(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081871
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ハンドル型バルブ開閉治具
(51)【国際特許分類】
F16K 31/60 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
F16K31/60 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195394
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】512152684
【氏名又は名称】有限会社野村鉄工
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100171941
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 忠行
(72)【発明者】
【氏名】野村 豊博
【テーマコード(参考)】
3H063
【Fターム(参考)】
3H063BB02
3H063DA02
(57)【要約】
【課題】ハンドル型バルブを確実かつ迅速に開閉することのできる治具を提供する。
【解決手段】ハンドル型バルブ(21)のアーム部(23)を挿し入れて使用するバルブ開閉治具(1)で、下面が開口し上面部(4)を有する筒状の治具本体(2)と、前記治具本体の下端に筒芯方向上向きに陥入して形成されていてハンドル型バルブのアーム部(23)を通す複数のアーム挿入溝(
5)と、治具本体の上面に設けられていてインパクトレンチ等と係合する係合部(9)と、を備えてなり、前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ開き用溝(
6)が、バルブ開き方向の上流側Rに向けて陥入してそれぞれ形成されているバルブ開閉治具。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル型バルブのアーム部を挿し入れて使用するバルブ開閉治具であって、
下面が開口し上面部を有する筒状の治具本体と、前記治具本体の下端に筒芯方向上向きに陥入して形成されていてハンドル型バルブのアーム部を通す複数のアーム挿入溝と、前記治具本体の上面に設けられていて外力付与用具と着脱自在に係合する係合部と、を備えてなり、
前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ開き用溝が、前記治具本体にバルブ開き方向の上流側に向けて陥入してそれぞれ形成されていることを特徴とするバルブ開閉治具。
【請求項2】
前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ閉め用溝が、前記治具本体にバルブ開き方向の下流側に向け陥入してそれぞれ形成されている請求項1に記載のバルブ用開閉治具。
【請求項3】
前記治具本体の上面部及び前記係合部に上下に貫通する貫通孔が形成されている請求項1または2に記載のバルブ開閉治具。
【請求項4】
前記係合部が六角柱形である請求項1に記載のバルブ開閉治具。
【請求項5】
前記外力付与用具が、インパクトレンチと当該インパクトレンチの回転駆動軸に取り付けられるソケット部とから構成される請求項1記載のバルブ開閉治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル型バルブを迅速かつ確実に開閉するための治具に関する。特に通常は人の片手操作によって開閉しうる程度の比較的小型のハンドル型バルブをインパクトレンチを使用して開閉する際に好適に用いられる開閉治具に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
ハンドル型バルブは、様々な配管・装置類に取り付けられている。配管の流体の流量を調節したりするために設けられている。特に工業プラントにあるハンドル型バルブは、一部を除いて通常は開閉操作を行うことがほとんどない。ところが、プラントの点検作業において、例えばバイパス配管中のバルブ等配管中の閉じられていたバルブを開けるという操作が必要になることがある。このような作業を行う場合、長らく固定状態で使われていたバルブは開閉操作に思わぬ手間がかかることがある。通常は人が片手で操作するような比較的小型のハンドル型バルブは、人が片手で難なく操作できるはずのものであるが、野外などで長期間のバルブ開度が固定されたバルブは人が手だけで容易に開くのが難しいことがある。
【0003】
このような場合、多くはウィルキーと呼ばれる工具を用いてハンドル型バルブのハンドル部分又はハンドル部とアーム部を同時に掴んで開閉する。ところが、このような工具は基本的には人力で回して開け閉めするようになっている。このため、保守点検時に多数のバルブを手際よく開閉する作業には向いていない。
【0004】
例えば、特許文献1のようにハンドル型バルブのハンドル部分を外側から覆い、開閉する治具が提案されているが、このような治具はハンドルの外形/大きさに合わせて作る必要がある。少しでも大きさが違うとバルブの迅速かつ確実な開閉はできないし、使用が不可能なこともある。また、バルブの外形等に合わせて複数の治具を使用する必要があり、実用性がない。
【0005】
特許文献2には、ハンドル型バルブのアーム部を挟んで確実に弁開閉操作を行えるようにした工具が開示されている。しかしながら、ここに開示されている工具は、ラチェットレンチをねじによって固定させて使用するものである。インパクトレンチのような強い衝撃力が加わると工具の係合部は容易にアームから外れてしまう。特にハンドルが人の頭よりも高い位置にある場合や、ハンドル面が地面に対して垂直(又は水平よりも大きく傾いているよう)な場合には工具がアームから外れやすい、と言うよりは普通に使用することが困難である。
【0006】
また、ハンドル型バルブが設置されている周りに、作用アームを使用したバルブの開閉作業の障害となるような配管や装置配置があると、工具が使えなかったり、係合するレンチを繋ぎ変える必要があり、作業性が非常に悪い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2011-127690号公報
【特許文献2】実用新案登録第3143498号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
以上紹介したように、これまでの技術では比較的小型のハンドル型バルブを対象にしてインパクトレンチを用いて確実かつ迅速に開閉する方法が無く、またハンドル型バルブが下向き等で治具が抜けやすいという問題があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するために成されたもので、その目的はハンドル型バルブをインパクトレンチを使って確実かつ迅速に開閉することのでき、ハンドル型バルブが下向き等であっても外れることのない治具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するために、本願発明は、ハンドル型バルブのアーム部を挿し入れて使用するバルブ開閉治具であって、下面が開口し上面が閉じた筒状の治具本体と、前記治具本体の下端に筒芯方向上向きに陥入して形成されていてハンドル型バルブのアーム部を通す複数のアーム挿入溝と、前記治具本体の上面に設けられていて外力付与用具と着脱自在に係合する係合部と、を備えてなり、前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ開き用溝が、前記治具本体にバルブ開き方向の上流側に向けて陥入してそれぞれ形成されていることを特徴とする。
【0011】
好ましくは、前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ閉め用溝が、前記治具本体にバルブ開き方向の下流側に向け陥入してそれぞれ形成されている前記のバルブ用開閉治具である。このような溝が設けられていることでバルブを閉める操作においてもインパクトレンチによる確実かつ迅速な作業やハンドル型バルブが下向き等の抜けやすい位置でも治具が抜けることなく確実に作業を行える。
【0012】
より好ましくは、前記治具本体の上面及び前記係合部に上下に貫通する貫通孔が形成されている前記のバルブ開閉治具である。このような貫通孔があることで、ハンドル型バルブに突出したスピンドル部があっても治具の取り付け、使用に支障がない。
【0013】
より好ましくは、前記係合部が六角柱形状である前記のバルブ開閉治具である。このような形状とすることで、治具に係合する外力付与用具を様々な種類の中から選択することが可能となる。
【0014】
より好ましくは、前記外力付与用具が、インパクトレンチと、当該インパクトレンチの回転駆動軸に取り付けられるソケット部材とから構成される前記のバルブ開閉治具である。インパクトレンチが取り付けられることによって、迅速かつ確実な作業が行える。
【0015】
本発明において、バルブの開き方向とは、バルブを開くためにハンドル部を回転させる方向のことである。一般的な右ねじ型のバルブであれば、開き方向とは左回り-すなわち反時計回り方向を意味する。また、バルブの開き方向の上流側とは前記開き方向の逆方向を意味する。つまり一般的な右ねじ型のバルブであれば、バルブの開き方向の上流側とは右回り方向-すなわち時計回り方向を意味する。
【発明の効果】
【0016】
このような構成の治具を用いることにより、ハンドル型バルブの弁開を確実かつ迅速に行うことができる。この場合対象とするのは主として人が片手で操作可能な程度の小型のものに限られるが、バルブが高い位置にあったり、水平よりも傾いた状態、垂直状態にあったりしても作業性を損なうことなく迅速に作業を実施できる。おおむね2.5インチ程度のバルブであれば、異なる大きさのものが混ざっていても作業性を損なうことなく迅速かつ確実に弁開作業を行うことができ、ハンドル型バルブが下向き等に位置する場合でも治具が外れることなく作業出来るものである。
【0017】
さらに、前記複数のアーム挿入溝の上端と個々に連通するバルブ閉め用溝が、前記治具本体にバルブ開き方向の下流側に向け陥入してそれぞれ形成されている前記のバルブ用開閉治具により、前記ハンドル型バルブの弁を締める作業においてもこれを確実かつ迅速に行えるようになる。
【0018】
そして、前記治具本体の上面部及び前記係合部に上下に貫通する貫通孔が形成されている開閉治具により、ハンドル型バルブにおいてスピンドル部が突出している場合であっても、確実かつ迅速な開閉作業を損ねることがない。
【0019】
そして、前記係合部が六角柱形であるバルブ開閉治具であれば、多種多様な外力付与用具を用途に応じて係合させることができる。
【0020】
そして、前記外力付与用具が、インパクトレンチと当該インパクトレンチの回転駆動軸に取り付けられるソケット部とから構成される前記のバルブ開閉治具であれば、人手では開くことが難しいバルブであっても確実かつ極めて迅速に作業を行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施の一形態の治具の斜視図である。
【
図5】前記治具をハンドル型バルブの上方に配した態様の側面図である。
【
図7】前記治具をハンドル型バルブに載せた態様を示す状態説明図である。
【
図8】前記治具の使用時の状態を示し、バルブを開く際の状態説明図である。
【
図9】前記治具の使用時の状態を示し、バルブを閉める際の状態説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本願発明の実施形態を図面を交えながら詳しく説明する。なお、以下の説明において特に断りが無い場合は、単に「バルブ」と表記したものはハンドル型バルブを示す。
【0023】
本発明の実施の一形態の治具1を
図1乃至
図4に示す。治具1は治具本体2と係合部9とからなる。本体2の下面は開口されている。これは、中空部11が形成された円筒状の側面部3と、この側面部3の上面を覆う上面部4により構成されている。本体2と係合部9は本体上面部4で溶接等の公知の方法により接合されている。
【0024】
側面部3にはT字型溝構造8が設けられている。図では治具1に5カ所のT字型溝構造8が等間隔で設けられている。前記T字型溝構造8は、前記側面部3の下端に筒芯方向上向きに陥入して形成されていてアーム部23を通す5つのアーム挿入溝5と、このアーム挿入溝5の上端と個々に連通し、バルブ開き方向Rの上流側に向けて陥入してそれぞれ形成されている開き用溝6と、前記5つのアーム挿入溝5の上端と個々に連通し、バルブ開き方向Rの下流側に向け陥入してそれぞれ形成されている閉め用溝7とから構成される。図に示したR方向はハンドル型バルブを上から見て反時計回り方向であり、開き方向上流側とは時計回り方向であり、開き方向下流側とは反時計回り方向である。
【0025】
ここでは一例としてT字型溝構造8が5カ所設けられているものを例示した。通常のハンドル型バルブ21は3乃至5本のアーム部が設けられている事が多い。従い、T字型溝構造8も使用するハンドル型バルブのアーム部23の数に合わせて作製しても良い。T字型溝構造8の数とアーム部23の数が一致しなくても治具1の使用は可能である。
【0026】
挿入溝5の周方向の溝幅は、少なくとも開閉させるハンドル型バルブのアーム部23を挿し入れるのに支障がない程度の大きさが必要である。この溝幅が大きくなると治具1を抜き差しする作業性は良くなるが、余りに大きすぎると治具1の使用強度が低下する恐れがある。
【0027】
治具本体2の上面部4にはインパクトレンチ31やラチェットレンチを係合させるための係合部9が設けられている。係合させる工具やアタッチメントの種類が豊富に選べるため、係合部9は図に示したような六角柱形状であることが好ましい。他には三角柱形や四角柱形の係合部とすることもできる。
【0028】
上面部4と係合部9にはこれらを貫通する貫通孔10が設けられている。
図1に示されたものでは、係合部9は汎用のナットを転用しており、孔内壁9Aは雌ねじ穴によって代替されている。また、図に一点鎖線Cで示される中心線が前記貫通孔10の中央を通っている。
【0029】
後述するように、貫通孔10はバルブ21のスピンドル部24が治具1の使用を妨げることがないように機能する。従い、貫通孔の大きさはスピンドル部の大きさ、すなわち軸太さよりも大きいことが好ましい。
【0030】
図5は治具1とハンドル型バルブ21を上下に並べて図示したものである。
この
図5のA-A線矢視図が
図6である。
【0031】
バルブを開ける時には、
図5の状態から
図7のように治具1を矢印D方向に下げる。さらに
図8のようにアーム部23が開き用溝6にはまった状態とする。これに例えばインパクトレンチ31を繋げて使用する。
図8ではインパクトレンチ31の回転駆動軸32に接合されたソケット部25の嵌合部25Aを係合部9に係合させている。インパクトレンチ31を駆動させると回転駆動軸32が矢印R方向の力をソケット部25に伝え、それが治具1に作用してバルブ21が瞬時に開く。
【0032】
閉め操作を行う際は
図9のように、アーム部23が閉め用溝7にはまった状態とし、前記と同じようにインパクトレンチ31を繋げて、矢印-R方向(R方向と反対方向)の回転をソケット部25から治具1に加えてバルブ21を瞬時に閉める。
【0033】
図5に示したように、ハンドル型バルブ21の中央にスピンドル部24が突出した構造となっている場合がある。このような場合でも、側面部3の高さが十分高ければ、スピンドル部24が内空部11で上面部4とぶつかって治具1をバルブ21に挿入できなくなる恐れがない。また、貫通孔10の大きさが十分大きければ、スピンドル部24は貫通孔11内及び嵌合部25Aに位置することになるので、治具1をバルブ21に挿入できなくなる恐れがない。
【0034】
治具1は強度や耐久性の点から金属製が好ましい。治具本体2の厚さに特に制限はないが、外力を適正にバルブ21に伝えてその開閉を容易にすることから、治具本体2の厚さは3mm以上が好ましい。
【0035】
以上のように、治具1はハンドル型バルブ21を迅速かつ確実に開閉作業を行うのに好適なものである。治具1の係合部9にインパクトレンチ等の外部動力を用いる工具を係合させればそのバルブ21の開閉操作の作業性は格段に向上する。すなわち、短時間で多数の同様サイズのハンドルバルブの開閉操作を行うことができる。
【0036】
本願発明の治具は開閉するバルブハンドルの設置位置を問わない。作業者から見て頭より高い位置に下向きについているものや上下に走るパイプに取り付けられてバルブが垂直に位置している場合でも、作業性を損なうことなく迅速かつ確実に開閉作業ができる。
【0037】
また開閉操作のために瞬間的に大きな力が加わっても外れる恐れがないため、特にインパクトレンチを係合して作業を行う際にその効果を著しく発揮できるものである。
【0038】
またラチェットレンチを繋ぎこめば、開/閉の操作を間違えてバルブに意図したのと反対向きの力を与える恐れがなくなるし、トルクレンチを係合すれば一定の加力でバルブの開閉操作を行える。もちろん、前記のような特殊な工具以外の一般的な開閉用の工具・治具を係合して人力または他の外部力によってバルブを開閉させることもできる。ここに例示していないものであっても本願発明品に取り付け可能であれば使用に差し支えない。
【0039】
そして、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではない。すなわち、本発明の分野における通常の知識を有する者であれば想到し得る、各種変形、修正を含む、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても、本発明に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1 治具
2 治具本体
3 側面部
4 上面部
5 アーム部挿入溝
6 開き用溝
7 閉め用溝
8 T字型溝構造
9 係合部
9A 孔内壁
10 貫通孔
11 中空部
21 ハンドル型バルブ
22 ハンドル部
23 アーム部
24 スピンドル部
25 ソケット部
25A 嵌合凹部
31 インパクトレンチ
32 回転駆動軸
C 中心線
D 矢印
R 矢印