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特開2024-81786生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のためのプロセス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081786
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/00 20060101AFI20240611BHJP
   C07K 1/34 20060101ALI20240611BHJP
【FI】
A61K38/00
C07K1/34
【審査請求】有
【請求項の数】34
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024060940
(22)【出願日】2024-04-04
(62)【分割の表示】P 2022092326の分割
【原出願日】2017-08-11
(31)【優先権主張番号】16184502.9
(32)【優先日】2016-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
(71)【出願人】
【識別番号】503385923
【氏名又は名称】ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】ガリデル,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】バーレンブルク,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ-ファーデムレヒト,トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】アイペルレ,アンドレア
(57)【要約】      (修正有)
【課題】生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のための改善されたプロセスを提供する。
【解決手段】プロセスは以下の工程を含む:
(a)第1の限外濾過UF1;
(b)第1の透析濾過DF1;
(c)第2の透析濾過DF2;及び
(d)第2の限外濾過UF2;
それにおいて、液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、液体媒体Cとして水あるいは1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し、それにおいて、工程(b)について使用される1つ又は複数の塩は、工程(c)について使用される1つ又は複数の塩と同じか又は異なり、それにおいて、液体媒体Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程:
(a)第1の限外濾過UF1;
(b)第1の透析濾過DF1;
(c)第2の透析濾過DF2;及び
(d)第2の限外濾過UF2;
を含む、生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のためのプロセスであって、
それにおいて、液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、液体媒体Cとして水あるいは1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し;それにおいて、工程(b)について使用される1つ又は複数の塩は、工程(c)について使用される1つ又は複数の塩と同じか又は異なり、それにおいて、液体媒体Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有するプロセス。
【請求項2】
液体媒体Bが濃度の形式で示す高いイオン強度を有し、それは約20mMから塩の溶解度の限界まで、又は約100mM~1000mM、又は約150mM~750mM、又は約200mM~500mMの範囲であり、
及び、
液体媒体Cが濃度の形式で示す低いイオン強度を有し、それは約0mM~150mM、又は約0mM~100mM、又は約0mM~75mM、又は約0mM~50mMの範囲であることを特徴とする、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
液体媒質Bが、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有し、濃度の形式で示す液体媒体Bのイオン強度と液体媒体Cのイオン強度の間の差が、少なくとも約100mM、又は少なくとも約200mM、又は少なくとも約500mMであることを特徴とする、請求項1又は2記載のプロセス。
【請求項4】
工程(a)において使用される液体生体分子製剤が、水溶液であり、1つ又は複数の賦形剤を含む液体媒体Aを含み、液体媒体Aは、工程(b)及び(c)において液体媒体Bによって液体媒体Cと交換され、それにより、工程(c)及び(d)において得られた液体生体分子製剤は、前記賦形剤の低下した含量を有することを特徴とする、先行する請求項1~3のいずれかに記載のプロセス。
【請求項5】
賦形剤が、水溶液中で荷電又は中性の賦形剤からなる群より選択され;賦形剤が生体分子の調製又は処理において使用される添加剤;不要な物質又はイオン、例えば出発液体生体分子製剤中に含まれる不純物など;生体分子の製造プロセスの間に形成される望ましくない副産物;生体分子の産生の間に形成される出発、中間、又は最終産物の分解又は分解産物剤からなる群より選択されることを特徴とする、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
添加物、不要な物質、又はイオンが、細胞成分又は破片、細菌の分解産物、例えば内毒素、DNA、RNA、望ましくない脂質、HCP(宿主細胞タンパク質)、リポ多糖(LPS)、又はそれらの部分など;糖;界面活性剤、例えば正に荷電した、負に荷電した、及びまた非イオン性の種など;塩から生じる任意の種類の負又は正に荷電したイオンに由来することを特徴とする、請求項5記載のプロセス。
【請求項7】
塩が有機塩及び/又は無機塩より選択されることを特徴とする、請求項1~6記載のいずれかに記載のプロセス。
【請求項8】
無機塩が、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ハロゲン化物、ホウ酸、ケイ酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩からなる群より選択されることを特徴とする、請求項7記載のプロセス。
【請求項9】
無機塩が、ナトリウム塩;カルシウム塩;マグネシウム塩又はそれらの組み合わせを含む医薬的に許容可能な無機塩の群より選択されることを特徴とする、請求項7又は8のいずれかに記載のプロセス。
【請求項10】
ナトリウム塩が、ハロゲン化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はホウ酸ナトリウムを含み;
カルシウム塩が、ハロゲン化カルシウム、硫酸カルシウム、又はホウ酸カルシウムを含み;
マグネシウム塩が、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はホウ酸マグネシウムを含むことを特徴する、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
ハロゲン化物が、塩化物を含むことを特徴とする、請求項10記載のプロセス。
【請求項12】
液体媒体Bが、塩化ナトリウムを約150~約900mM、又は約200~約700mM、又は約400~約600mM、又は約450~約550mMの濃度で含むことを特徴とする、請求項1~11のいずれかに記載のプロセス。
【請求項13】
塩が有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩であることを特徴とする、請求項1~12のいずれかに記載のプロセス。
【請求項14】
緩衝塩が、N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸(ACES)及びその塩、酢酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸 酸(ADA)及びその塩、アンモニア及びその塩、塩化アンモニウム、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アンメドール(AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)及びその塩、N、N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 BES)及びその塩、安息香酸及びその塩、重炭酸塩、例えば炭酸水素ナトリウムなど、N、N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-グリシン(ビシン)、トリス緩衝剤、例えばトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンなど、[ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ]-トリス-(ヒドロキシメチルメタン)(ビス-トリス)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン(ビス-トリス-プロパン)、ホウ酸及びその塩、ジメチルアルシン酸(カコジル酸)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)及びその塩、炭酸及びその塩、炭酸塩、例えば炭酸ナトリウムなど、シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)及びその塩、クエン酸及びその塩、3-[N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)及びその塩、ギ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、グリセリン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、グリシン、例えばグリシルグリシンなど、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS、EPPS)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)及びその塩、イミダゾール、乳酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)及びその塩、リン酸及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)及びその塩、ピリジン、コハク酸及びその塩、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アミノ}-プロパンスルホン酸(TAPS)及びその塩、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)及びその塩、酒石酸及びその塩、タウリン(2-アミノエタンスルホン酸、AES及びその塩)、トリエタノールアミン(TEA)、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)及びその塩、ならびにN-[トリス(ヒドロキシメチル)]-メチル]-グリシン(トリシン)からなる群より選択されることを特徴とする、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
緩衝塩又は緩衝剤が、水溶液中のアミノ酸である生物学的緩衝剤であり、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群より選択される;
あるいは、緩衝塩又は緩衝剤が、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、トリス、コハク酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、塩化アンモニウム、トリエタノールアミン、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びプロリンからなる群より選択される生物学的緩衝剤であることを特徴とする、請求項13又は14記載のプロセス。
【請求項16】
液体媒体Cが水からなる又は本質的になることを特徴とする、先行する請求項1~15のいずれかに記載のプロセス。
【請求項17】
液体生体分子製剤から除去される生体分子及び賦形剤が反対の電荷を有することを特徴とする、請求項1~16のいずれかに記載のプロセス。
【請求項18】
生体分子が正に荷電しており、本プロセスにより除去される賦形剤が負に荷電した賦形剤であることを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載のプロセス。
【請求項19】
生体分子が正に荷電したタンパク質であり、本プロセスにより除去される賦形剤が陰イオンであることを特徴とする、請求項1~18のいずれかに記載のプロセス。
【請求項20】
プロセス工程(b)がその後の工程(c)を実施する前に数回繰り返されるか、又は液体媒体Bの交換がx媒体サイクルで実施され、それによりx=2~10、又はx=2~8、又はx=2~6であることを特徴とする、先行する請求項1~19のいずれかに記載のプロセス。
【請求項21】
プロセス工程(c)がその後の工程(d)を実施する前に数回繰り返されるか、又は液体媒体Cの交換がy媒体サイクルで実施され、それによりy=2~10、又はy=2~8、又はy=2~6であることを特徴とする、請求項1~20のいずれかに記載のプロセス。
【請求項22】
工程(a)の限外濾過UF1を使用し、液体生体分子製剤を、液体生体分子製剤の初期濃度と比較して、約10%~70%、又は約15%~60%、又は約25%~50%まで濃縮することを特徴とする、請求項1~21のいずれかに記載のプロセス。
【請求項23】
工程(d)の限外濾過UF 2を使用し、液体生体分子製剤を所望の値に濃縮することを特徴とする、請求項1~22のいずれかに記載のプロセス。
【請求項24】
工程(b)及び工程(c)が直接順々に続き、それにより中間プロセス工程はその間に実施しない、
及び/又は工程(a)及び工程(b)が直接順々に続き、それにより中間プロセス工程をその間に実施しない、及び/又は
工程(c)及び工程(d)が直接順々に続き、それによりその間に中間プロセス工程を実施しないことを特徴とする、請求項1~23のいずれかに記載のプロセス。
【請求項25】
生体分子が小分子、単量体、又は生体高分子からなる群より選択される;
あるいは、生体分子は脂質、ビタミン;ホルモン、神経伝達物質;アミノ酸、ヌクレオチド、単糖類;タンパク質、ペプチド;核酸;オリゴ糖、多糖からなる群より選択される;
あるいは、生体分子はタンパク質、ペプチド、核酸、オリゴ糖、及び多糖からなる群より選択される;
あるいは、生体分子はタンパク質及びペプチドからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~24のいずれかに記載のプロセス。
【請求項26】
プロセス工程(a)~(d)は約20~約25℃の室温で実施することを特徴とする、請求項1~25のいずれかに記載のプロセス。
【請求項27】
プロセス工程(a)~(d)を、接線流濾過(TFF)システム又は遠心濾過システムを使用して実施することを特徴とする、請求項1~26のいずれかに記載のプロセス。
【請求項28】
請求項1~27のいずれかに記載のプロセスにより調製された生体分子を含む高濃縮液体製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列リスト
本出願は、ASCIIフォーマットにおいて電子的に提出され、その全体において参照により本明細書により組み入れられる配列リストを含む。
【0002】
技術分野
本発明は、生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のための改善されたプロセスに関する。
【0003】
発明の背景
十分に定義された生体分子溶液を調製する能力は、生体分子ベースの医薬製剤開発の間での必須の側面である。生体分子の安定性、イオン強度、pH値、及び生体分子濃度、ならびに生体分子の完全性は、制御すべき主要なパラメーターの1つである。
【0004】
特に可能性のある生体分子の代表として、タンパク質が、以下の考察、特に以下の科学文献及び特許公開において考慮されるであろう。
【0005】
溶液中のタンパク質と何らかの形で相互作用し、それを安定化及び可溶化し、凝集物の形成を回避する賦形剤の存在によりタンパク質の安定性が改善されることが公知である。通常のタンパク質製剤において、使用される一般的な賦形剤は、例えば、塩化合物又は他のイオン種、糖、及び界面活性剤である。
【0006】
特に医薬製剤に関して、タンパク質の安定性及び溶解度は製剤に依存する。
【0007】
既に公知のように、タンパク質ベースの医薬産物の安定性は、溶液条件(例えばpH値及びイオン強度ならびに賦形剤の種類及び濃度など)の機能である(Garidel P., Bassarab S. (2008), Impact of formulation design on stability and quality, in: Quality for Biologics: Critical Quality Attributes, Process and Change Control, Production Variation, Characterisation, Impurities and Regulatory Concerns pp. 94-113, Publishing, London, UK)。これは、液体及び固体(例えば、凍結乾燥又は噴霧乾燥)タンパク質製剤の両方に当てはまる(Schersch K., Betz O., Garidel P., Muehlau S., Bassarab S., Winter G. (2013), Systematic investigation of the effect of lyophilizate collapse on pharmaceutically relevant proteins III: collapse during storage at elevated temperatures, European journal of pharmaceutics and biopharmaceutics: official journal of Arbeitsgemeinschaft fur Pharmazeutische Verfahrenstechnik e.V, 85 (2), 240-252)。
【0008】
タンパク質と賦形剤の間での相互作用はしばしば非常に複雑であり、タンパク質の特性及び安定性は通常予測できない(例、Hoffmann C., Blume A., Miller I., Garidel P., Insights into protein-polysorbate interactions analysed by means of isothermal titration and differential scanning calorimetry, (2009), European Biophysics Journal, 38 (5), 557-568 Kamerzell T.J., Esfandiary R., Joshi S.B., Middaugh C.R., Volkin D.B. (2011), Protein-excipient interactions: Mechanisms and biophysical characterization applied to protein formulation development, Advanced Drug Delivery Reviews, 63 (13), pp. 1118-1159及び他の多くの文献)。Roberts及び共同研究者は、例えば、モノクローナル抗体中でのタンパク質-タンパク質相互作用に対する特定のイオン(塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、及びチオシアン酸ナトリウム)及び緩衝剤(酢酸、クエン酸、リン酸、ヒスチジン、コハク酸、及びトリス)の効果を試験した(Roberts D., Keeling R., Tracka M., van der Walle C.F., Uddin S., Warwicker J., Curtis R. (2015), Specific ion and buffer effects on protein-protein interactions of a monoclonal antibody, Molecular Pharmaceutics 2015, 12, 179-193)。これらの相互作用は、タンパク質の溶解度、タンパク質粒子の形成、及び全体的なタンパク質のコロイド安定性に影響を及ぼす(Garidel P., Blume A., Wagner M., Prediction of colloidal stability of high concentration protein formulations, (2015), Pharmaceutical Development and Technology, 20 (3), pp. 367-374)。
【0009】
製造の過程において、タンパク質溶液は、単位操作、保存、及び/又は製剤化を促進するために数回改変しなければならないであろう。各々の段階は、濾過、限外濾過(UF)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、透析濾過(DF)、及び向流透析(単独又は組み合わせで)として広く認められているプロセスを使用した溶液交換を含む可能性が高い。これらの方法は、タンパク質を調整し、溶液条件を特定の範囲に変えるのに役立つ(Janson H.-C. (ed.). (2011), Protein Purification, 3rd edition, Wiley, New Jersey)。
【0010】
特に工業規模でのタンパク質溶液の調整及び調製のための最も一般的な方法は、限外濾過/透析濾過(以下、UF/DFとしても略す)の組み合わせである(例、Brose D.J., Dosmar M., Jornitz M.W. (2002), Membrane filtration, Pharmaceutical biotechnology, 14, pp. 213-279を参照のこと)。実際に、UF/DFは、タンパク質の濃縮、緩衝液の交換、クロマトグラフィーなどの下流プロセスのためのタンパク質の調整、及び製剤化のために要求される濃縮溶液及び緩衝溶液中のタンパク質の回収のために下流処理において広範に使用されている(Marshak D.R., Kadonaga J.T., Burgess R.R., Knuth M.W., Brennman W.A., Lin S.-H. (1996), Protein Purification and Characterisation, Cold Spring Harbor Laboratory Press)。限外濾過/透析濾過(UF/DF)は、pH値の調整、溶液のイオンプロファイル/賦形剤組成の変更、及び/又は標的タンパク質濃度の達成に通常用いられる方法である。
【0011】
UF/DFは通常、接線流濾過(以下、「TFF」とも略す)様式で実施し、これはクロスフローとも呼ばれ、そこでは供給溶液流が膜と平行に、ひいては濾液流に垂直に流れる。この設定によって、保持された分子が膜表面に沿って、膜チャンバの外に、残余分容器に戻り掃引され、デッドエンド操作よりも有意に高いプロセススループットが提供される(Flickinger, M. C. (ed.) (2013), Downstream industrial biotechnology, John Wiley & Sons, Hoboken Ney Jersey)。
【0012】
TFFはしばしば、膜の上流面に濃度分極、高濃度勾配の形成、及び高濃縮溶質の境界層を産生する。結果として、タンパク質の吸着、変性、凝集、又は沈殿によって膜が汚れることがある(Field R. (2010), Fundamentals of fouling, in: Peinemann K.-V., Pereira Nunes S., Membranes for water treatment, Volume 4, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, Weinheim, chapter 1, 1-23)。究極的には、これらのシステムの性能は、保持された溶質が膜から離れてバルク溶液中に戻って輸送される速度にほぼ完全に依存する(Bowen W.R., Jenner R. (1995), Theoretical descriptions of membrane filtration of colloids and fine particles: an assessment and review, Adv. Colloid Interface Sci 56, 141-200)。この現象は濃度分極として公知である。
【0013】
図1Aを参照して、透析濾過(DF)工程の略図を例証している。透析濾過は、生体分子を含む溶液から塩又は溶媒を除去、置換、又はその濃度を低下させるために透過性又は多孔性の膜フィルターを使用する技術である。このプロセスでは、膜フィルターを使用し、溶液及び懸濁液の成分をその分子サイズに基づいて分離する。膜により保持される溶液は濃縮物又は残余分として公知である。膜を通過する溶液は、濾液又は透過液として公知である。透析濾過において、原料を膜上で繰り返し循環させ、残余分容器に戻し、そこで、透過液を除去しながら新たな液体媒体(例えば緩衝液など)を加える。図1Aに示すように、透析濾過媒体はシステムに加えられた供給媒体に対応するのに対し、透過物はシステムから除去された濾過媒体である。
【0014】
図1Bにおいて、限外濾過(UF)工程の略図を例証する。限外濾過それ自体は、同じ概念に従い、図1Aの透析濾過について示したものと同じ図設定に基づいているが、新たな液体媒体の添加を伴わない。
【0015】
限外濾過ならびに透析濾過プロセスは広く公知であり、先行技術において記載されている。
【0016】
例えば、Marichal-Gallardo P.A., Alvarez M.M. (2012), State-of-the-art in downstream processing of monoclonal antibodies: Process trends in design and validation, Biotechnology Progress, 28, 899-916及びWO 2014/130064 A1には緩衝液交換手順が開示されており、目的のタンパク質を含む溶液を水に対して透析濾過する。
【0017】
さらに、CA 2 643 508 A1において、分子を結合するための高い能力を伴う、ヒトアルブミン溶液を得るためのプロセスが記載されており、以下を含む:
a)第1の透析(透析濾過);
b)脂肪酸の添加を伴わない、NaCl及び1つ又は複数のアミノ酸を用いた溶液の安定化;
c)溶液を加熱すること(低温殺菌);ならびに
d)第2の透析(透析濾過)。
すなわち、透析濾過工程の組み合わせは、例えば、アルブミンに結合している物質を除去することを目的として、患者の血液又は血漿中のアルブミンを解毒するために使用する。これら2つの透析濾過工程の間にアルブミンを加熱する、即ち、低温殺菌によるウイルス不活性化の工程を、少なくとも1つのアミノ酸及び塩化ナトリウムの存在においてアルブミンを安定化させて実施する。このプロセスによって、アルブミンに結合した化合物(例えば脂質、脂肪酸など)を除去することが可能になる。なぜなら、これらの化合物によってアルブミンの結合能力が低下するからである。第1と第2の透析濾過の間での溶液の加熱は本発明において実施しない。
【0018】
さらに、WO 91/00290 A1は、タンパク質を、それに結合した多価金属イオンから精製する方法に関し、これらのイオンは、イオンを一価金属イオンと交換することによりタンパク質から放出し、その後に多価金属イオンを除去する。これらのイオンの放出及び除去は、特に透析濾過又はゲル濾過の方法によりもたらす。特に、タンパク質(例えばアルブミン及びガンマグロブリンなど)を多価金属イオン(例、タンパク質に結合しているアルミニウム、鉄、又は鉛)から洗浄するために、多価金属イオンを除去し、それらをナトリウム、カリウム、又はアンモニウムイオンと交換するために、水及び1Mまでの塩溶液を含む2つのゲル濾過工程の組み合わせを使用する。しかし、このプロセスの説明に関連して提示された図の分析から、ゲル濾過プロセスがどのように実行されるかは不明である。さらに、この文献には金属イオンの洗浄が記載されているが、しかし、有機イオン(例、陰イオン、例えばリン酸イオン、コハク酸イオン、酢酸イオン)及びそのような有機イオンを含むタンパク質溶液のコンディショニングに関しては全く言及していない。
【0019】
WO 2002/051979 A2に従い、タンパク質を含む溶液のpHを約7から約10のpHに調整し、その水溶液を純水に対して透析濾過し、それにより多価イオンを含む濾液及びタンパク質を含む残余分を提供することにより、タンパク質からクエン酸イオン、アルミニウムイオン、多価イオン、及び汚染物質を除去する方法を提供する。一実施形態において、同じ容器中で2つの透析濾過工程を実施する非常に具体的な方法が記載されている(請求項11を参照のこと)。使用されるプロセスパラメータならびに限外濾過工程と組み合わせた透析濾過工程、特に本発明において開示する一連のプロセス工程の順序は、明確には記載されていない。
【0020】
さらに、先行技術の一部の文献は、巨大分子を濃縮するためのプロセスに関する:
【0021】
例えば、WO 02/096457 A2は、非経口投与のための適切な抗体の安定な液体製剤に関する。また、治療用液体製剤を産生するために使用してもよい高濃度の治療用抗体を有する水溶液、安定な液体製剤の使用(例えば医学的使用など)、及び安定な液体製剤の産生のためのプロセスが提供されている。治療用液体製剤の調製のためのプロセスは、50mg/mlを上回る濃度の抗体を含み、第1の工程において、適切な緩衝液中の抗体溶液は、約10mg/mlから約50mg/mlの範囲の濃度に濃縮される;第2の工程において、第1の工程において得られた濃縮溶液を、場合によりMgCl及び/又はCaCl及び/又はさらなる適当な添加剤を含む少なくとも1つの酸性成分の水溶液で透析濾過する;ならびに、第3の工程において、第2の工程において得られた溶液を50mg/mlを上回る濃度にさらに濃縮する。従って、このプロセスでは一連の濃縮工程/透析濾過工程/濃縮工程を使用する。濃縮工程は、限外濾過システムを用いて実施してもよい。濁りの少ない溶液を提供するために、添加剤(例えばMgCl及び/又はCaClなど)及び/又はさらなる添加剤を含む最終製剤を調整するために、濃縮/透析濾過/濃縮/透析濾過/濃縮を含むさらなる5工程プロセスが記載されている。
【0022】
WO 2004/042012 A2において、巨大分子を濃縮するためのプロセスも提示されている。溶液成分を有する出発水溶液から巨大分子を濃縮するための方法を提供し、溶液成分は巨大分子及び有機高分子を含み、この方法は以下を含む:
(1)第1の残余分を産生するように、出発水溶液を限外濾過に供して、巨大分子を濃縮すること、
(2)有機高分子により誘導される溶液成分の沈殿が実質的に防止されて又は実質的に逆転されて第2の残余分溶液を産生するように、第1の残余分溶液の伝導率を調整すること、及び
(3)濃縮溶液が産生されるように巨大分子をさらに濃縮するために第2の残余分を限外濾過に供する。一実施形態に従い、伝導率は、そのプロセスが限外濾過(UF)/透析濾過(DF)/限外濾過(UF)工程の組み合わせとして実行できるように、水、適切な希釈剤、又は緩衝液に対する透析濾過により調整してもよい。出発材料は、巨大分子及び有機高分子(例えばPluronic F-68など)を含む。
【0023】
さらに、WO 2006/031560 A2により例示的に示されているように、限外濾過(UF)/透析濾過(DF)の組み合わせを使用して抗体を濃縮することができることが公知である。この文献において、以下を含む高濃縮抗体組成物を調製するためのプロセスが記載されている;第2の抗体調製物を提供するための第1の抗体調製物の第1の限外濾過;透析濾過された中間抗体調製物を提供するための二次抗体調製物の透析濾過;及び第3の抗体調製物を提供するための透析濾過された中間抗体調製物の第2の限外濾過;ここで、第1の限外濾過、第2の限外濾過、及び透析濾過のうちの1つ又は複数が、約30℃から約50℃で達成される。従って、限外濾過(UF)、透析濾過(DF)、及び第2の限外濾過(UF)の一連を含む、タンパク質を濃縮するためのプロセスが提案され、それにより全ての工程が高温(例えば約30℃超など)で実施され、プロセス工程の間に観察される特定温度は必須である。
【0024】
また、WO 2009/073569 A2には、水及びタンパク質を含む水性製剤、及び同を作製する方法が開示されている。本発明の水性製剤は、高タンパク質製剤でありうる、及び/又は低レベルのイオン性賦形剤から生じる低レベルの導電性を有しうる。タンパク質及び水を含む水性製剤を調製する方法も提供し、この方法は以下を含む:
a)第1の溶液中でタンパク質を提供すること;及び
b)水を用いた少なくとも5倍の容積交換が達成されるまで、透析濾過媒体として水を使用して第1の溶液を透析濾過に供し、それにより水性製剤を調製すること。
【0025】
従って、透析濾過(DF)工程の間の純水もまた、低い伝導率を伴う高濃縮タンパク質の溶液を生成するためにDF/UFの順序において使用された。本発明者らの経験に従えば、しかし、生体分子が正に荷電している場合、大きな透析濾過容量でさえ陰イオン性賦形剤を完全に除去するのに十分ではないであろう。
【0026】
従って、既に記載したように従来技術から公知である従来のUF/DFプロセスは、典型的には3つの工程を含む。この公知の3工程UF/DFプロセスを図2に例証する。2つの限外濾過UF1及びUF2ならびにこれらの両方の限外濾過工程の間の1つの透析濾過工程DF1を使用してタンパク質溶液を調整及び濃縮するためのUF/DFプロセスの略図を示す。
【0027】
図2の3つの工程は以下である:
UF1:タンパク質溶液を例えば最終目標値の3分の1から2分の1に濃縮する限外濾過;
DF:初期の賦形剤を除去するために、純水に対してその数サイクルで通常実施される透析濾過;及び
UF2:タンパク質溶液を所望の最終レベルに濃縮するための限外濾過。
【0028】
そのようなUF/DFプロセスに関して、プロセス開発者及び配合者は一般に、a)結果として得られた溶液の賦形剤プロファイルが十分に定義され、b)最終的な賦形剤プロファイルが媒体交換溶液又は透析濾過媒体のそれと一致し、及びc)限外濾過によって残留賦形剤が除去され、透析濾過によって残留物の持ち越し汚染が一緒に回避されることを想定する。
【0029】
しかし、先行技術での従来の3工程UF/DFプロセスは不十分な性能を有することが見出されている。上の仮定は、非常に低いタンパク質濃度(例、<80mg/mL)について該当しうるが、本発明者らの試験では、高タンパク質濃度を達成するために水に対する透析濾過工程を使用する公知の3工程UF/DFには、例えば4~10mMの濃度の初期緩衝イオンの残留レベルが依然として溶液中に残っているという欠点があることが示されている。しかし、産生された多くの生体分子、例えばモノクローナル抗体では、規定の賦形剤含量を伴う高濃縮製剤(例、70mg/mL又はそれ以上)が要求される。このように、公知のUF/DFプロセスは、所望とされる品質の基準を提供せず、生体分子ベース又はタンパク質ベースの製剤開発の間に永続的に増大する要求は満たされないであろう。
【0030】
さらに、先行技術において既に示され実証されているように、荷電イオンを生体分子含有溶液(例えばタンパク質含有溶液など)から除去することは簡単ではない。試験において考察されているように(例、Donnan F.G. (1911), The theory of membrane equilibrium and membrane potential in the presence of a non-dialyzable electrolyte, A contribution to physical-chemical physiology, Zeitschrift fur Elektrochemie und angewandte physikalische Chemie 17(10), 572-581; Donnan F.G. (1927), Concerning the applicability of thermodynamics to the phenomena of life, J. General Physiology 8, 685-688)、半透膜を横切る荷電イオンの非対称分布によって電位を生じる;その影響は全イオン濃度、より正確にはシステムにおけるイオン活性に依存する(Stoner M.R., Fischer N., Nixon L., Buckel S., Benke M., Austin F., Randolph T.W., & Kendrick B.S. (2004), Protein-solute interactions affect the outcome of ultrafiltration/diafiltration operations, J. Pharm. Sci. 93, 2332-2342)。低い全拡散イオン濃度の場合において、賦形剤イオンとタンパク質の間の静電相互作用の効果は比較的大きく(タンパク質-賦形剤複合体の形成さえも含む)、賦形剤イオンの除去は困難になる。要するに、膜貫通電位によって荷電緩衝成分の自由な交換が阻害される。これらのイオンを除去するための単純な分離方法は、従って成功しないと予測される。
【0031】
一定の残余分容量を用いた透析濾過が、図1Aに示すように最も一般的なアプローチである。一定のふるい係数を仮定し、異なる溶質の質量平衡を考慮することによって、小分子のクリアランスを算出するためのモデルの開発に導かれた(Van Reis R., Zydney A.L. (2013), Protein ultrafiltration, in: Flickinger MC. (ed.) Downstream industrial biotechnology: recovery and purification, 1st ed, John Wley & Sons):
c=cexp(-N・S)(1)
【0032】
式中、cは最終タンパク質濃度(g/L)、c0は初期タンパク質供給濃度(g/L)、Nは透析容量の数、及びSは小分子ふるい係数である。透析容量は、収集された全濾液又は透過液容量と一定供給容量の間の比率である(Kurnik R.T., Yu A.W., Blank G.S., Burton A.R., Smith D., Athalye A.M., Van Reis R. (1995), Buffer exchange using size exclusion chromatography, countercurrent dialysis, and tangential flow filtration: Models, development, and industrial application, Biotechnology and Bioengineering, 45 (2), 149-157)。ふるい係数は、濾液及び残余分中の溶質濃度の比率を記載する。自由溶質流の理想的な場合において、小分子の浸透は、対数目盛上での透析容量の関数として線形溶質減少を示し、ふるい係数は1に達する。式1は典型的には、小分子及び不純物を特定のレベルまで低下させるために要求される透析容量の数又はサイクル数を決定するために使用される(Harinarayan C., Skidmore K., Kao Y., Zydney A.L., Van Reis R. (2009), Small molecule clearance in ultrafiltration/diafiltration in relation to protein interactions: Study of citrate binding to a fab, Biotechnology and Bioengineering, 102 (6), 1718-1722)。しかし、この式では非平衡状態を考慮していない。
【0033】
媒体交換が新たな成分iの追加を含む場合、cを以下に従って算出する:
c=c[1-exp(-N)](2)
式中、cは、透析濾過の間に加えられた成分iのバルク濃度である。Sは1と仮定される。
【0034】
実際には、しかし、透析濾過ではしばしば、式1及び2が不純物を所与のレベルに低減するために示唆されるよりもずっと多くの透析容量交換が要求される。しかし、透析濾過サイクルの数を増加させることで処理時間が増加し、タンパク質によっては、タンパク質の安定性が損なわれ凝集物の形成が誘発されうる。
【0035】
Harinarayanら(前出)は、タンパク質-賦形剤相互作用及びタンパク質-不純物相互作用が小分子クリアランス速度に影響を及ぼしうると報告した。例えば、Raibekasら(Raibekas A.A., Bures E.J., Siska C.C., Kohno T., Latypov R.F., Kerwin B.A. (2005), Anion binding and controlled aggregation of human interleukin-1 receptor antagonist, Biochemistry, 44 (29), 9871-9879)は、ヒト組換えインターロイキン-1受容体アンタゴニスト(IL-1ra)へのピロリン酸、クエン酸、及びリン酸などの陰イオンの結合を報告した。推定解離定数はミリモルの範囲中にあり、結合の強度は陰イオンの大きさ及び1分子当たりのイオン化された基の数と相関した。これらの研究によって、結合部位は、単一のIL-1raクラスター上の特定の正荷電リジンアミノ酸として同定された(Raibekasら、前出)。他のタンパク質(カルモジュリン、乳酸デヒドロゲナーゼ、クエン酸シンターゼ、フマラーゼ、及びリンゴ酸デヒドロゲナーゼを含む)はクエン酸を結合することが公知である(Neufeld T., Eisenstein M., Muszkat K.A., & Fleminger G. (1998), A citrate-binding site in calmodulin, Journal of Molecular Recognition 11, 20-24)。そのような賦形剤-タンパク質相互作用は、相分離さえも導きうる:Esueら(Esue O., Kanai S., Liu J., Patapoff T.W., Shire S.J. (2013), Carboxylate-dependent gelation of a monoclonal antibody, Pharm. Res. 26 (2009) 2478-2485)は、モノクローナル抗体のカルボン酸依存性ゲル化を記載した。
【0036】
Shao及びZydney(Shao J, Zydney A.L. (2004a), Optimization of ultrafiltration/diafiltration processes for partially bound impurities, Biotechnology and Bioengineering, 87 (3), 286-292;Shao J., Zydney A.L., (2004b), Retention of small charged impurities during ultrafiltration, Biotechnology and Bioengineering, 87 (1), 7-13)は、不純物と高分子(タンパク質など)の間での結合相互作用によって不純物除去率がいかに有意に低下するかを示した。結果として、透析容量の数の大幅な増加が、所与のレベルの不純物除去をうるために要求される。彼らは、タンパク質-賦形剤相互作用を適応させる最適な透析濾過工程を算出するための分析的表現を提案した。彼らはまた、これらの相互作用によって、最適な透析濾過において使用することができるタンパク質濃度が低下することを指摘した。Shao及びZydneyは、供給溶液を希釈して結合反応を逆方向に駆動し、「遊離」不純物の濃度を増加させ、それによって全限外濾過/透析濾過プロセス時間を短縮することを提案した。
【0037】
そのような反発、及び式1から導き出されたモデルに基づいて、Harinarayanら(前出)は、テストした抗体フラグメント(Fab)と三価クエン酸の間に特異的な静電相互作用を見出した(相互作用はFabと一価酢酸の間では観察されなかった)(Harinarayanら、前出)。
【0038】
UF/DF工程は、特にそれが高濃縮タンパク質製剤を含む場合、タンパク質の電荷密度、ひいては静電タンパク質-賦形剤相互作用を増加させることも留意すべきである。これらは、大きな荷電分子が膜の片側に集まり、膜を横切って電荷勾配を作るドナン効果に関連する(例、Donnan F.G., (1927), Concerning the applicability of thermodymaics to the phenomena of life, J. General Physiology 8, 685-688; Donnan F.G. (1930), Theorie der Gleichgewichtsionenverteilung bei einem Gelsystem mit veranderlicher Mizellenverteilung, Kolloid-Zeitschrift 51, 24-27)。ドナン効果はこのように、非透析性電解質の膜平衡及び膜電位において特に顕著な役割を果たす(Brezesinski G., Mogel H.S., Grenzflachen und Kolloide, (1993), Physikalisch-chemische Grundlagen, Spekrum Akademischer Verlag Heidelberg, Berlin, Oxford)。
【0039】
種々の研究者が、タンパク質溶液(例、モノクローナル抗体)中の賦形剤及びpHの変化をより良く予測するために、ドナン効果を組み入れた理論モデルを開発することを試みてきた(例、Van Reis R., Goodrich E.M., Yson C.L., Frautschy L.N., Whiteley R., Zydney A.L., (1997), Constant C(wall) ultrafiltration process control, Journal of Membrane Science, 130 (1-2), 123-140)。しかし、今日まで、これらの努力は、特に生体分子及び除去すべき賦形剤が反対の電荷を有する場合、完全には成功していない。
【0040】
高濃縮生体分子調製物を産生するために、既に言及したように、先行技術において、限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程における純水が使用されてきたか、又はタンパク質溶媒和に影響を及ぼすためにグリシン又はポリエチレングリコールなどの賦形剤が加えられてきた。しかし、従来の手順-生体分子含有溶液(例えばタンパク質溶液など)から全ての賦形剤を洗い流すための純水を用いた透析濾過、それに続く生体分子溶液を濃縮するための限外濾過工程は、明確に定義された製剤を常に導くわけではない。一部の賦形剤成分は持ち越される。
【0041】
例えば、テストを実施し、コハク酸/塩化ナトリウムを伴う~10mg/mLタンパク質の溶液は、純水に対して20までの透析濾過サイクル及び10倍から14倍の濃度のタンパク質を伴う従来のUF/DF後でさせ測定可能な残留賦形剤を保持する。25mMコハク酸、pH6から開始し、このプロセスは、最終的な~100mg/mLタンパク質濃度において~4~5mMコハク酸の持ち越し汚染に導く。別のテストは、pH5.5の25mM酢酸緩衝液の出発溶液で始めた;純水及び10倍のタンパク質濃度に対して15の透析濾過サイクル後、最終産物は依然として10mMまでの酢酸を含んだ。
【0042】
このように、2つの簡単に記載したテストについては、初期の緩衝剤賦形剤を完全に除去することは不可能であった。先行技術(Steele and Arias (2014) Accounting for the Donnan Effect in Diafiltration Optimization for High-Concentration UFDF Applications, International BioProcess 12(1), January 2014, 50-54を参照のこと)において、99.9955%までの特定の未開示賦形剤を除去するために40までの透析容量が使用された。これは実用的かつ経済的な観点から合理的な手順ではない。
【0043】
持ち越し汚染の程度は、例えば、初期生体分子溶液のpH、生体分子-賦形剤相互作用、及び透析濾過容量の数の両方に依存する。純水を用いた透析濾過では、多数のサイクル(およそ20~25)を用いても、コハク酸及び酢酸のような陰イオン性賦形剤の持ち越し汚染を排除することができなかった。実際には、賦形剤を除去するために必要な透析容量の交換の数は、上記の式1(透析濾過の小分子の除去を算出するための数学的モデル)から算出される数を実質的に超えた。さらに、透析濾過サイクルを増加させると、タンパク質の完全性に負の影響を有することがあり、処理時間が増加することに留意しなければならない。
【0044】
従って、本発明の目的は、先行技術の欠点を克服し、医薬的又は非医薬的使用について意図した、生体分子、特にタンパク質を含む、十分に定義された高濃縮製剤の調製を可能にする改善された方法を提供することである。
【0045】
本発明のさらなる目的は、先行技術のプロセスと比較してより容易で速く精製されうるプロセスを用いて、より純粋な液体生体分子製剤産物を提供することであり、それにより賦形剤、特に陰イオン性賦形剤の持ち越し汚染の程度は低下する、又はさらには最小化する。
【0046】
本発明のさらなる目的は、賦形剤を除去するために必要な透析容量の交換の数が、生体分子の安定性を損なわず、凝集体形成を誘発しないように、合理的な範囲中にあるプロセスを提供することである。
【0047】
本発明のさらなる目的は、大規模でも実現可能であり、合理的なコストで所望の品質基準及び操作効率を提供するプロセスを提供することである。
【0048】
発明の要約
驚くべきことに、二次透析濾過(DF2)を用いる前に追加の透析濾過工程DF1を、所定の高いイオン強度で液体媒体を用いて実施すると、先行技術から公知である欠点を克服することができ、特に持ち越し汚染の問題を有意に低下しうる又は完全に回避することが見出された。
【0049】
従って、上記の欠点を克服するために、二重の限外濾過及び透析濾過UF/DFの改善及び改変されたプロセスを提供する。生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のための本発明のプロセスは、以下の工程を含む:
(a)第1の限外濾過UF1;
(b)第1の透析濾過DF1;
(c)第2の透析濾過DF2;及び
(d)第2の限外濾過UF2;
それにおいて、液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、液体媒体Cとして水あるいは1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し、それにおいて、工程(b)について使用される1つ又は複数の塩は、工程(c)について使用される1つ又は複数の塩と同じか又は異なり、それにおいて、液体媒体Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する。
【0050】
本発明の枠における表現「生体分子を含む高濃縮液体製剤」は、生体分子が液体製剤中に70mg/ml又はそれ以上、あるいは80mg/ml又はそれ以上、あるいは85mg/ml又はそれ以上の濃度で存在するという意味で理解するものとする。
【0051】
本発明のプロセスによって、出発液体生体分子製剤中に存在する望ましくない賦形剤のレベルが一貫して、好ましくは検出限界未満に低下し、含まれる生体分子の安定な液体製剤をもたらすことが見出された。生体分子がタンパク質であるように選択された場合、プロセスによって、タンパク質の固有電荷の平衡を保ち、タンパク質が自己緩衝するのを可能にするのに十分な交換媒体対イオンだけを伴う溶液がもたらされた。生体分子の完全性及び生体分子の質は一般的に許容可能である、又は完全に不変であることが見出されている。
【0052】
さらに、出発液体生体分子製剤中に存在する任意の種類の不要な賦形剤が、溶液条件(例えば正に荷電した賦形剤、負に荷電した賦形剤、及び中性の賦形剤など)下で実施される本発明のプロセスを用いて除去することができることは完全に予想外であった。
【0053】
本発明に従ったプロセスのさらなる利点は、それがタンパク質に及ぼされる物理的ストレスに関して非常に穏やかであるという事実にある。これは、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量から結論付けることができる。
【0054】
発明の詳細な説明
本明細書において具体的に定義されていない用語は、本開示及び文脈に照らして、当業者によりそれらに与えられうる意味を与えるべきである。
【0055】
例えば、本発明に従った表現「液体製剤」、「溶液」、「可溶性」、及び「溶解」又は「溶けた」は、それらの最も広い意味において理解すべきであり、液体媒体中の固体又は液体の任意の種類の混合物(特記しない限り、真の溶液、分散液、及び懸濁液など)を含む。
【0056】
表現「高濃縮」は、液体生体分子製剤が、出発濃度よりも高い濃度、好ましくは以前よりも有意に高い濃度で提供されるという意味で理解すべきである。提供される濃度の正確な増加は、各々の単一の場合から、選ばれた生体分子及び媒体、ならびに使用される限外濾過及び透析濾過装置の条件及びパラメーターに依存する。
【0057】
本明細書において使用するように、表現「限外濾過」又は「UF」及び類似の用語は、生体分子よりも小さい溶媒及び溶質分子が通過することを可能にしながら、液体製剤が、生体分子、例えばタンパク質を保持する半透膜に供される任意の技術を指す。本発明において、限外濾過は、液体製剤中の生体分子、例えばタンパク質の濃度を増加させるために使用する。
【0058】
本明細書において使用するように、表現「透析濾過」又は「DF」及び類似の用語は、例えば、タンパク質、ペプチド、核酸、又は他の生体分子を含む液体製剤から塩又は溶媒を除去する、置換する、又はその濃度を低下させるための半透過性濾過膜の使用を指す。DFには2つの形式があり、不連続モードのDF及び連続モードのDFを含む。本発明のプロセスは、いずれの態様に従って実施してもよい。
【0059】
本明細書において使用するように、用語「透析濾過工程」は、透析濾過のプロセスの間での全容量交換(可能な限り)を指す。
【0060】
本明細書において使用するように、用語「透析濾過/限外濾過」又は「DF/UF」は、限外濾過及び/又は透析濾過を用いる任意のプロセス、技術、又は技術の組み合わせを指す。本発明において、限外濾過及び透析濾過を連続的に使用する。
【0061】
用語「賦形剤」又は「賦形剤」又は「賦形剤」は、本発明において、生体分子自体及び使用される溶媒以外の、液体生体分子製剤中に存在する1つ又は複数の物質又は化合物(例えば補助剤、イオン、フラグメント、又は任意の種類の種など)を指す。出発生体分子製剤中に存在する賦形剤は、本発明のプロセスに従って可能な限り低下又は除去されるべき賦形剤である。これらの賦形剤は、水溶液中で荷電していてもよく、又は中性でもよい。出発液体生体分子製剤から除去されるべきこれらの賦形剤は、本明細書において「第1の賦形剤」又は「出発賦形剤」としても言及する。出発液体生体分子製剤中に存在するこれらの第1又は出発賦形剤は、十分に定義された液体生体分子製剤をうるために、液体生体分子製剤からより簡単に除去可能である、より良い適合性を提供する、又は他の理由からより許容可能である他の(第2)賦形剤と交換される。第2の賦形剤は工程(b)において使用される。工程(c)において使用される第3の賦形剤も場合により使用してもよい。完全を期すために、第4の賦形剤、即ち、本発明に従ったプロセスの完了後に加えてもよい賦形剤も場合により使用してもよい。用語「賦形剤」が単数形で使用されていても、それは、文脈が許すように1つ又は複数の賦形剤を常に含む。
【0062】
用語「イオン性賦形剤」は、水溶液中で正味電荷を有するイオンを指す。イオン性賦形剤の例は、無機塩及び/又は有機塩から由来する陰イオン(例、無機及び/又は有機緩衝塩)又は陰イオンもしくは陽イオン(例、界面活性剤に由来する)を含むが、それらに限定しない。イオン性賦形剤は、存在する生体分子と相互作用してもしなくてもよい。
【0063】
表現「塩」は、酸及び塩基の中和から生じるイオン性化合物を指す。塩は、正に荷電したイオン、即ち陽イオン、及び負に荷電したイオン、即ち陰イオンで構成される。これらのイオンは無機又は有機でありうる。「有機塩」は従って、陽イオン及び/又は陰イオンが有機化合物である化合物である。使用される酸及び塩基が医薬的に許容可能である場合において、それらの塩も医薬的に許容可能である。
【0064】
用語「水」は、使用されうる任意の型の水を意味することを意図する。精製水が好ましいであろうが、しかし、一部の実施形態に従い、水道水も使用してもよい。選択される水の型は、得られた液体生体分子製剤の意図される使用に依存する。本発明に従って使用される精製水は、精製プロセス(例えば蒸留、逆浸透、炭素濾過、容量性又は電気脱イオン化、精密濾過又は限外濾過、紫外線酸化など)を経て、使用のために適切であるように不純物を除去した水である。これらのプロセスの組み合わせを、そのような高純度の水(超純水、その微量汚染物質が10億分の1(ppb)又は1兆分の1(ppt)の単位で測定される)を達成するために使用してもよい。好ましい実施形態において、本発明のプロセスにおいて使用される水は、超純水、例えばASTM D1193又はISO 3696に従った1型の超純水である。別の実施形態に従い、使用される水は、被験者への投与のために適切な滅菌水、例えば注射用水(WFI)などでありうる。また、蒸留水、再蒸留水、又は脱イオン水を使用してもよい。
【0065】
本発明を通して使用する用語「交換」は、その最も広い意味において理解しなければならず、それは通常、他の賦形剤を含む別の液体媒体に対する賦形剤を含む1つの液体媒体の完全な交換を表さない。それはむしろ溶媒及び/又は賦形剤の洗い流し又は希釈である。このように、例えば、水中の賦形剤コハク酸を洗い流し、水中の賦形剤酢酸と置換する(例、工程(b)において)。交換の種々の他の例が存在する。
【0066】
本発明に従った「安定な」製剤は、その中に含まれる生体分子、好ましくはタンパク質が、その物理的安定性及び/又は化学的安定性及び/又は生物学的活性を保存時に本質的に保持するものである。
【0067】
表現「約」又は「およそ」は、所与の値又は範囲の20%以内、好ましくは10%以内、より好ましくは5%以内を意味する。
【0068】
さらに、明確に言及された化学種及び生物種は、具体的に記載された種に限定されると理解すべきではないが、しかし、当業者は、本発明の保護範囲内にあるべき、同様又は同等の効果、反応又は性能を有する等価の物質及び化合物を知っている。
【0069】
以下において、本発明に従った複数工程のプロセスを記載する。各々の個々の工程についての最適なプロセス条件及びパラメーターは、用いられる特定の生体分子、賦形剤、媒体、及びフィルターシステムに依存して変動しうる。他に特定しない限り、各々のプロセス工程のプロセス条件及びパラメーターは、当業者により容易に選択されうる。例示的な手順を実施例のセクションに提供する。
【0070】
本発明に従い、改善されたプロセスが、明確に定義された生体分子製剤を調製するための開発されており、それにおいて、最終産物は、高濃縮生体分子製剤(生体分子+溶媒)及び場合により、例えば使用される生体分子の観点から、又は他の理由(例、イオン、例えば生体分子の対イオンなどが存在しうる、又はしなくてはならない)から必要である特定量の賦形剤からなる又は本質的になる。本質的には、一連の工程(a)-工程(b)-工程(c)-工程(d)の順番において二重の限外濾過/透析濾過又は限外濾過UF1/透析濾過DF1/透析濾過DF2/限外濾過UF2を提供する。第2の限外濾過(UF2)に先立ち、初期濃縮限外濾過(UF1)及び水又は低イオン強度溶液(DF2)に対する別の透析濾過(DF2)の間に高イオン強度溶液(DF1)対する透析濾過を加えるプロセスである。
【0071】
図3を参照し、2つの限外濾過及び2つの透析濾過の工程を使用して液体生体分子製剤を調整及び濃縮するための本発明に従ったUF/DFプロセスの例示的な一実施形態の略図を示す。図3において、レジェンドは以下の通りである:
P1:初期生体分子濃度;
P2:第1の限外濾過工程UF1後の生体分子濃度;
P3:第2の限外濾過工程UF2後の生体分子濃度。
【0072】
工程(a)の第1の限外濾過工程UF1の最初に及びそれに先立ち、液体生体分子製剤を市場の製造業者から市販の産物として提供するか、又はそれを先行技術において公知である標準手順に基づいて調製する。初期状態において、生体分子は溶媒又は溶媒の混合物中に含まれ、濃度cP1において存在する。本発明の枠組みにおいて、用語「生体分子」は、単数形で使用されていても、それ自体が1つ又は複数の生体分子を含むべきである。
【0073】
含まれる生体分子以外に、出発液体製剤は、多数の賦形剤(以下、出発賦形剤又は第1の賦形剤として言及する)を含み、それらは一般的に賦形剤XYZとして示してもよい。出発液体生体分子製剤中に含まれる溶媒及び賦形剤は、本明細書中の以下において液体媒体Aとして示す。
【0074】
存在する(出発又は第1の)賦形剤XYZは、例えば、出発液体製剤中の生体分子を安定化、可溶化、及び/又は製剤化するために使用される補助剤である。しかし、これらの賦形剤は、得られる最終液体製剤中で低レベルまで低下させるか、又は可能な限り除去しなければならない。なぜなら、これらの賦形剤は、例えばさらなる処理において、液体生体分子製剤の性能、性質、及び挙動に負の影響を及ぼしうるためである。存在する賦形剤XYZは、正確に定義されていないであろう製剤をもたらし、これは全く望ましくない。
【0075】
出発賦形剤は、存在する溶媒中に溶解又は分散している液体製剤中に存在する任意の形態(例えば固体、複合体、イオンなど)でありうる。本明細書において、賦形剤は、上に定義するような溶液中に任意の形態で存在する賦形剤だけを意味すると理解されることは当然である。なぜなら、溶解されていない、沈殿した賦形剤が液体製剤から簡単に分離される可能性があるためである。賦形剤XYZは本発明のプロセスにより除去されるべきであり、生体分子は、潜在的な生体分子ストレスを回避するために全プロセスの間に溶液中に維持される。
【0076】
これらの出発又は第1の賦形剤は本発明に従って限定されず、それらは水溶液中で荷電している又は中性である、当技術分野において公知の任意の種類の賦形剤でありうる。賦形剤は、例えば、製造、保存、生体分子の前処理、又は生体分子自体もしくは使用される溶媒の特性に関連付けられるいくつかの理由、あるいは他の理由により、出発液体生体分子製剤中に存在してもよい。
【0077】
可能な限り低下又は除去されるべき賦形剤は、水溶液中で荷電している又は中性である出発賦形剤、例えば生体分子の調製又は処理において使用される添加剤;不要な物質又は化合物、例えば出発液体生体分子製剤中に含まれる不純物など;生体分子の製造プロセスの間に形成される望ましくない副産物;生体分子の産生の間に形成される出発、中間、又は生体分子の最終産物の分解又は分解産物である。
【0078】
例えば、賦形剤は、細胞成分又は破片、細菌の分解産物、例えば内毒素、DNA、RNA、望ましくない脂質、HCP(宿主細胞タンパク質)、リポ多糖(LPS)、又はそれらの部分など;糖;界面活性剤、例えば正に荷電した、負に荷電した、及びまた非イオン性の種など;好ましくは有機塩及び/又は無機塩、例えば有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩など、ならびに界面活性剤から生じる任意の種類の負又は正に荷電したイオンなどでありうる。
【0079】
荷電賦形剤は、例えば、水性溶媒中に溶解した有機塩及び/又は無機塩から生じる荷電イオン、例えば陰イオン又は陽イオン、好ましくは陰イオンでありうる。荷電賦形剤は、有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩から由来しうる。例えば、生体分子を安定化するために使用される緩衝系から生じるイオン(出発イオン又は第1のイオン)は、他のイオン(第2のイオン)と置換してもよい。
【0080】
従って、除去される出発賦形剤は、液体製剤の不純物として理解されうる。不純物は通常少量で存在するが、しかし、本発明に従った不純物は大量に存在しうる(例えば、緩衝系の陰イオン)。従って、これらの不純物は、本明細書においてより正確には賦形剤(出発又は第1の賦形剤)として言及する。
【0081】
好ましい実施形態に従い、生体分子と出発賦形剤は反対の荷電を有する。例えば、生体分子は、タンパク質の場合のように正に荷電していてもよく、プロセスにより除去されるべき賦形剤は負に荷電した賦形剤(例えば陰イオンなど)である。この場合において低下又は除去されうる賦形剤は、例えば、緩衝賦形剤(例えばクエン酸、コハク酸、酢酸、及びリン酸など)でありうる。
【0082】
従って、本発明の焦点は、液体生体分子製剤(例えば液体タンパク質製剤など)から有機イオン(例えば一価又は多価負イオンなど)を分離することに特に向けられうるが、多価金属イオンには向けられない。
【0083】
本発明に従って使用される生体分子は全く限定せず、当業者により公知の任意の生体分子を使用してもよい。生体分子は、巨大分子(例えばタンパク質、炭水化物、脂質、及び核酸など)、ならびに小分子(例えば一次代謝物、二次代謝物、及び天然産物など)を含む、生物において存在する任意の有機物質である。大半の生体分子は、本質的に、炭素、水素、酸素、窒素、ならびに場合によりリン及び硫黄の元素からなる。他の元素も少量だけ存在しうる。生体分子は、小分子、単量体、巨大分子などより選択してもよい。例示的な小分子は、脂質(例えばリン脂質、糖脂質、ステロールなど);ビタミン;ホルモン;神経伝達物質である。言及されうる単量体は、アミノ酸、ヌクレオチド、単糖類などであるが、それらに限定しない。巨大分子又はいわゆる生体高分子は、本発明に従って使用してもよく、例えば、タンパク質又はペプチド(例えばオリゴペプチドなど);核酸(例えばDNA、RNAなど);オリゴ糖、多糖(例えばグリコーゲン、デンプン、キチン、セルロース、フルクタン、デキストランなど)である。特に好ましい生体分子は生体高分子であり、特にタンパク質又はペプチド(例、オリゴペプチド、核酸、オリゴ糖、及び多糖)より選択する。最も好ましいのはタンパク質又はペプチドである。
【0084】
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は互換的に使用する。これらの用語は任意の長さのアミノ酸の高分子を指す。これらの用語はまた、限定しないが、グリコシル化、グリケーション、アセチル化、リン酸化、酸化、アミド化、又はタンパク質プロセシングを含む反応を通して翻訳後修飾されるタンパク質も含む。修飾及び変化、例えば、他のタンパク質への融合、アミノ酸配列の置換、欠失、又は挿入は、分子がその生物学的機能活性を維持しながらポリペプチドの構造において作製することができる。例えば、特定のアミノ酸配列の置換は、ポリペプチド又はその基礎となる核酸コード配列において作製することができ、タンパク質は、類似の又は改変された特性を伴って得ることができる。アミノ酸修飾は、例えば、その基礎となる核酸配列に対して部位特異的変異誘発又はポリメラーゼ連鎖反応媒介性変異誘発を実施することにより調製することができる。
【0085】
用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」はこのように、例えば、免疫グロブリン成分(例、Fc成分)及び成長因子(例、インターロイキン)からなる融合タンパク質、抗体又は任意の抗体由来の分子フォーマットもしくは抗体フラグメントを含む。
【0086】
従って、用語「タンパク質」又は「ポリペプチド」は、タンパク質、ポリペプチド、それらのフラグメント、ペプチド、融合タンパク質を含み、それらの全てを、選択された宿主細胞において発現させることができる。典型的には、タンパク質は組換えタンパク質、即ち、分子クローニングから生じる組換えDNAによりコードされるタンパク質である。そのようなタンパク質は、抗体、酵素、サイトカイン、リンホカイン、接着分子、受容体、及びそれらの誘導体もしくはフラグメント、ならびにアゴニストもしくはアンタゴニストとして役立つことができる及び/又は治療的もしくは診断的使用を有する又は研究試薬として使用することができる任意の他のポリペプチドでありうる。好ましくは、タンパク質は分泌タンパク質もしくはタンパク質フラグメント、より好ましくは抗体もしくは抗体フラグメント又はFc融合タンパク質である。それはまた、アンチセンスRNA、tRNA、rRNA、リボタンパク質の一部である他のRNA、又は他の調節RNAでありうる。
【0087】
本明細書において使用する用語「抗体」、「抗体」、又は「免疫グロブリン」は、グロブリンの間から選択されるタンパク質に関し、それは、分化したBリンパ球(形質細胞)からの外来物質(=抗原)への宿主生物の反応として形成される。それらはこれらの外来物質に対して特異的に防御するのに役立つ。種々のクラスの免疫グロブリンがある:IgA、IgD、IgE、IgG、IgM、IgY、IgW。好ましくは、抗体はIgG抗体、より好ましくはIgG1抗体である。用語「免疫グロブリン」及び「抗体」は互換的に使用する。抗体は、ポリクローナル、モノクローナル、単一特異性、二重特異性、多特異性、一本鎖抗体、抗体の抗原結合フラグメント(例、Fab又はF(ab’)2フラグメント)、ジスルフィド結合Fvなどを含む。抗体は、任意の種でありうるが、キメラ抗体及びヒト化抗体を含む。
【0088】
「キメラ」抗体は、抗体ドメイン又は領域が異なる種から由来する分子である。例えば、重鎖及び軽鎖の可変領域はラット又はマウスの抗体から由来し、定常領域はヒトの抗体に由来することができる。「ヒト化」抗体において、最小限の配列だけが非ヒト種から由来する。しばしば、ヒト抗体のCDRアミノ酸残基だけが、非ヒト種(例えばマウス、ラット、ウサギ、又はラマなど)のCDRアミノ酸残基を用いて置換されている。抗原結合特異性及び親和性に対する影響を伴う少数の重要なフレームワークアミノ酸残基もまた、非ヒトアミノ酸残基を用いて置換されている。抗体は、化学合成を通じて、組換え手段又はトランスジェニック手段を介して、細胞(例、ハイブリドーマ)培養を介して、又は他の手段により産生してもよい。
【0089】
免疫グロブリンは、各々が重鎖及び軽鎖により形成された2対のヘテロ二量体で構成される四量体ポリペプチドである。ヘテロ二量体ならびに四量体ポリペプチド構造の両方の安定化は、鎖間ジスルフィド架橋を介して生じる。各々の鎖は、「免疫グロブリンドメイン」又は「免疫グロブリン領域」と呼ばれる構造ドメインで構成され、それにより用語「ドメイン」又は「領域」を互換的に使用する。各々のドメインは約70~110のアミノ酸を含み、コンパクトな三次元構造を形成する。重鎖及び軽鎖は両方が、それらのN末端に、抗原認識及び結合を担う、あまり保存されていない配列を伴う「可変ドメイン」又は「可変領域」を含む。軽鎖の可変領域は「VL」として、及び重鎖の可変領域は「VH」としても言及する。
【0090】
用語「Fabフラグメント」(フラグメント抗原結合=Fab)又は「Fab」は、隣接する定常領域(CH1及びCH2)により一緒に保持されている抗体重鎖及び軽鎖(VH及びVL)の両方の可変領域からなる。これらはプロテアーゼ消化(例、パパインを用いる)により従来の抗体から形成されうるが、しかし、同様のFabフラグメントがまた、遺伝子工学によりその間に生成されうる。さらなる抗体フラグメントは「F(ab’)2フラグメント」又は「F(ab’)2」を含み、それらは、ペプシンを用いたタンパク質分解的切断により、又は遺伝子工学により(それにおいて、抗体の両方のFabアームが、ヒンジ領域内に位置付けられる重鎖内ジスルフィド架橋を介して依然として連結されている)調製されうる。
【0091】
抗体重鎖のCH2ドメイン及びCH3ドメインで構成される免疫グロブリンフラグメントは、それらの結晶化傾向のために、「Fcフラグメント」、「Fc領域」、又は「Fc」と呼ばれる(Fc=結晶化可能なフラグメント)。これらはプロテアーゼ消化(例、パパイン又はペプシンを用いる)により従来の抗体から形成されうるが、しかし、遺伝子工学により産生することもできる。FcフラグメントのN末端部分は、ヒンジ領域のアミノ酸が依然としていくつ存在するかに依存して変動しうる。
【0092】
用語「Fc融合タンパク質」は、免疫グロブリンの天然又は改変(例、置換、欠失、挿入)Fc領域を融合パートナーとして含むポリペプチドを記載する。Fc融合タンパク質は、天然に生じるタンパク質(例、抗体)又は遺伝子操作された組換えタンパク質(例、TNF受容体-Fc融合タンパク質又はFc領域に融合されたVH領域)のいずれかでありうる。Fc融合タンパク質は、単量体として又は多量体として存在することができ、それによりポリペプチドは同一又は異なる配列を有することができ、2つの融合パートナーの間にリンカー配列を含みうる、及び/又はヒンジ領域もしくは改変ヒンジ領域の部分がCH2ドメインに直接融合される。
【0093】
遺伝子工学的方法を使用し、重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域だけからなる短縮された抗体フラグメントを産生することが可能である。これらは「Fvフラグメント」(フラグメント可変=可変部分のフラグメント)又は「Fv」として言及する。これらのFvフラグメントは定常鎖のシステインによる2つの鎖の共有結合を欠くため、Fvフラグメントはしばしば安定化される。短いペプチドフラグメント(例、10~30アミノ酸、好ましくは15アミノ酸)により重鎖及び軽鎖の可変領域を連結することが有利である。このようにして、ペプチドリンカーにより連結された、VH及びVLからなる一本鎖ペプチド鎖が得られる。この種類の抗体タンパク質は「一本鎖Fv」又は「scFv」として公知である。この種類のscFv抗体タンパク質の例は先行技術から公知である。また、1を上回るVH及び/又はVL領域を一緒に連結することができる。
【0094】
近年、種々の戦略がscFvを多量体誘導体として調製するために開発されてきた。これは、特に、改善された薬物動態学的特性及び体内分布特性、ならびに増加した結合活性を伴う組換え抗体に導くことを意図している。scFvの多量体化を達成するために、scFvを多量体化ドメインとの融合タンパク質として調製した。多量体化ドメインは、例えば、IgGのCH3領域又はコイルドコイル構造(らせん構造)、例えばロイシンジッパードメインなどでありうる。しかし、scFvのVH/VL領域間の相互作用を多量体化(例、ジアボディ、トリボディ、及びペンタボディ)に使用する戦略もある。ダイアボディにより、当業者は二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。scFv分子中のリンカーを5~10アミノ酸に短縮することによって、鎖内VH/VL重なり合いが起こるホモ二量体の形成に導く。ダイアボディは、加えて、ジスルフィド架橋の組み入れにより安定化されうる。ダイアボディ-抗体タンパク質の例は先行技術から公知である。
【0095】
ミニボディにより、当業者は、二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。それは、免疫グロブリンのCH3領域、好ましくはIgG、最も好ましくはIgG1を、ヒンジ領域(例、またIgG1から)及びリンカー領域を介してscFvに連結されている二量体化領域として含む融合タンパク質からなる。ミニボディ抗体タンパク質の例は先行技術から公知である。
【0096】
トリアボディにより、当業者は、三価のホモ三量体scFv誘導体を意味する。VH-VLがリンカー配列を伴わずに直接融合しているScFv誘導体は、三量体の形成に導く。
【0097】
当業者はまた、二価、三価、又は四価の構造を有し、scFvから由来するいわゆるミニ抗体にも精通しているであろう。多量体化は、二量体、三量体、又は四量体コイルドコイル構造により行われる。
【0098】
単一ドメイン抗体としても公知であるナノボディは、単一の単量体可変抗体ドメインからなる抗体フラグメントである。全抗体と同様に、それは特定の抗原に選択的に結合することができる。ナノボディは約12~15kDaの分子量を有し、従って、2つの重鎖タンパク質鎖及び2つの軽鎖で構成される、150~160kDaの範囲の分子量を有する一般の抗体よりもずっと小さい。それらはまた、Fabフラグメント(約50kDa)及び単鎖可変フラグメント(約25kDa)よりも小さい。
【0099】
用語「抗体由来分子」は、「抗体由来フラグメント」又は「抗体フラグメント」と互換的に使用し、1つ又は複数の抗体ドメインもしくは領域の一部だけ又は/又は完全なドメインもしくは領域を含むポリペプチドを指す。抗体フラグメントは、a)それ自身で分子を形成している、b)異なる組合せで互いに連結される、c)非抗体配列に融合される、d)非ポリペプチドに融合又は連結される(例、放射性ヌクレオチド)、又はd)上の任意の組み合わせでありうる。これらのポリペプチドは、単量体として又は多量体として存在することができ、それによりポリペプチドは同一の又は異なる配列を有することができる。
【0100】
しかし、生体分子としてそれ自体を使用すべきタンパク質は、製薬部門及びバイオテクノロジー部門における使用に限定すべきではなく、任意の型の適用分野における任意の種類のタンパク質を使用することができる。タンパク質はまた、種々の非製薬適用において、例えば、食品産業、動物飼料産業、繊維産業、化学技術産業、界面活性剤産業、及び他の部門において使用されることも公知である。
【0101】
好ましいタンパク質は、治療用タンパク質、非治療用タンパク質、抗体、抗原結合フラグメント又はナノボディ、特にモノクローナル抗体及び関連化合物又はギ酸である。
【0102】
本発明のプロセスは、生体分子が正に荷電しており、このプロセスにより除去される賦形剤(出発又は第1の賦形剤)が負に荷電している賦形剤である場合、特に有利な様式で用いられうる。
【0103】
提供された液体生体分子製剤から出発して、工程(a)~工程(d)を実施する。出発液体生体分子製剤の特定の組成によって、いずれの賦形剤がプロセスにより交換又は除去されるべきかが決定されるであろう。
【0104】
工程(a)において、第1の限外濾過(UF1)を実施し、それにより生体分子含有液体製剤を濃縮し、生体分子のcP2までの濃度に達する。すなわち、工程(a)の限外濾過UF1は、液体生体分子製剤を、液体生体分子製剤の初期濃度と比較し、好ましくは約10%~70%、又はより好ましくは約15%~60%、又は最も好ましくは約25%~50%まで濃縮するために使用する。この種類の濃縮は、次のDF工程のための全体のプロセス容量を低下させるという利点を有し、これもまたプロセス時間の低下に導く。
【0105】
限外濾過ならびにそれに続く透析濾過では、透過性(多孔質)膜フィルターを選択的に利用し、それらの分子サイズに基づいて液体配合物の成分を分離する。それ自体、膜は膜の孔よりも大きい生体分子を保持し、より小さい分子(例えば塩、イオン、溶媒、例えば水など)は透過性であり、自由に膜を通過する。膜を選択するための1つのパラメーターはその保持特性である。原則として、膜の分子量カットオフ(MWCO)は、保持される生体分子の分子量の1/3~1/6であるべきである。除去される賦形剤は、生体分子よりも低い又はさらに有意に低い分子量を有し、生体分子は保持され、賦形剤は保持されないことは当然である。
【0106】
濃縮工程(a)に続いて、及びその間に任意の中間工程を伴わない特に好ましいものとして、本発明のさらなる工程(b)及び(c)を実施する。従って、工程(a)において使用される液体生体分子製剤は、溶媒及び出発又は第1の賦形剤で構成される液体媒体Aを含み、それにより媒体Aは工程(b)において媒体Bと交換され、媒体Bは工程(c)において媒体Cと交換され、それにより液体媒体C(及び恐らくは少量の液体媒体B及びC)を主に含む液体生体分子製剤が結果として得られ、それは低下含量の(好ましくは検出レベルより低い)出発賦形剤を有する。
【0107】
このように、媒体Aは溶媒及び望ましくない出発又は第1の賦形剤を含む又はそれらからなり、それらは交換/置換されることが計画されており、それにより媒体Aは、液体媒体Cに対して液体媒体Bにより交換される。液体媒体Bは溶媒及び第2の賦形剤を含む又はそれらからなり、媒体Cは溶媒及び第3の賦形剤、好ましくは溶媒だけを含む又はそれらからなる。
【0108】
第2の賦形剤及び任意の第3の賦形剤は同じでも互いに異なっていてもよい;両方とも、除去されるべき第1の賦形剤とは異なるか又は少なくとも部分的に異なる。「少なくとも部分的に異なる」は、例えば、1つ又は複数の第1の賦形剤は1つ又は複数の第2の賦形剤と同じであってもよいとの意味で理解しなければならない。例えば、塩化ナトリウムは第1の賦形剤として、また第2の賦形剤として存在してもよい。これによって、実施されるプロセスが妨げられることはない。しかし、第2の賦形剤による第1の賦形剤の実際の交換をもたらすために、第1の賦形剤と第2の賦形剤の間には常に違いがある。実際に、賦形剤の型は特に重要ではない。なぜなら、荷電又は中性を問わず、任意の型の賦形剤が除去されうるからである。実際に、本発明は、強い生体分子-賦形剤の相互作用が存在するにもかかわらず、任意の型の賦形剤を除去する可能性を提供する。例証により、例示的な単純化された実施態様において、第1の賦形剤は、第2の賦形剤(例えばコハク酸緩衝塩など)と交換される酢酸緩衝塩であり、第2の賦形剤は、例えば第3の賦形剤(例、塩化物)と交換される。そのような実施形態は、2つの型の陰イオン、即ち、コハク酸/塩化物を同時に最終産物中に有することが許容される場合に可能である。1つの特定の賦形剤だけが最終産物(高濃縮液体生体分子製剤)中に存在しなければならない場合、液体媒体Cは水からなる又は本質的になる。しかし、逆の又は他の順番も可能である:第1の賦形剤はコハク酸であってもよく、それは第2の賦形剤としての酢酸などで置換される。
【0109】
「第2の賦形剤」及び「第3の賦形剤」は、本明細書において「塩」と互換的に使用するが、「出発又は第1の賦形剤」及びまた「第4の賦形剤」(得られた最終的な液体生体分子製剤に加えられうる)は塩だけでなく、本明細書において記載する他の物質又は化合物、例えば、任意の種類の適切な補助剤(例えば界面活性剤、界面活性物質、糖など)でもありうる。
【0110】
このように、出発液体生体分子製剤中に存在する出発又は第1の賦形剤は、存在することが望ましく、本発明に従ったプロセスにより除去されるべき賦形剤である。この低下レベルの出発又は第1の賦形剤を達成するために、工程(b)において使用される液体媒体Bは、工程(c)において使用される液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する。
【0111】
媒体B及びCは、生体分子に関連して使用してもよい任意の液体媒体から選択してもよく、それによって液体製剤中で生体分子を維持することができうる、及び使用される生体分子の特性に負の影響を及ぼさない。使用される液体媒体B及びC(及びA)は、それに含まれる生体分子を決して変換又は改変してはならないことは当然である。許容されうる唯一の相互作用は、液体媒体に含まれるイオンと、それを安定化させるための生体分子とのイオン相互作用である。これは、生体分子と液体媒体が反対の電荷を有する場合である。例えば、生体分子は正に荷電した生体分子(例えばタンパク質など)であり、液体媒体の陰イオンはタンパク質と相互作用して溶液中でそれを安定化させる。
【0112】
媒体B及びC、ならびに好ましくは媒体Aも水溶液を表す。従って、溶液は常に水を含む。さらに、溶液は溶媒又は溶媒の混合物を含み、特に溶液は水及び別の溶媒又は水及び溶媒の混合物を含む。溶媒は、水と混和性であり、溶解した生体分子(例えば抗体又はナノボディなど)の特性に任意の様式で悪影響を及ぼさない任意の公知の溶媒より選択してもよい。提供する生体分子が医薬的使用のためを意図している場合、選択する溶媒も医薬的使用のために同様に適切であるべきであることは当然である。
【0113】
好ましい実施形態に従い、溶媒は、好ましくは、水及び水と混和性の有機溶媒の混合物からなる群より選択する。有機溶媒として、例示的に言及してもよく、アルコール、例えばエタノール、メタノール、グリコール、糖アルコール、例、グリセリン、アセトン、アセトニトリル、メチルエチルケトン、エーテル(水と混和性であるもの)、例えばジオキサン、ジグリム、ジメチルホルムアミド、N-メチル-ピロリドン、テトラヒドロフランなど、及びそれらの混合物に限定しない。使用する溶媒の型は、存在する生体分子及び最終産物の意図される使用に強く依存する。
【0114】
溶液は主に有機溶媒を含んでもよい;しかし、溶媒が主に水で構成され、水が存在する溶媒の主要部分を表すようにする場合が好ましいことがある。さらなる好ましい実施形態に従い、使用する溶媒は水単独からなってもよい又は本質的になってもよい。
【0115】
液体媒体A、B、及びCにおいて使用する溶媒は同じでも異なっていてもよい。好ましい実施形態に従い、使用する溶媒は全ての液体媒体A、B、及びCにおいて同じである。特に好ましい実施形態に従い、溶媒は水である。
【0116】
液体媒体B及び/又はC(及びまた液体媒体A)の塩水溶液を使用するため、水中の有機塩溶液及び/又は無機塩溶液に例示的に言及しうる。使用する有機塩及び/又は無機塩は好ましくは水溶性であり、使用する生体分子に関して完全に不活性である。
【0117】
本発明の好ましい態様において、液体媒体Bは、塩化ナトリウムを約150~約900mM、さらに好ましくは約200~約700mM、約400~約600mM、及び約450~約550mMの濃度で含む。この態様は、液体媒体Bが特定の低分子量緩衝剤を含まない場合に特に好ましい。
【0118】
そのような態様は、その後の液体媒体のpH値を考慮すると有利である。恐らくは、塩化ナトリウムは緩衝能力を持たないとの事実のために、そのようなプロセス工程(b)及び/又は以下の段階の1つもしくは複数のpH値が微量な範囲においてだけ、即ち、約0.4未満、好ましくは約0.3未満、さらにより好ましくは約0.2未満のpH値で変動する。実施例3、6、9、10、11、12、及び13は、200及び500mMのNaCl、ならびに結果として得られる液体媒体DのpHが規則的に液体媒体BのpH値を下回る、即ち若干酸性であるちょうど約0~0.3のpH値を伴うこの態様を例示する。
【0119】
本発明のこの態様は、より強いpH変動に対して感受性である生体分子について特に有用である。
【0120】
使用する有機塩及び無機塩は、それらが、存在する生体分子の液体製剤を提供するために使用されうる場合、本発明に従って限定しない。液体媒体B及び/又はCにおいて使用する塩は、有機塩及び/又は無機塩、好ましくは有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩でありうる(例、生物学的緩衝剤として使用可能)。
【0121】
公知のように、加えた酸又は塩基が系中に入った際にpHが最適範囲外にシフトするのを防ぐ緩衝剤は弱酸又は弱塩基及びその共役塩形態の組み合わせである。使用する液体媒体中の緩衝剤は、生体分子と対イオンの間の許容されるイオン相互作用を除き、それに含まれる生体分子と任意の方法で反応又は変化又は負に相互作用しないことは当然である。通常、使用する緩衝剤は水中で自由に可溶性であり、他の溶媒中では不十分に可溶性であり、それらは不活性系を表す。利用可能な緩衝系の種々の異なる型がある。当業者は、本発明において使用されうる適切な緩衝系を見出し、選択することができる。
【0122】
従って、液体媒体B及び/又はC(及びまたA)の形態における水溶液は、溶媒として水をベースとする緩衝剤を表す又は含みうる、あるいは別の溶媒又は溶媒をベースとするが、しかし水を含む緩衝剤を表す又は含みうる。
【0123】
緩衝剤を調製するための有機酸及び有機塩基又は緩衝剤自体は、本発明の枠組みに従って限定しないが、しかし、選択された生体分子に関連して使用可能な任意の酸、塩基、又は緩衝剤を使用してもよい。生体分子が医薬的使用について意図している場合において、緩衝剤も医薬的に許容可能な緩衝剤(例、生物学的緩衝剤)より選択すべきである。
【0124】
従って、緩衝剤は、例えば、1つ又は複数の医薬的に許容可能な又は適合性のある緩衝剤又は緩衝薬剤より選択してもよい。本発明において、いわゆる生物学的緩衝剤、即ち、生物学的システムのために又はその文脈において使用されることが先行技術から公知である緩衝剤を使用してもよい。
【0125】
本発明に従った液体媒体A、B、及びC中で又はそれらとして使用してもよい例示的な生物学的緩衝剤を以下のように列挙しうるが、言及する具体例に限定しない:
【0126】
可能な緩衝剤又は緩衝塩は、N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸(ACES)及びその塩、酢酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸 酸(ADA)及びその塩、アンモニア及びその塩、塩化アンモニウム、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アンメドール(AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)及びその塩、N、N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 BES)及びその塩、安息香酸及びその塩、重炭酸塩(例えば炭酸水素ナトリウムなど)、N、N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-グリシン(ビシン)、トリス緩衝剤(例えばトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンなど)、[ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ]-トリス-(ヒドロキシメチルメタン)(ビス-トリス)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン(ビス-トリス-プロパン)、ホウ酸及びその塩、ジメチルアルシン酸(カコジル酸)及びその塩 、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)及びその塩、炭酸及びその塩、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウムなど)、シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)及びその塩、クエン酸及びその塩、3-[N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)及びその塩、ギ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、グリセリン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、グリシン(例えばグリシルグリシンなど)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS、EPPS)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’ -2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)及びその塩、イミダゾール、乳酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)及びその塩、リン酸及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)及びその塩、ピリジン、コハク酸及びその塩、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アミノ}-プロパンスルホン酸(TAPS)及びその塩、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)及びその塩、酒石酸及びその塩、タウリン(2-アミノエタンスルホン酸、AES及びその塩)、トリエタノールアミン(TEA)、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)及びその塩、ならびにN-[トリス(ヒドロキシメチル)]-メチル]-グリシン(トリシン)に基づく 。
【0127】
上に言及する大半の緩衝剤が有機塩から誘導されるのに対し、無機塩を基礎とする緩衝剤、例えばリン酸緩衝剤など、例えばリン酸水素カリウム緩衝剤などそれ自体を使用してもよい。
【0128】
無機塩及び有機塩を含む混合緩衝液もまた使用してもよい。
【0129】
同時に緩衝剤、特に生物学的緩衝剤であるさらなる使用可能な有機塩(分子内塩)は、水溶液中のアミノ酸である。使用してもよいアミノ酸は、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンである;特に好ましいアミノ酸は、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びプロリンである。
【0130】
緩衝剤は物質の混合物、即ち、弱塩基及び強共役酸の混合物又は弱酸及び強共役塩基の混合物であるが、しかし、緩衝剤は、本発明において、酸又は塩基あるいはそのそれぞれの共役塩形態のみを参照して示されうる。例えば、「酢酸」又は「酢酸緩衝剤」は、酢酸及び酢酸塩を含む緩衝剤として理解すべきである。当業者は、それが緩衝系として言及される文脈及びいずれの成分がそれに含まれるかを容易に理解するであろう。
【0131】
媒体B及び/又はCとしてあるいはその中で使用することができる好ましい緩衝剤は、例示的に、限定しないが、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、トリス、コハク酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、塩化アンモニウム、トリエタノールアミン、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びプロリンからなる群より選択する。
【0132】
緩衝剤は、本発明に従い、溶媒ならびに無機塩及び/又は有機塩で構成されると理解され、その塩は、本明細書において賦形剤とも言及される溶解イオンの形態で存在する。
【0133】
有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩の代わりに、他の塩を使用してもよい。例えば、任意の無機塩を使用してもよい。無機塩は本発明に従って限定せず、水溶液中で可溶性であり、使用する生体分子に干渉しない任意の無機塩を用いてもよい。無機塩は、例えば、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ハロゲン化物、ホウ酸、ケイ酸などのアルカリ塩又はアルカリ土類塩からなる群より選択する。
【0134】
医薬的に許容可能な産物を提供すべきである場合、無機塩ならびに有機塩は、それ自体公知の医薬的に許容可能な塩の群より選択すべきである。例えば、医薬的に許容可能な無機塩は、ナトリウム塩、例えばハロゲン化ナトリウム、好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム;カルシウム塩、例えばハロゲン化カルシウムなど、好ましくは塩化カルシウム、硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム;マグネシウム塩、例えばハロゲン化マグネシウムなど、好ましくは塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、及びそれらの組み合わせ、ならびに他の医薬的に許容可能な無機塩より選択する。
【0135】
特に好ましい無機塩は、その有利な性質のために塩化ナトリウムである。例えば、塩化ナトリウムはpH値にわずかな影響だけを有し、多数の公知の緩衝剤系中に存在する。生体分子は塩化ナトリウムによる影響を受けず、それは、動物及び人間にとって無害であることが公知である。
【0136】
本発明に従い、水溶液中で任意の型の荷電イオン(例えば任意の一価又は多価イオンなど)を生じる塩を使用してもよい。例えば、一価、二価、又は三価のイオンを使用してもよい。一実施形態に従い、一価イオンを好ましく使用してもよい。
【0137】
観察され満たされなければならない本発明に従った液体媒体B及び液体媒体Cに関する条件は、液体媒体Bが、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有することである。この要件は、所望の結果を達成するために提供されるプロセスの必須の特色である。
【0138】
溶液のイオン強度は、溶液中のイオン濃度の測定値であることが公知である。イオン性化合物は水中に溶解し、イオンに解離し、存在する全てのイオンの濃度の機能である溶液のイオン強度をもたらす:
【数1】
【0139】
この式において、ciはイオンiのモル濃度(M、mol/L)であり、ziはそのイオンの電荷数であり、合計は溶液中のすべてのイオンnにわたり取る。塩化ナトリウムについては、イオン強度は濃度に等しいが、しかし、塩(例えばMgSOなど)については、イオン強度は4倍高く、多価イオンはイオン強度に強く寄与する。
【0140】
さらに、塩溶液、例えば緩衝液の所望のイオン強度をどのように調整しうるかも公知である;塩溶液のイオン強度の設定は、存在する塩の濃度及びイオン強度に依存して行うことができる。さらに、膨大な数の刊行物及び特許文書が先行技術において存在し、イオン強度の特定の値又は範囲をハンドブック、モノグラフなどにおいて調べてもよい。従って、当業者は要求されるイオン強度を有する塩溶液を提供することができる。
【0141】
好ましい実施形態に従い、液体媒体Bは、少なくとも約20mM又はそれ以上、又は好ましくは少なくとも約100mM又はそれ以上、又は最も好ましくは少なくとも約200mM又はそれ以上の濃度の形式で表される高いイオン強度を有する。
【0142】
さらに、液体媒体Cが約150mM又はそれ以下、又は好ましくは約100mM又はそれ以下、又はより好ましくは約75mM又はそれ以下、又は最も好ましくは約50mM又はそれ以下の濃度の形式で表される低イオン強度を有する場合が好ましい。
【0143】
このように、透析濾過DF1において使用する液体媒体Bは、透析濾過DF2において使用する液体媒体Cと比較してより高いイオン強度を有する。原則として、濃度の形式で示す液体媒体Bのイオン強度は、約20mMから塩の溶解度の限界まで、又は特に好ましくは約100mM~1000mM、より好ましくは約150mM~750mM、又は最も好ましくは約200mM~500mMの範囲でありうる。
【0144】
溶解度の限界は、所与の温度で溶解することができる最大溶質濃度として理解すべきである。特定の溶媒中での物質の溶解度の程度は、例えば飽和濃度として測定し、ここで、より多くの溶質を加えても溶液の濃度は増加せず、過剰量の溶質が沈殿し始める。このように、塩の溶解度又は定量的溶解度の限界は、溶媒中の塩の最大濃度であり、結果として1つの相だけを有する系がもたらされる。
【0145】
溶解度の限界は温度、圧力、及び溶液のpHに依存的であるが、当業者は先行技術から公知である値に基づいて所望の濃度を選択及び調整することができるであろう。例えば、水中(20~25℃)での以下の塩の溶解度を示す:
クエン酸ナトリウム=920g/l=約3モル/l
塩化ナトリウム=359g/l=約6モル/l
酢酸ナトリウム=1233g/l= 15モル/l
【0146】
このように、例えば、塩化ナトリウムは、約20mM~約6モル/lまでの濃度として与えられるイオン強度において使用されうる。
【0147】
さらに、液体媒体Cのイオン強度(濃度として表される)は、約0mM~150mM、又は特に好ましくは約0mM~100、又はより好ましくは約0mM~75mM、又は最も好ましくは約0mM~50mMの範囲でありうる。
【0148】
本発明において、液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、液体媒体Cとして水又は1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し、液体媒質Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する。好ましい実施形態に従い、濃度として示す液体媒体Bのイオン強度と液体媒体Cのイオン強度の間の差は、好ましくは少なく約100mM、又はより好ましくは少なくとも約200mM、又は最も好ましくは少なくとも約500mMである。
【0149】
従って、液体媒体Bのイオン強度が約500mMであるように選択する場合、液体媒体Cのイオン強度は約500mMより低く、好ましくは約400mM又はそれ以下、より好ましくは約300mM又はそれ以下、又は最も好ましくは約0mMであるように選択する。例えば、水は、約0mMのイオン強度及びまた約0mS/cmである伝導率を有する液体媒体Cである。
【0150】
さらに、出発液体媒体Aも、好ましくは液体媒体Bよりも低いイオン強度を有する。しかし、これは任意の場合において必要ではない。液体媒体Aが液体媒体Bよりも高いイオン強度を有する場合、本発明のプロセスは、工程(b)及び、場合により、また工程(c)におけるサイクル数を、好ましくはそれぞれ増加させてもよいという点で、それに従って調整してもよい。当業者は、それに従ってプロセス工程を容易に最適化することができる。
【0151】
液体媒体のイオン強度が高過ぎるために生体分子の安定性に問題が生じた場合、液体媒体のより低いイオン強度を使用しなければならず、プロセス工程をそれに従って調整することは事実である。
【0152】
従って、通常、液体媒体Aのイオン強度は液体媒体Bのイオン強度よりも高いが、しかし、その逆も可能である。
【0153】
液体媒体Aは、適切な範囲にあるイオン強度を伴って提供しうるが、それは濃縮工程(a)により制御しうる。より低いイオン強度を得るために、液体媒体Aを水で希釈しうることも可能であるが、これは好ましくない。
【0154】
特に好ましい実施形態において、工程(c)(DF2)のために使用する液体媒体Cは水である。医薬的使用のために、それ自体で又は媒体中の水溶液として、全プロセスの間に使用する任意の水は、既に説明したように、水に含まれるイオンでの液体生体分子製剤の汚染を回避するために、非常に純粋な水であるべきである。従って、超純水、例えばASTM D1193又はISO 3696に従った1型の超純水を用いることが有用である。しかし、他の非医薬的使用については、水道水も使用してよい。
【0155】
そのため、本発明に従ったプロセスにおける媒体又は溶媒交換工程は、存在する望ましくない賦形剤を除去するために、高いイオン強度を有する液体媒体(DF1)から低いイオン強度を有する媒体(DF2)を介して行う。理論により束縛されることを望まないが、より高いイオン強度からより低いイオン強度への移行によって、生体分子-賦形剤の相互作用が弱まり、これらの賦形剤は可能な限り低下又は除去されうると推定される。
【0156】
イオン強度の代わりに、イオン強度に関連付けられる電気伝導度を用いて、使用する媒体を決定してもよい。経験的方法は、電気伝導度とイオン強度の間の単純化された線形関係に依存する。このように、例えば、200mM~500mMの範囲のイオン強度を有する液体媒体Bは、およそ10mS/cm~50mS/cmの範囲の電気伝導度を有する。
【0157】
電気伝導度についての上の値は、例証の目的のためだけに、及び単純化された線形関係による対照として与えるが、しかし、イオン強度(濃度として与えられる)は、本発明において正確なパラメーターであるように思われる。
【0158】
さらに、低い電気伝導度は、液体製剤がイオン性賦形剤を含む有意に低下した賦形剤を有し、電気伝導度を使用し、得られる精製含量を決定しうることを示しうる。
【0159】
選択した生体分子及び液体媒体に依存して、それ自体が先行技術から公知である限外濾過工程及び透析濾過工程のパラメーター及び条件は、それに従って当業者により容易に選択及び調整されることができる。これは当業者の一般的な知識に属する。例えば、生体分子をタンパク質として選択する場合、透析濾過工程DF1及びDF2の両方がタンパク質の等電点を下回るpHで実行されることが好ましい。詳細を実施例のセクションに記載する。
【0160】
例えば、液体媒体A、B、CのpH値は、本発明のプロセスにおいては問題ではない。なぜなら、このプロセスは任意のpH値で機能するからである。荷電イオンが調整されたpHに依存して存在するだけである場合、pH値が目的となりうる。例えば、酢酸陰イオンは、pH>3.75の場合、化学平衡の酢酸塩/酢酸中にだけ存在する。従って、交換を実施するために使用する塩又はイオンが適切な電荷を伴って存在する適切なpH値又は範囲においてプロセスを実施することは当然である。
【0161】
また、両方の透析濾過が、同じ分離フィルターを用いて、しかし、異なる媒体B及びCを用いて同じ透析濾過システムにおいて連続的に実施することが好ましいであろう。他の実施形態も可能である。
【0162】
本発明の好ましい実施形態において、工程(b)の第1の透析濾過(DF1)を、その後の工程(c)を実施する前に数回繰り返してもよい。すなわち、液体媒体Bの交換は、図1Aに見られるように、媒体サイクルの形態において多くの回数にわたり実施してもよい。このように、液体媒体Bの交換は、x回の媒体サイクルで実施してもよく、それにより好ましくはx=2~10、より好ましくはx=2~8、最も好ましくはx=2~6である。
【0163】
換言すると、x=2の場合、工程(b)を2回繰り返し、図2Aのサイクルは2回通過し、任意のサイクルについて、同じ液体媒体Bを各々のサイクルで透析濾過媒体として加える。原則として、サイクル数は通常、使用する液体媒体Bのイオン強度(又は濃度)の減少に伴い増加する。可能なサイクル数はまた、損傷を伴わずにサイクル数を許容しなければならない、使用する生体分子の種類にも依存する。
【0164】
第1の透析濾過DF1は、好ましくは一定の残余分容量で行い、従って、好ましくは、媒体Bの容量の少なくとも約2倍の量から媒体Bの容量の10倍の量までで媒体Bに対して実施する。このように、プロセス工程(b)は、少なくとも決定された容量交換、例えば液体媒体Bとの2倍容量交換を伴い実施する。
【0165】
本発明のさらに好ましい実施形態において、工程(c)の第2の透析濾過(DF2)は、その後の工程(d)を実施する前に数回繰り返してもよい。すなわち、液体媒体Cの交換は、図1Aに見られるように、媒体サイクルの形態において多くの回数にわたり実施してもよい。このように、液体媒体Cの交換は、y媒体サイクルを伴い実施してもよく、それにより好ましくはy=2~10、より好ましくは、y=2~8、最も好ましくは、y=2~6である。
【0166】
換言すると、y=4の場合、工程(c)を4回繰り返し、図2Aのサイクルを4回通過させ、任意のサイクルについて、同じ液体媒体Cを各々のサイクルで透析濾過媒体として加える。
【0167】
第2の透析濾過DF2は、好ましくは一定の残余分容量で行い、従って、好ましくは、媒体Cの容量の少なくとも約2倍の量から媒体Cの容量の10倍の量までで媒体Cに対して実施する。このように、プロセス工程(c)は、少なくとも決定された容量交換、例えば液体媒体Cとの2倍容量交換を伴い実施する。
【0168】
交換容量又は交換サイクルの数は、使用する透析濾過媒体、例えば使用するイオン強度又は濃度に高度に依存する。当業者は、日常的な実験により、それぞれ工程(b)及び工程(c)の最適なサイクル数を容易に見出すことができる。
【0169】
好ましい実施形態において、第2の透析濾過DF2は、透析濾過媒体Cとして水単独を使用して本発明のプロセスに従って実施する。
【0170】
本発明のさらに好ましい態様において、水単独を溶媒として使用する場合、少量の導電性塩(例えば塩化ナトリウムなど)が電気伝導度を制御するために存在してもよいことが、工程(c)(DF2)において有利であることが見出されている。水だけが存在する場合、電気伝導度は0mS/cmであるため、測定可能な値は得られない。これは、一部のUF/DF系が導電性プローブを使用して実行されるという事実による。従って、プロセスをより良く制御するために、少量の(例、0.001~0.003重量%)の導電性塩を、好ましくは、工程(c)(DF2)の間に又はその後に加える。次に、液体媒体Cは、少量の導電性塩の存在のため、本質的に水からなる。
【0171】
さらなる好ましい実施形態に従い、液体媒体B及びCは同じであり、使用するイオン強度に関してだけ異なる。例えば、導電性塩は、異なる濃度でだけ存在する第2及び第3の賦形剤を表す。
【0172】
その後の工程(d)において、濃縮形態の液体生体分子製剤を得るために、第2の限外濾過(UF2)を実施し、生体分子のcP 3までの濃度に達する。このように、工程(d)の限外濾過UF2を使用して液体生体分子製剤を所望の値に濃縮する。
【0173】
工程(a)及び(d)に従った限外濾過は、同じ限外濾過膜を用いて達成することができる。限外濾過工程は、任意の適切な限外濾過装置又は公知の限外濾過膜を用いて実施してもよい。
【0174】
好ましい実施形態に従い、本発明のプロセスは、正に荷電した化合物として生体分子を含む出発液体媒体Aから負に荷電した賦形剤を除去するために使用してもよい。この実施形態において、負に荷電した賦形剤の一部を使用して液体製剤中の生体分子を安定化させてもよい。例えば、正に荷電したタンパク質は、陰イオンの存在により安定化されうる。本発明のプロセスを用いて、陰イオンを可能な限り又は必要な限り低下又は除去する。従って、生体分子を安定化するために液体媒体A中に存在する陰イオン(出発又は第1の賦形剤)は、液体媒体B中に存在する陰イオン(第2の賦形剤)で置換され、工程(b)における陰イオンの種類は生体分子の対イオンを表す。液体媒体Bよりも低いイオン強度を有する液体媒体C(存在する場合、第3の賦形剤)は通常、生体分子の対イオンとして工程(b)において既に存在する陰イオン(第2の賦形剤)の交換をもたらさない。結果として、液体媒体B中に存在する陰イオン(第2の賦形剤)によって生体分子の対イオンが決定され、対イオンはそれに従って選択されうる。従って、この例示的な場合において、液体媒体Bの賦形剤は、本発明のプロセスの工程(d)において得られる生体分子-賦形剤複合体を形成する賦形剤である。
【0175】
さらに、溶液条件下で実施される本発明のプロセスにおいて、第1、第2、又は第3の賦形剤(例えば正に荷電した賦形剤、負に荷電した賦形剤、及び中性賦形剤など)のために任意の賦形剤を使用してもよい。第1の又は出発賦形剤が特定の電荷を有する場合、これが何らかの理由で必要とされる場合に第1の賦形剤を置換するために、第2の賦形剤も同じ対応する電荷を有することは当然である。例えば、第1の賦形剤は負に荷電しており、生体分子と相互作用し、置換されるべきであり、次に第2の賦形剤も負の荷電を有するなどである。
【0176】
第2及び場合により第3の賦形剤は、存在する生体分子、溶媒、及び第1の賦形剤に依存して選択してもよい。第2及び第3の賦形剤は、塩、好ましくは有機塩及び/又は無機塩、より好ましくは有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩あるいは本明細書において記載するそれに由来するイオンであるように選択する。
【0177】
プロセスの間に、溶液状態における変化をモニターするために、賦形剤分析をプロセスの各々の段階で実施することは任意の場合において有用である。
【0178】
本発明のプロセスにおいて、液体媒体A中に存在する賦形剤は可能な限り又は要求される限り低下させる。好ましい実施形態に従い、出発液体媒体A中に存在する賦形剤は、検出レベルよりも低くなるように低下させる。これに関連して、用語「検出レベル」(LOD)及び「定量レベル」(LOQ)を使用する。これらの用語は、分析手順により確実に測定することができる測定値の最小濃度を記載するために使用する。典型的には、テストによって、分析物の濃度をゼロまで正確に測定することは単純に可能ではない。分析物の非存在において産生されるシグナルを「分析ノイズ」から確実に区別することができる分析シグナルを産生するために、十分な分析物濃度が存在しなければならない。種々の分析仕様を適用することができ、LODが有意義であり、ネガティブ又はブランクのサンプルと明確に区別可能であるようにする。これに関して、実施例のセクションを参照のこと。以下のLOD及びLOQが見出されている:
リン酸:LOQ=0.05mg/L;
酢酸:LOQ=0.7mM、LOD=0.1mM;
クエン酸:LOQ=0.1mM、LOD=0.01mM;
コハク酸:LOQ=0.4mM、LOD=0.01mM;
塩化物:LOQ=14μM LOD=5μM
【0179】
他の賦形剤は、LOD及びLOQに関して同じか又は非常に類似した値を有すると推定される。
【0180】
好ましくは、プロセス工程(a)~(d)は室温(20~25℃)で実施する。室温よりずっと高い又は低い温度は、使用する多数の生体分子の温度感受性のために、全プロセスを通して回避すべきである。約2~35℃、好ましくは約5~25℃、最も好ましくは約20~25℃の範囲の温度が通常許容可能である。例えば、加熱は全工程の間に全く実施すべきではない。
【0181】
さらに、プロセスにおける一連の順番は本発明の本質的な基準であり、工程を互いに交換してはならないことに留意すべきである;そうでなければ、本発明の利益は達成されないであろう。従って、工程(a)は工程1又はそのプロセスにおいて実施される最初の工程であり、工程(b)はプロセスの工程2であり、工程(c)はプロセスの工程3であり、工程(d)はプロセスの工程4である。順番の別の順序は意図せず、望ましくない。
【0182】
別の好ましい実施形態に従い、工程(b)及び工程(c)は直接順々に続き、それにより中間プロセス工程はその間に実施しない;即ち、透析濾過DF2は、その間に任意の中間段階を伴わずに透析濾過DF1直後に続く。好ましくは、工程(a)及び工程(b)もまた直接順々に続き、それにより中間プロセス工程をその間に実施しない。好ましくは、工程(c)及び工程(d)もまた直接順々に続き、それによりその間に中間プロセス工程を実施しない。従って、工程(a)~(d)は、好ましくは、その間に中間工程を伴わずに実施し、即ち、工程(b)は工程(a)の直後に続き、工程(c)は工程(c)の直後に続き、工程(d)は工程(c)の直後に続く。
【0183】
本発明はまた、上に記載するプロセスにより調製された生体分子を含む高濃縮液体製剤に関する。
【0184】
本発明に従い、従って、医薬又は非医薬分野において、あるいは医薬又は非医薬組成物の開発のための良い出発点として使用されうる、十分に定義された液体生体分子製剤を提供する。本発明の方法を使用し、定義された賦形剤(第4の賦形剤)を正確な量で加えて正確な濃度の内容物を伴う生体分子処方物を提供することが可能な液体生体分子製剤を作製してもよい。これらの第4の賦形剤は、液体生体分子製剤において有用であることが既に上に記載されている、又は先行技術において公知であり記載されているものである。
【0185】
本発明の利点は多岐にわたる:
【0186】
本発明のプロセスを用いて、明確に定義された生体分子製剤を調製するための改良及び改変されたUF/DFプロセスを提供してもよく、好ましくは明確に定義されたタンパク質製剤が得られうる。
【0187】
問題のある高い生体分子濃度(例えば70mg/mL又はそれ以上など)に関しても、本発明のプロセスは円滑に機能していることが見出されている。このプロセスによって、高濃縮生体分子溶液及び低下量の不純物、即ち、残留賦形剤の残留物(例えば生体分子の対イオンなど)(依然として存在する場合)からなる又は本質的にそれのみからなる最終製剤を提供する。
【0188】
本発明に従ったプロセスによって、医薬的又は非医薬的使用について意図する、生体分子、特にタンパク質を含む十分に定義された高濃縮製剤の調製が可能になる。得られた生体分子製剤は純粋な産物製剤として提供し、それは先行技術のプロセスと比較してより簡単で迅速に精製されうる。
【0189】
さらに、出発原料として使用される初期の生体分子製剤から存在する出発賦形剤、特にコハク酸及び酢酸のような陰イオン性賦形剤の持ち越し汚染の程度は有意に低下する又は最小化する。
【0190】
本発明のプロセスによれば、出発賦形剤を除去するために必要な透析容量交換の数は合理的な範囲にあり、生体分子の安定性に影響が及ばず、凝集体形成が支援されない。
【0191】
本発明に従ったプロセスのさらなる利点は、このプロセスがタンパク質に及ぼされる物理的ストレスに関して非常に穏やかであることである。これはプロセスの工程を通して存在する高い程度の単量体含量から結論付けることができる。
【0192】
本発明に従ったプロセスの最終産物は明確に定義された生体分子製剤であるため、そのさらなる処理はより単純で直接的である。また、目的に合わせた製剤をより簡単な様式で提供しうる。なぜなら、使用者が、添加剤を添加することにより、選んだ賦形剤(第4の賦形剤)を加えて、所望の定義された製剤に到達することができるからである。
【0193】
本発明のプロセスは大規模においても実現可能であり、合理的なコストで所望の品質基準及び操作効率を提供する。
【0194】
従って、溶液条件下で非常に低いレベル、好ましくは検出レベルより低いレベルまで賦形剤を除去することを可能にする効果的なUF/DFプロセスを提供する。本発明のUF/DFプロセスは、荷電した賦形剤及び荷電した生体分子の場合においても使用してもよい。例えば、負に荷電した賦形剤(例えばクエン酸、コハク酸、及びリン酸など)は、溶液条件下で、非常に低いレベル又は検出限界より低いレベルまで低下されうる。好ましい荷電した生体分子は、例えばタンパク質(例えば正に荷電しうる抗体など)である。
【0195】
従って、透析濾過によって、例えば調製条件(例えば発酵など)から残っている不純物の形態の賦形剤又は測定方法(例えばクロマトグラフィーなど)のために要求される賦形剤を除去することにより、液体生体分子製剤を調整し、1つの溶液を別の溶液と置換することが可能になる。
【0196】
結果として、本発明に従ったプロセスは、不純物を除去する又はそれらを最終産物の安全性、有効性、又は保存に影響を及ぼさないレベルまで低下させる限外濾過濃縮及び透析濾過洗浄の繰り返しにより達成される製剤をもたらす。
【0197】
好ましい実施形態に従い、二重透析濾過UF/DFプロセスは、2つの透析濾過工程(1つは高イオン強度で及び1つは低イオン強度で(例えば純水など))を組み入れ、濃縮生体分子製剤、好ましくはタンパク質製剤を得ることが可能であることを示し、それにより、例えば、陰イオン性賦形剤(例えばリン酸イオン、クエン酸イオン、コハク酸イオン、及び酢酸イオンなど)が完全に除去された。好ましく産生された高濃縮タンパク質溶液は次に、例えば、タンパク質、水、及び必要最小限の選択された対イオン(例えば塩化物、クエン酸、コハク酸、又は酢酸など)のみで構成され、例えば「タンパク質-塩化物」、「タンパク質-クエン酸」、「タンパク質-コハク酸」、又は「タンパク質-酢酸」などの複合体を形成する。
【0198】
従って、定義された含量を有する高濃縮液体生体分子製剤を達成することを可能にするプロセスを提供する。
【0199】
本発明をより完全に理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例は、本発明の実施形態を例証する目的のためであり、任意の方法において本発明の範囲を限定すると解釈すべきではない。
【0200】
実際的な実施
以下は、記載された特定の実施例にそれを限定することなく、本発明のプロセスを例証する代表的な実施例である。
【0201】
材料及び方法
実施例において、本発明のプロセスの実施形態を3つのテストタンパク質の製剤に適用した。タンパク質に、種々の初期緩衝液イオン(例えばコハク酸、クエン酸、酢酸、リン酸など)を提供した。交換媒体は、例えば、酢酸、塩化物、コハク酸である。200mg/mLまでのタンパク質の最終産物プールを産生した。例示的なプロセスは、残留初期緩衝液イオンのレベルを検出限界以下に一貫して低下させることが示され、タンパク質固有の電荷のバランスをとり、タンパク質を自己緩衝させるための十分な交換媒体対イオンだけを伴う液体製剤をもたらした。タンパク質の完全性をクロマトグラフィー又は乳白光により評価した。一般的に、タンパク質の質(単量体含量により測定)はわずかにだけ低下する、又は不変のまま維持された。
【0202】
試験したタンパク質1及びタンパク質2は、アイソタイプIgG及びサブクラス1の両方の2つのヒト化モノクローナル抗体であった。それらの平均分子量は150kDaであり、およそpH8.4の等電点(IP)を伴った(Karow A.R., Bahrenburg S., & Garidel P. (2013), Buffer capacity of biologics-from buffer salts to buffering by antibodies, Biotechnol. Prog. 29, 480-492を参照のこと)。mAbを、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞株における哺乳動物細胞培養により産生した(Bergemann K., Eckermann C., Garidel P., Grammatikos S., Jacobi A., Kaufmann H., Kempken R., & Pisch-Heberle S. (2007), Production and Downstream Processing, in: Handbook of Therapeutic Antibodies pp. 199-237, Wiley-VCH Verlag GmbH;Jacobi A., Enenkel B., Garidel P., Eckermann C., Knappenberger M., Presser I. & Kaufmann H. (2014), Process Development and Manufacturing of Therapeutic Antibodies, in: Handbook of Therapeutic Antibodies pp. 601-664, Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaAを参照のこと)。詳細については、Jacobi, et al. 2014(前出)及びGaridel P., Kliche W., Pisch-Heberle S., and Thierolf M. (2010), Characterization of proteins and related analytical techniques, in: Protein Pharmaceuticals-Formulation, Analytics & Delivery (Mahler, H.C., Borchard, G., & Luesen,H., eds.), pp. 44-89, Editio Cantor Verlag, Aulendorf, Germanyを参照のこと。それらの全体の開示を参照により本開示中に組み入れる。
【0203】
試験したタンパク質3は、ナノボディ(例、Gibbs W.W. (2005), Nanobodies, Sci Am. Aug, 293 (2): 78-83を参照のこと)、平均分子量40.7kDa及びおよそpH8.4(理論値)/pH7.5(実験値)の等電点を伴う三量体であった。ナノボディを、大腸菌微生物発酵を介して産生し、それに従って処理及び精製する(Arbabi-Ghahroudi M., Tanha J., MacKenzie R. (2005), Prokaryotic expression of antibodies, Cancer Metastasis Rev. Dec; 24 (4): 501-19;Rahbarizadeh F, Rasaee MJ, Forouzandeh-Moghadam M., Allameh A.A. (2005), High expression and purification of the recombinant camelid anti-MUC1 single domain antibodies in Escherichia coli., Protein Expr Purif. Nov., 44(1): 32-8を参照のこと)。
【0204】
タンパク質4はFC融合タンパク質であり、そのアミノ配列を実施例11において示す。タンパク質5はリツキシマブの公表配列と100%同一であり、重鎖及び軽鎖を実施例12において示す。
【0205】
両方の配列を添付の配列リストにおいて配列番号3(「人工配列」、「FC融合タンパク質」)、配列番号4(「人工配列」、「リツキシマブHC」)、及び配列番号5(「人工配列」、「リツキシマブLC」)として列挙する。
【0206】
許容される非経口賦形剤を伴う種々の製剤を限外濾過及び遠心濾過により調製した(Pramanick S., Singodia D., & Chandel V. (2013), Excipient selection in parenteral formulation development, Pharma Times 45, 65-77を参照のこと)。具体的な製剤を以下において記載する。
【0207】
全ての賦形剤は分析及び非経口グレードであった。コハク酸、トリクロロ酢酸、クエン酸三ナトリウム二水和物、酢酸、及び酢酸ナトリウムはMerck KGaAから;クエン酸一水和物はJungbunzlauer Ladenburg GmbHから;コハク酸二ナトリウム六水和物及びリン酸一ナトリウムはDr. Paul Lohmann GmbHから;リン酸二ナトリウムはChemische Fabrik Budenheim KGから;スクロースはSudzuckerAGから;ならびに塩化ナトリウムはAkzo Nobelから購入した。
【0208】
タンパク質分析
タンパク質濃度:mAb溶液の最終タンパク質濃度を、mAb特異的吸光係数を使用し、λ=280nmでの光吸収を介して、分光光度法(Lambda 35、Perkin Elmer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)により決定した。
【0209】
pH:各々の段階でのタンパク質溶液の室温pHを、結合pH電極を伴うpHメーター(Mettler Toledo SevenGo、オハイオ州コロンバス)を使用して評価した。各々のpH測定の前に、pH4及びpH7(Mettler Toledo SevenGo、米国オハイオ州コロンバス)の較正溶液を用いて2点較正を行った。
【0210】
浸透圧:浸透圧を凍結点浸透圧計(Osmomat 030、Gonotec、ドイツ、ベルリン)を使用して決定した。
【0211】
タンパク質の完全性:タンパク質の質の研究は、目視検査、乳白光、及び高性能サイズ排除液体クロマトグラフィー(HP-SEC)により示すように、粒子形成に集中した(Garidel et al. 2010, 前出;den Engelsman J., Garidel P., Smulders R., Koll H., Smith B., Bassarab S., Seidl A., Hainzl O., & Jiskoot W. (2011), Strategies for the Assessment of Protein Aggregates in Pharmaceutical Biotech Product Development, Pharm Res 28, 920-933)。
【0212】
目視検査:目視検査を現行の薬局方に従って実施した。
【0213】
乳白光:乳白光はタンパク質粒子形成を示しうる(Sukumar M., Doyle B.L., Combs J.L., & Pekar A.H. (2004), Opalescent appearance of an IgG1 antibody at high concentrations and its relationship to noncovalent association, Pharmaceutical Research 21, 1087-1093)。乳白光における増加は大半がタンパク質凝集又は粒子濃度における増加に関連する。乳白光を400~600nmでの90°散乱光の測光を介してホルマジン比濁分析単位(FNU)で測定する。光度計(2100AN Laboratory Turbidimeter、Hach、米国コロラド州ラブランド)を最初に、欧州薬局方(2013年)に従って20及び100FNUについての基準を用いて較正した。
【0214】
高性能サイズ排除液体クロマトグラフィー(HP-SEC):単量体含量及びタンパク質凝集体(二量体及びそれ以上の種)のレベルを、サイズ排除クロマトグラフィー(Acquity HCass及びTUV検出器、両方ともWaters Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォードから;カラムはWaters Acquity UPLC 4.6mm×300mm分析カラム、また、Waters Corporation、米国マサチューセッツ州ミルフォードから)により決定した。移動相は、200mM L-アルギニン、120mM硫酸アンモニウム、及び10%イソプロピルアルコール(85%リン酸を用いてpH 7.3に調整)であった。HP-SECは室温で実施した。
【0215】
全てのサンプルを5mg/mLの最終濃度に希釈し、5μLの注入容量を0.2mL/分の無勾配流量で注入する。結果として得られたピークは、UV検出器によりλ=280nmの吸光度により検出し、二量体及び高次凝集体の量を示した;残存単量体のパーセンテージを算出した。
【0216】
強陽イオン交換クロマトグラフィー(SCX)(IECイオン交換クロマトグラフィーに対応する):分析用強陽イオン交換クロマトグラフィー(SCX)を、タンパク質38Prot3)の電荷変異体の分離及び定量化のために使用した。MabPac(登録商標)SCX-10カラム(4×250mm、10μm、Thermo Scientific 074625)を、UV検出器と連結したAlliance HPLC-System(Waters)で使用した。カラムを35℃に調節した。分離したピークを280nmの吸光度で検出した。溶出を、1mL*/分の一定流速で22分間の100%から64%の緩衝液A(pH7.0を伴う10mM NaHPO)の勾配により起こした。カラムの再生を、100%緩衝液B(10mM NaHPO、1M NaCl、pH7)により1mL*/分の一定流速で4分間にわたり起こした。タンパク質3を水で0.2mg*/mLの濃度に希釈した。40μLの希釈タンパク質を注入した。緩衝液Aは、pH7.0を伴う10mM NaHPOを含んだ。
【0217】
賦形剤分析
カルボン酸分析物(コハク酸、クエン酸、酢酸):残留賦形剤を高圧液体クロマトグラフィー分析(AktaMicro、GE Healthcare、英国リトル・チャルフォント;Acclaim Organic Acid Column、5μm 4.0×250mm、Thermo Fischer、米国マサチューセッツ州ウォルサム)により決定した。移動相は、99%メタンスルホン酸でpH2.6に調整した100mM硫酸ナトリウムであった。カラム温度をカラムヒーターにより30℃に設定した。注入容量は10μLで、流速0.6mL/分を伴うアイソクラティック溶出を適用した。カルボキシル基濃度を、210nmに調整したUV-Vis検出器により測定した。タンパク質はこの波長での測定に干渉するため、mAbを最初に3:1の比率(サンプル/TCA、V/V)のTCA(トリクロロ酢酸)(10%)を用いて沈殿させた。検量線を生成し、残留賦形剤レベルを決定するために使用した。
【0218】
タンパク質の沈殿によって溶液の排除容量が増加し、賦形剤濃度を算出する際にはこれを考慮しなければならない。タンパク質濃度が非常に高い場合、これらの逸脱は15%(200mg/mL)として実行しうる。定量限界(LOQ)及び検出限界(LOD)は、酢酸LOQ=0.7mM&LOD=0.1mM、クエン酸LOQ=0.1mM&LOD=0.01mM、コハク酸LOQ=0.4mM&LOD=0.01mMである。
【0219】
塩化物及びリン酸:イオン特異的キュベットキット(塩化物についてはLCK311、リン酸についてはLCK350、Hach、英国サルフォード)を使用して塩化物及びリン酸の濃度を決定した。キュベットは、定義された濃度を伴う、予め用量決定された試薬を含む。試料調製は、カルボン酸分析において用いたものと同一のTCAタンパク質沈殿を含み、同じ理由のために:タンパク質はキュベット中の試薬を用いて沈殿し、測光評価に干渉しうる。
【0220】
LCK311テストでは、1~70mg/L(I)及び70~1000mg/L(II)の2つの範囲において塩化物濃度を測定する。1~70mg/Lの低濃度におけるテストでは1mLのサンプル容量を使用する;70~1000mg/Lの範囲におけるテストでは0.1mLのサンプルを使用する。サンプルをキュベットに加え、それを次に振盪し、3分間にわたり保持し、次に分光光度計(DR3900、Hach、英国サルフォード)を用いて分析する。塩化物LOQ=14μM&LOD=5μM。
【0221】
リン酸についてのLCK349テストは、2~20mg/Lの範囲においてイオン濃度を決定する。分析において、0.4mLのサンプルをキュベット、続いてキットと提供される0.5mLの溶液Bを加える。キュベットを次にDosiCap Cを用いて密封する。本発明に従い、リン酸(phospate)LOQ=0.05mg/Lである。
振盪及び10分の保持時間後、サンプルを分光光度計(DR3900、Hach、英国サルフォード)を用いて分析した。
【0222】
特定のタンパク質溶液の調整及び調製
限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセス:
定義されたタンパク質溶液は、160mg/mLまでのmAb濃度を伴い、4つの工程を有する本発明に従ったUF/DFシステムを使用して調製及び調整した。
工程(a):UF1、タンパク質溶液を標的の25%~50%に濃縮するための限外濾過;
工程(b)DF1、緩衝媒体(高イオン強度、従って高導電性の媒体B)に対する透析濾過;
工程(c)DF2、水に対する透析濾過(低イオン強度、従って低導電性の媒体C);及び
工程(d)UF2、タンパク質を所望の値に濃縮するための限外濾過。
【0223】
30kDaのカットオフ、A=200cm2(膜面積)を有するポリエーテルスルホン膜Certramate T-Series(Pall、米国ニューヨーク)を使用した。流速は0.8mL/分/cm2を下回った。
【0224】
UF/DFを以下の条件下で実行した:
入口圧力=1.5バール;出口圧力=0.5バール;及び~1バールの膜貫通圧力。
【0225】
交換容量又は交換サイクルの数は、使用した透析濾過媒体に依存した。
【0226】
賦形剤分析を各々の段階で実施し、溶液条件における変化をモニターした。
【0227】
遠心濾過:
第2の実施形態は、出発緩衝液を交換し、タンパク質溶液を濃縮するためにテストした。遠心濾過システム(再生セルロース、Amicon Ultra 15mL遠心フィルター、Merck Millipore、米国マサチューセッツ州ビレリカ)をタンパク質3ナノボディについて使用した。プロセス条件は、タンパク質1及びタンパク質2のmAbについてのUF/DFプロセスにおいて使用されるものと同様であった。
【図面の簡単な説明】
【0228】
実験の詳細なプロセスの記載を、明細書に組み入れられてその一部を構成する添付の図面に関連して与え、記載する特定の実施形態に限定されることなく本発明の好ましい実施形態を例証する。図面は、一般的な記載及び詳細な記載と一緒に本発明の原理を説明するのに役立つ。図面は以下の通り示す。
図1A】透析濾過(DF)工程の略図;
図1B】限外濾過(UF)工程の略図;
図2】先行技術に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの略図;
図3】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の略図;
図4A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、コハク酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図4B図4Aのタンパク質1(Prot1)のUF/DF処理の間での伝導率、乳白光、及び単量体含量(y軸)を、コハク酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図5A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、コハク酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図5B図5Aのタンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での伝導率、乳白光、及び単量体含量(y軸)を、コハク酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d)におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図6A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、クエン酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図6B図6Aのタンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での伝導率、乳白光、及び単量体含量(y軸)を、クエン酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図7A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、クエン酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図7B図7Aのタンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での伝導率、乳白光、及び単量体含量(y軸)を、クエン酸-酢酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図8】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、コハク酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図9】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、酢酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする。
図10A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、リン酸-コハク酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図10B図10Aのタンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での伝導率、乳白光、及び単量体含量(y軸)を、リン酸-コハク酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図11】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、リン酸-クエン酸交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図12】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、リン酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図13A】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、コハク酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットする;
図13B図10Aのタンパク質2(Prot2)のUF/DFプロセスの間での単量体含量及びIEC(イオン交換クロマトグラフィー)の主ピーク(y軸)を、コハク酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))におけるpH値(x軸)に対してプロットした図;
図14】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質4(Prot4)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、リン酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))(x軸)において示す;及び
図15】本発明に従った限外濾過/透析濾過(UF/DF)プロセスの例示的な実施形態の図:タンパク質5(Prot5)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度(y軸)を、酢酸/コハク酸/クエン酸-塩化物交換における各々のプロセス工程(工程(a)~工程(d))(x軸)において示す。
【0229】
図1A図1B図2、及び図3は既に記載している。本発明に従った実施例を、以下において図4A~15に関連して説明する:
【0230】
実施例
全ての実施例において、使用する水はMilliQ(登録商標)水である。
数字が後に続く記号「~」は、その数字が最も近い整数に切り上げられている点を理解すべきである。
【0231】
実施例1
‐コハク酸-酢酸交換‐
実施例1に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のコハク酸緩衝液イオンを低レベルの酢酸で置換した。このように、「タンパク質- 酢酸」製剤を、対イオンとして酢酸を用いて生成する。
【0232】
使用する生体分子(以下、「Prot1」として命名する)は、この重鎖(アミノ酸一文字コード、N末端からC末端)
【化1】

及びこの軽鎖(アミノ酸一文字コード、NからC末端):
【化2】

を含むモノクローナル抗体である。
【0233】
両方の配列を添付の配列表において配列番号1(「人工配列」、「モノクローナル抗体、重鎖」)及び配列番号2(「人工配列」、「モノクローナル抗体、軽鎖」)として列挙する。
【0234】
実施例1の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:10mg/ml Prot1/25mMコハク酸/125mM NaCl/水/pH6.5;
DF1:500mM酢酸/水/pH5.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):150mg/ml Prot1/26mM酢酸/水/pH 5.9。
【0235】
従って、実施例1において、出発溶液は、pH6.5で25mMコハク酸ナトリウム及び125mM塩化ナトリウムを含む超純水中の10mg/mLタンパク質1 mAbである。
【0236】
図4Aは、実施例1に従ったコハク酸-酢酸交換の結果を示す。y軸上にタンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM酢酸ナトリウムpH5.0(DF1)の4サイクル、それに続くタイプ1の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)(DF2)を用いた6サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程を含み、DF1の陰イオン成分(酢酸)に向かう初期溶液からの賦形剤の全交換を提供する。
【0237】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#2/#4 /#6、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0238】
図4Bは、実施例1のコハク酸-酢酸交換の伝導率、乳白光、及び単量体含量の結果を示す。
【0239】
図4Aから分かるように、初期の測定塩化物濃度は125mMであり、コハク酸濃度は25mMである。UF1によってタンパク質は~40mg/mLに濃縮される。DF1は、コハク酸レベルを0.5mMに低下させ、塩化物濃度を検出限界以下にするための、pH5.0での500mM酢酸ナトリウムに対する4サイクルの透析濾過からなる。透析濾過サイクルの数を増加させることによって、コハク酸濃度はさらに低下しうるが、しかし、プロセス時間及び潜在的なタンパク質ストレスが犠牲になる。
【0240】
DF2において、pH6の純水に対する6サイクルの透析濾過、次に、残留DF1酢酸を大幅に低下させながら(~9mMに低下する)、最後の微量のコハク酸を除去する。
【0241】
酢酸の完全な除去は可能ではなく、又は推奨されない。テストしたpH条件では、タンパク質1は正に荷電している;残留酢酸陰イオンは対イオンとして機能し、DF2の終了時での酢酸/タンパク質1の比率は~30:1である。
【0242】
UF2がタンパク質1の≧150mg/mLへの濃縮に続く。この容量低下に伴い、酢酸濃度は約26mMに増加する。結果として得られた酢酸/タンパク質比率は~26:1であり、DF2終了時の40mg/mLタンパク質1溶液のレベルに非常に近い:これは、システムの電荷の中性を維持するために要求される酢酸対イオンの割合である。30:1(DF2後)と26:1(UF2後)の間で観察された差は、陰イオン及び/又はタンパク質濃度の測定におけるわずかな誤差に起因しうる。
【0243】
この段階で、産物プール(最終産物)は、対イオンの役割を果たす~20mMの酢酸を伴う150mg/mLのタンパク質1mAb(pH5.9)である。従って、産物プールのpHは、タンパク質自体の自己緩衝能及び対イオンにより決定され、維持される(Karow et al. 2013、前出)。
【0244】
産物の質は、乳白光及びHP-SEC単量体含量を介してモニターする。伝導率をプロセス制御のために使用する。予測通り、DF2の後、伝導率は1センチメートル当たり15ミリシーメンス(mS/cm)から1mS/cm近くまで減少する。UF1の間に、乳白光は、コハク酸の存在において、10mg/mLでの8FNUから40mg/mLでの20FNU超まで増加する。DF1においてコハク酸を酢酸と交換することによって、乳白光は~17FNUまで低下する。DF2の間に酢酸を除去することによって、乳白光はさらに3~4FNUまで低下する。UF2におけるタンパク質1の最終濃度の後、乳白光は再び増加するが、しかし、わずか6~7FNUまでである(図4Bを参照のこと)。タンパク質の初期単量体含量は97.5%であり、プロセスを通じてほぼ一定のままである。
【0245】
図4Bは、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0246】
実施例2
‐DF1においてpH変化を伴うコハク酸-酢酸交換‐
実施例2に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のコハク酸緩衝液イオンを低レベルの酢酸で置換し、ここでDF1工程においてpHを変化させた。
【0247】
実施例2の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:10mg/ml Prot1/25mM コハク酸/125mM NaCl/水/pH6.5;
DF1:500mM酢酸/水/pH6.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):138mg/ml Prot1/20mM酢酸/水/pH 6.4。
【0248】
図5Aは、実施例2に従い、より高いpHでのコハク酸-酢酸交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM酢酸ナトリウムpH6.0(DF1)の4サイクル、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)を用いた6サイクルの透析濾過(DF2)を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(酢酸)への賦形剤の全交換を提供する。陰イオンの濃度は、タンパク質の正の正味電荷量に依存し、それは主にpH及びタンパク質の濃度により影響される。
【0249】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#3/#4、DF2のサイクル#2/#6、及びUF2の終了時の最終産物(ProdPool)である。
【0250】
図5Bは、実施例2のコハク酸-酢酸交換の伝導率、乳白光、及び単量体含量の結果を示す。
【0251】
実施例1の4工程UF/DFプロセスのこの実施形態を繰り返したが、しかし、DF1工程における変化を伴い、即ち、pH5ではなくpH6で500mM酢酸ナトリウムに対して透析濾過した(図5A)。図4A及び5Aを比較することによって、コハク酸クリアランスが両方の実施例において同様の値に達することが示される。実施例2において、最終産物プールは、対イオンとして~20mMの酢酸(酢酸/タンパク質比22:1)を伴い、検出可能なコハク酸を伴わない、pH6.4での138mg/mLのタンパク質1である。
【0252】
DF1におけるpH6への1単位の増加によって、実施例1よりもわずかに高い乳白光に導かれる。単量体含量は、実施例1と同じレベルで、全体を通して不変のままである(図5B)。
【0253】
図5Bはまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0254】
実施例3
‐クエン酸-塩化物交換‐
実施例3に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のクエン酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0255】
実施例3の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:10mg/ml Prot1/48mM クエン酸/水/pH6.1;
DF1:500mM塩化ナトリウム/水/pH6.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):144mg/ml Prot1/20mM塩化物/水/pH 5.8。
【0256】
図6Aは、実施例3に従ったクエン酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質1のUF/DFプロセス(Prot1)の間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM NaCl pH6.0の4サイクル(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)を用いた6サイクルの透析濾過(DF2)を伴う透析濾過工程を含み、DF1の陰イオン成分(塩化物)に対する初期溶液からの賦形剤の全交換を提供する。
【0257】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1の終了、DF2の終了、及びUF2の終了時の最終産物(ProdPool)である。
【0258】
図6Bは、実施例3のクエン酸-塩化物交換の伝導率、乳白光、及び単量体含量の結果を示す。
【0259】
実施例3において、クエン酸を除去し、塩化物と交換した(図6A)。初期タンパク質溶液は、pH6.5で追加の塩を伴わない48mMクエン酸ナトリウムを伴う10mg/mLのタンパク質1 mAbで構成される(図6A)。
【0260】
UF1によってタンパク質を40mg/mL mAbに濃縮した後、DF1をpH6.0の500mM塩化ナトリウムに対して実行する。4回の透析濾過サイクル後、クエン酸濃度を2mMに低下させる。
【0261】
pH6の純水に対する6回のDF2透析濾過サイクルは次に、全てのクエン酸を完全に除去するのに十分である。現在のプロセスを用いて、このように、タンパク質を損傷しうる20、30、又は40の透析濾過サイクルに頼ることなく、クエン酸を完全に低下させることが可能である。
【0262】
最終産物プールは、対イオンとして20mM塩化物陰イオンを伴うpH5.8の144mg/mLタンパク質1であり、塩化物/タンパク質の比率は21:1~26:1である。
【0263】
産物の質の指標(図6B)は、4つの工程の経過にわたり単量体含量における小さな(0.4%)減少を示す。そのような減少は、タンパク質が100mg/mLレベルまで濃縮される場合には異常ではない。その程度は、標的タンパク質濃度、UF/DFの剪断応力へのタンパク質の感度、緩衝剤、及びプロセス条件(例、膜材料、膜貫通圧力、流動)に依存する。
【0264】
図6Bはまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を示す。
【0265】
実施例4
‐クエン酸-酢酸交換‐
実施例4に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のクエン酸緩衝液イオンを酢酸で置換した。
【0266】
実施例4の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:10mg/ml Prot1/48mMクエン酸/水/pH6.1;
DF1:500mM酢酸/水/pH6.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):160mg/ml Prot1/23mM酢酸/水/pH 6.4。
【0267】
図7Aは、実施例4に従ったクエン酸-酢酸交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM酢酸ナトリウムpH6.0の4サイクル(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)を用いた6サイクルの透析濾過(DF2)を伴う透析濾過工程を含み、DF1の陰イオン成分(酢酸)に向かって初期溶液から賦形剤を完全に交換する。
【0268】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF2の終了、及びUF2の終了時の最終産物(ProdPool)である。
【0269】
図7Bは、実施例4のクエン酸-酢酸交換の伝導率、乳白光、及び単量体含量の結果を示す。
【0270】
実施例4において、初期のクエン酸緩衝液を酢酸と交換して除去した(図7A)。初期溶液は、pH6.1の48mMクエン酸ナトリウムを伴う10mg/mLタンパク質1である。
【0271】
DF1において、40mg/mLタンパク質溶液をpH6.0の500mM酢酸ナトリウムに対して透析濾過する。クエン酸は簡単に除去され、6回のDF2サイクル後に検出限界未満まで下落する。そしてUF2後、最終産物プールは、23mM酢酸対イオンを伴うpH6.4での160mg/mLタンパク質1である(約22:1の酢酸/タンパク質比率について)。
【0272】
これらのUF/DF緩衝液条件下で、単量体含量は初期溶液から最終産物プールまで約0.9%だけ減少した(図7B)。しかし、単量体含量がわずかだけ低下するように又は不変に維持されるように、このプロセスの変法を産物の質を考慮して最適化することは容易に可能でありうる。
【0273】
図7Bはまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0274】
実施例5
‐コハク酸-塩化物交換‐
実施例5に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のコハク酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0275】
実施例5の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:10mg/ml Prot1/25mMコハク酸/125mM NaCl/水/pH6.5;
DF1:500mM NaCl/水/pH6.2を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):157mg/ml Prot1/18mM塩化物/水/pH6.4。
【0276】
図8は、実施例5に従ったコハク酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上には、タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度が記入され、UF/DFプロセスは、4サイクルの500mM NaCl pH6.2(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)を用いた6サイクルの透析濾過(DF2)を伴う透析濾過工程を含み、DF1の陰イオン成分(塩化物)に対する初期溶液からの賦形剤の全交換を提供する。陰イオンの濃度は、タンパク質の正の正味電荷量に依存し、それは主にpH及びタンパク質の濃度により影響される。
【0277】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1の終了、DF2の終了、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0278】
実施例6
‐酢酸-塩化物交換‐
実施例6に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期の酢酸(accetate)緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0279】
実施例6の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:11mg/ml Prot1/139mM酢酸/150mM NaCl/水/pH5.8;
DF1:500mM NaCl/水/pH6.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):157mg/ml Prot1/23mM塩化物/水/pH 5.7。
【0280】
図9は、実施例6に従った酢酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質1(Prot1)のUF/DFプロセスの間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM NaCl pH6.0の4サイクル(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)(DF2)を用いた6サイクルの透析濾過を含む透析濾過工程を含み、DF1の陰イオン成分(塩化物)に対する初期溶液からに賦形剤の全交換を提供する。陰イオンの濃度は、タンパク質の正の正味電荷量に依存し、それは主にpH及びタンパク質の濃度により影響される。
【0281】
x軸は工程段階及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1の終了、DF2の終了、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0282】
実施例5及び6において、塩化物のコハク酸への交換(図8)及び塩化物の酢酸への交換(図9)を評価した。各々の場合において、DF1を500mM塩化ナトリウムに対して4サイクル、続いて純水に対して6つのDF2サイクルを実行する。両方の場合において、初期の緩衝液イオンは完全に除去され、産物プールは157mg/mLタンパク質1であり、約20:1の塩化物/タンパク質1比率を伴う。産物の質の指標は予測される範囲内であり、プロセスにより損なわれなかった(データは示さず)。
【0283】
実施例7
‐リン酸-コハク酸交換‐
実施例7に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のリン酸緩衝液イオンをコハク酸で置換した。
【0284】
二次抗体、IgG1 mAbタンパク質2をテストし、別のタンパク質を用いた二重透析濾過UF/DFの性能を検証した(図10A及び10B)。
【0285】
実施例7の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:20mg/ml Prot2/13mMリン酸/146mMスクロース/水/pH7.3;
DF1:500mMコハク酸/水/pH5.7を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):89mg/ml Prot2/4mMコハク酸/水/pH 6.3。
【0286】
図10Aは、実施例7に従ったリン酸-コハク酸交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質2のUF/DFプロセス(Prot2)の間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、4サイクルの500mMコハク酸ナトリウムpH5.7(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH6)(DF2)を用いた6サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(コハク酸)に向かって賦形剤の全交換を提供する。
【0287】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#1/#2/#3/#4/#5/#6、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0288】
図10Bは、実施例7のリン酸-コハク酸交換の伝導率、乳白光、及び単量体含量の結果を示す。
【0289】
実施例7(図10A及び10B)は、pH7.3の13mMリン酸ナトリウム及び146mMスクロース中の20mg/mLタンパク質2の初期溶液を用いて開始した(Wang W. (1999) Instability, stabilization, and formulation of liquid protein pharmaceuticals. International Journal of Pharmaceutics 185, 129-188.)。UF1によってタンパク質が30mg/mL超に濃縮された。DF1をpH5.7の500mMコハク酸ナトリウムに対して実行し、次にリン酸を完全に除去した。水に対するDF2及びUF2の後、産物プールは、4mMコハク酸及び10:1を下回るコハク酸/タンパク質比率を伴う89mg/mLタンパク質2であった(これらのpH条件下で、コハク酸は-2の電荷を有することに注意すること)。
【0290】
コハク酸は乳白光及び凝集の強い増加に関連付けられる(図10B):30~89mg/mLの最終UF2濃度の間に、単量体含量はおよそ2%だけ下落する。これは、スクロースの非存在における抗体-コハク酸製剤についてのより高いタンパク質濃度での低下したタンパク質安定性を示す(Ross P.D. and Shrake A. (1988), Decrease in stability of human albumin with increase in protein concentration, Journal of Biological Chemistry 263, 11196-11202を参照のこと)。
【0291】
図10Bはまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0292】
実施例8
‐リン酸-クエン酸交換‐
実施例8に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のリン酸緩衝液イオンをクエン酸で置換した。
【0293】
実施例8の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:20mg/ml Prot2/13mMリン酸/146mMスクロース/水/pH7.3;
DF1:500mMクエン酸/水/pH6.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):64mg/ml Prot2/1.5mMクエン酸/水/pH7.0。
【0294】
図11は、実施例8に従ったリン酸-クエン酸交換の結果を示す。y軸上には、タンパク質2のUF/DFプロセス(Prot2)の間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、4サイクルの500mMクエン酸ナトリウムpH6.0(DF1)、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH7)(DF2)を用いた6サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(クエン酸)に向かって賦形剤の全交換を提供する。
【0295】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#1/#2/#3/#4/#5/#6、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0296】
実施例9
‐リン酸-塩化物交換‐
実施例9に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期のリン酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0297】
実施例9の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:20mg/ml Prot2/13mMリン酸/146mMスクロース/水/pH7.3;
DF1:500mM NaCl/水/pH7.0を用いた4サイクル;
DF2:水を用いた6サイクル;
UF2(産物プール):87mg/ml Prot2/3mM塩化物/水/pH7.0。
【0298】
図12は、実施例9に従ったリン酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上には、タンパク質2のUF/DFプロセス(Prot2)の間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM NaCl pH7.0(DF1)の4サイクル、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH7)(DF2)を用いた6サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(塩化物)に向かった賦形剤の全交換を提供する。
【0299】
x軸は工程段階及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#1/#2/#3/#4/#5/#6、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0300】
リン酸は、クエン酸又は塩化物のいずれかとの交換により完全に除去することができる(図11及び12)。実施例8において、タンパク質2及びリン酸の初期溶液をクエン酸に対して透析濾過した。粘度が増加し、処理量が落ち、最終産物プールの濃度はちょうど64mg/mLタンパク質2であった。実施例9において、初期リン酸溶液をDF1中の塩化物に対して透析濾過し、最終産物プールは87mg/mLの濃度に達した。一般的に、タンパク質2は同様の条件下でタンパク質1よりも溶解度が低いことが観察された。興味深いことに、陰イオン/タンパク質比率は5:1を下回る。
【0301】
実施例10
‐コハク酸-塩化物交換‐
実施例10に従い、本発明に従った4工程UF/DF法の実施態様を適用してタンパク質を濃縮し、初期のコハク酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0302】
実施例10の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:8mg/ml Prot3/25mMコハク酸/水/pH4.4;
DF1:200mM NaCl/水/pH4.5を用いた8サイクル;
DF2:水を用いた5サイクル;
UF2(産物プール):125mg/ml Prot3/30mM塩化物/水/pH 4.5。
【0303】
図13Aは、実施例10に従ったコハク酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上に、タンパク質3のUF/DFプロセス(Prot3)の間での賦形剤及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、200mM NaCl pH4.5(DF1)の8サイクル、続いて1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)(pH4.5)(DF2)を用いた5サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(塩化物)に向かった賦形剤の全交換を提供する。
【0304】
x軸はプロセス工程及び対応するpHを調整する。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1の終了、DF2の終了、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0305】
図13Bは、実施例10のコハク酸-塩化物交換の単量体含量及びIECの主ピークの結果を示す。
【0306】
実施例10において、ナノボディであるタンパク質3を調整及び濃縮するためにAmicon超遠心フィルターユニットを使用して、UF/DFプロセスを小規模でテストした。実施例10として、コハク酸の塩化物でのDF1置換を評価した(図13A)。初期タンパク質溶液は、酸性条件下(pH4.4)の25mMコハク酸中の8mg/mLタンパク質3である。
【0307】
UF1工程によって45mg/mL超のタンパク質3まで濃度が増加した。タンパク質3は高イオン強度で溶解度の問題を示したため、DF1を200mM塩化ナトリウムに対して8サイクルにわたり実行した;これはコハク酸を完全に除去するのに十分であった。純水に対する5回のDF2サイクルによって塩化物含量が13mMに低下した。UF2によって最終産物プールの濃度が~30mM塩化物中の125mg/mLタンパク質3になり、10:1~14:1の間の塩化物/タンパク質比率を伴った。
【0308】
これらのプロセス条件下では、イオン交換ピークの主ピークは不変であり、高性能サイズ排除クロマトグラフィー(HP-SEC)により測定した凝集体の量はちょうど0.5%~0.8%だけ低下しており、それはナノボディについて高度に許容可能と考えられる(図13B)。
【0309】
図5Bはまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0310】
実施例11
‐リン酸-塩化物交換‐
実施例11に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期リン酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0311】
使用した生体分子(以後「Prot4」として命名)はFc融合タンパク質であった。
FC融合タンパク質のアミノ酸配列は以下の通りであった:
【化3】
【0312】
この配列を添付の配列リストにおいて配列番号3(「人工配列」、「FC融合タンパク質」)として列挙する。
【0313】
実施例11の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:5mg/ml Prot4/27mMリン酸/5mM塩化物/水/pH7.6;
DF1:500mM NaCl/水/pH7.0を用いた4サイクル;
DF2:水/0.002重量%NaClを用いた8サイクル;
UF2(産物プール):212mg/ml Prot4/水/pH 7.2。
【0314】
図14は、実施例11に従ったリン酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上には、タンパク質4(Prot4)のUF/DFプロセスの間での単量体含量、賦形剤、及びタンパク質濃度を記入し、UF/DFプロセスは、500mM NaCl pH7.0(DF1)の4サイクル、続いて0.002重量%NaCl(pHを7)含む1型の超純水(例、Merck MilliporeのMilliQ(登録商標)水)を用いた8サイクルの透析濾過を伴う透析濾過工程(DF2)を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(塩化物)に向かった賦形剤の全交換を提供する。
【0315】
x軸は工程段階を示す。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#1/#2/#3/#4/#5/#6/#7/#8、UF2のサンプリング点#1/#2/#3/#4/#5、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0316】
産物プール中の最終タンパク質濃度212mg/mlで塩化物と置換することにより、リン酸を完全に除去することができる。5mg/mlの初期溶液から212mg/mlの産物プールまで、0.2%の単量体含量の全喪失を観察することができたが、それは融合タンパク質について高度に許容可能であると考えられる(図14)。
【0317】
図14はまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0318】
実施例12
‐酢酸/コハク酸/クエン酸-塩化物交換‐
実施例12に従い、本発明に従った4工程UF/DF方法の実施態様を適用してタンパク質を濃縮し、初期の酢酸、コハク酸、及びクエン酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。
【0319】
使用した生体分子(以後「Prot5」として命名)は、この重鎖(アミノ酸一文字コード、NからC末端):
【化4】

及びこの軽鎖(アミノ酸一文字コード、NからC末端):
【化5】

を含むリツキシマブの公開配列と100%同一である配列を有した。
【0320】
配列を添付の配列リストにおいて配列番号4(「人工配列」、「リツキシマブHC」)及び配列番号5(「人工配列」、「リツキシマブLC」)として列挙する。
【0321】
実施例12の詳細な条件は以下の通りであった:
UF1:16mg/ml Prot5/50mM酢酸/53mMコハク酸/51mMクエン酸/水/pH5.0;
DF1:500mM NaCl/水/pH7.0を用いた4サイクル;
DF2:水/0.002重量%NaClを用いた8サイクル;
UF2(産物プール):160mg/ml Prot5 /水/pH 4.9。
【0322】
図15は、実施例12に従った酢酸/コハク酸/クエン酸-塩化物交換の結果を示す。y軸上には、タンパク質5(Prot5)のUF/DFプロセスの間での賦形剤濃度、タンパク質濃度及び単量体含量を記入し、UF/DFプロセスは、500mM NaCl pH7.0の4サイクル(DF1)、それに続く0.002重量%NaCl(pH7)を含む1型の超純水(例、MilliQ(登録商標)Milliporeの水)を用いた8サイクルの透析濾過(DF2)を伴う透析濾過工程を含み、初期溶液からDF1の陰イオン成分(塩化物)に向かって賦形剤の全交換を提供する。
【0323】
x軸はプロセス工程を示す。x軸上のそれぞれの点は、初期、UF1の終了、DF1のサイクル#1/#2/#3/#4、DF2のサイクル#1/#2/#3/#4/#5/#6/#7/#8、及びUF2の終了時での最終産物(ProdPool)である。
【0324】
3つのカルボン酸、酢酸、コハク酸、及びクエン酸は、塩化物との交換により完全に除去することができる。最終濃縮工程(UF2)の間に、タンパク質が濃縮されたのと同じ方法で塩化物イオンだけを濃縮する。陰イオンの酢酸、コハク酸、及びクエン酸の濃度は、定量限界(LOQ)未満のままである。UF2の終了時での4.9の酸性pHのために、塩化対イオンの量は40mMの高レベルを示した。
【0325】
これらのプロセス条件下で、超高性能サイズ排除クロマトグラフィー(UP-SEC)により測定された単量体含量は、初期のパーセンテージのままであり、プロセスの間に変化しなかった。
【0326】
図15はまた、プロセスの工程全体にわたる高度の単量体含量に関して良好な産物の質を例証する。
【0327】
結果として、提示する実施例は、本発明に従ったプロセスを抗体ならびに非抗体フォーマットのために使用することができることを示す。それによって、明確に定義された製剤を調整することが可能になり、追加の賦形剤を添加することにより、特異的で十分に定義された製剤を生成することができる。
【0328】
実施例13
プロセスのロバスト性
‐酢酸-塩化物交換における例示的な実証‐
本発明に従ったプロセスが一貫した結果に導く信頼できる方法を表すか否かを決定するために、プロセスを3回繰り返してプロセスのロバスト性を検証した。すなわち、最初に、順序UF1/DF1/DF2/UF2を含む工程(a)~(d)を含む本発明のプロセスを実施し、結果として得られた(第1の)生体分子製剤を検証した。次に、同じ出発材料及び同じ条件を使用した同じプロセスを繰り返し、結果として得られた(第2の)生体分子製剤を研究した。最後に、同じ出発材料及び同じ条件を使用した同じプロセスを再び繰り返し、結果として得られた(第3の)生体分子製剤を研究した。3つ全ての製剤の比較は、同じ出発材料及び同じ工程条件を使用した場合、得られる3つの生体分子製剤の結果が同じか又は実際に同じ(可能な耐容内)であるか否かを示し、プロセスが信頼できる方法であると結論付けることができる。
【0329】
第1の実行を行う
【0330】
実施例13に従い、本発明に従った4工程UF/DFプロセスの実施形態を適用してタンパク質を濃縮し、初期アクセプター酸緩衝液イオンを塩化物で置換した。実施例6において既に記載したのと同じ手順を実施したが、しかし、詳細な条件を以下のように選択した:
【0331】
UF1:10mg/ml Prot1/約150mM酢酸/約170mM NaCl/水/pH5.9;
DF1:500mM NaCl/水/pH6を用いた4サイクル;
DF2:水/0.002重量%NaClを用いた6サイクル。
【0332】
最後の工程(d)において、得られた産物は以下の通りであった:
【0333】
UF2-1(産物プール):198mg/ml Prot1/21mM塩化物/水/pH5.7。
【0334】
UF2後の酢酸の量は除去され、アッセイのLOQに近いことが見出された。
【0335】
第2の実行を行う
【0336】
上の4工程UF/DFプロセスを、以前と同じ出発材料及び同じ条件を用いて繰り返した。最後の工程(d)において、得られた産物は以下の通りであった:
【0337】
UF2-2(産物プール):195mg/ml Prot1/21mM塩化物/水/pH5.7。
【0338】
UF2後の酢酸の量は除去され、アッセイのLOQに近いことが見出された。
【0339】
第3の実行を行う
【0340】
上の4工程UF/DFプロセスを、以前と同じ出発材料及び同じ条件を用いて再び繰り返した。最後の工程(d)において、得られた産物は以下の通りであった:
【0341】
UF2-3(産物プール):202mg/ml Prot1/20mM塩化物/水/pH5.7。
【0342】
UF2後の酢酸の量は除去され、アッセイのLOQに近いことが見出された。
【0343】
結果として、全ての3回の実行によって(許容可能な耐容内の)同じ又はほぼ同じ結果に導かれ、本発明に従ったプロセスが、一貫した結果を提供する信頼できるプロセスであることが実証されている。
【0344】
本発明は、以下の文章において開示する態様を含む:
文章
1.生体分子を含む高濃縮液体製剤の調製のためのプロセスであって、以下の工程を含む:
(a)第1の限外濾過UF1;
(b)第1の透析濾過DF1;
(c)第2の透析濾過DF2;及び
(d)第2の限外濾過UF2;
それにより、液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、液体媒体Cとして水あるいは1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し、それにより、工程(b)について使用される塩は、工程(c)について使用される塩と同じか又は異なり、液体媒体Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する。
【0345】
2.文章1に従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
液体媒体Bは濃度の形式で示す高いイオン強度を有し、それは約20mMから塩の溶解度の限界まで、特に好ましくは約100mM~1000mM、より好ましくは約150mM~750mM、又は最も好ましくは約200mM~500mMの範囲であり、
及び、好ましくは
液体媒体Cは濃度の形式で示す低いイオン強度を有し、それは約0mM~150mM、特に好ましくは約0mM~100mM、より好ましくは約0mM~75mM、最も好ましくは約0mM~50mMの範囲である。
【0346】
3.文章1又は2に従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
液体媒質Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有し、濃度の形式で示す液体媒体Bのイオン強度と液体媒体Cのイオン強度の間の差は、少なくとも約100mM、より好ましくは少なくとも約200mM、最も好ましくは少なくとも約500mMであるようにする。
【0347】
4.先行する文章1~3のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
工程(a)において使用される液体生体分子製剤は、水溶液であり、1つ又は複数の賦形剤を含む液体媒体Aを含み、液体媒体Aは、工程(b)及び(c)において液体媒体Bによって液体媒体Cと交換され、それにより、工程(c)及び(d)において得られた液体生体分子製剤は、前記賦形剤の低下した含量を有する。
【0348】
5.文章4に従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
賦形剤は、水溶液中で荷電又は中性の賦形剤からなる群より選択され;
好ましくは、生体分子の調製又は処理において使用される添加剤からなる群より選択される賦形剤;不要な物質又は化合物、例えば出発液体生体分子製剤中に含まれる不純物など;生体分子の製造プロセスの間に形成される望ましくない副産物;生体分子の産生の間に形成される出発、中間、又は最終産物の分解又は分解産物;
特に好ましくは、細胞成分又は破片、細菌の分解産物、例えば内毒素、DNA、RNA、望ましくない脂質、HCP(宿主細胞タンパク質)、リポ多糖(LPS)、又はそれらの部分など;糖;界面活性剤、例えば正に荷電した、負に荷電した、及びまた非イオン性の種など;好ましくは塩から生じる任意の種類の負又は正に荷電したイオン。
【0349】
6.先行する文章1~5のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
塩は有機塩及び/又は無機塩より選択される。
【0350】
7.先行する文章1~6のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
無機塩は、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ハロゲン化物、ホウ酸、ケイ酸(silkates)などのアルカリ塩又はアルカリ土類塩からなる群より選択される、
又は
無機塩は、医薬的に許容可能な無機塩、好ましくはナトリウム塩、例えばハロゲン化ナトリウム、特に好ましくは塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム;カルシウム塩、例えばハロゲン化カルシウムなど、特に好ましくは塩化カルシウム、硫酸カルシウム、ホウ酸カルシウム;マグネシウム塩、例えばハロゲン化マグネシウムなど、特に好ましくは塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、ホウ酸マグネシウム、及びそれらの組み合わせ、
最も好ましくは、無機塩は塩化ナトリウムである。
【0351】
8.先行する文章1~7のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
液体媒体Bは、塩化ナトリウムを約150~約900mM、ますます好ましくは約200~約700mM、約400~約600mM、及び約450~約550mMの濃度で含む。
【0352】
9.先行する文章1~7のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
塩は有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩である。
【0353】
10.先行する文章1~9のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
緩衝塩は緩衝剤、好ましくは生物学的緩衝剤を基礎とし、N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸(ACES)及びその塩、酢酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸 酸(ADA)及びその塩、アンモニア及びその塩、塩化アンモニウム、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アンメドール(AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)及びその塩、N、N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸 BES)及びその塩、安息香酸及びその塩、重炭酸塩(例えば炭酸水素ナトリウムなど)、N、N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-グリシン(ビシン)、トリス緩衝剤(例えばトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタンなど)、[ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ]-トリス-(ヒドロキシメチルメタン)(ビス-トリス)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン(ビス-トリス-プロパン)、ホウ酸及びその塩、ジメチルアルシン酸(カコジル酸)及びその塩 、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)及びその塩、炭酸及びその塩、炭酸塩(例えば炭酸ナトリウムなど)、シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)及びその塩、クエン酸及びその塩、3-[N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)及びその塩、ギ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、グリセリン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、グリシン(例えばグリシルグリシンなど)、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS、EPPS)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)及びその塩、イミダゾール、乳酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)及びその塩、リン酸及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)及びその塩、ピリジン、コハク酸及びその塩、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アミノ}-プロパンスルホン酸(TAPS)及びその塩、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)及びその塩、酒石酸及びその塩、タウリン(2-アミノエタンスルホン酸、AES及びその塩)、トリエタノールアミン(TEA)、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)及びその塩、ならびにN-[トリス(ヒドロキシメチル)]-メチル]-グリシン(トリシン)からなる群より選択され;
又は、生物学的緩衝液は水溶液中のアミノ酸であり、アミノ酸は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群より選択される;
特に好ましい生物学的緩衝剤は、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、トリス、コハク酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、塩化アンモニウム、トリエタノールアミン、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びプロリンからなる群より選択される。
【0354】
11.先行する文章1~10のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
液体媒体Cは水からなる又は本質的になる。
【0355】
12.先行する文章1~11のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
液体生体分子製剤から除去される生体分子及び賦形剤は反対の電荷を有し、
好ましくは、生体分子は正に荷電しており、本プロセスにより除去される賦形剤は負に荷電した賦形剤であり、
最も好ましくは、生体分子は正に荷電したタンパク質であり、負に荷電した賦形剤は陰イオンである。
【0356】
13.先行する文章1~12のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
プロセス工程(b)はその後の工程(c)を実施する前に数回繰り返してもよく、好ましくは液体媒体Bの交換はx媒体サイクルで実施してもよく、それによりx=2~10、より好ましくはx=2~8、最も好ましくはx=2~6である。
【0357】
14.先行する文章1~13のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
プロセス工程(c)はその後の工程(d)を実施する前に数回繰り返してもよく、好ましくは液体媒体Cの交換はy媒体サイクルで実施してもよく、それによりy=2~10、より好ましくはy=2~8、最も好ましくはy=2~6である。
【0358】
15.先行する文章1~14のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
工程(a)の限外濾過UF1を使用し、液体生体分子製剤を、液体生体分子製剤の初期濃度と比較して、好ましくは約10%~70%、より好ましくは約15%~60%、最も好ましくは約25%~50%まで濃縮する。
【0359】
16.先行する文章1~15のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
工程(d)の限外濾過UF 2を使用し、液体生体分子製剤を所望の値に濃縮する。
【0360】
17.先行する文章1~16のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
工程(b)及び工程(c)は直接順々に続き、それにより中間プロセス工程はその間に実施しない、
好ましくは、工程(a)及び工程(b)もまた直接順々に続き、それにより中間プロセス工程をその間に実施しない、及び
好ましくは、工程(c)及び工程(d)もまた直接順々に続き、それによりその間に中間プロセス工程を実施しない。
【0361】
18.先行する文章1~17のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
生体分子は以下からなる群より選択される:
‐小分子、好ましくは脂質、例えばリン脂質、糖脂質、ステロールなど;ビタミン;ホルモン;神経伝達物質
‐単量体、好ましくはアミノ酸、ヌクレオチド、単糖類;
‐生体高分子、好ましくはタンパク質又はペプチド;核酸、例えばDNA、RNAなど;オリゴ糖、多糖、例えばグリコーゲン、デンプン、キチン、セルロース、フルクタン、デキストランなど;
特に好ましいのはタンパク質又はペプチド、核酸、オリゴ糖、及び多糖;
最も好ましくはタンパク質又はペプチド。
【0362】
19.先行する文章1~18のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
プロセス工程(a)~(d)は室温(20~25℃)で実施する。
【0363】
20.先行する文章1~19のいずれかに従ったプロセスであって、
以下を特徴とする
プロセス工程(a)~(d)を、接線流濾過(TFF)システム又は遠心濾過システムを使用して実施する。
【0364】
21.文章1~20のいずれかに従ったプロセスにより調製された生体分子を含む高濃縮液体製剤。
図1A
図1B
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11
図12
図13A
図13B
図14
図15
【配列表】
2024081786000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-04-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質を含む、高度に濃縮された安定な液体製剤であって、
タンパク質が、70mg/ml以上の濃度で存在し、
以下の工程:
(a)第1の限外濾過UF1;
(b)第1の透析濾過DF1;
(c)第2の透析濾過DF2;及び
(d)第2の限外濾過UF2;
を含むプロセスによって調製され、
液体媒体Bとして1つ又は複数の塩の水溶液を工程(b)について使用し、
液体媒体Cとして水あるいは1つ又は複数の塩の水溶液を工程(c)について使用し、
工程(b)について使用される1つ又は複数の塩は、工程(c)について使用される1つ又は複数の塩と同じか又は異なり、
液体媒体Bは、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有し、
工程(a)において、水溶液であり、1つ又は複数の賦形剤を含む液体媒体Aを含む液体生体分子製剤が使用され、
液体生体分子製剤に存在する望ましくない賦形剤のレベルが、第1及び第2の透析濾過DF1及びDF2無しのプロセスによって調製された同一のタンパク質濃度のタンパク質を含む、高度に濃縮された安定な液体製剤に存在するものより低く、DF1の液体媒体Bが、DF2の液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有する、
前記製剤。
【請求項2】
各工程が、(a)から(d)の順序で行われる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記液体生体分子製剤に存在する望ましくない賦形剤の濃度が、検出限界未満である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
陰イオン性賦形剤の持ち越し汚染の程度が、有意に低下又は最小化している、請求項1~3のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項5】
前記溶液が、タンパク質固有の電荷のバランスをとるために十分な交換媒体(B)対イオンだけを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項6】
DF1が、500mM酢酸/水/pH5.0で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mM酢酸/水/pH6.0で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMNaCl/水/pH6.0で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMNaCl/水/pH6.2で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMコハク酸/水/pH5.7で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMクエン酸/水/pH6.0で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMNaCl/水/pH7.0で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、200mMNaCl/水/pH4.5で行われ、DF2が、水で行われるか、
DF1が、500mMNaCl/水/pH7.0で行われ、DF2が、水/0.002重量%NaClで行われるか、又は
DF1が、500mMNaCl/水/pH6.0で行われ、DF2が、水/0.002重量%NaClで行われる、請求項1~5のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項7】
液体媒体Bが、20mMから塩の溶解度の限界までの範囲である濃度の形式で示す高いイオン強度を有し、
及び、
液体媒体Cが、0mM~150mMの範囲である濃度の形式で示す低いイオン強度を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項8】
液体媒体Bが、100mM~1000mMの範囲である濃度の形式で示す高いイオン強度を有し、
及び、
液体媒体Cが、0mM~100mMの範囲である濃度の形式で示す低いイオン強度を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項9】
液体媒質Bが、液体媒体Cのイオン強度よりも高いイオン強度を有し、濃度の形式で示す液体媒体Bのイオン強度と液体媒体Cのイオン強度の間の差が、少なくとも100mMである、請求項1~8のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項10】
濃度の形式で示す液体媒体Bのイオン強度と液体媒体Cのイオン強度の間の差が、少なくとも200mMである、請求項1~9のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項11】
工程(a)において使用される液体生体分子製剤が、水溶液であり、1つ又は複数の賦形剤を含む液体媒体Aを含み、液体媒体Aは、工程(b)及び(c)において液体媒体Bによって液体媒体Cと交換され、それにより、工程(c)及び(d)において得られた液体生体分子製剤は、前記賦形剤の低下した含量を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項12】
賦形剤が、水溶液中で荷電している又は中性である賦形剤;及び生体分子の調製又は処理において使用される添加剤である賦形剤からなる群より選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項13】
添加物が、細胞成分又は破片、細菌の分解産物、糖、界面活性剤に由来する、請求項1~12のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項14】
塩が、有機塩及び/又は無機塩より選択される、請求項1~13のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項15】
無機塩が、硫酸、硝酸、リン酸、炭酸、ハロゲン化物、ホウ酸、及びケイ酸のアルカリ塩又はアルカリ土類塩からなる群より選択される、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
無機塩が、ナトリウム塩;カルシウム塩;マグネシウム塩又はそれらの組み合わせを含む医薬的に許容可能な無機塩の群より選択される、請求項14又は15に記載の製剤。
【請求項17】
ナトリウム塩が、ハロゲン化ナトリウム、硫酸ナトリウム、又はホウ酸ナトリウムを含み;
カルシウム塩が、ハロゲン化カルシウム、硫酸カルシウム、又はホウ酸カルシウムを含み;
マグネシウム塩が、ハロゲン化マグネシウム、硫酸マグネシウム、又はホウ酸マグネシウムを含む、請求項16記載の製剤。
【請求項18】
ハロゲン化物が、塩化物を含む、請求項17記載の製剤。
【請求項19】
液体媒体Bが、塩化ナトリウムを150mM~900mMの濃度で含む、請求項1~18のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項20】
塩が、有機緩衝塩及び/又は無機緩衝塩である、請求項1~19のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項21】
緩衝塩が、N-(2-アセトアミド)-アミノエタンスルホン酸(ACES)及びその塩、酢酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アジピン酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、N-(2-アセトアミド)-イミノ二酢酸(ADA)及びその塩、アンモニア及びその塩、塩化アンモニウム、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、アンメドール(AMPD)、N-(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(AMPSO)及びその塩、N、N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)及びその塩、安息香酸及びその塩、重炭酸塩、N、N’-ビス(2-ヒドロキシエチル)-グリシン(ビシン)、トリス緩衝剤、[ビス-(2-ヒドロキシエチル)-イミノ]-トリス-(ヒドロキシメチルメタン)(ビス-トリス)、1,3-ビス[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]プロパン(ビス-トリス-プロパン)、ホウ酸及びその塩、ジメチルアルシン酸(カコジル酸)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-プロパンスルホン酸(CAPS)及びその塩、3-(シクロヘキシルアミノ)-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(CAPSO)及びその塩、炭酸及びその塩、炭酸塩、シクロヘキシルアミノエタンスルホン酸(CHES)及びその塩、クエン酸及びその塩、3-[N-ビス(ヒドロキシエチル)アミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)及びその塩、ギ酸及びその塩、グルコン酸及びその塩、グリセリン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、グリシン、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-エタンスルホン酸(HEPES)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-3-プロパンスルホン酸(HEPPS、EPPS)及びその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン-N’-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(HEPPSO)及びその塩、イミダゾール、乳酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、マレイン酸及びその塩、2-(N-モルホリノ)-エタンスルホン酸(MES)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-プロパンスルホン酸(MOPS)及びその塩、3-(N-モルホリノ)-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)及びその塩、リン酸及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)及びその塩、ピペラジン-N、N’-ビス(2-ヒドロキシプロパンスルホン酸)(POPSO)及びその塩、ピリジン、コハク酸及びその塩、3-{[トリス(ヒドロキシメチル)-メチル]-アミノ}-プロパンスルホン酸(TAPS)及びその塩、3-[N-トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸(TAPSO)及びその塩、酒石酸及びその塩、タウリン(2-アミノエタンスルホン酸、AES及びその塩)、トリエタノールアミン(TEA)、2-[トリス(ヒドロキシメチル)-メチルアミノ]-エタンスルホン酸(TES)及びその塩、ならびにN-[トリス(ヒドロキシメチル)]-メチル]-グリシン(トリシン)からなる群より選択される、請求項1~20のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項22】
緩衝塩又は緩衝剤が、水溶液中のアミノ酸である生物学的緩衝剤であり、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンからなる群より選択される;
又は、緩衝塩又は緩衝剤が、リン酸及びその塩、クエン酸及びその塩、トリス、コハク酸及びその塩、リンゴ酸及びその塩、酒石酸及びその塩、酢酸及びその塩、乳酸及びその塩、アコニット酸及びその塩、アスコルビン酸及びその塩、グルタミン酸及びその塩、塩化アンモニウム、トリエタノールアミン、アラニン、アルギニン、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、リジン、及びプロリンからなる群より選択される生物学的緩衝剤である、請求項1~21のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項23】
液体媒体Cが、水からなる、請求項1~22のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項24】
生体分子及び液体生体分子製剤から除去される賦形剤が反対の電荷を有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項25】
生体分子が正に荷電しており、本プロセスにより除去される賦形剤が負に荷電した賦形剤である、請求項1~24のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項26】
生体分子が正に荷電したタンパク質を含み、本プロセスにより除去される賦形剤が陰イオンを含む、請求項1~25のいずれかに記載の製剤。
【請求項27】
プロセス工程(b)がその後の工程(c)を実施する前に数回繰り返されるか、又は液体媒体Bの交換がx媒体サイクルで実施され、それによりx=2~10である、請求項1~26のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項28】
プロセス工程(c)がその後の工程(d)を実施する前に数回繰り返されるか、又は液体媒体Cの交換がy媒体サイクルで実施され、それによりy=2~10である、請求項1~27のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項29】
工程(a)の限外濾過UF1を使用し、液体生体分子製剤を、液体生体分子製剤の初期濃度と比較して、10%~70%まで濃縮する、請求項1~28のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項30】
工程(d)の限外濾過UF2を使用し、液体生体分子製剤を所望の値に濃縮する、請求項1~29のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項31】
工程(b)及び工程(c)が直接順々に続き、それにより中間プロセス工程はその間に実施しない、
及び/又は工程(a)及び工程(b)が直接順々に続き、それにより中間プロセス工程をその間に実施しない、及び/又は
工程(c)及び工程(d)が直接順々に続き、それによりその間に中間プロセス工程を実施しない、請求項1~30のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項32】
生体分子が、小分子、単量体、又は生体高分子からなる群より選択される;又は、
生体分子が、脂質、ビタミン;ホルモン、神経伝達物質;アミノ酸、ヌクレオチド、単糖類;タンパク質、ペプチド;核酸;オリゴ糖、多糖からなる群より選択される;又は、
生体分子が、タンパク質、ペプチド、核酸、オリゴ糖、及び多糖からなる群より選択される;又は、
生体分子が、タンパク質及びペプチドからなる群より選択される、請求項1~31のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項33】
プロセス工程(a)~(d)は20℃~25℃の室温で実施する、請求項1~32のいずれか一項に記載の製剤。
【請求項34】
プロセス工程(a)~(d)を、接線流濾過(TFF)システム又は遠心濾過システムを使用して実施する、請求項1~33のいずれか一項に記載の製剤。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0163
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0163】
換言すると、x=2の場合、工程(b)を2回繰り返し、図Aのサイクルは2回通過し、任意のサイクルについて、同じ液体媒体Bを各々のサイクルで透析濾過媒体として加える。原則として、サイクル数は通常、使用する液体媒体Bのイオン強度(又は濃度)の減少に伴い増加する。可能なサイクル数はまた、損傷を伴わずにサイクル数を許容しなければならない、使用する生体分子の種類にも依存する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0166
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0166】
換言すると、y=4の場合、工程(c)を4回繰り返し、図Aのサイクルを4回通過させ、任意のサイクルについて、同じ液体媒体Cを各々のサイクルで透析濾過媒体として加える。
【外国語明細書】