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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081842
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】芝養生シート
(51)【国際特許分類】
   A01G 20/20 20180101AFI20240612BHJP
   D04H 1/541 20120101ALI20240612BHJP
   B32B 5/02 20060101ALI20240612BHJP
   B32B 7/05 20190101ALI20240612BHJP
【FI】
A01G20/20
D04H1/541
B32B5/02 C
B32B7/05
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195310
(22)【出願日】2022-12-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】594054520
【氏名又は名称】株式会社ユニチカテクノス
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】山根 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松山 裕
(72)【発明者】
【氏名】山名 道則
【テーマコード(参考)】
2B022
4F100
4L047
【Fターム(参考)】
2B022AB01
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK04B
4F100AK42B
4F100BA03
4F100DG03B
4F100DG04B
4F100DG07A
4F100DG07C
4F100DG12A
4F100DG12C
4F100DG15B
4F100DG20B
4F100EC03
4F100GB01
4F100JN01A
4F100JN01C
4L047AA27
4L047AB02
4L047AB03
4L047BA08
4L047BA09
4L047BB01
4L047BB06
4L047BB09
4L047CA03
4L047CA05
4L047CC15
(57)【要約】
【課題】 芝養生シートが芝やアンツーカーを摩擦しても、毛羽立ちにくく、毛羽が芝やアンツーカーに絡みにくい芝養生シートを提供する。
【解決手段】 この芝養生シートは、不織布1の表裏面に、被覆シート2,2が積層融着され貼合されてなる。不織布1は、芯成分がポリエチレンテレフタレートで鞘成分がポリエチレンよりなる芯鞘型複合長繊維群が無作為に集積されてなる。そして、鞘成分の軟化又は溶融によって、芯鞘型複合長繊維相互間が融着されてなる。被覆シート2は、割繊不織布を二枚重合し融着してなる。割繊不織布は、横断面が扁平で透明なポリプロピレン製線状体3,3,3・・・群で構成されてなる。被覆シート2,2を構成している線状体3,3,3・・・群の平坦面が、不織布1の表裏面と融着され貼合されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
短繊維群又は長繊維群が無作為に集積されてなる不織布の表裏面に、横断面が扁平な線状体群で構成されてなる被覆シートが積層されると共に、該不織布の該表裏面と該線状体群の平坦面とが融着することにより貼合一体化されてなる芝養生シート。
【請求項2】
不織布は、芯鞘型複合長繊維群が無作為に集積されてなり、該芯鞘型複合長繊維群相互間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着している請求項1記載の芝養生シート。
【請求項3】
芯鞘型複合長繊維の芯成分がポリエチレンテレフタレートであり、鞘成分がポリエチレンである請求項2記載の芝養生シート。
【請求項4】
被覆シートが扁平なポリオレフィン製線状体群で構成されてなる請求項1記載の芝養生シート。
【請求項5】
被覆シートは、扁平なポリオレフィン製線状体群が交差する態様で重合されてなる請求項4記載の芝養生シート。
【請求項6】
ポリオレフィン製線状体が透明である請求項4記載の芝養生シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保温性に優れた芝養生シートに関し、特に冬場の霜よけや凍結防止に有効な芝養生シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、天然芝(以下、単に「芝」という。)を保温し、冬場の霜よけや凍結防止等を目的として、芝の上に不織布を敷設することが行われている(非特許文献1)。不織布としては、短繊維群又は長繊維群が無作為に集積されてなるものが用いられている。かかる不織布は、短繊維相互間又は長繊維相互間に多数の空隙を保持しており、多量の空気を含むものであるため保温性に優れ、芝養生シートとして好適なものである。
【0003】
しかるに、不織布の表裏面は、短繊維群又は長繊維群が無作為に集積されているため、粗く滑らかではない。このため、芝の設置面積が広いと、不織布の敷設時又は除去時に芝を傷めるということがあった。すなわち、不織布の敷設時又は除去時に、作業者が不織布を引きずることがあり、この時に、不織布の表面又は裏面と芝が摩擦し、不織布面が毛羽立って、毛羽が芝に絡んで芝を傷めるということがあった。また、アンツーカーと芝を具えた競技場では、芝に不織布を敷設又は除去する際、アンツーカーと不織布の表面又は裏面が摩擦し、不織布面が毛羽立って、毛羽がアンツーカーに絡んで陸上競技に支障をきたすということがあった。
【0004】
【非特許文献1】https://greensnap.JP/article/9719(丸付き数字6の不織布で養生するの項を参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、芝養生シートが芝やアンツーカーを摩擦しても、毛羽立ちにくく、毛羽が芝やアンツーカーに絡みにくい芝養生シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、不織布の表裏面に特定の被覆シートを積層貼合一体化することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、短繊維群又は長繊維群が無作為に集積されてなる不織布の表裏面に、横断面が扁平な線状体群で構成されてなる被覆シートが積層されると共に、該不織布の該表裏面と該線状体群の平坦面とが融着することにより貼合一体化されてなる芝養生シートに関するものである。
【0007】
本発明で用いる不織布1は、短繊維群又は長繊維群が無作為に集積されてなるものである。短繊維としては、従来公知のものが用いられ、たとえば、ポリエステル短繊維、ポリプロピレン短繊維又は芯鞘型複合短繊維等が用いられる。長繊維としても、従来公知のものが用いられ、たとえば、ポリエステル長繊維、ポリプロピレン長繊維又は芯鞘型複合長繊維等が用いられる。本発明においては、摩擦によって毛羽立ちにくく、強度的にも優れた長繊維を用いるのが好ましい。短繊維又は長繊維の繊度は、2~20デシテックス程度である。また、不織布の目付は、目付10~30g/m2程度である。
【0008】
短繊維相互間又は長繊維相互間は、従来公知の方法で結合されているか又は絡合されて、所定の強力を持つ不織布1となる。本発明においては、短繊維相互間又は長繊維相互間が融着されているのが好ましい。すなわち、芯成分が高融点重合体よりなり、鞘成分が低融点重合体よりなる芯鞘型複合短繊維又は芯鞘型複合長繊維を用い、鞘成分のみを軟化又は溶融させることにより、短繊維相互間又は長繊維相互間の交点を融着させて結合するのが好ましい。この場合においても、摩擦によって毛羽立ちにくい芯鞘型複合長繊維を用いるのが好ましい。かかる不織布1は、融着成分である鞘成分を具えているため、ホットメルト接着剤等を使用することなく、被覆シート2と融着させて貼合一体化しうるのである。なお、芯鞘型複合短繊維又は芯鞘型複合長繊維の芯成分としては、特に耐候性に優れているポリエチレンテレフタレートを用いるのが好ましい。また、鞘成分としては、ポリエチレン又はポリプロピレン等のポリオレフィンを用いるのが好ましい。
【0009】
不織布1の表裏面には、被覆シート2,2が積層融着され貼合されている。被覆シート2は、横断面が扁平な線状体3,3,3・・・群で構成されている。横断面が扁平な線状体3とは、平坦な表裏面を持つ線状体3である。具体的には、横断面が四辺形である線状体3や横断面が扁平な楕円形である線状体等が挙げられる。図1乃至図3に示した線状体3は、横断面が四辺形のものであり、表裏面が平坦面となっている。線状体3の厚みは5~20μm程度であり、線状体3の幅は0.1~2.0mm程度である。被覆シート2は、たとえば、縦方向に走行する線状体3,3,3・・・群と、縦方向に走行する線状体3,3間を繋ぐ横方向又は斜め方向に走行する線状体3,3,3・・・群とで構成されている。かかる被覆シート2として、合成樹脂製フィルムを割繊及び延伸することにより得られる割繊不織布を用いることができる。また、横断面が扁平なフラットヤーンを線状体として採用し、フィラットヤーンを経糸及び横糸として平織組織等で織成することにより得られるフラットヤーン織物を用いることもできる。
【0010】
被覆シート2は、その縦方向、横方向又は斜め方向の強力を向上させるため、割繊不織布等を二枚以上重合させた態様で用いることもできる。たとえば、図2に示した被覆シート2は、二枚の割繊不織布を重合したものであり、一方の割繊不織布の線状体3,3,3・・・群と他方の割繊不織布の線状体3,3,3・・・群3とがほぼ直角に交差して重合されてなるものである。図3に示した被覆シート2も、二枚の割繊不織布を重合したものであるが、一方の割繊不織布の線状体3,3,3・・・群と他方の割繊不織布の線状体3,3,3・・・群とが斜めに交差して重合されてなるものである。重合させて用いる場合、割繊不織布同士を融着させて用いるのが好ましい。被覆シート2の目付は、約5~35g/m2程度である。
【0011】
線状体3は合成樹脂製であるのが好ましく、特にポリオレフィン製であるのが好ましい。不織布1を構成する繊維として、鞘成分がポリオレフィン製である芯鞘型複合短繊維又は芯鞘型複合長繊維を用いた場合、不織布1の表裏面と線状体3の平坦面とが、いずれもポリオレフィン製となっており、融着しやすいからである。また、線状体3は、透明であるのが好ましい。透明である方が透光性が高くなり、芝の光合成を阻害しにくいので、芝養生シートとして好適である。また、不織布1及び/又は被覆シート2は、黒色や緑色等に着色されていてもよい。冬季における保温効果が期待でき、美感も良いためである。
【0012】
被覆シート2,2は、不織布1の表裏面に貼合されている。表裏面に貼合されている理由は、以下のとおりである。すなわち、不織布1は目付10~30g/m2程度の薄手であって透けているため、目視上、被覆シート2がいずれの面に貼合されているか判別しにくく、芝養生シートの敷設時又は除去時に、不織布1面が芝やアンツーカーを摩擦する恐れがあるからである。たとえば、不織布1の表面のみに被覆シート2が貼合されている場合、芝養生シートの敷設時又は除去時に、被覆シート2面が芝やアンツーカーを摩擦すれば、不織布1が毛羽立つのを防止しうるが、不織布1面が芝やアンツーカーを摩擦すると、不織布1が毛羽立って、毛羽が芝を傷めたりアンツーカーに絡むのである。したがって、不織布1の表裏面に被覆シート2,2が貼合されていると、芝養生シートの敷設時又は除去時に、どのような取り扱いをしても、不織布1の毛羽立ちを防止でき、毛羽が芝に絡んで芝を傷めたり、毛羽がアンツーカーに絡んで陸上競技に支障をきたすことを防止しうるのである。なお、不織布1の表面に貼合される被覆シート2と、不織布1の裏面に貼合される被覆シート2とは、同一のものであっても異種のものであってもよい。
【0013】
本発明に係る芝養生シートは、一般的に、長尺物として提供される。たとえば、幅が2mで長さが100~500m程度の長尺物として提供される。かかる長尺物の重量は、芝養生シートの目付[(不織布の目付)+(被覆シートの目付)×2]が約30~70g/m2 であるから、6kg~70kgとなる。長尺物の重量が数十kgを超え、これが芝やアンツーカーを摩擦すると、不織布1が毛羽立ちやすく、毛羽が芝に絡んで芝を傷めたり、毛羽がアンツーカーに絡んで陸上競技に支障をきたす恐れがある。しかるに、本発明に係る芝養生シートは、その表裏面が線状体3,3,3・・・の平坦面となっている。したがって、芝やアンツーカーを摩擦しても、不織布1が毛羽立ちにくく、芝を傷めたり陸上競技に支障をきたすのを防止しうるのである。また、本発明に係る芝養生シートの端部に、鳩目を設けておくことが好ましい。鳩目を通してピンを土壌に固定し、芝養生シートが風等によって捲くれ上るのを防止しうるからである。
【0014】
本発明に係る芝養生シートは、芝を具えたあらゆる施設で用いることができる。特に、芝とアンツーカーを具えた陸上競技場やテニス競技場において、芝を使用しないとき、特に冬場に芝上に敷設して用いることができる。また、芝よりなるゴルフ場において、冬場に芝上に敷設して用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る芝養生シートは、不織布の表裏面が扁平な線状体群で形成されているので、芝養生シートのいずれの面が芝やアンツーカーを摩擦しても、線状体群の平坦面が芝やアンツーカーを摩擦することになる。したがって、不織布が毛羽立ちにくく、毛羽によって芝を傷めたり、毛羽がアンツーカーに絡んで陸上競技に支障をきたすのを防止しうるという効果を奏する。
【実施例0016】
実施例
不織布として、芯成分がポリエチレンテレフタレートよりなり鞘成分がポリエチレンよりなる芯鞘型複合長繊維群が集積され、芯鞘型複合長繊維相互間が鞘成分の軟化又は溶融によって融着されてなる、目付15g/m2の不織布(ユニチカ株式会社製、登録商標「パスライト」)を準備した。
一方、被覆シートとして、ポリプロピレンフィルムを割繊及び延伸することにより得られる割繊不織布の二枚を直交する態様で積層してなる、目付18g/m2の被覆シート(ENEOSテクノマテリアル株式会社製、登録商標「CLAF」)を準備した。
そして、不織布の表裏面に被覆シートを積層融着し貼合一体化して、目付51g/m2の芝養生シートを得た。
【0017】
比較例1
不織布として、実施例で用いたものを準備した。
被覆シートとして、ポリプロピレンフィルムを割繊及び延伸することにより得られる割繊不織布の二枚を直交する態様で積層してなる、目付25g/m2の被覆シート(ENEOSテクノマテリアル株式会社製、登録商標「CLAF」)を準備した。
そして、不織布の表面に被覆シートを積層融着し貼合一体化して、目付40g/m2の芝養生シートを得た。
【0018】
比較例2
不織布として、実施例で用いたものを準備した。
被覆シートとして、幅約1mmのポリエチレン製フラットヤーンを経糸及び横糸に用い、経糸密度5本/インチ及び横糸密度5本/インチの平織物よりなる、目付15g/m2の被覆シートを準備した。
そして、不織布の表面に被覆シートを積層融着し貼合一体化して、目付30g/m2の芝養生シートを得た。
【0019】
実施例、比較例1及び2の芝養生シートの表裏面に対し、摩耗試験を行った。摩耗試験は摩耗輪CS-17を用い、荷重100gfを負荷し、摩耗回数50回で毛羽立った浮き毛羽の長さを測定した。その結果、実施例に係る芝養生シートの表裏面に浮き毛羽は観察されず、浮き毛羽の長さは表裏面共に0.0mmであった。一方、比較例1に係る芝養生シートは、表面に浮き毛羽は観察されなかったけれども裏面には浮き毛羽が観察され、表面の浮き毛羽の長さは0.0mmであり、裏面の浮き毛羽の長さは7.1mmであった。また、比較例2に係る芝養生シートも、表面に浮き毛羽は観察されなかったけれども裏面には浮き毛羽が観察され、表面の浮き毛羽の長さは0.0mmであり、裏面の浮き毛羽の長さは13.9mmであった。
【0020】
したがって、実施例に係る芝養生シートは、どのような取り扱いをしても、すなわち、芝養生シートの表面及び裏面が芝やアンツーカーを摩擦しても、毛羽立ちがなく、毛羽によって芝が傷んだり、アンツーカーに毛羽が絡むことがない。一方、比較例1及び2に係る芝養生シートは、取り扱い時において、芝養生シートの裏面が芝やアンツーカーを摩擦すると、芝を傷めたり、アンツーカーに芝が絡むことになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一例に係る芝養生シートの模式的側面図である。
図2】本発明の他の例に係る芝養生シートの模式的側面図である。
図3】本発明の他の例に係る芝養生シートの模式的側面図である。
図4】実施例に係る芝養生シートの平面写真である。
【符号の説明】
【0022】
1 不織布
2 被覆シート
3 線状体
図1
図2
図3
図4