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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081799
(43)【公開日】2024-06-18
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
   B60N 2/68 20060101AFI20240611BHJP
【FI】
B60N2/68
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024063102
(22)【出願日】2024-04-10
(62)【分割の表示】P 2022084898の分割
【原出願日】2017-09-21
(71)【出願人】
【識別番号】000220066
【氏名又は名称】テイ・エス テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003683
【氏名又は名称】弁理士法人桐朋
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘規
(57)【要約】      (修正有)
【課題】乗員からシートベルトに作用した荷重を効果的に受けることができる車両用シートを提供する。
【解決手段】車両用シートにおいて、ショルダーアンカー部が位置する側のサイドフレーム30Rは、そのシート幅方向内側を構成する内側プレート36と、サイドフレームのシート幅方向外側を構成する外側プレート38と、内側プレートと外側プレートとを閉断面形状となるように互いに固着する固着部40a、40bとを有する。サイドフレームに形成された補強部44は、内側前方凸部46と中央凸部48、50とを有し、中央凸部は、シートバックフレームの前後方向に沿った幅寸法がサイドフレームの上端から下端に向かって大きくなるように形成されている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックフレームのシート幅方向一端側にシートベルトが挿通するショルダーアンカー部が設けられた車両用シートであって、
前記シートバックフレームを構成して前記シート幅方向一端側に位置するサイドフレームは、
前記サイドフレームのシート幅方向内側を構成する内側プレートと、
前記サイドフレームのシート幅方向外側を構成する外側プレートと、
前記内側プレートと前記外側プレートとを閉断面形状となるように互いに固着する固着部と、を有し、
前記サイドフレームには、内面から外面に向かって突出した補強部が形成され、
前記補強部は、
前記内側プレートの前方角部に設けられた内側前方凸部と、
前記内側プレート及び前記外側プレートの少なくともいずれかの前後方向中央部に設けられた中央凸部と、を有し、
前記中央凸部は、前記シートバックフレームの前後方向に沿った幅寸法が前記サイドフレームの上端から下端に向かって大きくなるように形成されている、車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シートバックフレームのシート幅方向一端側にシートベルトが挿通するショルダーアンカー部が設けられた車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ショルダーアンカー部の下方に位置するサイドフレームを矩形の閉断面形状に構成した車両用シートが開示されている。このような車両用シートでは、車両衝突時等に、乗員からシートベルトに加わった荷重は、前記サイドフレームのシート幅方向外側の後方角部からシート幅方向内側の前方角部に向かって作用する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5599625号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記した従来技術に関連してなされたものであり、乗員からシートベルトに作用した荷重を効果的に受けることができる車両用シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明に係る車両用シートは、シートバックフレームのシート幅方向一端側にシートベルトが挿通するショルダーアンカー部が設けられた車両用シートであって、前記シートバックフレームを構成して前記シート幅方向一端側に位置するサイドフレームは、前記サイドフレームのシート幅方向内側を構成する内側プレートと、前記サイドフレームのシート幅方向外側を構成する外側プレートと、前記内側プレートと前記外側プレートとを閉断面形状となるように互いに固着する固着部と、を有し、前記サイドフレームには、内面から外面に向かって突出した補強部が形成され、前記補強部は、前記内側プレートの前方角部に設けられた内側前方凸部と、前記内側プレート及び前記外側プレートの少なくともいずれかの前後方向中央部に設けられた中央凸部と、を有し、前記中央凸部は、前記シートバックフレームの前後方向に沿った幅寸法が前記サイドフレームの上端から下端に向かって大きくなるように形成されている。
【0006】
このような構成によれば、シートベルトからの荷重が作用する内側プレートの前方角部の強度及び剛性を内側前方凸部によって向上させることができる。これにより、乗員からシートベルトに作用した荷重をサイドフレームによって効果的に受けることができる。また、サイドフレームの軽量化を図りつつ強度及び剛性を向上させることができる。さらに、サイドフレームの下端に向かうに従って強度及び剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、シートベルトからの荷重が作用する内側プレートの前方角部の強度及び剛性を内側前方凸部によって向上させることができるため、乗員からシートベルトに作用した荷重をサイドフレームによって効果的に受けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
図2図1の車両用シートを構成するシートクッションフレーム及びシートバックフレームを示す斜視図である。
図3図3Aは右側のサイドフレームをシート幅方向内側から視た平面図であり、図3Bは右側のサイドフレームをシート幅方向外側から視た平面図である。
図4図3AのIV-IV線に沿った横断面図である。
図5図3AのV-V線に沿った横断面図である。
図6図6Aは第1変形例に係るサイドフレームの横断面図であり、図6Bは第2変形例に係るサイドフレームの横断面図であり、図6Cは第3変形例に係るサイドフレームの横断面図であり、図6Dは第4変形例に係るサイドフレームの横断面図であり、図6Eは第5変形例に係るサイドフレームの横断面図であり、図6Fは第6変形例に係るサイドフレームの横断面図である。
図7】変形例に係る車両用シートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る車両用シートについて好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各図において、着座した乗員から見た方向に従って、車両用シートの左側を矢印「L」で示し、車両用シートの右側を矢印「R」で示すとともに、車両用シートの前方を矢印「Fr」で示し、車両用シートの後方を矢印「Rr」で示す。
【0010】
図1に示すように、車両用シート10は、シートベルト18が一体的に設けられたシートベルト一体型のシートとして構成されている。このような車両用シート10では、図4に示すように、車両衝突時等に乗員からシートベルト18を介してシートバックフレーム24を構成するサイドフレーム30Rに荷重Fが作用する。すなわち、サイドフレーム30Rには、その外側後方から内側前方に向かって対角線上に矢印に沿って荷重Fが作用する。そのため、サイドフレーム30Rは、このような荷重Fを充分に受けることができるような強度及び剛性を備えている。
【0011】
図1に示すように、車両用シート10は、シートクッション12、シートバック14、ヘッドレスト16及びシートベルト18を備える。シートクッション12は、乗員の臀部及び大腿部を支持する。シートバック14は、乗員の背面を支持するものであって、シートクッション12の後端部にシート前後方向に傾動可能に設けられている。ヘッドレスト16は、乗員の頭部を支持するものであって、シートバック14の上端部に上下調節可能に設けられている。シートベルト18は、いわゆる3点式のシートベルトであって、1本のベルトによって乗員の肩部(右肩)と腰部を拘束可能である。
【0012】
図2に示すように、シートクッション12は、その骨格をなすシートクッションフレーム20を有する。シートクッションフレーム20は、左右一組のレール22L、22Rを介して図示しない車体に固定される。
【0013】
シートバック14は、シートバックフレーム24、受圧部材26及びショルダーアンカー部28を備える。シートバックフレーム24は、シートバック14の骨格をなすものであって、左右一組のサイドフレーム30L、30R、ロアフレーム32及びアッパフレーム34を有する。
【0014】
サイドフレーム30Rは、シートバックフレーム24のシート幅方向一端側に位置し、サイドフレーム30Lは、シートバックフレーム24のシート幅方向他端側に位置している。各サイドフレーム30L、30Rの下端部(シートクッションフレーム20側の端部)は、シートクッションフレーム20の後端部にシート前後方向に傾動可能に接続されている。また、左右一組のサイドフレーム30L、30Rの下端部は、ロアフレーム32によって互いに連結されている。左右一組のサイドフレーム30L、30Rの上端部(シートクッションフレーム20とは反対側の端部)は、アッパフレーム34によって互いに連結されている。すわわち、シートバックフレーム24は、正面視で四角環状に形成されている。
【0015】
受圧部材26は、ロアフレーム32とアッパフレーム34との間に位置して左右一組のサイドフレーム30L、30Rを連結している。受圧部材26は、シートバックフレーム24の上下方向に等間隔に複数設けられている。図2の例では、受圧部材26は、Sばねとして構成されている。ただし、受圧部材26は、Sばねに限定されず、板状の部材等、乗員を後方から支えることができる構造であればどのようなものであってもよい。
【0016】
ショルダーアンカー部28は、シートベルト18を挿通させるためのものであって、アッパフレーム34の右端部(シートバックフレーム24のシート幅方向一端側)に溶接等によって固着されている。すなわち、ショルダーアンカー部28は、右側のサイドフレーム30Rの上方に位置している。なお、ショルダーアンカー部28は、右側のサイドフレーム30Rに直接的に溶接等によって固着されていてもよい。
【0017】
図2図3Bに示すように、ショルダーアンカー部28の下方に位置するサイドフレーム30Rは、直線状に延在している。サイドフレーム30Rの幅寸法(シートバックフレーム24の前後方向に沿った寸法)は、サイドフレーム30Rの上端から下端に向かって徐々に広くなっている。
【0018】
具体的には、図3A及び図3Bに示すように、サイドフレーム30Rの外形は、シートバックフレーム24の側面視で左右対称に構成されている。つまり、サイドフレーム30Rは、シートバックフレーム24の側面視で略台形状に形成されている。これにより、サイドフレーム30Rの断面係数を上端から下端に向かって直線的に大きくすることができる。なお、サイドフレーム30Rは、シートバックフレーム24の側面視で二等辺三角形状に形成されていてもよい。
【0019】
図4に示すように、サイドフレーム30Rは、サイドフレーム30Rのシート幅方向内側(図4の矢印L方向)を構成する内側プレート36と、サイドフレーム30Rのシート幅方向外側(図4の矢印R方向)を構成する外側プレート38とを有する。
【0020】
内側プレート36は、シートバックフレーム24の前後方向に延在した内側プレート本体36aと、内側プレート本体36aの前端からシート幅方向外側に延出した内側前端部36bと、内側プレート本体36aの後端からシート幅方向外側に延出した内側後端部36cとを含む。内側前端部36bの延出長と内側後端部36cの延出長とは、互いに同一である。ただし、内側前端部36bの延出長と内側後端部36cの延出長とは、互いに異なっていてもよい。
【0021】
内側プレート36は、金属板をプレス加工することによって一体的に形成されている。金属板は、例えば、炭素鋼、鋼、アルミニウム合金等の金属材料が用いられる。
【0022】
外側プレート38は、シートバックフレーム24の前後方向に延在した外側プレート本体38aと、外側プレート本体38aの前端からシート幅方向内側に延出した外側前端部38bと、外側プレート本体38aの後端からシート幅方向内側に延出した外側後端部38cとを含む。
【0023】
外側前端部38bの延出長と外側後端部38cの延出長とは、互いに同一であるとともに内側前端部36bの延出長と内側後端部36cの延出長と同一である。ただし、外側前端部38bの延出長と外側後端部38cの延出長とは、互いに異なっていてもよいし、内側前端部36bの延出長と内側後端部36cの延出長と異なっていてもよい。
【0024】
外側プレート38は、金属板をプレス加工することによって一体的に形成されている。金属板は、例えば、炭素鋼、鋼、アルミニウム合金等の金属材料が用いられる。
【0025】
外側プレート38は、内側プレート36と同一の断面形状を有し、内側プレート36に対して点対称に配置されている。内側プレート本体36aは、外側プレート本体38aに離間した状態で対向している。
【0026】
サイドフレーム30Rは、内側前端部36bと外側前端部38bとがシートバックフレーム24の前後方向に互いに重ねられた状態で第1固着部40aによって固着された第1重ね部42aを有する。第1重ね部42aでは、内側前端部36bが外側前端部38bの前方に位置している。
【0027】
具体的には、内側前端部36bの内面が外側前端部38bの外面に接触している。内側前端部36bと外側前端部38bの重なり代は、任意に設定可能である。第1固着部40aは、溶接ビードである。
【0028】
サイドフレーム30Rは、内側後端部36cと外側後端部38cとがシートバックフレーム24の前後方向に互いに重ねられた状態で第2固着部40bによって固着された第2重ね部42bを有する。第2重ね部42bでは、内側後端部36cが外側後端部38cの前方に位置している。
【0029】
具体的には、内側後端部36cの外面が外側後端部38cの内面に接触している。内側後端部36cと外側後端部38cの重なり代は、内側前端部36bと外側前端部38bの重なり代と略同じである。ただし、内側後端部36cと外側後端部38cの重なり代は、任意に設定可能であり、内側前端部36bと外側前端部38bの重なり代と異なっていてもよい。第2固着部40bは、溶接ビードである。第1重ね部42a及び第2重ね部42bは、サイドフレーム30Rにおけるシート幅方向中央に位置している。
【0030】
内側プレート36の厚さは、外側プレート38の厚さと略同じである。ただし、内側プレート36の厚さは、外側プレート38の厚さよりも大きくてもよい。この場合、内側プレート36の強度及び剛性を向上させることができる。
【0031】
サイドフレーム30Rには、その内面から外面に向かって突出した補強部44が形成されている。補強部44は、内側前方凸部46、内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52を含む。
【0032】
図3A及び図4において、内側前方凸部46は、内側プレート36の前方角部に設けられている。換言すれば、内側前方凸部46は、内側プレート本体36aの前端部に設けられている。内側前方凸部46は、内側プレート本体36aからシート幅方向内側に突出している。内側中央凸部48は、内側プレート本体36aの前後方向中央からシート幅方向内側に突出している。
【0033】
図3B及び図4において、外側中央凸部50は、外側プレート本体38aの前後方向中央からシート幅方向外側に突出している。外側中央凸部50は、内側中央凸部48と同一の形状及び大きさを有する。
【0034】
外側後方凸部52は、外側プレート38の後方角部に設けられている。換言すれば、外側後方凸部52は、外側プレート本体38aの後端部に設けられている。外側後方凸部52は、外側プレート本体38aからシート幅方向外側に突出している。外側後方凸部52は、内側前方凸部46と同一の形状及び大きさを有する。
【0035】
図3A図4に示すように、補強部44(内側前方凸部46、内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52)は、横断面が円弧状に形成されている。具体的には、内側前方凸部46及び外側後方凸部52のそれぞれは、横断面が半円状に形成されている。
【0036】
図3A及び図3Bにおいて、補強部44(内側前方凸部46、内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52)は、サイドフレーム30Rの全長に亘って直線状に延在している。内側前方凸部46及び外側後方凸部52のそれぞれの幅寸法(シートバックフレーム24の前後方向に沿った寸法)は、全長に亘って一定に形成されている。
【0037】
内側中央凸部48及び外側中央凸部50のそれぞれの幅寸法は、サイドフレーム30Rの上端から下端に向かってサイドフレーム30Rの外形に対応して徐々に広がっている。つまり、内側中央凸部48及び外側中央凸部50のそれぞれは、シート幅方向の側面視で、略台形状に形成されている。
【0038】
サイドフレーム30Rには、サイドサポート54が取り付けられている。なお、図2では、サイドサポート54の図示を省略している。サイドサポート54は、乗員の側面を支持するためのものであって、サイドフレーム30Rよりもシートバック14の前面側に突出している。
【0039】
サイドサポート54は、サイドフレーム30Rに対して2つのねじ部材56によって固定されている。2つのねじ部材56は、シートバックフレーム24の上下方向(サイドサポート54の延在方向)に互いに離間した状態で並んでいる。ただし、ねじ部材56は、1つ又は3つ以上であってもよい。各ねじ部材56は、内側プレート本体36aをシート幅方向に貫通するように設けられている。具体的には、各ねじ部材56は、内側前方凸部46と内側中央凸部48との間に位置している。
【0040】
また、図5に示すように、サイドフレーム30Rには、エアバッグ58及び2つのクリップ60が取り付けられる。なお、図2図3Bでは、エアバッグ58及びクリップ60の図示を省略している。
【0041】
エアバッグ58は、外側プレート38のシート幅方向外側に配置される。エアバッグ58は、車両衝突時に展開可能に折り畳まれたエアバッグ本体62と、エアバッグ本体62を展開させるためのガスを発生させるためのインフレータ64と、インフレータ64を支持するリテーナ66とを有している。
【0042】
インフレータ64には、エアバッグ58をサイドフレーム30Rに取り付けるためのボルト68が設けられている。ボルト68は、外側プレート本体38aに形成された第1貫通孔70と内側プレート本体36aに形成された第2貫通孔72とに挿通された状態でナット74が締結されることによってエアバッグ58をサイドフレーム30Rに固定する。
【0043】
第1貫通孔70は、外側中央凸部50と外側後方凸部52との間に位置している。第1貫通孔70と第2貫通孔72とは、シート幅方向に互いに対向している。第2貫通孔72は、第1貫通孔70と同じ大きさである。第2貫通孔72は、内側中央凸部48よりも内側後端部36c側に位置している。
【0044】
図3A及び図3Bに示すように、外側プレート38のうち第1貫通孔70の下方には第3貫通孔76が形成され、内側プレート36のうち第2貫通孔72の下方には第4貫通孔78が形成されている。第3貫通孔76及び第4貫通孔78は、シート幅方向に互いに対向している。第3貫通孔76及び第4貫通孔78は、エアバッグ58の図示しないボルトがサイドフレーム30Rと干渉することを避けるためのボルト逃げ孔である。
【0045】
図5に示すように、クリップ60は、シートバック14を構成する表皮にテンションを掛けるためのものであって、表皮の端部に係止された延出部80が固定されている。2つのクリップ60は、外側プレート本体38aに形成された2つの固定孔82のそれぞれに取り付けられる。クリップ60は、係止爪83が外側プレート本体38aに装着されることにより固定される。
【0046】
図3A及び図3Bに示すように、固定孔82は、外側中央凸部50よりも外側前端部38b側に位置している。固定孔82は、第1貫通孔70と同じ高さ位置にある。換言すれば、固定孔82は、外側中央凸部50を挟んで第1貫通孔70とは反対側の部位に設けられている。
【0047】
各固定孔82は、矩形状に形成されている。具体的には、各固定孔82は、シートバックフレーム24の上下方向に沿って延在している。2つの固定孔82は、シートバックフレーム24の上下方向に互いに離間して配置されている。
【0048】
このような車両用シート10では、車両衝突時等の際に、乗員からシートベルト18に荷重が加わる。そうすると、サイドフレーム30Rには、図4の矢印の方向の荷重Fが作用する。すなわち、サイドフレーム30Rには、外側後方凸部52から内側前方凸部46に向かって対角線上に荷重Fが作用する。
【0049】
この場合、本実施形態に係る車両用シート10は、以下の効果を奏する。
【0050】
サイドフレーム30Rには、内面から外面に向かって突出した補強部44が形成され、補強部44は、内側プレート36の前方角部に設けられた内側前方凸部46を有する。そのため、シートベルト18からの荷重Fが作用する内側プレート36の前方角部の強度及び剛性を内側前方凸部46によって向上させることができる。これにより、乗員からシートベルト18に作用した荷重Fをサイドフレーム30Rによって効果的に受けることができる。
【0051】
補強部44は、外側プレート38の後方角部に設けられた外側後方凸部52を有する。これにより、シートベルト18からの荷重Fが作用する外側プレート38の後方角部の強度及び剛性を外側後方凸部52によって向上させることができる。これにより、乗員からシートベルト18に作用した荷重Fをサイドフレーム30Rによって一層効果的に受けることができる。
【0052】
補強部44は、内側プレート36の前後方向中央部に設けられた内側中央凸部48と、外側プレート38の前後方向中央部に設けられた外側中央凸部50とを有する。そのため、サイドフレーム30Rの軽量化を図りつつ強度及び剛性を向上させることができる。
【0053】
サイドフレーム30R、内側中央凸部48及び外側中央凸部50のそれぞれは、シートバックフレーム24の前後方向に沿った幅寸法がサイドフレーム30Rの上端から下端に向かって大きくなるように形成されている。これにより、サイドフレーム30Rの下端に向かうに従って強度及び剛性を向上させることができる。
【0054】
補強部44(内側前方凸部46、内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52)は、サイドフレーム30Rの延在方向に沿って直線状に延在している。そのため、サイドフレーム30Rの軽量化を図りつつ強度及び剛性を向上させることができる。
【0055】
補強部44(内側前方凸部46、内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52)は、横断面が円弧状に形成されている。これにより、補強部44の断面積を効率的に大きくして強度及び剛性を向上させることができる。
【0056】
サイドフレーム30Rの外形は、シートバックフレーム24の側面視で左右対称に構成されている。そのため、シートベルト18からサイドフレーム30Rに荷重Fが作用する際に、サイドフレーム30Rの応力をバランスよく分散させることができる。また、左右のサイドフレーム30L、30Rで部品の共通化を図ることができる。すなわち、アッパフレーム34の左端部(シートバックフレーム24のシート幅方向他端側)にショルダーアンカー部28を固着する場合に、サイドフレーム30Rと同様の構成を有するサイドフレーム30Lを用いることができる。
【0057】
サイドフレーム30Rは、シートバックフレーム24の側面視で略台形状に形成されている。これにより、サイドフレーム30Rの軽量化を図りつつ、シートベルト18からサイドフレーム30Rに荷重Fが作用する際に、サイドフレーム30Rの応力をバランスよく分散させることができる。
【0058】
サイドフレーム30Rは、内側前端部36bと外側前端部38bとがシートバックフレーム24の前後方向に互いに重ねられた状態で第1固着部40aによって固着された第1重ね部42aを有する。また、サイドフレーム30Rは、内側後端部36cと外側後端部38cとがシートバックフレーム24の前後方向に互いに重ねられた状態で第2固着部40bによって固着された第2重ね部42bを有する。これにより、内側プレート36と外側プレート38とが互いに固着される部分の強度及び剛性を向上させることができる。
【0059】
第1重ね部42aでは内側前端部36bが外側前端部38bの前方に位置し、第2重ね部42bでは内側後端部36cが外側後端部38cの前方に位置している。これにより、シートベルト18からサイドフレーム30Rに作用する荷重Fに対して強度及び剛性を向上させることができる。
【0060】
本発明は、上述した構成に限定されない。車両用シート10は、サイドフレーム30Rに代えて図6A図6Fに示す変形例に係るサイドフレーム30Ra~30Rfを備えていてもよい。なお、図6A図6Fにおいて、上述したサイドフレーム30Rと同一の構成には同一の参照符号を付し、その詳細な説明は省略する。また、変形例に係るサイドフレーム30Ra~30Rfにおいて、上記のサイドフレーム30Rと同一の構成は同一の作用効果を奏することは勿論である。
【0061】
図6Aに示すサイドフレーム30Raでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、上述した内側中央凸部48、外側中央凸部50及び外側後方凸部52が省略されている。すなわち、補強部44aは、内側前方凸部46を有する。この場合、サイドフレーム30Raの構成を簡素化することができる。
【0062】
図6Bに示すサイドフレーム30Rbでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、上述した内側中央凸部48及び外側中央凸部50が省略されている。すなわち、補強部44bは、内側前方凸部46及び外側後方凸部52を有する。この場合、内側プレート36と外側プレート38とは同一構成となるため、部品点数の削減を図ることができる。
【0063】
図6Cに示すサイドフレーム30Rcでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、補強部44cは、内側プレート36の後方角部に設けられた内側後方凸部84と、外側プレート38の前方角部に設けられた外側前方凸部86とをさらに有する。
【0064】
換言すれば、内側後方凸部84は、内側プレート本体36aの後端部に設けられている。内側後方凸部84は、内側プレート本体36aからシート幅方向内側に突出している。外側前方凸部86は、外側プレート本体38aの前端部に設けられている。外側前方凸部86は、外側プレート本体38aからシート幅方向外側に突出している。
【0065】
この場合、サイドフレーム30Rcの軽量化を図りつつ強度及び剛性をさらに向上させることができる。なお、サイドフレーム30Rcでは、内側後方凸部84及び外側前方凸部86のいずれか一方を省略してもよい。
【0066】
図6Dに示すサイドフレーム30Rdでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、内側プレート36の後方角部に内側後方面取り部88が形成されるとともに外側プレート38の前方角部に外側前方面取り部90が形成されている。この場合、サイドフレーム30Rdの軽量化を図ることができる。なお、サイドフレーム30Rdでは、内側後方面取り部88及び外側前方面取り部90のいずれか一方を省略してもよい。
【0067】
図6Eに示すサイドフレーム30Reでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、内側中央凸部48及び外側中央凸部50が省略されている。すなわち、サイドフレーム30Reは、図6Bと同様の補強部44bを有している。また、第1重ね部42aにおいて、内側前端部36bは外側前端部38bの後方に位置し、内側前端部36bの外面は外側前端部38bの内面に接触している。第2重ね部42bにおいて、内側後端部36cは外側後端部38cの前方に位置し、内側後端部36cの外面は外側後端部38cの内面に接触している。
【0068】
この場合、サイドフレーム30Reを製造する際に、外側前端部38bと外側後端部38cの間に内側前端部36bと内側後端部36cを嵌め込むことにより、内側プレート36と外側プレート38との位置決めを容易に行うことができる。そのため、サイドフレーム30Reの製造作業性を向上させることができる。
【0069】
図6Fに示すサイドフレーム30Rfでは、上述したサイドフレーム30Rと比較して、内側中央凸部48及び外側中央凸部50が省略されている。また、補強部44dは、内側前方凸部46及び外側後方凸部52に加えて、図6Cと同様の内側後方凸部84及び外側前方凸部86を有する。
【0070】
内側前端部36bの延出長は、内側後端部36cの延出長よりも短い。外側前端部38bの延出長は、内側後端部36cの延出長と同じであるとともに外側後端部38cの延出長よりも長い。外側後端部38cの延出長は、内側前端部36bの延出長と同じである。すなわち、内側プレート36と外側プレート38とは、互いに同一の構成を有している。第1重ね部42aは、サイドフレーム30Rfのシート幅方向中央よりも内側に位置している。第2重ね部42bは、サイドフレーム30Rfのシート幅方向中央よりも外側に位置している。
【0071】
上述した車両用シート10において、補強部44、44a~44dは、少なくとも内側前方凸部46を有していればよい。つまり、補強部44、44a~44dは、内側中央凸部48、内側後方凸部84、外側前方凸部86、外側中央凸部50及び外側後方凸部52を任意に組み合わせて有することができる。内側中央凸部48及び外側中央凸部50は、その全長に亘って一定の幅寸法で延在していてもよい。補強部44、44a~44dの横断面は、円弧状に限定されず、多角形状(例えば、三角形状、四角形状等)に形成してもよい。
【0072】
本発明は、図7に示す車両用シート10Aであってもよい。図7に示すように、車両用シート10Aは、サイドフレーム30Lに代えて上述したサイドフレーム30R(第1サイドフレーム)と同様に構成されたサイドフレーム30La(第2サイドフレーム)を有している。この場合、シートバックフレーム24のシート幅方向一端側にショルダーアンカー部28R(第1ショルダーアンカー部)が設けられるとともにシートバックフレーム24のシート幅方向他端側にショルダーアンカー部28L(第2ショルダーアンカー部)が設けられる。各ショルダーアンカー部28L、28Rは、上述したショルダーアンカー部28と同様に構成されている。ショルダーアンカー部28Rには、上述したシートベルト18とは別のシートベルト(乗員の左肩及び腰部を拘束するシートベルト)が挿通する。
【0073】
図7のような車両用シート10Aは、2つ以上のシートがシート幅方向に並んだ車両の後部座席におけるシート幅方向両端のシートに適用することができる。このような構成によれば、サイドフレーム30L、30Rの部品の共用化を図ることができるとともに軽量化を図ることができ、高剛性でバランスのよいシートフレームを得ることができる。なお、図7において、サイドフレーム30Laは、上述したサイドフレーム30Ra~30Rfと同様に構成してもよい。
【0074】
本発明に係る車両用シートは、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
10、10A…車両用シート
14…シートバック
24…シートバックフレーム
30L、30La、30R、30Ra~30Rf…サイドフレーム
36…内側プレート
38…外側プレート
40a…第1固着部
40b…第2固着部
44、44a~44d…補強部
46…内側前方凸部
48…内側中央凸部
50…外側中央凸部
52…外側後方凸部
F…シートベルトからサイドフレームに作用する荷重
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7