(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081949
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ミクロフィブリルセルロース
(51)【国際特許分類】
C08B 15/04 20060101AFI20240612BHJP
D21H 11/18 20060101ALI20240612BHJP
D21H 15/02 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
C08B15/04
D21H11/18
D21H15/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195558
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130812
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100164161
【弁理士】
【氏名又は名称】三宅 彩
(72)【発明者】
【氏名】中田 咲子
(72)【発明者】
【氏名】辻 志穂
(72)【発明者】
【氏名】高山 雅人
【テーマコード(参考)】
4C090
4L055
【Fターム(参考)】
4C090AA01
4C090BA29
4C090BB52
4C090BC08
4C090BD03
4C090BD08
4C090BD34
4C090CA34
4C090DA02
4L055AA02
4L055AC06
4L055AF09
4L055AF46
4L055AG07
4L055AG16
4L055AG35
4L055BB03
4L055EA11
4L055EA16
4L055EA19
4L055EA29
4L055EA34
4L055FA04
4L055FA30
(57)【要約】
【課題】本発明によれば、解繊状態を調整し、機能性添加剤として粘度の発現と保水性、保形性に優れるミクロフィブリルセルロースを提供することを課題とする。
【解決手段】平均繊維径が500nm以上であり、動的光散乱測定における固形分濃度1質量%の水分散体にした際の多分散指数が0.7以上1.1未満であることを特徴とするミクロフィブリルセルロース。さらに、固形分濃度1質量%の水分散体にした際の電気伝導度が10~200mSであることを特徴とする、ミクロフィブリルセルロース。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維径が500nm以上であり、動的光散乱測定における固形分濃度1質量%の水分散体にした際の多分散指数が0.7以上1.1未満であることを特徴とするミクロフィブリルセルロース。
【請求項2】
固形分濃度1質量%の水分散体にした際の電気伝導度が10~200mSであることを特徴とする、請求項1に記載のミクロフィブリルセルロース。
【請求項3】
0.1~3.0mmol/gのカルボキシル基量を有する酸化ミクロフィブリルセルロースであることを特徴とする、請求項1~2いずれかに記載のミクロフィブリルセルロース。
【請求項4】
0.01~0.5の置換度を有するカルボキシメチル基量を有するカルボキシメチル化ミクロフィブリルセルロースであることを特徴とする、請求項1~2いずれかに記載のミクロフィブリルセルロース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はミクロフィブリルセルロースに関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースを微細化して得られるセルロースナノファイバーやミクロフィブリルセルロース(以下併せて「微細セルロース繊維」という。)は、繊維径がナノ~マイクロオーダーの微細な繊維であり、高強度、高弾性、チキソ性等、通常のパルプにはない機能を有する新規材料として様々な分野での利用が期待されている。
【0003】
微細セルロース繊維の製造方法として、機械的な剪断力でセルロース繊維を微細化(特許文献1)する方法、セルロース繊維に酵素処理や化学変性を施した後に機械的な微細化処理を行う方法(特許文献2)、バクテリアセルロースに代表されるように微生物に微細セルロースを産生(特許文献3)させる方法などが知られている。
【0004】
化学変性としては、酸化、エーテル化、カチオン化、エステル化などが挙げられ、導入される置換基としてはカチオン性基またはアニオン性基などがある。アニオン性基の一例としてはカルボキシル基やリン酸エステル基がある。
【0005】
アニオン性基が導入された化学変性パルプは、水中、酸性条件下ではアニオン性基の末端がH型となるため親水性が低く、アルカリ性条件下ではアニオン性基の末端が乖離するため親水性が高くなる。通常、アニオン変性微細セルロースは、変性セルロースをアルカリ処理してアニオン性基を塩型に変換した後、叩解(予備解繊)処理を行ってミクロフィブリルセルロースを得て、さらに超高圧ホモジナイザーなどの分散機で解繊処理するとセルロースナノファイバー化される(例えば特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6-10280号公報
【特許文献2】特開2010-235679号公報
【特許文献3】特開平8-291201号公報
【特許文献4】国際公開2017/057710号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようにして得られるミクロフィブリルセルロースは、解繊状態の程度の違いにより発現する機能性に大きな差が生じることが知られている。
【0008】
そこで本発明では解繊状態を調整し、機能性添加剤として粘度の発現と保水性、保形性に優れるミクロフィブリルセルロースを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討の結果、下記(1)~(4)にて課題を解決できることを見出した。
(1)平均繊維径が500nm以上であり、動的光散乱測定における固形分濃度1質量%の水分散体にした際の多分散指数が0.7以上1.1未満であることを特徴とするミクロフィブリルセルロース。
(2)固形分濃度1質量%の水分散体にした際の電気伝導度が10~200mSであることを特徴とする、(1)に記載のミクロフィブリルセルロース。
(3)0.1~3.0mmol/gのカルボキシル基量を有する酸化ミクロフィブリルセルロースであることを特徴とする、(1)~(2)いずれかに記載のミクロフィブリルセルロース。
(4)0.01~0.5の置換度を有するカルボキシメチル基量を有するカルボキシメチル化ミクロフィブリルセルロースであることを特徴とする、(1)~(2)いずれかに記載のミクロフィブリルセルロース。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、機能性添加剤として粘度の発現と保水性、保形性に優れるミクロフィブリルセルロースを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の詳細を説明するが、特に記載のない場合「AA~BB%」等という記載は、「AA%以上BB%以下」をあらわすものとする。
【0012】
すなわち本発明は、平均繊維径が500nm以上であり、動的光散乱測定における固形分濃度1質量%の水分散体にした際の多分散指数が0.7以上1.1未満であることを特徴とするミクロフィブリルセルロースである。
【0013】
<ミクロフィブリルセルロース>
ミクロフィブリルセルロース(以下「MFC」ともいう)とは、パルプ等のセルロース系原料を解繊して得られる500nm以上の平均繊維幅を有する繊維であり、化学変性ミクロフィブリルセルロース(以下「化学変性MFC」ともいう)とは、化学変性セルロース系原料を解繊して得られるMFCである。本発明において平均繊維幅とは長さ加重平均繊維幅であり、当該繊維幅はABB株式会社製ファイバーテスターやバルメット社製フラクショネータで測定できる。当該繊維径の下限は好ましくは500nm以上であり、上限は特に限定されないが60μm以下程度である。MFCは、セルロース系原料をビーターやディスパーザーなどで比較的弱く解繊または叩解処理して得られる。したがってMFCは、高圧ホモジナイザーなどでセルロース系原料を強く解繊処理して得られるセルロースナノファイバーと比較して繊維幅が大きく、また繊維自体の微細化を抑制しながら効率的に繊維表面を毛羽立たせた(外部フィブリル化した)形状を有する。
【0014】
(化学変性工程)
化学変性工程では、原料パルプを化学変性して化学変性パルプを得る。
【0015】
(原料パルプ)
原料パルプとしては、針葉樹未漂白クラフトパルプ(NUKP)、針葉樹漂白クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹未漂白クラフトパルプ(LUKP)、広葉樹漂白クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹未漂白サルファイトパルプ(NUSP)、針葉樹漂白サルファイトパルプ(NBSP)、広葉樹未漂白サルファイトパルプ(LUSP)、広葉樹漂白サルファイトパルプ(LBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、加圧砕木パルプ(PGW)、リファイナーグラウンドウッドパルプ(RGP)、アルカリ過酸化水素メカニカルパルプ(APMP)、アルカリ過酸化水素サーモメカニカルパルプ(APTMP)、リンター、ジュート、麻、コウゾ、ミツマタ、ケナフ等の草本由来のパルプ、竹由来のパルプ、再生パルプ、古紙パルプ等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0016】
(化学変性)
化学変性とはパルプに官能基を導入することであり、化学変性はアニオン変性であることが好ましい、すなわち化学変性パルプはアニオン性基を有することが好ましい。アニオン性基としてはカルボキシル基、カルボキシル基含有基、リン酸基、リン酸基含有基、硫酸エステル基等の酸基が挙げられる。カルボキシル基含有基としては、-COOH基、-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)、-O-R-COOH(Rは炭素数が1~3のアルキレン基)が挙げられる。リン酸基含有基としては、ポリリン酸基、亜リン酸基、ホスホン酸基、ポリホスホン酸基等が挙げられる。これらの酸基は反応条件によっては、塩の形態(例えばカルボキシレート基(-COOM、Mは金属原子))で導入されることもある。本発明において化学変性は酸化またはエーテル化が好ましい。
【0017】
酸化は公知のとおりに実施できる。例えばN-オキシル化合物と、臭化物、ヨウ化物およびこれらの混合物からなる群より選択される物質との存在下で、酸化剤を用いて水中で原料パルプを酸化する方法が挙げられる。この方法によれば、セルロース表面のグルコピラノース環のC6位の一級水酸基が選択的に酸化され、アルデヒド基、カルボキシル基、およびカルボキシレート基からなる群より選ばれる基が生じる。あるいは、オゾン酸化方法が挙げられる。この酸化反応によればセルロースを構成するグルコピラノース環の少なくとも2位および6位の水酸基が酸化されると共に、セルロース鎖の分解が起こる。
【0018】
N-オキシル化合物とは、ニトロキシラジカルを発生しうる化合物をいう。N-オキシル化合物としては、目的の酸化反応を促進する化合物であればいずれの化合物も使用できる。例えば、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシラジカル(TEMPO)およびその誘導体(例えば4-ヒドロキシTEMPO)が挙げられる。
【0019】
カルボキシル基量の測定方法の一例を以下に説明する。酸化セルロースの0.5重量%スラリー(水分散液)60mLを調製し、0.1M塩酸水溶液を加えてpH2.5とした後、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液を滴下してpHが11になるまで電気伝導度を測定する。電気伝導度の変化が緩やかな弱酸の中和段階において消費された水酸化ナトリウム量(a)から、下式を用いて算出することができる。
【0020】
カルボキシル基量〔mmol/g酸化セルロース〕=a〔mL〕×0.05/酸化セル
ロース重量〔g〕
【0021】
このようにして測定した酸化セルロース中のカルボキシル基の量は、絶乾重量に対して、好ましくは0.1mmol/g以上、より好ましくは0.5mmol/g以上、さらに好ましくは0.8mmol/g以上である。当該量の上限は、好ましくは3.0mmol/g以下、より好ましくは2.5mmol/g以下、さらに好ましくは2.0mmol/g以下である。従って、当該量は0.1mmol/g以上3.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.5mmol/g以下がより好ましく、0.8mmol/g以上2.0mmol/g以下がさらに好ましい。
【0022】
エーテル化としては、カルボキシメチル(エーテル)化、メチル(エーテル)化、エチル(エーテル)化、シアノエチル(エーテル)化、ヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピル(エーテル)化、エチルヒドロキシエチル(エーテル)化、ヒドロキシプロピルメチル(エーテル)化などが挙げられる。この中でもカルボキシメチル化が好ましい。カルボキシメチル化は、例えば、発底原料としての原料パルプをマーセル化し、その後エーテル化する方法により実施できる。
【0023】
カルボキシメチル化セルロースのグルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度の測定は例えば、次の方法による。すなわち、1)カルボキシメチル化セルロース(絶乾)約2.0gを精秤して、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。2)硝酸メタノール1000mLに特級濃硝酸100mLを加えた液100mLを加え、3時間振とうして、カルボキシメチルセルロース塩(カルボキシメチル化セルロース)を水素型カルボキシメチル化セルロースにする。3)水素型カルボキシメチル化セルロース(絶乾)を1.5g以上2.0g以下程度精秤し、300mL容共栓付き三角フラスコに入れる。4)80%メタノール15mLで水素型カルボキシメチル化セルロースを湿潤し、0.1NのNaOHを100mL加え、室温で3時間振とうする。5)指示薬として、フェノールフタレインを用いて、0.1NのH2SO4で過剰のNaOHを逆滴定する。6)カルボキシメチル置換度(DS)を、次式によって算出する:
A=[(100×F’-(0.1NのH2SO4)(mL)×F)×0.1]/(水素型カルボキシメチル化セルロースの絶乾重量(g))
DS=0.162×A/(1-0.058×A)
A:水素型カルボキシメチル化セルロースの1gの中和に要する1NのNaOH量(mL)
F:0.1NのH2SO4のファクター
F’:0.1NのNaOHのファクター
【0024】
カルボキシメチル化セルロース中の無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル置換度は、0.01以上が好ましく、0.05以上がより好ましく、0.10以上がさらに好ましい。当該置換度の上限は、0.50以下が好ましく、0.40以下がより好ましく、0.35以下がさらに好ましい。従って、カルボキシメチル基置換度は、0.01以上0.50以下が好ましく、0.05以上0.40以下がより好ましく、0.10以上0.30以下がさらに好ましい。
【0025】
(叩解処理工程)
化学変性パルプをMFCとするための叩解処理は公知の方法を選択することができる。例えば、高速回転式、コロイドミル式、高圧式、ロールミル式、超音波式などのタイプの装置が挙げられ、高圧または超高圧ホモジナイザー、リファイナー、ビーター、PFIミル、ニーダー、ディスパーザー、高速離解機など回転軸を中心として金属または刃物とパルプ繊維を作用させるもの、あるいはパルプ繊維同士の摩擦によるものを使用することができる。
【0026】
本発明のMFCとしては、ディスクリファイナー処理を行うことが好ましく、ダブルディスクリファイナーを使うことがより好ましい。化学変性パルプに対して叩解処理を行うと、繊維長、繊維幅が小さくなる微細化、および繊維の毛羽立ちが多くなるフィブリル化が進行する。本発明の叩解処理工程においては、ダブルディスクリファイナーを用いた叩解処理を循環処理としてもよいし、複数台のダブルディスクリファイナーを用いて叩解処理を連続して行う連続処理としてもよい。
【0027】
叩解は通常化学変性パルプの水分散体に対して実施されるが、水分散体中の酸化パルプの固形分濃度の下限は、通常は0.1重量%以上が好ましく、0.2重量%以上がより好ましく、0.3重量%以上がさらに好ましい。これにより、酸化パルプの量に対する液
量が適量となり効率的になる。当該濃度の上限は通常は50重量%以下が好ましい。
【0028】
なお、ディスクリファイナーとは、叩解刃のついた円盤(ディスクプレート(単に「ディスク」ということがある。))が至近距離で向い合い、一方のみまたは相互に逆方向に所定の回転数で回転して、その間を通過するスラリーに対して加圧叩解の効果と遠心力による連続送り出し効果とを与える装置をいう。ダブルディスクリファイナーは、2個のディスクDAおよびDBと、その間にディスクDMを備え、DAおよびDBまたはDMの何れか一方が固定され、他方が回転する構成、もしくは、DAおよびDBとDMとが逆方向に回転する構成をとる装置を言う。
【0029】
(多分散指数)
そのようにして得られるMFCは、動的光散乱測定における固形分濃度1質量%の水分散体にした際の多分散指数が0.7以上1.1未満である。
動的光散乱とは、粒子運動の揺らぎから散乱光の減衰を関数的に求めるものであり、本発明においてはMALVERN社製の粒子径・ゼータ電位測定装置(ZETASIZER 3000HSA)を用い、多分散指数を読み取った。
【0030】
(電気伝導度)
本発明のミクロフィブリルセルロースは、1.0重量%濃度、pH6の水分散体とした際の電気伝導度は、好ましくは500mS/m以下であり、より好ましくは300mS/m以下であり、さらに好ましくは200mS/m以下であり、よりさらに好ましくは100mS/m以下であり、最も好ましくは90mS/m以下である。前記電気伝導度の下限は、好ましくは5mS/m以上であり、より好ましくは10mS/m以上である。ミクロフィブリルセルロースの電気伝導度は原料であるセルロース系材料の電気伝導度と比較して高い値を示す。また、当該電気伝導度が上限値を超えることは酸化セルロース系材料の水分散液中に溶存する金属塩や無機塩の濃度が一定値以上であることを意味する。当該材料の金属塩や無機塩等の濃度が低いと繊維同士の静電反発が起こりやすく、効率的にフィブリル化を進めることができる。
【0031】
(粘度)
本発明のミクロフィブリルセルロースは、1重量%の水分散体とした際に、60rpm、25℃の条件におけるB型粘度が、MFCの解繊の進み度合の観点から、好ましくは10~6500mPa・s、より好ましくは20~5500mPa・s、さらに好ましくは50~4500mPa・sである。
【0032】
(保水度)
MFCの保水度は、300%以上であることが好ましい。保水度が300%未満であると本発明の酸化MFCを含む組成物の保水性を向上させるという本発明の効果を十分に得ることができない可能性がある。保水度は、JIS P-8228:2018に従って測定される。
【実施例0033】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0034】
(実施例1)
<化学変性パルプの調製1>
針葉樹由来の漂白済み未叩解クラフトパルプ(白色度85%:日本製紙株式会社製)40kg(絶乾)をTEMPO(Sigma Aldrich社製)312g(絶乾1gのセルロースに対し0.05mmol)と臭化ナトリウム4112g(絶乾1gのセルロースに対し1.0mmol)を溶解した水溶液4000Lに加え、パルプが均一に分散するまで撹拌した。反応系に次亜塩素酸ナトリウム水溶液を次亜塩素酸ナトリウムが5.5mmol/gになるように添加し、室温にて酸化反応を開始した。反応中は系内のpHが低下するが、3M水酸化ナトリウム水溶液を逐次添加し、pH10に調整した。次亜塩素酸ナトリウムを消費し、系内のpHが変化しなくなった時点で反応を終了した。反応混合物に塩酸を添加してpH2に調整した後、脱水と水での希釈を繰り返してパルプを十分に水洗し、最終的にパルプ固形分濃度が20重量%となるまで脱水して化学変性パルプ(TEMPO酸化パルプ)を得た。パルプ収率は90%であり、カルボキシル基量は1.41mmol/gであった。
【0035】
得られたTEMPO酸化パルプを水道水に分散し、水酸化ナトリウムを加えて攪拌することにより、pH7.7、固形分濃度1.1重量%のTEMPO酸化パルプの水分散液を得た。
【0036】
<叩解>
得られたTEMPO酸化パルプの水分散液4300kgをモノフロー式のダブルディスクリファイナー(相川鉄工株式会社製 AWN20)を用い、循環率80%の条件で65分間運転を行い、叩解処理して、TEMPO酸化パルプをMFCとした。なお、叩解処理のパス数は10回であった。
【0037】
(評価方法)
評価方法についてその詳細を下記の通り実施した。なお、特に記載のない点については、前述される方法にて実施を行った。なお、カルボキシル基量は叩解処理の前後での変化量は誤差範囲であるため、酸化パルプの測定値を記載した。
【0038】
<多分散指数>
ミクロフィブリルセルロースのスラリーを固形分濃度が1.0%となるように水で希釈し、該スラリーを検体とし、MALVERN社製の粒子径・ゼータ電位測定装置(ZETASIZER 3000HSA)を用い、解析モードとしてMono modalを選択、表1に記載の解析条件に設定し、得られた多分散指数値(Poly.index)を読み取った。
【0039】
【0040】
<平均繊維長、平均繊維幅>
ミクロフィブリルセルロースのスラリーを固形分濃度が0.25%となるように水で希釈し、流速5.7L/min、水温25±1℃、全流出量22Lの条件で約250gずつ(うち50gが測定に供される)2回フラクショネータにかけ、フラクショネータに付属のCCDカメラで装置内部にて、流量で分級された化学変性ミクロフィブリルセルロース繊維の画像およそ2000枚を取得した。
【0041】
解析ソフトIMG(Metso社)の繊維解析パラメーターを表2~4のように設定し、取得したおよそ2000枚の画像を解析し、平均繊維長・平均繊維幅、繊維長分布等のデータを得た。2回測定・解析を行った平均値を測定データとして採用した。
【0042】
【0043】
・平均繊維長(Length):長さ加重平均繊維長
・平均繊維幅(Width):長さ加重平均繊維幅
・繊維長分布(Fraction percentage of length weighted distribution):長さ加重繊維長分布(各フラクションの設定は表1に記載した通り。)
【0044】
【0045】
【0046】
<粘度>
処理後の分散液にイオン交換水を加えて1重量%スラリーを調製し、25℃で3時間放置した後、PRIMIX社製ホモディスパー(3000rpm)で5分間攪拌し、攪拌直後にB型粘度計(東機産業社製)を用いて、No.1~4のうち適切なローターを使用して回転数60rpmで3分後の粘度を測定した。
【0047】
<電気伝導度>
試料濃度が1.0重量%となるように水分散体を調整し、pH6の条件下で、堀場製ポータブル型電気伝導度計を用いて測定した。
【0048】
【0049】
本発明のMFCは、多分散指数が0.7~1.1未満の範囲に調整されているため、適度な分散性を示し、機能性添加剤として使用した際に粘度の発現と保水性、保形性に優れる。