(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081829
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】被覆材、及び被膜形成方法
(51)【国際特許分類】
C09D 125/00 20060101AFI20240612BHJP
B05D 5/00 20060101ALI20240612BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240612BHJP
C09D 5/18 20060101ALI20240612BHJP
C09D 7/60 20180101ALI20240612BHJP
【FI】
C09D125/00
B05D5/00 E
B05D7/24 302J
B05D7/24 302F
B05D7/24 302Z
C09D5/18
C09D7/60
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195286
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】510114125
【氏名又は名称】株式会社エフコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】岡田 昇大
【テーマコード(参考)】
4D075
4J038
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AE03
4D075BB60Z
4D075BB92Y
4D075CA13
4D075CA18
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4D075CA48
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4D075EC13
4D075EC22
4D075EC30
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4J038CC021
4J038HA216
4J038HA426
4J038JA21
4J038JB36
4J038KA08
4J038KA11
4J038MA07
4J038NA15
4J038PA06
4J038PB05
(57)【要約】
【課題】本発明は、温度上昇時に、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、安定した炭化断熱層を形成することができ、優れた耐熱保護性能を確保する被覆材を提供する。
【解決手段】本発明の被覆材は、温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、該被覆材は、結合剤、及び耐熱性付与成分を含み、該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマー及び(a2)芳香族含有ビニルモノマーを含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
その被膜が温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、
該被覆材は、結合剤、及び耐熱性付与成分を含み、
該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマー及び(a2)芳香族含有ビニルモノマーを含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする被覆材。
【請求項2】
その被膜が温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、
該被覆材は、結合剤、及び耐熱性付与成分を含み、
該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマーを3重量%以上60重量%以下、(a2)芳香族含有ビニルモノマーを40重量%以上97重量%以下含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする被覆材。
【請求項3】
前記耐熱性付与成分は、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の被覆材。
【請求項4】
基材に対し、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
該被覆材は、請求項1または請求項2に記載の被覆材であることを特徴とする被膜形成方法。
【請求項5】
基材に対し、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
該被覆材は、請求項1または請求項2に記載の被覆材であり、1工程ないし数工程塗り重ねて塗付し、前記1工程あたりの乾燥膜厚が300μm以上であることを特徴とする被膜形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な被覆材、及び被膜形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼材や、コンクリート、木材、合成樹脂等の基材を火災から保護する目的として、火災時等の温度上昇によって発泡し、炭化断熱層を形成する被覆材が種々提案されている。このような被覆材としては、合成樹脂に、発泡剤、炭化剤、難燃剤等を配合したものが知られている。このような被覆材は、その被膜厚によって、耐熱保護性能が決定されることが多く、目的の耐熱保護性能を得るためには、所定の被膜厚で均一になるように塗付することが重要であり、中でも、合成樹脂の選択が重要となる。
【0003】
例えば、特許文献1では、樹脂として、特定のエチレン性不飽和モノマーから得られる合成樹脂が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のような樹脂を用いた場合、温度上昇時において、炭化断熱層(発泡層)が収縮したり、また、基材から炭化断熱層が剥れる等の問題が生じるおそれがあり、所望の耐熱保護性能を得るには、まだ改善の余地があった。
本発明はこのような課題に鑑みなされたもので、温度上昇時に、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、安定した炭化断熱層を形成することができ、優れた耐熱保護性能を確保することができる被覆材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討した結果、結合剤として、(a1)アルキル酸ビニルモノマー及び(a2)芳香族含有ビニルモノマーを含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を用いることによって、温度上昇時でも、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、優れた耐熱保護性能を確保できることを見出し、本発明の完成に至った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の特徴を有するものである。
1.その被膜が温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、
該被覆材は、結合剤、及び耐熱性付与成分を含み、
該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマー及び(a2)芳香族含有ビニルモノマーを含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする被覆材。
2.その被膜が温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、
該被覆材は、結合剤、及び耐熱性付与成分を含み、
該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマーを3重量%以上60重量%以下、(a2)芳香族含有ビニルモノマーを40重量%以上97重量%以下含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする被覆材。
3.前記耐熱性付与成分は、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤から選ばれる1種以上を含むことを特徴とする1.または2.に記載の被覆材。
4.基材に対し、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
該被覆材は、1.または2.に記載の被覆材であることを特徴とする被膜形成方法。
5.基材に対し、被覆材を塗付して被膜を形成する被膜形成方法であって、
該被覆材は、1.または2.に記載の被覆材であり、1工程ないし数工程塗り重ねて塗付し、前記1工程あたりの乾燥膜厚が300μm以上であることを特徴とする被膜形成方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の被覆材は、温度上昇時に、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、優れた耐熱保護性能を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態に基づき詳細に説明する。
【0010】
本発明は、その被膜が温度200℃以上で炭化断熱層を形成する被覆材であって、該被覆材は、結合剤、耐熱性付与成分を含み、該結合剤は、(a1)アルキル酸ビニルモノマー(以下、「(a1)成分」ともいう)及び(a2)芳香族含有ビニルモノマー(以下、「(a2)成分」ともいう)を含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする。
本発明の被覆材により形成される被膜は、200℃以上(より好ましくは250℃以上)で優れた発泡性を有し、炭化断熱層を形成することにより基材の耐熱保護性能を高めることができるものである。
【0011】
本発明の結合剤は、(a1)成分及び(a2)成分を含むビニルモノマー群の共重合体樹脂を含むことを特徴とする。
結合剤として、このような共重合体樹脂を含むことにより、温度上昇時、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、安定した炭化断熱層を形成することができ、優れた耐熱保護性能を確保できる。
このような効果発現の詳細は不明であるが、温度上昇が始まると、共重合体樹脂中の(a1)成分セグメントは、側鎖であるアルキル酸由来のセグメントから熱分解され、主鎖から脱離し、酸性度を高めるとともに、共重合体樹脂の主鎖骨格は維持された状態となり、基材との密着性を維持したまま発泡しやすい状態を形成しやすい。また、(a2)成分は、発泡した形状を保持する効果があり、(a1)成分と(a2)成分を含むことで、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、優れた耐熱保護性能を確保できるものと思われる。
【0012】
(a1)成分としては、例えば、バーサチック酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、クロトン酸ビニル、安息香酸ビニル等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
本発明では特に、バーサチック酸ビニル、酢酸ビニル、2-エチルヘキサン酸ビニルから選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
(a2)成分としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、2-メチルスチレン、4-メチルスチレン、4-プロピルスチレン、4-t-ブチルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ドデシルスチレン、2-エチル-4-ベンジルスチレン、4-(フェニルブチル)スチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、モノフルオロスチレン、ジフルオロスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、メトキシスチレン、t-ブトキシスチレン、1-ビニルナフタレン、2-ビニルナフタレン等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。本発明では特に、スチレンを含むことが好ましい。
【0013】
本発明で使用する共重合体樹脂は、上記(a1)成分、上記(a2)成分に加えて、必要に応じ(a3)上記(a1)(a2)以外のビニルモノマー(以下、「(a3)成分」ともいう)を用いることができる。
(a3)成分としては、特に限定されないが、例えば、
ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシプロピルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシペンチルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル;エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノアリルエーテル、トリエチレングリコールモノアリルエーテル等のヒドロキシアリルエーテル;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有ビニルモノマー、
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸、けい皮酸等のカルボキシル基含有ビニルモノマー、
ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ-n-ブトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテル、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルプロピルビニルエーテル等のシリル基含有ビニルモノマー、
ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有ビニルモノマー、
(メタ)アクリルアミド、エチル(メタ)アクリルアミド等のアミド基含有ビニルモノマー、
ジアセトンアクリルアミド等のカルボニル基含有ビニルモノマー、
アクリロニトリル等のニトリル基含有ビニルモノマー、
グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有ビニルモノマー、
ビニルスルホン酸等のスルホン酸含有ビニルモノマー、
塩化ビニル、塩化ビニリデン、クロロプレン等の塩素含有ビニルモノマー、
パーフルオロメチルメタクリレート、パーフルオロイソノニルメチルメタクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルアクリレート、2-パーフルオロオクチルエチルメタクリレート、トリフルオロエチルアクリレート、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のフッ素含有ビニルモノマー
エチレン、プロピレン、イソブチレン等のビニルモノマー
アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ネオペンチル、(メタ)アクリル酸t-ペンチル、(メタ)アクリル酸1-エチルプロピル、(メタ)アクリル酸2-メチルブチル、(メタ)アクリル酸3-メチルブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルブチル、(メタ)アクリル酸2-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸4-メチルペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘプチル、(メタ)アクリル酸n-オクチル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ラウリル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
本発明の共重合体樹脂は、上記(a1)成分及び上記(a2)成分、また、これらに加え必要に応じ上記(a3)成分を用いて、公知の塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、スラリー重合、分散重合等のビニル重合法により製造することができる。
また、樹脂の形態は、特に限定されず、溶剤可溶型樹脂、溶剤分散型樹脂、無溶剤型樹脂、粉体樹脂等、適宜設定して使用することができる。例えば、粉体樹脂では、例えば、後述する溶剤等に溶解及び/または分散させて使用することができる。
【0015】
(a1)成分の混合比率は、共重合体樹脂の製造で用いるビニルモノマー全量に対し、3重量%以上60重量%以下、さらには5重量%以上55重量%以下、さらには7重量%以上51重量%以下であることが好ましい。
(a2)成分の混合比率は、共重合体樹脂の製造で用いるビニルモノマー全量に対し、40重量%以上97重量%以下、さらには45重量%以上95重量%以下、さらには49重量%以上93重量%以下であることが好ましい。
このような範囲であることにより、温度上昇時、発泡して優れた炭化断熱層を形成するとともに、基材と炭化断熱層の密着性に優れ、安定した炭化断熱層を形成することができ、優れた耐熱保護性能を確保できる。
また、(a3)成分を用いる場合、(a3)成分の混合比率は、共重合体樹脂の製造で用いるビニルモノマー全量に対し、0重量%以上30重量%未満、さらには0重量%以上20重量%未満、さらには0重量%以上10重量%未満であることが好ましい。
【0016】
また、結合剤としては、上記共重合体樹脂以外の樹脂を用いることもできる。
共重合体樹脂以外の樹脂としては、上記(a1)成分、または、上記(a2)成分を含まないビニル重合体樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0017】
上記結合剤成分より形成される被膜は、示差熱分析法(DTA法)において発熱ピークを有し、その発熱ピークが200~400℃(より好ましくは250~380℃)の温度範囲に極大値を有することが好ましい。このような場合、火災等による温度上昇に際し、発泡性がよりいっそう向上し、優れた炭化断熱層を形成することが可能であり、基材の耐熱保護性を高めることができる。
【0018】
なお、本発明において、被膜の示差熱分析法は、示差熱分析装置(例えば、「示差熱天秤 Thermo plus EVO2 TG-DTAシリーズ」Rigaku社製、等)を用いて測定したものであり、白金のサンプルパンに試料を3±1mg取り、標準物質としてα-アルミナを使用し、昇温速度20℃/分で、100~900℃まで変化させて測定したものである。
【0019】
本発明の被覆材において、耐熱性付与成分は、火災時等の温度上昇によって結合剤成分との相互作用(例えば、脱水冷却効果、不燃性ガス発生効果、炭化促進効果、炭化断熱層形成効果等の少なくとも1つ)により炭化断熱層を形成する成分である。耐熱性付与成分としては、例えば、発泡剤、炭化剤、難燃剤、及び充填剤等から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0020】
発泡剤は、火災時等の温度上昇によって被膜に発泡作用を付与するものであり、具体的には、被膜表面の温度が好ましくは200℃以上となった場合に発泡作用を付与するものである。発泡剤としては、例えば、メラミン及びその誘導体、ジシアンジアミド及びその誘導体、アゾビステトラゾーム及びその誘導体、アゾジカーボンアミド、尿素、チオ尿素等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。発泡剤の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~150重量部)である。
【0021】
炭化剤は、火災時等の温度上昇によって、上記被膜の炭化とともに脱水炭化することにより、炭化断熱層を形成する作用を付与するものである。炭化剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、デンプン、カゼイン、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、特にペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールが脱水冷却効果と炭化断熱層形成作用に優れている点で好ましい。炭化剤の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは10~200重量部(より好ましくは20~120重量部)である。
【0022】
難燃剤としては、例えば、トリクレジルホスフェート、ジフェニルクレジルフォスフェート等の有機リン系化合物;塩素化ポリフェニル、塩素化ポリエチレン、塩化ジフェニル、塩化トリフェニル、塩素化パラフィン、五塩化脂肪酸エステル、パークロロペンタシクロデカン、塩素化ナフタレン、テトラクロル無水フタル酸等の塩素化合物;三酸化アンチモン、五塩化アンチモン等のアンチモン化合物;三塩化リン、五塩化リン、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メレム、リン酸ホウ素、ポリリン酸ホウ素、リン酸アルミニウム、ポリリン酸アルミニウム等のリン化合物;その他ホウ酸亜鉛、ホウ酸ソーダ等の無機質化合物等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。本発明では、難燃剤として、例えば、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラム、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩、またはポリリン酸メラミン・メラム・メレム複塩とピロ硫酸ジメラムとの複合化合物等から選ばれる少なくとも1種以上のリン化合物を含むことが好ましく、さらには、ポリリン酸アンモニウムとこれらを併用して含むことも好ましい。難燃剤の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは30~800重量部(より好ましくは50~500重量部)である。
【0023】
充填剤としては、例えば、タルク、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、シリカ、粘土、クレー、シラス、マイカ、珪砂、珪石粉、石英粉、硫酸バリウム等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。充填剤の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは3~200重量部(より好ましくは5~150重量部)である。
【0024】
さらに、本発明では、上記成分に加えて金属水和物、繊維等を含むこともできる。金属水和物は、温度上昇時に、脱水反応等による吸熱性を示すものであり、上記充填剤とは異なるものである。このような金属水和物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。また、金属水和物の平均粒子径は、好ましくは0.1~20μm(より好ましくは0.2~15μm、さらに好ましくは0.3~8μm、最も好ましくは0.4~3μm)である。金属水和物の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは0.1~50重量部(より好ましくは0.2~30重量部)である。
【0025】
本発明では、充填剤と金属水和物を併用することが好ましく、この場合、金属水和物の含有量は、充填剤に対して、好ましくは0.1~20重量%(より好ましくは0.3~15重量%、さらに好ましくは0.5~10重量%)である。この場合、発泡性、特に高温下における炭化断熱層の収縮等を抑制し、安定した炭化断熱層を形成することができるため、本発明の効果を高めることができる。なお、平均粒子径は、レーザ回折式粒度分布測定装置によって測定される。
【0026】
繊維は、厚塗り性を高め、被膜のひび割れを抑制することができる。また、繊維は、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性を高めることができる。その結果、優れた発泡性を示し、均一な炭化断熱層を形成して、基材の耐熱保護性能を高めることができる。このような繊維としては、例えば、アクリル繊維、アセテート繊維、アラミド繊維、銅アンモニア繊維(キュプラ)、ナイロン繊維、ノボロイド繊維、パルプ繊維、ビスコースレーヨン、ビニリデン繊維、ポリエステル繊維、ポリエチレン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリクラール繊維、ボリノジック繊維、ポリプロピレン繊維、セルロース繊維等の有機質繊維、炭素繊維、ロックウール繊維、ガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、シリカ-アルミナ繊維、スラグウール繊維、セラミックファイバー、カーボン繊維、炭化珪素繊維等の無機繊維等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上で使用することができる。
【0027】
本発明では、繊維として、無機繊維を含むことが好適であり、中でも、ロックウール繊維、スラグウール繊維、ガラス繊維、セラミックファイバー等の人造鉱物繊維が好適である。これにより、被膜のひび割れをよりいっそう抑制することができる。さらに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができるとともに、被膜内部の熱伝導性をいっそう高めることができる。その結果、被膜内部(芯部)まで均一に優れた発泡性を示し、より均一で優れた強度を有する炭化断熱層を形成し、基材の耐熱保護性能をよりいっそう高めることができる。
【0028】
また、繊維の大きさ(繊維長及び繊維径)は、被覆材の性能、適用基材、塗付具等の仕様に応じて設定すればよく、平均繊維長は、好ましくは10~1000μm(より好ましくは15~800μm、さらに好ましくは20~600μm)、平均繊維径は、好ましくは0.5~10μm(より好ましくは1~8μm)の範囲内であることが好適である。また、そのアスペクト比(繊維長/繊維径)は、好ましくは3~300(より好ましくは5~200)である。上記範囲を満たす場合、厚塗り性が高まり、被膜の割れが生じ難くなるとともに、火災等による温度上昇の際には、被膜のタレ等を生じ難くすることができ、安定した炭化断熱層を形成することができる。繊維の含有量は、上記結合剤の固形分100重量部に対して、好ましくは0.5~30重量部(より好ましくは1~25重量部、さらに好ましくは2~20重量部)である。
【0029】
その他、添加剤としては、本発明の効果を著しく阻害しないものであればよく、例えば、顔料、湿潤剤、可塑剤、滑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、増粘剤、レベリング剤、分散剤、消泡剤、架橋剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、ハロゲン捕捉剤、希釈溶媒、吸収剤、脱水剤、溶剤等が挙げられる。
【0030】
このうち酸化防止剤としては、例えば、リン系、硫黄系又はヒンダード型フェノール系酸化防止剤等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。このような酸化防止剤を含むことにより、平常時だけでなく、火災等による温度上昇に際しても被膜の劣化を抑制することができ、温度上昇によって形成される炭化断熱層の性状を高めることができる。
【0031】
また、溶剤としては、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤等の非水系溶剤が好適である。具体的に、脂肪族炭化水素系溶剤としては、例えば、n-ヘキサン、n-ペンタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカンのほか、テルピン油やミネラルスピリット等が挙げられる。また、芳香族炭化水素系溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ソルベントナフサ等;エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル等;ケトン系溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。溶剤としては、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0032】
本発明の被覆材は、加熱残分が、好ましくは70~98重量%(より好ましく75~95重量%、さらに好ましくは80~93重量%)である。被覆材の加熱残分が、上記範囲を満たす場合、厚塗り性に優れ、良好な塗装作業性を得ることができる。これにより、十分な耐熱保護性を発揮することができる。なお、被覆材の加熱残分は、JIS K 5601-1-2の方法にて測定された値であり、加熱温度は105℃、加熱時間は60分である。
【0033】
また、本発明では、被覆材の粘度が、好ましくは5~70Pa・s(より好ましくは7~60Pa・s、さらに好ましくは10~50Pa・s、特に好ましくは15~40Pa・s)である。被覆材の粘度が、上記範囲を満たす場合、塗装作業性、厚塗り性に優れ、均一な被膜が形成することができる。その結果、十分な耐熱保護性を得ることができる。なお、被覆材の粘度は、被覆材調製後(2液型の場合は、主剤と硬化剤を混合後)、直ちに温度23℃において、BH型粘度計で測定した20rpmにおける粘度(5回転目の指針値)である。
【0034】
本発明では、上記加熱残分、及び上記粘度の範囲を満たす被覆材を塗付して被膜を形成することにより、被膜の厚膜化が可能となり、基材へ良好な密着性を示し均一な被膜を安定して形成することができる。さらに、形成被膜は、火災等による温度上昇の際に、優れた発泡性を示し、炭化断熱層を形成して、基材の耐熱保護性能を維持することができる。
【0035】
本発明の被覆材は、建築物・土木構築物等の構造物の表面被覆に適用する発泡性耐火被覆材として好適なものである。具体的には、壁、柱、床、梁、屋根、階段、天井、戸等の各種基材に施工することができる。適用可能な基材としては、例えば、コンクリート、モルタル、サイディングボード、押出成形板、石膏ボード、パーライト板、煉瓦、プラスチック、木材、金属、鉄骨(鋼材)、ガラス、磁器タイル等が挙げられる。これら基材は、その表面に、既に被膜が形成されたもの、何らかの下地処理(防錆処理、難燃処理等)が施されたもの、壁紙が貼り付けられたもの等であってもよい。
【0036】
本発明の被覆材を基材に塗付する際には、例えば、スプレー、ローラー、刷毛、こて等の塗付具を使用することができる。
【0037】
(被膜形成方法)
本発明の被膜形成方法は、基材に対し、上記被覆材を塗付して被膜を形成するものであり、塗装方法としては、特に限定されず、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装(エアスプレー、エアレススプレー)等の種々の方法を用いて塗装することができる。
【0038】
また、被覆材は、気温-10~45℃下での塗装が可能であり、特に30℃以上(さらには35℃以上)の高温下であっても良好な塗装作業性、硬化性を得ることができる。さらに、塗装時の湿度は特に限定されないが、湿度70%Rh以上(さらには80%Rh以上)の高湿条件下(雨天時を含む)であっても良好な塗装作業性、硬化性、基材への密着性を得ることができる。その結果、耐熱保護性に優れた被膜を形成することができる。また、塗装後の被覆材の養生(乾燥)環境が、高多湿下の場合であっても、優れた硬化性及び基材への密着性を得ることができ、耐熱保護性に優れた被膜を形成することができる。
【0039】
本発明の被覆材を基材に塗付する際には、上記方法により1工程ないし数工程塗り重ねて塗付すれば良いが、1工程あたりの乾燥膜厚が好ましくは300μm以上(より好ましくは400~8000μm)となるように塗付することが好ましい。本発明の被覆材は、1工程あたりの乾燥膜厚が1000μmを超えるように塗付した場合であっても、優れた硬化性及び基材への密着性を得ることができ、耐熱保護性に優れた被膜を形成することができる。また、最終的に形成される被膜厚は、所望の機能性、適用部位等により適宜設定すれば良いが、好ましくは0.4~8mm程度である。
【0040】
(下塗材)
また、本発明では、必要に応じて、上記被覆材を塗付する前に、基材に対して、表面処理を行うことや下塗材を塗付することができる。これにより、基材との付着性向上、防食性(防錆性)等を高めることができる。基材の表面処理としては、例えば、溶剤や酸等による表面処理、ディスクサンダー、ワイヤーホイル、スクレーパー、ワイヤーブラシ、サンドペーパー等によるケレン等を行うことができる。
【0041】
下塗材としては、例えば、シーラー、プライマー、下地調整材、サーフェーサー、パテ等のほか、フラットタイプの塗料も適用できる。これらは、クリヤータイプ又は着色タイプのいずれであっても良い。また、水系・溶剤系のいずれであっても良く、塗装箇所等に応じて適宜選択でき、1種または2種以上を使用することができる。下塗材としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等の樹脂成分を含むことが好適であり、上記樹脂成分以外にも、各種添加剤を本発明の効果に影響しない程度に配合することが可能である。このような添加剤としては、例えば、防錆顔料、体質顔料、着色顔料、可塑剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、酸化防止剤、触媒、架橋剤等が挙げられる。
【0042】
下塗材は、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗付することができる。塗付け量は、好ましくは30~500g/m 2(より好ましくは50~300g/m 2)である。下塗材の塗回数は、基材の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。
【0043】
(仕上材)
本発明は、上記被覆材により形成される被膜の上に、仕上材を積層することができる。このような仕上材としては、上記被膜が、火災等による温度上昇の際に発泡し、炭化断熱層を形成するのを阻害しないものであれば、特に限定されず、公知の仕上材を積層することができる。このような仕上材は、上塗材を塗付したり、あるいは各種シート材料を貼着して積層することができる。
【0044】
上記上塗材としては、クリヤータイプ又は着色タイプ、艶有りタイプ又は艶消しタイプ、硬質タイプ又は弾性タイプ、薄膜タイプ又は厚膜タイプ等のいずれのものも使用することができる。また、水系・溶剤系のいずれであっても良く、所望の目的に応じて適宜選択できる。また、本発明の上塗材としては、樹脂成分を含むことが好ましい。このような樹脂の形態としては、例えば、溶剤可溶型樹脂、非水分散型樹脂、無溶剤型樹脂、水分散型樹脂、水溶性樹脂等が挙げられる。樹脂の種類としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。本発明では特に、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂から選ばれる1種以上を含むことが好ましい。
【0045】
さらに、上記樹脂成分は架橋反応性を有するものであってもよい。樹脂成分が架橋反応型樹脂である場合は、形成被膜の耐水性、耐久性、密着性が高まり、降雨、結露等による被膜の膨れ・剥れの発生や耐熱性能の低下を抑制することができる。このような架橋反応型樹脂は、それ自体で架橋反応を生じるもの、あるいは別途混合する架橋剤によって架橋反応を生じるもののいずれであってもよい。このような架橋反応性は、例えば、水酸基とイソシアネート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基、アルド基とセミカルバジド基、ケト基とセミカルバジド基、アルコキシル基どうし、カルボキシル基と金属イオン、カルボキシル基とカルボジイミド基、カルボキシル基とエポキシ基、カルボキシル基とアジリジン基、カルボキシル基とオキサゾリン基等の反応性官能基を組み合わせることによって付与することができる。この中でも水酸基-イソシアート基、カルボニル基とヒドラジド基、エポキシ基とアミノ基から選ばれる1種以上の架橋反応型樹脂を含むことが好適である。
【0046】
上記上塗材の樹脂成分以外の成分として、例えば、着色顔料、体質顔料、骨材等を混合することができる。このような成分を適宜配合することにより、所望の色彩やテクスチャーを表出することができる。着色顔料、体質顔料、骨材等の混合量は、上記被覆材の効果(発泡性、耐熱保護性等)を阻害しない範囲であれば特に限定されないが、好ましくは樹脂成分の固形分100重量部に対して、好ましくは1~2000重量部(より好ましくは5~1000重量部)である。
【0047】
本発明では特に、上記着色顔料、体質顔料として、赤外線反射性及び/又は赤外線透過性を有する顔料を使用することが好適である。これにより、耐熱保護性等の効果をよりいっそう高めることができる。
【0048】
赤外線反射性を有する顔料としては、例えば、アルミニウムフレーク、酸化チタン、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸カルシウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化イットリウム、酸化インジウム、アルミナ、鉄-クロム複合酸化物、マンガン-ビスマス複合酸化物、マンガン-イットリウム複合酸化物、黒色酸化鉄、鉄-マンガン複合酸化物、鉄-銅-マンガン複合酸化物、鉄-クロム-コバルト複合酸化物、銅-クロム複合酸化物、銅-マンガン-クロム複合酸化物等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0049】
赤外線透過性を有する顔料としては、例えばペリレン顔料、アゾ顔料、黄鉛、チタニウムレッド、カドミウムレッド、キナクリドンレッド、イソインドリノン、ベンズイミダゾロン、フタロシアニングリーン、フタロシアニンブルー、コバルトブルー、インダスレンブルー、群青、紺青等が挙げられ、これらの1種または2種以上が使用できる。
【0050】
さらに、上塗材には、その他、通常塗料に使用可能な各種添加剤を配合することもできる。このような添加剤としては、例えば増粘剤、造膜助剤、レベリング剤、湿潤剤、可塑剤、凍結防止剤、pH調整剤、防腐剤、防黴剤、防藻剤、抗菌剤、分散剤、消泡剤、吸着剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、繊維類、低汚染化剤、親水化剤、撥水剤、カップリング剤、触媒等が挙げられる。
【0051】
本発明の被膜形成方法において、上塗材は塗り重ねて塗付、あるいは2種以上の上塗材を積層して塗付することもできる。2種以上の上塗材を積層する場合には、第1上塗材(中塗材)として、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂から選ばれる1種以上(特に好ましくは、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等)の樹脂成分を含むことが好ましい。これにより、上記被覆材と上塗材の層間の密着性をよりいっそう高めることができる。さらには、被膜物性に優れた上塗材被膜を形成することができる。
【0052】
上塗材の塗付は、公知の塗付方法によれば良く、例えば、刷毛塗装、ローラー塗装、スプレー塗装等の種々の方法を用いて塗付することができる。塗付け量は、好ましくは30~5000g/m 2(より好ましくは50~3000g/m 2)である。上塗材の塗回数は、基材の表面状態等によって適宜設定すればよいが、好ましくは1~2回である。また、乾燥は好ましくは、常温で行えばよい。
【0053】
上記シート材料としては、例えば、化粧フィルム、化粧シート、シート建材、壁紙等が挙げられる。また、その厚みは、好ましくは0.01~30mm(より好ましくは0.05~20mm)である。これらは、公知の接着剤(粘着剤)等を介して貼着すればよい。
【実施例0054】
以下に実施例を示して、本発明の特徴をより明確にする。但し、本発明はこの範囲には限定されない。
【0055】
表1に示す原料を使用し、表2に示す配合にて製造した。
【0056】
(実施例)
<被覆材1~11の製造>
表1に示す原料を使用し、表2に示す配合に従って、共重合体樹脂、耐熱性付与成分及びその他の成分を常法により混合し被覆材を得た。
【0057】
【0058】
【0059】
<試験体の製造>
予め、さび止め塗装した鋼板(縦150mm×横70mm×厚さ1.6mm)の全面に被覆材を標準状態(温度23℃、相対湿度50%)で乾燥膜厚1.5mmとなるようにスプレーで塗付し、16時間養生後、同じ被覆材を乾燥膜厚1.5mmとなるようにスプレーで塗付し、7日間養生させたものを試験体とし、以下の評価を実施した。結果は、表2に示す。
<評価>
ISO 5660-1 コーンカロリーメーター法に基づき、電気ヒーター(CONEIII、株式会社東洋精機製)を用いて、試験体表面に50kW/m 2の輻射熱を30分間放射したときの発泡性(発泡倍率)、及び鋼板裏面温度を測定し、さらに緻密性、密着性を評価した。各評価基準は以下の通りである。
<評価1(発泡性)>
A:発泡倍率20倍超
B:発泡倍率15倍超20倍以下
C:発泡倍率10倍超15倍以下
D:発泡倍率10倍以下
<評価2(裏面温度)>
A:470℃未満
B:470℃以上500℃未満
C:500℃以上550℃未満
D:550℃超
<評価3(緻密性)>
発泡倍率を測定した試験体を切断し、その断面における炭化断熱層の緻密性を目視にて確認した。評価基準は、緻密性が高いものを「A」、緻密性が低いものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
<評価4(密着性1:基材との密着性)>
上記耐熱性評価2において、輻射熱を30分間放射後に形成された炭化断熱層の基材付近の密着性を確認した。評価基準は、基材と炭化断熱層の浮きの有無を目視にて評価し、浮きが無いものを「A」、浮きが激しいものを「D」とする4段階評価(優:A>B>C>D:劣)とした。
【0060】
<評価5(密着性2:被覆材の密着性)>
二液型エポキシ樹脂接着材を用いて鋼製治具と試験体の被覆材層面側を貼り付け、標準状態で1週間静置したものに対し、オートグラフ(AGX型、株式会社島津製作所製)を用いて、JIS A 6909:2014「建築用仕上塗材」7.10の手順によって付着強さを測定した(荷重速度:1764N/min)。評価基準は、以下のとおりである。
A:付着強さ0.4N/mm 2以上(試験体の被覆材層内の破断)
B:付着強さ0.4N/mm 2以上(試験体の鋼板-被覆材層の界面破断)
C:付着強さ0.2N/mm 2以上0.4N/mm 2未満(試験体の鋼板-被覆材層の界面破断)
D:付着強さ0.2N/mm 2未満(試験体の鋼板-被覆材層の界面破断)