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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081827
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】蓄電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/553 20210101AFI20240612BHJP
   H01M 50/103 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/15 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/176 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/55 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/119 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/184 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/188 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/193 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/562 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/564 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/533 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/534 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/586 20210101ALI20240612BHJP
   H01M 50/593 20210101ALI20240612BHJP
【FI】
H01M50/553
H01M50/103
H01M50/15
H01M50/176
H01M50/55 101
H01M50/119
H01M50/184 A
H01M50/188
H01M50/193
H01M50/562
H01M50/564
H01M50/533
H01M50/534
H01M50/586
H01M50/593
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195278
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】399107063
【氏名又は名称】プライムアースEVエナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】江原 強
(72)【発明者】
【氏名】内田 陽三
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友紀
(72)【発明者】
【氏名】土屋 詔一
(72)【発明者】
【氏名】浅井 正孝
(72)【発明者】
【氏名】浅野 剛史
(72)【発明者】
【氏名】内村 将大
(72)【発明者】
【氏名】瀧本 崇志
(72)【発明者】
【氏名】松本 繁
(72)【発明者】
【氏名】永野 泰章
【テーマコード(参考)】
5H011
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA04
5H011CC06
5H011DD10
5H011EE04
5H011FF04
5H011GG02
5H011HH02
5H043AA03
5H043AA13
5H043BA19
5H043CA04
5H043CA12
5H043DA09
5H043DA11
5H043DA13
5H043DA17
5H043HA02D
5H043HA02E
5H043HA05D
5H043JA06D
5H043JA13D
5H043KA01D
5H043KA08D
5H043KA08E
5H043KA09D
5H043KA09E
5H043LA21D
5H043LA22D
(57)【要約】
【課題】端子部材の接続平面のサイズを確保しやすい技術を実現すること。
【解決手段】電池1は、挿通孔33hが設けられた金属の蓋部材30を有するケース10と、挿通孔33hに挿通された端子部材50と、ケース10と端子部材50との間を絶縁する樹脂部材70と、を有する。端子部材50は、ケース10の中にある内部端子部52と、ケース10の外側にあり、接続平面53を含む外部端子部51と、を有し、平板状の金属部材を屈曲させることによって形成されたものである。外部端子部51は、内部端子部52と繋がる箇所から、内部端子部52の厚み方向の一方の側に延び、接続平面53の過半をなす外部本体部51aと、内部端子部52の厚み方向の他方の側に張り出し、接続平面53の残りをなす外部張出部51bと、を有する。そして、端子部材50は、内部端子部52と外部端子部51とが繋がる箇所を含む部位の断面がT字状をなしている。
【選択図】 図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿通孔が設けられた金属製のケース部材と、
前記挿通孔に挿通された端子部材と、
前記ケース部材に収容され、前記端子部材と接続される電極体と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し、前記ケース部材および前記端子部材それぞれに接する樹脂部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
前記端子部材は、
前記ケース部材の中で前記電極体と接続され、前記ケース部材の中で前記挿通孔を介して前記ケース部材の外まで延びる内部端子部と、
前記ケース部材の外側に位置し、前記ケース部材の外側を向く接続平面を含み、前記ケース部材の内側を向く内側面が前記内部端子部の上端と繋がる平板状の外部端子部と、
を有し、平板状の金属部材を屈曲させることによって、前記内部端子部と前記外部端子部とが形成されたものであり、
前記外部端子部は、
前記内部端子部の上端と繋がる箇所から前記内部端子部の厚み方向の一方の側に延び、前記接続平面の過半をなす本体部と、
前記内部端子部の上端と繋がる箇所から前記内部端子部の厚み方向の他方の側に張り出し、前記接続平面の残りをなす張出部と、
を有し、前記端子部材のうち、前記内部端子部の上端と前記外部端子部の前記内側面とが繋がる箇所を含む部位の断面がT字状をなす、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載する蓄電デバイスであって、
前記端子部材は、
平板状の前記金属部材をL字状に屈曲させることによって、前記内部端子部と前記外部端子部とが形成された後、前記外部端子部の前記内部端子部の厚み方向の前記一方の側の先端を、前記内部端子部を固定しつつ、前記内部端子部の厚み方向の前記他方の側に叩くことによって、前記外部端子部の前記本体部と前記張出部とが形成されてT字状をなすものである、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項3】
請求項1に記載する蓄電デバイスであって、
前記ケース部材の表面のうち、前記樹脂部材と接する領域の少なくとも一部に、粗面化処理が施された領域であるシール領域がある、
ように構成される蓄電デバイス。
【請求項4】
請求項3に記載する蓄電デバイスであって、
前記ケース部材の外側を向く面のうち、前記樹脂部材と接する領域であって、前記挿通孔から前記内部端子部の厚み方向の前記他方の側の領域に、前記シール領域がある、
ように構成される蓄電デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術分野は、蓄電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電デバイスとして、直方体箱状のケースに樹脂部材を介して正負の端子部材がそれぞれ固定された角形の電池が知られている。このような蓄電デバイスでは、例えば、ケースは、矩形環状の開口部を有する有底角筒状の本体部材と、開口部を閉塞する形態で本体部材に全周にわたりレーザ溶接された矩形板状の蓋部材とからなる。また正負の端子部材は、蓋部材に設けられた一対の挿通孔内にそれぞれ挿通されて、ケース内部からケース外部に延びている。そして、樹脂部材が、蓋部材と正負の端子部材との間をそれぞれ絶縁しつつ、蓋部材及び端子部材にそれぞれ接合して気密を保つようシールしている。関連する従来技術として、例えば特許文献1が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-086813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているように、断面がL字状をなし、ケースの外側を向く接続平面が設けられた端子部材が知られている。このような端子部材は、例えば平板状の金属部材をL字状に屈曲加工して形成される。しかしながら、単に金属部材を屈曲させると、屈曲させた箇所において、接続平面に続くR面も形成される。そのため、接続平面のサイズが十分に確保されない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題の解決を目的としてなされた蓄電デバイスは、
挿通孔が設けられた金属製のケース部材と、
前記挿通孔に挿通された端子部材と、
前記ケース部材に収容され、前記端子部材と接続される電極体と、
前記ケース部材と前記端子部材との間を絶縁し、前記ケース部材および前記端子部材それぞれに接する樹脂部材と、
を備える蓄電デバイスであって、
前記端子部材は、
前記ケース部材の中で前記電極体と接続され、前記ケース部材の中で前記挿通孔を介して前記ケース部材の外まで延びる内部端子部と、
前記ケース部材の外側に位置し、前記ケース部材の外側を向く接続平面を含み、前記ケース部材の内側を向く内側面が前記内部端子部の上端と繋がる平板状の外部端子部と、
を有し、平板状の金属部材を屈曲させることによって、前記内部端子部と前記外部端子部とが形成されたものであり、
前記外部端子部は、
前記内部端子部の上端と繋がる箇所から前記内部端子部の厚み方向の一方の側に延び、前記接続平面の過半をなす本体部と、
前記内部端子部の上端と繋がる箇所から前記内部端子部の厚み方向の他方の側に張り出し、前記接続平面の残りをなす張出部と、
を有し、前記端子部材のうち、前記内部端子部の上端と前記外部端子部の前記内側面とが繋がる箇所を含む部位の断面がT字状をなす、
ように構成される。
【0006】
上述した蓄電デバイスによれば、端子部材は、平板状の金属部材を屈曲させたものではあるものの、接続平面を構成する外部端子部には、屈曲されて内部端子部と繋がる箇所から延びる外部本体部とは反対側に張出部があることで、屈曲させただけで張出部が無く屈曲後のR面がそのまま残った接続平面と比較して、広い接続平面が確保される。
【発明の効果】
【0007】
本明細書に開示される技術によれば、蓄電デバイスにおいて、端子部材の接続平面のサイズを確保しやすい技術が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る電池の斜視図である。
図2】実施形態に係る電池の電池高さ方向及び電池幅方向に沿う断面図である。
図3】実施形態に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、蓋部材の上側を示す図である。
図4】実施形態に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図(図3のA-A断面図)である。
図5】実施形態に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図(図3のB-B断面図)である。
図6】実施形態に係る電池の製造方法のフローチャートである。
図7】端子鍛造工程において、外部端子部を鍛造する様子を示す説明図である。
図8】実施形態に係る蓋部材の表面が粗面化された状態の概略を示す図である。
図9】蓋アセンブリ形成工程で形成される蓋アセンブリを示す図である。
図10】蓋アセンブリ形成工程において、金型内に溶融樹脂を注入した様子を示す説明図である。
図11】比較例に係る電池の本体部材の開口部および蓋部材の周縁部近傍であって、電池高さ方向及び電池幅方向に沿う部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態の電池1を、図1図5を参照しつつ説明する。電池1は、蓄電デバイスの一例である。なお、以下では、電池1の電池高さ方向AH、電池幅方向BH、および電池厚み方向CHを、図1図5に示す方向と定めて説明する。この電池1は、ハイブリッドカーやプラグインハイブリッドカー、電気自動車等の車両などに搭載される角型(直方体状)で密閉型のリチウムイオン二次電池である。
【0010】
[電池の構成]
電池1は、図1および図2に示すように、直方体状のケース10と、ケース10内に収容された電極体40と、を有し、さらにケース10の電池高さ方向AHの上側AH1の部位を構成する上部11に、樹脂部材70を介して支持された正極の端子部材50と、樹脂部材80を介して支持された負極の端子部材60と、を有している。電極体40は、ケース10内で、絶縁フィルムからなる袋状の絶縁ホルダ5に覆われている。またケース10内には、電解液3が収容されており、その一部は電極体40内に浸され、残りはケース10の電池高さ方向AHの下側AH2の部位を構成する底部12に溜まっている。
【0011】
ケース10は、本体部材20と蓋部材30とから構成されている。本体部材20は、電池高さ方向AHの上側AH1に矩形環状の開口部21を有する有底角筒状をなしている。具体的に本体部材20は、ケース10の底部12と、ケース10の電池厚み方向CHの一方側CH1の部位を構成する長側部13と、ケース10の電池厚み方向CHの他方側CH2の部位を構成する長側部14と、ケース10の電池幅方向BHの一方側BH1の部位を構成する短側部15と、ケース10の電池幅方向BHの他方側BH2の部位を構成する短側部16と、をなしている。一方、蓋部材30は、矩形板状をなしており、ケース10の上部11をなしている。蓋部材30は、本体部材20の開口部21を閉塞する形態で、蓋部材30の周縁部31が本体部材20の開口部21の全周にわたりレーザ溶接されており、蓋部材30と本体部材20との間に溶融固化部18が形成されている。
【0012】
蓋部材30には、ケース10の内圧が開弁圧を超えたときに破断して開弁する安全弁19が設けられている。さらに、蓋部材30には、ケース10の内外を貫通する注液孔30kが形成されており、アルミニウムからなる円板状の封止部材39が注液孔30kに挿し込まれることによって気密に封止されている。
【0013】
また、蓋部材30のうち、電池幅方向BHの一方側BH1の端部近傍には、蓋厚み方向DHに貫通する矩形状の挿通孔33hが設けられ、電池幅方向BHの他方側BH2の端部近傍には、蓋厚み方向DHに貫通する矩形状の挿通孔34hが設けられている。挿通孔33hには、アルミニウムからなる正極の端子部材50が挿通されており、正極の端子部材50は、樹脂部材70を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。挿通孔34hには、銅からなる負極の端子部材60が挿通されており、負極の端子部材60は、樹脂部材80を介して蓋部材30と絶縁された状態で蓋部材30に固設されている。
【0014】
端子部材50、60は、それぞれ金属板(本実施形態では正極の端子部材50はアルミニウム板、負極の端子部材60は銅板)を所定形状に打ち抜いて屈曲加工等を施したものである。具体的に正極の端子部材50は、図3から図5に示すように、蓋部材30の外側に位置する外部端子部51と、主にケース10内部に位置し、挿通孔33h内を経由して外部端子部51に繋がる内部端子部52とを有する。
【0015】
外部端子部51は、矩形平板状であり、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向く面である接続平面53が設けられる。接続平面53上には樹脂バリがなく、接続平面53全体が露出している。外部端子部51の接続平面53は、全体をバスバ等の外部端子と接続する面に利用できる。また、外部端子部51は、蓋部材30の蓋厚み方向DHの内側DH2を向く内側面54が、内部端子部52の上端と繋がっている。外部端子部51の内側面54は、電池高さ方向AHにおいて、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1を向く面33よりも、上側AH1にある。
【0016】
内部端子部52は、複数箇所で屈曲されている。具体的には、内部端子部52は、図5に示すように、外部端子部51の内側面54から電池高さ方向AHの下側AH2に延びる第1内部52aと、第1内部52aの下端で屈曲して電池厚み方向CHの一方側CH1に延びる第2内部52bと、第2内部52bの電池厚み方向CHの一方側CH1の端部で屈曲して電池高さ方向AHの下側AH2に延びる第3内部52cとを有する。このうち第1内部52aは、挿通孔33hに挿通されており、この第1内部52aには、樹脂部材70が接している。第3内部52cは、電池高さ方向AHの下側AH2の端部において、電極体40の正極集電部に接続している。
【0017】
また、内部端子部52の第1内部52aの上端は、外部端子部51の内側面54のうち、外部端子部51の電池厚み方向CHの一方側CH1の端部51bnから僅かに内側(他方側CH2)の箇所に繋がっている。言い換えると、端子部材50は、外部端子部51と内部端子部52とが繋がる箇所で屈曲し、その繋がる箇所において、外部端子部51が電池厚み方向CHの一方側CH1に僅かに張り出したようになっている。そのため、端子部材50は、外部端子部51と内部端子部52とが繋がる箇所において、すなわち外部端子部51と内部端子部52の第1内部52aとによって、図5に示すように、その断面がT字形状をなしている。本明細書では、外部端子部51のうち、内部端子部52と繋がる箇所から電池厚み方向CHの一方側CH1にある部位を外部本体部51aとし、内部端子部52とが繋がる箇所から電池厚み方向CHの他方側CH2にある部位を外部張出部51bとする。
【0018】
外部張出部51bは、内部端子部52と繋がる箇所から僅かに張り出した部位であり、外部端子部51の過半は外部本体部51aとなる。すなわち、外部端子部51の接続平面53についても、その過半は外部本体部51aを構成する面であり、残りが外部張出部51bを構成する面となる。
【0019】
なお、外部端子部51の接続平面53は、電池厚み方向CHと平行しており、第1内部52aは、電池厚み方向CHと直交する電池高さ方向AHに延びている。このことから、断面がT字形状をなす箇所を構成する第1内部52aの厚み方向は、電池厚み方向CHと同じになる。そのため、外部端子部51は、第1内部52aの上端と繋がる箇所から、第1内部52aの厚み方向の一方の側に延びる外部本体部51aと、第1内部52aの厚み方向の他方の側に延びる外部張出部51bと、からなるともいえる。
【0020】
また、蓋部材30は、挿通孔33hから電池厚み方向CHの他方側CH2の領域において、蓋部材30の面33に、蓋厚み方向DHの内側DH2に窪んだ領域である窪み部33kがある。窪み部33kがある箇所の厚み(蓋部材30の蓋厚み方向DHの長さ)については、窪み33部kがない箇所の厚みの半分程である。窪み部33kの電池厚み方向CHの幅は、挿通孔33hから外部端子部51の電池厚み方向CHの他方側CH2の端部51anよりも他方側CH2まである。窪み部33kによって、蓋部材30の面33の一部と外部本体部51aの内側面54の一部とが電池厚み方向CHにおいて接することなく重なっている。
【0021】
負極の端子部材60も、正極の端子部材50と同様に、蓋部材30の外側に位置する外部端子部61と、主にケース10内部に位置し、挿通孔34h内を経由して外部端子部61に繋がる内部端子部62とを有する。負極の端子部材60の詳細の形状については正極の端子部材50と同様であり、説明を省略する。
【0022】
電極体40は、図1および図2に示すように、扁平な直方体状であり、各々電池高さ方向AHおよび電池幅方向BHに拡がる矩形状をなす、複数の正極板41と複数の負極板42とを、樹脂製の多孔質膜からなるセパレータ43を介して交互に電池厚み方向CHに積層した積層型の電極体である。各正極板41は、電池幅方向BHの一方側BH1に延出する正極集電部41rを有し、各々の正極集電部41r同士が厚み方向に重なって前述の正極タブ40aを形成している。この正極タブ40aは、前述のように正極の端子部材50の内部端子部52に接続している。また各負極板42は、電池幅方向BHの他方側BH2に延出する負極集電部42rを有し、各々の負極集電部42r同士が厚み方向に重なって前述の負極タブ40bを形成している。この負極タブ40bは、前述のように負極の端子部材60の内部端子部62に接続している。
【0023】
正極の樹脂部材70は、蓋部材30と端子部材50との間を絶縁しつつ、蓋部材30および端子部材50にそれぞれ接し、その一部が蓋部材30および端子部材50にそれぞれ固着している。同様に、負極の樹脂部材80は、蓋部材30と端子部材60との間を絶縁しつつ、蓋部材30および端子部材60にそれぞれ接し、その一部が蓋部材30および端子部材50にそれぞれ固着している。
【0024】
樹脂部材70は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)からなり、蓋部材30上に配置された外部絶縁部71と、ケース10の内部および蓋部材30の挿通孔33h内に配置された内部絶縁部72とを有し、内部絶縁部72は蓋部材30の挿通孔33hを経由して外部絶縁部71と繋がっている。樹脂部材80も、PPSからなり、蓋部材30上に配置された外部絶縁部81と、ケース10の内部および蓋部材30の挿通孔34h内に配置された内部絶縁部82とを有し、内部絶縁部82は蓋部材30の挿通孔34hを経由して外部絶縁部81と繋がっている。
【0025】
また、図3から図5に示すように、樹脂部材70のうち、外部絶縁部71は、外部端子部51の周囲を取り囲む枠状である。また、外部絶縁部71は、内部絶縁部72と繋がっている。また、外部絶縁部71は、その一部が電池幅方向BHの他方側BH2に突起した突起部71mGを有する形状をなしている。樹脂部材70は、後述するインサート成形によって形作られており、突起部71mGは、そのインサート成形の際に溶融樹脂が注入されるゲート部材GT(図10参照)が配置される箇所である。
【0026】
また、蓋部材30の表面のうち、樹脂部材70と接している接合領域30S(図4および図5の太線で示された蓋部材30の表面)には、粗面化処理が施されおり、微細な凹凸が形成されている。そのような粗面化された接合領域30Sでは、金属である蓋部材30と樹脂部材70との間の密着性が高められ、さらにアンカー効果によって、蓋部材30と樹脂部材70との接着力を高めている。なお、この粗面化処理は、樹脂部材70と接している接合領域33S全てに行う必要はなく、少なくとも挿通孔33hを囲うように設けられていればよい。この粗面化処理が施された領域によって、樹脂部材70が蓋部材30に気密に固着される。
【0027】
また、正極の端子部材50の表面についても、樹脂部材70と接している接合領域50S(図4および図5の太線で示された端子部材50の表面)に粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成されており、そのような粗面化処理が端子部材50の表面を一周するように施されることで、正極の端子部材50と樹脂部材70とを気密に固着している。
【0028】
また、蓋部材30の表面のうち、負極の端子部材60側の樹脂部材80と接している接合領域にも、粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成され、蓋部材30と樹脂部材80との接着力を高めている。さらに負極の端子部材60にも、樹脂部材80と接する面の一部に粗面化処理が施されて微細な凹凸が形成された領域があり、負極の端子部材60と樹脂部材80とを気密に固着している。
【0029】
[電池の製造]
次いで、上記電池1の製造方法について、図6のフローチャートを参照しつつ説明する。先ず、「準備工程S0」において、蓋部材30と端子部材50、60とを用意する。蓋部材30には、アルミニウム板を用い、あらかじめプレス加工等により注液孔30k、挿通孔33h、34hおよび安全弁19を形成することで、蓋部材30を得る。また正極の端子部材50はアルミニウム板を、負極の端子部材60は銅板を用い、それぞれをプレス加工等して得る。
【0030】
具体的に正極の端子部材50のうち、外部端子部51と内部端子部52の第1内部52aを形成する工程について説明する。先ず「端子屈曲工程S01」として、アルミニウム板からプレス打ち抜きした平板状の端子部材を、コイニング加工によって曲げ角度が略90度になるように、すなわちL字状に屈曲させる。この段階では、外部端子部51のうち外部張出部51bは形成されていない。
【0031】
次に、「端子鍛造工程S02」として、外部端子部51の端部、すなわち外部端子部51のうち内部端子部52の厚み方向(図5に示す電池厚み方向CH)の一方の側の先端を、内部端子部52を固定しつつ、内部端子部の厚み方向の他方の側に叩き、外部端子部51に外部張出部51bを形成する。
【0032】
端子鍛造工程S02では、例えば図7に示す手順で行われる。先ず図7(a)に示すように、L字状に成形された端子部材50の内側の面50aが下金型FE2と接するように配置する。次に図7(b)に示すように、上金型FE1を端子部材50の外側の面50bと接するように配置する。なお、外部端子部51の端部、すなわち外部端子部51のうち内部端子部52の厚み方向EHの一方側EH1の先端面50cは、上金型FE1と下金型FE2とからなる金型FEから露出している。上金型FE1と下金型FE2とは、内部端子部52と圧接しており、これにより、端子部材50の内部端子部52が金型FEに固定される。
【0033】
また、上金型FE1には、外部端子部51のL字の形成箇所、すなわち外部端子部51のうち内部端子部52の厚み方向EHの他方側EH2に、外部張出部51bの形状に相当する窪みFE10が設けられており、上金型FE1を端子部材50上に配置した段階では、金型FE内に、上金型FE1の窪みFE10と端子部材50の外側の面50bによって囲まれる空間FCがある。
【0034】
その後図7(c)に示すように、ハンマーFHによって、外部端子部51の先端面50cを、内部端子部の厚み方向EHの他方側EH2に向けて叩く。これによって、外部端子部51が内部端子部の厚み方向EHの他方側EH2に押され、空間FCを埋めるように変形する。この先端面50cをハンマーFHで叩くことを繰り返すことで、外部端子部51が変形し、空間FCが外部端子部51で埋まり、その結果として、外部張出部51bが形成される。また、外部端子部51を変形させることで、外部端子部51の厚み方向EHの長さを調整できる。
【0035】
次に、「粗面化工程S03」において、鍛造工程を経た端子部材50の一部の領域(後述するインサート成形後に樹脂部材70と接する接合領域50Sに相当する領域)を粗面化する粗面化処理を施す。具体的には、粗面化処理の対象の各領域について、次のような手順の処理を行う。先ず、粗面化処理の対象の領域にある第1の領域にレーザビームを照射し、その第1の領域を溶融させる。金属である端子部材50が溶融することで、雰囲気中に放出された金属の蒸気またはプラズマから金属の粒子が生成され、再び第1の領域ないしその周辺にその粒子が堆積する。
【0036】
その後、第1の領域に隣接する第2の領域にレーザビームを照射し、その第2の領域を溶融させ、第1の領域の場合と同様に金属の粒子を堆積させる。このようなレーザビームの照射を粗面化処理の対象の領域全体に渡って行うことで、図8に示すように、粗面化処理の対象の領域に、レーザビームによる複数の窪み53Lと、金属粒子が堆積することによる複数の突起53Rと、が形成され、粗面化処理の対象の領域の全体として表面にnmオーダーの微細な凹凸が形成されることになる。なお、負極の端子部材60についても同様に、所定の領域に粗面化処理を施しておく。また、蓋部材30についても同様に、一部の領域(後述するインサート成形後に樹脂部材70と接する接合領域30Sに相当する領域)に粗面化処理を施しておく。
【0037】
なお、粗面化工程S03は、後述する蓋アセンブリ形成工程S1の前に実行されていればよく、例えば端子屈曲工程S01の前に実行してもよいし、端子屈曲工程S01の後であって端子鍛造工程S02の前に実行してもよい。
【0038】
次に、「蓋アセンブリ形成工程S1」において、図9に示すような蓋アセンブリ7を形成する。蓋アセンブリ7は、電池1のうち、粗面化済みの蓋部材30と、粗面化済みの端子部材50、60と、樹脂部材70、80と、電極体40と、が一体となり、電極体40が絶縁ホルダ5に包まれた部材である。蓋アセンブリ形成工程S1では、蓋部材30および端子部材50、60を用意し、樹脂部材70、80をインサート成形して、蓋部材30に樹脂部材70、80を介して端子部材50、60を一体化させる。
【0039】
具体的に蓋アセンブリ形成工程S1では、図10に示すように、上金型DE1および下金型DE2を有する金型DEのうち、下金型DE2の所定位置に、まず蓋部材30を配置する。その後、下金型DE2に配置した蓋部材30の挿通孔33h、34h内に、端子部材50、60をそれぞれ挿通する。その後、下金型DE2の上に上金型DE1を重ねて金型DEを閉じる。次に、溶融樹脂MRを金型DE内に注入し、その後に冷却して、樹脂部材70、80を成形する。その後、上金型DE1を上方に移動させて、蓋部材30に樹脂部材70、80を介して端子部材50、60を一体化した複合成形品を、下金型DE2から取り出す。
【0040】
本形態では、インサート成形によって樹脂部材70を形成するため、樹脂部材70には、金型DE内に溶融樹脂MRを注入するゲート部材GTと繋ぐ領域が設けられる。樹脂部材70の外部絶縁部71に設けられる突起部71mGは、このゲート部材GTと繋ぐ領域となる。
【0041】
次に、正極板41、負極板42、およびセパレータ43を積層して形成した電極体40を用意し、電極体40の正極タブ40aおよび負極タブ40bに、上述した複合成形品の端子部材50、60の内部端子部52、62をそれぞれ溶接して接続する。その後、この電極体40を袋状の絶縁ホルダ5で包む。かくして、蓋部材30、端子部材50、60、樹脂部材70、80、電極体40、および絶縁ホルダ5からなる蓋アセンブリ7が形成される。
【0042】
次に、「閉塞工程S2」において、本体部材20を用意し、蓋アセンブリ形成工程S1にて形成された蓋アセンブリ7のうち、絶縁ホルダ5で覆われた電極体40を本体部材20内に挿入し、蓋部材30の周縁部31で本体部材20の開口部21を塞ぐ。
【0043】
次に「溶接工程S3」において、蓋部材30の蓋厚み方向DHの外側DH1(電池高さ方向AHの上側AH1)から、本体部材20の開口部21及び蓋部材30の周縁部31にレーザ光を照射して溶融固化部18を形成するレーザ溶接を全周にわたり行い、ケース10を形成する。
【0044】
次に「注液・封止工程S4」において、電解液3を注液孔30kを通じてケース10内に注入し、電解液3を電極体40内に含浸させる。その後、注液孔30kを外部から封止部材39で覆い、封止部材39を全周にわたり蓋部材30に溶接して、封止部材39と蓋部材30との間を気密に封止する。
【0045】
次に「初充電・エージング工程S5」において、この電池1に充電装置(不図示)を接続して、電池1に初充電を行う。その後、初充電した電池1を所定時間にわたり放置して、電池1のエージングを行う。かくして、電池1が完成する。
【0046】
実施の形態の電池1によれば、端子部材50は、平板状の金属部材を屈曲させて接続平面53を形成するものではあるものの、接続平面53を有する外部端子部51には、屈曲されて内部端子部52と繋がる箇所から延びる外部本体部51aの他、その繋がる箇所から反対側にも外部張出部51bがあり、外部本体部51aと外部張出部51bとによって接続平面53が構成される。すなわち、外部端子部51と内部端子部52とが繋がる箇所において、その断面がT字形状をなしている。これにより、本形態の端子部材50には、外部張出部51bが無く屈曲後のR面がそのまま残った接続平面と比較して、広い接続平面53が確保される。
【0047】
すなわち、図11に示す比較例のような、外部端子部51と内部端子部52とが繋がる箇所において、屈曲後のR面がそのまま残ったような断面がL字状をなしていると、接続平面53の電池厚み方向CHの長さが短くなり、接続平面53のサイズが十分に確保されない場合がある。実施の形態の電池1では、外部張出部51bがある分、接続平面53の電池厚み方向CHの長さが長くなり、接続平面53のサイズが十分に確保される。
【0048】
一方、内部端子部52の第1内部52aを、本形態の電池1と比較して、電池厚み方向CHの一方側CH1に配置し、挿通孔33hを電池厚み方向CHの一方側CH1に広げることによっても、接続平面53のサイズを確保できる。しかしながら、そのような構成にすると、蓋部材30の挿通孔33hから電池厚み方向CHの一方側CH1の端部までの長さが短くなることから、次のような問題が発生する。すなわち、挿通孔33hを電池厚み方向CHの一方側CH1に広げた分、樹脂部材70と蓋部材30とをシールする接合領域30Sのサイズを確保するため、樹脂部材70の外部絶縁部71を電池厚み方向CHの一方側CH1に広げる必要がある。その場合、樹脂部材70と溶接個所(溶融固化部18となる箇所)との距離が短くなり、その結果として、蓋部材30と本体部材20との溶接の際に、外部絶縁部71が焦げ付く可能性がある。一方で、樹脂部材70の外部絶縁部71をそのままにすると、樹脂部材70と蓋部材30とをシールする接合領域30Sのサイズが小さくなり、その結果として、樹脂部材70と蓋部材30との接合が破断し易く、内部ガスがリークするおそれがある。
【0049】
本形態の電池1は、端子部材50がT字形状をなしているため、接続平面53のサイズを確保しつつ、蓋部材30の挿通孔33hを、比較例と比較して、電池厚み方向CHの他方側CH2に配置することができる。例えば本形態では、図5に示したように、外部端子部51の外部張出部51bの電池厚み方向CHの一方側CH1の端部51bnと、挿通孔33hの電池厚み方向CHの一方側CH1の側面33h1とが、電池厚み方向CHにおいてほぼ同じ位置にある。これにより、樹脂部材70と蓋部材30とをシールする接合領域30Sのサイズが確保され、樹脂部材70と蓋部材30との接合が破断し難くなる。また、本形態の電池1は、樹脂部材70の外部絶縁部71を電池厚み方向CHの一方側CH1に広げる必要がないため、溶接の際において外部絶縁部71が焦げ付き難い。
【0050】
なお、本実施の形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能である。例えば実施形態では、ケース10内に収容する電極体として、積層型の電極体40を例示したが、電極体は扁平状捲回型の電極体でもよい。また複数の電極体をケース内に収容してもよい。
【0051】
また、実施の形態では、リチウムイオン電池に適用しているが、一般的な蓄電デバイスであれば適用可能であり,例えばニッケル水素電池やニッケルカドミウム電池でも本発明を適用できる。
【0052】
また、実施の形態では、粗面化処理として、レーザビームによる金属堆積物(アンカー)を金属表面に形成しているが、一般的な粗面化処理であれば適用可能であり、例えば酸系のエッチング剤による細孔を金属表面に形成してもよい。
【0053】
また、実施の形態では、図5に示したように、外部端子部51の外部張出部51bの電池厚み方向CHの一方側CH1の端部51bnと、挿通孔33hの電池厚み方向CHの一方側CH1の側面33h1とが、電池厚み方向CHにおいてほぼ同じ位置にあるが、挿通孔33hの電池厚み方向CHの一方側CH1の側面33h1を、さらに電池厚み方向CHの他方側CH2となるように、挿通孔33hから蓋部材30の電池厚み方向CHの一方側CH1の端部までの距離を長くしてもよい。これにより、樹脂部材70と蓋部材30とが接する面積を大きくし、蓋部材30の粗面化された接合領域30Sの面積を大きくすることで、より樹脂部材70と蓋部材30との接合を破断し難くすることができる。
【符号の説明】
【0054】
1 電池(蓄電デバイス)
10 ケース
20 本体部材
30 蓋部材
30S 接合領域(シール領域)
33h 挿通孔
50 端子部材
51 外部端子部
51a 外部本体部(本体部)
51b 外部張出部(張出部)
52 内部端子部
53 接続平面
70 樹脂部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11