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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008186
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】防振装置および防振方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/04 20060101AFI20240112BHJP
   F16F 15/08 20060101ALI20240112BHJP
【FI】
F16F15/04 A
F16F15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109836
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】進藤 彰久
(72)【発明者】
【氏名】石原 哲
(72)【発明者】
【氏名】磯 さち恵
(72)【発明者】
【氏名】壇 英恵
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA01
3J048BA11
3J048CB05
3J048CB21
3J048CB22
3J048EA07
3J048EA13
(57)【要約】
【課題】設置される防振対象機器の重さや、想定される振動の特性に応じて容易に適用する。
【解決手段】防振すべき対象機器3が設置されるベース部材10と、ベース部材10に設置されたピン部材20と、ピン部材20を支持する防振弾性体30とを備えたことを特徴とする。ピン部材20は、先端部が防振弾性体30に貫入しているものが好ましい。また、ピン部材20の基端部を囲むガード部材40をさらに備えたものが好ましい。さらに、ベース部材10の移動を規制するストッパ50をさらに備えたものが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防振すべき対象機器が設置されるベース部材と、
前記ベース部材に設置されたピン部材と、
前記ピン部材を支持する防振弾性体とを備えた
ことを特徴とする防振装置。
【請求項2】
前記ピン部材は、先端部が前記防振弾性体に貫入している
ことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項3】
前記ピン部材の基端部を囲むガード部材をさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項4】
前記防振弾性体の表面には、布状シートが敷設されている
ことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項5】
前記ベース部材の移動を規制するストッパをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項6】
前記ストッパは、前記ベース部材と間隔をあけて配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の防振装置。
【請求項7】
前記ストッパの前記ベース部材との当接部分に、弾性変形可能な緩衝体が設けられている
ことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の防振装置。
【請求項8】
前記ストッパは、前記防振弾性体に対向する位置に配置されている
ことを特徴とする請求項5に記載の防振装置。
【請求項9】
前記対象機器を挟んで前記ベース部材の反対側に配置されるクッション部材と、
前記対象機器、前記ベース部材、前記ピン部材、前記防振弾性体および前記クッション部材を収容するケースとをさらに備えた
ことを特徴とする請求項1に記載の防振装置。
【請求項10】
請求項1に記載の防振装置を用いて前記対象機器の防振を行う防振方法であって、
前記ピン部材の設置個数を調整することで、防振性能を決定する
ことを特徴とする防振方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防振装置および防振方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばブルドーザ等の被固定体に3Dスキャナ等の精密機器を搭載する際には、被固定体の振動が精密機器に伝達しないよう、防振装置が用いられている。従来の防振装置としては、例えば特許文献1や特許文献2に記載されたものが知られている。
特許文献1の防振装置は、機器を収容する収容部とその下端部に取り付けられたベースとを有する筐体と、ベースを支持する支持用弾性体と、ベースと距離をあけて配置されたストッパとを備えている。ストッパは、支持用弾性体の弾性変形により筐体が変位したときにベースを押えて、筐体の変位を制限する。
一方、特許文献2の防振装置は、被防振体を支持する防振用シートである。防振用シートは、シリコーンゲルを素材として形成され、ベースシートと、ベースシート上に設けられた突起とを備えて構成されている。突起は錘台形状に形成され、一個または複数個形成されている。突起の大きさや個数は、設置される被防振体(機器)の重さや、想定される振動の大きさや周波数域によって適宜設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-66432号公報
【特許文献2】登録実用新案第3003147号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の防振装置では、適用される被防振体の重さや、想定される振動の大きさや周波数等に応じて、振動を吸収する振動吸収弾性体(支持用弾性体、防振用シート)の形状を適宜決定しているが、被防振体を変更する場合や、想定する振動の周波数特性を変更する場合には、振動吸収弾性体の形状等を変更しなければならない。そのため、形状の異なる振動吸収弾性体を複数作成しておく必要があり、防振装置の製造に多くの時間と手間を要する問題があった。
また、振動吸収弾性体の最適な形状を決定すべく試験を行う場合もあるが、試験に多くの時間と手間を要する問題があった。
このような観点から、本発明は、設置される防振対象機器の重さや、想定される振動の特性に応じて容易に適用できる防振装置および防振方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を解決するための本発明は、防振すべき対象機器が設置されるベース部材と、前記ベース部材に設置されたピン部材と、前記ピン部材を支持する防振弾性体とを備えたことを特徴とする防振装置である。
本発明の防振装置によれば、ピン部材の本数と設置位置を適宜設定することで防振特性を調整できるので、対象機器の重さや振動の特性に応じて好適な防振効果を得ることができる。また、ピン部材をベース部材に着脱可能にすれば、ピン部材の本数と設置位置を容易に変更できるので、防振装置の特性を容易に変更することができる。さらに、防振弾性体の形状等を変更せずとも、防振特性を調整できるので、防振装置の製造コストを抑えることができる。
【0006】
本発明の防振装置においては、前記ピン部材は、先端部が前記防振弾性体に貫入しているものが好ましい。このような構成によれば、ベース部材が防振弾性体に対して横滑りするのを防止できる。
また、本発明の防振装置においては、前記ピン部材の基端部を囲むガード部材をさらに備えたものが好ましい。このような構成によれば、ガード部材の先端面が防振弾性体に接触するので、防振弾性体に対する接触面積を大きくすることができる。また、ガード部材の先端面の面積を変えることで、容易に接触面積を調整できる。さらに、ピン部材が防振弾性体に入り込みすぎるのを防止できる。
さらに、本発明の防振装置においては、前記防振弾性体の表面には、布状シートが敷設されているものが好ましい。このような構成によれば、ピン部材が防振弾性体に入り込みすぎるのを防止できる。
【0007】
そして、本発明の防振装置においては、前記ベース部材の移動を規制するストッパをさらに備えたものが好ましい。このような構成によれば、ベース部材の移動を抑制できる。
また、本発明の防振装置においては、前記ストッパは、前記ベース部材と間隔をあけて配置されているものが好ましい。このような構成によれば、ベース部材の一定距離の移動を許容することで前記防振弾性体のせん断変形が許容され、防振効果が向上する。
さらに、本発明の防振装置においては、前記ストッパの前記ベース部材との当接部分に、弾性変形可能な緩衝体が設けられているものが好ましい。このような構成によれば、対象機器への衝撃を低減できる。
そして、本発明の防振装置においては、前記ストッパは、前記防振弾性体に対向する位置に配置されているものが好ましい。このような構成によれば、ベース部材の前記防振弾性体から離れる方向への移動を規制できる。
また、本発明の防振装置においては、前記対象機器を挟んで前記ベース部材の反対側に配置されるクッション部材と、前記対象機器、前記ベース部材、前記ピン部材、前記防振弾性体および前記クッション部材を収容するケースとをさらに備えたものが好ましい。このような構成によれば、対象機器がベース部材とクッション部材とに挟持された状態となるので、防振装置が取り付けられる被固定体の姿勢が変化しても、安定し防振効果を発揮できる。さらに対象機器を保護できる。
【0008】
前記架台を解決するための第二の本発明は、請求項1に記載の防振装置を用いて前記対象機器の防振を行う防振方法であって、前記ピン部材の設置個数を調整することで、防振性能を決定することを特徴とする防振方法である。
従来は、防振弾性体の材質、形状、平面寸法、厚さ等をパラメータとして防振性能の調整を行っていたため、複雑な調整が必要であったが、本発明の防振方法によれば、ピン部材の設置個数をパラメータとすることで、防振性能を単純な調整で決定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の防振装置および防振方法によれば、設置される防振対象機器の重さや、想定される振動の特性に応じて容易に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第一の実施形態に係る防振装置を示した断面図である。
図2】本発明の第一の実施形態に係る防振装置を示した断面図である。
図3】本発明の第一の実施形態に係る防振装置を示した斜視図である。
図4】本発明の第一の実施形態に係る防振装置のベース部材を示した底面図である。
図5】本発明の第一の実施形態に係る防振装置を示した拡大断面図である。
図6】本発明の第一の実施形態に係る防振装置の防振効果を説明するための図であって、(a)はX軸方向の振動加速度を示したグラフ、(b)はY軸方向の振動加速度を示したグラフ、(c)はZ軸方向の振動加速度を示したグラフである。
図7】本発明の第二の実施形態に係る防振装置を示した図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の第一の実施形態に係る防振装置および防振方法について、添付した図面を参照しながら説明する。第一の実施形態では、ブルドーザ等の被固定体に3Dスキャナ等の精密機器を搭載する際に用いられる防振装置を例に挙げて説明する。図1および図2は、防振装置を示した断面図、図3は、防振装置を示した斜視図、図4は、防振装置のベース部材を示した底面図、図5は、防振装置を示した拡大断面図である。本実施形態は、図1の水平断面方向をX軸方向とし、図2の水平断面方向をY軸方向として防振装置の説明を行う。
図1乃至図3に示すように、防振装置1は、図示しない被固定体に固定される固定板2に設けられる装置であって、ベース部材10と、ピン部材20と、防振弾性体30と、ガード部材40とストッパ50を備えている。固定板2は、例えば金属製のプレートにて構成されており、被固定体にボルト等の固定治具によって固定されている。なお、防振装置1は、被固定体に直接取り付けてもよい。
【0012】
ベース部材10は、防振すべき対象機器(図示せず)が設置される部位であり、平面視正方形の板状を呈している。ベース部材10は、例えば金属製プレートにて形成されている。ベース部材10のY軸方向両端部の外周縁部には、下方に向かうに連れて外側に突出する傾斜部11が形成されている。傾斜部11の上面は、ベース部材10の底面に対して45°の角度で斜め上方に傾斜している。ベース部材10の底面には、ピン部材を取り付ける取付孔12が設けられている。取付孔12は、複数設けられており、その設置位置および数は、要求される防振特性に応じて決定されている。ベース部材10の上面には、対象機器を支持する支持板13が立設されている。支持板13は、ベース部材10のX軸方向の一端部に立設され、対象機器の側面が当接される。支持板13には、ボルト挿通孔14が複数形成されており、対象機器がボルト止めされる。
【0013】
図1図2図4および図5に示すように、ピン部材20は、ベース部材10の底面に設置される部材であって、複数設けられている。ピン部材20は、金属または樹脂にて形成されている。ピン部材20は、一端部がベース部材10の底面に埋設されており、他端部が下方に向かって突出している。ピン部材20は、ベース部材10の底面に着脱可能に固定されている。具体的には、ピン部材20は、ベース部材10の底面の取付孔12に着脱可能な程度に嵌合されている。なお、ピン部材20の一端部に雄ネジを形成し、取付孔12に雌ネジを形成し、ピン部材20を取付孔12に螺合させてもよい。ピン部材20のうち、ベース部10から突出した部分の基端部は、ガード部材40にて囲まれている。ピン部材20の先端部は尖っており、防振弾性体30に貫入し易くなっている。ピン部材20の設置個数と配置位置(以下「数と配置」という)は、対象機器の重さや振動の特性に応じて好適な防振効果を得られるように決定されている。図4に示すように、本実施形態では、ピン部材20の配置は、Y軸方向に一定間隔をあけて5本または4本のピン部材20が直線状に並べられたピン列が5列設けられており、各ピン列は、X軸方向に一定間隔をあけて並列されている。X軸方向に隣り合うピン列同士のピン部材20は、Y軸方向にオフセットして配置されている。
【0014】
図1図2および図5に示すように、防振弾性体30は、ピン部材20を支持する板状部材であり、例えば架橋ゲルにて構成されている。架橋ゲルは、ポリマー分子量、架橋密度(架橋点間の分子量)の調節によりペースト状の非常に柔軟な構造からゴム硬度の近似範囲まで、幅広い設計が可能な材質である。架橋ゲルは、シリコーンをベースに無数の架橋点で構成される3次元網目構造のセル部に粘性体を吸収膨潤させた粘弾性体である。このような架橋ゲルでは、ダンパー機能としてシリンダ内部の粘性体とピストンに相似するシリコーンオイルの粘性抵抗(高速または大きい振動/衝撃エネルギーに比例する抵抗力)を発生し、ゲル内部で熱エネルギー変換(摩擦効果)を発揮する。また、シリコーンゴム網目構造は、3次元方向のばね成分(復元力、エネルギー貯蔵機能)の作用があり、両者の複合的な効果が得られる。このため振動・衝撃を素早く収束し、安定化することができる。具体的には、防振弾性体30のゲルとしては、株式会社アブソラボ製の工業用ゲル「engelook(エンジェルック)」を用いるのが好ましい。エンジェルックは、前記したように、振動と衝撃を内部摩擦効果で熱エネルギーに変換することで、振動または衝撃エネルギーを吸収する。つまり、エンジェルックは、振動吸収性能と衝撃吸収性能の両方を持ち合わせており、防振効果を高めることができる。さらに、エンジェルックは、環境安定性と高耐久性を兼ね備えており、多彩な仕様の実現と優れたコストパフォーマンスを達成できる。本実施形態では、要求される防振特性に対して、最適な組成の防振弾性体30を一種形成すればよい。なお、防振弾性体30は、架橋ゲルに限定されるものではなく、対象機器の重量が3Dスキャナよりも大きい場合には、例えば弾性の合成樹脂等にて形成された防振パッド、防振ゴムや防振マット等を使用してもよい。
防振弾性体30の表面には、布状シート31が敷設されている。布状シート31は、不織布にて構成されている。布状シート31は、例えば2mmの厚さとなっており、ピン部材20が貫通し易くなっている。布状シート31は、防振弾性体30の上下面の全面に亘っており、接着剤を介して貼り付けられている。
【0015】
ガード部材40は、ピン部材20のうち、ベース部材10の底面から突出した部分の基端部を囲む部材であって、円筒体形状を呈している。ガード部材40は、例えば樹脂にて構成されている。ガード部材40の内径は、ピン部材20の外径と同等であり、ピン部材20はガード部材40内に嵌挿されている。ガード部材40の下端面は、布状シート31を介して防振弾性体30と接触する。すなわち、ガード部材40の下端面の面積が防振弾性体30との接触面積となる。
本実施形態の防振装置1では、ガード部材40と防振弾性体30との接触面積と、ピン部材20のガード部材40の下端からの突出長さ等の要因に基づいて、一つのピン部材20およびガード部材40の防振性能が決まる。そして、このピン部材20およびガード部材40の数と配置、および防振弾性体30の材質と形状等の要因に基づいて、防振装置1全体の防振特性が決まる。本実施形態では、ピン部材20およびガード部材40の数と配置を変更することで、防振弾性体30の材質や形状を変更せずに防振装置1の防振特性を調整できる。
【0016】
ここで、本実施形態に係る防振方法について説明する。本発明の防振方法は、防振装置1を用いて対象機器の防振を行う方法であって、ピン部材20の数を調整することで、防振性能を決定する。本実施形態では、ピン部材20の数に合わせて配置もパラメータとして、防振装置1全体の防振特性を決定している。つまり、ピン部材20の数と配置を、対象機器の重さや振動の特性に応じて好適な防振効果を得られるように決定している。具体的には、要求される防振効果に対応するピン部材20およびガード部材40の数と配置を予測して試験体を作成し、振動試験を行うことで防振効果を測定する。そして、試験体のピン部材20およびガード部材40の数と配置を適宜変更しながら試験を複数回行い、好適な設置個数と配置位置を見つけ出す。
【0017】
以下、防振装置1の構成の説明に戻る。ストッパ50は、ベース部材10の移動を規制する部位である。ストッパ50は、複数設けられ、ベース部材10の周囲に配置されている。ストッパ50は、ベース部材10と所定の間隔をあけて配置されている(図1参照)。なお、ストッパ50は、ベース部材10に当接させて、両側から挟持するようにしてもよい。
ストッパ50は、緩衝体51と支持板52とを備えている。緩衝体51は、移動したベース部材10の周縁部が当接する部分であり、架橋ゲルにて構成されている。なお、緩衝体51の材質は架橋ゲルに限定されるものではなく、ゴムや弾性樹脂であってもよい。緩衝体51は、半球状のドーム形状を呈しており、球面がベース部材10に対向するように配置されている。
支持板52は、緩衝体51を支持するブラケットであって、固定板2に立設されている。図1に示すように、ベース部材10のX軸方向両側に位置するストッパ50(Y軸方向両側のストッパ50と区別する場合は符号を「53」とする)は、水平部53aと垂直部53bとを備え、側面視L字形状を呈している。水平部53aは、固定板2の表面に当接してボルト止めされている。垂直部53bは、水平部53aの端部から立ち上がっている。垂直部53bの上端部には、緩衝体51が接着されており、緩衝体51がベース部材10の側面に対向している。
【0018】
図2に示すように、ベース部材10のY軸方向両側に位置するストッパ50(X軸方向両側のストッパ50と区別する場合は符号を「54」とする)は、防振弾性体30に対向する位置に設けられている。具体的には、ストッパ54は、水平部54aと垂直部54bと傾斜部54cとを備えている。水平部54aは、固定板2の表面に当接した状態でボルト止めされている。垂直部54bは、水平部54aの端部から立ち上がっている。傾斜部54cは、垂直部53bの上端部から斜め上方に向けて立ち上がっている。傾斜部54cの水平面に対する傾斜角度は45°である、傾斜部54cには、緩衝体51が接着されており、緩衝体51の先端部がベース部材10の傾斜部11に対向して当接している。つまり、緩衝体51が防振弾性体30に対向している。なお、傾斜部54cの傾斜角度は、傾斜部11の傾斜角度に応じて設定されており、傾斜部54cと傾斜部11が互いに平行になるようになっている。これにより、緩衝体51は、傾斜部11の上面の法線方向から傾斜部11に当接している。
【0019】
次に、第一の実施形態に係る防振装置1および防振方法の作用効果を説明する。かかる防振装置1によれば、ピン部材20およびガード部材40の数と配置を適宜設定しているので、対象機器の重さや振動の特性に応じて好適な防振効果を得ることができる。また、ピン部材20は、ベース部材10に着脱可能であるので、ピン部材20の数と配置を容易に変更できる。したがって、防振装置1の防振特性を容易に変更することができる。さらに、防振弾性体30の形状等を変更せずとも、防振特性を調整できるので、防振装置1の製造コストを抑えることができる。
ピン部材20の先端部が防振弾性体30に貫入しているので、ベース部材10が防振弾性体30に対して横滑りするのを抑制できる。
また、ピン部材20にガード部材40が設けられているので、防振弾性体30に対するピン部材20の接触面積を大きくしたのと同様の効果を得ることができる。これによって、ピン部材20ごとの防振効果を向上させることができる。また、ガード部材40の先端面の面積を変えることで、容易に接触面積を調整することができる。さらに、ガード部材40によってピン部材20が防振弾性体30に入り込みすぎるのを防止できる。
【0020】
さらに、防振弾性体30の表面には、布状シート31が敷設されているので、ピン部材20およびガード部材40が防振弾性体30に入り込みすぎるのを防止できる。また、ピン部材20が布状シート31を貫通しているので、ピン部材20の横方向への移動が抑制され、ベース部材10の横滑りがより一層抑制される。
ベース部材10の周囲にストッパ50が設けられているので、ベース部材10の移動を抑制でき、防振効果を向上させることができる。ストッパ50は弾性変形可能な緩衝体51を備えているので、ベース部材10およびこれに設置された対象機器への衝撃を低減できる。ストッパ50のうち、ベース部材10のX軸方向両側に位置するストッパ53はベース部材10と所定の間隔をあけて配置されているので、ベース部材10の一定距離の移動が許容される。これによって、防振弾性体30のせん断変形が許容され防振効果が向上する。
また、ストッパ50のうち、ベース部材10のY軸方向両側に位置するストッパ54は防振弾性体30に対向する位置に配置されているので、ベース部材10を上方から押さえることができる。したがって、ストッパ54が防振弾性体30から離れる方向(上方)への移動を規制することができる。
【0021】
また、従来は防振弾性体の材質、形状、平面寸法、厚さ等をパラメータとして防振性能の調整を行っていたため、複雑な調整が必要であったが、本実施形態の防振方法によれば、 ピン部材20の数と配置をパラメータとすることで、防振性能を単純な調整で決定することができる。さらに、ピン部材20の最適な数と配置を容易に見出すことができる。
【0022】
図6は第一の実施形態に係る防振装置1の防振効果を説明するための図であって、(a)はX軸方向の振動加速度を示したグラフ、(b)はY軸方向の振動加速度を示したグラフ、(c)がZ軸方向の振動加速度を示したグラフである。ここで、本実施形態の防振装置1を用いて行った振動試験について説明する。振動試験では、防振装置1のベース部材10上に3Dスキャナを設置し、ピン支承を行う防振装置1を設置した振動台を、5パターンの振動レベルで振動させて、それぞれX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向における振動加速度を測定した。図6のグラフにおいて、太線は防振装置1を用いた振動加速度を示し、細線は防振なしの場合の振動加速度を示している。
【0023】
図6の(a)に示すように、X軸方向において、振動レベル1での振動加速度は、防振なしで2(m/s)、防振装置1では0.65(m/s)となっている。なお、防振なしの場合は、振動加速度は入力加速度と同等である。振動レベル2での振動加速度は、防振なしで0.6(m/s)、防振装置1では0.065(m/s)となっている。振動レベル3での振動加速度は、防振なしで5.35(m/s)、防振装置1では0.09(m/s)となっている。振動レベル4での振動加速度は、防振なしで8(m/s)、防振装置1では0.16(m/s)となっている。振動レベル5での振動加速度は、防振なしで9.5(m/s)、防振装置1では0.2(m/s)となっている。
【0024】
図6の(b)に示すように、Y軸方向において、振動レベル1での振動加速度は、防振なしで0.8(m/s)、防振装置1では1.9(m/s)となっている。振動レベル2での振動加速度は、防振なしで0.6(m/s)、防振装置1では0.05(m/s)となっている。振動レベル3での振動加速度は、防振なしで3.9(m/s)、防振装置1では0.11(m/s)となっている。振動レベル4での振動加速度は、防振なしで6.1(m/s)、防振装置1では0.26(m/s)となっている。振動レベル5での振動加速度は、防振なしで12(m/s)、防振装置1では0.45(m/s)となっている。
【0025】
図6の(c)に示すように、Z軸方向において、振動レベル1での振動加速度は、防振なしで2(m/s)、防振装置1では0.8(m/s)となっている。振動レベル2での振動加速度は、防振なしで0.45(m/s)、防振装置1では0.04(m/s)となっている。振動レベル3での振動加速度は、防振なしで4(m/s)、防振装置1では0.29(m/s)となっている。振動レベル4での振動加速度は、防振なしで6(m/s)、防振装置1では0.475(m/s)となっている。振動レベル5での振動加速度は、防振なしで7(m/s)、防振装置1では0.5(m/s)となっている。
以上のように、振動レベル1でのY軸方向を除けば、すべての場合で、防振装置1によって防振効果が得られている。3方向を考慮すれば、振動レベル1においても防振装置1による防振効果が得られていると言える。特に振動レベルが大きくなる振動レベル3,4,5において、顕著な防振効果が確認された。
【0026】
次に、第二の実施形態に係る防止装置について説明する。図7は本発明の第二の実施形態に係る防振装置を示した図であって、(a)は平面図、(b)は断面図である。図7に示すように、第二の実施形態の防振装置5は、固定構造物等の被固定体に傾斜計等の精密機器(対象機器3)を取り付ける場合に用いられるものである。防振装置5は、図示しない被固定体に固定される固定板2に設けられる装置であって、ベース部材10と、ピン部材20と、防振弾性体30と、ガード部材40と、クッション部材60と、ケース70を備えている。
ベース部材10、ピン部材20、防振弾性体30およびガード部材40の材質は、第一実施形態と同等であり、ベース部材10および防振弾性体30の大きさ、並びにピン部材20およびガード部材40の設置個数は、対象機器3の大きさに応じて設定されている。対象機器3が傾斜計であって、第一実施形態の3Dスキャナよりも軽量であるので、ベース部材10および防振弾性体30は第一実施形態よりも小さく且つ薄くなっている。なお、図中「3a」は、接続コードを繋ぐ接続部である。ピン部材20およびガード部材40の設置個数は、第一実施形態よりも少なく、本実施形態では4本である。4本のピン部材20は、対象機器3の設置位置を四方から囲むように正方形の頂角の位置に配置されている(図7の(a)参照)。
【0027】
クッション部材60は、対象機器3を挟んでベース部材10の反対側(対象機器3の上方)に配置される部材である。クッション部材60とベース部材10とで対象機器3が挟持される。クッション部材60は、対象機器3の全体を覆うように、平面視で対象機器3の上面よりも大きい矩形形状を呈している。クッション部材60は、その重心位置が対象機器3の重心位置と重なるように配置されている。クッション部材60の四隅の角部は、平面視でピン部材20の設置位置と同等である。なお、クッション部材60の形状は、矩形形状に限定されるものではなく、円形や多角形等、他の形状であってもよい。クッション部材60は、防振弾性体30と同様に、例えば架橋ゲルにて構成されている。なお、クッション部材60の材質は、架橋ゲルに替えて弾性の合成樹脂等としてもよい。
【0028】
ケース70は、対象機器3、ベース部材10、ピン部材20、防振弾性体30、ガード部材40およびクッション部材60を収容する筐体である。ケース70は、天壁部71と側壁部72と鍔部73とを備えており、下側が開口した箱型形状を呈している。天壁部71は、矩形形状を呈しており、内部に収容される各部位を覆っている。天壁部71の下面には、クッション部材60が接着されている。側壁部72は、四角筒形状を呈しており、内部に収容される各部位の四方を覆っている。側壁部72は、天壁部71の周縁部に連続して下方に屈曲している。鍔部73は、ケース70を固定板2に固定するための部位であって、側壁部72の下端縁部から外側に向かって広がっている。鍔部73には、図示しないボルト挿通孔が形成されており、固定板2にボルト止めされている。
その他の構成については、第一の実施形態と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0029】
第二の実施形態の防振装置5によれば、第一の実施形態と同様の作用効果の他に、対象機器3がベース部材10とクッション部材60とに挟持された状態となるので、防振性能が高くなるという作用効果を得ることができる。また、防振装置5が取り付けられる被固定体の姿勢が変化しても、安定し防振効果を発揮できるとともに、対象機器3が被固定体の姿勢に追従するので、傾斜計にて被固定体の傾斜を正確に計測できる。さらに、対象機器3を上下両側から保護することができる。
【0030】
以上、本発明を実施するための形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定する趣旨ではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更が可能である。例えば、前記実施形態では、ピン部材20の先端部が尖っておりベース部材10の表面に貫入するように構成されているが、これに限定されるものではない。ピン部材の先端部の形状は、例えば円柱形状であってもよい。この場合もピン部材の先端部がベース部材の表面を押し込んで貫入することになる。また、防振弾性体の表面にピン穴を形成し、このピン穴にピン部材の円柱形状の先端部を嵌装させるようにしてもよい。この場合もピン穴の設置位置の範囲において、ピン部材の数と配置を調整することができる。
また、第一の実施形態では、ブルドーザ等の被固定体に3Dスキャナ等の精密機器を搭載する際に用いられる防振装置を例に挙げているが、これに限定されるものではない。例えば、被固定体は、パワーショベルやダンプトラック等の、振動が大きい他の重機であってもよい。また、搭載される機器は、振動を嫌う電子機器や他の精密機器、例えば、車載の音響機器や他の計測器であってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 防振装置
3 対象機器
5 防振装置
10 ベース部材
20 ピン部材
30 防振弾性体
31 布状シート
40 ガード部材
50 ストッパ
51 緩衝体
60 クッション部材
70 ケース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7