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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081770
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】抗HER2抗体-薬物コンジュゲート
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/30 20060101AFI20240611BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240611BHJP
【FI】
C07K16/30 ZNA
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024059913
(22)【出願日】2024-04-03
(62)【分割の表示】P 2022149242の分割
【原出願日】2015-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2014017777
(32)【優先日】2014-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014168944
(32)【優先日】2014-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014227886
(32)【優先日】2014-11-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】307010166
【氏名又は名称】第一三共株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】230104019
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 聖二
(74)【代理人】
【識別番号】100119183
【弁理士】
【氏名又は名称】松任谷 優子
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】内藤 博之
(72)【発明者】
【氏名】扇谷 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】益田 剛
(72)【発明者】
【氏名】中田 隆
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌生
(72)【発明者】
【氏名】蘆田 真二
(72)【発明者】
【氏名】森田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】粕谷 裕司
(72)【発明者】
【氏名】早川 市郎
(72)【発明者】
【氏名】阿部 有生
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの製造方法を提供する。
【解決手段】次式の薬物-リンカー構造:-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)5-C(=O)-GGFG-NH-(CH2)3-C(=O)-(NH-DX)をチオエーテル結合を介して抗HER2抗体に結合させた抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であり、前記抗体を還元条件で処理するステップ、及びその後に前記抗体を次式の化合物:(maleimid-N-yl)-(CH2)5-C(=O)-GGFG-NH-(CH2)3-C(=O)-(NH-DX)(式中、-(NH-DX)は、下記構造式で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である)と反応させるステップを含む、製造方法である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次式の薬物-リンカー構造:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)
をチオエーテル結合を介して抗HER2抗体に結合させた抗体-薬物コンジュゲートの製造方法であり、
前記抗体を還元条件で処理するステップ及びその後に、
前記抗体を次式の化合物:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)
と反応させるステップを含む、製造方法。
(式中、(maleimid-N-yl)-は、次式:
【化1】
で示される、窒素原子が結合部位である基であり、
-(Succinimid-3-yl-N)-は、次式:
【化2】
で示される構造であり、このものの3位で前記抗体と結合し、1位の窒素原子上でこれを含むリンカー構造内のメチレン基と結合し、
-(NH-DX)は、次式:
【化3】
で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基であり、
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。)
【請求項2】
抗HER2抗体が、配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
抗HER2抗体が、配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個の範囲である請求項1-3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個の範囲である請求項1-3のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗HER2抗体と抗腫瘍性薬物とをリンカー構造部分を介して結合させた、
抗腫瘍薬として有用な抗体-薬物コンジュゲートに関する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞表面に発現し、かつ細胞に内在化できる抗原に結合する抗体に、細胞毒性を有す
る薬物を結合させた抗体-薬物コンジュゲート(Antibody-Drug Conjugate;ADC)は、癌
細胞に選択的に薬物を送達できることによって、癌細胞内に薬物を蓄積させ、癌細胞を死
滅させることが期待できる(非特許文献1~3参照)。ADCとして例えば、抗CD33抗体に
カリチアマイシンを結合させたMylotarg(登録商標;ゲムツズマブオゾガマイシン)が急
性骨髄性白血病の治療薬として認可されている。また、抗CD30抗体にオーリスタチンEを
結合させたAdcetris(登録商標;ブレンツキシマブベドティン)がホジキンリンパ腫と未
分化大細胞リンパ腫の治療薬として最近認可された(非特許文献4参照)。これまでに認
可されたADCに含有される薬物は、DNA又はチューブリンを標的としている。
【0003】
抗腫瘍性の低分子化合物としてトポイソメラーゼIを阻害して抗腫瘍作用を発現する化
合物であるカンプトテシン誘導体が知られている。その中で下式
【0004】
【化1】
【0005】
で示される抗腫瘍性化合物(エキサテカン、化学名:(1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フル
オロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]イ
ンドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)は、水溶性のカンプトテシン誘導体
である(特許文献1、2)。この化合物は、現在臨床で用いられているイリノテカンとは
異なり、抗腫瘍効果の発現には酵素による活性化を必要としない。また、イリノテカンの
薬効本体であるSN-38や、同じく臨床で用いられているトポテカンよりも強いトポイソメ
ラーゼI阻害活性が観察され、in vitroで種々の癌細胞に対して、より強い殺細胞活性が
認められた。特にP-glycoproteinの発現によってSN-38等に耐性を示す癌細胞に対しても
効果が認められた。また、マウスのヒト腫瘍皮下移植モデルでも強い抗腫瘍効果が認めら
れたが、臨床試験が行われたものの上市には至っていない(非特許文献5~10参照)。
エキサテカンがADCとして有効に作用するかについては明らかではなかった。
【0006】
DE-310は、生分解性のカルボキシメチルデキストランポリアルコールポリマーにエキサ
テカンを、GGFGペプチドスペーサーを介して結合させた複合体である(特許文献3)。エ
キサテカンを高分子プロドラッグ化することによって、高い血中滞留性を保持させ、さら
に腫瘍新生血管の透過性の亢進と腫瘍組織滞留性を利用して、受動的に腫瘍部位への指向
性を高めたものである。DE-310は、酵素によるペプチドスペーサーの切断によって、活性
本体であるエキサテカン、及びグリシンがアミノ基に結合しているエキサテカンが持続的
に遊離され、その結果薬物動態が改善される。非臨床試験における種々の腫瘍の評価モデ
ルにおいて、DE-310は、ここに含まれるエキサテカンの総量がエキサテカン単剤の投与時
よりも減少しているのにも拘らず、単剤の投与時よりもより高い有効性を示した。DE-310
に関しては臨床試験が実施されて有効例も確認され、活性本体が正常組織よりも腫瘍に集
積することが確認されたとの報告がある。その一方、腫瘍へのDE-310及び活性本体の集積
は正常組織への集積と大差なく、ヒトでは受動的なターゲティングは見られなかったとの
報告もある(非特許文献11~14参照)。結果としてDE-310も上市には至らず、エキサ
テカンがこの様なターゲティングを指向した薬物として有効に機能するかについては明ら
かではなかった。
【0007】
DE-310の関連化合物として、-NH-(CH2)4-C(=O)-で示される構造部分を-GGFG-スペーサ
ーとエキサテカンの間に挿入し、-GGFG-NH-(CH2)4-C(=O)-をスペーサー構造とする複合体
も知られているが(特許文献4)、同複合体の抗腫瘍効果については全く知られていない
【0008】
HER2は、ヒト上皮細胞増殖因子受容体2型関連癌遺伝子として同定された代表的な
増殖因子受容体型の癌遺伝子産物のひとつであり、分子量185kDaのチロシンキナー
ゼドメインを持つ膜貫通型受容体蛋白である(非特許文献15)。HER2のDNA配列
及びアミノ酸配列は公的データベース上に公開されており、例えば、M11730(Ge
nbank)、NP_004439.2(NCBI)等のアクセッション番号により参照
可能である。
HER2(neu,ErbB-2)はEGFR(epidermal growth factorreceptor:
上皮増殖因子受容体)ファミリーのひとつであり、ホモダイマー或は他のEGFR受容体
であるHER1(EGFR,ErbB-1)、HER3(ErbB-3)、HER4(E
rbB-4)とのヘテロダイマー形成(非特許文献16-18)によって細胞内チロシン
残基が自己リン酸化されて活性化することにより、正常細胞及び癌細胞において細胞の増
殖・分化・生存に重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献19、20
)。HER2は乳癌、胃癌、卵巣癌等様々な癌種において過剰発現しており(非特許文献
21-26)、乳癌においては負の予後因子であることが報告されている(非特許文献2
7、28)。
【0009】
トラスツズマブは、組み換えヒト化抗HER2モノクローナル抗体(huMAb4D5
-8、rhuMAb HER2、ハーセプチン(登録商標))と称される、マウス抗HE
R2抗体4D5(非特許文献29、特許文献5)のヒト化抗体(特許文献6)である。トラ
スツズマブは、HER2の細胞外ドメインIVに特異的に結合し、抗体依存性細胞障害(
ADCC)誘導やHER2からのシグナル伝達阻害を介して抗癌効果を発揮する(非特許
文献30、31)。トラスツズマブはHER2を過剰発現した腫瘍に対して高い効果を示
すことから(非特許文献32)、HER2を過剰発現している転移性乳癌患者での治療薬
として、米国で1999年、我が国において2001年に上市された。
乳癌におけるトラスツズマブの治療効果は十分に証明されている一方(非特許文献33
)、トラスツズマブに応答するのは、広範囲の従来の抗癌治療を受けたHER2を過剰発
現した乳癌患者の約15%と言われ、この集団の約85%の患者はトラスツズマブ処置に
対して応答しないか、応答が貧弱であるのみである。
【0010】
したがって、トラスツズマブに対して応答しないか、応答が貧弱であるHER2を過剰
発現する腫瘍又はHER2発現に関連する障害を患っている患者のために、HER2発現
に関連する疾病を標的とする治療薬の必要性が認識されており、トラスツズマブにリンカ
ー構造を介して抗腫瘍性薬物を結合したT-DM1(トラスツズマブエムタンシン、カド
サイラ(登録商標);非特許文献34)やHER2の細胞外ドメインIIを標的とし、ヘ
テロダイマー形成を阻害するよう設計されたペルツズマブ(パージェタ(登録商標);非
特許文献35、特許文献7)が開発された。しかしながら、応答性や活性の強さ、並びに
適応範囲は未だ十分ではなく、HER2を標的とする未充足ニーズが存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平5-59061号公報
【特許文献2】特開平8-337584号公報
【特許文献3】国際公開第1997/46260号
【特許文献4】国際公開第2000/25825号
【特許文献5】米国特許第5677171号明細書
【特許文献6】米国特許第5821337号明細書
【特許文献7】国際公開第01/00244号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Ducry,L., et al., Bioconjugate Chem. (2010) 21, 5-13.
【非特許文献2】Alley,S. C., et al., Current Opinion in Chemical Biology (2010) 14, 529-537.
【非特許文献3】DamleN. K. Expert Opin. Biol. Ther. (2004) 4, 1445-1452.
【非特許文献4】SenterP. D., et al., Nature Biotechnology (2012) 30, 631-637.
【非特許文献5】Kumazawa,E., Tohgo, A., Exp. Opin. Invest. Drugs (1998) 7, 625-632.
【非特許文献6】Mitsui,I., et al., Jpn J. Cancer Res. (1995) 86, 776-786.
【非特許文献7】Takiguchi,S., et al., Jpn J. Cancer Res. (1997) 88, 760-769.
【非特許文献8】Joto,N. et al., Int J Cancer (1997) 72, 680-686.
【非特許文献9】Kumazawa,E. et al., Cancer Chemother. Pharmacol. (1998) 42, 210-220.
【非特許文献10】DeJager, R., et al., Ann N Y Acad Sci (2000) 922, 260-273.
【非特許文献11】Inoue,K. et al., Polymer Drugs in the Clinical Stage, Edited by Maeda et al. (2003)145-153.
【非特許文献12】Kumazawa,E. et al., Cancer Sci (2004) 95, 168-175.
【非特許文献13】Soepenberg,O. et al., Clinical Cancer Research, (2005) 11, 703-711.
【非特許文献14】WenteM. N. et al., Investigational New Drugs (2005) 23, 339-347.
【非特許文献15】Coussens L, et al.,Science. 1985;230(4730):1132-1139.
【非特許文献16】Graus-Porta G, et al., EMBO J.1997;16:1647-1655.
【非特許文献17】Karnagaran D, et al., EMBO J. 1996;15:254-264.
【非特許文献18】Sliwkowski MX, et al., J Biom Chem. 1994;269:14661-14665.
【非特許文献19】Di Fore PP, et al.,Science. 1987;237:178-182.
【非特許文献20】Hudziak RM, et al., Proc Natl Acad Sci U S A. 1987;84:7159-7163.
【非特許文献21】Hardwick R, et al.,Eur. J Surg Oncol. 1997 (23):30-35.
【非特許文献22】Korkaya H, et al.,Oncogene. 2008;27(47):6120-6130.
【非特許文献23】Yano T, et al., OncolRep. 2006;15(1):65-71.
【非特許文献24】Slamon DJ, et al.,Science. 1987;235:177-182.
【非特許文献25】Gravalos C, et al.,Ann Oncol 19: 1523-1529, 2008.
【非特許文献26】Fukushige S et al.,Mol Cell Biol 6: 955-958, 1986.
【非特許文献27】Slamon DJ, et al.Science. 1989;244:707-712.
【非特許文献28】Kaptain S et al.,Diagn Mol Pathol 10:139-152, 2001.
【非特許文献29】Fendly. et al.,Cancer Research 1990(50):1550-1558.
【非特許文献30】Sliwkowski MX, etal., Semin Oncol. 1999;26(4,Suppl 12):60-70.
【非特許文献31】Hudis CA, et al., NEngl J Med. 357: 39-51, 2007.
【非特許文献32】Vogel CL, et al., JClin Oncol. 2002;20(3):719-726.
【非特許文献33】Baselga et al., J.Clin. Oncol. 14:737-744 (1996).
【非特許文献34】Howard A. et al., J Clin Oncol 29:398-405.
【非特許文献35】Adams CW, et al.,Cancer Immunol Immunother. 2006;6:717-727.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
抗体による腫瘍の治療においては、抗体が抗原を認識して腫瘍細胞に結合しても抗腫瘍
効果が十分でない場合が観察されることもあり、より効果の高い抗腫瘍抗体が必要とされ
る場合がある。また、抗腫瘍性の低分子化合物においては、抗腫瘍効果に優れていても副
作用や毒性面等、安全性上の問題を有するものが多く、安全性をより高めてより優れた治
療効果を獲得することが課題となっている。すなわち、本発明は、抗腫瘍効果と安全性面
に優れる、優れた治療効果を有する抗腫瘍薬を獲得して提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、抗HER2抗体が腫瘍細胞を標的にできる抗体であること、すなわち、
腫瘍細胞を認識できる特性、腫瘍細胞に結合できる特性、腫瘍細胞に内在化できる特性、
腫瘍細胞に細胞障害性を有する特性、或は腫瘍細胞に対する殺細胞活性等を備えた抗体で
あることから、抗腫瘍性化合物であるエキサテカンを、リンカー構造部分を介して同抗体
に結合させた抗体-薬物コンジュゲートに変換することによって、抗腫瘍性化合物を腫瘍
細胞により確実に移動させて当該化合物の抗腫瘍効果を腫瘍細胞で特異的に発揮させるこ
とができること、したがって抗腫瘍効果の確実な発揮とともに抗HER2抗体の殺細胞効
果の増強が期待できること、さらには抗腫瘍性化合物の投与量を当該化合物の単体投与時
よりも減少させることができること、すなわちこれらによって通常細胞への抗腫瘍性化合
物の影響を緩和させることができるのでより高い安全性を達成できること、が可能と考え
た。
このために本発明者らは特定の構造のリンカーを創出し、このリンカーを介して抗HE
R2抗体とエキサテカンとを結合させた抗体-薬物コンジュゲートを獲得することに成功
し、同コンジュゲートが優れた抗腫瘍効果を発揮することを見出して本発明を完成させた
のである。
【0015】
すなわち本願発明は、
[1]次式
【化2】
で示される抗腫瘍性化合物と抗HER2抗体とを次式:
-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-
で示される構造のリンカーを介して、抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジスルフィド
結合部分において形成させたチオエーテル結合によって結合させたことを特徴とする抗体
-薬物コンジュゲートに関するものである。
【0016】
ここで、抗HER2抗体はLの末端において結合し、抗腫瘍性化合物は、1位のアミ
ノ基の窒素原子を結合部位として、-(CH2)n-C(=O)-部分のカルボニル基に結合する。
式中、nは、0から6の整数を示し、
nは、0から5の整数を示し、
Lは、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n-C(=O)-を示し、
ここで、nは、2から8の整数を示し、
Lは、-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、nは、1から6の整数を示し
Lは、2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示し、
Lは、-O-又は単結合を示し、
-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:
【化3】

で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
【0017】
さらに本願発明は以下の各々に関するものでもある。
[2]Lのペプチド残基が、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリ
ン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれるアミノ酸からなるペプチド残基
である[1]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[3]Lが、以下の群から選ばれるペプチド残基である[1]又は[2]に記載の抗体
-薬物コンジュゲート:
-GGF-、
-DGGF-、
-(D-)D-GGF-、
-EGGF-、
-GGFG-、
-SGGF-、
-KGGF-、
-DGGFG-、
-GGFGG-、
-DDGGFG-、
-KDGGFG-、及び
-GGFGGGF-;
ここで『(D-)D』はD-アスパラギン酸を示す。
[4]Lが、4個のアミノ酸で構成されるペプチド残基である[1]又は[2]に記載
の抗体-薬物コンジュゲート。
[5]Lが、テトラペプチド残基の-GGFG-である[1]~[4]のいずれか一項に記載
の抗体-薬物コンジュゲート。
【0018】
[6]nが2から5の整数であって、Lが単結合である[1]~[5]のいずれか一項
に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[7]nが2から5の整数であって、Lが-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-であり、n
が2又は4である[1]~[5]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[8]-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-が、4から7原子の鎖長を有する部分構造であ
る[1]~[7]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[9]-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-が、5又は6原子の鎖長を有する部分構造であ
る[1]~[7]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[10]-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-C(=O)-である[1]~[9]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュ
ゲート。
[11]-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である[1]~[9]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0019】
[12]-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-に薬物を結合させた薬物-リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物-リンカー構造である[1]~[9]のい
ずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0020】
ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:
【化4】

で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
-(NH-DX)は次式:
【化5】

で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。
【0021】
[13]-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-に薬物を結合させた薬物-リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物-リンカー構造である[1]~[9]の
いずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0022】
ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。
【0023】
[14]次式
【化6】

で示される抗腫瘍性化合物と抗HER2抗体とを次式:
-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-
で示される構造のリンカーを介して、抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジスルフィド
結合部分において形成させたチオエーテル結合を介して結合させたことを特徴とする抗体
-薬物コンジュゲート。
ここで、抗HER2抗体はLの末端において結合し、抗腫瘍性化合物は-(CH2)n-C(=
O)-部分のカルボニル基に結合する。
式中、nは、0から6の整数を示し、
nは、0から5の整数を示し、
Lは、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n-C(=O)-を示し、
ここで、nは、2から8の整数を示し、
Lは、-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、nは、1から6の整数を示し、
Lは、-GGFG-のテトラペプチド残基を示し、
Lは、-O-又は単結合を示し、
-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:
【化7】

で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
【0024】
[15]nが3であり、nが0であり、nが2であり、Lが-NH-(CH2CH2-O)n-CH2C
H2-C(=O)-であって、nが2であり、Lが単結合であるか、
nが1であり、nが1であり、nが5であり、Lが単結合であり、Lが-O-であるか
、又は
nが2であり、nが1であり、nが5であり、Lが単結合であり、Lが-O-である、
[14]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[16]nが2又は5であって、Lが単結合である[14]又は[15]に記載の抗体
-薬物コンジュゲート。
[17]nが2又は5であって、Lが-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-であり、n
2又は4である[14]又は[15]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[18]-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-が、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、又は
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である[14]~[17]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0025】
[19]-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-に薬物を結合させた薬物-リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物-リンカー構造である[14]~[18]
のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
【0026】
ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-は次式:
【化8】

で示される構造であり、このものの3位で抗HER2抗体と結合し、1位の窒素原子上で
これを含むリンカー構造内のメチレン基と結合する。
-(NH-DX)は次式:
【化9】

で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基を示す。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。
【0027】
[20]-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-に薬物を結合させた薬物-リン
カー構造部分が、次の群から選ばれる1種の薬物-リンカー構造である[14]~[18
]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート:
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
ここで、-(Succinimid-3-yl-N)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。
【0028】
[21]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[1]~[20]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[22]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[1]~[20]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[23]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[1]~[20]のいずれか一に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【0029】
[24][1]~[23]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を含有する医薬。
[25][1]~[23]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を含有する抗腫瘍薬及び/又は抗癌薬。
[26]肺癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、胃
腸間質腫瘍、子宮頸癌、食道癌、扁平上皮癌、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、結腸癌、直腸
癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌
、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞種、骨髄腫、又は肉腫に適用するための[25]に記
載の抗腫瘍薬及び/又は抗癌薬。
[27][1]~[23]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を活性成分とし、薬学的に許容される製剤成分とを含有する医薬組成
物。
[28]肺癌、尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、胃
腸間質腫瘍、子宮頸癌、食道癌、扁平上皮癌、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、結腸癌、直腸
癌、結腸直腸癌、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、陰茎癌
、白血病、悪性リンパ腫、形質細胞種、骨髄腫、又は肉腫に適用するための[27]に記
載の医薬組成物。
[29][1]~[23]のいずれか一項に記載の抗体-薬物コンジュゲート、その塩、
又はそれらの水和物を投与することを特徴とする腫瘍及び/又は癌の治療方法。
【0030】
[30]次式で示される化合物:
(maleimid-N-yl)-(CH2)n-C(=O)-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-(NH-DX)
を抗HER2抗体又はその反応性誘導体と反応させ、該抗体のヒンジ部に存在するジスル
フィド結合部分においてチオエーテル結合を形成させる方法によって薬物-リンカー部分
を該抗体に結合させることを特徴とする抗体-薬物コンジュゲートの製造方法。
【0031】
式中、nは、整数の2から8を示し、
Lは、-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、nは、1から6の整数を示し、
Lは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリン、セリン、グルタミ
ン酸、アスパラギン酸から選ばれる2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示
し、
nは、0から6の整数を示し、
nは、0から5の整数を示し、
Lは、-O-又は単結合を示し、
(maleimid-N-yl)-は、次式
【化10】

で示される、窒素原子が結合部位となっている基である。
-(NH-DX)は、次式
【化11】

で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。
【0032】
[31]薬物-リンカー部分を抗HER2抗体に結合させる方法が、該抗体を還元処理し
て反応性誘導体に変換する方法である[30]に記載の製造方法。
【0033】
[32]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[33]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[34]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[30]又は[31]に記載の製造方法。
[35][30]~[34]のいずれかの製造方法によって得られる抗体-薬物コンジュ
ゲート。
【0034】
[36]抗HER2抗体を還元条件で処理した後に以下の群から選ばれる化合物を反応さ
せることを特徴とする、該抗体のヒンジ部のスルフィド結合部分においてチオエーテル結
合を形成させて得られる抗体-薬物コンジュゲート:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(
=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-
CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、及び
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0035】
ここで、(maleimid-N-yl)-は、次式
【化12】

で示される、窒素原子が結合部位となっている基である。
-(NH-DX)は、次式
【化13】

で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。
-GGFG-は、-Gly-Gly-Phe-Gly-のテトラペプチド残基を示す。
【0036】
[37]抗HER2抗体を還元条件で処理した後に以下の群から選ばれる化合物を反応さ
せることを特徴とする、該抗体のヒンジ部のスルフィド結合部分においてチオエーテル結
合を形成させて得られる抗体-薬物コンジュゲート:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、及び
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。
ここで、(maleimid-N-yl)-、-(NH-DX)、及び-GGFG-は、上記の通りである。
【0037】
[38]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が1から10
個の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[39]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が2から8個
の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
[40]選択された1種の薬物-リンカー構造の1抗体あたりの平均結合数が3から8個
の範囲である[36]又は[37]に記載の抗体-薬物コンジュゲート。
【発明の効果】
【0038】
特定の構造のリンカーを介して抗腫瘍性化合物エキサテカンを結合させた抗HER2抗
体-薬物コンジュゲートによって、優れた抗腫瘍効果及び安全性を達成することができる
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ヒト化抗HER2モノクローナル抗体重鎖のアミノ酸配列(配列番号1)を示す。
図2】ヒト化抗HER2モノクローナル抗体軽鎖のアミノ酸配列(配列番号2)を示す。
図3】抗体-薬物コンジュゲート(27)又はトラスツズマブによるヒト乳癌株KPL-4細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図4】抗体-薬物コンジュゲート(8)、(28)、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト胃癌株NCI-N87細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図5】抗体-薬物コンジュゲート(8)、(29)、(30)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株JIMT-1細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図6】抗体-薬物コンジュゲート(31)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト膵臓癌株Capan-1細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図7】抗体-薬物コンジュゲート(50)によるヒト胃癌株NCI-N87細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図8】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株ST225細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図9】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト乳癌株ST910細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図10】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト大腸癌株CTG-0401細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図11】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト非小細胞肺癌株CTG-0860細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図12】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト胆管癌株CTG-0927細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図13】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト食道癌株CTG-0137細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
図14】抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシンによるヒト卵巣癌株SK-OV-3細胞皮下移植ヌードマウスに対する抗腫瘍効果を示す図である。図中、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明を実施するための好適な形態について図面を参照しながら説明する。なお
、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、こ
れによって本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
【0041】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、抗HER2抗体に、リンカー構造部
分を介して抗腫瘍性化合物を結合させた抗腫瘍性薬物であり、以下に詳細に説明する。
【0042】
[抗体]
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートに使用される抗HER2抗体は、いずれ
の種に由来してもよいが、好ましくは、ヒト、ラット、マウス、及びウサギを例示できる
。抗体がヒト以外の種に由来する場合は、周知の技術を用いて、キメラ化又はヒト化する
ことが好ましい。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であっても、モノクローナル抗体
であってもよいが、モノクローナル抗体が好ましい。
抗HER2抗体は腫瘍細胞を標的にできる抗体であり、すなわち腫瘍細胞を認識できる
特性、腫瘍細胞に結合できる特性、腫瘍細胞内に取り込まれて内在化する特性、そして腫
瘍細胞に対する殺細胞活性等を備えており、抗腫瘍活性を有する化合物を、リンカーを介
して結合させて抗体-薬物コンジュゲートとすることができる。
抗体の腫瘍細胞への結合性は、フローサイトメトリーを用いて確認できる。腫瘍細胞内
への抗体の取り込みは、(1)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細胞内
に取り込まれた抗体を蛍光顕微鏡で可視化するアッセイ(Cell Death and Differentiati
on (2008) 15, 751-761)、(2)治療抗体に結合する二次抗体(蛍光標識)を用いて細
胞内に取り込まれた蛍光量を測定するアッセイ(Molecular Biology of the Cell Vol. 1
5, 5268-5282,December 2004)、又は(3)治療抗体に結合するイムノトキシンを用いて
、細胞内に取り込まれると毒素が放出されて細胞増殖が抑制されるというMab-ZAPアッセ
イ(Bio Techniques 28:162-165, January 2000)を用いて確認できる。イムノトキシンと
しては、ジフテテリア毒素の触媒領域とプロテインGとのリコンビナント複合蛋白質も使
用可能である。
抗体の抗腫瘍活性は、invitroでは、細胞の増殖の抑制活性を測定することで確認でき
る。例えば、抗体の標的蛋白質を過剰発現している癌細胞株を培養し、培養系に種々の濃
度で抗体を添加し、フォーカス形成、コロニー形成及びスフェロイド増殖に対する抑制活
性を測定することができる。In vivoでは、例えば、標的蛋白質を高発現している腫瘍細
胞株を移植したヌードマウスに抗体を投与し、癌細胞の変化を測定することによって、抗
腫瘍活性を確認できる。
抗体-薬物コンジュゲートは抗腫瘍効果を発揮する化合物を結合させてあるので、抗体
自体が抗腫瘍効果を有することは、好ましいが、必須ではない。抗腫瘍性化合物の細胞障
害性を腫瘍細胞において特異的・選択的に発揮させる目的からは、抗体が内在化して腫瘍
細胞内に移行する性質のあることが重要であり、好ましい。
【0043】
抗HER2抗体は、公知の手段によって取得することができる。例えば、この分野で通
常実施される方法を用いて、抗原となるポリペプチドを動物に免疫し、生体内に産生され
る抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原の由来はヒトに限定されず
、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来する抗原を動物に免疫することもできる。こ
の場合には、取得された異種抗原に結合する抗体とヒト抗原との交差性を試験することに
よって、ヒトの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein, Nature (1975) 256, p.495-497;K
ennet, R.ed., Monoclonal Antibodies, p.365-367,Plenum Press, N.Y.(1980))に従っ
て、抗原に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることによ
ってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得ることもできる。
なお、抗原は抗原蛋白質をコードする遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に産生させ
ることによって得ることができる。具体的には、抗原遺伝子を発現可能なベクターを作製
し、これを宿主細胞に導入して該遺伝子を発現させ、発現した抗原を精製すればよい。上
記の遺伝子操作による抗原発現細胞、或は抗原を発現している細胞株、を動物に免疫する
方法を用いることによっても抗体を取得できる。
【0044】
本発明で使用できる抗HER2抗体は、特に制限はないが、例えば、以下の特性を有す
るものが望ましい。
(1)以下の特性を有することを特徴とする抗HER2抗体;
(a)HER2に特異的に結合する。
(b)HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する。
(2)HER2の細胞外ドメインに結合する上記(1)に記載の抗体。
(3)モノクローナル抗体である上記(1)又は(2)に記載の抗体。
(4)抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)活
性を有する上記(1)乃至(3)のいずれかに記載の抗体。
(5)マウスモノクローナル抗体、キメラモノクローナル抗体、又はヒト化モノクローナ
ル抗体である、上記(1)乃至(4)のいずれかに記載の抗体。
(6)配列番号1に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2に記載のアミノ酸配
列からなる軽鎖を含んでなるヒト化モノクローナル抗体である上記(1)乃至(5)のい
ずれかに記載の抗体。
(7)重鎖カルボキシル末端のリシン残基が欠失している上記(1)乃至(6)のいずれ
かに記載の抗体。
(8)配列番号1においてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖
及び配列番号2においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を
含んでなる上記(7)に記載の抗体。
(9)上記(1)乃至(8)のいずれかに記載の抗体をコードするポリヌクレオチドを含
有する発現ベクターによって形質転換された宿主細胞を培養する工程及び当該工程で得ら
れた培養物から目的の抗体を採取する工程を含む当該抗体の製造方法によって得られる抗
体。
【0045】
以下に、本発明において使用される抗HER2抗体について説明する。
本明細書において、「癌」と「腫瘍」は同じ意味に用いている。
本明細書において、「遺伝子」という語には、DNAのみならずそのmRNA、cDN
A及びそのcRNAも含まれる。
本明細書において、「ポリヌクレオチド」という語は核酸と同じ意味で用いており、D
NA、RNA、プローブ、オリゴヌクレオチド、及びプライマーも含まれる。
本明細書において、「ポリペプチド」「蛋白質」「蛋白」は区別せずに用いている。
本明細書において、「細胞」には、動物個体内の細胞、培養細胞も含んでいる。
本明細書において、「HER2」という語は、HER2蛋白と同じ意味で用いている。
本明細書において、抗HER2抗体とは、特に制限はないが、ペルツズマブ(国際公開
01/00245号)、トラスツズマブ(米国特許第5821337号)等を挙げること
ができるが、トラスツズマブが好ましい。但し、HER2に特異的に結合する、より好ま
しくは、HER2と結合することによってHER2発現細胞に内在化する活性を有する抗
HER2抗体であればこれに限らない。
本明細書において、「トラスツズマブ」はHERCEPTIN(登録商標)、huMA
b4D5-8、rhuMAb4D5-8と呼ばれることもあり、配列番号1(図1)にお
いてアミノ酸番号1乃至449に記載のアミノ酸配列からなる重鎖及び配列番号2(図2
)においてアミノ酸番号1乃至214に記載のアミノ酸配列からなる軽鎖を含んでなるヒ
ト化抗体である。
本明細書において、「特異的に結合」という語は、非特異的な吸着ではない結合を意味
する。結合が特異的であるか否かの判定基準としては、例えば、解離定数(以下、「KD
」)を挙げることができる。好適な抗体のHER2蛋白に対するKD値は1×10-5
以下、5×10-6M以下、2×10-6M以下、又は1×10-6M以下;より好適に
は5×10-7M以下、2×10-7M以下、又は1×10-7M以下;より一層好適に
は5×10-8M以下、2×10-8M以下、又は1×10-8M以下;最適には5×1
-9M以下、2×10-9M以下、又は1×10-9M以下である。HER2蛋白と抗
体との結合は、Surface Plasmon Resonance法、ELISA法
、RIA法等公知の方法を用いて測定することができる。
本明細書における「CDR」とは、相補性決定領域(CDR:Complemetar
ity deterring region)を意味する。抗体分子の重鎖及び軽鎖には
それぞれ3箇所のCDRがあることが知られている。CDRは、超可変領域(hyper
variable domain)とも呼ばれ、抗体の重鎖及び軽鎖の可変領域内にあっ
て、一次構造の変異性が特に高い部位であり、重鎖及び軽鎖のポリペプチド鎖の一次構造
上において、それぞれ3ヶ所に分離している。本明細書においては、抗体のCDRについ
て、重鎖のCDRを重鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRH1、CDRH2、CD
RH3と表記し、軽鎖のCDRを軽鎖アミノ酸配列のアミノ末端側からCDRL1、CD
RL2、CDRL3と表記する。これらの部位は立体構造の上で相互に近接し、結合する
抗原に対する特異性を決定している。
本発明において、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」とは、市販のハ
イブリダイゼーション溶液ExpressHyb Hybridization Sol
ution(クロンテック社製)中、68℃でハイブリダイズすること、又は、DNAを
固定したフィルターを用いて0.7-1.0MのNaCl存在下、68℃でハイブリダイ
ゼーションを行った後、0.1-2倍濃度のSSC溶液(1倍濃度SSCとは150mM
NaCl、15mM クエン酸ナトリウムからなる)を用い、68℃で洗浄することに
よって同定することができる条件又はそれと同等の条件でハイブリダイズすることをいう
【0046】
1.HER2
HER2はヒト上皮細胞増殖因子受容体2型関連癌遺伝子として同定された代表的な増
殖因子受容体型の癌遺伝子産物のひとつであり、分子量185kDaのチロシンキナーゼ
ドメインを持つ膜貫通型受容体蛋白である。HER1(EGFR,ErbB-1)、HE
R2(neu,ErbB-2)、HER3(ErbB-3)、HER4(ErbB-4)
からなるEGFRファミリーのひとつであり、ホモ或は他のEGFRであるHER1、H
ER3、又はHER4とのヘテロダイマー形成により細胞内チロシン残基が自己リン酸化
されて活性化することにより、正常細胞及び腫瘍細胞において細胞の増殖・分化・生存に
重要な役割を果たすことが知られている。
本発明で用いるHER2蛋白は、ヒト、非ヒト哺乳動物(ラット、マウス等)のHER
2発現細胞から直接精製して使用するか、或は当該細胞の細胞膜画分を調製して使用する
ことができ、また、HER2をin vitroにて合成する、或は遺伝子操作によって宿主細胞
に産生させることによって得ることができる。遺伝子操作では、具体的には、HER2
cDNAを発現可能なベクターに組み込んだ後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネ
ルギー物質を含む溶液中で合成する、或は他の原核生物、又は真核生物の宿主細胞を形質
転換してHER2を発現させることによって、該蛋白質を得ることができる。また、前記
の遺伝子操作によるHER2発現細胞、或はHER2を発現している細胞株をHER2蛋
白として使用することも可能である。
HER2のDNA配列及びアミノ酸配列は公的データベース上に公開されており、例え
ば、M11730(Genbank)、NP_004439.2(NCBI)等のアクセ
ッション番号により参照可能である。
また、上記HER2のアミノ酸配列において、1又は数個のアミノ酸が置換、欠失及び
/又は付加されたアミノ酸配列からなり、当該蛋白質と同等の生物活性を有する蛋白質も
HER2に含まれる。
ヒトHER2蛋白は、N末端22アミノ酸残基から成るシグナル配列、630アミノ酸
残基から成る細胞外ドメイン、23アミノ酸残基から成る細胞膜貫通ドメイン、580ア
ミノ酸残基から成る細胞内ドメインで構成されている。
【0047】
2.抗HER2抗体の製造
本発明のHER2に対する抗体は、例えば、この分野で通常実施される方法に従って、
HER2又はHER2のアミノ酸配列から選択される任意のポリペプチドを動物に免疫し
、生体内に産生される抗体を採取、精製することによって得ることができる。抗原となる
HER2の生物種はヒトに限定されず、マウス、ラット等のヒト以外の動物に由来するH
ER2、ラットp185neu等を動物に免疫することもできる。この場合には、取得さ
れた異種HER2に結合する抗体とヒトHER2との交差性を試験することによって、ヒ
トの疾患に適用可能な抗体を選別できる。
また、公知の方法(例えば、Kohler and Milstein,Nature
(1975)256,p.495-497;Kennet,R.ed.,Monoclo
nal Antibodies,p.365-367,Plenum Press,N.
Y.(1980))に従って、HER2に対する抗体を産生する抗体産生細胞とミエロー
マ細胞とを融合させることによってハイブリドーマを樹立し、モノクローナル抗体を得る
こともできる。
なお、抗原となるHER2はHER2遺伝子を遺伝子操作によって宿主細胞に発現させ
ることによって得ることができる。
具体的には、HER2遺伝子を発現可能なベクターを作製し、これを宿主細胞に導入し
て該遺伝子を発現させ、発現したHER2を精製すればよい。
また、上記の遺伝子操作によるHER2発現細胞、或はHER2を発現している細胞株
をHER2蛋白として使用することも可能である。抗HER2抗体は、公知の手段によっ
て取得することができる。以下、具体的にHER2に対する抗体の取得方法を説明する。
【0048】
(1) 抗原の調製
抗HER2抗体を作製するための抗原としては、HER2又はその少なくとも6個の連
続した部分アミノ酸配列からなるポリペプチド、或はこれらに任意のアミノ酸配列や担体
が付加された誘導体を挙げることができる。
HER2は、ヒトの腫瘍組織或は腫瘍細胞から直接精製して使用することができ、また
、HER2をin vitroにて合成する、或は遺伝子操作によって宿主細胞に産生させること
によって得ることができる。
遺伝子操作では、具体的には、HER2のcDNAを発現可能なベクターに組み込んだ
後、転写と翻訳に必要な酵素、基質及びエネルギー物質を含む溶液中で合成する、或は他
の原核生物又は真核生物の宿主細胞を形質転換してHER2を発現させることによって、
抗原を得ることができる。
また、膜蛋白質であるHER2の細胞外領域と抗体の定常領域とを連結した融合蛋白質
を適切な宿主・ベクター系において発現させることによって、分泌蛋白質として抗原を得
ることも可能である。
HER2のcDNAは、例えばHER2のcDNAを発現しているcDNAライブラリ
ーを鋳型として、HER2 cDNAを特異的に増幅するプライマーを用いてポリメラー
ゼ連鎖反応(PCR;Saiki,R. K.,et al.,Science(198
8)239,p.487-489 参照)を行なう、いわゆるPCR法によって取得する
ことができる。
ポリペプチドのイン・ビトロ(in vitro)合成としては、例えばロシュ・ダイアグノス
ティックス社製のラピッドトランスレーションシステム(RTS)を挙げることができる
が、これに限定されない。
原核細胞の宿主としては、例えば、大腸菌(Escherichia coli)や枯
草菌(Bacillus subtilis)等を挙げることができる。目的の遺伝子を
これらの宿主細胞内で形質転換させるには、宿主と適合し得る種由来のレプリコンすなわ
ち複製起点と、調節配列を含んでいるプラスミドベクターで宿主細胞を形質転換させる。
また、ベクターとしては、形質転換細胞に表現形質(表現型)の選択性を付与することが
できる配列を有するものが好ましい。
真核細胞の宿主細胞には、脊椎動物、昆虫、酵母等の細胞が含まれ、脊椎動物細胞とし
ては、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(Gluzman,Y.Cell(1981
)23,p.175-182、ATCC CRL-1650;ATCC:America
n Type Culture Collection)、マウス線維芽細胞NIH3T
3(ATCC No.CRL-1658)やチャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO
細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.
and Chasin,L.A.Proc.Natl.Acad.Sci.USA(19
80)77,p.4126-4220)等がよく用いられているが、これらに限定されな
い。
上記のようにして得られる形質転換体は、この分野で通常実施される方法に従って培養
することができ、該培養によって細胞内又は細胞外に目的のポリペプチドが産生される。
該培養に用いられる培地としては、採用した宿主細胞に応じて慣用される各種のものを
適宜選択でき、大腸菌であれば、例えば、LB培地に必要に応じて、アンピシリン等の抗
生物質やIPMGを添加して用いることができる。
上記培養によって、形質転換体の細胞内又は細胞外に産生される組換え蛋白質は、該蛋
白質の物理的性質や化学的性質等を利用した各種の公知の分離操作法によって分離・精製
することができる。
該方法としては、具体的には例えば、通常の蛋白質沈殿剤による処理、限外濾過、分子
ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマト
グラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の各種液体クロマトグラフィー、透析
法、これらの組合せ等を例示できる。
また、発現させる組換え蛋白質に6残基からなるヒスチジンタグを繋げることによって
、ニッケルアフィニティーカラムで効率的に精製することができる。或は、発現させる組
換え蛋白質にIgGのFc領域を繋げることによって、プロテインAカラムで効率的に精
製することができる。
上記方法を組合せることによって容易に高収率、高純度で目的とするポリペプチドを大
量に製造できる。
上記に述べた形質転換体自体を抗原として使用することも可能である。また、HER2
を発現する細胞株を抗原として使用することも可能である。この様な細胞株としては、ヒ
ト乳癌株SK-BR-3、BT-474、KPL-4、又はJIMT-1、ヒト胃癌株N
CI-N87、及びヒト卵巣癌株SK-OV-3を挙げることができるが、HER2を発
現する限り、これらの細胞株に限定されない。
【0049】
(2) 抗HER2モノクローナル抗体の製造
HER2と特異的に結合する抗体の例として、HER2と特異的に結合するモノクロー
ナル抗体を挙げることができるが、その取得方法は、以下に記載する通りである。
モノクローナル抗体の製造にあたっては、一般に下記の様な作業工程が必要である。
すなわち、
(a)抗原として使用する生体高分子の精製、又は抗原発現細胞の調製
(b)抗原を動物に注射することによって免疫した後、血液を採取してその抗体価を検定
して脾臓摘出の時期を決定してから、抗体産生細胞を調製する工程
(c)骨髄腫細胞(以下「ミエローマ」という)の調製
(d)抗体産生細胞とミエローマとの細胞融合
(e)目的とする抗体を産生するハイブリドーマ群の選別
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)
(g)場合によっては、モノクローナル抗体を大量に製造するためのハイブリドーマの培
養、又はハイブリドーマを移植した動物の飼育
(h)この様にして製造されたモノクローナル抗体の生理活性、及びその結合特異性の検
討、或は標識試薬としての特性の検定
等である。
以下、モノクローナル抗体の作製法を上記工程に沿って詳述するが、該抗体の作製法は
これに制限されず、例えば脾細胞以外の抗体産生細胞及びミエローマを使用することもで
きる。
【0050】
(a)抗原の精製
抗原としては、前記した様な方法で調製したHER2又はその一部を使用することがで
きる。
また、HER2発現組換え体細胞によって調製した膜画分、又はHER2発現組換え体
細胞自身、さらに、当業者に周知の方法を用いて化学合成した本発明の蛋白質の部分ペプ
チドを抗原として使用することもできる。
さらに、HER2発現細胞株を抗原として使用することもできる。
【0051】
(b)抗体産生細胞の調製
工程(a)で得られた抗原と、フロインドの完全又は不完全アジュバント、或はカリミ
ョウバンの様な助剤とを混合し、免疫原として実験動物に免疫する。この他に、抗原発現
細胞を免疫原として実験動物に免疫する方法もある。実験動物は公知のハイブリドーマ作
製法で用いられる動物を支障なく使用することができる。具体的には、例えばマウス、ラ
ット、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ等を使用することができる。ただし、摘出した抗体産生
細胞と融合させるミエローマ細胞の入手容易性等の観点から、マウス又はラットを被免疫
動物とするのが好ましい。
また、実際に使用するマウス及びラットの系統には特に制限はなく、マウスの場合には
、例えば各系統A、AKR、BALB/c、BDP、BA、CE、C3H、57BL、C
57BL、C57L、DBA、FL、HTH、HT1、LP、NZB、NZW、RF、R
III、SJL、SWR、WB、129等が、またラットの場合には、例えば、Wis
tar、Low、Lewis、Sprague、Dawley、ACI、BN、Fisc
her等を用いることができる。
これらのマウス及びラットは、例えば、日本クレア株式会社、日本チャ-ルス・リバー
株式会社等の実験動物飼育販売業者より入手することができる。
被免疫動物としては、後述のミエローマ細胞との融合適合性を勘案すれば、マウスでは
BALB/c系統が、ラットではWistar及びLow系統が特に好ましい。
また、抗原のヒトとマウスでの相同性を考慮し、自己抗体を除去する生体機構を低下さ
せたマウス、すなわち自己免疫疾患マウスを用いることも好ましい。
なお、これらのマウス又はラットの免疫時の週齢は、好ましくは5~12週齢、さらに
好ましくは6~8週齢である。
HER2又はこの組換え体によって動物を免疫するには、例えば、Weir,D.M.
,Handbook of Experimental Immunology Vol
.I.II.III.,Blackwell Scientific Publicat
ions,Oxford(1987);Kabat,E.A.and Mayer,M.
M.,Experimental Immunochemistry,Charles
C Thomas Publisher Springfield,Illinois(
1964)等に詳しく記載されている公知の方法を用いることができる。
これらの免疫法のうち、本発明において好適な方法を具体的に示せば、例えば以下のと
おりである。
すなわち、まず、抗原である膜蛋白質画分、又は抗原を発現させた細胞を動物の皮内又
は腹腔内に投与する。ただし、免疫効率を高めるためには両者の併用が好ましく、前半は
皮内投与を行い、後半又は最終回のみ腹腔内投与を行うと、特に免疫効率を高めることが
できる。
抗原の投与スケジュールは、被免疫動物の種類、個体差等によって異なるが、一般には
、抗原投与回数3~6回、投与間隔2~6週間が好ましく、投与回数3~4回、投与間隔
2~4週間がさらに好ましい。
また、抗原の投与量は、動物の種類、個体差等によって異なるが、一般には0.05~
5mg、好ましくは0.1~0.5mg程度とする。
追加免疫は、以上の通りの抗原投与の1~6週間後、好ましくは1~4週間後、さらに
好ましくは1~3週間後に行う。免疫原が細胞の場合には、1×10乃至1×10
の細胞を使用する。
なお、追加免疫を行う際の抗原投与量は、動物の種類、大きさ等によって異なるが、一
般に、例えばマウスの場合には0.05~5mg、好ましくは0.1~0.5mg、さら
に好ましくは0.1~0.2mg程度とする。免疫原が細胞の場合には、1×10乃至
1×10個の細胞を使用する。
上記追加免疫から1~10日後、好ましくは2~5日後、さらに好ましくは2~3日後
に被免疫動物から抗体産生細胞を含む脾臓細胞又はリンパ球を無菌的に取り出す。その際
に抗体価を測定し、抗体価が十分高くなった動物を抗体産生細胞の供給源として用いれば
、以後の操作の効率を高めることができる。
ここで用いられる抗体価の測定法としては、例えば、RIA法又はELISA法を挙げ
ることができるがこれらの方法に制限されない。本発明における抗体価の測定は、例えば
ELISA法によれば、以下に記載する様な手順によって行うことができる。
まず、精製又は部分精製した抗原をELISA用96穴プレート等の固相表面に吸着さ
せ、さらに抗原が吸着していない固相表面を抗原と無関係な蛋白質、例えばウシ血清アル
ブミン(BSA)によって覆い、該表面を洗浄後、第一抗体として段階希釈した試料(例
えばマウス血清)に接触させ、上記抗原に試料中の抗体を結合させる。
さらに第二抗体として酵素標識されたマウス抗体に対する抗体を加えてマウス抗体に結
合させ、洗浄後該酵素の基質を加え、基質分解に基づく発色による吸光度の変化等を測定
することによって、抗体価を算出する。
被免疫動物の脾臓細胞又はリンパ球からの抗体産生細胞の分離は、公知の方法(例えば
、Kohler et al.,Nature(1975)256,p.495;Koh
ler et al.,Eur.J.Immunol.(1977)6,p.511;M
ilstein et al.,Nature(1977),266,p.550;Wa
lsh,Nature,(1977)266,p.495)に従って行うことができる。
例えば、脾臓細胞の場合には、脾臓を細切して細胞をステンレスメッシュで濾過した後、
イーグル最小必須培地(MEM)に浮遊させて抗体産生細胞を分離する一般的方法を採用
することができる。
【0052】
(c)骨髄腫細胞(以下、「ミエローマ」という)の調製
細胞融合に用いるミエローマ細胞には特段の制限はなく、公知の細胞株から適宜選択し
て用いることができる。ただし、融合細胞からハイブリドーマを選択する際の利便性を考
慮して、その選択手続が確立しているHGPRT(Hypoxanthine-guan
ine phosphoribosyl transferase)欠損株を用いるのが
好ましい。
すなわち、マウス由来のX63-Ag8(X63)、NS1-ANS/1(NS1)、
P3X63-Ag8.U1(P3U1)、X63-Ag8.653(X63.653)、
SP2/0-Ag14(SP2/0)、MPC11-45.6TG1.7(45.6TG
)、FO、S149/5XXO、BU.1等、ラット由来の210.RSY3.Ag.1
.2.3(Y3)等、ヒト由来のU266AR(SKO-007)、GM1500・GT
G-A12(GM1500)、UC729-6、LICR-LOW-HMy2(HMy2
)、8226AR/NIP4-1(NP41)等である。これらのHGPRT欠損株は例
えば、ATCC等から入手することができる。
これらの細胞株は適当な培地、例えば8-アザグアニン培地(RPMI-1640培地
にグルタミン、2-メルカプトエタノール、ゲンタマイシン、及びウシ胎児血清(以下「
FBS」という)を加えた培地に8-アザグアニンを加えた培地)、イスコフ改変ダルベ
ッコ培地(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium
;以下「IMDM」という)、又はダルベッコ改変イーグル培地(Dulbecco’s
Modified Eagle Medium;以下「DMEM」という)で継代培養
するが、細胞融合の3乃至4日前に正常培地(例えば、10% FCSを含むASF10
4培地(味の素株式会社製))で継代培養し、融合当日に2×10以上の細胞数を確保
しておく。
【0053】
(d)細胞融合
抗体産生細胞とミエローマ細胞との融合は、公知の方法(Weir,D.M.,Han
dbookof Experimental Immunology Vol.I.II
.III.,Blackwell Scientific Publications,
Oxford(1987);Kabat,E.A.and Mayer,M.M.,Ex
perimental Immunochemistry,Charles C Tho
mas Publisher Springfield,Illinois(1964)
等)に従い、細胞の生存率を極度に低下させない程度の条件下で適宜実施することができ
る。
その様な方法として、例えば、ポリエチレングリコール等の高濃度ポリマー溶液中で抗
体産生細胞とミエローマ細胞とを混合する化学的方法、電気的刺激を利用する物理的方法
等を用いることができる。このうち、上記化学的方法の具体例を示せば以下のとおりであ
る。
すなわち、高濃度ポリマー溶液としてポリエチレングリコールを用いる場合には、分子
量1500~6000、好ましくは2000~4000のポリエチレングリコール溶液中
で、30~40℃、好ましくは35~38℃の温度で抗体産生細胞とミエローマ細胞とを
1~10分間、好ましくは5~8分間混合する。
【0054】
(e)ハイブリドーマ群の選択
上記細胞融合によって得られるハイブリドーマの選択方法は特に制限はないが、通常H
AT(ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン)選択法(Kohler et al
.,Nature(1975)256,p.495;Milstein et al.,
Nature(1977)266,p.550)が用いられる。
この方法は、アミノプテリンで生存し得ないHGPRT欠損株のミエローマ細胞を用い
てハイブリドーマを得る場合に有効である。すなわち、未融合細胞及びハイブリドーマを
HAT培地で培養することによって、アミノプテリンに対する耐性を持ち合わせたハイブ
リドーマのみを選択的に残存させ、かつ増殖させることができる。
【0055】
(f)単一細胞クローンへの分割(クローニング)
ハイブリドーマのクローニング法としては、例えばメチルセルロース法、軟アガロース
法、限界希釈法等の公知の方法を用いることができる(例えばBarbara, B.M
.and Stanley,M.S.:Selected Methods in Ce
llular Immunology,W.H.Freeman and Compan
y,San Francisco(1980)参照)。これらの方法のうち、特にメチル
セルロース法等の三次元培養法が好適である。例えば、細胞融合によって形成されたハイ
ブリドーマ群をClonaCell-HY Selection Medium D(S
temCell Technologies社製 #03804)等のメチルセルロース
培地に懸濁して培養し、形成されたハイブリドーマコロニーを回収することでモノクロー
ンハイブリドーマの取得が可能である。回収された各ハイブリドーマコロニーを培養し、
得られたハイブリドーマ培養上清中に安定して抗体価の認められたものをHER2モノク
ローナル抗体産生ハイブリドーマ株として選択する。
【0056】
(g)ハイブリドーマの培養によるモノクローナル抗体の調製
このようにして選択されたハイブリドーマは、これを培養することによって、モノクロ
ーナル抗体を効率よく得ることができるが、培養に先立ち、目的とするモノクローナル抗
体を産生するハイブリドーマをスクリーニングすることが望ましい。
このスクリーニングにはそれ自体既知の方法が採用できる。
本発明における抗体価の測定は、例えば上記(b)の項目で説明したELISA法によ
って行うことができる。
以上の方法によって得たハイブリドーマは、液体窒素中又は-80℃以下の冷凍庫中に
凍結状態で保存することができる。
クローニングを完了したハイブリドーマは、培地をHT培地から正常培地に換えて培養
される。
大量培養は、大型培養瓶を用いた回転培養、或はスピナー培養で行われる。この大量培
養における上清から、ゲル濾過等、当業者に周知の方法を用いて精製することによって、
本発明の蛋白質に特異的に結合するモノクローナル抗体を得ることができる。
また、同系統のマウス(例えば、上記のBALB/c)、或はNu/Nuマウスの腹腔
内にハイブリドーマを注射し、該ハイブリド-マを増殖させることによって、本発明のモ
ノクローナル抗体を大量に含む腹水を得ることができる。
腹腔内に投与する場合には、事前(3~7日前)に2,6,10,14-テトラメチル
ペンタデカン(2,6,10,14-tetramethyl pentadecane
;プリスタン)等の鉱物油を投与すると、より多量の腹水が得られる。
例えば、ハイブリドーマと同系統のマウスの腹腔内に予め免疫抑制剤を注射し、T細胞
を不活性化した後、20日後に10~10個のハイブリドーマ・クローン細胞を、血
清を含まない培地中に浮遊(0.5ml)させて腹腔内に投与し、通常腹部が膨満し、腹
水がたまったところでマウスより腹水を採取する。この方法によって、培養液中に比べて
約100倍以上の濃度のモノクローナル抗体が得られる。
上記方法によって得たモノクローナル抗体は、例えばWeir,D.M.:Handb
ook of Experimental Immunology,Vol.I,II,
III,Blackwell Scientific Publications,Ox
ford(1978)に記載されている方法で精製することができる。
かくして得られるモノクローナル抗体は、HER2に対して高い抗原特異性を有する。
本発明のモノクローナル抗体としては、特に制限はないが、マウスモノクローナル抗体4
D5(ATCC CRL 10463)を挙げることができる。
【0057】
(h)モノクローナル抗体の検定
かくして得られたモノクローナル抗体のアイソタイプ及びサブクラスの決定は以下のよ
うに行うことができる。
まず、同定法としてはオクテルロニー(Ouchterlony)法、ELISA法、
又はRIA法を挙げることができる。
オクテルロニー法は簡便ではあるが、モノクローナル抗体の濃度が低い場合には濃縮操
作が必要である。
一方、ELISA法又はRIA法を用いた場合は、培養上清をそのまま抗原吸着固相と
反応させ、さらに第二次抗体として各種イムノグロブリンアイソタイプ、サブクラスに対
応する抗体を用いることによって、モノクローナル抗体のアイソタイプ、サブクラスを同
定することが可能である。
また、さらに簡便な方法として、市販の同定用のキット(例えば、マウスタイパーキッ
ト;バイオラッド社製)等を利用することもできる。
さらに、蛋白質の定量は、フォーリンロウリー法、及び280nmにおける吸光度(1
.4(OD280)=イムノグロブリン1mg/ml)より算出する方法によって行うこ
とができる。
さらに、(2)の(a)乃至(h)の工程を再度実施して別途に独立してモノクローナ
ル抗体を取得した場合においても、(g)の工程で得られた抗HER2抗体と同等の細胞
傷害活性を有する抗体を取得することが可能である。この様な抗体の一例として、(g)
の工程で得られた抗HER2抗体と同一のエピトープに結合する抗体を挙げることができ
る。新たに作製されたモノクローナル抗体が、前記抗HER2抗体の結合する部分ペプチ
ド又は部分立体構造に結合すれば、該モノクローナル抗体が同一のエピトープに結合する
と判定することができる。また、前記抗HER2抗体のHER2に対する結合に対して該
モノクローナル抗体が競合する(即ち、該モノクローナル抗体が、前記抗HER2抗体と
HER2の結合を妨げる)ことを確認することによって、具体的なエピトープの配列又は
構造が決定されていなくても、該モノクローナル抗体が抗HER2抗体と同一のエピトー
プに結合すると判定することができる。エピトープが同一であることが確認された場合、
該モノクローナル抗体が前記抗HER2抗体と同等の抗原結合能又は生物活性を有してい
ることが強く期待される。
【0058】
(3) その他の抗体
本発明の抗体には、上記HER2に対するモノクローナル抗体に加え、ヒトに対する異
種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば
、キメラ(Chimeric)抗体、ヒト化(Humanized)抗体、ヒト抗体等も
含まれる。これらの抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体としては、抗体の可変領域と定常領域が互いに異種である抗体、例えばマウ
ス又はラット由来抗体の可変領域をヒト由来の定常領域に接合したキメラ抗体を挙げるこ
とができる(Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,81,6851-
6855,(1984)参照)。本発明のキメラ抗体としては、特に制限はないが、ヒト
IgG1又はIgG2の重鎖定常領域を含むキメラ抗体4D5を挙げることができる。
ヒト化抗体としては、相補性決定領域(CDR;complementarity d
etermining region)のみをヒト由来の抗体に組み込んだ抗体(Nat
ure(1986)321,p.522-525参照)、CDR移植法によって、CDR
の配列に加えて一部のフレームワークのアミノ酸残基もヒト抗体に移植した抗体(国際公
開第90/07861号)、遺伝子変換突然変異誘発(gene conversion
mutagenesis)ストラテジーを用いてヒト化した抗体(米国特許第5821
337号)を挙げることができる。
【0059】
なお、本明細書における「数個」とは、1乃至10個、1乃至9個、1乃至8個、1乃
至7個、1乃至6個、1乃至5個、1乃至4個、1乃至3個、又は1若しくは2個を意味
する。
【0060】
また、本明細書におけるアミノ酸の置換としては保存的アミノ酸置換が好ましい。保存
的アミノ酸置換とは、アミノ酸側鎖に関連のあるアミノ酸グループ内で生じる置換である
。好適なアミノ酸グループは、以下のとおりである:酸性グループ=アスパラギン酸、グ
ルタミン酸;塩基性グループ=リシン、アルギニン、ヒスチジン;非極性グループ=アラ
ニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、ト
リプトファン;及び非帯電極性ファミリー=グリシン、アスパラギン、グルタミン、シス
テイン、セリン、スレオニン、チロシン。他の好適なアミノ酸グループは次のとおりであ
る:脂肪族ヒドロキシグループ=セリン及びスレオニン;アミド含有グループ=アスパラ
ギン及びグルタミン;脂肪族グループ=アラニン、バリン、ロイシン及びイソロイシン;
並びに芳香族グループ=フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシン。かかるアミノ
酸置換は元のアミノ酸配列を有する物質の特性を低下させない範囲で行うのが好ましい。
【0061】
上記の重鎖アミノ酸配列及び軽鎖アミノ酸配列と高い相同性を示す配列を組み合わせる
ことによって、上記の各抗体と同等の生物活性を有する抗体を選択することが可能である
。この様な相同性は、一般的には80%以上の相同性であり、好ましくは90%以上の相
同性であり、より好ましくは95%以上の相同性であり、最も好ましくは99%以上の相
同性である。また、重鎖又は軽鎖のアミノ酸配列に1乃至数個のアミノ酸残基が置換、欠
失又は付加されたアミノ酸配列を組み合わせることによっても、上記の各抗体と同等の生
物活性を有する抗体を選択することが可能である。なお、本明細書における「相同性」は
「同一性」と同じ意味で使用している。
【0062】
二種類のアミノ酸配列間の相同性は、Blast algorithm versio
n 2.2.2(Altschul, Stephen F.,Thomas L.Ma
dden,Alejandro A.Schaeffer, Jinghui Zhan
g, Zheng Zhang, Webb Miller, and David J
.Lipman(1997),「Gapped BLAST and PSI-BLAS
T:a new generation of protein database s
earch programs」,Nucleic Acids Res.25:338
9-3402)のデフォルトパラメーターを使用することによって決定することができる
。Blast algorithmは、インターネットでwww.ncbi.nlm.nih.gov/blastに
アクセスすることによっても使用することができる。
【0063】
本発明の抗体としては、さらに、HER2に結合する、ヒト抗体を挙げることができる
。抗HER2ヒト抗体とは、ヒト染色体由来の抗体の遺伝子配列のみを有するヒト抗体を
意味する。抗HER2ヒト抗体は、ヒト抗体の重鎖と軽鎖の遺伝子を含むヒト染色体断片
を有するヒト抗体産生マウスを用いた方法(Tomizuka,K.et al.,Na
ture Genetics(1997)16,p.133-143;Kuroiwa,
Y.et.al.,Nucl.Acids Res.(1998)26,p.3447-
3448;Yoshida,H.et.al.,Animal Cell Techno
logy:Basic and Applied Aspects vol.10,p.
69-73(Kitagawa,Y.,Matsuda,T.and Iijima,S
.eds.),Kluwer Academic Publishers,1999;T
omizuka,K.et.al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(
2000)97,p.722-727等を参照。)によって取得することができる。
【0064】
この様なヒト抗体産生マウスは、具体的には、内在性免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺
伝子座が破壊され、代わりに酵母人工染色体(Yeast artificial ch
romosome,YAC)ベクター等を介してヒト免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の遺伝
子座が導入された遺伝子組み換え動物として、ノックアウト動物及びトランスジェニック
動物の作製及びこれらの動物同士を掛け合わせることによって作り出すことができる。
また、遺伝子組換え技術によって、その様なヒト抗体の重鎖及び軽鎖の各々をコードす
るcDNA、好ましくは該cDNAを含むベクターによって真核細胞を形質転換し、遺伝
子組換えヒトモノクローナル抗体を産生する形質転換細胞を培養することによって、この
抗体を培養上清中から得ることもできる。
ここで、宿主としては例えば真核細胞、好ましくはCHO細胞、リンパ球やミエローマ
等の哺乳動物細胞を用いることができる。
【0065】
また、ヒト抗体ライブラリーより選別したファージディスプレイ由来のヒト抗体を取得
する方法(Wormstone,I.M.et.al,Investigative O
phthalmology & Visual Science.(2002)43(7
),p.2301-2308;Carmen,S.et.al.,Briefings
in Functional Genomics and Proteomics(20
02),1(2),p.189-203;Siriwardena,D.et.al.,
Ophthalmology(2002)109(3),p.427-431等参照。)
も知られている。
例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージ表面に発現させ
て、抗原に結合するファージを選択するファージディスプレイ法(Nature Bio
technology(2005),23,(9),p.1105-1116)を用いる
ことができる。
抗原に結合することで選択されたファージの遺伝子を解析することによって、抗原に結
合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。
抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を有する発現ベクタ
ーを作製し、適当な宿主に導入して発現させることによってヒト抗体を取得することがで
きる(国際公開第92/01047号、同92/20791号、同93/06213号、
同93/11236号、同93/19172号、同95/01438号、同95/153
88号;Annu.Rev.Immunol(1994)12,p.433-455;N
ature Biotechnology(2005)23(9),p.1105-11
16)。
【0066】
抗体の性質を比較する際の別の指標の一例としては、抗体の安定性を挙げることができ
る。示差走査カロリメトリー(DSC)は、蛋白の相対的構造安定性のよい指標となる熱
変性中点(Tm)を素早く、また正確に測定することができる装置である。DSCを用い
てTm値を測定し、その値を比較することによって、熱安定性の違いを比較することがで
きる。抗体の保存安定性は、抗体の熱安定性とある程度の相関を示すことが知られており
(Lori Burton,et.al.,Pharmaceutical Devel
opment and Technology(2007)12,p.265-273)
、熱安定性を指標に、好適な抗体を選抜することができる。抗体を選抜するための他の指
標としては、適切な宿主細胞における収量が高いこと、及び水溶液中での凝集性が低いこ
とを挙げることができる。例えば収量の最も高い抗体が最も高い熱安定性を示すとは限ら
ないので、以上に述べた指標に基づいて総合的に判断して、ヒトへの投与に最も適した抗
体を選抜する必要がある。
【0067】
本発明の抗体には抗体の修飾体も含まれる。当該修飾体とは、本発明の抗体に化学的又
は生物学的な修飾が施されてなるものを意味する。化学的な修飾体には、アミノ酸骨格へ
の化学部分の結合、N-結合又はO-結合炭水化物鎖の化学修飾体等が含まれる。生物学
的な修飾体には、翻訳後修飾(例えば、N-結合又はO-結合への糖鎖付加、N末又はC
末のプロセッシング、脱アミド化、アスパラギン酸の異性化、メチオニンの酸化)された
もの、原核生物宿主細胞を用いて発現させることによってN末にメチオニン残基が付加し
たもの等が含まれる。また、本発明の抗体又は抗原の検出又は単離を可能にするために標
識されたもの、例えば、酵素標識体、蛍光標識体、アフィニティ標識体もかかる修飾物の
意味に含まれる。この様な本発明の抗体の修飾物は、抗体の安定性及び血中滞留性の改善
、抗原性の低減、抗体又は抗原の検出又は単離等に有用である。
【0068】
また、本発明の抗体に結合している糖鎖修飾を調節すること(グリコシル化、脱フコー
ス化等)によって、抗体依存性細胞傷害活性を増強することが可能である。抗体の糖鎖修
飾の調節技術としては、国際公開第99/54342号、同00/61739号、同02
/31140号等が知られているが、これらに限定されるものではない。本発明の抗体に
は当該糖鎖修飾が調節された抗体も含まれる。
抗体遺伝子を一旦単離した後、適当な宿主に導入して抗体を作製する場合には、適当な
宿主と発現ベクターの組み合わせを使用することができる。抗体遺伝子の具体例としては
、本明細書に記載された抗体の重鎖配列をコードする遺伝子、及び軽鎖配列をコードする
遺伝子を組み合わせたものを挙げることができる。宿主細胞を形質転換する際には、重鎖
配列遺伝子と軽鎖配列遺伝子は、同一の発現ベクターに挿入されていることが可能であり
、また別々の発現ベクターに挿入されていることも可能である。
真核細胞を宿主として使用する場合、動物細胞、植物細胞、真核微生物を用いることが
できる。特に動物細胞としては、哺乳類細胞、例えば、サルの細胞であるCOS細胞(G
luzman,Y.Cell(1981)23,p.175-182、ATCC CRL
-1650)、マウス線維芽細胞NIH3T3(ATCC No.CRL-1658)や
チャイニーズ・ハムスター卵巣細胞(CHO細胞、ATCC CCL-61)のジヒドロ
葉酸還元酵素欠損株(Urlaub,G.and Chasin,L.A.Proc.N
atl.Acad.Sci.U.S.A.(1980)77,p.4126-4220)
を挙げることができる。
原核細胞を使用する場合は、例えば、大腸菌、枯草菌を挙げることができる。
これらの細胞に目的とする抗体遺伝子を形質転換によって導入し、形質転換された細胞
をin vitroで培養することによって抗体が得られる。当該培養においては抗体の配列によ
って収量が異なる場合があり、同等な結合活性を持つ抗体の中から収量を指標に医薬とし
ての生産が容易なものを選別することが可能である。よって、本発明の抗体には、上記形
質転換された宿主細胞を培養する工程、及び当該工程で得られた培養物から目的の抗体又
は当該抗体の機能性断片を採取する工程を含むことを特徴とする当該抗体の製造方法によ
って得られる抗体も含まれる。
【0069】
なお、哺乳類培養細胞で生産される抗体の重鎖のカルボキシル末端のリシン残基が欠失
することが知られており(Journal of Chromatography A,
705:129-134(1995))、また、同じく重鎖カルボキシル末端のグリシン
、リシンの2アミノ酸残基が欠失し、新たにカルボキシル末端に位置するプロリン残基が
アミド化されることが知られている(Analytical Biochemistry
,360:75-83(2007))。しかし、これらの重鎖配列の欠失及び修飾は、抗
体の抗原結合能及びエフェクター機能(補体の活性化や抗体依存性細胞障害作用等)には
影響を及ぼさない。したがって、本発明に係る抗体には、当該修飾を受けた抗体及び当該
抗体の機能性断片も含まれ、重鎖カルボキシル末端において1又は2のアミノ酸が欠失し
た欠失体、及びアミド化された当該欠失体(例えば、カルボキシル末端部位のプロリン残
基がアミド化された重鎖)等も包含される。但し、抗原結合能及びエフェクター機能が保
たれている限り、本発明に係る抗体の重鎖のカルボキシル末端の欠失体は上記の種類に限
定されない。本発明に係る抗体を構成する2本の重鎖は、完全長及び上記の欠失体からな
る群から選択される重鎖のいずれか一種であってもよいし、いずれか二種を組み合わせた
ものであってもよい。各欠失体の量比は本発明に係る抗体を産生する哺乳類培養細胞の種
類及び培養条件に影響を受け得るが、本発明に係る抗体の主成分としては2本の重鎖の双
方でカルボキシル末端のひとつのアミノ酸残基が欠失している場合を挙げることができる
【0070】
本発明の抗体のアイソタイプとしては、例えばIgG(IgG1、IgG2、IgG3
、IgG4)等を挙げることができるが、好ましくはIgG1又はIgG2を挙げること
ができる。
【0071】
抗体の生物活性としては、一般的には抗原結合活性、抗原と結合することによって該抗
原を発現する細胞に内在化する活性、抗原の活性を中和する活性、抗原の活性を増強する
活性、抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性、補体依存性細胞傷害(CDC)活性及び抗
体依存性細胞媒介食作用(ADCP)を挙げることができるが、本発明に係る抗体が有す
る生物活性は、HER2に対する結合活性であり、好ましくはHER2と結合することに
よってHER2発現細胞に内在化する活性である。さらに、本発明の抗体は、細胞内在化
活性に加えて、ADCC活性、CDC活性及び/又はADCP活性を併せ持っていてもよ
い。
【0072】
得られた抗体は、均一にまで精製することができる。抗体の分離、精製は通常の蛋白質
で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えばカラムクロマトグラフィー、
フィルター濾過、限外濾過、塩析、透析、調製用ポリアクリルアミドゲル電気泳動、等電
点電気泳動等を適宜選択、組み合わせれば、抗体を分離、精製することができる(Str
ategies for Protein Purification and Cha
racterization:A Laboratory Course Manual
,Daniel R.Marshak et al.eds.,Cold Spring
Harbor Laboratory Press(1996);Antibodie
s:A Laboratory Manual.Ed Harlow and Davi
d Lane,Cold Spring Harbor Laboratory(198
8))が、これらに限定されるものではない。
クロマトグラフィーとしては、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマ
トグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、逆相クロマト
グラフィー、吸着クロマトグラフィー等を挙げることができる。
これらのクロマトグラフィーは、HPLCやFPLC等の液体クロマトグラフィーを用
いて行うことができる。
アフィニティークロマトグラフィーに用いるカラムとしては、プロテインAカラム、プ
ロテインGカラムを挙げることができる。例えばプロテインAカラムを用いたカラムとし
て、Hyper D,POROS,Sepharose F.F.(ファルマシア株式会
社)等を挙げることができる。
また抗原を固定化した担体を用いて、抗原への結合性を利用して抗体を精製することも
可能である。
【0073】
[抗腫瘍性化合物]
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートに結合されている抗腫瘍性化合物につい
て述べる。本発明で使用される抗腫瘍性化合物としては、抗腫瘍効果を有する化合物であ
って、リンカー構造に結合できる置換基、部分構造を有するものであれば特に制限はない
。抗腫瘍性化合物は、リンカーの一部又は全部が腫瘍細胞内で切断されて抗腫瘍性化合物
部分が遊離して抗腫瘍効果が発現される。リンカーが薬物との結合部分で切断されれば抗
腫瘍性化合物が未修飾の構造で遊離され、その本来の抗腫瘍効果が発揮される。
本発明で使用される抗腫瘍性化合物として、カンプトテシン誘導体であるエキサテカン
((1S,9S)-1-アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H
-ベンゾ[de]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン;次
式:)
【0074】
【化14】
【0075】
を好適に使用することができる。このエキサテカンは、優れた抗腫瘍活性を有しているも
のの、抗腫瘍薬として市販されるには至っていない。同化合物は、公知の方法で容易に取
得でき、1位のアミノ基をリンカー構造への結合部位として好適に使用することができる
。また、エキサテカンはリンカーの一部が結合した状態で腫瘍細胞内で遊離される場合も
あるが、この様な構造であっても優れた抗腫瘍効果が発揮される優れた化合物である。
エキサテカンはカンプトテシン構造を有するので、酸性水性媒体中(例えばpH3程度)
ではラクトン環が形成された構造(閉環体)に平衡が偏り、一方、塩基性水性媒体中(例
えばpH10程度)ではラクトン環が開環した構造(開環体)に平衡が偏ることが知られてい
る。この様な閉環構造及び開環構造に対応するエキサテカン残基を導入した薬物コンジュ
ゲートであっても同等の抗腫瘍効果が期待され、いずれの構造のものも本発明の範囲に包
含されることはいうまでもない。
【0076】
他の抗腫瘍性化合物として例えば、ドキソルビシン、ダウノルビシン、マイトマイシン
C、ブレオマイシン、シクロシチジン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、メトトレキセ
ート、白金系抗腫瘍剤(シスプラチン若しくはその誘導体)、タキソール若しくはその誘
導体、その他のカンプトテシン若しくはその誘導体(特開平6-87746号公報に記載された
抗腫瘍剤)等を挙げることができる。
【0077】
抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗体1分子への薬物の結合数は、その有効性、安
全性に影響する重要因子である。抗体-薬物コンジュゲートの製造は、薬物の結合数が一
定の数となるよう、反応させる原料・試薬の使用量等の反応条件を規定して実施されるが
、低分子化合物の化学反応とは異なり、異なる数の薬物が結合した混合物として得られる
のが通常である。抗体1分子への薬物の結合数は平均値、すなわち、平均薬物結合数とし
て特定され、表記される。本発明でも原則として断りのない限り、すなわち、異なる薬物
結合数をもつ抗体-薬物コンジュゲート混合物に含まれる特定の薬物結合数をもつ抗体-
薬物コンジュゲートを示す場合を除き、薬物の結合数は平均値を意味する。
抗体分子へのエキサテカンの結合数はコントロール可能であり、1抗体あたりの薬物平
均結合数として、1から10個程度のエキサテカンを結合させることができるが、好まし
くは2から8個であり、より好ましくは3から8個である。なお、当業者であれば本願の
実施例の記載から抗体に必要な数の薬物を結合させる反応を設計することができ、エキサ
テカンの結合数をコントロールした抗体-薬物コンジュゲートを取得することができる。
【0078】
[リンカー構造]
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートにおいて抗腫瘍性化合物を抗HER2抗
体に結合させるリンカー構造について述べる。当該リンカーは、次式:
-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-
の構造を有しており、抗体はLの末端(Lが結合するのとは反対側の末端)で結合し、
抗腫瘍性化合物は-L-(CH2)n-C(=O)-部分のカルボニル基で結合する。
nは、0から6の整数を示すが、好ましくは1から5の整数であり、より好ましくは
1から3である。
【0079】
1.L
Lは、
-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n-C(=O)-
の構造で示される。
ここで、nは、2から8の整数であり、『-(Succinimid-3-yl-N)-』は、次式
【0080】
【化15】
【0081】
で示される構造を有する。この部分構造における3位が抗HER2抗体への結合部位であ
る。この3位での該抗体との結合は、チオエーテルを形成して結合することが特徴である
。この構造部分の1位の窒素原子は、この構造が含まれるリンカー内に存在するメチレン
の炭素原子と結合する。すなわち、-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n-C(=O)-L-は次式で
示される構造である(ここで、「抗体-S-」は抗体由来である。)。
【0082】
【化16】
【0083】
式中、nは、2から8の整数であるが、好ましくは2から5である。
【0084】
Lの具体例としては、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-
等を挙げることができる。
【0085】
2.L
Lは、
-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-
で示される構造であるが、Lは存在しなくともよく、この場合Lは単結合となる。また
、nは、1から6の整数であり、好ましくは2から4である。Lは末端のアミノ基でL
に結合し、反対の末端のカルボニル基でLと結合する。
【0086】
Lの具体例としては、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-
等を挙げることができる。
【0087】
3.L
Lは、2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基である。すなわち、2から7
個のアミノ酸がペプチド結合したオリゴペプチドの残基によって構成される。Lは、N
末端においてLに結合し、C末端においてリンカーの-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)
-部分のアミノ基に結合する。ここで、『ペプチド残基』或は『オリゴペプチドの残基』
とは、2以上のアミノ酸残基からなるペプチドから導かれる基であって、そのN末端とC
末端を結合部位とする2価の基を示す。
【0088】
Lを構成するアミノ酸は特に限定されることはないが、例えば、L-又はD-アミノ酸で
あり、好ましくはL-アミノ酸である。また、α-アミノ酸の他、β-アラニン、ε-アミ
ノカプロン酸、γ-アミノ酪酸等の構造のアミノ酸であってもよく、さらには例えばN-
メチル化されたアミノ酸等の非天然型のアミノ酸であってもよい。
Lのアミノ酸配列は、特に限定されないが、構成するアミノ酸として、フェニルアラ
ニン(Phe;F)、チロシン(Tyr;Y)、ロイシン(Leu;L)、グリシン(Gly;G)、アラ
ニン(Ala;A)、バリン(Val;V)、リシン(Lys;K)、シトルリン(Cit)、セリン(S
er;S)、グルタミン酸(Glu;E)、アスパラギン酸(Asp;D)等を挙げることができる
。これらのうちで好ましくは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリ
ン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸を挙げることができる。これ等のアミノ酸か
ら、重複してよく、任意に選択されたアミノ酸の配列を有するLを構築すればよい。ア
ミノ酸の種類によって、薬物遊離のパターンをコントロールすることができる。アミノ酸
の数は、2から7個でよい。
【0089】
Lの具体例として、
-GGF-、
-DGGF-、
-(D-)D-GGF-、
-EGGF-、
-GGFG-、
-SGGF-、
-KGGF-、
-DGGFG-、
-GGFGG-、
-DDGGFG-、
-KDGGFG-、
-GGFGGGF-
を挙げることができる。上記の『(D-)D』はD-アスパラギン酸を意味する。本発明の抗体
-薬物コンジュゲートの特に好ましいLとして、-GGFG-のテトラペプチド残基を挙げる
ことができる。
【0090】
4.L-(CH2)n-C(=O)-
L-(CH2)n-C(=O)-におけるLは、-O-の構造であるか、又は単結合である。nは、
0から5の整数であるが、好ましくは0から3であり、より好ましくは0又は1である。
L-(CH2)n-C(=O)-としては以下の構造のものを挙げることができる。
-O-CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2-C(=O)-、
-CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-O-C(=O)-。
これらのうちでは、
-O-CH2-C(=O)-、
-O-CH2CH2-C(=O)-、
-O-C(=O)-、
である場合か、Lが単結合でnが0である場合が好ましい。
【0091】
リンカーの-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-で示される構造の具体例として、
-NH-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2-O-C(=O)-、
-NH-CH2CH2CH2CH2-O-C(=O)-、
等を挙げることができる。
【0092】
これらのうちでより好ましくは、
-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-
である。
【0093】
リンカーの-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-は、鎖長として4から7原子の鎖長であ
るものが好ましいが、さらに好ましくは5又は6原子の鎖長を有するものである。
【0094】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、腫瘍細胞内に移動した後にはリンカ
ー部分が切断され、NH2-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-(NH-DX)で示される構造の薬物誘
導体が遊離して抗腫瘍作用を発現すると考えられる。本発明の抗体-薬物コンジュゲート
から遊離されて抗腫瘍効果を発現する抗腫瘍性誘導体としては、先に挙げたリンカーの-N
H-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-で示される構造の末端がアミノ基となった構造部分を有
する抗腫瘍性誘導体を挙げることができるが、特に好ましいものは次のものである。
NH2-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
NH2-CHCH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)。
なお、NH2-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)の場合は同分子内にあるアミナール構造が不安定
であるため、さらに自己分解して
HO-CH2-C(=O)-(NH-DX)
が遊離されることが確認された。これらの化合物は本発明の抗体-薬物コンジュゲートの
製造中間体としても好適に用いることができる。
【0095】
薬物をエキサテカンとする本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいては、下記の構造
の薬物-リンカー構造部分[-L-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-(NH-DX)]
を抗体に結合させたものが好ましい。これらの薬物-リンカー構造部分は、1抗体あたり
の平均結合数として、1から10を結合させればよいが、好ましくは2から8であり、よ
り好ましくは3から8である。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)

-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
これらのうちでより好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
さらに、好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0096】
本発明の抗体-薬物コンジュゲートにおいて、抗HER2抗体と薬物とを結合するリン
カー構造は、これまで述べたリンカー各部において示した好ましい構造のものを結合する
ことで好ましいリンカーを構築することができる。この様なリンカ-構造として以下の構
造のものを好適に使用することができる。なお構造の左端が抗体との結合部位であり、右
端が薬物との結合部位である。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
これらのうちでより好ましくは、次のものである。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-
C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-。
さらに、好ましくは、次のものを挙げることができる。
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-、
-(Succinimid-3-yl-N)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2C
H2CH2-C(=O)-。
【0097】
[製造方法]
次に、本発明の抗体-薬物コンジュゲート或はその製造中間体の代表的な製造方法につ
いて説明する。なお、以下において、化合物を示すために、各反応式中に示される化合物
の番号を用いる。すなわち、『式(1)の化合物』、『化合物(1)』等と称する。また
これ以外の番号の化合物についても同様に記載する。
【0098】
1.製造方法1
式(1)で示される、チオエーテルを介して抗体と薬物-リンカー構造が結合している
抗体-薬物コンジュゲートは、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0099】
【化17】
【0100】
[式中、ABは、スルフヒドリル基を有する抗体を示し、L’は、Lで示されるリンカー
構造において、リンカー末端がマレイミジル基(次式)
【0101】
【化18】
【0102】
となった構造(ここで、窒素原子が結合部位である)のリンカーを示すが、具体的には、
Lのうちの-(Succinimid-3-yl-N)-(CH2)n-C(=O)-において-(Succinimid-3-yl-N)-部分
がマレイミジル基となった基を示す。また、-(NH-DX)は次式:
【0103】
【化19】
【0104】
で示される構造であり、エキサテカンの1位のアミノ基の水素原子1個が除かれて生成す
る基を示す。]
【0105】
なお、上記の反応式において、式(1)の化合物では、薬物からリンカー末端までの構
造部分1個が1個の抗体に対して結合した構造として解釈され得るが、これは説明のため
の便宜的な記載であって、実際には当該構造部分が抗体分子1個に対して複数個が結合し
ている場合が多い。この状況は以下の製造方法の説明においても同様である。
【0106】
後述する方法によって入手しうる化合物(2)と、スルフヒドリル基を有する抗体(3
a)を反応させることによって、抗体-薬物コンジュゲート(1)を製造することができ
る。
スルフヒドリル基を有する抗体(3a)は、当業者周知の方法で得ることができる(He
rmanson, G.T, Bioconjugate Techniques,pp.56-136, pp.456-493, Academic Press(1996
))。例えば、Traut’s試薬を抗体のアミノ基に作用させる;N-サクシンイミジ
ル S-アセチルチオアルカノエート類を抗体のアミノ基に作用させた後、ヒドロキシル
アミンを作用させる;N-サクシンイミジル 3-(ピリジルジチオ)プロピオネートを
作用させた後、還元剤を作用させる;ジチオトレイトール、2-メルカプトエタノール、
トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)等の還元剤を抗体に作用
させて抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元してスルフヒドリル基を生成させる;等
の方法を挙げることができるがこれらに限定されることはない。
具体的には、還元剤としてTCEPを、抗体内ヒンジ部ジスルフィド1個当たりに対し
て0.3乃至3モル当量用い、キレート剤を含む緩衝液中で、抗体と反応させることで、
抗体内ヒンジ部ジスルフィドが部分的若しくは完全に還元された抗体を得ることができる
。キレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)やジエチレントリア
ミン5酢酸(DTPA)等を挙げることができる。これらを1mM乃至20mMの濃度で
用いればよい。緩衝液としては、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム
溶液等を用いることができる。具体的には、抗体を4℃乃至37℃で1乃至4時間TCE
Pと反応させることで部分的若しくは完全に還元されたスルフヒドリル基を有する抗体(
3a)を得ることができる。
ここでスルフヒドリル基を薬物-リンカー部分に付加させる反応を実施することでチオ
エーテル結合によって薬物-リンカー部分を結合させることができる。
スルフヒドリル基を有する抗体(3a)1個あたり、2乃至20モル当量の化合物(2
)を使用して、抗体1個当たり2個乃至8個の薬物が結合した抗体―薬物コンジュゲート
(1)を製造することができる。具体的には、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を
含む緩衝液に、化合物(2)を溶解させた溶液を加えて反応させればよい。ここで、緩衝
液としては、酢酸ナトリウム溶液、リン酸ナトリウムやホウ酸ナトリウム等を用いればよ
い。反応時のpHは5乃至9であり、より好適にはpH7付近で反応させればよい。化合
物(2)を溶解させる溶媒としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N-メチル-2-ピリドン(N
MP)等の有機溶媒を用いることができる。
化合物(2)を溶解させた有機溶媒溶液を、スルフヒドリル基を有する抗体(3a)を
含む緩衝液に1乃至20%v/vを加えて反応させればよい。反応温度は、0乃至37℃
、より好適には10乃至25℃であり、反応時間は、0.5乃至2時間である。反応は、
未反応の化合物(2)の反応性をチオール含有試薬によって失活させることによって終了
できる。チオール含有試薬は例えば、システイン又はN-アセチル-L-システイン(N
AC)である。より具体的には、NACを、用いた化合物(2)に対して、1乃至2モル
当量加え、室温で10乃至30分インキュベートすることにより反応を終了できる。
製造した抗体-薬物コンジュゲート(1)は、以下の共通操作によって濃縮、バッファ
ー交換、精製、抗体濃度、及び抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測定を行い、抗体-
薬物コンジュゲート(1)の同定を行うことができる。
【0107】
共通操作A:抗体又は抗体-薬物コンジュゲート水溶液の濃縮
Amicon Ultra(50,000 MWCO,Millipore Co.)
の容器内に抗体又は抗体-薬物コンジュゲート溶液を入れ、遠心機(Allegra X
-15R,Beckman Coulter,Inc.)を用いた遠心操作(2000G
乃至3800Gで5乃至20分間遠心)にて、抗体又は抗体-薬物コンジュゲート溶液を
濃縮した。
【0108】
共通操作B:抗体の濃度測定
UV測定器(Nanodrop 1000,Thermo Fisher Scien
tific Inc.)を用いて、メーカー規定の方法に従い、抗体濃度の測定を行った
。その際に、抗体ごとに異なる280nm吸光係数(1.3mLmg-1cm-1乃至1
.8mLmg-1cm-1)を用いた。
【0109】
共通操作C-1:抗体のバッファー交換
Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat.No.17
-0852-02,GE Healthcare Japan Corporation
)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(137mM)及びエチレンジアミン
四酢酸(EDTA,5mM)を含むリン酸緩衝液(10mM,pH6.0;本明細書でP
BS6.0/EDTAと称する)にて平衡化させた。このNAP-25カラム一本につき
、抗体水溶液2.5mLをのせた後、PBS6.0/EDTA3.5mLで溶出させた画
分(3.5mL)を分取した。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用い
て抗体濃度の測定を行った後に、PBS6.0/EDTAを用いて10mg/mLに抗体
濃度を調整した。
共通操作C-2:抗体のバッファー交換
Sephadex G-25担体を使用したNAP-25カラム(Cat.No.17
-0852-02,GE Healthcare Japan Corporation
)を、メーカー規定の方法に従い、塩化ナトリウム(50mM)及びEDTA(2mM)
を含むリン酸緩衝液(50mM,pH6.5;本明細書でPBS6.5/EDTAと称す
る)にて平衡化させた。このNAP-25カラム一本につき、抗体水溶液2.5mLをの
せた後、PBS6.5/EDTA3.5mLで溶出させた画分(3.5mL)を分取した
。この画分を共通操作Aによって濃縮し、共通操作Bを用いて抗体濃度の測定を行った後
に、PBS6.5/EDTAを用いて20mg/mLに抗体濃度を調整した。
【0110】
共通操作D:抗体-薬物コンジュゲートの精製
市販のリン酸緩衝液(PBS7.4,Cat.No.10010-023,Invit
rogen)、塩化ナトリウム(137mM)を含むリン酸ナトリウム緩衝液(10mM
,pH6.0;本明細書でPBS6.0と称する)又はSorbitol(5%)を含む
酢酸緩衝液(10mM,pH5.5;本明細書でABSと称する)のいずれかの緩衝液で
NAP-25カラムを平衡化させた。このNAP-25カラムに、抗体-薬物コンジュゲ
ート反応水溶液(約1.5mL)をのせ、メーカー規定の量の緩衝液で溶出させることで
、抗体画分を分取した。この分取画分を再びNAP-25カラムにのせ、緩衝液で溶出さ
せるゲルろ過精製操作を計2乃至3回繰り返すことで、未結合の薬物リンカーや低分子化
合物(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)、N-アセチル-
L-システイン(NAC)、ジメチルスルホキシド)を除いた抗体-薬物コンジュゲート
を得た。
【0111】
共通操作E:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度及び抗体一分子あたりの薬物平
均結合数の測定(1)
抗体-薬物コンジュゲートにおける結合薬物濃度は、抗体-薬物コンジュゲート水溶液
の280nm及び370nmの二波長におけるUV吸光度を測定した後に下記の計算を行
うことで、算出することができる。
ある波長における全吸光度は系内に存在する全ての吸収化学種の吸光度の和に等しい(
吸光度の加成性)ことから、抗体と薬物のコンジュゲーション前後において、抗体及び薬
物のモル吸光係数に変化がないと仮定すると、抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃
度及び薬物濃度は、下記の関係式で示される。

280=AD,280+AA,280=εD,280+εA,280式(
I)
370=AD,370+AA,370=εD,370+εA,370式(
II)

ここで、A280は280nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示
370は370nmにおける抗体-薬物コンジュゲート水溶液の吸光度を示し、A
A,280は280nmにおける抗体の吸光度を示し、AA,370は370nmにおけ
る抗体の吸光度を示し、AD,280は280nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光
度を示し、AD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体の吸光度を示し、ε
A,280は280nmにおける抗体のモル吸光係数を示し、εA,370は370nm
における抗体のモル吸光係数を示し、εD,280は280nmにおけるコンジュゲート
前駆体のモル吸光係数を示し、εD,370は370nmにおけるコンジュゲート前駆体
のモル吸光係数を示し、Cは抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体濃度を示し、C
は抗体-薬物コンジュゲートにおける薬物濃度を示す。
ここで、εA,280、εA,370、εD,280、εD,370は、事前に用意し
た値(計算推定値又は化合物のUV測定から得られた実測値)が用いられる。例えば、ε
A,280は、抗体のアミノ酸配列から、既知の計算方法(Protein Science, 1995, vol
.4, 2411-2423)によって推定することができる。εA,370は、通常、ゼロである。
実施例において、トラスツズマブのモル吸光係数は、εA,280=215400(計算
推定値)及びεA,370=0を用いた。εD,280及びεD,370は、用いるコン
ジュゲート前駆体をあるモル濃度に溶解させた溶液の吸光度を測定することで、ランベル
ト・ベールの法則(吸光度=モル濃度×モル吸光係数×セル光路長)によって、得ること
ができる。実施例における薬物リンカーのモル吸光係数は、特に断りのない限り、εD,
280=5000(実測平均値)、εD,370=19000(実測平均値)を用いた。
抗体-薬物コンジュゲート水溶液のA280及びA370を測定し、これらの値を式(I
)及び(II)に代入して連立方程式を解くことによって、C及びCを求めることが
できる。さらにCをCで除することで1抗体あたりの薬物平均結合数が求めることが
できる。
【0112】
共通操作F:抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数の測
定(2)
抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数は、前述の共通
操作Eに加え、以下の方法を用いる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析によっ
ても求めることができる。
[F-1.HPLC分析用サンプルの調製(抗体-薬物コンジュゲートの還元)]
抗体-薬物コンジュゲート溶液(約1mg/mL、60μL)をジチオトレイトール(
DTT)水溶液(100mM、15μL)と混合する。混合物を37℃で30分インキュ
ベートすることで、抗体-薬物コンジュゲートのL鎖及びH鎖間のジスルフィド結合を切
断したサンプルを、HPLC分析に用いる。
[F-2.HPLC分析]
HPLC分析を、下記の測定条件にて行う。
HPLCシステム:Agilent 1290 HPLCシステム(Agilent T
echnologies)
検出器:紫外吸光度計(測定波長:280nm)
カラム:PLRP-S(2.1×50mm、8μm、1000Å;Agilent T
echnologies、P/N PL1912-1802)
カラム温度:80℃
移動相A:0.04%トリフルオロ酢酸(TFA)水溶液
移動相B:0.04%TFAを含むアセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:29%-36%(0分-12.5分)、36%-42%(1
2.5-15分)、42%-29%(15分―15.1分)、29%-29%(15.1
分―25分)
サンプル注入量:15μL
[F-3.データ解析]
〔F-3-1〕 薬物の結合していない抗体のL鎖(L)及びH鎖(H)に対して、
薬物の結合したL鎖(薬物が一つ結合したL鎖:L)及びH鎖(薬物が一つ結合したH
鎖:H、薬物が二つ結合したH鎖:H、薬物が三つ結合したH鎖:H)は、結合し
た薬物の数に比例して疎水性が増して保持時間が大きくなることから、L、L、H
、H、H、Hの順に溶出される。L及びHとの保持時間比較により検出ピーク
をL、L、H、H、H、Hのいずれかに割り当てることができる。
〔F-3-2〕 薬物リンカーにUV吸収があるため、薬物リンカーの結合数に応じて、
L鎖、H鎖及び薬物リンカーのモル吸光係数を用いて下式に従ってピーク面積値の補正を
行う。
【0113】
【数1】
【0114】
【数2】
【0115】
ここで、各抗体におけるL鎖及びH鎖のモル吸光係数(280nm)は、既知の計算方
法(ProteinScience, 1995, vol.4, 2411-2423)によって、各抗体のL鎖及びH鎖のアミ
ノ酸配列から推定される値を用いることができる。トラスツズマブの場合、そのアミノ酸
配列に従って、L鎖のモル吸光係数として26150を、H鎖のモル吸光係数として81
290を推定値として用いた。また、薬物リンカーのモル吸光係数(280nm)は、各
薬物リンカーをメルカプトエタノール又はN-アセチルシステインで反応させ、マレイミ
ド基をサクシニイミドチオエーテルに変換した化合物の実測のモル吸光係数(280nm
)を用いた。
〔F-3-3〕 ピーク面積補正値合計に対する各鎖ピーク面積比(%)を下式に従って
計算する。
【0116】
【数3】
【0117】
〔F-3-4〕 抗体-薬物コンジュゲートにおける抗体一分子あたりの薬物平均結合数
を、下式に従って計算する。
薬物平均結合数=(Lピーク面積比x0+Lピーク面積比x1+Hピーク面積比
x0+Hピーク面積比x1+Hピーク面積比x2+Hピーク面積比x3)/100
x2
【0118】
製造方法1において使用される製造中間体化合物について以下に述べる。製造方法1に
おける式(2)で示される化合物は次式:
(maleimid-N-yl)-(CH2)n-C(=O)-L-L-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-C(=O)-(NH-DX)
で示される化合物である。
式中、
nは、整数の2から8を示し、
Lは、-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-又は単結合を示し、
ここで、nは、1から6の整数を示し、
Lは、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトルリン、セリン、グルタミ
ン酸、アスパラギン酸から選ばれる2から7個のアミノ酸で構成されるペプチド残基を示
し、
nは、0から6の整数を示し、
nは、0から5の整数を示し、
Lは、-O-又は単結合を示し、
(maleimid-N-yl)-は、次式
【0119】
【化20】
【0120】
で示される、マレイミジル基(2,5-dioxo-2,5-dihydro-1H-pyrrol-1-yl基)で、窒素原子
が結合部位となっている基であり、
-(NH-DX)は、次式
【0121】
【化21】
【0122】
で示される、1位のアミノ基の窒素原子が結合部位となっている基である。
【0123】
Lは、単結合であるか、-NH-(CH2CH2-O)n-CH2CH2-C(=O)-である場合にはnが整数
の2から4であることが製造中間体として好ましい。
Lのペプチド残基としては、フェニルアラニン、グリシン、バリン、リシン、シトル
リン、セリン、グルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれるアミノ酸からなるペプチド残
基である化合物が製造中間体として好ましい。この様なペプチド残基のうち、Lが4個
のアミノ酸で構成されるペプチド残基である化合物が製造中間体として好ましい。より具
体的には、Lが-GGFG-のテトラペプチド残基である化合物が製造中間体として好ましい
【0124】
また、-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-としては、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2
CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化
合物が製造中間体として好ましく、より好ましくは、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、
又は-NH-CH2CH2-O-CH2である化合物である。
【0125】
さらに、式(2)で示される化合物は、nが整数の2から5であり、Lが単結合であ
り、-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-が、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2-
、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が製造
中間体として好ましい。より好ましくは、-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-が、-NH-CH2CH2-
、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物である。さら
に、nが、整数の2又は5である化合物が好ましい。
【0126】
また、式(2)で示される化合物は、nが整数の2から5であり、Lが-NH-(CH2CH2-
O)n-CH2CH2-C(=O)-であって、nが整数の2から4であり、-NH-(CH2)n-L-(CH2)n
-が、-NH-CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2-、-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-、-NH
-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が製造中間体として好ましい。より好
ましくは、nが整数の2又は4の化合物である。さらに、-NH-(CH2)n-L-(CH2)n-
が、-NH-CH2CH2CH2-、-NH-CH2-O-CH2-、又は-NH-CH2CH2-O-CH2-である化合物が好ましい
【0127】
この様な本発明化合物の製造に有用な中間体として好ましいものとしては以下のものを
例示することができる。
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-
CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0128】
上記の製造中間体化合物の群から選ばれる薬物-リンカー化合物を、抗HER2抗体又
はその反応性誘導体と反応させることによって抗HER2抗体のヒンジ部に存在するジス
ルフィド結合部分においてチオエーテル結合を形成させて本発明の抗HER2抗体-薬物
コンジュゲートを製造することができる。この場合、抗HER2抗体の反応性誘導体を使
用することが好ましく、特に抗HER2抗体を還元処理して得られる反応性誘導体が好ま
しい。
【0129】
以下のものが製造中間体としてより好ましい化合物である。
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2-CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-C
(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)
-GGFG-NH-CH2CH2CH2-C(=O)-(NH-DX)。
【0130】
また、上記の中間体化合物群の中では次式:
(maleimid-N-yl)-CH2CH2-C(=O)-NH-CH2CH2-O-CH2CH2-O-CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2CH2
-C(=O)-(NH-DX)、
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、又は
(maleimid-N-yl)-CH2CH2CH2CH2CH2-C(=O)-GGFG-NH-CH2CH2-O-CH2-C(=O)-(NH-DX)、
で示される化合物がさらに好ましい化合物である。
【0131】
なお、コンジュゲートの量を確保するために、同様な条件で作製して得られた平均薬物
数が同程度の複数のコンジュゲート(例えば±1程度)を混合して新たなロットにするこ
とができる。その場合、平均薬物数は混合前の平均薬物数の間に収まる。
【0132】
2.製造方法2
先の製造方法で使用した中間体である式(2)で示される化合物及びそれらの薬理上許
容される塩は、例えば下記の方法によって製造することができる。
【0133】
【化22】
【0134】
[式中、L’は末端マレイミジル基を示し、P、P、及びPは保護基を示す。]
【0135】
カルボン酸(5)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、塩
基存在下、NH-DX(4)又はその薬理上許容される塩と反応させることによって化合物
(6)を製造することができる。NH-DX(4)は、エキサテカン(化学名:(1S,9S)-1-
アミノ-9-エチル-5-フルオロ-2,3-ジヒドロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-1H,12H-ベンゾ[de
]ピラノ[3',4':6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-10,13(9H,15H)-ジオン)を示す。
この反応は、ペプチド合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよい。活性エステ
ルには各種のものがあるが、例えばp-ニトロフェノール等のフェノール類、N-ヒドロ
キシベンゾトリアゾール或はN-ヒドロキシスクシンイミド等とカルボン酸(5)をN,
N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド或は1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロ
ピル)カルボジイミド・塩酸塩等の縮合剤を用いて反応させれば製造できる。また、活性
エステルは、カルボン酸(5)とペンタフルオロフェニルトリフルオロアセテート等との
反応;カルボン酸(5)と1-ベンゾトリアゾリルオキシトリピロリジノホスホニウムヘ
キサフルオロホスファイトとの反応;カルボン酸(5)とシアノホスホン酸ジエチルとの
反応(塩入法);カルボン酸(5)とトリフェニルホスフィン及び2,2’-ジピリジル
ジスルフィドとの反応(向山法);カルボン酸(5)と4-(4,6-ジメトキシ-1,
3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロライド(DMTMM)
の様なトリアジン誘導体との反応;等によっても製造することができる。また、カルボン
酸(5)を塩基存在下に塩化チオニル、オキザリルクロリド等の酸ハロゲン化物で処理す
ることによって製造できる酸ハライド法等によって反応を行うこともできる。
上記の様に得たカルボン酸(5)の活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物
を化合物(4)と適当な塩基存在下に、不活性な溶媒中で-78℃~150℃の反応温度
で反応させることによって化合物(6)を製造することができる。なお、「不活性な溶媒
」とはその溶媒が採用された反応において実施される目的とされた反応を阻害することの
ない溶媒を意味する。
【0136】
上記の各工程に用いる具体的な塩基としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム
、ナトリウムエトキシド、カリウムブトキシド、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水
素化ナトリウム、水素化カリウム等の、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩、ア
ルコキシド、水酸化物、又は水素化物;n-ブチルリチウム等のアルキルリチウム、又は
リチウムジイソプロピルアミド等のジアルキルアミノリチウムに代表される有機金属塩基
;リチウムビス(トリメチルシリル)アミド等のビスシリルアミンの有機金属塩基;さら
にはピリジン、2,6-ルチジン、コリジン、4-ジメチルアミノピリジン、トリエチル
アミン、N-メチルモルホリン、ジイソプロピルエチルアミン、ジアザビシクロ[5.4
.0]ウンデク-7-エン(DBU)等の三級アミン或は含窒素複素環化合物等の有機塩
基を挙げることができる。
【0137】
本反応に用いる不活性な溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等
のハロゲン化炭化水素系溶媒;テトラヒドロフラン、1,2-ジメトキシエタン、ジオキ
サン等のエーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;N,N-ジメ
チルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリジン-2-オン等
のアミド系溶媒;を挙げることができ、これらに加えて場合によってはジメチルスルホキ
シド、スルホラン等のスルホキシド系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系
溶媒;メタノール、エタノール等のアルコール系の溶媒等を使用することも可能である。
さらにはこれ等を混合して使用することもできる。
【0138】
化合物(6)の末端アミノ基の保護基Pとしては、tert-ブチルオキシカルボニ
ル基や9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基等、ペ
プチド合成に通常用いられているアミノ基の保護基を用いることができる。他のアミノ基
の保護基としては、アセチル基等のアルカノイル基;メトキシカルボニル基、エトキシカ
ルボニル基等のアルコキシカルボニル基;パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パ
ラ(又はオルト)ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基
;ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;ベンゾイル基等のアロイル
基;2,4-ジニトロベンゼンスルホニル基、オルトニトロベンゼンスルホニル基等のア
リールスルホニル基;を挙げることができる。保護基Pは、アミノ基を保護する化合物
の性質等に応じて選択すればよい。
得られた化合物(6)の末端アミノ基の保護基Pを脱保護させることによって化合物
(7)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択す
ればよい。
N末端をPで保護したペプチドカルボン酸(8)を活性エステル、混合酸無水物等に
誘導し、得られた化合物(7)に反応させることによって、化合物(9)を製造すること
ができる。ペプチドカルボン酸(8)と化合物(7)のペプチド結合を形成する反応条件
や試薬、及び塩基、不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して
使用すればよい。保護基Pは、化合物(6)の保護基で述べたものから適宜選択して使
用すればよく、アミノ基を保護する化合物の性質等に応じて選択すればよい。また、ペプ
チド合成に通常用いられている様に、ペプチドカルボン酸(8)を構成するアミノ酸又は
ペプチドを順次反応と脱保護を繰り返し、伸長させて化合物(9)を製造することもでき
る。
得られた化合物(9)のアミノ基の保護基Pを脱保護させることによって化合物(1
0)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択すれ
ばよい。
カルボン酸(11)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、
得られた化合物(10)に反応させることによって、化合物(2)を製造することができ
る。カルボン酸(11)と化合物(10)のペプチド結合を形成する反応条件や試薬、及
び塩基、及び不活性溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すれ
ばよい。
【0139】
化合物(9)は例えば下記の方法でも製造することができる。
N末端をPで保護したペプチドカルボン酸(8)を活性エステル、混合酸無水物等に
誘導し、塩基存在下、カルボキシ基をPで保護したアミン化合物(12)と反応させる
ことによって化合物(13)を製造することができる。ペプチドカルボン酸(8)と化合
物(12)のペプチド結合を形成する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合
物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すればよい。
化合物(13)のアミノ基の保護基Pとしては、通常用いられる保護基であれば特に
制限はない。
具体的には水酸基の保護基としては、メトキシメチル基等のアルコキシメチル基;ベン
ジル基、4-メトキシベンジル基、トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;アセチ
ル基等のアルカノイル基;ベンゾイル基等のアロイル基;tert-ブチルジフェニルシ
リル基等のシリル基;等を挙げることができる。カルボキシ基は、メチル基、エチル基、
tert-ブチル基等のアルキル基、アリル基、又はベンジル基等のアリールメチル基と
のエステル等として保護することができる。アミノ基は、tert-ブチルオキシカルボ
ニル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルキルオキシカルボニル基
;アリルオキシカルボニル基、又は9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基、ベンジ
ルオキシカルボニル基、パラメトキシベンジルオキシカルボニル基、パラ(又はオルト)
ニトロベンジルオキシカルボニル基等のアリールメトキシカルボニル基;のほか、アセチ
ル基等のアルカノイル基;ベンジル基、トリフェニルメチル基等のアリールメチル基;ベ
ンゾイル基等のアロイル基;又は2,4-ジニトロベンゼンスルホニル基、オルトニトロ
ベンゼンスルホニル基等のアリールスルホニル基;等を挙げることができる。
カルボキシ基の保護基Pとしては、有機合成化学、中でもペプチド合成においてカル
ボキシ基の保護基として通常用いられている保護基を使用すればよく、具体的にはメチル
基、エチル基、tert-ブチル等のアルキルエステル、アリルエステル、ベンジルエス
テル等であり上記の保護基から適宜選択して使用すればよい。
この場合に、アミノ基の保護基とカルボキシ基の保護基が異なる方法又は条件で除去で
きることが好ましい。例えばPがtert-ブチルオキシカルボニル基であり、Pがベ
ンジル基である組み合わせ等を代表的なものとして挙げることができる。それらの保護基
はアミノ基とカルボキシ基を保護する化合物の性質等に応じて上述したものから選択すれ
ばよく、それらの保護基の切断に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選択すればよ
い。
得られた化合物(13)のカルボキシ基の保護基Pを脱保護させることによって化合
物(14)を製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選
択すればよい。
得られた化合物(14)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導
し、塩基存在下、化合物(4)と反応させることによって化合物(9)を製造することが
できる。この反応はペプチド合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条
件や試薬、及び塩基や不活性な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して
使用すればよい。
【0140】
化合物(2)は、例えば下記の方法でも製造することができる。
化合物(13)のアミノ基の保護基Pを脱保護させることによって化合物(15)を
製造することができる。この脱保護は、その保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい

カルボン酸誘導体(11)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘
導し、塩基存在下、得られた化合物(15)と反応させることによって化合物(16)を
製造することができる。ペプチドカルボン酸(11)と化合物(15)のアミド結合を形
成する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものか
ら適宜選択して使用すればよい。
得られた化合物(16)のカルボキシ基の保護基を脱保護させることによって化合物(
17)を製造することができる。この脱保護は、化合物(14)の製造におけるカルボキ
シ基の脱保護と同様に行うことができる。
化合物(17)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、塩基
存在下、化合物(4)と反応させることによって化合物(2)を製造することができる。
この反応はペプチド合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条件や試薬
、塩基、及び不活性な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すれ
ばよい。
【0141】
3.製造方法3
中間体の式(2)で示される化合物は下記の方法によっても製造することもできる。
【0142】
【化23】
【0143】
[式中、L’は末端がマレイミジル基に変換された構造のL1であり、Pは保護基を示す
【0144】
化合物(11)を活性エステル、混合酸無水物等に誘導し、塩基存在下、C末端をP
で保護したペプチドカルボン酸(18)と反応させることによって化合物(19)を製造
することができる。ペプチドカルボン酸(18)と化合物(11)のペプチド結合を形成
する反応条件や試薬、塩基、及び不活性な溶媒は、化合物(6)の合成で述べたものから
適宜選択して使用すればよい。化合物(18)のカルボキシ基の保護基Pは先に述べた
保護基から適宜選択して使用すればよい。
得られた化合物(19)のカルボキシ基の保護基を脱保護させることによって化合物(
20)を製造することができる。この脱保護は、化合物(14)の製造におけるカルボキ
シ基の脱保護と同様に行うことができる。
得られた化合物(20)を活性エステル、又は混合酸無水物等に誘導し、化合物(7)
に反応させることによって、化合物(2)を製造することができる。この反応はペプチド
合成に通常用いる反応試薬や条件を準用すればよく、反応条件や試薬、塩基、及び不活性
な溶媒は化合物(6)の合成で述べたものから適宜選択して使用すればよい。
【0145】
4.製造方法4
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(10)のうち、n=1、L=Oの化合物(1
0b)の製造方法について詳述する。式(10b)で示される化合物、その塩又はそれら
の溶媒和物は、例えば下記の方法で製造することができる。
【0146】
【化24】
【0147】
[式中、Lは前記と同じものを示し、Lはアシル基であって、アセチル基等のアルカノイ
ル基若しくはベンゾイル基等のアロイル基であるか、又は水素原子を示し、X及びYは1
から3個のアミノ酸からなるオリゴペプチドを、P及びPはアミノ基の保護基を、P
はカルボキシ基の保護基を示す]
【0148】
式(21)で示される化合物は、特開2002-60351号公報に記載される手法や
文献(J. Org. Chem., 51巻,3196頁,1986年)記載の方法、又はその方法を応用して必
要に応じて保護基の除去や官能基変換を行うことによって製造することができる。この他
、末端アミノ基が保護されたアミノ酸又はアミノ基が保護されたオリゴペプチドの酸アミ
ドをアルデヒド又はケトンと処理することによって得ることができる。
化合物(21)を、不活性な溶媒中、酸又は塩基存在下で冷却下から室温の温度条件で
水酸基を有する化合物(22)と反応させることによって、化合物(23)を製造するこ
とができる。
ここで使用できる酸としては例えば、フッ化水素酸、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ
酸等の無機酸;酢酸、クエン酸、パラトルエンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸
;テトラフルオロボレート、塩化亜鉛、塩化スズ、塩化アルミニウム、塩化鉄等のルイス
酸;等を挙げることができる。これらのうちではスルホン酸類、特にパラトルエンスルホ
ン酸が好ましい。さらに塩基としては、既に述べられた塩基の中から適宜選択して使用す
ればよく、特にカリウム tert-ブトキシド等のアルカリ金属アルコキシド;水酸化
ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物;水素化ナトリウム、水素化カリ
ウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属水素化物;リチウム ジイソプロピルアミド
等のジアルキルアミノリチウムに代表される有機金属塩基;リチウム ビス(トリメチル
シリル)アミド等のビスシリルアミンの有機金属塩基;等が好ましい。
反応に用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン等のエーテル系
溶媒;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒;等が用いられる。上記の溶媒は水
との混合物としてもよい。
また、Pに例示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられ
る基であれば特に制限はない。代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護
基を挙げることができるが、本反応中においてPに例示されるアミノ基の保護基が切断
される場合がある。その場合には、必要に応じて適当なアミノ基の保護試薬と適宜反応さ
せて再度保護基を導入すればよい。
化合物(24)は、化合物(23)の保護基Pを除去することによって製造すること
ができる。ここで、Pとして例示されるカルボキシ基の保護基としては、製造方法2に
代表的なものが記載されており、ここから適宜選択することができる。化合物(23)に
おいて、アミノ基の保護基Pとカルボキシ基の保護基Pが異なる方法又は条件で除去で
きる保護基であることが望ましい。例えば、Pが9-フルオレニルメチルオキシカルボ
ニル基であり、Pがベンジル基である組み合わせ等を代表的なものとして挙げることが
できる。それらの保護基は、アミノ基及びカルボキシ基を保護する化合物の性質等に応じ
て選択すればよく、それらの保護基の除去に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選
択すればよい。
カルボン酸(24)を活性エステル、混合酸無水物、又は酸ハロゲン化物等に誘導し、
塩基存在下、化合物(4)又はその薬理上許容される塩と反応させることによって化合物
(25)を製造し、得られた化合物(25)の保護基Pを除去することによって化合物
(26)を製造することができる。化合物(4)とカルボン酸(24)との反応及び保護
基Pを除去する反応では、製造方法2で述べた試薬や反応条件と同様のものを用いれば
よい。
化合物(26)と末端アミノ基が保護されたアミノ酸又はアミノ基が保護されたオリゴ
ペプチド(27)を反応させることによって化合物(9b)を製造し、得られた化合物(
9b)の保護基Pを除去することによって化合物(10b)を製造することができる。P
として示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられる基であ
れば特に制限はなく、代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護基を挙げ
ることができ、その除去に際しても保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい。化合物
(26)と化合物(27)との反応では、ペプチド合成に通常使用される反応試薬や条件
を準用すればよい。上記の方法で製造した化合物(10b)は、上述の製造方法に従って
本発明化合物(1)に導くことができる。
【0149】
5.製造方法5
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(2)のうち、n=1、n=1、L=Oの化合物
(2)の製造方法について詳述する。式(2)で示される化合物、その塩又はそれらの溶
媒和物は、例えば下記の方法で製造することができる。
【0150】
【化25】
【0151】
[式中、L1’、L、Lは前記と同じものを示し、Zは1から3個のアミノ酸からなるオ
リゴペプチドを、Pはアミノ基の保護基を、Pはカルボキシ基の保護基を示す。]
【0152】
末端アミノ基及びカルボキシ基が保護されたアミノ酸又はオリゴペプチド(28)の保
護基Pを除去することによって化合物(29)が得られる。得られたアミン体(29)
と化合物(11)を反応させることによって化合物(30)を製造できる。Pとして示
されるアミノ基の保護基としては、通常、アミノ基の保護に用いられる基であれば特に制
限はなく、代表的なものとして製造方法2で記載したアミノ基の保護基を挙げることがで
きる。また、保護基Pの除去に際してもその保護基に応じた試薬や条件を選択すればよ
い。化合物(29)とカルボン酸(11)との反応では、製造方法2で述べた試薬や反応
条件と同様のものを用いればよい。
化合物(30)の保護基Pを除去することによって化合物(31)を製造し、得られ
たカルボン酸(31)と化合物(26)を反応させることによって製造中間体(2b)を
製造できる。Pとして示されるカルボキシ基の保護基としては、代表的なものを製造方
法2に記載した他、その脱保護反応では製造方法2で述べた試薬や反応条件と同様のもの
を用いればよい。また、化合物(26)とカルボン酸(31)との反応では、ペプチド合
成に通常使用される反応試薬や条件を準用すればよい。上記の方法で製造した化合物(2
b)は、上述の製造方法に従って本発明化合物(1)に導くことができる。
【0153】
6.製造方法6
以下に、製造方法2に記載の製造中間体(17)のうち、n=1、n=1、L=Oの化合
物(17b)の製造方法について詳述する。式(17b)で示される化合物、その塩又は
それらの溶媒和物は、例えば下記の方法によっても製造することができる。
【0154】
【化26】
【0155】
[式中、L1’、L、L、X、Y、P、P、及びPは前記と同じものを示す。]
【0156】
末端アミノ基及び末端カルボキシ基が保護された化合物(23)のアミノ基の保護基P
を脱保護することによって化合物(32)を製造し、得られたアミン体(32)と末端
アミノ基又はアミノ基が保護されたオリゴペプチド(27)を反応させることによって化
合物(33)を製造できる。Pとして示されるアミノ基の保護基としては、通常、アミ
ノ基の保護に用いられる基であれば特に制限はなく、代表的なものとして製造方法2で記
載したアミノ基の保護基を挙げることができる。また、保護基Pの除去に際してもその
保護基に応じた試薬や条件を選択すればよい。ここで、Pとして示されるカルボキシ基
の保護基及びPとして示されるアミノ基の保護基としては、代表的なものとして製造方
法2で記載したカルボキシ基及びアミノ基の保護基を挙げることができる。化合物(33
)では、カルボキシ基の保護基Pとアミノ基の保護基Pは同じ方法又は条件で除去でき
る保護基であることが望ましい。例えばPがベンジルエステル基であり、Pがベンジル
オキシカルボニル基である組み合わせを代表的なものとして挙げることができる。
化合物(34)は、化合物(33)のカルボキシ基の保護基Pとアミノ基の保護基P
を除去することによって製造することができる。カルボキシ基の保護基Pとアミノ基の
保護基Pのそれぞれを逐次除去することによっても化合物(37)を製造することがで
きる他、PとPが同じ方法又は条件で除去できる保護基であれば、両者を一工程で除去
して化合物(34)を簡便に製造することができる。
得られた化合物(34)と化合物(11)を反応させることによって化合物(17b)
を製造できる。化合物(34)と化合物(11)との反応では、製造方法2で述べた試薬
や反応条件と同様なものを用いればよい。
【0157】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、大気中に放置したり、又は再結晶や
精製操作をすることにより、水分を吸収し、或は吸着水が付着する等して、水和物になる
場合があり、その様な水を含む化合物又は塩も本発明に包含される。
また、本発明には、種々の放射性又は非放射性同位体でラベルされた化合物も包含され
る。本発明の抗体-薬物コンジュゲートを構成する原子の1以上に、原子同位体を非天然
割合で含有し得る。原子同位体としては、例えば、重水素(2H)、トリチウム(3H)、ヨ
ウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)等を挙げることができる。また、本発明化合物
は、例えば、トリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)、又は炭素-14(14C)等の放射性
同位体で放射性標識され得る。放射性標識された化合物は、治療又は予防剤、研究試薬、
例えば、アッセイ試薬、及び診断剤、例えば、インビボ画像診断剤として有用である。本
発明の抗体-薬物コンジュゲートの全ての同位体変異種は、放射性であると否とを問わず
、本発明の範囲に包含される。
【0158】
[医薬]
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、癌細胞に対して細胞傷害活性を示す
ことから、医薬として、特に癌に対する治療剤及び/又は予防剤として使用することがで
きる。
すなわち、本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、癌治療の主要な治療法で
ある化学療法のための薬剤として選択して使用することができ、その結果として、癌細胞
の成長を遅らせ、増殖を抑え、さらには癌細胞を破壊することができる。これ等によって
、癌患者において、癌による症状からの解放や、QOLの改善を達成でき、癌患者の生命
を保って治療効果が達成される。癌細胞の破壊には至らない場合であっても、癌細胞の増
殖の抑制やコントロールによって癌患者においてより高いQOLを達成しつつより長期の
生存を達成させることができる。
このような薬物療法においての薬物単独での使用の他、アジュバント療法において他の
療法と組み合わせる薬剤としても使用でき、外科手術や、放射線療法、ホルモン療法等と
組み合わせることができる。さらにはネオアジュバント療法における薬物療法の薬剤とし
て使用することもできる。
以上のような治療的使用の他、微細な転移癌細胞の増殖を押さえ、さらには破壊する効
果も期待することができる。特に原発性の癌細胞においてHER2の発現が確認されたと
きに本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを投与することよって癌転移の抑制や
、予防効果を期待することができる。例えば、転移過程で体液中にある癌細胞を抑制し破
壊する効果や、いずれかの組織に着床した直後の微細な癌細胞に対する抑制、破壊等の効
果が期待できる。したがって、特に外科的な癌の除去後においての癌転移の抑制、予防効
果が期待できる。
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、患者に対しては全身療法として投与
する他、癌組織に局所的に投与して治療効果を期待することができる。
【0159】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートが適用される癌の種類としては、肺癌、
尿路上皮癌、大腸癌、前立腺癌、卵巣癌、膵癌、乳癌、膀胱癌、胃癌、胃腸間質腫瘍、子
宮頸癌、食道癌、扁平上皮癌、腹膜癌、肝臓癌、肝細胞癌、結腸癌、直腸癌、結腸直腸癌
、子宮内膜癌、子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌、外陰部癌、甲状腺癌、又は陰茎癌等を挙げる
ことができる。本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、治療対象となる癌細胞
において、抗体-薬物コンジュゲート中の抗体が認識できるHER2蛋白を発現している
癌細胞が治療対象となる。本明細書において、「HER2蛋白を発現している癌」とは、
その細胞表面にHER2蛋白を有する細胞を含む癌である。HER2蛋白はさまざまなヒ
トの腫瘍において過剰発現しており、HER2蛋白の過剰発現を評価する免疫組織化学染
色法(IHC)やHER2遺伝子の増幅を評価する蛍光in situハイブリダイゼーション
法(FISH)等、この分野で通常実施される方法を用いて評価することができる。
また、本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、その抗HER2抗体が癌細胞
表面で発現しているHER2蛋白を認識し、さらに内在化することによって抗腫瘍効果が
発現されることから、本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートの治療対象は「HE
R2蛋白を発現している癌」に限定されることはなく、例えば白血病、悪性リンパ腫、形
質細胞種、骨髄腫、又は肉腫も治療対象とすることができる。
【0160】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、哺乳動物に対して好適に投与するこ
とができるが、より好ましくはヒトである。
【0161】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートが含まれる医薬組成物において使用され
る物質としては、投与量や投与濃度において、この分野において通常使用される製剤添加
物その他から適宜選択して適用することができる。
【0162】
本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、1種以上の薬学的に適合性の成分を
含む薬学的組成物として投与され得る。例えば、上記薬学的組成物は、代表的には、1種
以上の薬学的キャリア(例えば、滅菌した液体)を含む。ここで液体には、例えば、水及
び油(石油、動物起源、植物起源、又は合成起源の油)が含まれる。油は、例えば、ラッ
カセイ油、大豆油、鉱油、ゴマ油等であってよい。水は、上記薬学的組成物が静脈内投与
される場合に、より代表的なキャリアである。食塩水溶液、並びにデキストロース水溶液
及びグリセロール水溶液もまた、液体キャリアとして、特に、注射用溶液のために使用さ
れ得る。適切な薬学的賦形剤は、この分野で公知のものから適宜選択することができる。
上記組成物はまた、所望であれば、微量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝化剤を含
み得る。適切な薬学的キャリアの例は、E.W.Martinによる「Remingto
n’s Pharmaceutical Sciences」に記載される。その処方は
、投与の態様に対応する。
【0163】
種々の送達システムが公知であり、本発明の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートを投
与するために使用され得る。導入方法としては、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、及び皮
下の経路を挙げることができるが、これらに限定されることはない。投与は、例えば、注
入又はボーラス注射によるものであり得る。特定の好ましい実施形態において、上記リガ
ンド薬物結合体の投与は、注入によるものである。非経口的投与は、好ましい投与経路で
ある。
【0164】
代表的実施形態において、上記薬学的組成物は、ヒトへの静脈内投与に適合した薬学的
組成物として、常習的手順に従って処方される。代表的には、静脈内投与のための組成物
は、滅菌の等張性の水性緩衝液中の溶液である。必要である場合、上記医薬はまた、可溶
化剤及び注射部位での疼痛を和らげるための局所麻酔剤(例えば、リグノカイン)を含み
得る。一般に、上記成分は、例えば、活性剤の量を示すアンプル又はサシェ等に密封して
シールされた容器中の乾燥凍結乾燥粉末又は無水の濃縮物として、別個に、又は単位剤形
中で一緒に混合して、のいずれかで供給される。上記医薬が注入によって投与される形態
の場合、それは、例えば、滅菌の製薬グレードの水又は食塩水を含む注入ボトルで投薬さ
れ得る。上記医薬が注射によって投与される場合、注射用滅菌水又は食塩水のアンプルは
、例えば、上記成分が投与前に混合され得るように、提供され得る。
【0165】
本発明の医薬組成物は、本願の抗HER2抗体-薬物コンジュゲートのみを含む医薬組
成物であってもよいし、抗HER2抗体-薬物コンジュゲート及び少なくとも一つのこれ
以外の癌治療剤を含む医薬組成物であってもよい。本発明の抗HER2抗体-薬物コンジ
ュゲートは、他の癌治療剤と共に投与することもでき、これによって抗癌効果を増強させ
ることができる。この様な目的で使用される他の抗癌剤は、抗体-薬物コンジュゲートと
同時に、別々に、或は連続して個体に投与されてもよいし、それぞれの投与間隔を変えて
投与してもよい。この様な癌治療剤として、5-FU、pertuzumab、pacl
itaxel、carboplatin、cisplatin、gemcitabine
、capecitabine、irinotecan(CPT-11)、paclita
xel、docetaxel、pemetrexed、sorafenib、vinbl
astin、vinorelbine、everolims、tanespimycin
、bevacizumab、oxaliplatin、lapatinib、ado-t
rastuzumab emtansine(T-DM1)又は国際公開第2003/0
38043号に記載の薬剤、更にLH-RHアナログ(リュープロレリン、ゴセレリン等
)、エストラムスチン・フォスフェイト、エストロジェン拮抗薬(タモキシフェン、ラロ
キシフェン等)、アロマターゼ阻害剤(アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタ
ン等)等を挙げることができるが、抗腫瘍活性を有する薬剤であれば限定されることはな
い。
【0166】
この様な医薬組成物は、選択された組成と必要な純度を持つ製剤として、凍結乾燥製剤
或は液状製剤として製剤化すればよい。凍結乾燥製剤として製剤化する際には、この分野
において使用される適当な製剤添加物が含まれる製剤であってもよい。また液剤において
も同様にして、この分野において使用される各種の製剤添加物を含む液状製剤として製剤
化することができる。
【0167】
医薬組成物の組成及び濃度は投与方法によっても変化するが、本発明の医薬組成物に含
まれる抗HER2抗体-薬物コンジュゲートは、抗体-薬物コンジュゲートの抗原に対す
る親和性、すなわち、抗原に対する解離定数(Kd値)の点において、親和性が高い(K
d値が低い)ほど、少量の投与量であっても薬効を発揮させことができる。したがって、
抗体-薬物コンジュゲートの投与量の決定に当たっては、抗体-薬物コンジュゲートと抗
原との親和性の状況に基づいて投与量を設定することもできる。本発明の抗体-薬物コン
ジュゲートをヒトに対して投与する際には、例えば、約0.001~100mg/kgを
1回或は1~180日間に1回の間隔で複数回投与すればよい。
【実施例0168】
以下に示す実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定される
ものではない。また、これらはいかなる意味においても限定的に解釈されるものではない
。また、本明細書において、特に記載のない試薬、溶媒及び出発材料は、市販の供給源か
ら容易に入手可能である。
【0169】
参考例1 トラスツズマブの調製
Herceptin(Genentech,Inc.)440mg/バイアルの14本
分を陽イオン交換クロマトグラフィーバッファーA(25mM Citrate buf
fer,30mM NaCl,pH5.0)の2Lに溶解し、0.2μmフィルター(M
illipore Co.:Stericup 0.22μm,GVPVDF Memb
rane)にてろ過を行った。陽イオン交換クロマトグラフィーカラム(SP Seph
arose HP 240ml,XK50カラム)に試料を供し、陽イオン交換クロマト
グラフィーバッファーB(25mM Citrate buffer,500mM Na
Cl,pH5.0)にてNaCl濃度30mM~500mMの直線勾配(リニアグラディ
エント)により溶出させ、IgGモノマーを分画した。サイズ排除クロマトグラフィー分
析により、モノマー高純度98%以上のサンプルを合わせ、UF30K(Millipo
re Co.:PELLICON XL Filter,BIOMAX 30K,PXB
030A50)による濃縮及びCBSバッファー(10mM Citrate/140m
M NaCl,pH6.0)に置換した。CBSバッファーに置換したサンプルは0.2
μmフィルター(Sartorius:Minisart-Plus0.2μm,178
23K)にてろ過を行った。
【0170】
参考例2 トラスツズマブエムタンシンの製造 T-DM1
抗体のSMCC化:参考例1にて作成したトラスツズマブを製造方法1に記載した共通
操作C-2(緩衝液としてPBS6.5/EDTAを使用)、共通操作A及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.5/EDTAにバッファー交換し、トラスツズマブ(160.0mg)がPBS6.5
/EDTA(7.60mL)に溶解する溶液を15mLポリプロピレン製チューブに用意
した。次いでSMCC(1.84mg)のDMSO溶液(0.40mL;抗体一分子に対
して約5.1当量相当)を室温で添加し、反応溶液の抗体濃度を20mg/mLに調整し
てチューブ・ローテーター(MTR-103、アズワン株式会社)を用いて室温で2時間
反応させた。この反応液を共通操作D-2(緩衝液としてPBS6.5/EDTAを使用
)に従った精製を行い、SMCC誘導化された抗体を154.9mg含む溶液を12mL
得た。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:50mLポリプロピレン製チューブに入れ
た上記溶液へPBS6.5/EDTA(2.56mL)及びN-デアセチル-N-(
3-メルカプト-1-オキソプロピル)-メイタンシン(4.67mg;DM1、Jou
rnal of Medicinal Chemistry、2006年、49巻、14号
、4392項)のDMA(ジメチルアセトアミド)溶液(0.93mL;SMCC誘導化
された抗体一分子に対して約5.8当量相当)を室温で添加し、反応溶液の抗体濃度を1
0mg/mLに調整してチューブ・ローテーターを用いて室温で16.5時間反応させた

精製操作:上記溶液を、塩化ナトリウム(137mM)を含むリン酸ナトリウム緩衝液
(10mM,pH6.5)を用いた共通操作D-1による精製を行い、目的の参考例化合
物を含有する溶液を35mL得た。
特性評価:252nm及び280nmの二波長におけるUV吸光度を用いた共通操作E
を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:4.14mg/mL、抗体収量:144.9mg(91%)、抗体一分子あ
たりの薬物平均結合数(n):3.0。
【0171】
実施例1 中間体(1)
【化27】
【0172】
工程1:tert-ブチル (4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9
-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘ
キサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ
[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)カーバメート
4-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸(0.237g,1.13mm
oL)をジクロロメタン(10mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.1
30g,1.13mmoL)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カ
ルボジイミド塩酸塩(0.216g,1.13mmoL)を加えて1時間攪拌した。その
反応溶液をエキサテカンのメタンスルホン酸塩(0.500g,0.94mmoL)、及
びトリエチルアミン(0.157mL,1.13mmoL)を加えたN,N-ジメチルホ
ルムアミド溶液(10mL)に滴下し、室温で1日攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られ
た残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノ
-ル=8:2(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.595g,定量的)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.31(9H,s),1.58(1H,t,J=7.2Hz),1.66(2H
,t,J=7.2Hz),1.82-1.89(2H,m),2.12-2.21(3H
,m),2.39(3H,s),2.92(2H,t,J=6.5Hz),3.17(2
H,s),5.16(1H,d,J=18.8Hz),5.24(1H,d,J=18.
8Hz),5.42(2H,s),5.59-5.55(1H,m),6.53(1H,
s),6.78(1H,t,J=6.3Hz),7.30(1H,s),7.79(1H
,d,J=11.0Hz),8.40(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:621(M+H)
【0173】
工程2:4-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキ
シ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ
-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-
b]キノリン-1-イル]ブタンアミド
上記工程1で得た化合物(0.388g,0.61mmoL)をジクロロメタン(9m
L)に溶解した。トリフルオロ酢酸(9mL)を加えて4時間攪拌した。溶媒を減圧留去
し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホル
ム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物
のトリフルオロ酢酸塩(0.343g,定量的)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.79-1.92(4H,m),2.10-2.17(2H,m),2.27(
2H,t,J=7.0Hz),2.40(3H,s),2.80-2.86(2H,m)
,3.15-3.20(2H,m),5.15(1H,d,J=18.8Hz),5.2
6(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,s),5.54-5.61(1H
,m),6.55(1H,s),7.32(1H,s),7.72(3H,brs),7
.82(1H,d,J=11.0Hz),8.54(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:521(M+H)
【0174】
実施例2 抗体-薬物コンジュゲート(2)
【化28】
【0175】
工程1:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ル-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-
メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,
12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノ
リン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)グリシンアミド
N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリ
シン(0.081g,0.19mmoL)をジクロロメタン(3mL)に溶解し、N-ヒ
ドロキシスクシンイミド(0.021g,0.19mmoL)、及び1-エチル-3-(
3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(0.036g,0.19mmoL
)を加え、3.5時間攪拌した。この反応溶液を実施例1工程2で得た化合物(0.08
0g,0.15mmoL)を加えたN,N-ジメチルホルムアミド溶液(1.5mL)に
滴下し、室温で4時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラム
クロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノ-ル=8:2(v/v)]に
て精製し、標記化合物(0.106g,73%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.36(9H,s),1.71(2H,m),1.86(2H,t,J=7.8
Hz),2.15-2.19(4H,m),2.40(3H,s),2.77(1H,d
d,J=12.7,8.8Hz),3.02(1H,dd,J=14.1,4.7Hz)
,3.08-3.11(2H,m),3.16-3.19(2H,m),3.54(2H
,d,J=5.9Hz),3.57-3.77(4H,m),4.46-4.48(1H
,m),5.16(1H,d,J=19.2Hz),5.25(1H,d,J=18.8
Hz),5.42(2H,s),5.55-5.60(1H,m),6.53(1H,s
),7.00(1H,t,J=6.3Hz),7.17-7.26(5H,m),7.3
1(1H,s),7.71(1H,t,J=5.7Hz),7.80(1H,d,J=1
1.0Hz),7.92(1H,t,J=5.7Hz),8.15(1H,d,J=8.
2Hz),8.27(1H,t,J=5.5Hz),8.46(1H,d,J=8.2H
z).
MS(APCI)m/z:939(M+H)
【0176】
工程2:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9
-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3
,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,
4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソ
ブチル)グリシンアミド
上記工程1で得た化合物(1.97g,2.10mmoL)をジクロロメタン(7mL
)に溶解し、トリフルオロ酢酸(7mL)を加えて1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、
残留物にトルエンを加えて共沸させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配
有機層]にて精製し、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(1.97g,99%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.71-1.73(2H,m),1.82-1.90(2H,m),2.12-
2.20(4H,m),2.40(3H,s),2.75(1H,dd,J=13.7,
9.4Hz),3.03-3.09(3H,m),3.18-3.19(2H,m),3
.58-3.60(2H,m),3.64(1H,d,J=5.9Hz),3.69(1
H,d,J=5.9Hz),3.72(1H,d,J=5.5Hz),3.87(1H,
dd,J=16.8,5.9Hz),4.50-4.56(1H,m),5.16(1H
,d,J=19.2Hz),5.25(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H
,s),5.55-5.60(1H,m),7.17-7.27(5H,m),7.32
(1H,s),7.78-7.81(2H,m),7.95-7.97(3H,m),8
.33-8.35(2H,m),8.48-8.51(2H,m).
MS(APCI)m/z:839(M+H)
【0177】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ
-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ
[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4
-オキソブチル)グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(337mg,0.353mmoL)のN,N-ジメチルホル
ムアミド(1.2mL)溶液に、トリエチルアミン(44.3mL,0.318mmoL
)、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(119.7mg,0.388mm
oL)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲル
カラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=5:1(v/v
)]にて精製し、標記化合物(278.0mg,76%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.3H
z),1.12-1.22(2H,m),1.40-1.51(4H,m),1.66-
1.76(2H,m),1.80-1.91(2H,m),2.05-2.21(6H,
m),2.39(3H,s),2.79(1H,dd,J=14.0,9.8Hz),2
.98-3.21(5H,m),3.55-3.77(8H,m),4.41-4.48
(1H,m),5.15(1H,d,J=18.9Hz),5.24(1H,d,J=1
8.9Hz),5.40(1H,d,J=17.1Hz),5.44(1H,d,J=1
7.1Hz),5.54-5.60(1H,m),6.53(1H,s),6.99(2
H,s),7.20-7.27(5H,m),7.30(1H,s),7.70(1H,
t,J=5.5Hz),7.80(1H,d,J=11.0Hz),8.03(1H,t
,J=5.8Hz),8.08(1H,t,J=5.5Hz),8.14(1H,d,J
=7.9Hz),8.25(1H,t,J=6.1Hz),8.46(1H,d,J=8
.5Hz).
MS(APCI)m/z:1032(M+H)
【0178】
工程4:抗体-薬物コンジュゲート(2)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、製造方法1に記載した共通操作
C-1及び共通操作B(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用
)を用いて、PBS6.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(3.0m
L)を15mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mMトリス(2-カルボキ
シエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP,東京化成工業株式会社)水溶液(0.0934
mL;抗体一分子に対して4.6当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(Naca
lai Tesque,Inc.;0.150mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±
0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内
ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に上記工程3で得た化合物を10mM含むDMSO溶液(0.187mL;抗体
一分子に対して9.2当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物リンカー
を抗体へ結合させた。次に、N-アセチルシステイン(NAC,Sigma-Aldri
ch Co.LLC)水溶液(0.0374mL;抗体一分子に対して18.4当量)を
加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、製造方法1に記載した共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0
を使用)を用いた精製を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6mL得
た後、共通操作Aを使用して、溶液を濃縮した。
特性評価:製造方法1に記載した共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:3.21mg/mL,抗体収量:22.5mg(75%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):2.6。
【0179】
実施例3 抗体-薬物コンジュゲート(3)
【化29】
【0180】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(3)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.487mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6
.0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1.25mL
)を1.5mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0
.039mL;抗体一分子に対して4.6当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(
0.0625mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した後
に、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還
元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.072mL)
と実施例2工程3の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.078mL;抗体一分子に
対して9.2当量)を室温で加え、チューブ・ローテーターを用いて室温で40分攪拌し
、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0155m
L;抗体一分子に対して18.4当量)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リン
カーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を6mL得た。さらに共通操作Aを使用して、溶液を濃縮した
後、共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:9.85mg/mL,抗体収量:6.9mg(55%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):7.3。
【0181】
実施例4 抗体-薬物コンジュゲート(4)
【化30】
【0182】
工程1:N-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)プロパノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ
-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ
[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4
-オキソブチル)グリシンアミド
実施例1の化合物(80mg,0.084mmoL)を、6-マレイミドヘキサン酸N
-スクシンイミジルの代わりに3-マレイミドプロピオン酸N-スクシンイミジル(24
.6mg,0.0924mmoL)を用いて、実施例2工程3と同様に反応させ、標記化
合物(60.0mg,73%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.89(3H,t,J=7.3H
z),1.70-1.78(2H,m),1.81-1.94(2H,m),2.12-
2.23(4H,m),2.42(3H,s),2.81(1H,dd,J=13.7,
9.8Hz),3.01-3.15(3H,m),3.16-3.23(2H,m),3
.30-3.35(1H,m),3.58-3.71(6H,m),3.71-3.79
(1H,m),4.44-4.51(1H,m),5.19(1H,d,J=19.0H
z),5.27(1H,d,J=19.0Hz),5.43(1H,d,J=17.6H
z),5.47(1H,d,J=17.6Hz),5.57-5.63(1H,m),6
.56(1H,s),7.02(2H,s),7.17-7.22(1H,m),7.2
2-7.30(5H,m),7.34(1H,s),7.73(1H,t,J=5.6H
z),7.83(1H,d,J=10.7Hz),8.08(1H,t,J=5.6Hz
),8.15(1H,d,J=7.8Hz),8.30(2H,dt,J=18.7,5
.7Hz),8.49(1H,d,J=8.8Hz).
MS(APCI)m/z:990(M+H)
【0183】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(4)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1mL)を1.
5mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.015
5mL;抗体一分子に対して2.3当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.0
50mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した後に、37
℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた

抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.072mL)
と実施例2工程3の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.031mL;抗体一分子に
対して4.6当量)を室温で加え、チューブ・ローテーターを用いて室温で40分間攪拌
し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0078
mL;抗体一分子に対して9.2当量)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リン
カーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を6mL得た。共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.32mg/mL,抗体収量:7.9mg(79%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):3.1。
【0184】
実施例5 抗体-薬物コンジュゲート(5)
【化31】
【0185】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(5)
抗体還元時の抗体に対するTCEPのモル比が4.6となるよう10mM TCEP水
溶液の添加量を調節し、薬物リンカー結合時の抗体に対する実施例4工程1の化合物のモ
ル比が9.2となるよう10mM薬物リンカー溶液の添加量を調節し、また、反応停止時
の抗体に対するNACのモル比が18.4となるよう100mM NAC水溶液の添加量
を調節し、実施例4工程2と同様の操作により、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有す
る溶液を6mL得、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.23mg/mL,抗体収量:7.4mg(74%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):6.1。
【0186】
実施例6 抗体-薬物コンジュゲート(6)
【化32】
【0187】
工程1:N-{3-[2-(2-{[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H
-ピロール-1-イル)プロパノイル]アミノ}エトキシ)エトキシ]プロパノイル}グ
リシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9-エチル-
5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10
,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,
7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソブチル)グ
リシンアミド
実施例2工程2で得た化合物(100mg,0.119mmoL)を、トリエチルアミ
ンの代わりにジイソプロピルエチルアミン(20.8μL,0.119mmoL)を、6
-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに3-(2-(2-(3-マレイ
ンイミドプロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパン酸N-スクシンイミジル(50
.7mg,0.119mmoL)を用いて、実施例2工程3と同様に反応させ、標記化合
物(66.5mg,48%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.85(3H,t,J=7.4H
z),1.65-1.74(2H,m),1.77-1.90(2H,m),2.07-
2.19(4H,m),2.30(2H,t,J=7.2Hz),2.33-2.36(
2H,m),2.38(3H,s),2.76(1H,dd,J=13.7,9.8Hz
),2.96-3.18(9H,m),3.42-3.44(4H,m),3.53-3
.76(10H,m),4.43(1H,td,J=8.6,4.7Hz),5.14(
1H,d,J=18.8Hz),5.23(1H,d,J=18.8Hz),5.38(
1H,d,J=17.2Hz),5.42(1H,d,J=17.2Hz),5.52-
5.58(1H,m),6.52(1H,s),6.98(2H,s),7.12-7.
17(1H,m),7.18-7.25(4H,m),7.29(1H,s),7.69
(1H,t,J=5.5Hz),7.78(1H,d,J=11.3Hz),7.98-
8.03(2H,m),8.11(1H,d,J=7.8Hz),8.16(1H,t,
J=5.7Hz),8.23(1H,t,J=5.9Hz),8.44(1H,d,J=
9.0Hz).
MS(APCI)m/z:1149(M+H)
【0188】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(6)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1.25mL)
を1.5mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.
019mL;抗体一分子に対して2.3当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0
.0625mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した後に
、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元
させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(Sigma-Al
drich Co.LLC;0.109mL)と上記工程1の化合物を10mM含むDM
SO溶液(0.039mL;抗体一分子に対して4.6当量)を室温で加え、チューブ・
ローテーターを用いて室温で40分間攪拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、
100mM NAC水溶液(0.008mL)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬
物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.76mg/mL,抗体収量:10.6mg(85%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.6。
【0189】
実施例7 抗体-薬物コンジュゲート(7)
【化33】
【0190】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(7)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1.25mL)
を1.5mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.
039mL;抗体一分子に対して4.6当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0
.0625mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した後に
、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元
させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.072mL)
と実施例6工程1の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.078mL;抗体一分子に
対して9.2当量)を室温で加え、チューブ・ローテーターを用いて室温で40分間攪拌
し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0155
mL)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.93mg/mL,抗体収量:11.6mg(93%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.9。
【0191】
実施例8 抗体-薬物コンジュゲート(8)
【化34】
【0192】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(8)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1.25mL)
を1.5mLポリプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.
039mL;抗体一分子に対して4.6当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0
.0625mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した後に
、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元
させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.072mL)
と実施例6工程1の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.078mL;抗体一分子に
対して9.2当量)を室温で加え、チューブ・ローテーターを用いて室温で40分間攪拌
し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0155
mL)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い
、目的の化合物を含有する溶液を5.7mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.50mg/mL,抗体収量:8.55mg(86%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.2。
【0193】
実施例9 抗体-薬物コンジュゲート(9)
【化35】
【0194】
工程1:N-[19-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イ
ル)-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキソ-16-アザノナデカン-1-
オイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(4-{[(1S,9S)-9
-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3
,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,
4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-4-オキソ
ブチル)グリシンアミド
実施例2工程2で得た化合物(90mg,0.107mmoL)を、トリエチルアミン
の代わりにジイソプロピルエチルアミン(18.7μL,0.107mmoL)を、6-
マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに1-マレインイミド-3-オキソ
-7,10,13,16-テトラオキサ-4-アザノナデカン-19-酸N-スクシンイ
ミジル(55.1mg,0.107mmoL)を用いて、実施例2工程3と同様に反応さ
せ、標記化合物(50mg,37%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.85(3H,t,J=7.2H
z),1.64-1.74(2H,m),1.77-1.90(2H,m),2.06-
2.19(4H,m),2.27-2.32(2H,m),2.33-2.37(2H,
m),2.38(3H,s),2.72-2.80(3H,m),2.96-3.19(
6H,m),3.39-3.48(10H,m),3.52-3.75(10H,m),
4.39-4.48(1H,m),5.14(1H,d,J=18.8Hz),5.23
(1H,d,J=18.8Hz),5.38(1H,d,J=17.0Hz),5.42
(1H,d,J=17.0Hz),5.52-5.58(1H,m),6.52(1H,
s),6.98(1H,s),7.13-7.24(5H,m),7.29(1H,s)
,7.69(1H,t,J=5.5Hz),7.78(1H,d,J=10.9Hz),
7.98-8.03(2H,m),8.10(1H,d,J=7.8Hz),8.16(
1H,t,J=5.7Hz),8.23(1H,t,J=5.7Hz),8.44(1H
,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:1237(M+H)
【0195】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(9)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.75mg/mL,抗体収量:10.5mg(84%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.4。
【0196】
実施例10 抗体-薬物コンジュゲート(10)
【化36】
【0197】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(10)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例9工程1で得た化合物を用いて、実施
例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.79mg/mL,抗体収量:10.7mg(86%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.0。
【0198】
実施例11 中間体(11)
【化37】
【0199】
工程1:tert-ブチル [2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオ
ロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,1
5-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インド
リジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]カ
ーバメート
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(3.10g,5.47moL)を、4-(ter
t-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸の代わりに{2-[(tert-ブトキシカル
ボニル)アミノ]エトキシ}酢酸(J.Med.Chem.,1992年,35巻,29
28頁;1.55g,6.01mmol)を用いて、実施例1工程1と同様に反応させ、
標記化合物(2.56g,73%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.3H
z),1.26(9H,s),1.81-1.91(2H,m),2.13-2.22(
2H,m),2.40(3H,s),3.08-3.26(4H,m),3.43-3.
53(2H,m),4.00(1H,d,J=15.1Hz),4.05(1H,d,J
=15.1Hz),5.14(1H,d,J=18.7Hz),5.22(1H,d,J
=18.7Hz),5.40(1H,d,J=16.6Hz),5.44(1H,d,J
=16.6Hz),5.59-5.66(1H,m),6.53(1H,s),6.86
(1H,t,J=5.4Hz),7.31(1H,s),7.79(1H,d,J=10
.9Hz),8.49(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:637(M+H)
【0200】
工程2:2-(2-アミノエトキシ)-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオ
ロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,1
5-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インド
リジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アセトアミド
上記工程1で得た化合物(1.50g,2.36mol)を、実施例1工程2と同様に
反応させ、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(1.50g,定量的)を淡黄色固体として
得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.5H
z),1.81-1.92(2H,m),2.15-2.23(2H,m),2.41(
3H,s),3.05(2H,t,J=5.1Hz),3.15-3.23(2H,m)
,3.71(2H,t,J=5.1Hz),4.10(2H,s),5.19(1H,d
,J=18.7Hz),5.24(1H,d,J=18.7Hz),5.43(2H,s
),5.58-5.66(1H,m),6.55(1H,s),7.33(1H,s),
7.73-7.84(4H,m),8.55(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:537(M+H)
【0201】
実施例12 抗体-薬物コンジュゲート(12)
【化38】
【0202】
工程1:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ル-N-[2-(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ
-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-
1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b
]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)エチル]グリシンアミド
実施例11工程2の化合物(554mg,0.85mmol)を、実施例2工程1と同
様に反応させ、標記化合物(775mg,95%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.85(3H,t,J=7.3H
z),1.36(9H,s),1.78-1.89(2H,m),2.13-2.22(
2H,m),2.39(3H,s),2.71(1H,dd,J=13.4,9.8Hz
),2.95(1H,dd,J=13.4,4.3Hz),3.09-3.23(1H,
m),3.23-3.32(2H,m),3.40-3.62(8H,m),3.73(
1H,dd,J=16.5,5.5Hz),4.03(2H,s),4.39-4.47
(1H,m),5.17(1H,d,J=18.9Hz),5.25(1H,d,J=1
8.9Hz),5.41(1H,d,J=16.8Hz),5.45(1H,d,J=1
6.8Hz),5.57-5.64(1H,m),6.54(1H,s),6.99(1
H,t,J=5.8Hz),7.13-7.26(5H,m),7.31(1H,s),
7.76-7.82(2H,m),7.90(1H,t,J=5.2Hz),8.13(
1H,d,J=7.9Hz),8.27(1H,t,J=5.8Hz),8.49(1H
,d,J=8.5Hz).
MS(APCI)m/z:955(M+H)
【0203】
工程2:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-(2-{[(1S,9S
)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-
2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[
3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-
オキソエトキシ)エチル]グリシンアミド
上記工程1で得た化合物(630mg,0.659mmol)を、実施例2工程2と同
様に反応させ、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(588mg,92%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.3H
z),1.79-1.90(2H,m),2.13-2.22(2H,m),2.39(
3H,s),2.71(1H,dd,J=13.4,10.1Hz),2.99(1H,
dd,J=13.4,4.3Hz),3.09-3.23(1H,m),3.24-3.
32(3H,m),3.41-3.71(7H,m),3.86(1H,dd,J=16
.8,5.8Hz),4.04(2H,s),4.52(1H,td,J=9.0,4.
1Hz),5.17(1H,d,J=18.9Hz),5.25(1H,d,J=18.
9Hz),5.41(1H,d,J=16.5Hz),5.45(1H,d,J=16.
5Hz),5.56-5.65(1H,m),6.55(1H,s),7.13-7.2
6(5H,m),7.32(1H,s),7.80(1H,d,J=11.0Hz),7
.87-8.01(4H,m),8.29-8.36(2H,m),8.46-8.55
(2H,m).
MS(APCI)m/z:855(M+H)
【0204】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-(2-{[(1
S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジ
オキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]
ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ
}-2-オキソエトキシ)エチル]グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(240mg,0.247mmol)を、実施例2工程3と同
様に反応させ、標記化合物(162mg,62%)を得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.6H
z),1.13-1.22(2H,m),1.40-1.51(4H,m),1.78-
1.90(2H,m),2.09(2H,t,J=7.6Hz),2.14-2.21(
2H,m),2.39(3H,s),2.74(1H,dd,J=13.6,9.7Hz
),2.96(1H,dd,J=13.6,4.5Hz),3.08-3.24(1H,
m),3.24-3.30(1H,m),3.33-3.40(4H,m),3.47-
3.68(7H,m),3.72(1H,dd,J=16.6,5.7Hz),4.03
(2H,s),4.42(1H,td,J=8.6,4.2Hz),5.17(1H,d
,J=18.7Hz),5.25(1H,d,J=18.7Hz),5.40(1H,d
,J=17.2Hz),5.44(1H,d,J=17.2Hz),5.57-5.64
(1H,m),6.52(1H,s),6.99(2H,s),7.13-7.25(5
H,m),7.31(1H,s),7.74-7.81(2H,m),7.99(1H,
t,J=5.7Hz),8.03-8.11(2H,m),8.22(1H,t,J=5
.7Hz),8.47(1H,d,J=9.1Hz).
MS(APCI)m/z:1048(M+H)
【0205】
工程4:抗体-薬物コンジュゲート(12)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程3で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。さらに共通操作Aを
使用して、溶液を濃縮した後、共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:10.77mg/mL,抗体収量:7.5mg(60%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.7。
【0206】
実施例13 抗体-薬物コンジュゲート(13)
【化39】
【0207】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(13)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例12工程3で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。さらに共通操
作Aを使用して、溶液を濃縮した後、共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:10.69mg/mL,抗体収量:7.5mg(60%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.9。
【0208】
実施例14 中間体(14)
【化40】
【0209】
工程1:tert-ブチル (3-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9
-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘ
キサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ
[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-3-オキソプロピル)カーバメート
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(500mg,0.941mmoL)を、4-(t
ert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸の代わりにN-(tert-ブトキシカル
ボニル)-β-アラニンを用いて、実施例1工程1と同様に反応させ、標記化合物(61
6mg,定量的)を黄茶色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.29(9H,s),1.86(2H,dt,J=15.1,7.3Hz),2
.04-2.22(2H,m),2.31(2H,t,J=6.8Hz),2.40(3
H,s),3.10-3.26(4H,m),5.15(1H,d,J=18.8Hz)
,5.26(1H,d,J=19.2Hz),5.42(2H,dd,J=18.8,1
6.4Hz),5.57(1H,dt,J=8.5,4.2Hz),6.53(1H,s
),6.78(1H,t,J=5.5Hz),7.30(1H,s),7.80(1H,
d,J=11.0Hz),8.46(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:607(M+H)
【0210】
工程2:N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチ
ル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12
H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン
-1-イル]-β-アラニンアミド
上記工程1で得た化合物を、実施例1工程2と同様に反応させ、標記化合物のトリフル
オロ酢酸塩(499mg,86%)を黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.86(2H,dquin,J=14.6,7.2,7.2,7.2,7.2H
z),2.06-2.27(1H,m),2.41(3H,s),2.46-2.57(
2H,m),3.08(2H,t,J=6.8Hz),3.14-3.24(2H,m)
,5.22(1H,d,J=18.8Hz),5.29(1H,d,J=18.8Hz)
,5.43(2H,s),5.58(1H,dt,J=8.5,4.5Hz),6.55
(1H,s),7.32(1H,s),7.74(3H,brs),7.82(1H,d
,J=11.0Hz),8.67(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:507(M+H)
【0211】
実施例15 抗体-薬物コンジュゲート(15)
【化41】
【0212】
工程1:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ルグリシル-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-
メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,
12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノ
リン-1-イル]-β-アラニンアミド
実施例14工程2で得た化合物(484mg,0.780mmoL)を、実施例2工程
1と同様に反応させ、標記化合物(626mg,87%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.27-1.42(9H,m),1.77-1.93(2H,m),2.06-
2.22(2H,m),2.36(2H,t,J=7.2Hz),2.40(3H,d,
J=1.6Hz),2.44-2.54(2H,m),2.76(1H,dd,J=14
.5,10.2Hz),3.02(1H,dd,J=13.9,4.5Hz),3.12
-3.22(2H,m),3.52(6H,d,J=6.3Hz),4.42-4.54
(1H,m),5.19(1H,d,J=19.2Hz),5.26(1H,d,J=1
8.4Hz),5.42(1H,dd,J=18.4,16.4Hz),5.57(1H
,dt,J=8.7,4.4Hz),6.53(1H,s),6.98(1H,t,J=
5.9Hz),7.14-7.28(5H,m),7.31(1H,s),7.77-7
.84(1H,m),7.91(1H,t,J=5.5Hz),8.16(1H,d,J
=7.8Hz),8.27(1H,t,J=5.1Hz),8.52(1H,d,J=9
.0Hz).
【0213】
工程2:グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9S)-9
-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3
,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,
4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニンアミド
トリフルオロ酢酸塩
上記工程1で得た化合物(624mg,0.675mmoL)を、実施例2工程2と同
様に反応させ、標記化合物(626mg,92%)を黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.86(2H,tt,J=14.5,7.2Hz),2.07-2.22(2H
,m),2.36(2H,t,J=7.2Hz),2.40(3H,s),2.44-2
.54(2H,m),2.75(1H,dd,J=13.7,9.8Hz),3.04(
1H,dd,J=13.7,4.3Hz),3.12-3.22(2H,m),3.58
(2H,d,J=4.7Hz),3.69(3H,td,J=11.2,5.7Hz),
3.87(1H,dd,J=17.0,5.7Hz),4.54(1H,m,J=17.
8,4.5Hz),5.19(1H,d,J=19.2Hz),5.26(1H,d,J
=18.8Hz),5.43(2H,s),5.51-5.60(1H,m),6.55
(1H,s),7.14-7.29(5H,m),7.32(1H,s),7.81(1
H,d,J=10.9Hz),7.88(1H,t,J=5.7Hz),7.97(3H
,brs),8.29-8.38(2H,m),8.50(1H,t,J=5.7Hz)
,8.55(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:825(M+H)
【0214】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ
-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ
[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニ
ンアミド
上記工程2で得た化合物(60.0mg,0.0646mmoL)を、実施例2工程3
と同様に反応させ、標記化合物(14.0mg,21%)を固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.2H
z),1.12-1.22(2H,m),1.39-1.51(4H,m),1.79-
1.91(2H,m),2.02-2.20(2H,m),2.07(2H,t,J=7
.4Hz),2.30-2.42(4H,m),2.40(3H,s),2.78(1H
,dd,J=14.1,9.4Hz),3.02(1H,dd,J=14.7,4.9H
z),3.12-3.21(2H,m),3.26-3.42(2H,m),3.50-
3.80(6H,m),4.40-4.51(1H,m),5.19(1H,d,J=1
9.6Hz),5.26(1H,d,J=19.2Hz),5.42(2H,brs),
5.51-5.62(1H,m),6.53(1H,s),6.99(2H,s),7.
13-7.28(5H,m),7.31(1H,s),7.74-7.84(2H,m)
,8.01(1H,t,J=5.3Hz),8.06(1H,t,J=5.7Hz),8
.14(1H,d,J=8.2Hz),8.25(1H,t,J=5.7Hz),8.5
3(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:1018(M+H)
【0215】
工程4:抗体-薬物コンジュゲート(15)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(1.0mL)を2mLチューブ
に採取し、10mM TCEP水溶液(0.0155mL;抗体一分子に対して2.3当
量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.050mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に上記工程3で得た化合物を10mM含むDMSO溶液(0.0311mL;抗
体一分子に対して4.6当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物リンカ
ーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.00622mL;抗体一
分子に対して9.2当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬物リン
カーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.18mg/mL,抗体収量:7.08mg(71%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):2.0。
【0216】
実施例16 抗体-薬物コンジュゲート(16)
【化42】
【0217】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(16)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(1.0mL)を2mLチューブ
に採取し、10mM TCEP水溶液(0.0311mL;抗体一分子に対して4.6当
量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.050mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に実施例15工程3で得た化合物を10mM含むDMSO溶液(0.0622m
L;抗体一分子に対して9.2当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物
リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0124mL;抗
体一分子に対して18.4当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬
物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.03mg/mL,抗体収量:6.18mg(62%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.8。
【0218】
実施例17 抗体-薬物コンジュゲート(17)
【化43】
【0219】
工程1:N-[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)プロパノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ
-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ
[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニ
ンアミド
実施例15工程2で得た化合物(60.0mg,0.0646mmoL)を、6-マレ
イミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに3-マレイミドプロピオン酸N-スク
シンイミジルを用いて、実施例2工程3と同様に反応させ、標記化合物(36.0mg,
57%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.4H
z),1.85(2H,dt,J=14.4,7.5Hz),2.05-2.22(2H
,m),2.40(3H,s),2.30-2.44(5H,m),2.73-2.84
(1H,m),3.02(1H,dd,J=13.9,4.5Hz),3.17(3H,
d,J=5.1Hz),3.26-3.40(2H,m),3.41-3.81(6H,
m),4.40-4.51(1H,m),5.19(1H,d,J=19.2Hz),5
.26(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,brs),5.52-5.6
1(1H,m),6.53(1H,s),6.99(2H,s),7.13-7.28(
5H,m),7.31(1H,s),7.80(2H,d,J=10.2Hz),8.0
3(1H,t,J=5.5Hz),8.12(1H,d,J=8.2Hz),8.20-
8.31(2H,m),8.52(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:976(M+H)
【0220】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(17)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.74mg/mL,抗体収量:10.4mg(83%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.7。
【0221】
実施例18 抗体-薬物コンジュゲート(18)
【化44】
【0222】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(18)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例17工程1で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.98mg/mL,抗体収量:11.9mg(95%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.6。
【0223】
実施例19 抗体-薬物コンジュゲート(19)
【化45】
【0224】
工程1:N-{3-[2-(2-{[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H
-ピロール-1-イル)プロパノイル]アミノ})エトキシ]プロパノイル}グリシルグ
リシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フル
オロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,
15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]イン
ドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニンアミド
実施例15工程2で得た化合物(60.0mg,0.0646mmoL)を、6-マレ
イミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに3-(2-(2-(3-マレインイミ
ドプロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロパン酸N-スクシンイミジルを用いて、実
施例2工程3と同様に反応させ、標記化合物(23.0mg,31%)を固体として得た

H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.4H
z),1.77-1.92(2H,m),2.07-2.21(2H,m),2.27-
2.42(6H,m),2.40(3H,s),2.74-2.84(1H,m),2.
97-3.06(1H,m),3.09-3.21(4H,m),3.25-3.39(
6H,m),3.45(4H,s),3.50-3.80(8H,m),4.41-4.
51(1H,m),5.19(1H,d,J=18.4Hz),5.26(1H,m,J
=18.4Hz),5.42(2H,brs),5.51-5.61(1H,m),6.
54(1H,s),7.00(2H,s),7.13-7.28(5H,m),7.31
(1H,s),7.74-7.87(2H,m),7.93-8.07(2H,m),8
.09-8.21(2H,m),8.26(1H,brs),8.54(1H,d,J=
8.6Hz).
MS(ESI)m/z:1135(M+H)
【0225】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(19)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.60mg/mL,抗体収量:9.6mg(77%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):1.9。
【0226】
実施例20 抗体-薬物コンジュゲート(20)
【化46】
【0227】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(20)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例19工程1で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.69mg/mL,抗体収量:10.1mg(81%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.0。
【0228】
実施例21 抗体-薬物コンジュゲート(21)
【化47】
【0229】
工程1:N-[19-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イ
ル)-17-オキソ-4,7,10,13-テトラオキサ-16-アザノナンデカン-1
-オイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9S)-
9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,
3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’
,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニンアミ

実施例15工程2で得た化合物(60.0mg,0.0646mmoL)を、6-マレ
イミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに1-マレインイミド-3-オキソ-7
,10,13,16-テトラオキサ-4-アザノナデカン酸N-スクシンイミジルを用い
て、実施例2工程3と同様に反応させ、標記化合物(23.0mg,29%)を固体とし
て得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.0H
z),1.85(2H,tt,J=14.6,7.1Hz),2.06-2.22(2H
,m),2.40(3H,s),2.28-2.43(6H,m),2.78(1H,d
d,J=13.7,9.4Hz),3.02(1H,dd,J=14.1,3.9Hz)
,3.09-3.22(4H,m),3.27-3.41(4H,m),3.47(12
H,d,J=8.6Hz),3.53-3.81(10H,m),4.41-4.51(
1H,m),5.19(1H,d,J=19.2Hz),5.26(1H,d,J=18
.8Hz),5.42(2H,brs),5.53-5.61(1H,m),6.54(
1H,s),7.00(2H,s),7.12-7.29(5H,m),7.31(1H
,s),7.74-7.85(2H,m),8.03(2H,d,J=6.6Hz),8
.11-8.21(2H,m),8.27(1H,t,J=5.9Hz),8.54(1
H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:1224(M+H)
【0230】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(21)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.77mg/mL,抗体収量:10.6mg(85%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.2。
【0231】
実施例22 抗体-薬物コンジュゲート(22)
【化48】
【0232】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(22)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例21工程1で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.89mg/mL,抗体収量:11.3mg(90%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.2。
【0233】
実施例23 中間体(23)
【化49】
【0234】
工程1:tert-ブチル (6-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9
-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘ
キサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ
[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-6-オキソヘキシル)カーバメート
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(0.500g,0.882mmoL)を、4-(
tert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸の代わりに6-(tert-ブトキシカ
ルボニルアミノ)ヘキサン酸を用いて、実施例1工程1と同様に反応させ、標記化合物(
0.620g,定量的)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:0.83(3H,t,J=7.8Hz),1.14
-1.28(2H,m),1.31(9H,s),1.47-1.61(2H,m),1
.75-1.89(2H,m),2.04-2.17(4H,m),2.35(3H,s
),2.81-2.88(2H,m),3.09-3.16(2H,m),5.10(1
H,d,J=19.4Hz),5.16(1H,d,J=19.4Hz),5.39(2
H,s),5.48-5.55(1H,m),6.50(1H,s),6.73-6.7
8(1H,m),7.26(1H,s),7.74(1H,d,J=10.9Hz),8
.39(1H,d,J=9.0Hz).
【0235】
工程2:6-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキ
シ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ
-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-
b]キノリン-1-イル]ヘキサンアミド
上記工程1で得た化合物(0.397g,0.611mmoL)を、実施例1工程2と
同様に反応させ、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(0.342g,84%)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:0.88(3H,t,J=7.2Hz),1.31
-1.41(2H,m),1.52-1.70(4H,m),1.80-1.94(2H
,m),2.05-2.18(2H,m),2.21(2H,t,J=7.4Hz),2
.40(3H,s),2.81(2H,t,J=7.4Hz),3.10-3.25(2
H,m),3.33(2H,brs),5.18(1H,d,J=19.8Hz),5.
22(1H,d,J=19.8Hz),5.41(2H,d,J=16.6Hz),5.
45(2H,d,J=16.6Hz),5.53-5.60(1H,m),6.55(1
H,s),7.32(1H,s),7.80(1H,d,J=10.9Hz),8.49
(1H,d,J=9.2Hz).
【0236】
実施例24 抗体-薬物コンジュゲート(24)
【化50】
【0237】
工程1:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ル-N-(6-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-
メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,
12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノ
リン-1-イル]アミノ}-6-オキソヘキシル)グリシンアミド
実施例23工程2で得た化合物(0.170g,0.516mmoL)を、実施例2工
程1と同様に反応させ、標記化合物(0.225g,91%)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:0.88(3H,t,J=7.4Hz),1.43
-1.70(6H,m),1.87(2H,td,J=15.0,7.4Hz),2.1
0-2.22(3H,m),2.28-2.37(1H,m),2.42(3H,s),
2.78-2.85(1H,m),3.01-3.10(3H,m),3.15-3.2
2(2H,m),3.54-3.61(5H,m),3.62-3.69(1H,m),
4.44-4.53(1H,m),5.17(1H,d,J=19.2Hz),5.25
(1H,d,J=19.2Hz),5.45(2H,s),5.54-5.61(1H,
m),6.55(1H,s),7.02(1H,t,J=6.1Hz),7.11-7.
28(5H,m),7.33(1H,s),7.63-7.69(1H,m),7.82
(1H,d,J=11.0Hz),7.90-7.96(1H,m),8.17(1H,
d,J=7.8Hz),8.28(1H,t,J=5.5Hz),8.46(1H,d,
J=9.0Hz).
【0238】
工程2:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(6-{[(1S,9S)-9
-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,
13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7
]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-6-オキソヘキシル)グ
リシンアミド
上記工程1で得た化合物(0.105g,0.108mmoL)を、実施例2工程2と
同様に反応させ、標記化合物(0.068mg,65%)を得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:0.89(3H,t,J=7.4Hz),1.15
-1.67(6H,m),1.79-1.97(2H,m),2.08-2.24(4H
,m),2.42(3H,s),2.76-2.82(1H,m),3.00-3.10
(5H,m),3.19(1H,s),3.50-3.63(2H,m),3.64-3
.76(3H,m),3.84-3.92(1H,m),4.51-4.59(1H,m
),5.17(1H,d,J=19.4Hz),5.24(1H,d,J=19.4Hz
),5.44(2H,s),5.53-5.61(1H,m),6.55(1H,brs
),7.15-7.29(5H,m),7.33(1H,s),7.72-7.78(1
H,m),7.82(1H,d,J=11.0Hz),7.96-8.08(2H,m)
,8.30-8.38(2H,m),8.46-8.56(2H,m).
【0239】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(6-{[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-10,13-ジオキソ-2,3,9
,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’
:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-6-オキソヘキ
シル)グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(58mg,0.060mmoL)を、実施例2工程3と同様
に反応させ、標記化合物(39mg,62%)を得た。
H-NMR(CDOD)δ:0.99(3H,t,J=7.4Hz),1.27(2
H,td,J=11.6,6.1Hz),1.38-1.44(2H,m),1.50-
1.63(6H,m),1.65-1.80(2H,m),1.89-1.98(2H,
m),2.17-2.25(3H,m),2.26-2.36(3H,m),2.40(
3H,s),2.95(1H,dd,J=14.3,9.2Hz),3.12(1H,d
d,J=13.7,5.7Hz),3.15-3.25(4H,m),3.44(2H,
t,J=7.2Hz),3.65(1H,d,J=17.2Hz),3.76(1H,d
,J=17.2Hz),3.79-3.86(4H,m),4.43(1H,dd,J=
8.9,6.0Hz),5.10(1H,d,J=18.9Hz),5.25(1H,d
,J=18.9Hz),5.35(1H,d,J=16.6Hz),5.56(1H,d
,J=16.0Hz),5.60-5.64(1H,m),6.76(2H,s),7.
12-7.24(6H,m),7.58(1H,s),7.60(1H,d,J=10.
9Hz),7.68(1H,t,J=5.7Hz).
MS(ESI)m/z:1060(M+H)
【0240】
工程4:抗体-薬物コンジュゲート(24)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(9.0mL)を50mLチュー
ブに採取し、10mM TCEP水溶液(0.140mL;抗体一分子に対して2.3当
量)及び1Mリン酸水素カリウム二水溶液(0.450mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に上記工程3の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.280mL;抗体一分
子に対して4.6当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物リンカーを抗
体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0559mL;抗体一分子に対
して9.2当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬物リンカーの反
応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS7.4を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:3.30mg/mL,抗体収量:53.5mg(59%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):1.7。
【0241】
実施例25 抗体-薬物コンジュゲート(25)
【化51】
【0242】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(25)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(9.0mL)を50mLチュー
ブに採取し、10mM TCEP水溶液(0.280mL;抗体一分子に対して4.6当
量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.450mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に実施例24工程3の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.559mL;抗
体一分子に対して9.2当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物リンカ
ーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.112mL;抗体一分子
に対して18.4当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬物リンカ
ーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:10.65mg/mL,抗体収量:55.1mg(61%),抗体一分子あ
たりの薬物平均結合数(n):2.5。
【0243】
実施例26 抗体-薬物コンジュゲート(26)
【化52】
【0244】
工程1:({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシル}ア
ミノ)メチルアセテート
N-9-フルオレニルメトキシカルボニルグリシルグリシン(4.33g,12.2m
mol)、テトラヒドロフラン(THF;120ml)、及びトルエン(40.0ml)
からなる混合物に、ピリジン(1.16ml,14.7mmol)及び四酢酸鉛(6.8
4g,14.7mmol)を加え、5時間加熱還流した。反応液を室温まで冷却した後、
不溶物をセライト濾過によって除き、減圧下濃縮した。得られた残留物を酢酸エチルに溶
解し、水及び飽和食塩水で洗浄後、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減
圧下で留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:
酢酸エチル=9:1(v/v)~酢酸エチル]にて精製し、標記化合物(3.00g,6
7%)を無色固体として得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:2.07(3H,s),3.90(2H
,d,J=5.1Hz),4.23(1H,t,J=7.0Hz),4.46(2H,d
,J=6.6Hz),5.26(2H,d,J=7.0Hz),5.32(1H,brs
),6.96(1H,brs),7.32(2H,t,J=7.3Hz),7.41(2
H,t,J=7.3Hz),7.59(2H,d,J=7.3Hz),7.77(2H,
d,J=7.3Hz).
【0245】
工程2:ベンジル [({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]
グリシル}アミノ)メトキシ]アセテート
上記工程1で得た化合物(3.68g,10.0mmoL)及びベンジルグリコレート
(4.99g,30.0mmoL)のTHF(40.0mL)溶液に、カリウム ter
t-ブトキシド(2.24g,20.0mmoL)を0℃で加え、室温で15分間攪拌し
た。反応溶液に酢酸エチル、水を0℃で加え、酢酸エチル、クロロホルムで抽出し、得ら
れた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物を
ジオキサン(40.0mL)、水(10.0mL)に溶解し、炭酸水素ナトリウム(1.
01g,12.0mmoL)、クロロギ酸9-フルオレニルメチル(2.59g,10.
0mmoL)を加え、室温で2時間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出し
、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残
留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v/
v)~0:100]にて精製し、無色油状の標記化合物(1.88g,40%)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:3.84(2H,d,J=5.5Hz)
,4.24(3H,t,J=6.5Hz),4.49(2H,d,J=6.7Hz),4
.88(2H,d,J=6.7Hz),5.15-5.27(1H,m),5.19(2
H,s),6.74(1H,brs),7.31-7.39(7H,m),7.43(2
H,t,J=7.4Hz),7.61(2H,d,J=7.4Hz),7.79(2H,
d,J=7.4Hz).
【0246】
工程3:[({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシル}
アミノ)メトキシ]酢酸
上記工程2で得た化合物(1.88g,3.96mmoL)をエタノール(40.0m
L)、酢酸エチル(20.0ml)に溶解した。パラジウム炭素触媒(376mg)を加
え、水素雰囲気下、室温で2時間攪拌した。不溶物をセライト濾過によって除き、溶媒を
減圧留去し、標記化合物(1.52g,定量的)を無色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:3.62(2H,d,J=6.3H
z),3.97(2H,s),4.18-4.32(3H,m),4.60(2H,d,
J=6.7Hz),7.29-7.46(4H,m),7.58(1H,t,J=5.9
Hz),7.72(2H,d,J=7.4Hz),7.90(2H,d,J=7.4Hz
),8.71(1H,t,J=6.5Hz).
【0247】
工程4:9H-フルオレン-9-イルメチル(2-{[(2-{[(1S,9S)-9-
エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,
9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4
’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエ
トキシ)メチル]アミノ}-2-オキソエチル)カーバメート
氷冷下、エキサテカンのメタンスルホン酸塩(0.283g,0.533mmoL)、
N-ヒドロキシスクシンイミド(61.4mg,0.533mmoL)、及び上記工程3
で得た化合物(0.205g,0.533mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(
10.0mL)溶液に、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(92.9μL,0.53
3mmoL)及びN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.143g,0.69
3mmoL)を加え、室温で3日間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:
3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.352g,82%)
を淡茶色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.81(3H,t,J=7.4H
z),1.73-1.87(2H,m),2.06-2.20(2H,m),2.34(
3H,s),3.01-3.23(2H,m),3.58(2H,d,J=6.7Hz)
,3.98(2H,s),4.13-4.25(3H,m),4.60(2H,d,J=
6.7Hz),5.09-5.22(2H,m),5.32-5.42(2H,m),5
.50-5.59(1H,m),6.49(1H,s),7.24-7.30(3H,m
),7.36(2H,t,J=7.4Hz),7.53(1H,t,J=6.3Hz),
7.66(2H,d,J=7.4Hz),7.75(1H,d,J=11.0Hz),7
.84(2H,d,J=7.4Hz),8.47(1H,d,J=8.6Hz),8.7
7(1H,t,J=6.7Hz).
MS(ESI)m/z:802(M+H)
【0248】
工程5:N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ
-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-
1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b
]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
上記工程4で得た化合物(0.881g,1.10mmoL)のN,N-ジメチルホル
ムアミド(11.0mL)溶液に、ピペリジン(1.1mL)を加え、室温で2時間攪拌
した。溶媒を減圧留去し、標記化合物を含む混合物を得た。本混合物は、これ以上の精製
は行わずに次の反応に用いた。
【0249】
工程6:N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシルグリシル
-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ
-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15
-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリ
ジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)メチル]グリ
シンアミド
氷冷下、上記工程5で得た混合物(0.439mmoL)、N-ヒドロキシスクシンイ
ミド(0.101g,0.878mmoL)、及びN-[(9H-フルオレン-9-イル
メトキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニン(特開2002-60
351号;0.440g,0.878mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(50
.0mL)溶液に、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド(0.181g,0.8
78mmoL)を加え、室温で4日間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=9:1
(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.269g,58%)を淡橙色固体として得た

MS(ESI)m/z:1063(M+H)
【0250】
工程7:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-
9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,
3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’
,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキ
ソエトキシ)メチル]グリシンアミド
上記工程6で得た化合物(0.269g,0.253mmoL)のN,N-ジメチルホ
ルムアミド(4.00mL)溶液に、ピペリジン(0.251mL,2.53mmoL)
を加え、室温で2時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、標記化合物を含む混合物を得た。本
混合物は、これ以上の精製は行わずに次の反応に用いた。
【0251】
工程8:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,
9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキ
ソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラ
ノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-
2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
上記工程7で得た化合物(0.253mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(1
0.0mL)溶液に、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(0.156g,
0.506mmoL)を加え、室温で3日間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留
物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=
9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.100g,38%)を淡黄色固体とし
て得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.83(3H,t,J=7.2H
z),1.09-1.21(2H,m),1.33-1.47(4H,m),1.75-
1.90(2H,m),2.00-2.23(4H,m),2.36(3H,s),2.
69-2.81(1H,m),2.94-3.03(1H,m),3.06-3.22(
2H,m),3.23-3.74(6H,m),3.98(2H,s),4.39-4.
50(1H,m),4.60(2H,d,J=6.7Hz),5.17(2H,s),5
.39(2H,s),5.53-5.61(1H,m),6.50(1H,s),6.9
6(2H,s),7.11-7.24(5H,m),7.28(1H,s),7.75(
1H,d,J=11.0Hz),7.97(1H,t,J=5.7Hz),8.03(1
H,t,J=5.9Hz),8.09(1H,d,J=7.8Hz),8.27(1H,
t,J=6.5Hz),8.48(1H,d,J=9.0Hz),8.60(1H,t,
J=6.5Hz).
MS(ESI)m/z:1034(M+H)
【0252】
工程9:抗体-薬物コンジュゲート(26)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程8で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.61mg/mL,抗体収量:9.7mg(77%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):2.9。
【0253】
実施例27 抗体-薬物コンジュゲート(27)
【化53】
【0254】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(27)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例26工程8で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.58mg/mL,抗体収量:9.5mg(76%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):5.6。
【0255】
実施例28 抗体-薬物コンジュゲート(28)
【化54】
【0256】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(28)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(1.25mL)
を1.5mLポリプロピレン製チューブ2本に入れ、ここに10mM TCEP水溶液(
0.039mL;抗体一分子に対して4.6当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液
(0.0625mL)を加えた。本溶液のpHが7.4±0.1内であることを確認した
後に、37℃で1時間インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を
還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.072mL)
と実施例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.078mL;抗体一分子
に対して9.2当量)を室温で加え、チューブ・ローテーターを用いて室温で40分間攪
拌し、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.015
5mL)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い
、目的の化合物を含有する溶液を合わせ11.7mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.60mg/mL,抗体収量:18.7mg(94%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):5.2。
【0257】
実施例29 抗体-薬物コンジュゲート(29)
【化55】
【0258】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(29)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(6mL)をポリ
プロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.108mL;抗体
一分子に対して2.5当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.091mL)を
加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間イ
ンキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.146mL)
と実施例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.193mL;抗体一分子
に対して4.5当量)を室温で加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを
抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.029mL)を加え、さらに
室温で20分間攪拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を24mL得た。
特性評価:共通操作E及びF(εD,280=5178(実測値)、εD,370=2
0217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.77mg/mL,抗体収量:42mg(85%),共通操作Eにて測定
された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.0;共通操作Fにて測定された抗
体一分子あたりの薬物平均結合数(n):3.4。
【0259】
実施例30 抗体-薬物コンジュゲート(30)
【化56】
【0260】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(30)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(6mL)をポリ
プロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.215mL;抗体
一分子に対して5当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.094mL)を加え
た。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキ
ュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、実施例26工程8の化合物を
10mM含むDMSO溶液(0.370mL;抗体一分子に対して8.6当量)を室温で
加え、15℃で1時間インキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、10
0mM NAC水溶液(0.056mL)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、薬物リ
ンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を24mL得た。
特性評価:共通操作E及びF(εD,280=5178(実測値)、εD,370=2
0217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.92mg/mL,抗体収量:46mg(92%),共通操作Eにて測定
された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.2;共通操作Fにて測定された抗
体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.1。
【0261】
実施例31 抗体-薬物コンジュゲート(31)
【化57】
【0262】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(31)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(50.00mL
)をポリプロピレン製容器に入れ、撹拌下、室温で1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0
.745mL)を加えた後、10mM TCEP水溶液(1.868mL;抗体一分子に
対して5.4当量)を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後
に、撹拌を停止し、37℃で1時間インキュベートすることにより、抗体内ヒンジ部のジ
スルフィド結合を還元した。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃に冷却後、撹拌下、実施
例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(2.958mL;抗体一分子に対し
て8.6当量)をゆっくり滴下しながら加えた。15℃のまま、最初の30分間は撹拌し
、次の1時間は撹拌を停止させてインキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。
次に、撹拌下、100mM NAC水溶液(0.444mL)を加え、さらに室温で20
分間撹拌し、薬物リンカーの反応を停止させた。
精製:撹拌下、上記溶液に20%酢酸水(約0.25mL)とABS(50mL)をゆ
っくり加え、本溶液のpHを5.5±0.1にした。この溶液を精密ろ過(Millip
ore Co. Millex―HVフィルター、0.45μm、PVDF膜)して白濁
物を除いた。この溶液に対して、限外ろ過膜(メルク株式会社、Pellicon XL
Cassette、Biomax 50KDa)、チューブポンプ(米国コールパーマ
ー社マスターフレックスポンプ model 77521-40、ポンプヘッド mod
el 7518-00)及びチューブ(米国コールパーマー社マスターフレックスチュー
ブ L/S16)で構成された限外ろ過装置を用い、限外ろ過精製を行った。すなわち、
反応液に精製緩衝液としてABS(計800mL)を滴下しながら、限外ろ過精製を行う
ことで、未結合の薬物リンカー及び他の低分子量試薬を除去するとともに緩衝液をABS
へ置換し、さらに濃縮まで行った。得られた精製溶液に対して、精密ろ過(0.22μm
(Millipore Co. Millex―GVフィルター、PVDF膜)及び0.
10μm(Millipore Co. Millex―VVフィルター、PVDF膜)
)を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を得た。
特性評価:共通操作E及びF(εD,280=5178(実測値)、εD,370=2
0217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:11.28mg/mL,抗体収量:451mg(90%),共通操作Eにて
測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.6;共通操作Fにて測定され
た抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.7。
【0263】
実施例32 (実施例26工程8の化合物の別途合成法)
【化58】
【0264】
工程1:tert-ブチル N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-
ピロール-1-イル)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニネート
氷冷下、tert-ブチル N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニ
ル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニネート(J.Pept.Res.,1999
年,53巻,393項;0.400g,0.717mmol)のTHF(12.0ml)
溶液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(0.400ml)を
加えて室温で4日間攪拌した後、更に6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(
0.221g,0.717mmoL)を加え、3時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希
釈し、10%クエン酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、及び飽和食塩水で洗浄後
、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後、得られた残留
物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=
9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.295g,78%)を淡黄色固体とし
て得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.28-1.36(2H,m),1.
41(9H,s),1.57-1.71(4H,m),2.23(2H,t,J=7.6
Hz),3.09(2H,d,J=6.0Hz),3.51(2H,t,J=7.6Hz
),3.85-4.02(4H,m),4.69-4.78(1H,m),6.15(1
H,t,J=4.6Hz),6.33(1H,d,J=7.3Hz),6.60(1H,
t,J=5.0Hz),6.68(2H,s),7.10-7.16(2H,m),7.
22-7.31(3H,m).
MS(ESI)m/z:529(M+H)
【0265】
工程2:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニン
上記工程1で得た化合物(0.295g,0.558mmoL)のジクロロメタン(8
.00ml)溶液に、トリフルオロ酢酸(4.00mL)を加え、室温で18時間攪拌し
た。溶媒を減圧留去し、標記化合物(0.240g,91%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:1.15-1.23(2H,m),
1.40-1.53(4H,m),2.10(2H,t,J=7.6Hz),2.88(
1H,dd,J=13.7,8.9Hz),3.04(1H,dd,J=13.7,5.
0Hz),3.35-3.43(2H,m),3.58-3.77(4H,m),4.4
1(1H,td,J=7.8,5.0Hz),7.00(2H,s),7.16-7.3
1(5H,m),8.00(1H,t,J=5.7Hz),8.06(1H,t,J=5
.7Hz),8.13(1H,d,J=7.8Hz).
【0266】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,
9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキ
ソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラ
ノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-
2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(0.572g,1.21mmoL)をジクロロメタン(12
.0mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.152g,1.32mmoL
)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩(0.
253g,1.32mmoL)を加えて1時間攪拌した。反応溶液を実施例26工程5で
得た混合物(1.10mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(22.0mL)溶液
に加え、室温で3時間攪拌した。反応溶液に10%クエン酸水溶液を加え、クロロホルム
で抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得
られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メ
タノール=8:2(v/v)]にて精製し、標記化合物(0.351g,31%)を淡黄
色固体として得た。機器データは、実施例26工程8の化合物と同様であった。
【0267】
実施例33 (実施例26工程8の化合物の別途合成法)
【化59】
【0268】
工程1:ベンジル [({N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]
グリシル}アミノ)メトキシ]アセテート
実施例26工程1で得た化合物(7.37g,20.0mmoL)のTHF(200m
l)溶液に、ベンジルグリコレート(6.65g,40.0mmoL)、及びp-トルエ
ンスルホン酸一水和物(0.381g,2.00mmoL)を0℃で加え、室温で2時間
30分間攪拌した。反応溶液に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出
し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた
残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン:酢酸エチル=100:0(v
/v)~0:100]にて精製し、標記化合物(6.75g,71%)を無色固体として
得た。機器データは、実施例26工程2の化合物と同様であった。
【0269】
工程2:N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ン-N-{[(2-(ベンジルオキシ)-2―オキソエトキシ]メチル}グリシンアミド
上記工程1で得た化合物(6.60g,13.9mmoL)のN,N-ジメチルホルム
アミド(140mL)溶液に、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エ
ン(2.22g,14.6mmoL)を0℃で加え、室温で15分間攪拌した。反応溶液
に、N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニン(
6.33g,15.3mmoL)、N-ヒドロキシスクシンイミド(1.92g,16.
7mmoL)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩
酸塩(3.20g,16.7mmoL)のN,N-ジメチルホルムアミド(140mL)
溶液を、あらかじめ室温で1時間攪拌した後に加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液に
0.1規定塩酸を加え、クロロホルムで抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥
し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィ
ー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=8:2(v/v)]にて精製し、標記化
合物(7.10g,79%)を無色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:2.78(1H,dd,J=13.9,9.6Hz
),3.05(1H,dd,J=13.9,4.5Hz),3.56-3.80(6H,
m),4.15(2H,s),4.47-4.55(1H,m),4.63(2H,d,
J=6.6Hz),5.03(2H,s),5.15(2H,s),7.16-7.38
(15H,m),7.52(1H,t,J=5.9Hz),8.03(1H,t,J=5
.5Hz),8.17(1H,d,J=8.2Hz),8.36(1H,t,J=5.7
Hz),8.61(1H,t,J=6.6Hz).
【0270】
工程3:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(カルボキシメトキシ)メチ
ル]グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(7.00g,10.8mmoL)のN,N-ジメチルホルム
アミド(216mL)溶液に、パラジウム炭素触媒(7.00g)を加え、水素雰囲気下
、室温で24時間攪拌した。不溶物をセライト濾過により除き、溶媒を減圧留去した。得
られた残留物を水に溶解し、不溶物をセライト濾過により除き、溶媒を減圧留去する操作
を2回繰り返し、標記化合物(3.77g,82%)を無色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:2.84(1H,dd,J=13.7,9.8Hz
),3.08(1H,dd,J=13.7,4.7Hz),3.50-3.72(4H,
m),3.77-3.86(2H,m),3.87(2H,s),4.52-4.43(
1H,m),4.61(2H,d,J=6.6Hz),7.12-7.30(5H,m)
,8.43(1H,t,J=5.9Hz),8.54(1H,d,J=7.8Hz),8
.70(1H,t,J=6.3Hz),8.79(1H,t,J=5.5Hz).
【0271】
工程4:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(カルボキシメトキ
シ)メチル]グリシンアミド
上記工程3で得た化合物(3.59g,8.48mmoL)のN,N-ジメチルホルム
アミド(85.0mL)溶液に、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(2.
88g,9.33mmoL)、及びトリエチルアミン(0.858g,8.48mmoL
)を加え、室温で1時間攪拌した。反応溶液に0.1規定塩酸を加え、クロロホルム、ク
ロロホルムとメタノールの混合溶媒[クロロホルム:メタノール=4:1(v/v)]で
抽出し、得られた有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過した。溶媒を減圧留去し、得ら
れた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタ
ノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(3.7
0g,71%)を無色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:1.13-1.24(2H,m),1.42-1.
53(4H,m),2.11(2H,t,J=7.4Hz),2.80(1H,dd,J
=13.7,9.8Hz),3.06(1H,dd,J=13.9,4.5Hz),3.
37(2H,t,J=7.2Hz),3.56-3.78(6H,m),3.97(2H
,s),4.46-4.53(1H,m),4.61(2H,d,J=6.3Hz),7
.00(2H,s),7.15-7.29(5H,m),8.03-8.20(3H,m
),8.32(1H,t,J=5.9Hz),8.60(1H,t,J=6.7Hz).
【0272】
工程5:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,
9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキ
ソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラ
ノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-
2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(1.14g,2.00mmoL)のN,N-ジメ
チルホルムアミド(40.0mL)溶液に、トリエチルアミン(0.202g,2.00
mmoL)、上記工程4で得た化合物(1.48g,2.40mmoL)、及び16.4
%含水の4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチル
モルホリニウムクロリド(0.993g,3.00mmoL)を0℃で加え、室温で1時
間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=8:2(v/v)]にて精製し、標記化合
物(1.69g,82%)を淡黄色固体として得た。機器データは、実施例26工程8の
化合物と同様であった。
【0273】
実施例34 中間体(34)
【化60】
【0274】
工程1:2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メ
チル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,1
2H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリ
ン-1-イル]アミノ}-2-オキソエチルアセテート
氷冷下、エキサテカンのメタンスルホン酸塩(0.500g,0.941mmoL)の
N,N-ジメチルホルムアミド(20.0mL)懸濁液に、N,N-ジイソプロピルエチ
ルアミン(0.492mL,2.82mmoL)及びアセトキシアセチルクロリド(0.
121ml,1.13mmoL)を加え、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得
られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メ
タノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.
505g,定量的)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.81-1.92(2H,m),2.08(3H,s),2.08-2.22(
2H,m),2.41(3H,s),3.14-3.21(2H,m),4.51(2H
,dd,J=19.4,14.7Hz),5.22(2H,dd,J=40.1,19.
0Hz),5.43(2H,s),5.56-5.61(1H,m),6.53(1H,
s),7.31(1H,s),7.81(1H,d,J=11.0Hz),8.67(1
H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:536(M+H)
【0275】
工程2:N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチ
ル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12
H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン
-1-イル]-2-ヒドロキシアセトアミド
上記工程1で得た化合物(0.504g,0.941mmoL)のメタノール(50.
0mL)懸濁液に、THF(20.0ml)及び1規定水酸化ナトリウム水溶液(4.0
0ml,4.00mmoL)を加え、室温で1時間攪拌した。1規定塩酸(5.00ml
,5.00mmoL)を加えて反応を停止し、溶媒を減圧留去した。得られた残留物をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7
:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.412g,89%
)を淡黄色固体として得た。抗体-薬物コンジュゲート(45)、(46)をマウスに投
与した際に、この化合物が腫瘍中で確認できた。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.3H
z),1.78-1.95(2H,m),2.09-2.28(2H,m),2.39(
3H,s),3.07-3.27(2H,m),3.96(2H,d,J=6.0Hz)
,5.11-5.26(2H,m),5.42(2H,s),5.46-5.54(1H
,m),5.55-5.63(1H,m),6.52(1H,s),7.30(1H,s
),7.78(1H,d,J=10.9Hz),8.41(1H,d,J=9.1Hz)

MS(ESI)m/z:494(M+H)
【0276】
実施例35 (実施例34の化合物の別途合成法)
【化61】
【0277】
工程1:N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチ
ル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12
H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン
-1-イル]-2-ヒドロキシアセトアミド
グリコール酸(0.0201g,0.27mmoL)をN,N-ジメチルホルムアミド
(1.0mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.0302g,0.27m
moL)、及び1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩
(0.0508g,0.27mmoL)を加えて1時間攪拌した。反応溶液をエキサテカ
ンのメタンスルホン酸塩(0.1g,0.176mmoL)のN,N-ジメチルホルムア
ミド(1.0mL)懸濁液に、トリエチルアミン(0.025mL,0.18mmoL)
を加え、室温で24時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラ
ムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)
]にて精製し、標記化合物(0.080g,92%)を淡黄色固体として得た。機器デー
タは、実施例34工程2で得た化合物と同様であった。
【0278】
実施例36 抗体-薬物コンジュゲート(36)
【化62】
【0279】
工程1:N-[4-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ブタノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニルグリシル-N-[(1S,9S
)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-
2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[
3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]-β-アラニン
アミド
実施例15の工程2で得た化合物(60.0mg,0.0646mmoL)を、6-マ
レイミドヘキサン酸N-スクシンイミジルの代わりに4-マレイミド酪酸N-スクシンイ
ミジルを用いて、実施例2工程3と同様に反応させ、標記化合物(24.0mg,38%
)を淡白色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.2H
z),1.68(2H,quin,J=7.4Hz),1.78-1.92(2H,m)
,2.06-2.22(2H,m),2.10(2H,t,J=7.8Hz),2.31
-2.43(2H,m),2.40(3H,s),2.78(1H,dd,J=13.7
,9.4Hz),3.01(1H,dd,J=13.7,4.7Hz),3.17(4H
,d,J=5.1Hz),3.29-3.40(2H,m),3.52-3.80(6H
,m),4.40-4.51(1H,m),5.19(1H,d,J=18.4Hz),
5.26(1H,d,J=18.8Hz),5.42(2H,s),5.52-5.61
(1H,m),6.53(1H,s),6.99(2H,s),7.12-7.28(5
H,m),7.31(1H,s),7.74-7.84(2H,m),8.02(1H,
t,J=5.9Hz),8.08-8.16(2H,m),8.25(1H,t,J=5
.9Hz),8.52(1H,d,J=8.2Hz).
MS(ESI)m/z:990(M+H)
【0280】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(33)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて実施例6工
程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.75mg/mL,抗体収量:10.5mg(84%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):4.7。
【0281】
実施例37 抗体-薬物コンジュゲート(37)
【化63】
【0282】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(37)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例36工程1で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.89mg/mL,抗体収量:11.3mg(90%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):8.5。
【0283】
実施例38 中間体(38)
【化64】
【0284】
工程1:tert-ブチル (5-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9
-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘ
キサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ
[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-5-オキソペンチル)カーバメート
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(500mg,0.941mmoL)を、4-(t
ert-ブトキシカルボニルアミノ)ブタン酸の代わりに5-(tert-ブトキシカル
ボニルアミノ)吉草酸を用いて、実施例1工程1と同様に反応させ、標記化合物(571
mg,96%)を黄茶色固体として得た。これ以上の精製はせず次の反応へ用いた。
MS(ESI)m/z:635(M+H)
【0285】
工程2:5-アミノ-N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキ
シ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ
-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-
b]キノリン-1-イル]ペンタンアミド
上記工程1で得た化合物(558mg,0.879mmoL)を、実施例1工程2と同
様に反応させ、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(363mg,64%)を黄色固体とし
て得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.88(3H,t,J=7.4H
z),1.52-1.71(4H,m),1.87(2H,tt,J=14.4,6.9
Hz),2.07-2.18(2H,m),2.22(2H,t,J=7.0Hz),2
.40(3H,s),2.76-2.88(2H,m),3.13-3.22(2H,m
),5.18(1H,d,J=18.8Hz),5.24(1H,d,J=18.8Hz
),5.43(2H,s),5.53-5.61(1H,m),6.55(1H,s),
7.33(1H,s),7.65(3H,br.s.),7.81(1H,d,J=11
.3Hz),8.49(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:535(M+H)
【0286】
実施例39 抗体-薬物コンジュゲート(39)
【化65】
【0287】
工程1:N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシルグリシル-L-フェニルアラニ
ル-N-(5-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-
メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,
12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノ
リン-1-イル]アミノ}-5-オキソペンチル)グリシンアミド
実施例38工程2で得た化合物(348mg,0.537mmoL)を、実施例2工程
1と同様に反応させ、標記化合物(429mg,84%)を淡黄色固体として得た。これ
以上の精製はせず次の反応へ用いた。
【0288】
工程2:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(5-{[(1S,9S)-9
-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,
13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7
]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-5-オキソペンチル)グ
リシンアミド
上記工程1で得た化合物(427mg,0.448mmoL)を、実施例2工程2と同
様に反応させ、標記化合物のトリフルオロ酢酸塩(430mg,99%)を黄色固体とし
て得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.38-1.49(2H,m),1.54-1.66(2H,m),1.86(
2H,tt,J=14.5,7.0Hz),2.08-2.16(2H,m),2.19
(2H,t,J=7.2Hz),2.40(3H,s),2.76(1H,dd,J=1
3.9,10.0Hz),3.00-3.12(3H,m),3.14-3.21(2H
,m),3.57(2H,d,J=4.7Hz),3.60-3.75(3H,m),3
.87(1H,dd,J=16.8,5.9Hz),4.55(1H,td,J=9.0
,4.7Hz),5.16(1H,d,J=18.8Hz),5.23(1H,d,J=
18.4Hz),5.44(2H,s),5.53-5.60(1H,m),6.55(
1H,s),7.14-7.29(5H,m),7.32(1H,s),7.74(1H
,t,J=5.5Hz),7.81(1H,d,J=10.9Hz),7.96(3H,
br.s.),8.30-8.37(1H,m),8.44-8.53(2H,m).
MS(ESI)m/z:853(M+H)
【0289】
工程3:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-(5-{[(1S,9
S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-10,13-ジオキソ-2,3,9
,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’
:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-5-オキソペン
チル)グリシンアミド
上記工程2で得た化合物(60.0mg,0.0621mmoL)を、実施例2工程3
と同様に反応させ、標記化合物(16.0mg,25%)を固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.13-1.21(2H,m),1.36-1.52(6H,m),1.53-
1.65(2H,m),1.79-1.92(2H,m),2.05-2.15(4H,
m),2.19(2H,s),2.40(3H,s),2.79(1H,dd,J=13
.7,10.2Hz),2.98-3.10(3H,m),3.12-3.21(2H,
m),3.29-3.37(2H,m),3.53-3.79(6H,m),4.41-
4.50(1H,m),5.16(1H,d,J=18.8Hz),5.23(1H,d
,J=18.8Hz),5.43(2H,s),5.52-5.60(1H,m),6.
53(1H,s),6.99(2H,s),7.12-7.28(5H,m),7.31
(1H,s),7.63(1H,t,J=5.7Hz),7.80(1H,d,J=10
.6Hz),8.02(1H,t,J=5.9Hz),8.08(1H,t,J=5.7
Hz),8.12(1H,d,J=7.8Hz),8.24(1H,t,J=5.7Hz
),8.45(1H,d,J=8.6Hz).
MS(ESI)m/z:1046(M+H)
【0290】
工程4:抗体-薬物コンジュゲート(39)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(1.0mL)を2mLチューブ
に採取し、10mM TCEP水溶液(0.0155mL;抗体一分子に対して2.3当
量)及び1Mリン酸水素カリウム二水溶液(0.050mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に上記工程3で得た化合物を10mM含むDMSO溶液(0.0311mL;抗
体一分子に対して4.6当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物リンカ
ーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.00622mL;抗体一
分子に対して9.2当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬物リン
カーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:1.12mg/mL,抗体収量:6.72mg(67%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):1.8。
【0291】
実施例40 抗体-薬物コンジュゲート(40)
【化66】
【0292】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(40)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及び共通操作B
(280nm吸光係数として1.37mLmg-1cm-1を使用)を用いて、PBS6
.0/EDTAにて10mg/mLに調製した。本溶液(1.0mL)を2mLチューブ
に採取し、10mM TCEP水溶液(0.0311mL;抗体一分子に対して4.6当
量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.050mL)を加えた。本溶液のpHが
7.4±0.1内であることを確認した後に、37℃で1時間インキュベートすることに
より、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を22℃で10分間インキュベー
トした後に実施例39工程3で得た化合物を10mM含むDMSO溶液(0.0622m
L;抗体一分子に対して9.2当量)を加え、22℃で40分間インキュベートし、薬物
リンカーを抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.0124mL;抗
体一分子に対して18.4当量)を加え、さらに22℃で20分間インキュベートし、薬
物リンカーの反応を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D-1(緩衝液としてPBS6.0を使用)を用いた精製
を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を6mL得た。
特性評価:共通操作Eを使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:0.98mg/mL,抗体収量:5.88mg(59%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):3.4。
【0293】
実施例41 抗体-薬物コンジュゲート(41)
【化67】
【0294】
工程1:tert-ブチル {2-[(2-ヒドロキシエチル)アミノ]-2-オキソエ
チル}カーバメート
N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシン(4.2g,24mmol)をジメチ
ルホルムアミド(40mL)に溶解し、アミノエタノール(2.9g,48mmol)、
1-ヒドロキシベンズトリアゾール(3.7g,24mmol)を加え、1-エチル-3
-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(6.9g,36mmoL)を
加えて室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、残留物にトルエンを加えて共沸させ
、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[酢酸エチル~酢酸エチル:メ
タノール=10:1(v/v)]にて精製し、無色油状の標記化合物(3.8g,72%
)を得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.44(9H,s),1.69(1H
,brs),3.43(2H,td,J=5.9,5.1Hz),3.71(2H,t,
J=5.1Hz),3.79(2H,d,J=5.9Hz),5.22(1H,brs)
,6.62(1H,brs).
【0295】
工程2:2-{[N-(tert-ブトキシカルボニル)グリシル]アミノ}エチル4-
ニトロフェニルカーボネート
上記工程1で得た化合物(1.0g,4.59mmoL)のTHF(23mL)溶液に
、ジイソプロピルエチルアミン(0.80mL,4.59mmol)、炭酸ビス(4-ニ
トロフェニル)(1.32g,6.88mmoL)を加え、室温で12時間攪拌した。溶
媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[ヘキサン~ヘ
キサン:酢酸エチル=1:3(v/v)]にて精製し、標記化合物(1.13g,64%
)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,CDCl)δ:1.44(1H,s),3.66(2H
,td,J=5.1,5.9Hz),3.81(2H,d,J=5.9Hz),4.36
(2H,t,J=5.1Hz),5.07(1H,s),6.48-6.53(1H,m
),7.38(2H,dt,J=9.9,2.7Hz),8.27(2H,dt,J=9
.9,2.7Hz).
【0296】
工程3:2-({[(tert-ブトキシカルボニル)アミノ]アセチル}アミノ)エチ
ル[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,
13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ
[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル
]カーバメート
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(0.70g,1.2mmoL)、上記工程2で得
た化合物(0.57g,1.5mmoL)、1-ヒドロキシベンズトリアゾール(3.7
g,24mmol)にジメチルホルムアミド(23mL)を加え、ジイソプロピルエチル
アミン(0.43mL,2.5mmol)を加えて室温で12時間攪拌した。溶媒を減圧
留去し、残留物にトルエンを加えて共沸させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=10:1(v/v)]にて精
製し、標記化合物(0.86g,定量的)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.35(9H,s),1.78-1.94(1H,m),2.07-2.17(
1H,m),2.17-2.27(1H,m),2.37(3H,s),3.05-3.
16(1H,m),3.19-3.26(1H,m),3.34-3.39(2H,m)
,3.50-3.56(2H,m),4.00-4.07(1H,m),4.13-4.
21(1H,m),5.15-5.34(3H,m),5.44(2H,s),6.54
(1H,s),6.90-6.96(1H,m),7.32(1H,s),7.78(1
H,d,J=11.0Hz),7.93-8.07(2H,m).
【0297】
工程4:2-(グリシルアミノ)エチル[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-
9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-
ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジ
ノ[1,2-b]キノリン-1-イル]カーバメート
上記工程3で得た化合物(0.86g,2.1mmoL)をジクロロメタン(15mL
)に溶解した。トリフルオロ酢酸(15mL)を加えて1時間攪拌した。溶媒を減圧留去
し、残留物にトルエンを加えて共沸させ、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグ
ラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノ-ル:水=7:3:1(v/v/v)の
分配有機層]にて精製し、標記化合物(0.86g,99%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.2H
z),1.79-1.95(2H,m),2.06-2.18(1H,m),2.18-
2.29(1H,m),2.38(3H,s),3.07-3.17(1H,m),3.
20-3.29(1H,m),3.36-3.50(2H,m),3.51-3.62(
2H,m),3.99-4.08(1H,m),4.22-4.31(1H,m),5.
16-5.35(3H,m),5.42(1H,d,J=18.8Hz),5.46(1
H,d,J=18.8Hz),6.56(1H,s),7.34(1H,s),7.65
(2H,brs),7.79(1H,d,J=10.6Hz),7.99-8.06(1
H,m),8.51(1H,t,J=5.5Hz).
MS(APCI)m/z:939(M+H)
【0298】
工程5:N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシルグリシル
-L-フェニルアラニル-N-[2-({[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ
-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15
-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリ
ジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]カルバモイル}オキシ)エチル]グリシンアミ

N-[(9H-フルオレン-9-イルメトキシ)カルボニル]グリシルグリシル-L-
フェニルアラニン(特開2002-60351号;0.21g,0.41mmoL)をN
,N-ジメチルホルムアミド(3mL)に溶解し、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.
052g,0.45mmoL)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)
カルボジイミド塩酸塩(0.086g,0.45mmoL)を加えて1時間攪拌した。反
応溶液を上記工程4で得た化合物(0.24g,0.35mmol)、及びトリエチルア
ミン(0.078mL、0.45mmoL)を加えたN,N-ジメチルホルムアミド溶液
(2mL)に滴下し、室温で1時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリ
カゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノ-ル=8:2(
v/v)]にて精製し、標記化合物(0.24g,65%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.3H
z),1.79-1.90(2H,m),2.05-2.27(2H,m),2.36(
3H,s),2.73-2.81(1H,m),2.98-3.12(2H,m),3.
17-3.26(1H,m),3.35-3.42(2H,m),3.55-3.79(
6H,m),4.00-4.10(1H,m),4.12-4.23(2H,m),4.
23-4.29(2H,m),4.45-4.55(1H,m),5.13-5.33(
3H,m),5.40(1H,d,J=17.2Hz),5.44(1H,d,J=17
.2Hz),6.53(1H,s),7.11-7.26(5H,m),7.26-7.
33(3H,m),7.38(2H,t,J=7.6Hz),7.57(1H,t,J=
5.9Hz),7.68(2H,d,J=7.4Hz),7.77(1H,d,J=11
.0Hz),7.85(2H,d,J=9.0Hz),7.91-7.97(1H,m)
,7.98-8.05(2H,m),8.14(1H,d,J=7.8Hz),8.31
-8.26(1H,m).
MS(APCI)m/z:1063(M+H)
【0299】
工程6:グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-({[(1S,9S)-
9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,
3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’
,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]カルバモイル}オキ
シ)エチル]グリシンアミド
上記工程5で得た化合物(0.24g,0.35mmol)を、実施例26工程7と同
様に反応させ、標記化合物(0.12g,65%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.4H
z),1.78-1.94(2H,m),2.06-2.27(2H,m),2.37(
3H,s),2.72-2.81(1H,m),2.98-3.07(1H,m),3.
12-3.17(2H,m),3.57-3.81(6H,m),4.00-4.21(
3H,m),4.45-4.54(1H,m),5.15-5.35(3H,m),5.
41(1H,d,J=17.2Hz),5.45(1H,d,J=17.2Hz),6.
54(1H,s),7.11-7.26(6H,m),7.32(1H,s),7.78
(1H,d,J=11.0Hz),7.93-8.00(1H,m),8.03(1H,
d,J=9.4Hz),8.06-8.13(1H,m),8.21-8.27(2H,
m),8.30-8.36(1H,m).
MS(APCI)m/z:841(M+H)
【0300】
工程7:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[2-({[(1S,
9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキ
ソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラ
ノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]カルバモイ
ル}オキシ)エチル]グリシンアミド
上記工程6で得た化合物(42.0mg,0.0499mmoL)を、実施例2工程3
と同様に反応させ、標記化合物(38.3mg,74%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.4H
z),1.12-1.23(2H,m),1.40-1.51(4H,m),1.80-
1.95(2H,m),2.05-2.27(4H,m),2.38(3H,s),3.
43-2.40(8H,m),3.53-3.78(6H,m),4.00-4.21(
2H,m),4.44-4.55(1H,m),5.17-5.36(3H,m),5.
43(2H,s),6.54(1H,s),6.99(2H,s),7.19(5H,d
,J=23.9Hz),7.33(1H,s),7.78(1H,d,J=10.6Hz
),7.91-8.16(5H,m),8.24-8.31(1H,m).
MS(ESI)m/z:1034(M+H)
【0301】
工程8:抗体-薬物コンジュゲート(41)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程7で得た化合物を用いて、実施例6
工程2と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.54mg/mL,抗体収量:9.2mg(74%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):3.7。
【0302】
実施例42 抗体-薬物コンジュゲート(42)
【化68】
【0303】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(42)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び実施例41工程7で得た化合物を用いて、実
施例7工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.47mg/mL,抗体収量:8.8mg(71%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):7.0。
【0304】
実施例43 抗体-薬物コンジュゲート(43)
【化69】
【0305】
工程1:N-{3-[2-(2-{[3-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H
-ピロール1-イル)プロパノイル]アミノ}エトキシ)エトキシ]プロパノイル}グリ
シルグリシル-L-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,9S)-9-エチル-
5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10
,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,
7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエトキシ)
メチル]グリシンアミド
実施例26工程6で得た化合物(53.7mg,50.5μmoL)をN,N-ジメチ
ルホルムアミド(1.50mL)に溶解し、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)-7
-ウンデセン(7.5μL,50.5μmoL)を加え、室温で30分攪拌した。反応溶
液にp-トルエンスルホン酸ピリジニウム(14.0mg,5.56μmoL)を加えた
後、3-(2-(2-(3-マレインイミドプロパンアミド)エトキシ)エトキシ)プロ
パン酸N-スクシンイミジル(32.3mg,75.8μmoL)を加え、室温で2.2
5時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィー[[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分
配有機層]にて精製し、標記化合物(27.1mg,47%)を淡黄色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d6)δ:0.87(3H,t,J=7.0Hz),1.79
-1.91(2H,m),2.18(2H,t,J=15.1Hz),2.29-2.3
3(4H,m),2.39(3H,s),2.76(1H,dd,J=13.9,9.2
Hz),3.02(1H,dd,J=13.7,3.9Hz),3.13-3.15(2
H,m),3.44-3.46(6H,m),3.57-3.59(6H,m),3.6
9-3.75(6H,m),4.01(2H,s),4.46-4.48(1H,m),
4.63(2H,d,J=6.3Hz),5.21(2H,s),5.42(2H,s)
,5.60(1H,dd,J=13.5,5.7Hz),6.54(1H,s),7.0
0(2H,s),7.17-7.24(6H,m),7.31(1H,s),7.79(
1H,d,J=11.0Hz),8.00-8.02(2H,m),8.13(1H,d
,J=7.8Hz),8.17(1H,t,J=6.3Hz),8.52(1H,d,J
=9.0Hz),8.65(1H,t,J=6.5Hz).
MS(ESI)m/z=1151(M+H)
【0306】
工程2:抗体-薬物コンジュゲート(43)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程1で得た化合物を用いて、実施例7
工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.96mg/mL,抗体収量:17.6mg(88%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):5.6。
【0307】
実施例44 抗体-薬物コンジュゲート(44)
【化70】
【0308】
工程1:tert-ブチル N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシル-
D-フェニルアラニンエート
N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシン(3.00g,11.3mm
oL)をN,N-ジメチルホルムアミド(20.0mL)に溶解し、N-ヒドロキシスク
シンイミド(1.43g,12.4mmoL)、及び1-エチル-3-(3-ジメチルア
ミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(2.37g,12.4mmoL)を加えて1時間
攪拌した。その反応溶液にD-フェニルアラニンtert-ブチル(2.74g,12.3
8mmoL)及びトリエチルアミン(1.73mL,12.4mmoL)を加えたN,N
-ジメチルホルムアミド溶液(10mL)を滴下し、室温で2時間攪拌した。反応液にジ
クロロメタンを加え、水、1規定塩酸及び飽和重曹水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリ
ウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマ
トグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)]にて精製
し、標記化合物(4.21g,80%)を無色固体として得た。
H-NMR(CDCl)δ:1.41(9H,s),3.03-3.14(2H,m
),3.86-3.97(4H,m),4.70-4.77(1H,m),5.13(2
H,s),5.43(1H,brs),6.42(1H,d,J=10.0Hz),6.
64-6.71(1H,m),7.11-7.15(2H,m),7.20-7.31(
4H,m),7.31-7.38(4H,m).
MS(APCI)m/z:470(M+H)
【0309】
工程2:N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシル-D-フェニルアラニ

工程1で得た化合物(4.21g,8.97mmoL)を酢酸エチル(20mL)に溶
解し、4規定塩酸の酢酸エチル溶液(20.0mL)を加え、室温で一晩放置した。溶媒
を減圧下で留去した後、トルエンを加え、溶媒を減圧下で留去した。得られた残留物をシ
リカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7
:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(1.66g,45%)
を無色固体として得た。
H-NMR(CDCl)δ:2.92-3.01(1H,m),3.10-3.1
8(1H,m),3.65-3.81(3H,m),3.88-3.98(1H,m),
4.64-4.73(1H,m),5.06(2H,s),5.87(1H,brs),
7.10-7.37(13H,m).
MS(APCI)m/z:412(M+H)
【0310】
工程3:N-[(ベンジルオキシ)カルボニル]グリシルグリシル-D-フェニルアラニ
ル-N-{[2-(ベンジルオキシ)-2-オキソエトキシ]メチル}グリシンアミド
実施例32工程1で得た化合物(1.25g,2.63mmoL)のジオキサン(25
.0mL)溶液に、ピペリジン(5.00mL)、N,N-ジメチルホルムアミド(5.
00mL)を加えて室温で30分間攪拌した。溶媒を減圧下で留去し、得られた残留物を
N,N-ジメチルホルムアミド(20.0mL)に溶解した。上記工程2の化合物(1.
20g,2.90mmoL)、及び16.4%含水の4-(4,6-ジメトキシ-1,3
,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(1.03g,3.
16mmoL)を加え、室温で2時間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え、水で洗浄
後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後、得られた残留
物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール=
9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(270mg,16%)を無色固体として得
た。
H-NMR(DMSO-d)δ:2.78(1H,dd,J=13.6,10.0H
z),3.05(1H,dd,J=13.9,4.2Hz),3.56-3.79(6H
,m),4.15(2H,s),4.47-4.54(1H,m),4.63(2H,d
,J=6.7Hz),5.03(2H,s),5.15(2H,s),7.14-7.3
9(15H,m),7.50(1H,t,J=5.7Hz),8.02(1H,t,J=
5.4Hz),8.16(1H,d,J=7.9Hz),8.34(1H,t,J=6.
0Hz),8.60(1H,t,J=7.0Hz).
MS(APCI)m/z:648(M+H)
【0311】
工程4:グリシルグリシル-D-フェニルアラニル-N-[(カルボキシメトキシ)メチ
ル]グリシンアミド
上記工程3で得た化合物(200mg,0.31mmoL)をN,N-ジメチルホルム
アミド(5.0mL)に溶解し、5%パラジウム炭素触媒(0.12g)を加え、水素雰
囲気下、室温で9時間攪拌した。反応液をセライトろ過し、残留物を水とN,N-ジメチ
ルホルムアミドの混合溶媒で洗浄した。ろ液と洗液を合わせて減圧下で留去し、標記化合
物(0.15g,定量的)を無色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:2.85(1H,dd,J=13.3,9.7Hz
),3.08(1H,dd,J=13.9,5.4Hz),3.43-3.52(4H,
m),3.62-3.89(7H,m),4.36-4.44(1H,m),4.58-
4.67(2H,m),7.12-7.29(5H,m),8.44(1H,t,J=5
.7Hz),8.67(1H,d,J=7.3Hz),8.78(1H,t,J=5.4
Hz),8.91(1H,brs).
MS(APCI)m/z:424(M+H)
【0312】
工程5:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-D-フェニルアラニル-N-[(カルボキシメトキ
シ)メチル]グリシンアミド
上記工程4で得た化合物(0.15g,0.35mmoL)をN,N-ジメチルホルム
アミド(10mL)に溶解し、6-マレイミドヘキサン酸N-スクシンイミジル(0.1
1g,0.35mmoL)を加え、室温で1時間攪拌した。反応液にクロロホルムを加え
、水で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を減圧下で留去した後、得
られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロホルム~クロロホルム:メ
タノール:水=7:3:1(v/v/v)の分配有機層]にて精製し、標記化合物(41
mg,26%)を無色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:1.13-1.24(2H,m),1.42-1.
53(4H,m),2.12(2H,t,J=7.3Hz),2.82(1H,dd,J
=13.9,10.0Hz),3.09(1H,dd,J=13.9,4.8Hz),3
.17(2H,d,J=4.2Hz),3.47-3.89(8H,m),4.08-4
.14(1H,m),4.41-4.49(1H,m),4.58-4.69(2H,m
),7.00(2H,s),7.14-7.27(5H,m),8.31(1H,t,J
=6.0Hz),8.39(1H,brs),8.55(2H,brs),8.93(1
H,brs).
MS(APCI)m/z:615(M-H)
【0313】
工程6:N-[6-(2,5-ジオキソ-2,5-ジヒドロ-1H-ピロール-1-イル
)ヘキサノイル]グリシルグリシル-D-フェニルアラニル-N-[(2-{[(1S,
9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキ
ソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラ
ノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-
2-オキソエトキシ)メチル]グリシンアミド
エキサテカンのメタンスルホン酸塩(22mg,0.388mmoL)のN,N-ジメ
チルホルムアミド(10mL)溶液に、トリエチルアミン(5.42μL、0.388m
moL)、上記工程5で得た化合物(29mg,0.466mmoL)、及び16.4%
含水の4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモ
ルホリニウムクロリド(19mg,0.686mmoL)を0℃で加え、室温で1時間攪
拌した。反応液を減圧下で留去した後、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラ
フィー[クロロホルム~クロロホルム:メタノール:水=7:3:1(v/v/v)の分
配有機層]にて精製し、標記化合物(26mg,65%)を薄黄色固体として得た。
H-NMR(DMSO-d)δ:0.87(3H,t,J=7.3Hz),1.12
-1.22(2H,m),1.40-1.51(4H,m),1.79-1.92(2H
,m),2.09(2H,t,J=7.6Hz),2.13-2.23(2H,m),2
.39(3H,s),2.78(1H,dd,J=13.6,9.4Hz),2.98-
3.05(1H,m),3.13-3.23(2H,m),3.54-3.78(8H,
m),4.02(2H,s),4.41-4.50(1H,m),4.61-4.66(
2H,m),5.21(2H,s),5.42(2H,s),5.56-5.64(1H
,m),6.53(1H,s),6.99(2H,s),7.14-7.27(5H,m
),7.31(1H,s),7.79(1H,d,J=10.9Hz),8.01(1H
,t,J=5.4Hz),8.07(1H,t,J=5.7Hz),8.14(1H,d
,J=7.9Hz),8.31(1H,t,J=5.7Hz),8.53(1H,d,J
=9.1Hz),8.63(1H,t,J=6.3Hz).
MS(APCI)m/z:1034(M+H)
【0314】
工程7:抗体-薬物コンジュゲート(44)
参考例1にて作製したトラスツズマブ及び上記工程6で得た化合物を用いて、実施例7
工程1と同様の方法により、標記抗体-薬物コンジュゲートを得た。
抗体濃度:1.87mg/mL,抗体収量:16.8mg(84%),抗体一分子あた
りの薬物平均結合数(n):6.1。
【0315】
実施例45 中間体(45)
【化71】
【0316】
工程1:tert-ブチル (2-{[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9
-ヒドロキシ-4-メチル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘ
キサヒドロ-1H,12H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ
[1,2-b]キノリン-1-イル]アミノ}-2-オキソエチル)カーバメート
N-(tert-ブトキシカルボニル)-グリシン(0.395g,2.26mmoL
)のジクロロメタン(3.00mL)溶液に、N-ヒドロキシスクシンイミド(0.26
0g,2.26mmoL)、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジ
イミド塩酸塩(0.433mg,2.26mmoL)を加え、室温で1時間撹拌した。こ
の溶液を、エキサテカンのメタンスルホン酸塩(1.00g,1.88mmoL)、トリ
エチルアミン(0.315mL,2.26mmoL)、及びN,N-ジメチルホルムアミ
ド(3.00mL)からなる溶液に加え、室温で16.5時間撹拌した。反応溶液をクロ
ロホルムで希釈し、10%クエン酸溶液で洗浄後、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し
た。溶媒を減圧留去し、得られた残留物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー[クロロ
ホルム~クロロホルム:メタノール=9:1(v/v)]にて精製し、標記化合物(1.
16g,99%)を黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,DMSO-d)δ:0.86(3H,t,J=7.2H
z),1.30(9H,s),1.81-1.89(2H,m),2.09-2.21(
2H,m),2.38(3H,s),3.15-3.17(2H,m),3.55-3.
56(2H,m),5.15(1H,d,J=18.8Hz),5.23(1H,d,J
=19.2Hz),5.41(2H,s),5.55-5.56(1H,m),6.53
(1H,s),6.95(1H,t,J=5.5Hz),7.28(1H,s),7.7
7(1H,d,J=11.0Hz),8.39(1H,d,J=8.6Hz).
MS(APCI)m/z:593(M+H)
【0317】
工程2:N-[(1S,9S)-9-エチル-5-フルオロ-9-ヒドロキシ-4-メチ
ル-10,13-ジオキソ-2,3,9,10,13,15-ヘキサヒドロ-1H,12
H-ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:6,7]インドリジノ[1,2-b]キノリン
-1-イル]グリシンアミド
上記工程1で得た化合物(0.513g,1.01mmoL)を、実施例1工程2と同
様に反応させ、標記化合物(0.463g,93%)を黄色固体として得た。
H-NMR(400MHz,CDOD)δ:0.96(3H,t,J=7.0Hz)
,1.89-1.91(2H,m),2.14-2.16(1H,m),2.30(3H
,s),2.40-2.42(1H,m),3.15-3.21(2H,m),3.79
-3.86(2H,m),4.63-4.67(1H,m),5.00-5.05(1H
,m),5.23(1H,d,J=16.0Hz),5.48(1H,d,J=16.0
Hz),5.62-5.64(1H,m),7.40-7.45(2H,m).
MS(APCI)m/z:493(M+H)
【0318】
実施例46 抗体-薬物コンジュゲート(46)
【化72】
【0319】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(46)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(50mL)をポ
リカーボネート製の125mL三角フラスコ容器に入れ、マグネティックスターラー撹拌
下、室温で1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.750mL)を加えた後、10mM
TCEP水溶液(1.857mL;抗体一分子に対して5.4当量)を加えた。本溶液の
pHが7.0±0.1内であることを確認した後に、撹拌を停止し、37℃で1時間イン
キュベートすることにより、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃に冷却後、撹拌下、実施
例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(2.958mL;抗体一分子に対し
て8.6当量)をゆっくり滴下して加えた。15℃で、最初の30分間は撹拌し、次の1
時間は撹拌を停止させてインキュベートし、薬物リンカーを抗体へ結合させた。次に、撹
拌下、100mM NAC水溶液(0.444mL;抗体一分子に対して12.9当量)
を加え、さらに室温で20分間撹拌し、未反応の薬物リンカーの反応性を停止させた。
精製:撹拌下、上記溶液に20%酢酸水(約0.25mL)とABS(50mL)をゆ
っくり加え、本溶液のpHを5.5±0.1にした。この溶液を精密ろ過(Millip
ore Co. Millex-HVフィルター、0.45μm、PVDF膜)して白濁
物を除いた。この溶液に対して、限外ろ過膜(メルク株式会社、Pellicon XL
Cassette、Biomax 50KDa)、チューブポンプ(米国コールパーマ
ー社マスターフレックスポンプ model 77521-40、ポンプヘッド mod
el 7518-00)及びチューブ(米国コールパーマー社マスターフレックスチュー
ブ L/S16)で構成された限外ろ過装置を用い、限外ろ過精製を行った。すなわち、
反応液に精製緩衝液としてABSを滴下しながら(計800mL)、限外ろ過精製を行う
ことで、未結合の薬物リンカー及び他の低分子量試薬を除去するとともに緩衝液をABS
へ置換し、さらに濃縮まで行った。得られた精製溶液に対して、精密ろ過(0.22μm
(Millipore Co. Millex―GVフィルター、PVDF膜)及び0.
10μm(Millipore Co. Millex―VVフィルター、PVDF膜)
)を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を42.5mL得た。
特性評価:共通操作E及びF(εD,280=5178(実測値)、εD,370=2
0217(実測値)を使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:10.4mg/mL,抗体収量:442mg(88.5%),共通操作Eに
て測定された抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.0;共通操作Fにて測定さ
れた抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):7.5。
【0320】
実施例47 抗体-薬物コンジュゲート(47)
【化73】
【0321】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(47)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(15mL)をポ
リプロピレン製チューブに入れ、ここに10mM TCEP水溶液(0.567mL;抗
体一分子に対して5.5当量)及び1Mリン酸水素二カリウム水溶液(0.225mL)
を加えた。本溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に、37℃で2時間
インキュベートすることで、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元させた。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液へ、DMSO(0.146mL)
と実施例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(0.928mL;抗体一分子
に対して9.0当量)を室温で加え、15℃で30分間インキュベートし、薬物リンカー
を抗体へ結合させた。次に、100mM NAC水溶液(0.133mL;抗体一分子に
対して12.9当量)を加え、さらに室温で20分間攪拌し、未反応の薬物リンカーの反
応性を停止させた。
精製:上記溶液を、共通操作D(緩衝液としてABSを使用)を用いた精製を行い、目
的の化合物を含有する溶液を49mL得た。
特性評価:共通操作E(εD,280=5178、εD,370=20217を使用)
を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:2.91mg/mL,抗体収量:143mg(95%),抗体一分子あたり
の薬物平均結合数(n):6.2
【0322】
実施例48 抗体-薬物コンジュゲート(48)
【化74】
【0323】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(48)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(280mL)を
ポリカーボネート製の1000mL三角フラスコ容器に入れ、マグネティックスターラー
撹拌下、室温で1Mリン酸水素二カリウム水溶液(4.200mL)を加えた後、10m
M TCEP水溶液(10.594mL;抗体一分子に対して5.5当量)を加えた。本
溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に撹拌を停止し、37℃で2時間
インキュベートすることにより、抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃に冷却後、撹拌下、実施
例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(17.335mL;抗体一分子に対
して9.0当量)をゆっくり滴下して加えた。15℃で、30分間撹拌し、薬物リンカー
を抗体へ結合させた。次に、撹拌下、100mM NAC水溶液(2.485mL;抗体
一分子に対して12.9当量)を加え、さらに室温で20分間撹拌し、未反応の薬物リン
カーの反応性を停止させた。
精製:撹拌下、上記溶液に20%酢酸水(約1.4mL)とABS(280mL)をゆ
っくり加え、本溶液のpHを5.5±0.1とした。この溶液を精密ろ過(0.45μm
、PVDF膜)して白濁物を除き、ろ液を約600mL得た。この溶液に対して、限外ろ
過膜(メルク株式会社、Pellicon XL Cassette、Biomax 5
0KDa)、チューブポンプ(米国コールパーマー社マスターフレックスポンプ mod
el 77521-40、ポンプヘッド model 7518-00)及びチューブ(
米国コールパーマー社マスターフレックスチューブ L/S16)で構成された限外ろ過
装置を用い、限外ろ過精製を行った。すなわち、反応液に精製緩衝液としてABS(計4
800mL)を滴下しながら、限外ろ過精製を行うことで、未結合の薬物リンカー及び他
の低分子量試薬を除去するとともに緩衝液をABSへ置換し、さらに濃縮まで行った。得
られた精製溶液に対して、精密ろ過(0.22μm及び0.10μmの2回、PVDF膜
)を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を70mL得た。
特性評価:共通操作E(εD,280=5178εD,370=20217を使用)
を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:35.96mg/mL,抗体収量:2517mg(90%),抗体一分子あ
たりの薬物平均結合数(n):6.2
【0324】
実施例49 抗体-薬物コンジュゲート(49)
【化75】
【0325】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(49)
抗体の還元:参考例1にて作製したトラスツズマブを、共通操作C-1及びB(280
nm吸光係数として1.48mLmg-1cm-1を使用)を用いて、媒体をPBS6.
0/EDTAに置換し、10mg/mLの抗体濃度に調製した。本溶液(280mL)を
ポリカーボネート製の1000mL三角フラスコ容器に入れ、マグネティックスターラー
撹拌下、室温で1Mリン酸水素二カリウム水溶液(4.200mL)を加えた後、10m
M TCEP水溶液(10.594mL;抗体一分子に対して5.5当量)を加えた。本
溶液のpHが7.0±0.1内であることを確認した後に撹拌を停止し、37℃で2時間
インキュベートすることにより抗体内ヒンジ部のジスルフィド結合を還元した。
抗体と薬物リンカーのコンジュゲーション:上記溶液を15℃に冷却後、撹拌下、実施
例26工程8の化合物を10mM含むDMSO溶液(17.335mL;抗体一分子に対
して9.0当量)をゆっくり滴下して加えた。15℃で、30分間撹拌し、薬物リンカー
を抗体へ結合させた。次に、撹拌下、100mM NAC水溶液(2.485mL;抗体
一分子に対して12.9当量)を加え、さらに室温で20分間撹拌し、未反応の薬物リン
カーの反応性を停止させた。
精製:撹拌下、上記溶液に20%酢酸水(約1.4mL)とABS(280mL)をゆ
っくり加え、本溶液のpHを5.5±0.1とした。この溶液を精密ろ過(0.45μm
、PVDF膜)して白濁物を除き、ろ液を約600mL得た。この溶液に対して、限外ろ
過膜(メルク株式会社、Pellicon XL Cassette、Ultracel
l 30KDa)、チューブポンプ(米国コールパーマー社マスターフレックスポンプ
model 77521-40、ポンプヘッド model 7518-00)及びチュ
ーブ(米国コールパーマー社マスターフレックスチューブ L/S16)で構成された限
外ろ過装置を用い、限外ろ過精製を行った。すなわち、反応液に精製緩衝液としてABS
(計4800mL)を滴下しながら、限外ろ過精製を行うことで、未結合の薬物リンカー
及び他の低分子量試薬を除去するとともに緩衝液をABSへ置換し、さらに濃縮まで行っ
た。得られた精製溶液に対して、精密ろ過(0.22μm及び0.10μmの2回、PV
DF膜)を行い、標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を130mL得た。
特性評価:共通操作E(εD,280=5178εD,370=20217を使用)
を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:21.00mg/mL,抗体収量:2730mg(97.5%),抗体一分
子あたりの薬物平均結合数(n):6.3
【0326】
実施例50 抗体-薬物コンジュゲート(50)
【0327】
工程1:抗体-薬物コンジュゲート(50)
実施例47、48及び49で作製した抗体-薬物コンジュゲート(47)、(48)及
び(49)を混合し(243mL)、さらにABS(39.75mL)を加えることで、
標記抗体-薬物コンジュゲートを含有する溶液を283mL得た。
特性評価:共通操作E及びF(εD,280=5178εD,370=20217を
使用)を使用して、下記の特性値を得た。
抗体濃度:20.0mg/mL,抗体収量:5655mg,共通操作Eにて測定された
抗体一分子あたりの薬物平均結合数(n):6.3;共通操作Fにて測定された抗体一分
子あたりの薬物平均結合数(n):7.8。
【0328】
評価例1 抗体-薬物コンジュゲートの抗細胞効果(1)
HER2抗原陽性細胞のヒト乳癌株であるKPL-4(川崎医科大学・紅林淳一先生,B
ritish Journal of Cancer, (1999)79(5/6). 707-717)、抗原陰性細胞のMCF7(Eu
ropean Collection of Cell Cultures;ECACC
)は10%のウシ胎児血清(MOREGATE)を含むRPMI1640(GIBCO;
以下、培地)で培養した。KPL-4、MCF7を培地で2.5×10 Cells/
mLになるようにそれぞれ調製し、96穴細胞培養用マイクロプレートに100μLずつ
添加して一晩培養した。
翌日、培地で1000nM、200nM、40nM、8nM、1.6nM、0.32n
M、0.064nMに希釈したトラスツズマブ又は抗体-薬物コンジュゲートをマイクロ
プレートに10μLずつ添加した。抗体非添加ウェルには培地を10μLずつ添加した。
37℃、5%CO下で5乃至7日間培養した。培養後、マイクロプレートをインキュベ
ーターから取り出して室温で30分間静置した。培養液と等量のCellTiter-G
lo Luminescent Cell Viability Assay(Prom
ega)を添加して撹拌した。室温で10分間静置後にプレートリーダー(Perkin
Elmer)で発光量を計測した。IC50値は次式で算出した。
IC50(nM)=antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10
a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:サンプルaの濃度
b:サンプルbの濃度
c:サンプルaの生細胞率
d:サンプルbの生細胞率
各濃度における細胞生存率は次式で算出した。
細胞生存率(%)=a÷b×100
a:サンプルウェルの発光量の平均値(n=2)
b:抗体非添加ウェルの発光量の平均値(n=10)
【0329】
抗体-薬物コンジュゲート(2)、(3)、(5)、(7)、(10)、(12)、(
13)、(16)、(18)、(40)、(42)は、KPL-4細胞に対してIC50
<0.1(nM)の抗細胞効果を示した。
抗体-薬物コンジュゲート(4)、(6)、(9)、(15)、(17)、(21)、
(22)、(25)、(36)、(37)、(39)、(41)、(43)は、0.1<
IC50<1(nM)の抗細胞効果を示した。
抗体-薬物コンジュゲート(20)、(24)、(27)は、1<IC50<100(
nM)の抗細胞効果を示した。抗体-薬物コンジュゲート(19)、(26)は抗細胞効
果を示さなかった(>100(nM))。
一方、MCF7細胞に対しては(5)、(13)、(43)が1<IC50<100(
nM)の抗細胞効果を示したが、抗体-薬物コンジュゲート(2)、(3)、(4)、(
6)、(7)、(9)、(10)、(12)、(15)、(16)、(17)、(18)
、(25)、(26)、(27)、(39)、(40)、(41)、(42)、(44)
は抗細胞効果を示さなかった(>100(nM))。
また、トラスツズマブはKPL-4細胞、MCF7細胞ともに抗細胞効果を示さなかっ
た(>100(nM))。
【0330】
評価例2 抗腫瘍試験(1)
マウス:5-6週齢の雌ヌードマウス(日本チャールス・リバー株式会社)を実験使用
前にSPF条件下で4-7日間馴化した。マウスには滅菌した固形飼料(FR-2,Fu
nabashi Farms Co.,Ltd)を給餌し、滅菌した水道水(5-15p
pm次亜塩素酸ナトリウム溶液を添加して調製)を与えた。
測定・計算式:全ての研究において、腫瘍の長径及び短径を電子式デジタルキャリパー
(CD-15CX,Mitutoyo Corp.)で1週間に2回測定し、腫瘍体積(
mm)を計算した。計算式は以下に示すとおり。
腫瘍体積(mm)=1/2×長径(mm)×[短径(mm)]
【0331】
抗体-薬物コンジュゲート及び抗体は全て生理食塩水(株式会社大塚製薬工場)で希釈
し、10mL/kgの液量を尾静脈内投与した。
KPL-4細胞を生理食塩水に懸濁し、1.5×10cellsを雌ヌードマウスの
右体側部に皮下移植し(Day0)、Day15に無作為に群分けを実施した。抗体-薬
物コンジュゲート(27)又は対照群として抗HER2抗体トラスツズマブ(参考例1)
をDay15、22に全て10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群と
して無処置群を設定した。
【0332】
結果を図3に示す。トラスツズマブの投与により腫瘍の増殖が抑制されたが、抗体-薬
物コンジュゲート(27)の投与では腫瘍増殖抑制効果はより顕著であった。なお、図中
、横軸は細胞移植後の日数、縦軸は腫瘍体積を示す。また、トラスツズマブ又は抗体-薬
物コンジュゲート(27)を投与されたマウスでは、体重減少等の特に目立った所見も無
く、抗体-薬物コンジュゲート(27)は高い安全性を有していると考えられる。なお、
以下の抗腫瘍試験に関する評価例において、特に記載のない場合、本評価例で使用した手
法で試験が実施されている。
【0333】
評価例3 抗腫瘍試験(2)
ATCC(American Type Culture Collection)か
ら購入したヒト胃癌株NCI-N87細胞を、生理食塩水に懸濁し1×10cells
を雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し(Day0)、Day7に無作為に群分けを実
施した。抗体-薬物コンジュゲート(8)、(28)、又はトラスツズマブエムタンシン
(参考例2)をDay7に全て10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール
群として無処置群を設定した。
【0334】
結果を図4に示す。抗体-薬物コンジュゲート(8)、(28)は、トラスツズマブエ
ムタンシンと同等の腫瘍の退縮を伴う強い抗腫瘍効果が認められた。また、抗体-薬物コ
ンジュゲート(8)、(28)、又はトラスツズマブエムタンシン投与によるマウスの体
重減少は認められなかった。
【0335】
評価例4 抗腫瘍試験(3)
DSMZ(Deutsche Sammlung von Mikroorganism
en und Zellkulturen GmbH)から購入したヒト乳癌株JIMT-1
細胞を生理食塩水に懸濁して3×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移
植し(Day0)、Day12に無作為に群分けを実施した。抗体-薬物コンジュゲート
(8)、(29)、(30)、又はトラスツズマブ、トラスツズマブエムタンシンをDa
y12、19に全て10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として生
理食塩水投与群を設定した。
【0336】
結果を図5に示す。JIMT-1腫瘍に対し、トラスツズマブ、トラスツズマブエムタ
ンシンの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。一方、抗体-薬物コンジュゲート(8)、
(29)、(30)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。また、抗体-薬物コン
ジュゲート(8)、(29)、(30)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シン投与によるマウスの体重減少は認められなかった。
【0337】
評価例5 抗体-薬物コンジュゲートの抗細胞効果(2)
ヒト非小細胞肺癌株Calu-3(ATCC)は、10%のウシ胎児血清(MOREG
ATE)を含むEagle’s Minimum Essential Medium(
GIBCO;以下、MEM培地)で培養した。
ヒト胃癌株NCI-N87(ATCC)、ヒト胃癌株MKN-45(ヒューマンサイエ
ンス研究資源バンク)は、10%のウシ胎児血清を含むRPMI1640 Medium
(GIBCO;以下、RPMI培地)で培養した。
ヒト乳癌株MDA-MB-453(ATCC)、ヒト乳癌株MDA-MB-468(A
TCC)は、10%のウシ胎児血清を含むLeibovitz’s L-15 Medi
um(GIBCO;以下、Leibovitz’s培地)で培養した。
この5種類の細胞株のうち、Calu-3、NCI-N87、MDA-MB-453は
HER2陽性細胞、MKN-45及びMDA-MB-468はHER2陰性細胞である。
Calu-3、NCI-N87、MKN-45を、MEM培地又はRPMI培地で4×
10cells/mLになるように調製し、65μLの培地を入れた96穴細胞培養用
マイクロプレートに25μLずつ添加して、37℃、5% CO下で一晩培養した。ま
た、MDA-MB-453、MDA-MB-468を、Leibovitz’s培地で4
×10cells/mLになるように調製し、65μLの培地を入れた96穴細胞培養
用マイクロプレートに25μLずつ添加して、37℃、CO濃度設定なし下で一晩培養
した。
翌日、RPMI培地又はLeibovitz’s培地で1000nM、200nM、4
0nM、8nM、1.6nM、0.32nM、0.064nMに希釈した検体、さらにR
PMI培地又はLeibovitz’s培地を上記マイクロプレートに10μLずつ添加
し、37℃、5% CO又は37℃、CO濃度設定なし下で6日間培養した。
Calu-3、NCI-N87、MDA-MB-468には抗体-薬物コンジュゲート
(46)を、その他の細胞には抗体-薬物コンジュゲート(50)を検体として添加した
。培養後、マイクロプレートをインキュベーターから取り出して室温で30分間静置した
。培養液と等量のCellTiter-Glo Luminescent Cell V
iability Assay(Promega)を添加し、プレートミキサーで攪拌し
て細胞を完全に溶解した。室温で10分間静置後にプレートリーダーで発光量を計測した

生細胞率は次式で算出した。
生細胞率(%)=a÷b×100
a:検体添加ウェルの発光量の平均値
b:培地添加ウェルの発光量の平均値
IC50値は次式で算出した。
IC50(nM)=antilog((50-d)×(LOG10(b)-LOG10
a))÷(d-c)+LOG10(b))
a:検体濃度a
b:検体濃度b
c:検体濃度aにおける生細胞率
d:検体濃度bにおける生細胞率
a、bは生細胞率50%を挟む2点でa>b。
【0338】
抗体-薬物コンジュゲート(46)は、HER2陽性細胞Calu-3、NCI-N8
7に対してIC50<1(nM)の抗細胞効果を示した。一方、HER2陰性細胞MDA
-MB-468に対しては抗細胞効果を示さなかった(>100(nM))。
【0339】
抗体-薬物コンジュゲート(50)は、HER2陽性細胞MDA-MB-453に対し
てIC50<1(nM)の抗細胞効果を示した。一方、HER2陰性細胞MKN-45に
対しては抗細胞効果を示さなかった(>100(nM))。
【0340】
評価例6 抗腫瘍試験(4)
HER2低発現であるヒト膵臓癌株Capan-1細胞(ATCC)を生理食塩水に懸
濁して4×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植してCapan-1
固形腫瘍を作成した。その後、この固形腫瘍を雌ヌードマウス移植により複数回継代維持
して本試験に用いた。固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し(Da
y0)、Day20に無作為に群分けを実施した。
抗体-薬物コンジュゲート(31)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシ
ンをDay20に全て10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として
生理食塩水投与群を設定した。
結果を図6に示す。Capan-1腫瘍に対し、トラスツズマブ、トラスツズマブエム
タンシンの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し、抗体-薬物コンジュゲート
(31)の投与によって腫瘍の増殖は顕著に抑制され、HER2低発現腫瘍であっても抗
体-薬物コンジュゲート(31)の有効性が確認された。HER2非発現胃癌株GCIY
腫瘍に対しては抗体-薬物コンジュゲート(31)は腫瘍増殖抑制を示さなかった。
なお、腫瘍におけるHER2の発現に関し、HER2検査ガイド第三版(日本病理学会
、トラスツズマブ病理部会作成)に記載された免疫組織化学染色による測定結果に基づき
、スコアが3+であるものを高発現とし、2+を中発現、1+を低発現と各々分類した。
また、当該測定法においてスコアが0であっても、例えばフローサイトメーターによる測
定法等の他の測定法によって陽性である場合は低発現に分類した。
【0341】
評価例7 抗腫瘍試験(5)
ATCCから購入したヒト胃癌株NCI-N87細胞を、生理食塩水に懸濁して1×1
cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し(Day0)、Day6に無作
為に群分けを実施した。抗体-薬物コンジュゲート(50)をDay6に各群0.3、1
、3、10mg/kgの用量でそれぞれ尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩
衝液投与群を設定した。
結果を図7に示す。抗体-薬物コンジュゲート(50)は、投与量に依存した抗腫瘍効
果を示した。また、抗体-薬物コンジュゲート(50)投与によるマウスの体重減少は認
められなかった。
【0342】
評価例8 抗腫瘍試験(6)
本試験は以下の方法で実施された。
マウス:6-12週齢の雌ヌードマウス(チャールス・リバー社)を実験に供した。
測定、計算式:腫瘍の長径および短径を電子式デジタルキャリパーで1週間に2回測定
し、腫瘍体積(mm)を計算した。計算式は以下に示すとおり。
腫瘍体積(mm)=0.52×長径(mm)×[短径(mm)]
抗体-薬物コンジュゲート、トラスツズマブ、及びトラスツズマブエムタンシンは酢酸
緩衝液で希釈し、10mL/kgの液量を尾静脈内投与した。
【0343】
乳癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウスに移植することにより複数回継代維持した
腫瘍(ST225;South Texas AcceleratedResearchT
herapeutics(START)社)を本試験に用いた。この腫瘍はHER2中発
現(免疫組織化学染色による判定は2+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-300
mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day0
に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシ
ンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩衝
液投与群を設定した。
結果を図8に示す。HER2中発現である乳癌ST225腫瘍に対し、トラスツズマブ
の投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し、トラスツズマエムタンシン又は抗体
-薬物コンジュゲート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。
【0344】
評価例9 抗腫瘍試験(7)
乳癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウスに移植することにより複数回継代維持した
腫瘍(ST910;START社)を本試験に用いた。この腫瘍はHER2低発現(免疫
組織化学染色による判定は1+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-300
mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day0
に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタンシ
ンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩衝
液投与群を設定した。
結果を図9に示す。HER2低発現である乳癌ST910腫瘍に対し、トラスツズマブ
及びトラスツズマエムタンシンの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し、抗体
-薬物コンジュゲート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制され、HER2低発
現乳癌腫瘍に対する抗体-薬物コンジュゲート(50)の有効性が確認された。なお、こ
の評価例9は評価例8と同一の手法で実施されている。
【0345】
評価例10 抗腫瘍試験(8)
本試験は以下の方法で実施された。さらに、評価例11~13も本手法によって実施さ
れている。
マウス:5-8週齢の雌ヌードマウス(Harlan Laboratories社)
を実験に供した。
測定、計算式:腫瘍の長径および短径を電子式デジタルキャリパーで1週間に2回測定
し、腫瘍体積(mm)を計算した。計算式は以下に示すとおり。
腫瘍体積(mm)=0.52×長径(mm)×[短径(mm)]
抗体-薬物コンジュゲート、トラスツズマブ、及びトラスツズマブエムタンシンは酢酸
緩衝液で希釈し、10mL/kgの液量を尾静脈内投与した。
【0346】
大腸癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウスに移植することにより複数回継代維持し
た腫瘍(CTG-0401;CHAMPIONSONCOLOGY社)を本試験に用いた
。この腫瘍はHER2低中発現(免疫組織化学染色による判定は1+又は2+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの左体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-30
0mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day
0に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩
衝液投与群を設定した。
結果を図10に示す。HER2低中発現大腸癌CTG-0401腫瘍に対し、トラスツ
ズマブ又はトラスツズマエムタンシンの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し
、抗体-薬物コンジュゲート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。
【0347】
評価例11 抗腫瘍試験(9)
非小細胞肺癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウス移植により複数回継代維持した腫
瘍(CTG-0860;CHAMPIONSONCOLOGY社)を本試験に用いた。こ
の腫瘍はHER2中発現(免疫組織化学染色による判定は2+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの左体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-30
0mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day
0に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩
衝液投与群を設定した。
結果を図11に示す。HER2中発現非小細胞肺癌CTG-0860腫瘍に対し、トラ
スツズマブ又はトラスツズマエムタンシンの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに
対し、抗体-薬物コンジュゲート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。
【0348】
評価例12 抗腫瘍試験(10)
胆管癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウスに移植することにより複数回継代維持し
た腫瘍(CTG-0927;CHAMPIONSONCOLOGY社)を本試験に用いた
。この腫瘍はHER2高発現(免疫組織化学染色による判定は3+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの左体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-30
0mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day
0に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩
衝液投与群を設定した。
結果を図12に示す。HER2高発現胆管癌CTG-0927腫瘍に対し、トラスツズ
マブの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し、トラスツズマブエムタンシンの
投与により腫瘍の増殖は抑制された。さらに抗体-薬物コンジュゲート(50)の投与は
腫瘍の退縮を誘導した。
【0349】
評価例13 抗腫瘍試験(11)
食道癌患者から摘出した腫瘍を雌ヌードマウスに移植することにより複数回継代維持し
た腫瘍(CTG-0137;CHAMPIONSONCOLOGY社)を本試験に用いた
。この腫瘍はHER2高発現(免疫組織化学染色による判定は3+)である。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの左体側部に皮下移植し、腫瘍体積が100-30
0mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day
0に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として酢酸緩
衝液投与群を設定した。
結果を図13に示す。HER2高発現食道癌CTG-0137腫瘍に対し、トラスツズ
マブの投与は腫瘍の増殖を抑制しなかった。これに対し、トラスツズマブエムタンシン又
は抗体-薬物コンジュゲート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。
【0350】
評価例14 抗腫瘍試験(12)
ATCCから購入した、HER2高発現であるヒト卵巣癌株SK-OV-3細胞を生理
食塩水に懸濁して4×10cellsを雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植し、SK
-OV-3固形腫瘍を作成した。その後、この固形腫瘍を雌ヌードマウスに移植すること
により複数回継代維持して本試験に用いた。
固形腫瘍の腫瘍片を雌ヌードマウスの右体側部に皮下移植して腫瘍体積が100-30
0mmに到達した時点で無作為に群分けを実施した。群分け日をDay0とし、Day
0に抗体-薬物コンジュゲート(50)、トラスツズマブ、又はトラスツズマブエムタン
シンをいずれも10mg/kgの用量で尾静脈内投与した。コントロール群として生理食
塩水投与群を設定した。
結果を図14に示す。SK-OV-3腫瘍に対し、トラスツズマブの投与は腫瘍の増殖
を抑制しなかった。これに対し、トラスツズマブエムタンシン又は抗体-薬物コンジュゲ
ート(50)の投与により腫瘍の増殖は顕著に抑制された。
【配列表フリーテキスト】
【0351】
配列番号1:ヒト化抗HER2モノクローナル抗体重鎖のアミノ酸配列
配列番号2:ヒト化抗HER2モノクローナル抗体軽鎖のアミノ酸配列
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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