(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081851
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両用シートクッション
(51)【国際特許分類】
B60N 2/56 20060101AFI20240612BHJP
A47C 7/74 20060101ALI20240612BHJP
A47C 31/02 20060101ALI20240612BHJP
B68G 7/052 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B60N2/56
A47C7/74 B
A47C31/02 B
B68G7/052 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195340
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000151760
【氏名又は名称】株式会社東洋シート
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金永 雄基
(72)【発明者】
【氏名】木村 瑞穂
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084JA06
3B084JF02
3B084JF03
3B087DE09
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】着座による負荷が繰り返し加わってもヒータ線が断線しないようにする。
【解決手段】シートヒータ13は、第1加温部13aと、第2加温部13bと、第1加温部13aと第2加温部13bとを接続する接続部13dとを備えている。パッド11の上面における接続部13dに対応する部分には、接続部13dが収容される収容部16が下方へ窪むように形成されている。収容部16には、弾性材からなるブロック材31が接続部13dの上面に接触するように収容されている。接続部13dは、収容部16の内面に沿って配置されるとともに、収容部16の内面とブロック材31の外面とで挟まれている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性材からなるとともに左右方向に延びる溝部が形成されたパッドと、前記パッドを覆うように設けられ、引き込みワイヤによって前記溝部に引き込まれた表皮材と、前記パッドと前記表皮材との間に設けられたシートヒータとを備えた車両用シートクッションであって、
前記シートヒータは、前記溝部よりも車両前方に配置され、ヒータ線を有する第1加温部と、前記溝部よりも車両後方に配置され、ヒータ線を有する第2加温部と、前記第1加温部の車両後部から前記第2加温部の車両前部まで延びるとともに前記第1加温部のヒータ線と前記第2加温部のヒータ線とを接続する接続線を有する接続部とを備え、
前記パッドの上面における前記接続部に対応する部分には、前記接続部が収容される収容部が下方へ窪むように形成され、
前記収容部には、弾性材からなるブロック材が前記接続部の上面に接触するように収容され、
前記接続部は、前記収容部の内面に沿って配置されるとともに、当該内面と前記ブロック材の外面とで挟まれていることを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用シートクッションにおいて、
前記収容部の内面における車両後側に位置する後側面は、下へ行くほど前に位置するように傾斜していることを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用シートクッションにおいて、
前記収容部の前記後側面と、前記パッドの上面における前記収容部の車両後側に位置する面とのなす角度が90°以上に設定されていることを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用シートクッションにおいて、
前記表皮材における前記溝部に引き込まれる部分には、前記引き込みワイヤに固定される固定部が左右方向に延びるように設けられ、
前記収容部の深さは前記溝部よりも深く設定され、
前記ブロック材の上面には、前記固定部が収容される凹部が前記溝部と連続するように形成されていることを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項5】
請求項1に記載の車両用シートクッションにおいて、
前記接続部は、前記シートヒータの左右方向の一部にのみ設けられ、
前記収容部は、前記パッドの上面の左右方向の一部にのみ設けられ、
前記ブロック材の材質と前記パッドの材質とは同じであることを特徴とする車両用シートクッション。
【請求項6】
請求項2に記載の車両用シートクッションにおいて、
前記収容部の内面における車両前側に位置する前側面は、下へ行くほど後に位置するように傾斜し、
前記収容部の底面は、前記後側面の下端部から前記前側面の下端部まで延びており、
前記後側面と前記底面とのなす角度、及び前記前側面と前記底面とのなす角度は、90°以上に設定されていることを特徴とする車両用シートクッション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば自動車等の車両で使用される車両用シートクッションに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に開示されているように、車両用シートは、シートクッションとシートバックとを備えており、シートクッションは、座面を形成する発泡材からなるパッドと、パッドを覆う表皮材とで構成されている。
【0003】
図11は従来のシートクッションの構造を示す断面図であり、
図11中の「前」及び「後」は車両の前後方向に対応している。パッド100の座面における前後方向中間部には、左右方向に長い溝部101が形成されており、この溝部101の下方にはインサートワイヤ102が配設されている。表皮材103の前後方向中間部には、引き込み布104が縫い付けられている。引き込み布104には、引き込みワイヤ105が設けられており、表皮材103が溝部101に引き込まれた状態で引き込み布104の引き込みワイヤ105がクリップ106によってインサートワイヤ102に固定されている。
【0004】
特許文献1のパッド100と表皮材103との間には、シートヒータ107が設けられている。シートヒータ107も表皮材103と同様に、パッド100の溝部101内に引き込まれて引き込みワイヤ105とインサートワイヤ102との間を通るように取り回されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、シートクッションのパッド100は乗員が着座すると座面が沈むように変形する。座面が沈むと、それに応じてシートヒータ107も変形することになる。このとき、溝部101内に着目すると、シートヒータ107が引き込みワイヤ105によって引き込まれた状態になっており、シートヒータ107の周りには広い空間Rが存在している。このような状況において乗員が着座すると、溝部101内に位置するシートヒータ107は空間R内で拘束されていないので撓んでしまい、主に上下方向に折れ曲がるような変形を起こすことがある。
【0007】
ここで、シートヒータ107は金属製の導体で構成されたヒータ線が基材布に固定されたものであり、可撓性を有しているが、上述したような折れ曲がりが何度も繰り返されると、ヒータ線が曲げ疲労によって断線してしまい、必要時に加温できなくなるおそれがある。
【0008】
また、乗員が着座する時、矢印110に示すように斜め後ろ上方から斜め前へ向けて荷重が加わることもある。このような荷重が加わってパッド100が沈み込むと、溝部101内に位置するシートヒータ107は、仮想線で示すように鋭角状に屈曲してしまい、ヒータ線に加わる負荷が増大して断線しやすくなる。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、着座による負荷が繰り返し加わってもヒータ線が断線しないようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、弾性材からなるとともに左右方向に延びる溝部が形成されたパッドと、前記パッドを覆うように設けられ、引き込みワイヤによって前記溝部に引き込まれた表皮材と、前記パッドと前記表皮材との間に設けられたシートヒータとを備えた車両用シートクッションを前提とすることができる。前記シートヒータは、前記溝部よりも車両前方に配置され、ヒータ線を有する第1加温部と、前記溝部よりも車両後方に配置され、ヒータ線を有する第2加温部と、前記第1加温部の車両後部から前記第2加温部の車両前部まで延びるとともに前記第1加温部のヒータ線と前記第2加温部のヒータ線とを接続する接続線を有する接続部とを備えている。前記パッドの上面における前記接続部に対応する部分には、前記接続部が収容される収容部が下方へ窪むように形成され、前記収容部には、弾性材からなるブロック材が前記接続部の上面に接触するように収容されている。前記シートヒータの前記接続部は、前記収容部の内面に沿って配置されるとともに、当該内面と前記ブロック材の外面とで挟まれている。
【0011】
この構成によれば、シートヒータの作動時には、接続線を介して第1加温部のヒータ線と第2加温部のヒータ線とが接続されているので車両用シートクッションの溝部よりも前方及び後方がそれぞれ加温される。また、乗員が車両用シートクッションに着座すると、乗員の体重によってパッドが沈み込むように変形するとともに、ブロック材も変形する。このとき、接続部は、収容部の内面に沿って配置されていて、収容部の内面とブロック材の外面とで挟まれているので、接続部の周りには従来例のような広い空間が無く、パッド及びブロック材の変形に追従するように変形する。これにより、接続部が撓みにくくなり、折れ曲がり変形が抑制される。
【0012】
また、車両用シートクッションに対して斜め後ろから斜め前へ向けて下向きの荷重が加わった場合には、収容部にブロック材が収容されていることで、
図11に仮想線で示すような変形が抑制され、接続部の折れ曲がり変形が抑制される。
【0013】
また、前記収容部の内面における車両後側に位置する後側面は、下へ行くほど前に位置するように傾斜していてもよく、例えば、前記収容部の前記後側面と、前記パッドの上面における前記収容部の車両後側に位置する面とのなす角度を90°以上に設定することができる。これにより、車両用シートクッションに対して斜め後ろから斜め前へ向けて下向きの荷重が加わった場合に、接続部が鋭角に折れ曲がるのが抑制される。
【0014】
また、前記表皮材における前記溝部に引き込まれる部分には、前記引き込みワイヤに固定される固定部が左右方向に延びるように設けられていてもよい。この場合、前記収容部の深さを前記溝部よりも深く設定することができ、前記ブロック材の上面には、前記固定部が収容される凹部を、前記溝部と連続するように形成することができる。この構成によれば、表皮材の固定部を左右方向に連続させる場合に、固定部を避けるようにブロック材を設けることができる。また、表皮材の固定部とシートヒータの接続部との間にブロック材が介在することになるので、固定部が接続部に当たることはなく、接続部の損傷が抑制される。
【0015】
また、前記接続部は、前記シートヒータの左右方向の一部、即ち、例えば左側にのみ、または右側にのみ設けられていてもよい。この場合、接続部の位置に対応するように、前記収容部が前記パッドの上面の左右方向の一部にのみ設けられている。そして、前記ブロック材の材質と前記パッドの材質とを同じにすることで、乗員が着座した時に、シートクッションの部位による硬さの相違が生じ難くなり、違和感を無くすことができる。
【0016】
また、前記収容部の内面における車両前側に位置する前側面は、下へ行くほど後に位置するように傾斜していてもよい。この場合、前記収容部の底面は、前記後側面の下端部から前記前側面の下端部まで延びるように形成され、前記後側面と前記底面とのなす角度、及び前記前側面と前記底面とのなす角度を90°以上に設定することができる。これにより、接続部を収容部の内面に沿わせたときに、接続部が鋭角に折れ曲がらなくなるので、より一層断線し難くなる。
【発明の効果】
【0017】
以上説明したように、シートヒータの第1加温部と第2加温部とを接続する接続部を、パッドに形成された収容部に収容した状態で上方からブロック材で押さえることができるので、着座による負荷が繰り返し加わってもヒータ線が断線しないようにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用シートの斜視図である。
【
図3】
図2におけるIII-III線断面図である。
【
図7】パッドの上にシートヒータを配置した状態を示す平面図である。
【
図8】各ブロック材を収容部に収容した状態を示す平面図である。
【
図9】ブロック材を収容部に収容する前の状態を示す斜視図である。
【
図11】従来例のシートクッションの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0020】
図1は、本発明の実施形態に係る車両用シート1を示すものである。車両用シート1は、例えば自動車の車室内に配設されるものであり、運転席であってもよいし、助手席であってもよく、また後部座席であってもよい。この実施形態の説明では、車両前側を単に「前」といい、車両後側を単に「後」というものとする。また、車両左側を単に「左」といい、車両右側を単に「右」というものとする。左右方向は車幅方向に一致している。
【0021】
車両用シート1は、自動車のフロアパネル(図示せず)に取り付けられるシートクッション10と、シートクッション10の後部に対してリクライニング機構を介して取り付けられたシートバック20とを備えている。シートクッション10は、着座時の乗員の臀部から太腿の裏側を支持する部材である。一方、シートバック20は、着座時の乗員の腰部、背中、肩を支持する部材である。
【0022】
シートクッション10は、本発明の車両用シートクッションであり、平面視で
図2に示すような形状を有している。
図3及び
図4に示すように、シートクッション10は、パッド11と、パッド11を覆うように設けられた表皮材12と、シートヒータ13とを備えている。パッド11は、例えば発泡ウレタン等の弾性材で構成されており、図示しないシートフレーム等に固定されている。表皮材12は、例えば布材等で構成されており、裏地を有していてもよいし、有していなくてもよい。表皮材12は、例えば合成皮革、天然皮革等で構成されていてもよく、その素材は特に限定されない。
【0023】
図2に示すように、表皮材12は、左側領域12aと、右側領域12bと、前側領域12cと、中間領域12dと、後側領域12eとを有しており、これら各領域12a~12eは別々の裁断された部材を縫い合わせて一体化されていてもよいし、1枚の表皮材で構成されていてもよい。また、本例では、上記5つの領域12a~12eに区分け可能な表皮材12について説明するが、これに限られるものはなく、例えば中間領域12dがなく、前側領域12cと後側領域12eが連続した形態であってもよいし、左側領域12a及び右側領域12bがなく、複数の領域が前後に連続した形態であってもよい。
【0024】
左側領域12aは、シートクッション10の左側部において前端部から後端部まで連続した領域であり、パッド11の同領域(左側領域)を覆うとともにパッド11の左側面の下端部まで延びるように形成されている。右側領域12bは、シートクッション10の右側部において前端部から後端部まで連続した領域であり、パッド11の同領域(右側領域)を覆うとともにパッド11の右側面の下端部まで延びるように形成されている。
【0025】
前側領域12cは、左側領域12aと右側領域12bとの間の前側部分に位置する領域であり、左側領域12aから右側領域12bまで連続するとともに、パッド11の前面の下端部まで延びるように形成されている。中間領域12dは、左側領域12aと右側領域12bとの間において前側領域12cの後に連続するように形成されており、左側領域12aから右側領域12bまで連続している。後側領域12eは、左側領域12aと右側領域12bとの間において中間領域12dの後に連続するように形成されており、左側領域12aから右側領域12bまで連続している。
【0026】
詳細は後述するが、表皮材12における前側領域12cと中間領域12dの間の部分は、パッド11の内方へ向けて引き込まれており、これにより、左右方向に延びる前側凹条部12fが形成されている。また、同様に、表皮材12における中間領域12dと後側領域12eの間の部分もパッド11の内方へ向けて引き込まれており、これにより、左右方向に延びる後側凹条部12gが形成されている。また、表皮材12における左側領域12aの右側部には、前後方向に延びる左側凹条部12hが形成されており、この左側凹条部12hは、パッド11の内方へ向けて引き込まれることによって形成されている。さらに、表皮材12における右側領域12bの左側部には、前後方向に延びる右側凹条部12iが形成されており、この右側凹条部12iも、パッド11の内方へ向けて引き込まれることによって形成されている。
【0027】
図5に示すように、パッド11の左側部には、左溝部11aが前後方向に延びるように形成されている。左溝部11aには、表皮材12における左側領域12aの右側部が引き込まれており、これにより、表皮材12に左側凹条部12hが形成される。また、パッド11の右側部には、左溝部11aが前後方向に延びるように形成されている。右溝部11bには、表皮材12における右側領域12bの左側部が引き込まれており、これにより、表皮材12に右側凹条部12iが形成される。
【0028】
パッド11の前後方向中間部には、前側溝部11cと後側溝部11dとが左右方向に延びるように形成されている。前側溝部11cの左端部は、左溝部11aと連続しており、前側溝部11cの右端部は、右溝部11bと連続している。前側溝部11cには、表皮材12における前側領域12cと中間領域12dとの境界部分が引き込まれており、これにより、表皮材12に前側凹条部12fが形成される。また、後側溝部11dは前側溝部11cから後方に離れており、後側溝部11dの左端部は左溝部11aと連続し、後側溝部11dの右端部は右溝部11bと連続している。後側溝部11dには、表皮材12における中間領域12dと後側領域12eとの境界部分が引き込まれており、これにより、表皮材12に後側凹条部12gが形成される。
【0029】
図3に示すように、前側溝部11cの内部における底部近傍には引き込みワイヤ200が設けられている。引き込みワイヤ200は左右方向に延びており、その素材は特に限定されるものではない。引き込みワイヤ200の左端部及び右端部は、それぞれシートクッション10が固定されたシートフレーム(図示せず)に結合されている。表皮材12における前側領域12cと中間領域12dとの境界部分は、前側溝部11cに引き込まれる部分であり、この表皮材12における前側溝部11cに引き込まれる部分の裏側には、引き込みワイヤ200に固定される固定部14が左右方向に延びるように設けられている。固定部14は、表皮材12に対して外れないように強固に結合されており、例えば縫い付け等によって固定される。
【0030】
引き込みワイヤ200の上方に固定部14が配置されている。固定部14は前側溝部11cの底部側へ引き込まれた状態で、例えばリング状部材201等の固定部材によって引き込みワイヤ200に固定される。表皮材12の各部は、同様にしてパッド11内に引き込まれて固定されている。
【0031】
図6に示すように、シートヒータ13は、パッド11の上面と表皮材12の裏面との間に設けられており、着座した乗員を加温するための加温用の部材である。具体的には、
図6に示すように、シートヒータ13は、基材布13Aと、基材布13Aに固定された導線からなるヒータ線13Bとを有しており、ヒータ線13Bに外部から電力が供給されることで当該ヒータ線13Bが発熱するように構成されている。ヒータ線13Bの基材布13A上でのパターンは任意に設定することができる。
【0032】
シートヒータ13は、前側加温部(第1加温部)13aと、中間加温部(第2加温部)13bと、後側加温部13cとを有している。前側加温部13a、中間加温部13b及び後側加温部13cは、左右方向に長い形状とされている。また、前側加温部13a、中間加温部13b及び後側加温部13cは、それぞれ前側ヒータ線131、中間ヒータ線132及び後側ヒータ線133を有しており、この実施形態では、1本のヒータ線13Bが後側加温部13cから中間加温部13bを経て後側加温部13cまで延びた後、後側加温部13cから中間加温部13bを経て後側加温部13cまで連続して延びるように設けられることで、前側ヒータ線131、中間ヒータ線132及び後側ヒータ線133が構成されている。後側加温部13cから延びる配線15を介して、シートヒータ13を制御する制御装置(図示せず)と、ヒータ線13Bとが導通可能に接続されている。尚、
図7、
図8等ではヒータ線13Bを省略している。
【0033】
図2に示すように、シートヒータ13の前側加温部13aは、パッド11の前側溝部11cよりも前方に配置される部分であり、表皮材12の前側領域12cの真下に位置付けられる。また、シートヒータ13の中間加温部13bは、パッド11の前側溝部11cよりも後方かつ後側溝部11dよりも前方に配置される部分であり、表皮材12の中間領域12dの真下に位置付けられる。さらに、シートヒータ13の後側加温部13cは、パッド11の後側溝部11dよりも後方に配置される部分であり、表皮材12の後側領域12eの真下に位置付けられる。このように、シートヒータ13によってシートクッション10の広範囲を加温することが可能になっている。
【0034】
シートヒータ13は、前側接続部13dと後側接続部13eとを有している。前側接続部13dは、前側加温部13aの後部から中間加温部13bの前部まで延びるとともに前側加温部13aの前側ヒータ線131と中間加温部13bの中間ヒータ線132とを接続する前側接続線134を有している。この実施形態では、2つの前側接続部13dが左右方向に互いに間隔をあけて設けられているが、前側接続部13dは1つのみ設けてもよく、いずれにしても、シートヒータ13の左右方向の一部にのみ設けられることになる。
【0035】
後側接続部13eは、中間加温部13bの後部から後側加温部13cの前部まで延びるとともに中間加温部13bの中間ヒータ線132と後側加温部13cの後側ヒータ線133とを接続する後側接続線135を有している。尚、前側接続部13dと同様に、後側接続部13eを1つのみ設けてもよい。また、この実施形態では3つの加温部13a、13、b、13cを設けているが、これに限らず、2つの加温部を前後方向に並ぶように設けてもよい。
【0036】
図5に示すように、パッド11の上面には後述するブロック材31~34が収容される左前側収容部16、右前側収容部17、左後側収容部18及び右後側収容部19がそれぞれ下方へ窪むように形成されている。左前側収容部16は、シートヒータ13の左の前側接続部13dに対応する部分に形成されている。左の前側接続部13dに対応する部分とは、左の前側接続部13dの真下に位置する部分である。同様に、右前側収容部17は、シートヒータ13の右の前側接続部13dに対応する部分に形成され、左後側収容部18は、シートヒータ13の左の後側接続部13eに対応する部分に形成され、右後側収容部19は、シートヒータ13の右の後側接続部13eに対応する部分に形成されている。したがって、左前側収容部16、右前側収容部17、左後側収容部18及び右後側収容部19は、パッド11の上面の左右方向の一部にのみ設けられることになる。また、左前側収容部16、右前側収容部17、左後側収容部18及び右後側収容部19は、同じ形状である。
【0037】
例えば
図7に示すように、パッド11の上にシートヒータ13を配置すると、シートヒータ13の左の前側接続部13dが左前側収容部16に収容される。左前側収容部16に収容されることで、前側接続部13dが下に曲がることになるので、その分だけ、前側接続部13dを長めに形成しておく。そして、
図4に示すように、左前側収容部16にブロック材31を収容すると、ブロック材31が前側接続部13dの上面に接触するように収容される。この状態で、前側接続部13dは、左前側収容部16の内面に沿って配置されるとともに、左前側収容部16の内面とブロック材31の外面とで挟まれている。
図8に示すように、右前側収容部17、左後側収容部18及び右後側収容部19には、左前側収容部16と同様にブロック材32~34が収容される。ブロック材31~34の材質は、パッド11の材質と同じである。これにより、乗員が着座した時に、シートクッション1の部位による硬さの相違が生じ難くなり、違和感を無くすことができる。
【0038】
ブロック材31~34は、パッド11とは別部材で構成されていてもよいし、パッド11と一体成形されていてもよい。ブロック材31~34をパッド11と一体成形する場合には、例えば薄肉ヒンジのような屈曲可能な部分をブロック材31~34とパッド11との境界に形成しておき、パッド11及びブロック材31~34の一体成形後、シートヒータ13の前側接続部13dを左前側収容部16に収容してから、ブロック材31を薄肉ヒンジ周りに回動させて左前側収容部16に収容することができる。
【0039】
尚、ブロック材31~34の材質とパッド11の材質とを同じにしなくてもよく、着座した乗員が感じ取りにくい範囲内であれば、ブロック材31~34の材質とパッド11の材質とを変えてもよい。
【0040】
図4に示すように、左前側収容部16の内面における後側に位置する面は後側面16aとされており、下へ行くほど前に位置するように傾斜している。左前側収容部16の後側面16aと、パッド11の上面における左前側収容部16の車両後側に位置する面11eとのなす角度Aは90°以上に設定されている。角度Aは、90°以上150°以下の範囲で設定されており、好ましくは100°以上130°以下の範囲である。
【0041】
左前側収容部16の内面における前側に位置する面は前側面16bとされており、下へ行くほど後に位置するように傾斜している。したがって、左前側収容部16の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなっている。尚、左前側収容部16の左右方向の寸法は、上端部から底部まで同一となっている。
【0042】
左前側収容部16の前側面16bと、パッド11の上面における左前側収容部16の車両前側に位置する面11fとのなす角度Bは上記角度Aと同様に設定されている。
【0043】
左前側収容部16の底面16cは、後側面16aの下端部から前側面16bの下端部まで延びていて、
図3に示す前側溝部11cの底面よりも下に位置付けられている。要するに、左前側収容部16の深さは、前側溝部11cよりも深く設定されている。左前側収容部16の底面16cは水平であってもよいし、後へ行くほど上に位置するように傾斜していてもよいし、前へ行くほど上に位置するように傾斜していてもよい。後側面16aと底面16cとのなす角度C、及び前側面16bと底面16cとのなす角度Dは、90°以上に設定されている。角度C及び角度Dは、90°以上150°以下の範囲で設定されており、好ましくは100°以上130°以下の範囲である。
【0044】
ブロック材31の前面31aは、左前側収容部16の前側面16bに沿うように形成されている。また、ブロック材31の後面31bは、左前側収容部16の後側面16aに沿うように形成されている。したがって、ブロック材31の前後方向の寸法は、下へ行くほど短くなっている。さらに、ブロック材31の下面31cは、左前側収容部16の底面16cに沿うように形成されている。尚、ブロック材31の左右方向の寸法は、上端部から底部まで同一となっている。また、ブロック材31の上面の前後方向の寸法は、当該ブロック材31の前側が前側加温部13aに達しないように、また当該ブロック材31の後側が中間加温部13bに達しないように設定されている。これにより、ブロック材31によって前側加温部13a及び中間加温部13bが覆われることはなく、加温効率が低下することはない。
【0045】
図4に示すように、ブロック材31の上面には、表皮材12の固定部14が収容される凹部31dが形成されている。
図9にも示すように、凹部31dは、ブロック材31の左右方向に連続して形成されている。凹部31dは、ブロック材31の左端面及び右端面で開放されている。
図8に示すように、ブロック材31を左前側収容部16に収容した状態では、凹部31dの左端部及び右端部は前側溝部11cと連続しており、これにより、固定部14を収容可能となるように左右方向に連続した溝が形成される。尚、他のブロック材32~34も上記ブロック材31と同様に構成されており、ブロック材32~34の上面には凹部32d、33d、34dがそれぞれ形成されている。
【0046】
シートヒータ13の前側接続部13dがブロック材31の下に配置された状態で、ブロック材31の上面と、パッド11の上面とが略同じ高さ、またはブロック材31の上面がシートヒータ13の前側加温部13aの厚み分だけパッド11の上面から突出するように、ブロック材31が形成されている。これにより、ブロック材31を設けたことによる着座時の違和感を軽減できる。
【0047】
(実施形態の作用効果)
以上説明したように、本実施形態によれば、シートヒータ13の作動時には、前側接続部13d及び後側接続部13eを介して前側加温部13a、中間加温部13b及び後側加温部13cが接続されているので、シートクッション10の前側から後側まで広範囲に加温することができる。
【0048】
乗員がシートクッション10に着座すると、乗員の体重によってパッド11が沈み込むように変形するとともに、ブロック材31~34も変形する。このとき、
図4に示すように、パッド11の左前側収容部16に収容されているシートヒータ13の前側接続部13dに着目すると、前側接続部13dが左前側収容部16の内面、即ち後側面16a、底面16c及び前側面16bに沿って配置されているとともに、この左前側収容部16にブロック材31が収容されている。そして、前側接続部13dは、左前側収容部16の後側面16a、底面16c及び前側面16bと、ブロック材31の後面31b、下面31c及び前面31aとで挟まれているので、前側接続部13dの周りには従来例のような広い空間が無く、パッド11及びブロック材31の変形に追従するように変形する。これにより、左の前側接続部13dが撓みにくくなり、左の前側接続線134の折れ曲がり変形が抑制される。
【0049】
また、シートクッション10に対して斜め後ろから斜め前へ向けて下向きの荷重が加わった場合には、左前側収容部16にブロック材31が収容されていることで、左の前側接続線134の大きな折れ曲がりが抑制される。
【0050】
さらに、左前側収容部16の後側面16aが下へ行くほど前に位置するように傾斜していて、左前側収容部16の後側面16aと、パッド11の面11eとのなす角度A(
図4に示す)が90°以上に設定されているので、シートクッション10に対して斜め後ろから斜め前へ向けて下向きの荷重が加わった場合に、左の前側接続線134が鋭角に折れ曲がるのが抑制される。尚、右側の前側接続線134及び左右の後側接続線135も同様である。
【0051】
したがって、本実施形態に係るシートクッション1では、シートヒータ13の前側接続部13d及び後側接続部13eを、パッド11に形成された収容部16~19に収容した状態で上方からブロック材31~34で押さえることができる。よって、着座による負荷が繰り返し加わってもヒータ線13Bが断線しないようにすることができる。
【0052】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
図10は、実施形態の変形例に係るものであり、この変形例では、収容部16の後側面16aと、パッド11の面11eとが曲面で接続されており、また収容部16の前側面16bと、パッド11の面11fとが曲面で接続されている。さらに、収容部16の後側面16aと底面16cとが曲面で接続され、また収容部16の前側面16bと底面16cとが曲面で接続されている。このように各面を曲面で接続した場合もヒータ線13Bの折れ曲がりを抑制することができるので、上述した作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本開示に係る車両用シートクッションは、例えば自動車等の車両用シートとして利用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 車両用シート
10 車両用シートクッション
11 パッド
11c 前側溝部
12 表皮材
13 シートヒータ
13a 前側加温部(第1加温部)
13b 中間加温部(第2加温部)
13d 前側接続部
14 固定部
16 左前側収容部
31 ブロック材
200 引き込みワイヤ