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特開2024-81922測定用チップ、測定装置、および測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081922
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】測定用チップ、測定装置、および測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/43 20060101AFI20240612BHJP
   G01N 21/17 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
G01N21/43
G01N21/17 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195511
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】多田 啓二
(72)【発明者】
【氏名】河尻 武士
(72)【発明者】
【氏名】梶 祥一朗
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059BB12
2G059CC17
2G059DD03
2G059DD13
2G059EE04
2G059GG01
2G059GG02
2G059HH01
2G059HH02
2G059JJ17
(57)【要約】
【課題】測定の再現性や測定の信頼性をさらに向上させ、作製プロセスをさらに低コスト化した光導波路型の測定用チップ、測定装置、および測定方法を提供する。
【解決手段】測定用チップ1は、光が伝搬方向Yに伝搬する伝搬層2と、伝搬層2に光を導入する導入部3と、伝搬層2から光を導出する導出部4と、伝搬層2の表面上にコーティングが形成され、コーティングの形成領域における伝搬方向Yの長さが、伝搬方向Yに対する垂直方向Xに沿って増加または減少するコーティング層5と、を備え、少なくともコーティング層5から露出する露出領域の伝搬層2の表面2Aに、測定対象物中のアナライトに反応するリガンド6を修飾可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が伝搬方向に伝搬する伝搬層と、
前記伝搬層に前記光を導入する導入部と、
前記伝搬層から前記光を導出する導出部と、
前記伝搬層の表面上にコーティングが形成され、前記コーティングの形成領域における前記伝搬方向の長さが、前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って増加または減少するコーティング層と、
を備え、
少なくとも前記コーティング層から露出する露出領域の前記伝搬層の表面に、測定対象物中のアナライトに反応するリガンドを修飾可能な、測定用チップ。
【請求項2】
前記露出領域の前記伝搬層の表面に前記リガンドが修飾されることにより形成されるリガンド層をさらに備える、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項3】
前記コーティング層の屈折率は、前記伝搬層の屈折率より低く、前記リガンド層の屈折率より高い、請求項2に記載の測定用チップ。
【請求項4】
前記コーティング層は、平面視において前記導入部から前記導出部の間に形成されている、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項5】
前記コーティング層は、平面視において前記導入部上および/または前記導出部上にさらに形成されている、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項6】
前記コーティング層は、前記伝搬方向の長さが前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って連続的に増加または減少する、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項7】
前記コーティング層は、前記伝搬方向の長さが前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って線形に増加または減少する、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項8】
前記コーティング層は、前記伝搬層の表面から前記コーティング層側の媒質に向けて浸透するエバネッセント光の染み出し長以上の厚みを有する、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項9】
前記コーティング層は、二酸化ケイ素を用いて形成されている、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項10】
前記コーティング層は、二酸化ケイ素と金属酸化物の混合物を用いて形成されている、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項11】
前記コーティング層は、二酸化ケイ素を主成分とするAlとの混合物を用いて形成されている、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項12】
前記コーティング層の表面に特性調整膜をさらに備える、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項13】
前記特性調整膜は、金属酸化物を用いて形成されている、請求項12に記載の測定用チップ。
【請求項14】
前記アナライトと前記リガンドとの反応により生じる前記伝搬層の周辺における屈折率の変化により、前記光の位相分布が変化する、請求項1に記載の測定用チップ。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の測定用チップが配置される測定装置であって、
前記測定用チップの前記導入部に前記光を導く光源と、
前記測定用チップの前記導出部から導出された光を受光する受光部と、
前記測定対象物中のアナライトが前記測定用チップのリガンドと反応することにより変化する、前記受光部で受光される光のパターンの変化を分析する制御部と、
を備える測定装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記光の進行方向の変化を分析する分析処理を行う、請求項15に記載の測定装置。
【請求項17】
伝搬層に光を導入し、
前記伝搬層の表面上に形成されているコーティング層から露出する露出領域の前記伝搬層の表面に、測定対象物中のアナライトに反応するリガンドが形成されている前記伝搬層において、前記光を全反射させ、
前記伝搬層から前記光を導出し、
前記コーティング層は、前記コーティングの形成領域における前記伝搬方向の長さが、前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って増加または減少する、測定方法。
【請求項18】
前記測定対象物中のアナライトが測定用チップのリガンドと反応することにより変化する、前記伝搬層から導出される前記光のパターンの変化を分析する、請求項17に記載の測定方法。
【請求項19】
前記伝搬層から導出される前記光の進行方向の変化を分析する、請求項17または18に記載の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路型の測定用チップ、測定装置、および測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から様々な種類のバイオセンサが開発されており、例えば生体分子間の相互作用を解析するために利用されている。バイオセンサのタイプとしては、例えば特許文献1および特許文献2に例示するような光導波路を利用するタイプや、表面プラズモン共鳴を利用するタイプ、マッハ・ツェンダー干渉を利用するタイプ等がある。
【0003】
特許文献1のバイオセンサは、光導波路を利用するタイプのバイオセンサ(以下、光導波路型の測定用チップとも呼ぶ)であり、被検出物質(以下、アナライトと呼ぶ)を検出するために、アナライトに反応する反応物質(以下、リガンドと呼ぶ)が、光が伝搬する伝搬層の表面に形成されている。特許文献1の測定用チップでは、リガンドが固定化されている領域とリガンドが固定化されていない領域とで、伝搬層を伝搬する光の位相変化量が異なることを利用して、伝搬層から導出される光のパターンの変化に基づいて、アナライトの有無やアナライトの濃度を推定する。特許文献2のバイオセンサも光導波路型のバイオセンサであり、こちらは発色剤を用い、光の吸収・散乱による伝搬光の強度変化を検出するタイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2019/044418号
【特許文献2】特開2012-78185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以下に詳述するように、光導波路型の測定用チップには、測定の再現性や測定の信頼性に関してさらなる性能向上が求められている。
【0006】
図8および図9は、特許文献1の測定用チップを説明するための図である。図8は、特許文献1の測定用チップの模式的な構造を示す図である。図9は、特許文献1の測定用チップにおいて、特定の平面形状にリガンド層を形成する3つの方法を示す図である。
【0007】
図8(A)の側面図および図8(B)の斜視図に示すように、特許文献1の測定用チップ91は、光が伝搬する伝搬層92と、伝搬層92に光を導入する導入部93と、伝搬層92から光を導出する導出部94と、リガンド層96とを備え、リガンド層96の領域は、伝搬層92の表面に特定の平面形状で形成されている。具体的には図8(B)に示すように、リガンド層96の領域は、光の伝搬方向(図中Y軸方向)のリガンド層96の長さが、伝搬方向に垂直な方向(図中X軸方向)に沿って増加または減少するような平面形状(例えば、平面視で直角三角形)で形成されている。伝搬層92の下面に備えられている透明な基材97は任意の構成である。
【0008】
このような特定の平面形状にリガンド層96を形成する方法としては、例えば図9に示す3つの方法がある。第1の方法は、図9(A)に示すように、伝搬層92の表面に足場材料81を一様に形成した後、マスク89およびリガンド溶液80を用いてリガンド82を上記した特定の平面形状にパターニングする方法である。第2の方法は、足場材料81を伝搬層92の表面に形成する際に、マスク89を用いて足場材料81を上記した特定の平面形状にパターニングしておく方法である。図9(B)に示すように、足場材料81は上記した特定の平面形状に予めパターニングされているので、足場材料81にリガンド溶液80を接触させると、リガンド82はこの特定の平面形状に形成される。第3の方法は、伝搬層92の表面に足場材料81を一様に形成した後、マスク89およびブロッキング溶液を用いて特定の平面形状を有する領域の足場材料81の結合サイト83を予めブロックしておく方法である。図9(C)に示すように、特定の平面形状を有する領域の足場材料81の結合サイト83は、リガンド82と結合できない状態84にされている。
【0009】
特定の平面形状にリガンド層96を形成するこれら3つの方法はいずれもウェットな工程であることから、工程の再現性は高くはなく、高コストである。上記した特定の平面形状にリガンド層96を形成するにあたり、工程再現性のさらなる向上及び、低コスト化が求められている。工程再現性が向上すると測定の再現性や測定の精度も向上する。
【0010】
また、光導波路型の測定用チップにおいて、測定対象物の屈折率による影響(バルク効果とも呼ぶ)の大きさや、非特異吸着による影響の大きさは、測定結果の信頼性を示す指標の一つとして知られている。しかしながら特許文献1の測定用チップ91では、これらバルク効果による影響の大きさや非特異吸着による影響の大きさを直接的に測定することができない。測定結果の信頼性を向上させるために、これらバルク効果による影響の大きさや非特異吸着による影響の大きさを、直接的に測定することが求められている。
【0011】
このように、光導波路型の測定用チップには、測定の再現性や測定の信頼性に関してさらなる性能向上が求められ、作製プロセスに関してさらなる低コスト化が求められている。
【0012】
本発明の目的は、測定の再現性や測定の信頼性をさらに向上させ、作製プロセスをさらに低コスト化した光導波路型の測定用チップ、測定装置、および測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するための本発明は、例えば以下に示す態様を含む。
【0014】
(項1)
光が伝搬方向に伝搬する伝搬層と、
前記伝搬層に前記光を導入する導入部と、
前記伝搬層から前記光を導出する導出部と、
前記伝搬層の表面上にコーティングが形成され、前記コーティングの形成領域における前記伝搬方向の長さが、前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って増加または減少するコーティング層と、
を備え、
少なくとも前記コーティング層から露出する露出領域の前記伝搬層の表面に、測定対象物中のアナライトに反応するリガンドを修飾可能な、測定用チップ。
(項2)
前記露出領域の前記伝搬層の表面に前記リガンドが修飾されることにより形成されるリガンド層をさらに備える、項1に記載の測定用チップ。
(項3)
前記コーティング層の屈折率は、前記伝搬層の屈折率より低く、前記リガンド層の屈折率より高い、項2に記載の測定用チップ。
(項4)
前記コーティング層は、平面視において前記導入部から前記導出部の間に形成されている、項1から3のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項5)
前記コーティング層は、平面視において前記導入部上および/または前記導出部上にさらに形成されている、項1から4のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項6)
前記コーティング層は、前記伝搬方向の長さが前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って連続的に増加または減少する、項1から5のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項7)
前記コーティング層は、前記伝搬方向の長さが前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って線形に増加または減少する、項1から5のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項8)
前記コーティング層は、前記伝搬層の表面から前記コーティング層側の媒質に向けて浸透するエバネッセント光の染み出し長以上の厚みを有する、項1から7のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項9)
前記コーティング層は二酸化ケイ素を用いて形成されている、項1から8のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項10)
前記コーティング層は、二酸化ケイ素と金属酸化物の混合物を用いて形成されている、項1から8に記載の測定用チップ。
(項11)
前記コーティング層は、二酸化ケイ素を主成分とするAlとの混合物を用いて形成されている、項1から8に記載の測定用チップ。
(項12)
前記コーティング層の表面に特性調整膜をさらに備える、項1から11に記載の測定用チップ。
(項13)
前記特性調整膜は、金属酸化物を用いて形成されている、項12に記載の測定用チップ。
(項14)
前記アナライトと前記リガンドとの反応により生じる前記伝搬層の周辺における屈折率の変化により、前記光の位相分布が変化する、項1から13のいずれか一項に記載の測定用チップ。
(項15)
項1から14のいずれか一項に記載の測定用チップが配置される測定装置であって、
前記測定用チップの前記導入部に前記光を導く光源と、
前記測定用チップの前記導出部から導出された光を受光する受光部と、
前記測定対象物中のアナライトが前記測定用チップのリガンドと反応することにより変化する、前記受光部で受光される光のパターンの変化を分析する制御部と、
を備える測定装置。
(項16)
前記制御部は、前記光の進行方向の変化を分析する分析処理を行う、項15に記載の測定装置。
(項17)
伝搬層に光を導入し、
前記伝搬層の表面上に形成されているコーティング層から露出する露出領域の前記伝搬層の表面に、測定対象物中のアナライトに反応するリガンドが形成されている前記伝搬層において、前記光を全反射させ、
前記伝搬層から前記光を導出し、
前記コーティング層は、コーティングの形成領域における前記伝搬方向の長さが、前記伝搬方向に対する垂直方向に沿って増加または減少する、
測定方法。
(項18)
前記測定対象物中のアナライトが測定用チップのリガンドと反応することにより変化する、前記伝搬層から導出される前記光のパターンの変化を分析する、項17に記載の測定方法。
(項19)
前記伝搬層から導出される前記光の進行方向の変化を分析する、項17または18に記載の測定方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、測定の再現性や測定の信頼性をさらに向上させ、作製プロセスをさらに低コスト化した光導波路型の測定用チップ、測定装置、および測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態に係る測定用チップの模式的な構造を示す側面図および斜視図である。
図2】一実施形態に係る測定用チップの模式的な構造を示す上面図および断面図である。
図3】一実施形態に係る測定用チップを含む測定装置の模式的な構成を示す図である。
図4】一実施形態に係る測定用チップにより測定される信号を説明するための図である。
図5】一実施形態に係る測定方法を説明するためのフローチャートである。
図6】他の実施形態に係るコーティング層5の平面形状のバリエーションを示す平面図である。
図7】実施例1において行った、作製した測定用チップの性能評価の結果を示すグラフである。
図8】特許文献1の測定用チップの模式的な構造を示す図である。
図9】特許文献1の測定用チップにおいて、特定の平面形状にリガンド層を形成する3つの方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を、添付の図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の説明および図面において、同じ符号は同じまたは類似の構成要素を示すこととし、よって、同じまたは類似の構成要素に関する重複した説明を省略する。
【0018】
[測定用チップ]
図1および図2は、一実施形態に係る測定用チップの模式的な構造を示す図である。図1(A)は側面図であり、図1(B)および図1(C)は斜視図である。図2(A)は上面図であり、図2(B)は図2(A)の断面図である。
【0019】
図中、測定用チップ1の上面方向(厚み方向)をZ軸方向とし、測定用チップ1における光の伝搬方向をY軸方向とし、光の伝搬方向に直交する垂直方向をX軸方向とする。また、表面とは上面および下面のどちらか一方を示し、両表面とは上面および下面の両方を示すこととする。
【0020】
なお図1および図2では、図面の見易さのためにいくつかの構成については図示を省略し、図示する構成の寸法比も強調して描いている。図1(B)および図1(C)の斜視図では、導入部3および導出部4の図示を省略している。図2(A)および図2(B)では、測定用チップ1を測定に使用する際の態様に合わせて、伝搬層2を図中X軸方向およびY軸方向に延伸して描いている。
【0021】
図1を参照して、一実施形態に係る測定用チップ1の概要について説明する。
【0022】
図1(A)および図1(B)に示すように、一実施形態に係る測定用チップ1は、光が伝搬する伝搬層2と、伝搬層2に光を導入する導入部3と、伝搬層2から光を導出する導出部4と、伝搬層2の表面に形成されるコーティング層5と、を備え、コーティング層5は、伝搬層2の表面に後述する特定の平面形状で形成されている。
【0023】
測定に使用する際、測定用チップ1には、測定対象物(例えば、検体)中のアナライト(例えば、抗原)に反応するリガンド(例えば、抗体)が伝搬層2の表面に修飾される。これにより、図1(C)に示すように、伝搬層2の表面にリガンド層6が形成される。本実施形態では、リガンド層6は、伝搬層2およびコーティング層5の表面2A,5Aに一様に形成される。
【0024】
コーティング層5は、伝搬層2の表面に後述する特定の平面形状で形成されている。リガンド層6は、伝搬層2およびコーティング層5の全面に、または、少なくともコーティング層5から露出する領域(露出領域とも呼ぶ)の伝搬層2の表面2Aの全面に形成されている。リガンドとアナライトとの反応(結合)、バルク効果、および非特異吸着は、リガンド層6の全面で生じる。コーティング層5は、エバネッセント光を減衰させる厚みで形成されており、伝搬層2の内部からリガンド層6内のリガンドに向けて浸透するエバネッセント光を減衰させて感知され難くする。これにより、測定用チップ1は、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aのみにおいて、リガンドとアナライトとの反応、バルク効果、および非特異吸着を感知する。これにより、たとえリガンド層6が伝搬層2およびコーティング層5の全面に形成されていても、コーティング層5はエバネッセント光を減衰させる厚みで形成されているので、リガンドとアナライトとの反応、バルク効果、および非特異吸着は、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aのみにおいて感知される。リガンド層6が形成された伝搬層2の表面2Aでは、アナライトとリガンドとの反応(結合)による屈折率の変化により、Y軸方向に伝搬される光のX軸方向の位相分布が変化する。これにより、測定用チップ1は、アナライトの有無或いは濃度を推定するための測定用チップとして機能する。
【0025】
このように、一実施形態に係る測定用チップ1では、コーティング層5は伝搬層2の表面に特定の平面形状で形成されている。これにより、仮に伝搬層2およびコーティング層5の全面に一様にリガンド層6を形成しても、リガンド層6は、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに、コーティング層5の平面形状とはパターンが反転した特定の平面形状で形成される。コーティング層5の形成は、ウェット工程に依らず例えば蒸着等により行うことができるので、工程再現性が向上し、工程を低コスト化できる。よって、一実施形態に係る測定用チップ1によると、測定の再現性や測定の精度はさらに向上する。
【0026】
図1および図2を参照して、一実施形態に係る測定用チップ1を構成する各部について説明する。
【0027】
伝搬層2は平板状である。光は導入部3から伝搬層2の内部に導入され、伝搬層2の上面および下面で全反射し、導出部4から導出される。本実施形態では、酸化チタン(TiO)および酸化タンタル(Ta)等の金属酸化物を主成分とする蒸着膜(屈折率約2.07、光の波長に応じて変化)を伝搬層2に用いる。伝搬層2の材料としては、このような蒸着膜以外にも、例えば、アクリル樹脂、ガラス、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、またはポリスチレン等の誘電体を用いることができる。例示的には、伝搬層2のZ軸方向の厚さは約50nm~約100nm、Y軸方向の長さは約4mm、X軸方向の長さは約270μm~約600μmである。なお、アクリル樹脂、ガラス、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、シリコーン樹脂、またはポリスチレン等の誘電体を伝搬層2の材料として用いる場合、伝搬層2自体を基材として機能させることができ、基材7を省略することができる。
【0028】
導入部3および導出部4は、伝搬層2に設けられている。本実施形態では、導入部3および導出部4には回折格子を用いる。回折格子は例えばナノインプリント方式により作製することができる。回折格子以外にも、例えばプリズムにより導入部3および導出部4を作製することができる。なお本実施形態では、導入部3および導出部4は伝搬層2の下面に設けられているが、導入部3および導出部は、伝搬層2の下面から上面にわたって設けられていてもよい。
【0029】
コーティング層5は、伝搬層2の表面に特定の平面形状で形成されている。コーティング層5は、平面視において少なくとも導入部3から導出部4の間に形成されていればよい。コーティング層5は、図1(A)および図2(A)に例示するように、平面視において導入部3上および導出部4上にさらに形成されていてもよいし、導入部3上または導出部4上のどちらかにさらに形成されていてもよい。
【0030】
コーティング層5の特定の平面形状とは、コーティングの形成領域における長さであり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って増加または減少する形状である。なお、特定の平面形状の一部に当該増加または減少する部分を含んでいてもよいし、特定の平面形状の全体において増加または減少していてもよい。特定の平面形状の一部に当該増加または減少する部分を含むとは、特定の平面形状が例えば平行四辺形や台形であることを指している。例示する平行四辺形や台形は、そのような増加または減少する部分を形状の一部に含んでおり、且つ、長さが一定の部分も有している。特定の平面形状の全体において増加または減少するとは、特定の平面形状が例えば直角三角形であることを指している。例示する直角三角形は、そのような増加または減少する部分を形状の全体に含んでいる。本実施形態では、特定の平面形状とは、図1(B)に例示するような直角三角形である。
【0031】
コーティング層5は、伝搬層2の表面からコーティング層5側の媒質に向けて浸透するエバネッセント光の染み出し長以上の厚みを有している。波長が約520nmの場合について例示すると、このようなエバネッセント光の染み出し長以上の厚さとして、コーティング層5は、好ましくは約132nm以上の厚さdを有しており、より好ましくは約250nm以上の厚さdを有している。理論的に、コーティング層5の屈折率は、伝搬層2の屈折率より低く、リガンド層6の屈折率と同じまたは同程度であることが好ましい。しかし一般的に安定性の高い透明材料はリガンド層6よりも屈折率が高いため、安定性を考慮すると、コーティング層5の屈折率は、伝搬層2の屈折率より低く、リガンド層6の屈折率より高い材料が最適となる。
【0032】
一例として、コーティング層5に二酸化ケイ素を用い、伝搬層2に上記した金属酸化物を主成分とする蒸着膜を用いる場合について、エバネッセント光の染み出し距離を算出し、コーティング層5の厚みをより具体的に例示する。エバネッセント光の染み出し距離とは、光の振幅が1/e(強度が1/e)になる長さを意味する。エバネッセント光の染み出し距離は、コーティング層5の屈折率と、伝搬層2の屈折率と、伝搬層2に伝播させる光の波長とその伝搬角θとで算出される。ここで伝搬角θは、伝搬層2とコーティング層5との界面に垂直な軸(図1のZ軸)と、伝搬層2内の光の進行方向との間の角度である。
【0033】
例えば、伝搬層2の屈折率が2.037であり、その上に形成するコーティング層5の屈折率が1.46であり、真空中の光の波長が520nmであり、伝搬層2を伝搬する光の伝搬角θが51.3°の場合、エバネッセント光の染み出し距離は、132.0nmと算出される。この距離が光の吸収領域となるため、コーティング層5の膜厚は、132.0nm以上とすることが好ましい。また例えば、伝搬層2の屈折率が1.987であり、その上に形成するコーティング層5の屈折率が1.45であり、真空中の光の波長が810nmであり、伝搬層2を伝搬する光の伝搬角θが52.8°の場合、エバネッセント光の染み出し距離は、203.6nmと算出される。この距離が光の吸収領域となるため、コーティング層5の膜厚は、203.6nm以上とすることが好ましい。
【0034】
本実施形態では、コーティング層5には二酸化ケイ素(屈折率約1.47)を用いる。二酸化ケイ素は、蒸着により伝搬層2の表面に形成可能である。コーティング層5の平面形状を図1(B)に例示するような直角三角形に形成するために、本実施形態ではメタルマスクを用いる。コーティング層の形状を有する例えば直角三角形の穴が開いたメタルマスクを作製し、蒸着時にメタルマスクでコーティング層5以外の領域をマスクすることにより、コーティング層5を直角三角形に形成する。また、二酸化ケイ素は、成膜時の温度上昇が小さく、伝搬層2との密着性が高いことから塩溶液中での剥離が少なく、コーティング層5に適した蒸着材料である。コーティング層5の材料としては、本実施形態において用いる二酸化ケイ素以外にも、例えばAl等の金属酸化物、フッ素系の低屈折率材料(屈折率約1.33~1.38程度)、またはこれらの混合物を用いることもできる。二酸化ケイ素を主成分とする、二酸化ケイ素と金属酸化物(例えばAl等)との混合物を用いることがより好ましい。フッ素系の低屈折率材料としては、例えばフッ化マグネシウム(MgF)やチオライト(登録商標)(NaAl14)を用いることができる。
【0035】
なお任意の処理として、コーティング層5の表面に、図示しない特性調整膜をさらに形成することができる。特性調整膜は、例えば上記した金属酸化物を用いて形成することができる。コーティング層5の表面に特性調整膜をさらにコーティングして形成することにより、露出面と特性を近づけることが可能となり、同等の表面処理を施すことが可能となるので、測定の安定性が向上し測定の精度が向上する。
【0036】
リガンド層6は、伝搬層2の表面に形成される。リガンドは、測定対象物中の被検出物質であるアナライトと特異的に反応または結合する物質である。本実施形態では、リガンド層6は、伝搬層2およびコーティング層5の表面に一様に形成されており、リガンド層6はコーティング層5の表面5Aにも形成されているが、リガンド層6は、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに少なくとも形成されていればよい。図示する例では、コーティング層5の平面形状は、図1(B)に例示するような直角三角形であり、導入部3と導出部4との間において、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状も、直角三角形となる。リガンド層6の屈折率は、約1.33である。
【0037】
このように、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aには、リガンド層6が、コーティング層5の平面形状とはパターンが反転した特定の平面形状に形成される。伝搬層2の表面2Aに位置する部分のリガンド層6では、光の伝搬方向(Y軸方向)のリガンドの含有量が光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って単調に変化している。これにより、リガンド層6が形成された伝搬層2の表面2Aでは、アナライトとリガンドとの反応(結合)による屈折率の変化により、Y軸方向に伝搬される光のX軸方向の位相分布が変化する。なお、リガンドの含有量は、光の伝搬方向における単位長さ当たりのリガンドの含有密度と、光の伝搬方向に沿ったリガンド層6の長さとを乗算することにより算出することができる。
【0038】
透明な基材7は任意の構成であり、伝搬層2の下面に備えられる。基材7には例えばガラス(屈折率約1.47~1.48)を用いることができる。他の実施形態では、測定用チップ1は、伝搬層2の下面と透明な基材7との間に、フッ素樹脂等の中間層をさらに備えることができる。
【0039】
図2を参照して、一実施形態に係る測定用チップ1を測定に使用する際の態様について説明する。
【0040】
測定に使用する際、測定用チップ1には、リガンド82が伝搬層2の表面に修飾されて、伝搬層2の表面にリガンド層6が形成される。リガンド層6が形成された測定用チップ1の上面には、図2(B)の断面図に一点鎖線で示すように、例えば凹状の断面を有する部材8が覆いかぶされて、部材8とリガンド層6との間に流路9が設けられる。流路9には、測定対象物の溶液が流される。測定対象物中にはアナライトが含まれている。
【0041】
導入部3を通じて伝搬層2に導入された光は、伝搬層2内を図中Y軸方向に伝搬し、導出部4を通じて伝搬層2から導出される。光は、伝搬層2内を図中Y軸方向に伝搬する間、流路9を流れる測定対象物溶液中のアナライトと、リガンド層6内のリガンドとの反応による屈折率変化の影響を受ける。測定用チップ1では、伝搬層2の表面2Aにおいて、光の伝搬方向(Y軸方向)のリガンド層6の長さが、伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って増加または減少するように、リガンド層6が形成されている。これにより、リガンド層6が形成されている伝搬層2の表面2Aでは、図中Y軸方向に伝搬する光が屈折率の変化による影響を受けて、図中X軸方向の位相分布が変化する。
【0042】
なお、図2(B)の断面図において、図中左側に示す、リガンド層6が形成されている伝搬層2の表面2Aでは、リガンドとアナライトとの反応、バルク効果および非特異吸着が感知され、図中右側に示す、コーティング層5が形成されている伝搬層2の表面では、リガンドとアナライトとの反応、バルク効果および非特異吸着は感知されない。
【0043】
[測定装置]
図3は、一実施形態に係る測定用チップを含む測定装置の模式的な構成を示す図である。
【0044】
一実施形態に係る測定装置10は、測定用チップ1(1A,1B)の導入部3に光を導く光源11(11A、11B)と、測定用チップ1の導出部4から導出された光を受光する受光部12(12A,12B)と、受光部12で受光される光のパターン(強度分布)の変化を分析する制御部13と、を備える。受光部12で受光される光のパターンは、測定対象物が測定用チップ1に接触し、リガンドとアナライトとが反応することにより変化する。本実施形態では、測定装置10は、受光部12の各受光素子により受光した光の強度情報を取得する測定部14をさらに備えている。
【0045】
なお制御部13および測定部14は、例えば専用の集積回路(IC: Integrated Circuit)を用いてハードウェア的に構成してもよいし、汎用コンピュータやスマートフォン、タブレット端末等の情報処理装置を用いてソフトウェア的に実現されてもよい。
【0046】
本実施形態では、測定装置10は、測定用チップ1と、光源11と、受光部12とのセットを2セット備え、リガンド層6が形成されている領域からの信号(ライン1)と、リガンド層6が形成されていない領域からの信号(ライン2)との2系統の測定信号を取得する。ライン1用の測定用チップ1では、伝搬層2およびコーティング層5の表面に一様にリガンド層6が形成されており、ライン2用の測定用チップ1ではリガンド層6は形成されていない。ライン2の信号は、バルク効果による影響や非特異吸着による影響をライン1の信号から差し引くための、参照信号(リファレンス信号)と表現することができる。
【0047】
他の実施形態では、測定装置10は、測定用チップ1と、光源11と、受光部12とをそれぞれ1つずつ備えることができる。この場合、1つの基材7上に2つの測定ライン、即ち2つの光導波路型バイオセンサを作製し、それぞれの測定ラインから上記したライン1およびライン2の2系統の測定信号を取得する。1つの光源11から放射される光は分割されて、それぞれの測定ラインに入射され、それぞれの測定ラインから導出される光を、1つの受光部12により受光する。
【0048】
以下の説明において、符号1Aを付した測定用チップは、ライン1用の測定用チップを意味し、符号1Bを付した測定用チップは、ライン2用の測定用チップを意味し、符号1を付した測定用チップは、ライン1用およびライン2用の両方を包含する測定用チップを意味することとする。測定用チップ1(1A,1B)に関する符号A,Bのこのような意味は、光源11(11A、11B)および受光部12(12A,12B)についても同様である。
【0049】
測定用チップ1(1A,1B)は、測定装置10内の所定の場所に配置される。光源11から放射される光は、導入部3を通じて測定用チップ1の下面から伝搬層2の内部に導入される。伝搬層2の内部を全反射した光は、導出部4を通じて測定用チップ1の下面から導出され、受光部12により受光される。
【0050】
光源11(11A、11B)は、例えば約650nm程度の可視光を放射する。光源11が放射する光の波長の範囲は、例えば約450nm~2000nmとすることができる。好ましくは、光源が放射する光はガウスビームである。ガウスビームは、光が伝搬する過程において光のパターン(強度分布)の概形が変化しないので、光のパターン(強度分布)の変化を検出するためには好適である。好ましくは、光源が放射する光は連続波(Continuous Wave)である。なおガウスビームは、図1に示すX軸方向およびZ軸方向の2次元にガウス分布である必要は無く、少なくともX軸方向にガウス分布であればよい。このような光源11には、例えば半導体レーザ装置を用いることができる。なおライン1用の光源11Aおよびライン2用の光源11Bは、同じ波長の光を放射することが好ましい。
【0051】
受光部12(12A,12B)は、導出部4から導出される光を受光する。受光部12は、1次元または2次元に配列された受光素子から構成されている。受光部12には、例えばCCDイメージセンサまたはCMOSイメージセンサ等の種々のイメージセンサを用いることができる。
【0052】
制御部13は、受光部12で受光される光のピーク角度の変化を分析する。本実施形態では、制御部13には、CPU等の演算装置(図示せず)と、メモリ等の記憶装置(図示せず)とを備える、例えばRaspberry PiまたはArduino(登録商標)等のシングルボードコンピュータを用いる。
【0053】
測定部14は、受光部12の各受光素子により受光した光の強度情報を取得する。取得した強度情報は制御部13に送信される。本実施形態では、測定部14は専用の集積回路を用いて構成する。
【0054】
図1図3を参照して、測定装置10の機能について説明する。
【0055】
光源11から放射され測定用チップ1の導入部3に導入された光は、伝搬層2の内部を全反射しながら伝搬する。光が全反射する際の位相シフトの量は、伝搬層2に接する周辺の物質の屈折率の大きさに依存する。伝搬層2の表面には、図1(B)、図1(C)および図2(B)に示すように、リガンド層6が伝搬層2に接している領域2Aと、コーティング層5が伝搬層2に接し、更にリガンド層6がコーティング層5の上に形成されている領域とが存在する。光が全反射する際の位相シフトの量はエバネッセント光の浸透領域内の屈折率に依存する。伝搬層2の表面の領域のうち、領域2Aの屈折率はリガンド層6の屈折率(約1.33)であり、コーティング層5が形成されている領域の屈折率はコーティング層の屈折率(約1.47)である。そのため、伝搬層2の表面において、リガンド層6が伝搬層2に接している領域2Aとコーティング層5が伝搬層2に接し、更にリガンド層6がコーティング層5の上に形成されている領域とでは、光が全反射する際の位相シフトの量が異なる。
【0056】
これにより、導入部3と導出部4との間において伝搬層2の内部を図中Y軸方向に伝搬する光は、図中X軸方向の位相分布が変化する。伝搬層2の表面2Aに形成されている部分のリガンド層6の平面形状が、光が伝搬するY軸方向の長さがX軸方向に沿って増加または減少する形状であるからである。よって、導出部4から導出される光の位相分布は、X軸方向に沿って傾斜することになり、光の進行方向が変化する。図2に示す構成において、コーティング層5の屈折率がリガンド層6の屈折率よりも高い場合、光の進行方向はX軸のプラスの方向に傾く。リガンドと測定対象物中のアナライトとが反応し測定対象物の一部がアナライトに置き換わると、領域2Aの屈折率が増加するため、光の進行方向はX軸のマイナスの方向に動く。バルク効果や非特異吸着によりリガンド層6の屈折率が増加した場合も同様に、光の進行方向はX軸のマイナスの方向に動く。
【0057】
したがって、測定装置10は、リガンド層6が形成されている領域(ライン1)と、リガンド層6が形成されていない領域(ライン2)とのそれぞれについて、受光部12A,12Bを用いて、導出部4から導出される光をファーフィールドにて(またはフーリエ変換レンズを通して)受光し、測定部14により、光の強度がピークとなる角度の変化を測定する。ピーク角度の変化は光の進行方向の変化と同じ現象であり、強度がピークとなる角度の変化は、光の進行方向の変化に対応する。測定部14により測定したピーク角度の変化は、制御部13に入力され、制御部13内の記憶装置(メモリ)に適宜記録される。制御部13は演算装置(CPU)を備えており、ライン1のピーク角度の変化のグラフからライン2のピーク角度の変化のグラフを差し引く。差し引いたグラフの変化が例えば所定の閾値以上であった場合に、リガンド層6内のリガンドがアナライトと反応したと判定する。或いは制御部13は、差し引いたグラフの形状に基づいて、アナライトの濃度又は速度論的パラメータ(Kinetics)を推定する。このように、制御部13は、光のパターンの変化を分析する分析処理を行う。また制御部13は、光の進行方向の変化を分析する分析処理を行う。このようにして、測定装置10は、アナライトの有無や、アナライトの濃度又は速度論的パラメータを推定する測定装置として機能する。
【0058】
図4は、一実施形態に係る測定用チップにより測定される信号を説明するための図である。
【0059】
図4(A)に示すように、ライン1用の測定用チップ1Aでは、伝搬層2およびコーティング層5の表面に一様にリガンド層6が形成されており、ライン2用の測定用チップ1Bではリガンド層6は形成されていない。図4(B)は、ライン1およびライン2のそれぞれの測定信号について、屈折率の変化を模式的に示すグラフである。図4(C)は、図4(B)に示すライン1およびライン2の測定信号の差分を模式的に示すグラフである。
【0060】
図4(B)の左側に示すように、測定用チップ1Aの表面にリガンド層6が形成されているライン1からの測定信号には、所望の反応(例えば、抗原抗体反応)および非特異吸着による情報71と、バルク効果による情報73とが含まれている。図4(B)の右側に示すように、測定用チップ1Bの表面にリガンド層6が形成されていないライン2からの測定信号には、非特異吸着のみによる情報72と、バルク効果による情報73とが含まれている。
【0061】
図8および図9に示す特許文献1の測定用チップ91では、図4(C)に示す差分信号に相当する信号のみが取得される。しかしながら、符号73で示すバルク効果による影響や符号72で示す非特異吸着による影響が大きいと、測定信号を差し引くことでもキャンセルしきれない成分が生じ、このキャンセルしきれない成分が、特許文献1の測定用チップ91を用いた測定において、測定データの信頼性を低下させる要因となっている。例えば図4(C)において、符号79で示す成分は、バルク効果のキャンセルしきれなかった成分であり、非特異吸着でキャンセルしきれない成分は、符号79の間の符号70で示す線に含まれる。なお破線は、アナライト-リガンドの理想的なレスポンスを示している。このように、バルク効果による影響の大きさや非特異吸着による影響の大きさは、測定データの信頼性の指標として得ておきたいものの、特許文献1の測定用チップ91では得ることができない。
【0062】
これに対し、一実施形態に係る測定用チップ1によると、測定用チップ1Bのコーティング層5の表面5Aでは、バルク効果、非特異吸着が感知されない。これにより、測定結果には、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aにおけるバルク効果、非特異吸着が反映される。これにより、バルク効果や非特異吸着が反映された測定結果は、ライン2から単独で取得することができ、ライン2からの測定信号は、測定データの信頼性の指標として活用することが可能となる。
【0063】
一方で、測定用チップ1Aにはリガンド層6が存在するため、測定結果には、リガンド-アナライトの反応、コーティング層5から露出する領域のバルク効果、非特異吸着が反映される。一実施形態に係る測定装置10および測定方法によると、図4(C)に示すように、ライン1およびライン2の測定信号の差分信号を取得することが可能であり、一実施形態に係る測定用チップ1は、測定の信頼性をさらに向上させたうえで、特許文献1の測定用チップ91と同様に機能することができる。
【0064】
[測定方法]
図5は、一実施形態に係る測定方法を説明するためのフローチャートである。一実施形態に係る測定方法では、一実施形態に係る測定用チップ1を用いて、コーティング層5が特定の平面形状で表面に形成されている伝搬層2において光を全反射させることにより、測定を行う。
【0065】
測定に際し、ライン1用およびライン2用の2つの測定用チップ1を予め準備しておく。ライン1用の測定用チップ1Aには、伝搬層2およびコーティング層5の表面に一様にリガンド層6を形成しておく。ライン2用の測定用チップ1Bには、リガンド層6を形成しない。引き続き、2つの測定用チップ1のそれぞれについて、例えば凹状の断面を有する部材8を測定用チップ1の上面に覆い被せ、測定用チップ1の上面と部材8との間に流路9を設けておく。このように準備したライン1用およびライン2用の2つの測定用チップ1を、図3に例示するように測定装置10内の所定の場所に配置する。なお以下のステップS1~S3の工程は、ライン1用およびライン2用の2つの測定用チップ1のそれぞれについて行う。ライン1用およびライン2用の2つの測定用チップ1のうち、ライン1用の測定用チップ1Aにはリガンド層6が形成されており、測定対象物溶液内のアナライトはリガンド層6内のリガンドと反応することができる。ライン2用の測定用チップ1Bにはリガンド層6が形成されておらず、測定用チップ1Bは参照用(リファレンス用)に用いられる。
【0066】
ステップS1では、光の進行方向の測定を開始して、進行方向をリアルタイムで取得しプロットする。伝搬層2の表面には、測定対象物中のアナライトに反応するリガンド層6が形成されている。進行方向の測定は、測定用チップ1の導入部3を通じて伝搬層2に光を導入し、伝搬層2において全反射されて導出部4を通じて伝搬層2から導出される光の強度の、受光部12上でのピーク位置を測定することにより行う。ここで、光の進行方向(ピ―ク角度)の変化量は、受光部12上でのピーク位置の変化量から、測定用チップ1と受光部12の間の距離を除した値と近似的に一致する。
【0067】
ステップS2では、測定対象物を測定用チップ1に接触させる。測定対象物の接触は、測定用チップ1の上面に、アナライトが含まれた測定対象物を接触させることにより行う。一般的には、測定対象物を接触させる前および後のタイミングでバッファを測定用チップ1に接触させる。測定対象物を接触させる前にバッファを接触させる理由は、バッファを接触させずに測定対象物を測定用チップ1に接触させると、溶液自体の屈折率の影響や、足場材料の体積変化などの影響が測定信号に反映されてしまうためである。測定対象物を接触させた後にバッファを接触させる理由は、解離の測定信号も取得した方が、その後の解析の精度が向上するためである。
【0068】
測定対象物が複数ある場合にはこのステップS2を複数回繰り返す。ステップS2を複数回繰り返す際に、任意の処理として再生処理を行う。再生処理は、測定用チップ1を例えばpH3~1程度の酸性溶液に接触させることで、リガンドとアナライトとを短時間で解離させることにより行う。なお再生処理は、解離が速いアナライトであれば省略が可能である。
【0069】
ステップS3では、光の進行方向の測定およびプロットを終了し、ステップS4(比較ステップ)において、ライン1の測定用チップ1Aに関して取得したピーク角度の変化のグラフから、ライン2の参照用(リファレンス用)チップ1Bに関して取得したピーク角度の変化のグラフを差し引いて図4(C)を求める。
【0070】
差し引いて求めた図4(C)のグラフにより、例えば信号の変化が所定の閾値以上であった場合に、リガンド層6内のリガンドがアナライトと反応した(すなわち、測定対象物中にアナライトが存在する)と判定することができる。或いは、図4(C)の信号の曲線形状に基づいて、アナライトの濃度又は速度論的パラメータを推定することができる。このように、一実施形態に係る測定方法によると、アナライトの有無を判定するまたはアナライトの濃度又は速度論的パラメータを推定することができる。
【0071】
また、ステップS4において、ライン2の参照用(リファレンス用)チップ1Bに関して取得した測定信号から、図4(C)を参照して説明したような、バルク効果の量および非特異吸着の量を見積もることができる。これにより、ライン2からの測定信号を用いて、測定結果の信頼性を評価することができる。
【0072】
なお、測定用チップ1を用いる測定では、測定用チップ1の図中Y軸方向の長さを変化させることにより、伝搬層2内部において光が反射する回数を調整することができる。これにより、測定の感度を変化させることができる。例えば、図中Y軸方向の長さを長くするほど、光が反射する回数は増大するので、測定の感度は向上する。
【0073】
また、測定用チップ1を用いる測定では、仮に光源11の出力強度が変化したとしても、ピーク角度の変化量が変わることはない。これにより、測定用チップ1を用いる測定では、光源11の動作が多少不安定な場合であっても、安定した測定が可能となる。
【0074】
[その他の形態]
以上、本発明を特定の実施形態によって説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。
【0075】
上記した実施形態では、図1および図2に例示するように、コーティング層5の平面形状は平面視で直角三角形であり、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状も平面視で直角三角形であるが、コーティング層5の平面形状は例示する直角三角形に限定されることはなく、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状も、例示する直角三角形に限定されない。図6に例示するように、コーティング層5の平面形状は、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って増加または減少する形状が含まれていればよい。すなわち、コーティングの形成領域における長さであり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って増加または減少する形状が含まれていればよい。当該増加または減少する部分は、特定の平面形状の一部に含まれていてもよいし、特定の平面形状の全体において増加または減少していてもよい。これにより、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状も、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って増加または減少する形状が含まれる。
【0076】
図6は、他の実施形態に係るコーティング層5の平面形状のバリエーションを示す平面図である。
【0077】
図6(A)に例示するコーティング層5の平面形状は、二等辺三角形であり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って連続的かつ線形に長くなっている。図6(A)の例において、リガンド層6を表面に一様に形成すると、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状は2つの直角三角形が対向する形で並んだ形状となり、光の伝搬方向のリガンドの含有量が垂直方向に沿って連続的かつ線形に変化する。
【0078】
図6(B)に例示するコーティング層5の平面形状は、直角三角形が2つ並んだ形状であり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って連続的にかつ線形に長くなっている。図6(B)の例において、リガンド層6を表面に一様に形成すると、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6の平面形状も、直角三角形が2つ並んだ形状となり、光の伝搬方向のリガンドの含有量が垂直方向に沿って連続的かつ線形に変化する。
【0079】
図6(A)および図6(B)に例示する態様では、導出部4から導出される光の位相分布は、図1および図2に例示する態様と近いため、図1および図2に例示する態様と近い効果が期待できる。ここで、図6(A)に例示する態様では、屈折率変化に対するピーク角度の変化量が図1に示す態様よりも増加するため、振動等のノイズに対して有利となる。また、図6(A)に例示する態様では、伝搬光の伝搬過程及び導出部4におけるX軸上の存在範囲が図1の場合よりも小さくなるため、図2に示す流路9のX軸方向の幅を狭くでき、より高精度な測定が可能となる。更に、光源の入射方向を図6(A)中のX軸のマイナス方向に傾けることで、伝搬光の伝搬過程及び導出部4におけるX軸上の存在範囲をより小さくでき、流路9のX軸方向の幅をより一層狭くできる。なお、図6(A)のコーティング層5とコーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aとで配置を入れ替えた場合も類似の効果が得られる。
【0080】
より詳細には、測定用チップ1の性能を示す指標には例えば次の3つの指標(第1の指標~第3の指標)がある。図6(A)に例示する態様によると、第1の指標と第3の指標とを向上させることができる。
・第1の指標:角度変化量/屈折率変化
大きい方が高感度(対振動などの角度変化ノイズ)
・第2の指標:(角度変化量/ビーム幅)/屈折率変化
大きい方が高感度(対電気ノイズなどの強度変化ノイズ)
・第3の指標:導波路内のビーム存在範囲の狭さ
狭い方が流路を細くでき、高精度な測定が可能
【0081】
図6(C)に例示するコーティング層5の平面形状は、平面視において、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って、連続的にかつ非線形に長くなっている。図6(C)の例において、リガンド層6を表面に一様に形成すると、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aに形成される部分のリガンド層6では、リガンドの含有量が垂直方向に沿って連続的にかつ非線形に変化する。この場合は、光の進行方向が変化するとともに、光の広がり角も変化する。したがって、光の進行方向以外の要素も変化する。
【0082】
図6(D)に例示するコーティング層5の平面形状は、階段状の形状であり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って非連続に変化している。この場合は、回折光が出現し、回折光の各次数の進行方向及び、強度比が変化する。
【0083】
図1図2図6(A)、図6(B)、図6(C)、および図6(D)に示す例は、リガンド層の含有密度が一定であって、かつ、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが垂直方向に沿って単調に変化する例である。図1図2図6(A)、図6(B)、および図6(C)の例は、リガンドの含有密度が一定であって、かつ、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが垂直方向に沿って連続的に変化する例である。図1図2図6(A)、および図6(B)の例は、リガンドの含有密度が一定であって、かつ、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが垂直方向に沿って線形に変化する例である。
【0084】
図6(E)に例示するコーティング層5の平面形状は、二等辺三角形の外部であり、光の伝搬方向(Y軸方向)の長さが、光の伝搬方向に対する垂直方向(X軸方向)に沿って、連続的にかつ線形に短くなった後に、連続的かつ線形に長くなっている。通常、コーティング層5の屈折率はリガンド層6よりも十分大きいため、この場合は、導出部4から導出される光が2本に分割され、分割された2本の光のピーク角度の差を求めることにより、振動等によるノイズを相殺することができるというメリットがある。
【0085】
なお、図1図2図6(A)、図6(B)、図6(C)、図6(D)および図6(E)に例示したコーティング層5の種々の平面形状について、X軸に沿った反転、Y軸に沿った反転、コーティング層5の領域と伝搬層2の領域との反転、およびこれらの組み合わせが可能であり、それらの平面形状においても類似した効果が得られることは言うまでもない。
【0086】
上記実施形態では、アナライトおよびリガンドの組み合わせとして抗原と抗体の例を示したが、組み合わせはこれに限定されるものではない。アナライトおよびリガンドの組み合わせとしては、酵素と基質、ホルモンと受容体、DNA相補対なども可能である。これらの場合においても、伝搬層2の表面において、コーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aとコーティング層5が形成されている領域とでは、光が全反射する際の位相シフトの量が異なり、アナライトとリガンドとの結合によってコーティング層5から露出する領域の伝搬層2の表面2Aの領域における当該位相シフト量が変化することは言うまでもない。
【0087】
上記実施形態に係る測定用チップを用いた測定装置および測定方法では、生体分子の結合反応を一例としているが、例示する生体分子の結合反応以外であっても屈折率変化を伴う反応であれば、適用が可能である。一例として、上記実施形態に係る測定用チップを用いた測定装置および測定方法は、ガスセンサ等にも応用が可能である。この場合、ガスをアナライトとし、ガスと反応することで屈折率が変化する化学物質をリガンドとすればよい。
【0088】
[実施例]
以下に本発明の実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【実施例0089】
実施例1では、作製した測定用チップの性能評価を行った。性能評価は、測定用チップの上面に流すバッファ溶液の塩濃度を変化させながら、測定装置を用いて、受光部で受光される光のピーク位置の変化を観測することにより行った。観測結果のグラフを図7に示す。
【0090】
図7のグラフに示されているように、バッファ溶液の塩濃度が変化する複数のタイミング(例えば、約1,700秒付近、約2,700秒付近、および約3,600秒付近)において、観測される光のピーク位置も変化していた。このことから、作製した測定用チップにおいて、溶液の屈折率の影響であるバルク効果を観測できていることが確認された。
【実施例0091】
実施例2では、コーティング層の表面における屈折率の感知度とコーティング層の厚さとの関係について数値シミュレーションを行った。数値シミュレーションは、伝搬層を全反射する光の波長が約520nmの場合と約810nmの場合とのそれぞれについて、コーティング層に二酸化ケイ素(SiO)を用いることを想定して行った。測定用チップの導入部に入射する光について、図1(A)でいうZ軸方向に電場を持つ光をP偏光と定義し、X軸方向に電場を持つ光をS偏光と定義した。なお、入射光にP偏光を用いた方が感度が高く、導入部での伝搬層への結合効率が高いため、実用性が高い。P偏光を用いた場合、最適な伝搬層の膜厚は、S偏光を用いた場合の2倍弱となる。数値シミュレーションの条件および結果を表1および表2に示す。
【表1】
【表2】
【0092】
コーティング層SiOの厚さが厚い方が、伝搬層の内部からコーティング層の表面のリガンド層に向けて浸透するエバネッセント光がより減衰するので、コーティング層の表面において屈折率の変化が感知され難くなり好ましい。実用上は、屈折率の感知度が約1%程度であれば十分である。表2に示す数値シミュレーションの結果に基づくと、コーティング層SiOの厚さは、波長が520nmの場合は約250nm以上が好ましく、波長が810nmの場合は約400nm以上が好ましいことが示された。
【符号の説明】
【0093】
1(1A,1B) 測定用チップ
2 伝搬層
3 導入部
4 導出部
5 コーティング層
6 リガンド層
7 基材
8 部材
9 流路
10 測定装置
11(11A,11B) 光源
12(12A,12B) 受光部
13 制御部
14 測定部
80 リガンド溶液
81 足場材料
82 リガンド
83 結合サイト
89 マスク
91 測定用チップ
92 伝搬層
93 導入部
94 導出部
96 リガンド層
97 基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9