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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081847
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】戸ロック装置
(51)【国際特許分類】
   E06B 9/52 20060101AFI20240612BHJP
   E05C 5/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E06B9/52 M
E06B9/52 C
E05C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195320
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000131511
【氏名又は名称】株式会社シブタニ
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【弁理士】
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100127340
【弁理士】
【氏名又は名称】飛永 充啓
(72)【発明者】
【氏名】榎本 裕太
(57)【要約】
【課題】戸側のロック棒を戸口枠等の受け部に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れた戸ロック装置を提供する。
【解決手段】ロック棒20は、戸の縦枠に設けられる台座10によって案内、支持される縦軸部21と、台座から水平方向に離れた位置の係合端部22と、縦軸部から下方に延びる操作端部23とを有し、上下方向に昇降可能かつ縦軸部周りに回動可能である。戸口枠等の縦枠に設けられる受け部30の係合壁32は、係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成し、この空間に係合端部が位置するロック状態のとき係合端部の台座側への移動を規制する。ロック状態の操作端部を下方から押し上げる操作によってロック棒が上昇させられ、係合端部が前記空間から上方に抜けた後に台座の傾斜部14aに接触させられ、その押し上げ力が傾斜部の傾斜によって回転力に変換されて、係合端部が当該空間の上方から外れたアンロック状態になるまで回転させられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
戸の縦枠に設けられる台座と、当該台座に組み合わされるロック棒と、戸口枠の縦枠、戸口枠の縦枠に連なる壁面又は他の戸の縦枠に設けられる受け部と、を備え、
前記ロック棒が、前記台座によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部と、前記台座に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部と、前記縦軸部から下方に延びる操作端部とを有し、かつ前記台座に対して上下方向に昇降可能かつ前記縦軸部周りに回動可能に設けられており、
前記受け部が、前記係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に前記空間に差し込まれた係合端部の前記台座側への移動を規制する係合壁を有し、
前記係合端部が前記空間に位置する状態をロック状態と定義し、前記係合端部が前記空間の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、前記台座が、前記ロック状態のときに前記ロック棒と上下方向に距離を置いて対向する傾斜部を有し、
前記ロック状態にある前記ロック棒の前記操作端部を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒が上昇させられ、当該ロック棒の前記係合端部が前記空間から上方に抜けた後も継続する当該ロック解除操作によって当該ロック棒が前記台座の前記傾斜部に接触させられ、当該ロック棒に与えられる押し上げ力が当該傾斜部の傾斜によって前記縦軸部周りの回転力に変換され、当該回転力によって当該ロック棒が前記アンロック状態になるまで回転させられる戸ロック装置。
【請求項2】
前記台座が、前記ロック棒と前記戸の縦枠の前面との間に配置される後壁部と、前記後壁部との間にスリットを形成するように前記後壁部に対して前方の位置へ突き出た前壁部とを有し、
前記傾斜部との接触による前記ロック棒のロック解除回転の終了位置で当該ロック棒を落下させると、当該ロック棒が前記前壁部上に載り、当該前壁部上に載ったロック棒を前記ロック解除回転と同方向に更に手動回転させる操作によって当該ロック棒が当該前壁部と前記後壁部との間に落下させられ、当該ロック棒の前記縦軸部周りの回動が当該前壁部と当該後壁部とで規制されるようになっている請求項1に記載の戸ロック装置。
【請求項3】
前記前壁部が、前記ロック解除回転の終了位置で落下させられた前記ロック棒との接触部位から反ロック解除回転方向に向かって高くなる形状を有する請求項2に記載の戸ロック装置。
【請求項4】
戸の縦枠に設けられる台座と、当該台座に組み合わされるロック棒と、戸口枠の縦枠、戸口枠の縦枠に連なる壁面又は他の戸の縦枠に設けられる受け部と、を備え、
前記ロック棒が、前記台座によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部と、前記台座に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部と、前記縦軸部から下方に延びる操作端部とを有し、かつ前記台座に対して上下方向に昇降可能かつ前記縦軸部周りに回動可能に設けられており、
前記受け部が、前記係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に前記空間に差し込まれた係合端部の前記台座側への移動を規制する係合壁を有し、
前記係合端部が前記空間に位置する状態をロック状態と定義し、前記係合端部が前記空間の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、前記ロック状態にある前記ロック棒を前記アンロック状態へ回転させる方向に付勢するばね部材が、当該ロック棒と前記台座との間に設けられており、
前記ロック状態にある前記ロック棒の前記操作端部を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒が上昇させられ、当該ロック棒の前記係合端部が前記空間から上方に抜けた後、前記ばね部材の付勢力によって当該ロック棒が前記アンロック状態になるまで回転させられる戸ロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、玄関ドア、勝手口ドアや窓等に付く網戸等の戸が風等で開かないようにする戸ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、室外で風に晒される網戸等の戸が風力で自走したり、勝手に開いたりすることを防ぐため、鎖錠機構を備えない簡易な手動機構の戸ロック装置が利用されている。
【0003】
特許文献1に開示された戸ロック装置は、戸の縦枠に倒立L字のガイド孔部が設けられ、戸口枠(窓枠)の下枠に孔状の空間を形成する受け部が設けられている。ロック棒(落し棒)が倒立L字のガイド孔部を移動し、受け部の形成する空間に上下方向に出入りすることによって、戸の開放を規制するロック状態と、その開放を許容するアンロック状態とに切り替えられる。そのロック棒は、指で摘んで倒立L字のガイド孔部内を水平方向(左右方向)に移動させたり、上下方向に移動させたりするようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-68279号公報(特に明細書の段落0040~0041、図5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された上述の戸ロック装置は、戸側のロック棒を戸口枠側の受け部の空間に落し入れる簡易なロック機構であるが、ロック状態にする際、戸口枠の下枠に設けられた受け部が戸の下に隠れた状態になり、ロック棒を落とす前にロック棒が受け部の形成する空間に入る位置にあるかを直に目測することができないし、落としたロック棒が受け部の形成する空間に入ったかを直に目視確認することもできない。このため、ロック状態にし損ねることが起こり得る点で操作性が悪い。また、アンロック状態にする際は、ロック棒を指で上昇させ、続けて水平方向に移動させる操作を行う必要があり、アンロック状態にするまでに操作方向を直角に変更する必要がある点で操作性が悪い。
【0006】
上述の背景に鑑み、この発明が解決しようとする課題は、戸側のロック棒を戸口枠等の受け部に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れた戸ロック装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を達成するための第一の手段として、この発明は、戸の縦枠に設けられる台座と、当該台座に組み合わされるロック棒と、戸口枠の縦枠、戸口枠の縦枠に連なる壁面又は他の戸の縦枠に設けられる受け部と、を備え、前記ロック棒が、前記台座によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部と、前記台座に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部と、前記縦軸部から下方に延びる操作端部とを有し、かつ前記台座に対して上下方向に昇降可能かつ前記縦軸部周りに回動可能に設けられており、前記受け部が、前記係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に前記空間に差し込まれた係合端部の前記台座側への移動を規制する係合壁を有し、前記係合端部が前記空間に位置する状態をロック状態と定義し、前記係合端部が前記空間の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、前記台座が、前記ロック状態のときに前記ロック棒と上下方向に距離を置いて対向する傾斜部を有し、前記ロック状態にある前記ロック棒の前記操作端部を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒が上昇させられ、当該ロック棒の前記係合端部が前記空間から上方に抜けた後も継続する当該ロック解除操作によって当該ロック棒が前記台座の前記傾斜部に接触させられ、当該ロック棒に与えられる押し上げ力が当該傾斜部の傾斜によって前記縦軸部周りの回転力に変換され、当該回転力によって当該ロック棒が前記アンロック状態になるまで回転させられる戸ロック装置、という構成1を採用した。
【0008】
上記構成1によれば、ロック棒を案内、支持する台座が戸の縦枠に設けられ、ロック棒の係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に係合端部の台座側への移動を規制する係合壁をもった受け部が戸口枠の縦枠等に設けられるので、戸を閉じても係合壁の形成する空間が戸に隠れないようにすることができる。したがって、ロック棒を落とす前にロック棒の係合端部が係合壁の形成する空間に入る位置にあるかを直に目測することが可能になり、落としたロック棒の係合端部が係合壁の形成する空間に入ったかを直に目視確認することも可能になるので、ロック状態にする際の操作性がよい。また、アンロック状態にする際は、ロック状態にあるロック棒の操作端部を指で押し上げるだけで、ロック棒を上昇させ、更に係合端部を係合壁の形成する空間の上方から外すように台座の傾斜部で回転させることができる。したがって、ロック状態からアンロック状態になるまでに必要なロック棒の操作方向が上方への一方向のみとなるので、アンロック状態にするまでの操作性もよい。このように、戸側のロック棒を戸口枠等の受け部に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れた戸ロック装置となる。
【0009】
上記構成1においては、前記台座が、前記ロック棒と前記戸の縦枠の前面との間に配置される後壁部と、前記後壁部との間にスリットを形成するように前記後壁部に対して前方の位置へ突き出た前壁部とを有し、前記傾斜部との接触による前記ロック棒のロック解除回転の終了位置で当該ロック棒を落下させると、当該ロック棒が前記前壁部上に載り、当該前壁部上に載ったロック棒を前記ロック解除回転と同方向に更に手動回転させる操作によって当該ロック棒が当該前壁部と前記後壁部との間に落下させられ、当該ロック棒の前記縦軸部周りの回動が当該前壁部と当該後壁部とで規制されるようになっている、という構成2を採用することができる。
【0010】
この構成2によると、前述のロック解除回転の終了後、ロック棒から手を離して落下させても、ロック棒が前壁部上に載るため、係合端部が係合壁の形成する空間へ再入しない。その前壁部上に載ったロック棒をロック解除回転と同方向に更に手動回転させて前壁部と後壁部との間に落下させると、ロック棒の回動が前壁部と後壁部とで規制されるため、ロック棒をアンロック状態に仮固定することができる。
【0011】
上記構成2においては、前記前壁部が、前記ロック解除回転の終了位置で落下させられた前記ロック棒との接触部位から反ロック解除回転方向に向かって高くなる形状を有する、という構成3を採用することができる。
【0012】
この構成3によると、ロック解除回転の終了位置で前壁部上に落下したロック棒が反ロック解除回転しにくくなるので、係合壁の形成する空間への再入をより防止することができる。
【0013】
上記の課題を達成するための第二の手段として、この発明は、戸の縦枠に設けられる台座と、当該台座に組み合わされるロック棒と、戸口枠の縦枠、戸口枠の縦枠に連なる壁面又は他の戸の縦枠に設けられる受け部と、を備え、前記ロック棒が、前記台座によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部と、前記台座に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部と、前記縦軸部から下方に延びる操作端部とを有し、かつ前記台座に対して上下方向に昇降可能かつ前記縦軸部周りに回動可能に設けられており、前記受け部が、前記係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に前記空間に差し込まれた係合端部の前記台座側への移動を規制する係合壁を有し、前記係合端部が前記空間に位置する状態をロック状態と定義し、前記係合端部が前記空間の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、前記ロック状態にある前記ロック棒を前記アンロック状態へ回転させる方向に付勢するばね部材が、当該ロック棒と前記台座との間に設けられており、前記ロック状態にある前記ロック棒の前記操作端部を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒が上昇させられ、当該ロック棒の前記係合端部が前記空間から上方に抜けた後、前記ばね部材の付勢力によって当該ロック棒が前記アンロック状態になるまで回転させられる戸ロック装置、という構成4を採用した。
【0014】
上記構成4によれば、ロック棒を案内、支持する台座が戸の縦枠に設けられ、ロック棒の係合端部を上下方向に抜き差し可能な空間を形成すると共に係合端部の台座側への移動を規制する係合壁をもった受け部が戸口枠の縦枠等に設けられるので、戸を閉じても係合壁の形成する空間が戸に隠れないようにすることができる。したがって、ロック棒を落とす前にロック棒の係合端部が係合壁の形成する空間に入る位置にあるかを直に目測することが可能になるし、落としたロック棒の係合端部が係合壁の形成する空間に入ったかを直に目視確認することも可能になるので、ロック状態にする際の操作性がよい。また、アンロック状態にする際は、ロック状態にあるロック棒の操作端部を指で押し上げるだけで、ロック棒を上昇させ、更に係合端部を係合壁の上方から外すようにばね部材の付勢力で回転させることができる。したがって、ロック状態からアンロック状態になるまでに必要なロック棒の操作方向が上方への一方向のみとなるので、アンロック状態にするまでの操作性もよい。このように、戸側のロック棒を戸口枠等の受け部に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れた戸ロック装置となる。
【発明の効果】
【0015】
このように、この発明は、上記構成1又は4の採用により、戸側のロック棒を戸口枠等の受け部に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れた戸ロック装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(a)はこの発明の第一実施形態に係る戸ロック装置のロック状態における平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図、(c)は同図(b)に示す戸ロック装置の台座及びロック棒を抜粋して示す右側面図
図2】(a)は図1のロック棒を上昇させるロック解除操作中の中間状態における戸ロック装置の平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図、(c)は同図(b)に示す台座及びロック棒の右側面図
図3】(a)は図2の状態からロック棒のロック解除回転が終了した時点のアンロック状態における戸ロック装置の平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図
図4】(a)は図3のアンロック状態からロック棒を落下させた状態における戸ロック装置の平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図
図5】(a)は図4のアンロック状態からロック棒を仮固定した状態における戸ロック装置の平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図
図6】(a)は第一実施形態に係る受け部の変形例をロック状態で示す平面図、(b)は同図(a)に示す変形例の正面図
図7】第一実施形態に係る台座の前壁部の変形例を示す正面図
図8】第一実施形態に係る前壁部の別の変形例を示す正面図
図9】(a)はこの発明の第二実施形態に係る戸ロック装置のロック状態における平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図、(c)は同図(b)に示すC-C線の断面図
図10】(a)は図9に示す台座の軸支持部付近の拡大図、(b)は同図(a)に示すB-B線の部分断面図、(c)は同図(a)に示すC-C線の部分断面図、(d)は同図(a)に示すD-D線の部分断面図
図11】この発明の第三実施形態に係る戸ロック装置の台座を示す正面図
図12図11に示す台座及びロック棒の左側面図
図13】(a)はこの発明の第四実施形態に係る戸ロック装置のロック状態における平面図、(b)は同図(a)に示す戸ロック装置の正面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
この発明の上記第一の手段における一例としての第一実施形態に係る戸ロック装置を添付図面の図1図8に基づいて説明する。
【0018】
図1に示す戸ロック装置(以下、この戸ロック装置という。)は、戸の縦枠100に設けられる台座10と、台座10に組み合わされるロック棒20と、戸口枠の縦枠110側に設けられる受け部30と、を備える。
【0019】
この戸ロック装置は、二枚引き違い戸(いわゆる内障子、外障子)に対してさらに室外側に一枚の網戸を設置する建具構造において、戸口枠に網戸の縦枠100を連結して網戸の自走を防止する用途を想定したものである。戸及び戸口枠の基本的な全体構造は周知のものなので、これらの全体の図示は省略し、ここでは概要を述べるに留める。その戸口枠は、建物の窓、通用口等の出入口に設置される建具であって、上枠と、下枠と、左右の縦枠とを方形に繋いだものであり、その上下の両枠には、引き違い戸、戸を左右方向に走行させるための複数の走行レールを含む。戸は、上枠と、下枠と、左右の縦枠とを方形に繋ぎ、これら枠に網を保持させたものである。
【0020】
戸の縦枠100は、戸口枠の縦枠110に対し、縦枠100を前方から視て左右一方(図1(a),(b)における右方向に対応)に向かって閉じ合わせるようになっている。
【0021】
台座10は、戸の縦枠100の前面壁に固定されている。この固定は、上下方向の複数箇所に雌ねじ部を有する締結板101を縦枠100の前面壁の内面側に配置し、縦枠100の前面壁に対して前方から締結板101の各雌ねじ部に雄ねじ部材102をねじ込み、締結板101と台座10と縦枠100の前面壁とを前後方向に締結することによる。
【0022】
台座10は、縦枠100の前面上に配置される後壁部11と、上下方向に延びる軸受孔部12aを形成するように後壁部11の前方側に連設された軸支持部12と、後壁部11との間に左右方向に延びるスリットを形成するように後壁部11に対して前方の位置へ軸支持部12から上方へ突き出た前壁部13と、前壁部13よりも高い位置で軸支持部12の上端面と上下方向に対向するように後壁部11の前方側に連設された左右一対の傾斜部14a,14bとを有する。台座10は、軸受孔部12aの孔軸線を含みかつ前後方向に沿った垂直面に関して面対称な形状を有する。
【0023】
後壁部11と前壁部13の互いの対向壁面は、上下方向及び左右方向に沿って延びている。軸支持部12の上端面は、軸受孔部12aの左右方向両側において水平方向に沿って延びている。前壁部13の上端縁は、水平方向に沿って延びている。傾斜部14a,14bは、上方に向かって前方側に傾斜している。台座10の左右一方側に位置する傾斜部14aは、傾斜部14aの左右一方(図1(a),(b)における右方)側の端部において傾斜部14aの最前縁を成す稜線部上から左右他方(図1(a),(b)における左方)に向かう程に後方側に傾斜している。左右の傾斜部14aと傾斜部14bとの間は、後壁部11の前述の対向壁面と同一面状になっている。
【0024】
ロック棒20は、軸支持部12の軸受孔部12aによって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部21(水平方向は、縦軸部21の軸径方向に相当する。)と、台座10に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部22と、縦軸部21から下方に延びる操作端部23とを有する。縦軸部21は、軸受孔部12aに嵌合する断面円形の直棒状になっている。係合端部22は、台座10から水平方向に離れた位置で縦軸部21周りに旋回させることができるように縦軸部21の軸線に対して直角な方向に縦軸部21から距離を置いた位置で空中に下向きに突出している。係合端部22は、縦軸部21から上方に連設された断面円形のフック状部の先端部になっている。操作端部23は、縦軸部21から下方に連設された雄ねじ部に螺合する袋ナットによって構成されている。操作端部23における半球状袋部の軸線は、縦軸部21と同一軸線上に配置されている。ロック棒20は、縦軸部21を軸受孔部12aに通した後、操作端部23を設けることにより、台座10と組み合わされる。
【0025】
ロック棒20は、台座10に対して上下方向に一定の範囲で昇降可能に設けられている。そのロック棒20の上昇限界位置は、操作端部23と軸支持部12の下端面との当接位置で決まり、そのロック棒20の下降限界位置は、ロック棒20と軸支持部12の上端面との当接位置で決まるようになっている。操作端部23が軸支持部12の下方に露出しているため、操作端部23を下方から指で押し上げるだけでロック棒20を上昇させることができ、ロック棒20を上昇させるために指を台座10と受け部30との間の狭い空間に差し入れる必要がない。
【0026】
また、ロック棒20は、図2に示すように傾斜部14aの稜線部に接触し始める高さまで上昇させられると、図3図5に示すように台座10に対して縦軸部21周りに回動可能な状態になるように設けられている。そのロック棒20の回動範囲は、後壁部11の前面との前後方向の当接で決まるようになっており、180°の範囲に制限される。
【0027】
受け部30は、戸口枠の縦枠110に連なる壁面120上に固定されている。この固定は、壁面120の左右一方の端面に受け部30の締結板31を沿わせ、締結板31に対して左右他方から複数の雄ねじ部材111をねじ込み、締結板31と壁面120とを左右方向に締結することによる。図示例では受け部30を壁面120に固定したが、受け部30は、戸口枠の縦枠110に固定してもよく、例えば、受け部30の締結板と戸口枠の縦枠110の前面壁とを前後に締結するようにしてもよい。
【0028】
受け部30は、ロック棒20の係合端部22を上下方向に抜き差し可能な空間を縦枠110との間に形成すると共に当該空間に差し込まれた係合端部22の台座10側(図1(a),(b)における左方側)への移動を規制する係合壁32を有する。戸が自走によって開放しようとしたとき、戸の縦枠100が戸口枠の縦枠110から離れる方へ移動しようとするが、係合端部22が係合壁32に台座10側に向かって係合することにより、戸の開放が阻止される。
【0029】
ここで、係合端部22が係合壁32の形成する空間33に位置する状態(図1の(a),(b)参照。なお、同図(c)では受け部30の図示を省略している。)をロック状態と定義する。また、係合端部22が係合壁32の形成する空間33の上方から外れた状態(図3図5)をアンロック状態と定義する。すなわち、アンロック状態とは、ロック棒20が単に上方に移動するのみならず、戸ロック装置を平面視したときに係合端部22が受け部30の形成する抜き差し可能な空間33と上下方向に対向しない位置まで回動した状態をいう。
【0030】
図1のロック状態にあるとき、ロック棒20が前壁部13と後壁部11との間かつ傾斜部14aの下方において軸支持部12の上端面上に落ち着いており、そのロック棒20の縦軸部21周りの回動が前壁部13と後壁部11とで規制される状態にあるとともに、その係合端部22が台座10に対して左右一方へ離れた位置において係合壁32による空間33に入った状態にあり、その操作端部23が軸支持部12から下方に離れた状態にある。
【0031】
図1のロック状態から操作端部23を下方から押し上げるロック解除操作によりロック棒20が所定の高さまで上昇させられると、係合端部22が係合壁32の形成する空間33から上方に抜ける(すなわち、係合端部22が係合壁32の上方を通って縦軸部21周りに回動可能になる)。そのロック解除操作を更に継続することによってロック棒20が図2の高さまで更に上昇させられると、ロック棒20における縦軸部21に対して直角な方向に延びる部位が傾斜部14aの稜線部に上方に向かって接触させられる。そのロック解除操作を更に継続することによってロック棒20が図2の高さから更に上昇させられると、傾斜部14aの前述の上方前傾形状により、ロック棒20の上部と傾斜部14aとの接触位置が次第に前方側へ変わるため、ロック棒20の上昇力が縦軸部21周りに右回り方向の回転力に変換される。その回転力によってロック棒20が回転させられる際、傾斜部14aの前述の稜線部上からの後傾形状により、傾斜部14aがロック棒20の右回り回転を阻止するように干渉せず、また、縦軸部21と同軸の操作端部23の半球状袋部が指で押し上げられることにより、操作端部23と指との接触部がロック棒20の右回り回転を阻止するような抵抗部とならない。
【0032】
継続するロック解除操作によってロック棒20の上部と傾斜部14aとの接触位置が前方側へ変わり続けるロック棒20の右回り回転中にアンロック状態となる。アンロック状態では、ロック棒20が係合壁32の上方から外れた位置にあり、係合端部22が係合壁32の形成する空間33と上下方向に対向しないため、ロック棒20を落下させてしまっても係合端部22が係合壁32の形成する空間33へ落ち入ることはない。
【0033】
やがてロック棒20の上部と傾斜部14aとの接触位置が前方側へ変わらなくなる図3の高さまでロック棒20が上昇させられると、ロック棒20に右回りの回転力が与えられなくなるので、傾斜部14aの傾斜によるロック棒20のロック解除回転(右回り回転)が終了する。このロック解除回転の終了位置において、ロック棒20は、前壁部13の上方を通って前方側へ延びている。このため、図3の状態で操作端部23から指を離し、ロック棒20を落下させると、図4に示すように、ロック棒20が前壁部13上に載る。
【0034】
前壁部13上に載ったロック棒20を更にロック解除回転と同方向(右回り方向)に更に手動回転させる操作により、ロック棒20が前壁部13上を左右他方側へ摺動させられて、前壁部13と後壁部11との間(スリット)に落下させられる。これにより、ロック棒20が、図5に示すように軸支持部12の上端面上に落ち着き、そのロック棒20の縦軸部21周りの回動が前壁部13と後壁部11とで規制されるので、ロック棒20がアンロック状態に仮固定される。この仮固定状態では、ロック棒20の係合端部22が台座10に対して左右他方へ離れた位置にある。
【0035】
アンロック状態に仮固定されたロック棒20をロック状態にする場合、ロック棒20を図5に示す位置から指で上昇させて一旦、前壁部13上に載せる操作を行い、更に縦軸部21周りに左回りに手動回転させる操作を行って、ロック棒20を前壁部13に対して左右一方側へ摺動させて前壁部13と後壁部11との間に落下させると、図1に示すロック状態にすることができる。
【0036】
この戸ロック装置は、上述のようなものであり、戸の縦枠100に設けられる台座10と、台座10に組み合わされるロック棒20と、戸口枠の縦枠110又はこれに連なる壁面120に設けられる受け部30と、を備え、ロック棒20が台座10によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部21と、台座10に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部22と、縦軸部21から下方に延びる操作端部23とを有し、かつ台座10に対して上下方向に昇降可能かつ縦軸部21周りに回動可能に設けられており、受け部30が係合端部22を上下方向に抜き差し可能な空間33を形成すると共に空間33に差し込まれた係合端部22の台座10側への移動を規制する係合壁32を有し、係合端部22が空間33に位置する状態をロック状態と定義し、係合端部22が空間33の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、台座10がロック状態のときにロック棒20と上下方向に距離を置いて対向する傾斜部14aを有し、ロック状態にあるロック棒20の操作端部23を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒20が上昇させられ、当該ロック棒20の係合端部22が空間33から上方に抜けた後も継続する当該ロック解除操作によって当該ロック棒20が台座10の傾斜部14aに接触させられ、当該ロック棒20に与えられる押し上げ力が当該傾斜部14aの傾斜によって縦軸部21周りの回転力に変換され、当該回転力によって当該ロック棒20がアンロック状態になるまで回転させられるものである。
【0037】
この戸ロック装置は、ロック棒20を案内、支持する台座10が戸の縦枠100に設けられ、ロック棒20の係合端部22を上下方向に抜き差し可能な空間33を形成すると共に係合端部22の台座10側への移動を規制する係合壁32をもった受け部30が戸口枠の縦枠110又はこれに連なる壁面120に設けられるので、戸を閉じても(図1参照)、係合壁32の形成する空間33が戸に隠れないようにすることができる。したがって、図5の状態にあるロック棒20を操作して、図1に示すように係合壁32の形成する空間33に落とす操作を行う前にロック棒20の係合端部22が空間33に入る位置にあるかを直に目測することが可能になるし、落としたロック棒20の係合端部22が空間33に入ったかを直に目視確認することも可能になるので、ロック状態にする際の操作性がよい。また、アンロック状態にする際は、ロック状態にあるロック棒20の操作端部23を指で押し上げるだけで、図2図3に示すようにロック棒20を上昇させ、更に係合端部22を空間33の上方から外すように台座10の傾斜部14aで回転させることができる。したがって、ロック状態からアンロック状態になるまでに必要なロック棒20の操作方向が上方への一方向のみとなるので、アンロック状態にするまでの操作性もよい。このように、この戸ロック装置は、戸側のロック棒20を戸口枠等の受け部30に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れたものとして提供することができる。
【0038】
また、この戸ロック装置は、台座10がロック棒20と戸の縦枠100の前面との間に配置される後壁部11と、後壁部11との間にスリットを形成するように後壁部11に対して前方の位置へ突き出た前壁部13とを有し、傾斜部14aとの接触によるロック棒20のロック解除回転の終了位置で当該ロック棒20を落下させると、当該ロック棒20が前壁部13上に載り(図4参照)、当該前壁部13上に載ったロック棒20をロック解除回転と同方向に更に手動回転させる操作によって当該ロック棒20が当該前壁部13と後壁部11との間に落下させられ(図5参照)、当該ロック棒20の縦軸部21周りの回動が当該前壁部13と当該後壁部11とで規制されるようになっていることにより、ロック棒20と傾斜部14aとの接触によるロック棒20のロック解除回転の終了後、ロック棒20から手を離して落下させても、ロック棒20が前壁部13上に載るため、係合端部22が空間33へ再入せず、その前壁部13上に載ったロック棒20をロック解除回転と同方向に更に手動回転させて前壁部13と後壁部11との間に落下させると、ロック棒20の回動が前壁部13と後壁部11とで規制されるため、ロック棒20をアンロック状態に仮固定することができる。
【0039】
なお、第一実施形態では、戸先となる縦枠100が右側の縦枠である場合を例示したが、台座10は左右対称形になっているので、戸先となるのが左側の縦枠である場合でも同様に台座10を左側の縦枠に取り付けると、傾斜部14bにロック棒20を接触させてロック解除回転させることが可能である。なお、右側の縦枠への取り付けのみに対応する台座とする場合、左側の傾斜部14bを省略することもできる。
【0040】
また、第一実施形態では、受け部30を戸口枠の縦枠110又はこれに連なる壁面120に設ける場合を例示したが、例えば、四枚引き違い戸のような場合、受け部を他の戸の縦枠に設けるように変更することも可能である。その変形例を図6に示す。なお、以下の説明では、第一実施形態との相違点を述べるに留める。
【0041】
図6の変形例は、戸の縦枠100と左右方向に対向する他の戸の縦枠130に受け部40が設けられている。受け部40の締結板41は、他の戸の縦枠130の前面壁に固定されている。この固定は、上下方向の複数箇所に雌ねじ部を有する締結板131を他の戸の縦枠130の前面壁の内面側に配置し、他の戸の縦枠130の前面壁に対して前方から締結板131の各雌ねじ部に雄ねじ部材132をねじ込み、締結板41,131と他の戸の縦枠130の前面壁とを前後方向に締結することによる。受け部40の係合壁42は、戸の縦枠100の前面壁及び他の戸の縦枠130の前面壁との間に係合端部22を上下方向に抜き差し可能な空間43を形成するように締結板41から空中に延びている。
【0042】
また、第一実施形態では、前壁部13の上縁が水平方向に沿って延び、この上縁にロック棒20が載る例を示したが、前壁部13の上縁を他の形状に変更することも可能である。その変形例を図7に示す。
【0043】
図7に示す前壁部13の上縁13aは、傾斜部14aの傾斜によるロック解除回転の終了位置(図3参照)から落下させられたロック棒20と接触することになる部位P上から右方に向かって上方に高くなり、部位P上から左方に向かう程に下方に低くなっている。したがって、図3図7に示すロック解除回転の終了位置からロック棒20を落下させると、ロック棒20が前壁部13の上縁13aの部位P上に載り、部位P上のロック棒20に対して前壁部13の上縁13aが反ロック解除回転方向(左回り方向)に向かって高くなる形状を有することになる。
【0044】
このように、前壁部13が、ロック解除回転の終了位置で落下させられたロック棒20との接触部位Pから反ロック解除回転方向に向かって高くなる形状を有することにより、ロック解除回転の終了位置で前壁部13上に落下したロック棒20が図4例よりも反ロック解除回転しにくくなるので、係合壁32の形成する空間33への再入をより防止することができる。
【0045】
図7例では、台座10の左右対称性が前壁部13上でのみ喪失することになるが、前壁部13の左右対称性を維持しつつロック棒20の反ロック解除回転に抵抗するための傾斜を前壁部13にもたせることも可能である。その一例として前壁部13の上縁13aの別の変形例を図8に示す。
【0046】
この図8例の前壁部13の上縁13aは、台座10の左右方向幅の中央部上で下方に最も低くなり、その中央部上から左右両側に向かって次第に上方に高くなっている。このような中凹状の上縁13aの場合であっても、前壁部13は、図3図8に示すロック解除回転の終了位置で落下させられたロック棒20との接触部位Pから反ロック解除回転方向に向かって高くなる形状を有することになる。したがって、図8例では、台座10の左右勝手違いへの対応性を維持しつつ、前壁部13上に落下したロック棒20の反ロック解除回転を防止することができる。また、図5の状態にあるロック棒20を操作して、図1のロック状態にする際、一度ロック棒20を前壁部13上に落下させた場合に、ロック棒20が自重等で勝手に図5の状態に戻ることを防止することができる。
【0047】
また、第一実施形態では、傾斜部14aを軸支持部12の上端面の上方に配置した例を示したが、傾斜部を軸支持部に連設することも可能である。その一例としての第二実施形態を図9及び図10に示す。
【0048】
第二実施形態に係る台座50は、軸支持部51と前壁部52間のスリットの上方に傾斜部を有さず、軸受孔部51aの下端部において軸受孔部51aの軸線周りに螺旋状に延びる左右一対の傾斜部53a,53bを有する。左右の傾斜部53a,53bは、左右対称形であり、互いの螺旋巻き方向は逆である。左右一方(同図において右方)の傾斜部53aは、上方に向かう程に前方側へ傾斜し(図9(c)参照)かつ上方に向かって左巻きに傾斜している(図10(d)~(b)参照。なお、図中、後壁部の図示は省略している。)。
【0049】
ロック棒60は、縦軸部61の軸線と直角な方向に突き出た突起部62を有する。突起部62は、図9に示すように、ロック状態にあるときに傾斜部53aの下方に位置する。なお、軸支持部51及び前壁部52には、縦軸部61を軸受孔部51aに通す際に突起部62を上方から下方に向かって通過させるための入れ溝54が形成されている。
【0050】
ロック状態にあるロック棒60の操作端部を下方から押し上げると、突起部62が傾斜部53aに接触させられ、当該ロック棒60に与えられる押し上げ力が傾斜部53aの螺旋状に基づく傾斜によって縦軸部61周りの回転力に変換され、当該押し上げ力及び当該回転力によって当該ロック棒60がアンロック状態になるまで上昇及び回転させられる。なお、突起部62は、縦軸部61と繋ぎ目なく一体に設けてもよいし、縦軸部61に取り付ける部品で構成してもよい。
【0051】
また、ロック棒をロック解除回転させるための傾斜部は、軸支持部よりも下方に配置することも可能である。その一例としての第三実施形態を図11及び図12に示す。
【0052】
第三実施形態に係る台座70は、後壁部71の上下方向長さに占める軸支持部72の上下方向長さが第一実施形態よりも短縮され、傾斜部73a,73bが軸支持部72から下方に離れた位置で後壁部71の前方側に連設されたものである。傾斜部73a,73bの傾斜形状は第一実施形態と同様である。ロック棒80は、縦軸部81の軸線と直角な方向に突き出た突起部82を有する。突起部82は、図11図12に示すように、ロック状態にあるときに傾斜部73aの下方に位置する。ロック状態にあるロック棒80の操作端部を下方から押し上げると、突起部82が傾斜部73aに接触させられ、当該ロック棒80に与えられる押し上げ力が傾斜部73aの傾斜によって縦軸部81周りの回転力に変換され、当該押し上げ力及び当該回転力によって当該ロック棒80がアンロック状態になるまで上昇及び回転させられる。なお、突起部82は縦軸部81に取り付ける部品で構成されている。
【0053】
この発明の上記第二の手段における一例としての第四実施形態に係る戸ロック装置を図13に示す。
【0054】
第四実施形態に係る戸ロック装置は、第一実施形態の台座から傾斜部を省いた台座90を備える。台座90の後壁部91とロック棒20との間にばね部材92が設けられている。ばね部材92は、捻りコイルばねになっている。ロック棒20の縦軸部21は、ばね部材92のコイル巻き部92aの内側に通されている。ばね部材92の下方側の脚部92bは、縦軸部21周りに左回転することができないように後壁部91によって規制される。ばね部材92の上方側の脚部92cは、ロック棒20の旋回腕部24に掛けられている。なお、ロック棒20の旋回腕部24は、縦軸部21の軸線に対して直角な方向に延びる直棒状の部位であり、係合端部22は、旋回腕部24の縦軸部21に対する遠位端部から下向きに突出している。脚部92cは、ロック棒20の縦軸部21周りの回動時、旋回腕部24と一体に縦軸部21周りに連れ回される。
【0055】
ロック棒20がアンロック状態(図3参照)から反ロック解除回転(左回り回転)させられると、ばね部材92の上方側の脚部92cが旋回腕部24によって連れ回される一方、下方側の脚部92bの連れ回りが後壁部91によって阻止されるため、ばね部材92がロック棒20をロック解除回転させる方向の力を蓄勢することになる。したがって、ばね部材92は、図13に示すようにロック状態にあるロック棒20をロック解除回転させる方向に付勢することになる。そして、ロック状態にあるロック棒20の操作端部23を下方から押し上げるロック解除操作によって係合端部22が係合壁32の形成する空間33から上方に抜けた後、ばね部材92の付勢力が一時的に台座90の前壁部で受けられるため、当該付勢力によるロック棒20のロック解除回転が台座90の前壁部で一時的に阻止されるが、当該ロック棒20の旋回腕部24が台座90の前壁部よりも上方に高くなると、ばね部材92の付勢力によって当該ロック棒20がアンロック状態になるまでロック解除回転させられることになる。
【0056】
このように、第四実施形態に係る戸ロック装置は、戸の縦枠100に設けられる台座90と、台座90に組み合わされるロック棒20と、戸口枠の縦枠110又はこれに連なる壁面120に設けられる受け部30(又は図6に示す受け部40)と、を備え、ロック棒20が、台座90によって上下方向に案内されると共に水平方向の移動を規制される縦軸部21と、台座90に対して水平方向に離れた位置で下方に延びる係合端部22と、縦軸部21から下方に延びる操作端部23とを有し、かつ台座90に対して上下方向に昇降可能かつ縦軸部21周りに回動可能に設けられており、受け部30(又は図6に示す受け部40)が、係合端部22を上下方向に抜き差し可能な空間33(又は図6に示す空間43)を形成すると共に空間33(又は図6に示す空間43)に差し込まれた係合端部22の台座90側への移動を規制する係合壁32(又は図6に示す係合壁42)を有し、係合端部22が空間33(又は図6に示す空間43)に位置する状態をロック状態と定義し、係合端部22が係合壁32(又は図6に示す係合壁42)の上方から外れた状態をアンロック状態と定義したとき、ロック状態にあるロック棒20をアンロック状態へ回転させる方向に付勢するばね部材92が、当該ロック棒20と台座90との間に設けられており、ロック状態にあるロック棒20の操作端部23を下方から押し上げるロック解除操作によって当該ロック棒20が上昇させられ、当該ロック棒20の係合端部22が空間33(又は図6に示す空間43)から上方に抜けた後、ばね部材92の付勢力によって当該ロック棒20がアンロック状態になるまで回転させられるものである。
【0057】
このように、第四実施形態に係る戸ロック装置も、第一実施形態と同様にロック状態にする際の操作性がよく、また、アンロック状態にする際は、ロック状態にあるロック棒20の操作端部23を指で押し上げるだけで、ロック棒20を上昇させ、更に係合端部22を係合壁32(又は図6に示す係合壁42)の上方から外すようにばね部材92の付勢力で回転させることができ、したがって、ロック状態からアンロック状態になるまでに必要なロック棒20の操作方向が上方への一方向のみとなるので、アンロック状態にするまでの操作性もよいため、戸側のロック棒20を戸口枠等の受け部30(又は図6に示す40)に落し入れる簡易なロック機構でありながら操作性に優れたものとして提供することができる。
【0058】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0059】
10,50,70,90 台座
11,71,91 後壁部
13,52 前壁部
14a,14b,53a,53b,73a,73b 傾斜部
20,60,80 ロック棒
21,61,81 縦軸部
22 係合端部
23 操作端部
24 旋回腕部
30,40 受け部
32,42 係合壁
33,43 空間
62,82 突起部
92 ばね部材
100 戸の縦枠
110 戸口枠の縦枠
120 壁面
130 他の戸の縦枠
P 接触部位
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13