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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081854
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240612BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 E
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195352
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120514
【弁理士】
【氏名又は名称】筒井 雅人
(72)【発明者】
【氏名】福田 保和
(72)【発明者】
【氏名】岡部 直樹
(72)【発明者】
【氏名】水本 大貴
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB06
3D203BB12
3D203BB16
3D203CA25
3D203CA33
3D203CA37
3D203CA52
3D203CA67
3D203CB03
3D203CB09
3D203CB19
3D203DB05
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC15
3D235DD35
3D235EE63
3D235EE64
3D235FF06
3D235FF09
3D235HH26
(57)【要約】
【課題】車両の側突発生時における蓄電装置ユニットの保護性能を優れたものとすることが可能な車両構造を提供する。
【解決手段】車両構造Aは、サイドメンバ2の傾斜部20を含む領域とロッカ3との両者間に橋渡し接続されたブラケット5と、このブラケット5に蓄電装置ユニット4を連結固定させる複数の連結固定部7と、ブラケット5に設けられた所定の剛性断点50と、を備えており、複数の連結固定部7は、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでおり、剛性断点50は、複数の連結固定部7の車幅方向外方側に位置し、かつ底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並ぶ複数の剛性断点として設けられ、または底面視において車両前後方向に傾きがないように延びる少なくとも1つの剛性断点として設けられている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、
前記一対のサイドメンバを利用して車両に搭載される蓄電装置ユニットと、
前記一対のサイドメンバよりも車幅方向外方側に位置して車両前後方向に延びる左右一対のロッカと、
を備えており、
前記各サイドメンバのうち、車両前後方向において前記蓄電装置ユニットとオーバラップする領域には、底面視傾斜状の傾斜部が形成されている、車両構造であって、
前記各サイドメンバの前記傾斜部を含む領域と前記各ロッカとの両者間に橋渡し接続されたブラケットと、
このブラケットに前記蓄電装置ユニットを連結固定させる複数の連結固定部と、
前記ブラケットに設けられ、かつ前記ブラケットに車幅方向外方側から所定以上の荷重入力があったときに、前記ブラケットの座屈変形の起点となる剛性断点と、
をさらに備えており、
前記複数の連結固定部は、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでおり、
前記剛性断点は、前記複数の連結固定部の車幅方向外方側に位置し、かつ底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並ぶ複数の剛性断点として設けられ、または底面視において車両前後方向に傾きがないように延びる少なくとも1つの剛性断点として設けられていることを特徴とする、車両構造。
【請求項2】
請求項1に記載の車両構造であって、
前記複数の連結固定部のいずれかは、前記各サイドメンバから車幅方向に最も離間した配置にある特定の連結固定部であり、
前記ブラケットを補強するための補強部材として、底面視において前記特定の連結固定部の周囲を囲むように前記ブラケットに重ねられて接合された補強部材を、さらに備えている、車両構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の車両構造であって、
前記ブラケットは、車両前後方向に並び、かつ互いに別体の部材により構成された少なくとも2つの前側および後側のブラケット部として分割されている、車両構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車両構造の具体例として、車室のフロア下に、バッテリなどの蓄電装置ユニットを搭載したものがある(たとえば、特許文献1,2)。
車両には、車体骨格部材として、幅方向に間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバが具備されているのが一般的であり、蓄電装置ユニットの取付けは、それら一対のサイドメンバに蓄電装置ユニットの適当な箇所をボルト締結するなどして図られている。
このような構成によれば、一対のサイドメンバを利用して、蓄電装置ユニットをスペース効率よく車両に搭載することが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるように、未だ改善すべき余地があった。
【0004】
すなわち、車両に設けられる一対のサイドメンバとしては、たとえば底面視後広がり状の傾斜部など、底面視おいて、車両前後方向に対して傾斜した傾斜部を含むように構成される場合が多い。また、そのような傾斜部に対しても、蓄電装置ユニットの連結固定部(ボルト締結部など)が複数設けられる場合がある。
ただし、そのような構成においては、複数の連結固定部のそれぞれの車幅方向の配置は不揃い状態となり、互いに位置ずれしている。このため、車両の側突が発生した際には、前記複数の連結固定部に対して側突荷重が異なるタイミングで作用し、一部の連結固定部に側突荷重が集中し易くなる。ポール側突の場合には、そのような現象が一層顕著となる。蓄電装置ユニットの保護性能を高める上では、そのような不具合を適切に解消することが要望される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-73222号公報
【特許文献2】特開2021-133837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記したような事情のもとで考え出されたものであり、車両の側突発生時における蓄電装置ユニットの保護性能を優れたものとすることが可能な車両構造を提供することを、その課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0008】
本発明により提供される車両構造は、車幅方向に間隔を隔てた配置で車両前後方向に延びる左右一対のサイドメンバと、前記一対のサイドメンバを利用して車両に搭載される蓄電装置ユニットと、前記一対のサイドメンバよりも車幅方向外方側に位置して車両前後方向に延びる左右一対のロッカと、を備えており、前記各サイドメンバのうち、車両前後方向において前記蓄電装置ユニットとオーバラップする領域には、底面視傾斜状の傾斜部が形成されている、車両構造であって、前記各サイドメンバの前記傾斜部を含む領域と前記
各ロッカとの両者間に橋渡し接続されたブラケットと、このブラケットに前記蓄電装置ユニットを連結固定させる複数の連結固定部と、前記ブラケットに設けられ、かつ前記ブラケットに車幅方向外方側から所定以上の荷重入力があったときに、前記ブラケットの座屈変形の起点となる剛性断点と、をさらに備えており、前記複数の連結固定部は、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでおり、前記剛性断点は、前記複数の連結固定部の車幅方向外方側に位置し、かつ底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並ぶ複数の剛性断点として設けられ、または底面視において車両前後方向に傾きがないように延びる少なくとも1つの剛性断点として設けられていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
第1に、蓄電装置ユニットとブラケットとを連結固定する複数の連結固定部は、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでおり、サイドメンバの傾斜部に対応した傾斜配列とはされていない。このため、車両の側突発生時には、側突荷重を複数の連結固定部に同時に作用させ得ることとなり、複数の連結固定部の一部分のみに、側突荷重が集中的に作用することは抑制される。したがって、蓄電装置ユニットの一部分に側突荷重が集中的に作用することも適切に抑制され、蓄電装置ユニットの保護性能が高められる。
第2に、ブラケットのうち、複数の連結固定部の車幅方向外方側には、剛性断点が設けられており、この剛性断点は、車両の側突が発生して所定以上の側突荷重がブラケットに入力した場合に、ブラケットを座屈変形させる。したがって、この座屈変形により側突エネルギの吸収作用が得られ、蓄電装置ユニットが受ける衝撃を緩和することが可能である。ここでさらに重要な効果として、剛性断点は、複数の連結固定部と同様に、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並び、あるいは車両前後方向に傾きのないように延びているため、側突荷重は、複数の剛性断点に対し、あるいは剛性断点の各部に対し、同時に作用させ得ることとなる。このことにより、複数の連結固定部に側突荷重が同時に作用することが、適切に確保される。
第3に、蓄電装置ユニットは、サイドメンバに対してブラケットを介して間接的に支持された構成となるが、前記ブラケットは、サイドメンバとこのサイドメンバよりも車幅方向外方側に位置するロッカとの両者間に橋渡し接続されたものである。したがって、前記ブラケットは、車両の側突発生時に、その側突荷重を受ける部材としての役割を果たし、ブラケットの存在が車両の側突に対する強度を高める効果が期待できる。これは、蓄電装置ユニットの保護性能を一層高める効果をもたらせる。
第4に、本発明によれば、車両の側突対策として、蓄電装置ユニット自体の強度、あるいはその周辺強度をさほど高める必要はなく、車両重量の軽減や、製造コストの低減などを図る上で、好ましい。
【0010】
本発明において、好ましくは、前記複数の連結固定部のいずれかは、前記各サイドメンバから車幅方向に最も離間した配置にある特定の連結固定部であり、前記ブラケットを補強するための補強部材として、底面視において前記特定の連結固定部の周囲を囲むように前記ブラケットに重ねられて接合された補強部材を、さらに備えている。
【0011】
このような構成によれば、次のような効果が得られる。
すなわち、ブラケットのうち、前記した特定の連結固定部の周辺領域は、本来的に、強度不足になる虞がある。これに対し、前記構成によれば、そのような領域が、前記補強部材によって合理的に補強されている。したがって、車両の側突発生時に、ブラケットの特定の連結固定部の周辺領域が、他の領域と比較して過大に変形するといった不具合を回避することが可能である。また、車両の通常走行時における建付け剛性も確保できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、前記ブラケットは、車両前後方向に並び、かつ互いに別
体の部材により構成された少なくとも2つの前側および後側のブラケット部として分割されている。
【0013】
このような構成によれば、前側および後側のブラケット部のそれぞれを、最適な仕様(形状、サイズ、強度、側突荷重に対する座屈変形性などの仕様)にすることが容易に実現できる。また、ブラケットの組み付け作業性の向上を図ることもできる。
【0014】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】(a)は、本発明に係る車両構造の一例を示す要部概略底面図であり、(b)は、(a)のI-I概略断面図である。
図2図1(a)の要部分解概略底面図である。
図3図1(a)を図2よりもさらに分解した状態での要部分解概略底面図である。
図4図1(b)のIV部拡大断面図(図1(a)のI-I要部概略断面図に相当)である。
図5図1(a)のV-V要部概略断面図である。
図6図1(a)のVI-VI要部概略断面図である。
図7図1(a)のVII-VII要部概略断面図である。
図8】本発明との対比例1を示す要部概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
【0017】
図1図3に示す車両構造Aは、たとえばキャブオーバタイプの車両1に適用されており、左右一対のサイドメンバ2(図3では、網点模様を付している)、一対のロッカ3、蓄電装置ユニット4、この蓄電装置ユニット4を取付けるための一対のブラケット5、および補強部材6を備えている。
また、車両構造Aは、複数の連結固定部7、および各ブラケット5に設けられた複数の剛性断点50も備えている。
図中、符号90は、前輪を示している。
【0018】
一対のサイドメンバ2は、車体骨格部材の1つであり、車幅方向に間隔を隔てて位置し、かつ車両1の前端部付近から車両後方に向けて車両前後方向に延びている。各サイドメンバ2は、たとえば図1(b)、図4図6に示すように、上面開口の断面ハット状部材を用いて構成されている。詳細な図示説明は省略するが、各サイドメンバ2は、フロア部10(フロアパネル部)の下面部に接合されている。
【0019】
一対のサイドンバ2は、概略的には、車両1の前部よりも後部側の方が車幅方向の相互間隔が大きくされている。一対のサイドメンバ2の車両前後方向の途中箇所は、車両後方側ほど車幅方向の相互間隔が大きくなる底面視後広がり状の傾斜部20として形成されている。この傾斜部20と蓄電装置ユニット4とは、車両前後方向において互いにオーバラップしている。
【0020】
一対のロッカ3は、車両1の左右両サイド下部に位置して車両前後方向に延びる部材であり、一対のサイドメンバ2よりも車幅方向外方側に位置している。各ロッカ3は、中空断面状に形成されており、車両1の側部のサイドドア用開口部(不図示)の下縁部を構成する。また、このロッカ3には、フロア部10の車幅方向外端部が接合される。
なお、この車両構造Aにおいては、一対のサイドメンバ2の相互間に橋渡し接続されたクロスメンバ80a,80b、一対の傾斜状梁部材81、トルクボックス82などが適宜設けられている。フロア部10には、メンテナンス用の開口部10aが設けられている。
【0021】
蓄電装置ユニット4は、蓄電装置を備えたユニットであり、たとえばバッテリセル、冷却装置、制御ECUなどを備えている。車両1は、たとえばハイブリッド車または電気自動車であり、前記バッテリは、車両駆動用などである。蓄電装置ユニット4は、前記バッテリが搭載されているユニット本体部40から車幅方向外方側にフランジ状または脚状などの取付け部41が突設された構成である。
【0022】
ブラケット5は、蓄電装置ユニット4の取付けに利用される部材であり、サイドメンバ2の傾斜部を含む領域とロッカ3との両者間に橋渡し接続されて設けられている。より具体的には、各ブラケット5は、断面屈曲状のパネル材により構成されており、図4図6に表われているように、車幅方向内側部分51は、サイドメンバ2に重ねられてボルト止め、および溶接付けが図られている。また、各ブラケット5の車幅方向外側部分52は、ロッカ3の下部に重ねられてボルト止め、および溶接付けが図られている。
【0023】
ブラケット5は、車両前後方向に並び、かつ互いに別体の部材により構成された前側および後側のブラケット部5a,5bに分割されている。ただし、以降の説明において、とくに明示していない限りは、前側および後側のブラケット部5a,5bを区別せず、これらはブラケット5として一纏めに説明することとする。
【0024】
複数の連結固定部7は、ブラケット5に蓄電装置ユニット4の取付け部41を連結固定させるための部位である。取付け部41には、たとえばボルト71が挿通される筒状部70が設けられており、このボルト71およびこれに螺合するナット72を利用して、ブラケット5と取付け部41とが連結固定(ボルト締結)されている。蓄電装置ユニット4は、ブラケット5を介して間接的にサイドメンバ2に支持された状態にある。
【0025】
複数の連結固定部7は、図1(a)において、仮想線で示す直線La上にあり、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでいる。
このため、たとえば図6においては、サイドメンバ2の直下に連結固定部7が位置しているのに対し、図4図5においては、そのような位置関係とは相違したものとなっている。
【0026】
図1図5図7に示すように、補強部材6は、複数の連結固定部7のうち、最前端に位置する連結固定部7(7a)の周囲を囲むように、ブラケット5に重ねられ、かつ溶接により接合されたパネル状の部材である。好ましくは、この補強部材6は、蓄電装置ユニット4の取付け部41にも溶接される。連結固定部7aは、本発明でいう「特定の連結固定部」の一例に相当する。ブラケット5のうち、連結固定部7aが設けられている領域は、他の領域と比較して、車幅方向の幅寸法が大きいため、強度不足になり易い。これに対し、補強部材6は、そのような虞を適切に防止するのに役立ち、また車両1の通常走行時における建付け剛性を確保する上でも好ましい。
図5に示すように、ブラケット5の連結固定部7aの周辺部を、サイドメンバ2に対して別途接続する追加の補強部材68をさらに設けた構成とすることもできる。
【0027】
図7によく表われているように、ブラケット5は、高さHa、車両前後方向の幅Waの下向き凸状の複数の段部55が車両前後方向に適当な間隔で形成されたパネル状である。各段部55は、車幅方向に延びている。これに対し、各連結固定部7は、段部55の下面部に筒状部70が当接した構成とされ、ブラケット5のうち、段部55の形成箇所が、蓄電装置ユニット4との連結固定対象部位とされている。
【0028】
複数の剛性断点50は、車両1の側突が発生し、ブラケット5に車幅方向外方側から所定以上の荷重入力があったときに、ブラケット5の座屈変形の起点となる部位である。本実施形態における剛性断点50は、ブラケット5の複数の段部55のそれぞれの一部が、たとえば断面略ヘ字状に屈曲された屈曲断面状ビード部(図4図6を参照)とされた部位である。各剛性断点50は、各段部55の車両前後方向の一端から他端にわたって車両前後方向に直線状に延びている。
【0029】
複数の剛性断点50は、複数の連結固定部7のそれぞれに対応するようにしてそれら複数の連結固定部7よりも車幅方向外方側の位置に設けられている。また、複数の剛性断点50は、図1(a)において、仮想線で示す直線Lb上にあり、複数の連結固定部7と同様に、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでいる。
【0030】
次に、前記した車両構造の作用について説明する。
【0031】
車両1の側突が発生することにより、図1(a)に示すように、その側突荷重Fが車両1の側部に入力する場合がある。これに対し、複数の連結固定部7は、前記した直線La上にあり、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでいるため、側突荷重Fは、複数の連結固定部7に同時に作用することとなり、たとえば1つの連結固定部7のみに集中することは防止または抑制される。
【0032】
図8は、本実施形態との対比例1を示している。
この対比例1においては、蓄電装置ユニット4の取付け部41と、ブラケット5eとを連結固定する複数の連結固定部7eが、サイドメンバ2に重なった配置にあり、サイドメンバ2の傾斜部20と同様に、底面視において斜めに並んでいる。この対比例1においては、車両1eの側突が発生した際の側突荷重Feは、一部の連結固定部7eに集中して作用し、その隣に位置する他の連結固定部7eには余り作用しないこととなる。これでは、側突荷重Feを幅広い範囲で負担させることができず、蓄電装置ユニット4が大きなダメージを受ける虞がある。
これに対し、本実施形態によれば、そのような虞を適切に解消し、または少なくすることが可能である。
【0033】
ブラケット5のうち、複数の連結固定部7の車幅方向外方側には、複数の剛性断点50が設けられているが、これらの剛性断点50は、ブラケット5に所定以上の大きな側突荷重Fが入力した際に、ブラケット5が座屈変形する際の起点となる。したがって、ブラケット5の座屈変形によって、側突エネルギの吸収作用が得られ、蓄電装置ユニット4が受ける衝撃を緩和することが可能である。
また、既述したように、複数の剛性断点50は、前記した直線Lb上にあり、複数の連結固定部7と同様に、底面視において車両前後方向に傾きのない一直線上に並んでいる。このため、側突荷重Fは、複数の剛性断点50に対して同時に作用することとなり、複数の剛性断点50を利用した変形によって衝撃緩和作用を一層良好にし得る。さらに、側突荷重Fが複数の連結固定部7に同時に作用することが適切に確保され、蓄電装置ユニット4の保護性能をより高めることが可能である。
【0034】
ブラケット5は、車両の側突発生時に、その側突荷重Fを受ける部材としての役割を果たし、このブラケット5の存在自体も車両1の側突に対する強度、あるいは車両1の通常走行時における蓄電装置ユニット4の建付け剛性を確保するのに好ましいものとなる。本実施形態におけるブラケット5は、複数の段部55が車幅方向に延びて設けられた構成であるため、このブラケット5の剛性を高くするのに適する。また、先に述べた補強部材6の存在により、ブラケット5の一部が強度不足になる不具合は確実に防止されており、一
層好ましい。
その他、本実施形態においては、各ブラケット5は、前側および後側のブラケット部5a,5bとして分割されているため、これら前側および後側のブラケット部5a,5bのそれぞれを、最適な仕様(形状、サイズ、強度、側突荷重に対する座屈変形性などの仕様)にすることが容易となる。また、ブラケット5の全体の組み付け作業性の向上を図ることもできる。
【0035】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る車両構造の各部の具体的な構成は、本発明の意図する範囲内において種々に設計変更自在である。
【0036】
上述の実施形態においては、複数の連結固定部7に対応すべく複数の剛性断点50が設けられているが、本発明はこれに限定されない。本発明における剛性断点としては、たとえば車両前後方向にブラケット5と同等長さで延びた剛性断点とすることも可能であり、このような長い剛性断点であれば、1つのみ設けた構成とすることも可能である。勿論、このような剛性断点であっても、複数の連結固定部7の車幅方向外方側の位置に設けられる。
本発明における剛性断点は、ブラケットの一部が断面略ヘ字状に屈曲されたビード部に限らず、たとえば薄肉部、孔部形成箇所などとすることもできる。要は、周辺部分と比較して形状や剛性が部分的に変化するなどし、ブラケットに車幅方向外方側から所定以上の荷重入力があったときに、ブラケットの座屈変形の起点となる部位であればよい。
【0037】
本発明における連結固定部は、ボルト・ナット以外の連結固定手段を採用することも可能である。
本発明におけるブラケットは、前側および後側のブラケット部よりもさらに多くの部分に分割されていてもよいことは勿論のこと、そのような分割はなされていない構成とすることもできる。
【0038】
本発明におけるサイドメンバの傾斜部は、底面視後広がり状の傾斜部に限定されず、これとは反対に、たとえば底面視前広がり状の傾斜部であってもよい。本発明でいう傾斜部は、サイドメンバに形成された部位であって、車両後方側または前方側に進むに連れて車幅方向の位置が変化する底面視傾斜状の部位である。
蓄電装置ユニットは、蓄電装置としてバッテリを備えたユニットに限らず、たとえばキャパシタを備えたユニットとすることもできる。
【符号の説明】
【0039】
A 車両構造
1 車両
2 サイドメンバ
20 傾斜部(サイドメンバの)
3 ロッカ
4 蓄電装置ユニット
5 ブラケット
5a,5b 前側および後側のブラケット部
50 剛性断点
6 補強部材
7 連結固定部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8