IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東リ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081749
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/10 20060101AFI20240611BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240611BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240611BHJP
   E04F 15/16 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
E04F15/10 104A
C08L101/00
C08K3/013
E04F15/16 A
E04F15/16 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024056220
(22)【出願日】2024-03-29
(62)【分割の表示】P 2023170446の分割
【原出願日】2023-09-29
(31)【優先権主張番号】P 2022170923
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】永田 真梨
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、製造時の熱履歴によって床材本体が有する樹脂層に変色が生じることや、経時的に前記樹脂層に変色が生じることを抑制できる床材を提供する。
【解決手段】本発明に係る床材は、樹脂層を有する床材本体を備える床材であって、前記樹脂層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成した上で、さらに、前記充填材を、卵殻粉末を含むものとする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂層を有する床材本体を備える床材であって、
前記樹脂層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成されており、
前記充填材は、卵殻粉末を含む
床材。
【請求項2】
前記樹脂層は、前記卵殻粉末を5質量%以上含有する
請求項1に記載の床材。
【請求項3】
安定剤をさらに含む
請求項1または2に記載の床材。
【請求項4】
180℃で40分間加熱する前において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb とし、
180℃で40分間加熱した後において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb としたときに、
下記式(1)で算出される前記樹脂層の色差ΔE40minの値が8以下である
請求項1または2に記載の床材。
【数1】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、床に敷設される床材として、樹脂層を有する床材本体を備えるものが知られている(例えば、下記特許文献1)。
下記特許文献1には、前記床材本体が有する前記樹脂層として、熱可塑性樹脂と、充填材と、可塑剤と、安定剤とを含むものを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-10426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような熱可塑性樹脂を含む床材については、必然的に製造時に加熱加工を行うため、熱履歴によって色変化(黄変)が生じることがある。
また、上記のような色変化(黄変)が生じ易い床材は、当該床材を床に敷設した後において、時間の経過とともに(すなわち、経時的に)、前記床材本体が有する前記樹脂層の変色が生じ易い可能性がある。
特に、高温環境となり易い床(例えば、台所などのような火を使用する場所の床)に前記床材を敷設した後においては、前記床材本体が有する樹脂層が、より短時間で顕著に変色してしまうことがある。
【0005】
このように、熱履歴によって前記樹脂層に変色が生じることの抑制や、経時的に前記樹脂層に変色が生じることの抑制が求められている。
【0006】
そのため、熱履歴によって前記樹脂層に変色が生じることの抑制や、経時的に前記樹脂層に変色が生じることの抑制に関しては、さらなる検討が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、製造時の熱履歴によって床材本体が有する樹脂層に変色が生じることや、経時的に前記樹脂層に変色が生じることを抑制できる床材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが鋭意検討したところ、樹脂層を有する床材本体を備える床材において、前記樹脂層を、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成した上で、さらに、前記充填材を、卵殻粉末を含むものとすることにより、製造時の熱履歴によって床材本体が有する樹脂層に変色が生じることや、経時的に前記樹脂層に変色が生じることを抑制できることを見出した。
そして、本発明を想到するに至った。
【0009】
即ち、本発明に係る床材は、
樹脂層を有する床材本体を備える床材であって、
前記樹脂層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成
されており、
前記充填材は、卵殻粉末を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、製造時の熱履歴によって床材本体が有する樹脂層に変色が生じることや、経時的に前記樹脂層に変色が生じることを抑制できる床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る床材の構成を示す断面図。
図2】シート製造装置の一例を示す図。
図3】本発明の他の実施形態に係る床材の構成を示す断面図。
図4】本発明のさらに他の実施形態に係る床材の構成を示す断面図。
図5】実施例1に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図6】実施例2に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図7】実施例3に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図8】実施例4に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図9】実施例5に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図10】実施例6に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図11】実施例7に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図12】実施例8に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図13】実施例9に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図14】実施例10に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図15】実施例11に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図16】実施例12に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図17】実施例13に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図18】実施例14に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図19】実施例15に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図20】実施例16に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図21】実施例17に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図22】実施例18に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図23】比較例1に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図24】実施例19に係る樹脂シートが含む卵殻粉末の粒度分布を示す図。
図25】実施例19に係る樹脂シートの加熱前の状態を撮像した顕微鏡写真。
図26】実施例20乃至28の各例に係る樹脂シートが含む卵殻粉末の粒度分布を示す図。
図27】実施例20に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図28】実施例21に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図29】実施例22に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図30】実施例23に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図31】実施例24に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図32】実施例25に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図33】実施例26に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図34】実施例27に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
図35】実施例28に係る樹脂シートの加熱による変色を示す顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
なお、以下では、本発明の一実施形態を、単に、本実施形態と称する。
【0013】
(床材)
図1に示したように、本実施形態に係る床材10は、シート状の板状体に構成されている。
本実施形態に係る床材10は、例えば、平面視したときに、矩形状を有している(図1参照)。
床材10を平面視したときの形状は、矩形状に限られるものではなく、矩形以外の多角形状、例えば、三角形状、六角形状、八角形状などであってもよい。
また、床材10を平面視したときの形状は、円形状であってもよいし、長軸及び短軸を有する楕円形状であってもよい。
【0014】
図1に示したように、本実施形態に係る床材10は、床材本体1を備える。
図1に示した例では、床材10は、床材本体1のみを備えており、床材本体1は、樹脂層2で構成されている。
換言すれば、床材本体1は、樹脂層2のみを有している。
すなわち、床材10は、樹脂層2で構成された床材本体1のみを備える単層構造であり、いわゆる、コンポジション床材と呼ばれるものである。
【0015】
本実施形態に係る床材10では、樹脂層2は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成されている。
本実施形態に係る床材10では、前記充填材は、卵殻粉末を含んでいる。
【0016】
本実施形態に係る床材10は、樹脂層2として、混練機(バンバリーミキサーやミルロールなど)を用いて前記熱可塑性樹脂組成物を混練した後、圧延装置(カレンダーロールなど)を用いて混練後の前記熱可塑性樹脂組成物を圧延することにより製造される樹脂シートを備えるものであってもよい。
なお、前記混練機と前記圧延装置とを用いて、樹脂シートを製造する方法については後述する。
また、本実施形態に係る床材10において、樹脂層2は、一枚の樹脂シートから所定の寸法を有するように切り出された小片のシート体であってもよい。
さらに、本実施形態に係る床材10において、樹脂層2は、平面視において正方形状を有するものであってもよい。
なお、床材10が平面視において正方形状を有する樹脂層2で構成された床材本体1を備える場合、このような床材10は、通常、タイル状床材と称される。
【0017】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体やエチレン-酢酸ビニル(EVA)共重合体などの共重合体樹脂などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂は、上記したものが1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
前記熱可塑性樹脂としては、前記ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を用いることが好ましい。
これにより、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて樹脂層2を加工するときの加工性を向上させることができる。
また、樹脂層2を耐久性に優れるものとすることができることに加えて、各種物性に優れるものとすることができる。
【0018】
樹脂層2を構成するための前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂を5質量%以上含んでいることが好ましく、8質量%以上含んでいることがより好ましく、10質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂を30質量%以下含んでいることが好ましく、20質量%以下含んでいることがより好ましく、15質量%以下含んでいることがより好ましい。
なお、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記熱可塑性樹脂を5質量%以上30質量%以下含んでいてもよいし、8質量%以上20質量%以下含んでいてもよいし、10質量%以上15質量%以下含んでいてもよい。
ここで、樹脂層2は前記熱可塑性樹脂組成物によって構成されることから、前記熱可塑性樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂層2中の各成分の含有量と同義である。
【0019】
前記可塑剤としては、各種公知の可塑剤を用いることができる。
前記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート(DOP)、ジヘキシルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジベンジルフタレート、ジメチルグリコールフタレートなどのフタル酸エステル系可塑剤;トリブチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリクロルエチルホスフェートなどのリン酸エステル系可塑剤;メチルアセチルリシレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルアゼレートなどの脂肪酸エステル系可塑剤;トリオクチルトリメット酸などのトリメット酸系可塑剤;エポキシ化大豆油などのエポキシ系可塑剤;ポリエステル系高分子可塑剤などが挙げられる。
前記可塑剤は、上記したものが1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
前記熱可塑性樹脂組成物が前記熱可塑性樹脂としてポリ塩化ビニル樹脂を含んでいる場合、前記可塑剤としては、ジオクチルフタレート(DOP)が含まれていることが好ましい。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記可塑剤を5質量%以上含んでいることが好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記可塑剤を10質量%以下含んでいることが好ましく、前記可塑剤を8質量%以下含んでいることがより好ましい。
これにより、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて樹脂層2を加工するときの加工性を向上させることができる。
また、樹脂層2を好適な可撓性を有するものとすることができる。
【0021】
上記したように、本実施形態に係る床材10では、前記充填材は卵殻粉末を含んでいる。
前記卵殻粉末とは、動物の卵(例えば、鶏卵)などの卵殻を粉砕機などで微粉砕して得られるものである。
前記卵殻粉末は、卵殻膜が除去されたものであることが好ましい。
卵液採取後の卵殻から卵殻膜を予め除去しておくことにより、前記卵殻粉末を卵殻膜が除去されたものとすることができる。
前記卵殻からの卵殻膜の除去は、例えば、卵液採取後の卵殻を熱水中に浸漬させながら撹拌処理を施すことにより実施することができる。
前記卵殻膜の除去は、アルカリを含む熱水中で実施してもよい。
これにより、卵殻の表面(内表面)に付着しているタンパク質などの有機物を容易に除去することができる。
また、前記卵殻膜の除去は、前記卵殻を200℃以上800℃以下の温度で加熱することにより実施してもよい。
特に、前記卵殻を500℃以上の温度で加熱することにより、前記卵殻の表面(内表面)に付着した前記有機物を好適に除去できる。
また、前記卵殻の表面の一部において酸化反応が進行するようになるので、前記卵殻を表面の一部に酸化カルシウムの組成を含むものとすることができる。
これにより、例えば、前記熱可塑性樹脂として、前記ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂を用いた場合には、該ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂から生じるハロゲンガス(塩素ガス)を前記酸化カルシウムに吸着させることができる。
【0022】
ここで、前記卵殻には、該卵殻の内外でのガス交換を可能とする(呼吸を可能とする)ために複数の気孔が設けられている。
すなわち、前記卵殻を微分砕することにより得られる前記卵殻粉末にも複数の気孔が設けられている。
そのため、樹脂層2が前記充填材として前記卵殻粉末を含む場合においては、前記卵殻粉末が有する複数の気孔を介して、樹脂層2の内部の空気が樹脂層2の外部に排出され易くなっていると考えられる。
その結果、樹脂層2の内部に空気が溜まることが抑制されるようになると考えられる。
そして、樹脂層2の内部に空気が溜まることが抑制されることにより、該空気によって樹脂層2に含まれる前記熱可塑性樹脂が酸化により変色することが抑制されるようになると考えらえる。
これにより、樹脂層2が、製造時の熱履歴によって変色が生じることや、経時的な変色が生じることが抑制されるようになると、本願の発明者は推察している。
【0023】
前記充填材は、卵殻粉末以外の他の充填材を含んでいてもよい。
前記他の充填材としては、例えば、100℃以上の温度で加温したときに、化学的な変化(例えば、溶融や分解など)が生じたり物理的な変化が生じたりしないものであれば、どのようなものでも使用することができる。
前記他の充填材としては、例えば、卵殻粉末以外の炭酸カルシウム粉末(沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、砂状炭酸カルシウムなど)、タルク、シリカ、クレー、硫酸バリウム、水酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウム、ガラス繊維などが挙げられる。
前記他の充填材は、脂肪酸およびそのエステル、シランカップリング剤、石油樹脂、樹脂酸、クマロン酸、ABS樹脂、パラフィンなどで表面処理されたものであってもよい。
例えば、前記他の充填材は、石油樹脂などの樹脂で表面処理された炭酸カルシウム粉末であってもよい。
【0024】
樹脂層2の変色を抑える観点では、本実施形態に係る床材10において、樹脂層2は、前記卵殻粉末を5質量%以上含有していることが好ましく、19質量%以上含有していることがより好ましく、25質量%以上含有していることがより好ましく、32質量%以上含有していることがより好ましく、45質量%以上含有していることがより好ましく、55質量%以上含有していることがより好ましく、64質量%以上含有していることがより好ましい。
樹脂層2における前記卵殻粉末の含有量の上限値は、通常、80質量%である。
【0025】
前記卵殻粉末は、目開き840μmの篩を通過し、目開き420μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、40質量%以上の質量割合で含んでいてもよいし、50質量%以上の質量割合で含んでいてもよい。
また、前記卵殻粉末は、目開き840μmの篩を通過し、目開き420μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、80質量%以下の質量割合で含んでいてもよく、70質量%以下の質量割合で含んでいてもよく、60質量%以下の質量割合で含んでいてもよい。
【0026】
また、前記卵殻粉末は、目開き1410μmの篩を通過し、目開き1190μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、20質量%以上の質量割合で含んでいてもよいし、30質量%以上の質量割合で含んでいてもよい。
さらに、前記卵殻粉末は、目開き1410μmの篩を通過し、目開き1190μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、60質量%以下の質量割合で含んでいてもよいし、50質量%以下の質量割合で含んでいてもよい、40質量%以下の質量割合で含んでいてもよい。
【0027】
樹脂層2に熱履歴による変色が生じることや経時的な変色が生じることをより一層抑制する観点から、前記卵殻粉末は、目開き840μmの篩を通過し、目開き420μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、40質量%以上の質量割合で含むものであることが好ましく、50質量%以上の質量割合で含むものであることがより好ましい。
【0028】
前記卵殻粉末の50%粒子径D50は、例えば5μm以上でもよく、好ましくは10μm以上である。50%粒子径D50がこれらの範囲にある場合には、樹脂層2の変色を抑えやすいことに加えて、ブリスター(床材表面の局所的な膨れ)の発生も抑えやすい。そのメカニズムは不明であるが、50%粒子径D50が5μm未満となるように細かく微粉砕しすぎた場合の卵殻粉末では、もとの卵殻に形成されていた微細な気孔の形状が多く破壊されており、気孔を通じた空気等のガス排出が起こりにくいものと考えられる。一方、50%粒子径D50が5μm以上となる程度の粗さで微粉砕を抑えた場合の卵殻粉末では、気孔の形状が比較的維持されており、気孔を通じた空気等のガス排出が起こりやすく、樹脂層2内において前記卵殻粉末の微細な気孔を通じた空気等のガス排出により樹脂層2外へと熱を逃がしやすくなることにより、樹脂層2の耐熱性が向上し、変色やブリスターの発生が抑えられやすくなっているのであろうと推察される。
また、前記卵殻粉末の50%粒子径D50は、例えば900μm以下又は840μm以下でもよく、好ましくは420μm以下又は200μm以下でもよい。50%粒子径D50がこれらの範囲にある場合には、樹脂層2を構成するための前記熱可塑性樹脂組成物中において前記熱可塑性樹脂と前記卵殻粉末とが混合されやすく、前記熱可塑性樹脂組成物を用いて樹脂層2を好適に製造することができる。
【0029】
樹脂層2の変色をより抑えやすい観点では、前記卵殻粉末の50%粒子径D50は、更に好ましくは13μm以上150μm以下又は13μm以上100μm以下であり、更により好ましくは14μm以上50μm以下又は15μm以上30μm以下である。50%粒子径D50がこれらの範囲内にある場合に、樹脂層2の変色がより抑えられるメカニズムは不明であるが、卵殻粉末をその50%粒子径D50が150μm程度以下となるように微粉砕すると、微粉砕された卵殻粉末が樹脂中で満遍なく分散されやすいことが、メカニズムに関与している可能性が考えられる。例えば、もし、卵殻粉末に含まれる何らかの成分(例えば有機物)に樹脂層2の変色を抑える作用があれば、この成分を含む卵殻粉末が樹脂層2中に満遍なく分散されていることにより、樹脂層2で全体的に経時的な変色がより抑えられやすくなる可能性があると考えられる。また、卵殻粉末をその50%粒子径D50が例えば13μm程度以上のサイズとなるように保つことで、前述した気孔がよく形状維持された状態になっており、空気等のガス排出が機能しやすい作用も考えられる。さらに、これらの作用が相俟って、結果的に樹脂層2の変色がより抑えられるのであろうと推察される。
【0030】
前記卵殻粉末の90%粒子径D90は、ブリスターの発生を抑える観点では例えば15μm以上でもよく、好ましくは20μm以上であり、樹脂層2を製造しやすい観点では例えば1410μm以下でもよく、好ましくは1190μm以下である。さらに、前記卵殻粉末の90%粒子径D90は、樹脂層2の変色をより抑えやすい観点では、より好ましくは25μm以上300μm以下又は30μm以上150μm以下であり、更により好ましくは40μm以上70μm以下である。
前記卵殻粉末の10%粒子径D10は、ブリスターの発生を抑える観点では例えば3μm以上でもよく、好ましくは5μm以上であり、樹脂層2を製造しやすい観点は例えば840μm以下でもよく、好ましくは630μm以下である。さらに、前記卵殻粉末の10%粒子径D10は、樹脂層2の変色をより抑えやすい観点では、より好ましくは7.5μm以上20μm以下又は8.0μm以上15μm以下であり、更により好ましくは8.5μm以上12μm以下である。
【0031】
なお、本明細書における50%粒子径D50は、JIS Z 8825:2013に準拠した測定方法により、レーザ回折/散乱式粒径分布測定装置を用いて卵殻粉末の粒子径を測定し、それにより得られる粒子径ヒストグラム(粒子径分布グラフ)において卵殻粉末の体積基準の頻度の累積が50%になる粒子径であり、メジアン径ともいわれている。また、10%粒子径D10は、前記粒子径ヒストグラムにおいて卵殻粉末の体積基準の頻度の累積が10%になる粒子径である。同様に、90%粒子径D90は、前記粒子径ヒストグラムにおいて卵殻粉末の体積基準の頻度の累積が90%になる粒子径である。
【0032】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記充填材を60質量%以上含んでいてもよいし、70質量%以上含んでいてもよい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物は、前記充填材を90質量%以下含んでいてもよいし、80質量%以下含んでいてもよい。
【0033】
前記熱可塑性樹脂組成物は、さらに、安定剤を含んでいてもよい。
前記安定剤としては、各種公知の安定剤を用いることができる。
前記安定剤としては、例えば、有機系安定剤及び金属系安定剤などが挙げられる。
前記有機系安定剤としては、例えば、有機リン酸化合物、多価アルコール、エポキシ化合物、メラミン化合物などが挙げられる。
前記金属系安定剤としては、例えば、亜鉛、バリウム、スズ、カルシウム、カドミウム、ストロンチウム、アルミニウム、マグネシウム、ナトリウム、鉛などを含む金属化合物からなるものを用いることができる。
また、前記安定剤としては、ラウリン酸、ステアリン酸などの脂肪酸から誘導される金属セッケン系安定剤も挙げられる。
さらに、前記安定剤と組み合わせて、滑剤、酸化防止剤、助剤などが用いられてもよい。
前記安定剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0034】
前記安定剤は、大まかに、耐熱安定剤と光安定剤とに分類される場合があるが、前記熱可塑性樹脂組成物が前記耐熱安定剤を含むことにより、樹脂層2に熱履歴による変色が生じることを前記卵殻粉末によって抑制できることに加えて、前記耐熱安定剤によっても樹脂層2に熱履歴による変色が生じることを抑制できる。
すなわち、樹脂層2に熱履歴による変色が生じることをより一層抑制できる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記安定剤を0.1質量%以上含んでいることが好ましく、0.15質量%以上含んでいることがより好ましく、0.20質量%以上含んでいることがより好ましい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物における前記安定剤の含有量は、0.3質量%以上であってもよいし、0.4質量%以上であってもよいし、0.5質量%以上であってもよい。
また、前記熱可塑性樹脂組成物における前記安定剤の含有量は、1.5質量%以下であってもよいし、1.0質量%以下であってもよいし、0.7質量%以下であってもよい。
前記熱可塑性樹脂組成物が上記範囲で前記安定剤を含んでいることにより、前記熱可塑性樹脂組成物で形成された前記樹脂層において、熱によって前記熱可塑性樹脂が劣化されることを十分に抑制できる。
また、不要なコスト増大が生じることを抑制できることに加えて、前記安定剤から臭気が生じるといった問題が生じることを抑制できる。
【0035】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記安定剤として、前記有機系安定剤及び前記金属系安定剤の少なくとも一方を含んでいることが好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記有機系安定剤として、メラミン化合物を含んでいることがより好ましく、前記金属系安定剤として、亜鉛ないしは酸化亜鉛を含んでいることがより好ましい。
前記メラミン化合物、亜鉛、及び、酸化亜鉛は、いずれも前記耐熱安定剤に分類されるものである。
なお、前記酸化亜鉛は、後述する光安定剤としても機能する。
【0036】
前記光安定剤としては、紫外線吸収剤やラジカル捕捉剤などが挙げられる。
前記紫外線吸収剤としては、有機系紫外線吸収剤及び無機系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記有機系紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノン、サリチル酸エステルなどが挙げられる。
前記無機系紫外線吸収剤としては、酸化亜鉛、酸化セリウムなどが挙げられる。前記酸化亜鉛及び前記酸化セリウムは、微粒子化されたものであってもよい。
前記ラジカル捕捉剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤、ピぺリジン系ラジカル捕捉剤などが挙げられる。前記ヒンダートアミン系ラジカル捕捉剤としては、ビス-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジニル)セバケートなどが挙げられる。
前記光安定剤としては、前記無機系紫外線吸収剤を用いることが好ましく、前記無機系紫外線吸収剤として、前記酸化亜鉛を用いることがより好ましい。
また、前記紫外線吸収剤と前記ラジカル捕捉剤とを併用してもよい。
なお、床材本体1(樹脂層2)の表面に、図3に示したような表面保護層3を設けるような場合には、表面保護層3によって光をある程度遮ることができる。
そのため、このような構成においては、前記熱可塑性樹脂組成物には、必ずしも、前記光安定剤を含ませる必要はない。
【0037】
前記熱可塑性樹脂組成物が前記光安定剤を含む場合、その含有量は、0.02質量%以上であることが好ましく、0.03質量%以上であることがより好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。
また、前記光安定剤の含有量は、0.2質量%以下であることが好ましく、0.15質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがより好ましい。
前記熱可塑性樹脂組成物が上記範囲で前記光安定剤を含んでいることにより、樹脂層2において、光によって前記熱可塑性樹脂が劣化されることを十分に抑制できることに加えて、コスト面においても有利となる。
【0038】
前記熱可塑性樹脂組成物は、上記各成分以外の他の成分を含んでいてもよい。
上記各成分以外の他の成分としては、例えば、加工助剤、抗酸化剤、顔料、帯電防止剤、難燃剤、染料、滑剤などが挙げられる。
なお、顔料とは、有機溶剤に溶けないという性質を有する着色剤のことであり、染料とは、有機溶剤に溶ける性質を有する着色剤のことである。
【0039】
前記加工助剤、前記抗酸化剤、前記顔料、前記帯電防止剤、前記難燃剤、前記染料、及び、前記滑剤としては、各種公知のものを用いることができる。
【0040】
前記帯電防止剤としては、例えば、四級アンモニウム塩系の界面活性剤などが挙げられる。
前記熱可塑性樹脂組成物が前記帯電防止剤を含んでいる場合、その含有量は、0.1質量%以上であってもよいし、0.2質量%以上であってもよいし、0.5質量%以上であってもよい。
また、前記含有量は、2質量%以下であってもよいし、1.5質量%以下であってもよいし、1質量%以下であってもよい。
【0041】
前記顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、カーボンブラック、弁柄、チタン黄、群青、コバルトブルー、黄鉛などの無機系顔料;ジスアゾレッド、ジスアゾイエローなどのアゾ系顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどの有機系顔料などを用いることができる。
前記熱可塑性樹脂組成物が前記顔料を含んでいる場合、その含有量は、0.1質量%以上であってもよいし、0.2質量%以上であってもよいし、0.5質量%以上であってもよい。
また、前記含有量は、5質量%以下であってもよいし、2質量%以下であってもよいし、1質量%以下であってもよい。
【0042】
本実施形態に係る床材10においては、
180℃で40分間加熱する前において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb とし、
180℃で40分間加熱した後において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb としたときに、
下記式(1)で算出される樹脂層2の色差ΔE40minの値が8以下である、ことが好ましい。
なお、以下では、180℃で40分加熱する前の樹脂層2を加熱前樹脂層と称し、180℃で40分間加熱した後の樹脂層2を加熱後樹脂層と称する。
【0043】
【数1】
【0044】
表色系で規定されるL値、a値、及び、b値は、色彩色差計を用いて測定することができる。
前記色彩色差計としては、コニカミノルタ社製の商品名「CR-20」を用いることができる。
前記L値、前記a値、及び、前記b値の測定は、以下のようにして実施することができる。
(1)加熱前樹脂層の試験体(以下、第1試験体という)、及び、加熱後樹脂層の試験体(以下、第2試験体という)として、平面寸法が15cm×15cmの大きさのものをそれぞれ準備する。
(2)前記第1試験体の上方に前記色彩色差計を配して、前記第1試験体の任意の3箇所について、L の値、a の値、及び、b の値を測定する。
また、前記第2試験体についても前記第1試験体と同様にして、任意の3箇所について、L の値、a の値、及び、b の値を測定する。
(3)L 値、a 値、及び、b 値の測定値それぞれ算術平均することにより、前記第1試験体について、L 値、a 値、及び、b 値を求める。
前記第2試験体についても前記第1試験体と同様にして、L 値、a 値、及び、b 値の測定値をそれぞれ算術平均することにより、L 値、a 値、及び、b 値を求める。
【0045】
(床材本体の樹脂層の製造方法)
本実施形態に係る床材10が有する床材本体1を構成する樹脂層2は、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物を用いて製造することができる。
樹脂層2は、例えば、図2に示したようなシート製造装置100を用いて製造することができる。
前記熱可塑性樹脂組成物は、図2に示したようなシート製造装置100での製造を実施する前に、ペレット状、チップ状、または粉末状に成形されてもよい。
以下、図2に示したようなシート製造装置100を用いるとともに、チップ状の熱可塑性樹脂組成物を用いて、床材本体1を構成する樹脂層2を製造する例について説明する。
なお、チップ状の熱可塑性樹脂組成物Pとは、熱可塑性樹脂組成物Pの固形物が粉砕機などで粉砕されて不定形状を有するものである。
【0046】
図2に示したように、シート製造装置100は、バンバリーミキサー110と、バンバリーミキサー110の上方に配されるホッパ120と、バンバリーミキサー110の下流側に配されるミルロール130と、ミルロール130の下流側に配される第1カレンダーロール140と、第1カレンダーロール140の下流側に配される第2カレンダーロール150と、第2カレンダーロール150の下流側に配される裁断機160と、を備える。
【0047】
図2に示したように、チップ状の熱可塑性樹脂組成物Pは、ホッパ120を経由して、バンバリーミキサー110に供給される。
【0048】
チップ状の熱可塑性樹脂組成物Pの大きさは、製造条件によって決められるが、目開き15mmの篩を通過する程度に粉砕されていることが好ましい。
【0049】
図2に示したように、バンバリーミキサー110は、混練室111と、該混練室111の内部に配される一対のローラ112a,112bとを備えている。
そして、バンバリーミキサー110に供給された熱可塑性樹脂組成物Pは、混練室111内で所定の温度で加熱されながら、一対のローラ112a,112bによって混練される(加熱混練される)。
なお、混練室111内は、155℃以上185℃以下の温度で加熱されることが好ましい。
【0050】
加熱混練後の熱可塑性樹脂組成物Pは、経路Lを経由してミルロール130に供給される。
熱可塑性樹脂組成物Pをペレット状、チップ状、または、粉末状に成形せずにそのままミルロール130に供給する場合においては、経路Lにコンベアなどの搬送装置が備えられてもよい。
また、熱可塑性樹脂組成物Pをペレット状、チップ状、または、粉末状に成形してミルロール130に供給する場合においては、十分な流動性を持たせた状態で熱可塑性樹脂組成物Pを搬送する観点から、経路Lにコンベアなどの搬送装置に加えて、他の配管や桶などが備えられてもよい。
チップ状に加工する場合、チップ状の熱可塑性樹脂組成物Pは、上記と同様の大きさを有していることが好ましい。
図2に示したように、ミルロール130は、混練室131と、該混練室131の内部に配される一対のローラ132a,132bと、加熱混練後の熱可塑性樹脂組成物Pを混練室131内へと案内する案内板133と、を備えている。
そして、ミルロール130に供給された加熱混練後の熱可塑性樹脂組成物Pは、案内板133によって案内されながら混練室131内へと供給された後、混練室131内で所定の温度で加熱されながら、一対のローラ132a,132bによって混練されつつ圧延されてシート状に成形される。
これにより、熱可塑性樹脂組成物Pの一次シート体S1が得られる。
なお、混練室131内は、95℃以上115℃以下の温度で加熱されることが好ましい。
また、以下では、熱可塑性樹脂組成物Pの一次シート体S1のことを、単に、一次シート体S1を称する。
一次シート体S1の厚さは、10mm以上100mm以下であることが好ましく、20mm以上50mm以下であることがより好ましい。
【0051】
一次シート体S1は、第1カレンダーロール140に供給される。
図2に示したように、第1カレンダーロール140は、上下方向に並ぶように配された一対のローラ141a,141bを備えている。
一次シート体S1は、一対のローラ141a,141bによってさらに圧延されて二次シート体S2とされる。
前記圧延は、一対のローラ141a,141bを所定の温度に加温しながら実施される。
下側に配されるローラ141aは、50℃以上90℃以下の温度に加温されることが好ましく、上側に配されるローラ141bは、80℃以上120℃以下の温度に加温されることが好ましい。
二次シート体S2の厚さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、2mm以上6mm以下であることがより好ましい。
【0052】
二次シート体S2は、第2カレンダーロール150に供給される。
図2に示したように、第2カレンダーロール150は、第1カレンダーロール140と同様に、上下方向に並ぶように配された一対のローラ151a,151bを備えている。
二次シート体S2は、一対のローラ151a,151bによってさらに圧延されて三次シート体S3とされる。
前記圧延は、一対のローラ151a,151bを所定の温度に加温しながら実施される。
下側に配されるローラ151aは、82℃以上102℃以下の温度に加温されることが好ましく、上側に配されるローラ151bは、100℃以上120℃以下の温度に加温されることが好ましい。
三次シート体S3の厚さは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。
【0053】
三次シート体S3は、例えば、水冷により冷却された後、裁断機160に供給されて、所定の平面形状を有するように裁断される。三次シート体S3は、例えば、平面視において、正方形状を有するように裁断される。
三次シート体S3が正方形状を有するように裁断される場合、1辺の長さは20cm以上90cm以下であることが好ましく、20cm以上50cm以下であることが好ましい。
【0054】
上記のようにして、床材本体1を構成する樹脂層2が製造される。
【0055】
本明細書によって開示される事項は、以下のものを含む。
【0056】
(1)
樹脂層を有する床材本体を備える床材であって、
前記樹脂層が、熱可塑性樹脂と、可塑剤と、充填材とを含む熱可塑性樹脂組成物で構成されており、
前記充填材は、卵殻粉末を含む
床材。
【0057】
(2)
前記樹脂層は、前記卵殻粉末を5質量%以上含む
上記(1)に記載の床材。
【0058】
(3)
安定剤をさらに含む
上記(1)または(2)に記載の床材。
【0059】
(4)
180℃で40分間加熱する前において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb とし、
180℃で40分間加熱した後において、L表色系で規定されるL値をL とし、a値をa とし、b値をb としたときに、
下記式(1)で算出される前記樹脂層の色差ΔE40minの値が8以下である
上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の床材。
【0060】
【数2】
【0061】
本発明に係る床材は、上記実施形態に限定されるものではない。
また、本発明に係る床材は、上記した作用効果によって限定されるものでもない。
さらに、本発明に係る床材は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0062】
例えば、上の実施形態では、床材10がコンポジション床材として構成されている例について示したが、本発明に係る床材は、コンポジション床材に限られる訳ではない。
床材10は、図3に示したように、樹脂層2で構成された床材本体1と、該床材本体1の一表面に設けられる表面保護層3とを備えるものであってもよい。
このように、樹脂層2で構成された床材本体1に加えて表面保護層3を備える床材、すなわち、複数の層が積層されて構成される床材は、ホモジニアス床材とも呼ばれる。
床材10が上のように構成された場合においても、床材本体1が備える樹脂層2が経時的に変色することを抑制できる。
【0063】
また、本発明に係る床材は、図4に示したように、床材本体1が、二層の樹脂層2で形状安定化層4が挟持された構成を有するものであってもよい。
すなわち、床材本体1は、一の樹脂層2、形状安定化層4、及び、他の樹脂層2がこの順に配された三層構成を有するものであってもよい。
この例でも、床材10は、床材本体1が樹脂層2と形状安定化層4との三層積層体とされているので、このような床材10も、ホモジニアス床材と呼ばれるものである。
床材10が上のように構成された場合においても、床材本体1が備える樹脂層2が経時的に変色することを抑制できる。
【実施例0064】
次に、実施例および比較例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。以下の実施例は、本発明をさらに詳しく説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0065】
(実施例1)
下記表1Aに示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に成形して、実施例1に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。
なお、実施例1に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物は、目開き15mmの篩を通過する大きさを有するものであった。
次に、図2に示したシート製造装置100を用い、実施例1に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を原料として、実施例1に係る樹脂シートを作製した。
具体的には、実施例1に係る樹脂シートを以下の手順にしたがって作製した。
(1)実施例1に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を温度170℃にてバンバリーミキサー110で加熱混練後、加熱混練後の熱可塑性樹脂組成物を温度170℃にてミルロール130で10min加熱混練することにより、一次シート体S1を得る。
(2)一次シート体S1を第1カレンダーロール140にて圧延して二次シート体S2を得た後、二次シート体S2を第2カレンダーロール150にてさらに圧延して厚さ2mmの三次シート体S3を得る。
なお、第1カレンダーロール140において、下側のローラ141aは70℃に加熱し、上側のローラ141bは60℃に加熱する。
また、第2カレンダーロール150において、下側のローラ151aは90℃に加熱し、上側のローラ151bは80℃に加熱する。
(3)三次シート体S3を裁断機160にて1辺が30cmの正方形状に裁断して、実施例1に係る樹脂シートを作製する。
【0066】
(実施例2乃至9)
実施例2乃至9の各例では、下記表1Aに示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に粉砕して、各例に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。このこと以外については、前述した実施例1と同様にして、実施例2乃至9の各例に係る樹脂シートを作製した。
【0067】
【表1A】
【0068】
なお、表1Aにおいて、三田産の卵殻粉末は、目開き840μm以上の篩を通過し、目開き420μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、80質量%の割合で含んでいるものである。
また、伊丹産の卵殻粉末は、目開き1410μmの篩を通過し、目開き1190μmの篩の上に残存する粉末を、前記卵殻粉末の全体の質量に対して、50質量%の割合で含んでいるものである。
さらに、卵殻粉末含有量とは、熱可塑性樹脂組成物を構成する全成分の質量に対する卵殻粉末の質量%のことである。
また、表1Aにおいて、MB1008TRはニチハ社製であり、DOPはジェイ・プラス社製であり、SL41Sは東邦化学工業社製であり、G120は三共製粉社製であり、RE2315は三共製粉社製であり、KMは日産化学社製であり、ZNACは米山化学工業社製である。
【0069】
(実施例10乃至18)
実施例10乃至18の各例では、下記表1Bに示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に粉砕して、各例に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。このこと以外については、前述した実施例1と同様にして、実施例10乃至18の各例に係る樹脂シートを作製した。
【0070】
【表1B】
【0071】
(比較例1乃至3)
比較例1乃至3の各例では、下記表1Cに示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に粉砕して、各例に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。このこと以外については、前述した実施例1と同様にして、比較例1乃至3の各例に係る樹脂シートを作製した。
【0072】
【表1C】
【0073】
<樹脂シートの着色評価I>
実施例1乃至18及び比較例1乃至3の各例について、樹脂シートの着色を評価した。
具体的には、各例に係る樹脂シートを温度180℃の環境下に曝したときに、10分後の色差ΔE10min、20分後の色差ΔE20min、30分後の色差ΔE30min、及び、40分後の色差ΔE40minを求めることにより、着色性を評価した。
色差ΔE10min、色差ΔE20min、色差ΔE30min、及び、色差ΔE40minは、実施例の項で説明した手順にしたがって求めた。
なお、色差ΔE10minを求めるに際しては、加熱前樹脂層は180℃で10分加熱する前の樹脂層と読み替え、加熱後樹脂層は180℃で10分加熱した後の樹脂層と読み替えるものとする。
また、色差ΔE20min及び色差ΔE30minについても、上と読み替えるものとする。
各例に係る樹脂シートについて、色差ΔE10min、色差ΔE20min、色差ΔE30min及び色差ΔE40minを求めた結果を、以下の表2A乃至2Cに示した。
【0074】
【表2A】
【0075】
【表2B】
【0076】
【表2C】
【0077】
表2A乃至2Cより、各実施例に係る樹脂シートは、各比較例に係る樹脂シートと比べて、加熱時間が長くなるほど、特に色差ΔE40minの値が小さくなる傾向が認められた。
【0078】
また、図5乃至22には、実施例1乃至18の各例に係る樹脂シートについて、(a)加熱前、(b)10min加熱後、(c)20min加熱後、(d)30min加熱後、及び、(e)40min加熱後に撮像した顕微鏡写真(倍率は10倍)を示した。図23には、比較例1に係る樹脂シートについて、(a)加熱前、(b)10min加熱後、(c)20min加熱後、(d)30min加熱後、及び、(e)40min加熱後に撮像した顕微鏡写真(倍率は10倍)を示した。これらの顕微鏡写真の比較からも、実施例1乃至18の各例に係る樹脂シート(図5乃至図22)は、比較例1に係る樹脂シート(図23)に比べて、加熱による経時的な変色の程度が小さく抑えられる傾向が認められた。
【0079】
(実施例19)
実施例19では、下記表3に示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に粉砕し、実施例19に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。このこと以外については、前述した実施例1と同様にして、実施例19に係る樹脂シートを作製した。なお、下記表3において、実施例19に係る熱可塑性樹脂組成物は、充填材として、三田産の卵殻を図24に示す粒度分布を有するように微粉砕したものを含んでいた。この卵殻粉末(図24)について、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて前述した測定方法により粒度分布を計測したところ、10%粒子径D10が14.59μmで、50%粒子径D50が101.5μmで、90%粒子径D90が259.6μmであった。また、実施例19に係る樹脂シートを備える床材(タイル床材)の完成品全体の上面意匠を表す写真を図25に示した。
【0080】
【表3】
【0081】
(実施例20乃至28)
実施例20乃至28の各例では、下記表4に示した質量比率で各成分を含む熱可塑性樹脂組成物を温度170℃で混練した後、チップ状に粉砕し、各例に係るチップ状熱可塑性樹脂組成物を得た。このこと以外については、前述した実施例1と同様にして、実施例20乃至28の各例に係る樹脂シートを作製した。なお、下記表4において、実施例20乃至28の各例に係る熱可塑性樹脂組成物は、充填材として、三田産の卵殻を図26に示す粒度分布を有するように微粉砕したものを含んでいた。この卵殻粉末(図26)について、堀場製作所製のレーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960)を用いて前述した測定方法により粒度分布を計測したところ、10%粒子径D10が9.12μmで、50%粒子径D50が20.97μmで、90%粒子径D90が42.88μmであった。また、前述した表1A及び1Bと、下記表4とを見比べると明らかなように、実施例20乃至28の各例(表4)は、前述した実施例1乃至9の各例(表1A)と比べて、卵殻粉末の粒径が細かい(図26)こと以外については、同じ条件で作製されたものである。
【0082】
【表4】
【0083】
<樹脂シートの着色評価II>
実施例20乃至28の各例について、前述した着色評価Iと同様にして、樹脂シートの着色性を評価した。評価結果を以下の表5に示した。
【0084】
【表5】
【0085】
上記表5に示すように、実施例20乃至28の各例に係る樹脂シートでは、50%粒子径D50が20.97μmである卵殻粉末(図26)の含有量が増すほど、色差ΔE40minの値が小さく抑えられる傾向が認められた。また、実施例20乃至25の各例(表5)では、前述した実施例1乃至6の各例(表2A)よりも、色差ΔE40minが低値に抑えられていた。これらの結果より、50%粒子径D50が約20μm前後である卵殻粉末が含有する樹脂シートでは、変色が抑えられやすいことが示唆された。
【0086】
また、図27乃至35には、実施例20乃至28の各例に係る樹脂シートについて、(a)加熱前、(b)10min加熱後、(c)20min加熱後、(d)30min加熱後、及び、(e)40min加熱後に撮像した顕微鏡写真(倍率10倍)を示した。顕微鏡写真の比較から、実施例27乃至35の各例に係る樹脂シート(図27乃至図35)は、前述した比較例1に係る樹脂シート(図23)に比べて、加熱による経時的な変色の程度が小さく抑えられる傾向が認められた。
【符号の説明】
【0087】
1 床材本体、2 樹脂層、3 表面保護層、4 形状安定化層、
10 床材。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35