(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024008192
(43)【公開日】2024-01-19
(54)【発明の名称】三次元造形物の製造方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20240112BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20240112BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240112BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240112BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/153
B33Y50/00
B33Y10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022109846
(22)【出願日】2022-07-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有田 与希
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213AR12
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL12
4F213WL85
4F213WL96
(57)【要約】
【課題】粉末を造形材料として形成した三次元造形物の表面の不規則なザラザラした感じを緩和し、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成する製造方法、および当該製造方法で形成された三次元造形物を提供する。
【解決手段】三次元造形物10を形成する製造方法は、三次元造形物10の三次元データを受け付ける工程と、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物10の表面となる面を特定する工程と、特定した面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する形状データを三次元データに追加する工程と、形状データを追加した三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物10を形成する工程と、を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法であって、
前記三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、
受け付けた前記三次元データにおいて前記三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、
特定した面に前記所定のパターンを形成する形状データを前記三次元データに追加する工程と、
前記形状データを追加した前記三次元データに基づき、前記造形材料を用いて前記三次元造形物を形成する工程と、を含む、三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項2】
粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法であって、
前記三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、
受け付けた前記三次元データに基づき、前記造形材料を用いて前記三次元造形物を形成する工程と、
受け付けた前記三次元データにおいて前記三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、
特定した面に前記所定のパターンを形成する工程と、を含む、三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項3】
前記立体形状の一辺の長さは、前記造形材料の粒子径以上で、指の直径の1/3以下である、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項4】
前記造形材料の粒子径の情報、およびユーザが選択した立体形状の情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて前記所定のパターンを決定する工程をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項5】
前記所定のパターンは、同じ形状の前記立体形状を繰り返し並べたパターンである、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項6】
前記立体形状は、形状の異なる第1の立体形状と第2の立体形状とを有し、
前記所定のパターンは、前記第1の立体形状および前記第2の立体形状を繰り返し並べたパターンである、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項7】
前記所定のパターンは、前記三次元造形物の表面のすべての面で同じである、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項8】
前記所定のパターンは、前記三次元造形物の表面のうち少なくとも1つの面でパターンが異なる、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項9】
前記立体形状の大きさは、前記造形材料の粒子径の5倍以上~150倍以下である、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項10】
前記三次元造形物を形成する方法は、粉末焼結積層造形法、または前記造形材料に溶融促進剤を加えて加熱する造形法を用いる、請求項1または請求項2に記載の三次元造形物を形成する製造方法。
【請求項11】
粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置で受け付ける三次元データを変換するプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、
受け付けた前記三次元データにおいて前記三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、
特定した面に前記所定のパターンを形成する形状データを前記三次元データに追加するステップと、を含む、プログラム。
【請求項12】
粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置を制御するプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、
受け付けた前記三次元データに基づき、前記造形材料を用いて前記三次元造形物を形成するステップと、を含み、
前記三次元造形物を形成するステップは、
前記三次元データにおいて前記三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、
特定した面に前記所定のパターンを形成するステップと、を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な方式で三次元造形物(以下、単に造形物ともいう)を形成する3Dプリンタが開発されている。具体的に、三次元造形法として、例えば、材料押出堆積法(FDM: Fused Deposition Modeling/FFF: Fused Filament Fabrication)、粉末焼結積層造形法(SLS: Selective Laser Sintering/SLM: Selective Laser Melting)、光造形法(レーザ方式/SLA: Stereo Lithography Apparatus)などがある。
【0003】
様々な三次元造形法の中で、粉末焼結積層造形法は、例えば、金属の粉末にレーザを照射して焼結層を形成する処理を繰り返すことで、複数の焼結層が一体化した造形物を形成する方式であり、特開2013-163829号公報(特許文献1)などに開示がある。粉末焼結積層造形法で形成した造形物は、異方性が少なく、強度が優れている。しかし、粉末焼結積層造形法は造形速度が遅いため、造形物を形成するコストに問題があった。当該問題を解消するため、造形材料の粉末を焼結するのでなく、粉末に溶融促進剤を加え熱で融合することにより造形速度を速めた造形方式(例えば、ヒューレット・パッカード社のHP Multi Jet Fusion(登録商標))が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
粉末焼結積層造形法や、粉末に溶融促進剤を加え熱で融合する造形方式など、粉末を造形材料とする造形法で三次元造形物を形成する製造方法は、形成した造形物の異方性が少なく、強度も優れている利点を有している。しかし、造形材料が粉末であるため、形成した造形物の表面に不規則なザラザラした肌触りが残ってしまう欠点があった。当該欠点を改善する方法として、例えば、形成した造形物の表面を研磨する方法や、形成した造形物の表面を塗装する方法が考えられるが、何れの方法であっても製造コストが増加することになる。さらに、3Dプリンタは、その特徴から自由に、複雑な形状の造形物を形成することができるため、その造形物の表面を研磨や塗装することが困難な場合があった。
【0006】
本開示は、かかる問題を解決するためになされたものであり、粉末を造形材料として形成した三次元造形物の表面の不規則なザラザラした感じを緩和し、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成する製造方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の三次元造形物を形成する製造方法は、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法である。当該製造方法は、三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、特定した面に所定のパターンを形成する形状データを三次元データに追加する工程と、形状データを追加した三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成する工程と、を含む。
【0008】
本開示の三次元造形物を形成する別の製造方法は、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法である。当該製造方法は、三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、受け付けた三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成する工程と、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、特定した面に所定のパターンを形成する工程と、を含む。
【0009】
本開示のプログラムは、粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置で受け付ける三次元データを変換するプロセッサで実行されるプログラムである。当該プログラムは、三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、特定した面に所定のパターンを形成する形状データを三次元データに追加するステップと、を含む。
【0010】
本開示の別のプログラムは、粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置を制御するプロセッサで実行されるプログラムである。当該プログラムは、三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、受け付けた三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成するステップと、を含む。三次元造形物を形成するステップは、三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、特定した面に所定のパターンを形成するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0011】
上記の製造方法で形成された三次元造形物は、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面を有している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施の形態に従う三次元造形物の概略図である。
【
図2】実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置の概略図である。
【
図3】実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置の制御部のブロック図である。
【
図4】実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置に入力する三次元データを変換する方法を説明するフローチャートである。
【
図5】実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造方法を説明するための図である。
【
図6】三次元造形物の表面に形成される異なる立体形状を示す図である。
【
図7】三次元造形物の表面に形成されるさらに異なる立体形状を示す図である。
【
図9】三次元造形物を形成する製造方法の変形例を説明するための図である。
【
図10】変形例に係る三次元造形物を形成する製造方法を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一又は相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0014】
[三次元造形物]
図1は、実施の形態に従う三次元造形物10の概略図である。
図1に示す三次元造形物10は、粉末を造形材料として3Dプリンタで形成した造形物である。三次元造形物10は、説明を簡単にするため形状を直方体としている。しかし、本来3Dプリンタは、その特徴から自由に、複雑な形状の造形物を形成することができるため、三次元造形物10の形状は直方体に限定されない。造形材料には、ポリプロピレン、ポリアミドなどの樹脂粉末、アルミニウム、鉄などの金属粉末などを用いる。
【0015】
三次元造形物10は、造形材料に粉末を用いて、例えば、粉末焼結積層造形法で形成する。そのため、設計上、三次元造形物10の表面2を平面とした場合でも、造形材料の粉末に起因する不規則なザラザラした肌触りが残ってしまう。そこで、実施の形態では、三次元造形物10の表面2となる面に、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成してある。
図1に示す三次元造形物10では、6面すべての表面2に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが形成してある。所定のパターンは、例えば、
図1に示すように立体形状2aをマトリクス状に規則的に繰り返し並べたパターンである。
【0016】
三次元造形物10の表面2に、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成しておくことで、造形材料の粉末に起因する不規則な凹凸よりも、繰り返し並べた立体形状2aの形状の方が、人の手で表面2を触ったときの感触として支配的になる。そのため、人が三次元造形物10の表面2に形成された所定のパターンを触った場合、三次元造形物10の表面2の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面であると感じられる。ここで、人の手で表面2を触ったときに所定のパターンが人の手の感触として支配的になるには、たとえば、指先で立体形状2aを同時に2つ以上触れる必要がある。
【0017】
具体的に、指の直径は、指輪のサイズなどから一般的な人で約13mm~約22mmであることが知られている。例えば、指の直径が18mmであれば、この間に繰り返し並べた2つの立体形状2aを含めるには、立体形状2aの一辺の長さを6mm以下にする必要がある。つまり、立体形状2aの一辺の長さは、指の直径の1/3以下であればよい。
【0018】
一方、粉末を造形材料とする3Dプリンタでは、造形材料の粒子径より小さい単位で立体形状2aを形成できないので、立体形状2aの一辺の長さは、造形材料の粒子径以上であればよい。ここで、造形材料の粒子径は、体積分布または個数分布における平均粒子径であっても、モード径、メジアン径、任意%粒子径などであってもよい。
【0019】
具体的に、
図1に示す立体形状2aは、例えば、表面2に形成された円柱状の溝である。粉末の平均粒子径(以下、単に粒子径ともいう)が約50μmの場合、立体形状2aの大きさは、直径が約250μm、深さが約250μmである。ここでは、立体形状2aの大きさを、造形材料の粒子径の5倍としたが、指の直径の1/3以下であれば、人の手で表面2を触ったときの感触は、立体形状2aに基づく形状の方がより支配的になると考えられる。例えば、指の直径22mmとした場合、指の直径の1/3は約7.3mmとなり、造形材料の粒子径の約150倍である。粉末を造形材料として3Dプリンタにおける立体形状2aの作りやすさを考慮すると、立体形状の大きさは、造形材料の粒子径の5倍以上~150倍以下であることが好ましい。
【0020】
立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを三次元造形物10の表面2に形成する工程は、ユーザが形成しようとしている三次元造形物10の本体を形成する工程と同じ造形法(例えば、粉末焼結積層造形法)で行われる。そのため、三次元造形物10の表面2に所定のパターンを形成するために、当該表面2を研磨したり、塗装したりする必要がなく、製造コストを増加させることがない。また、同じ造形法で形成するため、三次元造形物10の完成後に表面を研磨や塗装するような困難な作業は生じない。
【0021】
立体形状2aは、表面2が彫られたような円柱状の溝に限定されず、逆に表面2から突き出た円柱状の突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て円柱状の溝である立体形状2aが複数並べられたパターンでも、全て円柱状の突起である立体形状2aが複数並べられたパターンでも、円柱状の溝である立体形状2aと円柱状の突起である立体形状2aとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0022】
[三次元造形物の製造装置]
次に、三次元造形物10を形成するための製造装置について、図を用いて説明する。
図2は、実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置の概略図である。
図2に示す製造装置は、粉末焼結積層造形装置の一例である。
【0023】
粉末焼結積層造形装置50は、造形材料の粉末20を造形領域7に供給するローラ3(またはブレード)、造形領域7に設置した粉末20を焼結または溶融させ積層を接合するレーザ光源4、造形領域7においてレーザ光6を高速で動かすためのガルバノミラー5を含む。また、粉末焼結積層造形装置50は、受け付けた三次元造形物の三次元データを変換したり、ローラ3やレーザ光源4などを制御したりする制御部30を含む。
【0024】
また、粉末焼結積層造形装置50は、三次元造形物10を造形する造形領域7、当該造形領域7の両側に配置される粉末20を保管する保管領域を有する容器8、造形領域7の粉末20を上下方向に動作させるためのピストン11、保管領域の粉末20を上下方向に動作させるためのピストン12を含む。図示していないが、粉末焼結積層造形装置50は、ヒータを含み、当該ヒータにより、造形領域7および保管領域を高温に保持する。なお、粉末20を保管する保管領域の温度は、造形領域7の温度以下としておくことが好ましい。
【0025】
粉末焼結積層造形装置50では、まず、ローラ3で保管領域の粉末20を造形領域7に押し広げて、粉末20をレーザ光6で焼結または溶融させ、それらを繰り返し行うことで三次元造形物10を形成する。ローラ3で押し広げた粉末20の積層厚は、熱分解が起こさない程度の数百μm以下とする。
【0026】
粉末焼結積層造形装置50では、上記の処理を繰り返し行った結果、三次元造形物10が粉末20の中に埋もれた状態となる。その粉末20の中から三次元造形物10を取り出した後に、ブラスト処理などで三次元造形物10から粉末20を剥離することで三次元造形物10が完成する。
【0027】
粉末焼結積層造形装置50では、装置内の制御部30またはネットワークなどで接続されたコンピュータにおいて三次元造形物10を3DCADでモデル化し、当該モデルに基づいて、各層ごとにレーザ照射の照射条件(例えばレーザパワー、レーザ走査速度、レーザピッチ、照射方向および照射回数)などの処理手順を設定する。
【0028】
この処理手順には、三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成することも含まれている。三次元造形物10の設計者は、三次元造形物10の表面の処理手順に意識することなく、粉末焼結積層造形装置50が受け付けた三次元造形物10の三次元データに対して、自動で三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを付加した三次元造形物10の三次元データに変換する。もちろん、設計者が、三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成する必要がないと判断すれば、粉末焼結積層造形装置50において三次元造形物10の三次元データを変換しないように設定することはできる。
【0029】
図3は、実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置の制御部のブロック図である。制御部30で実行されるプログラムにより、受け付けた三次元造形物10の三次元データが、三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成した三次元造形物10の三次元データに変換される。制御部30、プロセッサ302と、メインメモリ304と、入力部306と、出力部308と、ストレージ310と、外部ドライブ312、通信コントローラ320とを含む。これらのコンポーネントは、プロセッサバス318を介して接続されている。
【0030】
プロセッサ302は、CPUやGPUなどで構成され、ストレージ310に記憶されたプログラム(一例として、OS3102およびプログラム3104)を読出して、メインメモリ304に展開して実行することができる。プロセッサ302では、入力部306で受け付けた三次元造形物10の三次元データに対して、データ変換を行うプログラム3104が実行される。
【0031】
メインメモリ304は、DRAMやSRAMなどの揮発性記憶装置などで構成される。ストレージ310は、例えば、HDDやSSDなどの不揮発性記憶装置などで構成される。
【0032】
ストレージ310には、基本的な機能を実現するためのOS3102に加えて、データ変換を行うプログラム3104などが記憶される。すなわち、プログラム3104は、受け付けた三次元造形物10の三次元データを、三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成した三次元造形物10の三次元データに変換する。
【0033】
入力部306は、キーボードやマウスなどで構成され、ユーザからの操作をさらに受け付けることができる。入力部306は、例えば、使用する粉末の平均粒子径の情報、複数のパターンにおいて立体形状2aのサイズを変えながら何度か試作した結果に基づきユーザが選択した情報などを入力することができる。出力部308は、変換した三次元データに基づいて、ローラ3やレーザ光源4などを制御する制御信号を出力する。また、出力部308は、変換した三次元データ、立体形状2aの形状、パターンなどを、粉末焼結積層造形装置50に接続されたディスプレイなどを出力する。
【0034】
ユーザは、三次元造形物10の表面に形成するパターンの立体形状2aのサイズや形状などを変更して何度か試作を行い、手触りなどを評価して、最適なパターンを粉末焼結積層造形装置50で選択することができる。また、ユーザは、使用する粉末の粒子そのものによるランダムな凹凸よりも形成したパターンによる凹凸の方が触感として支配的となるパターンが粉末焼結積層造形装置50にあらかじめ設定されており、ユーザは設定されたパターンの中から、種々の立体形状2aのサイズや形状を設定することができる。
【0035】
制御部30は、外部ドライブ312を有しており、コンピュータが読取可能なプログラムを記憶した記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)などの光学記録媒体、USBメモリ)から、その中に記憶されたプログラムが読取られてストレージ310などにインストールしてもよい。通信コントローラ320は、有線通信または無線通信を用いて、他の装置などとの間で信号を遣り取りする。粉末焼結積層造形装置50は、データサーバなどとの間で通信コントローラ320を介してデータの遣り取りを行ったりしてもよい。
【0036】
制御部30で実行されるプログラム3104などは、コンピュータ読取可能な記録媒体を介してインストールされてもよいが、ネットワーク上のサーバ装置などからダウンロードする形でインストールするようにしてもよい。また、制御部30が提供する機能は、OSが提供するモジュールの一部を利用する形で実現される場合もある。
【0037】
次に、粉末焼結積層造形装置50が受け付けた三次元造形物10の三次元データに対して、自動で三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを付加した三次元造形物10の三次元データに変換する処理について詳しく説明する。
図4は、実施の形態に従う三次元造形物を形成する製造装置に入力する三次元データを変換する方法を説明するフローチャートである。まず、制御部30は、三次元造形物10の三次元データを受け付ける(ステップS101)。
【0038】
次に、制御部30は、使用する粉末の平均粒子径の情報、複数のパターンにおいて立体形状2aのサイズを変えながら何度か試作した結果に基づきユーザが選択した情報などの入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS102)。なお、制御部30は、ユーザが選択した情報を入力することで、ユーザの好みの立体形状2aのサイズを選択でき、造形材料の粒子そのものによるランダムな凹凸よりも、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが人の手の感触として支配的になる種々のパターンや立体形状2aのサイズを設定することができる。また、制御部30は、造形材料の粒子径の情報、およびユーザが選択した立体形状2aの情報のうち少なくとも一方の情報に基づいてパターンを決定することができればよい。
【0039】
粒子径の情報、ユーザが選択した情報などを受け付けた場合(ステップS102でYES)、制御部30は、受け付けた情報に基づき、三次元造形物10の表面に形成するパターンを決定する(ステップS103)。粒子径の情報、ユーザが選択した情報などを受け付けていない場合(ステップS102でNO)、制御部30は、処理をステップS102に戻し、情報の入力を待つ。もちろん、制御部30は、粒子径の情報、ユーザが選択した情報などが所定時間入力されない場合、三次元造形物10の表面に形成するパターンをデフォルトのパターンとしてもよい。
【0040】
次に、制御部30は、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物10の表面2のうち、立体形状2aを繰り返し並べたパターンを形成する面を特定する(ステップS104)。ステップS104で特定する面は、制御部30が受け付けた三次元データから自動で特定してもよいし、受け付けた三次元データをディスプレイなどに表示させてユーザが手動で特定してもよい。また、ステップS104で特定する面は、三次元造形物10の表面2のすべての面でもよいし、他の三次元造形物と接する面以外の面(最終製品で表面になる面)でもよい。もちろん、最終製品で表面になる面であっても、意匠性を優先して立体形状2aを繰り返し並べたパターンを形成しないのであれば、ステップS104で当該面を特定しなくてもよい。なお、意匠性を優先して立体形状2aを繰り返し並べたパターンを形成しない面は、ユーザが手動で特定することになる。
【0041】
制御部30は、特定した面に決定したパターンで立体形状2aを繰り返し並べた形状データを追加した三次元データに変換する(ステップS105)。制御部30は、変換して三次元データを粉末焼結積層造形装置50側に出力する(ステップS104)。粉末焼結積層造形装置50は、変換して三次元データに基づき、表面2となる面に、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成した三次元造形物10を形成する。
【0042】
[三次元造形物の製造方法]
次に、三次元造形物10を形成するための製造方法について、図を用いて説明する。
図5は、実施の形態に従う三次元造形物10を形成する製造方法を説明するための図である。
図5では、粉末焼結積層造形法を用いて三次元造形物10を形成する製造方法について説明する。
【0043】
まず、
図5(a)に示すように、ローラ3で粉末20を造形領域に設置する。次に、
図5(b)に示すように、三次元造形物10の表面となる部分を形成するため、円柱状の突起である立体形状2aを規則的に繰り返し並べたパターン形成する。具体的に、立体形状2aを形成する部分の粉末20に対してレーザ光6を照射するようにガルバノミラー5を駆動し、レーザ光6を照射した部分の粉末20を焼結させる。
【0044】
さらに、
図5(c)に示すように、立体形状2aの一部を形成した造形領域に、ローラ3で粉末20を設置する。ローラ3で粉末20を造形領域に設置し、レーザ光6を照射して粉末20を焼結させる処理を来る返すことで、立体形状2aが形成され、さらに、
図5(d)に示すように三次元造形物10の一部が形成される。
【0045】
また、
図5(e)に示すように、三次元造形物10の一部を形成した造形領域に、ローラ3で粉末20を設置する。ローラ3で粉末20を造形領域に設置し、レーザ光6を照射して粉末20を焼結させる処理を来る返すことで、
図5(f)に示すように三次元造形物10が完成する。
【0046】
[表面のパターン]
図1に示す三次元造形物10では、円柱状の溝である立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが表面2に形成されると説明した。しかし、三次元造形物10の表面に形成される立体形状は、円柱状の溝に限定されない。
図6は、三次元造形物10の表面に形成される異なる立体形状を示す図である。
【0047】
図6(a)に示すパターンは、三角柱状の溝である立体形状2bをマトリクス状に規則的に繰り返し並べたパターンである。具体的に、
図6(a)に示す立体形状2bの大きさは、例えば、粉末の粒子が約50μmの場合、一辺の長さが約250μm、深さが約250μmである。
【0048】
立体形状2bは、表面2が彫られたような三角柱状の溝に限定されず、逆に表面2から突き出た三角柱状の突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て三角柱状の溝である立体形状2bが複数並べられたパターンでも、全て三角柱状の突起である立体形状2bが複数並べられたパターンでも、三角柱状の溝である立体形状2bと三角柱状の突起である立体形状2bとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0049】
図6(b)に示すパターンは、立方体の一部が埋め込まれたような溝である立体形状2cをマトリクス状に規則的に繰り返し並べたパターンである。具体的に、
図6(b)に示す立体形状2cの大きさは、例えば、粉末の粒子が約50μmの場合、一辺の長さが約250μmである。
【0050】
立体形状2cは、表面2が彫られたような溝に限定されず、逆に表面2から立方体の一部が突き出たような突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て溝である立体形状2cが複数並べられたパターンでも、全て突起である立体形状2cが複数並べられたパターンでも、溝である立体形状2cと突起である立体形状2cとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0051】
上記の立体形状2a~立体形状2cの形状は一例であって、当該形状に限定されない。また、三次元造形物10の表面2に形成される所定のパターンは、立体形状をマトリクス状に規則的に繰り返し並べたパターンに限定されず、例えば、一の方向には規則的に立体形状が複数並んでいるが、他の方向に不規則に立体形状が複数並んでいてもよい。また、三次元造形物10の表面2に形成される所定のパターンは、複数の立体形状をある模様に並べ、その模様を繰り返すようなパターンなどでもよい。造形材料の粉末に起因する不規則な凹凸よりも、立体形状を繰り返し並べた形状の方が、人の手で三次元造形物10の表面2を触ったときの感触として支配的になるパターンであれば、所定のパターンは、何れのパターンでもよい。
【0052】
三次元造形物の表面に形成する立体形状は1種類に限定されず、異なる複数種類の立体形状であってもよい。例えば、
図6(c)に示すパターンのように、立体形状が、円柱形状の溝である立体形状2a(第1の立体形状)と三角柱状の溝である立体形状2b(第2の立体形状)と異なる2種類の形状を有していてもよい。三次元造形物の表面に形成する所定のパターンは、円柱形状の溝である立体形状2a(第1の立体形状)および三角柱状の溝である立体形状2b(第2の立体形状)を規則的に繰り返し並べたパターンでもよい。
【0053】
図7は、三次元造形物の表面に形成されるさらに異なる立体形状を示す図である。
図7(a)に示すパターンは、図中斜め方向に連なる嶺2dを規則的に繰り返し並べたパターンである。具体的に、
図7(a)に示す嶺2d(立体形状)の大きさは、例えば、粉末の粒子が約50μmの場合、深さが約250μmである。
【0054】
嶺2dは、表面2から突き出た形状で、次の嶺2dまでになだらか傾斜した形状に限定されず、逆に表面2を削った崖であってもよい。また、嶺2dが連なる方向は、
図7(a)に示す方向に限定されず、他の方向でもよい。
【0055】
図7(b)に示すパターンは、六角柱状の溝である立体形状2eをハニカム状に規則的に繰り返し並べたパターンである。具体的に、
図7(b)に示す立体形状2eの大きさは、例えば、粉末の粒子が約50μmの場合、一辺の長さが約250μm、深さが約250μmである。
【0056】
立体形状2eは、表面2が彫られたような六角柱状の溝に限定されず、逆に表面2から突き出た六角柱状の突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て六角柱状の溝である立体形状2eが複数並べられたパターンでも、全て六角柱状の突起である立体形状2eが複数並べられたパターンでも、六角柱状の溝である立体形状2eと六角柱状の突起である立体形状2eとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0057】
図7(c)に示すパターンは、三方向に広がる柱状の溝である立体形状2fを規則的に繰り返し並べたパターンである。具体的に、
図7(c)に示す立体形状2fの大きさは、例えば、粉末の粒子が約50μmの場合、一辺の長さが約250μm、深さが約250μmである。
【0058】
立体形状2fは、表面2が彫られたような三方向に広がる柱状の溝に限定されず、逆に表面2から突き出た柱状の突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て三方向に広がる柱状の溝である立体形状2fが複数並べられたパターンでも、全て柱状の突起である立体形状2fが複数並べられたパターンでも、三方向に広がる柱状の溝である立体形状2fと突起である立体形状2fとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0059】
[変形例]
図1に示す三次元造形物10では、6面すべての表面2に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが形成してある。しかし、6面すべての表面2に所定のパターンを形成しなくてもよい。
図8は、変形例に従う三次元造形物10aの概略図である。
図8に示す三次元造形物10aでは、図中上側の天面と図中下側の底面(図示せず)とに溝である立体形状2gを繰り返し並べた所定のパターンが形成し、他の面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが形成してある。立体形状2gは、一方向に延びる溝であり、当該溝の大きさは、粉末の粒子が約50μmの場合、幅が約250μm、深さが約250μmで、隣の溝までの距離が約250μmである。
【0060】
なお、立体形状2gは、表面2が彫られたような溝に限定されず、逆に表面2から突き出ており、一方向に延びる突起であってもよい。また、表面2に形成されるパターンは、全て溝である立体形状2gが複数並べられたパターンでも、全て突起である立体形状2gが複数並べられたパターンでも、溝である立体形状2gと突起である立体形状2gとが混在して複数並べられたパターンでもよい。
【0061】
図8では、6面のうち天面および底面の2面が他の面のパターンと異なるパターンを形成した三次元造形物10aを示した。そのため、天面および底面の2面が他の面と異なる肌触りとなる。また、天面および底面の2面が他の面より一つの方向に対して滑りやすくするなどの機能を付加することができる。なお、6面すべて異なるパターンを形成した三次元造形物であっても、6面のうち1面が異なるパターンを形成した三次元造形物であってもよい。もちろん、三次元造形物は、6面のうち、立体形状が複数並べられた所定のパターンが形成されない面があってもよい。
【0062】
次に、
図5で説明した粉末焼結積層造形法を用いて三次元造形物10を形成する製造方法とは異なる製造方法について説明する。
図9は、三次元造形物を形成する製造方法の変形例を説明するための図である。
図9では、造形材料の粉末を焼結するのでなく、粉末に溶融促進剤を加え熱で融合する造形方式で、表面2に所定のパターンを形成した三次元造形物を形成する製造方法について説明する。
【0063】
図9(a)では、既に三次元造形物10を上面まで当該製造方法で形成した後、次に、三次元造形物10の表面となる面に、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成する工程を示している。まず、図示していないローラで粉末20を、三次元造形物10の表面を含む造形領域に設置する。次に、
図9(b)に示すように、溶解促進剤9aと表面装飾剤9bとを高速噴射するヘッド9を走査させて、立体形状2aを形成する部分の粉末20に対して溶解促進剤9aを噴射し、それ以外の部分の粉末20に対して表面装飾剤9bを噴射する。
【0064】
図9(c)において、ハッチングを付した粉末20の部分が、溶解促進剤9aが噴射された粉末20の部分を示している。さらに溶解促進剤9aを噴射した粉末20の部分に、ヒータ15(例えば、ハロゲンランプ)で熱を加えて粉末20を溶融させる。ここで、粉末20は、熱可塑性樹脂を用いている。なお、ヒータ15は、造形物の表面の温度を測定する温度センサーからの測定結果に基づいて、加熱する温度を制御している。当該制御により、三次元造形物の微細な形状を造形することができる。
【0065】
図9(d)に示すように、複数の立体形状2aが三次元造形物10の表面に形成され、三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成される。その後、ブラスト処理などで三次元造形物から粉末20を剥離することで三次元造形物が完成する。なお、三次元造形物を形成する造形法について、粉末焼結積層造形法、造形材料に溶融促進剤を加えて加熱する造形方式について説明したが、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する造形法であれば何れの造形法でもよい。
【0066】
上述の実施の形態では、粉末焼結積層造形装置50が受け付けた三次元造形物10の三次元データに対して、自動で三次元造形物10の表面に立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを付加した三次元造形物10の三次元データに変換すると説明した。しかし、粉末焼結積層造形装置50は、三次元データを変換せず、受け付けた三次元データに基づいて三次元造形物10を形成する際に、三次元造形物10の表面のうち、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定し、特定した面に対して所定のパターンを追加して形成してもよい。具体的に、三次元造形物10を形成する際、三次元造形物10の表面に所定のパターンを追加して形成する製造方法について説明する。
図10は、変形例に係る三次元造形物を形成する製造方法を説明するフローチャートである。まず、制御部30は、三次元造形物10の三次元データを受け付ける(ステップS201)。
【0067】
次に、制御部30は、使用する粉末の平均粒子径の情報、複数のパターンにおいて立体形状2aのサイズを変えながら何度か試作した結果に基づきユーザが選択した情報などの入力を受け付けたか否かを判断する(ステップS202)。なお、制御部30は、ユーザが選択した情報を入力することで、ユーザの好みの立体形状2aのサイズを選択でき、造形材料の粒子そのものによるランダムな凹凸よりも、立体形状2aを繰り返し並べた所定のパターンが人の手の感触として支配的になる種々のパターンや立体形状2aのサイズを設定することができる。
【0068】
粒子径の情報、ユーザが選択した情報などを受け付けた場合(ステップS202でYES)、制御部30は、受け付けた情報に基づき、三次元造形物10の表面に形成するパターンを決定する(ステップS203)。粒子径の情報、ユーザが選択した情報などを受け付けていない場合(ステップS202でNO)、制御部30は、処理をステップS102に戻し、情報の入力を待つ。もちろん、制御部30は、粒子径の情報、ユーザが選択した情報などが所定時間入力されない場合、三次元造形物10の表面に形成するパターンをデフォルトのパターンとしてもよい。
【0069】
次に、制御部30は、受け付けた三次元データに基づき三次元造形物10を形成する場合に、形成する部分が三次元造形物10の表面か否かを判断する(ステップS204)。形成する部分が三次元造形物10の表面でない場合(ステップS204でNO)、制御部30は、三次元データに基づき三次元造形物10を形成する(ステップS205)。
【0070】
形成する部分が三次元造形物10の表面である場合(ステップS204でYES)、制御部30は、決定したパターンで立体形状2aを繰り返し並べた形状を三次元造形物10の表面に形成する(ステップS206)。制御部30は、受け付けた三次元データに基づく三次元造形物10をすべて形成し、形成処理を終了してもよいか否かを判断する(ステップS207)。形成処理を終了してもよいと判断しない場合(ステップS207でNO)、制御部30は、処理をステップS204に戻し、三次元造形物10の形成処理を継続する。一方、形成処理を終了してもよいと判断した場合(ステップS207でYES)、制御部30は、三次元造形物10の形成処理を終了する。
【0071】
[態様]
上述した実施形態は、以下の態様の具体例であることが当業者により理解される。
【0072】
(第1項)
一態様に係る三次元造形物を形成する製造方法は、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法であって、三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、特定した面に所定のパターンを形成する形状データを三次元データに追加する工程と、形状データを追加した三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成する工程と、を含む。
【0073】
第1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、表面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成するので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成することができる。また、当該製造方法によれば、表面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成した三次元造形物として一体として形成されるので、製造コストを増加させず、困難な作業を生じさせない。
【0074】
(第2項)
別の一態様に係る三次元造形物を形成する製造方法は、粉末を造形材料として三次元造形物を形成する製造方法であって、三次元造形物の三次元データを受け付ける工程と、受け付けた三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成する工程と、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定する工程と、特定した面に所定のパターンを形成する工程と、を含む。
【0075】
第1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、表面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成するので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成することができる。また、当該製造方法によれば、三次元造形物を形成する工程と、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する工程とは、同じ造形法で行われるので、製造コストを増加させず、困難な作業を生じさせない。
【0076】
(第3項)
第1項または第2項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、立体形状の一辺の長さは、造形材料の粒子径以上で、指の直径の1/3以下である。
【0077】
第3項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、立体形状の一辺の長さは、造形材料の粒子径以上で、指の直径の1/3以下であるので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い三次元造形物の表面を形成できる。
【0078】
(第4項)
第1項~第3項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、造形材料の粒子径の情報、およびユーザが選択した立体形状の情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて所定のパターンを決定する工程をさらに含む。
【0079】
第4項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、造形材料の粒子径の情報、およびユーザが選択した立体形状の情報のうち少なくとも一方の情報に基づいて、三次元造形物の表面に形成する立体形状のパターンを決定することができる。
【0080】
(第5項)
第1項~第4項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、所定のパターンは、同じ形状の立体形状を繰り返し並べたパターンである。
【0081】
第5項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、所定のパターンが、同じ形状の立体形状を繰り返し並べたパターンので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い三次元造形物の表面を形成できる。
【0082】
(第6項)
第1項~第4項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、立体形状は、形状の異なる第1の立体形状と第2の立体形状とを有し、所定のパターンは、第1の立体形状および第2の立体形状を規則的に繰り返し並べたパターンである。
【0083】
第6項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、多様なパターンを三次元造形物の表面を形成できる。
【0084】
(第7項)
第1項~第6項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、所定のパターンは、三次元造形物の表面のすべての面で同じである。
【0085】
第7項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、三次元造形物の表面のすべての面で同じ肌触りにすることができる。
【0086】
(第8項)
第1項~第6項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、所定のパターンは、三次元造形物の表面のうち少なくとも1つの面でパターンが異なる。
【0087】
第8項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、三次元造形物の表面のうち少なくとも1つの面で異なる肌触りにすることができる。
【0088】
(第9項)
第1項~第8項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、立体形状の大きさは、造形材料の粒子径の5倍以上~150倍以下である。
【0089】
第9項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、人の手で表面を触ったときの感触が、立体形状に基づく形状の方がより支配的になる。
【0090】
(第10項)
第1項~第9項のいずれか1項に記載の三次元造形物を形成する製造方法であって、造形法は、粉末焼結積層造形法、または造形材料に溶融促進剤を加えて加熱する造形方式を用いる。
【0091】
第10項に記載の三次元造形物を形成する製造方法によれば、異方性が少なく、強度が優れている三次元造形物を形成することができる。
【0092】
(第11項)
一態様に係るプログラムは、粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置で受け付ける三次元データを変換するプロセッサで実行されるプログラムであって、三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、受け付けた三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、特定した面に所定のパターンを形成する形状データを三次元データに追加するステップと、を含む。
【0093】
第11項に記載のプログラムによれば、表面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する三次元データに変換するので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成することができる。
【0094】
(第12項)
別の一態様に係るプログラムは、粉末の造形材料を用いて三次元造形物を形成する製造装置を制御するプロセッサで実行されるプログラムであって、三次元造形物の三次元データを受け付けるステップと、受け付けた三次元データに基づき、造形材料を用いて三次元造形物を形成するステップと、を含み、三次元造形物を形成するステップは、三次元データにおいて三次元造形物の表面のうち、立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成する面を特定するステップと、特定した面に所定のパターンを形成するステップと、を含む。
【0095】
第12項に記載のプログラムによれば、三次元造形物の表面に立体形状を繰り返し並べた所定のパターンを形成するので、表面の不規則なザラザラした感じが緩和され、肌触りの良い表面を有する三次元造形物を形成することができる。
【0096】
今回開示された実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0097】
2 表面、2a,2b,2c,2d 立体形状、3 ローラ、4 レーザ光源、5 ガルバノミラー、6 レーザ光、7 造形領域、8 容器、9 ヘッド、9a 溶解促進剤、9b 表面装飾剤、10,10a 三次元造形物、11,12 ピストン、15 ヒータ、20 粉末、50 粉末焼結積層造形装置。