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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081939
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】スイッチング素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/78 20060101AFI20240612BHJP
   H01L 29/12 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H01L29/78 652J
H01L29/78 652F
H01L29/78 652S
H01L29/78 653C
H01L29/78 652C
H01L29/78 652H
H01L29/78 652T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195543
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片野 拓真
(57)【要約】
【課題】 スイッチング素子の素子部の外周部における電界集中を緩和する。
【解決手段】 スイッチング素子であって、トレンチ内に配置されたゲート電極を有する。前記トレンチが設けられている素子部が中央部と外周部を有する。前記素子部が、n型のソース領域を有する。前記素子部と前記外周部が、p型のボディ領域と、n型のドリフト領域と、p型の複数の電界緩和領域を有する。前記電界緩和領域は、前記各トレンチの下端を含む深さ範囲、または、前記各トレンチの下端よりも下側の深さ範囲に配置されており、半導体基板の横方向に間隔を空けて配置されている。前記電界緩和領域の間の前記間隔内に前記ドリフト領域が分布している。前記各電界緩和領域の前記横方向における幅Wpを前記各電界緩和領域の間の前記間隔の幅Wnで除算した値Wp/Wnが、前記外周部において前記中央部よりも大きい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子であって、
上面に複数のトレンチ(14)が設けられた半導体基板と、
前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜(16)と、
前記トレンチ内に配置されており、前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極(18)、
を有し、
前記半導体基板のうちの前記複数のトレンチが設けられている部分が素子部(60)であり、
前記素子部が、中央部(60a)と外周部(60b)を有しており、
前記素子部が、前記各トレンチの側面において前記ゲート絶縁膜に接するn型のソース領域(40)を有し、
前記素子部と前記外周部が、
前記各トレンチの前記側面において前記ゲート絶縁膜に接するp型のボディ領域(42)と、
前記ボディ領域の下側に配置されており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されており、前記各トレンチの前記側面において前記ゲート絶縁膜に接するn型のドリフト領域(44)と、
前記各トレンチの下端を含む深さ範囲、または、前記各トレンチの下端よりも下側の深さ範囲に配置されており、前記ボディ領域と繋がっており、前記半導体基板の横方向に間隔を空けて配置されている複数のp型の電界緩和領域(48)、
を有し、
前記電界緩和領域の間の前記間隔内に前記ドリフト領域が分布しており、
前記各電界緩和領域の前記横方向における幅Wpを前記各電界緩和領域の間の前記間隔の幅Wnで除算した値Wp/Wnが、前記外周部において前記中央部よりも大きい。
スイッチング素子。
【請求項2】
前記中央部及び前記外周部において前記半導体基板の前記上面を覆っており、前記ボディ領域と前記ソース領域に接するソース電極(22)と、
前記外周部において前記ソース電極の上面を覆う絶縁層(28)、
をさらに有する、
請求項1に記載のスイッチング素子。
【請求項3】
前記外周部が前記ソース領域を有さない、請求項1または2に記載のスイッチング素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング素子に関する。
【0002】
特許文献1には、トレンチ型のゲート電極を有するスイッチング素子が開示されている。スイッチング素子がオフすると、ドリフト領域が空乏化され、ドリフト領域内に電界が発生する。この種のスイッチング素子では、トレンチの下端に電界が集中し易い。トレンチの下端における電界集中を抑制するために、p型の電界緩和領域を設ける技術が知られている。電界緩和領域は、トレンチの下端を含む深さ範囲、または、トレンチの下端よりも下側の深さ範囲に配置される。電界緩和領域を設けると、トレンチの下端の周辺に空乏層が広がりやすくなり、トレンチの下端における電界集中が緩和される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-167208号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電界緩和領域を設けたスイッチング素子でも、素子部(すなわち、トレンチが設けられている部分)の外周部において、トレンチの下端に電界が集中し易いことが分かった。本明細書では、素子部の外周部における電界集中を緩和する技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示するスイッチング素子は、上面に複数のトレンチが設けられた半導体基板と、前記トレンチの内面を覆うゲート絶縁膜と、前記トレンチ内に配置されているとともに前記ゲート絶縁膜によって前記半導体基板から絶縁されているゲート電極、を有する。前記半導体基板のうちの前記複数のトレンチが設けられている部分が素子部である。前記素子部が、中央部と外周部を有している。前記素子部が、前記各トレンチの側面において前記ゲート絶縁膜に接するn型のソース領域を有する。前記素子部と前記外周部が、ボディ領域、ドリフト領域、及び、電界緩和領域を有する。前記ボディ領域は、前記各トレンチの前記側面において前記ゲート絶縁膜に接するp型領域である。前記ドリフト領域は、前記ボディ領域の下側に配置されており、前記ボディ領域によって前記ソース領域から分離されており、前記各トレンチの前記側面において前記ゲート絶縁膜に接するn型領域である。前記電界緩和領域は、前記各トレンチの下端を含む深さ範囲または前記各トレンチの下端よりも下側の深さ範囲に配置されており、前記ボディ領域と繋がっており、前記半導体基板の横方向に間隔を空けて配置されている複数のp型領域である。前記電界緩和領域の間の前記間隔内に前記ドリフト領域が分布している。前記各電界緩和領域の前記横方向における幅Wpを前記各電界緩和領域の間の前記間隔の幅Wnで除算した値Wp/Wnが、前記外周部において前記中央部よりも大きい。
【0006】
このスイッチング素子では、電界緩和領域によって各トレンチの下端における電界が緩和される。また、電界緩和領域は、外周部において中央部よりも値Wp/Wnが大きくなるように配置されている。すなわち、電界緩和領域の深さ範囲内において、外周部では素子部よりもp型領域の比率が大きい。したがって、外周部では、素子部よりも、電界緩和領域からその周囲に空乏層が広がりやすい。このため、外周部のトレンチの下端における電界集中が効果的に緩和される。このように、このスイッチング素子によれば、素子部の外周部における電界集中を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】スイッチング素子を上から見た平面図。
図2】中央部60aの断面斜視図。
図3】x方向に沿う中央部60aの縦断面図(すなわち、図1のIII-IIIにおける縦断面図)。
図4】x方向に沿う外周部60bの縦断面図(すなわち、図1のIV-IVにおける縦断面図)。
図5】y方向に沿う中央部60aの縦断面図(すなわち、図1のV-Vにおける縦断面図)。
図6】y方向に沿う外周部60bの縦断面図(すなわち、図1のVI-VIにおける縦断面図)。
図7】変形例1のスイッチング素子の断面斜視図。
図8】変形例2のスイッチング素子の断面斜視図。
図9】変形例3のスイッチング素子の断面斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子は、前記中央部及び前記外周部において前記半導体基板の前記上面を覆っているとともに前記ボディ領域と前記ソース領域に接するソース電極(22)と、前記外周部において前記ソース電極の上面を覆う絶縁層(28)をさらに有していてもよい。
【0009】
この構成によれば、外周部内のゲート絶縁膜に高温環境下で高電界が印加されることを抑制できる。
【0010】
本明細書が開示する一例のスイッチング素子では、前記外周部が前記ソース領域を有さなくてもよい。
【0011】
この構成によれば、外周部に流れる電流を抑制することでスイッチング素子の動作を安定させることができる。
【0012】
図1に示すように、スイッチング素子10は半導体基板12を有している。半導体基板12は、SiCにより構成されている。但し、半導体基板12が、SiやGaN等の他の半導体により構成されていてもよい。以下では、半導体基板12の上面12aに平行な一方向をx方向といい、上面12aに平行かつx方向に直交する方向をy方向といい、半導体基板12の厚み方向をz方向という。半導体基板12の上面12aには、ソース電極22と複数の電極パッド23が設けられている。複数の電極パッド23には、ゲート電位を制御する電極パッド、ソース電極22の電位を出力する電極パッド、半導体基板12の温度を出力する電極パッド等が含まれる。ソース電極22に覆われている範囲内において、半導体基板12の上面12aに複数のトレンチ14が設けられている。各トレンチ14は、y方向に直線状に伸びている。各トレンチ14は、x方向に間隔を空けて配置されている。複数のトレンチ14が設けられている範囲に、スイッチング素子10の主要部が形成されている。以下では、半導体基板12のうち、半導体基板12を上から平面したときに複数のトレンチ14が設けられている範囲(すなわち、ソース電極22と重なる範囲)を素子部60という。素子部60は、中央部60aと外周部60bを有している。外周部60bは、中央部60aの周囲に設けられている。
【0013】
図2~4は、素子部60の構造を示している。より詳細には、図2、3は中央部60aの構造を示しており、図4は外周部60bの構造を示している。なお、図2では、ソース電極22が省略されている。図2~4に示すように、各トレンチ14の内面は、ゲート絶縁膜16によって覆われている。各トレンチ14内にゲート電極18が配置されている。各ゲート電極18は、ゲート絶縁膜16によって半導体基板12から絶縁されている。各ゲート電極18の上面は、層間絶縁膜20によって覆われている。ソース電極22は、層間絶縁膜20によってゲート電極18から絶縁されている。
【0014】
ソース電極22は、AlSiにより構成されている。図3に示すように、中央部60a内では、ソース電極22はNi層26によって覆われている。図示していないが、Ni層26はんだによって外部の電極ブロックに接続される。図4に示すように、外周部60b内では、ソース電極22は絶縁樹脂層28(例えば、ポリイミド層)によって覆われている。絶縁樹脂層28の熱伝導率は低い。したがって、中央部60aは外周部60bよりも高い放熱性を有している。
【0015】
図2~4に示すように、半導体基板12の下部に、ドレイン電極24が設けられている。ドレイン電極24は、半導体基板12の下面12bを覆っている。
【0016】
図2~4に示すように、半導体基板12は、複数のソース領域40、ボディ領域42、ドリフト領域44、ドレイン領域46、及び、複数の電界緩和領域48を有している。
【0017】
各ソース領域40は、高いn型不純物濃度を有するn型領域である。図2、3に示すように、各ソース領域40は、トレンチ14に挟まれた範囲に配置されている。各ソース領域40は、ソース電極22にオーミック接触している。各ソース領域40は、トレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。ソース領域40は、中央部60a内に設けられている。図4に示すように、ソース領域40は、外周部60b内には設けられていない。
【0018】
図2~4に示すように、ボディ領域42は、中央部60aと外周部60bに跨って分布している。ボディ領域42は、複数のコンタクト領域42aと、各コンタクト領域42aよりもp型不純物濃度が低い低濃度領域42bを有する。各コンタクト領域42aは、トレンチ14に挟まれた範囲に配置されている。各コンタクト領域42aは、ソース電極22にオーミック接触している。低濃度領域42bは、複数のソース領域40及び複数のコンタクト領域42aに対して下側から接している。低濃度領域42bは、トレンチ14の側面においてゲート絶縁膜16に接している。中央部60a内では、低濃度領域42bは、各ソース領域40の下側でゲート絶縁膜16に接している。
【0019】
図2~4に示すように、ドリフト領域44は、中央部60aと外周部60bに跨って分布している。ドリフト領域44は、ソース領域40よりも低いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドリフト領域44は、複数のトレンチ14の下部に跨って分布している。図2に示すように、ドリフト領域44の上端部は、各トレンチ14の間の範囲内まで伸びている。ドリフト領域44は、各トレンチ14の間の範囲内において、低濃度領域42bに対して下側から接している。ドリフト領域44は、低濃度領域42bの下側でゲート絶縁膜16に接している。
【0020】
図2~4に示すように、ドレイン領域46は、中央部60aと外周部60bに跨って分布している。ドレイン領域46は、ドリフト領域44よりも高いn型不純物濃度を有するn型領域である。ドレイン領域46は、ドリフト領域44に対して下側から接している。ドレイン領域46は、半導体基板12の下面12bにおいてドレイン電極24にオーミック接触している。
【0021】
図2~4に示すように、複数の電界緩和領域48は、中央部60aと外周部60bに設けられている。各電界緩和領域48は、ドリフト領域44に囲まれた範囲に配置されている。各電界緩和領域48は、低濃度領域42bから間隔を空けて低濃度領域42bよりも下側に配置されている。各電界緩和領域48と低濃度領域42bの間の間隔には、ドリフト領域44が分布している。各電界緩和領域48はx方向に直線状に伸びている。各電界緩和領域48はy方向に間隔を空けて配置されている。電界緩和領域48どうしの間の各間隔には、ドリフト領域44が分布している。以下では、電界緩和領域48どうしの間の各間隔内のドリフト領域44を、間隔部44aという。各電界緩和領域48は、z方向において、トレンチ14の下端を含む範囲に配置されている。したがって、各電界緩和領域48は、各トレンチ14の下端においてゲート絶縁膜16に接している。
【0022】
図2に示すように、半導体基板12は、p型の接続領域52を有している。接続領域52は、電界緩和領域48と低濃度領域42bとを接続している。なお、図2では1つの接続領域52が図示されているが、各電界緩和領域48に対して少なくとも1つの接続領域52が設けられている。したがって、各電界緩和領域48の電位は、ボディ領域42の電位とほぼ等しい。
【0023】
図5、6において、符号Wpは各電界緩和領域48のy方向における幅を示しており、符号Wnは電界緩和領域48の間の各間隔のy方向における幅(すなわち、間隔部44aの幅)を示している。図5、6に示すように、中央部60aでは外周部60bよりも電界緩和領域48の幅Wpが狭い。また、中央部60aでは外周部60bよりも間隔部44aの幅Wnが広い。したがって、中央部60aでは外周部60bよりも、幅Wpを幅Wnで除算した値Wp/Wnが小さい。値Wp/Wnは、電界緩和領域48が存在するz方向の範囲内における電界緩和領域48と間隔部44aの比率を表す。
【0024】
次に、スイッチング素子10の動作について説明する。スイッチング素子10は、ドレイン電極24がソース電極22よりも高電位となる向きで電圧が印加された状態で使用される。ゲート電極18にゲート閾値以上の電位を印加すると、ゲート絶縁膜16近傍のボディ領域42にチャネルが形成され、ソース領域40とドリフト領域44がチャネルによって接続される。したがって、ソース電極22からソース領域40とチャネルを介してドリフト領域44へ電子が流れる。チャネルからドリフト領域44へ流入した電子は、間隔部44aを通って電界緩和領域48の下側のドリフト領域44へ流れる。電子は、ドリフト領域44からドレイン領域46を介してドレイン電極24へ流れる。このように、ゲート電極18にゲート閾値以上の電位を印加すると、スイッチング素子10がオンする。
【0025】
上述したように、スイッチング素子10がオンすると、電子が間隔部44aを通過する。素子部60の主要部である中央部60aでは、値Wp/Wnが小さいので、電界緩和領域48が存在する深さ範囲内において間隔部44a(すなわち、n型領域)の比率が大きい。したがって、中央部60aにおいては、間隔部44aの抵抗が小さい。このため、中央部60aにおいて、低損失で電子が流れることができる。また、外周部60bでは、値Wp/Wnが大きく、間隔部44aの抵抗が大きい。しかしながら、中央部60aに比べて外周部60bに流れる電子は少ない。特に、本実施例では、外周部60bにソース領域40が設けられていないので、外周部60b内の間隔部44aに流れる電子は非常に少ない。したがって、外周部60bにおいて間隔部44aの抵抗が大きくても、それほど損失は生じない。このため、スイッチング素子10のオン抵抗は低い。
【0026】
なお、製造工程において、素子部60全体に高精度にトレンチ14を形成することは難しく、外周部60bにおいてトレンチ14の形状精度が低下し易い。このため、外周部60bに高い電流を流すと、外周部60bで異常が生じやすい。実施例のスイッチング素子10では、外周部60bにソース領域40が設けられていないので、外周部60bにほとんど電流が流れない。これにより、スイッチング素子10の安定した動作が実現されている。
【0027】
ゲート電極18の電位をゲート閾値未満の電位に引き下げると、チャネルが消失し、スイッチング素子10がオフする。スイッチング素子10がオフすると、ボディ領域42とドリフト領域44の界面のpn接合に逆電圧が印加される。また、電界緩和領域48はボディ領域42とほぼ同じ電位を有するので、電界緩和領域48とドリフト領域44の界面のpn接合にも逆電圧が印加される。したがって、ボディ領域42と電界緩和領域48からドリフト領域44に空乏層が伸びる。空乏化したドリフト領域44によって、ドレイン電極24とソース電極22の間の電圧が保持される。電界緩和領域48からドリフト領域44に伸びる空乏層は、トレンチ14の下端周辺のドリフト領域44を空乏化する。このように、トレンチ14の下端周辺でドリフト領域44が空乏化されることで、トレンチ14の下端を覆うゲート絶縁膜16における電界集中が抑制される。
【0028】
また、素子部60の外部にはトレンチ14が存在しないので、外周部60b内のトレンチ14の下端では、特に電界が集中し易い。これに対し、実施例のスイッチング素子10では、外周部60bにおいて値Wp/Wnが大きく、間隔部44a(すなわち、n型領域)に対する電界緩和領域48(すなわち、p型領域)の比率が大きい。したがって、外周部60bでは、電界緩和領域48からその周囲に空乏層が広がり易い。したがって、外周部60bでは、中央部60aよりも、電界緩和領域48による電界集中緩和の効果が高い。このため、外周部60b内のトレンチ14の下端における電界集中を抑制できる。なお、上述したように、外周部60bは中央部60aよりも放熱性が低く、外周部60bは中央部60aよりも高温になり易い。高温の状態でゲート絶縁膜16に高電界が加わると、ゲート絶縁膜16が劣化し易い。高温になり易い外周部60bでゲート絶縁膜16への電界集中を抑制することで、ゲート絶縁膜16の劣化をより効果的に抑制することができる。
【0029】
なお、上述した実施例では、電界緩和領域48が、x方向(すなわち、トレンチ14と交差する方向)に直線状に伸びており、y方向に間隔を空けて配置されていた。しかしながら、電界緩和領域48が、y方向(すなわち、トレンチ14と平行な方向)に直線状に伸びており、x方向に間隔を空けて配置されていてもよい。この場合、図7のように、x方向において電界緩和領域48が各トレンチ14の間に配置されていてもよいし、図8のようにx方向において電界緩和領域48が各トレンチ14と重なる位置(すなわち、トレンチ14の下部)に配置されていてもよい。図7、8の構成でも、外周部60bにおいて中央部60aよりも値Wp/Wnを大きくすることで、外周部60bにおけるゲート絶縁膜16への電界集中を抑制できる。
【0030】
また、上述した実施例では、電界緩和領域48がトレンチ14の下端を含む深さ範囲に配置されていたが、電界緩和領域48がトレンチ14の下端よりも下側の深さ範囲に配置されていてもよい。例えば、電界緩和領域48がトレンチ14と交差する方向に直線状に伸びている場合には、図9のように電界緩和領域48をトレンチ14の下端よりも下側に配置してもよい。また、図7、8のように電界緩和領域48がトレンチ14と平行に直線状に伸びている場合においても、電界緩和領域48をトレンチ14の下端よりも下側に配置してもよい。電界緩和領域48をトレンチ14の下端よりも下側に配置しても、トレンチ14の下端における電界集中を抑制できる。
【0031】
また、上述した実施例では、ソース領域40が外周部60bに設けられていなかったが、ソース領域40が外周部60bに設けられていてもよい。
【0032】
また、上述した実施例では、幅Wpが外周部60bで中央部60aよりも広く、幅Wnが外周部60bで中央部60aよりも狭かった。しかしながら、値Wp/Wnが外周部60bにおいて中央部60aよりも大きいという条件が満たされれば、中央部60aと外周部60bで幅Wp、Wnはどのように設定されていてもよい。例えば、幅Wpが外周部60bで中央部60aよりも広く、幅Wnが外周部60bと中央部60aで等しくてもよい。
また、例えば、幅Wpが外周部60bと中央部60aで等しく、幅Wnが外周部60bで中央部60aよりも狭くてもよい。
【0033】
以上、実施形態について詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例をさまざまに変形、変更したものが含まれる。本明細書または図面に説明した技術要素は、単独あるいは各種の組み合わせによって技術有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの1つの目的を達成すること自体で技術有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0034】
18:ゲート電極、22:ソース電極、24:ドレイン電極、28:絶縁樹脂層、40:ソース領域、42:ボディ領域、44:ドリフト領域、44a:間隔部、46:ドレイン領域、48:電界緩和領域、60a:中央部、60b:外周部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9