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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081839
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1347 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
G02F1/1347
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195303
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 敬也
(72)【発明者】
【氏名】大平 啓史
(72)【発明者】
【氏名】石川 誠
【テーマコード(参考)】
2H189
【Fターム(参考)】
2H189AA27
2H189AA34
2H189HA16
2H189LA10
2H189LA14
2H189LA15
(57)【要約】
【課題】液晶表示パネルと調光パネルとを有する表示装置における格子状の表示ムラを抑制する。
【解決手段】
液晶表示装置10と調光パネル20とを有する表示装置であって、前記液晶表示パネル10は第1の表示ムラパターンを有し、前記調光パネル20は第2の表示ムラパターンを有し、前記液晶表示パネル10の表示領域と前記調光パネル20の表示領域を重ねた場合、平面で視て、前記第1の表示ムラパターンと前記第2の表示ムラパターンは互いに、横方向あるいは縦方向にずれていることを特徴とする表示装置。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶表示パネルと調光パネルとを有する表示装置であって、
前記液晶表示パネルは第1の表示ムラパターンを有し、前記調光パネルは第2の表示ムラパターンを有し、
前記液晶表示パネルの表示領域と前記調光パネルの表示領域を重ねた場合、平面で視て、前記第1の表示ムラパターンと前記第2の表示ムラパターンは互いに、横方向あるいは縦方向にずれていることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記液晶表示パネルの表示領域と前記調光パネルの表示領域を重ねた場合、平面で視て、前記第1の表示ムラパターンと前記第2の表示ムラパターンは互いに、横方向及び縦方向にずれていることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記第1の表示ムラパターンは、第1の格子パターンであり、前記第2の表示ムラパターンは、第2の格子パターンであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記表示ムラは輝度ムラであることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第1の表示ムラパターンの中心と、前記第2の表示ムラパターンの中心との間隔は、前記第1の表示ムラパターンあるいは前記第2の表示ムラパターンの幅の2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項6】
前記横方向において、前記第1の格子パターンの格子間隔と、前記第2の格子パターンの格子間隔とは同一であり、
前記縦方向において、前記第1の格子パターンの格子間隔と、前記第2の格子パターンの格子間隔とは同一であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1の格子パターンの格子の幅と、前記第2の格子パターンの格子の幅とは同一であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記横方向へのズレは、前記格子パターンの幅よりも大きく、前記格子間隔の半分よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記横方向へのズレは、前記格子間隔の半分であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項10】
前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記縦方向へのズレは、前記格子パターンの幅よりも大きく、前記格子間隔の半分よりも小さいことを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項11】
前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記縦方向へのズレは、前記格子間隔の半分であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶表示パネルを複数重ねて用いることによって、高コントラストを実現するデュアルセル表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置では画素電極および薄膜トランジスタ(TFT)等を有する画素がマトリクス状に形成されたTFT基板と、TFT基板に対向して対向基板が配置され、TFT基板と対向基板の間に液晶が挟持されている。そして画素毎に、液晶分子によりバックライトからの光の透過率を制御することによって画像を形成している。液晶表示装置はフラットで軽量であることから、色々な分野で用途が広がっている。
【0003】
黒表示は、バックライトからの光を遮断することによって行うが、液晶表示パネルでは、完全に遮断することは困難である。したがって、液晶表示パネルにおけるコントラストは、1000:1程度である。特許文献1には、液晶表示パネルを2枚重ねて用いることによって、コントラストを上げる技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-131775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コントラストが1000:1の液晶表示パネルを2枚重ねれば、理論的には、コントラストが1000000(1M):1の表示装置を実現することができる。このような構成の液晶表示装置をデュアルセル表示装置、あるいは、単にデュアルセルという。
【0006】
デュアルセルは、カラー画像を表示する表示パネルと明るさのみを調整する調光セルを用いる。表示パネル、あるいは、調光パネル単独では、表示ムラが発生しない場合であっても、表示パネルと調光パネルを重ねて使用すると表示むらが生ずる場合がある。
【0007】
本発明の課題は、デュアルセルとした場合であても、表示むらが生じない液晶表示装置を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記問題を克服するものであり、具体的な手段は次のとおりである。
【0009】
(1)液晶表示装置と調光パネルを重複して配置したデュアルセル表示装置であって、前記液晶表示パネルは第1の表示ムラパターンを有し、前記調光パネルは第2の表示ムラパターンを有し、前記液晶表示パネルの表示領域と前記調光パネルの表示領域を重ねた場合、平面で視て、前記第1の表示ムラパターンと前記第2の表示ムラパターンは互いに、横方向あるいは縦方向にずれていることを特徴とするデュアルセル表示装置。
【0010】
(2)前記液晶表示パネルの表示領域と前記調光パネルの表示領域を重ねた場合、平面で視て、前記第1の表示ムラパターンと前記第2の表示ムラパターンは互いに、横方向及び縦方向にずれていることを特徴とする(1)に記載のデュアルセル表示装置。
【0011】
(3)前記第1の表示ムラパターンは、第1の格子状パターンであり、前記第2の表示ムラパターンは、第2の格子パターンであることを特徴とする(1)に記載のデュアルセル表示装置。
【0012】
(4)前記横方向において、前記第1の格子パターンの格子間隔と、前記第2の格子パターンの格子間隔とは同一であり、前記縦方向において、前記第1の格子パターンの格子間隔と、前記第2の格子パターンの格子間隔とは同一であることを特徴とする(3)に記載のデュアルセル表示装置。
【0013】
(5)前記第1の格子パターンの格子の幅と、前記第2の格子パターンの格子の幅とは同一であることを特徴とする(4)に記載のデュアルセル表示装置。
【0014】
(6)前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記横方向へのズレは、前記格子パターンの幅よりも大きく、前記格子間隔の半分よりも小さいことを特徴とする(5)に記載のデュアルセル表示装置。
【0015】
(7)前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記横方向へのズレは、前記格子間隔の半分であることを特徴とする(5)に記載のデュアルセル表示装置。
【0016】
(8)前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記縦方向へのズレは、前記格子パターンの幅よりも大きく、前記格子間隔の半分よりも小さいことを特徴とする(5)に記載のデュアルセル表示装置。
【0017】
(9)前記第1の格子パターンと前記第2の格子パターンの前記縦方向へのズレは、前記格子間隔の半分であることを特徴とする(5)に記載のデュアルセル表示装置。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】デュアルセル表示装置の分解斜視図である。
図2】液晶表示装置の平面図と断面図である。
図3図1の構成での液晶表示パネルにおける表示ムラの例である。
図4】TFT基板における露光ショットの例である。
図5】露光ショットの重複部を示す平面図である。
図6図5の領域Aを示す平面図である。
図7図5の領域Bを示す平面図である。
図8図5の領域Cを示す平面図である。
図9A】通常領域における画素電極パターンである。
図9B】ポジレジストを使用した場合、2重露光ショット領域において、露光が弱すぎた場合の画素電極パターンである。
図9C】ポジレジストを使用した場合、2重露光ショット領域において、露光がすぎた場合の画素電極パターンである。
図10A】通常領域における画素電極パターンである。
図10B】ポジレジストを使用した場合、2重露光ショット領域において、露光が弱すぎた場合の画素電極パターンである。
図10C】ポジレジストを使用した場合、2重露光ショット領域において、露光がさらに弱すぎた場合の画素電極パターンである。
図11】従来例のデュアルセル表示装置での表示ムラのメカニズムを示す断面図である。
図12】本発明によるデュアルセルでの表示ムラの改善メカニズムを示す断面図である。
図13】本発明による液晶表示パネル用マザーTFT基板における、露光ショットの例を示す平面図である。
図14】本発明による調光パネル用マザーTFT基板における、露光ショットの例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に実施例によって本発明を詳細に説明する。
【実施例0020】
図1は、デュアルセル液晶表示装置の分解斜視図である。図1において、液晶表示パネル10と調光パネル20が重ねて使用される。調光パネル20の構成は、カラーフィルタが無い他は、液晶表示パネル10と同じである。図1では、液晶表示パネル10が前面に、調光パネル20が背面に配置しているが、調光パネル20が前面に、液晶表示パネル10が背面に配置した構成でもよい。
【0021】
図1において、調光パネル20の背面に第1偏光板31が配置し、第2偏光板32が調光パネルの前面に配置している。また、第2偏光板と液晶表示パネル10の間に第3偏光板31が配置し、第4偏光板34が液晶表示パネル10の前面に配置している。バックライトからの光BLは、調光パネル20及び液晶表示装置10で変調を受けて第4偏光板34で最終的に検光されて、出射する。
【0022】
図2は液晶表示パネル10の構成を示す平面図と断面図である。図2において、TFT(Thin Film Transistor)、画素電極、走査線101、映像信号線102等を備えたTFT基板100に対して、液晶層300を挟んで対向基板200が配置している。対向基板200には、ブラックマトリクス、カラーフィルタ等が形成されている。なお、カラーフィルタはTFT基板100側に形成される場合もある。TFT基板100と対向基板200は周辺において、シール材150にて接着し、内部に液晶層300がシールされる。
【0023】
図2において、TFT基板100と対向基板200とが重なった部分に表示領域80が形成されている。表示領域80には、走査線101が横方向(x方向)に延在し、縦方向(y方向)に配列している。また、映像信号線102が縦方向に延在し、横方向に配列している。走査線101と映像信号線102で囲まれた領域に画素103が形成されている。
【0024】
TFT基板100は対向基板200よりも大きく形成され、TFT基板100の対向基板200と重なっていない部分には、端子領域90が形成されている。端子領域90には、ドライバIC160が配置し、また、液晶表示パネル10に電源や信号を供給するために、フレキシブル配線基板170が接続している。
【0025】
TFT基板100と対向基板200は別々に形成される。すなわち、マザーTFT基板に多数のTFT基板100を形成し、マザー対向基板に多数の対向基板200を形成する。マザーTFT基板とマザー対向基板の状態で、貼り合わせを行い、その後、スクライビング等によって、個々の液晶表示パネル10に分離する。その後、個々の液晶表示パネル10の端子領域90にドライバIC160を搭載し、また、フレキシブル配線基板170を接続する。図2では、液晶表示パネル10の構成について説明したが、調光パネル20も、カラーフィルタが無い他は、液晶表示パネル10と同じである。
【0026】
このようにして形成された図1のデュアルセル表示装置の画面に、図3に示すような格子状のムラ11が観測された。このムラ11は、例えば、画面全面に白画面を表示したときに、格子状に輝度ムラ(例えば明るい部分、あるいは、明るい部分)が観測される、等である。このムラ11は、白画面の階調によっても、目立ち方が異なる。
【0027】
発明者は、このムラ11は、液晶表示パネル10あるいは調光パネル20を形成する際の、露光ショットと関係があることをつきとめた。液晶表示パネル10も調光パネル20も同様な製造方法で形成するので、以下では、特に区別する必要のない限り、液晶表示パネル10を例にとって説明する。液晶表示パネル10は、TFT基板100と対向基板200とで形成されるが、露光によってパターニングされることは同じである。以後の説明では、特に断らない限り、液晶表示パネル10のTFT基板100を例にとって説明する。
【0028】
図4は、TFT基板100における露光ショットの位置を示す平面図である。図4におけるハッチング部が1回の露光(露光ショット)によってカバーする範囲である。本明細書では、これを露光ショット領域13ともいう。なお、以下の説明では、露光ショット領域13と露光ショット13を区別なく使用する場合がある。
【0029】
図4において、点線12が露光ショットの境界である。すなわち、図4では、TFT基板100の面積よりも、露光ショット領域13の面積のほうが小さい。図4では、TFT基板100の大部分は、9回の露光ショットによってカバーされるが、周辺も含めると9+16=25回の露光ショットを必要とする。なお、TFT基板100の周辺における露光ショットの境界12は、マザー対向基板において、隣接するTFT基板100と同時に露光される。
【0030】
図4において、露光ショットと露光ショットの境界12が問題となる。すなわちこの境界部分で、隙間が生ずると明確なムラが生ずる。したがって、境界12において、隙間が生じないように、隣接する露光ショット間で重なりが生ずるようにして露光される。
【0031】
図5乃至図8は、境界12において、ムラが生じないようにするための構成例である。図5に示すように、境界12は、縦境界A、横境界B、コーナーCの3種類がある。図6は、縦境界Aの詳細図である。図6において、12は設計上の露光ショット境界である。図6において、左側の露光ショットは、境界12よりも、s/2だけ右側に張り出して露光している。一方右側の露光ショットは、s/2だけ左側に張り出して露光している。その結果、幅sにわたって2重に露光される部分が存在している。2重に露光されれば、パターン寸法が境界以外の部分と大きく異なってしまう。
【0032】
これを避けるために、マスクの端部において、幅sにわたって、透過率を低くした領域40を形成しておく。この透過率は、2重露光された場合に、露光光量が境界部分以外の露光量を同等になるように調整する。透過率を低くする手段は種々存在するが、例えば、小さなモザイク模様を多数、幅sにわたって形成することでもよい。
【0033】
図7は、横境界Bの詳細図である。図7において、12は設計上の露光ショット境界である。図7において、上側の露光ショットは、境界12よりも、s/2だけ下側に張り出して露光している。一方下側の露光ショットは、s/2だけ上側に張り出して露光している。その結果、幅sにわたって2重に露光される部分が存在している。2重に露光されれば、パターン寸法が境界以外の部分と大きく異なってしまう。
【0034】
これを避けるために、マスクの端部において、幅sにわたって、透過率を低くした領域40を形成しておく。この透過率は、2重露光された場合に、露光光量が境界部分以外の露光量を同等になるように調整する。
【0035】
図8は、コーナーCの詳細図である。図8において、正方形状のコーナー部41は境界部以外の領域の4倍の露光を受けることになる。しかし、遮光効果も4倍、あるいは、領域A及びBの2倍の遮光効果を受けることになるので、コーナーCのみのパターンに異常が生ずるわけではない。
【0036】
このような対策によって、液晶表示パネル10における、露光ショットの境界12に起因する表示むらは抑え込むことが出来る。調光パネル20も同様である。すなわち、液晶表示パネル10だけ、あるいは、調光パネル20だけであれば、例えば、表示むらは、図5乃至図8に示すような手段によって抑え込むことが出来るが、問題は、デュアルセルのように、液晶表示パネル10と調光パネル20を重ね合わせると格子状の表示ムラ11が現れるということである。
【0037】
発明者は、図3に示す表示ムラは、露光ショットの境界部12における露光ムラが関係するという推定のもとに、検討を行った。つまり、露光ショットパターンと、表示ムラパターンの形状の関係に問題があると推定した。ところで、露光量とパターン幅の太り、あるいは、細りの関係は、ポジレジストを使用するか、ネガレジストを使用するかによって、異なる。ポジレジストを使用した場合、オーバー露光をした場合は、パターンが太くなる。一方、露光不足であればパターンは細くなる。逆に、ネガレジストを使用した場合は、オーバー露光をした場合は、パターンが細くなり、露光不足であれば、パターンは太くなる。
【0038】
以下の説明では、ポジパターンを使用した場合を例にとって説明する。図9A乃至図9Cは、露光量によって、画素電極105のパターン幅が変化する様子を示す図である。図9Aは露光ショットの境界以外の通常領域50における画素電極の様子である。図9Bは、露光ショットの重なり部40において、露光量が少ないために、画素電極のパターン幅が小さくなった場合である。図9Cは、露光ショットの重なり部40において、露光量が大きいために、画素電極のパターン幅が大きくなった場合である。
【0039】
図10A乃至図10Cは、露光量によって、画素電極105のパターン幅が変化する様子を示す他の例である。図10Aは露光ショットの境界以外の通常領域50における画素電極の様子である。図10Bは、露光ショットの境界部40において、露光量が少ないために、画素電極のパターン幅が小さくなった場合である。図10Cは、露光量がさらに小さくなったために、画素電極のパターン幅がさらに小さくなった場合である。ここで、図10Bの状態であれば人間の眼には表示ムラとして認識できないが、図10Cの状態であれば人間の眼に表示ムラとして認識される場合がある。
【0040】
すなわち、パターン幅が10B程度である場合、液晶表示パネル10あるいは調光パネル20だけの場合、表示ムラは認識できないが、図1に示すように、液晶表示パネル10と調光パネル20を重複して用いた場合にムラが生ずる場合がある。図11はこの様子を示すデュアルセルの断面図である。
【0041】
図11において、矢印の太さは各パネルからの出射光の強度を示す。バックライト400を出射した光は、まず、調光パネル20によって制御を受ける。調光パネル20において、露光ショット領域13の、境界12以外の領域50を通過する領域は正常なパターンによる制御であり、太い矢印で示されている。
【0042】
ここで、露光ショットの境界12における重複領域40においては、重複露光時における遮光効果が弱すぎて、パターンが小さくなり、これによるパネルの透過率が低下したと仮定する。この現象を、図11では、露光ショットの境界12における重複領域40を出射する光が細い矢印となることで示している。
【0043】
調光パネル20を出射した光は液晶表示パネル10に入射し、さらに制御を受ける。図11では、調光パネル20と液晶表示パネル10とは、全く同じ露光方法によって製造されている。つまり、露光ショットの境界位置12も調光パネル20と液晶表示パネルとで、同じ位置となっている。したがって、上記した調光パネルで生じた現象が、液晶表示パネル10においても同じ位置において生ずる。
【0044】
そうすると、調光パネル20の境界領域40で低下した出射光は、液晶表示パネル10においてさらに低下する。図11では、この現象を、境界領域40を出射する矢印がさらに細くなることで表している。つまり、調光パネル20から出射する光量のムラは人間の眼に認識できない場合であっても、液晶表示パネル10から出射する光量のムラは人間の眼に認識できる場合があるということである。
【0045】
図12は本発明の構成を示すデュアルセルの断面図である。図12において、バックライト400からの光が調光パネル20によって制御されるまでは図11と同じである。すなわち、調光パネル20において、露光ショット間の境界における、重複露光部40における遮光効果が大きいために、露光ショットの他の領域50におけるよりも、調光パネル20による光量の減少が大きくなっている。図12におけるsは露光ショットの重複幅である。
【0046】
図12において、液晶表示パネル10における露光ショット間の境界における重複露光部40の位置は、調光パネル20における露光ショット間の境界における重複露光部40の位置とは重複していない。したがって、図12の構成においては、図11のような、重複露光部40が2重に存在することによる、極端なパターン細りは存在しない。図12においては、3段階の矢印の太さのうち、図11のような最細の矢印は存在せず、やや細い矢印が2本存在している。
【0047】
つまり、図12においては、デュアルセルにおいても、液晶表示パネル10を出射する光量の差は、液晶表示パネル20が1枚の場合、あるいは、調光パネル20が1枚の場合と同じ光量差であるから、目視での輝度ムラ、あるいは表示ムラは実質的には生じないことになる。
【0048】
液晶表示パネル10における2重露光ショット部と調光パネル20の2重露光ショット部が重ならないということは、図12において、dが0よりも大きいということである。言い換えると、液晶表示パネル10における2重露光ショット部と調光パネル20の2重露光ショット部40の幅がsであるとした場合、液晶表示パネル10における2重露光ショット部40と調光パネル20の2重露光ショット部40の中心間距離がs以上であるということである。2重露光ショット部40の幅sは、ステッパーの移動精度以上に設定される。また、2重露光ショット部40の幅sは、表示パネル10及び調光パネル20の必要パターン精度によっても異なる。これらを勘案して、2重露光ショット部の幅sは、例えば2μm以上である。
【0049】
図12に示すように、理論上は、液晶表示パネル10と調光パネル20の2重露光ショットの間隔dはゼロ以上でよい。しかし、dがゼロに近づくと、2重露光ショットの幅sが広がったと同じような効果が生じ、これが表示ムラの原因になることもある。これらの事情を考慮すると、dの好ましい値は、sの10倍以上で、出来る限り大きな値にしたほうがよい。
【0050】
ところで、2重露光ショットの幅sに起因する表示ムラの幅は、回折や反射の影響によって、2重露光ショットの幅sよりも大きくなる。ここで、液晶表示パネル10と調光パネル20とで、露光ショットに起因する表示ムラが存在すると仮定した場合、液晶表示パネル10と調光パネル20における2重露光ショットの間隔と、液晶表示パネル10の表示ムラの中心と、調光パネル20の表示ムラの中心の間隔は、表示ムラの幅の2倍以上離れていることが好ましい。
【0051】
そうすると、液晶表示パネル10と調光パネル20における表示ムラの間隔は、図3に示す表示ムラ11の幅以上となる。したがって、平面的に視ても、液晶表示パネル10と調光パネル20における表示ムラが強調されて、デュアルセルおける表示ムラとなる現象は回避することが出来る。
【0052】
ところで、液晶表示パネル10も調光パネル20もマザー基板から分離されて形成される。露光はマザー基板の状態で行われる。図13は、液晶表示パネル10の、TFT基板が多数形成されたマザー基板1100における露光ショットの一例を示す平面図である。マザー基板1100には多数のTFT基板が形成されているが、図13では、4個分のTFT基板のみが記載されている。図13において、15が個々のTFT基板の境界である。露光ショット領域13は、TFT基板の面積よりも小さい。点線12は、露光ショット13の境界である。露光ショット13の大きさは、横方向(x方向)がsxであり、縦方向(y方向)がsyである。
【0053】
図14は、調光パネルTFT基板が多数形成されたマザー基板1200における露光ショット13の一例を示す平面図である。マザー基板1200には多数のTFT基板が形成されているが、図14では、4個分のTFT基板のみが記載されている。図14において、15が個々のTFT基板の境界である。露光ショット領域13は、TFT基板の面積よりも小さい。点線12は、露光ショット13の境界である。露光ショット13の大きさは、横方向(x方向)がsxであり、縦方向(y方向)がsyである。以上は図13と同じである。
【0054】
図14図13と異なる点は、各露光ショット13の位置である。図14において、露光ショット13の位置は、図13の露光ショット13の位置に対して、x方向にsx/2、y方向にsy/2だけずれている。つまり、液晶表示パネル10におけるショット境界12と調光パネル20におけるショット境界12が最も離れるような構成となっている。
【0055】
以上の説明では、液晶表示パネル10だけ、あるいは、調光パネル20だけの表示ムラであれば、例えば、図5乃至図8に示すような手段によって抑え込むことが出来るとしたが、これは、実用的に、人間の眼には、目立たないという意味であり、詳細な測定によれば、液晶表示パネル10だけ、あるいは、調光パネル20だけであっても、露光ショットに起因するムラは存在する。なお、この表示ムラは輝度ムラとして現れる場合が多い。
【0056】
本発明によれば、デュアルセルにおいても、表示ムラを実質的に抑え込むことが出来る。あるいは、デュアルセルにおける表示ムラを、液晶表示パネル10だけ、あるいは、調光パネル20だけの表示ムラ程度に抑え込むことが出来る。
【0057】
以上の説明では、液晶表示パネル10と調光パネル20の間で、露光ショット13の位置を、縦方向、横方向にいずれにもずらすとして説明したが、目的によっては、縦方向のムラ、あるいは、横方向のムラのみを対策する場合もある。この場合には、露光ショット13の位置を、縦方向、横方向のいずれかの方向をずらすということでもよい。
【符号の説明】
【0058】
10…液晶表示パネル、 11…表示ムラ、 12…露光ショット境界、 13…露光ショット領域、 15…セル(TFT基板)境界、 20…調光パネル、 31…第1偏光板、 32…第2偏光板、 33…第3偏光板、 34…第4偏光板、 40…重複露光領域、 41…コーナー部重複露光領域、 50…通常露光領域、 80…表示領域、 90…端子領域、 100…TFT基板、 101…走査線、 102…映像信号線、 103…画素、 105…画素電極、 150…シール材、 160…ドライバIC、 170…フレキシブル配線基板、 200…対向基板、 300…液晶層、 400…バックライト、 1100…液晶表示パネルのマザーTFT基板、 1200…調光パネルのマザーTFT基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9A
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図10A
図10B
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