(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081862
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】会議支援システム
(51)【国際特許分類】
H04R 3/00 20060101AFI20240612BHJP
H04R 1/34 20060101ALI20240612BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R1/34 310
H04R1/40 310
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195380
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100214260
【弁理士】
【氏名又は名称】相羽 昌孝
(74)【代理人】
【識別番号】100227455
【弁理士】
【氏名又は名称】莊司 英史
(72)【発明者】
【氏名】増田 崇
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 弥
【テーマコード(参考)】
5D018
5D220
【Fターム(参考)】
5D018AF11
5D018AF21
5D220AA11
5D220AB06
(57)【要約】
【課題】建物の階高が限られていても、会議参加者が頭上に圧迫感を感じるようなことがない会議支援システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る会議支援システム1は、会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行う会議支援システム1において、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホン30と、前記マイクロホン30で変換された電気信号を増幅するアンプ50と、鉛直方向に設定したy軸(ただし、鉛直上方の方向がy軸の正の方向)と、水平方向に設定したx軸と、を有するxy座標でy=―(x
2/4L)+L (ただし、Lは正の定数)によって規定される放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面である部分放物天井面18と、xy座標の原点に配され、前記アンプ50で増幅された電気信号を再生する円周スピーカ60と、からなることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、
入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、
前記マイクロホンで変換された電気信号を増幅するアンプと、
鉛直方向に設定したy軸(ただし、鉛直上方の方向がy軸の正の方向)と、水平方向に設定したx軸と、を有するxy座標でy=―(x2/4L)+L (ただし、Lは正の定数)によって規定される放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面である部分放物天井面と、
xy座標の原点に配され、前記アンプで増幅された電気信号を再生する円周スピーカと、からなることを特徴とする会議支援システム。
【請求項2】
前記円周スピーカは複数の単位スピーカからなり、それぞれの単位スピーカの指向軸が交わる点が、xy座標の原点となるように、前記円周スピーカが配されることを特徴とする請求項1に記載の会議支援システム。
【請求項3】
y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面が、開放されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の会議支援システム。
【請求項4】
y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面が、吸音処理されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の会議支援システム。
【請求項5】
前記円周スピーカの下方に遮音板が配されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の会議支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行う会議支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
発明者は、放物面天井部と、放物面の焦点に設置したスピーカとを組み合わせることで、範囲を限定して音を提示する方法について特許文献1(特開2019-39166号公報)について提案を行った。また、発明者は、上記のような音の提示方法を応用した会議支援システムの提案を、特許文献2(特開2021-40301号公報)において行った。
【0003】
特許文献1記載の技術では、放物面の焦点において上向きに設置したスピーカから放射された音が、天井における放物面で垂直下方向に反射し、放物面天井部がカバーする範囲に限定して提示される(
図8参照)。
【0004】
また、特許文献2では、打ち合わせや会議を行うスペースの上方に設置した、放物面天井部と、放物面の焦点に設置したスピーカと、打ち合わせや会議を行うスペースで発生する会話音声を収録するマイクロホンとを組み合わせ、マイクロホンで収録した音声を前記焦点に設置したスピーカから拡声することで会議支援を行うシステムを提案した(
図9参照)。
【特許文献1】特開2019-39166号公報
【特許文献2】特開2021-40301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2で提案した従来の会議支援システムをオフィス等の屋内に設置し、設置位置に階高等の高さの制限を受ける場合に、設置自体が出来ない、或いはこの会議支援システムの下で打ち合わせ等を行う会議参加者が、頭上から圧迫感を受ける、という課題があった。
【0006】
例えば、二人席用の打ち合わせスペースに会議支援システムを設置する場合には、
図10(A)に示したような提案した実施形態のものが設置可能であったとする。
【0007】
ここで、四人席用の打ち合わせスペースに設置することを考えた場合、前記焦点に設置するスピーカから拡声される音声を提示したい範囲を拡大する必要がある。
図10に示すように、以下の説明では、例として当該範囲を二人用は1.6m程度、四人用は3.0m程度とする。
【0008】
この範囲に音声を提示する場合、従来の会議支援システムでは、放物面天井部を大型化する必要があったが、単純に音声の提示範囲を拡大するように大型化すると、会議支援システム全体は高さ方向にも大型化することになる。
【0009】
会議支援システムを大型化する際、会議支援システムの設置高さが建物の階高等により制限される場合、放物面天井部の端部、及び、焦点スピーカの設置位置が、大型化する前と比較して下方に位置するようになる(
図10(B)参照)。
【0010】
放物面天井部の端部や焦点スピーカ及び図示した遮音板が下方に位置するようになることで、その下で打ち合わせ等を行う会議参加者は、頭上に圧迫感を感じてしまう、という課題が発生する。
【0011】
また、他の課題として、従来の会議支援システムで音声の提示範囲を拡大しようとした場合、焦点スピーカの指向特性により所望の範囲に十分な音量で音声を提示できないという課題が生じる。
【0012】
このような課題について説明する。従来の会議支援システムはこれまで図示したように、天井の放物面における焦点位置にスピーカを上向きに設置するが、この場合、一般的なスピーカは、指向軸が向いている真上方向に最も効率よく音波を放射し、指向軸からの角度が大きくなる放物面天井部の外周方向には音波の放射効率が良くない。このため、音声を提示する範囲の中心から離れた場所に位置する会議参加者には、十分に拡声された音声が届かない、とい課題が発生する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は、上記のような問題を解決するものであって、本発明に係る会議支援システムは、会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行う会議支援システムにおいて、入力された音声信号を電気信号に変換するマイクロホンと、前記マイクロホンで変換された電気信号を増幅するアンプと、鉛直方向に設定したy軸(ただし、鉛直上方の方向がy軸の正の方向)と、水平方向に設定したx軸と、を有するxy座標でy=―(x2/4L)+L(ただし、Lは正の定数)によって規定される放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面である部分放物天井面と、xy座標の原点に配され、前記アンプで増幅された電気信号を再生する円周スピーカと、からなることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る会議支援システムは、前記円周スピーカは複数の単位スピーカからなり、それぞれの単位スピーカの指向軸が交わる点が、xy座標の原点となるように、前記円周スピーカが配されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明に係る会議支援システムは、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面が、開放されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明に係る会議支援システムは、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面が、吸音処理されることを特徴とする。
【0017】
また、本発明に係る会議支援システムは、前記円周スピーカの下方に遮音板が配されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る会議支援システムは、鉛直方向に設定したy軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面である部分放物天井面と、xy座標の原点に配され、マイクロホンからの電気信号を増幅するアンプから出力される信号を再生する円周スピーカと、からなり、このような本発明に係る会議支援システムによれば、従来技術のように、円周スピーカを下方側に位置するように配する必要がなく、建物の階高が限られていても、会議参加者が頭上に圧迫感を感じるようなことがない。
【0019】
また、本発明に係る会議支援システムは、円周スピーカが用いられており、本発明に係る会議支援システムによれば、所望の範囲に十分な音量で音声を提示することが可能となり、打ち合わせスペースにおける会議参加者に対し、拡声された音声が届かない、といった問題が発生しない。
【0020】
また、本発明に係る会議支援システムによれば、放物面の頭頂部(放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の上方側(
図3の点線部)の放物面)を省略することにより、会議支援システム全体を大型化する場合にも高さ方向のサイズを抑制することができる。これにより、その下で打ち合わせ等を行う会議参加者に与える圧迫感を抑えることができる。また、高さ方向の制限から従来の会議支援システムを設置できなかった場所にも、会話支援システムを設置することができる。
【0021】
また、本発明に係る会議支援システムは、円周スピーカの複数の指向軸が、部分放物天井面を向いているため、音声を提示する範囲の中心から離れた場所に位置する会議参加者にも、十分に拡声された音声を効率よく提示することができる。
【0022】
また、本発明に係る会議支援システムによれば、 打ち合わせスペースの中央付近には円周スピーカから放射された音波が殆ど届かないため、この位置に設置したマイクロホンへの入力が円周スピーカから出力されてフィードバックにより増幅されるハウリングが生じにくい、というメリットがある。
【0023】
また、本発明に係る会議支援システムは、ハウリング抑制効果は、遮音板と組み合わせることで、更に向上することができる。これにより、マイクロホンで収録して円周スピーカから拡声される会話音声の増幅率を十分に上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
【
図3】会議支援システム1におけるスピーカ60と天井の幾何学的配置を説明する図である。
【
図4】会議支援システム1の放物面天井部17による反射音を説明する図である。
【
図5】円周スピーカ60の概要を説明する図である。
【
図6】円周スピーカ60を構成する単位スピーカ61の概要を説明する図である。
【
図7】本発明の他の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。本発明に係る会議支援システム1は、例えば、3人以上の会議参加者による打ち合わせが行われるような、比較的広い打ち合わせスペースに適用されることが想定されるものである。以下の例では、本発明に係る会議支援システム1による支援の下、4人の会議参加者が打ち合わせスペースにおいて適時発言し合うことが想定されている。
【0026】
本発明に係る会議支援システム1は、2人より多い人数の会議参加者による円滑な打ち合わせの支援を実現するために、会議参加者による発声を集音し、集音された発声をスピーカで再生し会議参加者に提示することで会議の支援を行うようにする。
【0027】
図1は本発明の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
図1(A)は本発明に係る会議支援システム1による打ち合わせスペースでの会議の様子を模式的に示す図である。また、
図1(B)は打ち合わせスペースの上面図を示しており、点線により囲まれた打ち合わせスペースを含む円内が、本発明に係る会議支援システム1による音の提示範囲を示している。
【0028】
本発明に係る会議支援システム1では、前記したような課題を解決するため、放物面の頭頂部を省略した部分放物天井面18と、複数の単位スピーカ61を組み合わせた円周スピーカ60との組み合わせによる会議支援方法を提案するものである。
【0029】
図1においては、床面20上に置かれたデスク25で、4人の参加者で会議が執り行われている状況を示している。当該デスク25上には、マイクロホン30が設置されており、このマイクロホン30により会議参加者による発声を集音する。マイクロホン30は、発声による音声信号が入力されると、これを電気信号に変換する。
【0030】
マイクロホン30により変換された電気信号は、音声処理部40に入力される。この音声処理部40では、電気信号をスピーカ60で再生するために適切なものに変換処理することが行われる。
図2は本発明の実施形態に係る会議支援システム1の音声処理部40のブロック図である。
図2における音声処理部40は一つの例であり、他の態様も種々取り得る。
図2の音声処理部40においては、音量調整部41で電気信号のレベルの調整がされ、アンプ50で電気信号の増幅が行われる。
【0031】
音量調整部41は、円周スピーカ60で再生する音の音量を調整する。この音量調整部41は、自動で行われるようにしてもよいし、手動で行われるようにしてもよい。後者の場合、音量調整用の入力つまみ、入力スライダーなどの構成は、デスク25上に適宜設けるようにしておくことが好ましい。
【0032】
音声処理部40のアンプ50で増幅された電気信号は、円周スピーカ60に入力され、円周スピーカ60で音が再生される。円周スピーカ60は、所定の仰角の指向軸を有する複数の単位スピーカ61から構成されるもので、円周スピーカ60の周囲360°の方向に向けて音が放射されるようになっている。
【0033】
天井10は、水平面を有する一般天井部15と、当該一般天井部15の一部に形成されてなる、放物面の一部を有する部分放物天井面18とを有している。なお、本実施形態では、天井10に部分放物天井面18を設ける構成について説明しているが、天井10とは独立して部分放物天井面18を設けるように構成することもできる。
【0034】
本発明に係る会議支援システム1では、デスク25を囲んだ会議参加者の頭上に部分放物天井面18が配されるようにレイアウトされている。また、部分放物天井面18の最外周の広さは、平面視で、デスク25周りに着席する会議参加者が少なくとも含まれる広さであることが好ましい。
【0035】
部分放物天井面18は、上に凸の放物面の頭頂部の一定範囲を省略したよう曲面である。省略していない部分は部分放物天井面18の一部を構成する。省略された頭頂部分は開放されていても良いし、部分放物天井面18と連設された平面状の蓋状部分の天井部があっても良い。蓋状の天井部がある場合は、その下面、すなわち、円周スピーカ60側に向いた面を吸音処理した方が望ましい。
【0036】
蓋状の天井部の吸音処理の方法としては、当該蓋状の天井部の下方側に、吸音材90を配する方法を挙げることができる。吸音処理するために用いられる吸音材90の材料は、グラスウール、ウレタンフォーム、ポリエステル吸音材等を用い得るが、十分な吸音性能があれば材料がこれらの吸音材に限定されるわけではない。
【0037】
なお、前記のように、省略した放物面の頭頂部方向には、円周スピーカ60の指向軸が向いていないため、殆ど音波が入射しない。そのため、省略部分が解放されてその背後に建物本来の天井面や設備機器等がある場合や、或いは、省略部分に平面状の蓋状部分がある場合も、垂直下方向以外の反射音が発生することはない。ただし、円周スピーカ60の指向特性によっては、平面状の蓋状部分にある程度の振幅の音波が入射する場合があるので、蓋状部分の下面(スピーカに向いた面)は、前記のように吸音処理していることが望ましい。
【0038】
省略した放物面の頭頂部の真下にあたる部分には、殆ど音声が提示されないことになる。しかしながら、打ち合わせスペースを想定した場合、通常この部分にはデスク25があり、打ち合わせに参加している会議参加者はその周囲に位置するようになるため音声が提示されなくても問題はない。
【0039】
部分放物天井面18は、円周スピーカ60で再生された音を鉛直下方に向けて反射する。本発明に係る会議支援システム1では、天井構造として部分放物天井面18を設ける工夫をすると共に、さらに円周スピーカ60を組み合わせて用いることで、限られた範囲(概略、デスク25が配された打ち合わせスペースの会議参加者が居る範囲)に音を提示するものである。
図3は会議支援システム1における円周スピーカ60と天井の幾何学的配置を説明する図であり、建物の天井10と床面20の断面を示す模式図である。
【0040】
天井10は、一般的な床面20と平行な関係にある一般天井部15と、その天井10の一部に形成されている部分放物天井面18とから構成されている。ここで、x軸が水平方向であり、y軸(ただし、鉛直上方の方向がy軸の正の方向)は鉛直方向であり、円周スピーカ60(
図3には不図示)の配置位置Fを原点とする座標(x、y)を定義する。
【0041】
上記のように定義されるxy座標で、y=―(x
2/4L)+L (ただし、Lは正の定数)によって規定される放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面の一部を部分放物天井面18として定義する。このような部分放物天井面18は、
図3において実線で示される曲面である。
【0042】
上記のように定義されたxy座標において、y=-x
2/4L+Lをy軸周りに回転させた回転体の表面(放物面)の焦点は、xy座標の原点(0,0)と一致する。xy座標(0,0)の原点から、部分放物天井面18に対して放射された音は、部分放物天井面18によって鉛直下方に向けて反射される。すなわち、円周スピーカ60をFに配置すると、
図4に示すように、部分放物天井面18で反射した音は、鉛直下方の床面20方向に進行する。
【0043】
図3において、前記放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の上方側の放物面は、点線で示されている。
【0044】
前記y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面は、開放されるように構成することができる。
【0045】
また、前記y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の断面を、部分放物天井面18と連設した平面状の蓋状の天井部とする場合には、先に説明したようにその下面を、吸音処理を施すことが好ましい。
【0046】
部分放物天井面18の基礎となる放物面の焦点Fに設置された円周スピーカ60から放射された音は、放物面の一部をなす部分放物天井面18に入射した後、会議参加者が周囲に着席するデスク25方向に向けて垂直下向きに反射する。
【0047】
本発明に係る会議支援システム1で用いている、部分放物天井面18と円周スピーカ60とによる音の伝達支援の仕組み自体については、特許文献1で提案した音の提示方法にも応用可能なものである。特許文献1の提案は、マイクロホンを含まず、美術館や博物館等でBGM やアナウンスによる音情報を、限られた範囲にのみ提供するというものであった。本発明における部分放物天井面18と円周スピーカ60とを用いた方法は、このような特許文献1の提案にも適用することができる。
【0048】
次に以上のような本発明に係る会議支援システム1で用い得る円周スピーカ60について説明する。
図5は円周スピーカ60の概要を説明する図である。
図5(A)は円周スピーカ60の斜視図であり、
図5(B)は円周スピーカ60の上面図であり、
図5(C)は円周スピーカ60の側面図であり、
図5(D)は円周スピーカ60の断面をみた図である。
【0049】
円周スピーカ60は、複数の単位スピーカ61を有しており、周囲360°の方向に向けて音が放射されるように構成されるものである。このために、
図5に示すように、円周スピーカ60の周囲には、所定の仰角の法線を有する同形状の面が6面設けられており、それぞれの面に1つの単位スピーカ61が埋設されるようにして設けられている。本実施形態では、計6個の単位スピーカ61が円周スピーカ60に設けられている。
【0050】
図5に示す円周スピーカ60は、6個の単位スピーカ61からなるものであるが、4個以上の単位スピーカ61が設けられていれば円周スピーカ60として機能する。円周スピーカ60に幾つの単位スピーカ61を用いるかは任意である。円周スピーカ60に用いる単位スピーカ61は、全て規格が同一のものである。
【0051】
図6は円周スピーカ60内に設けられている単位スピーカ61の概要を説明する図である。単位スピーカ61は所定の指向角度の範囲内で、音波を放射するものとする。指向角度範囲の境界は、所定の直円錐の形状をなしており、その直円錐の頂点をAとする。
【0052】
先の直円錐を切る断面で、当該断面が真円である断面を考える。この断面の中心における垂線は、先の頂点Aを通るものである。この垂線を、単位スピーカ61の指向軸として定義する。
図5(D)に示すように、円周スピーカ60を構成する単位スピーカ61の指向軸は、所定の仰角を有するように設定されている。なお、円周スピーカ60を構成する全ての単位スピーカ61の指向軸の仰角は、全て等しくなるように設定されている。
【0053】
また、円周スピーカ60を構成する全ての単位スピーカ61の頂点Aは重なるように、単位スピーカ61が円周スピーカ60内に設けられるようになっている。すなわち、円周スピーカ60を構成する全ての単位スピーカ61の指向軸は、頂点Aの一点で交わるようにされている。
【0054】
また、円周スピーカ60に埋設されている隣り合う単位スピーカ61の指向角度内の領域は、それぞれ重なり合うように構成されている。以上のような構成により、円周スピーカ60の周囲360°に音が放射されることとなる。
【0055】
さて、本発明においては、円周スピーカ60のそれぞれの単位スピーカ61の指向軸が交わる頂点Aが、先のxy座標の原点(0,0)の位置(すなわち、部分放物天井面18の焦点の位置)にくるように設定される。また、円周スピーカ60における全ての単位スピーカ61の指向軸は、部分放物天井面18に当たるように設定されている。これにより、円周スピーカ60から放射される音は、部分放物天井面18で反射し、鉛直下方に向けて進行する。
【0056】
このように、部分放物天井面18と円周スピーカ60とを適切に設定し、部分放物天井面18による反射音が打ち合わせスペースにおける会議参加者をカバーするようにすれば、マイクロホン30で収録された音声は、打ち合わせスペースにおいて会話を行う会議参加者に対して確実に伝達されるようになる。
【0057】
なお、本発明に係る会議支援システム1で用いるマイクロホン30はデスク25の上に配されるものであれば、デスク25上に置かれたマイク台等に載置されたものであってもよいし、天井10等の上方から吊られるようにして配されるものであってもよい。また、本発明に係る会議支援システム1では、会話を行う会議参加者がそれぞれ身に付けるピンマイクを利用するような構成とすることもできる。
【0058】
また、本発明に係る会議支援システム1では、会議参加者は、円周スピーカ60で再生され部分放物天井面18に反射された自らの声を聞くことで、自らの声量を客観的に判断することが可能となる、と考えられる。従って、会議参加者は自らの声量を、自らコントロールし抑制するようになる。これにより、会議支援システム1として、打ち合わせスペースに近接してはいるが、会議には参加していない執務者等に対して聞こえるような音量の会話を、抑制していくことができるようになる。
【0059】
以上、本発明に係る会議支援システム1は、鉛直方向に設定したy軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の下方側の放物面の一部である部分放物天井面18と、xy座標の原点に配され、マイクロホン30からの電気信号を増幅するアンプ50から出力される信号を再生する円周スピーカ60と、からなり、このような本発明に係る会議支援システム1によれば、従来技術のように、円周スピーカ60を下方側に位置するように配する必要がなく、建物の階高が限られていても、会議参加者が頭上に圧迫感を感じるようなことがない。
【0060】
また、本発明に係る会議支援システム1は、円周スピーカ60が用いられており、本発明に係る会議支援システム1によれば、所望の範囲に十分な音量で音声を提示することが可能となり、打ち合わせスペースにおける会議参加者に対し、拡声された音声が届かない、といった問題が発生しない。
【0061】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、放物面の頭頂部(放物線を、y軸を中心として回転することで得られる放物面を、水平方向と平行な面で切った際の上方側(
図3の点線部)の放物面)を省略することにより、会議支援システム1全体を大型化する場合にも高さ方向のサイズを抑制することができる。これにより、その下で打ち合わせ等を行う会議参加者に与える圧迫感を抑えることができる。また、高さ方向の制限から従来の会議支援システム1を設置できなかった場所にも、会話支援システムを設置することができる。
【0062】
また、本発明に係る会議支援システム1は、円周スピーカ60の複数の指向軸が、部分放物天井面18を向いているため、音声を提示する範囲の中心から離れた場所に位置する会議参加者にも、十分に拡声された音声を効率よく提示することができる。
【0063】
また、本発明に係る会議支援システム1によれば、 打ち合わせスペースの中央付近には円周スピーカ60から放射された音波が殆ど届かないため、この位置に設置したマイクロホンへの入力が円周スピーカ60から出力されてフィードバックにより増幅されるハウリングが生じにくい、というメリットがある。
【0064】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。本発明に係る会議支援システム1は、前述したようにハウリングが生じにくい、という特性を有する。しかしながら、本発明に係る会議支援システム1は、円周スピーカ60と部分放物天井面18を含む天井10との間にマイクロホン30が存在するため、マイクロホン30への音の入力→アンプ50による増幅→円周スピーカ60からの再生→マイクロホン30への音の入力、といったループによりハウリングの発生がある程度は予測される。
【0065】
そこで、第2実施形態においては、このようなハウリングを抑制する構成が採用されている。第2実施形態ではハードウエアを付加することにより、ハウリングの抑制を図るようにしている。
【0066】
図7は本発明の他の実施形態に係る会議支援システム1の概要を説明する図である。
図7においては、ハウリングの抑制を図る構成として、円周スピーカ60の下方に設けられた遮音板70、マイクロホン30上方に設けたカバー体80が設けられている。ここで、マイクロホン30を置くためのマイク台27としては円錐台や四角錐台の形状をなしたものを好適に用い得る。
【0067】
本実施形態においては、ハウリング抑制のために、それぞれの構成を単独で用いてもよいし、任意に組み合わせて用いるようにしてもよい。
【0068】
遮音板70は、部分放物天井面18または水平断面部19で反射された音が、マイクロホン30で再び集音されることを避けるために設けられたものである。平面視で、遮音板70とマイクロホン30とが重なっているような配置関係が好ましい。
【0069】
また、カバー体80はマイクロホン30の上方に設けることで、マイクロホン30が、マイクロホン30上方側からの集音することを抑制し、会議参加者による発声を中心として集音するようにしている。
【0070】
また、マイクロホン30を置くマイク台27の形状は、円錐台や四角錐台をなしており、天井側からの音を、略側方側に反射することで、デスク25で反射した音をマイクロホン30が下方側から収音することを抑制するようにしている。
【0071】
他の実施形態に係る会議支援システム1のハウリング抑制効果は、遮音板70等と組み合わせられることで、更に向上することができる。これにより、マイクロホン30で収録して円周スピーカ60から拡声される会話音声の増幅率を十分に上げることができるようになる。そして、他の実施形態に係る会議支援システム1によれば、よりハウリングが少ない環境で、先の第1実施形態と同様の効果を享受することができる。
【符号の説明】
【0072】
1・・・会議支援システム
10・・・天井
15・・・一般天井部
17・・・放物面天井部
18・・・部分放物天井面
19・・・水平断面部
20・・・床面
25・・・デスク
27・・・マイク台
30・・・マイクロホン
40・・・音声処理部
50・・・アンプ
60・・・円周スピーカ
61・・・単位スピーカ
62・・・筐体
70・・・遮音板
90・・・吸音材