(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081857
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】無線通信システム、無線通信基地局装置、無線通信方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/0456 20170101AFI20240612BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20240612BHJP
H04B 7/06 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H04B7/0456 100
H04B7/0452
H04B7/06 152
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195356
(22)【出願日】2022-12-07
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度 総務省「電波資源拡大のための研究開発 ~100GHz以上の高周波数帯通信デバイスに関する研究開発~」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】桑原 俊秀
(57)【要約】
【課題】同時多接続において、あらかじめ端末に報知信号を出力してもらうという手順が省き、応答性の点で優位である、無線通信システムを提供する。
【解決手段】アンテナを備える複数の端末104と、デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナ101と、複数のアンテナ付近に配置された撮像手段102と、撮像手段で撮像した複数の端末の画像を処理する演算手段103と、を備える無線通信基地局装置100と、を備え、無線通信基地局装置が画像に基づいて演算手段を用いて複数の端末を検出し、無線通信基地局装置が演算手段を用いて検出された端末の伝搬路を推定し、無線通信基地局装置が複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信システムを提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナを備える複数の端末と、
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した前記複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備える無線通信基地局装置と、を備え、
前記無線通信基地局装置が前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記無線通信基地局装置が前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記無線通信基地局装置が前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信システム。
【請求項2】
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数1】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数2】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項4】
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備え、
前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時に前記アレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信基地局装置。
【請求項5】
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数3】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、請求項4に記載の無線通信基地局装置。
【請求項6】
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数4】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、請求項4に記載の無線通信基地局装置。
【請求項7】
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信方法。
【請求項8】
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数5】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、請求項7に記載の無線通信方法。
【請求項9】
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数6】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、請求項7に記載の無線通信方法。
【請求項10】
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、ことを無線通信基地局装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は無線通信システム、無線通信基地局装置、無線通信方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波またはサブテラヘルツ波を用いて大容量通信を行う際に、高周波ゆえに伝搬損失が大きくなるため、アンテナによりビームを絞り、アンテナゲインを稼いで通信を行う必要がある。ビームを絞ると、そのビームを何らかの方法で端末に向けないと通信路の確立ができない。例えば、特許文献1には、ビームを向ける方法として、カメラによる映像をもとにビームの方向を決める方法が開示されている。この場合、単一のビーム(メインローブ)を一つの端末に対して向けるのが基本的な動作である。また、同時に複数の端末に対して接続を行う場合として、特許文献2には、端末からのリファレンス信号等を基地局で検知して、伝搬路推定を行う方法が開示されている。すなわち特許文献2には、MU-MIMO(Multi-User-Multi Input Multi Output)動作が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-264499号公報
【特許文献2】特許第5666581号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、この場合、基地局側は、端末への報知信号を絶えず出力し、受信信号を絶えず監視し続ける必要がある。そのため、端末との平均的な通信時間が短い場合には、その分が無駄な電力の消費になってしまう。
【0005】
そこで、本開示の目的は、あらかじめ端末にリファレンス信号を出力してもらうという手順を省き、応答性の点で優位である無線通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の無線通信システムは、
アンテナを備える複数の端末と、
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した前記複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備える無線通信基地局装置と、を備え、
前記無線通信基地局装置が前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記無線通信基地局装置が前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記無線通信基地局装置が前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信システムである。
【0007】
本開示の無線通信基地局装置は、
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備え、
前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時に前記アレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信基地局装置である。
【0008】
本開示の無線通信方法は、
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信方法である。
【0009】
本開示のプログラムは、
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、ことを無線通信基地局装置に実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本開示により、あらかじめ端末にリファレンス信号を出力してもらうという手順を省き、応答性の点で優位である、無線通信システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態にかかる無線通信方法のフローチャートである。
【
図3】実施の形態1にかかる無線通信基地局装置の機能ブロックを示す図である。
【
図4】実施の形態1にかかる撮像手段と通信の対象となる端末の位置の概略図である。
【
図5】実施の形態1にかかる端末の位置とその画像上の位置の概略図である。
【
図6】実施の形態1にかかるアレイ状の複数のアンテナと端末を結びつける伝搬チャネル行列を示す図である。
【
図7】実施の形態1にかかる配列に対して一定の位相差を持った信号を受信するアレイ状の複数のアンテナの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。しかしながら、特許請求の範囲にかかる発明を以下の実施の形態に限定するものではない。また、実施の形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0013】
(実施の形態にかかる無線通信システムの説明)
図1は、実施の形態にかかる無線通信システムの構成を示すブロック図である。
図1を参照しながら、実施の形態にかかる無線通信システムを説明する。
【0014】
図1に示されるように、無線通信システム10は、アレイ状の複数のアンテナ101と撮像手段102と演算手段103とを備える無線通信基地局装置100と、アンテナを備える複数の端末104と、を備える。無線通信基地局装置100は、例えばキオスク端末型基地局である。キオスク端末とは、自立式の小型情報端末である。
【0015】
アンテナを備える複数の端末104は、例えば、ミリ波またはサブテラヘルツ波を用いて無線通信基地局装置100と大容量通信を行う端末である。アンテナを備える複数の端末104は、MU-MIMOを行うため複数あることが好ましい。しかしながら、本開示は、アンテナを備える複数の端末104が、1台で無線通信基地局装置100と通信する場合も含まれる。
【0016】
アレイ状の複数のアンテナ101は、例えばアクティブフェイズドアレイアンテナである。アレイ状の複数のアンテナ101は、複数のアンテナ素子を配列し、その位相を制御することで電波ビームの電子走査を可能とする。アレイ状の複数のアンテナ101は、アンテナ素子と移相器の間に増幅回路を備える。また、アレイ状の複数のアンテナ101は、デジタルビームフォーミング機能を有する。デジタルビームフォーミング機能は、アンテナ素子それぞれにA/D(アナログ/デジタル)変換回路を備えて、各アンテナ素子から出力されるアナログ信号をデジタル領域で信号処理することで、アンテナとしての出力を形成する。デジタルビームフォーミング機能は、各素子の信号がデジタル信号として独立に処理されているため、ビーム合成に先立ち、この各素子の信号ごとに他の処理を施すことができる。したがって、デジタルビームフォーミング機能は、1度に複数の方向にビームを形成できる。
【0017】
撮像手段102は、例えばレンズ401と、撮像素子402とを備えるカメラである。撮像手段は、アンテナを備える複数の端末104を撮像する。撮像手段102は、アレイ状の複数のアンテナ101付近に配置される。
【0018】
演算手段103は、撮像手段102で撮像した複数の端末の画像403を処理する。演算手段103は、撮像した端末104の画像403に基づいて端末104を検出する。演算手段103は、検出された端末104の伝搬路を推定する。端末104の位置は、撮像手段102の画像403からの水平角θxと垂直角θyで表される。演算手段103は、求められた水平角θxと垂直角θyの情報から伝搬チャネル行列を推定する。演算手段103は、伝搬チャネル行列の疑似逆行列を用いて送信のプリコーディングを設定する。
【0019】
実施の形態にかかる無線通信システム10は、伝搬チャネル行列の疑似逆行列を送信のプリコーディングに用いて、ZF(Zero-Forcing)アルゴリズムを用いた接続が実現できる。
【0020】
伝搬路を推定後、無線通信基地局装置100は、端末104と通信する。デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナ101により、無線通信基地局装置100は、複数の端末104と同時接続が可能である。
【0021】
図2は、実施の形態にかかる無線通信方法のフローチャートである。例えば実施の形態にかかる無線通信方法は、
図1の無線通信基地局装置により実行される。
図2に示されるように、実施の形態にかかる無線通信方法は、端末を撮像するステップ(S201)を行う。撮像手段102を用いてアンテナを備える複数の端末104を撮像する。次に、端末を検出する(ステップS202)。撮像された画像403に基づいて演算手段103を用いて複数の端末104を検出する。
【0022】
次に伝搬路を推定する(ステップS203)。演算手段103を用いて端末104の伝搬路を推定する。最後に通信する(ステップS204)。複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナ101を用いて通信する。
【0023】
このようにして、本開示の無線通信方法により、同時多接続において、あらかじめ端末にリファレンス信号を出力してもらうという手順を省き、応答性の点で優位である無線通信ができる。
【0024】
(実施の形態1にかかる無線通信基地局装置の説明)
図3は、実施の形態1にかかる無線通信基地局装置の機能ブロックを示す図である。
図3を参照しながら、実施の形態1にかかる無線通信基地局装置を説明する。
【0025】
図3に示されるように、無線通信基地局装置300は、アレイ状の複数のアンテナ101と、撮像手段102と、演算手段103と、無線信号処理部301と、プリコーディング部302と、受信復調部303と、を備える。
【0026】
アレイ状の複数のアンテナ101は、アレイ状に配置されたアンテナを複数備える。撮像手段102は、アレイ状の複数のアンテナ101の近傍に設置されている。演算手段103は、撮像手段102で撮像された画像403を解析する。また、演算手段103は、撮像手段102による画像解析結果に基づいて、送信信号のプリコーディング設定を調整できるように、送信変調部と接続されている。
【0027】
無線信号処理部301は、各アンテナへ給電するまたは各アンテナからの信号を受信するためのアナログ回路部である。無線信号処理部301は、RFスイッチ、アンプ、周波数コンバータ等の回路と、アナログ信号とデジタル信号を相互に変換するための変換回路が含まれる。
【0028】
送信データは、送信変調部と、プリコーディング部302を通して無線信号処理部301に入力される。受信データは、無線信号処理部301から受信復調部303を通して無線通信基地局装置300から出力される。
【0029】
(実施の形態1にかかる無線通信方法の説明)
図4は、実施の形態1にかかる撮像手段と通信の対象となる端末の位置の概略図である。
図5は、実施の形態1にかかる端末の位置とその画像上の位置の概略図である。
図6は、実施の形態1にかかるアレイ状の複数のアンテナと端末を結びつける伝搬チャネル行列を示す図である。
図7は、実施の形態1にかかる配列に対して一定の位相差を持った信号を受信するアレイ状の複数のアンテナの概略図である。
図4乃至7を参照しながら、実施の形態1にかかる無線通信方法を説明する。
【0030】
図4の右下に示されるように、無線通信基地局装置300から見えるような位置で複数のユーザが端末104を取り出しているとする。
図4の上図に示されるように、レンズ401と撮像素子402を備える撮像手段102が、1~3のように画像403の中に端末104を検出し、その撮像位置を特定できたものとする。撮像手段102とアレイ状の複数のアンテナ101は接近しているので、撮像手段102から見た端末104の方向は、アレイ状の複数のアンテナ101から見た端末104の方向と同じと見なせる。
【0031】
ここで、
図5に示されるように、レンズ401の焦点距離をk、撮像素子402の大きさをL
x、L
y、撮像された画像403の大きさをA
x、A
y、画像403上の座標をx、yとした場合、下記式1に示すように撮像手段102、すなわちアレイ状の複数のアンテナ101から見た端末104への方向が水平角θ
x、垂直角θ
yの形で計算できる。
【数1】
【0032】
この例は、理想的な状態での計算方法であり、実際にはある種の補正が必要である。また計算によらなくても、画像上の座標と方向のパラメータを予め用意することで同様の機能を実現することもできる。いずれにしろ、撮像手段102の画像403から各端末104への水平角、垂直角が(θxi、θyi)(i=0,1,...端末の数-1)の形で求められる。
【0033】
図6に示されるように、アレイ状の複数のアンテナ101のアレイ構成が横N
x、縦N
yとなっているものとする。このN
x×N
y個のアンテナとi個のアンテナとの間には列数i、行数N
x×N
yの伝搬チャネル行列が定義できる。伝搬チャネル行列の各要素は、基地局側の1つのアンテナと、端末側の1つのアンテナとのチャネル応答を表している。基地局側のアンテナはある間隔で整列している。したがって、
図7に示すように、配列に対して正面から傾いた方向より到来した無線信号に対しては一定の位相差701をもった信号を受信することになる。信号の到来方向が水平角方向に傾いているなら横N
xの並びにおいて、それぞれのアンテナが受信する信号の位相差701はその水平角に応じて変化する。信号の到来方向が垂直角方向に傾いているなら、縦N
yの並びにおいて、それぞれのアンテナが受信する信号の位相差701は、その垂直角に応じて変化する。
【0034】
このことから、撮像手段102を用いて求めた各端末104への水平角、垂直角(θ
xi、θ
yi)の情報から、伝搬チャネル行列は式(2)に示すような形になることが推定できる。
【数2】
【0035】
ここで、端末の数をiとし、アレイ状の複数のアンテナ101において、水平方向のアンテナ素子数をNx、垂直方向のアンテナ素子数をNy、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとする。
【0036】
関連する方法でMU-MIMOを実現する際には、端末104側に、それぞれ直交するようなリファレンス信号をあらかじめ出力してもらい、その信号を基地局で受信することで、伝搬チャネル行列の推定を行っていた。本開示の方法では、撮像手段102の画像情報のみで伝搬チャネル行列の推定を行う。伝搬チャネル行列が推定できれば式(3)に示すような伝搬チャネル行列の疑似逆行列をプリコーディングに用いて、ZFアルゴリズムを用いた同時多接続が実現できる。ここまでの画像403から端末方向を求め、伝搬チャネル行列の推定、送信のプリコーディング設定までを演算手段103において行う。
【数3】
【0037】
端末104から無線通信基地局装置300への伝搬チャネル行列x=Hyが決定すると、無線通信基地局装置300から端末104への伝搬チャネル行列もy=HTxと決定される。ここでxは、無線通信基地局装置300のアレイ状の複数のアンテナ101で受信または送信される信号のベクトル表示であり、yは、端末104の各アンテナで送信または受信される信号のベクトル表示である。それぞれの端末104に送信したい信号をベクトルuとする。Hの疑似逆行列を用いてx=H*(HTH*)-1uという信号を作成して無線通信基地局装置300のそれぞれのアンテナ素子から送信する。これに伝搬チャネル行列HTをかけることで、端末104で受信される信号は、式(3)で表されるように干渉のない信号となることがわかる。
【0038】
アレイ状のアンテナを用いたアナログビームフォーミングの手法は、単一方向としか通信できないので、本開示では、それと比較して同時多接続によるスループット向上が見込める。また、同時多接続を実現する手法として、受信信号から伝搬チャネル行列を推定する方法と比較すると、予め端末にリファレンス信号を出力してもらうという手順が省けるために応答性の点で優位である。さらに、端末に対してリファレンス信号を要求するための同報信号出力やリファレンス信号受信などの手順が不要なため、撮像手段が端末を認識していない間、無線部の機能を遮断しておくことが可能になり、消費電力の低減効果が期待できる。
【0039】
また、上述した無線通信基地局装置100、300における処理の一部又は全部は、コンピュータプログラムとして実現可能である。このようなプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0041】
上記の実施の形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)
アンテナを備える複数の端末と、
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した前記複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備える無線通信基地局装置と、を備え、
前記無線通信基地局装置が前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記無線通信基地局装置が前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記無線通信基地局装置が前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信システム。
(付記2)
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数4】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、付記1に記載の無線通信システム。
(付記3)
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数5】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、付記1に記載の無線通信システム。
(付記4)
デジタルビームフォーミング機能を有するアレイ状の複数のアンテナと、前記複数のアンテナ付近に配置された撮像手段と、前記撮像手段で撮像した複数の端末の画像を処理する演算手段と、を備え、
前記画像に基づいて前記演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時に前記アレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信基地局装置。
(付記5)
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数6】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、付記4に記載の無線通信基地局装置。
(付記6)
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数7】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、付記4に記載の無線通信基地局装置。
(付記7)
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、無線通信方法。
(付記8)
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数8】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、付記7に記載の無線通信方法。
(付記9)
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数9】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、付記7に記載の無線通信方法。
(付記10)
撮像手段を用いて、アンテナを備える複数の端末を撮像し、
撮像された画像に基づいて演算手段を用いて前記複数の端末を検出し、
前記演算手段を用いて検出された前記端末の伝搬路を推定し、
前記複数の端末と同時にアレイ状の複数のアンテナを用いて通信する、ことを無線通信基地局装置に実行させるプログラム。
(付記11)
前記撮像手段は、撮像素子を備え、
前記撮像手段の焦点距離をk、前記撮像素子の大きさを(L
x,L
y)、前記画像の大きさを(A
x,A
y)、前記画像上の座標を(x,y)とすると、
【数10】
として、水平角θ
x、垂直角θ
yを求め、前記複数の端末を検出する、付記10に記載のプログラム。
(付記12)
前記端末の数をiとし、前記アレイ状の複数のアンテナにおいて、水平方向のアンテナ素子数をN
x、垂直方向のアンテナ素子数をN
y、水平方向のアンテナ配置間隔/波長をdx、垂直方向のアンテナ配置間隔/波長をdyとして、以下のi列N
x×N
y行の伝搬チャネル行列
【数11】
を定義することにより、前記端末の伝搬路を推定する、付記10に記載のプログラム。
【符号の説明】
【0042】
10 無線通信システム、100 無線通信基地局装置、101 アレイ状の複数のアンテナ、102 撮像手段、103 演算手段、104 アンテナを備える複数の端末、300 無線通信基地局装置、301 無線信号処理部、302 プリコーディング部、303 受信復調部、401 レンズ、402 撮像素子、403 画像、701 位相差