(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081943
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末
(51)【国際特許分類】
B22F 1/00 20220101AFI20240612BHJP
H01B 1/02 20060101ALI20240612BHJP
B22F 1/052 20220101ALI20240612BHJP
B22F 1/06 20220101ALI20240612BHJP
【FI】
B22F1/00 L
H01B1/02 A
B22F1/052
B22F1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195549
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000239426
【氏名又は名称】福田金属箔粉工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100173406
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 真貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100067301
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 順一
(72)【発明者】
【氏名】江▲崎▼ 一成
(72)【発明者】
【氏名】福田 守孝
【テーマコード(参考)】
4K018
5G301
【Fターム(参考)】
4K018AA04
4K018AC01
4K018BA02
4K018BB04
4K018BD04
5G301AA08
5G301AA27
5G301AD06
(57)【要約】
【課題】
銅の融点との間に差がある材料の基板に使用したとしても、焼結時の収縮速度の差によって剥離したり、クラックが入ったりし難いため、セラミック基板上の電極や回路の作製に使用する導電性ペーストの金属フィラーに好適に使用することができ、しかも、微小無機酸化物を添加するという乾式の簡便な方法で所望の焼結遅延性に調節できる銅系粉末を提供する。
【解決手段】
銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末であって、微小無機酸化物の総比表面積/銅系金属粉末の総比表面積で表される比が0.001以上かつ1000以下である銅系粉末。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末であって、微小無機酸化物の総比表面積/銅系金属粉末の総比表面積で表される比が0.001以上かつ1000以下である銅系粉末。
【請求項2】
前記微小無機酸化物の平均粒子径が100nm以下である請求項1記載の銅系粉末。
【請求項3】
前記微小無機酸化物がSiO2、Al2O3、TiO2、MgOから選択される1以上の微小無機酸化物である請求項1又は2記載の銅系粉末。
【請求項4】
導電性ペーストの金属フィラーである請求項1又は2記載の銅系粉末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末に関する。詳しくは、該銅系粉末は、焼結遅延性が向上した銅系粉末だから、銅の融点との間に差がある材料の基板に使用したとしても、焼結時の収縮速度の差によって剥離したり、クラックが入ったりし難いため、セラミック基板上の電極や回路の作製に使用する導電性ペーストの金属フィラーに好適に使用することができ、しかも、微小無機酸化物を添加するという乾式の簡便な方法で所望の焼結遅延性に調節できる銅系粉末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック基板上において電極や回路を形成するための材料として、銅、ニッケル、銀又は白金等の金属粒子が使用されている。
【0003】
銅は比較的安価であるため電極や回路の形成材料としてよく使用されるが、セラミック基板に使用して焼結する場合、銅の融点は約1080℃であるのに対して、セラミックは2000℃以上であって融点に差があるため、昇温過程においてセラミックの焼結が開始する前に銅の焼結が進行し、銅とセラミックの収縮速度に差が生じることがある。
【0004】
収縮速度に差が生じると、銅層とセラミック層の間に剥離が生じたり、銅層にクラックが入ったりという問題がある。
【0005】
そこで、セラミックのような銅の融点との間に差がある材料の基板に使用したとしても、銅層とセラミック層の間に剥離が生じたり、銅層にクラックが生じたりし難い銅系金属粉末の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1には、Si、Ti、Al又はZrを含有するカップリング剤で表面処理した金属粉は焼結遅延性が向上することが記載されている。
【0008】
しかし、カップリング剤による表面処理は湿式の方法であって液中で行う必要があるため作業工程が長くて複雑であり、脱水や乾燥によって金属粒子の凝集が発生し易いという問題がある。
【0009】
また、湿式の方法は被膜量の調整が困難であるため、簡便に焼結遅延性を調節できないという問題がある。
【0010】
さらに、金属粉の表面に有機成分が残留するため、焼結時にガスが発生して加熱炉の内部を汚染する虞があるという問題がある。
【0011】
本発明者らは、前記諸問題点を解決することを技術的課題とし、数多くの試作と評価を重ねた結果、銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末であって、微小無機酸化物の総比表面積/銅系金属粉末の総比表面積で表される比が0.001以上かつ1000以下である銅系粉末であれば、乾式の簡便な方法で銅系粉末の焼結遅延性を向上させることができ、セラミック基板のように銅の融点との間に差がある基板に使用したとしても、焼結時の収縮速度の差によって剥離したり、クラックが入ったりし難い銅系粉末になるという刮目すべき知見を得て、前記技術的課題を達成したものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術的課題は次のとおりの本発明によって解決できる。
【0013】
本発明は、銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末であって、微小無機酸化物の総比表面積/銅系金属粉末の総比表面積で表される比が0.001以上かつ1000以下である銅系粉末である。
【0014】
また本発明は、前記微小無機酸化物の平均粒子径が100nm以下である前記の銅系粉末である。
【0015】
また本発明は、前記微小無機酸化物がSiO2、Al2O3、TiO2、MgOから選択される1以上の微小無機酸化物である前記の銅系粉末である。
【0016】
また本発明は、導電性ペーストの金属フィラーである前記の銅系粉末である。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、「微小無機酸化物の総比表面積/銅系金属粉末の総比表面積」で表される比が0.001以上かつ1000以下である微小無機酸化物を含有する銅系粉末であるから、銅系金属粉末粒子表面に微小無機酸化物が付着することで、銅系金属粉末粒子どうしが接触し難くなり、粒子間での銅や合金元素の拡散が阻害されて焼結が進行し難くなるため、焼結遅延性が向上すると考えられる。
【0018】
本発明における銅系粉末は焼結遅延性が向上しているから、セラミック基板のような銅の融点との間に差がある材料の基板に使用したとしても、セラミックの焼結が開始する前に、銅系金属粉末の焼結が進行することが生じ難いため、銅層とセラミック層との剥離や、クラックが生じ難い銅系粉末である。
【0019】
本発明によれば、銅系金属粉末に微小無機酸化物を添加するという乾式の方法で焼結遅延性を向上させることができるから、簡便な方法で所望の焼結遅延性に調節できる銅系粉末である。
【0020】
また、微小無機酸化物が100nm以下の、SiO2、Al2O3、TiO2、MgOから選択される1以上の微小無機酸化物であれば、さらに焼結遅延性が向上した銅系粉末になる。
【0021】
したがって、本発明における銅系粉末は、導電性ペーストの金属フィラーに好適に使用できる銅系粉末である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明における銅系粉末(実施例1)の焼結開始温度の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末である。
【0024】
本明細書において銅系金属粉末とは、原料粉である銅粉末、銅合金粉末、及び、銅粉末と銅合金粉末の混合粉末を言う。
【0025】
本発明における銅系金属粉末のBET比表面積(以下「SSA2」)と言う)は、0.01m2/g以上かつ10m2/g以下が好ましく、さらに好ましくは、0.1m2/g以上かつ5.0m2/g以下である。
【0026】
電子部品の小型化の要請が高まるにつれて、材料である銅系金属粉末自体も微小化が要求されるため、銅系金属粉末粒子のBET比表面積は大きい方が好ましいが、比表面積が大きくなると、銅系金属粉末のハンドリング性が低下し、また、空気中での酸化の影響も大きくなるため使用が困難になるからである。
【0027】
本発明における銅系金属粉末のメディアン径D50は0.1μm~30μmであることが好ましく、より好ましくは、0.1μm~10μmである。
【0028】
0.1μm未満では粉末のハンドリング性が低下し、酸化の影響を大きく受けると共に、粉末の価格も上がるからであり、また、30μmより大きければ小型の電子部品への使用が困難になるからである。
【0029】
本発明におけるD50はレーザー回折式粒度分布測定により求められる体積基準のメディアン径を言う。
【0030】
本発明における銅系金属粉末は銅粉末に限定されず、銅合金粉末又は銅粉末と銅合金粉末の混合粉末であってもよい。
【0031】
合金元素は特に限定されないが、Sn、Zn、Ni、Cr、P、Si、Mn、Fe、Co、Ag、Au、Al、Pb、Bi、In、Te、Ti、P、Bを例示する。
【0032】
これらの合金元素を添加すれば、強度や耐食性が向上し、導電材料として有効に機能する場合があるからである。
【0033】
合金元素の量は特に限定されるものではないが、50wt%以下が好ましく、より好ましくは30wt%以下である。
【0034】
本発明における原料粉の銅系金属粉末は不可避不純物を含んでいてもよい。
【0035】
(微小無機酸化物)
本発明は銅系金属粉末と微小無機酸化物を含有する銅系粉末である。
【0036】
微小無機酸化物は特に限定されないが、SiO2、Al2O3、TiO2、MgO、ZrO2、Y2O3、CaO、ムライト及びこれらの混合物を例示する。
【0037】
本発明における微小無機酸化物の平均粒子径は100nm以下であることが好ましく、より好ましくは50nm以下、さらに好ましくは30nm以下である。
【0038】
平均粒子径が100nmよりも大きいと、添加量が多くなければ焼結遅延性が向上せず、また、焼結後の強度が低下する虞があるからである。
【0039】
平均粒子径は微小無機酸化物粒子のBET比表面積より換算すればよい。
【0040】
微小無機酸化物のBET比表面積(以下「SSA1」と言う)は、20m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは50m2/g以上、さらに好ましくは90m2/g以上である。
【0041】
BET比表面積が20m2/g未満であると多くの微小無機酸化物を添加しなければ焼結遅延性が向上せず、また、多く添加すると、均一に混合することが困難になるため、微小無機酸化物が凝集し、焼結後の電気抵抗が高くなる虞があるからである。
【0042】
微小無機酸化物の製造方法は特に限定されないが、火炎加水分解法を例示する。
【0043】
本発明における微小無機酸化物は表面が改質されている微小無機酸化物であってもよい。
【0044】
本発明における微小無機化合物を含有する銅系粉末は、微小無機酸化物の総比表面積(以下「TSSA1」と言う)と銅系金属粉末の総比表面積(以下「TSSA2」と言う)の「TSSA1(m2/g)/TSSA2(m2/g)」で表される比が0.001以上かつ1000以下が好ましく、より好ましくは0.01以上かつ1000以下である。
【0045】
0.001未満であると、焼結開始温度が上がらずに十分な焼結遅延性が得られず、1000より大きいとそれ以上焼結開始温度が上がらないので焼結遅延性の向上が望めず、また、過剰な微小無機酸化物によって分離偏析が生じる虞があるからである。
【0046】
TSSA1及びTSSA2は次の式1及び式2により算出することができる。
なお、C1は微小無機酸化物の添加量(wt%)を表す。
【0047】
(式1) TSSA1=SSA1×C1/100
(式2) TSSA2=SSA2×(100-C1)/100
【0048】
本発明における銅系粉末は、通常金属粉の混合操作に用いられるV型混合機、ダブルコーン型混合機、リボン型混合機、回転羽根式混合機、らいかい機等で銅系金属粉末と微小無機化合物を混合するという乾式の簡便な方法で製造することができる。
【実施例0049】
本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
(実施例1)
1.2L容器にアトマイズ銅粉(Cu-HWQ 5μm/福田金属箔粉工業株式会社製)500gを投入し、微小SiO2を0.5g添加して小型ロッキングミキサー(RM-10(S)/愛知電機株式会社製)で40rpmの速さで30分間回転、揺動させて混合して作製した。
【0051】
(実施例2及び実施例3)
微小SiO2の添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表1に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0052】
(実施例4)
銅粉末としてアトマイズ銅粉(Cu-HWQ 20μm/福田金属箔粉工業株式会社製)を用い、微小SiO2の平均粒子径と添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表1に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0053】
(実施例5~実施例7)
銅粉末として化学還元銅粉(Cu-C-40/福田金属箔粉工業株式会社製)を用い、実施例1~3で使用した微小SiO2を使用し、その添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表1に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0054】
(実施例8)
実施例5と同じ化学還元銅粉を用い、微小SiO2の平均粒子径と添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表1に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0055】
(実施例9~実施例11)
微小無機酸化物として微小TiO2を用い、その添加量を調整することにより、実施例1~3に対応するようにTSSA1/TSSA2を表1に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0056】
(実施例12)
微小無機酸化物として微小Al2O3を用い、その添加量を調整することにより、TSSA1/TSSA2を実施例1に対応する値とした以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0057】
(実施例13)
微小無機酸化物として微小MgOを用い、その添加量を調整することにより、TSSA1/TSSA2を実施例1に対応する値とした以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0058】
(実施例14)
銅合金粉末としてアトマイズ銅合金粉(Bro-HWQ(10) 10μm/福田金属箔粉工業株式会社製)を用い、実施例1で使用した微小SiO2を使用し、その添加量を調整することでTSSA1/TSSA2を実施例1に対応する値とした以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0059】
(実施例15)
微小SiO2の平均粒子径と添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を実施例1に対応する値とした以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0060】
(比較例1~4)
比較例1はアトマイズ銅粉(Cu-HWQ 5μm/福田金属箔粉工業株式会社製)、比較例2はアトマイズ銅粉(Cu-HWQ 20μm/福田金属箔粉工業株式会社製)、比較例3は化学還元銅粉(Cu-C-40/福田金属箔粉工業株式会社製)、比較例4はアトマイズ銅合金粉(Bro-HWQ(10) 10μm/福田金属箔粉工業株式会社製)を用い、微小無機酸化物を添加しなかった。
【0061】
(比較例5)
微小SiO2の添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表2に記載のとおりに変化させた以外は、実施例1と同様の方法により作製した。
【0062】
(比較例6)
微小SiO2の添加量を変更することにより、TSSA1/TSSA2を表2に記載のとおりに変化させた以外は、実施例4と同様の方法により作製した。
【0063】
<焼結開始温度>
各銅系粉末を体積既知のセラミックスボートに充填し、抵抗計に接続している銅端子をセラミックスボート内の実施例及び比較例の銅系粉末に挿入し、四探針法によって電気抵抗を測定した。
【0064】
電流を測定する端子は4cmの間隔で設置した。
抵抗計に接続されたセラミックスボートを流量2.0L/分(20℃換算)の窒素雰囲気下において、横型管状炉を用いて20℃/分の速度で加熱したとき、測定された電気抵抗値が1MΩに達した温度を焼結開始温度とした。
【0065】
例として実施例1の焼結開始温度を測定した結果を
図1に示す。
【0066】
<遅延効果>
得られた焼結開始温度を基準となる微小無機酸化物を添加していない比較例1~4の銅系粉末の焼結開始温度と比較し、温度の差を焼結遅延効果とした。
【0067】
差は20℃以上あればよく、30℃以上あれば十分な遅延効果と評価できる。
【0068】
<分離偏析>
微小無機酸化物と混合後の銅系粉末を目視で確認し、微小無機酸化物の凝集体が発見された場合は、過剰な微小無機酸化物が添加されて分離偏析が生じていると判断した。
【0069】
分離偏析が生じていないものを〇、生じているものを×として評価した。
【0070】
<BET比表面積>
原料の銅系金属粉末と微小無機酸化物のBET比表面積は全自動比表面積測定装置Macsorb(株式会社マウンテック製)を使用し、JISZ8830に準じて測定した。
【0071】
<平均粒子径>
微小無機酸化物の平均粒子径はBET比表面積を用い、粒子形状が球形であると仮定して、次式によって計算した。
d=6000/(ρS)
d:微小無機酸化物の平均粒子径(nm)
ρ:微小無機酸化物の真密度(g/cm3)
S:微小無機酸化物のBET比表面積(m2/g)
【0072】
実施例の結果を表1、比較例の結果を表2に示す。
【0073】
【0074】
【0075】
表1及び表2に示した通り、微小無機酸化物を添加した銅系粉末は、焼結遅延性が顕著に向上していた。
【0076】
TSSA1/TSSA2の値を調整することにより、焼結遅延効果を制御できることが明らかとなった。
【0077】
実施例9~13の結果より、微小無機酸化物の種類はSiO2だけでなく、その他の酸化物でも同様に焼結遅延効果が得られることが分かった。
【0078】
実施例14の結果より、銅系金属粉末の種類は銅粉末だけでなく、銅合金粉末でも同様に焼結遅延効果が得られることが分かった。
【0079】
比較例5の結果よりTSSA1/TSSA2の値が0.001未満になると、十分な焼結遅延効果が得られないことが明らかとなった。
【0080】
比較例6の結果よりTSSA1/TSSA2の値が1000を超えるとこれ以上の焼結遅延性の向上が望めず、また、過剰な微小無機酸化物の分離偏析が生じた。
本発明における銅系粉末は、焼結遅延性が向上した銅系粉末だから、銅の融点との間に差がある材料の基板に使用したとしても、焼結時の収縮速度の差によって剥離したり、クラックが入ったりし難いため、セラミック基板上の電極や回路の作製に使用する導電性ペーストの金属フィラーに好適に使用することができ、しかも、微小無機酸化物を添加するという乾式の簡便な方法で所望の焼結遅延性に調節できる銅系粉末である。
したがって、本発明は産業上の利用可能性の高い発明である。