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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081883
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】アナログメータの読み取り方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20240612BHJP
   G08C 19/00 20060101ALI20240612BHJP
   G06V 10/00 20220101ALI20240612BHJP
【FI】
H04N7/18 K
G08C19/00 301G
G06V10/00
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195415
(22)【出願日】2022-12-07
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000141015
【氏名又は名称】株式会社かんでんエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
2F073
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
2F073AA01
2F073AA06
2F073AB01
2F073BB01
2F073BB04
2F073BC01
2F073BC02
2F073CC03
2F073CD11
2F073DD07
2F073FF01
2F073FG11
2F073GG01
2F073GG08
5C054CA04
5C054CC02
5C054CD00
5C054DA07
5C054EA05
5C054FC12
5C054FE13
5C054FE14
5C054FE16
5C054GB02
5C054GD07
5C054HA05
5L096AA06
5L096BA02
5L096CA04
5L096DA02
5L096FA67
5L096FA69
5L096HA09
(57)【要約】
【課題】施設に設置された複数のアナログメータの読み取り作業を簡素化する方法を提供する。
【解決手段】この方法は、アナログメータを撮像して得られた撮像データからアナログメータに表示されている目盛数字、指針の位置、及びアナログメータの中心位置を演算処理によって検出する工程と、指針を挟む箇所に位置する第一目盛数字及び第二目盛数字を特定する工程と、第一目盛数字の実質的な中心位置若しくは対応する目盛位置とアナログメータの中心位置とを結ぶ第一直線と、第二目盛数字の実質的な中心位置若しくは対応する目盛位置とアナログメータの中心位置とを結ぶ第二直線とがなす第一角度θ、並びに、指針とアナログメータの中心位置とを結ぶ第三直線と、第一直線若しくは第二直線とがなす第二角度φの比率kを算定する工程と、第一目盛数字と第二目盛数字の差を比率kで比例配分した値に基づいて指針の読み取り値を決定する工程とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内に設置された複数のアナログメータを読み取る方法であって、
読み取り対象である前記アナログメータを撮像部で撮像して撮像データを得る工程(a)と、
前記撮像部と同一装置内に搭載された、又は前記施設の敷地内若しくは前記施設の敷地近辺に設置された前記撮像部とは別体の装置に搭載された演算処理部に対して、前記撮像データを、記憶媒体を介して、又は有線若しくは非インターネットである無線で構成された通信回線を介して入力する工程(b)と、
前記撮像データから、前記アナログメータに表示されている目盛数字、指針の位置、及び前記アナログメータの中心位置を、前記演算処理部が演算処理によって検出する工程(c)と、
前記(c)で検出された前記指針に隣接する箇所に位置する、第一目盛数字及び前記第一目盛数字より値の大きい第二目盛数字を前記演算処理部が特定する工程(d)と、
前記第一目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第一目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第一直線と、前記第二目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第二目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第二直線とがなす第一角度θ、並びに、前記指針と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第三直線と、前記第一直線若しくは前記第二直線とがなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が算定する工程(e)と、
前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に基づいて、前記演算処理部が前記指針の読み取り値を決定する工程(f)とを有し、
前記工程(a)~(f)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行することを特徴とする、アナログメータの読み取り方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、作業員が、読み取り対象となる前記アナログメータを撮像可能な位置に移動して、前記撮像部が搭載された装置を用いて前記アナログメータを撮像する工程であることを特徴とする、請求項1に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項3】
前記工程(a)で得られた前記アナログメータの前記撮像データと、前記工程(f)で得られた前記指針の読み取り値に関する情報とを、出力部に出力する工程(g)を有し、
前記工程(g)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項4】
前記工程(a)において読み取り対象となる前記アナログメータは、表記されている目盛数字の間隔が不均等であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項5】
前記施設が電気所であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項6】
前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第一直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に前記第一目盛数字の値だけ加算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項7】
前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第二直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値を前記第二目盛数字の値から減算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナログメータの読み取り方法に関し、特に、施設内に設置された複数のアナログメータを読み取る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所、開閉所、発電所等の電気所には、多数のメータが設置されているのが通常である。これらのメータは、電圧、電流、周波数、温度等、異なる物理量を計測する目的で設置されている。
【0003】
そして、これらのメータには、アナログメータが採用されていることが多く、且つ、デジタル出力端子のないものがほとんどである。このため、保守点検時には作業員による読み取り作業が必要になる。
【0004】
特許文献1には、複数のアナログ式メータの各々に対して、カメラを含む読み取り装置を設置し、カメラで自動的に撮影したデータに基づいて読み取り装置がメータの読み取りを行って、その結果を中央装置に送信する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-075848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されたアナログ式メータの読取システム1は、複数のアナログ式メータの各々に対して設けられた読取装置と、読取装置から伝送されたメータの指示値のデータを収集する中央装置とを備えている。そして、各メータのそれぞれに対応して配置された各読取装置が、アナログ式メータを撮像するための撮像部と、撮像部で撮像された2次元の画像データを画像処理するためのマイクロコンピュータを備えている。
【0007】
読取装置には、ROM、RAM等の記憶手段が備えられており、この記憶手段には、予め各アナログ式メータの指針が回動する回転中心を中心とする円弧状の仮想線が設定されている。仮想線は、具体的には、指針の回転中心からの半径と、計測対象範囲の始点および終点とを入力することによって特定される。そして、読取装置は、この記憶手段から仮想線に関する情報を読み取ると共に、撮像された画像データから抽出される画素位置の情報、抽出画素の位置と文字盤の指示値との対応関係に関する情報を検知する。
【0008】
つまり、特許文献1に記載された方法によれば、各メータごとに、予め仮想線を特定させるための情報を事前に入力する処理が必要となる。
【0009】
特許文献1に記載された方法は、アナログ式メータの種類が限定されている場合には有効であると考えられる。なぜなら、各メータごとの仮想線に関する情報は共通である場合が多いためである。具体的には、特許文献1に開示された方法は、例えば、消費電力量を計測する目的で電力消費者側に設置されたメータがアナログ式である場合において、当該アナログメータに対して適用する場合には効果的といえる。
【0010】
しかしながら、変電所、開閉所、発電所等の電気所に設置されたメータは、電力消費者側に設置された電力量メータと比較して、測定する必要のある物理量の種類が豊富であることから、メータの種別が豊富である。更に、変電所、開閉所、発電所等の電気所には、多数のメータが設置されている。
【0011】
このような観点から、変電所、開閉所、発電所等の電気所に設置された多数のメータのそれぞれに対して、特許文献1に記載されているような、カメラを搭載した読み取り装置を設置することは、それぞれのメータに対して設定値を入力する必要があるところ、現実的とはいえない。加えて、電気所によっては、山間部に位置していて、通信電波が届かずインターネットに接続できない場所が多く存在する。このため、特許文献1に記載されているように、読み取り装置で読み取ったデータを中央装置に送信できない場合が起こり得る。
【0012】
一方で、上記の電気所には、多種多様なアナログメータが設置されており、また、作業員の通行可能な箇所からは、通常の姿勢では角度的に目視で視認しにくい場所に設置されている場合もある。電気所の点検時には、これら複数のメータの指示値を読み取り、報告のために記録する必要がある。この読み取り作業を目視で行うと、作業員の経験値の差等に起因して、読み取られた値に個人差が生じる可能性も否定できない。また、人力で各アナログメータを読み取る作業には、作業負担が生じていた。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑み、電気所等の施設に設置された複数のアナログメータの読み取り作業を簡素化する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、施設内に設置された複数のアナログメータを読み取る方法であって、
読み取り対象である前記アナログメータを撮像部で撮像して撮像データを得る工程(a)と、
前記撮像部と同一装置内に搭載された、又は前記施設の敷地内若しくは前記施設の敷地近辺に設置された前記撮像部とは別体の装置に搭載された演算処理部に対して、前記撮像データを、記憶媒体を介して、又は有線若しくは非インターネットである無線で構成された通信回線を介して入力する工程(b)と、
前記撮像データから、前記アナログメータに表示されている目盛数字、指針の位置、及び前記アナログメータの中心位置を、前記演算処理部が演算処理によって検出する工程(c)と、
前記(c)で検出された前記指針に隣接する箇所に位置する、第一目盛数字及び前記第一目盛数字より値の大きい第二目盛数字を前記演算処理部が特定する工程(d)と、
前記第一目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第一目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第一直線と、前記第二目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第二目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第二直線とがなす第一角度θ、並びに、前記指針と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第三直線と、前記第一直線若しくは前記第二直線とがなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が算定する工程(e)と、
前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に基づいて、前記演算処理部が前記指針の読み取り値を決定する工程(f)とを有し、
前記工程(a)~(f)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行することを特徴とする。
【0015】
上記の方法によれば、アナログメータを撮影した撮像データは、演算処理部に送られ、この演算処理部において、指針に隣接する目盛の数字(第一目盛数字、第二目盛数字)と、当該指針が、この一対の目盛の数字の間のどのあたりを指し示しているが、演算処理によって特定される。そして、この特定された情報に基づいて、比例配分によって、指針の指示値が特定される。指針に隣接する目盛の数字としては、典型的には、指針を挟む目盛の数字が採用される。
【0016】
演算処理部によって、撮像データから目盛の数字を読み取る方法としては、公知の物体検出アルゴリズムを利用することができる。一例として、YOLO、R-CNN、SSD等を利用することができる。
【0017】
上記の方法によれば、撮像データから指針に隣接する位置の一対の目盛の数字を読み取ると共に、前記一対の目盛の数字に該当する位置と、当該指針の位置との相対的な位置関係に基づいて比例配分等の簡易な演算を行うことで、アナログメータの指示値を読み取ることができる。このため、メータごとの初期設定等は不要である。つまり、初期設定に関する情報を中央装置から読み出す必要がなく、インターネット通信環境が整備されていない施設に設置されたメータについても、読み取ることができる。
【0018】
アナログメータによっては、表記されている目盛数字の間隔が均等であるものと、表記されている目盛数字の間隔が不均等であるものとが存在する。上記の方法によれば、前者のアナログメータであっても、後者のアナログメータであっても、指示値を読み取ることが可能である。
【0019】
なお、アナログメータが備える指針は、一定の太さを有している。このため、目盛数字と指針の一部が重なることも想定される。この場合には、指針の一部が重なっている目盛数字の前後の数字を認識して、指針の一部が重なっている目盛数字を推定する処理を演算部が行っても構わない。例えば、指針の一部が目盛数字と重なっていて公知の物体検出アルゴリズム単独では目盛数字が読み取れない場合であっても、その前後の目盛数字が、「3」と「5」であることが認識できた場合には、当該指針の一部が重なっている目盛数字が「4」であることを演算処理部が推定するものとしても構わない。
【0020】
また、上記の方法によれば、必ずしもメータごとに撮像用のカメラ、及び演算処理のための装置を予め設置する必要がない。つまり、各アナログメータの設置箇所に作業員が出向いて、アナログメータを撮影し、撮像データを演算処理部に出力又は送信することでも、読み取り作業が実行できる。
【0021】
具体的には、施設の敷地内の所定の箇所、若しくは施設の敷地近辺に演算処理を行うための装置(コンピュータ)を設置しておき、作業員によって撮像された各アナログメータの撮像データを、この装置に対して有線、又は、無線LAN、Bluetooth(登録商標)若しくは赤外線といった近距離通信を介して入力すればよい。別の例としては、作業員によって撮像された各アナログメータの撮像データをメモリカード等の外部記憶媒体に記録しておき、この外部記憶媒体を前記コンピュータに装着することで、前記コンピュータに搭載された演算処理部に入力することも可能である。
【0022】
更に別の例としては、各アナログメータの設置箇所に、撮像部が搭載されたスマートフォンやタブレット型コンピュータ等の端末装置を携帯した作業員が出向いてアナログメータを撮影し、得られた撮像データが、当該端末装置内の演算処理部に出力されるものとしてもよい。
【0023】
つまり、上記の方法によれば、特許文献1の方法と比較して導入に掛かるイニシャルコストを大幅に低減することができる。この方法は、特に、変電所、開閉所、発電所等の電気所に設置されたアナログメータを読み取る際に好適である。
【0024】
また、上記の方法によれば、アナログメータの撮像データに基づいて、演算処理部が演算処理によって指針の指示値を読み取る態様であるため、作業員による読取り誤差を最小限に抑制できる。
【0025】
前記工程(a)は、作業員が、読み取り対象となる前記アナログメータを撮像可能な位置に移動して、前記撮像部が搭載された装置を用いて前記アナログメータを撮像する工程であるものとしても構わない。
【0026】
上記の方法によれば、各作業員が行う実作業としては、実質的には各アナログメータを撮像部で撮像するだけで足り、他の処理は演算処理部によって行われる。この結果、作業員が目視で各アナログメータの指示値を読み取っていた従来の方法と比べて、作業負担を大幅に軽減できる。
【0027】
前記アナログメータの読み取り方法は、前記工程(a)で得られた前記アナログメータの前記撮像データと、前記工程(f)で得られた前記指針の読み取り値に関する情報とを、出力部に出力する工程(g)を有し、
前記工程(g)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行するものとしても構わない。
【0028】
上述したように、変電所、開閉所、発電所等の電気所においては、定期的な点検や試験が要求されている。このような点検・試験の際には、アナログメータの指示値を記録する必要がある。上記の方法によれば、指示値と共にアナログメータの撮像データが出力されるため、この両者を記録しておくことで、指示値のエビデンス能力を向上させる効果が期待できる。
【0029】
特に、上記方法では、アナログメータの撮像データを用いてアナログメータの指示値が読み取られる。言い換えれば、上記方法を実行してアナログメータを読み取るに際しては、アナログメータの撮像データが必ず得られる。つまり、エビデンスを残すためだけに別途アナログメータを撮像する必要がなく、すでに得られているアナログメータの撮像データを有効に利用することができる。
【0030】
前記工程(a)において読み取り対象となる前記アナログメータは、目盛間隔が不均等であるものとしても構わない。
【0031】
具体的な一例として、前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第一直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に前記第一目盛数字の値だけ加算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であるものとすることができる。
【0032】
また、具体的な別の一例として、前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第二直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値を前記第二目盛数字の値から減算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であるものとすることができる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、電気所等の施設に設置された複数のアナログメータの読み取り作業を簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明に係るアナログメータの読み取り方法の一実施形態を実行する際の手順例を模式的に示すフローチャートである。
図2】本発明に係るアナログメータの読み取り方法の一実施形態を実行する際のシステム構成を模式的に示すブロック図の一例である。
図3】演算処理部で行われる画像認識を説明するための模式的な図面であり、アナログメータの撮像画像に説明用の符号等が付されている。
図4】演算処理部で行われるアナログメータの指示値の読み取り方法の一例を説明するための模式的な図面であり、アナログメータの撮像画像に説明用の符号等が付されている。
図5】演算処理部で行われるアナログメータの指示値の読み取り方法の一例を説明するための模式的な図面であり、アナログメータの撮像画像に説明用の符号等が付されている。
図6】演算処理部で行われるアナログメータの指示値の読み取り方法の一例を説明するための模式的な図面であり、アナログメータの撮像画像に説明用の符号等が付されている。
図7】読み取り結果が出力部に出力される態様の一例を模式的に示す図面であり、撮像部が併せて表示されている。
図8】読み取り結果が出力部に出力される態様の一例を模式的に示す図面であり、撮像部が併せて表示されている。
図9】読み取り結果が出力部に出力される態様の一例を模式的に示す図面であり、撮像部が併せて表示されている。
図10】本発明に係るアナログメータの読み取り方法の一実施形態を実行する際のシステム構成を模式的に示すブロック図の一例であり、撮影時のイメージが併記されている。
図11】点検項目を選択する画面の一例である。
図12】アナログメータの撮影時の表示画面の一例である。
図13】読み取り結果が出力部に出力される態様の一例を模式的に示す図面である。
図14】本発明に係るアナログメータの読み取り方法の一実施形態を実行する際のシステム構成を模式的に示すブロック図の一例であり、撮影時のイメージが併記されている。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明に係るアナログメータの読み取り方法の一実施形態につき、適宜図面を参照して説明する。図1は、本実施形態の読み取り方法を実行する際の手順例を模式的に示すフローチャートである。以下の説明では、図1内のステップ番号が適宜参照される。
【0036】
図2は、本実施形態の読み取り方法を実行する際のシステム構成を模式的に示すブロック図である。図2の例では、電気所等の施設1内に、複数のアナログメータ2,2,…が設けられている場合が想定されている。本実施形態の読み取り方法を実施する際には、撮像部11と、演算処理装置20とが利用される。ただし、後述するように、撮像部11の機能を搭載した演算処理装置20を用いることも可能である。
【0037】
(ステップ#1:メータ撮像可能な位置に撮像部をセット)
施設1内に設置された複数のアナログメータ2,2,…のうち、読み取り対象となる一のアナログメータ2aを撮像可能な位置に、撮像部11をセットする。
【0038】
一例として、撮像部11を手にした作業員が、アナログメータ2aを撮像可能な位置まで移動して、撮像部11の撮像方向をアナログメータ2aに向けた状態で保持するものとしても構わない。この場合、撮像部11としては、デジタルカメラ、又は、カメラ機能が搭載されたスマートフォン、タブレット型コンピュータ、若しくはノートブック型コンピュータ等が利用できる。
【0039】
別の一例として、事前にアナログメータ2aを撮像可能な位置に、デジタルカメラをセットしておくものとしても構わない。この場合には、施設1内の別の箇所から遠隔操作によってデジタルカメラを起動させてアナログメータ2aを撮像できるような構成であるのが好ましい。
【0040】
撮像方向としては、アナログメータ2aの表示面に対して直交する方向であるのがより好ましいが、後述するように、アナログメータ2aの目盛数字、指針、及び中心位置が撮像できれば、表示面に対して斜め方向であっても構わない。
【0041】
(ステップ#2:アナログメータを撮像)
ステップ#1でセットされた撮像部11によって、アナログメータ2aが撮像される。このステップ#2は、工程(a)に対応する。
【0042】
(ステップ#3:撮像データを演算処理部に入力)
図2に示すように、演算処理装置20は、入力受付部21、演算処理部22、記憶部23、及び出力部24を備える。入力受付部21は、演算処理装置20の外部からデータの入力を受け付け、必要に応じて演算処理装置20内で利用可能な態様に変換する、入力インタフェースである。演算処理部22は、データに対して所定の演算処理を行う機能的手段であり、例えばCPU、MPU等のプロセッサである。記憶部23はハードディスク、メモリ等の記憶媒体であり、入力受付部21で受け付けたデータを一時的に保持したり、必要に応じて演算処理部22で実行される演算用プログラムが記録される。ただし、演算用プログラムは、演算処理部22内において記録されていてもよい。出力部24は、演算処理部22で行われた演算結果を出力するためのインタフェースである。出力方法としては、画面に表示する方法、外部の装置(コンピュータ、プリンタ等)にデータを送信/出力する方法を採用することができる。
【0043】
図2の例では、演算処理部22は、撮像部11とは別体の装置である演算処理装置20内に設けられている。このため、撮像部11で撮像された撮像データd1が、任意の方法で演算処理装置20の入力受付部21を介して演算処理部22に入力される。
【0044】
一例として、撮像部11と演算処理装置20とを、USBケーブル、LANケーブル等の公知の信号線によって有線接続しておき、この有線を介して撮像データd1が撮像部11から演算処理装置20に送られるものとしても構わない。別の例として、撮像部11内にSDカード、メモリスティック、等の外部記憶媒体が搭載されている場合には、この外部記憶媒体に撮像データd1を記録させておき、この外部記憶媒体を演算処理装置20に装着することで撮像データd1を演算処理装置20に入力するものとしても構わない。
【0045】
更に別の例としては、撮像部11と演算処理装置20とを、Bluetooth(登録商標)、施設1内の無線LAN等の近距離用無線通信回線を介して接続しておき、この無線通信を介して撮像データが撮像部11から演算処理装置20に送られるものとしても構わない。施設1が変電所、開閉所、発電所等の電気所である場合、場所によっては施設1がインターネット通信が整備されていないことがあり得る。しかし、撮像部11と演算処理装置20とは、共に施設1内に設置されているため、両者の間で無線による通信を行う環境を整備できる場合がある。この場合、撮像部11と演算処理装置20とは、施設1内の閉じた環境下で無線通信ができればよいため、インターネット回線に接続できない環境においても、撮像部11と演算処理装置20の間で無線を介した撮像データd1の授受が可能である。つまり、本実施形態の読み取り方法を実行するに際しては、インターネット接続が必須ではない。
【0046】
このステップ#3は、工程(b)に対応する。
【0047】
(ステップ#4:撮像データの画像認識)
演算処理部22は、入力された撮像データd1に対して画像認識処理を行う。詳細には、公知の物体検出アルゴリズムを利用して、アナログメータ2aに表示されている目盛数字、指針の位置、及びアナログメータ2aの中心位置を認識する。物体検出アルゴリズムとしては、一例として、YOLO、R-CNN、SSD等を利用することができる。これらの中では、数字認識に特に優れたYOLOが好適に利用できる。このアルゴリズムに関するプログラムは、演算処理部22内、又は記憶部23に予め記録されているものとして構わない。
【0048】
図3は、演算処理部22で行われる画像認識を説明するための模式的な図面であり、アナログメータ2aの撮像画像に説明用の符号等を付したものである。
【0049】
一般的に、アナログメータ2,2,…には、指針を読み取るための目盛と、所定の(均等/不均等)の間隔を空けて表示された複数の目盛数字が付されている。図3に示すアナログメータ2においては、「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「10」、及び「15」の8種類の目盛数字と、それらの目盛数字に対応する箇所、及びそれらの間を連絡する複数の箇所に複数の目盛が付されている。また、図3に示すアナログメータ2は、アナログメータ2の中心30の位置から、目盛側に向かって伸びる複数の指針31,32を有している。
【0050】
アナログメータ2によっては、図3に示すように、複数の指針31,32を備えるものが存在する。本実施形態の読み取り方法において、アナログメータ2が備える指針の数には限定されない。
【0051】
本ステップ#4では、アナログメータ2が撮像されることで得られた撮像データd1に基づいて、演算処理部22が、目盛数字(図3の例でいえば、「0」、「1」、「2」、「3」、「4」、「5」、「10」、及び「15」)の読み取り、アナログメータ2の中心30の位置、指針31,32の位置を、物体検出アルゴリズム等の演算処理によって検出する。なお、ここでいう目盛数字の読み取りとは、目盛数字が示す数字そのものを読み取ることと、目盛数字が表記されている位置を読み取ることの両者を包含するものとして構わない。
【0052】
目盛数字が表記されている位置としては、好ましくは目盛数字が表記されている実質的な中心位置の座標が採用される。ここでいう実質的な中心位置の座標とは、例えば、目盛数字が表記されている領域に外接するように取り囲む、矩形、円形、楕円形等の平面図形の中心位置の座標とすることができる。また、アナログメータ2の中心30とは、指針31,32の支点を構成する点である。一般的に、アナログメータ2は、中心30の位置が、他の箇所と比べて視覚的に区別できるように構成されているため、撮像データd1に基づく演算処理によって特定できる。例えば、アナログメータ2の中心30にはネジ孔が設けられていることが多い。
【0053】
このステップ#4は、工程(c)に対応する。
【0054】
(ステップ#5:角度計測)
ステップ#4の実行後、演算処理部22は、読み取り対象である指針(ここでは指針31とする。)に隣接する箇所に位置する目盛数字を特定する。具体的な方法の一例について、図4を参照して説明する。
【0055】
演算処理部22は、読み取り対象である指針31を、中心30から遠ざかる方向に仮想的に延長した直線L3(「第三直線」に対応する。)の、平面座標上における式を決定する。次に、演算処理部22は、ステップ#4で読み取った各目盛数字の平面座標上の位置から、直線L3に最も近い2つの目盛数字を特定する。図4に示す例でいえば、目盛「3」と目盛「4」が該当する。指針31は、目盛「3」と目盛「4」に挟まれた位置に存在している。この例では、目盛「3」が第一目盛数字に対応し、目盛「4」が第二目盛数字に対応する。
【0056】
このように、演算処理部22が、第一目盛数字と第二目盛数字を特定する処理が、工程(d)に対応する。
【0057】
次に、第一目盛数字A1(この例でいえば目盛「3」)と中心30とを結ぶ直線L1(「第一直線」に対応する。)、及び第二目盛数字A2(この例でいえば目盛「4」)と中心30とを結ぶ直線L2(「第二直線」に対応する。)とがなす角度θを特定する。
【0058】
例えば、演算処理部22は、ステップ#4で読み取った第一目盛数字A1(この例でいえば目盛「3」)の中心の座標位置と、アナログメータ2の中心30の座標位置とを結ぶ、平面座標上における式を演算処理によって特定することで、第一直線L1の式とすることができる。
【0059】
別の例として、一般的に、アナログメータ2は、目盛数字が付されている箇所の目盛は、他の目盛よりも目立つように、(典型的には、太線、長線等で)表示されていることが多い。よって、ステップ#4で読み取った第一目盛数字A1(この例でいえば目盛「3」)に対応する目盛を特定した上で、この目盛位置とアナログメータ2の中心30の座標位置とを結ぶ、平面座標上における式を演算処理によって特定することで、第一直線L1の式とすることができる。
【0060】
第二直線L2の式を決定する方法については、第一目盛数字A1(図4の例でいえば「3」)を、第二目盛数字A2(図4の例でいえば目盛「4」)に置き換えれば、第一直線L1の式の決定方法と同様の方法を用いることができる。
【0061】
このようにして、第一直線L1と第二直線L2の式が決定されると、両者のなす第一角度θが演算処理によって算出できる。
【0062】
次に、読み取り対象である指針31とアナログメータ2の中心30とを結ぶ上述した第三直線L3と、第一直線L1とがなす第二角度φを、演算処理によって算出する。すでに第三直線L3及び第一直線L1の式が算出されているため、第二角度φについても角度θと同様に演算処理によって算出できる。
【0063】
演算処理部22は、第一角度θ及び第二角度φを算定した後、φ/θの演算処理を行うことで、両者の比率kを算出する。
【0064】
このように、演算処理部22が、第一角度θと第二角度φとの比率kを算出する処理が、工程(e)に対応する。
【0065】
(ステップ#6:指示値決定)
ステップ#5において比率kが算出されると、演算処理部22は、第一目盛数字A1と第二目盛数字A2との差を、演算処理によって比率kで比例配分することで、指針31の読み取り値を決定する。
【0066】
図4の例でいえば、第一目盛数字A1が「3」であり、第二目盛数字A2が「4」であるため、「3+(4-3)×k」の演算処理によって、指針31の読み取り値が算出できる。
【0067】
アナログメータ2によっては、図3図4に示すように、各目盛数字の間隔が不均等に配置されているものも多く存在する。これは、アナログメータ2の利用態様によって、通常時に取り得る値の範囲が予定されている場合に、取り得る可能性の低い領域の範囲を狭くすることで、取り得る可能性の高い領域の数字を読み取りやすくする目的である。そもそも、アナログメータ2は目視による読み取りが予定されていることから、読み取りの頻度が高いと考えられる領域の幅を広げることで、目視による読み取りをしやすくする狙いがある。
【0068】
しかしながら、このようなアナログメータ2においては、目盛数字の間隔が不均等であるが故に、それぞれの目盛の位置のみから、指針の読み取りを行うことが難しい。しかも、アナログメータ2の種類や設置目的によって、目盛数字の間隔は様々であるため、あらゆるアナログメータ2の読み取りを行うために、事前の情報を予め設定することも困難である。しかも、上述したように、施設1の場所によっては、インターネット接続が不可能な場合も想定されるところ、予め設定された情報をサーバから読み取るという処理が行えないケースも想定される。
【0069】
これに対し、上記の方法によれば、アナログメータ2の撮像データd1に基づいて、各アナログメータ2の目盛数字、中心30及び指針31の位置を、演算処理によって検知すると共に、幾何学的手法に基づく演算によって指針31の指示値が特定される。このため、アナログメータ2の目盛数字が不均等であるか均等であるかによらず読み取ることができる。また、サーバ等から予め設定されたデータをインターネットを介して受信する必要がない。
【0070】
上述したように、目盛数字の配置間隔が不均等なアナログメータ2は広く存在するが、隣接する目盛数字間に表記されている目盛自体が不均等なアナログメータ2は、ほとんど存在していない。これは、アナログメータ2が、それ自体元々目視による読み取りを想定して設計されているためである。言い換えれば、上記のように、第一目盛数字A1と第二目盛数字A2との差を、演算処理によって比率kで比例配分することで得られた数値をもって指針31の読み取り値とすることで、誤差の少ない指示値とすることが可能である。
【0071】
なお、図3に示すように、複数の指針(31,32)が存在するアナログメータ2について、複数の指針(31,32)を読み取る場合には、それぞれの指針に対して、上記ステップ#5~#6と同様の処理を行うものとしても構わない。
【0072】
図5は、指針31に代えて指針32を読み取り対象とする場合の概念図を、図4にならって表示したものである。図5に示すように、演算処理部22は、読み取り対象である指針32を、中心30から遠ざかる方向に仮想的に延長した直線L3(「第三直線」に対応する。)の、平面座標上における式を決定する。次に、ステップ#4で読み取った各目盛数字の平面座標上の座標位置から、直線L3に最も近い2つの目盛数字を特定する。図5に示す例でいえば、目盛「3」と目盛「4」が該当する。
【0073】
次に、第一目盛数字A1(この例でいえば目盛「3」)と中心30とを結ぶ直線L1(「第一直線」に対応する。)、及び第二目盛数字A2(この例でいえば目盛「4」)と中心30とを結ぶ直線L2(「第二直線」に対応する。)とがなす第一角度θを特定する。次に、読み取り対象である指針32とアナログメータ2の中心30とを結ぶ、上述した第三直線L3と、第一直線L1とがなす第二角度φを、演算処理によって算出する。その後、演算処理部22は、φ/θの演算処理を行うことで両者の比率kを算出し、第一目盛数字A1と第二目盛数字A2との差を、演算処理によって比率kで比例配分することで、指針32の読み取り値を決定する。
【0074】
なお、上記の例では、読み取り対象である指針32とアナログメータ2の中心30とを結ぶ第三直線L3と、第一目盛数字A1(この例でいえば目盛「3」)と中心30とを結ぶ第一直線L1とがなす角度を、第二角度φとした。これに対し、読み取り対象である指針32とアナログメータ2の中心30とを結ぶ第三直線L3と、第二目盛数字A2(この例でいえば目盛「4」)と中心30とを結ぶ第二直線L2とがなす角度を、第二角度φとしてもよい(図6参照)。
【0075】
この場合、演算処理部22は、第一角度θ及び第二角度φの比率kを算出後、第一目盛数字A1が「3」であり、第二目盛数字A2が「4」であるため、「4-(4-3)×k」の演算処理によって、指針32の読み取り値を算出できる。指針31においても、この方法で読み取るものとしても構わない。
【0076】
このステップ#6が、工程(f)に対応する。
【0077】
(ステップ#7:指示値出力)
上記ステップ#6によって演算処理部22が決定した指針の読み取り値が、出力部24から出力される。このステップ#7が、工程(g)に対応する。
【0078】
この際、図7に模式的に示すように、ステップ#2で撮像されたアナログメータ2aの撮像画像61と、ステップ#6で決定された指針の読み取り値62とが、共に出力部24に出力されるものとしても構わない。なお、この図7では、「出力部24への出力」が画面表示である場合を例示しているが、この撮像画像61と指針の読み取り値62とを含むデータ列を、記憶媒体に出力する処理であるものとして構わない。
【0079】
図7では、一例として、撮像部11と演算処理装置20とが、有線13によって接続されている例が示されているが、上述したように、撮像部11と演算処理装置20とは近距離用の無線通信14を介して接続されていても構わない(図8参照)。更に、上述したように、撮像部11に内蔵された外部記憶媒体15を取り出して、演算処理装置20に装着する構成であっても構わない(図9参照)。
【0080】
(ステップ#8:読み取り対象のアナログメータの残余確認)
ステップ#7の終了後、施設1内で読み取り対象となる他のアナログメータ2が存在するか否かが確認される。別のアナログメータ2の指示値を読み取る必要がある場合には(ステップ#8においてYes)、ステップ#1に戻り、ステップ#1~#7が繰り返し実行される。読み取る必要があるアナログメータ2が残っていない場合には(ステップ#8においてNo)、読み取り処理が終了される。
【0081】
[別実施形態]
以下に別実施形態について説明する。
【0082】
〈1〉撮像部11がタブレット型コンピュータやスマートフォン等の、撮像機能付き操作端末である場合において、読み取り対象となるアナログメータ2aの種別が、当該装置を操作して選択できるものとしても構わない。図10は、本実施形態の読み取り方法を実行する際のシステム構成を、作業員3によってタブレット型コンピュータからなる操作端末に搭載された撮像部11を用いてアナログメータ2aを撮像する様子の一例を示す写真と共に、模式的に示したブロック図である。図11及び図12は、タブレット型コンピュータの画面表示例である。
【0083】
作業員3は、読み取り対象となるアナログメータ2aの撮像可能位置に移動した後、又は移動する前に、読み取り対象となるアナログメータ2aの種別をタブレット型コンピュータを操作して選択する。この種別に関する情報は、タブレット型コンピュータに予め記録されているものとしてよい。上述したように、本実施形態に係るアナログメータの読み取り方法は、電気所等の施設1内に設けられた各種設備の点検や試験の際に、当該施設1に設置されたアナログメータ2,2,…を、読み取る際に利用することも想定されている。よって、施設1に設置されているアナログメータ2,2,…が、どのような物理量を計測する目的で設けられているものであるかについては、施設1に応じて事前に把握できていることが多い。
【0084】
例えば、タブレット型コンピュータのアプリケーションを実行すると、図11に示すように、予め登録されている複数の点検項目が表示される。作業員3は、表記された複数の点検項目の中から、今回の読み取り対象となるアナログメータ2aに対応した点検項目を選択する。これにより、撮像部11が起動すると共に、選択された点検項目に対応したアナログメータの種別に関する情報がタブレット画面に表示される(図12参照)。図12は、タブレット画面の表示例であり、撮影表示領域51と、アナログメータ2aの種別情報表示領域52と、撮像部11の操作領域53とが含まれている。図12の例では、アナログメータ2aが、変電所に搭載されている変圧器の油温計であることが特定されており、当該油温計に関する情報が併せて表示されている。
【0085】
作業員3は、撮影表示領域51を視認して撮像方向を調整しつつ、操作領域53内の操作ボタンを操作して、撮像処理を行う。
【0086】
撮像によって得られた撮像データd1は、タブレット型コンピュータに接続された外部の演算処理装置20に入力され、上述した方法で演算処理が行われる。演算処理によって読み取られた読み取り値は、タブレット型コンピュータに送信され、タブレット画面に表示される(図13参照)。図13では、図7を参照して上述したのと同様に、タブレット画面には、アナログメータ2aの撮像画像61と、指針の読み取り値62とが、表示されている。なお、図13の例では、3本の指針(現在値に対応する指針、最高値に対応する指針、上限値に対応する指針)の指示値が読み取られた結果が示されている。
【0087】
撮像画像61と読み取り値62とを含むデータを記録しておくことで、点検作業等に付随して読み取られた、アナログメータ2aの指示値のエビデンス能力を向上させる効果が期待できる。
【0088】
図12図13に例示したように、アナログメータ2が複数の指針を備えている場合、それぞれの指針を区別する目的で、各指針の長さ、色、又は太さ等は、異なっていることが多い。対象となる点検項目が選択されてアナログメータ2の種別が特定されている場合には、それぞれの指針が示す量の内容に関する情報が、タブレット型コンピュータに記録されているものとして構わない。
【0089】
一例として、変圧器に搭載されている油温計を構成するアナログメータ2は、3本の指針を備えており、それぞれの指針の色が白、赤、黄であること、白色の指針が現在値に対応する指針であり、赤色の指針が最高値に対応する指針であり、黄色の指針が上限値に対応する指針であることが、タブレット型コンピュータに記録されている。上記方法で各指針の指示値を読み取った後、記録された情報に対応させることで、現在値、最高値、及び上限値に関する読み取り結果を出力することができる。
【0090】
別の例として、アナログメータ2が、それぞれ「現在値」、「最高値」、及び「上限値」に対応する3本の指針を備えている場合、これら3本の指針が示す値の関係は、必ず現在値≦最高値<上限値となる。このように、各指針が示す値の大小関係が規定されている場合には、その関係についての情報がタブレット型コンピュータに記録されているものとしてもよい。この場合、必ずしも指針の色、長さ、又は太さによって特定される指針の指示値を区別して読み取る必要はない。具体的には、上述した方法を用いて3つの指針それぞれが指し示す指示値(指示値群)を読み取った後、タブレット型コンピュータに記録された関係式に基づいて、それぞれの指針が示す値が、「現在値」、「最高値」、及び「上限値」のいずれであるかを特定するものとしても構わない。
【0091】
なお、上記の情報は、アナログメータの読み取りのために必要な情報ではなく、あくまでデータを出力する際に利用される情報である。言い換えれば、上記の例でいえば、白色の指針、赤色の指針、黄色の指針の指示値が出力されていれば、それぞれの指針の指示値が何の量に対応するかまでを、必ずしも出力する必要はない。
【0092】
〈2〉図14に示すように、タブレット型コンピュータ等で構成される演算処理装置20が撮像部11を搭載しており、この演算処理装置20内で、上記の演算処理が行われるものとしても構わない。言い換えれば、演算処理部22と撮像部11とが、同一装置(演算処理装置20)に搭載されていても構わない。この場合、撮像データd1は、演算処理のために他の装置に対して入力しなくても構わない。
【0093】
〈3〉演算処理装置20と撮像部11とが別体の装置で構成されている場合において、上記実施形態では、演算処理装置20が施設1内に設置されているものとしたが、施設1の敷地近辺に設置されているものとしても構わない。言い換えれば、演算処理装置20は、施設1内の無線LANが届く範囲内に設置されているものとしても構わない。
【0094】
〈4〉施設1によっては、アナログメータ2を撮影することのできる固定式のカメラがすでに設置されている場合も想定される。このような場合には、この固定式のカメラを撮像部11として採用し、この固定式のカメラでアナログメータ2を撮像して得られた撮像データd1を演算処理装置20に入力して、演算処理部22において、上記の方法で演算処理を行ってもよい。この場合には、上記ステップ#1は省略が可能である。
【符号の説明】
【0095】
1 :施設
2,2a :アナログメータ
3 :作業員
11 :撮像部
13 :有線
14 :無線通信
15 :外部記憶媒体
20 :演算処理装置
21 :入力受付部
22 :演算処理部
23 :記憶部
24 :出力部
30 :アナログメータの中心
31,32 :指針
51 :撮影表示領域
52 :種別情報表示領域
53 :操作領域
61 :撮像画像
62 :読み取り値
A1 :第一目盛数字
A2 :第二目盛数字
L1 :第一直線
L2 :第二直線
L3 :第三直線
d1 :撮像データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-04-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内に設置された複数のアナログメータを読み取る方法であって、
読み取り対象である前記アナログメータを撮像部で撮像して撮像データを得る工程(a)と、
前記撮像部と同一装置内に搭載された、又は前記施設の敷地内若しくは前記施設の敷地近辺に設置された前記撮像部とは別体の装置に搭載された、前記アナログメータに関する情報が事前に登録されていない演算処理部に対して、前記撮像データを、記憶媒体を介して、又は有線若しくは非インターネットである無線で構成された通信回線を介して入力する工程(b)と、
前記撮像データから、前記アナログメータに表示されている目盛数字、指針の位置、及び前記アナログメータの中心位置を、前記演算処理部が演算処理によって検出する工程(c)と、
前記(c)で検出された前記指針に隣接する箇所に位置する、第一目盛数字及び前記第一目盛数字より値の大きい第二目盛数字を前記演算処理部が特定する工程(d)と、
前記第一目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第一目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第一直線と、前記第二目盛数字の実質的な中心位置若しくは前記第二目盛数字に対応する目盛位置と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第二直線とがなす第一角度θ、並びに、前記指針と前記アナログメータの中心位置とを結ぶ第三直線と、前記第一直線若しくは前記第二直線とがなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が算定する工程(e)と、
前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に基づいて、前記演算処理部が前記指針の読み取り値を決定する工程(f)とを有し、
前記工程(a)~(f)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行することを特徴とする、アナログメータの読み取り方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、作業員が、読み取り対象となる前記アナログメータを撮像可能な位置に移動して、前記撮像部が搭載された装置を用いて前記アナログメータを撮像する工程であることを特徴とする、請求項1に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項3】
前記工程(a)で得られた前記アナログメータの前記撮像データと、前記工程(f)で得られた前記指針の読み取り値に関する情報とを、出力部に出力する工程(g)を有し、
前記工程(g)を、前記複数のアナログメータのそれぞれに対して実行することを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項4】
前記工程(a)において読み取り対象となる前記アナログメータは、表記されている目盛数字の間隔が不均等であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項5】
前記施設が電気所であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項6】
前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第一直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値に前記第一目盛数字の値だけ加算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項7】
前記工程(e)は、前記第一角度θに対する、前記第三直線と前記第二直線とのなす第二角度φの比率kを前記演算処理部が演算処理によって算定する工程であり、
前記工程(f)は、前記演算処理部が、前記第一目盛数字と前記第二目盛数字の差を前記比率kで比例配分した値を前記第二目盛数字の値から減算して、前記指針の読み取り値として決定する工程であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。
【請求項8】
前記演算処理部は、インターネットに対する接続が不可能な演算処理装置内に搭載されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のアナログメータの読み取り方法。