IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キューブイ・テクノロジーズ・コーポレイションの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081794
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】アトマイザコアおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/42 20200101AFI20240611BHJP
   A24F 40/46 20200101ALI20240611BHJP
   A24F 40/44 20200101ALI20240611BHJP
   A24F 40/70 20200101ALI20240611BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/46
A24F40/44
A24F40/70
【審査請求】未請求
【請求項の数】71
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024061528
(22)【出願日】2024-04-05
(62)【分割の表示】P 2023548768の分割
【原出願日】2022-02-09
(31)【優先権主張番号】63/148,023
(32)【優先日】2021-02-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】523304179
【氏名又は名称】キューブイ・テクノロジーズ・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】QV Technologies Corp
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】ペン,シャオフェン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アトマイザコア、アトマイザコア基板およびアトマイザコア基板の製造方法、ならびにそれらを組み込んだエアロゾル発生装置を提供する。
【解決手段】アトマイザコア10は、第1表面214と第2表面216を有するコア本体212を有する。コア本体212は、基板12と、第1表面214から基板12及びヒータを通じて第2表面216にエアロゾル前駆体を移送するために、第1表面214と第2表面216との間に延びる複数の流路を有するヒータとを含み、ヒータは、第2表面216でエアロゾルを形成するように、エアロゾル前駆体を加熱するように構成されている。他の実施形態では、基板12とヒータとの間に絶縁体が配置され、ヒータによって発生する熱から基板12を少なくとも部分的に絶縁するように構成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコアであって、前記アトマイザコアは、
第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、前記第1表面と前記第2表面との間に基板とヒータとを含むコア本体と、
前記第1表面と前記第2表面との間で延びて、前記第1表面から前記基板及び前記ヒータを通じて前記第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための複数の流路と、
を備え、
前記ヒータは、前記第2表面でエアロゾルを形成するようにエアロゾル前駆体を加熱するように構成されている、アトマイザコア。
【請求項2】
前記基板はガラスを有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項3】
前記基板は結晶を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項4】
前記基板はシリコンを有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項5】
前記基板は炭化ケイ素を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項6】
前記基板は導電性材料を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項7】
前記基板は金属を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項8】
前記基板は炭素に基づく導電性セラミックを有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項9】
前記コア本体は均一な厚みを有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項10】
前記複数の流路は均一な大きさを有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項11】
前記複数の流路は均一な直径を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項12】
前記複数の流路は均一な断面形状を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項13】
前記複数の流路は均一な分布を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項14】
前記複数の流路はそれぞれ250ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項15】
前記複数の流路はそれぞれ50ミクロン以下の直径を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項16】
前記基板と前記ヒータとの間に配置された断熱材をさらに備え、
前記複数の流路は、前記基板、前記断熱材及び前記ヒータの間で延びて、前記第1表面から前記第2表面にエアロゾル前駆体を移送し、
前記断熱材は、前記基板を、前記ヒータによって発生した熱から少なくとも部分的に絶縁するように構成されている、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項17】
前記断熱材は、低熱伝導性材料から形成される、請求項16に記載のアトマイザコア。
【請求項18】
前記断熱材は、Al、SiO、ZrO、HfO、ZnO、またはTiOを有する、請求項16に記載のアトマイザコア。
【請求項19】
酸化を抑制するように前記ヒータに配置された受動層をさらに有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項20】
前記受動層は、Au、Au-Ag合金、PtまたはPd-Ag合金を有する、請求項19に記載のアトマイザコア。
【請求項21】
前記第2表面は前記第1表面と対向する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項22】
前記第1表面及び前記第2表面はそれぞれ平面状である、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項23】
前記第1表面及び前記第2表面はそれぞれ管状である、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項24】
電源から前記ヒータに電力を供給する複数の接触電極をさらに備える、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項25】
前記ヒータは、生体適合性金属、または生体適合性金属に基づく合金、またはNi-Crに基づく合金を有する、請求項1に記載のアトマイザコア。
【請求項26】
前記生体適合性金属は、Al、Ti、Ta、Zr、Pt、Au、Ag、Pd、Re、Yb、Y、Ce、La、Hf、Si、これらに基づく合金、Ni-Cr合金、及び医療用ステンレススチールを含む、請求項25に記載のアトマイザコア。
【請求項27】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコアであって、前記アトマイザコアは、
第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、導電性材料で形成された基板を含むコア本体と、
前記第1表面と前記第2表面との間で延びて、前記第1表面から前記基板を通じて前記第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための複数の流路と、
を備え、
前記基板の前記導電性材料は、前記第2表面でエアロゾルを形成するようにエアロゾル前駆体を加熱するように構成されている、アトマイザコア。
【請求項28】
前記基板を酸化から保護するように、前記基板の上に配置された受動層をさらに備える、請求項27に記載のアトマイザコア。
【請求項29】
濡れ性能を制御するように、前記受動層の性質が変更される、請求項27に記載のアトマイザコア。
【請求項30】
電源から前記基板に電力を供給するように、前記基板にと通した電極の対をさらに備える、請求項27に記載のアトマイザコア。
【請求項31】
前記基板は、SiC、金属または炭素に基づく導電性セラミックで形成される、請求項27に記載のアトマイザコア。
【請求項32】
前記コア本体は管状である、請求項27に記載のアトマイザコア。
【請求項33】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコアであって、前記アトマイザコアは、
第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、シリコンで形成された基板を含むコア本体と、
前記第1表面と前記第2表面との間で延びて、前記第1表面から前記基板を通じて前記第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための複数の流路と、
を備え、
前記基板は、前記第2表面でエアロゾルを形成するようにエアロゾル前駆体を加熱するように構成され、
前記基板は、電気を伝導し、エアロゾル源を加熱するための熱を発生させるように、拡散またはイオン注入で処理される、アトマイザコア。
【請求項34】
前記コア本体は中空の管の形態である、請求項33に記載のアトマイザコア。
【請求項35】
前記第1表面は、前記コア本体の中空部分に配置される、請求項34に記載のアトマイザコア。
【請求項36】
前記コア本体はガラスで形成される、請求項33に記載のアトマイザコア。
【請求項37】
前記コア本体は、前記第2表面に反触媒層を含む、請求項33に記載のアトマイザコア。
【請求項38】
アトマイザコアの基板の製造方法であって、
基板を設けるステップと、
選択された位置における前記基板の構造を変更するように、前記選択された位置において前記基板をレーザで処理するステップと、
前記選択された位置において複数の穿孔を形成するように前記基板をエッチングするステップと、を含み、
前記複数の穿孔は、前記基板の第1表面から前記基板の第2表面に、エアロゾル源が流れることを可能にする、方法。
【請求項39】
前記基板をエッチングするステップは、ウェットエッチングまたはドライエッチングを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記基板を処理するステップは、選択された大きさ及び形状を形成するように、前記基板を処理するステップをさらに有する、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記基板は5mm以下の厚みを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項42】
前記基板は0.5mm以下の厚みを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項43】
前記基板を処理するステップの前、または前記基板をエッチングするステップの後に、前記基板を焼戻しまたはアニールするステップをさらに有する、請求項38に記載の方法。
【請求項44】
前記基板をエッチングするステップの後に、アニールプロセスにおいて、前記基板の軟化点で、前記基板を所望の形状に形成するステップをさらに有する、請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記基板は、ガラス、単結晶シリコン、または多結晶シリコンを有する、請求項38に記載の方法。
【請求項46】
アトマイザコアの基板の製造方法であって、
基板を設けるステップと、
前記基板の第1表面上の選択された位置で、前記基板をフォトレジストパターニングするステップと、
前記選択された位置において複数の穿孔を形成するように前記基板をエッチングするステップと、を含み、
前記複数の穿孔は、前記基板の第1表面から前記基板の第2表面に、エアロゾル源が流れることを可能にする、方法。
【請求項47】
前記基板をエッチングするステップは、ウェットエッチングまたはドライエッチングを有する、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
ヒータとして、前記基板の表面上に低抵抗率層を生成するように、前記基板を拡散するステップをさらに有する、請求項46に記載の方法。
【請求項49】
ヒータとして、前記基板の表面上に低抵抗率層を生成するように、前記基板をイオン注入するステップをさらに有する、請求項46に記載の方法。
【請求項50】
前記基板は、単結晶シリコン基板または多結晶シリコン基板である、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
アトマイザコアの基板の製造方法であって、
基板を設けるステップと、
酸を用いて前記基板をエッチングするステップと、
複数の穿孔を形成するように前記基板を陽極酸化するステップと、を含み、
前記複数の穿孔は、前記基板の第1表面から前記基板の第2表面に、エアロゾル源が流れることを可能にする、方法。
【請求項52】
前記方法は多孔性陽極酸化(PAO)方法であって、
前記基板は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、またはタンタルを有する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記基板は、アルミナ基板、チタニア基板、多孔性陽極酸化チタニア管(PATT)、ジルコニア基板、および酸化タンタル基板である、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
エアロゾルコアの基板の製造方法であって、
化学溶液における電解槽の負極に基板を設けるステップと、
前記電解槽の陽極として電極ピン配列を設けるステップと、
前記化学溶液における前記基板を腐食させるように、穿孔プローブ配列と前記負極との間に電圧を印加するステップと、
前記基板の選択された位置で複数の穿孔を生成するステップと、を含み、
前記複数の穿孔は、前記基板の第1表面から前記基板の第2表面に、エアロゾル源が流れることを可能にする、方法。
【請求項55】
前記基板は、シリコンウエハまたはガラスウエハである、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコア用の基板であって、前記基板は、
前記基板の第1表面と第2表面とを通過する複数の流路を有する第1領域であって、アトマイザコアが使用されている際に、前記第1表面から前記第2表面へのエアロゾル前駆体の流れを可能にするように前記流路が構成された、第1領域と、
前記第1領域に隣接した1つまたは複数の第2領域と、
を備え、
前記1つまたは複数の第2領域は、それぞれ複数の止まり穴を有し、
複数の止まり穴は、それぞれ前記基板の前記第1表面を通過し、前記第2表面に向かって所定深さまで延びて、前記第2表面の手前の端で終了する、基板。
【請求項57】
前記第1領域は実質的に長方形であり、
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の第1辺に隣接した第1の第2領域と、前記第1領域の第2辺に隣接した第2の第2領域とを有する、請求項56に記載の基板。
【請求項58】
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の第3辺に隣接した第3の第2領域と、前記第1領域の第4辺に隣接した第4領域とを有する、請求項57に記載の基板。
【請求項59】
前記第1領域は実質的に円形であり、
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の円周に隣接した前記複数の止まり穴によって形成される1つまたは複数の円弧、または前記第1領域を囲む前記複数の止まり穴によって形成された1つまたは複数の完全なリングを有する、請求項56に記載の基板。
【請求項60】
前記複数の止まり穴によって形成される前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域と同じ長さを有する、または、前記第1領域の長さより小さいもしくは大きい長さを有する、請求項56に記載の基板。
【請求項61】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコア用の基板であって、前記基板は、
前記基板の第1表面と第2表面とを通過する複数の流路を有する第1領域であって、アトマイザコアが使用されている際に、前記第1表面から前記第2表面へのエアロゾル源の流れを可能にするように前記流路が構成された、第1領域と、
前記第1領域に隣接した1つまたは複数の第2領域と、
を備え、
前記1つまたは複数の第2領域は、1つまたは複数のブラインドラインを有し、
少なくとも一部のブラインドラインは、前記基板の前記第1表面を通過し、前記第2表面に向かって所定深さまで延びて、前記第2表面の手前の端で終了する、基板。
【請求項62】
前記第1領域は実質的に長方形であり、
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の上辺に隣接した第1の第2領域と、前記第1領域の下辺に隣接した第2の第2領域とを有する、請求項61に記載の基板。
【請求項63】
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の第3辺に隣接した第3の第2領域と、前記第1領域の第4辺に隣接した第4領域とを有する、請求項61に記載の基板。
【請求項64】
前記第1領域は実質的に円形であり、
前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域の円周に隣接した前記複数のブラインドラインによって形成される1つまたは複数の円弧、または前記第1領域を囲む前記複数のブラインドラインによって形成された1つまたは複数の完全なリングを有する、請求項61に記載の基板。
【請求項65】
ブラインドラインによって形成される前記1つまたは複数の第2領域は、前記第1領域と同じ長さを有する、または、前記第1領域の長さより小さいもしくは大きい長さを有する、請求項61に記載の基板。
【請求項66】
エアロゾル発生装置用のアトマイザコア用の基板であって、前記基板は、
それぞれ複数の流路を有する第1基板部分及び第2基板部分と、
前記第1基板部分と前記第2基板部分との間に形成された層と、を備え、
前記複数の流路は、前記第1基板部分の第1表面から、前記層を通じて、前記第2基板部分の第2表面までのエアロゾル源の流れを可能にする、基板。
【請求項67】
前記層は、エアロゾル源を吸収する材料によって形成される、請求項66に記載の基板。
【請求項68】
前記エアロゾル源を吸収する材料は、綿または麻である、請求項67に記載の基板。
【請求項69】
前記層は、自由空気空間によって形成される、請求項66に記載の基板。
【請求項70】
請求項1から37のいずれか一項に記載のアトマイザコア、または請求項56から69のいずれか一項に記載のアトマイザコア用基板を有する、エアロゾル発生装置。
【請求項71】
請求項38から55のいずれか一項に記載の方法によって製造されたアトマイザコア用基板を有するエアロゾル発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に霧化用途に関係する。より具体的には、本発明は、エアロゾル発生装置用のアトマイザコアおよびアトマイザコアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エアロゾル発生装置は、エアロゾル吸入器または気化器とも呼ばれ、エアロゾル前駆体の材料を加熱して、使用者が吸入するためのエアロゾルを生成するための部品を含む。このような部品の問題点は、有害または潜在的に有害な成分(HPHC)を生成する可能性があることである。また、公知の装置では、エアロゾルの投与量を所望のレベルで制御することはできない。
【0003】
上記のような公知の装置の1つ以上の問題に対処する、エアロゾル発生装置用の改良された部品が求められている。
【発明の概要】
【0004】
ある態様において、アトマイザコアが提供され、アトマイザコアは、第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、基板と、ヒータと、第1表面と第2表面との間に配置された断熱材であって、基板とヒータとの間に配置された断熱材とを含むコア本体と、第1表面から基板、断熱材およびヒータを通って第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための、第1表面と第2表面との間に延びる複数の流路と、を備え、ヒータは、エアロゾル前駆体を加熱して第2表面でエアロゾルを形成するように適合されており、断熱材は、ヒータによって発生する熱から基板を少なくとも部分的に絶縁するように適合されている。
【0005】
他の態様において、アトマイザコアが提供され、アトマイザコアは、第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、導電性材料から形成された基板を含むコア本体と、第1表面から基板を通って第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための、第1表面と第2表面との間に延びる複数の流路と、を備え、基板の導電性材料は、エアロゾル前駆体を加熱して第2表面でエアロゾルを形成するように適合されている。
【0006】
他の態様において、アトマイザコアが提供され、アトマイザコアは、第1表面と第2表面とを有するコア本体であって、シリコンから形成された基板を含むコア本体と、第1表面から基板を通って第2表面にエアロゾル前駆体を移送するための、第1表面と第2表面との間に延びる複数の流路と、を備え、基板の導電性材料は、エアロゾル前駆体を加熱して第2表面でエアロゾルを形成するように適合され、基板は、電気を伝導し、エアロゾル源を加熱するための熱を発生させるために、拡散またはイオン実装(ion implementation)で処理される。
【0007】
他の態様において、アトマイザコアの基板を製造する方法が提供され、方法は、ガラス基板を提供する工程と、選択された位置でガラス基板をレーザで処理して選択された位置のガラス基板の特性を変更する工程と、ガラス基板をエッチングして選択された位置に複数の穿孔を形成する工程と、を含む。
【0008】
他の態様において、アトマイザコアの基板を製造する方法が提供され、方法は、シリコン基板を提供する工程と、シリコン基板の表面上の選択された位置においてシリコン基板にフォトレジストのパターニングをする工程と、シリコン基板をエッチングして選択された位置に複数の穿孔を形成する工程と、を含む。
【0009】
他の態様において、アトマイザコアの基板を製造する方法が提供され、方法は、化学溶液における電解槽の負極に基板を提供する工程と、電解槽の陽極として電極ピン配列を提供する工程と、穿孔プローブ配列と負極との間に電圧を印加して、化学溶液における基板を腐食させる工程と、基板の選択された点に穿孔を生成する工程と、を含む。
【0010】
他の態様において、方法は、多孔性陽極酸化(PAO)法であり、基板はアルミニウム製である。
【0011】
他の態様において、アトマイザコア用の基板が提供され、基板は、基板の底面および上面を通過する複数の穿孔を有する第1領域であって、アトマイザコアの使用時にエアロゾル源が穿孔を通って底面から上面に流れる、第1領域と、第1領域に隣接する1つまたは複数の第2領域であって、1つまたは複数の第2領域は複数の止まり穴(blind perforations)を有する1つまたは複数の第2領域と、を備え、それぞれの止まり穴は、基板の底面を通過し、上面に向かってある深さまで延び、上面の手前の端で終了している。あるいは、止まり穴は、上面において開口しているが、底面の手前の端で終了する。
【0012】
他の態様において、アトマイザコア用の基板が提供され、基板は、基板の底面および上面を通過する複数の穿孔を有する第1領域であって、アトマイザコアの使用時にエアロゾル源が穿孔を通って底面から上面に流れる、第1領域と、第1領域に隣接する1つまたは複数の第2領域であって、1つまたは複数の第2領域は1つまたは複数のブラインドライン(blind lines)を有する1つまたは複数の第2領域と、を備え、それぞれのブラインドラインは、基板の底面を通過し、上面に向かってある深さまで延び、上面の手前の端で終了している。あるいは、ブラインドラインは、上面において開口しているが、底面の手前の端で終了する。
【0013】
他の態様において、アトマイザコア用の基板が提供され、基板は、第1基板部分および第2基板部分を含み、第1基板部分および第2基板部分のそれぞれが複数の貫通穿孔を有し、第1基板部分と第2基板部分との間には、隙間が形成されても形成されなくてもよい。
【0014】
次に、例として、本出願の例示的な実施形態を示す添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るアトマイザコアを有するエアロゾル発生装置の概略図である。
図2図1のアトマイザコアの分解図である。
図3】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの分解図である。
図4】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの断面図である。
図5】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの分解図である。
図6A】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコア用の基板の上面図である。
図6B】A-A線に沿った図6Aの基板の断面図である。
図7A】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコア用の基板の上面図である。
図7B】B-B線に沿った図7Aの基板の断面図である。
図8A】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコア用の基板の透視図である。
図8B】A-A線に沿って見た図8Aに示す基板の断面図である。
図8C図8Aに示す基板とともに使用されるパッドの透視図である。
図9】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの概略図である。
図10A】本出願の他の実施形態に係る2つのアトマイザコアの概略図である。
図10B】本出願の他の実施形態に係る2つのアトマイザコアの概略図である。
図11A】本出願の他の実施形態に係る2つのアトマイザコアの概略図である。
図11B】本出願の他の実施形態に係る2つのアトマイザコアの概略図である。
図12】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの概略図である。
図13】本出願の他の実施形態に係るアトマイザコアの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
異なる図面において、同様な参照符号は、同様な構成要素を示すために使用される。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係るエアロゾル発生装置200の概略図である。エアロゾル発生装置200は、ハウジング202と、マウスピース204と、エアロゾル前駆体材料208(本明細書ではエアロゾル前駆体又はエアロゾル源とも称する)を収容するためのリザーバ206と、電力供給源210と及びアトマイザコア10とを含む。アトマイザコア10は、第1表面214と第2表面216とを有するコア本体212を含む。第1表面214と第2表面216とは互いに対向し、平行である。第1表面214は、エアロゾル前駆体208を受け入れるためにリザーバ206に近接して配置される。第2表面216は、エアロゾル前駆体208からエアゾールを生成される場所である。第1表面214は、アトマイザコア10またはその構成要素(基板など)および代替実施形態を参照して、本明細書では底面とも呼ばれる。同様に、第2表面216は、アトマイザコア10またはその構成要素(基板など)および代替実施形態を参照して、本明細書では上面とも呼ばれる。
【0018】
図2を参照すると、コア本体212は、基板12と、断熱材14と、ヒータ16とを含む。複数の穿孔18(本明細書では流路またはマイクロ流路とも呼ばれる)は、エアロゾル前駆体208を第1表面214から基板12、断熱材14およびヒータ16を通じて第2表面216に移送するために、第1表面214から第2表面216までコア本体212を通じて画定される。図2および他の図に示すように、複数の穿孔18は、好ましくは、均一な直径および隣接する穿孔からの均一な分布または均一な間隔を有する。各穿孔18は、第1表面214における第1開口部18aと、第2表面216における第2開口部18bとを含む。穿孔18は、第1開口部18aから各穿孔に入るエアロゾル前駆体208と、第2開口部18bから各穿孔18を出てエアロゾルに変化するエアロゾル前駆体208と流体連通している。本実施形態では、第1表面214と第2表面216とはそれぞれ平面である。第1表面214は、第1領域A1を有し、第2表面216は、第2領域A2を有する。本実施形態では、コア本体212は、長さL、幅Wおよび均一な厚さTを有する箱形である。コア本体212は、他の実施形態で示されるように、他の形状を有してもよい。
【0019】
穿孔18は、コア本体212を通じて、選択された位置に、一回の操作で、例えばレーザによって形成されてもよい。
【0020】
穿孔18は、基板12に最初に形成されてもよい。断熱材14は、その後に基板12上に形成され、ヒータ16は、その後に断熱材14上に形成され、受動層19または他の層は、その後にヒータ16上に形成され、全て薄膜堆積プロセスを使用してもよい。薄膜堆積プロセスが、10-10mレベルのような原子レベルの膜を形成し、基板12上の穿孔18が、10-7mレベルまたはそれ以上のレベルのようなはるかに大きなサイズを有するため、断熱材14、ヒータ16、およびそれぞれの膜によって形成された受動層19は、基板12と実質的に同じ穿孔サイズ18を有する。穿孔18は、代わりに、すべての層を通して実質的に同じ穿孔サイズ18を有して、基板12にスクリーン印刷することによって、断熱材14、ヒータ16、および受動層19に形成されてもよい。穿孔18は、他の応用可能な技術によって形成されてもよい。基板12、断熱材14、ヒータ16、および受動層19のそれぞれに形成された穿孔18は、集合的に、コア本体212の第1表面214と第2表面216との間に延びる穿孔18を形成する。
【0021】
穿孔18の直径は15nmから250ミクロン、好ましくは100nmから50ミクロンであってもよい。ある例では、基板12、断熱材14、ヒータ16、受動層19における穿孔の直径は異なっていてもよい。例えば、第1表面214における穿孔18の直径は、第2表面216における穿孔18より大きくてもよく、第2表面216における穿孔18より500ミクロン(μm)以上大きくてもよい(換言すれば、穿孔は、第1表面214と第2表面216との間において、大きい直径から小さい直径へと先細りになっていてもよい)。
【0022】
穿孔18の断面形状は、円形、楕円形、正方形、三角形、長方形、またはその他の所望の形状であってもよい。好ましくは、全ての穿孔18の断面形状は、より良好な投与量制御のためにコア本体212において均一である。
【0023】
断熱材14は、基板12とヒータ16との間に配置される。断熱材14は、基板12上に堆積される層またはフィルムを有してもよい。断熱材14は、好ましくは、コア本体212と同じ長さLおよび幅Wを有し、好ましくは、異なる絶縁材料および気化要件に応じて変えることができる均一な厚さを有する。ある例では、断熱材14は、Al、SiO、ZrO、HfO、ZnO、TiOなどの低熱伝導性材料から形成されてもよい。
【0024】
ヒータ16は、断熱材14上に堆積される層またはフィルムを有してもよい。ヒータ12は、好ましくは、コア本体212と同じ長さLおよび幅Wを有し、好ましくは、例えば20ミクロン未満の範囲の均一な厚さを有する。ヒータ16は、エアロゾル前駆体208を加熱または気化してエアロゾルを生成するために、所望の量の熱を発生するように構成される。
【0025】
いくつかの例では、穿孔18を有する基板12が形成された後、断熱材14およびヒータ16は、例えば、金属または合金薄膜、導電性低酸素薄膜、またはコーティング、または直接金属箔接合で形成されてもよい。ヒータ16の加熱性能は、抵抗率特性の異なる材料を使用することで異なる場合がある。ある例では、ヒータ16は、生体適合性金属、または生体適合性金属に基づく合金、またはNi-Crに基づく合金から作られている。生体適合性金属は、Al、Ti、Ta、Zr、Pt、Au、Ag、Pd、Re、Yb、Y、Ce、La、Hf、Si、およびこれらの合金、ならびに医療用ステンレススチールを有してもよい。
【0026】
このように、断熱材14により、ヒータ16から基板12への熱伝達による熱損失が低減または排除される。従って、断熱材14により、アトマイザコア10は、アトマイザコア10のヒータ16によってエアロゾル源を所望の温度まで加熱する際に、効率が良く、迅速な加熱が可能となる。これにより、最初のパフのエアロゾル量が改善され、使用感が向上する。従って、断熱材14により、アトマイザコア10の安全性、味、容量、蒸気発生速度等のベープ(vaping)性能が向上する。熱損失を低減することにより、断熱材14は、特に基板12の熱伝導率が高い場合に、エアロゾル源を加熱するためにヒータ16が必要とする電力も節約する。
【0027】
ある例では、断熱材14は、基板12とヒータ16との間の緩衝層であり、ベープ中のアトマイザコア10の機械的および熱的性能を高めることができる。
【0028】
ある例では、アトマイザコア10は、ヒータ16の露出表面に堆積された受動層19をさらに含んでもよい。受動層19は、ヒータ16を酸化から保護する。ある例では、ヒータ16が、Pd-Ag合金、またはPt、Au、Pd、Re、金属、それらに基づく合金、医療用ステンレススチール、またはNi-Crに基づく合金のような、酸化に耐性のある材料から作られている場合、受動層19は省略されてもよい。ある例では、金属または合金フィルムから作られたヒータ16は、エアロゾルの生成中にヒータ16の酸化を保護するための追加の受動層19を含んでもよい。
【0029】
ある例では、アトマイザコア10は、バッテリのような電源210からヒータ16に電力を供給するための一対の電極17aおよび電極17bをさらに含んでもよい。電極17aおよび電極17bは、銀などの電気伝導性に優れた生体適合性材料で作られている。電極17aおよび電極17bは、好ましくはヒータ16と物理的に接触している。アトマイザコア10は、エアロゾル源208をヒータ16で加熱することにより、アトマイザコア10の第2表面216でエアロゾルを発生させることができる。ある例では、ヒータ16がTi、またはTa、またはTi若しくはTaの合金箔などの導電性材料から作られ、導電性材料が20μmを超えるような十分な厚さを有する場合、一対の電極17aおよび電極17bはアトマイザコア10から省略してもよい。受動層19が含まれる場合、受動層19は、金またはAu-Ag合金などの導電性材料から作られる。
【0030】
図3は、アトマイザコア20の他の実施形態を示す。同様の参照符号は、本明細書に記載される実施形態の同様の要素を示すために使用される。アトマイザコア20は、第1面(または底面)214と第2面(または上面)216とを有するコア本体212を含む。コア本体212は、導電性材料で形成された基板22を含む。基板22は、複数の穿孔22aによって形成された複数のマイクロ流路を有する。複数の穿孔22aは、エアロゾル源が基板22の第1表面214から第2表面216に流れることを可能にする。基板22は、エアロゾル源を加熱または気化させてエアロゾルを生成するための熱を発生するように構成されている。基板22は、好ましくは、SiC、金属または炭素に基づくセラミック、導電性シリコン単結晶または多結晶から作られる。導電性材料では、電池などの電力供給源210から基板22に電力が供給されると、基板22が発熱することがある。このように、基板22は基板としてもヒータとしても機能することができる。従って、アトマイザコア20は、既存のアトマイザコアよりもシンプルな構造となっている。
【0031】
ある例では、基板22は、基板とヒータの両方を形成する金属箔接合プロセスによって製造されてもよい。例えば、Ti、Ta、その他の生体金属またはそれらの合金をガラス、結晶、セラミック基板に直接接合して、ヒータとして、基板および導電層の両方を形成できる。他の例では、Ti箔をサファイア表面、石英ガラス、または他の基板に直接接合できる。穿孔22aは、上述したアトマイザコア10の穿孔18と同様の方法で形成されてもよい。
【0032】
ある例では、アトマイザコア20は、基板22の上面上に配置された受動層24をさらに含んでもよい。受動層24は、基板22を酸化から保護する。受動層24は、Al、SiO、ZrO、HfO、TiOまたはZnOなどの耐酸化性材料で作られてもよい。ある例では、基板22の材料も耐酸化性である場合、受動層24をアトマイザコア20から省略できる。
【0033】
ある例では、アトマイザコア20は、熱を発生させるために電源から基板22に電力を供給するために、基板22の上面または受動層24上に配置された一対の電極26aおよび電極26bをさらに含んでもよい。いずれの場合も、電極26aおよび電極26bは、銀のような電気伝導性の良い材料で作られてもよい。電極26a、26bは基板22と電気的に導通している。受動層24も導電性を有していれば、一対の電極26a、26bを省略してもよい。
【0034】
図3の例では、受動層24は、基板22と同じ穿孔パターンを有し、先に説明したように、薄膜堆積または他のプロセスによって形成されてもよい。受動層24は、基板22の穿孔22aまたはマイクロ流路を塞がず、エアロゾル源が基板22の上面に流れることを可能にする。
【0035】
図4は、別の実施形態によるアトマイザコア30を示す。アトマイザコア30は、第1表面214と第2表面216とを有するコア本体212を含む。コア本体212は、シリコンで形成された基板32を含む。コア本体212は、複数の穿孔32aによって形成された複数のマイクロ流路を含む。複数の穿孔32aにより、エアロゾル源がコア本体212の第1表面214から第2表面216に流れることが可能になる。穿孔32aは、上述したアトマイザコア10の穿孔18と同様の方法で形成されてもよい。
【0036】
図4の例では、シリコン基板32は、電気を伝導させるのに適するように処理されてもよい。例えば、シリコン基板32は、最上層34を形成するように、拡散またはイオン実装で処理されてもよい。例えば、拡散またはイオン実装の深さは、10μm未満であってもよい。イオン注入は、特定の元素のイオンをシリコン基板32に向けて加速させて、シリコン基板32の化学的および物理的特性を変化させることを含む低温プロセスである。イオン注入は等方的で方向性がある。拡散は、シリコン基板32に不純物を導入するために用いられる。拡散は等方的で、横方向への拡散を伴う。層34を拡散またはイオン注入で処理することにより、層34は、例えば10-1~10-5Ω/mの電気抵抗など、低い抵抗率を提供する。処理された層34の抵抗率が低いため、層34は電気を通すことができる。したがって、処理された層34はヒータとして機能できる。層34に電力が供給されると、処理された層34は、表面34に散布されたエアロゾル源からエアロゾルを発生させるための熱を発生させることができる。代替的な実施形態では、シリコン基板32をさらに拡散処理またはイオン実装処理して、基板32と最上層34との間にSiO絶縁体層を形成してもよい。
【0037】
図5は、本出願の別の実施形態によるアトマイザコア40を示す。図5の例では、アトマイザコア40は、第1表面214と第2表面216とを有するコア本体212を備える。コア本体212は、管状基材44と、管状基材44の内側の表面をカバーするための管状ヒータ42とを含む。基板44とヒータ42の間に絶縁体を追加してもよい。ヒータ42には受動層を追加してもよい。
【0038】
コア本体212は、複数の穿孔44aによって形成された複数のマイクロ流路を含む。複数の穿孔44aは、エアロゾルを発生させるために、エアロゾル源が、管状基材44の外側の表面から、管状基材44の内側の表面における管状ヒータ42に流れることを可能にする。穿孔44aは、上述したアトマイザコア10の穿孔18と同様の方法で形成されてもよい。
【0039】
ある例では、エアロゾル源が管状基材44の外側の表面に位置する場合、複数の穿孔44aは、エアロゾルを発生させるために、エアロゾル源が、外側の表面から管状基材44の内側の表面におけるヒータ42に流れることを可能にする。ある例では、エアロゾル源が管状基材44の内側の表面に位置する場合、複数の穿孔44aは、エアロゾルを発生させるために、エアロゾル源が、内側の表面から管状基材44の外側の表面に位置するヒータ42に流れることを可能にする。
【0040】
管状ヒータ42は、図2および図3の例のヒータ16と同じ材料から作られてもよい。管状基材44は、図4の例における基板22の材料、または図4の例における拡散またはイオン注入で処理されたシリコン基板層34から作られてもよい。この場合、管状ヒータ42を省略できる。管状基材44に電力を供給する際に、管状基材44でエアロゾル源からエアゾールを発生させるための熱を発生させるために、管状基材44の内側の表面または外側の表面のいずれかを選択してもよい。
【0041】
上記アトマイザコア10、20、30、40の例において、コア本体212の穿孔によって形成されたマイクロ流路は、コア本体212の第1表面214および第2表面216に対して実質的に垂直であってもよく、またはマイクロ流路とコア本体212の第1表面および第2表面との間に任意の角度を形成してもよい。
【0042】
図6Aおよび図6Bは、本出願の別の実施形態による基板50を示す。図6A図6Bの例では、基板50は、第1領域52と第2領域54、56とを含んでもよい。各第2領域は、第1領域52に隣接していてもよい。
【0043】
図6Aの例に示されるように、第1領域52は複数の穿孔52aを有する。図6Bに示すように、各穿孔52aは、基板50の底面214および上面216を通過し、マイクロ流路を形成する。基板50の例では、穿孔52aは実質的に直線状であり、基板50の上面214および底面216に対して実質的に垂直である。穿孔52aは、実質的に直線状であるが、基板50の上面216または底面214と任意の角度をなすように構成されてもよい。基板50がアトマイザコアとして使用されているとき、エアロゾル源は穿孔52aを通って底面214から上面216に流される。
【0044】
第2領域54、56は、それぞれ複数の止まり穴(blind perforations)54a、56aを有する。図6Bに示されるように、止まり穴54a、56aの各々は、基板50の底面214を通過する。止まり穴54a、56aのそれぞれは、上面216に向かってある深さまで延び、穿孔が上面216に達する前の端部で終了している。深さは基板50の厚さより小さい。このように、基板50がアトマイザコアとして使用されているとき、エアロゾル源は、領域54、56において底面214から上面216に流れず、穿孔54a、56aの端部、または底面214と穿孔54a、56aの端部との間の点で停止する。従って、基板50を有するアトマイザコアの使用時には、パフ中に、エアロゾル源が止まり穴54a、56aに収容されてもよい。また、止まり穴54a、56aは、パフ後の凝縮した残留エアロゾルを収容してもよい。対照的に、第1領域52におけるエアロゾル源は、基板50の穿孔52aによって画定されたマイクロ流路を、エアロゾルを発生させるためのアトマイザコアの上面216に単に通過させる。
【0045】
別の例では、止まり穴54aおよび56aの一部または全部が、基板50の上面216を通過してもよい。止まり穴54a、56aは、底面214に向かってある深さまで延び、止まり穴が底面214に到達する前の端部で終了している。深さは基板50の厚さより小さい。
【0046】
止まり穴54a、56aによって形成される第2領域54、56の長さは、第1領域52の長さと同じでも、短くても、長くてもよい。
【0047】
一例では、止まり穴54a、56aの各々は、底面214から700μmの深さ、および30μmの直径を有してもよい。穿孔52aの各々は、底面214から上面216まで1mmの深さを有してもよい。止まり穴54a、56aの総数は、396など、数百、数千を超えてもよい。第2領域の全領域は700μm程度であってもよい。基板50の総面積は約28,000μmであってもよく、基板の総容量は195百万μm以上であってもよい。
【0048】
穿孔配列は、異なる機能のために他の形状を有してもよい。
【0049】
図6Aの例では、第1領域52は実質的に長方形であるため、上下左右の辺を有する。基板50は、第1領域52の上辺に隣接する第2領域54と、第1領域52の下辺に隣接する第2領域56とを含む。また、基板50は、第1領域52の左側および/または右側に、1つまたは複数の追加の第2領域を含んでもよい。
【0050】
第1領域52は、円形や他の多角形のような任意の所望の形状を有してもよい。基板50は、第1領域52の1つまたは複数の辺に隣接する1つまたは複数の第2領域を含んでもよい。例えば、第1領域52が円形を有する場合、第2領域は、第1領域52の円周に隣接する1つまたは複数の円弧を形成する、または第1領域52を取り囲む1つまたは複数の完全なリングを形成する複数の止まり穴54a、56aを有してもよい。
【0051】
図7Aおよび図7Bは、基板60の別の例を示している。基板60は、第1領域62と、1つまたは複数の第2領域64、66とを含んでもよい。それぞれの第2領域は、第1領域62の片側に隣接していてもよい。
【0052】
図7Aの例に示されるように、第1領域52は複数の穿孔62aを有する。穿孔62aは、図6Aおよび図6Bに記載した穿孔52aと同じである。
【0053】
第2領域64、66は、それぞれ1つまたは複数のブラインドライン64a、66aを有する。図7A図7Bの例では、第2領域64および66のそれぞれは、2つのブラインドラインを有する。図7Bに示されるように、ブラインドライン64a、66aのそれぞれは、第1領域62の一方側に隣接する実質的に直線状のブラインドラインであってもよい。各ブラインドライン64a、66aは、波線などの他の所望の形状を有してもよい。ブラインドラインのそれぞれは、基板60の底面214に形成され、所望の深さまで基板60の中に延びてもよい。深さは基板60の厚さより小さい。ブラインドライン64a、66aのそれぞれは、基板60の上面216に到達する前の端部まで基板内に延在している。図7Bの例では、底面214におけるブラインドラインの開口は、端部よりも広くてもよい。ある例では、底面214におけるブラインドラインの開口は、端部と同じか、または端部よりも狭くてもよい。
【0054】
他の例では、1つまたは複数のブラインドラインは、基板60の上面216に形成され、所望の深さまで底面214に向かって基板60の中に延びてもよい。深さは基板60の厚さより小さい。
【0055】
ブラインドライン64a、66aによって形成される1つまたは複数の第2領域64、66の長さは、第1領域62の長さと同じであっても、短くても、長くてもよい。
【0056】
図6Aおよび図6Bの止まり穴54a、56aと同様に、基板60がアトマイザコアとして使用されているとき、ブラインドライン64a、66aにおけるエアロゾル源は、基板60の底面214から上面216に流れない。エアロゾル源は、ブラインドライン64aまたはブラインドライン66aの終点、あるいは底面214とブラインドライン64aまたはブラインドライン66aの終点の間における点で停止する。したがって、基板60からなるアトマイザコアを使用する場合には、パフ中に、エアロゾル源がブラインドライン64a、66aに収容されてもよい。また、ブラインドライン54a、56aは、パフした後の凝縮したエアロゾル源を収容してもよい。
【0057】
図7Aの例では、第1領域62は実質的に長方形であるため、上下左右の辺を有する。基板60は、第1領域62の上辺に隣接する第2領域64と、第1領域62の下辺に隣接する第2領域66とを含む。また、基板60は、第1領域62の左側および/または右側に、1つまたは複数の追加の第2領域を含んでもよい。
【0058】
第1領域62は、円形や他の多角形のような任意の所望の形状を有してもよい。基板60は、第1領域62の1つまたは複数の辺に隣接する1つまたは複数の第2領域を含んでもよい。例えば、第1領域62が円形を有する場合、第2領域は、第1領域62の円周に隣接する1つまたは複数の円弧、または第1領域62を取り囲む1つまたは複数の完全な円を有してもよい。
【0059】
一例では、ブラインドライン64a、66aのそれぞれは、底面214から700μmの深さを有してもよい。貫通孔62aの深さは約1mmである。ブラインドライン64a、66aのそれぞれは、長さが5000μmを超える直線であってもよく、ブラインドライン64a、66aの総数は、第1領域62の上側と下側との2つであってもよい。底面における開口部の幅は約30μmであってもよい。ブラインドラインの総面積は150,000μm2以上であってもよい。基板60の総面積は約630,000μm2であり、基板の総体積は4億μm3以上であってもよい。
【0060】
上述のように、アトマイザコアに電源がONにされると、エアロゾル源を気化させるためにヒータが加熱される。加熱領域から基板端部への熱伝達が減少する。そのため、同じ電力量でエアロゾル源を気化させてより多くのエアロゾルを発生させるために、より多くのエネルギが利用可能である。
【0061】
第2領域54、56における基板50の端部、および第2領域64、66における基板60の端部に伝わる熱が少なくなり、アトマイザコアのヒータで発生した熱は第1領域52、62に集中する。そのため、第1領域52、62のそれぞれは、より高い集中されたエネルギを有する。従って、基板50または基板60を用いると、エアロゾル源はより早く、より容易に気化されるようになる。また、基板50または基板60を構成するエアロゾル発生装置において、第1領域52または第1領域62で所望の温度に到達するために消費される電力が少なくて済むため、省電力が可能になる。
【0062】
第2領域54、56、または第2領域64、66の上面216における低い温度は、基板50または基板60を構成するアトマイザコアと、アトマイザコアを取り囲む材料、例えばプラスチックとのシール性能を向上させる。例えば、基板50または基板60の第1領域が高温になっても、周囲の材料の物理的特性や機械的強度が損傷したり劣化したりする可能性は低くなる。
【0063】
基板50、60は、上述のアトマイザコア10、20、30、40の基板であってもよい。基板50、60は、エアロゾル源からエアロゾルを生成するためのいずれかのアトマイザコアの基板であってもよい。
【0064】
図8A図8Cは、他の実施形態に係る基板70を示す。基板70は、第1基板部分70aと、第2基板部分70bと、第1基板部分70aと第2基板部分70bとの間の層70cとを有する。層70cは、第1基板部分70aと第2基板部分70bとの間にエアロゾル源フィルムを形成する。
【0065】
第1基板部分70aは、複数の貫通穿孔74を有する。第2基板部分70bは、複数の貫通穿孔78を有する。貫通穿孔74、78のそれぞれは、マイクロ流路を形成する。貫通穿孔78によって形成されたマイクロ流路は、エアロゾル源が、第2基板部分70bの底面214から第2基板部分70bの上面215に流れることを可能にする。エアロゾル源は、その後、層70cに到達してもよい。貫通穿孔74によって形成されたマイクロ流路は、エアロゾル源が、層70cから第1基板部分70aの底面217に流れ、その後、アトマイザコアがベープのために使用されているときに、アトマイザコアの上面でエアロゾルを発生させるために第1基板部分70aの上面219に流れることを可能にする。
【0066】
図8A図8Cの例では、貫通穿孔78は、貫通穿孔74と概ね整列している。ある例では、貫通穿孔78は貫通穿孔74とずれていてもよい。いずれの場合も、貫通穿孔78からのエアロゾル源は、まず層70cに流れ、第1基板部分70aと第2基板部分70bとの間の層70cでエアロゾル源フィルムを形成する。その後、エアロゾル源は、基板70を構成するアトマイザコアの上面でエアロゾルを発生させるために、層70cから貫通穿孔74に流れてもよい。
【0067】
例えば、アトマイザコアは、上述のアトマイザコア10、20、30、40であってもよく、基材70を有する任意のアトマイザコアであってもよい。
【0068】
ある例では、層70cは、エアロゾル源を吸収する綿や麻などの材料であってもよい。ある例では、層70cは、第1基板部分70aと第2基板部分70bとの間に画定される自由空気空間であってもよい。例えば、空気空間は、第2基板部分70bの左右両端のそれぞれにおけるパッド70dによって形成されてもよい。パッド70dは、アルミナ箔、または他の適切な材料で形成されてもよい。
【0069】
層70cによって、基板70の上面219(第1基板部分70aの上面219)と基板70の底面214(第2基板部分70bの底面214)との間の温度差は、実質的に増加する。一例では、第1基板部分70aおよび第2基板部分70bのそれぞれは0.5mmのサファイアであり、層70cは0.1mmのエアロゾル源層である。基板70の上面219と底面214との間の温度差は約72Kである。これに対し、1mmのサファイアを用いた基板70の上面219と底面214との温度差は8K程度であり、0.5mmのサファイアを用いた基板70の上面219と底面214との温度差は4K程度である。
【0070】
したがって、基板70の上面219と基板70の底面214との間の温度差を実質的に増加させる層70cにより、基板70の上面219から基板70の底面214への熱伝達は著しく減少する。言い換えれば、基板70の熱損失が大幅に減少される。したがって、熱損失が減少することにより、基板70を有するアトマイザコアは、より良好な気化性能を有し、アトマイザコアを使用するエアロゾル発生装置の電池の電力をより節約し、マイクロ流路におけるエアロゾル源の漏れや詰まりのリスクを低減できる。さらに、温度を下げることで、均一なベープを改善することもでき、したがって、沸騰温度の低い成分が最初にベープすることを減らすことができる。したがって、基材70を用いたアトマイザコアは、向上したパフ性能を有する。
【0071】
アトマイザコア10、20、30、40の実施例において、アトマイザコアのベープ性能は、アトマイザコアの第2表面216の表面特性を変更することによってさらに改善され得る。例えば、電子タバコ、WO/ZrO、WO/TiO、SiO/Al、TiOの表面は、植物性グリセリン(VG)がアクリルアルデヒドまたはアリルアルコールになる反応を促進する触媒として機能してもよい。第2表面216は、このような化学反応を避けるために、反応エネルギバリアを高くし、ベープを化学的現象ではなく、物理的現象だけにするように変更できる。例えば、反応エネルギバリアを上げるために、カーボン層をベープ界面として使用されてもよい。第2表面216の変更された表面特性は、マイクロ流路内の液体の流れ、およびアトマイザコアの第2表面216上の液体の分配または広がりを改善できる。上述したように、コア本体212の第2表面216は、ヒータの上面であってもよく、アトマイザコアが受動層を含む場合には、受動層の上面、または受動層上の1つまたは複数の他の機能層であってもよい。表面改質は、エアロゾル源と第2表面216との間、およびエアロゾル源とマイクロ流路表面との間の濡れ性能を制御できる。
【0072】
例えば、アトマイザコアのコア本体の第2表面216は、金または銀の薄膜で形成でき、これは、容易にTHCオイルで濡らすことができ、これは、THCオイルが第2表面216上に均一に分布できることを意味する。接触角が90度未満の場合、液体は表面を濡らしている。濡れとは、液体が固体表面との接触を維持する能力であって、両者を接触させたときの分子間相互作用によって生じる。濡れの度合い(濡れ性)は、接着力と凝集力の力のバランスによって決まる。濡れは、気体、液体、固体の3つの相を扱う。アトマイザコアの第2表面216は、Eジュースを容易に弾く(unwet)ことができる小さなシリコーン分子上面であってもよく、イオン処理またはプラズマ処理された上面もまた、アトマイザコアの濡れ性能を変えることができる。濡れの程度は、上面を処理する時間とパワーの強さで制御できる。例えば、プラズマ処理されたTiO表面は、プラズマの時間と強さによって、完全に濡れない状態から水で完全に濡れるまでの連続的な濡れ性能を持つことができる。
【0073】
ある例では、アトマイザコア10、20、30、40の第2表面216は、熱分解反応のエネルギバリアを増加させることにより、反触媒層を有することができる。例えば、図4では、第2表面216上に反触媒層36が形成されている。これにより、物理的なエアロゾル発生と同じように、安定したエアロゾル発生性能を提供する。エネルギバリアを、熱分解または熱分解反応制御のために、ある程度のレベルまで上げることができる。エアゾール中の有害成分および潜在的有害成分(HPHC)は、有機成分の熱分解もしくは熱分解反応、またはエアロゾル源の成分間のその他の化学反応に起因する。熱分解の活性化エネルギは、異なるエアロゾル発生界面によって変化する。化学反応に対するエネルギバリアを増やすことで、有機成分の熱分解を防ぐことができる。例えば、エネルギバリアは金表面を使用することで増加させることができる。例えば、アトマイザコアの第2表面216がWO/ZrO、WO/TiO、SiO/Al、TiO表面である場合、植物性グリセリン(VG)はベープ中にアクリルアルデヒドまたはアリルアルコールを容易に形成できる。この目的でカーボン層を使用してもよい。
【0074】
アトマイザコアは、第2表面216の向きが異なると、異なるエアロゾル発生性能を有する可能性がある。アトマイザコアは、第2表面216がエアロゾル装置の出口に向かって上向きになるように、エアロゾル装置に取り付けられてもよい。アトマイザコアの第2表面216で発生したエアロゾルは、第1パスによってチューブ流路に沿ってアトマイザコアの出口に向かって上昇し、排出される。
【0075】
アトマイザコアは、第2表面216がエアロゾル装置の出口と反対方向に下向きになるように、エアロゾル装置に取り付けられてもよい。アトマイザコアの第2表面216で発生したエアロゾルは、第2表面216からアトマイザコアの周りの追加の第2パスによって、アトマイザコアの側面から上昇して出て、加熱面として、第1パスがエアロゾル装置の出口に向かって、チューブ流路に沿って上向きになっている。
【0076】
したがって、第2表面216がエアロゾル装置の出口と反対方向を向いている第1パスの方が、第2表面216がエアロゾル装置の出口に向いている第1パスよりも、第2パスと第1パスとのエアロゾル経路の合計が長くなる。追加の第2パスは、追加のエアロゾルの熱損失をもたらす。このように、第2表面216がエアロゾル装置の排出口の方を向いている状態で、アトマイザコアの第2表面216と排出口との間の距離が短いため、エアロゾル発生装置の出口におけるエアロゾルの温度は、第2表面216がエアロゾル装置の出口と反対方向を向いている状態で、エアロゾル発生装置の出口におけるエアゾールの温度より高い。ユーザは、個人の好みに応じて、アトマイザコアの第2表面216を出口側に向けたり、出口側から遠ざけたりしてエアロゾル発生装置を選択でき、エアゾールの温度が高いほどエアゾールの味が良くなり、使用感が良くなる場合がある。
【0077】
アトマイザコアのエアロゾル生成プロセスでは、エアロゾル源が流れるようにマイクロ流路を提供することに加えて、本出願の基板は、アトマイザコアのヒータからエアロゾル源を熱的に絶縁する。アトマイザコアは、エアロゾル源容器からアトマイザコアの第2表面216に流れたエアロゾル源のみを加熱し、容器内のエアロゾル源は加熱しない。したがって、アトマイザコアは、第1のパフから最後のパフまでエアゾールの味を一定に保ち、パフ時のエアゾール組成を実質的に同じに保っている。
【0078】
エアロゾル生成プロセスにおいて、アトマイザコアは、アトマイザコア10、20、30、40と同様に、1つまたは複数の層から構成されてもよい。基板がエアロゾル源と流体連通している場合、アトマイザコアの第2表面216が加熱される前に、エアロゾル源がマイクロ流路を飽和させてもよい。ある例では、ヒータを覆う受動層は、受動層の第2表面216上のエアロゾル源が所望の広がりパターンを有するように制御され得るように、設定された濡れ量を有してもよい。アトマイザコアを加熱するためにヒータに電力を供給すると、加熱されたアトマイザコアはマイクロ流路内のエアロゾル源の粘度を低下させ、マイクロ流路内のエアロゾル源の流出率(flow-through rate)を増加させる。エアロゾルは、受動層などアトマイザコアの第2表面216から発生し、気流によってユーザに運ばれる。断熱材の熱伝導効率が低いため、電力供給源を停止させると同時に、加熱されたアトマイザコアとエアロゾル発生装置に含まれるエアロゾル源はともに冷却される。これにより、マイクロ流路内のエアロゾル源の流出率が低下し、エアロゾル源が漏出する可能性が低くなる。
【0079】
図9は、実質的に長方形の形状を有するアトマイザコア90を示す。アトマイザコア90は、アトマイザコア80の第2表面216を上向きにした(言い換えれば、出口またはマウスピースの方を向いた)状態で、エアロゾル装置に取り付けられてもよい。アトマイザコア90は、アトマイザコア90の第2表面216が下向きにした(言い換えれば、出口またはマウスピースから反対側を向いた)状態で、エアロゾル装置に取り付けられてもよい。
【0080】
図10A図10Bは、実質的に円形におけるアトマイザコア100A(図10A)およびアトマイザコア100B(図10B)の2つの例示的な実施形態である。アトマイザコアの第2表面216は、図10Aおよび図10Bにおいて示されたアトマイザコア100Aに図示されているように、異なるパターンを有してもよい。
【0081】
図11Aおよび図11Bは、2つの電極112a、112bを有する2つのアトマイザコア110A(図11A)と、2つの電極114a、114bを有するHOB(図11B)とを示す。図11BのアトマイザコアHOBの電極114a、114bは、図11Aのアトマイザコア110Aの電極112a、112bよりも大きな面積を有する。
【0082】
図12は、アトマイザコア120を示し、アトマイザコア120は、実質的に長方形本体と2つの円弧状端部を有する。図13は、実質的に長方形の形状を有するアトマイザコア130を示す。
【0083】
上記のアトマイザコアは、エアロゾルを発生させるための他の形状または構成を有してもよい。
【0084】
上述した霧化コア10、20、30、40および基板50、60、70は、以下に説明するいずれかの方法で製造されてもよい。
【0085】
ガラス貫通ビア(via)(TGV)技術
いくつかの例では、基板は、ガラスや単結晶シリコンなどのガラス基板、または多結晶シリコンであってもよい。エアゾールコアの基板を製造する方法であって、ガラス基板を提供する工程と、選択された位置においてガラス基板をレーザで処理して、選択された位置においてガラス基板の構造を変更する工程と、ガラス基板をエッチングして、選択された位置において複数の穿孔を形成する工程と、を含む。
【0086】
石英、ホウケイ酸ガラス、アルミナケイ酸ガラスなど、熱衝撃特性の高い緻密なガラスは、高アスペクト比の滑らかなガラス貫通ビア(TGV)を使って穴あけできる(Micromachines 2017,8,53;doi:10.3380/mi8020053)。TGVは、上記の方法でガラス基板に所望の穿孔配列を生成するために使用されてもよい。
【0087】
TGVはレーザ光輝プロセスと化学エッチングプロセスとを含む。レーザ光輝プロセスは、基板の構造を変更するために、超短レーザパルスを使ってもよい。隣接する穿孔の間隔など、ガラス基板の穿孔配列パターンは、レーザ光輝プロセスによって制御できる。例えば、レーザ光輝プロセスは、所望のレーザスポット形状とサイズで構成できる。レーザスポットの形状とサイズは、ガラス基板に形成される穿孔のサイズと形状を制御する。レーザ光輝プロセスでは、選択された位置でガラス基板の1つまたは複数の表面を処理するために、超短パルスレーザが使用されてもよい。例えば、ガラス基板の一方側と他方側の2つの表面で、1つまたは複数の選択された点に超短レーザパルスを照射してもよい。超短パルスレーザは、選択された点でガラス基板の内部構造を変化させる。次に、化学エッチングプロセスを、選択された点で構造的に変更されたガラス基板に適用してもよく、選択された点において、ガラス基板の一方側と他方側の両表面を通過する穿孔を発生させ、マイクロ流路を形成する。
【0088】
化学エッチングプロセスは、ウェットエッチング処理であっても、ドライエッチング処理であってもよい。ガラス基板における穿孔の準備には、ウェットエッチングとドライエッチングの両方を使用できる。
【0089】
穿孔の大きさ及び/または形状などの穿孔の品質、および穿孔の壁面は、化学エッチングプロセスによって制御できる。例えば、エッチング時間を正確に制御することで、穿孔の寸法を正確に制御できる。穿孔サイズをサブミクロンレベルから数百ミクロンレベルまで制御できる。
【0090】
また、化学エッチングプロセスによって、穿孔形状を、真円、横長の楕円、一定の直径の貫通穿孔、両端からテーパをつけて、中央にくびれをつけた貫通穿孔、または縦方向の円錐形など、希望する形状に精密にカスタマイズできる。穿孔形状は、e-juice、THC/CBD、またはその他の薬品などのエアロゾル源とベープ性能とに基づいて選択されてもよい。ガラス基板における穿孔の形状は、エアロゾル源をロックするなど、他のベープの要求に合わせてさらに調整できる。
【0091】
ある例では、ガラス基板は、2mm未満、2mm以上など、様々な厚さを有してもよい。ある場合において、ガラス基板の厚さは1.2mm、1mm、0.8mm、0.6mm、0.5mm、0.2mmまたは0.2mm未満であってもよい。ある場合において、より良い熱管理のために、ガラス基板の厚さは約500μmであってもよく、または50μmなどより薄くてもよい。
【0092】
化学エッチングプロセスにより、ガラス基板の穿孔サイズを、ベープ用途のために、サブマイクロレベルから150μmまで制御できる。場合によっては、穿孔径は、70um以下に制御される。ある例では、直径は50μm、30μm、20μm、10μm、5μm、または1μm未満であってもよい。
【0093】
また、TGVは基板準備のスケールアップにも便利である。TGVを、複数の基板またはサンプルを同時に生成するためにウェハに適用できる。レーザ光輝プロセスは、例えば200穿孔毎秒から10000穿孔毎秒以上で、速くガラス基板を処理できる。それに比べ、ガラス基板を製造するためのレーザ穴あけプロセスでは、単一のレーザは20穿孔毎秒で穴あけを実行できる。また、ウェット化学エッチングプロセスなどの化学エッチングプロセスはバッチで実施できる。
【0094】
TGVプロセスが、ガラス基板を加熱しない冷間処理プロセスであるため、ガラス基板の物性は変化しない。また、TGVはガラス基板の機械的特性にダメージを与えない。例えば、TGVはガラス基板にマイクロクラックを発生させない。
【0095】
ガラス管のTGV
図5に示されるように、基板は管状の形状を有してもよい。ある例では、セラミックアトマイザコアと同様に、TGV技術を管状ガラス基板に適用して、所望の穿孔配列を有するマイクロ流路を形成し、異なる形成のベープを行うことができる。ガラス基板は、セラミックアトマイザコアとは異なり、セラミック製造過程でセラミック結晶粒の粒子や重金属を発生させない。また、ガラス基板は、コーキング、HPHCコントロール、味の安定性などにおいて向上した性能を有する。
【0096】
図5で述べたように、エアロゾル源とエアゾールは、ガラス基板などの管状基材によって分離される。エアロゾル源は管状基材の内部または外部に格納されてもよく、エアロゾルを基板の反対側で発生させることができる。
【0097】
TGVで管状基材にパターン化された貫通穿孔を形成するには、管状基材またはレーザヘッドを回転させ続けて、パターン化された穿孔を形成するために管状基材における選択された位置を処理する。次に、ウェット化学エッチング法またはドライ化学エッチング法を処理位置に適用でき、処理位置に貫通孔または穿孔を生成する。
【0098】
ある例では、ガラス基板を処理する前に、またはガラス基板をエッチングした後に、ガラス基板の機械的および熱的性能を向上させるために、または軟化ロールによって管状のガラス基板を形成するために、ガラス基板にガラスアニールプロセスまたは焼戻プロセスを適用してもよい。
【0099】
ある例では、ガラス基板をエッチングした後、穿孔を有するガラス基板をさらに機械加工し、またはガラスアニールまたは焼戻プロセスにおけるガラスの軟化点で異なる形状に処理することもできる。例えば、アニールプロセスにおけるガラス基板は、上述のように湾曲させて管状のガラス基板を形成できる。この場合、穿孔のパターン配列はカールプロセス後も実質的に維持され、穿孔形状は若干変更されてもよい。
【0100】
シリコン基板用TSV(シリコン貫通ビア)
TSVは、単結晶または多結晶シリコンの基板(シリコン基板)に穿孔を生成するために使用されてもよい。TSVは、シリコンウエハまたはダイを完全に貫通する縦方向接続(ビア)である。ある例では、アトマイザコアの基板は単結晶シリコンであっても、多結晶シリコンであってもよい。パターン化された穿孔によって形成されたマイクロ流路を有する単結晶と多結晶シリコンとの両方は、一般的な量子ベープデバイスまたはエアロゾル発生装置にも使用できる。
【0101】
例えば、TSVプロセスは、シリコン基板を提供することと、シリコン基板の表面上の選択された位置でシリコン基板をフォトレジストのパターニングすることと、シリコン基板をエッチングしてシリコン基板の上面と底面との両方を貫通する複数の穿孔を形成することと、を含んでもよい。
【0102】
エッチングプロセスは、複数の穿孔を形成するためのウェット化学エッチングプロセスまたはドライ化学エッチングプロセスであってもよい。ウェット化学エッチングプロセスでは、結晶面によってエッチング速度は異なる。ウェット化学エッチングプロセスは、セットアップが簡単で、選択性が高い。
【0103】
TSVプロセスでは、ある例において、シリコン基板におけるマイクロ流路を形成する穿孔は、サブミクロンから200μmまでの直径を有してもよい。例えば、シリコン基板におけるマイクロ流路を形成する穿孔は、100nm未満の直径を有してもよい。
【0104】
図3のアトマイザコア20の例では、基材ミックス22はシリコン基板であってもよい。TSVプロセスは、基板22の選択された位置に複数の穿孔を形成することによって、基板ミックス22にマイクロ流路を生成するために使用されてもよい。その後、受動層24と、電極26a、26bとを形成してもよい。この例では、TSVプロセスは、TGVプロセスで説明したようなTGVの利点を有している。
【0105】
図4のアトマイザコア30の例では、シリコン基板32もTSVプロセスで形成されてもよい。TSVプロセスは、シリコン基板32の選択された位置に複数の穿孔を形成することにより、シリコン基板32にマイクロ流路を生成してもよい。次に、図4で説明したように、エアロゾル源を加熱するためのヒータとして低抵抗率表面層34を得るために、シリコン基板32の表面を処理するために拡散またはイオン注入のいずれかを使用してもよい。ある例では、表面層34が両方の機能を果たすことができるため、受動層および/または電極は必要ないかもしれない。TSV方法では、従来のアトマイザコアに比べ、アトマイザコア30は層数が少なくシンプルな構造を有する。
【0106】
ある例では、アルミナ、チタン、ジルコニアまたは酸化タンタル基板を製造するために、陽極酸化処理が使用されてもよい。陽極酸化処理は、アトマイザコア用の基板を大規模な製造を可能にする。
【0107】
例えば、陽極酸化処理は多孔性陽極アルミナ(PAA)であってもよく、これは穿孔配列アルミナ基板を準備するための2段階の陽極酸化処理である。PAAは酸化アルミニウムの自己組織化形態であって、均一かつ平行な穿孔の高密度配列によって形成されたハニカム状の構造を有する。陽極酸化処理におけるリン酸または他の酸処理は、ベープ性能のためのPAA基板の穿孔サイズを便利に調整できる。
【0108】
例えば、穿孔は、0.3Mシュウ酸中、40Vのウェット化学エッチングによって形成されてもよい。穿孔の直径は、エッチングの時間によって制御されてもよい。
【0109】
ある例では、基板を準備する際に、プレテクスチャ(pre-texturing)技術またはインプリント技術が使用されてもよい。例えば、基板を準備するために、凸型のニップルを有するSiCモールドが使用されてもよい。陽極酸化処理は、アトマイザコアのアルミナ基板に規則的な穿孔配列を形成するために使用されてもよい。基板の穿孔の大きさは、μmレベルからサブミクロンレベルまでの範囲内であってもよい。穿孔の小さいサイズは、一般的に、オイルロック性能を向上させ、ベープデバイスのオイル漏れの問題を軽減できる。
【0110】
規制された(regulated)チタン、ジルコニウム、またはタンタル基板、多孔性陽極酸化TiO管(PATT)、ジルコニア基板、酸化タンタル基板、およびアトマイザコアのための他の生体適合性基板を準備するために、陽極酸化処理を採用できる。
【0111】
多孔性陽極酸化(PAO)を使用すると、穿孔サイズをサブミクロンレベルに制御でき、穿孔壁間の距離が均一になる。その結果、基板のin-situベープ性能とオイルロック性能の両方が向上する。例えば、基板はアルミニウムで、穿孔サイズは100nm以下であってもよい。
【0112】
電気化学的腐食穿孔技術(ECPT)
ある例では、アトマイザコアの基板は、微小電極配列を使用して基板に電子的に穿孔を形成することにより製造されてもよい。基板は、シリコンウエハ、ガラス、緻密なセラミックなどであってもよい。
【0113】
ECPTでは、穿孔サイズと穿孔を生成する速度を便利に制御できる。例えば、エッチング速度は電流によって制御できる。
【0114】
例えば、シリコンウエハまたはガラスを電解槽内の20%炭酸水素ナトリウム溶液に入れてもよい。基板は電解槽の負極に配置されてもよい。タングステン穿孔プローブ配列などの穿孔プローブ配列は、電解槽の陽極として使用される。陽極は電極ピン配列であってもよい。穿孔プローブは、電流制限抵抗と直列に接続されている。例えば40-100Vの範囲の脈動DC電圧を穿孔プローブ配列と負極の間に印加し、基板の選択された点に穿孔を発生させる。
【0115】
電気化学的プロセスは、基板を迅速かつ効果的に腐食でき、その後、基板に損傷を与えることなく穿孔配列を形成できる。
【0116】
この微小電極は、上述のTGVとTSVの利点を有する。また、微小電極を使用することで、穿孔サイズと穴あけ速度を微小電極配列にコピーすることで非常にうまく制御できる。
【0117】
既存の基板製造プロセスと比較して、TGV、TSV、陽極酸化処理、またはCEPTプロセスを使用するアトマイザコアの基板の穴あけプロセスは、穿孔品質管理がより優れており、穴あけプロセスでの基板への損傷を避けることができる。基板の機械的性能と熱的性能は、穴あけプロセス前の基板のバルク材料と実質的に同じにできる。また、穿孔サイズは、例えば直径200μmからサブミクロンレベルまで、ベープ性能の要求に応じてカスタマイズできる。適切な穿孔サイズを選択することで、エアロゾル源のスプリングアウト(springing out)と漏れのバランスを都合よく調整できる。TGV、TSV、陽極酸化処理、およびCEPTの各プロセスは、大規模で製造を行うことにより、低コストで大量かつ高歩留まりの製造を可能にする。
【0118】
説明した実施形態に一定の適合や変更を加えることができる。したがって、上述した実施形態は例示的であって制限的なものではないと考えられる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
【外国語明細書】