IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社村田製作所の特許一覧

<>
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図1
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図2
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図3
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図4
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図5
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図6
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図7
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図8
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図9
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図10
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図11
  • 特開-積層セラミックコンデンサ 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008171
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】積層セラミックコンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/30 20060101AFI20240112BHJP
【FI】
H01G4/30 201C
H01G4/30 201K
H01G4/30 512
H01G4/30 513
H01G4/30 201D
H01G4/30 516
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109804
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(72)【発明者】
【氏名】堤 啓恭
(72)【発明者】
【氏名】福井 章二
(72)【発明者】
【氏名】河崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】池田 充
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB03
5E001AC03
5E001AC07
5E001AC08
5E001AC10
5E001AE01
5E001AE02
5E001AE03
5E001AE04
5E001AH01
5E001AH05
5E001AH06
5E001AH07
5E001AH09
5E001AJ01
5E001AJ02
5E001AJ03
5E082AB03
5E082BC19
5E082BC39
5E082EE04
5E082EE23
5E082EE26
5E082EE35
5E082FG04
5E082FG26
5E082FG54
5E082GG10
5E082GG26
5E082GG28
5E082JJ03
5E082LL02
5E082LL03
5E082MM24
5E082PP09
(57)【要約】
【課題】小型化かつ大容量化を図りつつ、高い耐湿信頼性を備えた積層セラミックコンデンサを提供すること。
【解決手段】複数の誘電体層と複数の内部電極層を積層した内層部の両側にサイドマージン部を配置する積層体を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層を、容量を形成する対向電極部と、該対向電極部から外部電極に向けて延在する引出電極部と、により形成し、積層された対向電極部の片側末端が並ぶ幅方向の範囲の最大長さをR1とし、積層された引出電極部の片側末端が並ぶ幅方向の範囲の最大長さをR2としたとき、関係式R2>R1で表すことができる、積層セラミックコンデンサ。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の誘電体層と複数の内部電極層を積層した内層部を含み、積層方向において相互に対向する1対の主面と、前記積層方向に直交する長さ方向において相互に対向する1対の端面と、前記積層方向および前記長さ方向に直交する幅方向において前記内層部の両側に配置されたサイドマージン部により相互に対向する1対の側面と、を形成する積層体と、該積層体の端面に対向する1対の外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の内部電極層は、前記長さ方向において、前記積層方向に隣り合う内部電極層同士で対向する対向電極部と、該対向電極部から前記端面に向けて延在する引出電極部と、からなり、
前記幅方向および前記積層方向に平行な断面で前記積層体を見たとき、
前記対向電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR1とし、
前記引出電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR2とすると、
関係式R2>R1で表すことができる、積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記長さ方向および前記積層方向に平行な断面で前記積層体を見たとき、
前記対向電極部の長さ方向の片側末端が並ぶ範囲の長さ方向の最大長さをR3とすると、
関係式R3>R1で表すことができる、請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記引出電極部は前記対向電極部より積層方向における厚みが薄い、請求項1又は2記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記誘電体層の積層方向の厚みが0.2μm以上0.6μm以下である、請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
前記誘電体層の積層方向の厚みが1.0μm以上15μm以下である、請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項6】
前記誘電体層と前記内部電極層の界面にSnが存在する、請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックコンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料からなる複数の誘電体層と複数の内部電極層とが積層された積層体と、積層体の端面に配置された外部電極とを備えた積層セラミックコンデンサが知られている。また、積層体の側面において、複数の誘電体層と複数の内部電極層とを挟み込むように配置され、セラミック材料からなる誘電体で構成されたサイドマージン部を備えた積層セラミックコンデンサが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
このような積層セラミックコンデンサにおいて、小型化および大容量化のために、サイドマージン部の厚みを薄くし、内部電極層の面積を大きくすることが考えられる。しかし、サイドマージン部の厚みを薄くすると、積層体の側面と外部電極との間から浸入して積層体の端面の内部電極層に至る水分に対する耐性、すなわち耐湿性が低下し、その結果、信頼性が低下することが考えられる。
【0004】
また、積層セラミックコンデンサの製造は、内部電極層のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートを複数積層し、これを切断して得られる積層チップの側面に、未焼成のサイドマージン部を設けることによって、未焼成の積層体を作製するが、内部電極層のパターンを印刷する際、パターンの縁部分は印刷が厚くなり易く、この部分が積層され積み上がると積層セラミックコンデンサの構造欠陥を引き起こす可能性がある。
【0005】
このため、小型化および高容量化を図りつつ、高い耐湿信頼性を備えた積層セラミックコンデンサの開発が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-197790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、小型化かつ大容量化を図りつつ、高い耐湿信頼性を備えた積層セラミックコンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明者らが検討を行った結果、複数の誘電体層と複数の内部電極層を積層した内層部の両側にサイドマージン部を配置する積層体を備えた積層セラミックコンデンサにおいて、内部電極層を、容量を形成する対向電極部と、該対向電極部から外部電極に向けて延在する引出電極部と、により形成し、対抗電極部と引出電極部を所定の範囲で幅方向にランダムにずらしながら積層方向に積み重ねることにより、小型かつ大容量でありながら高い耐湿信頼性を維持し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明は、複数の誘電体層と複数の内部電極層を積層した内層部を含み、積層方向において相互に対向する1対の主面と、前記積層方向に直交する長さ方向において相互に対向する1対の端面と、前記積層方向および前記長さ方向に直交する幅方向において前記内層部の両側に配置されたサイドマージン部により相互に対向する1対の側面と、を形成する積層体と、該積層体の端面に対向する1対の外部電極と、を備えた積層セラミックコンデンサであって、
前記複数の内部電極層は、前記長さ方向において、前記積層方向に隣り合う内部電極層同士で対向する対向電極部と、該対向電極部から前記端面に向けて延在する引出電極部と、からなり、
前記幅方向および前記積層方向に平行な断面で前記積層体を見たとき、
前記対向電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR1とし、
前記引出電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR2とすると、
関係式R2>R1で表すことができる、積層セラミックコンデンサである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小型かつ大容量でありながら、高い耐湿信頼性を備えた積層セラミックコンデンサを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】積層セラミックコンデンサを示す外観図である。
図2図1に示す積層セラミックコンデンサのI-I線断面図(LT断面)である。
図3図2に示す積層セラミックコンデンサのII-II線断面図(LW断面)である。
図4図2に示す積層セラミックコンデンサのIII-III線断面図(LW断面)である。
図5】内部電極層パターンを塗布したグリーンシートを示す模式図である。
図6】積層体の構造を示す模式図である。
図7】積層セラミックコンデンサの平面一部透視図である。
図8図7に示す積層セラミックコンデンサのIV-IV線断面図(WT断面)であり、実施形態を示す。
図9図7に示す積層セラミックコンデンサのV-V線断面図(WT断面)であり、実施形態を示す。
図10】積層セラミックコンデンサの平面一部透視図である。
図11図10に示す積層セラミックコンデンサのVI-VI線断面図(LT断面)であり、実施形態を示す。
図12図10に示す積層セラミックコンデンサのVII-VII線断面図(LT断面)であり、実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の積層セラミックコンデンサの実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。
【0013】
[積層セラミックコンデンサ]
図1は、本発明の積層セラミックコンデンサの一例を示す外観図である。図2は、図1に示す積層セラミックコンデンサの構造を模式的に示す断面図である。図3および図4は、図1に示す積層セラミックコンデンサの内部電極層の形状を示す断面図である。
【0014】
本明細書においては、積層セラミックコンデンサおよび積層体の積層方向、幅方向、長さ方向を、図1に示す外観図および図2に示す断面図に示すように、それぞれ矢印T、W、Lで定める方向とする。実施形態においては、積層方向Tと幅方向Wと長さ方向Lとは互いに直交しXYZ直交座標系が示されているが、必ずしも直交する関係になるとは限らず、互いに交差する関係であってもよい。積層方向Tは、複数の誘電体層20と複数対の第1の内部電極層31および第2の内部電極層32とが積み上げられる方向である。図2に示す断面は、長さ方向Lおよび積層方向Wに平行な断面を示しLW断面とも称する。
【0015】
積層セラミックコンデンサ1は、積層体10と外部電極40とを備える。外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42からなる。
【0016】
積層体10は、略直方体形状であり、積層方向Tにおいて相対する第1の主面A1および第2の主面A2と、幅方向Wにおいて相対する第1の側面B1および第2の側面B2と、長さ方向Lにおいて相対する第1の端面C1および第2の端面C2を有する。
【0017】
積層体10の角部および稜線部には、丸みがつけられていると好ましい。角部は、積層体10の3面が交る部分であり、稜線部は、積層体10の2面が交る部分である。
【0018】
図2に示すように、積層体10は、積層方向Tに積層された複数の誘電体層20と複数の内部電極層30とを有する。また、積層体10は、積層方向Tにおいて、内層部100と、内層部100を挟み込むように配置された第1の外層部101および第2の外層部102とを有する。
【0019】
内層部100は、複数の誘電体層20の一部と複数の内部電極層30とを含む。内層部100では、複数の内部電極層30が誘電体層20を介して対向して配置されている。内層部100は、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0020】
第1の外層部101は、積層体10の第1の主面A1側に配置されており、第2の外層部102は、積層体10の第2の主面A2側に配置されている。より具体的には、第1の外層部101は、複数の内部電極層30のうち第1の主面A1に最も近い内部電極層30と第1の主面A1との間に配置されており、第2の外層部102は、複数の内部電極層30のうち第2の主面A2に最も近い内部電極層30と第2のA2との間に配置されている。第1の外層部101および第2の外層部102は、内部電極層30を含まず、複数の誘電体層20のうち内層部100のための一部以外の部分をそれぞれ含む。第1の外層部101および第2の外層部102は、内層部100の保護層として機能する部分である。
【0021】
また、図6に示すように、積層体10は、幅方向Wにおいて、内層部100、第1の外層部101および第2の外層部102、すなわち複数の誘電体層20および複数の内部電極層30、を挟み込むように配置された第1の側面側外層部W11(以下では、第1のサイドマージン部ともいう。)および第2の側面側外層部W12(以下では、第2のサイドマージン部ともいう。)を有する。なお、第1のサイドマージン部W11と第2のサイドマージン部W12とに挟まれた部分であって、複数の誘電体層20および複数の内部電極層30を含む部分を、電極対向部W10ともいう。
【0022】
第1のサイドマージン部W11は、積層体10の第1の側面B1側に配置されており、第2のサイドマージン部W12は、積層体10の第2の側面B2側に配置されている。より具体的には、第1のサイドマージン部W11は、内部電極層30の第1の側面B1側の端と第1の側面B1との間に位置し、第2のサイドマージン部W12は、内部電極層30の第2の側面B2側の端と第2の側面B2との間に位置する。
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、誘電体で構成される。第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、内部電極層30の保護層として機能する部分である。なお、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12は、サイドギャップまたはWギャップともいう。
【0023】
誘電体層20の材料としては、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、またはCaZrO等を主成分として含む誘電体セラミックを用いることができる。また、誘電体層20の材料としては、Mg、Si、Mn、希土類元素、Al、Ni、V等のうち少なくとも1種を副成分として添加されてもよい。
これにより、誘電体層20は、Ba、Tiを主成分として含み、Mg、Si、Mn、希土類元素、Al、Ni、V等のうち少なくとも1種を副成分として含む。希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうち少なくとも1種が挙げられ、これらの中でもDyが好ましい。また、誘電体層20は、複数の誘電体グレインで構成される。
【0024】
誘電体層20の厚みは、特に限定されないが、0.2μm以上0.6μm以下であると好ましく、特に、0.3μm以上0.45μmが好ましい。誘電体層20の枚数は、特に限定されないが、例えば100枚以上2000枚以下であると好ましい。なお、この誘電体層20の枚数は、内層部の誘電体層の枚数と外層部の誘電体層の枚数との総数である。
【0025】
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体の材料としては、同様に、例えば、BaTiO、CaTiO、SrTiO、またはCaZrO等を主成分として含む誘電体セラミックを用いることができる。また、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体の材料としては、Mg、Si、Mn、希土類元素、Al、Ni、V等のうち少なくとも1種を副成分として添加されてもよい。
これにより、第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12を構成する誘電体は、Ba、Tiを主成分として含み、Mg、Si、Mn、希土類元素、Al、Ni、V等のうち少なくとも1種を副成分として含む。希土類元素としては、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、LuおよびYのうち少なくとも1種が挙げられ、これらの中でもDyが好ましい。また、誘電体層20は、複数の誘電体グレインで構成される。
【0026】
第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12の各々の厚みは、特に限定されないが、例えば13μm以上25μm以下であると好ましく、13μm以上18μm以下であるとより好ましい。第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12の各々における誘電体は、特に限定されないが、1層構造であってもよいし、2層以上の複数層構造であってもよい。
【0027】
複数の内部電極層30は、複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32を含む。複数の第1の内部電極層31および複数の第2の内部電極層32は、積層体10の積層方向Tに交互に配置されている。
【0028】
第1の内部電極層31は、対向電極部311と引出電極部312とを含み、第2の内部電極層32は、対向電極部321と引出電極部322とを含む。
【0029】
対向電極部311と対向電極部321とは、積層体10の積層方向Tにおいて誘電体層20を介して互いに対向している。対向電極部311および対向電極部321の形状は、特に限定されず、例えば略矩形状であればよい。対向電極部311と対向電極部321とは、静電容量を発生させ実質的にコンデンサとして機能する部分である。
【0030】
引出電極部312は、対向電極部311から積層体10の第1の端面C1に向けて延在し、第1の端面C1において露出している。引出電極部322は、対向電極部321から積層体10の第2の端面C2に向けて延在し、第2の端面C2において露出している。引出電極部312および引出電極部322の詳細は後述する。
【0031】
これにより、第1の内部電極層31は第1の外部電極41に接続され、第1の内部電極層31と、積層体10の第2の端面C2、すなわち第2の外部電極42、との間にはギャップが存在する。また、第2の内部電極層32は第2の外部電極42に接続され、第2の内部電極層32と、積層体10の第1の端面C1、すなわち第1の外部電極41、との間にはギャップが存在する。
【0032】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、金属Niを主成分として含む。また、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、例えば、Cu、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の、それらの金属の少なくとも一種を含む合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。更に、第1の内部電極層31および第2の内部電極層32は、誘電体層20に含まれるセラミックと同一組成系の誘電体の粒子を主成分以外の成分として含んでいてもよい。なお、本明細書において、主成分の金属とは、最も重量%が高い金属成分であると定める。
【0033】
第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の厚みは、特に限定されないが、例えば0.30μm以上0.40μm以下であると好ましく、0.30μm以上0.35μm以下であるとより好ましい。第1の内部電極層31および第2の内部電極層32の枚数は、特に限定されないが、例えば10枚以上1000枚以下であると好ましい。
【0034】
図2に示すように、積層体10は、長さ方向Lにおいて、内部電極層30の第1の内部電極層31と第2の内部電極層32とが対向する電極対向部L10と、第1のエンドマージン部L11と、第2のエンドマージン部L12とを有する。第1のエンドマージン部L11は、電極対向部L10と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドマージン部L12は、電極対向部L10と第2の端面LS2との間に位置する。より具体的には、第1のエンドマージン部L11は、第2の内部電極層32の第1の端面LS1側の端と第1の端面LS1との間に位置し、第2のエンドマージン部L12は、第1の内部電極層31の第2の端面LS2側の端と第2の端面LS2との間に位置する。第1のエンドマージン部L11は、第2の内部電極層32を含まず、第1の内部電極層31および誘電体層20を含み、第2のエンドマージン部L12は、第1の内部電極層31を含まず、第2の内部電極層32および誘電体層20を含む。第1のエンドマージン部L11は、第1の内部電極層31の第1の端面LS1への引出電極部として機能する部分であり、第2のエンドマージン部L12は、第2の内部電極層32の第2の端面LS2への引出電極部として機能する部分である。第1のエンドマージン部L11および第2のエンドマージン部L12は、エンドギャップまたはLギャップともいう。
【0035】
なお、電極対向部L10には、上述した第1の内部電極層31の対向電極部311および第2の内部電極層32の対向電極部321が位置する。また、第1のエンドマージン部L11には、上述した第1の内部電極層31の引出電極部312が位置し、第2のエンドマージン部L12には、上述した第2の内部電極層32の引出電極部322が位置する。
【0036】
上述した積層体10の寸法は、特に限定されないが、例えば長さ方向Lの長さが0.6mm以上1.6mm以下であり、幅方向Wの幅が0.3mm以上0.8mm以下であり、積層方向Tの厚みが0.3mm以上0.8mm以下であると好ましい。
また、後述する外部電極40を含む積層セラミックコンデンサ1の寸法は、特に限定されないが、例えば誘電体層の積層方向Tの厚みが0.2μm以上0.6μm以下の場合、長さ方向Lの長さが0.6mm以上1.0mm以下であり、幅方向Wの幅が0.3mm以上0.5mm以下であり、積層方向Tの厚みが0.3mm以上0.5mm以下であると好ましい。また、例えば誘電体層の積層方向Tの厚みが1.0μm以上15μm以下の場合、長さ方向Lの長さが1.8mm以上6.0mm以下であり、幅方向Wの幅が0.8mm以上5.5mm以下であり、積層方向Tの厚みが0.8mm以上5.5mm以下であると好ましい。なお、誘電体層の積層方向Tの厚みと積層セラミックコンデンサ1の寸法の関係はこれらの関係に限られず、組み合わせてもよい。例えば誘電体層の積層方向Tの厚みが0.2μm以上0.6μm以下の場合であっても、積層セラミックコンデンサは、長さ方向Lの長さが1.8mm以上6.0mm以下であり、幅方向Wの幅が0.8mm以上5.5mm以下であり、積層方向Tの厚みが0.8mm以上5.5mm以下であってもよい。また、これらの寸法はすべて公差が加減されるものとする。
【0037】
なお、誘電体層20および内部電極層30の厚みの測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の幅方向中央近傍のLT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、長さ方向の複数個所の測定値の平均値であってもよいし、更に積層方向の複数個所の測定値の平均値であってもよい。
【0038】
同様に、積層体10の厚みまたは積層セラミックコンデンサ1の厚みの測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の幅方向中央近傍のLT断面、または、研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの長さ方向中央近傍のWT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、長さ方向または幅方向の複数個所の測定値の平均値であってもよい。
同様に、積層体10の長さまたは積層セラミックコンデンサ1の長さの測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの幅方向中央近傍のLT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、積層方向の複数個所の測定値の平均値であってもよい。
同様に、積層体10の幅または積層セラミックコンデンサ1の幅の測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体または積層セラミックコンデンサの長さ方向中央近傍のWT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、各値は、積層方向の複数個所の測定値の平均値であってもよい。
【0039】
外部電極40は、第1の外部電極41と第2の外部電極42とを含む。
【0040】
第1の外部電極41は、積層体10の第1の端面C1に配置されており、第1の内部電極層31に接続されている。第1の外部電極41は、第1の端面C1から、第1の主面A1の一部および第2の主面A2の一部に延びていてもよい。また、第1の外部電極41は、第1の端面C1から、第1の側面B1の一部および第2の側面B2の一部に延びていてもよい。
【0041】
第2の外部電極42は、積層体10の第2の端面C2に配置されており、第2の内部電極層32に接続されている。第2の外部電極42は、第2の端面C2から、第1の主面A1の一部および第2の主面A2の一部に延びていてもよい。また、第2の外部電極42は、第2の端面C2から、第1の側面B1の一部および第2の側面B2の一部に延びていてもよい。
【0042】
第1の外部電極41は、第1の下地電極層415と第1のめっき層416とを有し、第2の外部電極42は、第2の下地電極層425と第2のめっき層426とを有する。なお、第1の外部電極41は第1のめっき層416のみから構成されていてもよいし、第2の外部電極42は第2のめっき層426のみから構成されていてもよい。
【0043】
第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、金属とガラスとを含む焼成層であってもよい。ガラスとしては、B、Si、Ba、Mg、Al、またはLi等から選ばれる少なくとも1つを含むガラス成分が挙げられる。具体例として、ホウケイ酸ガラスを用いることができる。金属としては、Cuを主成分として含む。また、金属としては、例えばNi、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の合金、から選ばれる少なくとも1つを主成分として含んでもよいし、主成分以外の成分として含んでもよい。
【0044】
焼成層は、金属およびガラスを含む導電性ペーストをディップ法によって積層体に塗布して焼成した層である。なお、内部電極層の焼成後に焼成されてもよく、内部電極層と同時に焼成されてもよい。また、焼成層は、複数層であってもよい。
【0045】
或いは、第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む樹脂層であってもよい。樹脂層は、上述した焼成層上に形成されてもよいし、焼成層を形成せずに積層体に直接形成されてもよい。
【0046】
樹脂層は、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって積層体に塗布して焼成した層である。なお、内部電極層の焼成後に焼成されてもよく、内部電極層と同時に焼成されてもよい。また、樹脂層は、複数層であってもよい。
【0047】
焼成層または樹脂層としての第1の下地電極層415および第2の下地電極層425の各々の一層あたりの厚みとしては、特に限定されず、1μm以上10μm以下であってもよい。
【0048】
或いは、第1の下地電極層415および第2の下地電極層425は、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により形成され、金属粒子が堆積された1μm以下の薄膜層であってもよい。
【0049】
第1のめっき層416は、第1の下地電極層415の少なくとも一部を覆い、第2のめっき層426は、第2の下地電極層425の少なくとも一部を覆う。第1のめっき層416および第2のめっき層426としては、例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、またはAu等の金属、またはAg-Pd合金等の合金から選ばれる少なくとも1つを含む。
【0050】
第1のめっき層416および第2のめっき層426の各々は複数層により形成されていてもよい。好ましくは、NiめっきおよびSnめっきの2層構造である。Niめっき層は、下地電極層がセラミック電子部品を実装する際のはんだによって侵食されることを防止することができ、Snめっき層は、セラミック電子部品を実装する際のはんだの濡れ性を向上させ、容易に実装することができる。
【0051】
第1のめっき層416および第2のめっき層426の各々の一層あたりの厚みとしては、特に限定されず、1μm以上10μm以下であってもよい。
【0052】
次に、内部電極層30、すなわち第1の内部電極層31および第2の内部電極層32、について更に説明する。
【0053】
図3に示すように、第1の内部電極層31において、引出電極部312の幅方向Wの幅は、対向電極部311の幅方向Wの幅よりも小さい。例えば、引出電極部312の長さ方向中央近傍における幅方向Wの幅W1は、積層体10の長さ方向中央近傍における対向電極部311の幅方向Wの幅W0よりも小さい。
また、図4に示すように、第2の内部電極層32において、引出電極部322の幅方向Wの幅は、対向電極部321の幅方向Wの幅よりも小さい。例えば、引出電極部322の長さ方向中央近傍における幅方向Wの幅W1は、積層体10の長さ方向中央近傍における対向電極部321の幅方向Wの幅W0よりも小さい。
【0054】
内部電極層30の幅W0、W1の測定方法としては、例えば研磨により露出させた積層体の積層方向中央近傍の内部電極層のLW断面を観察する方法が挙げられる。
なお、例えば、積層セラミックコンデンサ1が0603サイズ(L=0.6mm、W=0.3mm、T=0.3mm)の場合、引出電極部312および322の長さ方向Lの長さは25μmであり、積層セラミックコンデンサ1が1005サイズ(L=1.0mm、W=0.5mm、T=0.5mm)の場合、引出電極部312および322の長さ方向Lの長さは25μmであり、積層セラミックコンデンサ1が1608サイズ(L=1.6mm、W=0.8mm、T=0.8mm)の場合、引出電極部312および322の長さ方向Lの長さは40μm以上50μm以下である。なお、この積層セラミックコンデンサ1のサイズおよび寸法は、積層体10および外部電極40を含む寸法である。
【0055】
引出電極部312の形状は、特に限定されないが、例えば、図3に示すように、引出電極部312の形状は、対向電極部311の第1の端面C1側の端の両角よりも幅狭箇所から第1の端面C1に向けて、等幅で直線的である矩形形状であってもよい。同様に、図4に示すように、引出電極部322の形状は、対向電極部321の第2の端面C2側の端の両角よりも幅狭箇所から第2の端面C2に向けて、等幅で直線的である矩形形状であってもよい。
【0056】
また、引出電極部312の形状は、対向電極部311の第1の端面C1側の端の両角から第1の端面C1に向けて、直線的に幅狭となる台形形状とし、同様に、引出電極部322の形状は、対向電極部321の第2の端面C2側の端の両角から第2の端面C2に向けて、直線的に幅狭となる台形形状とすることもできる(図示省略)。
【0057】
さらに、引出電極部312の形状は、対向電極部311の第1の端面C1側の端の両角から第1の端面C1に向けて、曲線的に幅狭となる曲線形状であってもよい。同様に、引出電極部322の形状は、対向電極部321の第2の端面C2側の端の両角から第2の端面C2に向けて、曲線的に幅狭となる曲線形状とすることもできる(図示省略)。
【0058】
次に、上述した積層セラミックコンデンサ1の製造方法について説明する。まず、誘電体層20用の誘電体シートおよび内部電極層30用の導電性ペーストを準備する。誘電体シートおよび導電性ペーストには、バインダおよび溶剤が含まれる。バインダおよび溶剤としては公知の材料を用いることができる。
【0059】
次に、誘電体シート上に導電性ペーストを、例えば所定のパターンで印刷することにより、誘電体シート上に内部電極層パターンを形成する。内部電極層パターンの形成方法としては、スクリーン印刷またはグラビア印刷等を用いることができる。図5は、内部電極層を印刷する2つのパターンを例示する。パターンP1と印刷した誘電体シートとパターンP2を印刷した誘電体シートを示すが、パターンP1には、積層した後、カットする位置を示す点線を参考として表示している。
【0060】
次に、内部電極層パターンが印刷されていない第2の外層部102用の誘電体シートを所定枚数積層する。その上に、内部電極層パターンが印刷された内層部100用の誘電体シートを順次積層する。その上に、内部電極層パターンが印刷されていない第1の外層部101用の誘電体シートを所定枚数積層する。これにより、積層シートが作製される。
【0061】
次に、静水圧プレス等の手段により、積層シートを積層方向にプレスし、積層ブロックを作製する。次に、積層ブロックを所定のサイズにカットし、積層チップを切り出す。
【0062】
次に、積層チップの側面に第1のサイドマージン部W11および第2のサイドマージン部W12用の誘電体シートを貼り付ける。このとき、バレル研磨等により積層チップの角部および稜線部に丸みをつける。
【0063】
次に、積層チップを焼成し、積層体10を作製する。焼成温度は、誘電体や内部電極層の材料にもよるが、900℃以上1400℃以下であることが好ましい。
【0064】
次に、ディップ法を用いて、積層体10の第1の端面C1を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第1の端面C1に第1の下地電極層415用の導電性ペーストを塗布する。同様に、ディップ法を用いて、積層体10の第2の端面C2を下地電極層用の電極材料である導電性ペーストに浸漬することによって、第2の端面C2に第2の下地電極層425用の導電性ペーストを塗布する。その後、これらの導電性ペーストを焼成することにより、焼成層である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425が形成される。焼成温度は、600℃以上900℃以下であることが好ましい。
【0065】
なお、上述したように、導電性粒子と熱硬化性樹脂とを含む導電性ペーストを塗布法によって塗布して焼成することによって、樹脂層である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425を形成してもよいし、スパッタ法または蒸着法等の薄膜形成法により、薄膜である第1の下地電極層415および第2の下地電極層425を形成してもよい。
【0066】
また、上述では、積層チップを焼成した後に下地電極層を形成して焼成した、すなわち積層体と外部電極とを別々に焼成した。しかし、積層チップを焼成する前に下地電極層を形成して焼成してもよい、すなわち、積層体と外部電極とを同時に焼成してもよい。
【0067】
その後、第1の下地電極層415の表面に第1のめっき層416を形成して第1の外部電極41を形成し、第2の下地電極層425の表面に第2のめっき層426を形成して第2の外部電極42を形成する。以上の工程により、上述した積層セラミックコンデンサ1が得られる。
【0068】
以上説明したように、本実施形態の積層セラミックコンデンサ1によれば、図3に示すように、第1の内部電極層31において、引出電極部312の幅W1が対向電極部311の幅W0よりも小さいので、積層体10の第1の端面C1において、積層体10の第1の側面B1から第1の内部電極層31までの距離が長い。これにより、第1の外部電極41と積層体10の第1の側面B1および第2の側面B2との間から浸入して積層体10の第1の端面C1の第1の内部電極層31に至る水分の浸入経路を長くすることができる。また、図4に示すように、第2の内部電極層32において、引出電極部322の幅W1が対向電極部321の幅W0よりも小さいので、積層体10の第2の端面C2において、積層体10の第1の側面B1および第2の側面B2から第2の内部電極層32までの距離が長い。これにより、第2の外部電極42と積層体10の第1の側面B1および第2の側面B2との間から浸入して積層体10の第2の端面C2の第2の内部電極層32に至る水分の浸入経路を長くすることができる。そのため、積層セラミックコンデンサ1の耐湿性を向上することができ、積層セラミックコンデンサ1の信頼性を向上することができる。
【0069】
誘電体シート上に導電性ペーストを、例えば所定のパターンで印刷することにより、誘電体シート上に内部電極層パターンを形成する。内部電極層パターンの形成方法としては、スクリーン印刷またはグラビア印刷等を用いることができる。
【0070】
積層セラミックコンデンサの製造は、内部電極層のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートを複数積層して切断することにより得られる積層チップの側面に、未焼成のサイドマージン部を設けることによって、未焼成の積層体を作製するが、内部電極層のパターンを印刷する際、パターンの縁部分は印刷が厚くなり易く、この部分が積層され積み上がると積層セラミックコンデンサの構造欠陥を引き起こす可能性がある。
【0071】
このため、内部電極層のパターンの縁部分は、積層方向Tにおいて多数が重なり合わないように積層されるグリーンシートを幅方向Wにずらして配置することが適切である。
【0072】
図7に示すV-V線で切断した積層セラミックコンデンサの断面(WT断面)を見ると、図9のように、第1の引出電極部312の幅方向Wの片側末端は、積層方向Tにおいて多数が重なり合うことを避けるため、幅方向Wに最大R2の長さの範囲でランダムにずらして配置している。このように幅方向Wに最大R2の長さの範囲で位置をランダムにずらすことでパターンの縁部分が重なり合うことにより生じる構造欠陥を防止することができる。なお、図9は、第1の引出電極部312の幅方向Wの片側末端の配列を示すものであるが、第2の引出電極部322の幅方向Wの片側末端の配列においても同様である。また、図9は、第1の引出電極部312の幅方向Wの片側末端の配列を示すための一例であり、これに限定されるものではない。
【0073】
一方、積層セラミックコンデンサの製造工程においては、内部電極層のパターンが印刷されたセラミックグリーンシートを複数積層して切断することにより得られる積層チップの側面に、未焼成のサイドマージン部を設けるが、積層体10の内部電極層30は幅方向Wの側面の末端は、必ずしも垂直に揃わない。これは、製造工程において、積層ブロックをカットし、積層チップを切り出す際に、カットする位置やカットする角度に誤差が生じることに起因する。また、セラミックグリーンシートを積層する際、積層する位置に誤差が生じる場合もある。
【0074】
このため、図7に示すIV-IV線で切断した積層セラミックコンデンサの断面(WT断面)を見ると、図8のように、第1の対向電極部と第2の対向電極部の幅方向Wの片側末端は、積層方向Tに沿って垂直に並んでおらず、幅方向に最大R1の長さの範囲でランダムにずれている。
【0075】
内部電極層のパターンの縁部分が、積層方向Tにおいて多数重なり合わないように、積層されるグリーンシートを幅方向Wにランダムにずらして配置する範囲は最大R2の長さとするが、この範囲は、製造工程において生じ得る幅方向Wにおける最大長さR1より大きくすることにより、内部電極層のパターンの縁部分が、積層方向Tにおいて多数が重なり合うことを確実に防止することができる。
【0076】
したがって、対向電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR1とし、前記引出電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR2として、R1とR2との関係が関係式R2>R1である積層セラミックコンデンサにおいては、信頼性を確実に向上させることができる。
【0077】
同様に、図10に示すVI-VI線で切断した積層セラミックコンデンサの断面(LT断面)を見ると、図11に示すように、第1の内部電極層31あるいは第2の内部電極層32の長さ方向Lの片側末端は、積層方向Tに沿って垂直に並ぶことを避け、長さ方向Lに最大R3の長さの範囲でランダムにずらすことが重要である。なお、図11は、第1の内部電極層31あるいは第2の内部電極層32の長さ方向Lの片側末端の配列を示すための一例であり、これに限定されるものではない。
【0078】
そして、この最大長さR3は、製造工程において生じ得る幅方向Wにおける最大長さR1より大きくすることにより、製造工程おいて生じるばらつきに影響されず、内部電極層のパターンの縁部分が、積層方向Tにおいて多数が重なり合うことを確実に防止すること可能となる。
【0079】
したがって、対向電極部の幅方向の片側末端が並ぶ範囲の幅方向の最大長さをR1とし、対向電極部の長さ方向の片側末端が並ぶ範囲の長さ方向の最大長さをR3として、R1とR3との関係が関係式R3>R1である積層セラミックコンデンサにおいては、信頼性を確実に向上させることができる。
【0080】
また、図10に示すVII-VII線で切断した積層セラミックコンデンサの断面(LT断面)を見ると、図12に示すように、第1の対向電極部と第2の対向電極部の対向電極部の長さ方向Lの両末端が現れるが、左右いずれかの片側末端が並ぶ範囲の長さ方向の最大長さをR3とし、R1とR3との関係を関係式R3>R1としてもよい。
【0081】
内部電極層の末端が並ぶ状態は、例えば研磨により露出させた積層体の積層セラミックコンデンサのWT断面あるいはLT断面を走査型電子顕微鏡にて観察する方法が挙げられる。また、片側末端が並ぶ範囲の長さR1、R2、R3を走査型電子顕微鏡により計測することができる。
【0082】
上述の関係式を満たす積層セラミックコンデンサにおいても、引出電極部の幅方向の片側末端が積層方向に重なり合う場合が生じる。このため、前記引出電極部は前記対向電極部より積層方向における厚みが薄くすることにより、構造欠陥よる弊害を抑え、積層セラミックコンデンサの信頼性を高めることができる。
【0083】
内部電極層を形成する導電ペーストにSnを配合し誘電体層とともに焼成することで、誘電体層と内部電極層の界面にSnを偏析させることができる。このようなSnの偏析により、構造欠陥の発生をさらに確実に抑制することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の変更および変形が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1 積層セラミックコンデンサ
10 積層体
100 内層部
101 第1の外層部
102 第2の外層部
20 誘電体層
30 内部電極層
31 第1の内部電極層
311 第1の対向電極部
312 第1の引出電極部
32 第2の内部電極層
321 第2の対向電極部
322 第2の引出電極部
40 外部電極
41 第1の外部電極
42 第2の外部電極
L10 電極対向部
L11 第1のエンドマージン部
L12 第2のエンドマージン部
W10 電極対向部
W11 第1のサイドマージン部(第1の側面側外層部)
W12 第2のサイドマージン部(第2の側面側外層部)
A 主面
A1 第1の主面
A2 第2の主面
B 側面
B1 第1の側面
B2 第2の側面
C 端面
C1 第1の端面
C2 第2の端面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12