(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081886
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】調理器
(51)【国際特許分類】
A47J 27/00 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
A47J27/00 109S
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195418
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003702
【氏名又は名称】タイガー魔法瓶株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 圭佑
(72)【発明者】
【氏名】大坂 真代
(72)【発明者】
【氏名】馬場 康輔
【テーマコード(参考)】
4B055
【Fターム(参考)】
4B055AA01
4B055BA05
4B055CD02
4B055GB33
4B055GD02
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、温度測定部による測定温度の低下に基づいて蓋体の開から閉への状態変化を判断しようとする調理器において、そのような状態変化の判断をできるだけ正確に行うことである。
【解決手段】本発明に係る調理器100は、上方に開口する容器130と、前記容器の上側に配置されて前記容器の開口を覆う蓋体140と、前記容器を加熱する加熱部HTと、前記蓋体の内部の温度を測定する温度測定部SSと、を備え、前記温度測定部による測定温度の低下度合いが判定基準を満たした場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断する判断部MCをさらに備え、前記温度測定部は、前記容器に接触していない。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方に開口する容器と、
前記容器の上側に配置されて前記容器の開口を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記蓋体の内部の温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記温度測定部による測定温度の低下度合いが判定基準を満たした場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断する判断部をさらに備え、
前記温度測定部は、前記容器に接触していない
調理器。
【請求項2】
前記判断部は、前記温度測定部による測定温度が第1閾値以下になった場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断する
請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記判断部は、単位時間当たりの前記温度測定部による測定温度の低下量が第2閾値以上になった場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断する
請求項1に記載の調理器。
【請求項4】
前記蓋体は、前記容器の内部で生じた蒸気が流れる流路を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記流路に配置される
請求項1から3のいずれか1項に記載の調理器。
【請求項5】
前記容器は、底壁部、および、前記底壁部の外縁から上方に延びる筒壁部を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記蓋体の閉状態時に前記筒壁部の筒軸方向に沿って前記蓋体を貫通するように前記蓋体の内部に配置される
請求項1に記載の調理器。
【請求項6】
前記蓋体は、収容空間を形成する囲い壁部を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記収容空間に配置される
請求項1に記載の調理器。
【請求項7】
制御部をさらに備え、
前記制御部は、前記蓋体が閉状態から開状態になったと前記判断部が判断すると、前記加熱部を第1出力状態に制御する第1シーケンスを終了し、前記加熱部を前記第1出力状態よりも高出力の第2出力状態に制御する第2シーケンスを実行する
請求項1に記載の調理器。
【請求項8】
上方に開口する容器と、
前記容器の上側に配置されて前記容器の開口を覆う蓋体と、
前記容器を保温する保温ヒータと、
前記蓋体の内部の温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記温度測定部による測定温度の低下度合いが判定基準を満たした場合に、前記保温ヒータへの制御を変更する制御部をさらに備え、
前記温度測定部は、前記容器に接触していない
調理器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「炊飯物を収容する鍋と、この鍋の底に配した炊飯ヒータと、胴部を加熱する胴ヒータと、前記鍋の上方開口部を覆い蓋ヒータを具備する外蓋と、前記鍋の温度を感知する鍋センサーと、前記炊飯ヒータの通電を制御する炊飯回路と、前記胴ヒータ、蓋ヒータの通電を制御する保温回路を備え炊飯初期の前炊き行程時に前記炊飯ヒータの通電を前記鍋センサーの温度感知により所定温度に一定時間保持するよう制御し、さらに前記炊飯ヒータの通電断時に保温回路が閉となる制御手段を設けてなる炊飯器。」が提案されている(例えば、特開平04-064314号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような炊飯器などの調理器では、容器(鍋)の底面に接して容器の温度を測定する温度測定部(鍋センサー)が設けられる。そして、調理器によっては、この温度測定部の測定温度が一定量低下した場合に、蓋体が閉状態から開状態になったとみなして、後の各種制御を行うことがある。しかし、このような調理器では、容器が蓄熱性の高い材質から形成されている場合や容器内の内容物の量が多い場合等に容器の温度が低下しにくく、実際には蓋体が閉状態から開状態になっているにも関わらず、蓋体が閉状態のままであると判断されるおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、温度測定部による測定温度の低下に基づいて蓋体の開から閉への状態変化を判断しようとする調理器において、そのような状態変化の判断をできるだけ正確に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る調理器は、
上方に開口する容器と、
前記容器の上側に配置されて前記容器の開口を覆う蓋体と、
前記容器を加熱する加熱部と、
前記蓋体の内部の温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記温度測定部による測定温度の低下度合いが判定基準を満たした場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断する判断部をさらに備え、
前記温度測定部は、前記容器に接触していない。
【0007】
上記構成によれば、蓋体が閉状態から開状態になった場合、蓋体の内部に外気が流入することにより測定温度が低下する。すなわち、この調理器では、温度測定時において容器の材質等の影響をほとんど受けない。このため、この調理器では、蓋体の閉から開への状態変化を判断する要因である温度低下をできるだけ精度よく判断することができる。したがって、この調理器では、容器温度を測定する温度測定部の測定温度が一定量低下した場合に蓋体が閉状態から開状態になったと判断する従来の調理器と比べて、蓋体が閉状態から開状態になったことの判断をできるだけ正確に行うことができる。
【0008】
本発明では、
前記判断部は、前記温度測定部による測定温度が第1閾値以下になった場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断すると好適である。
【0009】
上記構成によれば、比較的シンプルなロジックで蓋体が閉状態から開状態になったと判断することができる。
【0010】
本発明では、
前記判断部は、単位時間当たりの前記温度測定部による測定温度の低下量が第2閾値以上になった場合に、前記蓋体が閉状態から開状態になったと判断すると好適である。
【0011】
上記構成によれば、蓋体が閉状態から開状態になったことをできるだけ早く判断することができる。
【0012】
本発明では、
前記蓋体は、前記容器の内部で生じた蒸気が流れる流路を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記流路に配置されると好適である。
【0013】
上記構成によれば、実際に蓋体が閉状態から開状態になった時に、外気を流路に流すことができる。このため、この調理器では、蓋体が閉状態から開状態になった時の外気の影響による測定温度の低下をできるだけ正確に判断することができる。
【0014】
本発明では、
前記容器は、底壁部、および、前記底壁部の外縁から上方に延びる筒壁部を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記蓋体の閉状態時に前記筒壁部の筒軸方向に沿って前記蓋体を貫通するように前記蓋体の内部に配置されると好適である。
【0015】
上記構成によれば、温度測定部の検知部に液体(例えば、容器内で生じた蒸気が結露して生じたもの)が付いたままになることをできるだけ防止することができる。このため、この調理器では、温度測定部の検知部に液体が付いたままになることによって測定温度に影響が出るおそれをできるだけ低減することができる。
【0016】
本発明では、
前記蓋体は、収容空間を形成する囲い壁部を有し、
前記温度測定部の検知部は、前記収容空間に配置されると好適である。
【0017】
上記構成によれば、容器内の内容物(例えば、ご飯粒など)が温度測定部の検知部に付着することをできるだけ防止することができる。このため、この調理器では、温度測定部による温度測定の精度ができるだけ低下しないようにすることができる。
【0018】
本発明では、
制御部がさらに備えられ、
前記制御部は、前記蓋体が閉状態から開状態になったと前記判断部が判断すると、前記加熱部を第1出力状態に制御する第1シーケンスを終了し、前記加熱部を前記第1出力状態よりも高出力の第2出力状態に制御する第2シーケンスを実行すると好適である。
【0019】
蓋体が開状態にされると、容器内の内容物が外気に触れて内容物の温度が下がるおそれが生じる。かかる場合、制御部が、加熱部を第1出力状態(電気代をできるだけ抑えるために出力が抑えられた状態)に制御する第1シーケンスを実行したままでは、内容物の温度を蓋体が開状態になる前の温度に戻すのに時間がかかってしまう。上記構成によれば、蓋体が閉状態から開状態になったと判断されると、制御部が、第1シーケンスを終了して加熱部を第1出力状態よりも高出力の第2出力状態に制御する第2シーケンスを実行するため、内容物の温度を蓋体が開状態になる前の温度にできるだけ早く戻すことができる。
【0020】
本発明に係る調理器は、
上方に開口する容器と、
前記容器の上側に配置されて前記容器の開口を覆う蓋体と、
前記容器を保温する保温ヒータと、
前記蓋体の内部の温度を測定する温度測定部と、を備え、
前記温度測定部による測定温度の低下度合いが判定基準を満たした場合に、前記保温ヒータへの制御を変更する制御部をさらに備え、
前記温度測定部は、前記容器に接触していない。
【0021】
上記構成によれば、蓋体が閉状態から開状態になった場合、蓋体の内部に外気が流入することにより測定温度が低下する。すなわち、この調理器では、温度測定時において容器の材質等の影響をほとんど受けない。このため、この調理器では、蓋体の閉から開への状態変化による温度低下をできるだけ精度よく判断することができる。なお、蓋体の閉から開への状態変化による温度低下が起きると、容器内の内容物が外気に触れて内容物の温度も低下するおそれが生じる。かかる場合、保温シーケンスによっては、例えば内容物の温度を蓋体が開状態になる前の温度に戻すのに時間がかかってしまう等、内容物を適切に保温できないおそれが生じる。したがって、この調理器では、容器温度を測定する温度測定部の測定温度が一定量低下した場合に蓋体が閉状態から開状態になったと判断する従来の調理器と比べて、蓋体が閉状態から開状態になったことの判断をできるだけ正確に行うことができ、容器内の内容物をできるだけ適温で保温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る炊飯器の斜視図である。なお、本図では、蓋体が閉じられた状態が示されている。
【
図2】本発明の実施の形態に係る炊飯器を左右方向の中心を通るように切断した縦断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る炊飯器の斜視図である。なお、本図では、蓋体が開かれると共に蓋体の内蓋が取り外された状態が示されている。
【
図5】本発明の実施の形態に係る蓋体における気体の流れを示す部分拡大断面図である。
【
図6】変形例(A)に係るマイコン基板のマイクロコンピュータにおける蓋体の閉から開への状態変化を判断するための処理の一例の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の構造>
本発明の実施の形態に係る炊飯器100は、誘導加熱式の圧力炊飯器であって、
図1および
図2に示されるように、主に、本体110、内鍋130、蓋体140、ヒンジ機構150およびヒンジカバー160等から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0024】
1.本体
本体110は、
図1~
図3に示されるように、主に、筐体111、断熱材112、誘導加熱コイル113、保温ヒータHT、フェライトコア組立体(図示せず)、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、操作パネル117、制御基板118、マイコン基板119、自動巻取式電源コードユニット120および被係止部(図示せず)等から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0025】
(1)筐体
筐体111は、
図1~
図3に示されるように、主に、収容体111a、肩部材111c、保護枠111d、フランジ部Db、マイコン基板支持部材111eおよび制御基板支持部材111f等から構成されている。以下、これらの構成要件について詳述する。なお、筐体111は、
図2に示されるように、断熱材112、誘導加熱コイル113、フェライトコア組立体、サーミスタ114、送風ファン115、ヒートシンク116、制御基板118、マイコン基板119および自動巻取式電源コードユニット120等を収容している。
【0026】
(1-1)収容体
収容体111aは、
図1~
図3に示されるように、側壁Aaおよび底壁Abから形成されている。側壁Aaは、平面視において略方形状を呈する囲い壁であって、
図1~
図3に示されるように本体110の側面を覆っている。また、側壁Aaの前側上端の内側部分には爪部(図示せず)が形成されている。この爪部およびマイコン基板支持部材111eの爪受け部によって、マイコン基板支持部材111eが収容体111aに対して係止されている。なお、本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、肩部材111cは収容体111aに対して係止されていない。底壁Abは、略方形状の板部材であって、
図2に示されるように、側壁Aaの下端から内側に延びており、側壁Aaの下側の開口を覆っている。なお、制御基板支持部材111fおよび保護枠111dが底壁Abに締結されている。また、この底壁Abには、筐体111の外部の空気を内部に吸い込むための吸気口Ab1(
図2参照)、および、筐体111の内部の空気を外部に排出するための排気口(図示せず)が形成されている。なお、
図2に示されるように、吸気口Ab1の直上には、送風ファン115が配設されている。この送風ファン115が駆動されると、吸気口Ab1を通って外部の空気が筐体111の内部に吸い込まれ、それによって生じる空気流れにより内部の加熱空気が排気口から系外に排出される。
【0027】
(1-2)肩部材
肩部材111cは、
図1~
図3に示されるように、収容体111aの上側に配置されており、蓋体140が閉じられた状態でも一部が外側から視認可能である。また、肩部材111cの前部の上側には操作パネル117が配置され(
図1~
図3参照)、肩部材111cの下面にはフランジ部Dbが取り付けられている(
図2参照)。なお、肩部材111cには、内鍋130の挿入口となる開口が形成されている(
図2および
図3参照)。
【0028】
(1-3)保護枠
保護枠111dは、内鍋130の外周を覆う椀状の部位である(
図2参照)。
図2に示されるように、保護枠111dの上側にフランジ部Dbが配置され、保護枠111dおよびフランジ部Dbが互いに連結される。また、上述の通り、保護枠111dは、収容体111aの底壁Abに締結される。また、
図2に示されるように、保護枠111dの底壁の中央部には、サーミスタ114を通すための開口が形成されている。
【0029】
(1-4)フランジ部
フランジ部Dbは、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチック等から形成されている。また、フランジ部Dbは、肩部材111cの形状を保持する役目を担っており、上述の通り、肩部材111cの下面に取り付けられている。なお、エンジニアリングプラスチックは、汎用樹脂に比べてその剛性が高く、耐熱性に優れるため、汎用樹脂よりも熱変形しにくい性質を有する。なお、フランジ部Dbには、内鍋130の挿入口となる開口が形成されている(
図2参照)。
【0030】
(1-5)マイコン基板支持部材
マイコン基板支持部材111eは、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂等から形成されており、マイコン基板119を支持する役目を担っている。また、マイコン基板支持部材111eは、肩部材111cの内側且つ操作パネル117の下側に配置され(
図2参照)、肩部材111cに固定されている。なお、マイコン基板支持部材111eには爪受け部が形成されており、上述の通り、この爪受け部および収容体111aの側壁Aaの爪部によって、マイコン基板支持部材111eが収容体111aに対して係止されている。
【0031】
(1-6)制御基板支持部材
制御基板支持部材111fは、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂等から形成されており、制御基板118を支持する役目を担っている。また、制御基板支持部材111fは、収容体111aの内側(より詳細には、収容体111aの側壁Aaおよび保護枠111dの間)に配置され(
図2参照)、収容体111aの底壁Abに締結される。
【0032】
(2)断熱材
断熱材112は、
図2に示されるように、保護枠111dの側壁および保温ヒータHTの外周に巻き付けられており、炊飯時において内鍋130から生じる熱が保護枠111dの外側に流出するのを抑制する役割を担っている。
【0033】
(3)誘導加熱コイル
誘導加熱コイル113は、内鍋130を誘導加熱する誘導加熱源であって、
図2に示されるように保護枠111dの底壁および側壁下端部の外側に配設されている。
【0034】
(4)保温ヒータ
保温ヒータHTは、保温運転時に使用される円環状のヒータであって、
図2に示されるように、保護枠111dの側壁の上部の外側に配設されている。なお、保温ヒータHTは、保温運転時だけではなく炊飯運転時に使用されてもよい。
【0035】
(5)フェライトコア組立体
フェライトコア組立体は、誘導加熱コイル113の周囲に配設されている。フェライトコア組立体にはフェライトコアが収容され、このフェライトコアは、通電時に誘導加熱コイル113から発生する電磁波が外部に漏れ出るのを抑制する役目を担っている。
【0036】
(6)サーミスタ
サーミスタ114は、内鍋130の温度を測定するための温度センサであって、
図2に示されるように、保護枠111dの底壁の中央部に形成された開口を通って、上方に向かって突出している。なお、このサーミスタ114は、コイルバネ等の付勢部材によって上方に付勢されている。すなわち、このサーミスタ114は、上下方向に沿って出没自在な状態とされている。ところで、このサーミスタ114は、略円盤状のカバー部材によって支持されている。このカバー部材は、保護枠111dの底壁に固定されている。
【0037】
(7)送風ファン
送風ファン115は、上述の通り、筐体111の底壁Abの吸気口Ab1の直上に、回転軸が略上下方向に沿うようにして配設されている(
図2参照)。すなわち、この送風ファン115が駆動されると、外部の空気が吸気口Ab1から吸い込まれて筐体内に流入し、そのまま上方に向かって送られる。上方に向かって送られた外部の空気は、ヒートシンク116を通って制御基板118およびマイコン基板119などに供給されて、それらの部材等を冷却する。
【0038】
(8)ヒートシンク
ヒートシンク116は、外部の空気と効率よく熱交換を行わせる部品である。
【0039】
(9)操作パネル
操作パネル117は、肩部材111cの前部の上側に配設されており、
図1および
図2に示されるように、主に、パネル本体117a、操作ボタン群BTおよび情報表示パネルDI等から構成されている。パネル本体117aは、操作ボタン群BTおよび情報表示パネルDI等を支持する。操作ボタン群BTは、例えば炊飯方法の選択ボタンや取り消しボタン等であって、炊飯器100の運転方法を使用者に選択させるためのものである。情報表示パネルDIは、炊飯メニュー情報、炊飯経過情報等の各種情報を表示する。
【0040】
(10)制御基板
制御基板118は、電源回路を構成する基板であって、いくつかの発熱部品を実装している。また、制御基板118は、
図2に示されるように筐体111の前側空間に収容され、制御基板支持部材111fに支持されている。
【0041】
(11)マイコン基板
マイコン基板119は、マイクロコンピュータMC等の電子部品を実装しており(
図2参照)、誘導加熱コイル113、保温ヒータHT、サーミスタ114、蓋体140の蒸気センサSS、蓋体140の蓋ヒータ等に通信接続されている。なお、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCにはメモリが搭載されており、メモリには炊飯制御や保温制御を実行するための各種プログラムやデータ等が格納されている。マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140の蒸気センサSSから受け取った温度情報を基に蓋体140の閉から開への状態変化を判断したり(後述)、誘導加熱コイル113や保温ヒータHTや蓋ヒータの出力を制御したり、時間を計測したりする。また、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、炊飯器100内に内鍋130が存在することによる誘導加熱コイル113のインダクタンスの変化を検知することで、炊飯器100内に内鍋130が存在するか否かを判断している。なお、マイコン基板119は、
図2に示されるように肩部材111cの内側且つ操作パネル117の下側に配設され、マイコン基板支持部材111eに支持されている。
【0042】
(12)自動巻取式電源コードユニット
自動巻取式電源コードユニット120は、電源コードPC(
図1および
図3参照)および自動巻取機構(図示せず)等から構成されており、
図2に示されるように筐体111の後側空間に収容されている。電源コードPCは、差込プラグおよび電気線から構成されている(
図1および
図3参照)。差込プラグは、電気線の先端に配設されている。電気線は、伸展自在に自動巻取機構に巻回されている。
【0043】
(13)被係止部
被係止部は、肩部材111cのうち開口(内鍋130の挿入口)の前側部分の上面に取り付けられる。蓋体140が閉じられている状態において、この被係止部に対して蓋体140のレバー部材146の爪部146bが係止される。
【0044】
2.内鍋
内鍋130は、
図2に示されるように、肩部材111cの開口およびフランジ部Dbの開口に挿通されると共に保護枠111dに所定の隙間をもって収容される。なお、内鍋130は、種々のアルミニウム合金およびステンレス合金の多層体(クラッド材)であって、誘導加熱コイル113によって誘導加熱され得る。また、内鍋130は、
図2に示されるように、底壁部131、筒壁部132およびフランジ部133から形成されている。底壁部131は、平面視において略円盤形状を呈している。筒壁部132は、
図2に示されるように、底壁部131の外縁から上方に延びている。すなわち、筒壁部132は、略円筒形状を呈している。なお、
図2には筒壁部132の筒軸AXが示されており、この筒軸AXは、平面視における筒壁部132の中心から上下方向に延びている。フランジ部133は、
図2に示されるように、筒壁部132の上端から外方に延びている。
図2に示されるように、内鍋130が、肩部材111cの開口およびフランジ部Dbの開口に挿通されると共に保護枠111dに所定の隙間をもって収容された時、フランジ部133は、肩部材111cに載置される。
【0045】
3.蓋体
蓋体140は、
図1~
図3に示されるように、主に、外装体141、操作レバー142、圧力調整機構143、補強部材(図示せず)、流路形成部144、環状パッキンPK、内蓋145、レバー部材146、レバーストッパー(図示せず)、蒸気センサSSおよび蓋ヒータ(図示せず)などから構成されており、ヒンジ機構150を介して本体110に回動自在に取り付けられている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0046】
(1)外装体
外装体141は、
図1および
図2に示されるように、上側外装部材141aおよび下側外装部材141bから構成される略直方体状の部材であって、操作レバー142、補強部材、流路形成部144およびレバー部材146等を収容している。
【0047】
上側外装部材141aは、平面視において略方形状の板部材であって(
図1参照)、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂等から形成されている。上側外装部材141aは、
図1~
図3に示されるように、下側外装部材141bを上側から覆っている。また、
図1および
図2に示されるように、上側外装部材141aの前部には、操作レバー142の一部の上面を露出させるための開口が形成され、上側外装部材141aの後部には、流路形成部144の上ケース部UPの一部を露出させるための開口BOが形成されている。
【0048】
下側外装部材141bは、平面視において略方形状の板部材であって、ポリプロピレン(PP)等の汎用樹脂等から形成されている。
図2に示されるように、下側外装部材141bの下面には、内蓋145が着脱自在に配設される。また、下側外装部材141bの上面には、補強部材が取り付けられる。また、
図2に示されるように、下側外装部材141bの後部(より詳細には、下側外装部材141bのうち圧力調整機構143より後側の部分)には、流路形成部144を構成する下ケース部LPが形成されている。また、
図2、
図4および
図5に示されるように、下側外装部材141bには蒸気センサSSが取り付けられる。このとき、蒸気センサSSの検知部は、
図2および
図5に示されるように、下側外装部材141bおよび内蓋145によって囲まれる収容空間SPに突出している。
【0049】
(2)操作レバー
操作レバー142は、蓋体140を閉状態から開状態にするためのものであって、
図2に示されるようにレバー部材146の上側に配設されている。なお、この操作レバー142は、外装体141の上側外装部材141aに固定される回動軸SF1(
図2参照)を中心に回動可能であり、操作レバー側トーションバネ(図示せず)によって右側面視において回動軸SF1を中心とした時計回り方向に向かって付勢されている。
【0050】
(3)圧力調整機構
圧力調整機構143は、蓋体140が閉状態とされ圧力炊飯運転されている状態において、内鍋130の内部の圧力を1気圧以上(例えば、1.03~1.3気圧など)に調整する。圧力調整機構143は、
図5に示されるように、主に、調圧ボールBL、弁座部BPおよび収容部AP等から構成されている。調圧ボールBLは、
図5に示されるように、略球体形状を呈しており、収容部APの内側に配置されている。この調圧ボールBLが、弁座部BPの上側開口を閉塞することで、内鍋130の内部の圧力が調整される。弁座部BPは、
図5に示されるように、内蓋145の流入口VOの縁から上方に延びており、収容部APの内側に配置されている。収容部APは、
図5に示されるように、平面視における内蓋145の流入口VOの周囲に配置されて上方に延びる筒壁部AP1、および、筒壁部AP1の上端から内方に延びる天壁部AP2から形成されている。なお、
図5に示されるように、天壁部AP2には流通口AP2aが形成されている。
【0051】
(4)補強部材
補強部材は、外装体141の下側外装部材141bに取り付けられて下側外装部材141bの剛性を高めるためのものであって、例えば、溶融亜鉛メッキ鋼板(SGCC)等の板金や、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のエンジニアリングプラスチック等から形成されている。なお、補強部材の前端部には回動軸SF2(
図2参照)を取り付けるための軸受け孔が形成され、補強部材の後端部にはヒンジ機構150の回動軸151(
図2参照)を通すための軸受け孔が形成されている。
【0052】
(5)流路形成部
流路形成部144は、蓋体140内における気体流路RTの一部を形成するためのものであって、
図2および
図5に示されるように、主に、下ケース部LPおよび上ケース部UP等から構成される。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0053】
(5-1)下ケース部LP
下ケース部LPは、上述の通り、外装体141の下側外装部材141bに形成されている。
図2および
図5に示されるように、下ケース部LPの上側には上ケース部UPが配置される。また、
図4および
図5に示されるように、下ケース部LPには流通口LPaが形成されている。この流通口LPaによって、下ケース部LPおよび上ケース部UPの間に気体(例えば、蓋体140の外部の空気や、内鍋130内に入れられた消費材から生じた蒸気など)を流入させることができる。
【0054】
(5-2)上ケース部
上ケース部UPは、
図2および
図5に示されるように、下ケース部LPを覆うように下ケース部LPの上側に配置される。また、上ケース部UPの一部は、上述の通り、外装体141の上側外装部材141aの開口BOによって露出している。また、
図5に示されるように、上ケース部UPにはリブUP1が形成されている。このリブUP1は、下ケース部LPおよび上ケース部UPの間において気体を迂回させるためのものである。また、
図2および
図5に示されるように、上ケース部UPには排気口UPaが形成されている。排気口UPaは、下ケース部LPおよび上ケース部UPの間に流入した気体を蓋体140の外部に排出するためのものである。
【0055】
(6)環状パッキン
環状パッキンPKは、
図5に示されるように、上ケース部UPおよび下ケース部LPによって挟まれている。これにより、上ケース部UPおよび下ケース部LPが水密に保たれる。
【0056】
(7)内蓋
内蓋145は、
図2に示されるように、蓋体140が閉状態である時に内鍋130の上部を覆って内鍋130を密閉するための部材である。なお、
図2に示されるように、内蓋145には流入口VOが形成されている。この流入口VOにより、気体(例えば、内鍋130内に入れられた消費材から生じた蒸気等)を蓋体140の内部に流入させることができる。
【0057】
(8)レバー部材
レバー部材146は、当接板部(図示せず)、当接板部の前側から下方に延びる左右一対の延設板部146a(
図3参照)、および、各延設板部146aの下部から後方に向かって延びる爪部146b(
図3参照)から形成される金属板部材であって、補強部材に回動軸SF2(
図2参照)によって軸支されていると共に、レバー部材側トーションバネ(図示せず)によって右側面視において回動軸SF2を中心とした反時計回り方向に向かって付勢されている。なお、ここで、使用者によって操作レバー142のうち回動軸SF1の前側の部位(
図1において外装体141の上側外装部材141aに露出している部位)が下方に押圧されると、操作レバー142は、回動軸SF1を中心に回動し、レバー部材146の当接板部のうち回動軸SF2の後側の部位に当接する。
【0058】
そして、使用者が蓋体140を閉状態としようとするとき、使用者は操作レバー142を操作する必要がなく、そのまま蓋体140を本体110に向かって倒し込めばよい。このとき、レバー部材146の爪部146bが、本体110の被係止部に形成される傾斜面(図示せず)に接触しながら下方に移動していく。この間、レバー部材146は、レバー部材側トーションバネの付勢力に逆らって前方(より詳細には、右側面視において回動軸SF2を中心とした時計回り方向)に向かって回動する。そして、レバー部材146の爪部146bが、本体110の被係止部の下側まで達すると、レバー部材側トーションバネの付勢力により本体110の被係止部に対して係止される。このようにして蓋体140が閉状態となる。一方、蓋体140を開状態とするとき、使用者は、操作レバー142のうち回動軸SF1の前側の部位を下方に押圧する。すると、操作レバー142は、レバー部材146の当接板部のうち回動軸SF2の後側の部位に当接し、レバー部材146がレバー部材側トーションバネの付勢力に逆らって前方に向かって回動する。このとき、レバー部材146の爪部146bが本体110の被係止部に係止されている状態が解除される。そして、ヒンジ機構150のヒンジ機構側トーションバネの付勢力により蓋体140が上方に持ち上げられ、蓋体140が開状態となる。ただし、圧力炊飯運転中においては、蓋体140が開状態とならないようにレバー部材146の回動は規制される。
【0059】
(9)レバーストッパー
レバーストッパーは、操作レバー142のうち回動軸SF1の前側の部位が下方に押圧された時の操作レバー142の回動限界位置を規定するものであって、操作レバー142の下側に配置される。
【0060】
(10)蒸気センサ
蒸気センサSSは、蓋体140内部の温度、より詳細には気体流路RT(後述)を流れる気体の温度を測定するための一般的な温度センサ(例えば、熱電対やサーミスタなど)である。また、蒸気センサSSの検知部は、
図2および
図5に示されるように、蓋体140が閉状態である時に内鍋130の筒壁部132の筒軸AX方向に沿って下側外装部材141bを貫通し(すなわち、蓋体140が閉状態であり炊飯器100が正立状態である時に鉛直方向に沿って下側外装部材141bを貫通し、)、収容空間SPに突出するように外装体141の下側外装部材141bに取り付けられ、
図2および
図5に示されるように気体流路RTに配置される。このように蒸気センサSSを配置することで、蒸気センサSSは内鍋130に接触してない状態になる。
【0061】
(11)蓋ヒータ
蓋ヒータは、保温運転時に使用されるヒータであって、内蓋145の上側に配置されている。なお、蓋ヒータは、保温運転時だけではなく炊飯運転時に使用されてもよいし、内蓋145の上側以外の箇所に配置されてもよい。
【0062】
4.ヒンジ機構
ヒンジ機構150は、上述の通り、蓋体140が本体110に対して回動自在となるように蓋体140を本体110に取り付けており、締結板金(図示せず)、回動軸151(
図2参照)、ヒンジ機構側トーションバネ(図示せず)およびダンパー(図示せず)等から構成されている。締結板金は、ヒンジ機構150を本体110のフランジ部Dbに取り付けるための部材である。なお、締結板金には、回動軸151が挿通される軸受け孔が形成されている。回動軸151は、蓋体140を軸中心に回動させるためのものである。ヒンジ機構側トーションバネは、蓋体140を開方向に向かって付勢している。なお、ヒンジ機構側トーションバネの一端は締結板金に固定され、ヒンジ機構側トーションバネのもう一端は蓋体140の補強部材に固定される。ダンパーは、回動軸151に取り付けられ、蓋体140の開放速度を減衰させる役目を担う。
【0063】
5.ヒンジカバー
ヒンジカバー160は、
図2に示されるように、ヒンジ機構150を後側から覆って隠すための部材であり、ヒンジ機構150の締結板金の後面に取り付けられる。
【0064】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の蓋体の内部における気体の流れについて>
ここでは、蓋体140の内部における気体の流れについて説明する。気体は、
図5に示されるように、蓋体140の内部に形成されて内蓋145の流入口VOから流路形成部144の上ケース部UPの排気口UPaまで延びる気体流路RTを流れる。なお、気体流路RTを流れる気体は、例えば、蓋体140が閉状態から開状態になった時は主に蓋体140の外部の空気であり、蓋体140が閉状態である時は主に内鍋130内に入れられた消費材から生じた蒸気である。まず、気体は、内蓋145の流入口VOから蓋体140の内部に流入すると、圧力調整機構143の収容部APの内部を流れて、圧力調整機構143の収容部APの流通口AP2aに到達する。次に、気体は、この流通口AP2aを通過し、外装体141の下側外装部材141b、圧力調整機構143の収容部APおよび内蓋145の間を流れ、流路形成部144の下ケース部LPの流通口LPaに到達する。次に、気体は、この流通口LPaを通過し、流路形成部144の下ケース部LPおよび上ケース部UPの間を流れ、流路形成部144の上ケース部UPの排気口UPaに到達する。最終的に、気体は、この排気口UPaから蓋体140の外部に流出する(排出される)。
【0065】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器における蓋体の閉から開への状態変化の判断、および、保温制御について>
まず、本発明の実施の形態に係る炊飯器100における蓋体140の閉から開への状態変化の判断ついて説明する。この炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140の蒸気センサSSが測定した測定温度の情報を蓋体140の蒸気センサSSから受け取っており、測定温度の低下度合いが判定基準を満たしたと判定すると、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断する。なお、この炊飯器100では、測定温度の低下度合いの判定基準は、測定温度が閾値以下になったか否かである。具体的には、マイクロコンピュータMCは、炊飯後の測定温度をAとして、測定温度がAからAよりも低い値である閾値B以下になると、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断する。なお、この炊飯器100は、蓋体140が閉状態から開状態にされると、蓋体140の外部の空気が気体流路RTを流れ、蓋体140の蒸気センサSSによる測定温度が低下することを利用している。次に、本発明の実施の形態に係る炊飯器100における保温制御について説明する。この炊飯器100では、マイクロコンピュータMCは、炊飯が完了すると、保温ヒータHTおよび蓋ヒータを第1出力状態に制御する第1保温シーケンスを実行する。ここで、第1保温シーケンスは、電気代をできるだけ抑えるために、炊飯完了後(より詳細には、炊飯が完了した後で一度も蓋体140が開状態にされていない状態)の内鍋130内の内容物(例えば、ご飯等)を保温するのに十分な出力状態ではあるが比較的出力が抑えられた状態(すなわち、第1出力状態)に保温ヒータHTおよび蓋ヒータが制御されるシーケンスである。そして、マイクロコンピュータMCは、上述のように蓋体140が閉状態から開状態になったと判断すると(言い換えれば、測定温度の低下度合いが判定基準を満たしたと判定すると)、第1保温シーケンスを終了し、保温ヒータHTおよび蓋ヒータを第1出力状態から第2出力状態に制御する第2保温シーケンスを実行する。ここで、第2保温シーケンスは、第1出力状態よりも出力が高い状態(すなわち、第2出力状態)に保温ヒータHTおよび蓋ヒータが制御されるシーケンスである。これは、蓋体140が開状態にされると、内鍋130内の内容物が蓋体140の外部の空気に触れて内容物の温度が下がるおそれが生じ、マイクロコンピュータMCが第1保温シーケンスを実行したままでは、内容物の温度を蓋体140が開状態になる前の温度に戻すのに時間がかかってしまうためである。そして、マイクロコンピュータMCは、使用者によって操作ボタン群BTの取り消しボタンが押されるまでは、第2保温シーケンスを実行する。操作ボタン群BTの取り消しボタンが押されると、マイクロコンピュータMCは、保温ヒータHTおよび蓋ヒータへの通電を停止する。
【0066】
<本発明の実施の形態に係る炊飯器の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSは、内鍋130に接触していない状態で、気体流路RTを流れる気体の温度を測定する。また、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140の蒸気センサSSによる測定温度の低下度合いが判定基準を満たしたと判定すると、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断する。また、蓋体140の蒸気センサSSによる測定温度の低下は、蓋体140が閉状態から開状態にされて蓋体140の外部の空気が気体流路RTを流れることによるものである。このため、この炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSによる温度測定時において内鍋130の材質等の影響をほとんど受けることなく、蓋体140の閉から開への状態変化を判断する要因である温度低下をできるだけ精度よく判断することができる。したがって、この炊飯器100では、内鍋温度を測定する鍋センサの測定温度が一定量低下した場合に蓋体が閉状態から開状態になったと判断する従来の炊飯器と比べて、蓋体140が閉状態から開状態になったことの判断をできるだけ正確に行うことができる。また、この炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、測定温度の低下度合いの判定基準として、測定温度が閾値以下になったか否かを用いている。このため、この炊飯器100では、比較的シンプルなロジックで蓋体140が閉状態から開状態になったと判断することができる。
【0067】
(2)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の内蓋145の流入口VOから蓋体140の流路形成部144の上ケース部UPの排気口UPaまで延びる気体流路RTが蓋体140の内部に形成され、蓋体140の蒸気センサSSの検知部がこの気体流路RTに配置される。このため、炊飯器100では、実際に蓋体140が閉状態から開状態になった時に、蓋体140の外部の空気を気体流路RTに流すことができる。したがって、この炊飯器100では、蓋体140が閉状態から開状態になった時に蓋体140の外部の空気によって蓋体140の内部が冷やされて蓋体140の蒸気センサSSが測定する温度が低下することをできるだけ正確に判断することができる。
【0068】
(3)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、内鍋130は、底壁部131の外縁から上方に延びる筒壁部132を有している。また、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、蓋体140が閉状態である時に内鍋130の筒壁部132の筒軸AX方向に沿って外装体141の下側外装部材141bを貫通するように外装体141の下側外装部材141bに取り付けられる。このため、この炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSの検知部に液体(例えば、内鍋130内で生じて蓋体140の内部に流入した蒸気が結露して生じたもの)が付いたままになることをできるだけ防止することができる。したがって、この炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSの検知部に液体が付いたままになることによって蓋体140の蒸気センサSSが気体以外の温度を測定してしまい、測定温度に影響が出るおそれをできるだけ低減することができる。
【0069】
(4)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の外装体141の下側外装部材141bおよび蓋体140の内蓋145によって囲まれる収容空間SPが形成され、蓋体140の蒸気センサSSの検知部はこの収容空間SPに突出している。このため、この炊飯器100では、内鍋130内の内容物(例えば、ご飯粒など)が蓋体140の蒸気センサSSの検知部に付着することをできるだけ防止することができる。したがって、この炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSによる温度測定の精度ができるだけ低下しないようにすることができる。
【0070】
(5)
本発明の実施の形態に係る炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断すると、第1保温シーケンスを終了して第2保温シーケンスを実行する。第2保温シーケンスは、第1保温シーケンスにおける第1出力状態よりも出力が高い第2出力状態に保温ヒータHTおよび蓋ヒータが制御されるシーケンスである。このため、この炊飯器100では、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断されると、第1保温シーケンスを終了して第2保温シーケンスを実行することで内鍋130内の内容物を比較的高火力で加熱することができ、内容物の温度を蓋体140が開状態になる前の温度にできるだけ早く戻すことができる。
【0071】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140の蒸気センサSSによる測定温度が閾値以下になった場合に、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断していた。しかし、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、測定温度が閾値以下になったか否かを判定せずに、単位時間当たりの測定温度の低下量が閾値以上になった場合に、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断してもよい。具体的には、マイクロコンピュータMCは、X秒当たりで炊飯後の測定温度がAからAよりも低いCになって(A-C)/Xが閾値D以上になると、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断する。かかる場合、蓋体140が閉状態から開状態になったことをできるだけ早く判断することができる。
【0072】
また、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、測定温度が閾値以下になった場合に、または、単位時間当たりの測定温度の低下量が閾値以上になった場合に、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断してもよい。この場合のマイクロコンピュータMCにおける処理の一例の流れを
図6に示す。
【0073】
(ステップS1)
まず、マイクロコンピュータMCは、炊飯直後の測定温度がAであるという情報を蒸気センサSSから受け取ると共に、時間計測を始める。なお、この一例では、マイクロコンピュータMCは、以降、X秒毎に蒸気センサSSから測定温度の情報を受け取るものとする。このX秒は、上記単位時間に相当し、例えば1秒である。
【0074】
(ステップS3)
マイクロコンピュータMCは、X秒経過したか否かを判定する。X秒経過していた場合、ステップS5からの処理が実行され、X秒経過していない場合、ステップS3の処理が繰り返される。
【0075】
(ステップS5)
マイクロコンピュータMCは、最新の測定温度がCであるという情報を蒸気センサSSから受け取ると共に、時間計測を始める。
【0076】
(ステップS7)
マイクロコンピュータMCは、測定温度Cが閾値B以下であるか否かを判定する。測定温度Cが閾値B以下である場合、ステップS13からの処理が実行され、測定温度Cが閾値B以下でない場合、ステップS9からの処理が実行される。
【0077】
(ステップS9)
マイクロコンピュータMCは、(測定温度A-測定温度C)/単位時間Xを計算し、計算結果が閾値D以上であるか否かを判定する。計算結果が閾値D以上である場合、ステップS13からの処理が実行され、計算結果が閾値D以上でない場合、ステップS11からの処理が実行される。
【0078】
(ステップS11)
マイクロコンピュータMCは、測定温度Cを測定温度Aで置換する。これは、次に蒸気センサSSから受け取る測定温度を最新の測定温度Cとするためである。
【0079】
なお、マイクロコンピュータMCは、ステップS7、ステップS9およびステップS11における処理を、ステップS5において時間計測を始めてからX秒が経過するまでに終える必要がある。そして、ステップS7およびステップ9の順番が逆になり、ステップS5の後にステップS9が実行されてもよい。すなわち、マイクロコンピュータMCは、(測定温度A-測定温度C)/単位時間Xの計算結果によっては、測定温度Cが閾値B以下になったか否かを判定せずに済む。
【0080】
(ステップS13)
マイクロコンピュータMCは、時間計測を止め、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断する。
【0081】
また、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、他の判断基準を利用し、その判断基準を満たした場合に、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断してもよい。
【0082】
(B)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、気体流路RTに配置されていた。しかし、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、気体流路RTから外れた位置に配置されてもよい。
【0083】
(C)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、蓋体140が閉状態である時に内鍋130の筒壁部132の筒軸AX方向に沿って外装体141の下側外装部材141bを貫通するように外装体141の下側外装部材141bに取り付けられていた。しかし、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、筒軸AX方向以外の方向に沿って外装体141の下側外装部材141bを貫通してもよい。
【0084】
(D)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、蓋体140の外装体141の下側外装部材141bおよび蓋体140の内蓋145によって囲まれる収容空間SPに突出していた。しかし、蓋体140の蒸気センサSSの検知部は、収容空間SP外に突出してもよい。
【0085】
(E)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断すると、第1保温シーケンスを終了して第2保温シーケンスを実行していた。しかし、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断すると、第1保温シーケンスを実行したままでもよいし、第1保温シーケンスを終了して第3保温シーケンスを実行してもよい。第3保温シーケンスは、第1出力状態よりも出力が低い状態に保温ヒータHTおよび蓋ヒータが制御されるシーケンスである。
【0086】
(F)
先の実施の形態に係る炊飯器100では言及しなかったが、蓋体140の操作レバー142のうち回動軸SF1の前側の部位が下方に押圧された状態を検知するセンサが構成されてもよい。このセンサは、例えば、フォトインタラプタ等であり、マイコン基板119に通信接続される。蓋体140の操作レバー142の上記部位が押圧された場合に蓋体140の操作レバー142がセンサの発光素子および受光素子の間を通過して光を遮るようにすることで、センサは、蓋体140の操作レバー142の上記部位が押圧されたことを検知することができる。そして、先の実施の形態に係る炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、蓋体140の操作レバー142の上記部位が押圧されたことをセンサが検知すると時間計測を始め、一定時間(例えば、10秒)が経過した後で蓋体140の蒸気センサSSによる測定温度が閾値以下になった場合に、蓋体140が閉状態から開状態になったと判断してもよい。
【0087】
(G)
先の実施の形態に係る炊飯器100では、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、第1保温シーケンスおよび第2保温シーケンスにおいて保温ヒータHTおよび蓋ヒータの出力を制御していた。しかし、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、第1保温シーケンスにおいて保温ヒータHTおよび蓋ヒータのいずれの出力を制御してもよいし、第2保温シーケンスにおいて保温ヒータHTおよび蓋ヒータのいずれかの出力を制御してもよい。
【0088】
(H)
先の実施の形態に係る炊飯器100は、保温ヒータHTおよび蓋ヒータを備えていた。しかし、炊飯器100は、保温ヒータHTおよび蓋ヒータのいずれか一方だけを備えてもよい。なお、保温ヒータHTだけが備えられる場合、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、第1保温シーケンスおよび第2保温シーケンスにおいて保温ヒータHTの出力を制御することになる。また、蓋ヒータだけが備えられる場合、マイコン基板119のマイクロコンピュータMCは、第1保温シーケンスおよび第2保温シーケンスにおいて蓋ヒータの出力を制御することになる。
【0089】
(I)
先の実施の形態では本発明が炊飯器100に適用されたが、本発明は例えば電気圧力調理鍋などの他の調理器に適用されてもよい。
【0090】
なお、上記変形例(A)~(I)は各例単独で適用されてもよいし、複数の例が組み合わされて適用されてもよい。
【符号の説明】
【0091】
100 :炊飯器(調理器)
130 :内鍋(容器)
131 :底壁部
132 :筒壁部
140 :蓋体
141b :下側外装部材(蓋体、囲い壁部)
145 :内蓋(蓋体、囲い壁部)
AX :筒軸
HT :保温ヒータ(加熱部)
MC :マイクロコンピュータ(判断部、制御部)
RT :気体流路(流路)
SP :収容空間
SS :蒸気センサ(温度測定部)