(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081925
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】判定システム、判定方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G16H 10/40 20180101AFI20240612BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20240612BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20240612BHJP
G06T 7/00 20170101ALI20240612BHJP
【FI】
G16H10/40
G01N33/543 521
G01N21/78 A
G06T7/00 350B
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195515
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】勝亦 優
(72)【発明者】
【氏名】宮田 健一
(72)【発明者】
【氏名】沼田 徳樹
【テーマコード(参考)】
2G054
5L096
5L099
【Fターム(参考)】
2G054AA07
2G054AB02
2G054AB04
2G054AB05
2G054CA21
2G054CA22
2G054CA23
2G054CA25
2G054CE02
2G054EA05
2G054EA06
2G054EB02
2G054FA08
2G054FA12
2G054FA33
2G054FA42
2G054FA44
2G054FB02
2G054FB03
2G054GA03
2G054GB10
2G054GE06
2G054JA01
2G054JA02
2G054JA05
2G054JA07
5L096BA06
5L096BA13
5L096GA41
5L096KA04
5L099AA03
(57)【要約】
【課題】検査器具を用いた検査における検査結果を判定するための学習済みモデルにかかるコストを低減することが可能な判定システム、判定方法、及びプログラムを提供する。
【解決手段】検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得部と、前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化部と、前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定部と、を備える判定システム。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得部と、
前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得部と、
前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化部と、
前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定部と、
を備える判定システム。
【請求項2】
前記濃淡定量値と検査結果との関係を示す判定基準を前記検査器具の種類ごとに記憶する判定基準記憶部、
をさらに備え、
前記判定部は、前記ラインの濃淡が定量化された前記検査器具の種類を前記種類情報に基づき特定し、特定した前記検査器具の種類に対応する前記判定基準を用いて前記検査結果を判定する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項3】
前記検査結果は、陽性又は陰性によって示され、
前記判定基準は、偽陽性及び偽陰性を除くよう設定される、
請求項2に記載の判定システム。
【請求項4】
前記学習済みモデルは、前記検査器具の種類ごとに、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡に応じた前記濃淡定量値が対応付けられた前記撮像画像を教師データとして、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記濃淡定量値との関係を学習する、
請求項1に記載の判定システム。
【請求項5】
前記教師データにおいて前記撮像画像に対応付けられる前記濃淡定量値は、前記ラインの濃さの下限値と前記ラインの濃さがプラトーとなる値との間の範囲において、前記検査対象物の濃度の下限値と上限値との間の範囲が分割された分割範囲ごとに設定される、
請求項4に記載の判定システム。
【請求項6】
前記教師データにおいて前記撮像画像に対応付けられる前記濃淡定量値は、前記検査器具の全ての種類に共通に用いられ、前記分割範囲は前記検査器具の種類ごとに前記ラインの濃さと前記検査対象物の濃度との関係に応じて拡大又は縮小する、
請求項5に記載の判定システム。
【請求項7】
種類情報取得部が、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得過程と、
撮像画像取得部が、前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得過程と、
定量化部が、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化過程と、
判定部が、前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定過程と、
を含む判定方法。
【請求項8】
コンピュータを、
検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得手段と、
前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、
前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化手段と、
前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定手段と、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定システム、判定方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場において、検査器具(例えば抗原検査キットなどの体外診断用医薬品)を用いた検査が行われている。例えば抗原検査キットでは、抗原検査キット中の抗体と、抗原検査キットに供給した検体中の抗原とが反応すると、抗原検査キットにラインが表示される仕様になっている。よって、抗原検査キットに検体を供給して、ラインが表示されるか否かによって陽性又は陰性を判定することができる。
【0003】
近年、新型コロナウイルスの流行によって医療現場が逼迫し、医療現場にて検査を受けられない人が増加することがあった。これに伴い、検査を希望する人が自分自身で検査を行うことができる環境の整備が進められている。現在では、検査を希望する人は、自治体から配布される検査器具やドラッグストアで購入した検査器具などを用いて、医療現場へ赴かなくとも自宅などにて自分自身で検査をすることができるようになっている。上述したように、抗原検査キットではラインの有無を確認することで検査結果を判定できるため、習熟した医療従事者ではない一般人であっても、容易に検査を行うことができる。
【0004】
しかしながら、検査結果は、ラインの有無だけでなく、ラインの濃淡(即ち検体中の抗原量)によって異なる場合もある。このため、検査キットの使用者は、ラインの濃淡も読み取ることで、より精度の高い検査結果を得ることができる。しかしながら、ラインの濃淡を目視で読み取って判定することは、習熟した医療従事者でも困難であった。
そこで、例えば下記特許文献1には、検査キットを撮影した画像を入力として検査結果を出力する学習済みモデルを用いて、検査キットの種類毎に検査結果を自動で判定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2020/256041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載された学習済みモデルには複数種類の検査キットに適用できるような汎用性はない。このため、複数種類の検査キットについて検査を行うには種類ごとに学習済みモデルを用意する必要があるが、種類の数だけ学習済みモデルを用意するためには多くのコスト(例えば時間や費用など)がかかってしまう。
【0007】
上述の課題を鑑み、本発明の目的は、検査器具を用いた検査における検査結果を判定するための学習済みモデルにかかるコストを低減することが可能な判定システム、判定方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するために、本発明の一態様に係る判定システムは、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得部と、前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得部と、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化部と、前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定部と、を備える。
【0009】
本発明の一態様に係る判定方法は、種類情報取得部が、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得過程と、撮像画像取得部が、前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得過程と、定量化部が、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化過程と、判定部が、前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定過程と、を含む。
【0010】
本発明の一態様に係るプログラムは、コンピュータを、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得手段と、前記検査器具において、前記検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが前記反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得手段と、前記検査器具の種類と、前記ラインの濃淡と、前記ラインの濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した学習済みモデルに前記種類情報と前記撮像画像を入力することで、前記撮像画像が示す前記ラインの濃淡が定量化された前記濃淡定量値を取得する定量化手段と、前記種類情報と前記濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定手段と、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、検査器具を用いた検査における検査結果を判定するための学習済みモデルにかかるコストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る判定システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る検査器具の一例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係るユーザ端末の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】本実施形態に係る判定サーバの機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係る検査対象物の濃度とラインの濃さとの関係の一例を示す図である。
【
図6】本実施形態に係るラインの濃淡を定量化するために設定される定量化レンジの一例を示す図である。
【
図7】本実施形態に係るA社の検査器具に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係るB社の検査器具に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
【
図9】本実施形態に係るC社の検査器具に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る判定システムにおける処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について詳しく説明する。
【0014】
<1.判定システムの概略構成>
図1を参照して、本実施形態に係る判定システムの概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る判定システムの概略構成の一例を示すブロック図である。
図1に示す判定システム1は、検査器具を用いた検査の検査結果を判定するためのシステムである。検査結果は、例えば、陽性又は陰性によって示される。
図1に示すように、判定システム1は、ユーザ端末10と、判定サーバ20と、検査器具30とを備える。
【0015】
ユーザ端末10と判定サーバ20は、ネットワークNWを介して、通信可能に接続されている。ネットワークNWには、情報の授受を行うための構成として、例えば、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、電話網(携帯電話網、固定電話網等)、地域IP(Internet Protocol)網、インターネット等が適用される。
【0016】
(1)ユーザ端末10
ユーザ端末10は、検査器具30を用いた検査を実施する者(ユーザ)が有する端末である。検査を実施する者は、例えば、検査対象者(患者)自身であってもよいし、検査対象者以外の者であってもよい。ユーザ端末10は、例えば、スマートフォンやタブレット端末などの携帯端末、又はPC(Personal Computer)などである。
【0017】
ユーザ端末10には、ユーザによる検体の検査から検査結果の登録までを支援するためのアプリケーション(以下、「検査支援アプリ」とも称される)によって、検査支援のための画面が表示される。ユーザは、検査支援アプリによってユーザ端末10に表示される画面に従って検体の検査から検査結果の登録までの作業を行う。
本実施形態では、検査支援アプリの機能は、Webシステム(即ちWebアプリ)によって提供される。このため、検査支援アプリはサーバ(例えば判定サーバ20)で管理されており、その機能はWebブラウザを介して提供される。
【0018】
(2)判定サーバ20
判定サーバ20は、ユーザ端末10によって取得される情報に基づく判定を行うサーバである。判定サーバ20は、1つ又は複数のサーバ(例えば、クラウドサーバ)で構成される。
【0019】
(3)検査器具30
検査器具30は、臨床検査薬の構成要素となる器具である。臨床検査薬は、疾患の有無を検査するために用いられる。検査方法には、例えば、ラテラルフローアッセイ(ラテラルフロー法)、ELISPOT法など、疾患の有無を診断するために検査対象物の存在の有無を検査する方法がある。免疫アッセイが適用されるラテラルフローアッセイのことを、特に、イムノクロマトグラフィーと呼ぶことがある。なお、臨床検査薬には、検体を採取するための検体採取治具、抽出液、検出用試薬等が含まれていてもよい。
【0020】
ここで、
図2を参照して、本実施形態に係る検査器具30について説明する。
図2は、本実施形態に係る検査器具30の一例を示す図である。
図2に示すように、検査器具30は、二次元コード310と、供給部320と、呈色部330とを備える。
【0021】
(3-1)二次元コード310
二次元コード310は、検査器具30の個体識別情報が埋め込まれた二次元のコード画像である。二次元コード310は、読取用情報の一例である。読取用情報は、検査器具30の筐体に付される。読取用情報は、検査器具30の筐体に対して直接印刷されてもよいし、検査器具30に貼付するシールなどに印刷されてもよい。
個体識別情報は、検査器具30を一意に識別する情報であって、例えば、検査器具30の製造メーカ名、ロット番号、及び製造番号、検査対象物、検査対象物に対応する疾患、その疾患の項目などを示す情報である。
なお、検査器具30においてその個体識別情報が何らかの方法で特定可能であればよく、例えば、個体識別情報が検査器具30にそのまま印刷されている場合には二次元コード310は省略されてもよい。
【0022】
(3-2)供給部320
供給部320は、検体が供給される領域である。供給部320は、例えば、検体供給窓321を備える。例えば、検体供給窓321に、検査対象者の検体が供給されることによって、供給部320に検体が供給される。検体は、検体採取治具によって、例えば検査対象者の鼻腔、口腔、咽頭などから採取される。採取された検体は、抽出液によって検体採取治具から抽出され、検体と抽出液からなる試料(検体液)として調製される。供給部320には、検体供給窓321に試料が滴下されることで、当該試料に含まれる検体が供給される。
【0023】
(3-3)呈色部330
呈色部330は、呈色反応の結果(反応結果)が表示される領域である。呈色反応は、検体に検査対象物が含まれていた場合に変色又は発色する化学反応である。呈色部330は、例えば、コントロールライン331と、テストライン332とを備える。コントロールライン331は、供給部320に供給された検体が、呈色部330まで正常に移動した場合に、線(ライン)が現れる領域である。テストライン332は、検体中に、標的とするウイルスや抗体等(検査対象物)が存在する場合に線が現れる領域である。テストライン332に現れる線の濃淡は、検体に含まれる検査対象物の濃度に応じて変化する。即ち、テストライン332は、検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが反応結果として表示される領域である。
なお、検査対象物が複数種類ある場合、それぞれの検査対象物に対応する複数のテストライン332が呈色部330に設けられてもよい。
【0024】
(検体について)
本実施形態における検体は、検査対象者から採取された検体である。検体は、例えば、綿棒などで喉をこすることによって採取された粘液等である。検体は、液体であることが望ましく、例えば、末梢血、血清、血漿、腹水、尿、脳脊髄液、痰、唾液、骨髄、滑液、眼房水、羊水、耳垢、母乳、気管支肺胞洗浄液、精液、前立腺液、カウパー液若しくは射精前液、汗、糞便、毛髪、涙、嚢胞液、胸水若しくは腹水、囲心腔液、リンパ液、糜粥、乳糜、胆汁、間質液、月経分泌物、膿、皮脂、嘔吐物、膣分泌物、粘膜からの分泌物、水便、膵液、鼻腔からの分泌液、咽頭からの分泌液、鼻腔拭い液、咽頭拭い液、鼻腔からの洗浄液、気管支肺吸引物、胚盤胞腔液、臍帯血等であり、疾患を診断する際の指標となる物質を含んだものである。
【0025】
(検査対象物について)
本実施形態における検査対象物は、臨床検査薬で検査する対象となる物質である。例えば、検査対象物は、細胞、菌、ウイルス、エクソソーム、核酸、ポリペプチド(抗原ならびに抗体を含む)、ポリヌクレオチド、脂質、リン脂質、糖質、多糖、糖タンパク、低分子化合物、細胞もしくは菌からの代謝物、ならびに菌もしくはウイルス、エクソソームの断片等の単独の物質(物体)もしくはこれらの複合体の物質(物体)である。
【0026】
(疾患について)
本実施形態における疾患は、病気のことであり、代表的な分類として、がん、高血圧症、糖尿病、心疾患、脳血管障害、精神神経疾患、免疫・アレルギー疾患、感染症などがある。
【0027】
(疾患の項目について)
疾患の項目は、上記の疾患をより細分化したものであって、疾患の原因および代謝物、現象などがある。例えば、疾患の項目は、コロナウイルス、インフルエンザ、アデノウイルス、RSウイルス、ロタウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、HIV、ヘルペスウイルス、ノロウイルス、ヒトメタニューモウイルス、A群ベータ溶連菌、ヘリコバクターピロリ、梅毒トレポネーマ、マイコプラズマ、クロストリジウムディフィシル、マイコバクテリウム、大腸菌O157、大腸菌ベロ毒素、肺炎球菌、レジオネラ、プロカルシトニン、クラミジア、淋菌、アレルギー性結膜炎、黄体形成ホルモン(LH)、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)、BNP、NT-proBNP、CK-MB、ミオグロビン、トロポニン、Dダイマー、H-FABP、顆粒球エラスターゼ、癌胎児性抗原(CEA)、便潜血、インスリン様成長因子結合タンパク、fFN、アレルギー検査、CRP、抗CCP抗体などがある。
【0028】
<2.ユーザ端末の機能構成>
以上、本実施形態に係る判定システム1の概略構成について説明した。続いて、
図3を参照して、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成について説明する。
図3は、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成の一例を示すブロック図である。
図3に示すように、ユーザ端末10は、通信部110と、入力部120と、撮像部130と、記憶部140と、制御部150と、出力部160とを備える。
【0029】
(1)通信部110
通信部110は、各種情報を送受信する機能を有する。例えば、通信部110は、判定サーバ20と通信を行い、各種情報を送受信する。
【0030】
(2)入力部120
入力部120は、ユーザからの入力を受け付ける機能を有する。入力部120は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える入力装置、例えばボタン、タッチパネル、マイクロフォン等によって構成される。
【0031】
(3)撮像部130
撮像部130は、撮像画像を撮像する機能を有する。撮像部130は、例えば、ユーザ端末10がハードウェアとして備えるカメラによって構成される。
【0032】
(4)記憶部140
記憶部140は、各種情報を記憶する機能を有する。記憶部140は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)、RAM(Random Access read/write Memory)、ROM(Read Only Memory)、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
【0033】
(5)制御部150
制御部150は、ユーザ端末10の動作全般を制御する機能を有する。制御部150は、例えば、ユーザ端末10がハードウェアとして備えるCPU(Central Processing Unit)にプログラムを実行させることによって実現される。
図3に示すように、制御部150は、操作受付部151と、出力制御部152とを備える。
【0034】
(5-1)操作受付部151
操作受付部151は、入力部120に入力されたユーザの操作を受け付ける機能を有する。ユーザは、例えば、アプリ起動操作、種類入力操作、撮像操作などを行う。
アプリ起動操作は、検査支援アプリを起動する操作である。初回起動時の場合、ユーザは、個人情報や顔写真などの事前登録を行う。事前登録済みの場合、ユーザは、サインインを行う。
【0035】
種類入力操作は、検査結果の判定対象となる検査器具30の種類を入力する操作である。検査器具30の種類は、例えば、メーカと検査可能な検査対象物の種類とに基づき分類される。一例として、検査器具30の種類は、A社のコロナウイルス抗原検査キット、A社のインフルエンザ抗原検査キット、B社のコロナウイルス抗原検査キット、B社のインフルエンザ抗原検査キットなどのように分類される。
ユーザによる検査器具30の種類の入力は、名称を直接入力可能であってよいし、画面に表示されるガイドに沿って選択可能であってもよい。ユーザによって入力された検査器具30の種類を示す情報(以下、「種類情報」とも称される)は、通信部110を介して判定サーバ20へ送信される。
【0036】
撮像操作では、検査器具30を撮像するための操作である。具体的に、ユーザは、まず、ユーザ端末10の撮像部130を起動する操作を行う。当該操作を受け付けた操作受付部151は、撮像部130を起動する。撮像部130の起動後、ユーザは、反応結果が示されている呈色部330が少なくとも含まれるように、検査器具30を撮像する。なお、ユーザは、検査器具30の供給部320に対して検体を供給してから規定反応時間が経過した後に、撮像操作を行うものとする。
ユーザが撮像部130で撮像した撮像画像は、通信部110を介して判定サーバ20へ送信される。
【0037】
(5-2)出力制御部152
出力制御部152は、各種画面や情報の出力を制御する機能を有する。例えば、出力制御部152は、検査支援アプリの画面を出力部160に表示させる。また、出力制御部152は、通信部110が判定サーバ20から受信する情報を出力部160に表示させる。通信部110が判定サーバ20から受信する情報は、例えば、陽性又は陰性を示す検査結果である。
また、出力制御部152は、操作受付部151がユーザから受け付けた操作に応じて、操作ガイドなどを出力部160に表示させてもよい。
【0038】
(6)出力部160
出力部160は、各種情報を出力する機能を有する。出力部160は、ユーザ端末10がハードウェアとして備える出力装置、例えばディスプレイ装置やタッチスクリーン(タッチパネル)などの表示装置やスピーカなどの音声出力装置によって構成される。
【0039】
<3.判定サーバの機能構成>
以上、本実施形態に係るユーザ端末10の機能構成について説明した。続いて、
図4を参照して、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成の一例を示すブロック図である。
図4に示すように、判定サーバ20は、通信部210と、記憶部220と、制御部230とを備える。
【0040】
(1)通信部210
通信部210は、各種情報を送受信する機能を有する。例えば、通信部210は、ユーザ端末10と通信を行い、各種情報を送受信する。
【0041】
(2)記憶部220
記憶部220は、判定サーバ20がハードウェアとして備える記憶媒体、例えば、HDD、SSD、フラッシュメモリ、EEPROM、RAM、ROM、又はこれらの記憶媒体の任意の組み合わせによって構成される。
図4に示すように、記憶部220は、モデル記憶部221と、判定基準記憶部222を備える。
【0042】
(2-1)モデル記憶部221
モデル記憶部221は、定量化モデルを記憶する機能を有する。定量化モデルは、テストライン332の濃淡を定量化するモデルである。定量化モデルは、検査器具30の種類と、テストライン332の濃淡と、テストライン332の濃淡が定量化された値(以下、「濃淡定量値」とも称される)との関係を学習(機械学習)した学習済みモデルである。
【0043】
定量化モデルは、例えば、検査器具30の種類ごとに、撮像画像が示すテストライン332の濃淡に応じた濃淡定量値が対応付けられた撮像画像を教師データとして、検査器具30の種類と、ラインの濃淡と、濃淡定量値との関係を学習する。
【0044】
教師データにおいて撮像画像に対応付けられる濃淡定量値は、テストライン332の濃さの下限値とラインの濃さがプラトー(Plateau)となる値との間の範囲において、検査対象物の濃度の下限値と上限値との間の範囲が分割された分割範囲(以下、「定量化レンジ」とも称される)ごとに設定される。
また、教師データにおいて撮像画像に対応付けられる濃淡定量値は、検査器具30の全ての種類に共通に用いられ、定量化レンジは検査器具30の種類ごとにテストライン332の濃さと検査対象物の濃度との関係に応じて拡大又は縮小する。
これにより、定量化モデルは、種類の異なる複数の検査器具30について、各検査器具30の撮像画像が示すテストライン332の濃淡が似ている場合であっても、いずれかの検査器具30における定量化の結果に寄ることなく、各検査器具30に応じた濃淡定量値を出力することができる。
【0045】
ここで、
図5から
図9を参照して、教師データとなる撮像画像に対応付けられる濃淡定量値について説明する。
【0046】
まず、
図5を参照して、検査対象物の濃度とテストライン332の濃さとの関係について説明する。
図5は、本実施形態に係る検査対象物の濃度とラインの濃さとの関係の一例を示す図である。
図5に示すグラフの横軸は検査対象物の濃度(濃度)を示し、縦軸はテストライン332の濃さ(ライン濃さ)を示す。
図5には、一例として、コロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフが示されている。
グラフG1は、A社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフである。グラフG2は、B社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフである。グラフG3は、C社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフである。
図5に示す3つのグラフでは、グラフG1においてライン濃さがプラトーに達するまでの濃度が一番低く、グラフG3においてライン濃さがプラトーに達するまでの濃度が一番高くなっている。
【0047】
次に、
図6を参照して、テストライン332の濃淡を定量化するために設定される定量化レンジについて説明する。
図6は、本実施形態に係るラインの濃淡を定量化するために設定される定量化レンジの一例を示す図である。
図6に示す定量化レンジQRは、検査対象物の濃度の下限値と上限値との間の範囲を6分割する場合に設定される定量化レンジである。定量化レンジQRの分割された各範囲(以下、単に「レンジ」とも称される)には、各レンジに対応するライン濃さを定量化するための濃淡定量値が設定される。一例として、
図6に示すように、レンジR1には「0」、レンジR2には「0.2」、レンジR3には「0.4」、レンジR4には「0.6」、レンジR5には「0.8」、レンジR6には「1.0」が設定される。
図6に示す定量化レンジQRを各種の検査器具30に適用する場合、上述したように検査器具30の種類ごとにテストライン332の濃さと検査対象物の濃度との関係に応じてレンジR1~R6の幅が変動する。
【0048】
次に、
図7から
図8を参照して、各種の検査器具30への定量化レンジQRの適用例について説明する。
図7は、本実施形態に係るA社の検査器具30に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
図7には、
図5に示したA社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフG1に対して、
図6に示した定量化レンジQRを適用した例が示されている。
図8は、本実施形態に係るB社の検査器具30に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
図8には、
図5に示したB社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフG2に対して、
図6に示した定量化レンジQRを適用した例が示されている。
図9は、本実施形態に係るC社の検査器具30に対する定量化レンジの適用例を示す図である。
図9には、
図5に示したC社のコロナウイルス抗原検査キットにおける濃度とライン濃さの関係を示すグラフG3に対して、
図6に示した定量化レンジQRを適用した例が示されている。
図7から
図9に示す各例を比較すると、
図7に示すグラフG1における濃度の下限値と上限値との間の範囲が最も狭く、
図9に示すグラフG3における濃度の下限値と上限値との間の範囲が最も広くなっている。
これより、
図7から
図9に示すように、
図7、
図8、
図9の順にグラフにおける濃度の下限値と上限値との間の範囲が広くなっていくにつれて、定量化レンジQRの範囲も広くなっている。
【0049】
定量化モデルの学習に用いる教師データは、
図7から
図9に示したように定量化レンジが適用された濃度とライン濃さの関係を示すグラフに基づき作成される。
例えば、ある撮像画像が示す検査器具30がA社のコロナウイルス抗原検査キットであり、その反応結果が示すテストライン332の濃さがレンジR2の範囲内の濃さであるとする。この場合、当該撮像画像に対して検査器具30の種類が「A社のコロナウイルス抗原検査キット」であることを示す情報と、濃淡定量値が「0.2」であることを示す情報とを対応付けたデータが教師データとして作成される。
また、ある撮像画像が示す検査器具30がB社のコロナウイルス抗原検査キットであり、その反応結果が示すテストライン332の濃さがレンジR4の範囲内の濃さであるとする。この場合、当該撮像画像に対して検査器具30の種類が「B社のコロナウイルス抗原検査キット」であることを示す情報と、濃淡定量値が「0.6」であることを示す情報とを対応付けたデータが教師データとして作成される。
また、ある撮像画像が示す検査器具30がC社のコロナウイルス抗原検査キットであり、その反応結果が示すテストライン332の濃さがレンジR6の範囲内の濃さであるとする。この場合、当該撮像画像に対して検査器具30の種類が「C社のコロナウイルス抗原検査キット」であることを示す情報と、濃淡定量値が「1.0」であることを示す情報とを対応付けたデータが教師データとして作成される。
【0050】
なお、定量化モデルの学習に用いる教師データを作成するにあたり、検査器具30の種類ごとに、各種類のテストライン332の濃淡に合わせた濃淡定量値を撮像画像に対応付けたとする。例えば、A社、B社、C社の各検査器具30の撮像画像が示す反応結果がいずれもレンジR2の範囲内の濃さであるが、A社の撮像画像には濃淡定量値「0.2」、B社の撮像画像には濃淡定量値「0.4」、C社の撮像画像には濃淡定量値「0.6」を対応付けたとする。このような対応付けは、例えば、ある会社の検査器具30のテストライン332が低い濃度でも十分濃くなる仕様であり、別の会社の検査器具30のテストライン332が同じ濃度でも薄いラインで検出する仕様であるような場合などに起こり得る。
このように、種類が異なる複数の検査器具30について同じ濃さのレンジであっても対応付けられた濃淡定量値が異なる撮像画像を教師データとして作成した場合、当該教師データを用いて学習した定量化モデルは、正確な定量結果を出力できなくなる場合がある。特に、イムノクロマトグラフィーによる検査器具30の画像判定の場合、検査器具30の種類が異なっていても、各種の筐体における供給部320や呈色部330の配置・ライン形状などが似通っていることがある。このため、定量化モデルは、ある会社の検査器具30の撮像画像に対して定量化を行う際に、他社の検査器具30と誤認識し、他者の学習データから濃淡を判定して誤った定量結果を出力する可能性がある。
そこで、本実施形態では、定量化モデルは、
図5から
図9を参照して説明したようにして作成された教師データを用いて学習することで、ライン濃さと濃度との対応関係が異なる複数種類の検査器具30を定量化の対象とする場合に、ある検査器具30についての定量化を他の検査器具30についての定量化の結果に引っ張られることなく行うことができる。このため、判定システム1は、当該定量化モデルが1つあれば、複数種類の検査器具30について精度高く定量化することができる。
よって、判定システム1では、検査器具30の種類ごとに定量化モデルを用意する必要がないため、定量化モデルにかかるコスト(時間や費用)を低減することができる。
【0051】
(2-2)判定基準記憶部222
判定基準記憶部222は、判定基準を記憶する機能を有する。判定基準は、濃淡定量値と検査結果との関係を示し、検査結果の判定に用いられる情報である。判定基準は、検査器具30の種類ごとに用意される。判定基準記憶部222は、判定基準を検査器具30の種類ごとに記憶する。
判定基準には、例えば、検査結果を陽性とする濃淡定量値と検査結果を陰性とする濃淡定量値との境界を示す閾値が設定される。なお、判定基準は、偽陽性及び偽陰性を除くよう設定されてもよい。これにより、検査結果の判定精度を向上することができる。
【0052】
(3)制御部230
制御部230は、判定サーバ20の動作全般を制御する機能を有する。制御部230は、例えば、判定サーバ20がハードウェアとして備えるCPUにプログラムを実行させることによって実現される。
図4に示すように、制御部230は、種類情報取得部231と、撮像画像取得部232と、定量化部233と、判定部234とを備える。
【0053】
(3-1)種類情報取得部231
種類情報取得部231は、種類情報を取得する機能を有する。例えば、種類情報取得部231は、通信部210がユーザ端末10から受信する、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具30の種類を示す種類情報を取得する。
【0054】
(3-2)撮像画像取得部232
撮像画像取得部232は、撮像画像を取得する機能を有する。例えば、撮像画像取得部232は、通信部210がユーザ端末10から受信する、検査器具30において検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のラインが反応結果として表示されている領域(呈色部330)が撮像された撮像画像を取得する。
【0055】
(3-3)定量化部233
定量化部233は、テストライン332の濃さを定量化する機能を有する。例えば、定量化部233は、モデル記憶部221に記憶されている定量化モデルに、種類情報取得部231によって取得された種類情報と撮像画像取得部232によって取得された撮像画像を入力することで、撮像画像が示すテストライン332の濃淡が定量化された濃淡定量値を取得する。
【0056】
(3-4)判定部234
判定部234は、検査結果を判定する機能を有する。例えば、判定部234は、種類情報取得部231によって取得された種類情報と、定量化部233によって取得された濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する。具体的に、判定部234は、定量化部233によってテストライン332の濃淡が定量化された検査器具30の種類を種類情報に基づき特定し、特定した検査器具30の種類に対応する判定基準を用いて検査結果を判定する。
一例として、判定部234は、定量化された濃淡定量値と判定基準とを比較し、定量化された濃淡定量値が検査結果を陽性とする値であれば、検査結果が陽性であると判定する。一方、判定部234は、定量化された濃淡定量値と判定基準とを比較し、定量化された濃淡定量値が検査結果を陰性とする値であれば、検査結果が陰性であると判定する。
【0057】
<4.処理の流れ>
以上、本実施形態に係る判定サーバ20の機能構成について説明した。続いて、
図10を参照して、本実施形態に係る処理の流れについて説明する。
図10は、本実施形態に係る判定システムにおける処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
なお、
図10に示す処理が開始するタイミングでは、試料(ユーザが採取した検体を用いて調製されたもの)が検査器具30の供給部320に滴下されてから、規定反応時間が経過しているものとする。
【0058】
図10に示すように、まず、ユーザは、ユーザ端末10に対して、アプリ起動操作を行う(ステップS101)。
検査支援アプリの起動後、ユーザは、ユーザ端末10に対して、種類入力操作を行う(ステップS102)。
種類入力後、ユーザは、ユーザ端末10に対して撮像操作を行う(ステップS103)。
【0059】
ユーザ端末10の撮像部130は、操作受付部151がユーザから撮像操作を受け付けると、ユーザの操作に応じて少なくとも検査器具30の呈色部330を撮像する(ステップS104)。
操作受付部151は、種類入力操作によって入力された検査器具30の種類を示す種類情報と、撮像操作によって撮像部130によって撮像された撮像画像を、通信部110を介して判定サーバ20へ送信する(ステップS105)。
【0060】
判定サーバ20の種類情報取得部231は、通信部210がユーザ端末10から受信した種類情報を取得し、判定サーバ20の撮像画像取得部232は、通信部210がユーザ端末10から受信した撮像画像を取得する(ステップS106)。
次いで、定量化部233は、定量化処理を行う(ステップS107)。定量化処理では、定量化部233は、まず、種類情報取得部231によって取得された種類情報と撮像画像取得部232によって取得された撮像画像を、モデル記憶部221に記憶されている定量化モデルに入力する。そして、定量化部233は、入力した撮像画像が示すテストライン332の濃淡について定量化モデルから出力される濃淡定量値を取得する。
次いで、判定部234は、判定処理を行う(ステップS108)。判定処理では、判定部234は、種類情報取得部231によって取得された種類情報と、定量化部233によって取得された濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する。
判定後、判定部234は、通信部210を介して、ユーザ端末10へ検査結果を送信する(ステップS109)。
【0061】
ユーザ端末10の出力制御部152は、通信部110が判定サーバ20から受信した検査結果を出力部160に表示する(ステップS110)。
ユーザは、ユーザ端末10に表示された検査結果を確認する(ステップS111)。
【0062】
以上説明したように、本実施形態に係る判定システム1は、検査対象者から供給された検体との反応結果を表示している検査器具30の種類を示す種類情報を取得する種類情報取得部231と、検査器具30において、検体に含まれる検査対象物の濃度に応じた濃淡のテストライン332(ライン)が反応結果として表示されている領域が撮像された撮像画像を取得する撮像画像取得部232と、検査器具30の種類と、テストライン332の濃淡と、テストライン332の濃淡が定量化された値である濃淡定量値との関係を学習した定量化モデル(学習済みモデル)に種類情報と撮像画像を入力することで、撮像画像が示すテストライン332の濃淡が定量化された濃淡定量値を取得する定量化部233と、種類情報と濃淡定量値に基づき、検査結果を判定する判定部234と、を備える。
【0063】
かかる構成により、ユーザは、1つの定量化モデルのみを用いて、複数種類の検査器具30について陽性又は陰性の検査結果を得ることができる。これにより、判定システム1の提供者は、検査器具30の種類ごとに定量化モデルを用意する必要がなく、定量化モデルの用意にかかるコスト(時間や費用など)を削減することができる。
よって、本実施形態に係る判定システム1は、検査器具30を用いた検査における検査結果を判定するための学習済みモデルにかかるコストを低減することを可能とする。
【0064】
<5.変形例>
以上、実施形態について説明した。続いて、上述した実施形態の変形例について説明する。なお、以下に説明する各変形例は、単独で実施形態に適用されてもよいし、組み合わせで実施形態に適用されてもよい。また、各変形例は、実施形態で説明した構成に代えて適用されてもよいし、実施形態で説明した構成に対して追加的に適用されてもよい。
【0065】
上述した実施形態のユーザ端末10と判定サーバ20が有する機能は、かかる例に限定されない。例えば、ユーザ端末10が有する機能の一部を判定サーバ20が有してもよいし、判定サーバ20が有する機能の一部をユーザ端末10が有してもよい。
【0066】
また、上述した実施形態では、検査支援アプリの機能がWebアプリによって提供される例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、検査支援アプリの機能は、ユーザ端末10に検査支援アプリをインストールすること(即ちネイティブアプリ)で提供されてもよい。
この場合、Webアプリの場合にユーザ端末10にて行われていた処理が判定サーバ20で行われてもよいし、判定サーバ20で行われていた処理がユーザ端末10にて行われてもよい。例えば、ユーザ端末10で取得された情報は、一時的にユーザ端末10に保存されてから所定のタイミングにて判定サーバ20へ保存されてもよいし、ユーザ端末10には保存せずに判定サーバ20へ直接保存されてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では、出力制御部152が検査結果を出力部160に表示させる例について説明したが、かかる例に限定されない。例えば、出力制御部152は、濃淡定量値も出力部160に表示させてもよい。この場合、判定サーバ20の定量化部233は、定量化処理後に、通信部210を介してユーザ端末10へ濃淡定量値を送信する。そして、出力制御部152は、通信部110が判定サーバ20から受信する濃淡定量値を出力部160に表示させる。
【0068】
以上、本発明の実施形態の変形例について説明した。なお、上述した実施形態における判定システム1、ユーザ端末10、及び判定サーバ20の一部又は全部をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0069】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【符号の説明】
【0070】
1…判定システム、10…ユーザ端末、20…判定サーバ、30…検査器具、110…通信部、120…入力部、130…撮像部、140…記憶部、150…制御部、151…操作受付部、152…出力制御部、160…出力部、210…通信部、220…記憶部、221…モデル記憶部、222…判定基準記憶部、230…制御部、231…種類情報取得部、232…撮像画像取得部、233…定量化部、234…判定部、310…二次元コード、320…供給部、321…検体供給窓、330…呈色部、331…コントロールライン、332…テストライン、NW…ネットワーク