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特開2024-81937半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081937
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】半導体封止用樹脂組成物および半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/40 20060101AFI20240612BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C08G59/40
H01L23/30 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195539
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】井狩 優太
【テーマコード(参考)】
4J036
4M109
【Fターム(参考)】
4J036AE05
4J036DA05
4J036FB06
4J036FB07
4J036JA07
4M109AA01
4M109BA01
4M109BA03
4M109CA21
4M109EA03
4M109EB03
4M109EB06
4M109EB12
4M109EB13
4M109EC11
(57)【要約】
【課題】外観が改善されており光線透過率に優れるとともに、誘電特性および機械強度とのバランスに優れる硬化物が得られ、さらに成形性に優れる半導体封止用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明の半導体封止用樹脂組成物は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、を含み、硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを含み、前記半導体封止用樹脂組成物のDSC測定における120~180℃の吸熱ピークが16mJ/mg以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、を含む、半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを含み、
前記半導体封止用樹脂組成物のDSC測定における120~180℃の吸熱ピークが16mJ/mg以上である半導体封止用樹脂組成物。
【請求項2】
活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)との含有量の比率が、3:7~9:1である、請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項3】
活性エステル樹脂(B1)は、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、およびフェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂から選択される少なくとも1種を含む、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項4】
活性エステル樹脂(B1)は、下記一般式(1)で表される構造を備える、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
Bは、下記一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。)
【請求項5】
前記一般式(B)で表される構造は、一般式(B-1)~(B-6)から選択される少なくとも1つである、請求項4に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化3】
(一般式(B-1)~(B-6)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、またはアラルキル基であり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、またはフェニル基であり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である)
【請求項6】
前記一般式(1)において、Aが、下記一般式(A)で表される構造を有する、請求項5に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化4】
(一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、lは0または1であり、mは1以上の整数である)
【請求項7】
エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B2)の少なくとも一方が、ビフェニルアラルキル構造を有する、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項8】
さらに無機充填剤(C)を含む、請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項9】
無機充填剤(C)が、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種である、請求項8に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【請求項10】
半導体素子と、
請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、前記半導体素子を封止する封止材と、
を備える、半導体装置。
【請求項11】
活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを溶融混合して硬化剤(B)を得る工程と、
エポキシ樹脂(A)と、得られた硬化剤(B)とを混合する工程と、
を含む、半導体封止用樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用樹脂組成物、および当該組成物からなる封止材で半導体素子が封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体パッケージ等を封止するための材料として、熱硬化性の樹脂組成物(封止用樹脂組成物)が知られている。
特許文献1、2には、エポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、所定の平均粒径を有する無機充填材とを含む封止用樹脂組成物が開示されている。
【0003】
特許文献3には、多官能エポキシ樹脂及び二官能エポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂と、硬化剤として活性エステル化合物と、を含む封止用樹脂組成物が開示されている。
【0004】
特許文献4には、エポキシ樹脂と、活性エステル化合物を含む硬化剤と、無機充填材と、ポリエーテル変性シリコーンと、を含有する封止用樹脂組成物が開示されている。
【0005】
特許文献5には、エポキシ樹脂と、活性エステル化合物を含む硬化剤とを含有し、前記活性エステル化合物の前記エポキシ樹脂に対する当量比(活性エステル化合物/エポキシ樹脂)が0.9以下である、封止用樹脂組成物が開示されている。当該文献には、活性エステル化合物とともにその他の硬化剤としてフェノール化合物を用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2020/065872号
【特許文献2】国際公開第2020/065873号
【特許文献3】国際公開第2020/066856号
【特許文献4】特開2021-116331号公報
【特許文献5】国際公開第2020/262654号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~5に記載の従来の技術においては、封止用樹脂組成物から得られる封止材に着色が認められ光線透過率に改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、示差走査熱量計を用いたDSC測定で得られたDSC曲線において、120~180℃の吸熱ピークが所定の範囲である半導体封止用樹脂組成物が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下に示すことができる。
【0009】
[1](A)エポキシ樹脂と、
(B)硬化剤と、を含む、半導体封止用樹脂組成物であって、
硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを含み、
前記半導体封止用樹脂組成物のDSC測定における120~180℃の吸熱ピークが16mJ/mg以上である半導体封止用樹脂組成物。
[2] 活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)との含有量の比率が、3:7~9:1である、[1]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
[3] 活性エステル樹脂(B1)は、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、およびフェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂から選択される少なくとも1種を含む、[1]または[2]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
[4] 活性エステル樹脂(B1)は、下記一般式(1)で表される構造を備える、[1]~[3]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化1】
(一般式(1)中、Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
Bは、下記一般式(B)で表される構造であり、
【化2】
(一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基であり、Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。nは0~4の整数である。)
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。)
[5] 前記一般式(B)で表される構造は、一般式(B-1)~(B-6)から選択される少なくとも1つである、[4]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化3】
(一般式(B-1)~(B-6)中、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、またはアラルキル基であり、Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、またはフェニル基であり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である)
[6] 前記一般式(1)において、Aが、下記一般式(A)で表される構造を有する、[5]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
【化4】
(一般式(A)中、Rはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、lは0または1であり、mは1以上の整数である)
[7] エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B2)の少なくとも一方が、ビフェニルアラルキル構造を有する、[1]~[6]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
[8] さらに無機充填剤(C)を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物。
[9] 無機充填剤(C)が、シリカ、アルミナ、タルク、酸化チタン、窒化珪素、窒化アルミニウムから選択される少なくとも1種である、[8]に記載の半導体封止用樹脂組成物。
[10] 半導体素子と、
[1]~[9]のいずれかに記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物からなる、前記半導体素子を封止する封止材と、
を備える、半導体装置。
[11] 活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを溶融混合して硬化剤(B)を得る工程と、
エポキシ樹脂(A)と、得られた硬化剤(B)とを混合する工程と、
を含む、半導体封止用樹脂組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外観が改善されており光線透過率に優れるとともに、誘電特性および機械強度とのバランスに優れる硬化物が得られ、さらに成形性に優れた半導体封止用樹脂組成物や当該組成物の硬化剤を封止材として用いた半導体装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
図2】実施形態における半導体装置の構成を示す断面図である。
図3】比較例1の半導体封止用樹脂組成物から得られた粉体およびタブレット上に現れる白色斑点を示す写真である。
図4】比較例1の半導体封止用樹脂組成物から得られた円板状の硬化物のフローマークを示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、例えば「1~10」は特に断りがなければ「1以上」から「10以下」を表す。
【0013】
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)と、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを含む硬化剤(B)と、を含んでなり、
前記半導体封止用樹脂組成物のDSC測定における120~180℃の吸熱ピークが800mJ/g以上である。
【0014】
本発明者は、半導体封止樹脂組成物のDSC測定における120~180℃の吸熱ピークに着目し、その値を指標とすることにより、当該組成物から得られる封止材の特性を改善できることを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、120~180℃の吸熱ピークを所定値以上とすることにより、外観が改善されており光線透過率に優れるとともに、誘電特性および機械強度とのバランスに優れる硬化物が得られ、さらに成形性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
以下、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物(以下、封止用樹脂組成物とも記載する)に含まれる各成分について説明する。
【0015】
[エポキシ樹脂(A)]
エポキシ樹脂(A)は、1分子内に2個以上のエポキシ基を有する化合物であり、モノマー、オリゴマーおよびポリマーのいずれであってもよい。
【0016】
エポキシ樹脂(A)は、具体的には、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂等の結晶性エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。
【0017】
本発明の効果の観点から、エポキシ樹脂(A)は、好ましくは、トリスフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、オルソクレゾール型二官能エポキシ樹脂、ビフェニル型二官能エポキシ樹脂、ビスフェノール型二官能エポキシ樹脂およびジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂からなる群から選択される1種または2種以上である。エポキシ樹脂(A)は、ビフェニルアラルキル型多官能エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型二官能エポキシ樹脂であることがより好ましい。
【0018】
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、成形時に好適な流動性を得て充填性や成形性の向上を図る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2質量%以上であり、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは4質量%以上である。
【0019】
また、封止用樹脂組成物を用いて得られる装置の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0020】
[硬化剤(B)]
本実施形態において、硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)と、フェノール樹脂(B2)と、を含む。
【0021】
(活性エステル樹脂(B1))
活性エステル樹脂(B1)としては、1分子中に1個以上の活性エステル基を有する化合物を用いることができる。中でも、活性エステル樹脂(B1)としては、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の、反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物が好ましい。
【0022】
活性エステル樹脂(B1)の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル樹脂、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル樹脂が挙げられ、少なくとも1種を含むことができる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル樹脂、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル樹脂がより好ましい。「ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造」とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
本実施形態において、活性エステル樹脂(B1)は、例えば、以下の一般式(1)で表される構造を有する樹脂を用いることができる。
【0023】
【化5】
【0024】
一般式(1)において、「B」は、一般式(B)で表される構造である。
【0025】
【化6】
【0026】
一般式(B)中、Arは、置換または非置換のアリーレン基である。置換されたアリーレン基の置換基は炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0027】
Yは、単結合、置換または非置換の炭素原子数1~6の直鎖のアルキレン基、または置換または非置換の炭素原子数3~6の環式のアルキレン基、置換または非置換の2価の芳香族炭化水素基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、あるいはスルホン基である。前記基の置換基としては、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基等が挙げられる。
【0028】
Yとして好ましくは、単結合、メチレン基、-CH(CH-、エーテル結合、置換されていてもよいシクロアルキレン基、置換されていてもよい9,9-フルオレニレン基等が挙げられる。
nは0~4の整数であり、好ましくは0または1である。
Bは、具体的には、下記一般式(B1)または下記一般式(B2)で表される構造である。
【0029】
【化7】
【0030】
上記一般式(B1)および上記一般式(B2)中、ArおよびYは、一般式(B)と同義である。
Aは、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、
Ar’は、置換または非置換のアリール基であり、
kは、繰り返し単位の平均値であり、0.25~3.5の範囲である。
【0031】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物は、特定の活性エステル硬化剤を含むことにより、得られる硬化物は優れた誘電特性を有することができ、低誘電正接に優れる。
【0032】
本実施形態の熱硬化性樹脂組成物に用いられる活性エステル樹脂(B1)は、式(B)で表される活性エステル基を有する。エポキシ樹脂と活性エステル硬化剤との硬化反応において、活性エステル硬化剤の活性エステル基はエポキシ樹脂のエポキシ基と反応して2級の水酸基を生じる。この2級の水酸基は、活性エステル硬化剤のエステル残基により封鎖される。そのため、硬化物の誘電正接が低減される。
【0033】
一実施形態において、上記式(B)で表される構造は、以下の式(B-1)~式(B-6)から選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【0034】
【化8】
【0035】
式(B-1)~(B-6)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
【0036】
はそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基の何れかであり、Xは炭素原子数2~6の直鎖のアルキレン基、エーテル結合、カルボニル基、カルボニルオキシ基、スルフィド基、スルホン基のいずれかであり、
nは0~4の整数であり、pは1~4の整数である。
【0037】
上記式(B-1)~(B-6)で表される構造は、いずれも配向性が高い構造であることから、これを含む活性エステル硬化剤を用いた場合、得られる熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、低誘電正接を有するとともに、金属に対する密着性に優れ、そのため半導体封止材料として好適に用いることができる。
【0038】
中でも、低誘電正接の観点から、式(B-2)、式(B-3)または式(B-5)で表される構造を有する活性エステル硬化剤が好ましく、さらに式(B-2)のnが0である構造、式(B-3)のXがエーテル結合である構造、または式(B-5)において二つのカルボニルオキシ基が4,4’-位にある構造を有する活性エステル硬化剤がより好ましい。また各式中のRはすべて水素原子であることが好ましい。
【0039】
式(1)における「Ar’」はアリール基であり、例えば、フェニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、3,5-キシリル基、o-ビフェニル基、m-ビフェニル基、p-ビフェニル基、2-ベンジルフェニル基、4-ベンジルフェニル基、4-(α-クミル)フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基等であり得る。中でも、特に誘電正接の低い硬化物が得られることから、1-ナフチル基または2-ナフチル基であることが好ましい。
【0040】
本実施形態において、式(1)で表される活性エステル硬化剤における「A」は、脂肪族環状炭化水素基を介して連結された置換または非置換のアリーレン基であり、このようなアリーレン基としては、例えば、1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物と、フェノール性化合物とを重付加反応させて得られる構造が挙げられる。
【0041】
前記1分子中に二重結合を2個含有する不飽和脂肪族環状炭化水素化合物は、例えば、ジシクロペンタジエン、シクロペンタジエンの多量体、テトラヒドロインデン、4-ビニルシクロヘキセン、5-ビニル-2-ノルボルネン、リモネン等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、耐熱性に優れる硬化物が得られることからジシクロペンタジエンが好ましい。尚、ジシクロペンタジエンは石油留分中に含まれることから、工業用ジシクロペンタジエンにはシクロペンタジエンの多量体や、他の脂肪族或いは芳香族性ジエン化合物等が不純物として含有されることがあるが、耐熱性、硬化性、成形性等の性能を考慮すると、ジシクロペンタジエンの純度90質量%以上の製品を用いることが望ましい。
【0042】
一方、前記フェノール性化合物は、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、エチルフェノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビニルフェノール、イソプロペニルフェノール、アリルフェノール、フェニルフェノール、ベンジルフェノール、クロルフェノール、ブロムフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、1,4-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられ、それぞれ単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。これらの中でも、硬化性が高く硬化物における誘電特性に優れる活性エステル硬化剤となることからフェノールが好ましい。
【0043】
好ましい実施形態において、式(1)で表される活性エステル硬化剤における「A」は、式(A)で表される構造を有する。式(1)における「A」が以下の構造である活性エステル硬化剤を含む熱硬化性樹脂組成物は、その硬化物が低誘電正接であり、インサート品に対する密着性に優れる。
【0044】
【化9】
【0045】
式(A)において、
はそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、
lは0または1であり、mは1以上の整数である。
【0046】
式(1)で表される活性エステル硬化剤のうち、より好ましいものとして、下記式(1-1)、式(1-2)および式(1-3)で表される樹脂が挙げられ、特に好ましいものとして、下記式(1-3)で表される樹脂が挙げられる。
【0047】
【化10】
【0048】
式(1-1)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0049】
【化11】
【0050】
式(1-2)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0051】
【化12】
【0052】
式(1-3)中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数1~4のアルコキシ基、フェニル基、アラルキル基の何れかであり、Zはフェニル基、ナフチル基、又は、芳香核上に炭素原子数1~4のアルキル基を1~3個有するフェニル基或いはナフチル基であり、lは0又は1であり、kは繰り返し単位の平均であり、0.25~3.5である。
【0053】
本発明で用いられる活性エステル樹脂(B1)は、脂肪族環状炭化水素基を介してフェノール性水酸基を有するアリール基が複数結節された構造を有するフェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)とを反応させる、公知の方法により製造することができる。
【0054】
上記フェノール性化合物(a)と、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)と、芳香族モノヒドロキシ化合物(c)との反応割合は、所望の分子設計に応じて適宜調整することができるが、中でも、より硬化性の高い活性エステル硬化剤が得られることから、芳香核含有ジカルボン酸又はそのハライド(b)が有するカルボキシル基又は酸ハライド基の合計1モルに対し、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.25~0.90モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.10~0.75モルの範囲となる割合で各原料を用いることが好ましく、前記フェノール性化合物(a)が有するフェノール性水酸基が0.50~0.75モルの範囲となり、かつ、前記芳香族モノヒドロキシ化合物(c)が有するヒドロキシル基が0.25~0.50モルの範囲となる割合で各原料を用いることがより好ましい。
【0055】
また、活性エステル樹脂(B1)の官能基当量は、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基およびフェノール性水酸基の合計を樹脂の官能基数とした場合、硬化性に優れ、誘電率及び誘電正接の低い硬化物が得られることから、200g/eq以上230g/eq以下の範囲であることが好ましく、210g/eq以上220g/eq以下の範囲であることがより好ましい。
【0056】
(フェノール樹脂(B2))
フェノール樹脂(B2)としては、本発明の効果を奏する範囲で封止用樹脂組成物に一般に使用されるものを用いることができる。
【0057】
フェノール樹脂(B2)は、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0058】
本実施形態において、フェノール樹脂(B1)は、本発明の効果の観点から、ビフェニルアラルキル構造を備えることが好ましく、具体的にはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂が好ましい。ビフェニルアラルキル構造を備えるフェノール樹脂は低吸湿、低弾性であり信頼性に優れる。
本実施形態においては、エポキシ樹脂(A)およびフェノール樹脂(B1)のうち一方または両方が、ビフェニルアラルキル構造を有することが好ましい。
【0059】
本実施形態の硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)およびフェノール樹脂(B2)を組み合わせて含む。
本発明の効果の観点から、硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)の含有量(重量部)とフェノール樹脂(B2)の含有量(重量部)との比率を、3:7~9:1、好ましくは4:6~8:2とすることができる。
本実施形態においては、本発明の効果の観点から、硬化剤(B)は、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)との溶融混合物を含むことが好ましい。
【0060】
本実施形態の樹脂組成物において、活性エステル樹脂(B1)およびフェノール樹脂(B2)を含む硬化剤(B)とエポキシ樹脂(A)との配合量は、硬化剤(B)中の活性基の合計1当量に対して、エポキシ樹脂中のエポキシ基が0.8~1.2当量となる割合であることが好ましい。ここで、硬化剤(B)中の活性基とは、樹脂構造中に有するアリールカルボニルオキシ基及びフェノール性水酸基を指す。
【0061】
本実施形態の組成物において、硬化剤(B)は、封止樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.2質量%以上15質量%以下、より好ましくは0.5質量%以上10質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以上7質量%以下の量で用いられる。
【0062】
[無機充填剤(C)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填剤(C)を含むことができる。
無機充填剤(C)として、一般的に半導体封止用樹脂組成物に使用されているものを用いることができる。また、無機充填剤(C)は表面処理がなされているものであってもよい。
【0063】
無機充填剤(C)の具体例として、溶融シリカ等、結晶シリカ、非晶質二酸化珪素等のシリカ;アルミナ;タルク;酸化チタン;窒化珪素;窒化アルミニウムが挙げられる。これらの無機充填材は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填剤(C)は、汎用性に優れている観点から、好ましくはシリカを含む。シリカの形状としては、球状シリカ、破砕シリカ等が挙げられる。
【0064】
無機充填剤(C)の平均径(D50)は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは10μm以上であり、また、好ましくは80μm以下であり、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは40μm以下である。
【0065】
ここで、無機充填剤(C)の粒径分布は、市販のレーザー回折式粒度分布測定装置(たとえば、島津製作所社製、SALD-7000)を用いて粒子の粒度分布を体積基準で測定することにより取得することができる。
【0066】
また、無機充填剤(C)の最大粒径は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは10μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、また、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0067】
また、無機充填剤(C)の比表面積は、成形性および密着性を向上する観点から、好ましくは1m/g以上であり、より好ましくは3m/g以上であり、また、好ましくは20m/g以下であり、より好ましくは10m/g以下である。
【0068】
封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、得られる半導体装置の耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは65質量%以上である。
【0069】
また、封止用樹脂組成物の成形時における流動性や充填性をより効果的に向上させる観点から、封止用樹脂組成物中の無機充填剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対してたとえば97質量%以下であってもよく、好ましくは95質量%以下であり、より好ましくは90質量%以下である。
【0070】
[硬化促進剤(D)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに硬化促進剤(D)を含むことができる。
硬化促進剤(D)は、テトラフェニルホスホニウム-4,4’-スルフォニルジフェノラート、テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート、4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラートからなる群より選択される1種または2種以上を含む。本実施形態においては、2種含むことができる。
【0071】
封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化特性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。
【0072】
また、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物中の硬化促進剤の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0073】
[カップリング剤(E)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらにカップリング剤(E)を含むことができる。
カップリング剤(E)として、たとえば、エポキシシラン、メルカプトシラン、フェニルアミノシラン等のアミノシランが挙げられる。封止材と金属部材との密着性を向上する観点から、カップリング剤(E)は、好ましくはエポキシシランまたはアミノシランであり、より好ましくは2級アミノシランである。同様の観点から、カップリング剤(E)は、好ましくはフェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1つ以上である。
【0074】
封止用樹脂組成物中のカップリング剤(E)の含有量は、封止用樹脂組成物の成形時に好ましい流動性を得る観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。
【0075】
また、樹脂粘度の増粘抑制の観点から、封止用樹脂組成物中のカップリング剤(E)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
【0076】
[シリコーンオイル(F)]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに低応力剤としてシリコーンオイル(F)を含むことができる。これにより、封止用樹脂組成物により電子素子等を封止して得られる成形体の反りをより抑制することができる。
【0077】
シリコーンオイル(F)は、たとえばエポキシ変性シリコーンオイル、カルボキシル変性シリコーンオイル、アルキル変性シリコーンオイル、およびポリエーテル変性シリコーンオイル等の有機変性シリコーンオイルを含むことが好ましい。これらの中でも、樹脂成分中にシリコーンオイル(F)を微分散させて、反りの抑制に寄与する観点からは、ポリエーテル変性シリコーンオイルを含むことがとくに好ましい。
【0078】
シリコーンオイル(F)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましい。また、シリコーンオイル(F)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。シリコーンオイル(F)の含有量をこのような範囲に制御することによって、封止用樹脂組成物により電子素子等を封止して得られる成形体の反り抑制に寄与することが可能である。
【0079】
本実施形態においては、シリコーンオイル(F)以外のその他の低応力剤を含むことができ、具体例として、シリコーンゴム、シリコーンエラストマー、シリコーンレジン等のシリコーン;アクリロニトリルブタジエンゴム等が挙げられる。
【0080】
[その他の成分]
本実施形態の封止用樹脂組成物は、上述した成分以外の成分を含んでもよく、たとえば流動性付与剤、離型剤、イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤等の各種添加剤のうち1種以上を適宜配合することができる。また、封止用樹脂組成物は、たとえば、2-ヒドロキシ-N-1H-1,2,4-トリアゾール-3-イルベンズアミドおよび3-アミノ-5-メルカプト-1,2,4-トリアゾールのうち1以上をさらに含んでもよい。
【0081】
離型剤は、たとえばカルナバワックス等の天然ワックス;モンタン酸エステルワックス、酸化ポリエチレンワックス等の合成ワックス;ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類;パラフィン;およびエルカ酸アミドなどのカルボン酸アミドからなる群から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
【0082】
封止用樹脂組成物中の離型剤の含有量は、封止用樹脂組成物の硬化物の離型性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.0質量%以下、さらに好ましくは0.5質量%以下である。
イオン捕捉剤の具体例として、ハイドロタルサイトが挙げられる。
【0083】
封止用樹脂組成物中のイオン捕捉剤の含有量は、封止材の信頼性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、また、好ましくは1.0質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
難燃剤の具体例として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛、ホスファゼンが挙げられる。
【0084】
封止用樹脂組成物中の難燃剤の含有量は、封止材の難燃性を向上する観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは1質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、また、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下である。
着色剤の具体例として、カーボンブラック、ベンガラが挙げられる。
【0085】
封止用樹脂組成物中の着色剤の含有量は、封止材の色調の好ましいものとする観点から、封止用樹脂組成物全体に対して、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.2質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1質量%以下である。
酸化防止剤の具体例として、ヒンダードフェノール化合物、ヒンダードアミン化合物、チオエーテル化合物が挙げられる。
【0086】
<半導体封止用樹脂組成物>
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、示差走査熱量(Differential Scanning Calorimetry:DSC)測定により得られたDSC曲線において、120~180℃の吸熱ピークが16mJ/mg以上、好ましくは17mJ/mg以上、より好ましくは17.5mJ/mg以上である。上限値は特に限定されないが、40mJ/mg以下、好ましくは30mJ/mg以下、より好ましくは25mJ/mg以下である。
このような半導体封止用樹脂組成物によれば、外観が改善されており光線透過率に優れるとともに、誘電特性および機械強度とのバランスに優れる硬化物が得られ、さらに成形性に優れることから、封止材として好適に用いることができる。
【0087】
このような効果が得られる理由は明らかでないものの、活性エステル樹脂(B1)の結晶性に起因する120~180℃の吸熱ピークが所定値以上であれば活性エステル樹脂(B1)の結晶性が消失しており、活性エステル樹脂(B1)の融点の低下や混錬性の向上に起因する分散性が向上することにより本発明の効果が得られると考えられる。
【0088】
<半導体封止用樹脂組成物の製造方法>
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の製造方法は、
活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを溶融混合して硬化剤(B)を得る工程(a)と、
エポキシ樹脂(A)と、得られた硬化剤(B)とを混合する工程(b)と、
を含む。
【0089】
工程(a)においては、活性エステル樹脂(B1)とフェノール樹脂(B2)とを、温度140℃~160℃、30分間~120分間で溶融混合させる。当該工程により、活性エステル樹脂(B1)がフェノール樹脂(B2)に溶融し、活性エステル樹脂(B1)の結晶性が消失する。
【0090】
次いで、工程(b)において、エポキシ樹脂(A)と、得られた硬化剤(B)とを公知の手段で混合する。このとき、さらにフェノール樹脂(B2)を追加して添加することもできる。そして、ロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕する方法により得ることができる。また、粉砕後、成形して粒子状またはシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。たとえば、タブレット状に打錠成形して粒子状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また、たとえば真空押し出し機によってシート状の封止用樹脂組成物を得てもよい。また得られた封止用樹脂組成物について、適宜分散度や流動性等を調整してもよい。
【0091】
本実施形態の封止用樹脂組成物は、常温(25℃)で固体であり、その形状は封止用樹脂組成物の成形方法等に応じて選択することができ、たとえばタブレット状;粉末状、顆粒状等の粒子状;シート状が挙げられる。
【0092】
<半導体装置>
本実施形態における半導体装置は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により半導体素子が封止されているものである。半導体素子の具体例としては、集積回路、大規模集積回路、トランジスタ、サイリスタ、ダイオード、固体撮像素子等が挙げられる。半導体素子は、好ましくは、受光素子および発光素子(発光ダイオード等)等の光半導体素子を除く、いわゆる、光の入出を伴わない素子である。
【0093】
半導体装置の基材は、たとえば、インターポーザ等の配線基板、またはリードフレームである。また、半導体素子は、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基材に電気的に接続される。
【0094】
封止用樹脂組成物を用いた封止成形により半導体素子を封止して得られる半導体装置としては、たとえば、MAP(Mold Array Package)、QFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、BGA(Ball Grid Array)、LF-BGA(Lead Flame BGA)、FCBGA(Flip Chip BGA)、MAPBGA(Molded Array Process BGA)、eWLB(Embedded Wafer-Level BGA)、Fan-In型eWLB、Fan-Out型eWLBなどの種類が挙げられる。
以下、図面を参照してさらに具体的に説明する。
【0095】
図1および図2は、いずれも、半導体装置の構成を示す断面図である。なお、本実施形態において、半導体装置の構成は、図1および図2に示すものには限られない。
まず、図1に示した半導体装置100は、基板30上に搭載された半導体素子20と、半導体素子20を封止してなる封止材50と、を備えている。
封止材50は、上述した本実施形態における封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
【0096】
また、図1には、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、図1に示すように、基板30のうちの半導体素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成される。半導体素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、半導体素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40としては、限定されないが、たとえば、Ag線、Ni線、Cu線、Au線、Al線が挙げられ、好ましくは、ワイヤ40はAg、NiまたはCuあるいはこれらの1種以上を含む合金で構成される。
【0097】
封止材50は、たとえば半導体素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように半導体素子20を封止する。図1に示す例においては、半導体素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
【0098】
本実施形態において、封止材50は、上述の封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。このため、半導体装置100においては、封止材50とワイヤ40との密着性に優れており、これにより、半導体装置100は信頼性に優れるものである。
封止材50は、たとえば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
【0099】
図2は、本実施形態における半導体装置100の構成を示す断面図であって、図1とは異なる例を示すものである。図2に示す半導体装置100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、半導体素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。また、封止材50は、図1に示す例と同様にして、本実施形態における封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0100】
以下に、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0101】
<実施例1~5、比較例1(封止用樹脂組成物の製造)>
表1に記載された各成分を記載された量比で混合し、混合物を得た。混合は、常温でヘンシェルミキサーを用いて行った。
その後、その混合物を、70~100℃でロール混練し、混練物を得た。得られた混練物を冷却し、その後、粉砕し、封止用樹脂組成物を得た。表1に記載の各成分は以下の通り。
【0102】
(無機充填材)
・無機充填材1:シリカ(マイクロン社製、製品名:TS-6026、平均径9μm)
・無機充填材2:微粉シリカ(アドマテックス社製、製品名:SC-2500-SQ、平均径0.6μm)
【0103】
(カップリング剤)
・シランカップリング剤1:N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング社製、CF-4083)
・シランカップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM803P)
【0104】
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬社製、NC-3000L、エポキシ当量270g/eq)
【0105】
(硬化剤)
・硬化剤1:下記調製方法で調製した活性エステル樹脂
(活性エステル樹脂の調製方法)
温度計、滴下ロート、冷却管、分留管、撹拌器を取り付けたフラスコに、1,3-ベンゼンジカルボン酸ジクロリド203.0g(酸クロリド基のモル数:2.0モル)とトルエン1338gとを仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。次いで、α-ナフトール96.5g(0.67モル)、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂を219.5g(フェノール性水酸基のモル数:1.33モル)を仕込み、系内を減圧窒素置換して溶解させた。その後、窒素ガスパージを施しながら、系内を60℃以下に制御して、20%水酸化ナトリウム水溶液400gを3時間かけて滴下した。次いでこの条件下で1.0時間撹拌を続けた。反応終了後、静置分液し、水層を取り除いた。更に反応物が溶解しているトルエン相に水を投入して約15分間撹拌混合し、静置分液して水層を取り除いた。水層のpHが7になるまでこの操作を繰り返した。その後、デカンタ脱水で水分を除去し不揮発分65%のトルエン溶液状態にある活性エステル樹脂を得た。得られた活性エステル樹脂の構造を確認したところ、上述の式(1-3)においてR及びRが水素原子、Zがナフチル基、lが0の構造を有していた。活性エステル樹脂の繰り返し単位の平均値kは、反応等量比から算出したところ0.5~1.0の範囲であった。得られた活性エステル樹脂は具体的に以下の化学式で表される構造を有していた。また、活性基当量は209g/eqであった。
【化13】
【0106】
・硬化剤2:ビフェニレン骨格含有フェノールアラルキル型樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS、水酸基当量200g/eq)
・硬化剤3:トリスフェニルメタン型フェノールノボラック樹脂(MEH-7500、明和化成社製、水酸基当量97g/eq)
・硬化剤4:フェノールノボラック樹脂(PR-HF-3、住友ベークライト社製、水酸基当量105g/eq)
・硬化剤5:フェニレン骨格含有フェノールアラルキル樹脂(明和化成社製、MEH-7800SS、水酸基当量175g/eq)
【0107】
・硬化剤6:以下の方法により合成されたMFBA型フェノール樹脂
セパラブルフラスコに撹拌装置、温度計、還流冷却器、窒素導入口を装着し、1,3-ジヒドロキシベンゼン(東京化成工業社製、「レゾルシノール」、融点111℃、分子量110、純度99.4%)291質量部、フェノール(関東化学社製特級試薬、「フェノール」、融点41℃、分子量94、純度99.3%)235質量部、あらかじめ粒状に砕いた4,4'-ビスクロロメチルビフェニル(和光純薬工業社製、「4,4'-ビスクロロメチルビフェニル」、融点126℃、純度95%、分子量251)125質量部を、セパラブルフラスコに秤量し、窒素置換しながら加熱し、フェノールの溶融の開始に併せて攪拌を開始した。
その後、系内温度を110~130℃の範囲に維持しながら3時間反応させた後、加熱し、140~160℃の範囲に維持しながら3時間反応させた。なお、上記の反応によって系内に発生した塩酸ガスは、窒素気流によって系外へ排出した。
反応終了後、150℃、2mmHgの減圧条件で未反応成分を留去した。次いで、トルエン400質量部を添加し、均一溶解させた後、分液漏斗に移し、蒸留水150質量部を加えて振とうした後に、水層を棄却する操作(水洗)を洗浄水が中性になるまで繰り返し行った後、油層を125℃減圧処理することによってトルエン、残留未反応成分等の揮発成分を留去し、下記式(12A)で表されるMFBA型フェノール樹脂硬化剤(重合体)を得た。なお、このフェノール樹脂硬化剤における水酸基当量は135g/eqであった。
また、電界脱離質量分析(Field Desorption Mass Spectrometry;FD-MS)により測定・分析された相対強度比を質量比とみなして算術計算することにより得られた、水酸基が1個の構造単位の繰り返し数kの平均値k0、水酸基が2個の構造単位の繰り返し数mの平均値m0の比k0/m0は、0.98/1であり、数平均分子量は460であった。
なお、前記数平均分子量はWaters社製アライアンス(2695セパレーションズモデュール、2414リフラクティブインデックスディテクター、TSKゲルGMHHR-Lx2+TSKガードカラムHHR-Lx1、移動相:THF、0.5ml/分)を用い、カラム温度40.0℃、示差屈折率計温度40.0℃、サンプル注入量100μlの条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により数平均分子量を測定した。
【化14】
(式(12A)中、2つのYは、それぞれ互いに独立して、下記式(12B)または下記式(12C)で表されるヒドロキシフェニル基を表し、Xは、下記式(12D)または下記式(12E)で表されるヒドロキシフェニレン基を表す。)
【化15】
【0108】
・硬化剤7(溶融混合物):硬化剤1:6質量部と、硬化剤2:4質量部とを、常圧下、160℃で7時間の条件で溶融混合して得た。
・硬化剤8(溶融混合物):硬化剤1:6質量部と、硬化剤3:4質量部とを、常圧下、160℃で7時間の条件で溶融混合して得た。
・硬化剤9(溶融混合物):硬化剤1:6質量部と、硬化剤4:4質量部とを、常圧下、160℃で7時間の条件で溶融混合して得た。
・硬化剤10(溶融混合物):硬化剤1:6質量部と、硬化剤5:4質量部とを、常圧下、160℃で7時間の条件で溶融混合して得た。
・硬化剤11(溶融混合物):硬化剤1:6質量部と、硬化剤6:4質量部とを、常圧下、160℃で7時間の条件で溶融混合して得た。
【0109】
(ワックス(離型剤))
・ワックス1:カルナバワックス(東亜合成社製、TOWAX-132)
【0110】
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:テトラフェニルホスホニウム4,4'-スルフォニルジフェノラート
・硬化促進剤2:テトラフェニルホスホニウムビス(ナフタレン-2,3-ジオキシ)フェニルシリケート
【0111】
<評価>
(DSC測定)
実施例および比較例において得られた封止用樹脂組成物をすり鉢で微粉砕し、3~5mgをアルミパンへ秤量し試料とした。次いで、当該試料に対し、開始温度30℃、測定温度範囲30~330℃、昇温速度10℃/minの条件下で、示差走査熱量計(DSC7020、(株)日立ハイテクサイエンス)を用いて示差走査熱量測定を行った。得られたDSC曲線から、120~180℃の吸熱ピーク(mJ/mg)をそれぞれ得た。
【0112】
(色味(外観評価))
実施例および比較例で得られた封止用樹脂組成物から得られた粉体およびタブレットについて、目視で外観を観察し以下の基準で評価を行った。
また、低圧トランスファー成形機(コーキ精機社製「KTS-15」)を用いて、金型に、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間300秒の条件で、実施例および比較例において得られた封止用樹脂組成物をトランスファー成形することにより封止用樹脂組成物の硬化物(直径50mm・厚さ3mmの円板状)を得た。
次いで、得られた硬化物について、目視で外観を観察し以下の基準で評価を行った。
(基準)
〇:粉体及びタブレットの外観に白色斑点が認められず、並びに、円板状の硬化物の外観にフローマーク(色味のむら)が認められない。
×:粉体又はタブレットの外観に白色斑点が認められ、若しくは、円板状の硬化物の外観にフローマーク(色味のむら)が認められる。
【0113】
(二軸フロー)
低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、「KTS-15」)を用いて、ANSI/ASTM D 3123-72に準じたスパイラルフロー測定用金型に、175℃、注入圧力7.0MPa、保圧時間120秒の条件で、各実施例および各比較例の樹脂組成物を注入し、流動長を測定し、これを二軸フローとした。
なお、二軸フローは、流動性のパラメータであり、数値が大きい方が、流動性が良好である。
【0114】
(曲げ強度)
実施例、比較例で得られた樹脂組成物の曲げ強度を測定した。測定は、低圧トランスファー成形機(コータキ精機株式会社製、KTS-30)を用いて、金型温度175°C、注入圧力9.8MPa、硬化時間120秒の条件で、樹脂組成物を注入成形し、長さ80mm、幅10mm、厚さ4mmの成形物を得た。得られた成形物を、後硬化として175°Cで4時間加熱処理したものを試験片とし、曲げ弾性率および曲げ強さをJIS K 6911に準じてRT(25℃)および260℃の雰囲気温度下で測定した。
【0115】
(誘電特性)
得られた樹脂組成物を、金型温度175°C、注入圧力10MPa、硬化時間2分間で成型し、100×3.8×0.8mmの硬化物作製した。得られた硬化物について、JIS-C-6481に準拠し、株式会社エーイーティ製「ASMS01Oc1」により、絶乾後23°C、湿度50%の室内に24時間保管した後に試験片の5GHz、23°Cでの誘電率(Dk)および誘電正接(Df)を測定した。
【0116】
【表1】
【0117】
実施例の半導体封止用樹脂組成物は流動性が高く成形性に優れていた。さらに、当該半導体封止用樹脂組成物から得られた硬化物は、外観が改善されており光線透過率に優れるとともに、誘電特性および機械強度とのバランスに優れていた。
【符号の説明】
【0118】
20 半導体素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール
100 半導体装置
図1
図2
図3
図4