(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081894
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】吹付制御装置、吹付システム及び吹付制御方法
(51)【国際特許分類】
B05B 12/00 20180101AFI20240612BHJP
B05D 7/00 20060101ALI20240612BHJP
B05D 1/02 20060101ALI20240612BHJP
B05D 3/00 20060101ALI20240612BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240612BHJP
E04B 1/94 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B05B12/00 Z
B05D7/00 L
B05D1/02 B
B05D3/00 D
E04G21/02 103B
E04B1/94 E ESW
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195430
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391004791
【氏名又は名称】カジマメカトロエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122781
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100153040
【弁理士】
【氏名又は名称】川井 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 知洋
(72)【発明者】
【氏名】水谷 亮
(72)【発明者】
【氏名】横山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】高木 良介
(72)【発明者】
【氏名】金崎 俊造
(72)【発明者】
【氏名】木崎 康弘
(72)【発明者】
【氏名】持田 陽平
(72)【発明者】
【氏名】古谷 一気
【テーマコード(参考)】
2E001
2E172
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001EA06
2E001FA01
2E001FA02
2E001GA06
2E001HA32
2E001KA01
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2E172AA07
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2E172HA03
4D075AA01
4D075AA37
4D075AA85
4D075CA47
4D075CB38
4D075DC01
4D075EA05
4F035AA04
4F035BB06
4F035BB07
4F035BC01
4F035CA01
4F035CA05
4F035CD15
4F035CD18
4F035CD19
(57)【要約】
【課題】施工対象の現況に則した吹付装置を制御するためのデータを、多くの手間を要することなく容易に得る。
【解決手段】吹付制御装置10は、建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する3次元形状データ取得部11と、3次元形状データに基づいて梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する梁形状算出部12と、梁、梁の部分及び梁の面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける対象指定受付部13と、吹付対象情報における吹付対象の形状に応じて、梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する吹付パターン判定部15と、吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する吹付制御データ生成部16と、生成された吹付制御データを出力する出力部17と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置を制御するための吹付制御データを生成する吹付制御装置であって、
センサにより取得された、前記建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する3次元形状データ取得部と、
前記3次元形状データに基づいて、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する梁形状算出部と、
前記梁形状データにより示される前記梁、前記梁の部分及び前記梁の面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける対象指定受付部と、
前記吹付対象情報における前記吹付対象の形状に応じて、前記梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する吹付パターン判定部であって、前記吹付パターンは、前記吹付対象における前記吹付材を吹き付ける目標とする点である吹付点が吹き付ける順に沿って並べられた吹付ラインにより構成されている、吹付パターン判定部と、
前記吹付対象の前記梁の面及び部分ごとに前記吹付パターンが関連付けられた前記吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する吹付制御データ生成部と、
生成された前記吹付制御データを出力する出力部と、
を備える吹付制御装置。
【請求項2】
前記対象指定受付部は、平面方形状の4角に位置する柱の間に配置された梁である大梁のうちの4本の大梁、前記4本の大梁のうちの1~3本の大梁及び前記大梁の部分の少なくともいずれか一つを吹付対象として指定する前記吹付対象情報を受け付ける、
請求項1に記載の吹付制御装置。
【請求項3】
前記対象指定受付部は、前記梁のうちの、該梁を構成するH形鋼のウェブ、上フランジ下面及び下フランジ上面を含むウェブ面部、又は、下フランジ下面を前記吹付対象とする吹付対象情報を受け付ける、
請求項1または2に記載の吹付制御装置。
【請求項4】
前記吹付対象のうちの、吹き付けを開始する点である吹付開始点の指定を受け付ける吹付順受付部、を更に備え、
前記吹付制御データ生成部は、前記吹付開始点を吹き付けの開始位置として、全ての吹付対象に対する吹き付けを完了させるまでの、前記吹付対象ごとの吹付材を吹き付ける順である吹付順を設定し、設定した前記吹付順を前記吹付制御データに含ませる、
請求項1に記載の吹付制御装置。
【請求項5】
前記吹付順受付部は、前記吹付対象のうちの、吹き付けを終了する点である吹付終了点の指定を受け付け、
前記吹付制御データ生成部は、前記吹付開始点から前記吹付終了点に至る前記吹付対象の順を前記吹付順として設定する、
請求項4に記載の吹付制御装置。
【請求項6】
前記吹付順受付部は、前記梁を構成する面または部分ごとの、前記吹付材を吹き付ける順の指定を受け付け、
前記吹付制御データ生成部は、前記吹付順受付部により受け付けられた前記指定に応じて前記吹付順を設定する、
請求項4または5に記載の吹付制御装置。
【請求項7】
前記吹付制御データ生成部は、前記吹付対象及び前記吹付装置が存在する空間に設定された座標系における、前記吹付ラインに含まれる各吹付点の座標の集合からなる吹付点座標データを算出し、算出した吹付点座標データを前記吹付制御データに含ませる、
請求項1に記載の吹付制御装置。
【請求項8】
各吹付パターンは、前記梁を構成するH形鋼のウェブ、上フランジ下面及び下フランジ上面を含むウェブ面部、スチフナ部、スリーブ部並びに下フランジ下面部のそれぞれの形状に応じた前記吹付ラインを有し、
前記吹付パターン判定部は、複数の前記吹付パターンから、前記吹付対象の形状に応じた吹付パターンを選択する、
請求項1に記載の吹付制御装置。
【請求項9】
各吹付パターンは、予め設定された、前記吹付ラインの間隔である吹付ラインピッチ、及び、前記吹付ラインに沿った前記吹付点の間隔である吹付点ピッチを含む、
請求項1に記載の吹付制御装置。
【請求項10】
前記吹付制御データ生成部は、予め設定された前記吹付対象に応じた吹付材の必要付着量、及び、前記吹付対象の形状に基づいて、前記吹付ラインピッチの補正値、及び、前記吹付ライン上へ吹付材を吹き付けする時間である吹付速さを算出し、前記吹付制御データに含ませる、
請求項9に記載の吹付制御装置。
【請求項11】
少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置と、
前記建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得可能なセンサと、
請求項1に記載された吹付制御装置と、を含み、
前記3次元形状データ取得部は、前記センサから前記3次元形状データを取得し、
前記出力部は、前記吹付制御データを前記吹付装置に送出する、
吹付システム。
【請求項12】
少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置を制御するための吹付制御データを生成する吹付制御装置における吹付制御方法であって、
センサにより取得された、前記建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する3次元形状データ取得ステップと、
前記3次元形状データに基づいて、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する梁形状算出ステップと、
前記梁形状データにより示される前記梁、前記梁の部分及び前記梁の面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける対象指定受付ステップと、
前記吹付対象情報における前記吹付対象の形状に応じて、前記梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する吹付パターン判定ステップであって、前記吹付パターンは、前記吹付対象における前記吹付材を吹き付ける目標とする点である吹付点が吹き付ける順に沿って並べられた吹付ラインにより構成されている、吹付パターン判定ステップと、
前記吹付対象の前記梁の面及び部分ごとに前記吹付パターンが関連付けられた前記吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する吹付制御データ生成ステップと、
生成された前記吹付制御データを出力する出力ステップと、
を有する吹付制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吹付制御装置、吹付システム及び吹付制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄骨造(S造)及びCFT造等の架構には耐火被覆を施す必要がある。この耐火被覆の作業を省人化するために、種々の耐火被覆吹付ロボット(吹付装置)が開発されてきた。例えば、特許文献1には、多関節のロボットアームの先端部から耐火被覆材を吐出するノズルが設けられた吹付施工システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の耐火被覆吹付ロボットでは、耐火被覆を吹き付ける対象の鉄骨梁の寸法データは、手入力やBIMデータの取込みにより取得されていた。そして、取得した寸法データに基づいて、耐火被覆吹付ロボットの動作データの設定が行われていた。耐火被覆吹付ロボットの動作のために必要な寸法データの手入力には、多大な手間及び時間がかかっていた。また、BIMデータが利用される場合であっても、作業者が適切なBIMデータを選択及び運用することは容易ではなく、また、施工の現況を反映させることができなかった。
【0005】
そこで本発明は、施工対象の現況に則した吹付装置を制御するためのデータを、多くの手間を要することなく容易に得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示の第1の一側面に係る吹付制御装置は、少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置を制御するための吹付制御データを生成する吹付制御装置であって、センサにより取得された、建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する3次元形状データ取得部と、3次元形状データに基づいて、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する梁形状算出部と、梁形状データにより示される梁、梁の部分及び梁の面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける対象指定受付部と、吹付対象情報における吹付対象の形状に応じて、梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する吹付パターン判定部であって、吹付パターンは、吹付対象における吹付材を吹き付ける目標とする点である吹付点が吹き付ける順に沿って並べられた吹付ラインにより構成されている、吹付パターン判定部と、吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する吹付制御データ生成部と、生成された吹付制御データを出力する出力部と、を備える。
【0007】
本開示の第1の一側面に係る吹付制御方法は、少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置を制御するための吹付制御データを生成する吹付制御装置における吹付制御方法であって、センサにより取得された、建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する3次元形状データ取得ステップと、3次元形状データに基づいて、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する梁形状算出ステップと、梁形状データにより示される梁、梁の部分及び梁の面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける対象指定受付ステップと、吹付対象情報における吹付対象の形状に応じて、梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する吹付パターン判定ステップであって、吹付パターンは、吹付対象における吹付材を吹き付ける目標とする点である吹付点が吹き付ける順に沿って並べられた吹付ラインにより構成されている、吹付パターン判定ステップと、吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する吹付制御データ生成ステップと、生成された吹付制御データを出力する出力ステップと、を有する。
【0008】
上記の側面によれば、センサにより取得された建築構造物の表面形状を表す3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象である梁に関する梁形状データが算出されるので、吹付対象の現況が把握される。梁形状データにより表される梁、梁の部分及び梁の面のうちの所望の部分を吹付対象として指定する吹付対象情報が受け付けられるので、吹付材を吹き付ける箇所を容易に設定できる。そして、予め設定された吹付対象の形状に応じた吹付パターンの中から、指定された吹付対象の形状に応じた好適な吹付パターンが選択され、選択された吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データが生成及び出力されるので、吹付装置の制御のための好適なデータが、少ない手間で容易に得られる。
【0009】
第2の側面に係る吹付制御装置では、第1の側面に係る吹付制御装置において、対象指定受付部は、平面方形状の4角に位置する柱の間に配置された梁である大梁のうちの4本の大梁、4本の大梁のうちの1~3本の大梁及び大梁の部分の少なくともいずれか一つを吹付対象として指定する吹付対象情報を受け付けることとしてもよい。
【0010】
上記の側面によれば、梁形状データにより示される大梁及び大梁の部分のうちの所望の大梁または部分を吹付対象として容易に指定できる。
【0011】
第3の側面に係る吹付制御装置では、第1または2の側面に係る吹付制御装置において、対象指定受付部は、梁のうちの、該梁を構成するH形鋼のウェブ、上フランジ下面及び下フランジ上面を含むウェブ面部、又は、下フランジ下面を吹付対象とする吹付対象情報を受け付けることとしてもよい。
【0012】
上記の側面によれば、梁形状データにより示される梁の各面のうちの所望の面を吹付対象として容易に指定できる。
【0013】
第4の側面に係る吹付制御装置は、第1~3のいずれか一つの側面に係る吹付制御装置において、吹付対象のうちの、吹き付けを開始する点である吹付開始点の指定を受け付ける吹付順受付部、を更に備え、吹付制御データ生成部は、吹付開始点を吹き付けの開始位置として、全ての吹付対象に対する吹き付けを完了させるまでの、吹付対象ごとの吹付材を吹き付ける順である吹付順を設定し、設定した吹付順を吹付制御データに含ませることとしてもよい。
【0014】
上記の側面によれば、吹付開始点の指定が受け付けられ、指定された吹付開始点を吹付の開始位置として吹付順が設定されるので、所望の手順により、吹付対象に対する吹付材の吹付を実施できる。
【0015】
第5の側面に係る吹付制御装置では、第4の側面に係る吹付制御装置において、吹付順受付部は、吹付対象のうちの、吹き付けを終了する点である吹付終了点の指定を受け付け、吹付制御データ生成部は、吹付開始点から吹付終了点に至る吹付対象の順を吹付順として設定することとしてもよい。
【0016】
上記の側面によれば、吹付開始点に加えて吹付終了点の指定が受け付けられ、指定された吹付開始点から吹付終了点に至る経路により吹付順が設定されるので、所望の手順により、吹付対象に対する吹付材の吹付を実施できる。
【0017】
第6の側面に係る吹付制御装置では、第4または5の側面に係る吹付制御装置において、吹付順受付部は、梁を構成する面または部分ごとの、吹付材を吹き付ける順の指定を受け付け、吹付制御データ生成部は、吹付順受付部により受け付けられた指定に応じて吹付順を設定することとしてもよい。
【0018】
上記の側面によれば、梁を構成する面または部分ごとの吹付材を吹き付ける順の指定が受け付けられ、指定された順に従って吹付順が設定されるので、所望の手順により吹付対象の梁の面及び部分に対する吹付材の吹付を実施できる。
【0019】
第7の側面に係る吹付制御装置では、第1~6のいずれか一つの側面に係る吹付制御装置において、吹付制御データ生成部は、吹付対象及び吹付装置が存在する空間に設定された座標系における、吹付ラインに含まれる各吹付点の座標の集合からなる吹付点座標データを算出し、算出した吹付点座標データを吹付制御データに含ませることとしてもよい。
【0020】
上記の側面によれば、判定された吹付パターンを構成する吹付ラインに含まれる吹付点の座標の集合からなる吹付点座標データが、吹付制御データとして吹付装置に提供される。これにより、吹付装置は、吹付材の吹き付けを高精度に実施できる。
【0021】
第8の側面に係る吹付制御装置では、第1~7のいずれか一つの側面に係る吹付制御装置において、各吹付パターンは、梁を構成するH形鋼のウェブ、上フランジ下面及び下フランジ上面を含むウェブ面部、スチフナ部、スリーブ部並びに下フランジ下面部のそれぞれの形状に応じた吹付ラインを有し、吹付パターン判定部は、複数の吹付パターンから、吹付対象の形状に応じた吹付パターンを選択することとしてもよい。
【0022】
上記の側面によれば、梁を構成する面及び部分ごとに適した吹付ラインからなる予め設定された吹付パターンの中から、吹付対象の形状に応じた吹付パターンが選択されるので、吹付対象の梁の面及び部分ごとに好適な吹付材の吹付を、別途のデータの煩雑な入力を要することなく、容易に実施できる。
【0023】
第9の側面に係る吹付制御装置では、第1~8のいずれか一つの側面に係る吹付制御装置において、各吹付パターンは、予め設定された、吹付ラインの間隔である吹付ラインピッチ、及び、吹付ラインに沿った吹付点の間隔である吹付点ピッチを含むこととしてもよい。
【0024】
上記の側面によれば、吹付対象の形状に応じた適切な吹付ラインピッチ及び吹付点ピッチが吹付パターンに含められるので、吹付対象ごとの吹付材の吹き付けを好適に実施できる。
【0025】
第10の側面に係る吹付制御装置では、第9の側面に係る吹付制御装置において、吹付制御データ生成部は、予め設定された吹付対象に応じた吹付材の必要付着量、及び、吹付対象の形状に基づいて、吹付ラインピッチの補正値、及び、吹付ライン上へ吹付材を吹き付けする時間である吹付速さを算出し、吹付制御データに含ませることとしてもよい。
【0026】
上記の側面によれば、必要付着量及び吹付対象の形状に応じた吹付ラインピッチの補正値及び吹付速さが吹付制御データに含められるので、吹付対象の現況に応じた好適な吹付材の吹き付けを実施できる。
【0027】
本開示の一側面に係る吹付システムは、少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける吹付装置と、建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得可能なセンサと、第1~10のいずれか一つの側面に係る吹付制御装置と、を含み、3次元形状データ取得部は、センサから前記3次元形状データを取得し、出力部は、吹付制御データを前記吹付装置に送出する。
【0028】
上記の側面によれば、センサにより建築構造物の表面形状を表す3次元形状データが取得され、取得された3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象である梁に関する梁形状データが算出されるので、吹付対象の現況が把握される。梁形状データにより表される梁、梁の部分及び梁の面のうちの所望の部分を吹付対象として指定する吹付対象情報が受け付けられるので、吹付材を吹き付ける箇所を容易に設定できる。予め設定された吹付対象の形状に応じた吹付パターンの中から、指定された吹付対象の形状に応じた好適な吹付パターンが選択され、選択された吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データが生成及び出力される。そして、出力された吹付制御データが吹付装置に提供されるので、吹付装置が好適に制御され、建築構造物への吹付材の吹き付けが容易に実施できる。
【発明の効果】
【0029】
本開示の一側面によれば、施工対象の現況に則した吹付装置を制御するためのデータを、多くの手間を要することなく容易に得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る吹付システムの装置構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2(a)は、センサにより吹付対象の3次元形状データの取得時の吹付装置の概観の例を示す図である。
図2(b)は、吹付材の吹き付け時の吹付装置の概観の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る吹付制御装置の機能的構成を示すブロック図である。
【
図4】吹付制御装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】
図5(a)は、センサにより取得された3次元形状データに基づいて算出された梁形状データの例を示す図である。
図5(b)は、梁形状データの一例であって、梁のウェブ及びフランジ面の高さ及び寸法が表された梁形状データの例を示す図である。
【
図6】
図6(a)は、梁の一部に構成されたスチフナを模式的に示す図である。
図6(b)は、梁の一部に構成されたスリーブを模式的に示す図である。
【
図7】
図7(a)は、吹付材の吹き付けの対象である大梁を模式的に示す図である。
図7(b)は、大梁の断面を示す、梁の各面を説明するための図である。
【
図8】
図8(a)は、4本の大梁からなる吹付対象に対する吹付開始点の指定及び設定された吹付順の例を示す図である。
図8(b)は、梁に対する吹付開始点及び吹付終了点の指定の例を示す図である。
【
図9】吹付対象として指定された1本の大梁に対して設定された吹付順、及び、吹付装置による吹付材を吹き付ける動作の例を示す図である。
【
図10】吹付対象として指定された2本の大梁に対して、設定された吹付順に従った吹付装置による吹付材を吹き付ける動作の例を示す図である。
【
図11】予め設定された吹付パターンの例を示す図である。
【
図12】吹付制御装置において実施される吹付制御方法の処理内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る吹付システムの装置構成を示すブロック図である。吹付システム1は、吹付制御装置10を含んで構成される、吹付システム1は、センサSE及び吹付装置20を含みうる。吹付装置20は、少なくとも梁を含む建築構造物に吹付材を吹き付ける装置である。本実施形態の吹付装置20は、鉄骨造(S造)及びCFT造等の架構に耐火被覆を吹付材として吹き付ける。なお、本実施形態では、吹付装置20が耐火被覆を吹き付ける装置である場合を説明するが、吹付装置20は、コンクリート吹き付け及び塗装吹き付けを行う装置であってもよい。
【0033】
吹付制御装置10は、ロボットとして構成されうる吹付装置20を制御するための吹付制御データを生成する装置である。吹付制御装置10は、センサSE及び吹付装置20と情報を有線または無線により送受信可能に構成されている。
【0034】
図2は、吹付装置20の概観を模式的に示す図である。
図2(a)は、センサSEにより吹付対象の3次元形状データの取得時の吹付装置20の概観の例を示す図である。
図2(b)は、吹付材の吹き付け時の吹付装置20の概観の例を示す図である。
【0035】
図2(a)に示されるように、吹付装置20は、下部走行部21及び上部可動部22を備える。下部走行部21は、LiDAR(Light Detection and Ranging)及びSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)といった周知の機構及び技術を備える。これらの機構及び技術により、周辺環境の走査、周辺に存在する対象物までの測距、自位置の推定等を行うことができるので、吹付装置20は、自律移動が可能である。
【0036】
上部可動部22は、上昇ポール23により、下部走行部21に対して上昇可能に構成されている。上昇ポール23は、例えば水圧により伸縮可能に構成されている。吹付装置20は、吹付制御データに基づく制御に基づいて、上部可動部22を上昇ポールの伸縮により上昇又は下降させる。
【0037】
センサSEは、例えば上部可動部22の一部に備えられ、例えば3次元レーザスキャナにより構成されている。センサSEは、吹付材の吹き付けの対象である建築構造物に放射状にレーザを照射することにより、建築構造物の表面形状の3次元座標を取得できる。具体的には、センサSEは、レーザを照射された対象物表面からの反射に基づいて、対象物表面上の各点の方向及び距離を検出し、吹付装置20が存在する空間に設定された3次元座標系における各点の座標を検出できる。従って、対象物の表面形状は、対象物表面上の各点の点群として把握される。
【0038】
なお、
図2に示される例では、吹付制御装置10が吹付装置20に備えられており、吹付装置20が一体で吹付システム1を構成する。
【0039】
図2(b)に示されるように、上部可動部22には、吹付ノズルNZが設けられている。吹付装置20は、吹付制御データに基づく制御に基づいて、吹付ノズルNZの位置及び向きを制御することにより、所望の吹付点に吹付材を吹き付ける。
【0040】
図3は、本実施形態に係る吹付制御装置10の機能的構成を示すブロック図である。吹付制御装置10は、プロセッサ101を備えるコンピュータにより構成される。本実施形態の吹付制御装置10は、機能的には、3次元形状データ取得部11、梁形状算出部12、対象指定受付部13、吹付順受付部14、吹付パターン判定部15、吹付制御データ生成部16及び出力部17を備える。これらの機能部については、後に詳述する。
【0041】
また、吹付制御装置10の吹付パターン判定部15は、吹付パターン記憶部19といった記憶手段にアクセス可能に構成されている。吹付パターン記憶部19は、
図3に示されるように、吹付制御装置10に備えられることとしてもよいし、吹付制御装置10からのアクセスが可能に設けられた外部の記憶手段として構成されてもよい。
【0042】
図4は、吹付制御装置10のハードウェア構成図である。吹付制御装置10は、物理的には、
図4に示すように、プロセッサ101、RAM及びROMといったメモリにより構成される主記憶装置102、ハードディスク等で構成される補助記憶装置103、通信制御装置104などを含むコンピュータシステムとして構成されている。吹付制御装置10は、入力デバイスであるキーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置105及びディスプレイ等の出力装置106をさらに含むこととしてもよい。
【0043】
プロセッサ101は、オペレーティングシステムおよびアプリケーションプログラムを実行する演算装置である。プロセッサの例としてCPU(Central Processing Unit)およびGPU(Graphics Processing Unit)が挙げられるが、プロセッサ101の種類はこれらに限定されない。例えば、プロセッサ101はセンサおよび専用回路の組合せでもよい。専用回路はFPGA(Field-Programmable Gate Array)のようなプログラム可能な回路でもよいし、他の種類の回路でもよい。
【0044】
主記憶装置102は、吹付制御装置10を実現させるためのプログラム、プロセッサ101から出力された演算結果などを記憶する装置である。主記憶装置102は例えばROM(Read Only Memory)およびRAM(Random Access Memory)のうちの少なくとも一つにより構成される。
【0045】
補助記憶装置103は、一般に主記憶装置102よりも大量のデータを記憶することが可能な装置である。補助記憶装置103は例えばハードディスク、フラッシュメモリなどの不揮発性記憶媒体によって構成される。補助記憶装置103は、コンピュータを吹付制御装置10として機能させるためのプログラムP1(吹付制御プログラム)と各種のデータとを記憶する。また、吹付パターン記憶部19が吹付制御装置10に含まれる場合には、吹付パターン記憶部19は、主記憶装置102、補助記憶装置103及びその他の記憶素子のいずれかに構成されてもよい。
【0046】
通信制御装置104は、通信ネットワークを介して他のコンピュータ及び装置等との間でデータ通信を実行する装置である。通信制御装置104は例えばネットワークカードまたは無線通信モジュールにより構成される。
【0047】
図3に示した各機能部は、
図4に示すプロセッサ101、主記憶装置102等のハードウェア上にプログラムP1を読み込ませてプロセッサ101にそのプログラムP1を実行させることにより実現される。プログラムP1は、吹付制御装置10の各機能要素を実現するためのコードを含む。プロセッサ101は、プログラムP1に従って通信制御装置104等を動作させるとともに、主記憶装置102及び補助記憶装置103におけるデータの読み出し及び書き込みを実行する。処理に必要なデータ及びデータベースは主記憶装置102及び補助記憶装置103内に格納される。なお、本実施形態では、各機能部11~17が、吹付制御装置10に構成されることとしているが、複数のコンピュータに分散して構成されることとしてもよい。
【0048】
プログラムP1は、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に固定的に記録された上で提供されてもよい。あるいは、プログラムP1は、搬送波に重畳されたデータ信号として通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0049】
再び
図3を参照して、吹付制御装置10の機能部を説明する。3次元形状データ取得部11は、センサSEにより取得された建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する。前述のとおり、センサSEは、一例として3次元レーザスキャナにより構成されるので、3次元形状データ取得部11は、吹付材の吹き付けの対象である建築構造物の表面形状を構成する点群の3次元座標を取得する。
【0050】
梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象として、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する。
図5は、梁形状データの例を示す図であって、
図5(a)は、センサSEにより取得された3次元形状データに基づいて算出された梁形状データの例を示す図である。
【0051】
梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象としての梁b及び梁bの両端を支持する柱pの形状を抽出する。なお、
図5に示される梁bは、両端が柱pにより支持されていることから、大梁と称される。また、両端が梁に支持される梁は、小梁と称される。なお、
図5では、梁bが大梁である場合を例示しているが、以下に説明する梁形状算出処理は、梁bが小梁である場合にも適用されうる。さらに、梁形状算出処理は、梁bが孫梁である場合にも適用されうる。孫梁は、両端のうちの少なくとも一端が小梁に支持される梁である。3次元形状データからの所望の対象物の形状の抽出は、例えば、周知のグループフィッティングによるオブジェクト検出技術により行われてもよいし、梁及び柱等の形状を予め学習させた機械学習モデルに3次元形状データを入力してその出力を得ることにより行われてもよい。
【0052】
また、梁形状算出部12は、柱pの中心座標pl1,pl2、柱pの断面形状の各辺の寸法(d11,d12),(d21,d22)を3次元形状データに基づいて取得する。更に、梁形状算出部12は、梁bの幅W、高さH、厚さB、フランジ厚さt2、中心座標ce、及び方向ベクトルdvを3次元形状データに基づいて取得する。更に、梁形状算出部12は、梁bの4隅の端点の座標を3次元形状データに基づいて取得してもよく、例えば、左上端点座標(x1’,y1’,z1’)及び右下端点座標(x2’,y2’,z2’)を取得してもよい。
【0053】
図5(b)は、梁形状データの一例であって、梁bのウェブ及びフランジ面の高さ及び寸法が表された梁形状データの例を示す図である。梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、梁bの上端高さHc及び下端高さHbbを取得し、更にフランジ厚さt2から、ウェブ上端高さHlbu、ウェブ下端高さHlblを取得する。更に、梁形状算出部12は、梁bの高さHから上部及び下部に設けられたフランジのフランジ厚さt2を減ずることにより、ウェブ上端から下端までの高さHwを取得する。
【0054】
図6は、梁に付随する部材の例を示す図であって、
図6(a)は、梁の一部に構成されたスチフナを模式的に示す図である。
図6(b)は、梁の一部に構成されたスリーブを模式的に示す図である。
【0055】
図6(a)に示されるように、スチフナstは、ウェブの座屈を防止するために、ウェブ面、上フランジ下面及び下フランジ上面に垂直に設けられたプレートである。梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、梁bに構成されたスチフナstの形状を取得する。また、梁形状算出部12は、スチフナstの中心座標及びスチフナの形状を表す各部のサイズを、3次元形状データに基づいて取得してもよい。
【0056】
図6(b)に示されるように、スリーブslは、梁bに配管及びケーブル等を通すために設けられた開口である。梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、梁bに構成されたスリーブslの形状を取得する。また、梁形状算出部12は、スリーブslの中心座標及び半径を、3次元形状データに基づいて取得してもよい。
【0057】
再び
図3を参照して、対象指定受付部13は、梁形状データにより示される梁b、梁bの部分及び梁bの面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける。
【0058】
具体的には、対象指定受付部13は、平面方形状の4角に位置する柱の間に配置された梁である大梁のうちの4本の大梁、4本の大梁のうちの1~3本の大梁及び大梁の部分の少なくともいずれか一つを吹付対象として指定する吹付対象情報を受け付けてもよい。対象指定受付部13は、例えば入力装置105を介した指定入力に基づいて吹付対象情報を受け付けてもよいし、吹付対象が示された情報の受信により吹付対象情報を受け付けてもよい。また、対象指定受付部13は、小梁を吹付対象として含む吹付対象情報を受け付けてもよい。また、対象指定受付部13は、孫梁を吹付対象として含む吹付対象情報を受け付けてもよい。
【0059】
図7は、吹付の対象としての梁を示す図であって、
図7(a)は、吹付材の吹き付けの対象である梁を模式的に示す上面図である。
図7(a)に示されるように、吹付材の吹付対象としての建築構造物の一例は、4本の柱p1~p4、及び、両端を柱pにより支持される大梁である梁b1~b4により構成される。そして、梁b1~b4のそれぞれにおける、スチフナst及びスリーブslを含む吹付面t1~t4が、吹付材の吹き付けの対象となり得る。吹付面は、吹付材が吹き付けられる面である。
【0060】
対象指定受付部13は、吹付面t1~t4のうちの全ての吹付面を吹付対象として指定する吹付対象情報を受け付けてもよい。また、対象指定受付部13は、吹付面t1~t4のうちの、1~3本の梁の吹付面を吹付対象として指定する吹付対象情報を受け付けてもよい。さらに、対象指定受付部13は、吹付面t1~t4のうちのいずれかの吹付面の一部または複数の部分を吹付対象として指定する吹付対象情報を受け付けてもよい。なお、吹付面の一部を吹付対象とする指定は、後述されるように、吹付開始点及び吹付終了点の指定により実現されてもよい。このように、吹付対象情報が受け付けられることにより、梁形状データにより示される大梁及び大梁の部分のうちの所望の大梁または部分を吹付対象として容易に指定できる。
【0061】
図7(b)は、梁の断面を示す、梁の各面を説明するための図である。
図7(b)に示されるように、H形鋼により構成される梁bは、吹付材の吹き付けの対象となり得る面として、ウェブwb、上フランジ下面fuu、下フランジ上面flt及び下フランジ下面fluを有する。なお、本実施形態では、ウェブwb、上フランジ下面fuu、下フランジ上面fltを一括してウェブ面部WBと称する。またフランジ端部は、隣接する面の一部として扱われることとしてもよい。
【0062】
対象指定受付部13は、H形鋼により構成される梁bのうちの、ウェブ面部WB又は下フランジ下面fluを吹付対象とする吹付対象情報を受け付けてもよい。このように吹付対象情報が受け付けられることにより、梁形状データにより示される梁の各面のうちの所望の面を吹付対象として容易に指定できる。
【0063】
吹付順受付部14は、吹付対象のうちの、吹き付けを開始する点である吹付開始点の指定を受け付ける。吹付開始点の指定が受け付けられると、吹付制御データ生成部16において、吹付開始点を吹付材の吹き付けの開始位置として、全ての吹付対象に対する吹き付けを完了させるまでの、吹付対象ごとの吹付材を吹き付ける順である吹付順が設定される。
【0064】
図8(a)は、4本の大梁からなる吹付対象に対する吹付開始点の指定及び設定された吹付順の例を示す図である。
図8(a)に示される例では、吹付順受付部14は、吹付対象として指定された4本の梁b1~b4のうちの、梁b1の右端部を吹付開始点spとする指定を受け付ける。この場合には、梁b1の右端部を吹き付けの開始位置として、梁b1、梁b2、梁b3、梁b4の順に吹付材を吹き付ける吹付順so11~so14が設定される。
【0065】
また、吹付順受付部14は、吹付対象のうちの、吹き付けを終了する点である吹付終了点の指定を受け付けてもよい。吹付開始点及び吹付終了点の指定が受け付けられると、吹付制御データ生成部16において、吹付開始点から吹付終了点に至る吹付対象の順が吹付順として設定される。
【0066】
図8(b)は、梁に対する吹付開始点及び吹付終了点の指定及び設定された吹付順の例を示す図である。
図8(b)に示される例では、吹付順受付部14は、梁bのうちの2点をそれぞれ吹付開始点sp及び吹付終了点epとする指定を受け付ける。この場合には、吹付制御データ生成部16において、吹付開始点spから吹付終了点epに至る順に吹付材を吹き付ける吹付順so2が設定される。このように、吹付開始点sp及び吹付終了点epが指定されることにより、実質的に、梁bの部分を吹付対象とすることができる。
【0067】
図9は、吹付対象として指定された1本の大梁に対して設定された吹付順、及び、吹付装置20による吹付材を吹き付ける動作の例を示す図である。
図9では、柱p11,p12に両端を支持される梁b11の右端部が吹付開始点spとして指定された場合の、吹付順の詳細な例が示されている。梁b11は、スリーブsl11,sl12及びスチフナst11を有する。この場合には、吹付順so3は、梁b11の右端部のウェブ面部を吹き付けの開始位置として、右端部からスリーブsl11,スチフナst11及びスリーブsl12が構成された部分を介して左端部に至り、その後に、左端部の下フランジ下面から右端部の下フランジ下面に至るように設定される。
【0068】
また、吹付順受付部14は、梁bを構成する面または部分ごとの、吹付材を吹き付ける順の指定を受け付けてもよい。梁bの面または部分ごとの吹付順の指定が受け付けられた場合には、吹付制御データ生成部16において、その指定に応じた吹付順が設定される。
【0069】
図10は、吹付対象として指定された2本の大梁に対する吹付順の設定及び設定された吹付順に従った吹付装置による吹付材を吹き付ける動作の例を示す図である。
図10では、柱p21,p22に両端を支持される梁b21、柱p22,p23に両端を支持される梁b22のうちの、梁b21の右端部が吹付開始点spとする指定が受け付けられ、且つ、梁b21のウェブ面部、梁b22のウェブ面部、梁b22の下フランジ下面、梁b21の下フランジ下面の順を吹付順とする指定が受け付けられた場合の例が示されている。
【0070】
この場合には、吹付順so4は、吹付制御データ生成部16において、梁b21の右端部のウェブ面部を吹き付けの開始位置として、梁b21の左端部のウェブ面部に至り、引き続いて、梁b22の右端部のウェブ面部から梁b22の左端部のウェブ面部まで、梁b22の左端部の下フランジ下面から梁b22の右端部の下フランジ下面まで、そして、梁b21の左端部の下フランジ下面から梁b21の右端部の下フランジ下面に至るように設定される。
【0071】
また、吹付順の設定のその他の例として、例えば、
図8(a)に示される4本の梁b1~b4が吹付対象として指定されている場合に、梁b1のウェブ面部、梁b2のウェブ面部、梁b3のウェブ面部、梁b4のウェブ面部、梁b4の下フランジ下面、梁b3の下フランジ下面、梁b2の下フランジ下面、梁b1の下フランジ下面の順に吹付順が設定されてもよい。また、吹付対象として指定された梁bにおける、ウェブ面部及び下フランジ下面のうちの任意の面を吹付対象及び吹付順から除外する指定が受け付けられてもよい。
【0072】
このように、梁bを構成する面または部分ごとの吹付材を吹き付ける順の指定が受け付けられ、指定された順に従って吹付順が設定されるので、所望の手順により吹付対象の梁の面及び部分に対する吹付材の吹付を実施できる。
【0073】
なお、吹付順受付部14は、例えば入力装置105を介した指定入力に基づいて吹付開始点、吹付終了点及び吹付順の指定を受け付けてもよいし、吹付開始点、吹付終了点及び吹付順が示された情報を受信してもよい。
【0074】
再び
図3を参照して、吹付パターン判定部15は、吹付対象情報における吹付対象の形状に応じて、梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する。吹付パターンは、吹付対象における吹付材を吹き付ける目標とする点である吹付点が、吹き付ける順に沿って並べられた吹付ラインにより構成されている。
【0075】
本実施形態では、吹付パターン判定部15は、吹付パターン記憶部19に予め記憶されている吹付パターンを参照する。
図11は、吹付パターン記憶部19に記憶されている吹付パターンの例を示す図である。
図11に例示されるように、吹付パターン記憶部19は、それぞれが吹付対象である梁の形状に応じた4種類の吹付パターンpt1~pt4を記憶している。
【0076】
吹付パターンpt1は、ウェブ面部の吹付パターンであって、梁のウェブ、上フランジ下面及び下フランジ上面のそれぞれの吹付パターンを含む。上述のとおり、各吹付パターンは、吹付点の配列である吹付ラインlnを有する。吹付パターンpt2は、スチフナ部の吹付パターンである。スチフナ部は、スチフナ及び当該スチフナが構成されるウェブ面部を含む、梁の部分である。吹付パターンpt2は、スチフナ側面に対する吹き付けのための吹付ラインlnを含む。
【0077】
吹付パターンpt3は、スリーブ部の吹付パターンである。スリーブ部は、スリーブ及び当該スリーブが構成されるウェブ面部を含む、梁の部分である。吹付パターンpt3は、ウェブにおいてスリーブの開口を避けるように設定された吹付ラインlnを有する。吹付パターンpt4は、下フランジ下面部の吹付パターンであって、下フランジ下面の全面に吹き付けを行う場合及び下フランジ下面の半面に吹き付けを行う場合のそれぞれの場合の吹付ラインlnにより構成される吹付パターンを含む。
【0078】
各吹付パターンpt1~pt4は、吹付ラインlnの間隔である吹付ラインピッチ、及び、吹付ラインに沿った吹付点の間隔である吹付点ピッチの情報を含む。吹付対象の形状に応じた適切な吹付ラインピッチ及び吹付点ピッチが吹付パターンに含められることにより、吹付対象ごとの吹付材の吹き付けを好適に実施できる。
【0079】
吹付パターン判定部15は、吹付対象情報に示される吹付対象の梁形状データを参照することにより、吹付対象である梁の面及び部分ごとに、その形状に応じた吹付パターンを、吹付パターンpt1~pt4の中から選択し、梁の面及び部分ごとに選択した吹付パターンを関連付ける。
【0080】
再び
図3を参照して、吹付制御データ生成部16は、吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する。具体的には、吹付制御データ生成部16は、吹付パターン判定部15により吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報からなる吹付制御データを生成する。
【0081】
また、吹付制御データ生成部16は、吹付対象情報に示される吹付対象に対して吹付順受付部14により設定された、吹付開始点sp、吹付終了点ep及び吹付順を吹付制御データに含ませてもよい。前述のとおり、吹付順は、吹付対象である梁bの部分及び面ごとに任意に設定された吹付材の吹き付けの順である。
【0082】
また、吹付制御データ生成部16は、吹付対象及び吹付装置が存在する空間に設定された座標系における、吹付ラインlnに含まれる各吹付点の座標の集合からなる吹付点座標データを算出する。具体的には、吹付制御データ生成部16は、吹付対象の梁形状データに基づいて、吹付対象の梁の形状及び座標を取得できるので、吹付対象の各面及び各部に対して吹付パターン判定部15により関連付けられた吹付パターンの各吹付点に対応する座標を算出することにより、吹付点座標データを生成する。
【0083】
吹付制御データ生成部16は、算出した吹付点座標データを吹付制御データに含ませる。吹付装置20は、吹付制御データに含まれる吹付点座標データの各吹付点の座標に基づいて、所望の吹付点に対する吹付材の吹き付けを実施できる。即ち、吹付装置20は、SLAM等の技術により自位置の制御が可能であり、ノズルの位置及び向き等の制御により、自位置に対する相対位置としての吹付点への吹付材の吹き付けを実施できる。そして、吹付装置20は、吹付点座標データの参照により取得した吹付点の座標に基づいて、自位置、ノズルの位置及び向きの制御を行うことにより、座標空間中の吹付点への吹付材の吹き付けを実現させる。また、吹付制御データに吹付装置20の自位置、ノズルの位置及び向きを制御するデータが含められてもよい。
【0084】
また、吹付制御データ生成部16は、予め設定された吹付対象に応じた吹付材の必要付着量、及び、吹付対象の形状に基づいて、吹付ラインピッチの補正値、及び、吹付ライン上へ吹付材を吹き付けする時間である吹付速さを算出し、吹付制御データに含ませてもよい。具体的には、吹付制御データ生成部16は、必要吹付量及び吹付対象の形状に応じて予め対応関係が設定された加減算値又は係数を吹付ラインピッチの補正値として算出してもよい。また、吹付制御データ生成部16は、必要吹付量及び吹付対象に形状に応じて予め対応関係が表された算出式により吹付速さを算出してもよい。
【0085】
必要付着量及び吹付対象の形状に応じた吹付ラインピッチの補正値及び吹付速さが吹付制御データに含められることにより、吹付対象の現況に応じた好適な吹付材の吹き付けを実施できる。なお、吹付ラインピッチの補正値及び吹付速さの算出に、吹付装置への吹付材平均供給量、又は吹付材供給量の変動値を含めてもよい。
【0086】
出力部17は、吹付制御データ生成部16により生成された吹付制御データを出力する。具体的には、出力部17は、吹付制御データを吹付装置20に出力する。また、出力部17は、吹付制御データを所定の記憶手段に記憶させてもよい。
【0087】
次に、
図12を参照して、本実施形態の吹付制御装置10の動作について説明する。
図12は、吹付制御装置10において実施される吹付制御方法の処理内容を示すフローチャートである。
【0088】
ステップS1において、3次元形状データ取得部11は、センサSEにより取得された建築構造物の表面形状を表す3次元形状データを取得する。
【0089】
ステップS2において、梁形状算出部12は、3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象として、少なくとも梁の位置及び形状を示す梁形状データを算出する。
【0090】
ステップS3において、対象指定受付部13は、梁形状データにより示される梁b、梁bの部分及び梁bの面のうちの少なくとも一つを吹付対象として指定することを示す吹付対象情報を受け付ける。
【0091】
ステップS4において、吹付パターン判定部15は、吹付対象情報における吹付対象の形状に応じて、梁の面及び部分ごとに吹付パターンを判定する。なお、ステップS4の処理と順不同に、吹付順受付部14は、吹付開始点sp、吹付終了点ep、及び、梁bを構成する面または部分ごとの吹付順の指定を受け付けてもよい。
【0092】
ステップS5において、吹付制御データ生成部16は、吹付対象の梁の面及び部分ごとに吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データを生成する。吹付制御データ生成部16は、吹付開始点sp、吹付終了点ep及び吹付順の情報を吹付制御データに含ませてもよい。
【0093】
ステップS6において、出力部17は、ステップS5において吹付制御データ生成部16により生成された吹付制御データを出力する。
【0094】
以上説明した本実施形態の吹付システム1、吹付制御装置10、吹付制御方法及びプログラムP1によれば、センサにより取得された建築構造物の表面形状を表す3次元形状データに基づいて、吹付材の吹き付けの対象である梁に関する梁形状データが算出されるので、吹付対象の現況が把握される。梁形状データにより表される梁、梁の部分及び梁の面のうちの所望の部分を吹付対象として指定する吹付対象情報が受け付けられるので、吹付材を吹き付ける箇所を容易に設定できる。そして、予め設定された吹付対象の形状に応じた吹付パターンの中から、指定された吹付対象の形状に応じた好適な吹付パターンが選択され、選択された吹付パターンが関連付けられた吹付対象情報を含む吹付制御データが生成及び出力されるので、吹付装置の制御のための好適なデータが、少ない手間で容易に得られる。
【0095】
以上、本発明をその実施形態に基づいて詳細に説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…吹付システム、10…吹付制御装置、11…次元形状データ取得部、12…梁形状算出部、13…対象指定受付部、14…吹付順受付部、15…吹付パターン判定部、16…吹付制御データ生成部、17…出力部、19…吹付パターン記憶部、20…吹付装置、P1…吹付制御プログラム、SE…センサ。