の近傍に配置されたアブレーションカテーテルの電極によって生成された電場を示す図。
【
図8】実施形態による、組織の近傍に配置されたアブレーションカテーテルの電極によって生成された電場を示す図。
【
図9】実施形態によるアブレーションカテーテルの遠位端の概略図。
【
図10】実施形態によるアブレーションカテーテルの遠位端の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
不可逆的電気穿孔によって組織を焼灼するためにパルス電場を印加するためのシステム、装置及び方法が本明細書に記載される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステム、装置及び方法は、局所アブレーションを提供するように構成され得る。このようなシステム、装置及び方法は、向きとは独立して、即ち一般に組織表面又は組織壁に対するアブレーション装置(例えば、カテーテル)の向きとは独立して、制御可能なアブレーションゾーンを組織内に生成することができる。
【0010】
本明細書で使用する場合、「電気穿孔(electroportation)」という用語は、細胞膜に電場を印加し、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を変化させることを指す。本明細書で使用する場合、「可逆的電気穿孔」という用語は、細胞膜に電場を印加し、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を一時的に変化させることを指す。例えば、可逆的電気穿孔を受けた細胞は、その細胞膜に1つ以上の孔の一時的及び/又は断続的な形成を認めることができ、この孔は、電場を除去すると閉じる。本明細書で使用する場合、「不可逆的電気穿孔」という用語は、細胞膜に電場を印加し、細胞外環境に対する細胞膜の透過性を恒久的に変化させることを指す。例えば、不可逆的電気穿孔を受けた細胞は、その細胞膜において、電場を除去すると持続する1つ以上の孔の形成を認めることができる。
【0011】
全般的に、本明細書に記載されるシステム及び装置は、例えば、心臓の腔(例えば、心房、心室)内の組織を焼灼するように構成される1つ以上のアブレーション装置(例えば、カテーテル)を含む。
図1は、アブレーションシステム(100)を示す。システム(100)は、装置(120)を含み得る。該装置(120)は、信号生成器(122)と、プロセッサ(124)と、メモリ(126)と、任意選択的に心臓刺激器(128)とを含む。装置(120)は、アブレーション装置(110)と、任意選択的にペーシング装置(130)とに結合され得る。
【0012】
信号生成器(122)は、例えば、心内膜壁などの組織の不可逆的電気穿孔のための電圧パルス波形を生成するように構成され得る。例えば、信号生成器(122)は、電圧パルス波形生成器であり得、アブレーション装置(110)にパルス波形を送達し得る。プロセッサ(124)は、メモリ(126)、心臓刺激器(128)及びペーシング装置(130)から受信されたデータを組み込み、信号生成器(122)によって発生するパルス波形のパラメータ(例えば、振幅、幅、デューティサイクルなど)を判定することができる。メモリ(126)は、パルス波形生成及び/又は心臓ペーシング同期など、システム(100)と関連するモジュール、プロセス及び/又は機能を信号生成器(122)に実行させるための命令を更に格納し得る。例えば、メモリ(126)は、それぞれパルス波形生成及び/又は心臓ペーシングのためのパルス波形及び/又は心臓ペーシングデータを格納するように構成され得る。
【0013】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置(110)は、以下に更に詳細に記載するパルス波形を受け取り、且つ/又は送達するように構成されるカテーテルを含み得る。例えば、アブレーション装置(110)は、心臓の腔の心内膜空間に導入され、アブレーション装置(110)の1つ以上の電極(112)が標的組織(例えば、心内膜壁)の近傍にあるように配置され得る。その後、アブレーション装置(110)は、パルス波形を送達して組織を焼灼することができる。いくつかの実施形態では、以下で
図4~
図8を参照して更に説明するように、アブレーション装置(110)の1つ以上の電極(112)は、1つ以上の独立してアドレス指定可能な電極を含み得る。各電極(112)は、絶縁電気リードの対応する絶縁体の絶縁破壊を伴うことなく、少なくとも約500Vの電圧電位を維持するように構成される絶縁電気リードを含み得る。いくつかの実施形態では、各電気リードの絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、その厚さにわたって約200V~約3,000Vの電気電位差を維持し得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、装置(120)は、ペーシング装置(130)に接続され得る。ペーシング装置(130)は、患者(図示せず)に適切に結合され、例えば心臓刺激のために装置(120)の任意の心臓刺激器(128)によって生成される心臓ペーシング信号を受信するように構成され得る。ペーシング信号の指示は、心臓刺激器(128)によって信号生成器(122)に伝送され得る。電圧パルス波形の指示は、ペーシング信号に基づいてプロセッサ(124)により選択、計算及び/又は他に識別され得、信号生成器(122)によって発生し得る。いくつかの実施形態では、信号生成器(122)は、ペーシング信号の指示と同期するパルス波形(例えば、心房又は心室ペーシング信号と関連する不応ウィンドウ内)を発生させるように構成される。例えば、いくつかの実施形態では、不応ウィンドウは、心室ペーシング信号の概ね直後(又は非常にわずかな遅れの後)に開始し、その後、約250ms以下の時間にわたって継続し得る。このような実施形態では、パルス波形全体がこの時間内に送達され得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、システム(100)は、追跡システム又は装置(140)を含み得る。追跡システム(140)は、装置(120)に動作可能に結合され得、且つ/又は装置(120)に組み込まれ得る。追跡システム(140)は、アブレーション装置(110)が解剖学的構造内をナビゲートされる際、アブレーション装置(110)、特にアブレーション装置(110)の遠位部のインピーダンスベースの追跡及び/又は電磁追跡を可能にし得る。追跡システム(140)は、場生成器(142)を含み得、場生成器(142)は、場、例えば磁場及び/又は電場を生成するように構成される送信機のセットを含む。例えば、場生成器(142)は、一組の電極パッチを含み得、一組の電極パッチ間において様々な周波数にわたる電気電位差を発生させ、且つ維持することができる。代替的に又は追加的に、場生成器(142)は、時間変化する磁場を生成するように構成される送信機コイルのセットを含み得る。生成された電場及び/又は磁場は、アブレーション装置(110)の近傍に配置され、且つ/又はアブレーション装置(110)に組み込まれたセンサ(114)のセットにより、信号(例えば、電圧、電流又はこれらの両方)として受信され得る。一実施形態では、センサ(114)は、アブレーション装置(110)の遠位部、例えばカテーテルの遠位部に組み込まれた電磁センサであり得る。追跡した位置情報を用いて、アブレーション装置(100)の視覚表現は、例えば、カテーテル位置を可視化するための空間的状況を提供するために電気解剖学的又は解剖学的マップ内に表示され得る。このような視覚表現は、例えば、装置(120)及び/又は追跡システム(140)に結合され、且つ/又は組み込まれたプロセッサ(124)又は別の処理装置によって生成することができる。アブレーション装置と共に使用される追跡システムの適切な例は、2020年2月7日に出願された、「アブレーション装置を追跡するための及び線状焼灼巣を生成するための方法、システム及び装置(METHODS,SYSTEMS,AND APPARATUSES FOR TRACKING ABLATION DEVICES AND GENERATING LESION LINES)」という名称の米国特許出願公開第16/785,392号明細書に記載されており、その内容は、参照により本明細書中に組み込まれる。
【0016】
任意選択的に、アブレーション装置(110)は、作動機構(129)、例えばつまみ、レバー又は解剖学的構造内においてアブレーション装置(110)を偏向させる、操作するなどのための他の適切な機構を含み得る。作動機構は、アブレーション装置(110)の遠位部の位置に基づいてオペレータにより制御され得る。例えば、オペレータは、追跡システム(140)によって追跡されたアブレーション装置(110)の追跡位置に基づいてアブレーション装置(110)を特定の位置に操作するように、アブレーション装置(110)の遠位部の角度又は向きを制御することができる。
【0017】
プロセッサ(124)は、命令又はコードのセットを走らせ、且つ/又は実行するように構成される任意の適切な処理装置であり得る。プロセッサは、例えば、汎用プロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA:Field Programmable Gate Array)、特定用途用集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)などであり得る。プロセッサは、システム及び/若しくはシステムと関連付けられたネットワーク(図示せず)と関連付けられたアプリケーションプロセス並びに/又は他のモジュール、プロセス及び/若しくは機能を走らせ、且つ/又は実行するように構成され得る。基礎をなすデバイス技術は、様々なコンポーネントタイプ、例えば相補性金属酸化膜半導体(CMOS:complementary metal-oxide semiconductor)のような金属酸化膜半導体電場効果トランジスタ(MOSFET:metal-oxide semiconductor field-effect transistor)技術、エミッタ結合論理(ECL:emitter-coupled logic)のようなバイポーラ技術、ポリマー技術(例えば、シリコン共役ポリマー及び金属共役ポリマー金属構造)、アナログ及びデジタルの混合などにおいて提供され得る。
【0018】
メモリ(126)は、データベース(図示せず)を含み得、例えばランダムアクセスメモリ(RAM:random access memory)、メモリバッファ、ハードドライブ、消去可能プログラマブル読出し専用メモリ(EPROM:erasable programmable read-only memory)、電気的に消去可能な読出し専用メモリ(EEPROM:electrically erasable read-only memory)、読出し専用メモリ(ROM:read-only memory)、フラッシュメモリなどであり得る。メモリ(126)は、パルス波形生成及び/又は心臓ペーシングなど、システム(100)と関連するモジュール、プロセス及び/又は機能をプロセッサ(124)に実行させるための命令を格納し得る。
【0019】
システム(100)は、例えば、1つ以上のネットワーク(このそれぞれは、任意の種類のネットワークであり得る)を介して他の装置(図示せず)と通信し得る。無線ネットワークとは、いかなる種類のケーブルによっても接続されない任意の種類のデジタルネットワークを意味し得る。しかしながら、無線ネットワークは、インターネットとインターフェイスするために有線ネットワーク、他のキャリア音声及びデータネットワーク、ビジネスネットワーク並びにパーソナルネットワークに接続し得る。有線ネットワークは、典型的には、銅ツイストペア同軸ケーブル又は光ファイバケーブルで適用される。ワイドエリアネットワーク(WAN:wide area network)、メトロポリタンエリアネットワーク(MAN:metropolitan area network)、ローカルエリアネットワーク(LAN:local area network)、キャンパスエリアネットワーク(CAN:campus area network)、インターネットのようなグローバルエリアネットワーク(GAN:global area network)及びバーチャルプライベートネットワーク(VPN:virtual private network)を含む多くの異なるタイプの有線ネットワークが存在する。以下では、ネットワークとは、統合されたネットワーキング及び情報アクセスソリューションを提供するための、典型的にインターネットを介して相互接続された複合的な無線、有線、パブリック及びプライベートデータネットワークの任意の組み合わせを指す。
【0020】
本明細書に記載されるアブレーションシステム、例えば
図1に示されるシステム(100)は、
図2及び
図3に示すような方法に従って使用され得る。いくつかの実施形態では、アブレーションシステムは、心腔、例えば左心房内の組織を焼灼するために使用され得る。全般的に、ここで記載される方法は、装置を導入し、心内膜壁に隣接及び/又は接触させて配置することを含む。パルス波形は、組織を焼灼するために装置の1つ以上の電極によって送達され得る。いくつかの実施形態では、心臓ペーシング信号は、送達されたパルス波形を心臓周期と同期させることができる。このように実施される組織アブレーションは、ペーシングされた拍動と同期して、健康な組織の損傷を低減するためにより少ないエネルギー送達を伴って送達され得る。本明細書に記載されるアブレーション装置のいずれも、適宜、以下に記載する方法を使用して、組織を焼灼するために使用され得ることが理解されるべきである。
【0021】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるアブレーション装置は、不整脈を引き起こすと特定された心臓の特徴/構造の局所アブレーションのために使用され得る。局所アブレーションは、例えば、周囲組織を残しながらロータを無効化する点状焼灼巣を生成することができる。本明細書に開示されるシステム、装置及び方法を使用して発生させたアブレーションゾーンの更なる詳細については、以下で
図5~
図8を参照して記載する。
【0022】
図2は、組織を焼灼する例示的方法(200)を示す。方法(200)は、(202)において、心臓腔の心内膜空間への装置(例えば、アブレーション装置(110))の導入を含む。(204)において、装置は、組織に隣接して配置されるように進められ得る。アブレーション装置は、組織に隣接して配置される電極(例えば、電極(112))を含み得る。例えば、アブレーション装置は、複数の遠位に配置された電極を含む線形可撓性装置であり得、このような電極は、例えば、左心房又は右心房など、心臓腔内の心内膜壁などの組織表面の近傍に又はこのような組織表面に接触して配置され得る。方法(200)は、(206)において、アブレーション装置の1つ以上の電極をアノード及び/又はカソードとして手動又は自動のいずれかで構成することを含み得る。いくつかの実施形態では、アブレーション装置は、1つ以上の遠位電極と1つ以上の近位電極とを含み得、少なくとも1つの遠位電極及び少なくとも1つの近位電極は、アノード-カソードセットとして構成され得る。例えば、
図4~
図10を参照して更に説明するように、アブレーション装置は、遠位先端部電極と2つの近位電極とを含み得、遠位先端部電極は、2つの近位電極と対になり、アノード-カソードセットを形成し得る。別の実施形態では、アブレーション装置は、2つ以下又は4つ以上の電極、例えば2つ、4つ、5つ又は6つの電極を有することができ、電極は、遠位電極及び近位電極のサブセットを含む。いくつかの実施形態では、電圧パルス波形は、組織のアブレーションのためのアノード-カソードセットなどの電極セットに選択的に送達され得る。例えば、アブレーション装置の遠位先端部電極は、アノードとして選択され得、アブレーション装置の近位電極は、カソードとして選択され得、電圧パルス波形は、アノードとカソードとの間に適用される。
【0023】
任意選択的に、(207)において、パルス波形又はパルス波形の一部分の電圧レベル(例えば、1つ以上の電圧パルスの振幅)が設定され得る。例えば、電圧レベルは、より深いアブレーションゾーンを生成するために増加させることができ、これは、組織が厚い場合に有用であり得る。非限定的な例のセットとして、例示的なパルス波形の個々のパルスの振幅は、約400V、約1,000V、約5,000V、約10,000V、約15,000Vからの範囲内であり得、その間の全ての値及び部分範囲を含む。
【0024】
(208)において、信号生成器(例えば、信号生成器(122))によってパルス波形が生成され得る。いくつかの実施形態では、パルス波形は、複数レベルの階層を含む電圧パルス波形であり得、別の実施形態では他の波形実装形態が用いられ得る。複数レベルの階層を含む適切なパルス波形の例は、2016年10月19日に出願された、「組織へのアブレーションエネルギーの送達のためのシステム、装置及び方法(SYSTEMS,APPARATUSES AND METHODS FOR DELIVERY OF ABLATIVE ENERGY TO TISSUE)」という名称の国際出願PCT/米国特許出願公開第2016/057664号明細書及び2019年5月7日に出願された、「組織へのアブレーションエネルギーの送達のためのシステム、装置及び方法(SYSTEMS,APPARATUSES AND METHODS FOR DELIVERY OF ABLATIVE ENERGY TO TISSUE)」という名称の国際出願PCT/米国特許出願公開第2019/031135号明細書に開示されており、これらの内容は、それぞれ参照により全体が本明細書に組み込まれる。様々な階層的波形は、本明細書に開示される信号生成器(例えば、信号生成器(122))によって生成され得る。
【0025】
(210)において、生成されたパルス波形は、電極セットが組織を焼灼する電場を生成するように、アノード-カソード電極セットに送達され得る。例えば、遠位先端部電極及び近位電極が、焼灼巣を形成することができる電場を生成するように、遠位先端部アブレーションカテーテルの電極は、第1の電気極性によって極性を与えられ得、アブレーションカテーテルの近位電極は、第1の電気極性と反対の第2の電気極性によって極性を与えられ得る。別の例として、4つの電極を有する実施形態において、アブレーション送達中、電極の遠位対は、1つの電気極性を有することができ、電極の近位対は、反対の電気極性を有することができる。従って、複数の電極は、アブレーションのための電場を集合的に生成する。そのような実施形態の更なる詳細については、
図4~
図10を参照して説明する。焼灼巣の空間的形態は、例えば、本明細書に記載されるように、適切な波形の適用により且つ適切な電圧レベル、電極の幾何学的配置及び/又は電極のペアリングにより、制御された深さ又は体積を有し得る。いくつかの実施形態では、以下で更に説明するように、1つ以上の電圧パルス波形は、例えば、不応時間ウィンドウ中に一連の拍動にわたって適用され得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される電圧パルス波形は、心臓の洞律動の乱れを回避するために、心臓周期の不応期中に適用され得る。
図3は、組織を焼灼する別の例示的な方法(300)を示す。方法(300)は、上述の方法(200)に類似し得るが、1つ以上のペーシング信号と同期してパルス波形を適用するステップを含み得る。方法(300)は、(302)において、心臓腔の心内膜空間への装置(例えば、アブレーション装置(110))の導入を含む。装置は、心臓の組織壁、例えば左心房又は右心房内の心内膜表面に隣接して配置されるように進められ得る。例えば、アブレーション装置は、複数の遠位に配置された電極を含む線形可撓性装置であり得、そのような電極は、心内膜壁の近傍に又は心内膜壁に接触して配置され得る。いくつかの実施形態では、(312)において、心臓の心臓刺激のためにペーシング信号を生成することができる。その後、(314)において、ペーシング信号は、心臓に適用され得る。例えば、心臓は、ペーシング捕捉を確実にし、心臓周期の周期性及び予測可能性を確立するために、心臓刺激器(例えば、心臓刺激器(128))によって電気的にペーシングされ得る。心房ペーシング及び心室ペーシングの1つ以上が適用され得る。(316)において、ペーシング信号の指示は、信号生成器に伝送され得る。その後、心臓周期の不応期内の時間ウィンドウが定義され得る。時間ウィンドウ内において、1つ以上の電圧パルス波形が送達され得る。いくつかの実施形態では、不応時間ウィンドウは、ペーシング信号に後続し得る。例えば、共通の不応時間ウィンドウは、両方の心房不応時間ウィンドウと心室不応時間ウィンドウとの間にあり得る。
【0027】
(308)において、パルス波形は、ペーシング信号と同期して生成され得る。例えば、電圧パルス波形は、共通の不応時間ウィンドウ内に適用され得る。いくつかの実施形態では、パルス波形は、ペーシング信号の指示に対して時間のずれを伴って生成され得る。例えば、不応時間ウィンドウの開始は、ペーシング信号からある時間のずれだけオフセットされ得る。電圧パルス波形は、対応する共通の不応時間ウィンドウにわたり、一連の拍動にわたって適用され得る。(310)において、生成されパルス波形は、アブレーション装置が組織を焼灼するためのパルス電場を生成するようにアブレーション装置に送達され得る。
【0028】
本明細書に記載される方法は、1つ以上の多電極アブレーション装置を含むシステムを使用して実施され得る。
図4は、アブレーション装置(400)の側面図である。アブレーション装置(400)は、
図1を参照して上述したように、アブレーション装置(110)と構造的及び/又は機能的に類似する構成要素を含み得る。アブレーション装置(400)は、複数の遠位に配置された電極を有する可撓性の線形カテーテルであり得る。アブレーション装置(400)は、シャフト又は本体(431)と、遠位先端部電極(419)及び近位電極(421、423)を含む複数の電極(419、421、423)とを含み得る。複数の電極(419、421、423)は、本体(431)の遠位部に位置し得る。近位電極(421、423)は、先端部電極(419)の近位に位置し、各電極(419、421、423)は、隣接する電極からシャフト部分(433、435)によって隔てられている。
【0029】
電極(419、421、423)は、組織、例えば心内膜組織に隣接及び/又は接触するように配置され得る。しかし、電極(419、421、423)は、心内膜組織に触れるように配置され得るが、電極(419、421、423)は、本明細書に記載されるようにアブレーションゾーンを形成するために心内膜組織に接触する必要がないことが理解されるべきである。
【0030】
電極(419、421、423)の1つ以上は、独立してアドレス指定可能な電極であり得る。いくつかの実施形態では、電極(419、421、423)のサブセットは、一緒に配線され得る。例えば、近位電極(421、423)は、一緒に配線され得、遠位先端部電極(419)は、近位電極(421、423)から独立してアドレス指定可能であり得るか又は別個に配線され得る。電極(419、421、423)の1つ以上は、絶縁電気リードの対応する絶縁体の絶縁破壊を伴うことなく、少なくとも約500Vの電圧電位を維持するように構成される絶縁電気リードに結合され得る。他の実施形態では、各電気リードの絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、その厚さにわたって約200V~約2000V(その間の全ての部分範囲及び値を含む)の電気電位差を維持し得る。本体(431)は、例えば、内部に画定される内腔内に各電極(419、421、423)の絶縁電気リードを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、電極(419、421、423)を隔てるシャフト部分(433、435)は、アブレーション装置(400)が、例えば、標的組織(例えば、心臓内の軟組織)に隣接して配置されるように偏向され得るように可撓性であり得る。他の実施形態では、中間シャフト部分(433、435)の1つ又は両方は、剛性又は半剛性であり得る。プルワイヤ(440)は、アブレーション装置(400)を偏向させるためにアブレーション装置(400)内に配置され得る。プルワイヤ(440)は、本体(431)の剛性部分、例えば電極(419、421、423)が配置される場所に取り付けられ、取付位置の近位の本体(431)の部分を偏向させるために引っ張られ得る。いくつかの実施形態では、シャフト部分(433、435)は、本体(440)のより近位部分と共に偏向するように構成される。プルワイヤ(440)は、アブレーション装置(400)の近位端に位置する、本体(431)の偏向を制御するために使用され得るハンドル(図示せず)に取り付けられ得る。ハンドルは、例えば、プルワイヤ(440)のテンションによってアブレーション装置(400)の遠位部を偏向させる、すなわち操作するための機構を含み得る。
【0032】
本明細書に記載される方法によれば、アブレーション装置(400)を使用し、パルス電場アブレーションの高電圧波形の適用により、組織内にアブレーションゾーンを生成することができる。それにより、焼灼された組織の領域が不可逆的電気穿孔によって生成される。アブレーション装置(400)は、例えば、心臓不整脈の治療のための心臓アブレーションを含む臨床用途において使用され得る。いくつかの実施形態では、アブレーション装置(400)は、直径が約5mm~約15mm及び深さが約1mm~約6mmであり得る局所又は限局アブレーションゾーンを生成することができる。
【0033】
いくつかの実施形態では、アノード及びカソードセットで構成される電極(419、421、423)間に1つ以上のパルス波形が適用され得る。例えば、遠位先端部電極(419)は、近位電極(421、423)と電気的に対になり得る。信号生成器(例えば、信号生成器(122))は、先端部電極(419)が第1の電気極性によって極性を与えられ、2つの近位電極(421、423)が、第1の電気極性と反対の第2の電気極性によって共に極性を与えられるように、電極(419、421、423)にパルス波形を送達するために使用され得る。いくつかの実施形態では、パルス波形は、上述のように階層的波形であり得、他の実施形態では他の波形構造が用いられ得る。電極(419、421、423)がこのように対になり、適切な振幅の電圧パルス波形によって通電されると、電極(419、421、423)は、
図5~
図8を参照して更に説明するように、組織に対する電極(419、421、423)の向きからほぼ独立した深さを有するアブレーションゾーンを生成することができる。
【0034】
いくつかの実施形態では、本体(431)は、約1mm~約5mm(その間の全ての部分範囲及び値を含む)の直径を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、本体(431)は、約4フレンチ(1.33mm)~約15フレンチ(5mm)の直径を有し得る。いくつかの実施形態では、遠位先端部電極(419)は、約1mm~約8mmの範囲内の長さL1を有し得る。いくつかの実施形態では、近位電極(421、423)は、それぞれ約1mm~約6mmの範囲内の長さL2を有し得る。いくつかの実施形態では、遠位先端部電極(419)は、近位電極(421、423)の長さL2よりも大きい長さL1を有し得る。いくつかの実施形態では、近位電極(421、423)は、可変長さを有し得る。いくつかの実施形態では、隣接する電極(419、421、423)を隔てるシャフト部分(433、435)は、それぞれ約1mm~約10mmの範囲内の長さを有し得る。いくつかの実施形態では、第1の近位電極(423)から先端部電極(419)を隔てる距離D1は、第2の近位電極(421)から第1の近位電極(423)を隔てる距離D2よりも大きくすることができる。代わりに、隣接する電極(419、421、423)を隔てる距離D1及び距離D2は、互いに等しいことができるか、又は距離D2は、距離D1よりも大きくすることができる。
【0035】
アブレーション装置(400)は、単一の遠位先端部電極(419)と2つの近位電極(421、423)とを有して示されるが、アブレーション装置(400)は、追加の数の遠位電極及び/又は近位電極を含み得るものと理解され得る。例えば、代替的な構成において、アブレーション装置(400)は、3つ以上の近位電極を含み得、近位電極のサブセット(例えば、近位電極の2つ)がパルス電場を生成するために選択され得る。
【0036】
図9は、アブレーション装置(900)の遠位部を概略的に示す。アブレーション装置(900)は、諸構成要素であり得る、及び/又は諸構成要素を含み得る。該構成要素は、例えば、
図1を参照して上述したようなアブレーション装置(110)を含む、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似する。アブレーション装置(900)は、遠位電極(918、920)のセットと近位電極(913、915)のセットとを含む遠位部(911)を有する可撓性の線形カテーテルであり得る。遠位電極(918、920)のセットは、近位電極(913、915)のセットからシャフト部分(924)によって隔てられ得る。いくつかの実施形態では、シャフト部分(924)は、可撓性であり得、代替的な実施形態では、シャフト部分(924)は、剛性又は概ね剛性であり得る。プルワイヤ(940)は、アブレーション装置(900)を偏向させるためにアブレーション装置(900)内に配置され得る。プルワイヤ(940)は、アブレーション装置(900)のシャフト内において、例えば近位電極(913)と遠位電極(920)との間の内部位置に結合され得る。例えば、プルワイヤ(940)は、近位電極(913)の近位、遠位電極(918)の近位、遠位電極(918、920)間などに取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、プルワイヤ(940)は、ハンドル機構又はアクチュエータ(図示せず)に結合され得、ハンドル機構又はアクチュエータにより、使用者は、作動要素(例えば、ロッカ、つまみ、レバー又は他の適切な機構)を操作してアブレーション装置(900)の遠位部(911)を偏向させることができる。プルワイヤ(940)がシャフトに結合される位置(例えば、シャフト部分(924)の遠位又は近位)及びシャフト部分(924)の可撓性に応じて、シャフトの一部分がプルワイヤ(940)を使用して偏向されたとき、シャフト部分(924)は、偏向することができるか又は偏向することができない。
【0037】
いくつかの実施形態では、電極(913、915、918、920)の1つ以上は、独立してアドレス指定可能な電極であり得、個々の絶縁電線又はリードは、それぞれの独立してアドレス指定可能な電極に結合される。いくつかの実施形態では、電極(913、915、918、920)のサブセットは、一緒に配線され得る。例えば、近位電極(913、915)は、単一のリードを使用して一緒に配線され得、遠位電極(918、920)は、単一のリードを使用して一緒に配線され得る。代わりに、遠位先端部電極(920)は、独立してアドレス指定可能であり得、且つ独自のリードによって配線され得、遠位電極(918)は、独自のリードによって配線され得、近位電極(913、915)は、単一のリードによって一緒に配線され得る。各リードを被覆する絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、その厚さにわたって約200V~約2000V(その間の全ての部分範囲及び値を含む)の電位差に耐えるために十分な絶縁耐力を有し得る。一実施形態では、各リードを被覆する絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、少なくとも約700Vの電位差に耐えるために十分な絶縁耐力を有し得る。
【0038】
任意選択的に、センサ(950)は、カテーテルの遠位部(911)に組み込まれ得る。1つ以上の別個のリード(図示せず)がセンサ(950)に取り付けられる。センサ(950)は、例えば、解剖学的構造(例えば、心臓腔)内におけるアブレーション装置(900)の位置、向きなどの追跡を可能にするために使用され得る。例えば、センサ(950)は、位置追跡システム(例えば、追跡システム(140))と関連付けられた送信機コイルから電磁信号を受信することができる電磁センサであり得る。送信機コイルは、センサ(950)によって信号(例えば、電圧、電流又はその両方)として受信される時間変化場を生成するように構成され得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極(913、915、918、920)又は別の電極(図示されない)が心電図データを受信するために使用され得る。心電図データは、診断情報を提供し得るか、又は位置を評価するために使用され得る。例えば、遠位電極(918、920)は、ECGデータを収集するために使用され得る。ECGデータは、ECGシステムと関連付けられたディスプレイ上にバイポーラ(差動)信号として表示され得る。更に又は代わりに、電極(913、915、918、920)は、アブレーション装置(900)を追跡するために、インピーダンスローカライゼーションシステムからの信号を検知するために使用され得る。追跡した位置情報を用いて、アブレーション装置(900)の視覚表現は、例えば、カテーテル位置を可視化するための空間的状況を提供するために電気解剖学的又は解剖学的マップ内に表示され得る。
【0039】
本明細書に記載される方法によれば、アブレーション装置(900)を使用したパルス電場アブレーションの高電圧波形の適用により、組織内にアブレーションゾーンを生成することができる。それにより、焼灼された組織の領域が不可逆的電気穿孔によって生成される。アブレーション装置(900)は、信号生成器(例えば、信号生成器(122))に動作可能に結合され得、且つ組織部位に不可逆的電気穿孔アブレーションを送達するために使用され得る。信号生成器は、アノード及びカソードセットとして構成される電極(913、915、918、920)間に適用される1つ以上のパルス波形を生成することができる。例えば、遠位電極(918、920)のセット及び近位電極(913、915)のセットは、不可逆的電気穿孔によって焼灼巣を生成するためのアノード-カソード対として対にされ得る。換言すると、電極(913、915、918、920)が、組織部位を焼灼する電場を集合的に生成するように、遠位電極(918、920)のセットが第1の極性で作動され得、第1の極性と反対の近位電極(913、915)のセットが第2の極性で作動され得る。電極(913、915、918、920)がこのように対になり、適切な振幅の適切な電圧パルス波形によって通電されると、電極(913、915、918、920)は、
図5~
図8を参照して更に説明するように、組織に対する電極(913、915、918、920)の向きからほぼ独立した深さを有するアブレーションゾーンを生成することができる。このようなペアリングスキームは、カテーテルの向きからほぼ独立した深さを有する焼灼巣を生成することが可能である。
【0040】
いくつかの実施形態では、アブレーション装置(900)のシャフトは、約4フレンチ(1.33mm)~約15フレンチ(5mm)の直径を有することができる。いくつかの実施形態では、各遠位電極(918、920)は、同じ長さ、例えば長さL1’を有し得、各近位電極(913、915)は、同じ長さ、例えば長さL2’を有し得る。他の実施形態では、遠位電極の少なくともいくつかの長さは、互いに異なり得るか、又は近位電極の少なくともいくつかの長さは、互いに異なり得る。各遠位電極(918、920)の長さL1’は、各近位電極の長さL2’に概ね等しくすることができ、各近位電極の長さL2’よりも大きくすることができるか、又は各近位電極の長さL2’よりも小さくすることができる。いくつかの実施形態では、各遠位電極(918、920)は、異なる長さを有し得、及び/又は各近位電極(913、915)は、異なる長さを有し得る。いくつかの実施形態では、遠位電極(918、920)の合計長さは、近位電極(913、915)の合計長さに概ね等しくすることができ、近位電極(913、915)の合計長さよりも大きくすることができるか、又は近位電極(913、915)の合計長さよりも小さくすることができる。近位電極(913、915)は、距離D2’によって互いに隔てられ得、遠位電極(918、920)は、距離D3’によって互いに隔てられ得る。いくつかの実施形態では、近位電極(913、915)を隔てる距離D2’は、遠位電極(918、920)を隔てる距離D3’に概ね等しくすることができ、遠位電極(918、920)を隔てる距離D3’よりも大きくすることができるか、又は遠位電極(918、920)を隔てる距離D3’よりも小さくすることができる。いくつかの実施形態では、距離D2’及び距離D3’は、近位電極(915)から遠位電極(918)を隔てる距離D1’よりも小さくすることができる。距離D1’、D2’及びD3’は、概ね、0.5mm~12mmの範囲内にあり得る。いくつかの実施形態では、比率D2’/D1’は、1~20の範囲内にあり得る。
【0041】
図10は、アブレーション装置(1000)の遠位部を概略的に示す。アブレーション装置(1000)は、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似する諸構成要素であり得、且つ/又はこのような諸構成要素を含み得る。アブレーション装置(1000)は、遠位電極(1018、1020、1022)のセットと近位電極(1013、1015)のセットとを含む遠位部(1011)を有する可撓性の線形カテーテルであり得る。遠位電極(1018、1020、1022)のセットは、近位電極(1013、1015)のセットからシャフト部分(1024)によって隔てられ得る。いくつかの実施形態では、シャフト部分(1024)は、可撓性であり得、代替的な実施形態では、シャフト部分(1024)は、剛性又は概ね剛性であり得る。プルワイヤ(1040)は、アブレーション装置(1000)を偏向させるためにアブレーション装置(1000)内に配置され得る。プルワイヤ(1040)は、アブレーション装置(1000)のシャフト内において、例えば近位電極(1013)と遠位電極(1022)との間の内部位置に結合され得る。例えば、プルワイヤ(1040)は、近位電極(1013)の近位、遠位電極(1018)の近位、遠位電極(1018、1022)間などに取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、プルワイヤ(1040)は、ハンドル機構又はアクチュエータ(図示せず)に結合され得、ハンドル機構又はアクチュエータにより、使用者は、作動要素(例えば、ロッカ、つまみ、レバー又は他の適切な機構)を操作してアブレーション装置(1000)の遠位部(1011)を偏向させることができる。プルワイヤ(1040)がシャフトに結合される位置(例えば、シャフト部分(1024)の遠位又は近位)及びシャフト部分(1024)の可撓性に応じて、シャフトの一部分がプルワイヤ(1040)を使用して偏向されたとき、シャフト部分(1024)は、偏向することができるか又は偏向することができない。
【0042】
いくつかの実施形態では、電極(1013、1015、1018、1020、1022)の1つ以上は、独立してアドレス指定可能な電極であり得、個々の絶縁電線又はリードは、各電極に結合される。いくつかの実施形態では、電極(1013、1015、1018、1020、1022)のサブセットは、一緒に配線され得る。例えば、近位電極(1013、1015)は、単一のリードを使用して一緒に配線され得、遠位電極(1018、1020、1022)は、単一のリードを使用して一緒に配線され得る。代わりに、遠位先端部電極(1022)は、独立してアドレス指定可能であり得、且つ独自のリードによって配線され得、遠位電極(1018、1020)は、単一のリードによって一緒に配線され得、近位電極(1013、1015)は、単一のリードによって一緒に配線され得る。各リードを被覆する絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、その厚さにわたって約200V~約2000V(その間の全ての部分範囲及び値を含む)の電位差に耐えるために十分な絶縁耐力を有し得る。一実施形態では、各リードを被覆する絶縁体は、絶縁破壊を伴うことなく、少なくとも約700Vの電位差に耐えるために十分な絶縁耐力を有し得る。
【0043】
任意選択的に、センサ(1050)は、カテーテルの遠位部(1011)に組み込まれ得る。1つ以上の別個のリード(図示せず)がセンサ(1050)に取り付けられる。センサ(1050)は、例えば、解剖学的構造(例えば、心臓腔)内におけるアブレーション装置(1000)の位置、向きなどの追跡を可能にするために使用され得る。例えば、センサ(1050)は、位置追跡システム(例えば、追跡システム(140))と関連付けられた送信機コイルから電磁信号を受信することができる電磁センサであり得る。いくつかの実施形態では、1つ以上の電極(1013、1015、1018、1020、1022)又は別の電極(図示されない)がECGデータを受信するために使用され得る。ECGデータは、診断情報を提供し得るか、又は位置を評価するために使用され得る。例えば、遠位電極(1018、1020)は、ECGデータを収集するために使用され得る。ECGデータは、ECGシステムと関連付けられたディスプレイ上にバイポーラ(差動)信号として表示され得る。更に又は代わりに、電極(1013、1015、1018、1020、1022)は、アブレーション装置(1000)を追跡するために、インピーダンスローカライゼーションシステムからの信号を検知するために使用され得る。追跡した位置情報を用いて、アブレーション装置(1000)の視覚表現は、例えば、カテーテル位置を可視化するための空間的状況を提供するために電気解剖学的又は解剖学的マップ内に表示され得る。
【0044】
本明細書に記載される方法によれば、アブレーション装置(1000)を使用し、パルス電場アブレーションの高電圧波形の適用により、組織内にアブレーションゾーンを生成することができる。それにより、焼灼された組織の領域が不可逆的電気穿孔によって生成される。アブレーション装置(1000)は、信号生成器(例えば、信号生成器(122))に動作可能に結合され得、且つ組織部位に不可逆的電気穿孔アブレーションを送達するために使用され得る。信号生成器は、アノード及びカソードセットとして構成される電極(1013、1015、1018、1020、1022)間に適用される1つ以上のパルス波形を生成することができる。例えば、遠位電極(1018、1020、1022)のセット及び近位電極(1013、1015)のセットは、不可逆的電気穿孔によって焼灼巣を生成するためのアノード-カソード対として対にされ得る。電極(1013、1015、1018、1020、1022)がこのように対になり、適切な振幅の適切な電圧パルス波形によって通電されると、電極(1013、1015、1018、1020、1022)は、
図5~
図8を参照して更に説明するように、組織に対する電極(1013、1015、1018、1020、1022)の向きからほぼ独立した深さを有するアブレーションゾーンを生成することができる。
【0045】
図5~
図8は、本明細書に記載されるようなシステム、装置及び方法を使用して組織内に生成することができる異なるアブレーションゾーンを示す。
図5は、アブレーション装置(500)によって組織壁(560)内に生成することができるアブレーションゾーンのシミュレーションを示す。アブレーション装置(500)は、例えば、アブレーション装置(110、400、900、1000)を含む、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似し得る。例えば、アブレーション装置(500)は、本体(511)と、遠位先端部電極(519)と、近位電極(521、523)とを含み得る。
【0046】
図5に図示されるように、遠位先端部電極(519)は、組織壁560(例えば、心組織壁)にほぼ直角に置かれ得る。換言すると、遠位先端部電極(519)を少なくとも含むアブレーション装置(500)の本体(511)の遠位部は、組織壁(560)の表面にほぼ直角な方向に延びるように配置され得る。本体(511)の遠位部は、全体的に、組織壁(560)に隣接する血液プール(550)、例えば心臓腔内の血液プール内に配置され得る。組織壁(560)は、約1mm~約8mm(その間の全ての値及び部分範囲を含む)の範囲の厚さTを有し得る。
【0047】
本明細書に記載される方法によれば、パルス波形は、例えば、信号生成器(例えば、信号生成器(122))を使用して発生させ、アブレーション装置(500)に送達することができる。
図5に示される模擬的なアブレーションゾーン(570)を形成するために、先端部電極(519)は、第1の極性を有するように構成され、近位電極(521、523)は、第1の極性と反対の第2の極性を有するように構成される。例えば、信号生成器は、パルス波形と関連付けられた、それぞれ先端部電極(519)及び近位電極(521、523)と反対の極性を有する出力信号を送達するように構成され得る。従って、先端部電極(519)は、1つの電気極性によって極性を与えられ得、近位電極(521、523)は、反対の電気極性によって極性を与えられ得る。先端部電極(519)及び近位電極(521、523)は、アブレーションゾーン(570)を有するパルス電場を生成するために、少なくとも約0.5kV(例えば、1kV)の電圧振幅を有するパルス波形によって極性を与えられ得る。
【0048】
図6は、組織壁(660)に対して斜めに向きのあるアブレーション装置(600)によって組織壁(660)内に生成されたアブレーションゾーンのシミュレーションを示す。アブレーション装置(600)は、例えば、アブレーション装置(110、400、500)を含む、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似し得る。例えば、アブレーション装置(600)は、本体(611)と、遠位先端部電極(619)と、近位電極(621、623)とを含み得る。
【0049】
図6に図示されるように、遠位先端部電極(619)は、組織壁(660)に対して角度を成して(例えば、約0~約90度、その間の全ての部分範囲及び値を含む)置かれ得る。アブレーション装置(600)の遠位部は、血液プール(650)内に配置され得る。組織壁(660)は、約1mm~約8mmの範囲の厚さTを有し得る。同じ電圧振幅(例えば、1kV)を有するパルス波形及び同じ電極サブセット構成(即ち先端部電極(619)が1つの電気極性を有し、近位電極(621、623)が反対の電気極性を有する)を使用して、電極(619、621、623)は、アブレーションゾーン(670)を有するパルス電場を生成することができる。斜めに置かれたアブレーション装置(600)によって生成されたアブレーションゾーン(670)と、直角に置かれたアブレーション装置(500)によって生成されたアブレーションゾーン(570)とを比較すると、焼灼された組織領域の深さは、同様である。具体的には、斜めに置かれたアブレーション装置(600)によって生成されたアブレーションゾーン(670)は、直角に置かれたアブレーション装置(500)によって生成されたアブレーションゾーン(570)の深さにほぼ等しい深さを有する。従って、本明細書に記載されるアブレーション装置(例えば、アブレーション装置(500、600))は、アブレーションゾーンを向きとは独立して生成することができる。
【0050】
本明細書に記載される装置及びシステムは、様々な電圧振幅、例えば約400V、約1,000V、約5,000V、約10,000V、約15,000Vからの範囲(その間の全ての値及び部分範囲を含む)の振幅を有するパルス波形により、向きとは独立して、制御可能なアブレーションゾーンを生成することができる。一例として、
図7及び
図8は、
図5及び
図6の電圧よりも高い電圧を有するパルス波形を使用して生成された模擬的なアブレーションゾーン(770、870)を示す。例えば、
図7及び
図8に示されるアブレーション装置(700、800)は、2kVの電圧振幅を有するパルス波形によって通電され得る。
【0051】
図7は、組織壁(760)にほぼ直角に置かれたアブレーション装置(700)によって組織壁(760)内に生成された模擬的なアブレーションゾーン(770)を示す。アブレーション装置(700)は、例えば、アブレーション装置(110、400、500、600)を含む、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似し得る。例えば、アブレーション装置(700)は、本体(711)と、遠位先端部電極(719)と、近位電極(721、723)とを含み得る。
【0052】
図7に図示されるように、遠位先端部電極(719)は、組織壁(760)に対してほぼ直角(例えば、約90度)に置かれ得る。アブレーション装置(700)の遠位部は、血液プール(750)内に配置され得る。組織壁(760)は、約1mm~約8mmの範囲の厚さTを有し得る。2kVの振幅を有する個々のパルスを有するパルス波形を使用し、先端部電極(719)と近位電極(721、723)とに反対の極性が与えられることにより、電極(719、721、723)は、アブレーションゾーン(770)を有するパルス電場を生成することができる。図示されるように、アブレーションゾーン(770)は、パルス波形のより高い電圧により、アブレーションゾーン(570、670)の深さよりも大きい深さを有し得る。
【0053】
図8は、組織壁(860)に対して斜めに置かれたアブレーション装置(800)によって組織壁(860)内に生成された模擬的なアブレーションゾーン(870)を示す。アブレーション装置(800)は、例えば、アブレーション装置(110、400、500、600、700)を含む、本明細書に記載される他のアブレーション装置に構造的及び/又は機能的に類似し得る。例えば、アブレーション装置(800)は、本体(811)と、遠位先端部電極(819)と、近位電極(821、823)とを含み得る。
【0054】
図8に図示するように、遠位先端部電極(819)は、組織壁(860)に対して斜めに(例えば、約0~約90度、その間の全ての部分範囲及び値を含む)置かれ得る。アブレーション装置(800)の遠位部は、血液プール(850)内に配置され得る。組織壁(860)は、約1mm~約8mmの範囲の厚さTを有し得る。2kVの振幅を有する個々のパルスを有するパルス波形を使用し、先端部電極(819)と近位電極(821、823)とに反対の極性が与えられることにより、電極(819、821、823)は、アブレーションゾーン(870)を有するパルス電場を生成することができる。図示されるように、アブレーションゾーン(870)は、パルス波形のより高い電圧により、アブレーションゾーン(570、670)の深さよりも大きい深さを有し得る。
図7のアブレーションゾーン(770)と比較すると、アブレーションゾーン(870)は、同様の深さ(例えば、ほぼ同じ深さ)を有する。従って、
図7及び
図8は、組織壁に対するアブレーション装置の向きとは独立した制御可能なアブレーションゾーンを生成することが可能である、本明細書に記載されるアブレーション装置の更なる例を提供する。
【0055】
本発明のアブレーションカテーテルの先端部は、局所的な組織表面に対して直角、斜め又は接線方向を問わず、臨床用途において便利な任意の向きで組織表面に置かれ得ると理解すべきである。本明細書に提供される特定の例は、単なる例示のために提供される。
【0056】
本明細書で使用する場合、数値及び/又は範囲と共に使用される場合の「約」及び/又は「およそ」という用語は、概して、列挙した数値及び/又は範囲に近い数値及び/又は範囲を指す。場合により、「約」及び/又は「およそ」という用語は、列挙した数値の±10%以内を意味し得る。例えば、場合により、[約100単位]は、100の±10%以内(例えば、90~110)を意味し得る。「約」及び/又は「およそ」という用語は、互換的に使用され得る。
【0057】
本明細書で使用する場合、構成要素(例えば、電極)の「セット」及び/又は「サブセット」という用語は、概して、これらの構成要素の単一のもの又はこれらの構成要素の複数を指す。
【0058】
本明細書に記載されるいくつかの実施形態は、様々なコンピュータにより実施される操作を実行するための命令又はコンピュータコードを有する非一時的コンピュータ可読媒体(非一時的プロセッサ可読媒体とも呼ばれ得る)を備えるコンピュータ記憶製品に関連する。コンピュータ可読媒体(又はプロセッサ可読媒体)は、本質的に一過性の伝播信号(例えば、空間又はケーブルなどの伝送媒体で情報を運ぶ伝播電磁波)を含まないという意味で非一時的である。媒体及びコンピュータコード(コード又はアルゴリズムとも呼ばれ得る)は、特定の目的で設計され、構築されたものであり得る。非一時的なコンピュータ可読媒体の例としては、ハードディスク、磁気ディスク及び磁気テープなどの磁気記憶媒体;コンパクトディスク/デジタルビデオディスク(CD/DVD:Compact Disc/Digital Video Disc)、コンパクトディスク読出し専用メモリ(CD-ROM:Compact Disc-Read Only Memory)及びホログラフィック装置などの光記憶媒体;光ディスクなどの光磁気記憶媒体;搬送波信号処理モジュール;並びに特定用途用集積回路(ASIC)、プログラマブルロジック装置(PLD:Programmable Logic Device)、読出し専用メモリ(ROM)及びランダムアクセスメモリ(RAM)装置など、プログラムコードを格納及び実行するように特別に構成されるハードウェア装置が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載される他の実施形態は、例えば、本明細書に開示される命令及び/又はコンピュータコードを含み得るコンピュータプログラム製品に関連する。
【0059】
本明細書に記載されるシステム、装置及び/又は方法は、ソフトウェア(ハードウェア上で実行される)、ハードウェア又はこれらの組み合わせによって実施され得る。ハードウェアモジュールは、例えば、汎用プロセッサ(又はマイクロプロセッサ若しくはマイクロコントローラ)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)及び/又は特定用途用集積回路(ASIC)を含み得る。ソフトウェアモジュール(ハードウェア上で実行される)は、C、C++、ジャバ(Java)(登録商標)、ルビー(Ruby)、ビジュアルベーシック(Visual Basic)(登録商標)及び/又は他のオブジェクト指向、手続き型若しくは他のプログラミング言語及び開発ツールを含む様々なソフトウェア言語(例えば、コンピュータコード)で表現され得る。コンピュータコードの例としては、マイクロコード又はマイクロ命令、例えばコンパイラによって生成される機械命令、ウェブサービスを生成するために使用されるコード及びコンピュータがインタープリタを使用して実行するより高レベルの命令を含むファイルが挙げられるが、これらに限定されない。コンピュータコードの更なる例としては、制御信号、暗号化されたコード及び圧縮されたコードが挙げられるが、これらに限定されない。
【0060】
(付記)
好ましい実施形態として、上記実施形態から把握できる技術的思想について、以下記載する。
[項目1]
組織壁の近傍に配置可能な遠位部を含む線形シャフトであって、前記組織壁の近傍に前記遠位部を配置するために偏向可能であるように構成される線形シャフトと、
前記遠位部に配置された複数の電極であって、前記組織壁に対する前記遠位部の向きとは独立した深さを有するアブレーションゾーンを前記組織壁内に生じさせることができるパルス電場を生成するように構成されており、
前記線形シャフトの先端部に配置された遠位先端部電極と、一定の距離だけ前記遠位先端部電極から近位側に隔たった、隣接する遠位電極とを含む遠位電極のセットと、
前記遠位電極のセットの近位に配置された近位電極のセットであって、前記線形シャフトの第1の長さは、前記近位電極のセットの近位電極の少なくとも1つの隣接する対を隔て、前記線形シャフトの第2の長さは、前記遠位電極のセットの最近位の遠位電極から前記近位電極のセットの最遠位の近位電極を隔て、前記線形シャフトの前記第1の長さは、前記線形シャフトの前記第2の長さよりも小さく、前記第1の長さは前記一定の距離よりも長い、近位電極のセットと
を含む複数の電極と、
前記複数の電極に結合される複数のリードであって、前記複数のリードからの各リードは、(1)その対応する絶縁体の絶縁破壊を伴うことなく、且つ(2)前記遠位電極のセットが第1の極性で作動され、及び前記近位電極のセットが、前記第1の極性と反対の第2の極性で作動されて、前記パルス電場を集合的に生成するように、少なくとも700Vの振幅を有する電圧出力を前記複数の電極に送達するように構成される、複数のリードと
を備える装置。
[項目2]
前記近位電極のセットは、2つの近位電極を含む、項目1に記載の装置。
[項目3]
前記遠位電極のセットは、前記遠位先端部電極の近位に配置された1つ以上の遠位電極を更に含み、前記線形シャフトの第3の長さは、前記遠位先端部電極と、前記1つ以上の遠位電極の隣接する遠位電極とを隔てる、項目2に記載の装置。
[項目4]
前記線形シャフトの前記第1の長さ及び前記線形シャフトの前記第3の長さは、前記線形シャフトの前記第2の長さよりも小さい、項目3に記載の装置。
[項目5]
前記2つの近位電極は、前記複数のリードからの第1のリードを使用して一緒に配線されているとともに、前記遠位先端部電極と前記1つ以上の遠位電極とは、前記複数のリードからの第2のリードを使用して一緒に配線される、項目4に記載の装置。
[項目6]
前記2つの近位電極は、前記複数のリードからの第1のリードを使用して一緒に配線されており、前記遠位先端部電極は、前記複数のリードからの第2のリードを使用して独立して配線されているとともに、前記1つ以上の遠位電極は、前記複数のリードからの第3のリードを使用して独立して又は一緒に配線される、項目3に記載の装置。
[項目7]
前記線形シャフトは、1mm~5mmの直径を有する、項目1に記載の装置。
[項目8]
前記近位電極のセットからの各近位電極は、1mm~6mmの長さを有し、及び
前記遠位電極のセットからの各遠位電極は、1mm~8mmの長さを有する、項目7に記載の装置。
[項目9]
前記線形シャフトの前記第1の長さに対する前記線形シャフトの前記第2の長さの比率は、1~20である、項目7に記載の装置。
[項目10]
近位端及び遠位端を含むプルワイヤを更に含み、
前記プルワイヤの前記遠位端は、前記近位電極のセットの近傍且つ前記線形シャフトの前記第2の長さの近位の位置で前記線形シャフトに結合されており、
前記プルワイヤの前記近位端は、作動機構に結合されており、
前記プルワイヤは、前記線形シャフトの偏向で前記線形シャフトの前記第2の長さが偏向するように、前記作動機構を介して作動されて前記線形シャフトを偏向させるように構成される、項目1に記載の装置。
[項目11]
近位端及び遠位端を含むプルワイヤを更に含み、
前記プルワイヤの前記遠位端は、前記線形シャフトの前記遠位部に結合されており、
前記プルワイヤの前記近位端は、作動機構に結合されており、
前記プルワイヤは、前記作動機構を介して作動されて前記線形シャフトを偏向させるように構成される、項目1に記載の装置。
[項目12]
前記遠位部に配置されたセンサを更に備え、
前記センサは、追跡装置と関連付けられた場生成器によって生成された電場又は磁場の少なくとも1つに応じて、前記遠位部の位置を判定するために信号のセットを受信するように構成される、項目1に記載の装置。
[項目13]
前記遠位電極のセットのサブセットは、心電図(ECG)データを測定するように構成される、項目12に記載の装置。
本明細書の特定の例及び説明は、本質的に例示であり、実施形態は、当業者であれば、添付の特許請求項によってのみ限定される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に教示される材料に基づいて開発することができる。