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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081818
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】コネクタハウジングおよびコネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
H01R13/52 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195263
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000227995
【氏名又は名称】タイコエレクトロニクスジャパン合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【弁理士】
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(72)【発明者】
【氏名】安井 達雄
(72)【発明者】
【氏名】古平 善彦
【テーマコード(参考)】
5E087
【Fターム(参考)】
5E087GG15
5E087JJ07
5E087MM05
5E087MM15
5E087RR13
5E087RR25
(57)【要約】
【課題】別部材を用意することなくコネクタハウジングどうしの嵌まり込みが防止され、かつ後工程の妨げとならない構造のコネクタハウジング、およびそのコネクタハウジングを備えたコネクタを提供する。
【解決手段】 電線30が差し込まれる複数の溝11が配列されたコネクタハウジング10であって、複数の溝11のうちの少なくとも1つの溝11内に、複数の溝11を互いに向き合わせた姿勢の2つのコネクタハウジング10が互いの溝に侵入した時に接触し、溝11に差し込まれた電線30によって倒される侵入阻止部13を備えている。その侵入阻止部13は、溝11の底部11aから、溝11の入り口11bに向かって斜めに延びるとともに、相手コネクタとの嵌合の方向とは逆向きである後方に向かっても斜めに延びている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線が差し込まれる溝であって、該溝内への異物の侵入時に該異物に接触して該溝のさらに深くへの該異物の侵入に抵抗し、所定の押圧力以上の押圧力で該溝内に押し込まれる電線によって押されて該溝の所定の深さへの該電線の差し込みを許す姿勢へと姿勢を変える侵入阻止部を備えた溝を有することを特徴とするコネクタハウジング。
【請求項2】
前記侵入阻止部が、前記溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢の同形の2つの前記コネクタハウジングが互いを前記異物として互いの溝に侵入した時に接触することを特徴とする請求項1に記載のコネクタハウジング。
【請求項3】
電線が差し込まれる複数の溝が配列され、前記侵入阻止部が、該複数の溝のうちの少なくとも1つの溝内に備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載のコネクタハウジング。
【請求項4】
前記侵入阻止部が、配列された前記複数の溝のうちの少なくとも両端の溝内に形成されていることを特徴とする請求項3に記載のコネクタハウジング。
【請求項5】
前記侵入阻止部が、前記溝の底部から該溝の入り口に向かって斜めに延びる片持ち梁形状を有し、該溝に差し込まれる電線に押されて該底部側に倒れた姿勢へと姿勢を変えることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか1項に記載のコネクタハウジング。
【請求項6】
前記侵入阻止部が、前記溝の底部から該溝の入り口に向かって斜めに延びるとともに、相手コネクタとの嵌合の方向とは逆向きに斜めに延びていることを特徴とする請求項5に記載のコネクタハウジング。
【請求項7】
請求項1から6のうちのいずれか1項に記載のコネクタハウジングと、該コネクタハウジングに差し込まれた複数本の電線とを有することを特徴とするコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配列された複数の溝を有するコネクタハウジング、およびそのコネクタハウジングを備えたコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
コネクタハウジングの形状によってはコネクタハウジングが互いに不用意に嵌まり込み、個々のコネクタハウジングに分離するのが容易ではなかったり、あるいは分離しようとすると破損するおそれがある。
【0003】
これを防止する方策として、コネクタハウジングどうしが嵌まり込むのを防ぐための部材を別途用意することなどが知られている。例えば、特許文献1には、絶縁ハウジングの外に端子係止具を用意して絶縁ハウジングどうしの絡み合いなどのトラブルを防止することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-258795
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
別部材を用意すれば、コネクタハウジングどうしの絡み合いや不用意な嵌まり込みを防ぐことができるが、その用意された別部材は後工程において取り外す必要があり、その別部材を作製するためのコストやその別部材の取り付け、取り外しの手間を必要とする。
【0006】
このような絡み合いや不用意な嵌まり込みは、同種のコネクタハウジングどうしでのみ生じる問題ではなく、別種のコネクタハウジングとの間、あるいは、コネクタハウジングとコネクタハウジング以外の部品や電線等との間でも生じ得る問題である。
【0007】
本発明は、別部材を用意することなくコネクタハウジングへの、同種または別種のコネクタハウジングやコネクタハウジング以外の部品や電線等を含む異物の嵌まり込みが抑えられ、かつ後工程の妨げとならない構造のコネクタハウジング、およびそのコネクタハウジングを備えたコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成する本発明のコネクタハウジングは、
電線が差し込まれる溝であって、その溝内への異物の侵入時にその異物に接触して溝のさらに深くへの異物の侵入に抵抗し、所定の押圧力以上の押圧力で溝内に押し込まれる電線によって押されて溝の所定の深さへの電線の差し込みを許す姿勢へと姿勢を変える侵入阻止部を備えた溝を有することを特徴とする。
【0009】
ここで、本発明のコネクタハウジングにおいて、侵入阻止部が、溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢の同形の2つのコネクタハウジングが互いを上記異物として互いの溝に侵入した時に接触する構造であってもよい。
【0010】
また、本発明のコネクタハウジングは、電線が差し込まれる複数の溝が配列され、侵入阻止部が、それら複数の溝のうちの少なくとも1つの溝内に備えられている構造のコネクタハウジングであってもよい。
【0011】
ここで、本発明にいう電線は、ケーブルやワイヤーなどを含む被覆された電線やコネクタ端子が予め接続された電線等を含む広義の電線をいう。
【0012】
また、本発明にいう異物は、本発明のコネクタハウジングと同種のコネクタハウジング、別種のコネクタハウジング、コネクタハウジング以外の部品、および電線等、本発明のコネクタハウジングの溝に不用意に入り込み得る物一般を指している。
【0013】
本発明のコネクタハウジングは、上記の侵入阻止部を備えているため、コネクタハウジングの溝に、同種の別のコネクタハウジングやその他の異物が嵌まり込むのが抑えられる。また、この侵入阻止部は、所定の押圧力以上の押圧力で溝内に押し込まれる電線によって姿勢が変更され、後工程である電線の差込み工程に先立って侵入阻止部を取り外す必要はなく、電線の差込み工程が円滑に行われる。
【0014】
また、本発明のコネクタハウジングにおいて、電線が差し込まれる複数の溝が配列されている場合に、上記侵入阻止部は、配列された複数の溝のうちの少なくとも両端の溝内に形成されていることが好ましい。
【0015】
複数の溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢であって、コネクタハウジングが溝の配列方向に互いにずれた状態で嵌まり込もうとする。このとき、侵入阻止部が両端の溝内に形成されていると、どのようにずれていても、いずれか一方の侵入阻止部により、溝内への侵入が阻止される。
【0016】
また、本発明のコネクタハウジングにおいて、上記侵入阻止部が、溝の底部から溝の入り口に向かって斜めに延びる片持ち梁形状を有し、その溝に差し込まれる電線に押されて溝の底部側に倒れた姿勢へと姿勢を変えることが好ましい。
【0017】
このような、斜めに延びる片持ち梁形状の侵入阻止部とすることにより、溝に差し込まれた電線にで狙い通りの姿勢に倒すことができる。
【0018】
また、本発明のコネクタハウジングにおいて、上記侵入阻止部が、溝の底部から溝の入り口に向かって斜めに延びるとともに、相手コネクタとの嵌合の方向とは逆向きに斜めに延びていることが好ましい。
【0019】
侵入阻止部をこの向きに斜めに延びる形状とすると、逆向きに延びる形状と比べ、侵入阻止部を持ったコネクタハウジングを作成するための金型の構造が簡易となる。
【0020】
また、上記目的を達成する本発明のコネクタは、本発明のいずれかの態様のコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングに差し込まれた複数本の電線とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、別部材を用意することなく溝内への嵌まり込みが抑えられ、かつ後工程の妨げとならない構造のコネクタハウジング、およびそのコネクタハウジングを備えたコネクタが実現する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】比較例のコネクタの製造工程を示した図である。
図2】比較例のコネクタハウジングが2つ、溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢で重なった状態を示した図である。
図3】本発明のコネクタの第1実施形態のコネクタの製造工程を示した斜視図である。
図4】コネクタハウジングの一番端の溝に沿って断面した断面斜視図である。
図5】第1実施形態ののコネクタハウジングが2つ、溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢で重なった状態を示した図である。
図6図5(C)に示す円R1の部分の拡大図(図6(A))と円R2の部分の拡大図(図6(B))である。
図7】第1実施形態のコネクタハウジングの背面図(A)、平面図(B)、および正面図(C)である。
図8図7(C)に示す矢印C-Cに沿う断面図である。
図9】第2実施形態のコネクタハウジングの背面図(A)、平面図(B)、および正面図(C)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ここでは先ず、本発明の特徴部分が欠落したコネクタハウジング、すなわち、本発明と対比される比較例のコネクタハウジングを有するコネクタについて説明する。
【0024】
図1は、比較例のコネクタの製造工程を示した図である。
【0025】
図1(A)は、コネクタハウジングの斜視図である。このコネクタハウジング10には矢印F-Bで示す前後方向に延び矢印Uで示す上方に開いた複数(ここでは一例として13コ)の溝11が矢印L-Rで示す左右方向に配列されている。
【0026】
図1(B)は、コネクタハウジングとそのコネクタハウジングに嵌め込まれる端子を示した図である。端子20は、コネクタハウジング10に形成された溝11と同数、用意される。これらの端子20は、各溝11に対し1つずつ、上方から嵌め込まれる。なお、端子20を溝11に嵌め込むタイミングは、1個ずつであってもよく、複数個ずつであってもよく、あるいは、全数を一括して嵌め込んでもよい。
【0027】
図1(C)は、端子が嵌め込まれた状態のコネクタハウジングを示した図である。端子20は、溝11の内部に嵌め込まれているため、ここに示す角度では、端子20は、ほどんど隠れた状態となっている。
【0028】
図1(D)は、端子が嵌め込まれた状態のコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングの溝に差し込まれる、差し込み前の電線を示した図である。電線30も、端子20と同様、溝11と同数、用意されるが、電線30を同数並べた図を示すとコネクタハウジング10がほぼ隠れてしまうため、ここでは、電線30は、1本で代表させている。ここで使われている電線30は、構造の図示は省略するが、導体の芯線とその芯線を取り巻く絶縁体の被覆とからなる被覆電線である。
【0029】
この電線30は、不図示の差し込み治具により所定の押圧力以上の押圧力で溝11内に押し込まれる。これにより、電線30は溝11の所定の深さへと差し込まれる。
【0030】
図1(E)は、コネクタハウジングに電線を差し込んだ状態のコネクタを示した図である。図1(D)と同様、ここでも電線30は1本で代表させている。端子20は、電線30が差し込まれると、その電線30の被覆を破いて芯線と導通する、いわゆる圧接タイプの端子である。電線30が溝11内に所定の深さまで差し込まれると電線30の芯線と端子20が電気的に確実に導通した状態となる。
【0031】
このような工程を経て、電線付きのコネクタが製造される。
【0032】
ここで、矢印Fで示す方向がこのコネクタの前方であって、相手コネクタ(不図示)との嵌合方向である。電線30は、矢印Bで示す後方に延びている。
【0033】
また、ここでは、電線30は、コネクタハウジング10に差し込まれる先端の部分のみ示されているが、実際には、電線30は矢印Bで示す後方にさらに延びている。
【0034】
次に、電線30を差し込む前におけるコネクタハウジングの問題点について説明する。
【0035】
図2は、比較例のコネクタハウジングが2つ、溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢で重なった状態を示した図である。ここで、図2(A),(B),(C)は、それぞれ、斜視図、平面図、および図2(B)に示した矢印A-Aに沿う断面図である。
【0036】
2つのコネクタハウジング10A,10Bが互いの溝11が形成された面を互いに向き合わせた姿勢で重なると、図2(C)に示すように、コネクタハウジング10A,10Bの、溝を形成している部分の壁12A,12Bが、互いの溝11A,11Bに入り込むことがある。すると、上側のコネクタハウジング10Bの図の左端の壁12B’が相手の溝11A内に深く嵌まり、これによって上下を逆にした程度では2つに分離しない程度に固く嵌まり込み、無理に力を加えて2つに分離しようとすると破損するおそれがある。近年、ますますの狭ピッチ化が進んできていて、それに伴ってコネクタハウジングの溝11を形成している壁12が薄くなり、破損させないように分離するのがますます難しくなってきている。
【0037】
ここに示す例の場合、コネクタハウジング10Aにとっては、コネクタハウジング10Bが、コネクタハウジング10Aの溝11Aに意図せずに入り込んでくる異物40Bに相当し、コネクタハウジング10Bにとっては、コネクタハウジング10Aが、コネクタハウジング10Bの溝11Bに意図せずに入り込んでくる異物40Aに相当する。
【0038】
以上の問題点を踏まえ、以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明の実施形態を示す各図の説明においても、図1図2に示した比較例と同一の要素につては、図1図2に付した符号と同一の符号を付して説明する。
【0039】
図3は、本発明のコネクタの第1実施形態のコネクタの製造工程を示した斜視図である。
【0040】
ここで、図3(A),(B),(C)は、それぞれ、比較例である図1(A),(C),(E)に対応する図である。すなわち、図3(A),(B),(C)は、それぞれ、端子嵌め込み前、端子嵌め込み後、および電線差し込み後、を示している。ただし、図3(C)では、図1(E)とは異なり、電線30が全ての溝に入り込んだ状態が示されている。
【0041】
図4は、コネクタハウジングの一番端の溝に沿って断面した断面斜視図である。ただし、端子20は、断面することなく、元の形状を残している。
【0042】
図4には、コネクタハウジングに形成された侵入阻止部13が現れている。この侵入阻止部13は、図8に示すように、片持ち梁形状を有し、溝11の底部11aから溝11の入り口11bに向かって斜めに延びている。さらに、この侵入阻止部13は、溝11の底部11aから溝11の入り口11bに向かって斜めに延びるとともに、相手コネクタ(不図示)との嵌合の方向(矢印Fで示す前方)とは逆向き(矢印Bで示す後方)にも斜めに延びている。後方に向かって斜めに延びる形状とすることで、前方に向かって斜めに延びる形状とするよりも、コネクタハウジング10の製造金型の構造が簡易で済む。
【0043】
図5は、第1実施形態ののコネクタハウジングが2つ、溝が形成された面を互いに向き合わせた姿勢で重なった状態を示した図である。ここで、この図5は、比較例における図2に対応する図であり、図5(A),(B),(C)は、それぞれ、斜視図、平面図、および図5(B)に示した矢印B-Bに沿う断面図である。
【0044】
この図5には、図2と同じく、互いの溝11A,11Bに互いの壁12A,12Bが入り込んだ状況が示されている。
【0045】
図6は、図5(C)に示す円R1の部分の拡大図(図6(A))と円R2の部分の拡大図(図6(B))である。
【0046】
また、図6(A)には、コネクタハウジング10Bの端の壁12B’がもう1つのコネクタハウジング10Aの溝11Aに入り込んだ状態が示されている。ただし、この図6(A)に示す壁12B’は、溝11Aに固く嵌まり込む深さにまでは入り込んでいない。
【0047】
図6(B)には、コネクタハウジング10Bの壁12Bがもう1つのコネクタハウジング10Aの溝11Aに入り込み、壁12Bの先端部が侵入阻止部13Aに接触した状態が示されている。
【0048】
これらの図6(A),図6(B)は、端の壁12B’が溝11Aに固く嵌まり込む深さに達するよりも前に壁12Bの先端部が侵入阻止部13Aに接触することを表している。すなわち、この第1実施形態のコネクタハウジング10の場合、壁12Bが侵入阻止部13Aに接触することにより、壁12B,12B’がそれ以上の深さまで入り込むことが防止され、不用意に固く嵌まってしまうことが回避される。
【0049】
図7は、第1実施形態のコネクタハウジングの背面図(A)、平面図(B)、および正面図(C)である。
【0050】
図7(A),(B)に示されている通り、第1実施形態のコネクタハウジング10には、溝11が配列された、矢印L-Rで示される左右方向の両端の溝11’の中に、侵入阻止部13が形成されている。
【0051】
図7(C)に示す配列された孔14は、嵌合時に相手コネクタ(不図示)の雄型の端子が挿し込まれる孔である。この孔14から挿し込まれた相手コネクタの端子は、コネクタハウジング10の溝11に嵌め込まれている端子20(図8参照)と電気的に接触する。
【0052】
図8は、図7(C)に示す矢印C-Cに沿う断面図である。ただし、この図8は、図7よりも拡大されている。また、図7は端子20が嵌め込まれる前のコネクタハウジング10の図であるが、この図8は、コネクタハウジング10の溝11内に端子20が嵌め込まれた後の断面図である。
【0053】
ここで、図8(A),(B),(C)は、コネクタハウジング10の溝11内に、電線30を差し込む前の状態を示した断面図(A)、電線30を差し込んでいる途中の状態を示した断面図(B)、電線30の差し込みが完了した状態を示した断面図(C)である。
【0054】
この図8には、図7における一番右端の溝11’の断面が示されていて、その溝11’内には、侵入阻止部13が形成されている。
【0055】
図8(A)に示すとおり、この侵入阻止部13は、片持ち梁形状を有し、溝11の底部11aから溝11の入り口11bに向かって斜めに延びるとともに、相手コネクタ(不図示)との嵌合の方向(矢印Fで示す前方)とは逆向き(矢印Bで示す後方)にも斜めに延びている。ただし、侵入阻止部13が斜めに延びる形状は、電線30に押されていない図8(A)に示す状態における形状である。
【0056】
電線30が溝11内に差し込まれると、侵入阻止部13は電線30に押されて図8(B)に示すように倒れはじめ、最終的には、図8(C)に示すように、ほぼ水平に延びる形状となる。電線30は、溝11内に差し込まれると、侵入阻止部13を押しながら、端子20によって電線30の被覆が破られ、電線30の芯線が端子20と導通した状態となる。すなわち、この侵入阻止部13は、溝11内に差し込まれた電線30によって押し倒されるため、すなわち、電線30の差し込みを許す姿勢へと姿勢を変えるため、電線30を差し込む前に侵入阻止部13をカットする等の処置は不要であり、図1に示す比較例の場合と同様に電線30を差し込みさえすればよい。
【0057】
ここで、侵入阻止部13が押し倒される押圧力と、電線30を溝11に差し込む際に電線30を押す押圧力と、このコネクタハウジング10の重量との関係の一例について挙げておく。
【0058】
侵入阻止部13を押し倒すには、一例として、一本の侵入阻止部13あたり1N(100gf)以上の押圧力が必要である。一方、コネクタハウジング10の最大重量は、約1gである。
【0059】
したがって溝11に入り込んで侵入阻止部13に接触した異物(例えば図5(C)に示すコネクタハウジング10Bの壁12B)が溝11のさらに奥に入ることによって溝11に嵌まり込むためには、その異物がコネクタハウジング10の重量の100倍以上の押圧力で押される必要があり、強い押圧力を意識的に加えさえしなければ、その異物が溝11に嵌まり込むことをほぼ確実に抑えることができる。
【0060】
電線30を溝11に差し込む際には、電線には、一例として、一本あたり8N(800gf)以上の押圧力が加えられる。すなわち、ここに示した例では、侵入阻止部13を押し倒すのに必要な押圧力の約8倍の押圧力が加えられる。これにより、電線30は、たとえその溝11に侵入阻止部13が存在していたとしても、溝11の、侵入阻止部13に接する深さよりもさらに深い、端子20と確実に接触する所定の深さにまで差し込まれる。
【0061】
本発明では、溝11の、侵入阻止部13に接する深さよりもさらに深い、あらかじめ定められた所定の深さにまで電線30が差し込まれるのに必要な押圧力を、所定の押圧力と称している。
【0062】
次に、第2実施形態について説明する。
【0063】
図9は、第2実施形態のコネクタハウジングの背面図(A)、平面図(B)、および正面図(C)である。この図9は、第1実施形態における図7に対応する図である。ここでは、第1実施形態との相違点のみについて説明する。
【0064】
第1実施形態の場合、図7(A),(B)に示されている通り、コネクタハウジング10の、矢印L-Rで示される左右方向の両端の溝11’の中に、侵入阻止部13が形成されている。これに対し、この図9に示す第2実施形態の場合、コネクタハウジング10の、矢印L-Rで示される左右方向の両端の溝11’の中とその直ぐ内側の溝11’’の中に、合計4つの侵入阻止部13が形成されている。
【0065】
侵入阻止部13がこのように4つ形成されていると、図5に示すような、互いの溝11に互いの壁12が入り込む状態になったときに深く入り込まないようにブロックする力が増し、コネクタハウジングどうしの嵌まり込みが一層効果的に防止される。
【0066】
なお、ここでは、侵入阻止部13を両端の溝11内に形成した第1実施形態と、両端とその隣との合計4つの溝11内に形成した第2実施形態との2例を示したが、本発明は、侵入阻止部13の個数を問うものではなく、コネクタハウジングの形状により互いに嵌まり込みやすい姿勢が限られるときは、その嵌まり込みやすい姿勢にのみ対応した侵入阻止部を、例えば1つのみ形成してもよく、あるいは、それとは逆に、侵入阻止部を全ての溝内に形成してもよい。
【0067】
また、ここでは同種のコネクタハウジングどうしの嵌まり込みを例に挙げて説明したが、ここで例に挙げたような侵入阻止部13を備えたコネクタハウジングと、そのコネクタハウジングの溝に嵌まり込みそうな別種のコネクタハウジングとの間でも侵入阻止部13は有効に作用し、あるいはそのコネクタハウジングに嵌まり込みそうな他の電子部品等の異物との間でも侵入阻止部13は有効に作用する。すなわち、侵入阻止部13によって嵌まり込みが阻止される異物は、特に限定されるものではない。
【0068】
さらに、ここでは、電線が差し込まれる複数の溝が配列されたコネクタハウジングを例に挙げて説明したが、本発明は溝の数を問うものではなく、溝が1つのみ形成されているコネクタハウジングにも適用することができる。
【0069】
さらには、ここでは、電線を差し込むよりも先に端子をコネクタハウジングに嵌め込んでおく圧接タイプの端子を備えたコネクタを例に挙げて説明したが、本発明の適用範囲は、圧接タイプの端子を備えたコネクタに限られるものではない。例えば、圧着タイプの端子をあらかじめ電線に圧着しておき、その圧着端子付きの電線をコネクタハウジングに差し込むタイプのコネクタにも適用することができる。
【符号の説明】
【0070】
10,10A,10B コネクタハウジング
11,11’,11’’,11A,11B 溝
11a 溝の底部
11b 溝の入り口
12,12A,12A’,12B,12B’ 壁
13,13A 侵入阻止部
14 孔
20 端子
30 電線
40A,40B 異物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9