(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081957
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】両軸受リールのクラッチ制御装置
(51)【国際特許分類】
A01K 89/015 20060101AFI20240612BHJP
【FI】
A01K89/015 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195582
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】生田 剛
(72)【発明者】
【氏名】平岡 宏一
(72)【発明者】
【氏名】中川 勝二
(72)【発明者】
【氏名】池袋 哲史
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108ED08
2B108ED17
2B108ED19
(57)【要約】
【課題】クラッチ機構を解除状態から連結状態に容易に復帰させることが可能な両軸受リールのクラッチ制御装置の提供。
【解決手段】クラッチ制御装置20は、ハンドル2とスプール4とを連結する連結状態とハンドル2とスプール4との連結を解除する解除状態とを取り得るクラッチ機構19を制御する。クラッチ制御装置20は、クラッチヨーク41と、第1付勢部材44と、クラッチカム40とを備える。クラッチヨーク41は、第1ヨーク位置と第2ヨーク位置とに移動可能に構成される。第1付勢部材44は、クラッチヨーク41を第1ヨーク位置に向けて付勢する。クラッチ制御装置20は、クラッチヨーク41が、第1ヨーク位置と第2ヨーク位置の間の中間ヨーク位置において、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態で、クラッチ機構19を解除状態とする。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドルとスプールとを連結する連結状態と前記ハンドルと前記スプールとの連結を解除する解除状態とを取り得るクラッチ機構を制御する両軸受リールのクラッチ制御装置であって、
前記クラッチ機構に連結され、第1ヨーク位置と前記第1ヨーク位置から前記スプールの回転軸の軸方向に離れた第2ヨーク位置とに移動可能に構成されるクラッチヨークと、
前記クラッチヨークを前記第1ヨーク位置に向けて付勢する第1付勢部材と、
前記第1付勢部材に抗して、前記クラッチヨークを前記第1ヨーク位置から前記第2ヨーク位置に移動させるクラッチカムと、
を備え、
前記クラッチヨークが、前記第1ヨーク位置から前記第1ヨーク位置と前記第2ヨーク位置の間の中間ヨーク位置に移動するまでの間、前記クラッチヨークが前記第1ヨーク位置に復帰可能な状態で、前記クラッチ機構を前記連結状態とし、
前記クラッチヨークが、前記中間ヨーク位置において、前記クラッチヨークが前記第1ヨーク位置に復帰可能な状態で、前記クラッチ機構を前記解除状態とし、
前記クラッチヨークが、前記第2ヨーク位置において、前記クラッチヨークが前記第1ヨーク位置に復帰不能な状態で、前記クラッチ機構を前記解除状態とする、
両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項2】
前記クラッチヨークが前記中間ヨーク位置から前記第2ヨーク位置までの範囲内にあるとき、前記クラッチヨークを前記中間ヨーク位置に向けて付勢する第2付勢部材をさらに備える、
請求項1に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項3】
前記軸方向に延びる第1ガイド軸及び第2ガイド軸を有し、前記クラッチヨークを前記軸方向に案内するためのガイド部材をさらに備え、
前記第1付勢部材は、前記第1ガイド軸に配置され、
前記第2付勢部材は、前記第2ガイド軸に配置される、
請求項2に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項4】
前記ガイド部材は、前記軸方向に延びる第3ガイド軸をさらに有し、
前記第3ガイド軸の外周に配置され、前記クラッチヨークを前記第1ヨーク位置に向けて付勢する第3付勢部材をさらに備える、
請求項3に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項5】
前記第2ガイド軸は、大径部と、前記大径部から前記ハンドルに向かって前記軸方向に延び前記大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、前記大径部と前記小径部の間に段差部と、を有し、
前記段差部に、押え板を配置し、
前記第2付勢部材は、前記小径部に配置され、前記押え板に当接する、
請求項3又は4に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項6】
前記クラッチヨークは、前記押さ板を収容可能な凹部を有する、
請求項5に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項7】
前記軸方向に延びる第1ガイド軸を有し、前記クラッチヨークを前記軸方向に案内するためのガイド部材をさらに備え、
前記第1付勢部材及び前記第2付勢部材は、前記第1ガイド軸に配置されたコイルバネであり、
前記第2付勢部材は、前記第1付勢部材の自由長よりも短い自由長を有する、
請求項2に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項8】
前記第1付勢部材は、前記第2付勢部材の内側に配置される、
請求項7に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項9】
前記クラッチヨークを前記第1ヨーク位置と前記第2ヨーク位置とに振り分けて付勢するトグル機構をさらに備える、
請求項1又は2記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項10】
前記トグル機構は、トグル付勢力を前記第1ヨーク位置と前記第2ヨーク位置とに振り分ける振分変化点を有し、
前記振分変化点は、前記中間ヨーク位置と前記第2ヨーク位置との間に設けられている、
請求項9に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項11】
ハンドルとスプールとを連結する連結状態と前記ハンドルと前記スプールとの連結を解除する解除状態とを取り得るクラッチ機構を制御する両軸受リールのクラッチ制御装置であって、
前記クラッチ機構に連結され、前記クラッチ機構が前記連結状態を維持する第1レバー位置と、前記クラッチ機構が前記解除状態を維持する第2レバー位置とに操作可能なレバー部と、
前記レバー部を前記第1レバー位置に向けて付勢するレバー付勢部材と、
を備え、
前記レバー部が、前記第1レバー位置から前記第1レバー位置と前記第2レバー位置の間の中間レバー位置に移動するまでの間、前記レバー部が前記第1レバー位置に復帰可能な状態で、前記クラッチ機構を前記連結状態とし、
前記レバー部が、前記中間レバー位置において、前記レバー部が前記第1レバー位置に復帰可能な状態で、前記クラッチ機構を前記解除状態とし、
前記レバー部が、前記第2レバー位置において、前記レバー部が前記第1レバー位置に復帰不能な状態で、前記クラッチ機構を前記解除状態とする、
両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項12】
前記レバー部を前記第1レバー位置と前記第2レバー位置とに振り分けて付勢するトグル機構をさらに備える、
請求項11に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【請求項13】
前記トグル機構は、トグル付勢力を前記第1レバー位置と前記第2レバー位置とに振り分ける振分変化点を有し、
前記振分変化点は、前記中間レバー位置と前記第2レバー位置との間に設けられている、
請求項12に記載の両軸受リールのクラッチ制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両軸受リールのクラッチ制御装置、特に、ハンドルとスプールとを連結する連結状態とハンドルとスプールとの連結を解除する解除状態とを取り得るクラッチ機構を制御する両軸受リールのクラッチ制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
両軸受リールには、ハンドルとスプールとの間にクラッチ機構が設けられている。クラッチ機構は、ハンドルとスプールとを連結する連結状態とハンドルとスプールとの連結を解除する解除状態とを取り得る。ハンドルとスプールとが連結されると、ハンドルの回転によりスプールが回転する。ハンドルとスプールとが連結解除されると、スプールが自由に回転可能になる。クラッチ機構は、クラッチ制御装置に制御される。クラッチ制御装置は、クラッチ復帰機構を備えている(特許文献1参照)。クラッチ復帰機構は、ハンドルの糸巻取方向の回転に連動してクラッチ機構を解除状態から連結状態に復帰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のクラッチ制御装置では、クラッチ機構のレバー部を、連結位置(第1レバー位置)から解除位置(第2レバー位置)へ移動させ、クラッチ機構を連結状態から解除状態に切り替えるものであるが、クラッチ操作部の連結位置(第1レバー位置)から解除位置(第2レバー位置)へ移動中においては、クラッチ機構は連結状態を維持しており、解除位置(第2レバー位置)に達した際に解除状態に切り替わるとともに、レバー部は解除位置(第2レバー位置)に保持される。このため、クラッチ機構を解除状態から連結状態に復帰させるには、ハンドルを糸巻取方向に回転させることによってクラッチ復帰機構を動作させる必要がある。このため、例えば、片手だけの操作でクラッチ機構を連結状態から解除状態へ切り替え、再び、片手だけの操作でクラッチ機構を解除状態から連結状態へ復帰させることが難しい。
【0005】
本発明の目的は、クラッチ機構を連結状態から解除状態へ切り替え、再び、クラッチ機構を解除状態から連結状態へ容易に復帰させることが可能な両軸受リールのクラッチ制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、クラッチ機構を制御する。クラッチ機構は、ハンドルとスプールとを連結する連結状態とハンドルとスプールとの連結を解除する解除状態とを取り得る。クラッチ制御装置は、クラッチヨークと、第1付勢部材と、クラッチカムとを備える。クラッチヨークは、クラッチ機構に連結され、第1ヨーク位置と第1ヨーク位置からスプールの回転軸の軸方向に離れた第2ヨーク位置とに移動可能に構成される。第1付勢部材は、クラッチヨークを第1ヨーク位置に向けて付勢する。クラッチカムは、第1付勢部材に抗して、クラッチヨークを第1ヨーク位置から第2ヨーク位置に移動させる。クラッチ制御装置は、クラッチヨークが、第1ヨーク位置から、第1ヨーク位置と第2ヨーク位置の間の中間ヨーク位置に移動するまでの間、クラッチヨークが第1ヨーク位置に復帰可能な状態でクラッチ機構を連結状態とする。クラッチ制御装置は、クラッチヨークが、中間ヨーク位置に達すると、クラッチヨークが第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構を解除状態とする。また、クラッチ制御装置は、第2ヨーク位置では、クラッチヨークが第1ヨーク位置に復帰不能な状態で、クラッチ機構を解除状態とする。
【0007】
すなわち、クラッチヨークが中間ヨーク位置に達すると、第1付勢部材の付勢力よってクラッチヨークが第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構が解除状態となる。これにより、第1付勢部材の付勢力よってクラッチヨークが第1ヨーク位置に復帰可能な状態でクラッチ機構を連結状態から解除状態とし、ハンドル操作などクラッチ復帰機構の操作を行うことなく、再び、クラッチ機構を解除状態から連結状態へと容易に復帰させることができる。
【0008】
本発明の第1側面に従う第2側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、クラッチヨークが中間ヨーク位置から第2位置までの範囲内にあるときのみクラッチヨークを中間ヨーク位置に向けて付勢する第2付勢部材をさらに備える。この場合は、例えば、クラッチ制御装置に連結されるクラッチ操作部材の操作に応じてクラッチ機構が制御される場合に、第1付勢部材による付勢力に加え、第2付勢部材の付勢力が加わるため、クラッチヨークが中間ヨーク位置に到達したことをユーザが容易に認識することができる。
【0009】
本発明の第2側面に従う第3側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、軸方向に延びる第1ガイド軸及び第2ガイド軸を有し、クラッチヨークを軸方向に案内するためのガイド部材をさらに備える。第1付勢部材は、第1ガイド軸に配置される。第2付勢部材は、第2ガイド軸に配置される。この場合は、ガイド部材によってクラッチヨークの移動をガイドできるとともに、第1付勢部材及び第2付勢部材によってクラッチヨークを第1ヨーク位置に向けて簡単な構成で付勢できる。
【0010】
本発明の第3側面に従う第4側面の両軸受リールのクラッチ制御装置のガイド部材は、軸方向に延びる第3ガイド軸をさらに有する。両軸受リールのクラッチ制御装置は、第3ガイド軸の外周に配置され、クラッチヨークを第1位置に向けて付勢する第3付勢部材をさらに備える。この場合は、第1ガイド軸に加え、第3ガイド軸でクラッチヨークをガイドするので、移動をよりスムーズに案内することができる。また、第1付勢部材に加え、第3付勢部材によって、クラッチヨークを第1ヨーク位置に向けて付勢するので付勢力が安定するとともに、付勢力が大きくなるので、クラッチ機構を解除状態から連結状態に迅速且つスムーズに復帰させることができる。
【0011】
本発明の第3側面又は第4側面に従う第5側面の両軸受リールのクラッチ制御装置のガイド部材の第2ガイド軸は、大径部と、大径部からハンドルに向かって軸方向に延び大径部の外径よりも小さい外径を有する小径部と、大径部と小径部の間に段差部と、を有し、段差部に、押え板を配置し、第2付勢部材は、小径部に配置され、押え板に当接する。この場合は、中間ヨーク位置で、第2付勢部材がより確実に機能し、クラッチヨークが中間ヨーク位置に到達したことをユーザが容易に、より確実に認識することができる。
【0012】
本発明の第5側面に従う第6側面の両軸受リールのクラッチ制御装置のクラッチヨークは、押さ板を収容可能な凹部を有する。この場合は、付勢部材を配置するスペースを確保できる。
【0013】
本発明の第2側面に従う第7側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、軸方向に延びる第1ガイド軸を有し、クラッチヨークを軸方向に案内するためのガイド部材をさらに備える。第1付勢部材及び第2付勢部材は、第1ガイド軸に配置されたコイルバネであり、第2付勢部材は、第1付勢部材の自由長よりも短い自由長を有する。この場合は、例えば、クラッチ制御装置に連結されるクラッチ操作部材の操作に応じてクラッチ機構が制御される場合に、クラッチヨークが中間ヨーク位置に到達したことをユーザが容易に認識することができる。
【0014】
本発明の第7側面に従う第8側面の両軸受リールのクラッチ制御装置の第1付勢部材は、第2付勢部材の内側に配置される。この場合は、クラッチヨークを中間ヨーク位置に向けて簡単な構成で付勢できる。
【0015】
本発明の第1側面から第8側面のいずれか1つに従う第9側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、クラッチヨークを第1ヨーク位置と第2ヨーク位置とに振り分けて付勢するトグル機構をさらに備える。この場合、クラッチヨークを第1ヨーク位置と第2ヨーク位置のいずれかに維持することができる。
【0016】
本発明の第9側面に従う第10側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、トグル機構は、トグル付勢力を第1ヨーク位置と第2ヨーク位置とに振り分ける振分変化点を有し、その振分変化点は、中間ヨーク位置と第2ヨーク位置との間に設けられている。この場合、クラッチヨークが中間ヨーク位置を超えて第2ヨーク位置に向けて移動した際、トグル機構によって、クラッチヨークを第2ヨーク位置に付勢し、維持するようにできる。
【0017】
本発明の第11側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、クラッチ機構を制御する。クラッチ機構は、ハンドルとスプールとを連結する連結状態とハンドルとスプールとの連結を解除する解除状態とを取り得る。クラッチ制御装置は、レバー部と、レバー付勢部材とを備える。レバー部は、クラッチ機構に連結される。レバー部は、クラッチ機構が連結状態を維持する第1レバー位置と、クラッチ機構が解除状態を維持する第2レバー位置とに操作可能に構成される。レバー付勢部材は、レバー部を第1レバー位置に向けて付勢する。レバー部が、第1レバー位置から第1レバー位置と第2レバー位置の間の中間レバー位置に移動するまでの間、レバー部が第1レバー位置に復帰可能な状態で、クラッチ機構を連結状態とし、レバー部が、中間レバー位置において、レバー部が第1レバー位置に復帰可能な状態で、クラッチ機構を解除状態とする。また、レバー部が、第2レバー位置において、レバー部が第1ヨーク位置に復帰不能な状態で、クラッチ機構を解除状態とする。
【0018】
このクラッチ制御装置は、レバー部が、第1レバー位置から中間レバー位置に移動するまでの間は、クラッチ機構を連結状態する。レバー部が、中間レバー位置に達すると、レバー部が第1レバー位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構を解除状態に制御する。すなわち、レバー部が中間レバー位置に達すると、クラッチ機構が解除状態となり、レバー付勢部材の付勢力よってレバー部が第1レバー位置に復帰可能となる。これにより、クラッチ機構を連結状態から解除状態とし、再び、解除状態から連結状態へと容易に復帰させることができる。
【0019】
本発明の第11側面に従う第12側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、レバー部を第1レバー位置と第2レバー位置とに振り分けて付勢するトグル機構をさらに備える。この場合、レバー部を第1レバー位置と第2レバー位置のいずれかに維持することができる。
【0020】
本発明の第12側面に従う第13側面の両軸受リールのクラッチ制御装置は、トグル機構は、トグル付勢力を第1レバー位置と第2レバー位置とに振り分ける振分変化点を有し、その振分変化点は、中間レバー位置と第2レバー位置との間に設けられている。この場合、レバー部が中間レバー位置を超えて第2レバー位置に向けて移動した際、トグル機構によって、レバー部を第2レバー位置に付勢し、維持するようにできる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、クラッチ機構を連結状態から解除状態へ切り替え、再び、クラッチ機構を解除状態から連結状態へ容易に復帰させることが可能な両軸受リールのクラッチ制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態が採用された両軸受リールの斜視図。
【
図5】クラッチ操作部材の移動範囲を説明するための図
【
図6】第1ヨーク位置におけるクラッチヨーク及びクラッチカムの係合状態を示す図。
【
図7】中間ヨーク位置におけるクラッチヨーク及びクラッチカムの係合状態を示す図。
【
図8】第2ヨーク位置におけるクラッチヨーク及びクラッチカムの係合状態を示す図。
【
図9】クラッチヨークが第1ヨーク位置にあるときのクラッチ制御装置の断面図。
【
図10】クラッチヨークが中間ヨーク位置にあるときのクラッチ制御装置の断面図。
【
図11】本発明の一実施形態の変形例を説明するためのクラッチ制御装置の部分斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、
図1に示すように、リール本体1と、スプール回転用のハンドル2と、ハンドル2及びリール本体1の間に配置されたドラグ調整用のスタードラグ3と、リール本体1に回転自在に装着されたスプール4と、を備えている。リール本体1の後部には、クラッチ操作部材17が装着されている。
【0024】
なお、以下では、スプール4の回転軸Xの軸方向を単に軸方向と記す。回転軸Xを中心として回転軸Xまわりの方向を周方向と記す。回転軸Xを中心として回転軸Xから離れる方向を径方向と記す。
【0025】
<リール本体の構成>
図1及び
図2に示すように、リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方を覆うように装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bと、フレーム5の前方に装着された前カバー7とを、有している。
【0026】
図2に示すように、フレーム5は、軸方向に間隔をあけて互いに対向するように配置された第1側板8aと第2側板8bとを有している。
図3に示すように、第1側板8aは、スプール4の取り出し用の円形の開口8cを有する。
【0027】
第1側カバー6aは、フレーム5に装着されている。詳細には、第1側カバー6aは、フレーム5の第1側板8aに装着される。第2側カバー6bは、フレーム5の第2側板8bに装着される。
【0028】
フレーム5の内部には、スプール4と、レベルワインド機構24(
図3参照)と、クラッチ操作部材17(レバー部材の一例)と、クラッチ機構19とが設けられている。また、フレーム5と第2側カバー6bとの間には、回転伝達機構18と、クラッチ制御装置20と、ドラグ機構21と、キャスティングコントロール機構22とが設けられている。
【0029】
スプール4は、第1側板8aと第2側板8b間に回転自在に配置されている。スプール4は、糸巻胴部4bと、糸巻き胴部の両端部に設けられたフランジ部4aとを、有している。スプール4は、スプール軸15に固定されている。
【0030】
レベルワインド機構24は、スプール4に均一に糸を巻くためのものである。
図3に示すように、レベルワインド機構24は、ガイド筒25と、ウォームシャフト26と、ラインガイド27と、従動ギア28とを有する。レベルワインド機構24は、従来と同様の構成であるため詳細な説明は省略する。
【0031】
ドラグ機構21は、糸繰り出し時にスプール4を制動するためのものである。ドラグ機構21は、摩擦プレート21aと、押圧プレート21bとを有する。ドラグ機構21は、従来と同様の構成であるため詳細な説明は省略する。
【0032】
キャスティングコントロール機構22は、スプール4の回転時の抵抗力を調整するためのものである。キャスティングコントロール機構22は、スプール4の回転時の抵抗力を調整するためのキャップ36を有する。
【0033】
<回転伝達機構及びクラッチ機構の構成>
回転伝達機構18は、ハンドル2からの回転力をスプール4及びレベルワインド機構24に伝えるためのものである。クラッチ機構19は、ハンドル2とスプール4とを連結及び連結解除するためのものである。
【0034】
回転伝達機構18は、ハンドル軸30と、第1駆動ギア31と、第2駆動ギア32と、ピニオンギア33とを有している。
【0035】
図3に示すように、ハンドル軸30は、ワンウェイクラッチ38により、糸繰り出し方向の回転が禁止されている。ハンドル軸30は、リール本体1に支持されている。第1駆動ギア31は、ハンドル軸30に回転自在に装着されている。第1駆動ギア31には、ドラグ機構21を介して、ハンドル2の回転が伝達される。
【0036】
第2駆動ギア32は、ハンドル軸30に一体回転可能に装着されている。第2駆動ギア32は、従動ギア28と噛み合う。第2駆動ギア32は、ハンドル2の回転をレベルワインド機構24に伝達する。
【0037】
ピニオンギア33は、第1駆動ギア31に噛み合う。ピニオンギア33は、スプール軸15の外周側に配置されている。ピニオンギア33は、
図4に示すように、一端側の外周部に第1駆動ギア31に噛み合う歯部33aと、他端側に形成された係合溝33bと、歯部33a及び係合溝33bの間に形成された小径部33cとを、有している。
【0038】
係合溝33bは、スプール軸15に装着された係合ピン15aに係合可能、且つ係合ピン15aから離脱可能である。係合溝33bが形成された部分の外周面は、リール本体1に配置される軸受を介して第2側板8bに回転自在に支持されている。
【0039】
クラッチ機構19は、係合溝33bとスプール軸15の係合ピン15aとによって構成されている。クラッチ機構19は、ハンドル2とスプール4とを連結する連結状態(
図9参照)と、ハンドル2とスプール4との連結を解除する解除状態(
図10参照)とを取り得るように構成されている。
【0040】
解除状態とは、係合溝33bがスプール軸15の係合ピン15aから離脱した状態である。解除状態では、ハンドル軸30の回転力が遮断され、ハンドル軸30の回転力はスプール軸15に伝達されない。すなわち、この場合、スプール4が、糸巻き取り方向にも、糸繰り出し方向にも自由に回転可能になる。
【0041】
連結状態とは、係合溝33bが係合ピン15aと噛み合った状態である。この場合、ハンドル2の回転力が、スプール軸15に伝達される。すなわち、この場合、スプール4は、ハンドル2の回転に連動して回転する。
【0042】
<クラッチ操作部材の構成>
クラッチ操作部材17は、フレーム5の後部で第1側板8a及び第2側板8bの間に配置されている。クラッチ操作部材17は、
図5において実線で示す第1レバー位置と、
図5において2点鎖線で示す第2レバー位置との間で移動可能にクラッチ制御装置20に連結されている。
【0043】
クラッチ操作部材17が第1レバー位置に配置される場合、クラッチ機構19は、連結状態になる。クラッチ操作部材17が第2レバー位置に配置される場合、クラッチ機構19は、解除状態になる。
【0044】
図5において1点鎖線で示す中間レバー位置にクラッチ操作部材17が配置される場合、クラッチ機構19は、解除状態になる。クラッチ機構19は、クラッチ操作部材17が第1レバー位置から中間位置に到達するまでの間は、連結状態が維持され、中間レバー位置に達すると、連結状態から解除状態に切り替わる。この際、クラッチ操作部材17の操作を中止すると、後述する第1付勢部材44によって、第1レバー位置に付勢されているため、クラッチ操作部材17は、第1レバー位置に復帰する。また、クラッチ操作部材17をさらに操作し、クラッチ操作部材17が中間レバー位置から第2レバー位置へ操作されると、後述するトグル機構47によって、第2レバー位置へ付勢され、クラッチ機構19は、解除状態となり、クラッチ操作部材17は第2レバー位置に維持される。第1レバー位置から中間レバー位置までの距離は、中間レバー位置から第2レバー位置までの距離よりも大きい。中間レバー位置は、第1レバー位置よりも第2レバー位置に近接した位置に設定されている。
【0045】
<クラッチ制御装置の構成>
クラッチ制御装置20は、クラッチ機構19を制御可能に構成される。詳細には、クラッチ制御装置20は、クラッチ操作部材17の操作に応じて、クラッチ機構19を制御可能に構成される。
【0046】
図4及び
図6に示すように、クラッチ制御装置20は、クラッチカム40と、クラッチヨーク41と、連結部材42と、ガイド部材43と、第1~第3付勢部材44~46と、トグル機構47と、クラッチ復帰機構48とを有する。
【0047】
<クラッチカムの構成>
クラッチカム40は、回転軸Xまわりに回動可能に構成される。詳細には、クラッチカム40は、クラッチ操作部材17の操作により回転軸Xまわりに回動可能に構成される。また、クラッチカム40は、クラッチヨーク41に係合可能に構成される。クラッチカム40は、回動によって、クラッチヨーク41を軸方向に移動させる。クラッチカム40は、第2側板8bに装着される。クラッチカム40は、連結部材42に固定されており、連結部材42と一体的に回動する。
【0048】
クラッチカム40は、本体部40aと、複数の凹部40bと、複数のカム面40cと、連結突起40dと、連結孔40eとを有する。本体部40aは、実質的に環状に形成される。本体部40aの内周部には、ピニオンギア33が配置される。
【0049】
複数の凹部40bは、本体部40aのハンドル2側に形成されている。本実施形態では、複数の凹部40bは、3つの凹部40bで構成され、互いに周方向に離れている。
【0050】
複数のカム面40cは、クラッチヨーク41を軸方向に案内する。複数のカム面40cは、複数の凹部40bのそれぞれに形成されている。複数のカム面40cは、傾斜面で構成されている。複数のカム面40cは、周方向に沿って延びている。複数のカム面40cは、クラッチ操作部材17の第1レバー位置から第2レバー位置への移動に応じて、クラッチヨーク41を軸方向に押圧する。
【0051】
連結突起40dは、本体部40aから連結部材42に向かって径方向に突出している。連結突起40dは、本体部40aの径方向外側に形成されている。
【0052】
<クラッチヨークの構成>
クラッチヨーク41は、クラッチカム40に係合し、クラッチカム40の回動によりピニオンギア33を軸方向に移動させる。クラッチヨーク41は、ガイド部材43によって軸方向の移動が案内される。
【0053】
クラッチヨーク41は、クラッチ機構19に連結される。クラッチヨーク41は、
図6及び
図9に示す第1ヨーク位置と
図8に示す第2ヨーク位置とに移動可能に構成される。第2ヨーク位置は、第1ヨーク位置から軸方向に離れている。クラッチヨーク41は、クラッチ操作部材17が第1レバー位置にあるとき、第1ヨーク位置に位置する。クラッチヨーク41は、クラッチ操作部材17が第2レバー位置にあるとき、第2ヨーク位置に位置する。クラッチヨーク41は、クラッチ操作部材17が中間レバー位置にあるとき、
図7及び
図10に示す第1ヨーク位置と第2ヨーク位置の間の中間ヨーク位置に位置する。
図10に示すように、中間ヨーク位置では、クラッチ機構19は、解除状態となる。
【0054】
図4に示すように、クラッチヨーク41は、本体部41aと、係合溝41bと、複数の係合部41cと、第1~第3ガイド孔41d~41fとを有する。
【0055】
係合溝41bは、半円形状に形成されている。係合溝41bは、ピニオンギア33の小径部33cと係合する。この構成によって、クラッチヨーク41の軸方向の移動に伴い、ピニオンギア33が軸方向に移動する。
【0056】
複数の係合部41cは、複数の凹部40bに対応して設けられている。本実施形態では、複数の係合部41cは、3つの係合部41cで構成され、互いに周方向に離れている。複数の係合部41cは、本体部41aにおいてハンドル2と反対側に形成されている。
【0057】
複数の係合部41cは、複数のカム面40cに係合可能に構成される。複数の係合部41cは、傾斜面で構成されている。複数の係合部41cは、周方向に沿って延びている。複数の係合部41cは、複数のカム面40cに沿って移動可能である。複数の係合部41cが、複数のカム面40cに沿って移動することで、クラッチヨーク41は、軸方向に移動する。
【0058】
図6及び
図7に示すように、第1ヨーク位置及び中間ヨーク位置では、複数の係合部41cは、複数のカム面40cと係合した状態にある。
図8に示すように、第2ヨーク位置では、複数の係合部41cは、複数のカム面40cとの係合が解除された状態にある。
【0059】
第1~第3ガイド孔41d~41fは、本端部を軸方向に貫通して形成されている。第1~第3ガイド孔41d~41fは、互いに周方向に離れている。第1ガイド孔41dと第3ガイド孔41fとは、回転軸Xに関して互いに点対称に配置されている。第2ガイド孔41eは、周方向において、第1ガイド孔41dと第3ガイド孔41fとの間に配置されている。
【0060】
<連結部材の構成>
連結部材42は、クラッチカム40をクラッチ操作部材17の操作により回動させるために設けられている。連結部材42は、軸方向においてクラッチカム40と第2側板8bの外側面との間に配置される。
【0061】
図4に示すように、連結部材42は、装着部42aと、固定部42bと、第1連結孔42cと、第2連結孔42dとを有する。装着部42aは、第2側板8bに配置される。固定部42bは、装着部42aから軸方向に沿って延びている。固定部42bは、クラッチ操作部材17に固定される。
【0062】
第1連結孔42c及び第2連結孔42dは、装着部42aを軸方向に貫通して形成されている。第1連結孔42cは、後述するクラッチ爪72に連結される。第2連結孔42dは、クラッチカム40の連結突起40dと嵌合する。
【0063】
<ガイド部材の構成>
ガイド部材43は、クラッチヨーク41を軸方向に案内する。ガイド部材43は、リール本体1の第2側板8bに固定されている。
【0064】
ガイド部材43は、固定部51と、第1~第3ガイド軸52~54とを有する。固定部51は、円環状に形成されている。固定部51は、第2側板8bに固定される。
【0065】
第1~第3ガイド軸52~54は、固定部51から軸方向に延びている。第1ガイド軸52は、第1ガイド孔41dに挿通される。第2ガイド軸53は、第2ガイド孔41eに挿通される。第3ガイド軸54は、第3ガイド孔41fに挿通される。
【0066】
図9に示すように、第2ガイド軸53は、大径部53aと、小径部53bと、段差部53cとを有する。大径部53aは、第2ガイド孔41e内に配置されている。小径部53bは、大径部53aからハンドル2に向かって軸方向に延びている。小径部53bは、大径部53aの外径よりも小さい外径を有する。段差部53cは、大径部53aと小径部53bの間に形成されている。段差部53cには、押え板49が配置される。押え板49は、環状であり、小径部53bの外周に配置されている。押え板49は、小径部53bに対して軸方向に移動可であり、小径部53bによって軸方向の移動が案内される。押え板49は、第2ガイド孔41eの内径よりも大きい外径を有する。クラッチヨーク41は、押え板49を収容可能な凹部41gを有する。押え板49は、クラッチヨーク41が第1位置にあるときは、凹部41gから露出し、クラッチヨーク41が中間位置にあるときは、凹部41gに収容される。凹部41gは、第2ガイド孔41eと連通している。凹部41gの底部は、第2ガイド軸53が挿通する孔を有する。
【0067】
<第1~第3付勢部材の構成>
第1~第3付勢部材44~46は、コイルバネで構成されている。第1付勢部材44及び第3付勢部材46は、クラッチヨーク41を第1ヨーク位置に向けて付勢する。第1付勢部材44は、第1ガイド軸52の外周に配置される。第3付勢部材46は、第3ガイド軸54の外周に配置される。第1付勢部材44及び第3付勢部材46は、第2側カバー6bとクラッチヨーク41との間において、圧縮状態で配置される。詳細には、第1付勢部材44及び第3付勢部材46は、第2側カバー6bの内側面とクラッチヨーク41の外側面との間に圧縮状態で配置されている。クラッチカム40は、クラッチ操作部材17の操作に応じて、第1付勢部材44及び第3付勢部材46に抗して、クラッチヨーク41を第1ヨーク位置から第2ヨーク位置に移動させる。
【0068】
第2付勢部材45は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置から第2ヨーク位置までの範囲内にあるときのみクラッチヨーク41を中間ヨーク位置に向けて付勢する。すなわち、第2付勢部材45の付勢力は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置に到達するまでクラッチヨーク41に作用しない。
【0069】
図6及び
図9に示すように、第2付勢部材45は、第2ガイド軸53の外周に配置される。第2付勢部材45は、小径部53bの外周に配置され、押え板49に当接する。第2付勢部材45の付勢力は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置から第2ヨーク位置までの範囲内にあるときのみ、押え板49を介してクラッチヨーク41に作用する。押え板49は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置に到達するまでは、クラッチヨーク41と軸方向に離れている。押え板49は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置から第2ヨーク位置の範囲内にあるときのみ、クラッチヨーク41と凹部41g内で軸方向に当接する。第2付勢部材45は、第2側カバー6bと押え板49との間において、圧縮状態で配置される。
【0070】
<トグル機構の構成>
トグル機構47は、クラッチカム40及び連結部材42を介してクラッチ操作部材17を第1レバー位置と第2レバー位置とに振り分けて付勢する。トグル機構47は、クラッチヨーク41が少なくとも中間ヨーク位置に到達するまでクラッチ操作部材17を第1レバー位置に向けて付勢する。トグル機構47は、クラッチヨーク41が中間位置を超えて、振分変化点に到達すると、クラッチ操作部材17を第2レバー位置に向けて付勢する。
【0071】
図4に示すように、トグル機構47は、クラッチ爪72と、トグルバネ部材73とを有する。クラッチ爪72は、軸方向においてクラッチカム40及び連結部材42の間において、クラッチカム40及び連結部材42に対して回動可能に連結される。クラッチ爪72は、クラッチカム40の連結孔40eに嵌合する第1突起72aと、連結部材42の第1連結孔42cに嵌合する第2突起72bとを有する。
【0072】
トグルバネ部材73は、例えば捩じりコイルバネである。トグルバネ部材73の一端は、後述するクラッチ爪72のバネ係止部72cに係止され、トグルバネ部材73の他端は第2側板8bの外側面に係止されている。トグルバネ部材73は、クラッチカム40の回動に連動して、クラッチ爪72を付勢する。
【0073】
<クラッチ復帰機構の構成>
クラッチ復帰機構48は、クラッチ機構19を解除状態から連結状態に復帰させるためのものである。例えば、ハンドル2を糸巻取方向に回転させることによって、クラッチ復帰機構48が動作し、クラッチ機構19が解除状態から連結状態に復帰する。
【0074】
クラッチ復帰機構48は、ラチェットホイール71(
図2参照)と、クラッチ爪72と、トグルバネ部材73とを有する。ラチェットホイール71は、ハンドル軸30に一体回転可能に装着されている。ラチェットホイール71は、ハンドル軸30の糸繰り出し方向の回転を禁止するワンウェイクラッチとしても機能する。
【0075】
クラッチ爪72は、クラッチカム40の回動に連動して、ラチェットホイール71と非係合となる非係合位置と、ラチェットホイール71と係合する係合位置とに移動可能である。トグルバネ部材73は、クラッチ爪72を非係合位置と係合位置とに振り分けて付勢する。
【0076】
クラッチ制御装置20は、クラッチヨーク41が、第1ヨーク位置から中間ヨーク位置に移動するまでの間、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を連結状態に制御する。すなわち、クラッチ制御装置20は、クラッチ操作部材17が第1レバー位置から中間レバー位置に移動するまでの間、クラッチ機構19を連結状態に制御する。
【0077】
クラッチ制御装置20は、クラッチヨーク41が、中間ヨーク位置に達すると、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を解除状態に制御する。クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態とは、例えば、クラッチ操作部材17の操作(押圧)が開放(中止)されると、クラッチヨーク41が、第1付勢部材44の付勢力によって、第1ヨーク位置に戻される(復帰する)状態である。
【0078】
なお、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態において、複数の係合部41cは、複数のカム面40cと係合した状態であることが好ましい。これにより、例えば、クラッチヨーク41が中間位置にあるときに、クラッチ操作部材17の操作が開放されると、第1付勢部材44の付勢力に加え、カム作用によってクラッチヨーク41が第1ヨーク位置に迅速に復帰できる。
【0079】
クラッチ制御装置20は、クラッチヨーク41が、中間ヨーク位置を超えて、第2ヨーク位置において、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰不能な状態で、クラッチ機構19を解除状態に制御する。クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰不能な状態とは、例えば、クラッチ操作部材17がトグル機構47によって第2レバー位置に向けて付勢されている状態である。クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰不能な状態とは、例えば、
図8に示されるように、複数の係合部41cは、複数のカム面40cとの係合が解除された状態を表すものである。なお、本件において、「クラッチヨーク41が、第1ヨーク位置に復帰不能な状態」とは、「完全な復帰不能の状態」を示すものではなく、クラッチ復帰機構48による操作、すなわち、ハンドル2を糸巻取方向に回転させることによって、クラッチ復帰機構48が動作し、クラッチ機構19が解除状態から連結状態に復帰、つまりは、
図6に示されるような複数の係合部41cは、複数のカム面40cとの係合が係合された状態に復帰することができることは言うまでもなく、可能である。
【0080】
上記構成のクラッチ制御装置20では、クラッチヨーク41が、第1ヨーク位置から中間ヨーク位置に移動するまでの間、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態で、クラッチ機構19を連結状態に制御する。クラッチヨーク41が、中間ヨーク位置に達すると、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を解除状態に制御する。すなわち、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を解除状態に制御し、中間ヨーク位置では、クラッチヨーク41が、第1付勢部材44の付勢力によって、第1ヨーク位置に戻され、クラッチ機構19を再び連結状態に容易に復帰させることができる。
【0081】
なお、クラッチヨーク41が、中間ヨーク位置を超えて、第2ヨーク位置へ移動する際、中間ヨーク位置に向けて付勢する第2付勢部材45によって、付勢力が付加されるので、中間ヨーク位置に到達したことをユーザが容易に認識することができる。
【0082】
また、クラッチヨーク41が、中間ヨーク位置を超えて、第2ヨーク位置へ移動すると、トグル機構47によって、クラッチヨーク41が第2ヨーク位置へ付勢されることで、クラッチヨーク41が第1ヨーク位置に復帰不能な状態で、クラッチ機構19を解除状態に制御する。その際、トグル機構47の振分変化点を、中間ヨーク位置と第2ヨーク位置の間、すなわち、中間ヨーク位置を超えた位置にしたため、ユーザが意図しないクラッチ機構19の連結状態への復帰や、ユーザが意図しないクラッチ機構19の解除状態への移行を防止することができる。
【0083】
また、別の側面として、クラッチ操作部材17を、第1レバー位置から中間レバー位置に移動するまでの間、クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰可能な状態で、クラッチ機構19を連結状態に制御する。クラッチ操作部材17が中間レバー位置に達すると、クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を解除状態に制御する。すなわち、クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰可能な状態のままで、クラッチ機構19を解除状態に制御し、中間レバー位置では、クラッチ操作部材17が、レバー付勢部材(本実施例においては第1付勢部材44と兼用)の付勢力によって、第1レバー位置に戻され、クラッチ機構19を再び連結状態に容易に復帰させることができる。
【0084】
クラッチ操作部材17が、中間レバー位置を超えて、第2レバー位置へ移動すると、トグル機構47によって、クラッチ操作部材17が第2レバー位置へ付勢されることで、クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰不能な状態で、クラッチ機構19を解除状態に制御する。その際、トグル機構47の振分変化点を、中間レバー位置と第2レバー位置の間、すなわち、中間レバー位置を超えた位置にしたため、ユーザが意図しないクラッチ機構19の連結状態への復帰や、ユーザが意図しないクラッチ機構19の解除状態への移行を防止することができる。
【0085】
なお、この別の側面の実施例においても、「クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰不能な状態」とは、「完全な復帰不能の状態」を示すものではなく、クラッチ復帰機構48による操作、すなわち、ハンドル2を糸巻取方向に回転させることによって、クラッチ復帰機構48が動作し、クラッチ操作部材17が第1レバー位置に復帰するということは、言うまでもなく、可能である。
【0086】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0087】
クラッチカム40及びクラッチヨーク41の構成は、変更されてもよい。複数の係合部41c及び複数のカム面40cの数は変更されてもよい。第1ガイド軸52及び第3ガイド軸54の一方は、省略されてもよい。第1付勢部材44及び第3付勢部材46の一方は、省略されてもよい。
【0088】
第2付勢部材45の構成は変更されてもよい。
図11に示すように、第1ガイド軸52に第2付勢部材145aが配置されてもよい。第2付勢部材145aは、第1付勢部材44の自由長よりも短い自由長を有する。第1付勢部材44は、第2付勢部材145aの内側に配置されている。同様に、第3ガイド軸54に第2付勢部材145bが配置されてもよい。第2付勢部材145bは、第3付勢部材46の自由長よりも短い自由長を有する。第3付勢部材46は、第2付勢部材145bの内側に配置されている。第2付勢部材145a,145bは、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置から第2ヨーク位置までの範囲内にあるときのみクラッチヨーク41を中間ヨーク位置に向けて付勢する。第2付勢部材145a,145bの付勢力は、クラッチヨーク41が中間ヨーク位置に到達するまでクラッチヨーク41に作用しない。
【0089】
本実施例においては、クラッチ操作部材17を第1レバー位置に向けて付勢するレバー付勢部材を、クラッチヨーク41を第1ヨーク位置に向けて付勢する第1付勢部材44と兼用としたが、クラッチ操作部材17を第1レバー位置に向けて付勢するものであれば良く、例えば、クラッチ復帰機構48の付勢力で、クラッチ操作部材17を第1レバー位置に向けて付勢するものでも良く、また、連結部材42を回転軸Xまわりに付勢するコイルバネで、クラッチ操作部材17を第1レバー位置に向けて付勢するものでもよい。
【符号の説明】
【0090】
2 ハンドル
4 スプール
17 クラッチ操作部材(レバー部の一例)
19 クラッチ機構
20 クラッチ制御装置
40 クラッチカム
41 クラッチヨーク
41g 凹部
43 ガイド部材
44 第1付勢部材
45 第2付勢部材
46 第3付勢部材
47 トグル機構
49 押え板
52 第1ガイド軸
52a 大径部
52b 小径部
52c 段差部
53 第2ガイド軸
54 第3ガイド軸