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特開2024-81846電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081846
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/14 20060101AFI20240612BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20240612BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240612BHJP
   H02J 7/35 20060101ALI20240612BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240612BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H02J3/14 160
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 120
H02J7/35 K
H02J7/00 P
H02J13/00 301A
H02J13/00 311A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195318
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小島 義包
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
5G503
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC05
5G064AC09
5G064CB08
5G064CB12
5G064DA11
5G066AA02
5G066AE09
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA02
5G066JA05
5G066JA07
5G066JB03
5G503AA01
5G503AA06
5G503BA02
5G503BB02
5G503CB16
5G503DA07
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD03
5G503GD06
(57)【要約】
【課題】商用電源を効率的に利用するための電力管理を行なう電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムを提供する。
【解決手段】管理サーバ20は、商用電源に接続された施設の負荷L1への電力供給を制御する制御部21を備える。そして、制御部21が、天気予報情報を取得し、天気予報情報に応じて、再生可能エネルギー量を予測し、施設で利用される需要予測量に対して、商用電源から供給される電力のコストが低くなるように、再生可能エネルギー量を用いて、駐車場に駐車された電気自動車を含めた蓄電池の充放電を行なう。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電源に接続された施設の負荷への電力供給を制御する制御部を備えた電力管理システムであって、
前記制御部が、
天気予報情報を取得し、
前記天気予報情報に応じて、再生可能エネルギー量を予測し、
前記施設で利用される需要予測量に対して、前記商用電源から供給される電力のコストが低くなるように、前記再生可能エネルギー量を用いて、前記施設の駐車場に駐車された電気自動車を含めた蓄電池の充放電を行なうことを特徴とする電力管理システム。
【請求項2】
前記制御部が、前記商用電源からの電力のピークを上限値内に納めるピークカットにより、前記電力のコストが低くなるように充放電を行なうことを特徴とする請求項1に記載の電力管理システム。
【請求項3】
前記制御部が、前記電気自動車の駐車状況を予測して、前記蓄電池の利用可能容量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力管理システム。
【請求項4】
前記制御部が、前記電気自動車の出庫時刻に基づいて、前記蓄電池の利用可能容量を算出することを特徴とする請求項3に記載の電力管理システム。
【請求項5】
前記制御部が、前記施設の利用状況を予測して、前記需要予測量を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の電力管理システム。
【請求項6】
前記制御部が、前記利用状況を、前記天気予報情報を用いて予測することを特徴とする請求項5に記載の電力管理システム。
【請求項7】
前記制御部が、前記利用状況を、社会情勢の指標を用いて予測することを特徴とする請求項5に記載の電力管理システム。
【請求項8】
商用電源に接続された施設の負荷への電力供給を制御する制御部を備えた電力管理システムを用いて、電力供給を制御する方法であって、
前記制御部が、
天気予報情報を取得し、
前記天気予報情報に応じて、再生可能エネルギー量を予測し、
前記施設で利用される需要予測量に対して、前記商用電源から供給される電力のコストが低くなるように、前記再生可能エネルギー量を用いて、前記施設の駐車場に駐車された電気自動車を含めた蓄電池の充放電を行なうことを特徴とする電力管理方法。
【請求項9】
商用電源に接続された施設の負荷への電力供給を制御する制御部を備えた電力管理システムを用いて、電力供給を制御するための電力管理プログラムであって、
前記制御部を、
天気予報情報を取得し、
前記天気予報情報に応じて、再生可能エネルギー量を予測し、
前記施設で利用される需要予測量に対して、前記商用電源から供給される電力のコストが低くなるように、前記再生可能エネルギー量を用いて、前記施設の駐車場に駐車された電気自動車を含めた蓄電池の充放電を行なう手段として機能させるための電力管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、効率的な電力管理を行なうための電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ZEB(Net Zero Energy Building)では、建物で消費する年間の一次エネルギーの収支をゼロにすることを目指す。このため、省エネと創エネが行なわれている。ここで、創エネとしては、太陽光発電を用いることが多い。そこで、太陽光発電等の再生可能エネルギーを活用することにより、中小規模の建物への適用や、数多くの建物に導入するための電力需要予測装置が検討されている(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載された電力需要予測装置は、電力需要を予測する日の周期である対象周期毎に天気予報として供給される予報天気に類似する、対象周期と同一の時間帯の周期の天気を履歴データベースから抽出する。更に、類似した天気の周期に含まれる単位時間毎の電力需要を特定することにより、対象周期の単位時間毎の電力需要の予測値を予測する。
【0003】
また、電気自動車の蓄電池を分散型電源として用いる電力管理システムも検討されている(例えば、特許文献2を参照)。特許文献2に記載された電力管理システムは、電気自動車から供給される直流電力を交流電力に変換するとともに、電圧調整を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-198486号公報
【特許文献2】特開2018-182925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
創エネとして用いられる太陽光発電において、昼間の余剰分は、電力会社の配電線に戻したり(逆潮流)、リチウムイオン蓄電池(LiB)等の電力貯蔵設備に貯めたりする必要がある。電力貯蔵を行なう場合には、昼間に充電するとともに、夜間に放電することが多い。この場合、発電状況や電力消費状況に合わせた制御が困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電力管理システムは、商用電源に接続された施設の負荷への電力供給を制御する制御部を備える。そして、前記制御部が、天気予報情報を取得し、前記天気予報情報に応じて、再生可能エネルギー量を予測し、前記施設で利用される需要予測量に対して、前記商用電源から供給される電力のコストが低くなるように、前記再生可能エネルギー量を用いて、前記施設の駐車場に駐車された電気自動車を含めた蓄電池の充放電を行なう。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、商用電源を効率的に利用するための電力管理を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態の電力管理システムの説明図である。
図2】実施形態の電力系統の説明図である。
図3】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
図4】実施形態の処理手順の説明図である。
図5】実施形態の処理手順の説明図である。
図6】実施形態の処理手順の説明図である。
図7】実施形態の電力量の説明図である。
図8】別例の利用可能期間及び充電期間の説明図である。
図9】別例の処理手順の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1図7に従って、電力管理システム、電力管理方法及び電力管理プログラムの一実施形態を説明する。本実施形態では、施設の需要電力を、太陽光発電及び蓄電池の充放電で対応する。ここでは、施設としてオフィスビル(建物)を想定する。
【0010】
図1に示すように、本実施形態の電力管理システムA1では、ネットワークを介して接続された建物の建物設備10、管理サーバ20、天候情報サイト30等を用いる。
建物設備10は、空調設備、照明設備、エレベータ設備等、電力を消費する負荷L1を備える。更に、建物設備10は、太陽電池11、固定蓄電池12、駐車場装置13を備える。
【0011】
本実施形態の電力管理システムA1における太陽電池11、固定蓄電池12、駐車場装置13は、ネットワークを介して接続された管理サーバ20により制御される。更に、この管理サーバ20は、ネットワークを介して、天候情報サイト30に接続される。
【0012】
図2に示すように、商用電源GP1の電力が、建物設備10の負荷L1に供給される。この場合、商用電源GP1の電力供給量を低減するために、太陽電池11、固定蓄電池12を用いる。更に、駐車場に駐車された電気自動車V1のバッテリB1を、駐車場装置13を介して利用する。その結果、固定蓄電池12及びバッテリB1を、電力管理のための蓄電池として機能させる。
【0013】
(ハードウェア構成例)
図3は、建物設備10、管理サーバ20、天候情報サイト30等として機能する情報処理装置H10のハードウェア構成例を示す。
【0014】
情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶装置H14、プロセッサH15を有する。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアを有していてもよい。
【0015】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0016】
入力装置H12は、ユーザ等からの入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイやタッチパネル等である。
【0017】
記憶装置H14は、建物設備10、管理サーバ20、天候情報サイト30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶装置H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0018】
プロセッサH15は、記憶装置H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、建物設備10、管理サーバ20、天候情報サイト30における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各種処理に対応する各種プロセスを実行する。例えば、プロセッサH15は、建物設備10、管理サーバ20、天候情報サイト30のアプリケーションプログラムが起動された場合、後述する各処理を実行するプロセスを動作させる。
【0019】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0020】
(1)コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
(2)各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
(3)それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリすなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0021】
(電力管理システムA1の機能)
図2に示すように、建物設備10の負荷L1には、空調設備、照明設備、エレベータ設備等、電力を消費して駆動される機器が含まれる。
【0022】
建物設備10の負荷L1には、商用電源GP1から電力が供給される。
太陽電池11は、再生可能エネルギーとして光起電力効果を利用して、光エネルギーを電力に変換する電力機器である。この太陽電池11は、太陽光の日射状況によって、発電量が変化する。
【0023】
固定蓄電池12は、充放電が可能な蓄電池である。本実施形態では、固定蓄電池12として、リチウムイオン蓄電池(LiB)を用いる。この固定蓄電池12は、建物に備えられており、蓄電可能容量は固定値である。
【0024】
駐車場装置13は、EVパワーコンディショナ(EVパワコン)を介して、建物の駐車場に駐車された電気自動車V1のバッテリB1の充放電を行なう。本実施形態では、必要に応じて、バッテリB1から建物設備10の負荷L1に電力を供給する。
【0025】
図1に示す管理サーバ20は、電力管理を支援するコンピュータシステムである。この管理サーバ20は、制御部21、履歴情報記憶部22、計画情報記憶部23を備える。
制御部21は、後述する処理(情報取得段階、予測段階、指示段階等を含む処理)を行なう。このための各処理のためのプログラムを実行することにより、制御部21は、情報取得部211、予測部212、指示部213等として機能する。
【0026】
情報取得部211は、建物設備10や天候情報サイト30から各種情報を取得する。
予測部212は、電力需要や太陽光発電量(再生可能エネルギー量)の予測に応じて、電力計画を生成する。この場合、天候情報サイト30から取得した天気予報を用いて、電力使用量の予測や、太陽電池11による太陽光発電量の予測を行なう。このため、予測部212は、使用量調整テーブルや発電量算出テーブルを保持する。この使用量調整テーブルでは、暦日に対応して、基準温度範囲に対して、気温が低い場合には暖房、気温が高い場合には冷房に要する電力使用量の調整係数が記録される。発電量テーブルでは、季節毎に、天気に応じて、時間帯毎の太陽光発電量が記録される。
【0027】
更に、予測部212は、駐車場装置13における電気自動車V1の駐車状況に応じて、利用可能な蓄電要量を予測する。
また、予測部212は、商用電源GP1を使用する上限値を保持する。この上限値は、商用電源GP1の料金体系において、需要者にとって有利な条件が設定されている最大電力量に応じて決定される。段階制料金では、電気の使用量に応じて、料金単価が高く設けられており、電気を使えば使うほど単価が高くなる。そこで、料金単価を抑える最大電力量に応じて、上限値を決定する。
【0028】
指示部213は、需要予測及び太陽光発電の予測に応じて、固定蓄電池12、駐車場装置13の充放電制御を指示する。この指示部213は、建物設備10の負荷L1において、優先度を識別する優先度テーブルを保持する。優先度テーブルでは、負荷L1のうち施設の事業継続計画(Business Continuity Plan)に必要な負荷(例えば、サーバ、デスクトップPC等の重要設備)は、優先度を高く設定されている。一方、負荷L1のうち施設の事業継続計画に影響が少ない負荷(例えば、広告照明、バッテリ付のノートPC等の付帯設備)は、優先度を低く設定されている。
【0029】
履歴情報記憶部22には、履歴データが記録される。この履歴データには、天候履歴データ、使用電力履歴データ及び駐車履歴データが含まれる。
天候履歴データは、直近所定期間(例えば2年間)の年月日毎の時刻毎の天候情報(天気、気温等)の時系列データである。
【0030】
使用電力履歴データは、直近所定期間の年月日毎の時刻毎の使用電力の時系列データである。この使用電力は、施設の利用状況に応じて変化する。このため、年月日により、施設の利用状況を判定する暦日属性を特定する。暦日属性としては、例えば、営業日或いは休業日、曜日、特別イベント(期締め、五十日等)の有無等を用いる。
駐車履歴データは、直近所定期間の年月日毎の時刻毎に、電気自動車V1の駐車状況(入庫時刻、出庫時刻、バッテリ容量、残量)に関する時系列データである。
【0031】
計画情報記憶部23には、電力計画データが記録される。この電力計画データは、電力計画処理が行なわれた場合に記録される。この電力計画データは、計画対象期間の時間毎に、使用電力予測量、太陽光発電予測量、蓄電予測量、商用電力予測量に関するデータが含まれる。
【0032】
使用電力予測量は、建物設備10の負荷L1において使用される電力の予測値(需要予測量)である。
太陽光発電予測量は、太陽電池11において発電される予測値である。
蓄電予測量は、固定蓄電池12や、駐車場装置13における蓄電量の予測値である。この蓄電予測量は、充放電計画によって、充電による蓄電量の増加や、放電による蓄電量の低下によって決まる。
商用電力予測量は、商用電源GP1を使用する電力の予測値である。
【0033】
天候情報サイト30は、地域毎に、将来の年月日及び時間帯の天気予報情報を提供するコンピュータシステムである。天気予報情報には、天気(晴雨)、気温、湿度などが含まれる。
【0034】
(電力計画処理)
図4を用いて、電力計画処理を説明する。この電力計画処理は、定期的(例えば、2週間毎)に実行される。この場合、計画対象期間として、直近2週間の電力計画を作成する。
【0035】
まず、管理サーバ20の制御部21は、天候情報の取得処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、天候情報サイト30から、計画対象期間に含まれる年月日、時間帯毎の天候情報を取得する。
【0036】
次に、管理サーバ20の制御部21は、需要予測処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、履歴情報記憶部22の使用電力履歴データから、計画対象期間に含まれる年月日と暦日属性が共通する使用電力の統計値を取得する。
【0037】
次に、予測部212は、天候情報に応じて、使用量調整テーブルから調整係数を取得する。そして、予測部212は、暦日、天候情報に応じて、使用電力の統計値を調整した使用電力予測量を算出する。使用電力予測量では、計画対象期間に含まれる時間帯毎に使用が予測される電力量が設定されている。
図7に示すように、使用電力予測量について電力量C1を取得する。
【0038】
次に、管理サーバ20の制御部21は、ピーク予測処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部21の予測部212は、計画対象期間の使用電力予測量において、上限値を超えるピーク領域を特定する。
図7に示すように、電力量C1において、上限値C2を超える領域がピーク領域である。
【0039】
次に、管理サーバ20の制御部21は、EV容量予測処理を実行する(ステップS14)。ここでは、計画対象期間に、駐車場に駐車されている電気自動車V1のバッテリB1のバッテリ容量を予測する。このEV容量予測処理については、図5を用いて説明する。
【0040】
次に、管理サーバ20の制御部21は、バッテリ総量予測処理を実行する(ステップS15)。具体的には、制御部21の予測部212は、固定蓄電池12における蓄電池容量と、駐車場装置13の電気自動車V1のバッテリB1の容量とを足し合わせて、時間帯毎にバッテリ総量を予測する。
【0041】
次に、管理サーバ20の制御部21は、再生可能エネルギー予測処理を実行する(ステップS16)。具体的には、制御部21の予測部212は、天候情報サイト30から取得した天候情報に応じて、発電量テーブルを用いて太陽光発電量を予測する。この場合、予測部212は、計画対象期間の季節に応じて、太陽光発電予測量を算出する。
図7に示すように、太陽光発電について電力量C3を取得する。
【0042】
次に、管理サーバ20の制御部21は、充放電計画の作成処理を実行する(ステップS17)。具体的には、制御部21の予測部212は、ピーク領域において、商用電源GP1の上限値内に収めるピークカットを実現できるように、太陽電池11の太陽光発電量、固定蓄電池12及び駐車場装置13のバッテリ総量の蓄電量を割り当てる。この割り当てには、山積みと山崩し等の負荷配分手法を用いる。例えば、晴天日が予測される時には、太陽光発電の余剰分を充電できるように予め蓄電池の充電率を下げておく。また、雨天日が予測される時には、太陽光発電が期待できない分を補うために予め蓄電池の充電率を高めておく。この場合、太陽光発電量において、建物で使用しきれない余剰分をできる限り蓄電し、商用電源GP1への逆潮流(逆送電)を避ける。
【0043】
そして、予測部212は、ピーク領域において、太陽光発電量が少ない場合に、バッテリ総量を割り当てられるように、蓄電予測量(充放電計画)を算出する。
図7に示すように、電力量C1を補う商用電源GP1の電力量C5が上限値C2以下になるように蓄電量C4(蓄電予測量)からなる充放電計画を決定する。そして、蓄電量C4を用いて不足分を商用電源GP1の電力量C5に割り当てた電力計画を生成する。
そして、予測部212は、生成した電力計画を計画情報記憶部23に記録する。
【0044】
(EV容量予測処理)
図5を用いて、EV容量予測処理を説明する。
【0045】
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、暦日毎に駐車場の電気自動車の予測処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、履歴情報記憶部22の駐車履歴データから、計画対象期間に含まれる年月日と暦日属性が共通する暦日の電気自動車V1の駐車状況を取得する。
【0046】
次に、管理サーバ20の制御部21は、バッテリ容量の算出処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部21の予測部212は、電気自動車V1の駐車状況において、各電気自動車V1の入庫時刻及び出庫時刻から駐車時間帯を特定する。次に、予測部212は、計画対象期間の時間帯毎に、駐車していた各電気自動車V1のバッテリB1のバッテリ容量を取得する。
【0047】
次に、管理サーバ20の制御部21は、利用可能蓄電容量の算出処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部21の予測部212は、計画対象期間の時間帯毎に、駐車していた各電気自動車V1のバッテリB1のバッテリ容量を合計して、利用可能蓄電容量を算出する。この駐車場装置13の利用可能蓄電容量は、固定蓄電池12の蓄電容量と同様に、建物設備10の負荷L1で使用する電力に利用される。
【0048】
(電力制御処理)
図6を用いて、電力制御処理を説明する。この電力制御処理は、電力計画を用いて、建物設備10の負荷L1において使用される電力に対応する。
【0049】
ここでは、管理サーバ20の制御部21は、状況情報の取得処理を実行する(ステップS31)。具体的には、制御部21の情報取得部211は、建物設備10の負荷L1で使用している電力量を取得する。更に、情報取得部211は、太陽電池11における太陽光発電量を取得する。更に、情報取得部211は、駐車場装置13から、駐車している電気自動車V1のバッテリB1の総容量を取得する。
【0050】
次に、管理サーバ20の制御部21は、ピーク判定処理を実行する(ステップS32)。具体的には、制御部21の指示部213は、計画情報記憶部23に記録された電力計画と実際の状況の差分を算出する。ここで、実際の状況としては、取得した負荷L1で使用中の電力量、太陽光発電量、バッテリB1の総量を用いる。そして、指示部213は、実際の状況と電力計画との差分に応じて、ピーク領域が上限値を超える可能性があるかどうかを判定する。例えば、電力計画に比べて、ピーク領域前において、使用電力予測量よりも多い場合、太陽光発電予測量が少ない場合、蓄電予測量が少ない場合には、ピーク領域が上限値を超える可能性があると判定する。ピーク領域が上限値を超えないと判定した場合、指示部213は、電力計画に対応するように、充放電、商用電力の使用を行なう。
【0051】
一方、ピーク領域が上限値を超える可能性があると判定した場合、管理サーバ20の制御部21は、ピークカット対応処理を実行する(ステップS33)。具体的には、制御部21の指示部213は、担当者端末にアラームを出力する。更に、指示部213は、付帯設備の負荷L1に対して、消費電力を低減する指示を出力する。
【0052】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、天候情報の取得処理を実行する(ステップS11)。これにより、再生可能エネルギーは、天候に左右されるので、電力計画に影響を与える天候情報を把握することができる。
【0053】
(2)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、需要予測処理を実行する(ステップS12)。これにより、暦日や天候に応じて、建物設備10における使用電力を予測することができる。
【0054】
(3)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、ピーク予測処理(ステップS13)、充放電計画の作成処理(ステップS17)を実行する。商用電源GP1を利用する場合、使用電力のピーク値に応じて料金体系が異なるので、商用電源GP1を利用するピーク電力の削減を図った充放電計画を作成することができる。
【0055】
(4)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、EV容量予測処理を実行する(ステップS14)。これにより、駐車場装置13を介して、駐車中の電気自動車V1のバッテリB1を蓄電池として利用することができる。その結果、固定蓄電池12の蓄電池容量を抑えることができるので、イニシャルコストの低減を図ることができる。更に、駐車中の電気自動車V1のバッテリB1の利用効率を向上させることができるので、環境に配慮することができる。更に、停電時の蓄電池利用等、事業継続計画の性能向上にも寄与できる。
【0056】
(5)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、バッテリ総量予測処理を実行する(ステップS15)。これにより、商用電源GP1のピークの削減に有効な充放電計画を作成することができる。
【0057】
(6)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、再生可能エネルギー予測処理を実行する(ステップS16)。これにより、天候に応じた発電量を予測することができる。
【0058】
(7)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、暦日毎に駐車場の電気自動車の予測処理を実行する(ステップS21)。これにより、暦日属性に応じた駐車場における駐車台数の変化を考慮して、利用可能なバッテリ容量を算出することができる。
【0059】
(8)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、バッテリ容量の算出処理を実行する(ステップS22)。これにより、暦日属性に応じて、電気自動車V1の駐車時間帯、バッテリ容量が異なる場合にも、利用可能なバッテリ容量を算出することができる。
【0060】
(9)本実施形態においては、管理サーバ20の制御部21は、状況情報の取得処理(ステップS31)、ピーク判定理処理(ステップS32)、ピークカット対応処理(ステップS33)を実行する。これにより、電力計画と異なる場合にも、ピーク電力が上限値を超えない範囲で、使用電力の管理を行なうことができる。
【0061】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、建物設備10としてオフィスビルを想定し、負荷L1として出勤者による電力使用を想定した。施設はオフィスビルに限定されるものではない。施設として、商業施設、娯楽施設、集合住宅等に適用してもよい。この場合には、施設の利用状況に応じて使用電力を予測する。更に、駐車場装置13において、施設の利用者の電気自動車V1を利用する。また、複数の建物を含めた地域や都市を対象としてもよい。
【0062】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、需要予測処理を実行する(ステップS12)。ここでは、暦日や天候に応じて、建物設備10における使用電力を予測する。使用電力の予測に用いる情報は、これらの情報に限定されるものではない。例えば、管理サーバ20の制御部21が、オフィスビルにおいては、勤務者(施設の利用者)の出勤予定情報(施設の利用状況)を取得して、使用電力を予測するようにしてもよい。この場合には、出勤者の属性に応じて1人当たりの使用電力を記録した使用電力テーブルを用いる。そして、制御部21は、出勤者の属性毎の出勤人数に応じた総和により使用電力を予測する。
【0063】
更に、制御部21が、出勤人数を社会情勢に応じて算出するようにしてもよい。例えば、社会情勢としては、コロナ禍等のように、感染症の流行状況(パンデミック状況やテレワーク状況)を用いることができる。この場合には、社会情勢を示す指標に対して、出勤者数(利用者数)を算出するための情報を記録した出勤者予測関数(利用者予測関数)を用いる。
【0064】
また、この場合、制御部21は、天気を考慮して、出勤者数を予測してもよい。
また、集合住宅においては、休祝日の場合には、天気にも応じた在宅率に応じて使用電力を予測するようにしてもよい。この場合には、天気に対して、在宅率を算出するための情報を記録した在宅率予測関数を用いる。
【0065】
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、EV容量予測処理を実行する(ステップS14)。ここで、電気自動車V1のバッテリを利用した場合には、出庫時刻にバッテリを充電しておくようにしてもよい。
【0066】
図8に示すように、時刻t10に駐車場に電気自動車V1を入庫し、時刻t20に出庫する場合を想定する。この場合には、時刻t10~t15を電気自動車V1のバッテリB1を建物設備10の蓄電池として利用し、時刻t15~t20を電気自動車V1のバッテリB1を充電するために利用する。
この場合には、管理サーバ20の制御部21は、EV利用処理を実行する。
【0067】
(EV利用処理)
図9を用いて、EV利用処理を説明する。
【0068】
まず、管理サーバ20の制御部21は、駐車予定の取得処理を実行する(ステップS41)。具体的には、制御部21の予測部212は、電気自動車V1の駐車時に、現在時刻(時刻t10)を取得する。次に、予測部212は、駐車場装置13の操作パネルに、出庫時刻の入力画面を表示する。そして、予測部212は、入力画面に入力された出庫予定時刻(時刻t20)を取得する。
【0069】
次に、管理サーバ20の制御部21は、利用可能容量の取得処理を実行する(ステップS42)。具体的には、制御部21の予測部212は、電気自動車V1から、バッテリ容量及びバッテリ残量を取得する。
【0070】
次に、管理サーバ20の制御部21は、充放電期間の分配処理を実行する(ステップS43)。具体的には、制御部21の予測部212は、時刻t20において、電気自動車V1のバッテリ残量が空状態から所定値になる所要時間を算出する。所定値としては、例えば、駐車時の残量或いは満量を用いることができる。そして、予測部212は、出庫予定時刻(時刻t20)から所要時間前の時刻t15を算出する。
【0071】
次に、管理サーバ20の制御部21は、充放電処理を実行する(ステップS44)。具体的には、制御部21の予測部212は、時刻t10~t15を蓄電池としての利用可能期間、時刻t15~t20を充電期間として利用する。
【0072】
・上記実施形態では、再生可能エネルギー源として、太陽電池11を用いるが、これに限定されるものではない。例えば、風力発電を用いてもよい。
・上記実施形態では、管理サーバ20の制御部21は、充放電計画の作成処理を実行する(ステップS17)。ここでは、ピーク領域が上限値内に納まるピークカットによる充放電計画を作成する。使用電力のコストを低減できれば、ピークカットに限定されるものではない。例えば、料金体系に応じて、電力料金が安くなる時間帯(例えば夜間)を優先するように配分してもよい。
【符号の説明】
【0073】
A1…電力管理システム、B1…バッテリ、V1…電気自動車、GP1…商用電源、L1…負荷、10…建物設備、11…太陽電池、12…固定蓄電池、13…駐車場装置、20…管理サーバ、21…制御部、211…情報取得部、212…予測部、213…指示部、22…履歴情報記憶部、23…計画情報記憶部、30…天候情報サイト。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9