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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008170
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】歯磨き剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/98 20060101AFI20240112BHJP
   A61K 8/24 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240112BHJP
   A61K 8/25 20060101ALI20240112BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
A61K8/98
A61K8/24
A61K8/73
A61K8/25
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109803
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】516292856
【氏名又は名称】株式会社AT-MARK CONSUL.
(74)【代理人】
【識別番号】100171077
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 健
(72)【発明者】
【氏名】安田 邦彦
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA071
4C083AA072
4C083AA111
4C083AA121
4C083AA122
4C083AB171
4C083AB172
4C083AB291
4C083AB292
4C083AC121
4C083AC122
4C083AC431
4C083AC432
4C083AC681
4C083AC682
4C083AC841
4C083AC842
4C083AD211
4C083AD212
4C083AD261
4C083AD262
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC41
4C083EE31
4C083EE35
(57)【要約】
【課題】長期摂取による慢性毒性のおそれが極端に低く、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、かつ、研磨材を含まず歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤を提供する。
【解決手段】中心粒度3μmの多孔質体である化石サンゴ粉末と、両性イオン交換特性を有する中心粒度6μmの多孔質体であるヒドロキシアパタイトと、ミュータンス抗菌性および抗炎症作用を備える湿潤材と、セルロースガムおよびシリカを含む粘結剤と、カルシウム、リンおよびマグネシウムを備える歯磨き剤。
【選択図】図2

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心粒度3μmの多孔質体である化石サンゴ粉末と、
両性イオン交換特性を有する中心粒度6μmの多孔質体であるヒドロキシアパタイトと、
ミュータンス抗菌性および抗炎症作用を備える湿潤材と、
セルロースガムおよびシリカを含む粘結剤と、
カルシウム、リンおよびマグネシウムを備える歯磨き剤。
【請求項2】
前記ヒドロキシアパタイトは、低結晶型である請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項3】
前記ヒドロキシアパタイトは、17μm以上の粒度が10%以下である請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項4】
前記ヒドロキシアパタイトは、前記ヒドロキシアパタイト1グラム以下で5ppmパラジウム100mlにおけるパラジウムの除去率が99%以上である請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項5】
前記湿潤剤は、アラントイン、トレハロース、タマネギ根エキスの少なくとも2つを含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項6】
プロパンジオールおよびPEG40~80水添ヒマシ油を含む可溶化剤を含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項7】
カキタンニンを含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項8】
ハッカ油を含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項9】
オレンジ油を含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項10】
合成界面活性剤、合成甘味料、プロピレングリコールおよびパラベンを含有しない請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項11】
歯髄由来幹細胞を含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【請求項12】
前記歯髄由来幹細胞は、PDGF(血小板由来成長因子)、BMP(骨形成タンパク質)、FGF(線維芽細胞成長因子)、IGF(インスリン様成長因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)またはTGF-β(トランスフォーミング増殖因子)の少なくとも1つを含む請求項1に記載の歯磨き剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、歯磨き剤に関する。詳しくは、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に歯磨き剤には、ラウリル硫酸ナトリウムなどの合成界面活性剤、サッカリンナトリウムなどの合成甘味料、プロピレングリコールなどの湿潤剤、パラベンなどの防腐剤が用いられている。これらは、いずれも人体に有害である可能性が指摘されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ラウリル酸ナトリウム、プロピレングリコール、パラベンを含む歯磨き剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-4209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、人体の口内粘膜は、人体の皮膚に比べて、成分吸収量がおよそ10倍から20倍程度である。歯磨きは、個人差はあるものの、毎日複数回行われることが一般的であり、一回の歯磨き毎の有害物質吸収量は微量であっても、長期摂取による慢性毒性については警鐘されている。よって、歯磨き剤によっては、使用年数等により人体に有害な影響を及ぼしかねない。
【0006】
例えば、ラウリル硫酸ナトリウムは、外用医薬品製剤などにも広く使用されているが、皮膚、眼、粘膜、上気道や胃に対する刺激性を含む急性毒性を持つ中程度の毒性物質である。希薄溶液に繰り返し長期間曝されると、皮膚の乾燥やひび割れといった接触皮膚炎を引き起こす。また動物実験により、静脈注射によって、肺、腎臓、肝臓への顕著な毒性を引き起こすことがわかっている。
【0007】
また、例えば、パラベンは、紫外線照射により、塗布した部分の皮膚細胞の死亡率および脂質過酸化物量が3倍となり、皮膚の老化を招くことがわかっている。また、パラベンは、経皮吸収しやすく、肌荒れなどのスキントラブルやアレルギーを引き起こしやすくなることがわかっている。また、パラベンは、体内に蓄積される物質である。さらにはがん患者の細胞組織にパラベンが検出された研究結果が報告されており、パラベンの体内蓄積による発がん性が、十分に証明されてはいないものの、問題視されている。
【0008】
また、フッ素は、知的発達に影響する可能性が指摘されている。例えば、妊娠時の母体の尿中フッ素濃度と、生まれてきた子供の1歳から3歳までの知的発達指数(MDI)は逆相関することが報告されている。
【0009】
その他、一般的な歯磨き剤に含まれ得るリスク成分として、ラウロイルサルコシンナトリウム、セチルピリジニウムクロリド、イソプロピルメチルフェノールなどが知られている。
【0010】
しかしながら、これまで、長期摂取による慢性毒性のおそれが極端に低く、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、かつ、研磨材を含まず歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤を提供することができなかった。
【0011】
本開示は、上述の課題を解決するためになされた。本開示の目的は、長期摂取による慢性毒性のおそれが極端に低く、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、かつ、研磨材を含まず歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示にかかる歯磨き剤は、
中心粒度3μmの多孔質体である化石サンゴ粉末と、
両性イオン交換特性を有する中心粒度6μmの多孔質体であるヒドロキシアパタイトと、
ミュータンス抗菌性および抗炎症作用を備える湿潤材と、
セルロースガムおよびシリカを含む粘結剤と、
カルシウム、リンおよびマグネシウムを備える歯磨き剤とした。
【0013】
前記ヒドロキシアパタイトは、低結晶型であることが、本開示の一形態とされる。
【0014】
前記ヒドロキシアパタイトは、17μm以上の粒度が10%以下であることが、本開示の一形態とされる。
【0015】
前記ヒドロキシアパタイトは、前記ヒドロキシアパタイト1グラム以下で5ppmパラジウム100mlにおけるパラジウムの除去率が99%以上であることが、本開示の一形態とされる。
【0016】
前記湿潤剤は、アラントイン、トレハロース、タマネギ根エキスの少なくとも2つを含むことが、本発明の一形態とされる。
【0017】
プロパンジオールおよびPEG40~80水添ヒマシ油を含む可溶化剤を含むことが、本発明の一形態とされる。
【0018】
カキタンニンを含むことが、本開示の一形態とされる。
【0019】
ハッカ油を含むことが、本開示の一形態とされる。
【0020】
オレンジ油を含むことが、本開示の一形態とされる。
【0021】
合成界面活性剤、合成甘味料、プロピレングリコールおよびパラベンを含有しないことが、本開示の一形態とされる。
【0022】
歯髄由来幹細胞を含むことが、本開示の一形態とされる。
【0023】
前記歯髄由来幹細胞は、PDGF(血小板由来成長因子)、BMP(骨形成タンパク質)、FGF(線維芽細胞成長因子)、IGF(インスリン様成長因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)またはTGF-β(トランスフォーミング増殖因子)の少なくとも1つを含むことが、本開示の一形態とされる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、長期摂取による慢性毒性のおそれが極端に低く、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、かつ、研磨材を含まず歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1は、未処理の人の前歯の表面を示す低加速走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像である。
図2図2は、処理後の人の前歯の表面を示す低加速走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像である。
図3図3は、重金属の吸着試験の結果を示す図である。
図4図4は、パラジウム重金属の吸着試験の結果を示す図である。
図5図5は、悪臭物質の吸着試験の結果を示す図である。
図6図6は、展着前のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。
図7図7は、展着後のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。
図8図8は、比較例における展着後のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。
図9図9は、本発明の研磨材を含まない歯磨き剤を含む各種材の研磨試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施の形態について添付の図面を適宜参照しつつ説明する。なお、各図中、同一または相当する部分には同一の符号が付される。当該部分の重複説明は適宜に簡略化ないし省略される。
【0027】
本発明の歯磨き剤は、中心粒度3μmの多孔質体である化石サンゴ粉末を含有する。化石サンゴ粉末は多孔質体であるため、口腔内のステイン、細菌、色素、臭気、また、重金属などを、吸着することができる。
【0028】
化石サンゴ粉末は、カルシウムを35重量%~45重量%、炭酸を45重量%~49重量%それぞれ含有する。さらに、化石サンゴ粉末は、所謂必須ミネラルであるナトリウム、マグネシウム、リン、イオウ、塩素、カリウム、 カルシウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛、セレン、モリブデン、ヨウ素を全て含有する。これにより、本発明の歯磨き剤の使用者が歯磨きをするたびに必須ミネラルを口内粘膜から吸収することが可能となる。
【0029】
本発明の歯磨き剤に含まれる化石サンゴ粉末は、未焼成の化石サンゴ粉末とすることができる。これにより、変質や劣化の少ない必須ミネラルを含有する歯磨き剤とすることができる。
【0030】
本発明の歯磨き剤に含まれる化石サンゴ粉末は、2022年から5万年以上前に海中で育ったサンゴがその後の地殻変動により隆起し、地上において化石化した化石サンゴの化石サンゴ粉末とすることができる。これにより、海洋汚染の影響のおそれが少ない歯磨き剤とすることができる。より望ましくは、2022年から10万年以上前に海中で育ったサンゴがその後の地殻変動により隆起し、地上において化石化した化石サンゴの化石サンゴ粉末とすることができる。これにより、海洋汚染の影響のおそれがさらに少ない歯磨き剤とすることができる。
【0031】
本発明の歯磨き剤は、両性イオン交換特性を有する中心粒度6μmの多孔質体であるヒドロキシアパタイトを含有する。本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、多孔質で、かつ、両性イオン交換特性を有するため、他の物質に対して柔軟な反応を示すことができる。
【0032】
これにより、歯の表面を修復する再石灰化のみならず、糖、タンパク質、脂質、細菌、色素、臭気などのあらゆる有機物質を吸着し、口腔内から除去することができる。
【0033】
さらに、カドミウム、鉛、水銀、パラジウムなどの有害金属を吸着することができる。これにより、銀歯や金歯に使用されるパラジウム重金属によるアレルギーを防止することができる。
【0034】
本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた再石灰化効果を有する。発明者等は、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトの優れた再石灰化効果を確認するため、アパタイトの微小粉末が歯の表面にできた傷を充填した後、口腔内体液により再石灰化が起こり歯の表面の凹凸をアパタイトが埋めるという、所謂微小充填論に沿って行った。
【0035】
図1は、未処理の人の前歯の表面を示す低加速走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像である。この状態に、前処理として、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトおよびこれと同量の純水を混ぜペースト状にしたものを歯表面に塗布し、15分後に水で洗浄した。その後、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトを塗布し、15分後に水で洗浄した。その後、トリス、塩化ナトリウムおよび塩化マグネシウムを含む擬似体液に摂氏37度にて二日間浸漬させた。
【0036】
これら一連の処理後、再度歯表面を低加速走査型電子顕微鏡により観察した。図2は、処理後の人の前歯の表面を示す低加速走査型電子顕微鏡を用いて撮影した画像である。図2に示すとおり、アパタイトの微粒子が細かく付着し、歯表面が再石灰化している。これにより、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた再石灰化効果を有することがわかった。
【0037】
一例によれば、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、17μm以上の粒度が10%以下とすることができる。これにより、より多くのアパタイトが微粒子として歯の表面に付着することができ、再石灰化の効果をさらに高めることができる。
【0038】
本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた口腔内細菌の吸着能力を有する。発明者等は、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトの口腔内細菌の吸着試験を行った。
【0039】
吸着試験は、まず、水でうがいし、吐き出したものを菌液とした。菌液は、1ミリリットル当たり菌数約150個であった。次に、菌液10ミリリットルに対して本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトを300mg加えて撹拌した。その後沈殿物が沈殿したら上水をとり、菌数を確認したところ、1ミリリットル当たり菌数約1個であった。
【0040】
よって、菌の吸着率は99%以上であった。これにより、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた口腔内細菌の吸着能力を有することがわかった。
【0041】
本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた重金属の吸着能力を有する。発明者等は、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトの重金属の吸着試験を行った。
【0042】
吸着試験は、カドミウム、水銀、鉛の各元素をそれぞれ5ppmに調整された標準液を用いて行った。本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトを含侵させた含侵紙2枚をロートにセットし、当該標準液30ミリリットルを通過させ、測定した。
【0043】
図3は、重金属の吸着試験の結果を示す図である。図3に示すとおり、カドミウムの吸着率は92%、水銀の吸着率は88%、鉛の吸着率は96%であった。これにより、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた重金属の吸着能力を有することがわかった。
【0044】
本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れたパラジウム重金属の吸着能力を有する。発明者等は、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトのパラジウム重金属の吸着試験を行った。
【0045】
吸着試験は、パラジウムを5ppmに調整された標準液を用いて行った。かかる標準液100ミリリットルをビーカーに入れウォーターバスにて摂氏37度に保持する。そこに本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイト1グラムを加え撹拌した。1分間撹拌した溶液および3分間撹拌した溶液をそれぞれろ過した。通過した溶液をそれぞれICPにてパラジウム濃度測定を行った。
【0046】
図4は、パラジウム重金属の吸着試験の結果を示す図である。図4に示すとおり、1分間撹拌した溶液および3分間攪拌した溶液ともに、パラジウム重金属の吸着率は99%以上であった。これにより、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れたパラジウム重金属の吸着能力を有することがわかった。
【0047】
本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた悪臭物質の吸着能力を有する。発明者等は、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトの悪臭物質の吸着試験を行った。
【0048】
吸着試験は、アンモニアを18ppmに、トリメチルアミンを11ppmに、ノルマル酪酸を9ppmに、それぞれ調整された標準液を用いて行った。かかる標準液100ミリリットルをビーカーに入れウォーターバスにて摂氏37度に保持する。そこに本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイト1グラムを加え、60分間撹拌した。撹拌後、溶液をろ過し測定を行った。
【0049】
図5は、悪臭物質の吸着試験の結果を示す図である。図5示すとおり、アンモニアの吸着率は72%、トリメチルアミンの吸着率は82%、ノルマル酪酸の吸着率は56%であった。これにより、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、優れた悪臭物質の吸着能力を有することがわかった。
【0050】
一例によれば、本発明の歯磨き剤に含まれるヒドロキシアパタイトは、低結晶型とすることができる。発明者当は、本発明の歯磨き剤に含まれる低結晶型のヒドロキシアパタイトの再石灰化の効果の確認を行った。
【0051】
図6は、展着前のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。ヒト脱落乳歯の表面に本発明の歯磨き剤に含まれる低結晶型のヒドロキシアパタイトを塗り、一晩放置した。水道水で洗い流したのち、歯ブラシで表面を10回ブラッシングした。再度水道水で洗浄した。乾燥後、電子顕微鏡にて展着処理後の表面を観察した。
【0052】
図7は、展着後のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。図7に示すとおり、歯の表面にできた細かい溝を本発明の歯磨き剤に含まれる低結晶型のヒドロキシアパタイトがきれいに埋めているのがわかる。
【0053】
比較例として、一般結晶型ヒドロキシアパタイトを用いて、上述の展着処理と同様の処理を行った。図8は、比較例における展着後のヒト脱落乳歯の表面を示す画像である。図8に示すとおり、本発明の歯磨き剤に含まれる低結晶型のヒドロキシアパタイトと比較して、歯の表面にできた細かい傷が多く残っていることがわかる。
【0054】
これにより、本発明の歯磨き剤に含まれる低結晶型のヒドロキシアパタイトの例によれば、非常に優れた再石灰化の効果が期待できることがわかる。
【0055】
本発明の歯磨き剤は、ミュータンス抗菌性および抗炎症作用を備える湿潤材を備える。ミュータンス抗菌性を備える湿潤剤として、タマネギ根エキス(ケルセチン)を用いることができる。タマネギ根エキス(ケルセチン)は、抗菌性、抗炎症性および抗酸化性に優れている。タマネギ根エキス(ケルセチン)は、タマネギ外皮を煮だして抽出するため、天然由来成分であり極めて安全性が高いといえる。
【0056】
一例によれば、湿潤剤は、アラントインを含んでもよい。アラントインは、抗炎症作用をもち、口腔内の出血などに対して有効な成分である。アラントインは、植物の葉、根、穀物胚芽から抽出され、天然由来成分であり極めて安全性が高い。さらに一例によれば、湿潤剤は、トレハロースを含んでもよい。トレハロースは、トウモロコシ澱粉から抽出され、天然由来成分であり極めて安全性が高い。
【0057】
本発明の歯磨き剤は、セルロースガムおよびシリカを含む粘結剤を備える。セルロースガムおよびシリカは、パルプなど天然由来の材料から抽出され、安全性が高い粘着剤を使用することができる。
【0058】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、プロパンジオールおよびPEG40~80水添ヒマシ油を含む可溶化剤を含んでもよい。サトウキビ、ヒマシ油など天然由来の材料から抽出され、安全性が高い可溶化剤を使用することができる。
【0059】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、カキタンニンを含んでもよい。カキタンニンは、優れた消臭、抗菌効果を有する。カキタンニンは、柿から抽出され、天然由来成分であり極めて安全性が高い。これにより、安全性が高い消臭抗菌剤を含む歯磨き剤を提供することができる。
【0060】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、香味剤としてハッカ油を含んでもよい。ハッカ油は、天然のハッカから抽出され、天然由来成分であり極めて安全性が高い。これにより、安全性が高い香味剤を含む歯磨き剤を提供することができる。
【0061】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、香味剤としてオレンジ油を含んでもよい。オレンジ油は、天然のオレンジから抽出され、天然由来成分であり極めて安全性が高い。これにより、安全性が高い香味剤を含む歯磨き剤を提供することができる。特にハッカが苦手な子供用歯磨き剤として有用である。
【0062】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、pH調整剤として炭酸水素ナトリウムを含んでもよい。炭酸水素ナトリウムは、食品に用いられる重曹を持ちいることができる。これにより、安全性が高いpH調整剤を含む歯磨き剤を提供することができる。歯磨き剤が弱アルカリ性となることで、汚れ(特に、タンパク質)の分解が促進される。また、着色を浮かして除去する効果が高くなる。中性の歯磨き剤と比較して洗浄効果は1.5倍となる。これにより、安全性が高く、かつ、口腔内の洗浄効果が高い歯磨き剤を提供することができる。
【0063】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、防腐剤としてフェノキシエタノールを含んでもよい。フェノキシエタノールは、玉露、その他の茶葉等から抽出することができる。天然由来成分であり、極めて安全性が高い。これにより、安全性が高い防腐剤を含む歯磨き剤を提供することができる。
【0064】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、合成界面活性剤、合成甘味料、プロピレングリコールおよびパラベンを含有しないこととすることができる。これにより、長期使用による慢性毒性を回避し、極めて安全性が高い歯磨き剤を提供することができる。
【0065】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、研磨材を含有しないこととすることができる。研磨せず、汚れやステインを吸着により除去しつつ、再石灰化を進め、歯を白くする歯磨き剤とすることができる。本発明の研磨材を含まない歯磨き剤は、歯の表面を滑らかにする優れた効果を有する。
【0066】
発明者等は、本発明の研磨材を含まない歯磨き剤の研磨試験を行った。研磨試験は、次のとおり進めた。まず、硬質樹脂であるビューティフィル(登録商標)シリーズのフロープラスXを、耐水研磨紙を用いて研磨(第一次研磨)し、表面粗さを、非接触三次元測定装置を用いて測定した。次に、研磨後の硬質樹脂を各種材、ジェル状歯磨き剤(研磨剤無配合)A、トリートメントペースト剤(研磨剤無配合)B、ペースト状歯磨き剤(研磨剤配合)C、本発明の研磨剤を含まない歯磨き剤Dおよび歯磨材なしEをそれぞれ0.1グラム塗布し、ハンディーモーターを用いて、回転数1920rmで1分間、研磨(第二次研磨)した。第二次研磨後、再度、表面粗さを、非接触三次元測定装置を用いて測定した。
【0067】
図9は、本発明の研磨材を含まない歯磨き剤を含む各種材の研磨試験結果を示す図である。各種材ジェル状歯磨き剤(研磨剤無配合)A、トリートメントペースト剤(研磨剤無配合)B、ペースト状歯磨き剤(研磨剤配合)C、本発明の研磨剤を含まない歯磨き剤Dおよび歯磨材なしEの第一次研磨および第二次研磨の結果を、それぞれA~Eで示している。
【0068】
図9に示すとおり、ジェル状歯磨き剤(研磨剤無配合)A、トリートメントペースト剤(研磨剤無配合)B、ペースト状歯磨き剤(研磨剤配合)Cは、第二次研磨により、表面粗さが大幅に上昇している。一方で、本発明の研磨剤を含まない歯磨き剤Dは、第二次研磨後の表面粗さがほとんど上昇していない。
【0069】
これにより、本発明の研磨剤を含まない歯磨き剤の例によれば、研磨せず、汚れやステインを吸着により除去しつつ、再石灰化を進め、歯を白くすることができ、かつ、歯の表面を滑らかにする優れた効果が期待できることがわかる。
【0070】
一例によれば、本発明の歯磨き剤は、歯髄由来幹細胞を含んでもよい。また、歯髄由来幹細胞は、PDGF(血小板由来成長因子)、BMP(骨形成タンパク質)、FGF(線維芽細胞成長因子)、IGF(インスリン様成長因子)、VEGF(血管内皮増殖因子)またはTGF-β(トランスフォーミング増殖因子)のいずれか一つ以上またはすべてを含んでもよい。
【0071】
本発明の歯髄由来幹細胞を含む歯磨き剤によれば、歯磨きをするたびに神経系の疾患や痛みを緩和する効果が期待できる歯磨き剤を提供することができる。
【0072】
以上で説明された実施の形態によれば、長期摂取による慢性毒性のおそれが極端に低く、天然由来成分で人体にほぼ無害であり、かつ、研磨材を含まず歯を削らずに再石灰化とともに歯肉再生をしながら歯を白くすることができる歯磨き剤を提供することができる。
【0073】
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面が説明されたが、様々な改変、修正および改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正および改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本開示の範囲内にあることが意図される。
【0074】
理解するべきことだが、ここで述べられた方法および装置の実施形態は、上記説明に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造および配列の詳細への適用に限られない。方法および装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。
【0075】
特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。
【0076】
本開示で使用される表現および用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」およびこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目およびその均等物並びに付加項目の包括を意味する。
【0077】
「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、およびすべてのものを示すように解釈され得る。
【0078】
前後左右、頂底上下、横縦、表裏への言及は、いずれも、記載の便宜を意図する。当該言及は、本開示の構成要素がいずれか一つの位置的又は空間的配向に限られるものではない。したがって、上記説明および図面は、例示にすぎない。



図1
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図9