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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081953
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電力変換装置および電力変換方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
H02M7/12 601B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195567
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 貴夫
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA03
5H006CA07
5H006CB02
5H006CB08
5H006DA03
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】電流の歪みを無くして効率良く電力変換する。
【解決手段】電力変換装置は、交流電圧を全波整流した整流電圧を出力する全波整流回路と、平滑回路と、制御回路と、を備える。全波整流回路は、第1入力端子および第2入力端子との組と、第1出力端子と第2出力端子との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する第1サイリスタ、第2サイリスタ、第1ダイオードおよび第2ダイオードを含む。第1サイリスタは、第1ゲート信号がゲートに与えられる。第2サイリスタは、第2ゲート信号がゲートに与えられる。制御回路は、交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、第1ゲート信号をオン電圧とし、第1オーバラップ期間とは異なる期間において、第1ゲート信号をオフ電圧とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する電力変換装置であって、
第1入力端子と第2入力端子との間に印加される交流電圧を全波整流した整流電圧を、第1出力端子と第2出力端子との間から出力する全波整流回路と、
前記整流電圧を平滑化した電圧を出力する平滑回路と、
制御回路と、
を備え、
前記全波整流回路は、前記第1入力端子および前記第2入力端子との組と、前記第1出力端子と前記第2出力端子との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する第1サイリスタ、第2サイリスタ、第1ダイオードおよび第2ダイオードを含み、
前記第1サイリスタは、第1ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第2サイリスタは、第2ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第1ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第2ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記制御回路は、
前記交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、前記第1ゲート信号をオフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させる電圧であるオン電圧とし、前記第1オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第1ゲート信号を前記オフ状態のサイリスタを前記オン状態に遷移させない電圧であるオフ電圧とし、
前記交流電圧の前記ゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、前記第2ゲート信号を前記オン電圧とし、前記第2オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第2ゲート信号を前記オフ電圧とする
電力変換装置。
【請求項2】
前記第1サイリスタは、アノードが前記第1入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第2サイリスタは、アノードが前記第2入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第2入力端子に接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第1入力端子に接続される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記第1サイリスタは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第2入力端子に接続され、
前記第2サイリスタは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第1入力端子に接続され、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第1入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第2入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記第1サイリスタは、アノードが前記第1入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第2サイリスタは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第1入力端子に接続され、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第2入力端子に接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第2入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記第1サイリスタは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第2入力端子に接続され、
前記第2サイリスタは、アノードが前記第2入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第1ダイオードは、アノードが前記第1入力端子に接続され、カソードが前記第1出力端子に接続され、
前記第2ダイオードは、アノードが前記第2出力端子に接続され、カソードが前記第1入力端子に接続される
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御回路は、
前記交流電圧が正から負へ変化するターンオフタイミングよりも第1時間前において前記第1ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記ターンオフタイミングから第2時間後において前記第1ゲート信号を前記オン電圧から前記オフ電圧に変化させ、
前記交流電圧が負から正へ変化するターンオンタイミングよりも第3時間前において前記第1ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記ターンオフタイミングから第4時間後において前記第1ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させる
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記制御回路は、前記第1時間を前記ブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、短くする
請求項6に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記制御回路は、
前記交流電圧が負から正へ変化するターンオンタイミングよりも第5時間前において前記第2ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記ターンオンタイミングから第6時間後において前記第2ゲート信号を前記オン電圧から前記オフ電圧に変化させ、
前記ターンオンタイミングよりも第7時間前において前記第2ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記ターンオンタイミングから第8時間後において前記第2ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させる
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記制御回路は、前記第5時間を前記ブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、短くする
請求項8に記載の電力変換装置。
【請求項10】
前記制御回路は、
前記交流電圧が負から正へ変化するターンオンタイミングよりも第9時間前において前記第1ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記交流電圧が正から負へ変化するターンオフタイミングから第10時間後において前記第1ゲート信号を前記オン電圧から前記オフ電圧に変化させ、
前記ターンオフタイミングよりも第11時間前において前記第2ゲート信号を前記オフ電圧から前記オン電圧に変化させ、
前記ターンオンタイミングから第12時間後において前記第2ゲート信号を前記オン電圧から前記オフ電圧に変化させる
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項11】
交流電力を直流電力に変換する電力変換装置を制御する電力変換方法であって、
前記電力変換装置は、
第1入力端子と第2入力端子との間に印加される交流電圧を全波整流した整流電圧を、第1出力端子と第2出力端子との間から出力する全波整流回路と、
前記整流電圧を平滑化した電圧を出力する平滑回路と、
制御回路と、
を備え、
前記全波整流回路は、前記第1入力端子および前記第2入力端子との組と、前記第1出力端子と前記第2出力端子との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する第1サイリスタ、第2サイリスタ、第1ダイオードおよび第2ダイオードを含み、
前記第1サイリスタは、第1ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第2サイリスタは、第2ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第1ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記第2ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられ、
前記制御回路が、
前記交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、前記第1ゲート信号をオフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させる電圧であるオン電圧とし、前記第1オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第1ゲート信号を前記オフ状態のサイリスタを前記オン状態に遷移させない電圧であるオフ電圧とし、
前記交流電圧の前記ゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、前記第2ゲート信号を前記オン電圧とし、前記第2オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第2ゲート信号を前記オフ電圧とする
電力変換方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置および電力変換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイオードブリッジ回路による全波整流回路が知られている。このような全波整整流回路を用いた機器は、電源投入時に、全波整流回路の後段にあるコンデンサに充電するための突入電流が流れる。この突入電流は、突入電流が流れる経路にあるダイオードブリッジおよびヒューズ等の部品の定格を超える場合がある。このため、このような全波整流回路を用いた機器は、電流を制限する突入電流防止回路として、電流制限抵抗とリレーを設けて、コンデンサが入力電圧まで充電されるまでは電流制限抵抗で電流を抑制し、コンデンサが充電された後はリレーをオンして導通抵抗を低くする必要があった。このため、このような全波整整流回路を用いた機器は、回路規模が大きくなり、コストも高くなってしまっていた。
【0003】
ダイオードブリッジ回路に含まれる一部のダイオードをサイリスタに置き換えた全波整流回路も知られている(例えば、特許文献1)。サイリスタを用いた全波整流回路は、リレーを設けなくても、サイリスタのゲートに電圧を印加しなければ、サイリスタがオフ状態を維持するので、突入電流の発生を防止するリレーの役割も果たすことができる。このため、サイリスタを用いた全波整流回路は、回路規模を小さくし、コストも低くすることができる。
【0004】
サイリスタを用いた全波整流回路は、入力交流電圧のゼロクロスタイミングを検出し、サイリスタのゲートにオン電圧を印加するタイミングを制御する。具体的には、全波整流回路は、入力交流電圧が正の場合にオンさせるサイリスタのゲートに、入力交流電圧が負から正へと変化するゼロクロスタイミングから所定時間、オン電圧を与える。また、全波整流回路は、入力交流電圧が負の場合にオンさせるサイリスタのゲートに、入力交流電圧が負から正に変化するゼロクロスタイミングから所定時間、オン電圧を与える。
【0005】
ところで、サイリスタは、アノード-カソード間の順方向電圧が正である状態において、ゲートにオン電圧が与えられた場合、オフ状態からオン状態に遷移する。サイリスタは、一旦オン状態に遷移した後、基本的には、ゲートに与えられる電圧に関わらず、順方向電圧が負に反転するまで、オン状態を維持し続ける。ただし、サイリスタは、オン状態であっても、アノード-カソード間の順方向に流れる電流量が所定値以下となると、自己消弧してオフ状態に遷移してしまう。
【0006】
このため、従来、サイリスタを用いた全波整流回路は、入力交流電圧を全波整流する場合、電流が正弦波のピークを越えた後、ゼロクロスタイミングより前において電流を遮断してしまっていた。従って、従来、サイリスタを用いた全波整流回路は、ゼロクロスタイミングの近傍において電流に歪みが発生し、力率が低下してしまっていた。
【0007】
また、全波整流回路が用いられる機器は、入力交流電圧の周波数および位相にばらつきが生じたり、ゼロクロスタイミングの測定に誤差が生じたりし、精度良くゼロクロスタイミングを検出できない場合があった。このため、サイリスタを用いた全波整流回路は、サイリスタのゲートをオフ電圧からオン電圧に変化させるタイミングが、入力交流電圧のゼロクロスタイミングから遅延してしまう場合があった。このような場合、サイリスタを用いた全波整流回路は、電流に歪みが発生し、力率が低下してしまっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-191844号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本開示は、電流の歪みを無くして効率良く電力変換することができる電力変換装置および電力変換方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る第1形態の電力変換装置は、交流電力を直流電力に変換する。前記電力変換装置は、第1入力端子と第2入力端子との間に印加される交流電圧を全波整流した整流電圧を、第1出力端子と第2出力端子との間から出力する全波整流回路と、前記整流電圧を平滑化した電圧を出力する平滑回路と、制御回路と、を備える。前記全波整流回路は、前記第1入力端子および前記第2入力端子との組と、前記第1出力端子と前記第2出力端子との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する第1サイリスタ、第2サイリスタ、第1ダイオードおよび第2ダイオードを含む。前記第1サイリスタは、第1ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第2サイリスタは、第2ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第1ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第2ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記制御回路は、前記交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、前記第1ゲート信号をオフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させる電圧であるオン電圧とし、前記第1オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第1ゲート信号を前記オフ状態のサイリスタを前記オン状態に遷移させない電圧であるオフ電圧とし、前記交流電圧の前記ゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、前記第2ゲート信号を前記オン電圧とし、前記第2オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第2ゲート信号を前記オフ電圧とする。
【0011】
本開示に係る第2形態の電力変換方法は、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置を制御する。前記電力変換装置は、第1入力端子と第2入力端子との間に印加される交流電圧を全波整流した整流電圧を、第1出力端子と第2出力端子との間から出力する全波整流回路と、前記整流電圧を平滑化した電圧を出力する平滑回路と、制御回路と、を備える。前記全波整流回路は、前記第1入力端子および前記第2入力端子との組と、前記第1出力端子と前記第2出力端子との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する第1サイリスタ、第2サイリスタ、第1ダイオードおよび第2ダイオードを含む。前記第1サイリスタは、第1ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第2サイリスタは、第2ゲート信号がゲートに与えられ、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合に、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第1ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記第2ダイオードは、前記第2入力端子に対する前記第1入力端子の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。前記電力変換方法は、前記制御回路が、前記交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、前記第1ゲート信号をオフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させる電圧であるオン電圧とし、前記第1オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第1ゲート信号を前記オフ状態のサイリスタを前記オン状態に遷移させない電圧であるオフ電圧とし、前記交流電圧の前記ゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、前記第2ゲート信号を前記オン電圧とし、前記第2オーバラップ期間とは異なる期間において、前記第2ゲート信号を前記オフ電圧とする。
【発明の効果】
【0012】
本開示に係る電力変換装置および電力変換方法によれば、電流の歪みを無くして効率良く電力変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、充電システムを負荷とともに示す図である。
図2図2は、電力変換装置の構成を示す図である。
図3図3は、第1構成例の全波整流回路における電流の流れを示す図である。
図4図4は、第2構成例の全波整流回路における電流の流れを示す図である。
図5図5は、第3構成例の全波整流回路における電流の流れを示す図である。
図6図6は、第4構成例の全波整流回路における電流の流れを示す図である。
図7図7は、従来のゲート信号が与えられた場合の全波整流回路に流れる電流の波形を示す図である。
図8図8は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第1例、および、全波整流回路に流れる電流の波形を示す図である。
図9図9は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第2例、および、全波整流回路に流れる電流の波形を示す図である。
図10図10は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第3例、および、全波整流回路に流れる電流の波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら実施形態について説明する。
【0015】
図1は、充電システム10を負荷100とともに示す図である。充電システム10は、交流電源12と、電力変換装置20と、充電装置14とを備える。充電システム10は、負荷100に接続される。負荷100は、二次電池を含む機器である。充電システム10は、負荷100に対して直流電力を与えて、負荷100を充電する。
【0016】
交流電源12は、交流電力を発生する。具体的には、交流電源12は、正弦波の交流電圧を発生する。さらに、負荷100に電力が供給されている場合、交流電源12は、正弦波の交流電圧に周波数および位相が同期した直流電流を出力する。
【0017】
電力変換装置20は、交流電源12から発生された交流電力を直流電力に変換する。電力変換装置20は、変換した直流電力を充電装置14に与える。充電装置14は、電力変換装置20から与えられた直流電力を負荷100に供給する。充電装置14は、負荷100に効率良く電力が供給されるように、出力する電圧および電力を制御する。
【0018】
図2は、電力変換装置20の構成を示す図である。電力変換装置20は、全波整流回路40と、平滑回路42と、第1駆動回路44と、第2駆動回路46と、制御回路48とを備える。
【0019】
全波整流回路40は、第1入力端子32と第2入力端子34との間に交流電圧が印加される。例えば、第2入力端子34は、グランドに接続される。この場合、第1入力端子32は、第2入力端子34の電圧を基準に正負に正弦波で変化する電圧が印加される。
【0020】
全波整流回路40は、第1入力端子32と第2入力端子34との間に印加される交流電圧を全波整流した整流電圧を、第1出力端子36と第2出力端子38との間から出力する。例えば、第2出力端子38は、グランドに接続される。この場合、第1出力端子36は、第2出力端子38の電圧を基準に、正弦波を正側に全波整流した電圧を発生する。
【0021】
なお、第1入力端子32、第2入力端子34、第1出力端子36および第2出力端子38のそれぞれは、電気的な接点であれば、電極であっても単なる配線であってもよい。
【0022】
全波整流回路40は、第1サイリスタ52と、第2サイリスタ54と、第1ダイオード56と、第2ダイオード58とを含む。第1サイリスタ52、第2サイリスタ54、第1ダイオード56および第2ダイオード58は、第1入力端子32および第2入力端子34との組と、第1出力端子36と第2出力端子38との組との間をブリッジ接続するブリッジ回路を構成する。
【0023】
第1サイリスタ52は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。すなわち、第1サイリスタ52は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に負の電圧が印加されるように設けられる。
【0024】
第1サイリスタ52は、第1ゲート信号がゲートに与えられる。このように設けられた第1サイリスタ52は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負である場合に、アノードとカソードとの間に逆方向に正の電圧が印加されるので、第1ゲート信号の電圧に関わらず、オフ状態(非導通状態)となる。また、このように設けられた第1サイリスタ52は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正であり且つ第1ゲート信号がオン電圧である場合にオン状態(導通状態)となる。このように設けられた第1サイリスタ52は、オン状態となった後、第1ゲート信号がオフ電圧となっても、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負となるまでオン状態を維持し続ける。
【0025】
なお、オン電圧は、オフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させる電圧である。また、オフ電圧は、オン電圧より低く、オフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させない電圧である。
【0026】
第2サイリスタ54は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。すなわち、第2サイリスタ54は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に負の電圧が印加されるように設けられる。
【0027】
第2サイリスタ54は、第2ゲート信号がゲートに与えられる。このように設けられた第2サイリスタ54は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正である場合に、アノードとカソードとの間に逆方向に正の電圧が印加されるので、第2ゲート信号の電圧に関わらず、オフ状態となる。また、このように設けられた第2サイリスタ54は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負であり且つ第2ゲート信号がオン電圧である場合にオン状態となる。このように設けられた第2サイリスタ54は、オン状態となった後、第2ゲート信号がオフ電圧となっても、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正となるまでオン状態を維持し続ける。
【0028】
第1ダイオード56は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。すなわち、第1ダイオード56は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に負の電圧が印加されるように設けられる。
【0029】
第2ダイオード58は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が負である場合、アノードとカソードとの間に順方向に正の電圧が印加されるように設けられる。すなわち、第2ダイオード58は、第2入力端子34に対する第1入力端子32の電圧が正である場合、アノードとカソードとの間に順方向に負の電圧が印加されるように設けられる。
【0030】
平滑回路42は、全波整流回路40から出力された整流電圧を平滑化した電圧を出力する。電力変換装置20は、平滑回路42から出力された電圧を、直流電圧として出力する。例えば、平滑回路42は、第1出力端子36と第2出力端子38との間に接続されたキャパシタ60を含む。
【0031】
第1駆動回路44は、制御回路48から出力された第1ゲート信号を増幅して第1サイリスタ52のゲートに印加する。第1駆動回路44は、第1サイリスタ52をオフ状態からオン状態に遷移させることが可能な電流量の第1ゲート信号を出力する。
【0032】
第2駆動回路46は、制御回路48から出力された第2ゲート信号を増幅して第2サイリスタ54のゲートに印加する。第2駆動回路46は、第2サイリスタ54をオフ状態からオン状態に遷移させることが可能な電流量の第2ゲート信号を出力する。
【0033】
制御回路48は、マイクロコントローラ等により実現される。制御回路48は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサであってもよい。
【0034】
制御回路48は、第1ゲート信号および第2ゲート信号を生成する。制御回路48は、第1ゲート信号を第1駆動回路44を介して第1サイリスタ52のゲートに与える。制御回路48は、第2ゲート信号を第2駆動回路46を介して第2サイリスタ54のゲートに与える。
【0035】
制御回路48は、電力変換装置20に入力される交流電圧を取得し、交流電圧のゼロクロスタイミングを検出する。ゼロクロスタイミングは、ターンオンタイミングと、ターンオフタイミングとを含む。ターンオンタイミングは、交流電圧が負から正に変化するゼロクロスタイミングである。ターンオフタイミングは、交流電圧が正から負に変化するゼロクロスタイミングである。制御回路48は、検出したゼロクロスタイミングに基づき、交流電圧のターンオンタイミングおよびターンオフタイミングのそれぞれを予測したタイミング信号を生成する。
【0036】
制御回路48は、予測したタイミング信号に基づき、交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、第1ゲート信号をオン電圧とする。また、制御回路48は、第1オーバラップ期間とは異なる期間において、第1ゲート信号をオフ電圧とする。すなわち、第1ゲート信号は、ゼロクロスタイミングよりも前のタイミングにおいてオフ電圧からオン電圧に立ち上がり、ゼロクロスタイミングより後のタイミングにおいてオン電圧からオフ電圧に立ち上がる信号である。従って、第1ゲート信号は、ゼロクロスタイミングでは必ずオン電圧となり、交流電圧の1周期内におけるゼロクロスタイミングを含んでない一部の期間がオフ電圧となっている。
【0037】
また、制御回路48は、予測したタイミング信号に基づき、交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、第2ゲート信号をオン電圧とする。また、制御回路48は、第2オーバラップ期間とは異なる期間において、第2ゲート信号をオフ電圧とする。すなわち、第2ゲート信号は、ゼロクロスタイミングよりも前のタイミングにおいてオフ電圧からオン電圧に立ち上がり、ゼロクロスタイミングより後のタイミングにおいてオン電圧からオフ電圧に立ち上がる信号である。従って、第2ゲート信号は、ゼロクロスタイミングでは必ずオン電圧となり、交流電圧の1周期内におけるゼロクロスタイミングを含んでない一部の期間がオフ電圧となっている。
【0038】
第1ゲート信号と第2ゲート信号は、同一の信号であってもよい。なお、第1ゲート信号および第2ゲート信号については、図8図9および図10を参照してさらなる詳細を後述する。
【0039】
図3は、第1構成例の全波整流回路40における電流の流れを示す図である。
【0040】
全波整流回路40は、例えば、図3に示すような第1構成例のブリッジ回路であってよい。第1構成例の第1サイリスタ52は、アノードが第1入力端子32に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第1構成例の第2サイリスタ54は、アノードが第2入力端子34に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第1構成例の第1ダイオード56は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第2入力端子34に接続される。第1構成例の第2ダイオード58は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第1入力端子32に接続される。
【0041】
第1構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、すなわち、第2入力端子34に対して第1入力端子32の電圧が正である場合であって、第1ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオンとなり、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオフとなる。従って、第1構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、第1ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1入力端子32から第1サイリスタ52を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第1ダイオード56を介して第2入力端子34へと電流が流れる。
【0042】
第1構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、すなわち、第2入力端子34に対して第1入力端子32の電圧が負である場合であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオンとなり、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオフとなる。従って、第1構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2入力端子34から第2サイリスタ54を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第2ダイオード58を介して第1入力端子32へと電流が流れる。
【0043】
図4は、第2構成例の全波整流回路40における電流の流れを示す図である。
【0044】
全波整流回路40は、例えば、図4に示すような第2構成例のブリッジ回路を含んでもよい。第2構成例の第1サイリスタ52は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第2入力端子34に接続される。第2構成例の第2サイリスタ54は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第1入力端子32に接続される。第2構成例の第1ダイオード56は、アノードが第1入力端子32に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第2構成例の第2ダイオード58は、アノードが第2入力端子34に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。
【0045】
第2構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオンとなり、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオフとなる。従って、第2構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1入力端子32から第1ダイオード56を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第1サイリスタ52を介して第2入力端子34へと電流が流れる。
【0046】
第2構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオンとなり、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオフとなる。従って、第2構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2入力端子34から第2ダイオード58を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第2サイリスタ54を介して第1入力端子32へと電流が流れる。
【0047】
図5は、第3構成例の全波整流回路40における電流の流れを示す図である。
【0048】
全波整流回路40は、例えば、図5に示すような第3構成例のブリッジ回路を含んでもよい。第3構成例の第1サイリスタ52は、アノードが第1入力端子32に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第3構成例の第2サイリスタ54は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第1入力端子32に接続される。第3構成例の第1ダイオード56は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第2入力端子34に接続される。第3構成例の第2ダイオード58は、アノードが第2入力端子34に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。
【0049】
第3構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオンとなり、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオフとなる。従って、第3構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1入力端子32から第1サイリスタ52を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第1ダイオード56を介して第2入力端子34へと電流が流れる。
【0050】
第3構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオンとなり、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオフとなる。従って、第3構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2入力端子34から第2ダイオード58を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第2サイリスタ54を介して第1入力端子32へと電流が流れる。
【0051】
図6は、第4構成例の全波整流回路40における電流の流れを示す図である。
【0052】
全波整流回路40は、例えば、図6に示すような第4構成例のブリッジ回路を含んでもよい。第4構成例の第1サイリスタ52は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第2入力端子34に接続される。第4構成例の第2サイリスタ54は、アノードが第2入力端子34に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第4構成例の第1ダイオード56は、アノードが第1入力端子32に接続され、カソードが第1出力端子36に接続される。第4構成例の第2ダイオード58は、アノードが第2出力端子38に接続され、カソードが第1入力端子32に接続される。
【0053】
第4構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオンとなり、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオフとなる。従って、第4構成例の全波整流回路40は、交流電圧が正であって、ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第1入力端子32から第1ダイオード56を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第1サイリスタ52を介して第2入力端子34へと電流が流れる。
【0054】
第4構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2サイリスタ54および第2ダイオード58がオンとなり、第1サイリスタ52および第1ダイオード56がオフとなる。従って、第4構成例の全波整流回路40は、交流電圧が負であって、第2ゲート信号がオン電圧とされた場合において、第2入力端子34から第2サイリスタ54を介して第1出力端子36へと電流が流れ、且つ、第2出力端子38から第2ダイオード58を介して第1入力端子32へと電流が流れる。
【0055】
図7は、従来のゲート信号が与えられた場合の全波整流回路40に流れる電流の波形を示す図である。
【0056】
例えば、全波整流回路40は、ターンオンタイミングにおいてオフ電圧からオン電圧に変化し、ターンオンタイミングから交流電圧の周期より短い微小時間後においてオン電圧からオフ電圧に変化する第1ゲート信号が与えられたとする。また、全波整流回路40は、ターンオフタイミングにおいてオフ電圧からオン電圧に変化し、ターンオフタイミングから微小時間後においてオン電圧からオフ電圧となる第2ゲート信号が与えられたとする。このような場合、全波整流回路40の第1入力端子32へと入力される電流は、正弦波におけるピークを越えた後の、電流量の絶対値が所定電流値以下となっている期間である消弧期間において、0となってしまう。このため、図7に示すような第1ゲート信号および第2ゲート信号が与えられた場合、全波整流回路40は、消弧期間において、電流に歪みが発生して、力率が低下してしまう。
【0057】
図8は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第1例、および、第1例の第1ゲート信号および第2ゲート信号が与えられた場合の全波整流回路40に流れる電流の波形を示す図である。
【0058】
実施形態に係る制御回路48は、交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第1オーバラップ期間において、第1ゲート信号をオン電圧とし、第1オーバラップ期間とは異なる期間において、第1ゲート信号をオフ電圧とする。これにより、第1サイリスタ52は、電流量の絶対値が所定電流値以下となる消弧期間においても、第1ゲート信号がオン電圧とされるのでアノードからカソードへと電流を流し続けることができる。
【0059】
また、実施形態に係る制御回路48は、交流電圧のゼロクロスタイミングを跨ぐ第2オーバラップ期間において、第2ゲート信号をオン電圧とし、第2オーバラップ期間とは異なる期間において、第2ゲート信号をオフ電圧とする。これにより、第2サイリスタ54は、電流量の絶対値が所定電流値以下となる消弧期間においても、第2ゲート信号がオン電圧とされるのでアノードからカソードへと電流を流し続けることができる。
【0060】
例えば、図8のBに示すように、制御回路48は、ターンオフタイミングよりも第1時間t前に、第1ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオフタイミングよりも第2時間t後に、第1ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させる。第1時間tは、消弧時間と、誤差マージン時間とを加えた時間より長い。第2時間tは、誤差マージン時間より長い。
【0061】
消弧時間は、サイリスタが正弦波電流を流す場合において、電流量の絶対値が所定電流値以下となることによってオン状態のサイリスタがオフ状態に遷移するタイミングから、正弦波電流が0となるまでの時間である。誤差マージン時間は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定等により生じる、検出するゼロクロスタイミングの誤差の範囲に応じた時間である。
【0062】
これにより、制御回路48は、電流量の絶対値が所定電流値以下となる期間において第1サイリスタ52のゲートにオン電圧を印加することができるので、ターンオフタイミングまで第1サイリスタ52をオン状態に維持することができる。さらに、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、電流量の絶対値が所定電流値以下となる期間において第1サイリスタ52のゲートにオン電圧を印加して、ターンオフタイミングまで第1サイリスタ52を確実にオン状態に維持することができる。
【0063】
また、例えば、図8のBに示すように、制御回路48は、ターンオンタイミングよりも第3時間t前に、第1ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオンタイミングよりも第4時間t後に、第1ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させる。第3時間tは、誤差マージン時間より長い。第4時間tは、発弧時間と誤差マージン時間とを加えた時間より長い。発弧時間は、オフ状態のサイリスタをオン状態に遷移させ、その後オン状態を維持させ続けるために必要な、ゲートにオン電圧を印加し続ける印加時間である。
【0064】
これにより、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、ターンオンタイミングから発弧時間を経過するまで第1サイリスタ52のゲートにオン電圧を印加して、ターンオンタイミングから第1サイリスタ52を確実にオン状態に遷移させることができる。
【0065】
また、第1時間t、第2時間t、第3時間tおよび第4時間tは、正弦波電流におけるゼロクロスタイミングにおいて第1ゲート信号がオン電圧となり、ゼロクロスタイミングとゼロクロスタイミングとの間の少なくとも一部の時間領域において第1ゲート信号がオフ電圧となるように設定される。すなわち、第1時間tと第4時間tとを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。また、第2時間tと第3時間tとを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。これにより、制御回路48は、第1ゲート信号をオフ電圧としている期間において、第1サイリスタ52のゲートに駆動電流を供給させないので、消費電力を少なくすることができる。
【0066】
また、例えば、図8のCに示すように、制御回路48は、ターンオンタイミングよりも第5時間t前に、第2ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオンタイミングよりも第6時間t後に、第2ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させる。第5時間tは、消弧時間と、誤差マージン時間とを加えた時間より長い。第6時間tは、誤差マージン時間より長い。なお、第5時間tは、第1時間tと同一であってもよい。また、第6時間tは、第2時間tと同一であってもよい。
【0067】
これにより、制御回路48は、電流量の絶対値が所定電流値以下となる期間において第2サイリスタ54のゲートにオン電圧を印加することができるので、ターンオンタイミングまで第2サイリスタ54をオン状態に維持することができる。さらに、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、電流量の絶対値が所定電流値以下となる期間において第2サイリスタ54のゲートにオン電圧を印加して、ターンオンタイミングまで第2サイリスタ54を確実にオン状態に維持することができる。
【0068】
また、例えば、図8のCに示すように、制御回路48は、ターンオフタイミングよりも第7時間t前に、第2ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオフタイミングよりも第8時間t後に、第2ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させる。第7時間tは、誤差マージン時間より長い。第8時間tは、発弧時間と誤差マージン時間とを加算した時間より長い。
【0069】
これにより、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、ターンオフタイミングから発弧時間を経過するまで第2サイリスタ54のゲートにオン電圧を印加して、ターンオフタイミングから第2サイリスタ54を確実にオン状態に遷移させることができる。
【0070】
また、第5時間t、第6時間t、第7時間tおよび第8時間tは、正弦波電流におけるゼロクロスタイミングにおいて第2ゲート信号がオン電圧となり、ゼロクロスタイミングとゼロクロスタイミングとの間の少なくとも一部の時間領域において第2ゲート信号がオフ電圧となるように設定される。すなわち、第5時間tと第8時間tとを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。また、第6時間tと第7時間tとを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。これにより、制御回路48は、第2ゲート信号をオフ電圧としている期間において、第2サイリスタ54のゲートに駆動電流を供給させないので、消費電力を少なくすることができる。
【0071】
図9は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第2例、および、第2例の第1ゲート信号および第2ゲート信号が与えられた場合の全波整流回路40に流れる電流の波形を示す図である。
【0072】
また、例えば、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の値に応じて、第1時間tを変更してもよい。例えば、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、第1時間tを短くしてもよい。すなわち、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の振幅が小さい程、第1時間tを長くするように制御してもよい。
【0073】
また、例えば、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の値に応じて、第5時間tを変更してもよい。例えば、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、第5時間tを短くしてもよい。すなわち、制御回路48は、全波整流回路40のブリッジ回路に流れる電流の振幅が小さい程、第5時間tを長くするように制御してもよい。
【0074】
制御回路48は、例えば、全波整流回路40へ入力される電流の値を検出する電流検出回路から、全波整流回路40から出力される電流を取得する。また、制御回路48は、例えば、全波整流回路40から出力される電流の値を検出する電流検出回路から、全波整流回路40から出力される電流を取得してもよい。
【0075】
正弦波におけるゼロクロスタイミングにおける近傍の傾きは、正弦波の振幅が大きい程、急峻、すなわち、大きくなる。従って、ゼロクロスタイミングの近傍において所定電流値より小さくなる期間は、交流電流の振幅が大きいほど短く、振幅が小さいほど長くなる。すなわち、サイリスタにおける消弧期間は、交流電流の振幅に応じて変化し、交流電流の振幅が大きいほど短く、振幅が小さいほど長くなる。
【0076】
従って、制御回路48は、ブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、第1時間tを短くすることによって、消弧期間において確実に第1ゲート信号をオン電圧とするとともに、第1ゲート信号をオン電圧としている時間が短くなるように設定することができる。同様に、制御回路48は、ブリッジ回路に流れる電流の振幅が大きい程、第5時間tを短くすることによって、消弧期間において確実に第2ゲート信号をオン電圧とするとともに、第2ゲート信号をオン電圧としている時間が短くなるように設定することができる。
【0077】
サイリスタは、オフ状態からオン状態に遷移するために、ゲートから一定以上の電流量が供給されなければならない。このため、電力変換装置20は、第1ゲート信号および第2ゲート信号をオン電圧としている期間を短くする方が、消費電力を小さくすることができる。本例において、制御回路48は、ブリッジ回路に流れる電流の振幅に応じて、第1ゲート信号および第2ゲート信号をオン電圧とする期間を適切な長さに変化させるので、第1サイリスタ52および第2サイリスタ54に供給する電力を適切に調整し、省電力化を図ることができる。
【0078】
図10は、第1ゲート信号および第2ゲート信号の波形の第3例、および、第3例の第1ゲート信号および第2ゲート信号が与えられた場合の全波整流回路40に流れる電流の波形を示す図である。
【0079】
例えば、図10のBに示すように、制御回路48は、ターンオンタイミングよりも第9時間t前において第1ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオフタイミングから第10時間t10後において第1ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させてもよい。第9時間tおよび第10時間t10のそれぞれは、誤差マージン時間より長い。
【0080】
このような制御回路48は、交流電圧が正となっている全部の期間において、第1ゲート信号をオン電圧とすることができる。これにより、制御回路48は、電流量の絶対値が所定電流値以下となってもターンオフタイミングまで第1サイリスタ52をオン状態に維持することができる。さらに、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、ターンオンタイミングから第1サイリスタ52を確実にオン状態に遷移させ、ターンオフタイミングまで確実に第1サイリスタ52をオン状態に維持することができる。
【0081】
なお、第9時間tおよび第10時間t10は、交流電圧が負の期間の少なくとも一部の時間領域において、第1ゲート信号がオフ電圧となるように設定される。すなわち、第9時間tと第10時間t10とを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。これにより、制御回路48は、交流電圧が負の期間の少なくとも一部の時間領域において、第1サイリスタ52のゲートに駆動電流を供給させないので、消費電力を少なくすることができる。
【0082】
また、例えば、図10のCに示すように、制御回路48は、ターンオフタイミングよりも第11時間t11前において第2ゲート信号をオフ電圧からオン電圧に変化させ、ターンオンタイミングから第12時間t12後において第2ゲート信号をオン電圧からオフ電圧に変化させてもよい。第11時間t11および第12時間t12のそれぞれは、誤差マージン時間より長い。
【0083】
このような制御回路48は、交流電圧が負となっている全部の期間において、第2ゲート信号をオン電圧とすることができる。これにより、制御回路48は、電流量の絶対値が所定電流値以下となってもターンオンタイミングまで第2サイリスタ54をオン状態に維持することができる。さらに、制御回路48は、交流電圧の周期および位相の変動およびゼロクロスタイミングの測定による誤差が生じても、ターンオフタイミングから第2サイリスタ54を確実にオン状態に遷移させ、ターンオンタイミングまで確実に第2サイリスタ54をオン状態に維持することができる。
【0084】
なお、第11時間t11および第12時間t12は、交流電圧が正の期間の少なくとも一部の時間領域において、第2ゲート信号がオフ電圧となるように設定される。すなわち、第11時間t11と第12時間t12とを加算した時間は、交流電圧の1/2周期よりも短くなるように設定される。これにより、制御回路48は、交流電圧が正の期間の少なくとも一部の時間領域において、第2サイリスタ54のゲートに駆動電流を供給させないので、消費電力を少なくすることができる。
【0085】
以上のように本実施形態に係る電力変換装置20は、交流電流が所定電流値以下となる期間において、電流の歪みを確実に無くすことができる。これにより、電力変換装置20は、力率を低下させず、効率良く電力変換することができる。
【0086】
本発明の実施形態および変形例を説明したが、これらの実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態およびその変形は、発明の範囲および要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0087】
10 充電システム、12 交流電源、14 充電装置、20 電力変換装置、32 第1入力端子、34 第2入力端子、36 第1出力端子、38 第2出力端子、40 全波整流回路、42 平滑回路、44 第1駆動回路、46 第2駆動回路、48 制御回路、52 第1サイリスタ、54 第2サイリスタ、56 第1ダイオード、58 第2ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10