(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081792
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】ウイルスおよび細菌病原体の直接増幅および検出
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/686 20180101AFI20240611BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】28
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024061315
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2022062728の分割
【原出願日】2012-07-06
(31)【優先権主張番号】61/505,055
(32)【優先日】2011-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】61/552,405
(32)【優先日】2011-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514005216
【氏名又は名称】クエスト ダイアグノスティクス インベストメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エクスナー,モーリス
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー,ルカ
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イン-ペン
(72)【発明者】
【氏名】マイ,フォン
(72)【発明者】
【氏名】タッブ,ミシェル エム.
(72)【発明者】
【氏名】アイ,マイケル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、核酸の抽出工程を含まない直接増幅を用いるが、抽出された核酸をアッセイする方法と実質的に同じ特異性および感度を保持する、前記方法を提供する。
【解決手段】ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、(a)試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;(b)工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに(c)存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程を含み、試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出しない、前記方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、
(a) 試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;
(b) 工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに
(c) 存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程
を含み、
試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出しない、
前記方法。
【請求項2】
試料を工程(a)の前に希釈しない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
試料を工程(b)の前に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試料を工程(a)の前に加熱する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
試料を工程(b)の前に、約2分間以上、約70℃以上の温度に加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
緩衝液が塩化カリウム(KCl)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
KClが約5 mM~約50 mMの濃度で存在する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
緩衝液がGoTaq(商標)Flexi緩衝液を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
GoTaq(商標)Flexi緩衝液が工程(b)の間1X~5Xの濃度で存在する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
DNAポリメラーゼがTaqポリメラーゼである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
標的核酸がDNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
標的核酸がRNAである、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
増幅の前に、試料をさらに逆転写酵素と接触させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
試料をDNAポリメラーゼおよび逆転写酵素と同時に接触させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
試料が血液、血清、血漿、脳脊髄液、口腔液、および便からなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
血液が全血である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
試料が口腔領域から得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
微生物がウイルスである、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
ウイルスが、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびエンテロウイルスからなる群より選択される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
微生物が細菌である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
細菌がクロストリジウム属または連鎖球菌属である、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
緩衝液がさらにアルブミンを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
アルブミンがBSAである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
緩衝液がさらに界面活性剤を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
界面活性剤がカチオン性界面活性剤である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、
(a) 試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;
(b) 工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに
(c) 存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程
を含み、
試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出せず、かつ、
緩衝液が、KCl、ウシ血清アルブミンおよび界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む、
前記方法。
【請求項27】
界面活性剤がカチオン性界面活性剤である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
さらに工程(a)または工程(b)の前に試料を加熱することを含む、請求項26に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)に基づいて、2011年7月6日に出願された米国特許出願第61/505,055号および2011年10月27日に出願された米国特許出願第61/552,405号の利益を主張する。前記出願のそれぞれの開示は本出願の開示の一部であると見なされ、参照により本出願の開示に組み込まれるものとする。
【0002】
本発明は、直接増幅を用いるウイルスおよび細菌病原体の核酸の診断および検出方法に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景に関する以下の議論は、単に読者の発明の理解を助けるために提供するものであり、本発明が記載されることまたは本発明の先行技術が構成されることを認めるものではない。
【0004】
ウイルスの臨床的検出は、通常、さまざまな方法のうちのいずれか1つを使用して達成される。例えば、生体試料(例えば、鼻咽頭吸引液、咽頭スワブ、血液、糞便等)からウイルス粒子または核酸を単離し得る。血清学により遡及的診断を行い得る。この方法においては補体結合試験(CFT)が最も広く使用されるが、型特異的診断を行うためには赤血球凝集阻止(HAI)および酵素イムノアッセイ(EIA)を使用し得る。より迅速に診断するためには、抗原検出またはRNA検出のいずれかを行うことができる。抗原検出はIFTまたはEIAにより行うことができるが、最高レベルの感度および特異性を達成するためには逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によるRNA検出が使用される。しかしながら、後者は費用がかかり、高度な技術が要求される。
【0005】
同様に、細菌検出は、グラム染色、培養、マイクロアレイ、およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)またはリアルタイムPCRを含むさまざまな方法を用いて達成し得る。インフルエンザなどのウイルスがRNAから構成されるゲノムを有するためにその検出に従来のPCRまたはリアルタイムPCRにおいて使用するための標的cDNAを創造する転写工程が必要とされるのとは異なり、細菌の検出は標準的なPCRプロトコールを用いて達成することができる。追加のRT工程を必要としない場合でさえ、PCRまたはリアルタイムPCRは、下に記載される通り、時間および費用がかかる診断方法である。
【0006】
RT-PCRは、標的核酸を増幅および定量するために使用される実験技術である。その手順はポリメラーゼ連鎖反応の一般原則に従うが、RT-PCRにおいては、まず逆転写酵素を用いてRNA鎖をそのDNA補体(cDNA)に逆転写し、得られたcDNAを伝統的PCRまたはリアルタイムPCRを用いて増幅する。逆転写(RT)工程は、PCRと同じ管(一工程PCR)または別の管(二工程PCR)のいずれかで、使用される逆転写酵素の特性に依存して約40℃~50℃の間の温度を用いて実施することができる。次に、dsDNAを約95℃で変性させることにより2本の鎖が分離し、プライマーが低い温度で再度結合して新しい増幅反応を開始することができる。プライマーからのDNA伸張は、耐熱性Taq DNAポリメラーゼを用いて、通常約72℃で起こる。リアルタイムRT-PCRは、蛍光レポーター分子を用いて、増幅が進行すると同時にアンプリコンを可視化することができる方法を提供する。
【0007】
検出、診断、および/または定量のために生体試料からウイルスおよび細菌の核酸を調製および加工することが高度に複雑な工程を必要とすることを考えると、迅速な診断が求められる場合に、より工程の少ない、より技術的要求の低い、かつより短い時間で行うことができる方法の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、核酸抽出の工程を含まない、試料の直接増幅を可能にする試薬混合物の発見に基づく。
【0009】
一態様において、本発明は、ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、(a)試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;(b)工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに(c)存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程を含み、該方法において、試料の核酸を増幅の前に抽出しない、前記方法を提供する。
【0010】
別の態様において、本発明は、ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、(a)試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;(b)工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに(c)存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程を含み、該方法において、試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出せず、かつ、該方法において、緩衝液が、KCl、ウシ血清アルブミンおよび界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む、前記方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施形態において、工程(a)の前に試料の核酸を希釈しない。さらなる実施形態において、工程(b)の前に試料を加熱し、または、さらに別の実施形態において、工程(a)の前に試料を加熱する。試料を、工程(b)の前に、約70℃以上の温度に約2分間以上加熱し得る。
【0012】
さらなる実施形態において、緩衝液は塩化カリウム(KCl)を含み得る。いくつかの実施形態において、KClは約5 mM~約50 mMの濃度で存在し得る。緩衝液はさらにGoTaq(商標)Flexi緩衝液を含んでもよく、これは工程(b)の間に1X~5Xの濃度で存在し得る。また、緩衝液はウシ血清アルブミンを含み得る。緩衝液は界面活性剤を含み得る。いくつかの実施形態において、界面活性剤はカチオン性界面活性剤である。さらなる実施形態において、DNAポリメラーゼはTaqポリメラーゼである。標的核酸はDNAであってよく、または、いくつかの実施形態において、標的核酸はRNAであってよい。試料がRNAである場合、試料をさらに逆転写酵素と接触させ得る。試料は、DNAポリメラーゼおよび逆転写酵素と同時に接触させてもよい。
【0013】
さらなる実施形態において、試料は、血液、血清、血漿、脳脊髄液、口腔液および便からなる群より選択される。いくつかの実施形態において、試料は全血である。いくつかの実施形態において、試料は口腔領域から得られる。さらに別の実施形態において、微生物はウイルスであってよく、またはインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびエンテロウイルスからなる群より選択され得る。また、いくつかの実施形態において、微生物は細菌であってよく、例えば、さらなる実施形態において、クロストリジウム・ディフィシル(C. difficile)であり得る。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「RNA」は、DNAにおいて見いだされるデオキシリボース糖に対してリボース糖を含む核酸分子を指す。本明細書において使用される場合、RNAは、メッセンジャーRNA(mRNA)、リボソームRNA(rRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、ならびに調節機能を有する小RNA種を含むすべての種またはRNAを指す。「小RNA種」は明確な意味を有し、細菌においてハウスキーピングまたは調節の役割を有する非翻訳RNAを指す。「小RNA種」はrRNAまたはtRNAではない。
【0015】
本明細書において使用される場合、用語「標的核酸」は、例えば病原体ウイルスまたは細菌を含む特定のウイルスまたは細菌の診断に役立つ任意の核酸分子または断片を指す。標的核酸は、標的の種に由来するDNAまたはRNA分子であり得る。
【0016】
本明細書において使用される場合、用語「熱サイクル」は、実験装置を使用して、あらかじめプログラムされた温度上昇および低下のサイクルを用いるプライマー伸長反応により核酸セグメントを増幅する任意の技術を指す。熱サイクルの例としては、PCR、リアルタイムPCR、およびRT-PCRが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
本明細書において使用される場合、用語「逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応」または「RT-PCR」は、RNA配列のコピーである配列を有するDNA分子を合成および増幅する任意の技術を指す。RT-PCRは、例えば遺伝子発現の定量分析におけるRNA種の検出に有用であり、また、クローン化、cDNAライブラリーの構築、プローブ合成、およびin situハイブリダイゼーションにおけるシグナル増幅に使用するためのRNAのDNAコピーを製造するために有用である。
【0018】
本明細書において使用される場合、用語「試薬ミックス」は、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応またはリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応を実施するために必要とされるすべての要素(診断標的RNAまたはDNA配列にそれぞれ特異性を有するプライマー、およびポリメラーゼを含むがこれらに限定されない)を有する組成物を指す。
【0019】
本明細書において使用される場合、「プライマー」は、ポリメラーゼにより相補鎖の合成が触媒される条件下に置かれた場合に、鋳型鎖に沿った核酸合成または複製の開始点として作用することが可能な、合成または天然のオリゴヌクレオチドを指す。逆転写の文脈において、プライマーは核酸から構成され、RNA鋳型の増幅を開始させる。PCRの文脈において、プライマーは核酸から構成され、DNA鋳型の増幅を開始させる。
【0020】
本明細書において使用される場合、用語「DNAポリメラーゼ」は、デオキシリボヌクレオチドのDNA鎖への重合を触媒する任意の酵素を指す。DNAポリメラーゼは新しく形成された鎖の3’末端に遊離のヌクレオチドを添加するように作用して、5’-3’方向の新しい鎖の伸長をもたらす。
【0021】
本明細書において使用される場合、「溶解」は、細胞RNAもしくはDNAへの接近または細胞RNAもしくはDNAの放出を促進する細胞壁またはウイルス粒子の撹乱または変質を意味する。細胞壁の完全な崩壊または破砕のいずれも溶解の必須要件ではない。
【0022】
本明細書において使用される場合、用語「サイクル閾値」または「Ct」は、生成物の形成による蛍光の増加がバックグラウンドシグナルより高い有意で検出可能なレベルに到達する熱サイクル中のサイクルを指す。
【0023】
本明細書において使用される場合、用語「直接増幅」は、標的核酸をあらかじめ精製、抽出、または濃縮することなく試料から増幅する核酸増幅反応を指す。これは、PCR反応における標的の濃度の相対的測定である。標的の濃度以外に多くの要因がCtの絶対値に影響を与える。反応ミックスまたは装置による人為結果がCtの計算に関連する蛍光測定を変化させ、その結果、Ct値の鋳型と無関係の変化がもたらされるであろう。
【0024】
本明細書において使用される場合、用語「抽出」は、試料中に存在する他の(非核酸)物質から核酸を取り出すために行われる任意の行為を指す。このような行為としては、機械的もしくは化学的溶解、界面活性剤もしくはプロテアーゼの添加、またはタンパク質などの非核酸の沈殿および除去が含まれるが、これらに限定されない。
【0025】
本明細書において使用される場合、用語「干渉物質」は、試料中の標的核酸でない任意の物質を指す。前記干渉物質には、合成物質および生体物質が含まれる。前記合成物質には、化学物質および医薬が含まれる。前記生体物質には、血液、尿、タンパク質および他の生体分子が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】(A)は、試料をFastStart緩衝液と共にFastStartプロトコールに従って直接増幅したH1N1アッセイの結果を示す線グラフであり;(B)は、試料をGoTaq緩衝液と共にGoTaqプロトコールに従って直接増幅したH1N1の結果を示す線グラフである。
【
図2】(A)および(B)は、2つの試料保存緩衝液の効果を示す線グラフであり、ユニバーサル輸送培地(universal transport medium)(UTM)(A)と1X Tris-EDTA(「TE」)(B)とをFastStartプロトコールを用いて比較した図である。
【
図3】(A)は、核酸抽出後に試料をFastStart緩衝液と共にFastStartプロトコールに従って増幅したH1N1アッセイの結果を示す線グラフであり;(B)は、あらかじめ核酸抽出または精製を行わずに、試料をFastStart緩衝液と共にFastStartプロトコールに従って直接増幅したH1N1アッセイの結果を示す線グラフである。
【
図4】(A)および(B)は、インフルエンザA陽性試料を用いて直接増幅に対するGoTaq化学およびサイクル条件の有効性を証明する線グラフである。
【
図5】KClを加えた直接増幅アッセイの感度をKClを加えない直接増幅アッセイと比較して示す線グラフである。
【
図6】界面活性剤を加えた直接増幅アッセイの感度を界面活性剤を加えない直接増幅アッセイと比較して示す線グラフである。
【
図7】前加熱を行った直接増幅アッセイの感度を前加熱を行わない直接増幅アッセイと比較して示す線グラフである。
【
図8】異なる管の中で異なる抗凝血剤(ヘパリン、EDTA、クエン酸塩)に曝された単一の血液試料から得た増幅プロットを示す線グラフである。
【
図9】直接増幅アッセイの口腔スワブから得た試料を検出する能力を示す線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、例えば、インフルエンザAおよびBウイルスならびに呼吸器合胞体ウイルス(RSV)などの呼吸器ウイルス、エンテロウイルス、単純ヘルペスウイルス1および2(それぞれ、HSV-1およびHSV-2)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV);ならびにクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)などの(病原性)細菌を含むヒト病原体の検出のための診断方法であって、PCRの前にウイルス/細菌(すなわち標的)核酸を単離するための抽出または精製工程を含まないPCR法を用いて、特定の抽出または精製プロトコールを用いる同様のアッセイと実質的に同等の(またはより優れた)感度を提供する、前記方法に関する。
【0028】
より特定的には、本方法は、標的核酸のアベイラビリティを増大させるための一定の処理工程と組み合わせて、細胞またはビリオンを溶解させるためにPCR混合物に界面活性剤を加えることを含む。次に、逆転写工程の前に試料を約50℃に加熱し、それによりウイルスの溶解およびRNA分解酵素の不活性化を促進する。RT工程の後、PCR反応を行う。細菌標的またはDNAウイルス標的の場合には逆転写酵素は必要ない。
【0029】
患者試料を試薬ミックスに、60~90%の試薬ミックスに対しておよそ10~40%の患者試料の比で、最適には70~80%の試薬ミックスに対して20~30%の患者試料の比で加える。試薬ミックスは、サーマス・アクアティカス(Thermus aquaticus)由来ポリメラーゼ(例えば、GoTaq FlexiDNAポリメラーゼ(商標); Promega)およびイオン性界面活性剤を含む増幅緩衝液(例えば、GoTaq Flexi PCR緩衝液(商標); Promega)を含む。増幅緩衝液は、10X緩衝液として供給され得るが、使用のために約5X、約2.5X、または約1Xの濃度に希釈される。試薬ミックスはさらにKCl(ウイルス試料に対してのみ)およびMgCl2、ならびにdNTPを含む。本発明に包含される1つの製剤において、RT-PCR試薬混合物は、0.5μLの5X GoTaq Flexi(商標)PCR緩衝液、0.25μLの25 mM MgCl2、0.05μLの10 mM dNTP、0.20μLの5 U/μL Go Taq FlexiDNA(商標)ポリメラーゼ、および0.5μLの10 mM KClを含有する。RT工程の前または後のいずれかに患者試料を加熱してもよく、次いでPCRを行う。
【0030】
本発明の反応混合物により、増幅の前に核酸の抽出または精製を必要とすることなく、試料からの核酸の直接増幅が可能になる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、必要な場合には、溶解は熱および界面活性作用の組合せにより起こると考えられる。さらに、本発明の試薬混合物が通常RT-PCR反応中に存在する増幅阻害剤を無力化して、他の直接増幅法において使用される標準的技術である検体の希釈の必要性を排除すると考えられる。比較的高い塩濃度が、オリゴヌクレオチド結合効率を増大させることにより性能に寄与している可能性がある。しかしながら、試薬混合物は標的核酸の型に基づいて変化する。
【0031】
一実施形態において、ウイルスRNA検出のための試薬混合物は、少なくとも、逆転写酵素、高濃度のフォワードおよびリバースプライマー、最適にはスコーピオンプライマー、MgCl2、塩化カリウム、dNTP、5X GoTaq Flexi(商標)PCR緩衝液(Promega; カタログ番号M891AまたはM890A)またはその同等物、ならびに5 U/μl Taqポリメラーゼ(例えば、GoTaq FlexiDNAポリメラーゼ(商標); Promega カタログ番号M8295)などのサーマス・アクアティカス(T. aquaticus)由来ポリメラーゼを含む。性能を改善するために、RNAsinを加えてもよい。さらに、脳脊髄液または糞便試料における病原体検出のための試薬ミックスはBSAも含有する。
【0032】
細菌検出のための試薬混合物は、少なくとも、高濃度のフォワードおよびリバースプライマー、最適にはスコーピオンプライマー、MgCl2、BSA、dNTP、5X GoTaq Flexi(商標)PCR緩衝液(Promega; カタログ番号M891AまたはM890A)またはその同等物、ならびに5 U/μl Taqポリメラーゼ(例えば、GoTaq FlexiDNAポリメラーゼ(商標); Promega カタログ番号M8295)などのサーマス・アクアティカス(T. aquaticus)由来ポリメラーゼを含まなければならない。性能を改善するために、RNAsinを加えてもよい。
【0033】
一実施形態において、アッセイは、非鋳型対照(NTC)、正の対照、およびDNA内部対照(IC)を含む。アッセイは対照のCt値に基づいて評価することができる。一実施形態において、クロストリジウム・ディフィシルを検出するためのアッセイにおいて、NTCのCt値が0であり、ICが≦40である場合、対照は有効である。別の例において、クロストリジウム・ディフィシルを検出するためのアッセイにおいて、正の対照のCt値が0である場合、アッセイは無効であると見なされる。別の例において、クロストリジウム・ディフィシルを検出するためのアッセイにおいて、NTCが有効で、クロストリジウム・ディフィシルのCt値が≦40であるが≠0である場合、アッセイの実行は有効で容認できると見なされる。別の例において、クロストリジウム・ディフィシルを検出するためのアッセイにおいて、クロストリジウム・ディフィシルのCt値が=0であり、ICのCt値が≦40であるが≠0である場合、クロストリジウム・ディフィシルは検出されないと見なされる。別の例において、クロストリジウム・ディフィシルを検出するためのアッセイにおいて、クロストリジウム・ディフィシルのCt値が=0であり、ICのCtが=0である場合、アッセイは無効であると見なされる。
【0034】
ウイルス粒子の供給源
試料からの検出アッセイのためのウイルス核酸の入手は、液体試料の収集、固体または半固体試料の抽出、表面をスワブでぬぐうこと、またはさらなる技術を用いて行うことができる。ウイルスRNAは、存在する濃度がRT-PCR反応のための標的RNAを十分に提供するものである場合には直接アッセイすることができる。あるいは、ビリオンは遠心分離、免疫吸着もしくは他の相互作用による表面への結合、または濾過などの方法により濃縮することができる。
【0035】
細菌細胞の供給源
試料からの検出アッセイのための細菌細胞の入手は、液体試料の収集、固体または半固体試料の抽出、表面をスワブでぬぐうこと、またはさらなる技術を用いて行うことができる。細菌細胞は、存在する濃度がRT-PCR反応のための標的RNAを十分に提供するものである場合には直接アッセイすることができる。あるいは、細菌細胞は遠心分離、免疫吸着もしくは他の相互作用による表面への結合、または濾過などの方法により濃縮することができる。さらに、細菌細胞数は、濃縮または直接アッセイの前に培養プレート上または液体培地中で細胞を増殖させることにより増大させることができる。
【0036】
本発明の文脈において好適な典型的な細菌は、リステリア属(Listeria)、大腸菌属(Escherichia)、サルモネラ属(Salmonella)、カンピロバクター属(Campylobacter)、クロストリジウム属(Clostridium)、ヘリコバクター属(Helicobacter)、マイコバクテリウム属(Mycobacterium)、ブドウ球菌属(Staphylococcus)、カンピロバクター属(Camplobacter)、腸球菌属(Enterococcus)、桿菌属(Bacillus)、ナイセリア属(Neisseria)、赤痢菌属(Shigella)、連鎖球菌属(Streptococcus)、ビブリオ属(Vibrio)、エルシニア属(Yersinia)、ボルデテラ属(Bordetella)、ボレリア属(Borrelia)、およびシュードモナス属(Pseudomonas)を含むがこれらに限定されない、グラム陰性菌およびグラム陽性菌である。
【0037】
標的核酸
標的核酸としてアッセイされ得るRNA型としては、rRNA、mRNA、トランスファーRNA(tRNA)、または他のRNAポリヌクレオチドが挙げられる。rRNAの種としては、関連する細菌の群に特有の1つ以上の部分配列を含む5S、16S、および23Sポリヌクレオチドが挙げられる。特徴的な配列の検出能力はさまざまであり、アッセイにより検出されるべきウイルスまたは細菌の関連性のレベルに依存する。他のRNAポリヌクレオチドを、それらが所望の関連性レベルで他の細菌から適切に識別する特有の部分配列を含む限り、診断標的RNAとして使用してもよい。その例は、tRNAおよびmRNA種から、ならびに1つ以上の特徴的な部分配列を含む細菌細胞において製造される任意のRNAから、見いだすことができる。当業者は、プライマーが逆転写反応において鋳型として標的RNAを用いるコピーDNAの合成を開始するようにプライマーを設計することができる。また、PCRにおける鋳型としてコピーDNAを用いて標的RNAの特有の部分配列を増幅するためのプライマーの対を設計する方法は当業者に公知である。PCRにおいて同調的に使用されるプライマーは同じハイブリダイゼーション融解温度を持たなければならないことは当業者に周知である。細菌細胞内の診断標的RNAは、RTまたはRT-PCR反応組成物に到達可能にしければならない。収集された後、核酸試料は反応組成物に直接加えてよく、次にそれに熱サイクルを行う。
【0038】
特定の溶解剤は、随意に存在し得るが、それを用いなくても試料からのウイルス/細菌核酸の十分な放出が得られるので、好ましくは試薬混合物に加えない。一般に、溶解剤は、RT、RT-PCR、またはPCR反応組成物と接触させる前に加える。溶解剤の使用は当業者に周知である。溶解剤としては、化学物質、酵素、物理的せん断力、浸透圧剤および高温が挙げられるが、これらに限定されない。用語「溶解緩衝液」は、少なくとも1種の溶解剤を含む緩衝液を意味する。典型的な酵素溶解剤としては、リゾチーム、グルコラーゼ(glucolase)、ザイモラーゼ(zymolose)、リチカーゼ(Iyticase)、プロテイナーゼK、プロテイナーゼEならびにウイルスエンドリシンおよびエキソリシンが挙げられるが、これらに限定されない。ウイルスエンドリシンおよびエキソリシンは、バクテリオファージまたはプロファージ細菌およびこれらの組合せに由来する。典型的なウイルスエンドリシンとしては、リステリアバクテリオファージ(A118およびPLYI18)由来のエンドリシン、バクテリオファージPM2由来のエンドリシン、枯草菌(B. subtilis)バクテリオファージPBSX由来のエンドリシン、乳酸桿菌(Lactobacillus)プロファージLj928、Lj965およびバクテリオファージ15 Phiadh由来のエンドリシン、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumonia)バクテリオファージCp-I由来のエンドリシン(Cpl-I)ならびにストレプトコッカス・アガラクチア(Streptococcus agalactiae)バクテリオファージB30の二官能基ペプチドグリカン溶解素が挙げられるが、これらに限定されない。これらの最後の2つは異なる細菌株特異性を有する。また、2成分、すなわち、ホリン-エンドリシン、細胞20溶解遺伝子、スタフィロコッカス・ワメリ(Staphylococcus wameri)MファージvarphiWMYのholWMYおよびIysWMYも考えられる。これらのエンドリシンの組合せも考えられる。ウイルス溶解の議論に関しては、特に、Loessner, M J et al. (1995) Applied Environmental Microbiology I 61: 1150-1152を参照されたい。
【0039】
エンドリシンを使用するよりも、RT工程の前または後の熱処理が本発明の方法における溶解に役立つ。試料を約25℃から約100℃未満まで、好ましくは約50℃~75℃の温度範囲でインキュベートすることにより、RTまたはRT-PCRの鋳型である細菌RNAの到達可能性を改善することができる。この熱前処理は、インキュベーション温度に依存して、約1分間~約60分間の範囲の時間であってよく、1~20分間の処理が典型的である。熱処理は、異なる温度での複数回のインキュベーションを含み得る。熱処理は、下に記載するRNA分解酵素阻害剤の存在下または不在下で行うことができる。特に有用な処理は、RNA分解酵素阻害剤の存在下、約50℃で約5~20分間である。
【0040】
少なくとも1種のRNA分解酵素阻害剤をビリオンまたは細菌細胞に加えることができる。典型的には、阻害剤およびそれらの濃度は、プライマー指向性増幅過程および成分のいずれにも干渉しないように選択される。RNA分解酵素阻害剤は当業者に公知であり、グアニジニウムイソチオシアネートおよびジエチル-ピロカルボネートなどの化学物質、Superaseln(Ambion)、RNase Block(Stratagene)、ヒト胎盤リボヌクレアーゼ阻害剤およびブタ肝臓RNA分解酵素阻害剤(Takara Mirus Bio)などのタンパク質阻害剤、Anti-RNase(Novagen)およびRibonuclease Inhib III(PanVera)などの抗ヌクレアーゼ抗体、ならびにRNAlater(Ambion)およびRNA protect Bacteria Reagent(Qiagen)などの試薬が挙げられる。
【0041】
アッセイ法
本発明の方法において、診断標的RNAの存在を逆転写単独により、または、好ましくは逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応により試験する。一緒に使用する場合、逆転写およびポリメラーゼ連鎖反応は、2工程で順次、または試料にすべての反応組成物試薬を加えて1工程で、行うことができる。逆転写反応組成物中で試料をインキュベートすることにより、標的RNAからDNAコピーを合成することができる。試薬ミックスは、標的RNAにハイブリダイズしてコピーDNAの合成を開始させるプライマーを含む。さらに、試薬ミックスは、dNTP、MgC12、KCl(ウイルス試料のみ)、逆転写酵素および逆転写酵素緩衝液(ウイルス試料のみ)、ならびに、便試料の場合には、BSA(細菌試料のみ)を含む。2種以上の標的RNAからDNAコピーを作成することが望まれる場合には、2種以上のプライマーを含んでもよい。しかしながら、RNA分解酵素阻害剤は使用しない。次に、逆転写反応の産物を別の試験管に移して、そこで当業者に公知のプロトコールに従ってPCRを行う。PCR組成物は、典型的には、逆転写された鋳型からの所望のDNAセグメントの合成を開始する1対のプライマーを含む。さらに、PCRミックスは、通常、dNTP、Taqポリメラーゼなどの耐熱性DNAポリメラーゼ、およびポリメラーゼ緩衝液を含む。複数のDNAセグメントの合成が望まれる場合には、2対以上のプライマーを含んでもよい。1つの新しいプライマーを加えて、その対の第2のプライマーとして元のRT-PCRプライマーと共にDNAセグメントを増幅するようにしてもよい。ウイルス試料に使用し得るさらなる逆転写酵素としては、HIV逆転写酵素(Ambion)、Transcriptor逆転写酵素(Roche)、Thermoscript逆転写酵素(Invitrogen)が挙げられるが、これらに限定されない。使用し得るさらなるDNAポリメラーゼとしては、Pfu、Vent、およびSequitherm DNAポリメラーゼ(EPICENTRE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
RT-PCRを2段階で行うか1段階で行うかに関わらず、RT工程を最初に行い、RT工程は典型的には約37℃~約70℃の間の温度での単一温度のインキュベーションからなる。当業者に知られる通り、異なるRt酵素および異なるプライマーには異なる温度が適切である。それに続くPCR反応は、典型的には、約94℃~約96℃で約6~約15分間の初期インキュベーションからなる。この工程はcDNAを変性させ、かつ熱活性化Taqポリメラーゼ酵素を活性化するために使用される。次に、cDNA標的の複数サイクルの増幅を行う。それぞれのサイクルに3つの操作:標的の変性、プライマーのアニーリングおよびプライマーの伸長を行う。標的の変性は、典型的には約90℃より高い温度で起こる。プライマーのアニーリング温度は反応に使用される特定のプライマーの融解温度により規定され、プライマーの伸長は使用される耐熱性ポリメラーゼに依存して約60℃~約72℃の範囲の温度で行われる。プライマーのアニーリングおよび伸長を同じ温度で行う場合、これは2温度PCRであり、それに対して3温度PCRでは3工程のそれぞれが異なる温度で起こる。増幅相が終了した後、すべての増幅産物の合成を確実にするために、典型的には最終伸長時間を加える。
【0043】
標的核酸には、例えば細菌種およびDNAウイルスに由来するDNAを含むDNAも含まれる。評価に好適なウイルスDNAには、ウイルスカプシドから直接得られたDNAならびに宿主のゲノムに組み込まれたDNAの両方が含まれる。
【0044】
RTおよびRT-PCR産物の検出
RT反応のcDNA産物を直接検出する方法は当業者に公知であり、cDNA産物中に組み込まれた、またはcDNA産物に付着した標識を使用する。使用し得るシグナル発生標識は当業者に公知であり、例えば、蛍光部分、化学発光部分、粒子、酵素、放射性タグ、または発光部分もしくは分子が挙げられる。蛍光部分が特に有用であり、特に核酸に付着して蛍光シグナルを放射することが可能な蛍光染料が有用である。フルオレセイン、テキサスレッド(Texas Red)、およびローダミンなどのさまざまな染料が当業者に公知である。特に有用なのは、一反応性染料Cy3およびCy5であり、どちらも市販されている(例えば、Amersham Pharmacia Biotech, Arlington Heights, Ill.より)。標識DNAを特異的に検出するためのさらに感度の高い方法は、ナイロン膜またはスライドガラスなどのマトリックス中に固定化された標的DNA配列分子に対して産物をハイブリダイズすることである。次に、ハイブリダイゼーション後のシグナルを、使用した特定の染料を検出するための適切なフィルター処理を使用してレーザースキャナーによりスキャンすることができる。これは、特にDNAマイクロアレイ技術において、当業者に公知である。標識はRT反応におけるcDNAの合成の間にcDNAの中に組み込まれてもよく、または、標識はcDNAの合成の後にcDNA産物に付着させてもよい。例えば、RT反応を標識されたプライマーを用いて実施することができる。1つのタイプの標識されたプライマーは、多数のシグナル発生分子を有する付着した粒子を有する。染料標識UTPおよび/またはCTPなどの標識ヌクレオチドを用いる逆転写は、標識を転写された核酸の中に組み入れる。あるいは、cDNA産物を検出するために合成後カップリング反応を使用することができる。核酸への標識の付着は当業者に公知であり、例えば、例えば標識RNAによる末端標識により、または核酸をキナーゼにより処理した後に核酸リンカーを付着させて試料の核酸を標識(例えば発蛍光団)と結合させることにより、行うことができる。別の標識法において、RT反応からのDNA産物をin vitro転写反応と組み合わせることにより増幅する。例えば、T7プロモーター領域をRT反応に使用するプライマーの中に組み入れる。次に、T7 in vitro転写キットを使用して大量のRNAを生成して検出感度を増大させる。T7 in vitro転写キットは、Ambion(2130 Woodward, Austin, Tex.)または他の商業的供給者から購入することができる。
【0045】
RT-PCRの検出
RT-PCR産物の検出法としては、ゲル電気分解による分離および臭化エチジウム染色、または産物中に組み込まれた蛍光標識もしくは放射線標識の検出が挙げられる。検出前の増幅産物の分離工程を必要としない方法も使用することができる。これらの方法は一般にリアルタイムPCRまたはホモジニアス検出と呼ばれる。大部分のリアルタイム法は、熱サイクル中の蛍光の変化をモニターすることにより増幅産物の形成を検出する。これらの方法としては、TaqMan(登録商標)二重標識プローブ(Applied Biosystems, Foster City, Calif. 94404)、分子ビーコン(Molecular Beacons)(Tyagi S and Kramer FR (1996) Nat BiotechnoI14:303-308)、およびSYBR(登録商標)Green染料(Molecular Probes, Inc Eugene, Oreg. 97402-0469)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの同じホモジニアス法のいくつかを、増幅産物のエンドポイント検出にも使用することが可能である。このタイプの方法の例は、SYBR(登録商標)Green染料解離曲線分析である。解離曲線分析において、蛍光のモニタリングと組み合わされた、一般に約60℃~90℃の温度における最後の遅い傾斜(final slow ramp)により融点を検出し、それにより増幅産物の存在を検出することができる(Ririe et al. (1997) Anal. Biochem. 245: 154-60)。
【0046】
アッセイの感度
直接増幅アッセイの感度は、アッセイに使用する緩衝液に1種以上の感度増大成分を加えることにより増大することができる。このような成分としては、KCl、界面活性剤およびアルブミンが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、アルブミンはウシ血清アルブミンである。いくつかの実施形態において、界面活性剤はカチオン性界面活性剤である。直接増幅アッセイの感度は、試薬を加える前の試料の前加熱のように、アッセイに追加の加熱を与えることにより増大することも可能である。いくつかの実施形態において、感度は感度増大成分と追加の加熱との組合せにより増大することができる。
【実施例0047】
本発明の方法は、ここまでに一般的に説明したが、以下の実施例を参照することによりさらに容易に理解されるであろう。以下の実施例は例証のために提供するものであって、本発明の方法およびキットを限定することを意図するものではない。
【0048】
実施例1:ユニバーサルマスターミックス(Universal Master Mix)
他に特記されない限り、2.5Xユニバーサルマスターミックス(UMM)は下記の比率で調製される。下記の表は15 mlのUMMを調製するのに好適な試薬の体積を示すが、必要に応じて任意の好適な体積を調製することができる。
【表1】
【0049】
GoTaq Flexi緩衝液(商標)およびその同等物はイオン性界面活性剤を含有し、マグネシウムを含まない。
【0050】
実施例2:呼吸器ウイルス核酸の直接増幅に対するKClの効果
インフルエンザBウイルスを含む人工的に作ったスワブ検体を、培養されたインフルエンザBウイルス(「Flu B」)(Great Lakes株)を内部対照核酸と共にウイルス輸送媒体試料に加えることにより調製した。Flu Bおよび対照核酸のCt値を、UMMからKClを除き、さらに1または2μlのいずれかの逆転写酵素(Improm II逆転写酵素、Promega カタログ番号A3800)を含有する実施例1のユニバーサルマスターミックスを用いて、25 mM KClの存在下および不在下で測定した。Flu Bウイルスの鋳型コピーの連続希釈を158および39.5のTCID50/mlで評価した。RT-PCR反応は下記の通りに実行した。
【0051】
段階1:75℃で3分間(1回)
段階2:47℃で10分間(1回)
段階3:97℃で2分間(1回)
段階4:102℃で1秒間、次いでデータ収集のため60℃で20秒間(45回反復)。
【0052】
Ct測定の閾値は50,000であった。Flu Bおよび内部対照プローブに対する発蛍光団はそれぞれJOEおよびQ670であった。すべてのアッセイを2回実行し、結果を平均した。
【表2】
【表3】
【0053】
表1および2の結果は、KClの存在が、血清中の呼吸器ウイルス(Flu B)についての直接RT-PCR増幅アッセイの感度を低いウイルス濃度で増大させることを証明している。これらの結果はさらに、KClの存在が、RT-PCRによる分析の前に血清からのウイルスを濃縮および/または精製する必要性を軽減または否定することを示している。
【0054】
実施例3:臨床試料からの呼吸器ウイルス核酸の直接増幅
さまざまな臨床試料(口腔スワブおよび脳脊髄液)をHSV-1および/またはHSV-2の存在について評価した。実施例1のユニバーサルMMを、MgCl2およびKClに対して特記された修正を行って使用した。
【0055】
口腔スワブRT-PCR増幅マスターミックスは下記の表の通りであった。
【表4】
【0056】
CSF RT-PCR増幅マスターミックスは下記の表の通りであった。
【表5】
【0057】
直接RT-PCR増幅プロトコールおよび最初に核酸抽出プロトコールを使用するRT-PCR増幅プロトコールの両方を用いて臨床試料を分析した。核酸はRoche MagNA Pure LC装置および対応する全核酸単離キット(Total Nucleic Acid Isolation Kit)を用いて抽出した。合計200μlの試料を抽出し、核酸を50μl中に溶離した。
【0058】
それぞれのアッセイにおいて、10μlの試料を40μlの本実施例に記載されたマスターミックスに加えた。RT-PCR反応は下記の通りに実行した。
【0059】
段階1:75℃で3分間(1回)
段階2:47℃で10分間(1回)
段階3:97℃で2分間(1回)
段階4:102℃で1秒間、次いでデータ収集のために60℃で10秒間(50回反復)。
【0060】
【0061】
これらのデータは、HSVに感染した口腔またはCSF試料に関して、上記の直接増幅法は、多重RT-PCR増幅アッセイにおいて、分析の前に核酸抽出および濃縮を行うRT-PCRプロトコールと比較して同等の結果を与えることを証明している。
【0062】
実施例4:直接核酸増幅アッセイに対するRNA分解酵素阻害剤の効果
対照ウイルスをウイルス輸送媒体に加えて、上記の直接増幅RT-PCRアッセイを用いる分析のための合成試料を作った。それぞれのアッセイにおいて、10μlの試料を、1μlのRNA分解酵素阻害剤(「RNAsin」)(Promegaカタログ番号N261B)の存在下または不在下で、40μlの実施例1に記載したUMMに加えた。RT-PCR反応は下記の通りに実行した。
【0063】
段階1:50℃で10分間(1回)
段階2:97℃で2分間(1回)
段階3:102℃で1秒間、次いでデータ収集のために58℃で20秒間(50回反復)。
【0064】
RNAsinが存在しない場合、Ctは測定することができず、これはウイルスRNAがRTの前に分解されたことを示唆している。2回繰り返して実行されたアッセイにより、RNAsinの存在下での平均Ctは32.5であった。これらの結果は、RNAsinの存在が直接RT-PCR増幅法の感度を改善することを証明している。
【0065】
実施例5:直接核酸増幅アッセイに対する試料前加熱の効果
ウイルス輸送媒体にインフルエンザA、インフルエンザB、およびRSVウイルスの組合せをおよそ5,000ウイルスコピー/mlで加えて、「FABR」合成試料を形成し、またはインフルエンザBウイルス(10-4)単独を加えた。これらの試料を、1μlのImprom II逆転写酵素および0.25μlのRNAsinを加えた実施例1のユニバーサルマスターミックスを用いて直接増幅により評価した。内部対照としてMS2ファージを加えた。実験試料を75℃に3分間前加熱し、それぞれのアッセイに対して10μlの試料を40μlのユニバーサルマスターミックスに加えた。RT-PCR反応は以下の通りに実行した。
【0066】
段階1:50℃で10分間(1回)
段階2:97℃で2分間(1回)
段階3:102℃で1秒間、次いでデータ収集のために58℃で20秒間(50回反復)。
【0067】
【0068】
次に、対照脳脊髄液試料にHSV-1ウイルス(TCID
50/ml = 2.14)を加えて、対照ウイルスをRNAsinの不在下、試料前加熱を行っておよび行わずに評価した。HSV-2核酸の存在について試料を同時に評価することにより、HSV-1検出法の特異性を確認した。どの試料にもHSV-2は検出されなかった。結果は下記の通りである。
【表8】
【0069】
これらの結果は、直接RT-PCR増幅および評価の前に試料を短時間前加熱することにより、多くの場合に(すなわち、少なくともFluB、RSV、およびHSV-1において)ウイルス検出の感度が増大すること、および他の場合(すなわち、FluA)に感度に負の影響を与えないことを証明している。さらに、試料の前加熱はRNA分解酵素阻害剤の添加の必要性を減少させるか、または排除する。
【0070】
実施例6A:BSAを用いる便試料プロトコール
ヒト便試料を標準的な臨床的方法を用いて患者から得る。試料は輸送および短期保存のために2~25℃に維持し、使用の前に2回以上の冷凍/解凍サイクルを行わない。評価のために、フロックスワブを完全に混合した便検体中に浸し、スワブを検体容器の側面に押しつけることにより過剰な便を除去する。次に、スワブを1 mlのTris-EDTA(TE)緩衝液中で回し、捨てる。試料を97℃に10分間加熱する。次に、試料を実施例1のUMM(下に記載するUMMの修正を行う)を用いて1:4に希釈する(すなわち、2μlの試料を8μlのUMMに加える)。場合により、正の内部対照核酸を含有する2μlの溶液を8μlのUMMに加え得る(4μlのUMM、ならびに0.35 mg/mlのBSA、それぞれ600 nMのフォワードおよびリバースプライマー、それぞれ300 nMの内部対照プライマー、および0.5μlの内部対照DNAを含む)。クロストリジウム・ディフィシル標的プライマーはFAM蛍光団により標識し、内部対照標的はQuasar670蛍光団により標識した。熱サイクルを97℃で2分間の初期変性工程により開始し、次いで97℃で10秒間、および60℃で30秒間を40サイクル行った。リアルタイムPCRは40サイクル行い、標的核酸(この実験においてはクロストリジウム・ディフィシルTCD-B遺伝子であった)に特異的な蛍光標識プローブを用いて増幅曲線を測定した。
【表9】
【0071】
実施例6B:BSAを用いない便試料プロトコール
BSAの添加が便材料によりもたらされる検出の阻害を減少させるかどうかを決定するために、BSAの存在下および不在下の両方で、標的としてクロストリジウム・ディフィシルDNAを用いて、BSAを含む試料を試験するために使用したプロトコールに従ってRT-PCRアッセイを行った。実施例6Aに示した処方に従って、ただしBSAを含まない試料では100X BSAを加えずに、便試料を調製した。核酸の精製にMagnaPureシステム(Roche)を使用した。BSAを含まないPCR製剤をウェル1~20にプレートし、BSAを含むPCR製剤をウェル21~40にプレートして、上記の通りにPCR反応を行った。
【0072】
表6に示される結果は、BSAの添加が便試料からのグラム陽性嫌気性菌核酸検出の阻害を減少させることを示している。
【0073】
【0074】
実施例7:直接RT-PCR増幅は緩衝液に依存する
インフルエンザAの試料および内部対照を直接増幅を用いて評価して、実施例1において定義されたユニバーサルマスターミックス中で使用した酵素が直接検出アッセイを促進するそれらの能力において唯一のものであるかどうかを決定した。600 nMインフルエンザAスコーピオン/プライマー(マトリックス遺伝子に対するもの)、500 nMブタH1スコーピオン/プライマー(ヘマグルタニン(hemaglutanin)遺伝子に対するもの)、および150 nMのMS2ファージに特異的なアーマード(armored)RNA内部対照(IC)スコーピオンプライマーからなるハイブリッドプライマー濃度が使用された。反応ミックスは、2つの別個の酵素および緩衝系:GoTaq(登録商標)Flexi、およびそれに付随するユニバーサルMMの成分である5X PCR緩衝液(Promega; カタログ番号M891AまたはM890A)、ならびにFastStart High Fidelityおよびそれに付随するRNA MMの成分である10x緩衝液(Roche)を、以下の濃度で使用して調製した。
【表11】
【0075】
試料はウイルス輸送媒体中に加えたインフルエンザウイルスから構成された。合計2μlの検体を8μlの上に挙げた各反応ミックスに加えた。それぞれの試料を前抽出することなく直接増幅した。
【0076】
次に熱サイクルを行い、標的核酸に特異的な蛍光標識プローブを用いて増幅曲線を測定した。InfA M遺伝子プローブ、H1N1特異的HA遺伝子プローブ、およびICプローブを、それぞれFAM、CFR610、およびQ670により標識した。次に、2つのサイクルプロトコールを用いてRT-PCR(ICy/ユニバーサル96-ウェルディスク;3M)を行った。最初にGoTaqサイクルによりGoTaqおよびFastStartアッセイを行い、次に両方のアッセイをFastStartサイクルにより行った。FastStartプロトコールは下記の通りである。
【0077】
段階1:47℃で15分間(1回)
段階2:97℃で10分間(1回)
段階3:97℃で15秒間、次いで60℃で30秒間(40回反復)。
【0078】
GoTaqサイクルプロトコールは下記の通りである。
【0079】
段階1:47℃で10分間(1回)
段階2:97℃で2分間(1回)
段階3:97℃で5秒間、次いで58℃で30秒間(40回反復)。
【0080】
結果を
図1(A)および(B)に示す。
図1(A)および(B)は、FastStartサイクルプロトコールを用いて実行したFastStart緩衝液を用いた試料、およびGoTaqサイクルプロトコールを用いて実行したGoTaq緩衝液を用いた試料を表す。FastStartサイクル条件および緩衝系を用いた場合に増幅は観察されなかったのに対して、GoTaqサイクル条件および緩衝系を用いた場合には強い増幅が観察された。
【0081】
試料保存緩衝液の効果も比較した。特に、ユニバーサル輸送媒体(UTM)または1X Tris-EDTA(「TE」)中で保存した試料からのH1N1核酸増幅をFastStartプロトコールを用いて比較した。
図2に示される通り、UTM試料においては有意な増幅が観察されなかったのに対して、TE試料では強い増幅曲線が得られた。
【0082】
FastStart化学およびサイクル条件に対する核酸抽出の効果を研究した。
図3に示される通り、FastStartプロトコールでは臨床試料から直接H1N1核酸を増幅することができないことが確認された(
図3B)。しかしながら、増幅反応の前に核酸を抽出した試料では強い増幅が観察された(
図3A)。これらの結果は、すべてのRT-PCR増幅条件を直接増幅/検出系に適用することはできないこと、およびGoTaq化学はこのアッセイフォーマットに特に好適であることを証明している。
【0083】
直接増幅に対するGoTaq化学およびサイクル条件の有効性が、インフルエンザA-陽性患者試料(2009パンデミックH1N1陽性試料を含む)を用いて確認された。増幅は、下記のパラメーターを用いて行った。
【表12】
【0084】
サイクル条件は下記の通りである。
【0085】
段階1:47℃で10分間(1回)
段階2:97℃で2分間(1回)
段階3:97℃で5秒間、次いで58℃で30秒間(40回反復)。
【0086】
図4Aに示す結果は、非パンデミックインフルエンザAウイルスを含む試料からのものであり、FAM標的の増幅はインフルエンザAの検出を示すが、パンデミックH1N1インフルエンザAの検出を示さない。
図4Bは、パンデミックH1N1試料の増幅を示し、H1N1特異的標的に加えてインフルエンザA標的の増幅を証明している。
【0087】
実施例8:直接核酸増幅アッセイによるFlu A、Flu BおよびRSVの検出ならびに核酸抽出を用いる方法との比較
臨床検体(スワブ)および対照試料からの核酸を直接核酸増幅アッセイを用いて増幅して、結果を核酸抽出を含む方法を用いた増幅結果と比較した。増幅プライマーの配列を下記の表に示す。
【表13】
【0088】
臨床検体および対照試料を65℃~70℃に5分間加熱した。反応混合物を下記の通りに調製した。
【0089】
【0090】
次に、熱サイクルを次のサイクルパラメーターを用いて行った。
【0091】
【0092】
下に示す通り、直接核酸増幅アッセイを用いた増幅結果を、核酸抽出を含む方法を用いて得られた増幅結果と比較した。
【0093】
【0094】
直接核酸増幅アッセイを用いて得られた結果と上に示す核酸抽出を含む方法を用いて得られた結果との間には100%の一致が存在した。
【0095】
実施例9:直接核酸増幅アッセイによるHSV-1、HSV-2、およびVZVの検出ならびに核酸抽出を用いる方法との比較
臨床検体ならびに人工試料からの核酸を直接核酸増幅アッセイを用いて増幅して、結果を核酸抽出を含む方法を用いた増幅結果と比較した。反応混合物を下記の通りに調製した。
【0096】
【0097】
増幅プライマーの配列を下記の表に示す。
【0098】
【0099】
熱サイクルを下記のサイクルパラメーターを用いて行った。
【0100】
【0101】
下に示す通り、直接核酸増幅アッセイを用いた増幅結果を、核酸抽出を含む方法を用いて得られた増幅結果と比較した。
【0102】
VZV
32検体(13検体のスワブ、2検体の硝子体液、17検体のCSF)のうち合計32検体が、核酸抽出を含む増幅法を用いてVZV陽性であると検出された一方で、32検体のうち31検体が直接増幅法により陽性であると検出された。試験結果が陰性であったCSF試料は、ヌクレアーゼ阻害剤を加えて試験した場合にはCt 37.1を有することが検出された。
【0103】
HSV-1およびHSV-2
臨床検体(スワブ):
核酸抽出を含む増幅法を用いて陽性と検出された2つのHSV-1試料は、直接増幅法を用いても陽性であった。同様に、核酸抽出を含む増幅法を用いて陽性と検出された2つのHSV-2試料は、直接増幅法を用いても陽性であった。
【0104】
人工試料:
HSV-1およびHSV-2について、人工試料を用いて直接増幅と増幅の前に核酸抽出を行う方法とを比較した検出結果を下に示す。
【0105】
【0106】
* TCID
50:50%組織培養感染量
HSV-1
【表21】
【0107】
* TCID50:50%組織培養感染量
上記の通り、直接増幅法および核酸抽出を用いる方法を用いた結果は、HSV-1およびHSV-2の検出において同等である。
【0108】
実施例10:直接核酸増幅アッセイによるエンテロウイルスの検出および核酸抽出を用いる方法との比較
試料からの核酸を直接核酸増幅アッセイを用いて増幅して、結果を核酸抽出を含む方法を用いた増幅結果と比較した。反応混合物を下記の通りに調製した。
【0109】
【0110】
増幅プライマーの配列を下記の表に示す。
【0111】
【0112】
熱サイクルを下記のサイクルパラメーターを用いて行った。
【0113】
【0114】
下に示す通り、直接核酸増幅アッセイを用いた増幅結果を、核酸抽出を含む方法を用いて得られた増幅結果と比較した。
【0115】
核酸抽出を含む増幅法による試験の結果陰性であった32の試料は、直接増幅法によっても陰性であった。核酸抽出を含む増幅法による試験の結果陽性であった16の試料は、直接増幅法によっても陽性であった。
【0116】
人工試料を用いて直接増幅と増幅の前に核酸抽出を行う方法とを比較した検出結果を下に示す。
【表25】
【0117】
* TCID50:50%組織培養感染量
上記の通り、直接増幅法および核酸抽出を用いる方法を用いた結果は、エンテロウイルスの検出において同等である。
【0118】
実施例11:直接核酸増幅アッセイによるクロストリジウム・ディフィシルの検出および核酸抽出を用いる方法との比較
直接核酸増幅アッセイを用いて試料からの核酸を増幅して、結果を核酸抽出を含む方法を用いた増幅結果と比較した。
【0119】
便検体を異なる個人から得た。フロックスワブを便検体中に浸した。過剰な便検体を除去した。スワブを1 mlのTE緩衝液中に入れて回し、スワブを捨てた。試料を加熱ブロック中で97℃に10分間加熱した。
【0120】
PCRマスターミックスを下記の通りに調製した。
【0121】
【0122】
2μlの加熱した試料を8μlのマスターミックスに加えて、下記のサイクルパラメーターを用いてPCRを行った。
【表27】
【0123】
プライマーはクロストリジウム・ディフィシルのトキシンB領域を標的とする。増幅プライマーおよびアンプリコンの配列を下に示す。
【0124】
クロストリジウム・ディフィシル・スコーピオンプライマー:
【0125】
クロストリジウム・ディフィシルリバースプライマー:
【0126】
【0127】
クロストリジウム・ディフィシル・スコーピオンプライマーからの蛍光シグナルを495 nmで検出し、内部対照からのシグナルを644 nmで検出した。
【0128】
下に示す通り、直接核酸増幅アッセイを用いた増幅結果を核酸抽出を含む増幅法を用いて得られた結果と比較した。
【表28】
【0129】
上記の通り、核酸抽出を含む増幅法により陽性であると確認された試料の99%が直接増幅アッセイによっても陽性であると確認され、核酸抽出を含む増幅法により陰性であると確認された試料の91%が直接増幅アッセイによっても陰性であると確認された。
【0130】
検出限界(LoD)を、クロストリジウム・ディフィシル細菌ストックを加えた便-TE緩衝液マトリックス中の人工試料からなるパネルを用いて決定した。パネルは、陰性(無添加のマトリックス)およびおおよそのLoD(それ以前の試験の相において得られたもの)に近いさまざまな濃度の試料を含んだ。3つの別個の調製物および各レベルでのPCRの実行(8つの反復/実行)からの24回の反復の結果をProbit Analysisにより分析して、95%の確率で正確に検出され得る最低濃度を決定した。検出限界は0.04 cfu/反応である。
【0131】
アッセイの再現性
クロストリジウム・ディフィシル細菌ストックを加えた便-TE緩衝液マトリックス中の人工試料を用いて再現性の研究を行った。パネルには、陰性(無添加のマトリックス)、低い陽性(LODのおよそ2~4倍)、および中程度の陽性(LODのおよそ8~10倍)の試料が含まれた。再現性の研究は、2つの統合されたサイクラー装置を用いて5日間(連続した日ではない)に渡って行った。それぞれの日に、それぞれの装置で2回の実行を行った。それぞれの実行は各パネルメンバーおよび正の対照(PC)の4回の反復ならびに鋳型を含まない対照(NTC)の1回の反復を含んだ。Integrated Cycler装置のそれぞれの実行において、パネルおよびPCを4回繰り返してアッセイし、NTCを1回アッセイした。1ロットの直接増幅アッセイを使用して、1日に装置あたり2回の実行で5日間(連続する日ではない)に渡ってパネルを実行した。装置あたり少なくとも1人のオペレーターを有する最低2台の装置が存在した。結果の再現性の概要を下に示す。
【表29】
【0132】
潜在的干渉物質の存在下でのアッセイの性能
このアッセイの性能を、下記の表に示した濃度の、便試料中に存在し得る潜在的干渉物質を加えて評価した。合計21種の潜在的干渉物質(それぞれ4回ずつ反復)およびベースライン(陽性)試料(5回反復)を最初に試験した。2種を除くすべての干渉試料が最初の実行の4回の反復すべてにおいて「陽性」と判定された。2種の干渉物質(バンコマイシン(Vancomycin)およびペプトビスモール(Pepto-Bismol))について、再度の確認のための実行において、5回の反復のすべてが「陽性」であった。干渉は観察されなかった。
【表30】
【0133】
交差反応性
さまざまな可能性のある交差反応体について分析特異性を実施した。合計47種の潜在的交差反応生物体を試験した。ロタウイルス生物体のみが、最初の試験において3回の反復すべてで「陰性」と判定された。「ロタウイルス」についての5回反復した確認のための実行も「陰性」と判定された。交差反応性は確認されなかった。
【表31】
【0134】
*臨床試験研究室におけるこの試料のその後の試験により、試料がクロストリジウム・ディフィシルに対して陽性であったことが確認された。
【0135】
実施例12:直接核酸増幅アッセイによるA群連鎖球菌の検出および核酸抽出を用いる方法との比較
試料からの核酸を直接核酸増幅アッセイを用いて増幅して、結果を核酸抽出を含む方法を用いた増幅結果と比較した。
【0136】
スワブ試料を直接増幅アッセイに使用した。PCRマスターミックスを下記の通りに調製した。
【0137】
【0138】
2μLのスワブ試料からの輸送媒体を8μLのPCRマスターミックスに加えて、下記のサイクルパラメーターを用いてPCRを行った。
【表33】
【0139】
増幅プライマーおよびアンプリコンの配列を下に示す。
【0140】
【0141】
【0142】
【0143】
下に示す通り、直接核酸増幅アッセイを用いた増幅結果を、核酸抽出を含む増幅法を用いて得られた結果と比較した。
【表34】
【0144】
上記の通り、核酸抽出を含む増幅法により陽性であると確認された試料の93.8%が直接増幅アッセイによっても陽性であると確認され、核酸抽出を含む増幅法により陰性であると確認された試料の99%が直接増幅アッセイによっても陰性であると確認された。
【0145】
実施例13:干渉物質の存在下での直接核酸増幅アッセイによるFlu A、Flu BおよびRSVの検出
実施例8の実験プロトコールを用いて、臨床検体からの核酸を下記の表に挙げられたさまざまな干渉物質の存在下で直接核酸増幅アッセイを用いて増幅した。
【表35】
【0146】
それぞれの潜在的干渉物質に対して直接増幅アッセイを2回繰り返して実施した。Q670蛍光標識を内部対照に使用し、PCは正の対照を表し、NEGは負の対照を表す。
【0147】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下でのFlu Aウイルス検出のCtの結果を表す。
【表36】
【0148】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下でのFlu Bウイルス検出のCtの結果を表す。
【表37】
【0149】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下でのRSVウイルス検出のCtの結果を表す。
【表38】
【0150】
*偽陽性FAMシグナルが、2回の反復のうちの1回で検出された。
結果は、負の対照でFAM、JOEまたはCFR610チャネルにおいて有効な増幅シグナルがなく、Q670チャネルにおいてCt < 40であったことに基づいて正確であることが確認された。また、PCの反応はFAM、JOEおよびCFR610チャネルにおいてCt < 40を与えた。
【0151】
Flu A、Flu BおよびRSVの検出のための直接増幅アッセイの結果は、試験されたいずれのウイルスについても、いずれの干渉物質を使用した場合にも、干渉物質を含まない対照試料と比較してCt値における有意の変化が存在しなかったことを証明している。したがって、直接増幅アッセイは、これらのウイルスの低い陽性の試料を検出する場合に潜在的干渉物質により影響を受けない。
【0152】
実施例14:干渉物質の存在下での直接核酸増幅アッセイによるHSV-1およびHSV-2の検出
実施例3の実験プロトコールを用いて、陰性スワブマトリックス上および合成脳脊髄液中の核酸を、下記の表に挙げられたさまざまな干渉物質の存在下で直接核酸増幅アッセイを用いて増幅した。
【表39】
【0153】
全血潜在的干渉物質(干渉物質ID:1)を10%で試験したが、これは精製されたヘモグロビンよりも臨床的に関連性が高い。また、ヘモグロビン潜在的干渉物質(干渉物質ID:9)を、5.0~1.25 mg/mLのより高い濃度で試験したが、これらの濃度ではHSV-1およびHSV-2の検出が阻害された。
【0154】
それぞれの潜在的干渉物質に対して直接増幅アッセイを3回繰り返して実施した。Q670蛍光標識を内部対照に使用し、PCは正の対照を表し、NEGは負の対照を表す。
【0155】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下での陰性スワブマトリックス上のHSV-1ウイルス検出のCtの結果を表す。
【表40】
【0156】
女性尿試料においてHSV-1が検出されたものの、試料を含まない対照よりも高い蛍光値により示されるように、女性尿(干渉物質ID:2)の液体チェックは失敗であった。すべての潜在的干渉物質試験に同じHSV-1レベルを使用したにも関わらず、K-Yブランドゼリー(干渉物質ID:5)は、対照試料と比較して早いCt値を与えた。女性尿およびK-Yゼリー潜在的干渉物質を再試験したが、両方の試料について早いCtが再現された。
【0157】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下での陰性スワブマトリックス上のHSV-2ウイルス検出のCtの結果を表す。
【表41】
【0158】
上記のHSV-1についての女性尿試料についての液体チェックの問題はHSV-2にも当てはまった。
【0159】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下での合成脳脊髄液中のHSV-1ウイルス検出のCtの結果を表す。
【表42】
【0160】
下記の表は、潜在的干渉物質の存在下での合成脳脊髄液中のHSV-2ウイルス検出のCtの結果を表す。
【表43】
【0161】
結果は、負の対照でFAMまたはCFR610チャネルにおいて有効な増幅シグナルがなく、Q670チャネルにおいてCt < 40であったことに基づいて正確であることが確認された。また、PCの反応はFAMおよびCFR610チャネルにおいてCt < 40を与えた。
【0162】
HSV-1およびHSV-2の検出のための直接増幅アッセイの結果は、試験されたどちらのウイルスについても、いずれの干渉物質を使用した場合にも、Ct値における有意の変化が存在しなかったことを証明している。したがって、直接増幅アッセイは、これらのウイルスの低い陽性の試料を検出する場合に潜在的干渉物質により影響を受けない。
【0163】
実施例15:改善された性能を提供する直接増幅アッセイの成分
下記のデータは改善された性能を与える直接増幅アッセイの成分を表す。一実施形態において、これらの成分のすべてを組合せることにより、公知の阻害剤(例えば、血液およびヘパリン)の存在下でさえも有効なリアルタイムPCRを可能にする系が提供される。
【0164】
KClの効果
直接増幅アッセイへのKCl(20~40 mMまで)の添加は蛍光シグナルを改善し、反応に改善された感度を与える。
図5のデータは、KClの存在下および不在下でのMRSAの検出を示す。KClが存在しなくてもいくらかの検出が可能であるが、KClの存在は反応の有効性を改善する。
図5のデータは、カチオン性界面活性剤などの他の反応成分の存在下で得られたものである。
【0165】
BSAの効果
クロストリジウム・ディフィシルを含む便試料にさまざまな濃度でBSAを加えた。下に3500 ng/反応として表される高濃度では、いくつかの患者試料から阻害が除去された。下の表(Ct値を表す)に見られる通り、5 ng/反応の低いBSA濃度において、クロストリジウム・ディフィシル標的は検出されず、内部対照は3つの試料のうち2つで検出されなかった。具体的には、内部対照は試料Aを用いて検出された。しかしながら、高濃度の試料と比較して、低いCt値は遅い増幅を証明し、阻害の特徴を示している(Ct値は問題の標的を検出するために十分なシグナルが作り出されるPCRサイクルである)。
【表44】
【0166】
界面活性剤の効果
カチオン性界面活性剤を加えると蛍光シグナルが改善し、直接増幅アッセイに改善された感度を与える。
図6に示される通り、シンプレキサ・ボルデテラ(Simplexa Bordetella)に対して直接増幅アッセイを行った場合に、界面活性剤を添加しなくてもいくらかの検出は可能である。しかしながら、界面活性剤を使用した場合、より高いシグナル高さにより示される通り、反応の有効性が改善し、それにより改善された感度が得られる。
【0167】
追加の加熱の効果
試験したいくつかの生物体はアッセイ性能を改善するために追加の加熱工程を必要とする。例えば、
図7に示される通り、Flu Bについて、標準的な反応において提供されるもの(例えば前加熱)以上の追加の加熱を用いた場合に、感度の改善が観察された。Flu Bを用いた改善は70℃の温度で見られた。クロストリジウム・ディフィシルおよびA群連鎖球菌などの他の生物体を検出するアッセイの性能は95℃の温度で見られた。阻害剤を破壊し、生物体を溶解するための試料の加熱は、熱が試薬を破壊する可能性とのバランスを取らなければならない。いくつかの実施形態において、試料の加熱は試薬(例えば、緩衝液)を加える前に行う。
【0168】
系の許容性
下記のデータ(百日咳菌/パラ百日咳菌(Bordetella pertussis/parapertussis)PCR)は、直接増幅アッセイが30%までの輸送媒体(Copan UTM)を阻害なしで許容し得ることを示す。下で直接検出法により試験したすべての試料は、30%の試料および70%の直接増幅反応ミックスを使用した。直接検出の結果を、増幅の前にDNA抽出および精製を使用した結果と比較した。患者の検体を使用した場合、直接法は抽出および精製試験と比較して99%の感度および特異性を有した。
【表45】
【0169】
以前の文献は検体を反応混合物に加える前にかなりの希釈を必要をしたので、感度が限定された。
【0170】
実施例16:さらなる検体型による直接増幅アッセイ
全血
全血を使用してヒト遺伝子試験を行った。全血は1:4希釈または10μlの反応体積中に0.5μlのいずれかで使用することができた。いずれの場合にも、ヘム(PCR阻害剤として知られる)はアッセイに影響を与えなかった。直接増幅法を用いて第V因子ライデン(Leiden)変位または第II因子変位の存在について試験した場合と、増幅および突然変異の検出の前に核酸抽出を利用する標準的方法を用いた場合とで完全な一致が達成された。
【表46】
【0171】
ヘパリンを含む全血
図8のデータは、1つの血液試料を3本の管に収集してそれぞれ異なる抗凝血剤(ヘパリン、EDTA、クエン酸塩)を加えたものからの増幅プロットを示す。図に示される通り、増幅プロットは、公知のPCR阻害剤であるヘパリンを抗凝血剤として使用した場合でさえも、すべての試料が有効な増幅を与えることを示す。
【0172】
口腔スワブ
図9のデータは、突然変異(第V因子ライデン変位領域の検出)についてヒト遺伝子DNAの2つの試料および1つの負の対照のそれぞれを4回反復した結果を表す。すべての反復において効率的な増幅が見られた。試料は頬の内側を約10秒間スワブで拭くことにより収集し、スワブ表面全体が使用されたことを確認した。次に、スワブを500μLの1X TE緩衝液2μL中に入れ、これを抽出を行わずにPCR試料に直接入れた。
【0173】
以前に刊行された文献との比較
以前に刊行された結果は、有効な検出を行うためには試料を希釈しなければならないことを示している。これらの刊行物、例えば、参照文献Pandori et al., BMC Infect. Dis., 6:104 (2006)と比較すると、前記のデータは、10倍の量の試料が、刊行された方法よりも10倍低い検出限界を提供することを証明している。
【0174】
本明細書において言及または引用した論文、特許、および特許出願、ならびに他のすべての文書および電子的に利用可能な情報の内容は、個々の刊行物について明確にかつ個別に参照により組み込まれることが指示されたのと同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれるものとする。出願人は任意の前記論文、特許、特許出願、または他の物理的および電子的文書からの任意の、かつすべての材料および情報を本出願に物理的に組み入れる権利を保有する。
【0175】
本明細書に実例として記載した発明は、本明細書に特に開示されていないが、任意の要素(単数または複数の)、限定(単数または複数の)の不在下で好適に実施し得る。さらに、本明細書において使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されたものであり、前記用語および表現の使用において、提示および記載された特徴またはその一部の何らかの同等物を除外する意図は存在せず、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内でさまざまな修正が可能であると認められる。したがって、本発明を好ましい実施形態および随意的な特徴により具体的に開示したが、本明細書に開示されたそこに具体化された発明の修正および変更は当業者により実施可能であり、そのような修正および変更は本発明の範囲に包含されると見なされることが理解されるべきである。
【0176】
本明細書において、本発明を広く一般的に記載した。一般的開示の中に含まれるより狭い種および亜族の分類のそれぞれも本発明の一部を形成する。これは、条件付きの本発明の一般的説明または属から任意の対象物を除く消極的限定(削除された材料が本明細書に特に列記されたか否かに関わらず)を含む。
【0177】
他の実施形態は以下の特許請求の範囲内に含まれる。さらに、本発明の特徴または態様がマーカッシュ群を用いて記載される場合、当業者は、それによりその発明がマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループによっても記載されることを認めるであろう。
【0178】
本発明は以下の態様も提供する。
[1] ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、
(a) 試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;
(b) 工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに
(c) 存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程
を含み、
試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出しない、
前記方法。
[2] 試料を工程(a)の前に希釈しない、[1]に記載の方法。
[3] 試料を工程(b)の前に加熱する、[1]に記載の方法。
[4] 試料を工程(a)の前に加熱する、[3]に記載の方法。
[5] 試料を工程(b)の前に、約2分間以上、約70℃以上の温度に加熱する、[1]に記載の方法。
[6] 緩衝液が塩化カリウム(KCl)を含む、[1]に記載の方法。
[7] KClが約5 mM~約50 mMの濃度で存在する、[6]に記載の方法。
[8] 緩衝液がGoTaq(商標)Flexi緩衝液を含む、[1]に記載の方法。
[9] GoTaq(商標)Flexi緩衝液が工程(b)の間1X~5Xの濃度で存在する、[8]に記載の方法。
[10] DNAポリメラーゼがTaqポリメラーゼである、[1]に記載の方法。
[11] 標的核酸がDNAである、[1]に記載の方法。
[12] 標的核酸がRNAである、[1]に記載の方法。
[13] 増幅の前に、試料をさらに逆転写酵素と接触させる、[12]に記載の方法。
[14] 試料をDNAポリメラーゼおよび逆転写酵素と同時に接触させる、[13]に記載の方法。
[15] 試料が血液、血清、血漿、脳脊髄液、口腔液、および便からなる群より選択される、[1]に記載の方法。
[16] 血液が全血である、[15]に記載の方法。
[17] 試料が口腔領域から得られる、[1]に記載の方法。
[18] 微生物がウイルスである、[1]に記載の方法。
[19] ウイルスが、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびエンテロウイルスからなる群より選択される、[18]に記載の方法。
[20] 微生物が細菌である、[1]に記載の方法。
[21] 細菌がクロストリジウム属または連鎖球菌属である、[20]に記載の方法。
[22] 緩衝液がさらにアルブミンを含む、[1]に記載の方法。
[23] アルブミンがBSAである、[22]に記載の方法。
[24] 緩衝液がさらに界面活性剤を含む、[1]に記載の方法。
[25] 界面活性剤がカチオン性界面活性剤である、[24]に記載の方法。
[26] ヒトから得られた生体試料中の微生物由来の標的核酸の存否を確認するための方法であって、該方法が、
(a) 試料から標的核酸を抽出することなく、試料由来の標的核酸の増幅に好適な条件下で試料をDNAポリメラーゼおよび緩衝液と接触させる工程;
(b) 工程(a)により得られた試料に、存在する場合には標的核酸が増幅されるように熱サイクルを行う工程;ならびに
(c) 存在する場合には工程(b)により製造された増幅された標的核酸を検出する工程
を含み、
試料中の核酸を増幅の前に試料から抽出せず、かつ、
緩衝液が、KCl、ウシ血清アルブミンおよび界面活性剤からなる群より選択される少なくとも1種の成分を含む、
前記方法。
[27] 界面活性剤がカチオン性界面活性剤である、[26]に記載の方法。
[28] さらに工程(a)または工程(b)の前に試料を加熱することを含む、[26]に記載の方法。
【0179】
SEQUENCE LISTING
<110> QUEST DIAGNOSTICS INVESTMENTS INCORPORATED
<120> DIRECT AMPLIFICATION AND DETECTION OF VIRAL AND BACTERIAL
PATHOGENS
<130> PA24-173
<150> US 61/505,055
<151> 2011-07-06
<150> US 61/552,405
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<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 14
gaggacgagc tggcctttc 19
<210> 15
<211> 29
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 15
acgcgcttcc gggcgttccg cgagcgcgt 29
<210> 16
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 16
gaggacgagc tggcctttc 19
<210> 17
<211> 21
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 17
ggtggtggac aggtcgtaga g 21
<210> 18
<211> 27
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 18
acgcggcttc tgttgtttcg accgcgt 27
<210> 19
<211> 20
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 19
ccccgcttta acacattcca 20
<210> 20
<211> 18
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 20
gcagttgcaa accgggat 18
<210> 21
<211> 34
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 21
aggccacacg gacacccaaa gtagtcggtg gcct 34
<210> 22
<211> 19
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 22
cccctgaatg cggctaatc 19
<210> 23
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 23
caattgtcac cataagcagc ca 22
<210> 24
<211> 41
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 24
aggcagctca ccatcaataa taactgaacc agttgctgcc t 41
<210> 25
<211> 33
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 25
ggttagattt agatgaaaag agatattatt tta 33
<210> 26
<211> 28
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 26
actaatcact aattgagctg tatcagga 28
<210> 27
<211> 122
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 27
ggttagattt agatgaaaag agatattatt ttacagatga atatattgca gcaactggtt 60
cagttattat tgatggtgag gagtattatt ttgatcctga tacagctcaa ttagtgatta 120
gt 122
<210> 28
<211> 45
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 28
agcggcactc caaaaatcag cagctatcaa agcaggtgtg ccgct 45
<210> 29
<211> 25
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 29
aagcttaata tcttctgcgc ttcgt 25
<210> 30
<211> 22
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
primer
<400> 30
taacccagta tttgccgatc aa 22
<210> 31
<211> 127
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 31
taacccagta tttgccgatc aaaactttgc tcgtaacgaa aaagaagcaa aagatagcgc 60
tatcacattt atccaaaaat cagcagctat caaagcaggt gcacgaagcg cagaagatat 120
taagctt 127