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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081959
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】回転電機の制御装置、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 27/08 20060101AFI20240612BHJP
   H02M 7/48 20070101ALI20240612BHJP
   H02P 21/06 20160101ALI20240612BHJP
【FI】
H02P27/08
H02M7/48 E
H02P21/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195586
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】504139662
【氏名又は名称】国立大学法人東海国立大学機構
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100207859
【弁理士】
【氏名又は名称】塩谷 尚人
(72)【発明者】
【氏名】今井 幸司
(72)【発明者】
【氏名】青木 康明
(72)【発明者】
【氏名】道木 慎二
(72)【発明者】
【氏名】阪内 亮介
【テーマコード(参考)】
5H505
5H770
【Fターム(参考)】
5H505AA03
5H505AA16
5H505AA18
5H505BB05
5H505CC04
5H505DD03
5H505EE41
5H505GG02
5H505GG04
5H505HA09
5H505HA10
5H505HB01
5H505JJ03
5H505KK05
5H505LL01
5H505LL22
5H505LL41
5H505LL58
5H770AA19
5H770BA01
5H770CA06
5H770DA03
5H770DA22
5H770DA30
5H770DA41
5H770HA02W
5H770HA02Y
5H770HA02Z
5H770HA03W
5H770HA07Z
5H770JA11W
(57)【要約】
【課題】デッドタイムの影響を考慮したモデル予測制御を行うことができる回転電機の制御装置及びプログラムを提供する。
【解決手段】制御装置は、インバータが有する上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる場合に設定されるデッドタイムに基づいて、インバータの入力側コンデンサに流れるリップル電流を反映したインバータのスイッチングパターンを決定する。制御装置は、インバータのスイッチングパターンを、決定したスイッチングパターンとすべく、上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイオードが逆並列接続された上,下アームスイッチ(SUH~SWL,SuAH~SwBL)を有する電力変換回路(20,120A~120C)と、
前記電力変換回路が電気的に接続された電機子巻線(11U~11W,UA~WB)を有する回転電機(10,100)と、
前記電力変換回路の入力側に設けられたコンデンサ(21)と、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置(50)において、
前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる場合に設定されるデッドタイムに基づいて、前記コンデンサに流れるリップル電流を反映した前記電力変換回路のスイッチングパターンを決定する決定部と、
前記電力変換回路のスイッチングパターンを、前記決定部により決定されたスイッチングパターンとすべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
を備える回転電機の制御装置。
【請求項2】
前記決定部は、
1制御周期を複数に分割した予測周期それぞれにおいて前記電力変換回路のスイッチングモードを複数通りに仮設定し、
各予測周期で仮設定したスイッチングモードそれぞれについて、前記回転電機の制御量及び前記コンデンサに流れる電流を予測する予測処理を行い、
各予測周期で仮設定したスイッチングモードの組み合わせであるスイッチングパターンそれぞれについて、予測した前記制御量とその指令値との偏差、及び予測した前記コンデンサに流れる電流を入力パラメータとする評価関数を算出し、算出した前記評価関数に基づいて、次回の制御周期において採用するスイッチングパターンを決定し、
前記決定部は、
スイッチングモードを仮設定した後、前記予測処理の実行に先立ち、各相の中に、スイッチングモードの切り替えに伴い、前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる相があると判定した場合、前記切り替えられる相において、切り替え前後のスイッチングモードの間にデッドタイムを設定し、
各相のうちデッドタイムを設定した相において、スイッチングモードが切り替えられたとしても相電圧のレベルが変化しないと判定した場合、切り替え前のスイッチングモードに対応する予測周期の終了タイミングをデッドタイムの長さ(Tdt)だけ遅らせる、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項3】
前記決定部は、設定したデッドタイムにおける前記電機子巻線の流通電流の方向を判定し、判定した方向に基づいて、相電圧のレベルが変化するか否かを判定する、請求項2に記載の回転電機の制御装置。
【請求項4】
前記電力変換回路(120A~120C)は、複数であり、
前記コンデンサは、前記各電力変換回路に共通のコンデンサであり、
前記決定部は、
前記電機子巻線に印加する指令電圧ベクトル(VtrA~VtrC)に基づいて、規定周期(Ts/2,Ts)における前記各電力変換回路のスイッチングパターンを設定し、
前記各電力変換回路のうち一部の電力変換回路を算出対象回路(120A)とし、前記算出対象回路のスイッチングパターンを対象パターン(VtA)とする場合、設定した前記対象パターンを構成する各スイッチングモードのうち、一部のスイッチングモードの切り替えタイミングの候補タイミングを複数設定し、前記各候補タイミングを設定する場合における前記コンデンサのリップル電流を評価するための評価関数を算出する関数算出処理を行い、
算出した前記各評価関数に基づいて、前記規定周期における前記対象パターンを決定し、
前記各電力変換回路のうち前記算出対象回路以外の電力変換回路を非対象回路(120B,120C)とし、前記非対象回路のスイッチングパターンを基準パターンとする場合、前記スイッチ制御部は、前記規定周期における前記非対象回路のスイッチングパターンを、設定した前記基準パターンにするように前記非対象回路が有する前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行い、前記規定周期における前記算出対象回路のスイッチングパターンを、決定した前記対象パターンにするように前記算出対象回路が有する前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行い、
前記決定部は、
前記指令電圧ベクトルに基づいてスイッチングパターンを設定した後、前記候補タイミングの設定に先立ち、各相の中に、前記基準パターンを構成するスイッチングモードの切り替えに伴い、前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる相があると判定した場合、前記切り替えられる相において、切り替え前後のスイッチングモードの間に予測周期よりも短いデッドタイムを設定し、
前記関数算出処理において、前記基準パターンを構成するスイッチングモードであって設定したデッドタイムを含むスイッチングモードが切り替えられるタイミングに対応するタイミングを前記候補タイミングに設定する、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項5】
前記決定部は、前記関数算出処理において、前記基準パターンを構成する各スイッチングモードの切り替えタイミングの中から前記候補タイミングを設定する、請求項4に記載の回転電機の制御装置。
【請求項6】
前記決定部は、前記関数算出処理において、複数の前記候補タイミングの中に、前記電機子巻線に印加する電圧ベクトルを前記指令電圧ベクトルにできなくなる候補タイミングがある場合、前記指令電圧ベクトルにできなくなる候補タイミングに対応する前記評価関数の算出を実行しない、請求項4又は5に記載の回転電機の制御装置。
【請求項7】
前記決定部は、
前記規定周期において、前記指令電圧ベクトルを挟む3つ以上の有効電圧ベクトルの組み合わせからなるスイッチングパターンを設定し、
前記関数算出処理において、前記規定周期において最初に出現する有効電圧ベクトルの出力終了タイミングを探索対象として、前記候補タイミングを設定する、請求項4又は5に記載の回転電機の制御装置。
【請求項8】
前記決定部は、
1制御周期を複数に分割した予測周期それぞれにおいて前記電力変換回路のスイッチングモードを複数通りに仮設定し、
各予測周期で仮設定したスイッチングモードそれぞれについて、前記回転電機の制御量及び前記コンデンサに流れる電流を予測する予測処理を行い、
各予測周期で仮設定したスイッチングモードの組み合わせであるスイッチングパターンそれぞれについて、予測した前記制御量とその指令値との偏差、及び予測した前記コンデンサに流れる電流を入力パラメータとする評価関数を算出し、算出した前記評価関数に基づいて、次回の制御周期におけるスイッチングパターンを規定する2値信号である指令信号(gu*,gv*,gw*)を生成し、
前記指令信号の切り替わりタイミングの直後にデッドタイムが設定されると仮定した場合において、前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられたときに相電圧のレベルが変化しないデッドタイムに対応する前記指令信号の切り替わりタイミングをデッドタイムの長さだけ早めた信号を、補償後信号(gu**,gv**,gw**)として生成し、
前記補償後信号に基づいて、前記上,下アームスイッチのオン指令及びオフ指令を規定する駆動信号(gUH~gWL)を生成する、請求項1に記載の回転電機の制御装置。
【請求項9】
ダイオードが逆並列接続された上,下アームスイッチ(SUH~SWL,SuAH~SwBL)を有する電力変換回路(20,120A~120C)と、
前記電力変換回路が電気的に接続された電機子巻線(11U~11W,UA~WB)を有する回転電機(10,100)と、
前記電力変換回路の入力側に設けられたコンデンサ(21)と、
コンピュータ(50a)と、を備えるシステムに適用されるプログラムにおいて、
前記コンピュータに、
前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる場合に設定されるデッドタイムに基づいて、前記コンデンサに流れるリップル電流を反映した前記電力変換回路のスイッチングパターンを決定する決定処理と、
前記電力変換回路のスイッチングパターンを、前記決定処理により決定されたスイッチングパターンとすべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う処理と、
を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機の制御装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に記載されているように、上,下アームスイッチを有する電力変換回路と、電力変換回路が電気的に接続された電機子巻線を有する回転電機と、電力変換回路の入力側に設けられたコンデンサとを備えるシステムが知られている。このシステムは、回転電機の制御量を指令値に制御するために上,下アームスイッチのスイッチング制御を行う制御装置を備えている。
【0003】
コンデンサに流れるリップル電流を低減するために、制御装置は、モデル予測制御(MPC)に基づいて、次回の制御周期において採用するスイッチングパターンを決定する。詳しくは、制御装置は、1制御周期を複数に分割した各予測周期において、電力変換回路のスイッチングモードを複数通りに設定する。これにより、1制御周期におけるスイッチングモードの組み合わせであるスイッチングパターンが複数通りに設定される。
【0004】
制御装置は、スイッチングパターンを複数通りに設定する場合において、制御量と指令値との偏差、及びコンデンサに流れる電流とを入力パラメータとする評価関数を算出する。制御装置は、設定した各スイッチングパターンに対応する評価関数のうち、値が最も小さい評価関数に対応するスイッチングパターンを、次回の制御周期において採用するスイッチングパターンとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2021-40423号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電力変換回路の各相において、上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる場合には、通常、デッドタイムが設定される。このデッドタイムの影響を考慮したモデル予測制御が望まれている。
【0007】
本発明は、デッドタイムの影響を考慮したモデル予測制御を行うことができる回転電機の制御装置及びプログラムを提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ダイオードが逆並列接続された上,下アームスイッチを有する電力変換回路と、
前記電力変換回路が電気的に接続された電機子巻線を有する回転電機と、
前記電力変換回路の入力側に設けられたコンデンサと、を備えるシステムに適用される回転電機の制御装置において、
前記上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる場合に設定されるデッドタイムに基づいて、前記コンデンサに流れるリップル電流を反映した前記電力変換回路のスイッチングパターンを決定する決定部と、
前記電力変換回路のスイッチングパターンを、前記決定部により決定されたスイッチングパターンとすべく、前記上,下アームスイッチのスイッチング制御を行うスイッチ制御部と、
を備える。
【0009】
本発明によれば、デッドタイムの影響を考慮したモデル予測制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る回転電機の制御システムの全体構成図。
図2】制御装置の処理を示す機能ブロック図。
図3】上,下アームスイッチの駆動状態、相電流の流通方向及び相電圧レベルの関係を示すタイムチャート。
図4】相電流の流通態様及び相電圧レベルの関係を示す図。
図5】相電流の流通態様及び相電圧レベルの関係を示す図。
図6】相電流の流通態様及び相電圧レベルの関係を示す図。
図7】相電流の流通態様及び相電圧レベルの関係を示す図。
図8】1制御周期におけるデッドタイムを含むスイッチングパターン、各相のスイッチの駆動状態及び各相電圧を示す図。
図9】電圧ベクトルを示す図。
図10】電圧ベクトル及び各相のスイッチングモード等の関係を示す図。
図11】1制御周期におけるデッドタイムを含むスイッチングパターン、各相のスイッチの駆動状態及び各相電圧を示す図。
図12】d,q軸電流及びコンデンサ電流の予測処理の手順を示すフローチャート。
図13】第2実施形態に係る制御システムの全体構成図。
図14】制御装置の処理を示す機能ブロック図。
図15】スイッチングパターンを定める電圧ベクトルの一例を示す図。
図16】第1,第2インバータのスイッチングパターンを示す図。
図17】基準となる第2インバータのスイッチングパターンの変更態様の一例を示す図。
図18】第0電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図19】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図20】第7電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図21】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図22】第1インバータ電流、第2インバータ電流及びインバータ和電流の推移を示すタイムチャート。
図23】モデル予測制御に基づく回転電機のトルク制御の手順を示すフローチャート。
図24】評価関数算出処理の手順を示すフローチャート。
図25】サブルーチンAの手順を示すフローチャート。
図26】サブルーチンBの手順を示すフローチャート。
図27】第2実施形態の変形例1に係る、モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図28】第2実施形態の変形例1に係る、モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図29】第2実施形態の変形例2に係る評価関数算出処理の手順を示すフローチャート。
図30】サブルーチンAの手順を示すフローチャート。
図31】サブルーチンBの手順を示すフローチャート。
図32】第2実施形態の変形例3に係るスイッチングパターンを定める電圧ベクトルの一例を示す図。
図33】第0電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図34】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図35】第7電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図36】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図37】第2実施形態の変形例4に係るスイッチングパターンを定める電圧ベクトルの一例を示す図。
図38】第0電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図39】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図40】第7電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図41】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図42】第2実施形態の変形例5に係るスイッチングパターンを定める電圧ベクトルの一例を示す図。
図43】第7電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図44】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図45】第2実施形態の変形例6に係るスイッチングパターンを定める電圧ベクトルの一例を示す図。
図46】第1電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図47】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図48】第2実施形態の変形例7に係る制御システムの全体構成図。
図49】第0電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図50】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図51】第7電圧ベクトルの終了タイミングをモデル予測制御の探索対象として、複数の候補タイミングが設定されることを示す図。
図52】モデル予測制御により決定された第1インバータのスイッチングパターン等を示す図。
図53】第3実施形態に係る制御装置の処理を示す機能ブロック図。
図54】デッドタイム補償前後の駆動指令の推移を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を参照しながら、複数の実施形態を説明する。複数の実施形態において、機能的に及び/又は構造的に対応する部分及び/又は関連付けられる部分には同一の参照符号、又は百以上の位が異なる参照符号が付される場合がある。対応する部分及び/又は関連付けられる部分については、他の実施形態の説明を参照することができる。
【0012】
<第1実施形態>
以下、本発明に係る制御装置を具体化した第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0013】
図1に示すように、制御システムは、回転電機10及びインバータ20を備えている。回転電機10は、ブラシレスの同期機であり、本実施形態では永久磁石同期機である。回転電機10は、ロータ12と、電機子巻線であるU,V,W相巻線11U,11V,11Wとを備えている。
【0014】
回転電機10は、インバータ20を介して直流電源としての蓄電池30に接続されている。蓄電池30は、充放電可能な2次電池であり、例えばリチウムイオン蓄電池又はニッケル水素蓄電池である。
【0015】
インバータ20は、上アームスイッチSUH,SVH,SWHと下アームスイッチSUL,SVL,SWLとの直列接続体を備えている。U相上,下アームスイッチSUH,SULの接続点には、U相巻線11Uの第1端が接続されている。V相上,下アームスイッチSVH,SVLの接続点には、V相巻線11Vの第1端が接続されている。W相上,下アームスイッチSWH,SWLの接続点には、W相巻線11Wの第1端が接続されている。U,V,W相巻線11U,11V,11Wの第2端は、中性点で接続されている。本実施形態において、誘導性負荷であるU,V,W相巻線11U,11V,11Wは、電気角で互いに120°ずれている。
【0016】
本実施形態において、各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLは、電圧制御形の半導体スイッチング素子であり、より具体的にはNチャネルMOSFETである。各スイッチSUH,SUL,SVH,SVL,SWH,SWLには、ボディダイオードが内蔵されている。
【0017】
インバータ20は、その入力側に、インバータ20の入力電圧を平滑化するコンデンサ21を備えている。コンデンサ21の高電位側端子は、バスバー等の導電部材で構成された長尺状の高電位側電気経路31Hに接続されている。コンデンサ21の低電位側端子は、バスバー等の導電部材で構成された長尺状の低電位側電気経路31Lに接続されている。
【0018】
高電位側電気経路31Hには、蓄電池30の正極端子が接続されている。また、高電位側電気経路31Hにおいて、コンデンサ21との接続点に対して蓄電池30側とは反対側には、上アームスイッチSUH~SWHのドレインが接続されている。
【0019】
低電位側電気経路31Lには、蓄電池30の負極端子が接続されている。また、低電位側電気経路31Lにおいて、コンデンサ21との接続点に対して蓄電池30側とは反対側には、下アームスイッチSUL~SWLのソースが接続されている。
【0020】
制御システムは、電流検出部40及び角度検出部41を備えている。電流検出部40は、各相巻線11U,11V,11Wに流れる相電流のうち、少なくとも2相分の電流を検出する。本実施形態では、インバータ20から巻線へと向かう方向の相電流検出値を正とする。角度検出部41は、例えばレゾルバ又はホール素子で構成され、ロータ12の回転角(電気角)を検出する。
【0021】
電流検出部40及び角度検出部41の検出値は、制御システムに備えられる制御装置50に入力される。制御装置50は、マイコン50aを主体として構成され、マイコン50aは、CPUを備えている。マイコン50aが提供する機能は、実体的なメモリ装置に記録されたソフトウェアおよびそれを実行するコンピュータ、ソフトウェアのみ、ハードウェアのみ、あるいはそれらの組合せによって提供することができる。例えば、マイコン50aがハードウェアである電子回路によって提供される場合、それは多数の論理回路を含むデジタル回路、又はアナログ回路によって提供することができる。例えば、マイコン50aは、自身が備える記憶部としての非遷移的実体的記録媒体(non-transitory tangible storage medium)に格納されたプログラムを実行する。プログラムには、例えば、図12等に示す処理のプログラムが含まれる。プログラムが実行されることにより、プログラムに対応する方法が実行される。記憶部は、例えば不揮発性メモリである。なお、記憶部に記憶されるプログラムは、OTA(Over The Air)等、インターネット等のネットワークを介して更新可能である。
【0022】
制御装置50は、回転電機10の制御量を指令値にフィードバック制御すべく、インバータ20が有する各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。本実施形態において、制御量は電気角速度(回転速度)であり、指令値は指令角速度ω*である。
【0023】
制御装置50は、各相巻線11U~11Wに印加される電圧ベクトルが、電気角速度を指令角速度ω*に制御するための指令電圧ベクトルVtrになるように、インバータ20の各スイッチSUH~SWLのスイッチング制御を行う。これにより、互いに120度ずれた正弦波状の相電流が各相巻線11U,11V,11Wに流れる。
【0024】
続いて、図2のブロック図を用いて、制御装置50の処理について詳しく説明する。なお、本実施形態では、制御装置50を構成する制御系として、制御量が電気角速度(回転速度)である速度制御系を例にして説明するがこれに限らず、例えば、制御量がトルクであるトルク(電流)制御系であってもよい。
【0025】
速度偏差算出部51は、指令角速度ω*から電気角速度ωeを減算することにより、速度偏差Δωを算出する。電気角速度ωeは、電気角θeに基づいて速度算出部52により算出される。
【0026】
速度制御器53は、速度偏差Δωを0にフィードバック制御するための操作量として、回転電機10の指令トルクTrq*を算出する。なお、速度制御器53におけるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0027】
電流変換部54は、電気角θeと、電流検出部40により検出された相電流とに基づいて、3相固定座標系であるUVW座標系におけるU,V,W相電流を、2相回転座標系であるdq座標系におけるd軸電流Idr及びq軸電流Iqrに変換する。
【0028】
指令電流設定部55は、指令トルクTrq*に基づいて、d軸指令電流Id*と、q軸指令電流Iq*とを設定する。
【0029】
予測制御部56は、1制御周期毎に、1制御周期を構成する複数の予測周期それぞれで用いる電圧ベクトルを決定する。電圧ベクトルにより、各相の上,下アームスイッチの駆動状態を示すスイッチングモードが定まる。予測制御部56は、1制御周期毎に、決定した各予測周期の電圧ベクトルを実現するためのスイッチングパターンを出力する。詳しくは、予測制御部56は、スイッチングパターンを規定するU相上,下アーム駆動信号gUH,gUL、V相上,下アーム駆動信号gVH,gVL及びW相上,下アーム駆動信号gWH,gWLを出力する。各駆動信号は、スイッチのオン指令及びオフ指令からなる。
【0030】
予測制御部56は、デッドタイムを考慮したスイッチングパターンを決定する。以下、U相を例にして、この決定方法について説明する。
【0031】
図3は、U相上アーム駆動信号gUH及びU相下アーム駆動信号gULの推移を示す。U相上,下アームスイッチSUH,SULの上下アーム短絡の発生を防止するために、デッドタイムが設定される。予測制御部56は、図3に示すように、上,下アーム駆動信号gUH,gULのうち、一方の駆動信号がオフ指令に切り替えられるタイミングからデッドタイムの長さTdtだけ経過したタイミングを、他方の駆動信号がオン指令に切り替えられるタイミングとして設定する。図3に示す例では、駆動信号がオン指令に切り替えられてからスイッチが実際にオンに切り替えられるまでの遅延時間、及び駆動信号がオフに切り替えられてからスイッチが実際にオフに切り替えられるまでの遅延時間が無視されている。
【0032】
時刻t1においてU相上アームスイッチSUHがオフに切り替えられ、時刻t1からデッドタイムの長さTdtだけ経過した時刻t2において、U相下アームスイッチSULがオンに切り替えられる。その後、時刻t3において、U相下アームスイッチSULがオフに切り替えられ、時刻t3からデッドタイムの長さTdtだけ経過した時刻t4において、U相上アームスイッチSUHがオンに切り替えられる。
【0033】
デッドタイムにおいては、U相上,下アームスイッチSUH,SULがオフになっているものの、U相巻線11Uに流れる電流の極性に応じて、U相電圧Vuのレベルが変化する。以下、U相巻線11Uの両端のうちインバータ20側から中性点側に流れる相電流を正とする。
【0034】
まず、U相電流Iuが正の場合(Iu>0)について説明する。
【0035】
U相下アームスイッチSULがオフされた状態でU相上アームスイッチSUHがオンに切り替えられる時刻t1の直前においては、図4の上側に示すように、U相上アームスイッチSUHのうちボディダイオードを経由しない経路からU相巻線11Uへと向かう方向に電流が流れる。このため、U相電圧VuはHレベル(Vu≒Vdc)となる。Vdcは、蓄電池30の電圧を示す。
【0036】
その後、時刻t1直後のデッドタイムにおいては、図4の下側に示すように、U相下アームスイッチSULのボディダイオードからU相巻線11Uへと向かう方向に還流電流が流れる。このため、U相電圧VuはLレベル(Vu≒0)となる。
【0037】
その後、U相下アームスイッチSULがオンに切り替えられる。U相上アームスイッチSUHがオフされた状態でU相下アームスイッチSULがオフに切り替えられる時刻t3の直前においては、図5の上側に示すように、U相下アームスイッチSULのうちボディダイオードを経由しない経路からU相巻線11Uへと向かう方向に電流が流れる。このため、U相電圧VuはLレベルとなる。
【0038】
その後、時刻t3直後のデッドタイムにおいては、図5の下側に示すように、U相下アームスイッチSULのボディダイオードからU相巻線11Uへと向かう方向に還流電流が流れる。このため、U相電圧VuはLレベルに維持される。
【0039】
続いて、U相電流Iuが負の場合(Iu<0)について説明する。
【0040】
図3に示すように、時刻t1の直前においては、U相上アームスイッチSUHがオンされるとともにU相下アームスイッチSULがオフされている。時刻t1の直前においては、図6の上側に示すように、U相巻線11UからU相上アームスイッチSUHのうちボディダイオードを経由しない経路へと向かう方向に電流が流れる。このため、U相電圧VuはHレベルとなる。
【0041】
その後、時刻t1直後のデッドタイムにおいては、図6の下側に示すように、U相巻線11UからU相下アームスイッチSULのボディダイオードへと向かう方向に還流電流が流れる。このため、U相電圧VuはHレベルに維持される。
【0042】
その後、U相下アームスイッチSULがオンに切り替えられる。図3の時刻t3の直前においては、図7の上側に示すように、U相巻線11UからU相下アームスイッチSULのうちボディダイオードを経由しない経路へと向かう方向に電流が流れる。このため、U相電圧VuはLレベルとなる。
【0043】
その後、時刻t3直後のデッドタイムにおいては、図7の下側に示すように、U相巻線11UからU相下アームスイッチSULのボディダイオードへと向かう方向に還流電流が流れる。このため、U相電圧VuはHレベルになる。
【0044】
このように、相電流の極性に応じて、デッドタイム中の相電圧のレベルは変化する。この変化を考慮したスイッチングパターンを決定する。以下では、説明の便宜上、1予測周期の初期値Tpは、1制御周期の長さTcを4等分した期間に設定されている。
【0045】
図8は、1制御周期を構成する各予測周期における電圧ベクトル、各相上,下アームスイッチの駆動状態、及び各相電圧Vu,Vv,Vwの推移を示す。各相上,下アームスイッチの駆動状態において、Hは、上アームスイッチがオンされてかつ下アームスイッチがオフされていることを示し、Lは、上アームスイッチがオフされてかつ下アームスイッチがオンされていることを示す。また、図8において、Tn(i)は、1制御周期が開始されてからi番目の予測周期の開始タイミングまでの期間の長さを示す。また、図8には、U相電流Iu及びW相電流Iwが正であって、かつ、V相電流Ivが負である場合を示す。
【0046】
図8に示す例では、予測制御部56は、1つ目の予測周期において第2電圧ベクトルV2を仮設定し、2つ目の予測周期において第3電圧ベクトルV3を仮設定し、3つ目の予測周期において第4電圧ベクトルV4を仮設定し、4つ目の予測周期において第3電圧ベクトルV3を仮設定する。図9及び図10に、電圧ベクトルを示す。第1~第6電圧ベクトルV1~V6は有効電圧ベクトル(非零電圧ベクトル)であり、第0,第7電圧ベクトルV0,V7は無効電圧ベクトル(零電圧ベクトル)である。図10に、各電圧ベクトルとスイッチングパターンとの関係を示す。
【0047】
予測制御部56は、U,V,W相の中に、電圧ベクトル(スイッチングモード)の切り替えに伴い、上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる相があると判定した場合、上記切り替えられる相において、切り替え前後のスイッチングモードの間に予測周期の長さよりも短いデッドタイムを設定する。図8に示す例では、予測制御部56は、1つ目の予測周期から2つ目の予測周期に移行する場合においてU相にデッドタイムを設定し、2つ目の予測周期から3つ目の予測周期に移行する場合においてW相にデッドタイムを設定し、3つ目の予測周期から4つ目の予測周期に移行する場合においてW相にデッドタイムを設定する。
【0048】
図8に示す例では、予測制御部56は、各予測周期におけるスイッチングモードを仮設定した後、各相のうちデッドタイムを設定した相において、スイッチングモードの切り替えに伴って相電圧のレベルがデッドタイム中に変化すると判定する。この場合、予測制御部56は、仮設定した当初のスイッチングモードのまま、電流予測処理に移行する。
【0049】
一方、図11に示す例では、予測制御部56は、1つ目の予測周期において第3電圧ベクトルV3を仮設定し、2つ目の予測周期において第4電圧ベクトルV4を仮設定し、3つ目の予測周期において第7電圧ベクトルV7を仮設定し、4つ目の予測周期において第6電圧ベクトルV6を仮設定する。
【0050】
予測制御部56は、1つ目の予測周期から2つ目の予測周期に移行する場合においてW相にデッドタイムを設定し、2つ目の予測周期から3つ目の予測周期に移行する場合においてU相にデッドタイムを設定し、3つ目の予測周期から4つ目の予測周期に移行する場合においてV相にデッドタイムを設定する。
【0051】
図11に示す例では、予測制御部56は、各予測周期におけるスイッチングモードを仮設定した後、デッドタイムを設定したU,V,W相において、スイッチングモードの切り替えに伴って相電圧のレベルがデッドタイム中に変化しないと判定する。この場合、予測制御部56は、切り替え前のスイッチングモードに対応する予測周期の終了タイミングをデッドタイムの長さTdtだけ長くする。
【0052】
詳しくは、予測制御部56は、第2電圧ベクトルV2とされる1つ目の予測周期の終了タイミングをデッドタイムの長さTdtだけ遅らせる。これにより、1つ目の予測周期の長さは、Tpから「Tp+Tdt」に長くなる。
【0053】
予測制御部56は、第4電圧ベクトルV4とされる2つ目の予測周期の終了タイミングをデッドタイムの長さTdtだけ遅らせ、第7電圧ベクトルV7とされる3つ目の予測周期の終了タイミングをデッドタイムの長さTdtだけ遅らせる。ただし、1,2つ目の予測周期の終了タイミングも遅らされているため、2,3つ目の予測周期の長さは変化しない。
【0054】
予測制御部56は、各予測周期のうち最後である4つ目の予測周期が、1制御周期に収まらないと判定する。この場合、予測制御部56は、1制御周期の長さTc(=4Tp)から、更新後の1~3つ目の予測周期の合計長さ「3Tp+Tdt」を差し引いた値を、4つ目の予測周期の長さ「Tp-Tdt」として設定する。つまり、4つ目の予測周期の長さが短縮される。このように更新されたスイッチングモードにより電流予測処理が実行される。
【0055】
続いて、図12を用いて、予測制御部56により実行される電流予測処理について説明する。
【0056】
ステップS10では、第1変数iを1にする。第1変数iは、1制御周期を構成する各予測周期のうち、何番目の予測周期の終了タイミングにおける予測演算を行っているかを示す変数である。例えば、i=2の場合、2番目の予測周期の終了タイミングにおける予測演算を行っていることを示す。
【0057】
ステップS11では、1制御周期が開始されてからi番目の予測周期の開始タイミングまでの期間の長さT(i)を0とする。0とするのは、i=1の場合、1制御周期の開始タイミングと1番目の予測周期の開始タイミングとが一致するためである。
【0058】
ステップS12では、第2変数jを0にする。第2変数jは、0~7の値をとり、現在選択している電圧ベクトルが第j電圧ベクトルであることを示す変数である。
【0059】
ステップS13では、第1条件及び第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。
【0060】
第1条件は、i-1番目の予測周期で選択した電圧ベクトルからi番目の予測周期で選択した電圧ベクトルへの切り替えに伴い、U,V,W相の中に、上,下アームスイッチのうち一方から他方へとオンされるスイッチが切り替えられる相があるとの条件である。第1条件が成立すると判定した場合、上記切り替えられる相において、図11に例示したように、切り替え前後のスイッチングモードの間に予測周期よりも短いデッドタイムを設定する。
【0061】
第2条件は、U,V,W相のうちデッドタイムを設定した相において、スイッチングモードが切り替えられたとしても相電圧のレベルがデッドタイム中に変化しないとの条件である。第2条件が成立しているか否かは、例えば、i-1番目の予測周期で選択した電圧ベクトル、i番目の予測周期で選択した電圧ベクトル、及び各相電流の流通方向に基づいて判定されればよい。上記流通方向は、例えば、電流検出部40の検出値に基づいて判定されればよい。
【0062】
ちなみに、各予測周期において、電流検出部40の検出値に基づいて上記流通方向が判定されてもよいし、1制御周期の開始時に判定された上記流通方向が1制御周期にわたって用いられてもよい。
【0063】
ステップS13において第1条件及び第2条件の少なくとも一方が成立していないと判定した場合には、ステップS14に進み、時間間隔ΔTを予測周期の初期値Tpに設定する。
【0064】
一方、ステップS13において第1条件及び第2条件の双方が成立していると判定した場合には、ステップS15に進み、時間間隔ΔTを、予測周期の初期値Tpにデッドタイムの長さTdtだけ加算した値とする。
【0065】
ステップS16では、ステップS14又はS15で算出した時間間隔ΔTにTn(i)を加算した値が、1制御周期の長さTcを超えているか否かを判定する。ステップS16の処理は、各予測周期のうち最後の予測周期が、1制御周期に収まるか否かを判定するための処理である。
【0066】
ステップS16において「Tc≧Tn(i)+ΔT」であると判定した場合には、最後の予測周期が1制御周期に収まると判定し、ステップS17に進む。
【0067】
ステップS17では、1制御周期を構成する各予測周期のうち、i番目の予測周期の終了タイミングにおけるd,q軸電流Id(n+i),Iq(n+i)を予測する。詳しくは、下式(eq1)を用いて、d,q軸電流Id(n+i),Iq(n+i)を予測する。
【0068】
【数1】
上式(eq1)において、Rは電機子巻線の巻線抵抗を示し、Ld,Lqはd,q軸インダクタンスを示し、KEは逆起電圧定数を示し、ΔId,ΔIqは、時間間隔ΔTにおけるd,q軸電流の変化量を示す。上式(eq1)に、i-1番目の予測周期の終了タイミングにおけるd,q軸電流Id(n+i-1),Iq(n+i-1)、電気角速度ωe及びd,q軸電圧Vd,Vqを入力することにより、ΔId,ΔIqを算出する。ここで、d,q軸電圧Vd,Vqは、第j電圧ベクトルVj及び電気角θeに基づいて算出されればよい。また、i=1におけるd,q軸電流Id(n),Iq(n)は、電流変換部54により算出されたd,q軸電流が用いられればよい。
【0069】
そして、d,q軸電流Id(n+i),Iq(n+i)を、「Id(n+i)=Id(n+i-1)+ΔId」,「Iq(n+i)=Iq(n+i-1)+ΔIq」により算出すればよい。
【0070】
ステップS18では、i番目の予測周期の終了タイミングにおけるコンデンサ21に流れる電流Ic(n+i)を予測する。詳しくは、まず、蓄電池30に流れる電流である電源電流Idcを算出する。本実施形態では、下式(eq2)を用いて電源電流Idcを算出する。
【0071】
【数2】
上式(eq2)において、d,q軸電圧Vd,Vqは、ステップS12で選択した第j電圧ベクトルVj及び電気角θeに基づいて算出されればよい。なお、電源電流Idcは、蓄電池30から放電される場合を正とする。
【0072】
続いて、ステップS12で仮設定した第j電圧ベクトルVjが有効電圧ベクトルであるか否かを判定する。
【0073】
有効電圧ベクトルであると判定した場合には、コンデンサ21に流れる電流Ic(n+i)を「Ic(n+i)=Iinv-Idc」の関係式を用いて算出する。有効電圧ベクトルとされる期間においては、コンデンサ21から放電される。ここで、コンデンサ電流Icは、コンデンサ21から放電される場合を正とする。また、Iinvは、高電位側電気経路31Hのうちコンデンサ21との接続点よりもインバータ20側に流れる電流であるインバータ電流を示す。インバータ電流Iinvは、高電位側電気経路31Hのうちコンデンサ21との接続点からインバータ20へと流れる方向を正とする。
【0074】
インバータ電流Iinvは、先の図10に示すように、仮設定した電圧ベクトルから定めることができる。例えば、第1電圧ベクトルV1を仮設定した場合、インバータ電流Iinvは「Iu」であるため、インバータ電流Iinvとして、電流検出部40により検出されたU相電流が用いられる。また、例えば、第2電圧ベクトルV2を選択した場合、インバータ電流Iinvは「-Iw」であるため、インバータ電流Iinvとして、電流検出部40により検出されたW相電流に「-1」を乗算した値が用いられる。
【0075】
一方、第j電圧ベクトルVjが無効電圧ベクトルであると判定した場合には、「Ic(n+i)=-Idc」の関係式を用いてコンデンサ電流Ic(n+i)を算出する。無効電圧ベクトルとされる期間においては、コンデンサ21が充電されるため、コンデンサ電流Ic(n+i)が負の値となる。
【0076】
ちなみに、蓄電池30に流れる電流を検出する電源電流検出部が制御システムに備えられる場合、上記電源電流Idcを電源電流検出部の検出値としてもよい。
【0077】
一方、ステップS16において「Tc<Tn(i)+ΔT」であると判定した場合には、最後の予測周期が1制御周期に収まらないと判定し、ステップS19に進む。ステップS19では、1制御周期の長さTcからTn(i)だけ差し引いた値を時間間隔ΔTとして設定する。そして、ステップS17に進む。
【0078】
ステップS20では、第2変数jが7であるか否かを判定する。ステップS20において否定判定した場合には、ステップS21に進み、第2変数jを1インクリメントし、ステップS13に移行する。
【0079】
一方、ステップS20において肯定判定した場合には、ステップS22に進み、第1変数iが1制御周期の分割数を超えているか否かを判定する。この分割数は、図8,11に示す例では4である。
【0080】
ステップS22において否定判定した場合には、ステップS23に進み、第1変数iを1インクリメントし、ステップS24に進む。ステップS24では、次の予測周期の終了タイミングTn(i)を決定し、ステップS12に移行する。一方、ステップS22において肯定判定した場合には、1制御周期において仮設定した複数のスイッチングパターンそれぞれに対応する電流の予測を終了する。
【0081】
ちなみに、各予測周期で仮設定する電圧ベクトルは、V0~V7の8つの電圧ベクトルに限らない。例えば、i番目の予測周期の終了タイミングにおける電流を予測するために、8つの電圧ベクトルのうち、i-1番目で仮設定した電圧ベクトルに隣接する電圧ベクトルのみを仮設定してもよい。例えば、図9及び図10を参照すると、i-1番目で仮設定した電圧ベクトルが第3電圧ベクトルV3である場合、第3電圧ベクトルV3に隣接する電圧ベクトルは、第0,第2,第4電圧ベクトルV0,V2,V4である。
【0082】
予測制御部56は、図12に示す電流予測処理の完了後、1制御周期において仮設定したスイッチングパターンそれぞれについて、下式(eq3)に示す評価関数Jを算出する。
【0083】
【数3】
上式(eq3)において、Widは、d軸指令電流Id*に対するd軸電流予測値の偏差の重み係数を示し、Wiqは、q軸指令電流Iq*に対するq軸電流予測値の偏差の重み係数を示す。Wicはコンデンサ電流の重み係数を示し、IcRMSは、1制御周期におけるコンデンサ電流Icの4つの予測値の実効値を示す。予測制御部56は、算出した各評価関数Jの中から、最も小さい評価関数を選択する。予測制御部56は、選択した評価関数Jに対応する1制御周期分の4つの電圧ベクトルV(n+1)~V(n+4)の組み合わせを、1制御周期におけるスイッチングパターンとして決定する。決定されたスイッチングパターンが、次回の制御周期において用いられる。予測制御部56は、決定したスイッチングパターンに対応する各駆動信号gUH~gWLを生成し、各スイッチSUH~SWLに対して順次出力する。
【0084】
以上詳述した本実施形態によれば、モデル予測制御において、デッドタイムの影響を受けたd,q軸電流及びコンデンサ電流の挙動を正しく予測することができる。これにより、コンデンサ電流の予測精度を高めることができ、コンデンサ21に流れるリップル電流を好適に低減できる。
【0085】
<第1実施形態の変形例>
予測周期の長さがデッドタイムの長さよりも短く設定されていてもよい。
【0086】
<第2実施形態>
以下、第2実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、図13に示すように、制御システムにインバータが2つ備えられている。
【0087】
制御システムは、回転電機100を備えている。回転電機100は、3相2重巻線を有する永久磁石界磁型の同期機である。本実施形態の回転電機100は、永久磁石式の同期機である。回転電機100は、車両の走行動力源となり、駆動輪と動力伝達が可能なロータ102と、図示しないステータとを備えている。ロータ102は、界磁極となる永久磁石を備えている。ステータには、2つの電機子巻線群である第1巻線群110A及び第2巻線群110Bが設けられている。第1,第2巻線群110A,110Bに対して、ロータ102が共通化されている。第1,第2巻線群110A,110Bのそれぞれは、異なる中性点を有する3相巻線からなる。第1巻線群110Aは、電気角で互いに120度ずつずれたU,V,W相巻線UA,VA,WAを有し、第2巻線群110Bは、電気角で互いに120度ずつずれたU,V,W相巻線UB,VB,WBを有している。なお、本実施形態では、第1巻線群110Aと第2巻線群110Bとが同じ構成とされている。具体的には、第1巻線群110Aを構成するU,V,W相巻線UA,VA,WAそれぞれの巻数と、第2巻線群110Bを構成するU,V,W相巻線UB,VB,WBそれぞれの巻数とが等しい。
【0088】
ちなみに、第1巻線群110Aと第2巻線群110Bとの位相差Δθは、例えば、電気角で0度であってもよいし、電気角で30度であってもよい。
【0089】
制御システムは、第1,第2巻線群110A,110Bに対応した第1,第2インバータ120A,120Bと、蓄電池30と、コンデンサ21とを備えている。第1,第2インバータ120A,120Bは、入力される直流電圧を交流電圧に変換して出力する電力変換回路に相当する。第1インバータ120A及び第2インバータ120Bのそれぞれには、共通の蓄電池30が接続されている。
【0090】
第1インバータ120Aは、第1U,V,W相上アームスイッチSuAH,SvAH,SwAHと、第1U,V,W相下アームスイッチSuAL,SvAL,SwALとの直列接続体を備えている。U,V,W相における上記直列接続体の接続点には、第1巻線群110Aを構成するU,V,W相巻線UA,VA,WAが接続されている。本実施形態において、各スイッチSuAH~SwALは、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを備えている。
【0091】
第2インバータ120Bは、第1インバータ120Aと同様に、第2U,V,W相上アームスイッチSuBH,SvBH,SwBHと、第2U,V,W相下アームスイッチSuBL,SvBL,SwBLとの直列接続体を備えている。U,V,W相における上記直列接続体の接続点には、第2巻線群110Bを構成するU,V,W相巻線UB,VB,WBが接続されている。本実施形態において、各スイッチSuBH~SwBLは、NチャネルMOSFETであり、ボディダイオードを備えている。
【0092】
第1インバータ120Aにおいて各上アームスイッチSuAH,SvAH,SwAHの高電位側端子であるドレインには、第1高電位側経路LHAを介して、コンデンサ21の第1端が接続されている。第1インバータ120Aにおいて各下アームスイッチSuAL,SvAL,SwALの低電位側端子であるソースには、第1低電位側経路LLAを介して、コンデンサ21の第2端が接続されている。
【0093】
第2インバータ120Bにおいて各上アームスイッチSuBH,SvBH,SwBHのドレインには、第2高電位側経路LHBを介して、第1高電位側経路LHAの途中部分が接続されている。第2インバータ120Bにおいて各下アームスイッチSuBL,SvBL,SwBLのソースには、第2低電位側経路LLBを介して、第1低電位側経路LLAの途中部分が接続されている。つまり、本実施形態では、各インバータ120A,120Bでコンデンサ21が共通化されている。
【0094】
制御システムは、電圧検出部130、第1電流検出部131A、第2電流検出部131B及び角度検出部41を備えている。電圧検出部130は、コンデンサ21の端子電圧を電源電圧VDCとして検出する。上記各検出部130,131A,131B,41の検出値は、制御装置50に入力される。
【0095】
制御装置50は、第1,第2電流検出部131A,131Bの検出値に基づいて、第1巻線群110Aに流れる3相の電流と、第2巻線群110Bに流れる3相の電流とを取得する。例えば、第1電流検出部131Aは、第1インバータ120Aと第1巻線群110Aとを電気的に接続する導電部材(例えばバスバー)に流れる電流を検出対象とし、第1巻線群110Aに流れる3相電流のうち少なくとも2相分の電流を検出する。また、例えば、第1電流検出部131Aは、第1高電位側経路LHAのうち第2高電位側経路LHBとの接続点よりも第1インバータ120A側に流れる電流を検出する。この場合、制御装置50は、第1電流検出部131Aの検出値と、先の図10に示す第1インバータ120Aのスイッチング状態及び相電流の関係とに基づいて、第1巻線群110Aに流れる相電流を取得する。なお、第2電流検出部131Bについても同様である。
【0096】
制御装置50は、回転電機100の制御量を指令値に制御すべく、入力された検出値に基づいて、第1,第2インバータ120A,120Bの各スイッチのスイッチング制御を行うための駆動信号を生成する。駆動信号がスイッチのゲートに入力されることにより、スイッチがオンオフされる。各相において、上アームスイッチと下アームスイッチとは、デッドタイムを挟みつつ交互にオンされる。本実施形態の制御量はトルクである。図14を用いて、制御装置50により実行される回転電機100のトルク制御について説明する。
【0097】
指令電流設定部60は、指令トルクTrq*に基づいて、第1インバータ120Aに対応する第1d,q軸指令電流IdA*,IqA*と、第2インバータ120Bに対応する第2d,q軸指令電流IdB*,IqB*とを設定する。各指令電流IdA*,IqA*,IdB*,IqB*は、例えば、最小電流最大トルク制御(MTPA)により算出されればよい。
【0098】
第1変換部61Aは、第1電流検出部131Aの検出値と、角度検出部41により検出された電気角θeとに基づいて、3相固定座標系における第1巻線群110AのU,V,W相電流を、2相回転座標系(dq座標系)における第1d軸電流IdAr及び第1q軸電流IqArに変換する。
【0099】
第1電流制御部62Aは、第1d軸電流IdArを第1d軸指令電流IdA*にフィードバック制御するための操作量として、第1d軸指令電圧VdA*を算出する。第1電流制御部62Aは、第1q軸電流IqArを第1q軸指令電流IqA*にフィードバック制御するための操作量として、第1q軸指令電圧VqA*を算出する。なお、第1電流制御部62Aで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0100】
第2変換部61Bは、第2電流検出部131Bの検出値と電気角θeとに基づいて、3相固定座標系における第2巻線群110BのU,V,W相電流を、dq座標系における第2d軸電流IdBr及び第2q軸電流IqBrに変換する。
【0101】
第2電流制御部62Bは、第2d軸電流IdBrを第2d軸指令電流IdB*にフィードバック制御するための操作量として、第2d軸指令電圧VdB*を算出する。第2電流制御部62Bは、第2q軸電流IqBrを第2q軸指令電流IqB*にフィードバック制御するための操作量として、第2q軸指令電圧VqB*を算出する。なお、第2電流制御部62Bで用いられるフィードバック制御は、例えば比例積分制御である。
【0102】
予測制御部63は、算出された各値VdA*,VqA*,IdAr,IqAr,VdB*,VqB*,IdBr,IqBr、及び電気角θe等に基づいて、第1インバータ120Aから第1巻線群110Aに印加する電圧ベクトルを実現するための第1インバータ120Aのスイッチングパターンと、第2インバータ120Bから第2巻線群110Bに印加する電圧ベクトルを実現するための第2インバータ120Bのスイッチングパターンとを決定する。予測制御部63は、次回の規定周期におけるコンデンサ21の電流リップルが小さくなるように、今回の規定周期において、次回の規定周期における第1,第2インバータ120A,120Bのスイッチングパターンを決定する。
【0103】
スイッチングパターンは、先の図9及び図10に示す電圧ベクトルの組み合わせからなる。以降、第1インバータ120Aに対応する電圧ベクトルの符号に添え字Aを付し、第2インバータ120Bに対応する電圧ベクトルの符号に添え字Bを付すことがある。
【0104】
図10の「Iinv」は、インバータに流れる電流である。本実施形態では、図13に示すように、第1高電位側経路LHAのうち第1低電位側経路LLAとの接続点よりも第1インバータ120A側を流れる電流を第1インバータ電流IinvAと称す。また、第2高電位側経路LHBに流れる電流を第2インバータ電流IinvBと称す。各インバータ電流IinvA,IinvBは、コンデンサ21側からインバータ側へと向かう方向に流れる場合の符号を正とする。また、第1インバータ電流IinvA及び第2インバータ電流IinvBの加算値をインバータ和電流Isumと称す。インバータ和電流Isumは、コンデンサ21側からインバータ側へと向かう方向に流れる場合の符号を正とする。
【0105】
図10のインバータ電流Iinvについて、第1インバータ120Aを例にして説明する。第1インバータ120Aから出力される電圧ベクトルが第0,第7電圧ベクトルV0,V7の場合、第1インバータ電流IinvAは0になる。第1インバータ120Aから出力される電圧ベクトルが第1電圧ベクトルV1の場合、第1インバータ電流IinvAは、第1巻線群110AのU相電流と等しくなる。第1インバータ120Aから出力される電圧ベクトルが第4電圧ベクトルV4の場合、第1インバータ電流IinvAは、第1巻線群110AのU相電流と大きさが等しく、かつ、U相電流の流れる向きと逆向きの電流となる。V,W相の有効電圧ベクトルと第1インバータ電流IinvAとの関係も、U相と同様である。
【0106】
予測制御部63は、第2d,q軸指令電圧VdB*,VqB*により定まるdq座標系における第2指令電圧ベクトルVtrBに基づいて、規定周期におけるスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、図15に示すように、6つの有効電圧ベクトルのうち、第2指令電圧ベクトルVtrBを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。図15には、第2指令電圧ベクトルVtrBを挟む2つの有効電圧ベクトルとして、第1,第2電圧ベクトルV1,V2が選択される例を示した。本実施形態では、以降、第2インバータ120B(「非対象回路」に相当)において、第1,第2電圧ベクトルV1,V2及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0107】
図16(b)に、第2インバータ120Bのスイッチングパターン(「基準パターン」に相当)を示す。なお、図16(b)には、2規定周期におけるスイッチングパターンを示す。2規定周期が、各インバータ120A,120Bを構成する各スイッチの1スイッチング周期に相当する。キャリア信号が用いられる場合、1スイッチング周期は、キャリア信号の1周期である。ちなみに、規定周期は、例えば、1スイッチング周期よりも長い周期に設定されてもよい。
【0108】
1つの規定周期の長さをTs/2とし、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルの規定周期における合計出力期間を「TE1+TE2」とする。予測制御部63は、2つの無効電圧ベクトルV0,V7の規定周期における合計出力期間Tzを「Ts/2-(TE1+TE2)」に設定する。
【0109】
予測制御部63は、第2インバータ120Bのスイッチングパターンを、上述した方法で決定したスイッチングパターンにするように、第2インバータ120Bを構成する各スイッチSuBH~SwBLのスイッチング制御を行う。
【0110】
予測制御部63は、第1d,q軸指令電圧VdA*,VqA*により定まるdq座標系における第1指令電圧ベクトルVtrAに基づいて、規定周期におけるスイッチングパターン(「対象パターン」に相当)を決定する。本実施形態では、第2インバータ120Bの場合と同様に、第1指令電圧ベクトルVtrAを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する(図15参照)。図16(a)に、第1インバータ120Aのスイッチングパターンを示す。本実施形態では、以降、第1インバータ120A(「算出対象回路」に相当)において、第1,第2電圧ベクトルV1,V2及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0111】
図16に示すように、各インバータ120A,120BのスイッチングパターンVtA,VtBは、第1インバータ120Aの無効電圧ベクトルと、第2インバータ120Bの無効電圧ベクトルとが交互に出現するスイッチングパターンになっている。具体的には、第1,第2インバータ120A,120BのスイッチングパターンVtA,VtBの開始タイミングは、1/2規定周期ずつずれている。これは、コンデンサ21の電流リップルを低減するためである。電流リップルは、例えば、規定周期においてコンデンサ21に流れる電流の最大値と最小値との差で定量化される値である。
【0112】
予測制御部63は、第2インバータ120Bのスイッチングパターンを決定した後、このスイッチングパターンを規定する各電圧ベクトルの終了タイミングのうち、特定条件が成立するタイミングをデッドタイムの長さTdtだけ遅らせる。特定条件は、先の図12のステップS13で説明した第1,第2条件に準じた条件である。以下、この遅延処理について図17を用いて説明する。
【0113】
図17は、Iu>0、Iv<0、Iw>0の場合における電圧ベクトル等の推移を示す図である。
【0114】
予測制御部63は、図17の最上段に記載されているように、V1、V2、V7、V2、V1の順に出現する電圧ベクトルを決定する。
【0115】
U相について説明すると、予測制御部63は、V1→V2→V7→V2→V1の切り替えがあってもU相電圧VuがHレベルに維持されると判定する。このため、予測制御部63は、U相についてはデッドタイムを設定しない。
【0116】
V相について説明すると、予測制御部63は、V1→V2→V7→V2→V1の切り替えのうちV1→V2への切り替えに伴い、オンされるスイッチが下アームスイッチから上アームスイッチに切り替えられると判定する。そして、予測制御部63は、第1電圧ベクトルV1の期間から第2電圧ベクトルV2の期間に移行する場合にV相にデッドタイムを設定する。
【0117】
予測制御部63は、デッドタイムの設定後、V1→V2への切り替えに伴い相電圧のレベルがLからHに変化すると判定する。このため、予測制御部63は、第1ベクトルV1の期間の終了タイミングを変更しない。
【0118】
予測制御部63は、V1→V2→V7→V2→V1の切り替えのうちV2→V1への切り替えに伴い、オンされるスイッチが上アームスイッチから下アームスイッチに切り替えられると判定する。そして、予測制御部63は、第2電圧ベクトルV2の期間から第1電圧ベクトルV1の期間に移行する場合にV相にデッドタイムを設定する。
【0119】
予測制御部63は、デッドタイムの設定後、第2電圧ベクトルV2から第1電圧ベクトルV1への切り替えがあったとしても、相電圧のレベルがHに維持されると判定する。このため、予測制御部63は、第2ベクトルV2の出現期間の終了タイミングをデッドタイムの長さTdtだけ遅らせる。なお、W相についても同様である。
【0120】
このようにして、予測制御部63は、当初決定したスイッチングパターンを変更する。変更後のスイッチングパターンが、後述する候補タイミングを定める基準パターンとなる。
【0121】
予測制御部63は、電流リップルをさらに低減するために、各規定周期において最初に出現する無効電圧ベクトルの終了タイミングtxをモデル予測制御により探索する。換言すれば、予測制御部63は、最初に出現する無効電圧ベクトルの出力期間を探索する。図16(a)を参照して説明すると、予測制御部63は、1つ目の規定周期において、最初に出現する第0電圧ベクトルV0Aの出力期間T0を探索し、2つ目の規定周期において、最初に出現する第7電圧ベクトルV7Aの出力期間を探索する。
【0122】
予測制御部63は、電流リップルを低減できる終了タイミングtxの探索を完了すると、第1指令電圧ベクトルVtrAに基づいて設定した第1,第2電圧ベクトルV1A,V2Aの出力期間T1,T2を変更せずに、第1,第2電圧ベクトルV1A,V2Aを第0電圧ベクトルV0Aの次に配置する。予測制御部63は、第2電圧ベクトルV2Aの次に第7電圧ベクトルV7Aを配置する。予測制御部63は、規定周期において最後に出現する第7電圧ベクトルV7Aの出力期間T7を「Ts/2-(T0+T1+T2)」に設定する。
【0123】
予測制御部63は、第1インバータ120Aのスイッチングパターンを、上述した方法で決定したスイッチングパターンにするように、第1インバータ120Aを構成する各スイッチSuAH~SwALのスイッチング制御を行う。
【0124】
図16図18図21を用いて、予測制御部63により実行される無効電圧ベクトルの終了タイミングtxの探索処理について更に説明する。
【0125】
まず、図16,18,19を用いて、図16に示した1つ目の規定周期(0~Ts/2)における探索処理について説明する。
【0126】
図16(a)に示したように、1つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは3回である。
【0127】
一方、1つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは下式(eq4)で表される。
【0128】
【数4】
Toddは、0からTs/2までの期間のうち、奇数の有効電圧ベクトル(第1電圧ベクトルV1B)の合計出力期間を示す。Tevenは、0からTs/2までの期間のうち、偶数の有効電圧ベクトル(第2電圧ベクトルV2B)の合計出力期間を示す。図18及び図19に示すのは、SBmax=4の例である。
【0129】
図18に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの4つの切り替えタイミングtB[1],tB[2],tB[3],tB[4]の中から、第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。候補タイミングを定める基準となる第2インバータ120Bのスイッチングパターンは、先の図17を例に説明した変更後のスイッチングパターンである。
【0130】
本実施形態において、予測制御部63は、第1指令電圧ベクトルVtrAに基づいて設定した第0,第7電圧ベクトルV0A,V7Aの合計出力期間「T0+T7」を、終了タイミングtxの調整前後で同じ期間に維持できる切り替えタイミングを終了タイミングtxの候補タイミングとして選択する。つまり、予測制御部63は、図16(a)に示す第0,第7電圧ベクトルV0A,V7Aの合計出力期間「T0+T7」よりも、第0電圧ベクトルV0Aの出力期間が長くなる切り替えタイミングを、終了タイミングtxの候補タイミングから除外する除外処理を行う。これは、第1巻線群110Aに印加される電圧ベクトルを第1指令電圧ベクトルVtrAにできなくなることを回避するためである。図18に示す例では、4つの切り替えタイミングtB[1],tB[2],tB[3],tB[4]のうち、第3,第4切り替えタイミングtB[3],tB[4]が、第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtxの候補タイミングから除外される。これにより、第3,第4切り替えタイミングtB[3],tB[4]に対応する評価関数Jcrの算出処理が省略され、制御装置50における計算量を削減することができる。
【0131】
予測制御部63は、終了タイミングtxを第1切り替えタイミングtB[1]に設定した場合におけるスイッチングパターンVtAを決定し、このスイッチングパターンVtAを採用した場合における評価関数Jcrを算出する。評価関数Jcrは、コンデンサ21のリップル電流を評価するための関数であり、値が小さいほど、リップル電流が小さいことを示す。評価関数Jcrの算出方法については、後に詳述する。
【0132】
予測制御部63は、終了タイミングtxを第2切り替えタイミングtB[2]に設定した場合におけるスイッチングパターンVtAを決定し、このスイッチングパターンVtAを採用した場合における評価関数Jcrを算出する。
【0133】
予測制御部63は、2つの評価関数Jcrのうち、値が小さい方の評価関数に対応するスイッチングパターンVtAを、第1インバータ120Aのスイッチングパターンに決定する。図19には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。図19(a)の第1電圧ベクトルV1Aの出力期間(tA[1]~tA[2])は、図16(a)のT1と同じ長さであり、図19(a)の第2電圧ベクトルV2Aの出力期間(tA[2]~tA[3])は、図16(a)のT2と同じ長さである。また、図19(a)の第0,第7電圧ベクトルV0A,V7Aの合計出力期間は、図16(a)の第0,第7電圧ベクトルV0A,V7Aの合計出力期間と同じ長さである。
【0134】
続いて、図16,20,21を用いて、図16に示した2つ目の規定周期(Ts/2~Ts)における探索処理について説明する。
【0135】
図16(a)に示したように、2つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは3回である。
【0136】
一方、2つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは下式(eq5)で表される。
【0137】
【数5】
Toddは、Ts/2からTsまでの期間のうち、奇数の有効電圧ベクトル(第1電圧ベクトルV1B)の合計出力期間を示す。Tevenは、Ts/2からTsまでの期間のうち、偶数の有効電圧ベクトル(第2電圧ベクトルV2B)の合計出力期間を示す。図20及び図21に示すのは、SBmax=2の例である。
【0138】
図20に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの2つの切り替えタイミングtB[1],tB[2]の中から、第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。
【0139】
予測制御部63は、上述した除外処理を行うことにより、第2切り替えタイミングtB[2]を候補タイミングから除外し、第1切り替えタイミングtB[1]を候補タイミングtxとして選択する。
【0140】
予測制御部63は、終了タイミングtxを第1切り替えタイミングtB[1]に設定した場合におけるスイッチングパターンVtAを決定し、このスイッチングパターンVtAを採用した場合における評価関数Jcrを算出する。ちなみに、候補タイミングtxが1つしかない場合、予測制御部63は、評価関数Jcrを算出することなく、1つしかない候補タイミングを採用した第2インバータ120Bのスイッチングパターンを決定してもよい。図21には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0141】
続いて、図22を用いて、予測制御部63により実行される評価関数Jcrの算出処理について説明する。図22には、第1インバータ電流IinvA、第2インバータ電流IinvB及びインバータ和電流Isumの推移を示す。
【0142】
本実施形態では、候補タイミングtxが、第2インバータ120Bの電圧ベクトルの切り替わりタイミングと一致する。ただし、本実施形態の変形例として、候補タイミングtxが電圧ベクトルの切り替わりタイミングからずれた構成を採用することもできる。候補タイミングtxが切り替わりタイミングと一致する構成、及び候補タイミングtxが切り替わりタイミングからずれた構成それぞれにおける評価関数Jcrの算出方法を説明するために、図22には、候補タイミングtxが切り替わりタイミングからずれた場合の推移を示す。
【0143】
規定周期(0~Ts/2)におけるコンデンサ21に流れる電流の実効値Icrmsは、下式(eq6)で表される。コンデンサ電流の実効値Icrmsは、コンデンサ21の電流リップルの相関値である。下式(eq6)において、Isrmsは、規定周期(0~Ts/2)におけるインバータ和電流Isumの実効値を示す。Isaveは、規定周期(0~Ts/2)におけるインバータ和電流Isumの平均値(以下、和電流平均値)を示す。インバータ和電流Isumの実効値Isrmsは、下式(eq7)で表される。
【0144】
【数6】
【0145】
【数7】
上式(eq6),(eq7)によれば、コンデンサ電流の実効値Icrmsは、インバータ和電流Isumと、和電流平均値Isaveとの偏差を1つの規定周期において時間積分した値で評価できる。予測制御部63は、下式(eq8)を用いて、評価関数Jcrを算出する。評価関数Jcrは、偏差の規定周期における累積値の相関値である。また、評価関数Jcrは、インバータ和電流Isumが、直流目標値としての和電流平均値Isaveに近づくほど小さくなる。コンデンサ電流の実効値Icrmsをインバータ電流に基づいて評価できるため、例えば、コンデンサ電流を算出するための上記特許文献1に記載されたフィルタ回路モデルが不要になる。これにより、制御装置50に実装される処理内容の簡素化することができる。
【0146】
【数8】
Smaxは、第1,第2インバータ120A,120Bの規定周期における電圧ベクトルの合計切り替わり回数である。図22を参照して説明すると、ts[0],ts[1],ts[2],…,ts[7],ts[8]が切り替わりタイミングであり、合計切り替わり回数Smaxは8である。ここで、ts[0]は1つの規定周期の開始タイミング(0)であり、ts[8]は1つの規定周期の終了タイミング(Ts/2)である。また、上式(eq8)において、「Δts=ts[s+1]-ts[s]」である。
【0147】
本実施形態において、予測制御部63は、和電流平均値Isaveを、下式(eq9)を用いて算出する。下式(eq9)において、mAは、第1インバータ120Aの出力電圧の第1変調率を示し、mBは、第2インバータ120Bの出力電圧の第2変調率を示す。IAは、第1インバータ120Aの出力相電流の最大値を示し、IBは、第2インバータ120Bの出力相電流の最大値を示す。φAは、第1インバータ120Aの出力相電圧に対する第1インバータ120Aの出力相電流の位相差(すなわち、力率)を示す。φBは、第2インバータ120Bの出力相電圧に対する第2インバータ120Bの出力相電流の位相差を示す。
【0148】
【数9】
予測制御部63は、例えば、電圧検出部130により検出された電源電圧VDC、及び第1d,q軸電圧VdA*,VqA*に基づいて第1変調率mAを算出し、電源電圧VDC、及び第2d,q軸電圧VdB*,VqB*に基づいて第2変調率mBを算出すればよい。また、予測制御部63は、第1d,q軸指令電流IdA*,IqA*又は第1d,q軸電流IdAr,IqArと電気角θeとに基づいて相電流最大値IAを算出し、第2d,q軸指令電流IdB*,IqB*又は第1d,q軸電流IdBr,IqBrと電気角θeとに基づいて相電流最大値IBを算出すればよい。また、予測制御部63は、第1d,q軸電圧VdA*,VqA*及び第1d,q軸指令電流IdA*,IqA*に基づいて位相差φAを算出し、第2d,q軸電圧VdB*,VqB*及び第2d,q軸指令電流IdB*,IqB*に基づいて位相差φBを算出すればよい。
【0149】
予測制御部63は、上式(eq8)の各Δtsにおけるインバータ和電流Isumを算出するために、各Δtsにおける第1,第2インバータ電流IinvA,IinvBを予測する。この予測方法は、例えば上記特許文献1に記載の電流予測方法が用いられればよい。第1インバータ電流IinvAを例にして説明すると、予測制御部63は、第1電流検出部131Aの検出値に基づいて把握されるts[0]の第1インバータ電流IinvA[0]と、ts[0],ts[1]における電圧ベクトルと、モータモデルとに基づいて、ts[0]よりも未来のts[1]の第1インバータ電流IinvA[1]を予測する。そして、予測制御部63は、ts[1]の第1インバータ電流IinvA[1]と、ts[1],ts[2]における電圧ベクトルと、モータモデルとに基づいて、ts[1]よりも未来のts[2]の第1インバータ電流IinvA[2]を予測する。これを繰り返すことにより、予測制御部63は、1つの規定周期(0~Ts/2)における各Δtsにおける第1インバータ電流IinvAを予測する。予測制御部63は、予測した各Δtsにおける第1,第2インバータ電流IinvA,IinvBに基づいて、各Δtsにおけるインバータ和電流Isumを算出する。
【0150】
なお、各Δtsにおける第1,第2インバータ電流IinvA,IinvBは、上述した方法に代えて、例えば以下の方法により予測されてもよい。予測制御部63は、第1,第2電流検出部131A,131Bの検出値に基づいて把握される相電流を取得し、取得した相電流の位相をずらすことにより、未来の各Δtsにおける第1,第2インバータ電流IinvA,IinvBを予測する。これにより、モータモデルを用いることなく、電流予測を行うことができる。
【0151】
図23図26を用いて、予測制御部63により実行される回転電機100のトルク制御の手順について説明する。この制御処理は、例えば所定の処理周期で繰り返し実行される。処理周期は、Ts/4よりも十分短い。また、候補タイミングtxが切り替わりタイミングと一致する構成、及び候補タイミングtxが切り替わりタイミングからずれた構成それぞれにおけるトルク制御を説明するために、図23図26には、候補タイミングtxが切り替わりタイミングからずれた構成を考慮した処理手順を示す。
【0152】
ステップS100では、第1インバータ120Aの規定周期におけるスイッチングパターンを選択する。詳しくは、第1d,q軸指令電圧VdA*,VqA*により定まる第1指令電圧ベクトルVtrAを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0A,V7Aとの組み合わせからなるスイッチングパターンを選択する。
【0153】
ステップS101では、第2インバータ120Bの規定周期におけるスイッチングパターンを決定する。詳しくは、第2d,q軸指令電圧VdB*,VqB*により定まる第2指令電圧ベクトルVtrBを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0B,V7Bとの組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。そして、決定したスイッチングパターンを、先の図17を例に説明したように変更する。変更後のスイッチングパターンが、候補タイミングを定める基準となるスイッチングパターンとなる。
【0154】
ステップS102~S109では、評価関数Jcrの値が最も小さくなるような、規定周期の最初に出現する第1インバータ120Aの無効電圧ベクトルの出力期間を探索する。
【0155】
詳しくは、ステップS102では、無効電圧ベクトルの出力期間の終了タイミングtxの候補タイミングを決定する。この際、上述した除外処理により、候補タイミングの数が絞られる。
【0156】
ステップS103では、評価関数最小値Jcminを初期化する。初期化された値は、評価関数Jcrの値として想定される最大値よりも十分大きな値にされていればよい。
【0157】
ステップS104では、ステップS102で決定した候補タイミングの中から1つを選択し、第1インバータ120Aの規定周期におけるスイッチングパターンを設定する。
【0158】
ステップS105では、評価関数算出処理を行う。この処理の詳細は、後に詳述する。
【0159】
ステップS106では、ステップS105において算出した評価関数Jcrが、評価関数最小値Jcminよりも小さいか否かを判定する。
【0160】
ステップS106において評価関数Jcrが評価関数最小値Jcminよりも小さいと判定した場合には、ステップS107に進み、今回の処理周期で算出した評価関数Jcrを評価関数最小値Jcminとし、評価関数最小値Jcminを更新する。その後、ステップS108に進む。
【0161】
ステップS107の処理が完了した場合、又はステップS106において否定判定した場合には、ステップS108に進み、ステップS102で決定した候補タイミング全てに対する評価関数Jcrの算出が完了したか否かを判定する。なお、ステップS102~S108の処理が関数算出処理に相当する。
【0162】
ステップS108において完了していないと判定した場合には、ステップS104に戻る。一方、ステップS108において完了したと判定した場合には、ステップS109に進む。ステップS109では、候補タイミングと紐づけられた評価関数Jcrのうち、最小の評価関数に紐づけられた候補タイミングを採用する。そして、採用した候補タイミングが無効電圧ベクトルの出力終了タイミングとなるスイッチングパターンを、第1インバータ120Aのスイッチングパターンとして決定する。
【0163】
ステップS110では、第1インバータ120Aのスイッチングパターンを、ステップS109で決定したスイッチングパターンにするように、第1インバータ120Aを構成する各スイッチSuAH~SwALのスイッチング制御を行う。また、第2インバータ120Bのスイッチングパターンを、ステップS101で決定したスイッチングパターンにするように、第2インバータ120Bを構成する各スイッチSuBH~SwBLのスイッチング制御を行う。なお、ステップS110の処理が「スイッチ制御部」に相当する。
【0164】
図24を用いて、ステップS105の評価関数算出処理について説明する。なお、この処理の説明において、図22のタイムチャートを参照されたい。
【0165】
ステップS130では、第1カウンタSA、第2カウンタSB、順序パラメータS、及び評価関数Jcrを初期値(0)にする。
【0166】
ステップS131では、初期状態の算出処理を行う。例えば、上述した各Δtsにおける第1,第2インバータ電流IinvA,IinvB、及び上述した各Δtsにおけるインバータ和電流Isum等を算出する処理を行う。
【0167】
ステップS132では、第1カウンタSAが第1最大切り替わり回数SAmax以下であるとの第1条件、及び第2カウンタSBが第2最大切り替わり回数SBmax以下であるとの第2条件の双方が成立しているか否かを判定する。図22に示す例では、第1最大切り替わり回数SAmaxは4であり、第2最大切り替わり回数SBmaxは5である。
【0168】
ステップS132において肯定判定した場合には、ステップS133に進み、第1インバータ120Aの電圧ベクトルの切り替わりタイミングtA[SA]が、第2インバータ120Bの電圧ベクトルの切り替わりタイミングtB[SB]よりも前のタイミング、又は第2インバータ120Bの電圧ベクトルの切り替わりタイミングtB[SB]と同じタイミングであるか否かを判定する。
【0169】
ステップS133において肯定判定した場合には、ステップS134のサブルーチンAに進み、ステップS133において否定判定した場合には、ステップS135のサブルーチンBに進む。ステップS134又はS135の処理の完了後、ステップS132に移行する。
【0170】
図25に、サブルーチンAの手順を示す。
【0171】
ステップS150では、第1,第2インバータ120A,120Bの電圧ベクトルの切り替えタイミングを示すts[S]を、第1インバータ120Aの電圧ベクトルの切り替わりタイミングtA[SA]にする。なお、[]内のSは、上述した順序パラメータである。
【0172】
ステップS151では、第1インバータ電流IinvA[SA]と第2インバータ電流IinvB[SB-1]とを加算することにより、インバータ和電流Isum[S]を算出する。
【0173】
ステップS152では、切り替わりタイミングts[S]から、1ステップ前の切り替わりタイミングts[S-1]を差し引くことにより、時間間隔Δts[S]を算出する。
【0174】
ステップS153では、インバータ和電流Isum[S-1]から和電流平均値Isaveを差し引した値を2乗する。そして、2乗した値に、ステップS152の時間間隔Δtsを乗算することにより、1区間分(ts[S]-ts[S-1])における、和電流平均値Isaveとインバータ和電流Isum[S-1]とで区画された領域の面積を算出する。この面積は、図22を参照すると、例えば、ts[1]~ts[2]の1区間においてハッチングにて示された領域の面積である。この面積を、前回までに算出した評価関数Jcrに加算することにより、評価関数Jcrを更新する。
【0175】
ステップS154では、第1カウンタSA及び順序パラメータSを1インクリメントする。
【0176】
図26に、サブルーチンBの手順を示す。
【0177】
ステップS160では、第1,第2インバータ120A,120Bの電圧ベクトルの切り替えタイミングを示すts[s]を、第2インバータ120Bの電圧ベクトルの切り替わりタイミングtB[SB]にする。
【0178】
ステップS161では、第1インバータ電流IinvA[SA-1]と第2インバータ電流IinvB[SB]とを加算することにより、インバータ和電流Isum[S]を算出する。
【0179】
ステップS162では、切り替わりタイミングts[S]から、1ステップ前の切り替わりタイミングts[S-1]を差し引くことにより、時間間隔Δts[S]を算出する。
【0180】
ステップS163では、インバータ和電流Isum[S-1]から和電流平均値Isaveを差し引した値を2乗する。そして、2乗した値に、ステップS162の時間間隔Δtsを乗算することにより、1区間分(ts[S]-ts[S-1])における、和電流平均値Isaveとインバータ和電流Isum[S-1]とで区画された領域の面積を算出する。この面積を、前回までに算出した評価関数Jcrに加算することにより、評価関数Jcrを更新する。
【0181】
ステップS164では、第2カウンタSB及び順序パラメータSを1インクリメントする。
【0182】
先の図24に説明に戻り、ステップS132において、第1カウンタSAが第1最大切り替わり回数SAmaxよりも大きいと判定した場合、又は第2カウンタSBが第2最大切り替わり回数SBmaxよりも大きいと判定した場合には、ステップS136に進む。
【0183】
ステップS136では、第1カウンタSAが第1最大切り替わり回数SAmax以下であるか否かを判定する。ステップS136において第1カウンタSAが第1最大切り替わり回数SAmaxよりも大きいと判定されるまで、ステップS137においてサブルーチンAを実行する。サブルーチンAは、図25に示す処理である。
【0184】
ステップS136の後、ステップS138では、第2カウンタSBが第2最大切り替わり回数SBmax以下であるか否かを判定する。ステップS138において第2カウンタSBが第2最大切り替わり回数SBmaxよりも大きいと判定されるまで、ステップS139においてサブルーチンBを実行する。サブルーチンBは、図26に示す処理である。
【0185】
以上説明したように、本実施形態では、第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、規定周期の最初に出現する無効電圧ベクトルの終了タイミングが探索される。この探索処理により、複数の候補タイミングの中から、評価関数Jcrを最も小さくする候補タイミングが終了タイミングとして選択される。この際、第2インバータ120Bの各電圧ベクトルの切り替えタイミングが、候補タイミングとして選択される。このため、探索対象となる候補タイミングの数を減らすことができる。これにより、制御装置50の計算量を削減しつつ、コンデンサ21のリップル電流を低減することができる。
【0186】
除外処理により、第1インバータ120Aの出力電圧ベクトルを第1指令電圧ベクトルVtrAにできなくなる候補タイミングが除外される。その結果、候補タイミングを絞ることができ、算出すべき評価関数Jcrの数を削減できる。これにより、制御装置50の計算量をより好適に削減することができる。
【0187】
また、本実施形態によれば、第1実施形態と同様に、モデル予測制御において、デッドタイムの影響を受けたd,q軸電流及びコンデンサ電流の挙動を正しく予測することができ、コンデンサ電流の予測精度を高めることができる。
【0188】
<第2実施形態の変形例1>
図27図28に示すように、予測制御部63は、電圧ベクトルの切り替えに第1,第2キャリア信号SigA,SigB(三角波信号)を用いてもよい。第1キャリア信号SigAは、第1インバータ120Aの電圧ベクトルの切り替えに用いられ、第2キャリア信号SigBは、第2インバータ120Bの電圧ベクトルの切り替えに用いられる。第1キャリア信号SigAに対して第2キャリア信号SigBの位相が1/2規定周期ずれている。これは、第1,第2インバータ120A,120BのスイッチングパターンVtA,VtBの開始タイミングを1/2規定周期ずらすためである。なお、Cmaxは、各キャリア信号SigA,SigBの最大値を示し、Cminは、各キャリア信号SigA,SigBの最小値を示す。
【0189】
<第2実施形態の変形例2>
本実施形態では、図29図31に示す評価関数算出処理において、計算量をより削減する工夫がなされている。図29図31は、先の図24図26に対応している。なお、図29図31において、図29図31に示した処理と同一の処理については、便宜上、同一の符号を付している。
【0190】
図29に、評価関数算出処理の手順を示す。なお、本実施形態では、ステップS130において、フラグFを0に初期化する。
【0191】
ステップS134又はS135の完了後、ステップS141に進み、フラグFが1であるか否かを判定する。フラグFは、0によって評価関数Jcrの算出を継続することを示し、1によって評価関数Jcrの算出を中止することを示す。
【0192】
ステップS141においてフラグFが1であると判定した場合には、図29に示す処理を一旦終了し、図23のステップS108に進む。一方、ステップS141においてフラグFが0であると判定した場合には、ステップS132に進む。本実施形態では、フラグFが0のままステップS140の処理が完了した場合、図23のステップS106に進む。
【0193】
図30に、図29に示すステップS134のサブルーチンAの処理手順を示す。
【0194】
ステップS153の処理の完了後、ステップS155に進み、ステップS153で算出した評価関数Jcrが、評価関数最小値Jcmin以下であるか否かを判定する。ステップS155において評価関数Jcrが評価関数最小値Jcmin以下であると判定した場合には、ステップS154を経由して、図29のステップS141に進む。
【0195】
一方、ステップS155において評価関数Jcrが評価関数最小値Jcminよりも大きいと判定した場合には、ステップS156に進み、フラグFを1に切り替える。その後、図29のステップS141に進む。
【0196】
図31に、図29に示すステップS135のサブルーチンBの処理手順を示す。
【0197】
ステップS163の処理の完了後、ステップS165に進み、ステップS163で算出した評価関数Jcrが、評価関数最小値Jcmin以下であるか否かを判定する。ステップS165において評価関数Jcrが評価関数最小値Jcmin以下であると判定した場合には、ステップS164を経由して、図29のステップS141に進む。
【0198】
一方、ステップS165において評価関数Jcrが評価関数最小値Jcminよりも大きいと判定した場合には、ステップS166に進み、フラグFを1に切り替える。その後、図29のステップS141に進む。
【0199】
なお、図29のステップS137のサブルーチンAは、先の図25のサブルーチンAと同じである。また、図29のステップS139のサブルーチンBは、先の図26のサブルーチンBと同じである。
【0200】
以上説明した本実施形態によれば、評価関数算出処理において、コンデンサ21のリップル電流の低減効果が小さい候補タイミングに対応する評価関数Jcrの算出を途中で打ち切ることができる。これにより、制御装置50の計算量をいっそう好適に削減することができる。
【0201】
<第2実施形態の変形例3>
本実施形態では、図32に示すように、予測制御部63は、6つの有効電圧ベクトルのうち、第1指令電圧ベクトルVtrAを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、他の1つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。他の1つの有効電圧ベクトルは、第1指令電圧ベクトルVtrAを挟んで、かつ、120度の位相差を有する2つの2つの有効電圧ベクトルのうち、上記60度の位相差を有する有効電圧ベクトルとは異なる電圧ベクトルである。図32には、3つの有効電圧ベクトルとして、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6が選択される例を示した。本実施形態では、以降、第1インバータ120Aにおいて、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0202】
予測制御部63は、第1インバータ120Aの場合と同様に、第2指令電圧ベクトルVtrBを挟む3つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、以降、第2インバータ120Bにおいて、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0203】
図33図36を用いて、予測制御部63により実行される無効電圧ベクトルの終了タイミングtxの探索処理について説明する。
【0204】
まず、図33,34を用いて、1つ目の規定周期(0~Ts/2)における探索処理について説明する。
【0205】
図34(a)に示すように、1つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは4回である。
【0206】
一方、1つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは下式(eq10)で表される。
【0207】
【数10】
TzBは、0からTs/2までの期間のうち、第2インバータ120Bの無効電圧ベクトルの合計出力期間を示す。T1Bは、0からTs/2までの期間のうち、第2インバータ120Bの第1電圧ベクトルV1Bの合計出力期間を示す。T2Bは、0からTs/2までの期間のうち、第2インバータ120Bの第2電圧ベクトルV2Bの合計出力期間を示す。図33及び図34に示すのは、SBmax=6の例である。
【0208】
図33に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの6つの切り替えタイミングtB[1]~tB[6]の中から、第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0209】
図34には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ20Aの第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0210】
続いて、図35図36を用いて、2つ目の規定周期(Ts/2~Ts)における探索処理について説明する。
【0211】
図36(a)に示すように、2つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは4回である。
【0212】
一方、2つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは上式(eq10)で表される。図35及び図36に示すのは、SBmax=2の例である。
【0213】
図35に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの2つの切り替えタイミングtB[1],tB[2]の中から、第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0214】
図36には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0215】
<第2実施形態の変形例4>
本実施形態では、図37に示すように、予測制御部63は、6つの有効電圧ベクトルのうち、第1指令電圧ベクトルVtrAを挟んで、かつ、120度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。この決定方法は、例えば、変調率が低い場合に用いられる。図37には、2つの有効電圧ベクトルとして、第2,第6電圧ベクトルV2,V6が選択される例を示した。本実施形態では、以降、第1インバータ120Aにおいて、第2,第6電圧ベクトルV2,V6及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0216】
予測制御部63は、第1インバータ120Aの場合と同様に、第2指令電圧ベクトルVtrBを挟む2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、以降、第2インバータ120Bにおいて、第2,第6電圧ベクトルV2,V6及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0217】
図38~41を用いて、予測制御部63により実行される無効電圧ベクトルの終了タイミングtxの探索処理について説明する。
【0218】
まず、図38,39を用いて、1つ目の規定周期(0~Ts/2)における探索処理について説明する。
【0219】
図39(a)に示すように、1つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは3回である。
【0220】
一方、1つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは下式(eq11)で表される。
【0221】
【数11】
T6Bは、0からTs/2までの期間のうち、第2インバータ120Bの第6電圧ベクトルV6Bの合計出力期間を示す。図38及び図39に示すのは、SBmax=4の例である。
【0222】
図38に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの4つの切り替えタイミングtB[1]~tB[4]の中から、第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0223】
図39には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0224】
続いて、図40,41を用いて、2つ目の規定周期(Ts/2~Ts)における探索処理について説明する。
【0225】
図41(a)に示すように、2つ目の規定周期における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは3回である。
【0226】
一方、2つ目の規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは上式(eq11)で表される。図40及び図41に示すのは、SBmax=2の例である。
【0227】
図40に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの2つの切り替えタイミングtB[1],tB[2]の中から、第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0228】
図41には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0229】
<第2実施形態の変形例5>
本実施形態では、図42に示すように、予測制御部63は、120度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、1つの無効電圧ベクトルとの組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。無効電圧ベクトルの数が1つ減らされることにより、インバータの規定周期におけるスイッチング回数を削減できる。図42には、2つの有効電圧ベクトルとして、第2,第6電圧ベクトルV2,V6が選択され、1つ無効電圧ベクトルとして、第7電圧ベクトルV7が選択される例を示した。本実施形態では、以降、第1インバータ120Aにおいて、第2,第6電圧ベクトルV2,V6及び第7電圧ベクトルV7が選択される場合を例にして説明する。
【0230】
予測制御部63は、第1インバータ120Aの場合と同様に、120度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、1つの無効電圧ベクトルとの組み合わせからなる第2インバータ120Bのスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、以降、第2インバータ120Bにおいて、第2,第6電圧ベクトルV2,V6及び第7電圧ベクトルV7が選択される場合を例にして説明する。
【0231】
図43,44を用いて、予測制御部63により実行される無効電圧ベクトルの終了タイミングtxの探索処理について説明する。本実施形態では、規定周期の長さが、1スイッチング周期に相当するTsとされている。
【0232】
図44(a)に示すように、規定周期(0~Ts)における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは4回である。また、規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは4回である。
【0233】
図43に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの4つの切り替えタイミングtB[1]~tB[4]の中から、第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0234】
図44には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0235】
以上説明した本実施形態によれば、インバータのスイッチング回数を削減しつつ、コンデンサ21のリップル電流を低減することができる。
することができる。
【0236】
<第2実施形態の変形例6>
本実施形態では、図45に示すように、予測制御部63は、第2実施形態の変形例3で説明した3つの有効電圧ベクトルの組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。スイッチングパターンには、無効電圧ベクトルが含まれない。図45には、3つの有効電圧ベクトルとして、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6が選択される例を示した。本実施形態では、以降、第1インバータ120Aにおいて、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6が選択される場合を例にして説明する。
【0237】
予測制御部63は、第1インバータ120Aの場合と同様に、3つの有効電圧ベクトルの組み合わせからなる第2インバータ120Bのスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、以降、第2インバータ120Bにおいて、第1,第2,第6電圧ベクトルV1,V2,V6が選択される場合を例にして説明する。
【0238】
本実施形態では、規定周期の長さが、1スイッチング周期に相当するTsとされている。また、予測制御部63は、規定周期の最初に出現する有効電圧ベクトル(第1電圧ベクトルV1A)の終了タイミングtxを探索対象とする。図46,47を用いて、予測制御部63により実行される第1電圧ベクトルV1Aの終了タイミングtxの探索処理について説明する。
【0239】
図47(a)に示すように、規定周期(0~Ts)における第1インバータ120Aのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第1最大切り替わり回数SAmaxは4回である。また、規定周期における第2インバータ120Bのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第2最大切り替わり回数SBmaxは4回である。
【0240】
図46に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの4つの切り替えタイミングtB[1]~tB[4]の中から、第1電圧ベクトルV1Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0241】
予測制御部63は、電流リップルを低減できる終了タイミングtxの探索を完了すると、第1指令電圧ベクトルVtrAに基づいて設定した第2,第6,第2電圧ベクトルV2A,V6A,V2Aそれぞれの出力期間を変更せずに、第2,第6,第2電圧ベクトルV2A,V6A,V2Aを第1電圧ベクトルV1Aの次に配置する。予測制御部63は、第2,第6,第2電圧ベクトルV2A,V6A,V2Aの並びの次に、第1電圧ベクトルV1Aを配置する。予測制御部63は、規定周期において最後に出現する第1電圧ベクトルV1Aの出力期間を、「Ts-TK」に設定する。TKは、規定周期の最初に出現する第1電圧ベクトルV1Aの出力期間と、第2,第6,第2電圧ベクトルV2A,V6A,V2Aの合計出力期間との加算値である。図47には、第1切り替えタイミングtB[1]が、第1インバータ20Aの第1電圧ベクトルV1Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0242】
以上説明した本実施形態のように、有効電圧ベクトルの終了タイミングを探索する処理によっても、コンデンサ21のリップル電流を低減することができる。
【0243】
<第2実施形態の変形例7>
本実施形態では、図48に示すように、回転電機100は、第3巻線群110Cを更に備えている。図48において、先の図1に示した構成と同一の構成については、便宜上、同一の符号を付している。
【0244】
制御システムは、第3巻線群110Cに電気的に接続された第3インバータ120Cを備えている。第3インバータ120Cの構成は、第1,第2インバータ120A,120Bの構成と同様である。
【0245】
第3インバータ120Cにおいて各相の上アームスイッチのドレインには、第3高電位側経路LHCを介して、第2高電位側経路LHBの途中部分が接続されている。第3インバータ120Cにおいて各相の下アームスイッチのソースには、第3低電位側経路LLCを介して、第2低電位側経路LLBの途中部分が接続されている。つまり、本実施形態では、各インバータ120A~120Cでコンデンサ21が共通化されている。
【0246】
制御システムは、第3電流検出部を備えている。制御装置50は、第1,第2電流検出部131A,131Bの場合と同様に、第3電流検出部の検出値に基づいて、第3巻線群110Cに流れる3相の電流を取得する。
【0247】
制御装置50は、回転電機100のトルクを指令トルクTrq*に制御すべく、入力された検出値に基づいて、第1~第3インバータ120A~120Cの各スイッチのスイッチング制御を行うための駆動信号を生成する。
【0248】
なお、図48において、第3高電位側経路LHCに流れる電流を第3インバータ電流IinvCと称す。第3インバータ電流IinvCは、コンデンサ21側から第3インバータ120C側へと向かう方向に流れる場合の符号を正とする。また、第1~第3インバータ電流IinvA~IinvCの加算値をインバータ和電流Isumと称す。
【0249】
予測制御部63は、第2実施形態と同様に、第1~第3インバータ120A~120Cについて、第1~第3指令電圧ベクトルVtrA~VtrCを算出する。そして、予測制御部63は、各インバータ120A~120Cについて、6つの有効電圧ベクトルのうち、指令電圧ベクトルVtrを挟んで、かつ、60度の位相差を有する2つの有効電圧ベクトルと、2つの無効電圧ベクトルV0,V7との組み合わせからなるスイッチングパターンを決定する。本実施形態では、以降、各インバータ120A~120Cにおいて、第1,第2電圧ベクトルV1,V2及び第0,第7電圧ベクトルV0,V7が選択される場合を例にして説明する。
【0250】
第1,第2,第3インバータ120A,120B,120CのスイッチングパターンVtA,VtB,VtCの開始タイミングは、1/3規定周期ずつずれている。これは、コンデンサ21の電流リップルを低減するためである。
【0251】
図49図52を用いて、予測制御部63により実行される無効電圧ベクトルの終了タイミングtxの探索処理について説明する。
【0252】
まず、図49,50を用いて、1つ目の規定周期(0~Ts/2)における探索処理について説明する。
【0253】
図50(a)に示すように、1つ目の規定周期における第1,第2インバータ120A,120Bのスイッチングパターンにおいて、第1,第2最大切り替わり回数SAmax,SBmaxは3回である。また、1つ目の規定周期における第3インバータ120Cのスイッチングパターンにおいて、電圧ベクトルの第3最大切り替わり回数SCmaxは3回である。
【0254】
図49に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの3つの切り替えタイミングtB[1]~tB[3]、及び第3インバータ120CのスイッチングパターンVtCを構成する電圧ベクトルの3つの切り替えタイミングtC[1]~tC[3]の中から、第1インバータ120Aの第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。候補タイミングを定める基準となる第2,第3インバータ120B,120Cのスイッチングパターンは、先の図17を例に説明した変更後のスイッチングパターンである。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0255】
なお、候補タイミングは、第2インバータ120Bの切り替えタイミングtB[1]~tB[3]のグループ、又は第3インバータ120Cの切り替えタイミングtC[1]~tC[3]のグループのどちらかから選択されてもよい。
【0256】
図50には、第2インバータ120Bの第2切り替えタイミングtB[2]が、第1インバータ120Aの第0電圧ベクトルV0Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0257】
続いて、図51,52を用いて、2つ目の規定周期(Ts/2~Ts)における探索処理について説明する。
【0258】
図52に示すように、2つ目の規定周期における各最大切り替わり回数SAmax,SBmax,SCmaxは3回である。
【0259】
図51に示すように、予測制御部63は、第2インバータ120BのスイッチングパターンVtBを構成する電圧ベクトルの3つの切り替えタイミングtB[1]~tB[3]、及び第3インバータ120CのスイッチングパターンVtCを構成する電圧ベクトルの3つの切り替えタイミングtC[1]~tC[3]の中から、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtxの候補タイミングを選択する。予測制御部63は、上述した除外処理を行ってもよい。
【0260】
なお、候補タイミングは、第2インバータ120Bの切り替えタイミングtB[1]~tB[3]のグループ、又は第3インバータ120Cの切り替えタイミングtC[1]~tC[3]のグループのどちらかから選択されてもよい。
【0261】
図52には、第2インバータ120Bの第2切り替えタイミングtB[2]が、第1インバータ120Aの第7電圧ベクトルV7Aの終了タイミングtA[1]とされる例を示す。
【0262】
<第3実施形態>
以下、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、先の図12のステップS13~S16,S19の処理が除かれている。このため、時間間隔ΔTはTpに固定され、ステップS12の完了後、ステップS17に移行する。つまり、図12の処理の段階では、デッドタイムの影響が考慮されない。
【0263】
予測制御部56は、図12に示す電流予測処理の完了後、1制御周期において仮設定したスイッチングパターンそれぞれについて、上式(eq3)に示す評価関数Jを算出する。
【0264】
予測制御部56は、算出した各評価関数Jの中から、最も小さい評価関数を選択する。予測制御部56は、選択した評価関数Jに対応する1制御周期分の4つの電圧ベクトルV(n+1)~V(n+4)の組み合わせを、次回の1制御周期において用いるスイッチングパターンとして決定する。
【0265】
予測制御部56は、決定したスイッチングパターンを実現するためのU,V,W相指令信号gu*,gv*,gw*を生成する(図54参照)。各指令信号は、2値信号であり、上,下アームスイッチのうちオンするスイッチ及びオフするスイッチを指示する信号である。本実施形態では、Hによって上アームスイッチをオンしてかつ下アームスイッチをオフすることを指示し、Lによって下アームスイッチをオンしてかつ上アームスイッチをオフすることを指示する。
【0266】
図53に示すように、制御装置50が備えるデッドタイム補償部57は、U,V,W相指令信号gu*,gv*,gw*に基づいて、U,V,W相補償後信号gu**,gv**,gw**を生成する。まず、U相について、Iu>0、Iv<0、Iw>0の場合を例にして説明する。
【0267】
デッドタイム補償部57は、図54に示すように、U相補償後信号gu**のLからHへの切り替えタイミングを、U相指令信号gu*のLからHへの切り替わりタイミングをデッドタイムの長さTdtだけ早めたタイミングとする。先の図5に示すように、Iu>0の場合、U相下アームスイッチSULがオフに切り替えられた直後のデッドタイムにおいてU相電圧VuがLレベルに維持される。このため、切り替えタイミングを早めることにより、U相電圧Vuのレベルの変化をU相指令信号gu*の変化に近づけることができる。
【0268】
また、デッドタイム補償部57は、U相補償後信号gu**のHからLへの切り替えタイミングを、U相指令信号gu*のHからLへの切り替わりタイミングと同じタイミングとする。同じタイミングとするのは、先の図4に示すように、Iu>0の場合、U相上アームスイッチSUHのオフへの切り替えに伴い、U相電圧VuがLレベルからHレベルに速やかに変化するためである。なお、W相補償後信号gw**は、U相補償後信号gu**と同様の方法で生成される。
【0269】
続いて、V相について説明すると、デッドタイム補償部57は、V相補償後信号gv**のLからHへの切り替えタイミングを、V相指令信号gv*のLからHへの切り替わりタイミングと同じタイミングとする。同じタイミングとするのは、先の図7に示すように、Iv<0の場合、V相下アームスイッチSVLのオフへの切り替えに伴い、V相電圧VvがLレベルからHレベルに速やかに変化するためである。
【0270】
また、デッドタイム補償部57は、V相補償後信号gv**のHからLへの切り替えタイミングを、V相指令信号gv*のHからLへの切り替わりタイミングをデッドタイムの長さTdtだけ早めたタイミングとする。先の図6に示すように、Iv<0の場合、V相上アームスイッチSVHがオフに切り替えられた直後のデッドタイムにおいてV相電圧VvがHレベルに維持される。このため、切り替えタイミングを早めることにより、V相電圧Vvのレベルの変化をV相指令信号gv*の変化に近づけることができる。
【0271】
制御装置50が備えるデッドタイム付与部58は、U相補償後信号gu**のLからHへの切り替えタイミングからデッドタイムの長さTdtだけ経過したタイミングを、U相上アーム駆動信号gUHのオフ指令からオン指令への切り替えタイミングに設定する。また、デッドタイム付与部58は、U相補償後信号gu**のHからLへの切り替えタイミングを、U相上アーム駆動信号gUHのオン指令からオフ指令への切り替えタイミングに設定する。V,W相についても同様である。
【0272】
以上説明した本実施形態によれば、各相電圧の挙動をモデル予測制御の予測結果に近づけることができる。このため、コンデンサ電流の予測精度を高めることができ、コンデンサ21に流れるリップル電流を好適に低減できる。
【0273】
また、本実施形態の構成は、デッドタイム付与機能を有するゲートドライバを用いる場合や、モデル予測制御の計算負荷を低減したい場合に適している。
【0274】
<その他の実施形態>
なお、上記各実施形態は、以下のように変更して実施してもよい。
【0275】
・上記各実施形態において、制御装置50は、インバータを構成するスイッチに対してオン指令がなされてからスイッチが実際にオンするまでの時間、及びオフ指令がなされてからスイッチが実際にオフするまでの時間を計測してもよい。この計測には、例えば、スイッチのゲート電圧又はスイッチのドレイン及びソース間電圧を検出する検出部の検出値が用いられればよい。制御装置50は、計測した時間に基づいて、予測演算に用いるデッドタイムを算出すればよい。
【0276】
・第2実施形態において、評価関数Jcrは、上式(eq8)に示す関数に代えて、例えば下式(eq12)に示すように、インバータ和電流Isumと和電流平均値Isaveとの偏差の絶対値により規定される関数であってもよい。
【0277】
【数12】
・第2実施形態において、探索対象となる電圧ベクトルの終了のタイミングの候補タイミングが、第2インバータ120Bのスイッチングパターンを構成する各電圧ベクトルの切り替えタイミングからずれていてもよい。
【0278】
・インバータと同数の回転電機が制御システムに備えられていてもよい。例えば、図13に示す制御システムにおいて、第1インバータ120Aが第1回転電機に電気的に接続され、第2インバータ120Bが第2回転電機に電気的に接続される。
【0279】
・第2実施形態において、インバータの数は、4つ以上であってもよい。インバータの数をNとする場合、各インバータのスイッチングパターンの開始タイミングは、例えば、1/N規定周期ずつずれていてもよい。
【0280】
・インバータが備えるスイッチは、NチャネルMOSFETに限らず、例えばIGBTであってもよい。この場合、スイッチにフリーホイールダイオードが逆並列接続されていればよい。
【0281】
・インバータの相数は3相に限らず、4相以上の相数(例えば5相)であってもよい。
【0282】
・回転電機は、例えば、車両の駆動輪に一体に設けられるインホイールモータであってもよいし、車両の車体に備えられるオンボードモータであってもよい。また、回転電機及びインバータが変速機と一体化されていてもよい。
【0283】
・制御システムの適用対象としては、車両に限らず、例えば、航空機、船舶又は鉄道車両であってもよい。また、制御システムの適用対象としては、車両等の移動体に限らず、ロボット(例えば産業用ロボット)、発電機又はエレベータであってもよい。
【0284】
・本開示に記載の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。あるいは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウェア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータにより、実現されてもよい。もしくは、本開示に記載の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウェア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせにより構成された一つ以上の専用コンピュータにより、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0285】
10…回転電機、20…インバータ、21…コンデンサ、50…制御装置。
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