(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081899
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/00 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
B60R3/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195444
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日比 和宏
(72)【発明者】
【氏名】門田 豪郎
【テーマコード(参考)】
3D022
【Fターム(参考)】
3D022AA02
3D022AC01
3D022AD02
3D022AE07
3D022AE11
3D022AE15
(57)【要約】
【課題】乗車時にステップに対して格納方向に力を加えても、ステップが格納方向に動かないようにする。
【解決手段】車両ボディ10に対してドア16を開方向に回動させる際に、ステップ板33をドア16の下側の格納位置から車両外側に展開させる車両のステップ装置30であって、ドア16に設けられたドア側ブラケット41と、ドア側ブラケット41の回動自由端側の円弧運動をステップ板33の展開運動、あるいは格納運動に変換する力変換リンク機構40とを有しており、力変換リンク機構40には、展開状態のステップ板33に対して格納方向の外力が加わったときに、ステップ板33の格納運動を禁止する機構が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ボディに対してドアを開方向に回動させる際に、ステップ板を前記ドアの下側の格納位置から車両外側に展開させる車両のステップ装置であって、
前記ドアに設けられたドア側ブラケットと、
前記ドア側ブラケットの回動自由端側の円弧運動を前記ステップ板の展開運動、あるいは格納運動に変換する力変換リンク機構と、
を有しており、
前記力変換リンク機構には、展開状態の前記ステップ板に対して格納方向の外力が加わったときに、前記ステップ板の格納運動を禁止する機構が設けられている車両のステップ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両のステップ装置であって、
前記力変換リンク機構は、
前記ドア側ブラケットの回動自由端側に連結されている直線状の第1リンクと、
前記車両ボディに回動中心が連結されており、回動自由端である一端側が前記第1リンクに連結されて、同じく回動自由端である他端側が前記ステップ板に連結されている第2リンクと、
を有しており、
前記ドアの回動中心と前記ドア側ブラケットの回動自由端とをむすぶ直線をブラケット回動直線とした場合、前記ドアが全閉位置から所定開度位置まで回動する際は、前記ブラケット回動直線と前記第1リンク間の成す角が180°よりも小さくなり、
前記ドアが前記所定開度位置から全開位置まで回動する際は、前記ブラケット回動直線と第1リンク間の成す角が180°よりも大きくなる車両のステップ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両のステップ装置であって、
前記ドアが全閉位置にあるときは、前記ブラケット回動直線と前記第1リンク間の成す角が直角に近い状態で、前記第1リンクは車両前後方向に延びるように配置されており、
前記ブラケット回動直線のドア開方向の回動に伴い前記成す角が増加して、前記第1リンクが車両後方向に移動する車両のステップ装置。
【請求項4】
請求項3に記載の車両のステップ装置であって、
前記第1リンクが連結される前記第2リンクの一端側と回動中心間の寸法は、前記ステップ板が連結される前記第2リンクの他端側と回動中心間の寸法よりも小さく設定されている車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両ボディに対してドアを開方向に回動させる際に、ステップ板を前記ドアの下側の格納位置から車両外側に展開させる車両のステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の車両のステップ装置に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1のステップ装置は、
図9に示すように、扇形のステップ板102を備えており、そのステップ板102の円周方向における一端部がドア100の下端縁に取付けられている。また、車両ボディ103の床下側には、
図10に示すように、ステップ板102の扇形の円弧に相当する部分をガイドする円弧形のガイドレール105が設けられている。これにより、ドア100を開方向に回動させることで、自動的にステップ板102を車両ボディ103の下から引き出すことが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したステップ板102はドア100に直接的に取付けられているため、ステップ板102が展開している状態で、そのステップ板102に対して格納方向に外力が加わると、ステップ板102がドア100と共に格納方向に動いてしまう。このため、例えば、乗員がステップ板102に足を掛ける際、格納方向に力が加わってしまうと、ステップ板102が格納方向に動くことで、乗員の乗車が不安定になる。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、乗車時にステップに対して格納方向に力を加えても、ステップが格納方向に動かないようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各発明によって解決される。第1の発明は、車両ボディに対してドアを開方向に回動させる際に、ステップ板を前記ドアの下側の格納位置から車両外側に展開させる車両のステップ装置であって、前記ドアに設けられたドア側ブラケットと、前記ドア側ブラケットの回動自由端側の円弧運動を前記ステップ板の展開運動、あるいは格納運動に変換する力変換リンク機構とを有しており、前記力変換リンク機構には、展開状態の前記ステップ板に対して格納方向の外力が加わったときに、前記ステップ板の格納運動を禁止する機構が設けられている。
【0007】
本発明によると、力変換リンク機構には、展開状態の前記ステップ板に対して格納方向の外力が加わったときに、ステップ板の格納運動を禁止する機構が設けられている。このため、例えば、乗員がステップ板に足を掛ける際、格納方向に力が加わっても、ステップ板が格納方向に動くことはない。
【0008】
第2の発明では、力変換リンク機構は、ドア側ブラケットの回動自由端側に連結されている直線状の第1リンクと、車両ボディに回動中心が連結されており、回動自由端である一端側が前記第1リンクに連結されて、同じく回動自由端である他端側が前記ステップ板に連結されている第2リンクとを有しており、ドアの回動中心と前記ドア側ブラケットの回動自由端とをむすぶ直線をブラケット回動直線とした場合、前記ドアが全閉位置から所定開度位置まで回動する際は、前記ブラケット回動直線と前記第1リンク間の成す角が180°よりも小さくなり、前記ドアが前記所定開度位置から全開位置まで回動する際は、前記ブラケット回動直線と第1リンク間の成す角が180°よりも大きくなる。
【0009】
即ち、ドアが所定開度位置と全開位置間にあるときは、ブラケット回動直線と第1リンク間の成す角が180°よりも大きくなる。このため、ドアが所定開度位置よりも開いている状態で、ステップ板に対して格納方向の外力が加わると、その外力が第2リンク、第1リンクを介してドア側ブラケットに対してドアの開方向に加わるようになる。これにより、ドアが閉方向に回動せず、ステップ板の格納運動が禁止される。
【0010】
第3の発明によると、ドアが全閉位置にあるときは、ブラケット回動直線と第1リンク間の成す角が直角に近い状態で、第1リンクは車両前後方向に延びるように配置されており、前記ブラケット回動直線のドア開方向の回動に伴い前記成す角が増加して、前記第1リンクが車両後方向に移動する。このため、第1リンクは、ドア側ブラケットがドア全閉位置から回動を開始する際、即ち、ブラケット回動直線がドア開方向に回動を開始する際に、車両前後方向の変位量が最も大きくなる。これにより、第1リンク、第2リンクを介して展開方向に動くステップ板は、ドア側ブラケットがドア全閉位置から回動を開始する際、最も展開方向の変位量が大きくなる。したがって、ドアが全閉位置から少ない量だけ回動してもステップ板の展開方向の変位量を大きくできる。
【0011】
第4の発明によると、第1リンクが連結される第2リンクの一端側と回動中心間の寸法は、ステップ板が連結される前記第2リンクの他端側と回動中心間の寸法よりも小さく設定されている。このため、第2リンクにより第1リンクの変位量を増幅してステップ板に伝達できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、乗車時にステップに対して格納方向に力を加えても、ステップが格納方向に動くことはなく、乗員の乗車安定性を図れるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の実施形態1に係るステップ装置を備える車両のドア開口部を室内側から見た模式斜視図である。
【
図2】前記車両の床下部を表す縦断面図(
図3のII-II矢視断面図)である。
【
図3】前記ステップ装置の一部破断平面図(ドア全閉位置)である。
【
図4】ブラケット回動直線の回動角度と第1リンクの車両前後方向における変位量との関係を表す図面である。
【
図5】前記ステップ装置の動作を表す一部破断平面図(ドアの開き始め位置)である。
【
図6】前記ステップ装置の動作を表す一部破断平面図である(ドアの半開近傍位置)。
【
図7】前記ステップ装置の動作を表す一部破断平面図である(ドアの所定開度位置(ブラケット回動直線と第1リンクとのなす角が180°))。
【
図8】前記ステップ装置の動作を表す一部破断平面図である(ドア全開位置)。
【
図9】従来の車両のステップ装置を表す模式斜視図である。
【
図10】前記ステップ装置のステップ板等を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施形態1〕
以下、
図1~
図8に基づいて本発明の実施形態1に係る車両のステップ装置について説明する。本実施形態に係る車両のステップ装置は、例えば、車両ボディ10のフロントドア開口部11の下側に設けられた可動ステップ装置30である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、本実施形態に係る可動ステップ装置30を備える車両の前後左右、及び上下に対応している。
【0015】
<車両ボディ10の概要について>
車両ボディ10の側面には、
図1に示すように、前部座席に対応する位置にフロントドア開口部11が設けられている。フロントドア開口部11の下縁部には、車両前後方向に延びる筒状のフレームであるロッカー20が設けられている。また、フロントドア開口部11の前側には、車室の前側支柱であるフロントピラー12がロッカー20上に立設されている。そして、前記フロントピラー12の後側面には、上下のドアヒンジ14を介してフロントドア16が水平回動可能な状態で連結されている。このため、ドアヒンジ14のヒンジ軸(図示省略)の軸心が、
図3、
図4等に示すように、フロントドア16のドア回動中心C0となる。即ち、フロントドア16がドア回動中心C0を中心にして水平回動することで、車両ボディ10のフロントドア開口部11が開閉される。
【0016】
フロントドア開口部11の下縁部にあるロッカー20は、
図2の縦断面図に示すように、車両前後方向に延びる断面略U字形のロッカーインナー21とロッカーアウター22とが車幅方向(左右方向)から合わせられることで筒状に形成されている。また、ロッカー20内には、内部空間を車幅方向に仕切ることでそのロッカー20を補強するリインフォース25が設けられている。また、ロッカーインナー21の上面には、車両ボディ10のフロアパネル15の端縁15fが固定されている。さらに、ロッカーアウター22の下部側面には、
図1、
図2に示すように、フロントドア開口部11の位置に帯状の固定ステップ27が水平に取付けられている。固定ステップ27は、
図2に示すように、フロントドア16が閉じられた状態で、そのフロントドア16の下端部に設けられたガーニッシュ16zに覆われる。また、固定ステップ27、及びロッカー20の下側には、可動ステップ装置30のステップ板33が格納されている。なお、固定ステップ27、及びガーニッシュ16z等は省略することも可能である。
【0017】
<可動ステップ装置30の概要について>
可動ステップ装置30は、
図1、
図2に示すように、車両ボディ10のロッカー20の下側の床下部に設けられている。可動ステップ装置30は、フロントドア16の回動に連動してステップ板33を固定ステップ27、及びロッカー20の下側から車幅方向外側に展開させ、あるいはステップ板33を固定ステップ27等の下側に格納する装置である。可動ステップ装置30は、
図3の平面図に示すように、フロントドア16に設けられたドア側ブラケット41と、力変換リンク機構40と、ステップ板33と、四節リンク機構50とを備えている。
【0018】
<ドア側ブラケット41について>
ドア側ブラケット41は、
図3等に示すように、フロントドア16の前部下面に固定されており、フロントドア16の前部下面から車幅方向内側に一定寸法だけ突出している。ドア側ブラケット41の突出端は、フロントドア16が開方向、あるいは閉方向に水平回動する際に、ドア回動中心C0を中心にして円弧運動する。ここで、フロントドア16のドア回動中心C0とドア側ブラケット41の突出端(回動自由端側)とをむすぶ仮想直線(
図3の一点鎖線参照)を、以後、ブラケット回動直線Rと呼ぶことにする。
【0019】
<ステップ板33、及び四節リンク機構50について>
ステップ板33は、乗員が車両に乗車する際、あるいは降車する際に足を掛ける部分であり、
図1~
図3等に示すように、前後に長い略角形の平板状に形成されている。ステップ板33は、四節リンク機構50によって下方から支持されている。四節リンク機構50は、
図3に示すように、ステップ板33をロッカー20と平行に保持した状態で、固定ステップ27、及びロッカー20の下側の格納位置(
図2、
図3の実線位置参照)と車幅方向外側の展開位置(
図2、
図3の二点鎖線参照)間で水平移動可能なように支持する機構である。
【0020】
四節リンク機構50は、前側リンク52と後側リンク55とを備えており、前側リンク52と後側リンク55との回動中心側端部が回動中心軸52c,55cによりロッカー20の下面に固定されたブラケット(図示省略)に水平回動可能な状態で連結されている。また、前側リンク52と後側リンク55との回動自由端側端部が連結縦軸52j,55jによりステップ板33の下面に水平回動可能な状態で連結されている。
【0021】
<力変換リンク機構40について>
力変換リンク機構40は、ドア側ブラケット41の円弧運動をステップ板33の展開運動、あるいは格納運動に変換するリンク機構であり、
図3等に示すように、第1リンク43と第2リンク45とを備えている。第1リンクの前端側は、第1連結軸J1によって水平回動可能な状態でドア側ブラケット41の回動自由端側に連結されている。ここで、フロントドア16のブラケット回動直線Rは、ドア回動中心C0と第1連結軸J1(ドア側ブラケット41の回動自由端側)とをむすんでいる。
【0022】
第1リンク43は、
図3に示すように、直線状のリンクであり、フロントドア16が全閉位置(
図3の実線参照)にある状態で、ロッカー20に沿って車両前後方向に延びるように配置されている。そして、第1リンク43の後端側が第2リンク45の前端側に第2連結軸J2によって水平回動可能な状態で連結されている。フロントドア16が全閉位置にある状態では、
図4に示すように、ドア回動中心C0と第1連結軸J1とをむすぶブラケット回動直線Rは原位置R0にあり、そのブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θは直角(90°)に近い状態となる。即ち、第1リンク43は、第1連結軸J1(ドア側ブラケット41の回動自由端側)の移動軌跡である円弧Eの接線方向とほぼ同方向に延びるように配置されている。
【0023】
図4に示すように、フロントドア16が全閉位置から開方向に回動すると、ブラケット回動直線Rは原位置R0から右回動する。このとき、ブラケット回動直線Rが一定角度α毎に回動しても、第1連結軸J1の車両前後方向の移動量Lは、フロントドア16の全閉位置近傍(原位置R0の近傍)で大きく、フロントドア16の開度が大きくなるにつれて徐々に小さくなる。前述のように、第1リンク43は車両前後方向に延びるように配置されているため、フロントドア16が全閉位置から開き始める際の第1リンク43の車両前後方向の移動量Lが最も大きくなる。また、フロントドア16の開度が大きくなるにつれて、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θも徐々に大きくなる。
【0024】
第2リンク45は、
図3に示すように、第1リンク43とステップ板33とをつなぐリンクである。第2リンク45は、前側の扁平Z字状の屈曲部45wと、その屈曲部45wの後側に形成された直線状の張り出し部45sとから構成されている。そして、第2リンク45の屈曲部45wの中央部が、
図2、
図3に示すように、回転中心軸C2によってロッカー20の下面に固定された支持ブラケット29に水平回動可能な状態で連結されている。第2リンク45の屈曲部45wの前端部(一方の回動自由端)には、上記したように、第1リンク43の後端部が第2連結軸J2によって水平回動可能な状態で連結されている。また、第2リンク45の張り出し部45sの後端部(他方の回動自由端)には、ステップ板33の前部が第3連結軸J3によって水平回動可能な状態で連結されている。
【0025】
ここで、第2リンク45の屈曲部45wが、
図3に示すように、扁平Z字状に形成されているため、フロントドア16が全閉位置にある状態で、第1リンク43と第2リンク45とを連結する第2連結軸J2は第2リンク45の回転中心軸C2に対して車幅方向内側(右側)に配置されている。また、第2リンク45とステップ板33とを連結する第3連結軸J3は第2リンク45の回転中心軸C2に対して車幅方向外側(左側)に配置されている。このため、フロントドア16が全閉位置から開き始めると、第2リンク45は第1リンク43によって車両後方に押圧されて回転中心軸C2を中心に右回動する。
【0026】
さらに、第2リンク45の回転中心軸C2から第2連結軸J2までの寸法は、第2リンク45の回転中心軸C2から第3連結軸J3までの寸法よりも十分小さな値(1/3以下)に設定されている。このため、第2リンク45の前端部(第2連結軸J2)の円弧運動による移動量に対して、ステップ板33の第3連結軸J3の円弧運動による移動量が3倍以上となる。
【0027】
<可動ステップ装置30の動作について>
フロントドア16が全閉位置にある状態では、
図2、
図3に示すように、ステップ板33は、固定ステップ27、及びロッカー20の下側の格納位置にある。即ち、四節リンク機構50の前側リンク52と後側リンク55とが左回動限位置にあってステップ板33を下方からロッカー20と平行に支持している。また、力変換リンク機構40の第1リンク43が、
図3に示すように、ロッカー20に沿って車両前後方向に延びるように配置されている。また、第2リンク45の屈曲部45wの前端部と張り出し部45sとがロッカー20に沿って車両前後方向に延びている。さらに、ドア回動中心C0と第1連結軸J1(ドア側ブラケット41の回動自由端)とをむすぶブラケット回動直線Rが、
図3、
図4に示すように、原位置R0に保持されている。この状態で、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θは90°に近い状態(90°<θ)になる。なお、
図3では、フロントドア16の全開位置と、そのときのステップ板33等の展開位置とを二点鎖線で表している。
【0028】
フロントドア16が全閉位置から開方向に回動すると、
図5に示すように、フロントドア16の回動に伴ってドア側ブラケット41の回動自由端が第1連結軸J1を介して第1リンク43を車両後方に押圧する。即ち、
図4においてブラケット回動直線Rが原位置R0から右回動を開始することで、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θが増加し、第1リンク43が車両後方に移動を開始する。これにより、
図5に示すように、第2リンク45の前端部が第2連結軸J2を介して第1リンク43に押圧されて、第2リンク45が右回動を開始する。これにより、第2リンク45の後端部と第3連結軸J3を介して連結されているステップ板33がその第2リンク45の右回動に伴って左前方(車幅方向外側前方)に引き出される。このとき、ステップ板33は四節リンク機構50の前側リンク52と後側リンク55とが右回動することでロッカー20に平行な状態で車幅方向外側前方に引き出される。
図5では、フロントドア16の全開位置と、そのときのステップ板33等の展開位置と、ステップ板33等の格納位置を二点鎖線で表している。
【0029】
ここで、ブラケット回動直線Rが原位置R0(フロントドア16の全閉位置)から右回動を開始する際の第1リンク43の車両前後方向の移動量Lが、
図4に示すように、フロントドア16の回動中に最も大きくなる。このため、ブラケット回動直線Rが原位置R0から右回動を開始する際の第2リンク45の右回動量がフロントドア16の回動中に最大になる。さらに、第2リンク45の回転中心軸C2から第2連結軸J2までの寸法は、第2リンク45の回転中心軸C2から第3連結軸J3までの寸法よりも十分小さな値(1/3以下)に設定されている。このため、第2リンク45の前端部(第2連結軸J2)の円弧運動による移動量に対して、ステップ板33の第3連結軸J3の円弧運動による移動量が3倍以上となる。即ち、第1リンク43の移動量Lが第2リンク45によって増幅された状態でステップ板33に伝達されるようになる。したがって、フロントドア16が全閉位置から開き始める際のステップ板33の車幅方向外側前方の引き出し量(展開量)がフロントドア16の回動中に最大となる。
【0030】
そして、フロントドア16の開方向の回動量が増加するにつれて、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θが増加し、
図6に示すように、ステップ板33の車幅方向外側前方の引き出し量(展開量)も増加する。そして、フロントドア16が開方向に回動して、フロントドア16が全開位置近傍の所定開度位置に到達すると、
図7に示すように、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θが180°、即ち、ブラケット回動直線Rと第1リンク43とが同一直線状に保持される。フロントドア16が所定開度位置からさらに開方向に回動すると、
図4、
図8に示すように、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θが180°よりも大きくなり、全開位置でブラケット回動直線Rが右回動限位置Rm(
図4参照)と重なるようになる。この状態で、ステップ板33は展開した状態に保持される(展開位置)。
【0031】
フロントドア16が所定開度位置から全開位置間にある状態で、ステップ板33に対して格納方向に外力が加わると、ステップ板33に連結されている第2リンク45は外力を受けて左回動しようとする。これにより、第2リンク45は、第2連結軸J2を介して第1リンク43を長さ方向(左前方向)に押圧し、第1リンク43は第1連結軸J1を介してドア側ブラケット41の回動自由端を押圧する。ここで、フロントドア16が所定開度位置から全開位置間にある状態では、
図4、
図8に示すように、ブラケット回動直線Rと第1リンク43との成す角θが180°よりも大きいため、ドア側ブラケット41の回動自由端は第1リンク43によりドア開方向に押圧力を受けるようになる。このため、ステップ板33に対して格納方向に外力が加わってもフロントドア16が開状態に保持されて、ステップ板33が格納方向の移動が禁止される。なお、フロントドア16が閉方向に回動する際は、上記した場合と逆方向に力変換リンク機構40、四節リンク機構50が動作することで、ステップ板33は格納位置まで戻される。
【0032】
<本実施形態における用語と本発明の用語との対応>
本実施形態における可動ステップ装置30が本発明における車両のステップ装置に相当し、フロントドア16が本発明におけるドアに相当する。また、第2リンク45の回転中心軸C2が本発明における第2リンクの回動中心に相当する。さらに、第1連結軸J1が本発明におけるドア側ブラケットの回動自由端側に相当する。
【0033】
<本実施形態に係る可動ステップ装置30の長所について>
本実施形態に係る可動ステップ装置30によると、力変換リンク機構40には、展開状態のステップ板33に対して格納方向の外力が加わったときに、ステップ板33の格納運動を禁止する機構が設けられている。このため、例えば、乗員がステップ板33に足を掛ける際、格納方向に力が加わっても、ステップ板33が格納方向に動くことはない。即ち、フロントドア16が所定開度位置と全開位置間にあるときは、ブラケット回動直線Rと第1リンク43間の成す角が180°よりも大きくなる。このため、フロントドア16が所定開度位置よりも開いている状態で、ステップ板33に対して格納方向の外力が加わると、その外力が第2リンク45、第1リンク43を介してドア側ブラケット41に対してフロントドア16の開方向に加わるようになる。これにより、フロントドア16が閉方向に回動せず、ステップ板33の格納方向への移動(格納運動)が禁止される。
【0034】
また、第1リンク43は、ドア側ブラケット41がドア全閉位置から回動を開始する際、即ち、ブラケット回動直線Rがドア開方向に回動を開始する際に、車両前後方向の移動量Lが最も大きくなる。これにより、第1リンク43、第2リンク45を介して展開方向に動くステップ板33は、ドア側ブラケット41がドア全閉位置から回動を開始する際、最も展開方向の変位量が大きくなる。したがって、フロントドア16が全閉位置から少ない量だけ回動してもステップ板33の展開方向の変位量を大きくできる。また、第1リンク43が連結される第2リンク45の一端側(第2連結軸J2)と回転中心軸C2間の寸法は、ステップ板が連結される第2リンク45の他端側(第3連結軸J3)と回転中心軸C2間の寸法よりも小さく設定されている。このため、第2リンク45により第1リンク43の移動量Lを増幅してステップ板33に伝達できる。
【0035】
<変更例>
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、フロントドア16が所定開度位置と全開位置間にあるときに、ブラケット回動直線Rと第1リンク43間の成す角が180°よりも大きくなるようにすることで、格納方向の外力によりステップ板33が移動しないようにする例を示した。しかし、この機構の代わりに、例えば、第2リンク45の回動中心にラチェット機構のラチェット歯車を設け、ドアを閉じる際にラチェット爪をラチェット歯車から外せるような構成でも可能である。これにより、ドアが開いている状態では、ラチェット機構の働きで第2リンク45の戻り方向(全閉位置方向)の回動が禁止され、格納方向の外力が加わってもステップ板33が展開状態に保持される。
【0036】
また、本実施形態では、車両左側のフロントドア16に設けられた可動ステップ装置30について例示したが、車両右側のフロントドア16に本発明に係る可動ステップ装置30を適用することも可能である。また、ドア回動中心C0を車両前側に備えるフロントドア16について可動ステップ装置30を設ける例を示したが、ドア回動中心C0を車両後側に備えるセンタードア、リヤドア等について本発明に係る可動ステップ装置30を適用することも可能である。また、本実施形態では、四節リンク機構50によってステップ板33を展開可能に支持する例を示したが、四節リンク機構50の代わりにガイドレールとスライド部材等とを利用してステップ板33を展開可能に支持する構成でも可能である。
【符号の説明】
【0037】
10・・・・車両ボディ
16・・・・フロントドア(ドア)
30・・・・可動ステップ装置(ステップ装置)
33・・・・ステップ板
40・・・・力変換リンク機構
41・・・・ドア側ブラケット
43・・・・第1リンク
45・・・・第2リンク
C0・・・・ドア回動中心
C2・・・・回転中心軸(第2リンクの回動中心)
J1・・・・第1連結軸(ドア側ブラケットの回動自由端側)
J2・・・・第2連結軸
J3・・・・第3連結軸
L・・・・・移動量(第1リンクの移動量)
R・・・・・ブラケット回動直線
R0・・・・原位置
Rm・・・・右回動限位置
θ・・・・・成す角