(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081755
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】TSPO結合剤
(51)【国際特許分類】
C07D 215/48 20060101AFI20240611BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20240611BHJP
A61K 47/54 20170101ALI20240611BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240611BHJP
A61K 31/47 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
C07D215/48 CSP
A61K51/04 200
A61K47/54
A61P43/00 111
A61K31/47
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024058904
(22)【出願日】2024-04-01
(62)【分割の表示】P 2020570686の分割
【原出願日】2019-06-21
(31)【優先権主張番号】1810312.7
(32)【優先日】2018-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】514110989
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティー コート オブ ザ ユニヴァーシティー オブ グラスゴー
【氏名又は名称原語表記】THE UNIVERSITY COURT OF THE UNIVERSITY OF GLASGOW
(71)【出願人】
【識別番号】504373299
【氏名又は名称】ザ ユニヴァーシティ コート オブ ザ ユニヴァーシティ オブ エディンバラ
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サザーランド アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ピムロット サリー
(72)【発明者】
【氏名】タヴァレス アドリアナ
(72)【発明者】
【氏名】ルカテリ クリストフ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】輸送体タンパク質(TSPO)の結合において使用する化合物であって、結合によってTSPOのためのトレーサー、例えば、放射性トレーサーとして作用する、化合物を提供する。
【解決手段】式(I)の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体を、式(I)の化合物のTSPOとの複合体と共に提供し、並びにそのような複合体を形成するための方法、並びに式(I)の化合物、例えばTSPOと複合した式(I)の化合物を検出するための方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(R-III)又は(IV):
【化1】
の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体。
【請求項2】
化合物が、式(R-III)又は式(R-IV)の化合物である、請求項1に記載の化合物。
【化2】
【請求項3】
式(I)の化合物の調製における使用のための、
【化3】
式(III)又は(IV)の化合物の使用。
【化4】
【請求項4】
式(III)又は(IV)の化合物が、式(II)の化合物の調製における使用のためである、請求項3に記載の使用。
【化5】
【請求項5】
式(III)の化合物が式(R-III)の化合物である、又は式(IV)の化合物が式(R-IV)の化合物である、請求項3又は4に記載の使用。
【請求項6】
式(I)の化合物を調製する方法であって、式(III)の化合物の臭素を、フッ素で置換する、又は式(IV)の化合物の塩素を、フッ素で置換するステップを含む、前記方法。
【請求項7】
式(II)の化合物を調製する方法であって、前記方法が、式(III)の化合物の臭素を、18-フッ素で置換する、又は式(IV)の化合物の塩素を、18-フッ素で置換するステップを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
式(III)の化合物の臭素を、塩素で置換することにより、式(III)の化合物から式(IV)の化合物を調製する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
式(III)の化合物が式(R-III)の化合物である、又は式(IV)の化合物が式(R-IV)の化合物である、請求項6~8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
式(III)又は式(IV)の化合物、及び例えば、フッ素塩のようなフッ素アニオンを含むキット。
【請求項11】
式(III)の化合物の臭素を、フッ素で置換する、又は式(IV)の化合物の塩素を、フッ素で置換することによる、式(I)の化合物の調製における、例えば、フッ素塩のようなフッ素アニオンの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本件は、2018年6月22日(22.06.2018)に出願された英国特許第1810312.7号の利益及び優先権を主張するものであり、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、TSPOと結合する際に使用するための化合物、それらの化合物を調製するための方法、化合物をTSPOと結合するための方法、及びTSPOと結合している化合物を検出するための方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
公式には末梢ジアゼピン受容体(Papadopoulos et al. Trends Pharmacol. Sci. 27, 402-409 (2006))として知られている18kDa輸送体タンパク質(TSPO,translocator protein)は、ミトコンドリアの外膜内で発現され、コレステロール転送及びステロ
イド合成に関与する(Lacapere Steroids 68, 569-585 (2003))。TSPOは、脳中のミクログリア(Wilms et al. Neurobiol. Dis. 14, 417-424 (2003)及びCosenza-Nashat et
al. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 35, 306-328 (2009))及び末梢内のマクロファー
ジ(Fujimura et al. Atherosclerosis 201, 108-111 (2008)及びBird et al. Atherosclerosis 210, 388-391 (2010))等、炎症細胞内で高度に発現され、したがって、体中で病理における炎症のマーカーとして役立つとされてきた。
【0004】
TSPOの発現の増大は、認知症及びパーキンソン病等の神経変性疾患において(Dupont et al. Int. J. Mol. Sci. 18, 785 (2017))、並びに心血管疾患において、すなわちアテローム性動脈硬化症のプラーク(Bird et al. Atherosclerosis 210, 388-391 (2010))及び心筋梗塞後の心臓(Thackeray et al. J. Am. Coll. Cardiol. 71, 263-275 (2018))において、実証されてきた。したがって、PETでTSPOを標的とする成功した画像化アプローチは、広範囲の病理において顕著な臨床的価値を有する。炎症のマーカーとして役立つことに加えて、最近、TSPOは、神経保護(Thackeray et al. J. Am. Coll. Cardiol. 71, 263-275 (2018))及び心臓保護(Schalle et al. J. Pharmacol. Exp. Ther. 333, 696-706 (2010)及びParadis et al. Cardiovasc. Res. 98, 420-427 (2013))において役割を有することも実証されており、故に、疾患の発症及び進行並びに疾患修飾療法のための標的の文脈において、非侵襲的TSPO画像化の適用の範囲をさらに拡大する。
【0005】
炎症の陽電子放出断層撮影(PET,Positron Emission Tomography)画像化の分野において、TSPOは、最も広く探求されている標的の1つである。数十年前に開発されたプロトタイプTSPO PET放射性トレーサーは、11C-PK11195である(Charbonneau et al. Circulation 73, 476-483 (1986))。この放射性トレーサーは、病院がオンサイトサイクロトロン施設を有することを要する放射性同位体の短い半減期(20分)により、臨床ルーチンの普及を限定してきた。加えて、11C-PK11195は、比較的高い非特異的結合
を有する(Chauveau et al. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging 35, 2304-2319 (2008))。
【0006】
したがって、最近刊行された総説(Alam et al. Med. Mol. Imaging (2010). 51, 283-296 (2017))においてまとめられている通り、特徴が改善されたTSPO放射性トレーサーの新規ファミリーの生成に相当な努力が払われてきた。これらの開発にもかかわらず、
11C-PK11195は、臨床研究ツールとして依然として定期的に使用されている。これは、11C-PK11195開発後に合成及び調査されたすべてのTSPO放射性トレーサーの高い個体間結合の結果であり、Owenらによる独創的な研究(Owen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 32, 1-5 (2012))において同定されている通り、遺伝的多型rs6971によって引き起こされることが現在は公知である。この共通の遺伝的多型は、低親和性結合剤(LAB,low affinity binder)として分類されたヒト集団のおよそ10%が、第二世代の放射
性トレーサーにより画像化不可能であり、混合親和性結合剤及び高親和性結合剤(MAB及びHAB,mixed high affinity binder及びhigh affinity binder)間のヒト集団分割の残りが、遺伝学的スクリーニング及び複雑な画像化後の修正を要することを意味する。rs6971遺伝的多型に対する第二世代のリガンドの感受性には、大規模な多様性がある。例えば、11C-PBR28は、インビトロで55のLAB:HAB比を有し(Owen et al. J. Nucl. Med. 52, 24-32 (2011))、一方で、より最近設計された放射性トレーサー11C-ER176、PK11195のアナログは、インビトロで1.3の比を有する(Zanotti-Fregonara et al. ACS Chem. Neurosci. (2014), doi:10.1021/cn500138n)。
【0007】
したがって、現在まで、当該PK11195は、ヒトの脳におけるrs6971多型に対する
非感受性が確実に実証されている唯一のTSPO放射性トレーサーのままである(Owen et al. J. Nucl. Med. 52, 24-32 (2011)及びOwen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 30, 1608-18 (2010))。rs6971多型に対する非感受性も実証する、TSPOのためのさらなる結合剤が必要である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Papadopoulos et al. Trends Pharmacol. Sci. 27, 402-409 (2006)
【非特許文献2】Lacapere Steroids 68, 569-585 (2003)
【非特許文献3】Wilms et al. Neurobiol. Dis. 14, 417-424 (2003)
【非特許文献4】Cosenza-Nashat et al. Neuropathol. Appl. Neurobiol. 35, 306-328 (2009)
【非特許文献5】Fujimura et al. Atherosclerosis 201, 108-111 (2008)
【非特許文献6】Bird et al. Atherosclerosis 210, 388-391 (2010)
【非特許文献7】Dupont et al. Int. J. Mol. Sci. 18, 785 (2017)
【非特許文献8】Thackeray et al. J. Am. Coll. Cardiol. 71, 263-275 (2018)
【非特許文献9】Schalle et al. J. Pharmacol. Exp. Ther. 333, 696-706 (2010)
【非特許文献10】Paradis et al. Cardiovasc. Res. 98, 420-427 (2013)
【非特許文献11】Charbonneau et al. Circulation 73, 476-483 (1986)
【非特許文献12】Chauveau et al. Eur. J. Nucl. Med. Mol. Imaging 35, 2304-2319 (2008)
【非特許文献13】Alam et al. Med. Mol. Imaging (2010). 51, 283-296 (2017)
【非特許文献14】Owen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 32, 1-5 (2012)
【非特許文献15】Owen et al. J. Nucl. Med. 52, 24-32 (2011)
【非特許文献16】Zanotti-Fregonara et al. ACS Chem. Neurosci. (2014), doi:10.1021/cn500138n
【非特許文献17】Owen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 30, 1608-18 (2010)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は一般に、輸送体タンパク質(TSPO)の結合において使用する化合物であって、結合によってTSPOのためのトレーサー、例えば、放射性トレーサーとして作用する、化合物を提供する。したがって、本発明の化合物は、TSPOをインビトロ及びイン
ビボで検出するための方法における使用を見出し得る。そのような方法は、炎症の同定における使用のため、又は、神経学的炎症、がん及び心血管疾患等のTSPOレベルの変化に関連する疾患の診断のためのものであってよい。
【0010】
本発明の化合物は、rs6971遺伝的多型に対して非感受性であり、化合物は、公知のTSPO結合剤、PK11195のものの2倍前後であるTSPOの親和性も呈する。本発明
の化合物は、インビボで好都合な動態、及び好都合な線量測定プロファイルを有し、したがって、診療所における使用に適切である。
【0011】
本発明の化合物のインビボでの特徴付けは、TSPO発現と一致する特異的取込も明らかにする。単一濃度のPK11195(1mg/kg)によるブロッキング研究により、ブロッ
キング後に測定されたSUV値における、ベースラインスキャンと比較して64~81%の低減とともに、標的結合(target engagement)を確認した。
【0012】
本発明の化合物は、ヒトの脳及び心臓の両方においてTSPOに対するナノモル親和性を有し、インビボで脳透過ができ、TSPOタンパク質発現と一致するインビボでの分布プロファイルを有し、血漿内におけるそれらの代謝が緩徐であり、組織に記録されている代謝産物のレベルが低いという理由で、放射性標識等のTSPOのための標識としての使用に理想的に適合するとみなされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第一の態様において、式(I):
【0014】
【0015】
の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体が提供される。
【0016】
好ましい実施形態において、式(I)の化合物は、式(II):
【0017】
【0018】
の化合物並びにその塩及び溶媒和物である。
【0019】
式(II)の化合物等のフッ素放射性標識を担持するTSPO結合剤は、11C-PK11195を
包含する当技術分野において公知の化合物等の炭素放射性標識を担持する化合物よりも長い半減期を有する。式(II)の化合物の線量測定法プロファイルは、放射性標識化合物がヒトでの使用に適切であるようなものである。
【0020】
本発明の第二の態様において、式(I)の化合物を調製する方法であって、式(III)
:
【0021】
【0022】
の化合物の臭素を、フッ素で置換するステップを含む、方法が提供される。
【0023】
本発明の第三の態様において、式(II)の化合物を調製する方法であって、式(IV):
【0024】
【0025】
の化合物の塩素を、18-フッ素で置換するステップを含む、方法が提供される。
【0026】
式(IV)の化合物は、式(III)の化合物の臭素の、塩素による置換によって、式(III)の化合物から得られる又は得ることが可能である。
【0027】
本発明は、式(I)の化合物を、1又は2以上の薬学的に許容される賦形剤と一緒に含む、組成物も提供する。
【0028】
本発明のさらなる態様において、式(I)の化合物を検出する方法であって、式(I)の化合物をTSPOと接触させ、それにより、式(I)の化合物のTSPOとの複合体を形成するステップと、式(I)の化合物を検出するステップとを含む、方法が提供される。
【0029】
TSPOは、インビトロで又はインビボで提供され得る。
【0030】
本発明の化合物は、心臓及び脳試料等、対象から取り出された臓器試料を検出するために使用されてよい。したがって、本発明の方法は、例えば神経学的及び心血管病理内で、TSPOを検出するため及びそのレベルを決定するために使用されてよい。
【0031】
本発明のさらなる態様において、対象において式(I)の化合物を検出するための方法であって、式(I)の化合物を対象に投与するステップと、続いて、式(I)の化合物を検出するステップとを含む、方法が提供される。
【0032】
ここでは、対象は、ヒト対象であってよい。
【0033】
対象は、神経学的炎症、がん及び心血管疾患等、TSPOレベルの上昇等のTSPOレベルの変化に関連する疾患を有することが公知である又は疑われる対象であってよい。
【0034】
対象は、TSPOレベルの変化に関連する疾患を有してよく、対象は、当該疾患のための治療を受けていてよい。本発明の方法は、TSPOレベルにおける変更を検出するため、例えば、治療の有効性を計測するために、使用されてよい。
【0035】
本発明のこれら及び他の態様及び実施形態について、以下でさらに詳細に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】公知のTSPO結合剤、PK11195(A)、PBR28(B)及びAB5186(C)、並びに本発明の実施形態に従うTSPO結合剤、LW223(D)の、構造を示す図である。化合物はそれらのコールド(非放射性標識)体で示されている。
【
図2】高(HAB)、混合(MAB)及び低(LAB)親和性結合剤由来のヒトの脳におけるTSPOリガンドの結合親和性を示す図である。(a)は、一部位当てはめ(one-site fitting)、HAB n=6、MAB n=8及びLAB n=4を使用してプロットした平均PK11195結合親和性曲線を示し、(b)は、二部位当てはめが使用されたMABは別として一部位当てはめ、HAB n=4、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均PBR28結合親和性曲線を示し、(c)は、二部位当てはめが使用されたMABは別として一部位当てはめ、HAB n=6、MAB n=6及びLAB n=5を使用してプロットした平均AB5186結合親和性曲線を示し、(d)は、一部位当てはめ、HAB n=5、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均LW223結合親和性曲線を示し、(e)は、各ヒト試料に対してPK11195について個々に計算された親和性値(K
i)を示し、これらの値は、(f)PBR28、(g)AB5186及び(h)LW223についても計算された。HAB対LABについて対応のないt検定を使用して、ns=有意でない、
*=p<0.05、
***=p≦0.001である。すべての結果は、平均±SEMを表す。
【
図3】高(HAB)、混合(MAB)及び低(LAB)親和性結合剤由来のヒトの心臓におけるTSPOリガンドの結合親和性を示す図である。(a)は、一部位当てはめ、HAB n=4、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均PK11195結合親和性曲線を示し、(b)は、一部位当てはめ、HAB n=4、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均PBR28結合親和性曲線を示し、(c)は、二部位当てはめが使用されたMABは別として一部位当てはめ、HAB n=4、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均AB5186結合親和性曲線を示し、(d)は、一部位当てはめ、HAB n=5、MAB n=5及びLAB n=4を使用してプロットした平均LW223結合親和性曲線を示し、(e)は、各ヒト試料に対してPK11195について個々に計算された親和性値(K
i)を示し、これらの値は、(f)PBR28、(g)AB5186及び(h)LW223についても計算された。HAB対LABについて対応のないt検定を使用して、ns=有意でない、
**=p≦0.01であった。すべての結果は、平均±SEMを表す。
【
図4】インビボでの
18F-LW223動態及び代謝プロファイルを示す図である。(a)は、ラットの最大強度投影画像であり、(B)は、マウスの投影画像であり、基本条件下での
18F-LW223の分布を示す。B=脳、H=心臓、L=肺、GB=胆嚢(マウスのみ)、A=副腎、K=腎臓及びG=腸、(c)及び(d)は、それぞれラット及びマウスの
18F-LW223時間活性(activity)曲線であり、(e)は、血漿内の親化合物の%を示す
18F-LW223のラットの血中動態を示し、結果は、平均±SEM、n=1時点当たり3を表し、(f)は、2-組織(2T)、Logan(t
*=30)及び多変量(M1、t
*=30)モデリング、平均±SD、n=3によって計算された、臓器における分布容積(V
t)値を示す。
【
図5】TSPOとインビボで結合している
18F-LW223を示す図である。(a)は、脳(B)、心臓(H)及び肺(L)における
18F-LW223取込を示すSUV総和画像を示し、(b)は、PK11195(1mg/kg)による封鎖後に投与された
18F-LW223取込のSUV総和画像を示す。すべての画像は平均化され(60~120分)、ガウシアンフィルターが適用されており(1×1×1)、(c)は、ベースラインにおける主要な線源臓器についての
18F-LW223時間活性曲線を示し、(d)は、PK11195封鎖後である。結果は、平均±SEM、n=3を表す。
【
図6】ヒト組織との
18F-LW223結合を示し、病理部位における局部的取込を明らかにする図である。(a)は、出血性脳卒中を患った個体由来の脳組織のH&E染色、
*=出血エリアを示す。スケールバー=1,000μM、(b)は、病理学的新生内膜リモデリングを呈する罹患した冠状血管の組織学的例(H&E)を示す。点線は、元の内側層と新生内膜との間の境界を表す。スケールバー=1,000μM、(c)は、脳卒中組織内の侵入する炎症細胞との
18F-LW223結合のオートラジオグラフィーであり、(d)は、罹患した冠状血管の新生内膜内の炎症細胞との
18F-LW223結合のオートラジオグラフィーであり、(e)は、脳卒中(stoke)におけるPK11195を使用する
18F-LW223結合の封鎖を示し、(f)は、罹患した冠状動脈組織のものであり、(g)は、脳卒中におけるLW223を使用する
18F-LW223結合の封鎖を示し、(h)は、罹患した冠状血管のものであり、(i)は、脳卒中における高及び低取込の領域における
18F-LW223結合の定量化を標的対非標的比と一緒に示し、(j)は、罹患した冠状動脈組織のものである。結果は、標的対非標的について対応のあるt検定を使用して、平均±SEM、n=3、
*=p<0.05、
**=p≦0.01を表す。
【
図7】ヒトの脳及び心臓におけるPK11195の解離定数(K
d)値及び最大結合量(B
max)を示す図である。(a)は、PK11195のK
d値を示し、(b)は、飽和結合アッセイから計算されたB
maxを示す。結果は、脳対心臓について対応のないt検定を使用して、平均±S.E.M.、脳n=6、心臓n=5、ns=有意でない、
*=p<0.05を表す。
【
図8】PK11195を使用する
18F-LW223のインビボ置きかえを示す図である。(a)は、置きかえ前の
18F-LW223取込のSUV総和画像であり、(b)は、PK11195(1mg/kg)による置きかえ後のSUV総和画像であり、ベースライン画像は、PK11195投与(45~60分)前に平均化され、置きかえ画像は、(95~120分)後に平均化されている。すべての画像は、ガウシアンフィルターが適用されており(1×1×1)、(c)は、PK11195感作の前及び後(緑色の矢印)の
18F-LW223の時間活性曲線である。
【
図9】マウスにおける線源臓器の
18F-LW223時間活性曲線を示す図である。(a)は、雄マウスにおけるバックグラウンドよりも大きい取込を持つすべての部位にわたる
18F-LW223の時間活性曲線であり、(b)は、雌マウスにおけるバックグラウンドよりも大きい取込を持つすべての部位にわたる
18F-LW223の時間活性曲線である。PET生データは、減衰補正なしに、フィルター逆投影を使用して再構成した。
【
図10】健常なヒトの脳組織における
18F-LW223の結合を示す図である。(a)は、健常な脳のH&E染色であり、(b)は、健常な脳における
18F-LW223結合のオートラジオグラフィーであり、(c)は、PK11195を使用する
18F-LW223結合の封鎖であり、(d)は、LW223を使用する
18F-LW223結合の封鎖であり、(e)は、灰白質の領域における
18F-LW223結合の定量化を、それらの標的対非標的比と一緒にしたものである。結果は、標的対非標的について対応のあるt検定を使用して、平均±S.E.M、n=3、ns=有意でないことを表す。スケールバー=1,000μM。
【
図11】心筋梗塞が、心臓、脳及び肺における
18F-LW223取込増大につながることを実証する、心筋梗塞が誘発されたラットにおける
18F-LW223の取込研究の結果を示す図である。(A)は、健常(左)及び傷害7日後の心筋梗塞ラット(右)における心臓(上部)、脳(中央部)及び肺(下部)の
18F-LW223 SUV画像例であり、(B)は、健常(赤色丸印)及び心筋梗塞ラット(青色四角形)について、心臓、脳及び肺におけるSUV時間活性曲線を示し、(C)は、健常(赤色丸印)及び心筋梗塞ラット(青色四角形)について、心臓、脳及び肺における血液プールに関連するSUVrの、時間活性曲線を示す。平均±SEM、n=5~6。
【発明を実施するための形態】
【0037】
式(II)の化合物を包含する式(I)の化合物は、TSPOのための結合剤としての使用を見出している。したがって、化合物は、ヒト等の対象におけるTSPO発現の増大等の変化を同定するために使用されてよく、神経学的炎症、がん又は心血管疾患等の疾患のリスクがある又はそれを有する対象を同定するために使用されてよい。
【0038】
本発明の化合物並びにそれらの合成及び使用について、以下でさらに詳細に記述する。
【0039】
Stevenson et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)は、本件の化合物が要するフルオロメチル基よりもむしろ、キノリン環に対するヨードメチル置換基を保有する化合物である、化合物11について先に記述している。この化合物は、TSPOのSPECT画像化において使用するためのものである。Stevenson et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)は、放射性トレーサーとして使用するための化合物を記述していない。さらに、この著作物は、そのような化合物又はいかなる誘導体も、rs6971遺伝的多型に対して非感受性である又は非感受性であり得ることを示唆するものではない。
【0040】
その上、Stevenson et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)において報告されている結合データは、本発明の化合物中に存在するアミド基置換基の使用から離れて教示している。故に、化合物11(アミド窒素は、メチル及びs-ブチル置換されている)と関連化合物18(アミド窒素は、ジエチル置換されている)との間の比較は、化合物18がTSPOに対して最良の親和性を有することを示す(Stevenson et al. Bioorg.
Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)の表1を参照されたい)。
【0041】
Blair et al. Chem. Sci. 6, 4772-4777 (2015)は、トレーサー化合物4(Stevenson et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)における化合物18に対応する)
、5及び6(AB5186)について先に記述している。Blairらによる著作物は、ハロゲンが
、キノリン環に対するハロメチル置換基として存在するよりも、ペンダントフェニル基上の置換基として置かれる場合に、ヨード化合物のTSPOとの結合が改善されることを示す。故に、Blair et al. Chem. Sci. 6, 4772-4777 (2015)の
図2におけるデータは、化
合物5が、化合物4よりも良好な親和性を有することを示す。
【0042】
本件は、本発明の化合物が、本出願における参照化合物AB5186である化合物6を包含する、Blair et al. Chem. Sci. 6, 4772-4777 (2015)によって記述されている化合物より
も良好な親和性を有することを示す。
【0043】
Cappelli et al. J. Med. Lett. 14, 4055-4066 (2006)は、Stevenson et al. Bioorg.
Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010)及びBlair et al. Chem. Sci. 6, 4772-4777 (20
15)によって記述されているものに関係する化合物及びそれらの使用について記述してい
る。この文献は、多型結合の課題について何も言っていない。
【0044】
国際公開第02/26713号パンフレットは、寄生虫感染症を治療する際に使用するための化合物に焦点を当てている(focusses)。開示される化合物の一部は、本件の化合物との非常にわずかな類似性を有する。国際公開第02/26713号パンフレットは、TSPOにも放射性トレーシングにも言及しない。
【0045】
化合物
本発明は、式(I):
【0046】
【0047】
の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体を提供する。
【0048】
式(I)の化合物は、
【0049】
【0050】
並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体であることが好ましい。
【0051】
本発明者らは、この特定の立体形態(stereoform)-(R)配置-が、その鏡像異性体と比較して、TSPOに対して5倍前後大きい親和性を有することを見出した。
【0052】
好ましい実施形態において、化合物は、式(II):
【0053】
【0054】
の化合物並びにその塩及び溶媒和物である。
【0055】
式(II)の化合物は、放射性標識化合物であり、より具体的には、フッ素放射性同位体、18Fで標識されている。
【0056】
式(II)の化合物は、
【0057】
【0058】
並びにその塩及び溶媒和物であることが好ましい。
【0059】
放射性標識化合物は、コールドの非放射性標識化合物と対照的に、ホット化合物と称されることがある。
【0060】
放射性形態、塩、溶媒和物及び立体形態
式(I)の化合物又は本明細書において記述されている任意の他の化合物は、原子が、自然発生又は非自然発生の同位体によって置きかえられている化合物を包含する。一実施形態において、同位体は、安定同位体である。故に、ここで記述されている化合物は、例えば、重水素含有化合物等を包含する。例えば、Hは、1H、2H(D)及び3H(T)を包含する任意の同位体形態であってよく、Cは、11C、12C、13C及び14Cを包含する任意の同位体形態であってよく、Oは、15O、16O及び18Oを包含する任意の同位体形態であってよく、Fは、18F等を包含する任意の同位体形態であってよい。
【0061】
典型的には、本発明の化合物は、18F、11C、13N又は15O等、陽電子放出断層撮影(PET)によって等のシンチグラフィー画像化法による検出(又はイメージング(imagining))に適切である放射性同位体を含有する。故に、一実施形態において、本
発明の化合物は、18F、11C、13N又は15O等の陽電子放出放射性同位体、最も好ましくは18Fを含有する。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、式(I)の化合物中、F原子は、18Fとして提供されてよい。そのような化合物は、式(II)の化合物である。これらの化合物は、C11放射性標識を有する化合物(20分前後の半減期)と比較して長いそれらの半減期(110分前後)のおかげで、特に有用な放射性トレーサーである。
【0063】
式(I)の化合物又は本明細書において記述されている任意の他の化合物の塩の例は、限定されないが、HCI及びHBr塩等の強鉱酸の酸付加塩並びにメタンスルホン酸塩等の強有機酸の付加塩等、すべての薬学的に許容される塩を包含する。塩のさらなる例は、硫酸塩、及び酢酸塩自体、トリフルオロ酢酸塩又はトリクロロ酢酸塩等の酢酸塩を包含する。
【0064】
式(I)の化合物又は本明細書において記述されている任意の他の化合物への言及は、当該化合物の溶媒和物への言及でもある。溶媒和物の例は、水和物を包含する。
【0065】
別段の定めがない限り、特定の化合物への言及は、それらの混合物(例えば、ラセミ混合物)を包含する、異性形態を包含する。そのような異性形態の調製(例えば、不斉合成)及び分離(例えば、分別結晶及びクロマトグラフ的手段)のための方法は、当技術分野において公知であるか、又は本明細書において教示される方法若しくは公知の方法を、公知の様式で適応させることによって、容易に得られるかのいずれかである。
【0066】
本発明の一態様は、実質的に精製された形態の及び/又は混入物(contaminant)が実
質的にない形態の化合物に関する。
【0067】
一実施形態において、実質的に精製された形態は、少なくとも50重量%、例えば、少なくとも60重量%、例えば、少なくとも70重量%、例えば、少なくとも80重量%、例えば、少なくとも90重量%、例えば、少なくとも95重量%、例えば、少なくとも97重量%、例えば、少なくとも98重量%、例えば、少なくとも99重量%である。
【0068】
定めがない限り、実質的に精製された形態は、任意の立体異性又は鏡像異性体形態の化合物を指す。例えば、一実施形態において、実質的に精製された形態は、立体異性体の混合物、すなわち、他の化合物と比べて精製されたものを指す。一実施形態において、実質的に精製された形態は、1つの立体異性体、例えば、光学的に純粋な立体異性体を指す。一実施形態において、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の混合物を指す。一実施形態において、実質的に精製された形態は、鏡像異性体の等モル混合物(すなわち、ラセミ混合物、ラセミ体)を指す。一実施形態において、実質的に精製された形態は、1つの鏡像異性体、例えば、光学的に純粋な鏡像異性体を指す。
【0069】
一実施形態において、混入物は、50重量%以下、例えば、40重量%以下、例えば、30重量%以下、例えば、20重量%以下、例えば、10重量%以下、例えば、5重量%以下、例えば、3重量%以下、例えば、2重量%以下、例えば、1重量%以下を表す。
【0070】
定めがない限り、混入物は、立体異性体又は鏡像異性体以外である他の化合物を指す。一実施形態において、混入物は、他の化合物及び他の立体異性体を指す。一実施形態において、混入物は、他の化合物及び他の鏡像異性体を指す。
【0071】
一実施形態において、実質的に精製された形態は、少なくとも60%光学的に純粋(すなわち、モルベースで化合物の60%が所望の立体異性体又は鏡像異性体であり、40%が望ましくない立体異性体又は鏡像異性体である)、例えば、少なくとも70%光学的に純粋、例えば、少なくとも80%光学的に純粋、例えば、少なくとも90%光学的に純粋、例えば、少なくとも95%光学的に純粋、例えば、少なくとも97%光学的に純粋、例
えば、少なくとも98%光学的に純粋、例えば、少なくとも99%光学的に純粋である。
【0072】
組成物
式(I)及び(II)の化合物は、TSPOと結合するために適切であり、インビボで結合し得る。したがって、式(I)又は(II)の化合物は、ヒト又は動物体への投与用の組成物で調製されてよい。
【0073】
式(I)の化合物が放射性標識されている場合、該化合物は、流体組成物において、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも2又は少なくとも5MBq/mLの濃度で提供されてよい。
【0074】
式(I)の化合物が放射性標識されている場合、該化合物は、流体組成物において、最大で10、最大で20、最大で50、最大で100、最大で200、最大で300又は最大で200MBq/mLの濃度で提供されてよい。
【0075】
化合物は、上記に記した値から選択される下限及び上限を持つ範囲内の濃度で使用されてよい。例えば、化合物は、1~10MBq/mLの範囲内の濃度で使用されてよい。
【0076】
本件の実施された例の一部において、18F-LW223は、2MBq/mLの濃度で使用され
る。
【0077】
典型的には、式(I)及び(II)の化合物は、例えば静脈注射用の生理食塩溶液において使用される。
【0078】
式(I)の化合物を単独で投与することが可能であるが、本明細書において記述されている通りの式(I)の少なくとも1つの化合物を、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、アジュバント、充填剤、緩衝剤、保存料、酸化防止剤、滑沢剤、安定剤、可溶化剤、界面活性剤(例えば、湿潤剤)、マスキング剤、着色剤、香味剤及び甘味剤を包含するがこれらに限定されない、当業者に周知である1又は2以上の他の薬学的に許容される成分と一緒に含む、医薬製剤(例えば、組成物、調製物、医薬)として提示することが望ましい。
【0079】
故に、本発明は、上記で定義されている通りの組成物、及び、組成物を作製する方法であって、本明細書において記述されている通りの式(I)の少なくとも1つの化合物を、当業者に周知である1又は2以上の他の薬学的に許容される成分、例えば、担体、希釈剤、賦形剤等と一緒に混和するステップを含む、方法をさらに提供する。不連続な単位(例えば、錠剤等)として製剤化される場合、各単位は、所定量(投与量)の化合物を含有する。
【0080】
用語「薬学的に許容される」は、本明細書において使用される場合、正当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、又は他の問題若しくは合併症なしに、当該対象(例えば、ヒト)の組織と接触させて使用するために適切な、合理的なベネフィット/リスク比に見合った、化合物、成分、材料、組成物、剤形等に関する。各担体、希釈剤、賦形剤等はまた、製剤の他の成分に適合するという意味で「許容される」ものでなくてはならない。
【0081】
適切な担体、希釈剤、賦形剤等は、標準的な薬学テキスト、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th edition, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 1990;
及びHandbook of Pharmaceutical Excipients, 5th edition, 2005において見ることができる。
【0082】
製剤は、調剤分野において周知である任意の方法によって調製されてよい。そのような方法は、式(I)の化合物を、1又は2以上の副成分を構成する担体と会合させるステップを包含する。製剤は一般に、化合物を担体(例えば、液体担体、微粉化された固体担体等)と均一に及び密接に会合させること、次いで、必要ならば生成物を成形することによって、調製される。
【0083】
製剤は、急速放出、即時、遅延、時限若しくは持続放出、又はそれらの組合せを提供するように調製されてよい。
【0084】
製剤は、適切には、液剤、溶液剤(例えば、水性、非水性)、懸濁剤(例えば、水性、非水性)、乳剤(例えば、水中油型、油中水型)、スプレー剤、ミスト剤又はエアゾール剤の形態であってよい。
【0085】
化合物を、1又は2以上の他の薬学的に許容される成分に、溶解し、それらに懸濁し、又はそれらと混和してよい。化合物は、リポソーム、又は化合物に例えば血液成分又は1若しくは2以上の臓器を標的とさせるように設計された他の微小粒子で提示されてよい。
【0086】
担体が液体である場合、鼻腔内投与に適切な製剤は、例えば、鼻スプレー剤、点鼻剤を包含し、又はネブライザーによるエアゾール投与によるものは、化合物の水性又は油性溶液を包含する。代替的な投与方法としては、乾燥粉末送達を噴霧エアゾール剤の代替として使用してよい。
【0087】
担体が固体である場合、鼻腔内投与に適切な製剤は、例えば、約20~約500ミクロンの範囲内の粒子径を有する粗粉末として提示されるものを包含し、これは、鼻から吸い込まれる様式で、すなわち、鼻の付近に保持された粉末の容器から鼻腔を経由する急速吸入によって、投与される。
【0088】
経肺投与(例えば、吸入又は吹送療法による)に適切な製剤は、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロ(dichoro)-テトラフルオロエタン、二酸
化炭素又は他の適切なガス等の適切な噴射剤の使用を伴う加圧パックからのエアゾールスプレーとして提示されるものを包含する。付加的に又は代替的に、経肺投与のための製剤は、ネブライザー又は乾燥粉末吸入器からの投与のために製剤化されてよい。例えば、製剤は、妥当な用量の送達を補助して肺組織における保持を強化するために、肺の妥当な部分に到達する適切な粒子径を提供するように、担体又はリポソームとともに提供されてよい。
【0089】
非経口投与(例えば、注射若しくは注入によって、静脈内に又は皮下に)に適切な製剤は、化合物が溶解される、懸濁される、又は別様に提供される(例えば、リポソーム又は他の微小粒子中に)、水性又は非水性、等張、パイロジェンフリーの滅菌液(例えば、溶液、懸濁液)を包含する。そのような液体は、酸化防止剤、緩衝剤、保存料、安定剤、静菌剤、懸濁化剤、増粘剤、及び製剤を、意図されるレシピエントの血液(又は他の関係する体液)と等張にする溶質等、他の薬学的に許容される成分を追加で含有してよい。賦形剤の例は、例えば、水、アルコール、糖、ポリオール、グリセロール、植物油等を包含する。そのような製剤において使用するための適切な等張性担体の例は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液又は乳酸リンゲル注射液を包含する。典型的には、液体中における化合物の濃度は、約1ng/mL~約500μg/mL、例えば約1ng/mL~約100μg/mL、例えば約10ng/mL~約10μg/mL、例えば約10ng/mL~約1μg/mLである。製剤は、単位用量又は多回用量密封容器、例えば、アンプル及びバイアル内で提示されてよく、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを要す
るフリーズドライ(凍結乾燥)条件で貯蔵されてよい。即時注射溶液及び懸濁液は、滅菌散剤、顆粒剤及び錠剤から調製されてよい。
【0090】
調製方法
本発明は、式(I)の化合物及び式(II)の化合物の調製のための方法も提供する。
【0091】
調製方法において、式(I)及び(II)の化合物中のフッ素は、合成の最後のステップにおいて導入されてよい。これは、式(I)の化合物が、式(II)の化合物において等、フッ素を放射性標識として含有する場合に、特に重要である。本発明の化合物を調製するための方法は、経時的な放射能の損失のおかげで、一般的に回避すべき中間体放射性標識化合物の取り扱いを要さない。放射性標識中間体化合物の調製及び精製が要される場合には、そのようなことが起こるであろう。
【0092】
式(I)の化合物は、式(III)の化合物から、式(III)の化合物中の臭素の、フッ素による置換によって調製されてよい。式(III)の化合物は、
【0093】
【0094】
並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体である。
【0095】
ハロゲン置換反応及びフッ素置換反応は、当技術分野において周知である。
【0096】
式(III)の化合物を、フッ素アニオンと反応させて、式(I)の化合物を得ることが
できる。フッ素アニオンは、アルカリ金属塩、例えばフッ化カリウムとのフッ素塩から提供され得る。置換反応は、18-クラウン-6等の触媒の存在下で実施されてよい。
【0097】
式(II)の化合物は、式(IV)の化合物から、式(IV)の化合物中の塩素の、18-フッ素による置換によって調製されてよい。式(IV)の化合物は、
【0098】
【0099】
並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体である。
【0100】
例えば、式(IV)の化合物を、当技術分野において使用するために周知である[18F]KF等の18Fアニオンで処置して、18F放射性標識を導入してよい。
【0101】
式(IV)の化合物は、式(III)の化合物から、式(III)の化合物中の臭素の、塩素に
よる置換によって調製されてよい。
【0102】
例えば、式(III)の化合物を、LiCl等の塩素アニオンで処置してよい。
【0103】
本発明は、式(R-III)及び式(IV)の化合物、並びにその塩、溶媒和物及び放射性標識体も提供する。
【0104】
複合体
本発明のさらなる態様において、式(I)の化合物をTSPOと一緒にした複合体が提供される。ここで、式(I)の化合物は、TSPOと非共有結合的に結合している。
【0105】
式(I)の化合物のTSPOとの複合体は、インビトロ又はインビボで提供されてよい。TSPOは、ミトコンドリア外膜上に存在してよい。
【0106】
典型的には、式(I)の化合物は、TSPOとの結合対で提供される。故に、複合体における化合物及びTSPOの化学量論は、1:1である。
【0107】
式(I)の化合物は、化合物が放射性標識されている場合、複合体中でTSPOと結合されている場合等、検出可能であってよい。
【0108】
式(I)の化合物が、式(II)の化合物において等、放射性標識されている場合、化合物は、陽電子放出断層撮影等、放射性標識に妥当な方法によって検出され得る。
【0109】
式(I)の化合物が放射性標識されていない場合、化合物は、例えば、NMRを包含する他の方法によって検出され得る。
【0110】
TSPOは、輸送体タンパク質である。これは、末梢ベンゾジアゼピン受容体と称されてよい。
【0111】
TPSOは、ヒト又はげっ歯類等の哺乳動物のTPSOであってよい。
【0112】
TSPOは、NCBI参照配列:NP_000705.2を含むタンパク質であってよい。
【0113】
方法及び使用
本発明の化合物は、TSPOと結合する際に使用するためのものである。化合物は、検出可能であり、TSPOとの複合体で存在する場合、検出可能である。
【0114】
本発明の化合物を、インビボ又はインビトロで存在してよいTSPOと接触させて、記述されているもの等の複合体を形成してよい。次いで、複合体を、本発明の化合物の検出によって検出してよい。
【0115】
式(I)の化合物が放射性標識されている場合、例えば、化合物が式(II)の化合物である場合、化合物は、陽電子放出断層撮影(PET)によって検出されてよい。
【0116】
故に、本件の方法は一般に、PET(陽電子放出断層撮影)を包含するシンチグラフィー画像化法を使用して、式(II)のもの等の式(I)の化合物を画像化するステップを包含する。シンチグラフィー画像化法は、単一面における放射能を検出するための、カメラ又はスキャナーの使用を含んでよい。PET画像化システムは、多次元でも放射能を検出する検出器のアレイを円形に含んでよい。
【0117】
有利なことに、本発明の化合物は、rs6971遺伝的多型等、TSPO内の変異に対して非感受性である。
【0118】
方法は、式(I)の化合物を、ヒト又は動物対象等の対象に投与するステップを包含してよい。
【0119】
本発明の方法は、脳、心臓、肺、胆嚢、副腎、腎臓及び腸からなる群から選択される対象における場所において、TSPOとの複合体で存在する等の式(I)の化合物を検出するステップを包含してよい。
【0120】
本発明は、対象におけるTSPO発現を画像化する方法であって、式(I)の化合物又は該化合物を含む組成物を対象に投与するステップと、対象内における化合物の分布の1又は2以上の画像を産生するステップとを含む、方法も提供する。
【0121】
一部の実施形態において、例えば神経学的炎症に関して、発病速度及びTSPO発現の程度は、画像化を使用して決定されてよい。これは、例えば、神経学的炎症を治療するための方法の転帰を予測する際に有用となり得る。
【0122】
ここで、対象のある部位における式(I)の化合物の結合は、該部位におけるTSPO発現の量及び程度を示す。
【0123】
式(I)の化合物の対象への投与について、以下でより詳細に記述する。
【0124】
対象内の画像化剤の分布の1又は2以上の画像は、放射性標識を使用するかもしれないもの等の分子画像化技術を使用して産生されてよい。
【0125】
妥当な分子画像化技術を使用して、作用物質の投与後ある期間にわたって、対象の全部又は一部内における式(I)の化合物の分布を示す、1又は2以上の画像が産生され得る。体のある組織又は領域における検出可能な標識の量又は濃度は、該組織又は領域におけるTSPO発現の量を示す。体のある組織又は領域における式(I)の化合物の濃度の増大は、該組織又は領域における細胞が、体内の他の組織又は領域と相対的な、TSPO発現の増大を受けていることを示す。したがって、本発明の画像化剤は、TSPO発現において有用となり得、TSPO発現レベルの変化に関連する疾患を検出する際に使用するために適切となり得る。
【0126】
対象は、TSPO発現の上昇等、上昇又は低減を伴う部位の存在によって特徴付けられる病状を有してよく、1又は2以上の画像は、1又は2以上の部位における本発明の化合物の分布を示す。
【0127】
本発明は、TSPO発現の上昇等、上昇又は低減に関連する病状のための療法の有効性を決定するための方法であって、
式(I)の化合物又は該化合物を含む組成物を、対象に、療法の前及び最中又は後に投与するステップと、
対象におけるTSPO発現の上昇等、上昇又は低減の1又は2以上の部位における化合物
の分布の1又は2以上の画像を産生するステップと
を含む、方法も提供する。
【0128】
療法の最中又は後に、対象のTSPO発現の部位における式(I)の化合物の分布の1又は2以上の画像が産生され得る。
【0129】
前記療法の前と相対的な、前記療法の後の上昇又は低減の1又は2以上の部位における本発明の化合物の結合において、減少又は増大等の変更は、該療法が、対象においてTSPO発現を変化させる際に有効であることを示す。
【0130】
病状がTSPO発現の上昇に関連する場合、療法は、1又は2以上の部位における化合物の結合における減少があれば、有効とみなされ得る。
【0131】
式(I)の化合物は、初期段階の臨床試験において、及び治療の指針として使用できる場合には、続いて診療所において、薬効を評価するために使用されてよい。効果のない治療は、初期段階において中止され、より有効な薬物の選択を可能にすることがある。
【0132】
対象のための治療レジメンの効果を決定するための方法であって、
対象を治療の初期レジメンに供するステップと、
対象における式(I)の化合物のTSPOとの結合の量及び程度を決定するステップと
を含み、
レジメンに応答した結合の量又は程度における変更が、該レジメンが対象において効果的であることを示す、
方法も提供される。
【0133】
この方法は、
治療のレジメンを変化させ、対象をレジメンの変化に供するステップと、
対象における式(I)の化合物のTSPOとの結合の量又は程度を決定するステップと、レジメンを変化させ結合を決定するステップを、化合物の結合の量又は程度における変更が観察されるまで繰り返すステップと
を追加で含んでよく、
レジメンに応答した化合物の結合の量又は程度における変更は、該レジメンが対象において効果的であることを示す。
【0134】
上記の方法において、対象は、神経学的炎症を有してよく、レジメンに応答した式(I)の化合物の結合の量又は程度における減少は、該レジメンが対象において効果的であることを示す。
【0135】
対象は、TSPO発現レベルの増大によって特徴付けられる病状を有してよく、レジメンに応答した対象における画像化剤の1又は2以上の疾患部位との結合の量又は程度における減少は、該レジメンが対象において効果的であることを示す。
【0136】
投与量
本発明の方法は一般に、標的エリアにおけるTSPOの有効な標識化を可能にするように、対象に有効量の式(I)の化合物を投与するステップを含んでよい。
【0137】
当業者には、式(I)の化合物及び式(I)の化合物を含む組成物の妥当な投与量が、患者ごとに変動し得ることが分かるであろう。最適な投与量を決定することは、一般に、あらゆるリスク又は悪影響のある副作用に対するTSPOの標識化のレベルの平衡を伴うであろう。
【0138】
選択される投与量レベルは、投与経路、投与時間、化合物の排泄速度、治療の持続時間、対象によって使用される薬物、化合物及び/又は材料の使用、並びに患者の種、性別、年齢、重量、状態、全身の健康状態及び既往歴を包含するがこれらに限定されない、様々な要因によって決まることになる。式(I)の化合物の量及び投与経路は、最終的には、内科医、獣医又は臨床医の裁量によるが、投与量は一般に、作用部位において、実質的に有害な又は悪影響のある副作用を引き起こすことなく所望される効果を実現する局部的濃度を実現するように選択されるであろう。
【0139】
標識化及び検出に要される時間全体を通して、投与は、1用量で、継続的に又は断続的に(例えば、適切な間隔の分割用量で)、達成され得る。投与の最も有効な手段及び投与量を決定する方法は、当業者に周知であり、製剤、標的細胞及び/又は臓器、並びに治療されている対象により、変動することになる。単回又は複数回投与は、治療をする内科医、獣医又は臨床医によって選択されている用量レベル及びパターンで行われ得る。
【0140】
式(I)の化合物の適切な用量は一般に、1日当たり対象の体重1キログラムにつき、約10μg~約250mg(より典型的には約100μg~約25mg)の範囲内である。式(I)の化合物が塩又は溶媒和物等である場合、投与される量は、親化合物に基づいて計算され、そのため、使用される実際の重量は、比例して増大する。
【0141】
式(I)の化合物が放射性標識されている場合、化合物は、剤形において、以下に明記する通りの量等の量で使用されてよい。
【0142】
化合物は、少なくとも0.1、少なくとも0.5、少なくとも1、少なくとも5、少なくとも10又は少なくとも20MBqの量で使用されてよい。
【0143】
化合物は、最大で50、最大で100、最大で200、最大で200又は最大で500MBqの量で使用されてよい。
【0144】
化合物は、上記に記載されている値から選択される下限及び上限を持つ範囲内の量で使用されてよい。例えば、化合物は、20~100MBqの量で使用されてよい。
【0145】
対象が経験する生物学的線量は、投与量当たり、例を挙げるとスキャン1回当たり、20mSv等の低いものであってよい。好ましくは、生物学的線量は、投与量当たり15mSv以下、投与量当たり10mSv以下、例を挙げると投与量当たり7mSv以下である。
【0146】
キット
本発明は、(a)例えば、適切な容器内及び/又は適切な包装で典型的には提供される、式(I)の化合物又は式(I)のいずれか1つにおいて定義される通りの化合物を含む組成物と、(b)使用説明書、例えば、化合物又は組成物をどのように投与するかについての書面による説明書とを含む、キットも提供する。
【0147】
投与経路
式(I)の化合物、又は式(I)の化合物を含む組成物は、全身に/末梢に又は局所的に(すなわち、所望される作用部位に)のいずれであるかにかかわらず、任意の好都合な投与経路によって対象に投与されてよい。
【0148】
投与経路は、経肺(例えば、エアゾールを介して、例えば、口又は鼻を経由して使用する、吸入又は吹送による);例えば、皮下、皮内、筋肉内、静脈内、動脈内、心臓内、く
も膜下腔内、髄腔内、嚢内、被膜下、眼窩内、腹腔内、気管内、表皮下、関節内、くも膜下及び胸骨内を包含する注射又は注入による非経口;例えば、皮下に又は筋肉内に、デポー剤又はリザーバーの移植によるものを包含するがこれらに限定されない。
【0149】
対象
式(I)の化合物は、TSPO発現のレベル及びTSPO発現の分布を包含するTSPOの検出のために、対象に投与されてよい。
【0150】
対象は、脊索動物、脊椎動物、哺乳動物、有胎盤哺乳動物、有袋類(例えば、カンガルー、ウォンバット)、げっ歯類(例えば、モルモット、ハムスター、ラット、マウス)、ネズミ科(例えば、マウス)、ウサギ目(例えば、ウサギ)、鳥類(例えば、鳥)、イヌ科(例えば、イヌ)、ネコ科(例えば、ネコ)、ウマ科(例えば、ウマ)、ブタ(例えば、ブタ)、羊(例えば、ヒツジ)、ウシ属(例えば、雌ウシ)、霊長類、真猿(例えば、サル又は類人猿)、サル(例えば、マーモセット、ヒヒ)、類人猿(例えば、ゴリラ、チンパンジー、オランウータン、テナガザル)又はヒトであってよい。さらに、対象は、その発達形態のいずれか、例えば、胎児であってよい。対象は、有頭動物、例を挙げると、魚類(例えば、ゼブラフィッシュ)等の水生有頭動物であってよい。
【0151】
本発明が非ヒト動物に対して実践されてよいことも想定される。非ヒト哺乳動物は、げっ歯類であってよい。げっ歯類は、ラット、マウス、モルモット、チンチラ及び実験室での研究において使用される他の同様のサイズの小型げっ歯類を包含する。
【0152】
一実施形態において、対象は、成人等のヒトである。
【0153】
一実施形態において、対象は、マウス等のげっ歯類である。
【0154】
他の優先傾向
上述した実施形態のありとあらゆる適合する組合せは、ありとあらゆる組合せが個々に及び明示的に列挙されているかのように、本明細書において明示的に開示されている。
【0155】
本発明の種々のさらなる態様及び実施形態は、本開示を考慮して、当業者には明らかであろう。
【0156】
「及び/又は」は、本明細書において使用される場合、他の有無にかかわらず、2つの指定された特色又は構成成分のそれぞれの具体的な開示として解釈されるべきである。例えば、「A及び/又はB」は、あたかもそれぞれが本明細書において個々に明記されているかのように、(i)A、(ii)B並びに(iii)A及びBのそれぞれの具体的な開示と
して解釈されるべきである。
【0157】
文脈上別のことを指示するのでない限り、上記で明記された特色の記述及び定義は、本発明のいかなる特定の態様又は実施形態にも限定されず、記述されているすべての態様及び実施形態に等しく当てはまる。
【0158】
ここで、本発明のある特定の態様及び実施形態を、例として、及び上述した図を参照して、例証する。
【0159】
実験及び結果
一般的な実験
すべての試薬及び出発材料は、商業的供給源から入手し、受け取ったまま使用した。すべての乾燥溶媒は、PureSolv 500 MD溶媒精製システムを使用して精製した。すべての反
応は、別段の記載がない限り、アルゴン下で実施した。ブラインは、塩化ナトリウム水溶液の飽和溶液として定義される。
【0160】
フラッシュカラムクロマトグラフィーは、Fisher社製Matrix silica 60を使用して行った。シリカゲル60(UV254)でプレコートしたMacherey-Nagel社製アルミニウム裏打ちプレートを薄層クロマトグラフィーに使用し、UV光を使用して視覚化した。
【0161】
1H NMR及び13C NMRスペクトルは、Bruker社製DPX 400分光計又はBruker
社製500分光計にて、標準物質としてのテトラメチルシラン(δH0.00及びδC0.
0)又は残留クロロホルム(δH7.26及びδC77.2)に対するppmの化学シフト値で記録した。1H及び13C割り当ては、それぞれ二次元COSY及びDEPT実験に基づく。
【0162】
赤外スペクトルは、JASCO社製FTIR 410分光計で記録した。
【0163】
質量スペクトルは、電子衝突、化学イオン化又は高速原子衝撃技術を使用して記録した。HRMSスペクトルは、二重収束型磁気的解析質量分析計を使用して記録した。
【0164】
融点は、Gallenkamp社製融点装置で決定した。
【0165】
キラルHPLC法は、対応するラセミ混合物で較正した。
【0166】
3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボン酸は、以前に報告された通りに調製した(Stevenson et al. Bioorg. Med. Chem. Lett. 20, 954-957 (2010))。
【0167】
化合物調製
式(I)の化合物は、以下のスキームに示される通りに調製した。化合物は、LW223と
して公知である。
【0168】
スキーム1-LW223の調製
【0169】
【0170】
(R)-(N-sec-ブチル)-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド
【0171】
【0172】
無水N,N-ジメチルホルムアミド(250mL)中の3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボン酸(2.54g、9.65mmol)の溶液に、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(5.49g、14.5mmol)及びN,N’-ジイソプロピルエチルアミン(3.40mL、19.3mmol)を添加した。反応混合物を室温で0.5時間にわたって撹拌した後、(R)-(-)-sec-ブチルアミン(1.10mL、10.6mmol)を添加し、次いで、40℃に4時間にわたって加熱した。反応混合物を室温に冷却し、酢酸エチル(300mL)で希釈し、水(3×200mL)及びブライン(200mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空で濃縮して、褐色油を
得た。フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、4:1)による精製により、(R)-(N-sec-ブチル)-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを白色固体(2.81g、91%)として得た。
融点152~154℃(融点文献値157~158℃-(Cappelli et al. J. Med. Chem. 40, 2910-2921 (1997))を参照);IR(KBr)3287(NH)、2968(CH)、1641(CO)、1539、1448、1157、761cm-1;[α]D
25-26.7(c 1.0、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.03(3H,t,J=7.4Hz,CHCH2CH3)、1.33(3H,d,J=6.6Hz,CHCH3)、1.61~1.75(2H,m,CH2CH3)、2.56(3H,s,3-CH3)、4.08~4.20(1H,m,CHCH3)、7.21~7.25(2H,m,ArH)、7.35(1H,d,J=8.3Hz,ArH)、7.40~7.55(4H,m,ArH)、7.65(1H,ddd,J=8.3,6.8,1.4Hz,ArH)、7.90(1H,d,J=8.3Hz,NH)、8.09(1H,d,J=8.3Hz,ArH);13C NMR(101MHz,CDCl3)δ10.6(CH3)、17.6(CH3)、20.5(CH3)、29.9(CH2)、46.8(CH)、126.1(CH)、127.5(CH)、127.9(CH)、128.6(C)、128.6(2×CH)、128.7(CH及びC)、129.3(2×CH)、129.5(CH)、137.3(C)、144.7(C)、149.5(C)、150.1(C)、166.2(C);MS(CI)m/z 319(M+H+,100%)、220(19)、202(5)、148(6)、113(16)、85(77);HRMS(CI)C21H23N2O(M+H+)の計算値、319.1810、実測値319.1809。
【0173】
(R)-(N-sec-ブチル)-N-メチル-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド
【0174】
【0175】
テトラヒドロフラン(176mL)中の(R)-(N-sec-ブチル)-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド(2.81g、8.82mmol)の溶液に、水素化ナトリウム(鉱油中60%分散、0.710g、17.6mmol)を添加した。混合物を室温で0.5時間にわたって撹拌した後、ヨードメタン(2.75mL、44.1mmol)を添加した。結果として生じた溶液を室温で3時間にわたって撹拌し、次いで、水の添加によってクエンチした。水性相をジエチルエーテル(3×10mL)で抽出した。合わせた有機相を、チオ硫酸ナトリウムの10%水溶液(10mL)、ブライン(10mL)で洗浄し、乾燥させ(Na2SO4)、濾過し、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル、3:1)による精製により、(R)-(N-sec-ブチル)-N-メチル-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを白色固体(2.75g、94%)として得た。
【0176】
NMRスペクトルは、回転異性体の1:1混合物を示した。両方の回転異性体についてシグナルを記録する。融点114~117℃(融点文献値117~118℃-(Cappelli
et al. J. Med. Chem. 40, 2910-2921 (1997)を参照);IR(KBr)2969(CH)、1637(CO)、1466、1072、731cm-1;[α]D
23-6.3(c 1.0、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ0.86(3H,t,J=7.3Hz,CH2CH3)、1.03(3H,t,J=7.3Hz,CH2CH3)、1.24(3H,d,J=6.6Hz,CHCH3)、1.28(3H,d,J=6.6Hz,CHCH3)、1.36~1.71(4H,m,2×CH2CH3)、2.21(3H,s,3-CH3)、2.23(3H,s,3-CH3)、2.73(3H,s,NCH3)、3.04(3H,s,NCH3)、3.42~3.53(1H,m,CHCH3)、4.84~4.94(1H,m,CHCH3)、7.25~7.31(4H,m,ArH)、7.38~7.44(4H,m,ArH)、7.45~7.57(6H,m,ArH)、7.60~7.67(2H,m,ArH)、8.09(1H,d,J=8.3Hz,ArH)、8.11(1H,d,J=8.3Hz,ArH);13C
NMR(101MHz,CDCl3)δ11.2(CH3)、11.3(CH3)、16.0(CH3)、16.4(CH3)、17.3(CH3)、18.6(CH3)、25.5(CH3)、26.5(CH3)、27.2(CH2)、29.3(CH2)、49.6(CH)、55.8(CH)、124.6(C)、125.3(C)、125.9(CH)、126.0(CH)、126.7(2×CH)、126.8(2×CH)、127.4(2×C)、128.0(2×CH)、128.6(2×CH)、128.7(2×CH)、129.2(4×CH)、129.4(2×CH)、136.7(C)、136.8(C)、145.8(C)、146.1(C)、148.0(C)、148.1(C)、156.1(C)、156.6(C)、169.4(C)、169.7(C);MS(CI)m/z 333(M+H+,100%)、291(48)、250(41)、220(14)、86(23);HRMS(CI)C22H25N2O(M+H+)の計算値、333.1967、実測値333.1972。
【0177】
(R)-3-ブロモメチル-(N-sec-ブチル)-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド
【0178】
【0179】
クロロホルム(300mL)中の(R)-(N-sec-ブチル)-N-メチル-3-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド(2.70g、8.12mmol)の撹拌、脱気した溶液に、N-ブロモコハク酸イミド(2.17g、12.2mmol)及び過酸化ジベンゾイル(0.20g、0.812mmol)を添加し、溶液を6時間にわたって還流下で加熱した。次いで、さらなる部のN-ブロモコハク酸イミド(1.00g、5.61mmol)を添加し、溶液をさらに16時間にわたって還流下で加熱した。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、溶媒を真空で除去した。次いで、粗残留物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、水(3×100mL)で洗浄した。有機層を乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空で濃縮した。ジクロロメタン>ジクロロメタン/酢酸エチル(95:5)のグラジエント(graduated)溶離液を使用するフラッシュカラムクロマトグ
ラフィーによる精製により、(R)-3-ブロモメチル-(N-sec-ブチル)-N-
メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを橙色固体(2.76g、83%)として生じさせた。
【0180】
NMRスペクトルは、回転異性体の2:1混合物を示した。主要な回転異性体についてのシグナルのみを記録する。融点160~164℃;IR(KBr)2970(CH)、1631(CO)、1484、1397、1046、766cm-1;[α]D
28-9.0(c 1.0、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.09(3H,t,J=7.4Hz,CH2CH3)、1.32(3H,d,J=6.8Hz,CHCH3)、1.51~1.80(2H,m,CH2CH3)、2.86(3H,s,NCH3)、4.60(1H,d,J=10.2Hz,3-CHH)、4.67(1H,d,J=10.2Hz,3-CHH)、4.87(1H,六重線,J=6.8Hz,CHCH3)、7.37~7.48(4H,m,ArH)、7.51~7.59(3H,m,ArH)、7.70(1H,ddd,J=8.3,6.7,1.5Hz,ArH)、8.10(1H,dd,J 8.8,8.3Hz,ArH);13C NMR(101MHz,CDCl3)δ11.1(CH3)、17.1(CH3)、26.6(CH2)、27.7(CH2)、30.5(CH3)、50.1(CH)、126.3(C)、126.7(2×CH)、127.4(CH)、128.6(2×CH)、128.7(CH)、129.0(CH)、129.1(CH)、129.5(CH)、130.1(C)、134.9(C)、146.4(C)、149.3(C)、156.0(C)、168.4(C);MS(EI)m/z 410(M+,5%)、298(15)、296(14)、217(57)、189(28)、151(10)、86(100);HRMS(EI)C22H23
79BrN2O(M+)の計算値、410.0994、実測値410.0992。
【0181】
(R)-(N-sec-ブチル)-3-クロロメチル-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド
【0182】
【0183】
乾燥テトラヒドロフラン(10mL)中の(R)-3-ブロモメチル-(N-sec-ブチル)-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド(0.500g、1.22mmol)の溶液に、塩化リチウム(0.160g、3.66mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間にわたって撹拌した。反応物を水(30mL)でクエンチし、酢酸エチル(3×30mL)中に抽出した。有機層を合わせ、ブライン(90mL)で洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空で濃縮した。生成物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ジクロロメタン/酢酸エチル、95:5)によって精製して、(R)-3-クロロメチル-(N-sec-ブチル)-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを白色固体(0.327g、73%)として生じさせた。
【0184】
NMRスペクトルは、回転異性体の1.5:1混合物を示した。主要な回転異性体につ
いてのシグナルのみを記録する。融点140~142℃;IR(未希釈)2970(CH)、1620(CO)、1481、1404、1219、748cm-1;[α]D
24-11.6(c 1.0、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.08(3H,t,J=7.4Hz,CH2CH3)、1.30(3H,d,J=6.8Hz,CHCH3)、1.49~1.79(2H,m,CH2CH3)、2.84(3H,s,NCH3)、4.67(1H,d,J=10.6Hz,3-CHH)、4.72(1H,d,J=10.6Hz,3-CHH)、4.82~4.92(1H,m,CHCH3)、7.36~7.61(7H,m,ArH)、7.69~7.75(1H,m,ArH)、8.11(1H,dd,J 9.0,8.4Hz,ArH);13C NMR(101MHz,CDCl3)δ11.1(CH3)、17.1(CH3)、26.6(CH2)、30.4(CH3)、40.4(CH2)、50.1(CH)、125.8(C)、126.8(CH)、127.2(C)、127.4(CH)、128.5(2×CH)、128.7(CH)、129.4(CH)、129.6(2×CH)、130.1(CH)、134.9(C)、146.6(C)、149.5(C)、156.1(C)、168.5(C);MS(ESI)m/z 389(M+Na+,100%);HRMS(ESI)C22H23
35ClN2NaO(M+Na+)の計算値、389.1391、実測値389.1381。
【0185】
LW223-(R)-(N-sec-ブチル)-3-フルオロメチル-N-メチル-4-フェ
ニルキノリン-2-カルボキサミド
【0186】
【0187】
アセトニトリル(2.5mL)中の18-クラウン-6(0.032g、0.12mmol)の溶液に、フッ化カリウム(0.036g、0.61mmol)を添加し、得られた懸濁液を室温で0.5時間にわたって撹拌した。次いで、アセトニトリル:ジクロロメタン(2:1、9.0mL)中の(R)-3-ブロモメチル-(N-sec-ブチル)-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド(0.050g、0.12mmol)の溶液を滴下添加し、反応混合物を72時間にわたって還流下で加熱した。完了したら、反応混合物を周囲温度に冷却し、水(20mL)を添加した。溶液をジクロロメタン(3×20mL)で抽出し、乾燥させ(MgSO4)、濾過し、真空で濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(石油エーテル/酢酸エチル 7:3)による精製により、(R)-N-(sec-ブチル)-3-(フルオロメチル)-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを白色固体(0.023g、53%)として得た。
【0188】
NMRスペクトルは、回転異性体の3:1混合物を示した。主要な回転異性体についてのシグナルのみを記録する。融点146~148℃;IR(未希釈)2972(CH)、1628(CO)、1559、1485、1398、1049、970cm-1;[α]
D
30-12.6(c 0.5、CHCl3);1H NMR(400MHz,CDCl3)δ1.05(3H,t,J=7.4Hz,CH2CH3)、1.29(3H,d,J=6.8Hz,CHCH3)、1.41~1.78(2H,m,CH2CH3)、2.7
7(3H,s,NCH3)、4.84~4.95(1H,m,NCH)、5.31(1H,dd,J 20.8,10.8Hz,3-CHH)、5.44(1H,dd,J 20.8,10.8Hz,3-CHH)、7.31~7.40(2H,m,ArH)、7.43~7.58(5H,m,ArH)、7.74(1H,t,J 7.6Hz,ArH)、8.17(1H,d,J 8.4Hz,ArH);13C NMR(101MHz,CDCl3)δ10.9(CH3)、17.4(CH3)、26.5(CH3)、29.9(CH2)、50.0(CH)、79.2(CH2,1JC-F=162.8Hz)、123.0(C,2JC-F=15.1Hz)、127.0(CH)、127.1(C,4JC-F=2.3Hz)、127.4(CH,5JC-F=1.2Hz)、128.5(2×CH)、128.7(CH)、129.6(2×CH)、129.7(CH)、130.4(CH)、134.8(C,4JC-F=1.5Hz)、147.4(C,3JC-F=2.5Hz)、150.8(C,3JC-F=4.7Hz)、156.6(C,5JC-F=2.1Hz)、168.8(C);MS(ESI)m/z 373(M+Na+,100%);HRMS(ESI)C22H23FN2NaO(M+Na+)の計算値、373.1687、実測値373.1670。
【0189】
鏡像異性体過剰率は、chiralcel AD-Hカラム(ヘキサン:iPrOH 97.5:2.5、流速1.0mL/分)、tmajor=30.68及び32.22分、tminor=27.15及び38.38分;er=99.5:0.5を用いるHPLC解析によって決定した。
【0190】
式(II)の化合物は、以下のスキームに示される通りに調製した。化合物は、18F-LW223として公知である。
【0191】
スキーム2-18F-LW223の調製
【0192】
【0193】
18F-LW223-(R)-(N-sec-ブチル)-3-[18-フルオロ]-メチル-N-
メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミド
(R)-(N-sec-ブチル)-3-クロロメチル-N-メチル-4-フェニルキノリン-2-カルボキサミドを、18F-フッ化物([18F]KF))と、炭酸カリウム及びKryptofix 222の存在下、市販の合成機、GE社製TRACERlab(登録商標)FX-FNを使用
して、100℃で10分間にわたって反応させた。放射性標識生成物を、下記の条件:C18 Synergi Hydro-RP 80Å、150×10mm、4μmカラム(Phenomenex社、UK)、アセトニトリル/水(70:30 v/v)を3mL/分の流速で使用するセミ分取高速液体クロマトグラフィー(HPLC,High-Performance Liquid Chromatography)によって精製した。
【0194】
最終生成物を、生理食塩水中10%エタノールを含有する生理溶液中で製剤化した。18
F-LW223は、55分の全合成時間後、35%(15±5GBqの18F-フッ化物から出発、
n=20)の平均非減衰補正収率で得られた。合成の終わりに、18F-LW223の同定、放射
化学的純度(99%を超える)及び比活性(410~810GBq/μmol;11~22Ci/μmol)をHLPC解析によって決定した。
【0195】
生物学的試験
ヒト組織を用いるインビトロ競合及び飽和結合アッセイ
ヒト組織を使用するすべての研究は、East of Scotland Research Ethics Service (Edinburgh Brain Bank、11/ES/0022)に従って行った。51の脳(78%男性、年齢53.
9±9.5)及び29の心臓(83%女性、年齢48.2±13.2)の試料を入手し、rs6971遺伝的多型についてスクリーニングし、これまでに記述されている通り(Owen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 32, 1-5 (2012))、高親和性結合剤(HAB)、混合親和性結合剤(MAB)又は低親和性結合剤(LAB)に群分けした。TSPO結合における性依存的差異(Fairweather et al. J. Cardiovasc. Transl. Res. 7, 192-202 (2014))を除外するために、男性の試料のみをこの研究に利用した。試料組織を10×w/v緩衝液(50mM Tris-Base、pH7.4、4℃)中で均質化した後、遠心分離(32,000g、10分、4℃)した。次いで、組織ペレットを10×w/v緩衝液に再懸濁し、再度遠心分離した後、それらを緩衝液(2mL)に再懸濁した。次いで、Bio-Rad社製タンパク質アッセイ(Bio-Rad社、USA)を使用して、試料をタンパク質濃度について評価し、分取し(aliquot)、使用するまで-80℃で貯蔵した。
【0196】
競合結合アッセイは、以前に報告された通りに行った(Blair et al. Med. Chem. Commun. 4, 1461-1466 (2013))。簡潔に述べると、250μgのタンパク質/各試料のmL
を緩衝液中で調製し、次いで、200μLのこの溶液を、100μLの1nM 3H-PK11195(PerkinElmer社、USA)に、100μLの本発明者らの試験リガンドPK11195(Sigma-Aldrich社、USA)、PBR28(ABX社、Germany)、AB5186又はLW223と一緒に、14の異なる濃度(0.001~3,000nMの範囲)にて4℃で90分間にわたって添加した。各リガンドの非特異的結合を決定するために、8μMの濃度を使用した。2mLの氷冷緩衝液の添加で結合を終了させた後、Brandel社製採取機(Brandel社、USA)を使用して、0.3%ポリエチレンイミン(Sigma-Aldrich社、USA)で前処置したWhatman社製GF/Bフィルター(Whatman社、UK)で直ちに濾過した。次いで、濾紙を除去し
、2.5mLのOptiphase HiSafe 3(Perkin Elmer社、USA)に入れ、48時間後にHidex社製300 SL(Hidex社、Finland)でカウントした。非特異的結合を決定するために10μMのPK11195と並んで6つの濃度の3H-PK11195(1.6~200nM)を使用
したことを除き、同様のプロトコールを使用して、飽和アッセイを実施して、PK11195の
Kdを決定した。すべての結合アッセイは、三連で実施した。
【0197】
GraphPad Prismバージョン6(GraphPad Software社、USA)を使用して、すべての
結合親和性曲線を当てはめた。最小二乗アルゴリズムを使用して一部位及び二部位当てはめの比較をし、F検定を使用してモデル選択を比較した。帰無仮説(より適切なものとして一部位当てはめ)は、p<0.05ならば棄却された。各群(HAB、MAB又はLAB)の最小阻害に正規化された平均%SBを使用して、一部位又は二部位当てはめのいずれが妥当であるかを決定し、その後、LAB:HAB比を計算した。平均群当てはめに基づいて個々の組織試料を当てはめることによって、親和性値(Ki)を計算した。13.95nMのPK11195 Kd値を、飽和結合曲線結果に基づいて使用した。
【0198】
所見
競合結合アッセイを使用して、確立されたTSPOリガンドPK11195及びPBR28、並びに本発明者らのリガンドAB5186及びLW223(
図1に示される通り)の親和性(K
i)を計算
して、遺伝的多型に対するそれらの感受性を評価した。本発明者らの実験条件を使用して
飽和アッセイを実施して、PK11195のK
dを決定し、これは、13.95nMであった(
図7を参照)。
【0199】
ヒトの脳を使用する競合結合アッセイにおいて、PK11195は、遺伝的多型によって影響
を受けず、49の比を有していたPBR28(
図2(b))とは異なり、1のLAB:HAB
親和性比(
図2(a))であった。リガンドAB5186は、影響を受けず1の比を有していたLW223とは異なり、9の比(
図2(b))で遺伝的多型によって影響を受けた。すべての
脳試料についての個々に計算された親和性値は、PK111195及びLW223の結合研究において
HABとLABとの間に有意な差異を実証しなかった(それぞれ
図2(e)及び(h)H)。LW223の平均親和性は0.6nMであり、これは、PK11195よりも2倍高かった。PBR28及びAB5186についてのHAB及びLABにおける個々に計算された親和性値の比較は、
群間の有意な差異を明らかにした(
図2(f)及び(g))。PBR28及びAB5186における
MAB群は二部位当てはめに適合し、一方で、他のすべての実験は、一部位当てはめにより適合していた。
【0200】
脳と同様に、PK11195は、心臓における遺伝的多型によっても影響を受けず、1のLA
B:HAB比であった(
図3(a))。PBR28及びAB5186は、心臓対脳において同様の程
度まで影響を受け、48及び7の比であった(それぞれ
図3(b)及び(c))。LW223
は、心臓における多型によって影響を受けず、1の比であった(
図3(d))。すべての
心臓試料についての個々に計算された親和性値は、PK111195及びLW223の結合研究におい
てHABとLABとの間に有意な差異を実証しなかった(それぞれ
図3(e)及び(h))。心臓において、LW223の平均親和性は、1.7nMでPK11195と同じであった。加えて、AB5186実験においてMAB群のみが二部位当てはめに適合していた。
【0201】
これまでに、11C-PK11195の結合が心臓及び肺等の末梢臓器における多型に対して感受
性であるが脳においてはそうではないことを示唆するためのインビボ画像化証拠があった(Kreisl et al. Neuroimage 49, 2924-2932 (2010))。脳における多型に対するPK11195感受性は、低いシグナル対ノイズ比、心臓及び肺と比較して低い脳取込により画像化できないこと、並びにLABの低い罹患率により不可避である対象数の制限も示唆されている(Kobayashi et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 38, 393-403 (2018))。しかしなが
ら、感受性エクスビボ競合結合アッセイでは、脳取込レベルはさほど問題にならない。この研究において、LW223についての脳と心臓との間における親和性(それぞれ0.6及び
1.2nM)の差異が実証され、同じ(1.2nM)であったPK11195とは異なっていた
。脳におけるLW223親和性の改善は、神経学的炎症を標的化する場合に、利点を提供する
であろう。
【0202】
動物及び外科的手技
すべての実験は、エディンバラ大学動物倫理委員会に従って行い、動物(科学的手続き)法1986下、内務省によって認可された。28匹の成熟雄スプラーグ-ドーリーラット(357.1±8.1g及び10.2±0.4週)及び2匹のC57bl/6(25.3±3.7g及び10.1±0.0週)をこの研究に使用し、2匹のC57bl/6(26.0±5.3g及び13.5±5.7週)を追加研究において使用した。動物を、食物と水を自由に摂取できるようにして、標準的な12時間明所:12時間暗所条件下で収容した。実験当日、1.5~2.5%イソフルラン(50/50 酸素/亜酸化窒素、1L/分)で麻酔を誘発及び維持した。画像化実験のために、放射性トレーサーの注射用の静脈内(i.v.,intravenous)ラインを大腿静脈又は尾静脈において確立し、これまで
に記述されている通り(Warnock et al. EJNMMI Res. 1, 1-11 (2011))、大腿動脈にカ
ニューレを挿管して、自動血液試料収集を可能にした。
【0203】
別個の実験セット(放射性代謝産物研究)において、血液採取のために大腿動脈にカニ
ューレを挿管し、尾静脈を介して放射性トレーサーを静脈内投与した。大腿静脈及び動脈の外科的カニューレ挿管は、次の通りに実施した:ヘパリン化生理食塩水(20IU/mL)を充填したポリエチレンカテーテル(PE50)を、実体顕微鏡の助けを借りて左大腿動脈又は静脈に挿入し、結紮(6-0絹糸)でしっかりと固定した。カテーテルを外科用接着剤で所定の位置に保持した。体温を、加熱したスキャナーベッド又は加熱したマットによって維持し、直腸検温器によってモニターした。心拍数及び呼吸数を包含するバイタルサインを、実験中、継続的にモニターした。
【0204】
PET研究
研究デザイン:
13回のPETスキャンを、18F-LW223を用いて実施した(19.55±2.1MBq
の注射された放射能平均)。ラットにおける尾静脈又は大腿静脈シャントを介する18F-LW223の静脈内ボーラス注射後に、スキャンを取得した(β-プローブ自動血液採取器を用
いる侵襲的動態モデリング実験)。3匹のラットにおいて、試験及び再試験画像化セッションの間に2週間の間隔を置いて、放射性トレーサーの静脈内ボーラス後に、試験-再試験スキャンを得た。ブロッキング研究は、ラットにおいて18F-LW223を静脈内に受ける3
0分前の、PK11195(1mg/kg)の静脈内投与によって行った。これらのスキャンを
、PK11195が使用されなかったベースラインスキャンと比較した。置きかえ研究のために
、ラットに18F-LW223の静脈内投与を受けさせ、120分間にわたって継続的にスキャン
した。60分後、単回用量のPK11195(1mg/kg)を投与した。雄及び雌のマウスを
最初に使用して、18F-LW223について線量測定推定を4時間の動的スキャンで導出し、続
いて、さらなる研究において(10.83±5.6MBqの注射された放射能平均を用いる研究において)追加のマウスを使用した。
【0205】
β-プローブ自動血液採取器を使用する動脈入力関数
市販のβ-プローブシステム(Twilite2、Swisstrace社、Switzerland)を、これまでに記述されている通り(Warnock et al. EJNMMI Res. 1, 1-11 (2011))、血
中放射能の測定に使用した。このシステムは、1秒の時間分解能で、外科的に誘発された動静脈シャントによる失血なしに、全血動脈入力関数測定を可能にする。別個の研究(放射性代謝産物実験)において取得されたデータを用いて、自動血液採取器によって測定された全血動脈入力関数を、血漿対全血比について及びインビボでの代謝について補正した。
【0206】
画像の取得及び再構成
すべてのPETデータは、前臨床PET/CT小動物スキャナー(nanoPET/CT、Mediso社、Hungary)を使用して取得した。CTスキャン(半円形の完全軌道、最大視野、480投影、50kVp、300ms及び1:4ビニング)を減弱補正のために取得した。放射性トレーサー投与の直後に、3次元1:5モードを使用して120分の放射スキャンを得て、次の通りにリビニングした:18×10秒、2×30秒、1×60秒、2×2分、10×5分、6×10分。Mediso社製反復Tera-Tomo 3D再構成アルゴリズム並びに下記の設定:4回の反復、6つのサブセット、完全検出器モデル、低い正則化、スパイクフィルターオン、ボクセルサイズ0.4mm及び400~600keVエネルギー窓を使用して、PET画像を再構成した。PETデータを、ランダム、散乱及び減弱について補正した。
【0207】
画像処理及びデータ解析
再構成されたスキャンを、PMOD 3.8ソフトウェア(PMOD Technologies社、Switz
erland)にインポートした。関心容積(VOI,volume of interest)を、所望の臓器周辺に手動で描画した。時間活性曲線(TAC,Time-activity curve)を生成し、
VOIにおける濃度として計算された標準化された取込値(SUV,standardized uptak
e value)を、注射用量で割り、動物の重量で割った。コンパートメント解析(1-組織
(1T,1-Tissue)及び2-組織(2T,2-Tissue)モデル)及びグラフィカル解析(Loganプロット及びIchise多変量解析)を使用して動態モデリングを実施して、異なる組織
における分布容積(VT)を推定した(Innis et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 27,
1533-1539 (2007)、Logan Nucl. Med. Biol. 27, 661-670 (2000)及びIchise et al. J.
Cereb. Blood Flow Metab. 22, 1271-1281 (2002))。赤池情報量規準(AIC,Akaike
information criterion)及びモデル選択基準(MSC,model selection criterion)
を使用してモデルの当てはめ性能の値を求め、好ましいモデルは最低AIC及び最高MSCを有していた。選択された識別可能性基準は、VT推定の標準誤差パーセント(%SE,percentage standard error)であった。グラフィカル解析を使用して動態モデリング
も実施して、組織領域及び臓器における分布容積比(DVR,distribution volume ratio)を推定し、参照領域VOIは、左心室における血液プールVOIであった(Logan et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 16, 834-840 (1996))。
【0208】
DVRの試験-再試験再現性は、平均測定値の絶対値を標準偏差で割ったものとして計算した:ABS(平均試験/再試験)/SD(試験/再試験)。
【0209】
線量測定法
再構成された全身PETスキャンを、PMOD 3.8ソフトウェア(PMOD Technologies社、
Switzerland)にインポートし、VOIを、バックグラウンドよりも高い放射能濃度を表示した臓器、すなわち、線源臓器周辺に描画した。下記の臓器が線源臓器として同定された:脳、心臓、肺、胆嚢、肝臓、腸、副腎、腎臓及び膀胱。全身VOIを動物体周辺に描画し、全身活性マイナス線源臓器活性として、全身残存活性の定量化に使用した。各時点で、線源臓器の測定された活性を、注射用量パーセント(%ID,percent injected dose)として表現した。
【0210】
標的臓器における蓄積された活性(A(バー))と注射された活性(A0)の比;τ=A(バー)/A0として定義される滞留時間τは、時間ゼロから無限大までの%IDに正規化された組織時間活性曲線の曲線下面積として計算した。τを推定するため及び最後に測定された時点の後に台形法を使用し、放射性トレーサーは線源臓器からの生物学的排除なしに物理的減衰のみを受けることが想定された。計算されたτを、マウス及びヒトの臓器重量における差異について、全体重のパーセントとして正規化し(Khanuja et al. Genet. Commun. 92, 7729-7733 (1995)、Bielohuby et al. Am. J. Physiol. Metab. 293, E139-E146 (2007))、(Stabin et al. J. Nucl. Med. 47, 655-9 (2006)、Hindorf et al. J. Nucl. Med. 45, 1960-5 (2004)及びHui et al. Cancer 73, 951-957 (1994)から公
知のデータに基づいて)、OLINDA/EXM 1.0ソフトウェアに入力し、これを使用して、OLINDA/EXM 1.0において実装された雄又は雌モデルに従う臓器線量及び実効線量を推定した。
【0211】
所見
マウス及びラットにおいて、静脈内ボーラス注射後、
18F-LW223は、脳、心臓、肺及び
副腎を包含するTSPO発現組織に急速に分布され(
図4(a)及び(b)を参照)、尿及び肝胆汁排泄経路の両方を介して排除された。ピーク取込後、放射性トレーサーの排除は、脳及び肺において、心臓と比較してより速かった(
図4(c)及び(d)を参照)。
【0212】
ラット動脈血における
18F-LW223の放射性代謝は緩徐であり、注射後120分でおよそ
70%の親であった(
図4(e))。10%未満の放射性代謝産物が、脳、心臓及び肺において、投与後60及び120分で測定された()。血漿中の測定された親なしの画分は、38.5±7.0%であった(平均±SEM、n=XX)。
【0213】
インビボでの
18F-LW223動態は可逆的であり、2-組織コンパートメントモデル、並び
にグラフィカルLoganプロット(t
*=30分)及びIchise多変量解析(t
*=30分)
によってより良好に当てはめられ/記述された(
図4(f)を参照)。グラフィカル法は、コンパートメントモデルよりも好ましかった(より低い%標準誤差、より低い赤池選択基準及びより高いモデル選択基準)。脳、心臓及び肺において測定されたV
Tは、それぞれ1.46±0.16、9.48±0.03及び5.13±0.29であった(Loganモ
デリング、平均±SEM、n=3)。脳、心臓及び肺における血液プールに関連する分布容積比(DVR)は、それぞれ0.53±0.06、2.96±0.14及び1.84±0.13であった(平均±SEM、n=3)。試験-再試験解析は、結果尺度としてDVRを使用した場合、測定の良好な合致、並びに、脳において16%、心臓において2%、及び肺において15%の対象間変動を示した。
【0214】
18F-LW223注射前のPK11195の投与は、インビボでの標的結合を実証した(
図5を参照)。ブロッキング後に測定されたSUV値には、ベースラインスキャンと比較して64~81%の低減があった。脳、心臓及び肺においてブロッキング後に測定されたV
Tは、それぞれ1.29±0.12、6.19±0.38及び2.27±0.07であった(平均±SEM、n=3)。これは、それぞれ脳、心臓及び肺についての放射性トレーサー結合の、12%、35%及び56%の低減に対応する。同じ投与量のPK11195は、脳、心臓及び
肺においてそれぞれ29%、52%及び40%だけ、平衡時点における標的部位由来の
18F-LW223を置きかえることができた(
図8を参照)。1時間でのラットにおけるPK11195を用いる薬物動態/薬力学研究は、脳における曝露レベルが、心臓及び肺においてはそれぞれ29.31±3.93ng/mL及び38.86±2.24ng/mL(平均±SEM、n=3)であったのと対比して、11.01±1.99ng/mLであったことを示した。これは、PET実験において測定されたブロッキング及び置きかえと合致しており、脳及び末梢臓器における標的結合%差異は、LW223及びPK11195についてインビトロで測定されたK
iと合致する。
【0215】
全身有効時間活性曲線は、最高ピーク注射用量%が、大腸、続いて、肝臓、肺、腎臓、心臓、脳、胆嚢、膀胱及び副腎におけるものであるであることを示した(
図9を参照)。正規化されたタウ値並びに男性及び女性の成人ヒトファントムを使用する線量測定推定は、決定臓器が副腎であることを示した。全身実効線量は、男性及び女性のファントムについてそれぞれ15.3μSv/MBq及び18.4μSv/MBqであると推定された(表1)。
【0216】
さらなるマウスを用いた追加作業後、決定臓器は、腸下部壁であることが分かった。全身実効線量は、男性及び女性のファントムについてそれぞれ20.5μSv/MBq及び23.7μSv/MBqであると推定された(表2)。
【0217】
【0218】
【0219】
放射性代謝産物及び動脈血の処理及び解析
動脈血試料を、放射性トレーサー投与後、2、5、10、20、30、60及び120分で収集した(69.8±9.2MBq、n=17匹のラット)。すべての血液試料は1mLずつであり、ラットにおける終末動脈血収集のための全血液量限界を順守するために、異なる動物から手動で収集して個体群曲線を生成した。血液収集後、すべての試料を解析まで氷上に保った。400~1400keV窓(Perkin Elmer社製Wizzard2、USA)
を使用するウェル型γ-カウンターを使用して、全血及び血漿における放射能を評価した。血漿試料(400μL)を、アセトニトリル変性によって処理し、アセトニトリル/水
70/30の移動相を用いるLuna C18(2)カラム(Luna C18(2)、10×250mm、10μm、Phenomenex社、UK)上でのHPLC(Ultimate2000、ThermoFisher社、UK)により、4mL/分の流速にて解析し、親画分を推定した。血漿タンパク質結合遊離画分(fp)は、限外濾過ユニット(Centrifree(登録商標)30K、Millipore社、UK)を使用して決定した。
【0220】
18F-LW223ヒトオートラジオグラフィー
1~2レベルのパラフィン包埋ヒト深部脳脳卒中組織及び罹患した冠状動脈組織切片を脱ロウし、再水和し、緩衝液(50mM Tris-Base、pH7.4)中で30分間にわた
ってインキュベートした後、PK11195(脳卒中組織において30μM及び冠状動脈組織に
おいて10μM)又はLW223(10μM、非特異的結合群)のいずれかの存在下又は非存
在下、2MBq/mLの18F-LW223(全結合群)とともにインキュベーションした。スラ
イドを緩衝液で2回洗浄した後、風乾させ、Fujifilm社製BAS-IP MS 2040蛍光スクリーン(Fujifilm社、Japan)に曝露した。蛍光スクリーンをFujifilm社製FLA5100画像化
プレートリーダー(Fujifilm社、Japan)で画像化した。所望のグローバル領域を全組織切片周辺に描画して、%SBを計算した。標的:非標的比を計算するために、最高及び最低取込エリアにおける同じ組織内で、局部的試料採取解析を使用した。
【0221】
所見
オートラジオグラフィーを使用して、
18F-LW223のエクスビボヒト罹患組織との結合を
画像化した。組織の組織学的染色は、深部脳脳卒中検体における移動性炎症細胞を含有する出血のエリアを明らかにした(
図6(a)を参照)。心臓突然死患者由来の罹患した冠状血管において、浸潤性炎症細胞を含有する病理学的リモデリング(例えば、新生内膜過形成)の鮮明なエリアがあった(
図6(b))。脳卒中における
18F-LW223の結合は、出
血性領域において最高であり、一部の取込は遠隔領域において最高であった(
図6(c))。罹患した冠状血管において、
18F-LW223の結合は、エリア病理学的リモデリングにお
いて最高であった(
図6(d))。
18F-LW223の結合は、深部脳組織試料においてPK11195を使用して十分にブロックすることができず(
図6(e))、一方で、冠動脈においては75.3±3.2の特異的結合%(%SB)が実現された(
図6(f))。脳卒中試料におけるLW223によるブロッキングは、42.5±7.0%SBを(
図6(g))、冠動脈
においては、88.1±3.4%SBを実現した(
図6(h))。重要なことに、高い標的:非標的比は、脳卒中(7.5)及び罹患した冠状脈(4.5)組織の両方において実現された(
図6(i)及び(j))。健常なヒトの脳と比較して、白質における一部の非特異的結合以外に高取込の領域はなかった(
図10を参照)。
【0222】
一般的な統計的解析
Graphpad Prism version 6(GraphPad Spftware Inc.社、USA)を、すべての当てはめ、統計的解析及びグラフの作成に使用した。競合結合アッセイ及び飽和アッセイにおいて、実験三連内の外れ値は、Grubbs検定を0.2のアルファで使用して除去した。対応のない及び対応のあるt検定を、関係する図の説明文内で指示されている、2つの群の間の比較のためにこの研究において使用し、p<0.05は統計学的に有意と判断された。すべてのエラーバーは、図及び表の説明文において別段の指示がない限り、平均値の標準誤差(SEM,standard error mean)を表す。
【0223】
所見
最近、Thr148多型あり及びなしのTSPOの結晶性構造を初めて詳述した研究が刊行された(Li et al.)。この研究において、著者らは、PK11195の結合が結合ポケットを安定化させ、一方、多型がコレステロール結合部位に対して大きな影響を有することを
優雅に実証した。この証拠は、コレステロール部位と関与するリガンドが、多型に対するより大きい感受性を表示し得ることを示唆するものである。種々の結合研究を通して、TSPO結合部位が、3つの主な結合ポケット;ベンゾジアゼピン部位、イソキノリン部位及びコレステロール部位を有することが公知である(Li et al.、Lin et al. Genomics 18, 643-50 (1993)、及びLuus et al. J. Label. Compd. Radiopharm. 53, 501-510 (2010))。LW223は、脳及び心臓における多型に対して非感受性であり、PK11195と構造的に同
様であるため、本発明者らは、LW223がコレステロールよりもむしろイソキノリン部位を
標的化していると推測している。しかしながら、脳及び心臓におけるLW223についての全
体的な親和性値の差異は、異なる部位にわたるTSPOイソキノリン結合ポケットにおける臓器特異的コンフォメーション変更を示唆している。
【0224】
最初のフッ素化TSPOリガンドがrs6971多型に対して非感受性であるだけでなく、18F-LW223も、回転異性体として存在するという点で独特である。これは、HPLC
における2つのピークの存在によって明白であり、キラルHPLCによって確認された。この稀な特徴は、18F-LW223の優れた動態及び代謝特性の背後にあり得、静脈内ボーラス
によって投与されているにもかかわらず、注入投与と同様のプロファイルを表示する。18F-LW223の別の独特の態様は、ヒトにおいて1~6%の遊離画分を有する11C-PK11195と比較して高い血漿遊離画分であり、これは38.5%であった(Owen et al.、Endres et al. J. Nucl. Chem. 50, 1276-82 (2009))。明瞭に、この独特の態様並びに好都合な動態及び代謝プロファイルへのその寄与を決定するためには、さらなる調査が要される。これらの特徴は18F-LW223の診療所への移行を妨害しないが、他の基準は依然として満たされ
なくてはならない。第一に、毒物学パッケージは、この放射性トレーサーの安全性を決定するために未だ行われていない。18F-LW223のインビボでの投与後に、明らかになった負
の影響はないことに留意すべきである。その上、第二に、この研究内で提示された線量測定推定は、いかなる放射線学的安全性の問題を示唆するものでもない。
【0225】
この研究の限定は、新規TSPO放射性トレーサーを開発しているほとんどの研究が直面しているものと同様である。第一に、この研究におけるLABの罹患率は、14%前後であり、他の研究(Fujita et al. EJNMMI Res. 7 (2017), doi:10.1186/s13550-017-0334-8)において報告されている罹患率よりは高いが、試験に利用可能な試料を制限してい
る。しかしながら、この研究は、脳におけるPK11195及びPBR28についてのLAB:HAB比が、以前に報告されたもの(Owen et al. J. Cereb. Blood Flow Metab. 32, 1-5 (2012)、Owen et al. J. Nucl. Med. 52, 24-32 (2011)、Owen et al. J. Cereb. Blood Flow
Metab. 30, 1608-18 (2010))と同様であり、PBR28及びAB5186が、LABとHABとの
間の統計学的に有意な差異に到達することを見出した。インビトロ結合研究結果がインビボのそれらに反映されていない分野において、幾つかの論争も起こっている。TSPO放射性トレーサー11C-ER176は、インビトロで1.3のLAB:HAB比を表示した(Zanotti-Fregonara et al. ACS Chem. Neurosci. (2014), doi:10.1021/cn500138n)が、後の
インビボ研究において、これは3前後の比を有することが分かった(Ikawa et al. J. Nucl. Med. (2016), doi:10.2967/jnumed.116.178996)。しかしながら、多型のこの軽い影響があったとしても、11C-ER176はLABを画像化する能力、他のリガンドでは不可能な
成果を依然として有していることが報告された。同じ現象が18F-LW223にも当てはまった
ならば、この放射性トレーサーは、フッ素化されることから依然として利益を得、それにより広い臨床使用をもたらす。この研究の最終的な制限の1つは、非ヒト霊長類及びヒトよりも速い動態及び代謝を通常表示するげっ歯類において行われたことであった。しかしながら、この注意事項があったとしても、この研究における18F-LW223の動態及び代謝プ
ロファイルは、これらの態様が移行される際には問題とならないことを示唆するものである。
【0226】
幅広い病理におけるマクロファージ及びミクログリア等の炎症性食細胞の役割により、
成功したTSPO画像化アプローチの開発は、大きな可能性を有する。この研究において、本発明者らは、18F-LW223のエクスビボ取込が、病理学的炎症駆動事象のエリアにおい
て明白であることを実証している。これまでに、11C-PK11195は、その制限にもかかわら
ず、成功裏に使用されて、神経疾患における炎症の増大を実証してきた。例えば、11C-PK11195取込の増大は、対照と比較して、アルツハイマー病及び進行性核上性麻痺を持つ患
者において実証されてきた(Calsolaro et al. Alzheimer’s Dement. 11, P792 (2015)
)。取込増大の領域は、両方の疾患における確立された神経病理学的分布パターンに関連しており、アルツハイマー病におけるエピソード記憶と負に、進行性核上性麻痺における疾患の重症度と正に、相関していた。11C-PK11195は、アテローム性動脈硬化症のプラー
ク炎症を調査するためにも成功裏に使用されてきた。エクスビボ研究において、11C-PK11195結合は、マクロファージが豊富な領域と相関することが分かった(Bird et al. Atherosclerosis 210, 388-391 (2010))。インビボ臨床研究において、プラーク内の11C-PK11195取込は、最近、症候性及び無症候性病変の間を区別することができた(Gaemperli et al. Eur. Heart J. 33, 1902-1910 (2012))。これらの積極的な臨床研究は、治療標的としてのTSPOの新しい役割(Schalle et al. J. Pharmacol. Exp. Ther. 333, 696-706
(2010)及びParadis et al. Cardiovasc. Res. 98, 420-427 (2013))に加えて、研究ツ
ール、診断剤及び治療用コンパニオン画像化剤として、成功したTSPO放射性トレーサーから得ることができる可能性を強調している。
【0227】
結論として、rs6971遺伝的多型に対する18F-LW223の非感受性、放射性標識のよ
り長い半減期及び好都合な動態は、この新規TSPO放射性トレーサーを、診療所へのさらなる移行に値する、TSPO画像化の分野における有望なブレイクスルーとしている。
【0228】
追加の実験及び結果
心筋梗塞のラットモデルにおける
18F-LW223結合
ラットに、左冠動脈前下行枝の永久結紮を受けさせて、心筋梗塞後を誘発し、7日後、
18F-LW223 PET/CTを使用して画像化した(
図11を参照)。ナイーブラットを比
較のための健常対照として使用した。血液プールに関連する標準取込値(SUV,standard uptake value)の定量化(左心室において測定した)は、心臓、脳及び肺にわたる
18F-LW223結合の増大を実証した。これは、心筋梗塞が、全身性炎症の増大としても解釈され得るこれらの臓器内におけるTSPOの発現の増大を媒介したことを指示している。
【0229】
(参考文献)
本明細書において言及されるすべての文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
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