(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081728
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】流体を投与するための装置
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240611BHJP
A61M 5/24 20060101ALI20240611BHJP
A61M 5/30 20060101ALI20240611BHJP
A61M 39/24 20060101ALI20240611BHJP
A61D 7/00 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61M5/315 502
A61M5/24 530
A61M5/30
A61M39/24 100
A61D7/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024051510
(22)【出願日】2024-03-27
(62)【分割の表示】P 2020551568の分割
【原出願日】2019-03-26
(31)【優先権主張番号】102018107100.0
(32)【優先日】2018-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510000976
【氏名又は名称】インターベット インターナショナル ベー. フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】オルターマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】カメンジン,ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】マテス,マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ザウター,ロビン
(72)【発明者】
【氏名】シュミット,トマス
(72)【発明者】
【氏名】セーフ,ダニエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動物に液体薬物を投与できる装置を提供する。
【解決手段】本発明は、開放分注端(17)を有するシリンダ(16)と、シリンダ(16)内の前部最終位置と後部最終位置との間で移動することができるプランジャ(36)であって、開放分注端(17)とは反対側の後部シリンダ(16)端部を越えて第1の方向に沿って突出し、かつ受容ブロック(10)内に案内されるプランジャロッドに接続されるプランジャ(36)と、開放分注端(17)を閉じる逆止弁(18)と、プランジャロッドに接続され、受容ブロック(10)に配置される張力付与装置とを備える、流体を投与するための装置に関する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放分注端(17)を有するシリンダ(16、116)と、
前記シリンダ(16、116)内の前端位置と後端位置との間で変位可能なピストン(
36)であって、前記開放分注端(17)とは反対側の前記シリンダ(16、116)の
後端を越えて第1の方向に沿って突出し、かつ受容ブロック(10)内に案内されるプラ
ンジャロッド(35)に接続されるピストン(36)と、
前記開放分注端(17)を閉じる逆止弁(18)と、
前記ピストンロッド(35、135)に接続され、前記受容ブロック(10)に配置さ
れる張力装置(S)と、
を備える、流体を投与するための装置であって、
ここで、前記張力付与装置(S)が、張力付与動作では、前記ピストン(36)がその
前端位置にある場合、前記ピストン(36)がその後端位置になるまで前記第1の方向に
沿って前記ピストンロッド(35、135)を移動させて、それにより、投与対象流体に
より前記シリンダ(16、116)を充填し、前記開放分注端(17)に向かって前記ピ
ストンロッド(35、135)に予張力を付与することができ、
ここで、前記張力付与装置(S)が、分注動作では、前記ピストン(36)がその後端
位置にある場合、前記ピストンロッド(35、135)を解放することができるため、付
与された予張力により、前記ピストン(36)がその前端位置まで前記第1の方向と逆に
移動し、その過程で、前記シリンダ(16、116)内の流体が投与のために前記逆止弁
(18)を介して分注され、
ここで、前記シリンダ(16、116)が、前記逆止弁(18)とともに、前記受容ブ
ロック(10)に解放可能に接続される交換可能な前部組立体(13、14)の形態であ
る装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
前記前部組立体(13、14)と前記受容ブロック(10)との間の解放可能な接続が
、ねじ接続である装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の装置であって、
前記装置が、針を用いず前記流体を投与するためのノズル(19)を有し、前記ノズル
が、前記逆止弁(18)を介して前記シリンダ(16、116)の前記開放分注端に接続
され、前記前部組立体(13、14)の一部である装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の装置であって、
前記張力付与装置(S)が、前記ピストン(36)が前記後端位置にある際に、前記開
放分注端に向かって前記ピストンロッド(35、135)に予張力を付与するばね(41
、141)を有する装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の装置であって、
前記張力付与装置(S)が、モータ(12)によって回転可能であり、かつ螺旋状の線
に沿って延びる斜面路(53)を有する斜面(52)を有し、
ここで、前記斜面路(53)が、傾斜領域(S1、S2)に沿って第1のプラトーから
第2のプラトーまで上昇し、移行側面(46)を介して前記第2のプラトーから前記第1
のプラトーまで下降し、
ここで、前記張力付与装置(S)が、前記斜面路(53)に接触しているローラ(51
)であって、前記シリンダ(16、116)の外に突出する前記ピストンロッド(35、
135)のその端部に接続されるドライバ(50)に回転可能に取り付けられるローラ(
51)をさらに有し、それにより、前記斜面(52)の回転時に前記斜面路(53)が前
記ローラ(51)の下を走行し、それにより、前記ローラ(51)が回転し、
ここで、前記張力付与動作では、前記ローラ(51)が前記第1のプラトーと接触する
ことから始動する前記斜面路(53)が、前記ローラ(51)が前記第2のプラトーまで
前記傾斜領域上を走行し、それにより、前記ピストン(36)がその後端位置に移動する
ように回転し、
ここで、前記分注動作では、前記ローラ(51)が前記第2のプラトーと接触すること
から始動する前記斜面路(53)が、前記ローラ(51)が前記移行側面(46)を介し
て前記第1のプラトーに到達し、それにより、前記ピストン(36)がその前端位置に移
動するまで回転する装置。
【請求項6】
請求項5に記載の装置であって、
前記モータ(12)が前記受容ブロック(10)に取り付けられる装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の装置であって、
前記斜面路(53)の前記傾斜領域が、前記第1のプラトーに隣接する第1の部分(S
1)と、隣接する第2の部分(S2)とを有し、ここで、前記第2の部分(S2)の傾斜
が前記第1の部分(S1)の傾斜よりも大きい装置。
【請求項8】
請求項7に記載の装置であって、
両方の部分(S1、S2)が、前記螺旋状の線の回転角に対して直線的に走る装置。
【請求項9】
前記第1の部分(S1)の回転角の長さが、前記第2の部分(S2)の回転角の長さよ
りも小さい、請求項6または7に記載の装置。
【請求項10】
請求項5から9のいずれか一項に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記斜面路(53)の前記傾斜領域(S1、S2)上に載る支
持領域(55)と、前記支持領域(55)よりも小さい外径を有し、前記斜面路(53)
の前記傾斜領域(S1、S2)上に載らない少なくとも1つの横方向に隣接する側部領域
(56、57)とを有し、
ここで、前記分注動作中、前記支持領域(55)および前記側部領域(56、57)の
両方が、前記斜面路(53)の縁部(54)と接触し、前記縁部が、前記第2のプラトー
を前記移行側面(46)に接続する装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記支持領域(55)のいずれかの側に、前記支持領域(55
)の外径よりも小さい外径を有する横方向に隣接する側部領域(56、57)を有する装
置。
【請求項12】
請求項10または11に記載の装置であって、
前記各側部領域(56、57)の前記外径が、前記ローラ(51)の側部に向かう方向
に減少する装置。
【請求項13】
請求項5から12のいずれか一項に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記ローラの回転軸が前記第1の方向に垂直であるように前記
ドライバ(50)に取り付けられる装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の装置であって、
前記受容ブロック(10)が、積層造形法により製造される一体型受容ブロック(10
)の形態である装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
前記受容ブロック(10)が、金属受容ブロック(10)の形態である装置。
【請求項16】
請求項14または15に記載の装置であって、
前記受容ブロック(10)が、モータ軸受け(64)、前記ピストンロッド(35、1
35)用のガイドシリンダ(40、140)、制御基板(11)用の少なくとも1つの受
け部(60、61、62、63)、流体容器(M)の流体接続(33)のための受け部(
72、172)、および/または、少なくとも1つのハウジング固定点(65、66、6
7、68)を有し、これらが前記受容ブロック(10)と一体に形成される装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を投与するための装置に関し、この装置は、例えば、針を有しない自己
充填注射器の形態であり得、これにより、動物に液体薬物を投与することができる。
【背景技術】
【0002】
流体を投与するためのそのような装置は、可能な限り軽量であること、長い寿命を有す
ること、ならびにもたらされる維持費および経費が低いことが意図されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、言及された特性のうちの少なくとも1つを実現する、流体を投与する
ための装置を提供することである。
【0004】
本発明は、請求項1に規定される。有利な改良点は、従属請求項に規定される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
流体を投与するための本発明による装置は、開放分注端を有するシリンダと、シリンダ
内の前端位置と後端位置との間で変位可能なピストンであって、開放分注端とは反対側の
シリンダの後端を越えて第1の方向に沿って突出し、受容ブロック内に案内されるピスト
ンロッドに接続されるピストンと、開放分注端を閉じる逆止弁(または吸気弁)と、ピス
トンロッドに接続され、受容ブロックに配置される張力付与装置とを備える。張力付与装
置は、張力付与動作では、ピストンがその前端位置にある場合、ピストンがその後端位置
になるまで第1の方向に沿ってピストンロッドを移動させて、それにより、投与対象流体
によりシリンダを充填し、開放分注端に向かってピストンロッドに予張力を付与すること
ができる。さらに、張力付与装置は、分注動作では、ピストンがその後端位置にある場合
、ピストンロッドを解放することができるため、付与された予張力により、ピストンはそ
の前端位置まで第1の方向と逆に移動し、その過程で、シリンダ内の流体が投与のために
逆止弁を介して分注される。本発明によれば、シリンダは逆止弁とともに、交換可能な組
立体とも呼ばれ得る、受容ブロックに解放可能に接続される交換可能な前部組立体の形態
であり得る。
【0006】
流体(好ましくは液体)を投与するための装置の動作中に最大量の摩耗を受ける前部組
立体全体は、次いで、新しい(好ましくは構造的に同一の)前部組立体に変更され得、こ
れが次いで、受容ブロックに接続される。したがって、流体を投与するための装置全体の
耐久性が大幅に向上する。
【0007】
交換可能な組立体は、本発明による装置の前端に配置することができる。特に、例えば
、本発明による装置の的確な使用中に、交換可能な組立体の一部が、流体を投与すること
が意図される動物と接触することができる。この点で、交換可能な組立体の少なくともこ
の部分は、本発明による装置の残りの部分から突出する。交換可能な組立体は、本発明に
よる装置の遠位端を形成する部分を有することができるため、例えば、この理由により、
交換可能な組立体は、交換可能な前部組立体とも呼ばれ得る。
【0008】
交換可能な前部組立体とは、本明細書では、特に、前部組立体全体が受容ブロックから
分離され、交換のために受容ブロックに接続される構造的に同一の前部組立体によって置
き換えられ得ることを意味すると理解される。ただし、受容ブロックから分離された前部
組立体を(例えば、シールなどの摩耗した部品を交換することによって)維持し、その後
再び受容ブロックに接続することも可能である。
【0009】
前部組立体は、受容ブロックから完全に分離され、その後、維持または交換されるため
、望ましくない汚染を確実に回避することができる。これは、例えば、従来のように、前
部組立体が、破壊されずに投与装置の残りの部分から分離することができないように設置
されると、前部組立体内で最初に摩耗するOリングシールのみを個別に交換する場合、著
しく困難になり、コストを上昇させる。
【0010】
前部組立体と受容ブロックとの間の解放可能な接続は、特にねじ接続であり得る。ただ
し、例えば、バヨネット接続のような任意の他のタイプの解放可能な接続も可能である。
【0011】
本発明による投与装置は、針を用いず流体を投与するためのノズルを有することができ
、上記ノズルは、逆止弁を介してシリンダの開放分注端に接続され、前部組立体の一部で
ある。したがって、前部組立体を交換するのと同時にノズルも交換することができる。
【0012】
あるいは、装置は、逆止弁を介してシリンダの開放分注端に接続されかつ前部組立体の
一部である、針またはカニューレを有することができる。針およびカニューレは、それら
の一部について交換可能であり得る。
【0013】
本発明による投与装置は、正確に1つのピストンロッドと正確に1つの前部組立体とを
有する正確に1つのシリンダを有することができる。ただし、投与装置が、いずれも同一
に設計されている2つ以上のピストンロッドと2つ以上の前部組立体とを有する2つ以上
のシリンダを有することも可能であるため、2つ以上の同一または異なる流体を同時に投
与することができる。個々のシリンダは、同一または異なる容積を有することができる。
【0014】
本発明による投与装置は、特に、張力付与動作を使用して、投与対象流体(例えば、投
与対象液体)によりシリンダを充填することを可能にする自己充填投与装置の形態である
。
【0015】
これは、例えば、張力付与動作全体の間にシリンダの充填が既に行われるように実現す
ることができる。あるいは、投与装置は、張力付与動作中にシリンダ内に負圧が蓄積され
、その後、ピストンがその後端位置にある際に、上記負圧が使用されて、負圧によりシリ
ンダ内に流体が吸引されるように設計することができる。この目的のために、例えば、ピ
ストンの遠位端は、ピストンロッドの長手方向に延びるブラインドホールを有することが
でき、このブラインドホールから1つ以上の半径方向ボアが分岐し、半径方向ボアは、ピ
ストンの後端位置では、投与対象流体のリザーバへの流体接続を生成する。
【0016】
本発明による投与装置は、張力付与動作を行うために使用されるモータを有することが
できる。モータは、ピストンロッドの予張力を蓄積するために必要なエネルギーを提供す
るとも言及され得る。モータは、特に、受容ブロック上に取り付けることができる。
【0017】
モータおよび可能な追加の機器を動作させるために、設けられるエネルギー源は、例え
ば、電池および/または蓄電池であり得る。エネルギー源は、例えば、基部に形成するか
、投与装置の基部として形成することができる。さらに、エネルギー源は、交換可能であ
るか、固定して設置することができる。
【0018】
張力付与装置は、ピストンが後端位置にある際に開放分注端に向かってピストンロッド
に予張力を付与するばねを有することができる。
【0019】
本発明による投与装置は、モータによって回転可能であり、かつ螺旋状の線に沿って延
びる斜面路を有する斜面をさらに有することができる。斜面路は、傾斜領域に沿って第1
のプラトーまたはレベルから第2のプラトーまたは第2のレベルまで上昇することができ
、移行側面を介して第2のプラトーから第1のプラトーまで下降することができる。した
がって、斜面路は、シングルターンを有し、ステップを有する螺旋状であると呼ばれ得る
。
【0020】
張力付与装置は、斜面路に接触しているローラであって、シリンダの外に突出するピス
トンロッドのその端部に接続されるドライバに回転可能に取り付けられるローラをさらに
備えることができるため、斜面の回転時に、斜面路はローラの下を走行し、それにより、
ローラが回転する。ローラは、その回転軸が第1の方向に垂直である(またはピストンロ
ッドの長手方向軸に垂直である)ように取り付けられることが好ましい。
【0021】
張力付与動作では、ローラが第1のプラトーと接触することから始動する斜面路は、ロ
ーラが第2のプラトーまで傾斜領域上を走行し、それにより、ピストンがその後端位置に
移動するように回転させることができる。分注動作では、ローラが第2のプラトーと接触
することから始動する斜面路は、ローラが移行側面を介して第1のプラトーに到達し、そ
れにより、ピストンがその前端位置に移動するまで回転させることができる。
【0022】
斜面の回転軸に沿った第1のプラトーからの第2のプラトーの距離は、好ましくは、第
1の方向に沿ったピストンの前端位置から後端位置までの距離、したがってピストンスト
ロークに対応する。
【0023】
したがって、モータの回転運動は、斜面およびローラによって、ピストンロッドの長手
方向軸に沿った並進運動に変換される。したがって、モータによって投与装置に張力を付
与することができるため、ユーザは、トリガ要素、例えば、押しボタン、スイッチ、ロッ
カスイッチまたはボタンを作動させるだけで分注動作を解放し、ひいては流体を投与する
。このように、例えば、多くの動物に次々と薬物を迅速に注射することが可能である。
【0024】
斜面路の傾斜領域は、第1のプラトーに隣接する第1の部分と、隣接する第2の部分と
を有することができ、第2の部分の傾斜は、第1の部分の傾斜よりも大きい。
【0025】
したがって、有利には、張力付与動作の開始時に、斜面路が比較的小さな傾斜を有し、
その結果、モータが加える必要がある力またはトルクが少なくて済むという効果が達成さ
れる。これは、始動中の方が多くの電流が使用されるため、モータの始動中に有利である
。第1の部分が第2の部分に合流するとすぐに、上記の始動の問題は克服されるため、さ
らに大きな傾斜をここで容易に実現することができる。これにより、モータの耐久性が向
上する。
【0026】
斜面路の傾斜領域は、両方の部分がねじの回転角に対して線形であるように設計するこ
とができる。ただし、第1の部分および/または第2の部分が回転角に対して非線形プロ
ファイルを有することも可能である。この場合、各部分の傾斜は、各部分の平均傾斜であ
ることが好ましい。各部分の非線形プロファイルは、回転角が増加するにつれて局所傾斜
が増加するプロファイルであることが好ましい。各部分の非線形プロファイルは、好まし
くは、凹湾曲プロファイルであり得る。
【0027】
特に、第1の部分の回転角領域(または回転角の長さ)は、第2の部分の回転角領域(
または回転角の長さ)よりも小さくすることができる。第1の部分の回転角領域と第2の
部分の回転角領域との比は、好ましくは4/6以下かつ1/9以上である。
【0028】
本発明による投与装置の場合、ローラは、斜面路の傾斜領域上に載る支持領域と、支持
領域の外径よりも小さい外径を有し、斜面路の傾斜領域上に載らない少なくとも1つの横
方向に隣接する側部領域とを有することができる。分注動作中、支持領域および側部領域
の両方が斜面路の縁部と接触することができ、上記縁部は、第2のプラトーを移行側面に
接続する。これは、傾斜領域の領域では、ローラと斜面路との間の転がり抵抗または摩擦
抵抗が比較的低いという利点をもたらす。分注動作のための縁部を介した移行中、受容領
域および側部領域の両方が次いで縁部上に載るため、支持面がここで拡大され、存在する
圧力が小さくなる。これは、縁部を介したローラの移行中に、最大の力がローラに作用し
、したがって、望ましくない圧力ピークを低減することができるため、有利である。この
ように、ローラの耐久性が向上する。
【0029】
特に、ローラは、支持領域のいずれかの側に、支持領域の外径よりも小さい外径を有す
る横方向に隣接する側部領域を有することができる。これにより、縁部を介した移行中に
ローラにかかる圧力がさらに低下する。
【0030】
ローラは、支持領域の外径が一定になるように設計することができる。各側部領域の外
径は、ローラの側部に向かう方向に(または支持領域から離れる方向に、もしくは支持領
域からの距離が大きくなるにつれて)減少し得る。
【0031】
ローラは、プラスチックローラの形態であり得る。斜面は、金属から構成され得る。
【0032】
本発明による投与装置の場合、受容ブロックは、積層造形法により製造される一体型受
容ブロックの形態であり得る。
【0033】
このような積層造形法は、3Dプリンティングとも呼ばれ得、例えば、レーザ焼結法で
あり得る。
【0034】
これは、比較的軽量で高い剛性および強度を有する受容ブロックを製造することを可能
にする。したがって、投与装置の総重量は、可能な限り低く保たれるため、ユーザにとっ
て、その操作は快適かつ耐久性のあるものとなる。
【0035】
さらに、積層造形法による受容ブロックの一体形成は、受容ブロックを極めて小型に形
成することを有利に可能にし、これは、従来の機械加工製造方法では不可能である。
【0036】
受容ブロックに使用される材料は、好ましくは金属(または金属合金)、特にチタンで
あり、したがって、受容ブロックは、金属(または金属合金)、特にチタンから構成され
る。さらに、受容ブロックの材料として、アルミニウム、鋼(例えば、マルエージング鋼
)、ステンレス鋼、チタン、ニッケル合金および/またはコバルトクロム合金を使用する
ことができる。さらに可能な材料は、AlSiMg合金、CoCrMo合金およびニッケ
ルクロム合金である。さらに、溶接可能な材料を使用することができる。これらの材料は
いずれも、積層造形法によって(特にレーザ焼結によって)それらから受容ブロックを製
造することができるような形態で(例えば粉末として)存在し得る。
【0037】
受容ブロックは、モータ軸受け、ピストンロッド用のガイドシリンダ、制御基板用の少
なくとも1つの受け部、流体容器の流体接続のための受け部、および/または、少なくと
も1つのハウジング固定点を有することができ、これらは受容ブロックと一体に形成され
る。
【0038】
ピストンは、ピストンロッドと一体に形成することができる。この場合、ピストンロッ
ドの前端がピストンを形成する。ただし、ピストンが、ピストンロッドに接続される別個
の要素であることも可能である。
【0039】
言うまでもなく、上記の特徴および以下で未だ説明されていない特徴は、記載された組
合せだけでなく、本発明の範囲から逸脱することなく、他の組合せまたはそれ自体でも使
用可能である。
【0040】
本発明は、本発明に不可欠な特徴を同様に開示する添付の図面を参照して例示的な実施
形態を使用して、以下でさらに詳細に説明される。これらの例示的な実施形態は、単に例
示を目的としたものであり、限定的なものとして解釈されるべきである。例えば、多数の
要素または構成要素を有する例示的な実施形態の説明は、上記要素または構成要素のすべ
てが実装目的のために必要であるという趣旨に解釈されるべきではない。逆に、他の例示
的な実施形態はまた、代替の要素および構成要素、さらに少ない要素もしくは構成要素、
または追加の要素もしくは構成要素を含み得る。特に指定しない限り、様々な例示的な実
施形態の要素または構成要素は、互いに組み合わされ得る。例示的な実施形態のうちの1
つについて説明された修正および変更は、他の例示的な実施形態にも適用され得る。繰り
返しを避けるために、様々な図の同一または相互に対応する要素は同じ参照符号によって
示され、繰り返し説明されない。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明による投与装置1の例示的な実施形態の斜視図を示す。
【
図3】第1の前部組立体13の概略的な拡大断面図を示す。
【
図4】互いに接続されていない状態の、第1の前部組立体13、および受容ブロック10の遠位端30の概略断面図を示す。
【
図5】ピストン36がその後端位置にある、受容ブロック10の遠位端にねじ込まれた第1の前部組立体13の概略断面図を示す。
【
図6】
図5による断面図を示し、ここで、投与動作のために、ピストン36はその前端位置にあり、トリガケージ21はその解放位置にある。
【
図7】張力付与装置Sとともに受容ブロック10の斜視図を示し、ここで、張力付与装置Sは、ピストン36がその前端位置にある基本位置にある。
【
図8】
図7による張力付与装置Sとともに受容ブロック10の斜視図を示し、ここで、張力付与装置Sは、ピストン36がその後端位置にあるその張力付与位置にある。
【
図9】
図8による張力付与装置Sとともに受容ブロック10の断面図を示す。
【
図10】シリンダ-ピストン構成を1つだけ有する本発明による投与装置1の変形例のローラ51および斜面52を有する張力付与装置Sの後部の拡大斜視詳細図を示す。
【
図11A】斜面路53のプロファイルを示す図を示し、ここで、回転角はx軸に沿ってプロットされ、ピストンロッド36の長手方向軸に沿ったストロークはy軸に沿ってプロットされている。
【
図11B】斜面路53の改変されたプロファイルを示す図を示し、ここで、回転角はx軸に沿ってプロットされ、ピストンロッド36の長手方向軸に沿ったストロークはy軸に沿ってプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1に示す例示的な実施形態では、流体(例えば、液体)を投与するための本発明によ
る装置1は、起立基部3の形態でもあり得る基部3を備えるハウジング2と、装置1を保
持するための把持部4と、把持部4に配置され、装置1を作動させるためのトリガ5と、
分注領域7を有するヘッド領域6と、ヘッド領域6の上端の受け部8とを備える。
【0043】
本明細書に記載される例示的な実施形態では、投与装置1とも呼ばれ得る本発明による
装置1は、動物に2つの異なる薬物を同時に投与するように設計され、薬物の投与は、針
を用いず皮膚を通して行われる。
【0044】
本発明による投与装置1の場合、以下にも詳細に説明するように、各薬物に対して別個
のシリンダ-ピストン構成が提供され、上記シリンダ-ピストン構成は、いずれの場合も
、分注端に向かってピストンが移動することにより流体が注射され、ピストンが反対方向
に移動することにより次の注射動作のためにシリンダが充填されるような自己充填装置の
タイプの形態である。
【0045】
図2の投与装置1の概略断面図から推測することができるように、投与装置1は、制御
基板11およびモータ12を支持する受容ブロック10と、2つの前部組立体13、14
とを備え、
図2の図では、2つの前部組立体13、14のうち前部組立体13のみが見え
る。前部組立体13および14は同一に構築されているため、本質的に前部組立体13の
みを以下に詳細に説明する。前部組立体13用の液体薬物を収容する薬物容器Mは、受け
部8内に概略的に示されている。
【0046】
前部組立体13の断面図を
図3に示す。前部組立体13は、開放分注端17を有する注
射器シリンダ16が形成されるインサート15を備える。逆止弁18(または吸気弁18
)は、開放分注端17の出口側に配置される。逆止弁18が開かれると、開放分注端17
は、分注対象流体(ここでは対応する液体薬物)がそれを介して分注されるノズル18に
通じる。
【0047】
逆止弁18には、ばね20を介して開放分注端17に向かって予張力が付与され、逆止
弁18は、
図3に示す逆止弁18の位置で開放分注端17を閉じる。
【0048】
さらに、前部組立体13は、ノズル19を覆って延び、ばね22によって開放分注端1
7からノズル19に向かう方向に押され、予張力が付与されるトリガケージ21を備える
。トリガケージ21は、前部組立体13の長手方向軸に沿って(
図3の左から右に)変位
可能に取り付けられるため、投与装置1が動物の対応する皮膚部位に配置されると、上記
トリガケージは、ノズル19から開放分注端17に向かう方向に位置し、その過程で、以
下にも詳細に説明するように、例えば、接触センサ(図示せず)をトリガし、これにより
、投与動作のトリガを可能にする。
【0049】
インサート15は、開放分注端17の反対側にある注射器シリンダ16の近位端24に
、半径方向に走る供給チャネル25を有し、この供給チャネルを介して、投与対象流体ま
たは液体薬物が、次の注射動作のために注射器シリンダ16に入る。
【0050】
前部組立体13の近位端26に雄ねじ27が形成され、ガイドブッシュ28が配置され
、したがって、遠位端30には前部組立体13の雄ねじ27用の雌ねじ31が設けられる
ため、受容ブロック10の遠位端30(
図4)に前部組立体13をねじ込むことができる
。
図4は、ねじ込み操作前の前部組立体13と受容ブロック10の遠位端30とを示す。
図5では、2つの要素13、30は互いに螺合され、その結果、受容ブロック10内に案
内されるピストンロッド35は、その遠位端に形成されたピストン36とともに注射器シ
リンダ16内にわずかに突出し、ピストンロッド35は、ガイドブッシュ28を通って案
内される。以下に詳細に説明するように、ピストンロッド35は、
図5に示す基本位置か
ら、開放分注端17に向かう方向に、
図6に示す注射位置または分注位置まで移動するこ
とができ、上記位置から
図5に示す基本位置に再び戻ることができる。
【0051】
ピストンロッド35がその遠位端である基本位置にある場合、ピストン36はその後端
位置にある(
図5)。ピストンロッド35が分注位置にある場合、ピストン36はその前
端位置にある(
図6)。
【0052】
ピストンロッド35が
図5に示す基本位置に配置されると、注射器シリンダ16は、注
射される液体薬物によって充填される。その後、ピストンロッド35が開放分注端17に
向かって移動すると、逆止弁18が開き、ひいては、切り込みを通して皮膚内に薬物を投
与することができる程度まで動物の皮膚に切り込むジェットとして、ノズル19を介して
液体が分注される。
【0053】
図6に示す分注位置から
図5に示す基本位置への後方移動(第1の方向に沿った移動)
中に、逆止弁18が閉じ、注射器シリンダ16内に負圧が生成され、上記負圧は、ピスト
ンロッド35が開放分注端17から離れるほど大きくなる。ピストンロッド35がその基
本位置に配置されるとすぐに、注射器シリンダ16と供給チャネル25のうちの少なくと
も1つとの間に流体接続が存在する。流体接続を実現するために、ピストン36の遠位端
には軸方向のブラインドホール37が形成され、ブラインドボア37から半径方向に延び
、ブラインドボア37から離れた方向を向いたその端部が供給チャネル25の1つに通じ
る、少なくとも1つの横方向ボア38が形成される。
図2にのみ示すように、それらの部
分のための供給チャネル25が、インサート15と受容ブロック10の遠位端30との間
に形成されかつ接続要素33を介して薬物容器Mに接続されるチャンバ32に通じるため
、注射器シリンダ16内に存在する負圧により、薬物容器Mから、接続要素33、チャン
バ32、1または複数の供給チャネル25、(1または複数の)横方向ボア38およびブ
ラインドボア37を介して、液体薬物が注射器シリンダ16内に吸引され、その結果、注
射器シリンダ16が液体薬物により充填される。したがって、次のトリガ動作中に薬物を
再び投与することができ、ここで、ピストンロッド35の基本位置から注射位置への移動
の開始時に、液体薬物の一部が供給チャネル25を介してチャンバ32内に押し戻される
。ピストン36またはピストンロッド35を、これによりさらに容易に加速することがで
き、これにより注射器シリンダ16内の薬物の残りの部分に作用する高圧がもたらされ、
これは針を用いない上記の注射に望ましいため、この押し戻しは有利である。
【0054】
特に、注射器シリンダ16、逆止弁18およびノズル19を備える前部組立体13は、
全体として交換可能であるように設計される。前部組立体13は、その雄ねじ27によっ
て、受容ブロック10の遠位端30に形成された対応する雌ねじ31にねじ込まれ、この
雌ねじ31から再び外され得る。前部組立体13は投与装置1の動作中に摩耗を受けるた
め、摩耗した前部組立体13は、新しく、構造的に同一の前部組立体13に容易に交換す
ることができる。これにより、摩耗の影響を最も受けやすい投与装置1の構成要素を容易
に交換することができるため、有利には、投与装置1は全体としてさらに長く使用するこ
とができるようになる。
【0055】
前部組立体13は完全に交換することができるため、望ましくない汚染を確実に回避す
ることができ、この望ましくない汚染は、例えば、当技術分野で公知の投与装置内で最初
に摩耗するOリングシールが、当技術分野で公知の装置の残りの部分に固定的かつ交換不
能に接続されているシリンダの領域で個別に交換される場合、回避することが著しく困難
になり、コストを上昇させる。
【0056】
図7~
図9から最もよく分かるように、受容ブロック10は、第1の前部組立体13の
ピストンロッド35が案内される第1の受容シリンダ40と、第2の前部組立体14のピ
ストンロッド135が案内される第2の受容シリンダ140とを有する。2つのシリンダ
-ピストン構成の、したがって2つの受容シリンダ40、140の構成は同一であるため
、受容ブロック10の説明では、本質的に、第1の受容シリンダ40を有する第1のシリ
ンダ-ピストン構成のみが以下に説明される。第2の受容シリンダ140の場合の対応す
る要素は、第1の受容シリンダ40の要素の場合よりも100だけ大きい参照符号によっ
て示されているが、再度説明することはしない。
【0057】
ピストンロッド35は、
図5に示す張力付与された基本位置から
図6に示す注射位置に
ピストンロッド35を移動させるためのばね41が収容された第1の受容シリンダ40を
通って走行する。ばね41の遠位端42は、ピストンロッド35の停止部分43に接して
いる。
図9に示すように、ばね41の近位端44は、第1の受容シリンダ40の近位端に
ねじ込まれたガイドブッシュ45に接しているため、
図6に示す注射位置から第1の方向
に沿って
図5に示す予張力が付与された基本位置までピストンロッドが移動する間、ばね
41は圧縮され、それにより、予張力を付与される。
【0058】
特に
図10の拡大斜視図から推測することができるように、受容シリンダ40から近位
に突出するピストンロッド35のその端部は、回転可能に取り付けられたローラ51を有
するドライバ50に接続され、ここで、ローラ51の回転軸は、ピストンロッド35の長
手方向軸に対して実質的に垂直に延びる。
【0059】
図10の斜視図は、本発明による投与装置1の変形例を示す。この変形例では、単一の
シリンダ-ピストン構成のみが形成され、ドライバ50は、ピストンロッド35の近位端
と、受容ブロック10に変位可能に取り付けられたガイドロッド39の近位端とに接続さ
れる。
【0060】
ローラ51は、ローラ51の下で回転し、かつモータ12によって、ピストンロッド3
5の長手方向軸に平行な軸の周りを回転する斜面52上を走行する。充電可能な電池およ
び/または蓄電池は、モータへの電流供給として提供される。電池および/または蓄電池
は、例えば、基部3に、または投与装置1の基部3として配置することができる。
【0061】
斜面52は、特に
図7、
図8および
図10から推測することができるように、螺旋状の
線に沿ってシングルターンで走る斜面路53を有する。
【0062】
図11Aでは、回転角αは、ピストンロッド35の長手方向に平行なピッチ差zに関し
てプロットされており、回転角α0=0°では、最小ピッチ高さz0が存在し、ピストン
36がその前端位置にあることが出発点である。次いで斜面52が回転すると、斜面路5
3がローラ51の下を走行し、斜面路53の回転運動が、ピストンロッド35の長手方向
軸に沿って、ドライバ50とともにローラ51の並進運動に変換され、その結果、ピスト
ンロッド35が
図6に示すその注射位置から
図5に示すその基本位置まで移動する。
【0063】
この目的のために、
図11Aによる巻き戻された斜面路53は、回転角α0から回転角
α1までの第1のプラトー(傾斜=0またはゼロよりもわずかに大きいかわずかに小さい
)が存在するように走行する。斜面路53は、回転角α1から、回転角α2まで存在する
第1の直線傾斜部分S1を有する。回転角α2(および対応するピッチ高さz1)では、
ピッチは、第1の直線傾斜部分S1(回転角α1とα2との間)よりも大きい傾斜を有す
る第2の直線傾斜部分S2に合流する。第2の傾斜は、回転角α3まで存在し、次いで、
回転角α4が360°未満であれば、回転角がさらに増加してもピッチ高さz2が増加し
ない(またはごくわずかに増加するか、ごくわずかに減少する)第2のプラトーに合流す
る。
【0064】
回転角α5では、第2のプラトーを第1のプラトーに接続する移行側面46により、縁
部54が形成される。
【0065】
α3からα4までの領域では、ピストンロッド35は、
図5によるその張力付与された
基本位置にある。したがって、投与装置1は、液体薬物を投与する準備ができている。
【0066】
次いで、トリガ5が作動され、トリガケージ21がトリガ位置にある場合、モータ12
が斜面52をさらに回転させ、その結果、回転角α5を超えると、ローラ51は、縁部5
4上を走行し、ばね41の張力付与により、ピッチ高さz2から第1のプラトーのピッチ
高さz0まで急激に低下するため、注射器シリンダ16内に存在する流体が上記のように
注射される。
【0067】
その後、モータ12は、第2のプラトーまで斜面52をさらに回転させ、ここで回転運
動を停止し、それにより、注射器シリンダ16が再び液体薬物によって充填され、ピスト
ンロッド35がその張力付与された基本位置に戻される。したがって、投与装置1がその
後の投与動作のために提供される。これにより、投与装置1は、繰り返し巻き上げられ、
トリガされ得る。
【0068】
2つの傾斜部分S1およびS2は、第1のプラトーから第2のプラトーまで走る傾斜領
域を形成する。2つの傾斜部分S1およびS2は、回転角に対して直線的に走る必要はな
い。
図11Bに例として示すように、それらはまた、凹湾曲を有することができる(凹湾
曲では、回転角が増加するにつれて、局所傾斜が増加する)。ただし、この場合でも、第
1の傾斜部分S1の平均傾斜は、第2の傾斜部分S2の平均傾斜よりも小さい。
【0069】
モータ12と、斜面52と、ローラ51を有するドライバ50と、ばね41、141と
、ガイドブッシュ45、145との組合せは、張力付与装置Sと呼ぶことができる。
【0070】
特に
図12および
図13から推測することができるように、ローラ51は、一定の外径
を有する中央領域55を備える。この両側には、外径が側部に向かって減少する各側部領
域56、57が隣接している。
【0071】
2つの側部領域56および57はそれぞれ、ローラ51が縁部を有しないように丸めら
れた端部領域58、59に隣接している。斜面52の回転時に、中央領域55は、α1か
らα3(特に、α0からα5)の回転角領域では斜面路53上にあるのに対して、側部領
域56および57は、上記回転角領域になく、むしろ、縁部54を越えて走行した時にの
み斜面路53と接触する。このように、ピストンロッド35の張力付与中のローラ51の
転がり抵抗(第1のプラトーから第2のプラトーへの斜面路の回転)は、可能な限り小さ
くすることができる。斜面路53の第2または上部のプラトー(回転角領域α3からα4
)から下部のプラトー(回転角領域α1からα2)への移行中、側部領域56および57
は、縁部54にも接触しており、その結果、ローラ51と斜面路52の縁部54との間の
力は、さらに大きな支持面(中央領域55および2つの側部領域56、57)上に有利に
分散されるため、存在する圧力は小さくなる。これにより、装置1、特にローラ51の耐
久性が向上する。
【0072】
図11Aおよび
図11Bに関連して説明された斜面路53の傾斜の特性は、開始時(回
転角領域α1からα2)には傾斜が小さく、したがって、モータ50により提供される必
要があるトルクが少なくて済むため、有利である。これは、この領域ではモータ50が通
常比較的多くの電流を引き込むため、第1のプラトーからのモータ50の始動中に正確に
有利である。ピッチ高さz1に達すると、α2からα3までの回転角領域での比較的高い
傾斜は、モータ50によって容易に克服することができる。
【0073】
斜面路52の傾斜のこれらの特性は、有利には、モータ50の耐久性を向上させる。
【0074】
図14から
図17の図から最もよく推測することができるように、受容ブロック10は
一体に形成される。本明細書では、例えば、レーザ焼結、選択的レーザ焼結または直接金
属レーザ焼結などの積層造形法が使用されており、これにより、機械加工法よりも微細お
よび/または複雑な構造を製造することができる。このように、比較的軽量の受容ブロッ
ク10が提供され得、投与装置1が高度に耐久性であることが保証され得る。
【0075】
受容ブロック10に使用される材料の例には、アルミニウム、鋼(例えば、マルエージ
ング鋼)、ステンレス鋼、チタン、ニッケル合金および/またはコバルトクロム合金が挙
げられ得る。本明細書では、レーザ焼結のための材料は、好ましくは金属粉末の形態であ
る。受容ブロック10の積層造形または層状製造では、粉末材料の薄層を構築プラットフ
ォームに適用することができる。レーザビームが、受容ブロック10のコンピュータ生成
部品設計データにより予め定められた点で粉末を正確に溶融する。次いで、構築プラット
フォームを下降させ、粉末材料の追加の薄層を適用する。材料は再び溶融し、規定された
点でその下にある層に結合する。受容ブロック10全体が形成されるまで、これらの工程
を繰り返す。
【0076】
既述した受容シリンダ40、140に加えて、受容ブロック10は、4つの基板受容点
60、61、62および63を備え、その上に基板11を配置し、例えば、受容ブロック
10に螺合することができる。
【0077】
さらに、受容ブロックは、モータ12を受容し取り付けるためのモータ軸受け64を備
える。
【0078】
さらに、4つの固定点65、66、67および68が、投与装置1の外側ハウジング2
のために形成される。外側ハウジング2の対応する受け部265、266、267および
268の部分は、
図7から
図9に示されている。
【0079】
受容ブロック10の遠位端には、傘状の分注領域7が設けられ、これは、第1および第
2の前部組立体13および14用の対応する雌ねじ31および131に加えて、トリガケ
ージ21、121の位置を検出する各トリガセンサ(図示せず)用の受け部69および1
69を有する。
【0080】
さらに、Oリング71を挿入することができるOリング受け部70(例えば、
図9、図
16および
図17)が分注領域7に形成されて、設置された状態で隣接するハウジング2
に対する密封を確実にする。
【0081】
さらに、各受容シリンダ40、140用の受容ブロック10は、流体アダプタとも呼ば
れ得る対応する接続要素33、133を挿入することができる受け部72、172を備え
る。
【0082】
接続要素33、133は、機械加工によって製造されることが好ましい。
【0083】
受容ブロック10の材料としては、チタンが使用されるのが好ましい。この材料は、第
一に比較的軽く、第二に望ましい強度を確保する。言うまでもなく、積層造形法に適した
任意の他の材料を使用してもよい。
【0084】
上記の説明は、2つの異なる薬物を同時に投与するという意図に基づいている。ただし
、本発明による投与装置1は、受容ブロック10が1つの個別の受容シリンダ40のみを
有するように設計されてもよく、したがって、トリガ動作中に単一の薬物のみを投与する
こともできる。次いで、第2の受容シリンダ140および第2のシリンダ-ピストンロッ
ドの組合せが省略されることが好ましい。
【0085】
前述の例示的な実施形態は、針を有しない投与装置1の形態である投与装置1に基づい
ている。ただし、これはまた、針またはカニューレを有する投与装置1の形態であっても
よく、したがって、この場合、針またはカニューレは、動物の皮膚を貫通することが意図
され、次いで、液体薬物の投与が、記載の方法で行われる。
【手続補正書】
【提出日】2024-04-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開放分注端(17)を有するシリンダ(16、116)と、
前記シリンダ(16、116)内の前端位置と後端位置との間で変位可能なピストン(36)であって、前記開放分注端(17)とは反対側の前記シリンダ(16、116)の後端を越えて第1の方向に沿って突出し、かつ受容ブロック(10)内に案内されるピストンロッド(35、135)に接続されるピストン(36)と、
前記開放分注端(17)を閉じる逆止弁(18)と、
前記ピストンロッド(35、135)に接続され、前記受容ブロック(10)に配置される張力装置(S)と、
を備える、流体を投与するための装置であって、
ここで、前記張力付与装置(S)が、張力付与動作では、前記ピストン(36)が前記前端位置にある場合、前記ピストン(36)が前記後端位置になるまで前記第1の方向に沿って前記ピストンロッド(35、135)を移動させて、それにより、投与対象流体により前記シリンダ(16、116)を充填し、前記開放分注(17)に向かって前記ピストンロッド(35、135)に予張力を付与することができ、
ここで、前記張力付与装置(S)が、分注動作では、前記ピストン(36)が前記後端位置にある場合、前記ピストンロッド(35、135)を解放することができるため、予張力により、前記ピストン(36)が前記前端位置まで前記第1の方向と逆に移動し、その過程で、前記シリンダ(16、116)内の流体が投与のために前記逆止弁(18)を介して分注され、
ここで、前記シリンダ(16、116)が、前記逆止弁(18)と、前記ピストンが前記前端位置から前記後端位置まで移動する場合に、前記ピストン(36)と接触するシールとともに、前記受容ブロック(10)に開放可能に接続される交換可能な前部組立体(13、14)の形態であり、
該ピストン36が、前記交換可能な前部組立体(13、14)の一部ではない、装置。
【請求項2】
前記前部組立体(13、14)と前記受容ブロック(10)との間の開放可能な接続が、ねじ接続である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記装置が、針を用いず前記流体を投与するためのノズル(19)を有し、前記ノズルが、前記逆止弁(18)を介して前記シリンダ(16、116)の前記開放分注端に接続され、前記前部組立体(13、14)の一部である、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記張力付与装置(S)が、前記ピストン(36)が前記後端位置にある際に、前記開放分注端に向かって前記ピストンロッド(35、135)に予張力を付与するばね(41、141)を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
請求項1に記載の装置であって、
前記張力付与装置(S)が、モータ(12)によって回転可能であり、かつ螺旋状の線に沿って延びる斜面路(53)を有する斜面(52)を有し、
ここで、前記斜面路(53)が、傾斜領域(S1、S2)に沿って第1のプラトーから第2のプラトーまで上昇し、移行側面(46)を介して前記第2のプラトーから前記第1のプラトーまで下降し、
ここで、前記張力付与装置(S)が、前記斜面路(53)に接触しているローラ(51)であって、前記シリンダ(16、116)の外に突出する前記ピストンロッド(35、135)の端部に接続されるドライバ(50)に回転可能に取り付けられるローラ(51)をさらに有し、それにより、前記斜面(52)の回転時に前記斜面路(53)が前記ローラ(51)の下を走行し、それにより、前記ローラ(51)が回転し、
ここで、前記張力付与動作では、前記ローラ(51)が前記第1のプラトーと接触することから始動する前記斜面路(53)が、前記ローラ(51)が前記第2のプラトーまで前記傾斜領域上を走行し、それにより、前記ピストン(36)がその後端位置に移動するように回転し、
ここで、前記分注動作では、前記ローラ(51)が前記第2のプラトーと接触することから始動する前記斜面路(53)が、前記ローラ(51)が前記移行側面(46)を介して前記第1のプラトーに到達し、それにより、前記ピストン(36)がその前端位置に移動するまで回転する装置。
【請求項6】
前記モータ(12)が前記受容ブロック(10)に取り付けられる、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記斜面路(53)の前記傾斜領域が、前記第1のプラトーに隣接する第1の部分(S1)と、隣接する第2の部分(S2)とを有し、ここで、前記第2の部分(S2)の傾斜が前記第1の部分(S1)の傾斜よりも大きい、請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記第1の部分と前記第2の部分(S1、S2)が、前記螺旋状の線の回転角に対して直線的に走る、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1の部分(S1)の回転角の長さが、前記第2の部分(S2)の回転角の長さよりも小さい、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
請求項5に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記斜面路(53)の前記傾斜領域(S1、S2)上に載る支持領域(55)と、前記支持領域(55)よりも小さい外径を有し、前記斜面路(53)の前記傾斜領域(S1、S2)上に載らない少なくとも1つの横方向に隣接する側部領域(56、57)とを有し、
ここで、前記分注動作中、前記支持領域(55)および前記少なくとも1つの横方向に隣接する側部領域(56、57)の両方が、前記斜面路(53)の縁部(54)と接触し、前記縁部が、前記第2のプラトーを前記移行側面(46)に接続する装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記支持領域(55)のいずれかの側に、前記支持領域(55)の外径よりも小さい外径を有する前記少なくとも1つの横方向に隣接する側部領域(56、57)を有する装置。
【請求項12】
請求項10に記載の装置であって、
前記少なくとも1つの横方向に隣接する側部領域(56、57)の前記外径が、前記ローラ(51)の側部に向かう方向に減少する装置。
【請求項13】
請求項5に記載の装置であって、
前記ローラ(51)が、前記ローラの回転軸が前記第1の方向に垂直であるように前記ドライバ(50)に取り付けられる装置。
【請求項14】
請求項1に記載の装置であって、 前記受容ブロック(10)が、積層造形法により製造される一体型受容ブロック(10 )の形態である装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
前記受容ブロック(10)が、金属受容ブロック(10)の形態である装置。
【請求項16】
請求項14に記載の装置であって、
前記受容ブロック(10)が、モータ軸受け(64)、前記ピストンロッド(35、135)用のガイドシリンダ(40、140)、制御基板(11)用の少なくとも1つの受け部(60、61、62、63)、流体容器(M)の流体接続(33)のための受け部(72、172)、および/または、少なくとも1つのハウジング固定点(65、66、67、68)を有し、これらが前記受容ブロック(10)と一体に形成される装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置であって、少なくとも1つの供給チャネル(25)をさらに備え、
前記ピストン(36)が、前記後端位置にある場合に、前記少なくとも1つの供給チャネル(25)が、シリンダ(16、116)と流体接続している装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、供給チャネル(25)とシリンダ(16、116)の間の流体接続が、前記ピストン(36)の遠位端における軸方向のブラインドホール(37)と、前記ブラインドホール(37)から半径方向に延びる少なくとも1つの横方向ボア(38)とを有し、前記少なくとも1つの横方向ボアの端部が前記ブラインドホール(37)から離れた方向をむき、前記少なくとも1つの供給チャネル(25)の1つに通じる、装置。
【請求項19】
開放分注端(17)を有するシリンダ(16、116)と、
前記シリンダ(16、116)内の前端位置と後端位置との間で変位可能なピストン(36)であって、前記開放分注端(17)とは反対側の前記シリンダ(16、116)の後端を越えて第1の方向に沿って突出し、かつ受容ブロック(10)に配置されるピストンロッド(35、135)に接続されるピストン(36)と、
前記開放分注端(17)を閉じる逆止弁(18)と、
前記ピストンロッド(35、135)に接続され、前記受容ブロック(10)に配置される張力付与装置(S)と、
少なくとも1つの供給チャネル(25)
を備える、流体を投与するための装置であって、
ここで、前記張力付与装置(S)が、張力付与動作では、前記ピストン(36)が前記前端位置にある場合、前記ピストン(36)が前記後端位置になるまで前記第1の方向に沿って前記ピストンロッド(35、135)を移動させて、それにより、投与対象流体により前記シリンダ(16、116)を充填し、前記開放分注端(17)に向かって前記プストンロッド(35、135)に予張力を付与することができ、
ここで、前記張力付与装置(S)が、分注動作では、前記ピストン(36)が前記後端位置にある場合、前記ピストンロッド(35、135)を開放することができ、それにより、付与された予張力により、前記ピストン(36)が前記前端位置まで前記第1の方向と逆に移動し、その過程で、前記シリンダ(16、116)内の流体が投与のために前記逆止弁(18)を介して分注され、
ここで、前記シリンダ(16、116)が、前記逆止弁(18)とともに、前記受容ブロック(10)に開放可能に接続される交換可能な前部組立体(13、14)の形態であり、
ここで、前記ピストン(36)は、前記前部組立体(13、14)の一部ではなく、
ここで、前記ピストン(36)が、前記後端位置にある場合に、前記少なくとも1つの供給チャネル(25)が、前記シリンダ(16、116)と流体接続しており、
ここで、前記供給チャネル(25)と前記シリンダ(16、116)の間の前記流体接続が、前記ピストン(36)の遠位端における軸方向のブラインドホール(37)と、前記ブラインドホール(37)から半径方向に延びる少なくとも1つの横方向ボア(38)とを有し、前記少なくとも1つの横方向ボアの端部が前記ブラインドホール(37)から離れた方向をむき、前記少なくとも1つの供給チャネル(25)の1つに通じる、装置。
【外国語明細書】