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特開2024-81942構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081942
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/10 20060101AFI20240612BHJP
   E01D 21/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E01D19/10
E01D21/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195548
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 泰輔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 篤
(72)【発明者】
【氏名】永元 直樹
【テーマコード(参考)】
2D059
【Fターム(参考)】
2D059AA21
2D059GG55
(57)【要約】
【課題】構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法であって、管内に異物を残さず、作業性の良い接続方法を提供する。
【解決手段】第1構造体4は第1管6を含み、第1構造体4に近接して配置される第2構造体5は第2管7を含む。第1管6と第2管7とが継手管部材18によって接続される。治具10の先端部13が、第1管6に挿入された継手管部材18の内周面に解除可能に固定された状態で、作業員は、治具10を動かすことによって、継手管部材18の一端部が第2管に接続されるように、継手管部材18を移動させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1管を含む第1構造体と、第2管を含む第2構造体とを互いに近接させるとともに、前記第1管と前記第2管とを継手管部材によって互いに接続する方法であって、
前記第1構造体を所定の位置に配置するとともに、前記第1管又は前記第2管内に前記継手管部材を挿入するステップと、
前記第1管の延長線上に前記第2管が位置するように、前記第2構造体を前記第1構造体に近接する位置に配置するステップと、
前記第1管及び前記第2管の何れか一方における前記第1管及び前記第2管の何れか他方に対向する側とは反対側の端部から、前記一方内に治具を挿入するステップであって、前記治具は、前記一方の内径よりも細い太さを有する筒状又は棒状の軸部と、前記軸部の先端に取り付けられた先端部とを備え、前記先端部が前記継手管部材内に配置される、該ステップと、
前記治具の前記先端部を前記継手管部材の内周面に解除可能に固定するステップと、
前記治具を動かすことにより、前記継手管部材を移動させて、前記継手管部材を介して前記第1管及び前記第2管を互いに接続するステップと、
前記先端部の前記内周面への固定を解除して、前記治具を前記継手管部材及び前記一方から抜き取るステップと
を備える、方法。
【請求項2】
前記治具は、前記軸部の後方に配置されて作業員が操作可能な操作部を更に含み、
前記治具の前記先端部は、前記操作部の操作によって、前記継手管部材内で前記内周面に対して、少なくとも2点で当接する位置と離間可能な位置との間で変位可能に構成された、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記先端部は、前記軸部に連結した連結部と、前記連結部から少なくとも2つに枝分かれした枝部とを含み、
前記枝部の少なくとも1つが、その基端部において前記連結部に回動可能に連結し、かつ前記操作部の操作によって回動するように構成されていることにより、前記先端部が前記継手管部材内で前記内周面に解除可能に固定されるべく、前記枝部の前記少なくとも1つの遊端が、前記枝部の少なくとも他の1つに対して離間する向き及び近接する向きに変位可能である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記継手管部材内に配置された前記先端部は、作業員が前記操作部を引くことにより弾性変形して前記継手管部材の前記内周面に当接し、作業員が前記操作部を離すことにより弾性変形前の形状に戻って前記内周面から離間するように構成された、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記先端部は、枠形状を形成するように、前記枠形状が形成する面に直交する方向を軸線として互いに回動可能に連結された4つの枠部材と、前記枠部材の互いの連結によって形成される4つの角部とを含み、前記4つの角部は、前記軸部に固定さえる固定角部と、前記固定角部の対角線上に位置し、前記操作部の操作によって、前記固定角部に対して近接及び離間するように構成された変位角部と、互いに対角線上に位置して、前記継手管部材内に配置された時に、前記変位角部の前記固定角部に対する近接及び離間によって、互いに離間及び近接して前記継手管部材の前記内周面に当接及び離間するように構成された広狭変位角部とを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記先端部の前記内周面に対する解除可能な固定は、前記先端部と前記内周面との間の摩擦力によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第1管を含む第1構造体と、第2管を含む第2構造体と互いに近接させるとともに、前記第1管と前記第2管とを継手管部材によって互いに接続する方法であって、
前記第1構造体を所定の位置に配置するとともに、前記第1管又は前記第2管内に、可撓性を有する線状又は帯状の治具の中間部及び前記継手管部材を挿入するステップであって、前記治具の前記中間部を前記継手管部材の挿入側の端面に当接させる、該ステップと、
前記第1管の延長線上に前記第2管が位置するように、前記第2構造体を前記第1構造体の隣に配置し、かつ、前記治具の両端部を前記第1構造体と前記第2構造体との隙間から前記第1管及び前記第2管の延在方向から見て前記第1構造体及び前記第2構造体の輪郭の外側に延出するように配置するステップと、
前記治具の前記中間部が前記継手管部材の前記端面を押し込むように前記治具に引張力を加えることにより、前記継手管部材を移動させて、前記継手管部材を介して前記第1管及び前記第2管を互いに接続するステップと、
前記治具の前記両端部の一方を解放して他方を引っ張ることにより、前記治具を前記第1管又は前記第2管から取り除くステップと
を備える、方法。
【請求項8】
前記接続するステップにおいて、前記継手管部材が移動する側に位置する前記第1管又は前記第2管と、前記継手管部材との何れか一方の内周面には、その何れか他方の端面を係止する肩面が形成されている、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1構造体及び前記第2構造体は、それぞれ、橋梁の壁高欄用のプレキャストコンクリート部材である、請求項1~5の何れか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築及び土木分野において、工場にて製造された運搬可能な大きさ及び重さの複数の構造体を、工事現場に運搬し、工事現場で組み合わせて、所定の構造物を構築することがある。このようなものの例として、プレキャストコンクリート部材によって橋梁の壁高欄を構築する場合が挙げられる。
【0003】
壁高欄内には、橋軸方向に沿って電気又は通信用のケーブルを収容する管路が設けられる場合がある。プレキャストコンクリート部材によって壁高欄を構築する場合は、プレキャストコンクリート部材の製造時に管部材がコンクリート内に埋設され、工事現場において、互いに近接するプレキャストコンクリート部材の間に無収縮モルタル等の充填材が充填される。充填材が管路に侵入しないように、充填材を充填する前に、互いに近接するプレキャストコンクリート部材内の管部材を互いに接続する必要がある。しかし、互いに近接するプレキャストコンクリート部材間の隙間は作業員の手を差し込めない程度に狭いため、作業員の単純な手作業による管部材の接続は困難である。同様の問題は、壁高欄用のプレキャストコンクリート部材以外の構造体にもみられる。
【0004】
このような問題に対処するため、例えば、特許文献1には、一方のプレキャストコンクリート部材の管部材の端部に、圧縮コイルばねに付勢されてストッパーに係止された継手管部材を挿入しておき、他方のプレキャストコンクリート部材を配置した後、ストッパーを取り外すことにより、圧縮コイルばねの付勢力によって継手管部材を移動させ、その一端部を他方のプレキャストコンクリート部材の管部材に接続する方法が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、一方のプレキャストコンクリート部材の管部材の端部に継手管部材を挿入しておき、他方のプレキャストコンクリート部材を配置した後、両部材の対向面とは反対側から治具(操作手段)を管部材に挿入し、治具を継手管部材の端面に係合させ、治具によって継手管部材を押し込み、又は引き寄せることにより、継手管部材の一端部を他方のプレキャストコンクリート部材の管部材に接続する方法が記載されている。更に、特許文献2には、一方のプレキャストコンクリート部材の管部材の端部に、紐状の治具(操作手段)を端面に係合させた継手管部材を挿入しておき、他方のプレキャストコンクリート部材を配置する際に、治具の取手部を他方のプレキャストコンクリート部材の管部材内に挿入し、取手部を他方のプレキャストコンクリート部材の管部材から引っ張ることにより、継手管部材の一端部を他方のプレキャストコンクリート部材の管部材に接続する方法が記載されている。この治具の取手部は、管部材の接続後に切断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2022-35011号公報
【特許文献2】特開2022-48620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1に記載の方法では、圧縮コイルばねという異物が管路に残るため、圧縮コイルばねがケーブルの管路への挿入を阻害するおそれがあり、また、圧縮コイルばねが錆びることによるケーブルへの悪影響が懸念された。特許文献2に記載の方法において、治具を継手管部材の円環形状の端面の全体に係合させた場合は、治具と管部材の内周面との間の摩擦力によって作業性が低下するおそれがあった。また、継手管部材の位置決めのために管部材に継手管部材の端面を係止する肩面が設けられている場合、継手管部材の移動方向の反対側の端面にはこれに当接している肩面によって治具を後から係合させることが難しかった。また、肩面が設けられている場合、継手管部材の移動方向の側の端面に治具を係合させて継手管部材を引き寄せる場合には、治具を引っ張る方向が肩面によって軸線方向に対して傾斜するため、作業性が低下するおそれがあるとともに、治具の一部が管部材内に残った。また、位置決めのための肩面が設けられていない管部材を使用すると、特許文献2に記載の治具は、一方の向きにしか継手管部材を移動させることができないため、継手管部材の位置の調整が困難となり、作業性が低下した。
【0008】
本発明は、以上の背景に鑑み、構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法であって、管内に異物を残さず、作業性の良い接続方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、第1管(6)を含む第1構造体(4)と、第2管(7)を含む第2構造体(5)とを互いに近接させるとともに、前記第1管と前記第2管とを継手管部材(18)によって互いに接続する方法であって、前記第1構造体を所定の位置に配置するとともに、前記第1管又は前記第2管内に前記継手管部材を挿入するステップと、前記第1管の延長線上に前記第2管が位置するように、前記第2構造体を前記第1構造体に近接する位置に配置するステップと、前記第1管及び前記第2管の何れか一方における前記第1管及び前記第2管の何れか他方に対向する側とは反対側の端部から、前記一方内に治具(10,31,41)を挿入するステップであって、前記治具は、前記一方の内径よりも細い太さを有する筒状又は棒状の軸部(12,32,42)と、前記軸部の先端に取り付けられた先端部(13,33,43)とを備え、前記先端部が前記継手管部材内に配置される、該ステップと、前記治具の前記先端部を前記継手管部材の内周面に解除可能に固定するステップと、前記治具を動かすことにより、前記継手管部材を移動させて、前記継手管部材を介して前記第1管及び前記第2管を互いに接続するステップと、前記先端部の前記内周面への固定を解除して、前記治具を前記継手管部材及び前記一方から抜き取るステップとを備える。
【0010】
この態様によれば、治具が継手管部材に解除可能に固定されるため、使用後の治具を管部材から抜き取ることができ、管内に異物が残らない。また、治具が継手管部材の比較的面積の大きな内周面に固定されるため、固定作業が容易であり、継手管部材を移動させる際に治具が不必要に他の管に接触して摩擦抵抗を受けることが抑制されるため、作業性が良い。
【0011】
上記の態様において、前記治具(10,31,41)は、前記軸部の後方に配置されて作業員が操作可能な操作部(14,34c,44b)を含み、前記治具の前記先端部(13,33,43)は、前記操作部の操作によって、前記継手管部材(18)内で前記内周面に対して、少なくとも2点で当接する位置と離間可能な位置との間で変位可能に構成されても良い。
【0012】
この態様によれば、治具の後端部に設けられた操作部によって先端部が変位するため、作業員は先端部の変位を容易に行える。
【0013】
上記の態様において、前記先端部(13)は、前記軸部(12)に連結した連結部(15)と、前記連結部から少なくとも2つに枝分かれした枝部(16)とを含み、前記枝部の少なくとも1つ(16b)が、その基端部において前記連結部に回動可能に連結し、かつ前記操作部の操作によって回動するように構成されていることにより、前記先端部が前記継手管部材(18)内で前記内周面に解除可能に固定されるべく、前記枝部の前記少なくとも1つの遊端が、前記枝部の少なくとも他の1つ(16a)に対して離間する向き及び近接する向きに変位可能である。
【0014】
この態様によれば、枝部の少なくとも1つの回動という比較的簡易な構成で、先端部の継手管部材の内周面への解除可能な固定が実現できる。
【0015】
上記の態様において、前記継手管部材(18)内に配置された前記先端部(33)は、作業員が前記操作部(34c)を引くことにより弾性変形して前記継手管部材の前記内周面に当接し、作業員が前記操作部を離すことにより弾性変形前の形状に戻って前記内周面から離間するように構成されても良い。
【0016】
この態様によれば、先端部の弾性変形という比較的簡易な構成で、先端部の継手管部材の内周面への解除可能な固定が実現できる。
【0017】
上記の態様において、枠形状を形成するように、前記枠形状が形成する面に直交する方向を軸線として互いに回動可能に連結された4つの枠部材(43a)と、前記枠部材の互いの連結によって形成される4つの角部(43b,43c,44d)とを含み、前記4つの角部は、前記軸部に固定さえる固定角部(43b)と、前記固定角部の対角線上に位置し、前記操作部の操作によって、前記固定角部に対して近接及び離間するように構成された変位角部(43c)と、互いに対角線上に位置して、前記継手管部材内に配置された時に、前記変位角部の前記固定角部に対する近接及び離間によって、互いに離間及び近接して前記継手管部材の前記内周面に当接及び離間するように構成されてた広狭変位角部(43d)を含んでも良い。
【0018】
この態様によれば、角部が回動可能に枠形状に連結された4つの枠部材という比較的簡易な構成で、先端部の継手管部材の内周面への解除可能な固定が実現できる。
【0019】
上記の態様において、前記先端部(13)の前記内周面に対する解除可能な固定は、前記先端部と前記内周面との間の摩擦力によるものであっても良い。
【0020】
この態様によれば、摩擦力による固定であるため、治具の先端部の継手管部材の内周面への固定が容易に解除でき、継手管部材の内周面を電気通信ケーブルの挿入を阻害しない軸線方向に平行な面とすることができる。
【0021】
上記課題を解決するために本発明のある態様は、第1管(6)を含む第1構造体(4)と、第2管(7)を含む第2構造体(5)と互いに近接させるとともに、前記第1管(6)と前記第2管とを継手管部材(18)によって互いに接続する方法であって、前記第1構造体を所定の位置に配置するとともに、前記第1管又は前記第2管内に、可撓性を有する線状又は帯状の治具(21)の中間部及び前記継手管部材を挿入するステップであって、前記治具の前記中間部を前記継手管部材の挿入側の端面に当接させる、該ステップと、前記第1管の延長線上に前記第2管が位置するように、前記第2構造体を前記第1構造体の隣に配置し、かつ、前記治具の両端部を前記第1構造体と前記第2構造体との隙間から前記第1管及び前記第2管の延在方向から見て前記第1構造体及び前記第2構造体の輪郭の外側に延出するように配置するステップと、前記治具の前記中間部が前記継手管部材の前記端面を押し込むように前記治具に引張力を加えることにより、前記継手管部材を移動させて、前記継手管部材を介して前記第1管及び前記第2管を互いに接続するステップと、前記治具の前記両端部の一方を解放して他方を引っ張ることにより、前記治具を前記第1管又は前記第2管から取り除くステップとを備える。
【0022】
この態様によれば、使用後の治具を接続構造から取り除くことができるため、異物が接続構造内に残らない。また、治具の中間部が継手管部材の端面に当接させる作業が容易であり、治具に引張力を加えるだけで継手管部材が移動するため、作業性が良い。
【0023】
上記の態様において、前記接続するステップにおいて、前記継手管部材(18)が移動する側に位置する前記第1管(6)又は前記第2管(7)と、前記継手管部材との何れか一方の内周面には、その何れか他方の端面を係止する肩面(7c)が形成されていても良い。
【0024】
この構成によれば、継手管部材が肩面に係止されるため、継手管部材の位置決めが容易になる。
【0025】
上記態様において、前記第1構造体(4)及び前記第2構造体(5)は、それぞれ、橋梁の壁高欄(1)用のプレキャストコンクリート部材であっても良い。
【0026】
この態様によれば、第1及び第2構造体は、接合鉄筋によって床版又は地覆に対する水平方向の移動の自由度が制限されているため、近接させて配置した後は第1及び第2構造体の水平方向への移動が不要な上記接続方法が好適である。
【発明の効果】
【0027】
以上の態様によれば、構造体に含まれる管と他の構造体に含まれる管との接続方法であって、管内に異物を残さず、作業性の良い接続方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施形態に係る壁高欄の構築途中の状態を模式的に示す斜視図
図2】第1実施形態に係る治具を示す平面図
図3】第1実施形態に係る接続方法を示す説明図
図4】第1実施形態に係る接続方法を示す説明図
図5】第1実施形態に係る接続方法を示す説明図
図6】第2実施形態に係る接続方法を示す説明図
図7】第2実施形態に係る接続方法を示す説明図
図8】第2実施形態に係る接続方法を示す説明図
図9】第2実施形態に係る接続方法を示す説明図
図10】第3実施形態に係る接続方法を示す説明図
図11】第4実施形態に係る接続方法を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、実施形態に係る接続方法を説明する。図1は、橋梁の壁高欄1の構築途中の状態を模式的に示す斜視図である。図1に示すように、壁高欄1は、床版2の端部に設置された地覆3上に設置される。壁高欄1は、プレキャストコンクリート部材からなる複数の構造体4,5を橋軸方向に連続して設置することにより構築される。以下、2つの構造体4,5に着目して説明する。2つの構造体4,5の内、先に地覆3上に配置されるものを第1構造体4と記し、第1構造体4よりも後にこれに近接するように配置されるものを第2構造体5と記す。
【0030】
第1構造体4は、鉄筋コンクリート造のプレキャストコンクリート部材であって、橋軸方向に延在し、両端部が第1構造体4のコンクリート部4aの橋軸方向の端面に開口した1つ又は複数の第1管6を含む。第1構造体4は、工場にて、鉄筋(図示せず)及び第1管6が配置された型枠(図示せず)内にコンクリートを打設することによって製造される。第1管6は、例えば、樹脂を素材とする筒状の部材である。
【0031】
同様に、第2構造体5は、鉄筋コンクリート造のプレキャストコンクリート部材であって、橋軸方向に沿って直線状に延在し、両端部が第2構造体5のコンクリート部5aの橋軸方向の端面に開口した、第1管6と同数の第2管7を含む。第2構造体5は、工場にて、鉄筋(図示せず)及び第2管7が配置された型枠(図示せず)内にコンクリートを打設することによって製造される。第2管7は、例えば、樹脂を素材とする筒状の部材である。
【0032】
第1及び第2構造体4,5のコンクリート部4a,5aの下面から下方に向かって複数の接合鉄筋8が突出しており、地覆3の上面は、接合鉄筋8を受容する受容孔9が設けられている。第1及び第2構造体4,5と地覆3との間、並びに受容孔9には無収縮モルタル等の充填材(図示せず)が充填される。第1管6及び第2管7は、第1構造体4及び第2構造体5を地覆上の所定の位置に配置した時、橋軸方向に整合するようにその位置が設定されている。第1管6及び第2管7は、電気及び/又は通信用のケーブル(図示せず)を受容するための管路として使用される。
【0033】
図2は、第1管6と第2管7(図1参照)とを互いに接続するために使用される治具10を示す。治具10は、作業員に把持される後端部11と、後端部11から直線状に延出する軸部12と、軸部12の先端に取り付けられた先端部13とを備える。後端部11は、作業員に操作されるレバーからなる操作部14を含む。軸部12は、筒状又は棒状の部材であって、第2構造体5(図1参照)の橋軸方向の長さよりも長い長さを有し、第2管7の内径よりも細い太さを有する。軸部12は、長さの異なる別の第2構造体5に対しても治具10を使用できるように、外筒部12aと、外筒部12a内に部分的に収容されてスライド移動可能な内筒部12bとを含むことによって伸縮可能であることが好ましい。先端部13は、軸部12に連結した連結部15と、連結部15から2つに枝分かれした枝部16とを含む。先端部13における軸部12の延在方向に直交する方向の最大幅は、枝部16の変位によって、継手管部材18の内径以上の値と、継手管部材18の内径未満の値との間で変化する。
【0034】
枝部16は、連結部15に固定された第1枝部16aと、その基端部において軸部12の延在方向に直交する方向の軸線回りに回動可能に連結部15にピン結合された第2枝部16bとを含む。操作部14及び第2枝部16bは、作業員がレバーである操作部14を引くことによって、第2枝部16bの遊端が第1枝部16aから離間する向きに変位し(図2において二点鎖線で示す状態)、作業員が操作部14を離すと、操作部14が元の位置に戻るとともに、第2枝部16bの遊端が第1枝部16aに近接する向きに変位するように、構成されている。枝部16の遊端側の外周面には、摩擦係数が比較的高く、樹脂製の第1及び第2管6,7に衝突しても第1及び第2管6,7を傷つけにくいゴム等の素材が用いられることが好ましい。
【0035】
図3図5は、第1管6と第2管7との互いの接続方法を説明する水平断面図である。まず、図5(B)を参照して、第1管6と第2管7との互いの接続構造を説明する。
【0036】
第1構造体4及び第2構造体5は、無収縮モルタル等の充填材17を介して互いに隣接している。第1構造体4は、鉄筋(図示せず)と、コンクリート部4aと、第1管6とを含み、第2構造体5は、鉄筋(図示せず)と、コンクリート部5aと、第2管7とを含む。第1管6及び第2管7は、継手管部材18を介して互いに接続している。
【0037】
第1管6は、第1構造体4のコンクリート部4aを橋軸方向に貫通する管路を形成し、その橋軸方向の端面は、コンクリート部4aの表面と略面一である。第1管6は、所定の径を有して橋軸方向に延在する本体部6aと、本体部6aよりも大きな径を有するように第2管7に対向する側の端部に設けられた拡径端部6bを含む。本体部6aと拡径端部6bとの間には、第2構造体5に対向する肩面6cが形成されている。拡径端部6bは、継手管部材18の挿入をガイドするべく、第2管7に対向する端面の近傍において、端面に向かうにつれて拡径するように傾斜するガイド部6dを有する。第1管6の素材は、樹脂であることが好ましい。
【0038】
第2管7は、第2構造体5のコンクリート部5aを橋軸方向に貫通する管路を形成し、その橋軸方向の端面は、コンクリート部5aの表面と略面一である。第2管7は、所定の径を有して橋軸方向に延在する本体部7aと、本体部7aよりも大きな径を有するように第1管6に対向する側の端部に設けられた拡径端部7bを含む。本体部7aと拡径端部7bとの間には、第1構造体4に対向する肩面7cが形成されている。拡径端部7bは、継手管部材18の挿入をガイドするべく、第1管6に対向する端面の近傍において、端面に向かうにつれて拡径するように傾斜するガイド部7dを有する。本体部7aの内径は、第1管6の本体部6aの内径に等しいことが好ましい。第2管7の素材は、樹脂であることが好ましい。
【0039】
継手管部材18は、橋軸方向に延在して両端が開口した円筒形状の筒体18aと、筒体18aの両端部近傍における外周面に巻きつけられたシール部材18bとを含む。筒体18aの内径は、第1管6の本体部6aの内径及び第2管7の本体部7aの内径に等しいことが好ましい。筒体18aの素材は、樹脂であることが好ましい。シール部材18bは、シール性を高めるために、充填材17の水分を吸収して膨張する水膨張性不織布等の素材を用いることが好ましい。継手管部材18は、シール部材18bが巻かれた部分において最大外径を有し、この最大外径は、継手管部材18を第1及び第2管6,7の拡径端部6b,7b内に挿入でき、かつ挿入時に両者の間をシールできるように、第1及び第2管6,7の拡径端部6b,7bの内径に略一致する。また、継手管部材18の橋軸方向の長さは、第1管6の拡径端部6bの橋軸方向の長さに略等しく、第1構造体4と第2構造体5との間の距離と第2管7の拡径端部7bの橋軸方向の長さとの和よりも長い。作業員が、継手管部材18が第1及び第2管6,7を接続する位置に移動したことを、第1構造体4と第2構造体5との隙間から容易に確認できるように、筒体18aの外周面のおける、2つのシール部材18bの間の部分には、例えば黄色等の視認性の高い色のテープ(図示せず)を貼り付けておくことが好ましい。
【0040】
図3図5を参照して、第1管6と第2管7との互いの接続方法を説明する。
【0041】
図3に示すように、作業員は、揚重機(図示せず)を用いて、第1構造体4を所定の位置(地覆3上、図1参照)に配置し、手作業で、継手管部材18を第1管6の拡径端部6bに挿入する。この時、第1管6のガイド部6dが継手管部材18の拡径端部6bへの挿入をガイドする。継手管部材18における第1管6への挿入側の端面が、第1管6の肩面6cに係止されることによって、継手管部材18の位置決めがなされる。なお、継手管部材18の第1管6への挿入は、第1構造体4の所定の位置への配置の前に行っても良いが、第1構造体4の所定の位置への配置中に継手管部材18が落下することを防ぐため、第1構造体4の所定の位置への配置後に行うことが好ましい。
【0042】
次に、作業員は、図4(A)に示すように、揚重機(図示せず)を用いて、第2構造体5を、地覆3(図1参照)上であって、第1構造体4に所定の隙間をおいて近接する位置に、第2管7が第1管6の延長線上に位置するように、配置する。
【0043】
次に、作業員は、図4(B)に示すように、第2管7における第1管6に対向する側とは反対側の端部から第2管7内に治具10を挿入する。作業員は、治具10を、先端部13から第2管7内に挿入し、先端部13が継手管部材18内に到達するまで前進させる。治具10を操作する作業員は、他の作業員が第1構造体4と第2構造体5の隙間から目視で先端部13が継手管部材18内に到達したことを確認した後、操作部14(図2参照)を操作して、第2枝部16bを第1枝部16aから径方向に離間する向きに変位させ、第1枝部16a及び第2枝部16bの遊端側の部分を継手管部材18の筒体18aの内周面に押し付けるように当接させる。第1枝部16a及び第2枝部16bの遊端側の部分と継手管部材18の内周面との間の摩擦力により、先端部13が継手管部材18の内周面に解除可能に固定される。
【0044】
次に、作業員は、図5(A)に示すように、治具10を引き寄せることにより、治具10の先端部13に固定された継手管部材18を第2管7に向けて移動させ、その一端部を第2管7の拡径端部7b内に受容させる。この時、第2管7のガイド部7dが継手管部材18の拡径端部7bへの挿入をガイドする。継手管部材18における第2管7への挿入側の端面が、第2管7の肩面7cに係止されることによって、継手管部材18の位置決めがなされる。
【0045】
次に、作業員は、治具10の操作部14(図2参照)を元の位置に戻すことにより、第2枝部16bを第1枝部16aに近接する向きに変位させ、先端部13の継手管部材18の筒体18aの内周面への固定を解除し、第2管7から治具10を引き抜く。次に、作業員は、図5(B)に示すように、第1構造体4と第2構造体5との隙間に充填材17を充填する。
【0046】
なお、第1管6における拡径端部6bとは反対側の端部は、第2管7の拡径端部7bと同様の形状を有し、第2管7における拡径端部7bとは反対側の端部は、第1管6の拡径端部6bと同様の形状を有する。すなわち、第1管6と第2管7とは、互いに同様の構造を有する。第2構造体5における第1構造体4とは反対側に、第1及び第2構造体5と同様の構造を有する他の構造体(図示せず)を配置した場合、第2構造体5を第1構造体4とみなし、他の構造体を第2構造体5とみなして、上記の接続方法が適用できる。このように、連続的に、第1及び第2管6,7が接続されていくため、治具10は、第1管6(連結済みの複数の管)から挿入することもできるが、継手管部材18までの距離が短い第2管7から挿入することが好ましい。
【0047】
図1図5を参照して、第1実施形態の作用効果について説明する。
【0048】
治具10の先端部13の第1及び第2枝部16a,16bが、互いに近接離間方向に変位するため、治具10の先端部13が、継手管部材18の筒体18aの内周面に摩擦力によって固定される。摩擦力による固定であるため、治具10の先端部13の継手管部材18の内周面への固定が容易に解除でき、継手管部材18の内周面を電気通信ケーブルの挿入を阻害しない軸線方向に平行な面とすることができる。固定の解除が可能であるため、治具10の全体を継手管部材18及び第2管7から取り出すことができ、治具10が第1管6、第2管7及び継手管部材18内の何れにも残らない。
【0049】
治具10が継手管部材18の内周面に解除可能に固定されるため、治具10の先端部13が第1及び第2管6,7に直接に衝当することはないため、両者間に摩擦抵抗はなく、治具10によって継手管部材18を変位させる作業が容易である。また、継手管部材18の内周面の面積が、継手管部材18の軸線方向の端面の面積に比べて大きいため、治具10の継手管部材18の内周面への固定が容易である。
【0050】
治具10の後端部11に設けられた操作部14によって枝部16が変位するため、作業員は枝部16の変位を容易に行える。枝部16の変位によって先端部13の幅が変わるため、比較的簡易な構成で、先端部13の継手管部材18の内周面への解除可能な固定が実現できる。
【0051】
第1管6が肩面6cを有するため、継手管部材18の軸線方向(延在方向)の端面が肩面6cに係止されることにより、継手管部材18の第1管6への挿入時の位置決めが容易となる。また、継手管部材18の第1管6に対する位置が安定するため、他の作業員が第1及び第2構造体4,5の隙間から目視することにより、治具10の枝部16が継手管部材18内にあるか否かを確実に判断できる。
【0052】
第2管7が肩面7cを有するため、継手管部材18の軸線方向の端面が肩面7cに係止されることにより、継手管部材18の第1及び第2管6,7を接続する位置の位置決めが容易となる。なお、第1及び/又は第2構造体4,5の設置位置の施工誤差等により、継手管部材18の位置の微調整が必要な場合や、第2管7が肩面7cを有さないように上記実施形態を変形した場合でも、筒状又は棒状の軸部12を含む治具10によって、継手管部材18を引き寄せる向き及び押し込む向きの双方に変位させることができるため、他の作業員が第1及び第2構造体4,5の隙間から目視することにより、治具10によって変位させる時の継手管部材18の位置の調整が容易である。
【0053】
接合鉄筋8が受容孔9に受容されているため、第1及び第2管6,7が互いに橋軸方向に整合した状態において、第2構造体5は橋軸方向に大きく動かせない。このように、第1及び第2管6,7の軸線方向への移動の自由度が小さい第2構造体5に含まれる第2管7の接続に、上記実施形態は好適である。
【0054】
次に、図6図9及び図5(B)を参照して、本発明に係る第2実施形態を説明する。説明に当たって、第1の実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。図6図9は、第1管6と第2管7との互いの接続方法を説明する水平断面図である。第2実施形態に係る方法によって構築された接続構造は、図5(B)に示す第1実施形態のものと同様である。
【0055】
図6に示すように、第2実施形態に係る接合方法は、第1実施形態とは異なる治具21を使用する。治具21は、可撓性を有する線状又は帯状の用具である。治具21は、薄く、摩擦係数が小さいものであることが好ましく、例えば、ポリプロピレン等の樹脂製の紐若しくは糸、又は紡績糸等である。
【0056】
図6に示すように、作業員は、揚重機(図示せず)を用いて、第1構造体4を所定の位置(地覆3上、図1参照)に配置し、第1管6の中心軸線の延長線に交差するように、好ましくは直交するように、治具21を真っ直ぐに配置する。治具21は、水平方向に延在することが更に好ましい。
【0057】
次に、作業員は、図6及び図7に示すように、第1管6の拡径端部6bに対して軸線方向の正面に継手管部材18を配置し、継手管部材18を治具21の中間部と一緒に第1管6の拡径端部6bに、肩面6cに係止されるまで押し込む。このため、治具21の中間部は、継手管部材18の軸線方向における挿入側の端部に当接した状態となる。なお、第1実施形態と同様に、継手管部材18の第1管6への挿入は、第1構造体4の所定の位置への配置の前に行っても良いが、第1構造体4の所定の位置への配置中に継手管部材18が落下することや、治具21の位置がずれることを防ぐため、第1構造体4の所定の位置への配置後に行うことが好ましい。
【0058】
次に、作業員は、図8に示すように、揚重機(図示せず)を用いて、第2構造体5を、地覆3(図1参照)上であって、第1構造体4に対して所定の隙間をおいて近接する位置に、第2管7が第1管6の延長線上に位置するように、配置する。この時、軸線方向から見て、治具21の両端部は、第1及び第2構造体4,5の輪郭の外側に配置される。好ましくは、治具両端部は水平方向の互いの反対側に延出している。従って、治具21は、第1構造体4の幅に、継手管部材18の軸線方向の長さの2倍を加えた値よりも大きな長さを有する。
【0059】
次に、作業員は、図9に示すように、治具21の両端部に互いに反対向きの引張力を加えることにより、治具21の中間部に継手管部材18の端面を押し込ませ、継手管部材18を第2管7に向けて肩面7cに係止されるまで移動させ、その一端部を第2管7の拡径端部7b内に受容させる。ここで、作業員は、治具21の両端部を引っ張っても良く、治具21の一端部を第1構造体4又は第2構造体5等に固定し、他端部を引っ張っても良い。また、治具21の中間部が継手管部材18を第2管7に向かって押し込むように変位すれば、作業員が治具21の端部を引っ張る向きはどのような向きでも良い。例えば、図示するように、軸線方向に直交する水平方向の互いの反対向きに治具21の両端部が引っ張られても良く、また、第1構造体4の互いに反対側の表面に沿って互いに同一の向きに治具21の両端部が引っ張られても良い。
【0060】
次に、作業員は、治具21の一端部を解放し、他端部を引っ張ることによって、治具21を第1管6から取り除く。次に、作業員は、図5(B)に示すように、第1構造体4と第2構造体5との隙間に充填材17を充填する。
【0061】
図6図9及び図5(B)を参照して、第2実施形態の作用効果について説明する。治具21は、使用後に取り除くことができ、構築された接合構造内に残らない。治具21の中間部が端面に当接した状態で、継手管部材18を第1管6に挿入するため、治具21の継手管部材18の端面への当接の確実性が高く、作業性が良い。継手管部材18の直径方向に沿って延在する治具21の中間部が、継手管部材18を押し込むため、継手管部材18が軸線方向に対して傾きにくく、作業性が良い。第2実施形態に係る方法は、治具21が第1管6の拡径端部6b内、及び、第1構造体4と第2構造体5との隙間を通るため、第1及び第2管6,7の軸線方向が湾曲している構造に対しても適用可能である。
【0062】
第1管6の肩面6c及び第2管7の肩面7cは、第1実施形態と同様の作用効果を有する。更に、第2管7の肩面7cは、治具21を取り除く時に、継手管部材18を係止することによってその変位を防止する。
【0063】
図10を参照して、本発明に係る第3実施形態を説明し、図11を参照して本発明に係る第4実施形態を説明する。説明に当たって、第1の実施形態と共通する構成は、その説明を省略し同一の符号を付す。第3及び第4実施形態に係る方法によって構築された接続構造は、図5(B)に示す第1実施形態のものと同様である。
【0064】
図10に示すように、第3実施形態に係る治具31は、筒状の軸部32と、軸部32の先端側に固定された円環形状(ドーナツ形状)の弾性部材を含む先端部33と、軸部32の内部に挿通された長尺部材34とを備える。
【0065】
軸部32は、筒形状の部材であって、先端部33よりも高い剛性を有する。軸部32は、例えば、鋼材や樹脂を素材とする。軸部32は、第2構造体5(図1参照)の橋軸方向の長さよりも長い長さを有し、第2管7(図5参照)の内径よりも細い太さを有する。軸部32は、その長さ方向に伸縮可能であっても良い。
【0066】
先端部33は、ゴム等を素材とする弾性体を含む。先端部33は、円環形状の中心穴の貫通方向が軸部32の長さ方向に直交するように、円環形状の直径方向の一端部において軸部32の先端に固定される。先端部33は、軸部32の長さ方向の圧縮力を受けると、中心穴がつぶれるように変形することにより、軸部32の長さ方向に直交する方向に継手管部材18の内径以上に膨らむように構成されている。
【0067】
長尺部材34は、筒状の軸部32の内径よりも細くて軸部32内に挿通される、棒状、パイプ状又は紐状の挿通部34aと、挿通部34aの先端に取り付けられた係止部34bとを含む。挿通部34aの先端側の部分と後端側の部分とは、軸部32内から突出しており、後端側の部分は、作業員が長尺部材34を後方に向けて引っ張るための操作部34cとなっている。係止部34bは、長尺部材34が後方に引っ張られた時に、先端部33に対して軸部32の長さ方向の圧縮力を加えるように、先端部33における軸部32の固定された部分に対する円環形状における直径方向の反対側の部分に係止される。
【0068】
図11に示すように、第4実施形態に係る治具41は、筒状の軸部42と、軸部42の先端側に固定された菱形の枠形状を呈する先端部43と、軸部42の内部に挿通された長尺部材44とを備える。
【0069】
軸部42は、筒形状の部材であって、例えば、鋼材や樹脂を素材とする。軸部42は、第2構造体5(図1参照)の橋軸方向の長さよりも長い長さを有し、第2管7(図5参照)の内径よりも細い太さを有する。軸部42は、その長さ方向に伸縮可能であっても良い。
【0070】
先端部43は、菱形の枠形状を形成するように互いに両端部で連結され、直線状に延在して互いに等しい長さを有する細長い4つの板形状の枠部材43aを含む。枠部材43a同士は、菱形を形成する面に直交する方向を軸線として回動可能に連結され、かつ、先端部43は、菱形の角部の1つである固定角部43bにおいて、軸部42の先端に取り付けられている。このため、枠部材43a同士が互いに回動することにより、先端部43における固定角部43bの対角線上にある変位角部43cが、軸部42の先端に対して近接・離間するように変位するとともに、残りの対角線上にある1対の広狭変位角部43dが、軸部42の延在方向に直交する方向に、すなわち、先端部43が継手管部材18に配置された時における継手管部材18の直径方向に、互いに離間・近接するように変位する。
【0071】
長尺部材44は、筒状の軸部42の内径よりも細くて軸部42内に挿通される、棒状又はパイプ状の部材の挿通部44aを含む。挿通部44aの先端側の部分は、軸部42の先端から突出しており、先端部43の変位角部43cを押し引き可能なように変位角部43cに係止される。挿通部44aの後端側の部分は、軸部42の後端から突出し、作業員が長尺部材44を前後に押し引きするための操作部44bとなっている。挿通部44aは、操作部44bを押しだして先端部43を変形させても座屈しない剛性を有する。
【0072】
第1実施形態では、図2及び図4(B)に示すように、作業員が操作部14のレバーを引くことにより、先端部13が継手管部材18の内周面に解除可能に固定され、作業員が操作部14のレバーを離すことにより、その固定が解除された。一方、第3実施形態では、図10に示すように、作業員が操作部34cを後方に引くことにより、先端部33が継手管部材18の直径方向に膨らんで継手管部材18の内周面に解除可能に固定され、作業員が操作部34cを離すことにより、先端部33の弾性によって先端部33の形状が元に戻ってその固定が解除される。また、第4実施形態では、図11に示すように、作業員が操作部44bを後方に引くことにより、先端部43が継手管部材18の直径方向に拡がって継手管部材18の内周面に解除可能に固定され、作業員が操作部44bを先端に向かって押し出すことにより、先端部43が継手管部材18の直径方向に狭まってその固定が解除される。図10及び図11に示すように、第3及び第4実施形態における第1管6と第2管7(図5(b)参照)との互いの接続方法は、上記のように、先端部33,43の継手管部材18への固定と解除のための操作方法が第1実施形態と異なるが、その他の作業は、第1実施形態と同様である。第3及び第4実施形態における軸部32,42は、先端部33,43の継手管部材18への固定と解除のための操作時に、作業員が操作部34c,44bを操作するのとは反対側の手で軸部32,42の後端部分を把持できる長さに構成されている。
【0073】
第3及び第4実施形態の治具31,41によっても、比較的簡易な構成で、先端部33,43の継手管部材18の内周面への解除可能な固定が実現できる。第1実施形態と同様の理由により、継手管部材18の内周面を電気通信ケーブルの挿入を阻害しない軸線方向に平行な面とすることができ、治具31,41が第1管6、第2管7(図5(B)参照)及び継手管部材18内の何れにも残らず、継手管部材18を変位させる作業が容易であり、治具31,41の継手管部材18の内周面への固定が容易である。
【0074】
以上で具体的な実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態や変形例に限定されることなく、幅広く変形実施することができる。例えば、第1実施形態における操作部14は、レバーに代えてボタン等であっても良い。
【0075】
第1実施形態における第1枝部16aは、第2枝部16bと同様に回動可能としても良い。先端部13が、3つ以上の枝部16を含んでも良く、この場合、少なくとも1つの枝部16は、その遊端が少なくとも1つの他の枝部16に対して継手管部材18の径方向に近接離間するように、回動可能に構成される。また、先端部13は、複数の枝部16を有することに代えて、操作部14の操作によって、軸部12の延在方向に直交する方向に膨張及び収縮する風船状の部材によって形成されても良い。また、先端部13に固定された継手管部材18を移動させる時に、作業員は、治具10の全体を動かすことに代えて、軸部12を伸縮させても良い。
【0076】
第1、第3及び第4実施形態において、継手管部材18の内周面が軸線方向に沿った凹凸を有し、その凹凸に互いに離間した状態の第1枝部16a及び第2枝部16b、先端部33又は広狭変位角部43dが係合しても良い。
【0077】
第1~第4実施形態において、第1及び/又は第2管6,7は、拡径端部6b,7b及び肩面6c,7cを有さなくとも良い。第2実施形態において肩面7cを有さない第2管7を用いる場合は、作業員は、治具21を取り除く際に、第1及び第2構造体4,5の隙間から棒状の工具を差し込み、その工具によって継手管部材18を移動させないように押さえることが好ましい。
【0078】
第1~第4実施形態において、第2管7が、第2構造体5のコンクリート部5a内に埋設された拡径端部7bに代えて、コンクリート部5aから突出した端部を有し、継手管部材18における第2管7に接合する端部が、拡径されており、第2管7の突出した端部を内部に受容しても良い。
【0079】
第1~第4実施形態において、拡径端部6b,7bの形状を互いに入れ替えた構造において、作業員は、第2構造体5の所定の位置への配置前に、第2管7に継手管部材18を挿入し、第2構造体5の所定の位置への配置後に、治具10,21,31,41を用いて、第1管6に向けて継手管部材18を移動させても良い。この変形例において、上述の変形例と同様に、第1管6の第2構造体5側の端部が、第1構造体4のコンクリート部4aから突出した端部を有し、継手管部材18における第1管6に接合する端部が、拡径されており、第1管6の突出した端部を内部に受容するように、更に変形しても良い。
【0080】
第1~第4実施形態において、第1管6及び第2管7は、筒状の部材によって形成されることに代えて、コンクリート部4a,5aの内表面によって画成されても良く、電気通信ケーブルを収容することに代えて、PC緊張材を収容する等、他の目的で使用されても良い。また、壁高欄1を構成する第1及び第2構造体4,5は、地覆3ではなく、床版2上に配置されても良い。第1及び第2構造体4,5は、端部に開口した管を含む構造体であれば、壁高欄用のプレキャストコンクリート部材でなくても良い。例えば、第1及び第2構造体4,5は、壁高欄用以外の、例えば床版用の、プレキャストコンクリート製の構造体でも良く、また、第1及び第2管6,7が横梁をなす橋梁用防護柵を構築するための鋼製の構造体でも良い。
【符号の説明】
【0081】
1 :壁高欄
4 :第1構造体
5 :第2構造体
6 :第1管
6a :本体部
6b :拡径端部
6c :肩面
7 :第2管
7a :本体部
7b :拡径端部
7c :肩面
10,21,31,41:治具
12,32,42:軸部
13,33,43:先端部
14,34c,44b:操作部
15 :連結部
16 :枝部
16a :第1枝部
16b :第2枝部
18 :継手管部材
43a :枠部材
43b :固定角部
43c :変位角部
43d :広狭変位角部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11