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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081865
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電気駆動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 7/24 20060101AFI20240612BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20240612BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20240612BHJP
   B60L 58/13 20190101ALI20240612BHJP
   B60L 58/15 20190101ALI20240612BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240612BHJP
   B60T 8/17 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B60L7/24 D
B60L50/60
B60L15/20 A
B60L58/13
B60L58/15
H02J7/00 P
B60T8/17 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195387
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】菊池 輝
(72)【発明者】
【氏名】古川 勲
(72)【発明者】
【氏名】東又 格
【テーマコード(参考)】
3D246
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
3D246AA08
3D246EA05
3D246EA20
3D246GB39
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA08A
3D246HA28A
3D246HA28B
3D246HA32A
3D246HA38A
3D246HA86A
3D246HC01
3D246JA12
3D246JB10
3D246JB41
3D246JB53
3D246MA37
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503CA10
5G503DA08
5G503FA06
5G503GB03
5H125AA06
5H125AC02
5H125AC12
5H125BA00
5H125BB05
5H125BB07
5H125BC08
5H125BC12
5H125BC14
5H125CA01
5H125CB02
5H125CB07
5H125CD02
5H125EE27
5H125EE44
(57)【要約】
【課題】 電気駆動車両が、架線が敷設されている区間を走行する時に架線に回生電力を供給するのを抑制する。
【解決手段】 電動機を駆動する第1の電力変換器と、蓄電池を充電する第2の電力変換器と、制御部とを有し、制御部は、第2の電力変換器が架線からの電力で蓄電池を充電している際に、電動機の回生電力が蓄電池の充電電力より大きい場合には、回生電力が充電電力以下になるように電動機のトルク指令を補正し、機械ブレーキへの指令を生成する電気駆動車両。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機を駆動する第1の電力変換器と、
蓄電池を充電する第2の電力変換器と、
制御部とを有し、
前記制御部は、
第2の電力変換器が架線からの電力で前記蓄電池を充電している際に、
前記電動機の回生電力が前記蓄電池の充電電力より大きい場合には、
前記回生電力が前記充電電力以下になるように前記電動機のトルク指令を補正し、機械ブレーキへの指令を生成する電気駆動車両。
【請求項2】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
表示部を有し、
前記表示部は、
前記トルク指令を補正したこと、もしくは前記機械ブレーキが動作することを表示する電気駆動車両。
【請求項3】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制御部は、
前記蓄電池の充電する電力を演算し、演算した充電電力から、補正された前記電動機のトルク指令を演算する電気駆動車両。
【請求項4】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制御部は、
前記蓄電池の充放電電力指令から、補正された前記電動機のトルク指令を演算する電気駆動車両。
【請求項5】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記機械ブレーキの指令は、前記トルク指令の補正量に相当する値である電気駆動車両。
【請求項6】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制御部は、
前記蓄電池の充電電力と前記電動機の回生電力との比を演算し、
演算した前記比を使い、前記電動機のトルク指令を補正する電気駆動車両。
【請求項7】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記制御部は、
力行運転の際には、
前記電動機のトルク指令を演算し、当該トルク指令に基づいて第1の電力変換器を制御する電気駆動車両。
【請求項8】
請求項1に記載の電気駆動車両において、
前記架線には、直流電圧が供給され、
第2の電力変換器は、DC/DC変換器である電気駆動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架線から電力を給電されて走行する電気駆動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
架線が敷設されている区間ではパンタグラフなどの集電装置を介して給電された電力で走行し、架線が敷設されていない区間では車両に搭載したバッテリーに蓄えられた電力で走行する電気駆動車両が知られている。
【0003】
このような車両において、ブレーキ操作を実施した時に発生する回生電力は、車両に搭載したバッテリーに蓄えられたり、あるいは架線を介して地上の蓄電設備に蓄えられたり、あるいは架線を介して走行中の他の車両に供給されたりする。
【0004】
電気駆動車両に関して、特許文献1が知られている。特許文献1には、電気ブレーキ使用時の回生電力の供給先を確保し、また車内負荷装置の負荷量を制御し、架線電圧を回生動作に適した値に維持することにより、回生効率を向上すると共に、ATO車両の停止位置精度を向上させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2013-70611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、上記したように、回生効率を向上するといった課題は解決できる。しかし、地上に蓄電設備が無い場合や、架線を走行している他の車両がいない場合に、架線に回生電力を供給すると架線電圧が上昇するなどの問題が発生する。特許文献1では、このような問題への配慮が、十分ではない。
【0007】
上記した問題が発生した場合には、発生した回生電力は車両に搭載したバッテリーで全て吸収する必要がある。しかし、バッテリーの充電状態などによっては、回生電力を車両に搭載したバッテリーで全て吸収できるとは限らない。
【0008】
本発明の目的は、電気駆動車両が、架線が敷設されている区間を走行する時に架線に回生電力を供給するのを抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電動機を駆動する第1の電力変換器と、
蓄電池を充電する第2の電力変換器と、
制御部とを有し、
前記制御部は、
第2の電力変換器が架線からの電力で前記蓄電池を充電している際に、
前記電動機の回生電力が前記蓄電池の充電電力より大きい場合には、
前記回生電力が前記充電電力以下になるように前記電動機のトルク指令を補正し、機械ブレーキへの指令を生成する電気駆動車両である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、架線が敷設されている区間を走行する時に架線に回生電力を供給するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1の構成を示す図。
図2】トルク指令演算器の出力特性を示す図。
図3】電力演算器の構成を示す図。
図4】充電可否判定器の構成を示す図。
図5】トルク指令補正器の構成を示す図。
図6】機械ブレーキ指令演算器の構成を示す図。
図7】実施例1の動作波形例を示す図。
図8】実施例2の構成を示す図。
図9】実施例3の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る電気駆動車両の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例0013】
図1は、電気駆動車両の実施例1の構成を示す。本実施例の電気駆動車両1は、パンタグラフ101、インバータ102、電動機103、DC/DC変換器104、バッテリー(蓄電池)105、コントローラ106、機械ブレーキ107を有している。
【0014】
直流電圧を供給する架線2が敷設されている区間を電気駆動車両1が走行する場合、パンタグラフ101は架線2に接続し、架線2から電気駆動車両1に供給される直流電力はインバータ102に供給されて、インバータ102がその直流電力を三相交流電力に変換して電動機103に供給し、電動機103はその三相交流電力に駆動されることで電気駆動車両1が走行する。さらに、架線2から電気駆動車両1に供給される直流電力は、DC/DC変換器104に供給され、DC/DC変換器104からバッテリー105に直流電力が供給されて、バッテリー105に電力が充電される。
【0015】
一方、架線2が敷設されていない区間を電気駆動車両1が走行する場合、バッテリー105に蓄えられた電気エネルギーをDC/DC変換器104がインバータ102へ直流電力として供給し、インバータ102がその直流電力を三相交流電力に変換して電動機103に供給し、電動機103はその三相交流電力に駆動されることで電気駆動車両1が走行する。
【0016】
コントローラ106はトルク指令演算器1061、電力演算器1062、充電可否判定器1063、トルク指令補正器1064、機械ブレーキ指令演算器1065を有している。コントローラ106は、マイコン(マイクロコンピュータ)やDSP(Digital Signal Processor)などの半導体集積回路(演算制御手段)によって構成してもよい。コントローラの106の機能のいずれかまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアで構成することができる。コントローラの106のCPU(Central Processing Unit)が、メモリなどの記録装置に保持するプログラムを読み出して、演算部などの各部の処理を実行する。
【0017】
トルク指令演算器1061は、運転者のアクセルやブレーキなどのペダル操作から与えられるペダル指令120、電動機103の電動機速度検出値121を入力として、電動機103に与えるトルク指令125を演算する。ここで、電動機速度検出値121は速度検出センサの信号を用いて検出した検出値でも良いし、速度検出センサを用いずに推定した推定値でも良い。
【0018】
電力演算器1062はトルク指令演算器1061の出力するトルク指令125、電動機速度検出値121を入力として、電動機103に与えられる電力を演算する。
【0019】
充電可否判定器1063はバッテリー105を充放電するバッテリー充放電電力指令124と電力演算器1062の出力する電力演算値123を入力として、電動機103へ与えるトルク指令125を補正する補正指令127を出力する。
【0020】
なお、バッテリー充放電電力指令124は、例えばワット(W)数などで指定したバッテリー105へ充電したい量を示す指令である。バッテリー105に充電できる最大電力値であってもよいし、それより低い充電させたい量であってもよい。本実施例では、バッテリー充放電電力指令124は放電時が正の値、充電時が負の値とする。
【0021】
トルク指令補正器1064はトルク指令演算器1061の出力するトルク指令125、充電可否判定器1063の出力する補正指令127を入力として、補正後のトルク指令126を演算し、インバータ102へ補正後のトルク指令126を出力する。
【0022】
インバータ102はトルク指令補正器1064が出力する補正後のトルク指令126を受けて、電動機103が出力するトルクがそのトルク指令126に従うように電動機103を制御する。
【0023】
機械ブレーキ指令演算器1065はトルク指令演算器1061の出力するトルク指令125、充電可否判定器1063の出力する補正指令127を入力として、機械ブレーキ107に与える機械ブレーキ指令128を演算して、機械ブレーキ107に出力する。
【0024】
機械ブレーキ107は機械ブレーキ指令演算器1065が出力する機械ブレーキ指令を受けて、電気駆動車両1を制動する。
【0025】
図2はトルク指令演算器1061の出力特性の例を示す。図2に示すように、運転者が電気駆動車両1を加速させようとしている時には、加速時トルク指令の特性から電動機速度に応じた正のトルク指令を出力し、運転者が電気駆動車両1を減速させようとしている時には、減速時トルク指令の特性から電動機速度に応じた負のトルク指令を出力する。
【0026】
図3は電力演算器1062の構成を示す。電力演算器1062は、乗算器10621を有する。乗算器10621はトルク指令125及び電動機速度検出値121を入力として、それらを乗算した結果を電力演算値123として出力する。
【0027】
図4は充電可否判定器1063の構成を示す。充電可否判定器1063は、除算器10631、リミッタ10632、符号判定器10633、補正指令出力器10634を有している。
【0028】
除算器10631はバッテリー充電電力指令と電力演算値123を入力として、バッテリー充放電電力指令124を電力演算値123で除算した値を出力する。
【0029】
リミッタ10632は除算器10631の出力を入力として、上限値1、下限値0のリミッタ処理を実施する。
【0030】
符号判定器10633は電力演算値123を入力として、その符号から力行運転か回生運転かの判定を実施して、その結果を出力する。
【0031】
補正指令出力器10634はリミッタ10632の出力と符号判定器10633の出力を入力として、符号判定器10633の出力結果が力行運転の場合は補正指令として1を出力する。また、符号判定器10633の出力結果が回生運転の場合は、補正指令出力器10634は補正指令としてリミッタ10632の出力をそのまま出力する。詳細は後述するが、この補正指令は後段のブロックでゲインとして使用されるので、補正指令が1の場合は補正をしないことと等価になる。
【0032】
補正指令出力器10634は、力行運転の場合はバッテリー105を充電しないので、トルク指令125を補正する必要がなく、補正指令127として1を出力する。一方、回生運転の場合はバッテリー105を充電するので、バッテリー充放電電力指令124と電力演算値123を用いて演算した値を補正指令127として出力する。
【0033】
図5はトルク指令補正器1064の構成を示す。トルク指令補正器1064は、乗算器10641を有する。乗算器10641は、トルク指令125及び補正指令127を入力として、それらを乗算し、その乗算結果を補正後トルク指令126として出力する。
【0034】
図6は機械ブレーキ指令演算器1065の構成を示す。機械ブレーキ指令演算器1065は減算器10651、乗算器10652、乗算器10653を有している。
【0035】
減算器10651は1から補正指令127を減算する。乗算器10652は減算器10651からの値をトルク指令125に乗算する。更に、乗算器10653は乗算器10652からの値に-1を乗算して符号を反転した結果を機械ブレーキ指令128として出力する。これにより、トルク指令125が補正されることで減少するブレーキトルクを演算し、その減少分を機械ブレーキ指令128として出力する。
【0036】
図7に実施例1の動作波形例を示す。電気駆動車両1は架線2に接続して走行しているとし、時間T1までは運転者が電気駆動車両1を加速させようとペダル操作をするとする。この時は力行運転130であり、トルク指令は正の値であるため、電力演算値も正の値になる。したがって、符号判定器10633は力行運転130と判定し、その結果、補正指令出力器10634は補正指令として1を出力する。その結果、補正後のトルク指令126は元のトルク指令132と一致し、機械ブレーキ指令はゼロとなる。この期間は、力行運転130であり回生電力は発生しないため、トルク指令を補正する必要がなく、機械ブレーキを使用する必要もない。
【0037】
次に、時間T1~時間T2の期間では運転者が電気駆動車両1を減速させようとペダル操作をするとする。この時は回生運転131であり、トルク指令は負の値であるため、電力演算値も負の値になる。
【0038】
したがって、符号判定器10633は回生運転131と判定し、補正指令出力器10634はリミッタ10632の出力を補正指令として出力する。ここで、電力演算値の大きさはバッテリー充放電電力指令124の大きさよりも小さいとすると、リミッタ10632の出力は1となり、補正指令出力器10634は補正指令として1を出力する。
【0039】
その結果、補正後のトルク指令は元のトルク指令と一致し、機械ブレーキ指令はゼロとなる。この期間は、回生運転131であり回生電力が発生するが、その回生電力の大きさはバッテリー105の充電電力よりも小さいため、回生電力は全てバッテリー105に充電されることになる。したがって、回生電力が架線2に供給されることがないため、トルク指令を補正する必要がなく、機械ブレーキを使用する必要もない。
【0040】
次に、時間T2~時間T3の期間では運転者が電気駆動車両1を更に減速させようとペダル操作をするとする。この時は回生運転131であり、トルク指令は負の値であるため、電力演算値も負の値になる。したがって、符号判定器10633は回生運転131と判定し、補正指令出力器10634はリミッタ10632の出力を補正指令として出力する。ここで、電力演算値の絶対値としての大きさはバッテリー充放電電力指令124の絶対値としての大きさよりも大きいとすると、リミッタ10632の出力は1よりも小さくなり、補正指令出力器10634は補正指令として1よりも小さい値を出力する。
【0041】
その結果、補正後のトルク指令126の大きさは元のトルク指令132の大きさよりも絶対値が小さくなり、機械ブレーキ指令はそのトルク指令の減少分を補償するようにブレーキ指令を出力する。電力演算値の大きさ(電動機の回生電力)に対するバッテリー充放電電力指令124の大きさの比が、1より小さい場合には、その比を電動機へのトルク指令に乗算することでトルク指令を補正するようにしてもよい。また、機械ブレーキ指令はトルク指令の補正量に相当する値としてトルク指令の減少分を補償するようにしてもよい。この期間は、回生運転131であり回生電力が発生し、元のトルク指令132ではその回生電力の大きさがバッテリー105の充電電力よりも大きくなるが、トルク指令が補正されることでその回生電力の大きさはバッテリー105の充電電力と一致し、回生電力が架線2に供給されることはない。また、トルク指令が補正された分は機械ブレーキが補償することで、電気駆動車両1の減速特性は変化しない。
【0042】
次に、時間T3~時間T4の期間では運転者が電気駆動車両1の減速を緩めるようにペダル操作をするとする。この時は回生運転131であり、トルク指令は負の値であるため、電力演算値も負の値になる。したがって、符号判定器10633は回生運転131と判定し、補正指令出力器10634はリミッタ10632の出力を補正指令として出力する。ここで、電力演算値の大きさはバッテリー充放電電力指令124の大きさよりも小さいとすると、リミッタ10632の出力は1となり、補正指令出力器10634は補正指令として1を出力する。
【0043】
その結果、補正後のトルク指令は元のトルク指令と一致し、機械ブレーキ指令はゼロとなる。この期間は、回生運転131であり回生電力が発生するが、その回生電力の大きさはバッテリー105の充電電力よりも小さいため、回生電力は全てバッテリー105に充電されることになる。したがって、回生電力が架線2に供給されることがないため、トルク指令を補正する必要がなく、機械ブレーキを使用する必要もない。
【0044】
次に、時間T4以降は運転者が電気駆動車両1を加速させようとペダル操作をするとする。この時は力行運転130であり、トルク指令は正の値であるため、電力演算値も正の値になる。したがって、符号判定器10633は力行運転130と判定し、その結果、補正指令出力器10634は補正指令として1を出力する。
【0045】
その結果、補正後のトルク指令は元のトルク指令と一致し、機械ブレーキ指令はゼロとなる。この期間は、力行運転130であり回生電力は発生しないため、トルク指令を補正する必要がなく、機械ブレーキを使用する必要もない。
【0046】
以上述べたように本実施例によれば、回生電力がバッテリー105の充電電力よりも大きくならないようにトルク指令が補正されることで、架線2へ回生電力が供給されるのを抑制することができる。また、本実施例によれば、トルク指令が補正された分は機械ブレーキが補償することで、電気駆動車両1の減速特性は変化しない。
【実施例0047】
図8は、電気駆動車両の実施例2の構成を示す。本実施例の電気駆動車両3は実施例1の電気駆動車両1の構成に加えて、表示器108を備えている点が異なる。それ以外は実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0048】
表示器108は充電可否判定器1063の補正指令127を入力として、その補正指令127が1より小さい場合は、トルク指令125が補正されて、機械ブレーキ107が動作することを運転者に通知する。実施例1では、運転者に何も通知されずにトルク指令125が補正されて、その補正を補償するために機械ブレーキ107が動作する。しかし、本実施例では表示器108が運転者に通知することで、運転者はそのような状況を認識することができる。機械ブレーキ107は使用回数が増えるほど摩耗するため、例えば運転者が機械ブレーキ107の摩耗を抑制したければ、ペダル操作を調整して回生電力が小さくなるように元のトルク指令125を調整することが可能となる。
【実施例0049】
図9は、電気駆動車両の実施例3の構成を示す。本実施例の電気駆動車両4は実施例1の電気駆動車両1の構成に加えて、DC/DC変換器104の出力電圧を検出する電圧センサ110、DC/DC変換器104の出力電流を検出する電流センサ111を備え、電圧センサ110の出力する電圧検出値、電流センサ111の出力する電流検出値を入力とするコントローラ109を備えている。
【0050】
コントローラ109は実施例1のコントローラ106の構成に加えて、バッテリー充放電電力検出器1066を備えている。実施例1と同様であるので、説明は省略する。
【0051】
バッテリー充放電電力検出器1066は電圧センサ110の出力する電圧検出値、電流センサ111の出力する電流検出値を入力として、バッテリー105が充放電する電力検出値140を演算し、その結果を充電可否判定器1063に出力する。
【0052】
実施例1ではバッテリー105に充放電する電力指令を用いてトルクの補正指令を演算するが、本実施例ではバッテリー105に充放電する電力検出値140を用いてトルク補正指令を演算することになる。したがって、バッテリー105に充放電される電力が指令通りに制御されていない場合にも、本実施例では回生電力をバッテリー105に全て充電することができるかどうかの判定が正しく実施できるため、回生電力を架線2に供給するのを抑制することができる。
【符号の説明】
【0053】
1:電気駆動車両、2:架線、3:電気駆動車両、4:電気駆動車両、101:パンタグラフ、102:インバータ、103:電動機、104:DC/DC変換器、105:バッテリー、106:コントローラ、1061:トルク指令演算器、1062:電力演算器、10621:乗算器、1063:充電可否判定器、10631:除算器、10632:リミッタ、10633:符号判定器、10634:補正指令出力器、1064:トルク指令補正器、10641:乗算器、1065:機械ブレーキ指令演算器、10651:減算器、10652:乗算器、10653:乗算器、1066:バッテリー充放電電力検出器、107:機械ブレーキ、108:表示器、109:コントローラ、110:電圧センサ、111:電流センサ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9