(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081845
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】硬化性樹脂組成物、硬化物、硬化物からなる積層体およびその解体方法
(51)【国際特許分類】
C08G 73/00 20060101AFI20240612BHJP
C09J 201/00 20060101ALI20240612BHJP
C09J 7/30 20180101ALI20240612BHJP
C09D 201/00 20060101ALI20240612BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C08G73/00
C09J201/00
C09J7/30
C09D201/00
B32B7/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195315
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000132404
【氏名又は名称】株式会社スリーボンド
(72)【発明者】
【氏名】古川 聖純
【テーマコード(参考)】
4F100
4J004
4J038
4J040
4J043
【Fターム(参考)】
4F100AA01B
4F100AH02B
4F100AH03B
4F100AK25B
4F100AT00A
4F100AT00C
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4J004AA10
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4J004AB07
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4J043QC01
4J043QC02
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4J043RA01
4J043SA24
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4J043TB01
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4J043UA052
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4J043UA772
4J043UA782
4J043UA791
4J043ZB01
4J043ZB02
(57)【要約】
【課題】
本発明は優れた接着強度と酸化剤による易解体性を有する硬化物を形成することができ、プライマーとして被着体に前処理することで、種々の接着剤、シール剤、コーティング剤を使用した場合においても優れた解体性を付与できる硬化性樹脂組成物に関する。
【解決手段】
以下の(A)および(B)を含み、エポキシ樹脂を含まない硬化性樹脂組成物。
(A)成分:一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物。
(B)成分:ヒドラジド化合物
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の(A)および(B)を含み、エポキシ樹脂を含まない硬化性樹脂組成物。
(A)成分:一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物
(B)成分:ヒドラジド化合物
【請求項2】
前記(A)成分が(メタ)アクリレートモノマーのみからなる請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)成分が2官能(メタ)アクリレートおよび/または3官能(メタ)アクリレートである請求項1または2のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
更に(C)成分として無機充填材を含む請求項1または2のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の融点が100~300℃である請求項1または2のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を1つの被着体に塗布して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させた積層体。
【請求項7】
請求項1に記載の硬化性樹脂組成物を2つの被着体の一方または両方に塗布して、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域を貼り合わせた後、前記硬化性樹脂組成物を硬化させた積層体。
【請求項8】
2つの被着体のうち、少なくとも一方が請求項6に記載の積層体であり、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域を接着剤で貼り合わせて硬化させた積層体。
【請求項9】
請求項8に記載の接着剤が、熱硬化性樹脂組成物、湿気硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物からなる群から少なくとも1以上選択される組成物を含む積層体。
【請求項10】
請求項6に記載の積層体において、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域にコーティング剤を塗布して硬化させた積層体。
【請求項11】
請求項10に記載のコーティング剤が、熱硬化性樹脂組成物、湿気硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物からなる群から少なくとも1以上選択される組成物を含む積層体。
【請求項12】
請求項6~11のいずれか一項に記載の積層体を酸化剤を含む水溶液に浸漬して、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を分解させて解体する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤により易解体性を有する硬化物を形成する硬化性樹脂組成物およびその硬化物からなる積層体およびその解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤は異なる2以上の部材を接着するために使用され、一般的に高い接着強度が求められる。しかしながら、近年では資源の再利用の観点から、使用後に接着面を解体して部材の再利用を可能とする解体性接着剤が必要とされている。(特許文献1)従来の解体性接着剤は、高温での加熱を必要とするものや、研究報告例は存在するものの、実用化された解体性接着剤はほとんど確認されていない。その原因として、接着剤において接着強度と解体性は背反の関係にあるため、技術として容易ではないことや解体性を出すために特殊な構造を接着剤の原料の分子中に組み込むことが必要であり、製造コストが高くなってしまうという問題があった。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特再公表WO2007/083566号
【特許文献2】特開2012-7036号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
接着剤に解体性を持たせるためには接着剤自体が解体性を有することが必要であり、従来接着剤として用いられているエポキシ樹脂やアクリル樹脂、シリコーン樹脂など様々な樹脂の構造を変更することは多大な労力を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、優れた接着強度と解体性を併せ持つ硬化物を形成する硬化性樹脂組成物であり、さらにエポキシ樹脂やアクリル樹脂、変成シリコーン樹脂などからなる異なる接着剤に対して硬化性樹脂組成物をプライマーとして被着体に前処理することで解体性を付与する手法を見出した。
【0006】
本発明の要旨を次に説明する。
[1]以下の(A)および(B)を含み、エポキシ樹脂を含まない硬化性樹脂組成物。
(A)成分:一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物。
(B)成分:ヒドラジド化合物
【0007】
[2]前記(A)成分が(メタ)アクリレートモノマーのみからなる[1]に記載の硬化性樹脂組成物。
【0008】
[3]前記(A)成分が2官能(メタ)アクリレートおよび/または3官能(メタ)アクリレートである[1]または[2]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0009】
[4]更に(C)成分として無機充填材を含む[1]または[2]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0010】
[5]前記(B)成分の融点が100~300℃である[1]または[2]のいずれか一項に記載の硬化性樹脂組成物。
【0011】
[6][1]に記載の硬化性樹脂組成物を1つの被着体に塗布して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させた積層体。
【0012】
[7][1]に記載の硬化性樹脂組成物を2つの被着体の一方または両方に塗布して、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域を貼り合わせた後、前記硬化性樹脂組成物を硬化させた積層体。
【0013】
[8]2つの被着体のうち、少なくとも一方が[6]に記載の積層体であり、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域を接着剤で貼り合わせて硬化させた積層体。
【0014】
[9][8]に記載の接着剤が、熱硬化性樹脂組成物、湿気硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物からなる群から少なくとも1以上選択される組成物を含む積層体。
【0015】
[10][6]に記載の積層体において、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域にコーティング剤を塗布して硬化させた積層体。
【0016】
[11][10]に記載のコーティング剤が、熱硬化性樹脂組成物、湿気硬化性樹脂組成物および光硬化性樹脂組成物からなる群から少なくとも1以上選択される組成物を含む積層体。
【0017】
[12][6]~[11]のいずれか一項に記載の積層体を酸化剤を含む水溶液に浸漬して、前記硬化性樹脂組成物の硬化物を分解させて解体する方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明の硬化性樹脂組成物は、硬化させることで、優れた接着強度と酸化剤による易解体性を発現し、さらにはプライマーとして被着体に前処理し、接着剤やシール剤、コーティング剤と併用することで、接着剤やシール剤、コーティング剤を用いた積層体においても解体性を付与することができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の詳細を次に説明する。なお、本明細書において「X~Y」は、その前後に記載される数値(XおよびY)を下限値および上限値として含む意味で使用し、「X以上Y以下」を意味する。
【0020】
本発明の(A)成分は一分子中に(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物である。本明細書において、(メタ)アクリロイル基を有する化合物は(メタ)アクリレートのことを指す。(メタ)アクリロイル基は、(メタ)アクリロイル基を(メタ)アクリロイルオキシ基の形態として有していてもよい。また「(メタ)アクリロイル」との語は、アクリロイルおよびメタクリロイルの双方を包含する。よって、例えば、「(メタ)アクリロイル基」との語は、アクリロイル基(H2C=CH-C(=O)-)およびメタクリロイル基(H2C=C(CH3)-C(=O)-)の双方を包含する。また、同様に、「(メタ)アクリレート」との語は、アクリレートおよびメタクリレートの双方を包含し、「(メタ)アクリル」との語は、アクリルおよびメタクリルの双方を包含し、「(メタ)アクリルアミド」との語は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの双方を包含する。
【0021】
本発明で使用される前記(A)成分の(メタ)アクリロイル基を1以上有する化合物としては(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。本明細書において(メタ)アクリレートオリゴマーとは、(メタ)アクリル基を1以上有し、モノマー単位((メタ)アクリレートモノマー以外のモノマー単位を含む)が2~数十程度繰り返された重合体であって、重量平均分子量が1000(0.1万)以上であるものをいう。酸化剤による解体性の観点から、(A)成分は(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、(メタ)アクリレートモノマーのみからなることがより好ましく、アクリレートモノマーのみからなることが最も好ましい。
【0022】
前記(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、分子内にエステル結合を有するエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル基を有するエーテル(メタ)アクリレートオリゴマー、ウレタン結合を有するウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、その主骨格はビスフェノールA、ノボラックフェノール、ポリブタジエン、水添ポリブタジエン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリカーボネート骨格、ヒマシ油骨格、イソプレン骨格、水添イソプレン骨格、アクリル重合体などが挙げられる。
【0023】
前記(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能(メタ)アクリレートモノマーや多官能(メタ)アクリレートモノマ-が挙げられるが、接着強度と解体性の両立の観点から、(A)成分は多官能(メタ)アクリレートモノマーであることが好ましい。
【0024】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ブトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロキシオキシエチルアシッドフォスフェート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸フォスフェート、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。単官能(メタ)アクリレートには、酸性基を有する単官能(メタ)アクリレートも挙げられる。酸性基を有する単官能(メタ)アクリレートとしては、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸やリン酸などを指す。分子内に(メタ)アクリロイル基を有するカルボン酸としては、(メタ)アクリル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルコハク酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルマレイン酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルマレイン酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルマレイン酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルヘキサヒドロフタル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルヘキサヒドロフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオシエチルフタル酸、3-(メタ)アクリロイルオシプロピルフタル酸、4-(メタ)アクリロイルオシブチルフタル酸などが、分子内に(メタ)アクリロイル基を有するリン酸としては、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートアシッドホスフェート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートアシッドホスフェートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0025】
前記単官能(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、特に限定されないが、例えばライトアクリレートIBX-A(共栄社化学株式会社製)、ACMO(KJケミカルズ株式会社製)等が挙げられる。リン酸基を有する(メタ)アクリレートの市販品としては、例えばライトエステルP-1M(共栄社化学株式会社製)、カヤマーPM-1(日本化薬株式会社製)等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。
【0026】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーとしては、例えば、トリエチレングルコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#200ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#600ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール#1000ジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#400ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール#700ジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1.5ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのEO付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのPO付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、2-ヒドロキシ-3-アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシ-3-メタクリル-プロピルアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ビス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エトキシ化ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。中でも、接着強度と解体性を両立する観点から、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から1以上選択される化合物を含むことが好ましく、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートからなる群から1以上選択される化合物を含むことがより好ましく、ポリエチレングリコールジアクリレートを含むことが最も好ましい。
【0027】
前記多官能(メタ)アクリレートモノマーの市販品としては、特に限定されないが、ライトアクリレート9EG-A、ライトアクリレート14EG-A、TMP-A、DCP-A(共栄社化学株式会社製)、NKエステルA-200、A-400、A-600、A-1000、A-DCP、A-TMPT等が挙げられる。
【0028】
優れた接着強度と解体性を両立する観点から、(A)成分は2官能および/または3官能の(メタ)アクリレートモノマーを含むことが好ましく、2官能および3官能の(メタ)アクリレートモノマーを両方含むことがより好ましく、2官能および3官能の(メタ)アクリレートモノマーのみ含むことが最も好ましい。2官能および3官能の(メタ)アクリレートモノマーを両方含む場合、優れた接着強度と解体性を両立する観点からモル比で2官能:3官能=9:1~1:9が好ましく、5:5~1:9がより好ましく3:7~1:9が最も好ましい。
【0029】
本発明の(B)成分は、ヒドラジド化合物である。本明細書においてヒドラジド化合物とはH2NHNC(=O)-の構造を分子中に有する化合物のことである。(A)成分を(B)成分を用いて硬化させることで、酸化剤により容易に解体できる硬化物を得ることができる。(B)成分としては例えば、アセトヒドラジド、酢酸ヒドラジド、ベンゾヒドラジド、安息香酸ヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、ドデカンジオヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、サリチル酸ヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド、こはく酸ジヒドラジドなどが挙げられるが、接着強度と解体性を両立する観点からジヒドラジド化合物であることが好ましく、分子中に芳香環および/または-(CH2)n-の繰り返し単位(n=4~10の整数)をもつジヒドラジド化合物がより好ましく、芳香環を有するジヒドラジド化合物が最も好ましい。これらは単独で用いられてもよく、または2種以上併用されてもよい。硬化性と高い接着強度を発現する観点から、(B)成分の融点は、100~300℃が好ましく、150~280℃がより好ましく、200℃~250℃が最も好ましい。
【0030】
前記(B)成分の市販品としては、特に限定されないが、ADH、SDH、DDH、IDH、SAH(大塚化学株式会社製)などが挙げられる。
【0031】
前記(B)成分は(A)成分100質量部に対して10~200質量部含むことが好ましく、20~150質量部が好ましく、最も好ましくは30~100質量部である。10~200質量部であれば、接着強度と解体性に優れた硬化性樹脂組成物を得ることができる。
【0032】
本発明では更に(C)成分として無機充填材を含むことが好ましい。(C)成分を含有することで、高い接着強度を実現することができる。(C)成分は粉体であることが好ましく、(C)成分の具体例としては、ガラス、シリカ、アルミナ、マイカ、セラミックス、シリコーンゴム粉体、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化アルミ、カーボン粉、カオリンクレー、ウォラストナイト、アルミなどの鉱物等が挙げられる。(C)成分の形状は特に限定されないが、球状、針状などが挙げられる。これらは、それぞれ単独で用いることも、また2種以上を混合して用いても良い。(C)成分のなかでも解体性を低下させることなく、接着強度を向上させるという観点から、シリカ、炭酸カルシウム、タルクが好ましく、シリカ、炭酸カルシウムがより好ましく、シリカが最も好ましい。シリカを使用する場合、酸化剤である次亜塩素酸水溶液との親和性により解体性を向上させる観点から表面にシラノール基が多く残存している表面処理が無処理の親水性シリカを用いることが好ましい。
【0033】
前記(C)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部含むことが好ましく、より好ましくは2~50質量部であり、最も好ましくは3~20質量部である。1~100質量部であることで、解体性を低下させずに、接着強度を向上させることができる。
【0034】
<任意成分>
本発明の硬化性樹脂組成物には、本発明の特性を損なわない範囲において有機充填材、着色剤、可塑剤、シランカップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤などの添加剤を含んでもよい。
【0035】
前記有機充填剤としては、ゴム、エラストマー、プラスチック、重合体(または共重合体)などから構成される有機物の粉体であればよい。また、コアシェル型などの多層構造を有する有機フィラーでもよい。有機充填剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1~50質量部が好ましく、より好ましくは5~30質量部である。
【0036】
前記着色剤としては特に限定されないが、例えば、酸化チタン、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩等の無機顔料;アゾ顔料、フタロシアニン顔料、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバンスロン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、ジケトピロロピロール顔料、キノナフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリン顔料、カーボンブラック等の有機顔料等が挙げられる。着色剤の配合量は(A)成分100質量部に対して0.01~30質量部が好ましい。
【0037】
前記可塑剤としては特に限定されないが、例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ(2-エチルヘキシル)フタレート、ブチルベンジルフタレート、オレイン酸ブチル、ジエチレングリコールジベンゾエート、トリエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。また、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、フタル酸等の2塩基酸と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール等の2価アルコールから得られるポリエステル系可塑剤等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。可塑剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して1~100質量部が好ましい。
【0038】
前記シランカップリング剤としては特に限定されないが、例えば、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等のビニル基含有シランカップリング剤、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルメチルジプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルジメチルモノプロピルオキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリル基含有シランカップリング剤、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ基含有シランカップリング剤、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。シランカップリング剤の配合量は、本発明の(A)成分100質量部に対して0.1~20質量部であることが好ましい。0.1~20質量部であれば、本発明の特性を損なう恐れがない。
【0039】
本発明の硬化性樹脂組成物はエポキシ樹脂を含まない。本明細書におけるエポキシ樹脂とは、一分子中にグリシジル基を1以上有する化合物である。エポキシ樹脂を含むと、グリシジル基が(B)成分と反応してしまい、硬化物が解体性を発現しない可能性があるため好ましくない。
【0040】
本発明の硬化性樹脂組成物は任意の条件で加熱硬化し、硬化物を形成する。得られた硬化物は酸化剤により低温で容易に分解するため、前記硬化性樹脂組成物自体を接着剤、シール剤、コーティング剤として使用した後、酸化剤を用いて容易に解体することが可能である。
【0041】
本発明の硬化性樹脂組成物自体を接着剤、シール剤として用いる場合、2つの被着体の一方または両方に塗布して、前記硬化性樹脂組成物が塗布された領域を貼り合わせた後、前記硬化性樹脂組成物を硬化させることで、解体性を有する積層体を得ることができる。
【0042】
本発明の硬化性樹脂組成物自体をコーティング剤として用いる場合、被着体に塗布して、前記硬化性樹脂組成物を硬化させることで、解体性を有する積層体を得ることができる。
【0043】
本発明の硬化性樹脂組成物を被着体へ塗布する方法としては、公知の接着剤やシール剤を塗布する方法と同様の手法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコート、刷毛塗りなどの方法を用いることができる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物は、塗布性の観点から25℃で液状であることが好ましい。
【0044】
本発明の硬化性樹脂組成物は加熱硬化により解体性を有する硬化物を形成する。加熱装置としては、熱風乾燥炉、遠赤外線ヒータ、ホットプレートなどが挙げられるが、これらに限定されない。接着強度を発現させる観点から、加熱温度は100~200℃が好ましい。加熱時間は0.1秒~5時間が好ましく、1秒~3時間がより好ましく、5秒~2時間が最も好ましい。
【0045】
本発明の硬化性樹脂組成物は被着体にプライマーとして前処理することで、前記硬化性樹脂組成物以外の接着剤やシール剤、コーティング剤を使用した積層体においても解体性を付与することができる。本明細書におけるプライマーとは接着剤やシール剤、コーティング剤を塗布する前に被着体に表面処理するために用いられるものを指す。なお、本発明の硬化性樹脂組成物はプライマーとして使用される場合において接着剤、シール剤、コーティング剤の硬化形態に左右されないという利点を有する。接着剤、シール剤、コーティング剤の硬化形態としては、例えば、湿気硬化性、嫌気硬化性、加熱硬化性、光硬化性、二液混合硬化性、溶剤揮散硬化性など様々な硬化形態が挙げられるが、湿気硬化性、加熱硬化性、光硬化性の接着剤やシール剤、コーティング剤に好適に使用できる。なお、本発明の硬化性樹脂組成物をプライマーとして使用する場合は、解体したい部材の解体したい面積に対して50%以上前処理されていることが好ましく、70%以上前処理されていることが好ましく、100%前処理されていることが好ましい。
【0046】
前記加熱硬化性、光硬化性を有する接着剤、シール剤、コーティング剤の具体例としては、例えば、硬化性ビニル系重合体、硬化性ポリエーテル、硬化性ポリエステル、硬化性ポリウレタン、硬化性ポリウレア、硬化性フッ素ポリマー、硬化性ポリオルガノシロキサン、硬化性エポキシ等が挙げられる。
【0047】
前記接着剤、シール剤およびコーティング剤は、硬化形態に応じて種々の官能基を1以上有する化合物を含む。例えば(メタ)アクリロイル基、アリル基、ヒドロシリル基、グリシジル基、加水分解性シリル基、シラノール基、メルカプト基、アミノ基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、シアネート基、酸無水物基、フェノール基、イソシアヌルレート基などの官能基を有する化合物が挙げられる。なかでも、被着体や基材との接着強度に優れるという観点から、官能基を2以上有するものが好ましく、(メタ)アクリロイル基、アリル基、グリシジル基、加水分解性シリル基、イソシアネート基を有する化合物を含むことが好ましく、(メタ)アクリロリル基、グリシジル基、加水分解性シリル基を有する化合物を含むことがより好ましい。
【0048】
前記加水分解性シリル基とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基等のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;イソププロペニルオキシ基、イソブテニルオキシ基、1-エチル-2-メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、シクロペンタノキシム基、シクロヘキサノキシム基等のケトオキシム基;N-メチルアミノ基、N-エチルアミノ基、N-プロピルアミノ基、N-ブチルアミノ基、N,N-ジメチルアミノ基、N,N-ジエチルアミノ基、N-シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;N-メチルアセトアミド基、N-エチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基等のアミド基;N,N-ジメチルアミノオキシ基、N,N-ジエチルアミノオキシ基等のアミノオキシ基等を挙げることができる。
【0049】
前記接着剤、シール剤およびコーティング剤には、本発明の特性を損なわない範囲で架橋剤、触媒、硬化剤、着色剤、充填剤、難燃剤、希釈剤、可塑剤、酸化防止剤、消泡剤、カップリング剤、レベリング剤、レオロジーコントロール剤などを含んでもよい。
【0050】
本発明の硬化性樹脂組成物をプライマーとして使用し、接着剤やシール剤を用いる場合、2つの被着体の一方または両方に硬化性樹脂組成物を塗布し、加熱硬化させ、接着剤もしくはシール剤を塗布し、任意の条件で硬化させることで、解体性を有する積層体を得ることができる。なお、硬化性樹脂組成物が2つの被着体の一方にプライマーとして処理されている場合、硬化前の接着剤またはシール剤は、プライマー処理面と接触していれば良く、接着剤またはシール剤は硬化性樹脂組成物が塗布された被着体に塗布して硬化して貼り合わせてもよく、塗布されていない被着体に塗布して貼り合わせて接触させてもよい。
【0051】
本発明の硬化性樹脂組成物をプライマーとして使用し、コーティング剤を用いる場合、硬化性樹脂組成物を1つの被着体に塗布し、任意の条件で硬化させ、硬化性樹脂組成物が塗布された領域に接着剤またはシール剤を塗布し、接着剤またはシール剤を任意の条件で硬化させることで、解体性を有する積層体を得ることができる。
【0052】
本発明の硬化性樹脂組成物をプライマーとして前処理した後に被着体や基材に接着剤、シール剤およびコーティング剤を塗布する方法としては公知の手法が用いられる。例えば、自動塗布機を用いたディスペンシング、スプレー、インクジェット、スクリーン印刷、グラビア印刷、ディッピング、スピンコートなどの方法を用いることができる。なお、本発明の接着剤、シール剤およびコーティング剤は、塗布性の観点から25℃で液状であることが好ましい。
【0053】
前記接着剤、シール剤およびコーティング剤の硬化方法としては、前記接着剤、シールおよびコーティング剤の硬化形態に応じて、任意の条件を設定することができる。例えば、加熱硬化性の場合、50℃~300℃で硬化させることが好ましく、70℃~200℃で硬化させることがさらに好ましい。加熱硬化の場合の硬化時間は0.1~200分が好ましく、1~100分がさらに好ましい。光硬化性の場合、光源は特に限定されず、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ブラックライトランプ、マイクロウェーブ励起水銀灯、メタルハライドランプ、ナトリウムランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、LED、蛍光灯、太陽光、電子線照射装置等が使用できる。照射量は5~50kJ/m2が好ましく、7~40kJ/m2がさらに好ましい。湿気硬化性の場合、10~50℃で硬化させることが好ましく、湿度は30~80%が好ましい。湿気硬化性の場合の硬化時間は1日~2週間が好ましく、3日~1週間がより好ましい。
【0054】
本発明の硬化性樹脂組成物を用いた積層体は任意の条件下で酸化剤と接触することで解体が可能である。本発明における好適な解体温度は安全性の観点から5~70℃が好ましく、10~60℃がより好ましく、20~50℃が最も好ましい。解体のために必要とされる酸化剤との接触時間は特に限定されないが、10秒~24時間が好ましく1分~24時間がより好ましく、30分~20時間が最も好ましい。
【0055】
前記酸化剤としては、例えば、塩素、臭素、過酸化水素水または次亜塩素酸もしくはその塩などが挙げられるが、汎用性の観点から、次亜塩素酸塩の水溶液を用いることが好ましく、次亜塩素酸ナトリウムの水溶液を用いることがより好ましい。
【0056】
<被着体>
本発明の硬化性樹脂組成物を適用できる被着体の種類は特に限定されないが、金属やプラスチック、ゴム等が挙げられる。金属としては例えば、鉄、アルミ、SUS、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、金、銀、銅、チタンなどが挙げられる。プラスチックとしては例えば、繊維強化プラスチック(FRP)、ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)、ポリアクリル、ポリエステル、ポリアミド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、6ナイロン、6,6-ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンサルファイド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレン、ポリプロピレンなどが挙げられる。ゴムとしては例えば、ニトリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、EPDMなどが挙げられる。中でも金属は一般的に接着強度が発現しやすいため、通常解体するのは困難であるが、本発明の硬化性樹脂組成物を用いることで容易に解体することが可能であることから好適である。
【0057】
<用途>
本発明の硬化性脂組成物は単独でも使用でき、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、変成シリコーン樹脂などからなる硬化形態に左右されない様々な接着剤、シール剤およびコーティング剤等と併せて使用できるため、多種多様な用途に適用可能である。適用できる具体的な用途としては、自動車用のスイッチ部分、ヘッドランプ、エンジン内部品、電装部品、駆動エンジン、ブレーキオイルタンク、フロントフード、フェンダー、ドアなどのボディパネル、ウインドウ等の接着、封止、注型、コーティング等;電子材料分野では、フラットパネルディスプレイ(液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、発光ダイオード表示装置、フィールドエミッションディスプレイ)や、ビデオディスク、CD、DVD、MD、ピックアップレンズ、ハードディスク等の接着、封止、注型、コーティング等;電池分野では、リチウム電池、リチウムイオン電池、マンガン電池、アルカリ電池、燃料電池、シリコン系太陽電池、色素増感型電池、有機太陽電池等の接着、封止、コーティング等;光学部品分野では、光スイッチ周辺、光コネクタ周辺の光ファイバー材料、光受動部品、光回路部品、光電子集積回路周辺の接着、封止、コーティング等;光学機器分野では、カメラモジュール、レンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部、撮影レンズ、プロジェクションテレビの当社レンズ等の接着、封止、コーティング等;インフラ分野では、ガス管、水道管などの接着、ライニング材、封止、コーティング材等に使用が可能である。
【実施例0058】
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
[実施例1~12、比較例1~3]
硬化性樹脂組成物を調製するために下記成分を準備した。
【0060】
(A-1)トリメチロールプロパントリアクリレート 商品名:A-TMPT(新中村化学株式会社製)
(A-2)ジメチロール-トリシクロデカンジアクリレート 商品名:ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学株式会社製)
(A-3)ポリエチレングリコール400#ジアクリレート 商品名:ライトアクリレート9EG-A(共栄社化学株式会社製)エチレンオキシドの繰り返し単位数:9
(B-1)イソフタル酸ジヒドラジド 商品名:IDH(大塚化学株式会社製) 融点:220℃
(B-2)アジピン酸ジヒドラジド 商品名:ADH(大塚化学株式会社製) 融点:180℃
(C)親水性ヒュームドシリカ 表面処理:無処理(シラノール基残存) 商品名:アエロジル200(日本アエロジル株式会社製)
【0061】
前記(A)成分を撹拌容器に秤量し、(B)成分と(C)成分を添加して、30分間ミキサーで撹拌した。詳細な調製量は表1に従い、数値は全て質量部で表記する。いずれの試験も25℃で行った。
【0062】
[剪断接着強度(初期)]
実施例1~6の硬化性樹脂組成物を幅25mm×長さ100mm×厚さ1mmのアルミニウム板(A1050P)にオーバーラップ面が25mm×10mm、塗布厚みが0.1mmになるようにスペーサーを用いて塗布し、硬化性樹脂組成物を塗布していないアルミニウム板を貼り合わせる。得られた試験片を熱風乾燥炉で170℃、1時間加熱後、常温に戻し、剪断接着強度測定試験片とする。剪断接着強度測定試験片を引張試験機を用いて50mm/minで最大強度(MPa)を測定し、剪断接着強度(初期)とした。
【0063】
[剪断接着強度(浸漬後)]
初期と同様に剪断接着強度測定試験片を作成し、400mLの6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(キッチンハイター、花王株式会社製)が入った500mLのビーカーに試験片を浸漬させ、恒温槽内で50℃、16時間浸漬させた。浸漬させた試験片をビーカーから取り出し、25℃,55%RH雰囲気下のドラフト内で12時間静置し、試験片を乾燥させた。乾燥した試験片を引張試験機を用いて引張速度50mm/minで最大強度(MPa)を測定、し剪断接着強度(浸漬後)とした。
【0064】
[剪断接着強度(変化率)]
変化率=(浸漬後の試験片の剪断接着強度-浸漬前の試験片の剪断接着強度)/浸漬前の試験片の剪断接着強度×100(%)とした。本発明において変化率が-40%以上の強度低下であれば合格、特に好ましくは-50%以上の強度低下とする。
【0065】
【0066】
表1に示すように、(A)および(B)を含む実施例1~6の硬化性樹脂組成物は良好な接着強度を示しているが、酸化剤に浸漬後、大幅な強度低下が確認された。特に実施例1~4については浸漬しているビーカー内で試験片の解体が起こっており、力を加えずとも剪断接着試験片の解体が可能であった。
【0067】
更に硬化性樹脂組成物をプライマーとして前処理した場合の解体性付与効果を確認するため、各接着剤を準備した。各成分を秤量、ミキサーで撹拌し、接着剤を得た。
加熱硬化性接着剤:ビスフェノールAエポキシ樹脂100質量部、ジシアンジアミド8質量部、尿素硬化剤4部を含む組成物
湿気硬化性接着剤:加水分解性シリル基を両末端に有するポリオキシアルキレン重合体100質量部、錫触媒3質量部を含む組成物
光硬化性接着剤:ウレタンジアクリレート50質量部、イソボルニルアクリレート50質量部、光ラジカル開始剤4質量部を含む組成物
【0068】
[剪断接着強度試験片の作製]
剪断接着強度測定には下記被着体を使用した。被着体の組合せは表2に記載する。
・アルミニウム板(A1050P)(AL) 幅25mm×長さ100mm×厚さ1mm
・ガラス板 幅25mm×長さ100mm×厚さ5mm
・アクリル板 幅25mm×長さ100mm×厚さ2mm
実施例1~4の硬化性樹脂組成物をアルミニウム板もしくはガラス板の試験片にスペーサーを用いて塗布厚みが0.1mmになるように塗布する。熱風乾燥炉で170℃、1時間加熱し、常温に戻し、前処理された試験片を得た。前処理していない他方の試験片に接着剤を塗布し、前処理した試験片とのオーバーラップ面が25mm×10mmとなるように貼り合わせ、各接着剤の条件下で硬化させ剪断接着強度試験片を得た。
加熱硬化性接着剤を用いた場合 熱風乾燥炉 150℃×1時間
湿気硬化性接着剤を用いた場合 恒温恒湿槽 25℃×55%RH×1週間
光硬化性接着剤を用いた場合 ベルトコンベア型高圧水銀灯積算光量 30kJ/m2
なお、光硬化性接着剤は光が透過しないと硬化しないため、アルミニウム板の代わりに透明なアクリル樹脂を用いた被着体を使用し、アクリル樹脂板側からの紫外線照射を行い硬化させた。
【0069】
[剪断接着強度(変化率)]
400mLの6%次亜塩素酸ナトリウム水溶液(キッチンハイター、花王株式会社製)が入った500mLのビーカーに各被着体の組合せで作製した剪断接着強度試験片を浸漬させ、恒温槽内で50℃、16時間浸漬させた。浸漬させた試験片をビーカーから取り出し、25℃,55%RH雰囲気下のドラフト内で12時間静置し、試験片を乾燥させた。乾燥した試験片を浸漬後の試験片とした。
浸漬前の試験片と浸漬後の試験片を引張試験機を用いて引張速度50mm/minで最大強度(MPa)を測定した。
変化率=(浸漬後の試験片の剪断接着強度-浸漬前の試験片の剪断接着強度)/浸漬前の試験片の剪断接着強度×100(%)とした。
本発明において変化率が-40%以上の強度低下であれば合格、特に好ましくは-50%以上の強度低下とする。
【0070】
【0071】
表2より本発明の硬化性樹脂組成物を前処理した試験片を用いた実施例7~12では接着剤の種類に関わらず次亜塩素酸ナトリウム水溶液に浸漬することで大幅な強度低下を引き起こすことを確認した。一方で、硬化性樹脂組成物を前処理していない試験片を用いた比較例1~3はほぼ強度低下が起きないことを確認した。また、実施例7~12において接着強度試験後の試験片の破壊面の状態を確認すると、硬化性樹脂組成物を塗布した面から剥離が起きていた。以上のことから、浸漬後の試験片で起きている剪断接着強度の低下が硬化性樹脂組成物によるものであり、(A)成分および(B)成分を組み合わせた硬化性樹脂組成物を被着体に前処理することで、接着剤の種類や被着体の種類に関わらず、解体性を付与できることがわかる。
本発明の硬化性樹脂組成物は、優れた接着力を有し、酸化剤により容易に分解することができる硬化物を形成することができ、さらにプライマーとして被着体に前処理することで、種々の接着剤やシール剤およびコーティング剤を使用する際に解体性を付与できるため、産業上非常に有用である。