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特開2024-81967ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081967
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240612BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B41J2/14 605
B41J2/14 305
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195603
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】西川 大地
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 高徳
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056FA04
2C056FA10
2C056HA05
2C056KB16
2C057AG12
2C057AG31
2C057AG45
2C057AN01
2C057BA05
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】圧力室及び循環路間でインクをスムーズに流通させることで、保護膜の消失を抑制し、耐久性の向上をさせたヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップは、吐出部と、噴射孔プレートと、帰還プレートと、流路プレートと、保護膜と、を備えている。連通路は、噴射チャネルのうち第1方向の第1側に向けて開口するチャネル開口に連通する上流開口と、マニホールドのうち第1方向の第1側に向けて開口するマニホールド開口に連通する下流開口と、第3方向に延びるとともに上流開口及び下流開口同士を接続する接続部と、を備えている。記帰還プレートは、前記上流開口における開口縁の少なくとも一部が、チャネル開口の開口縁に対して第1方向から見て外側に配置されるように吐出部に接合されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びるとともに前記第1方向に交差する第2方向に並んだ複数の噴射チャネル、及び前記噴射チャネルの内面に形成された電極を有する吐出部と、
複数の前記噴射チャネルに各別に連通する複数の噴射孔を有し、前記吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、
複数の前記噴射チャネル及び複数の前記噴射孔間を各別に連通させる複数の連通路を有し、前記第1方向における前記吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、
複数の前記連通路にまとめて連通するマニホールドを有し、前記吐出部に対して前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側に配置された流路プレートと、
前記噴射チャネルの内面及び前記連通路の内面に亘って形成された保護膜と、を備え、
前記連通路は、
前記噴射チャネルのうち前記第1方向の第1側に向けて開口するチャネル開口に連通する上流開口と、
前記マニホールドのうち前記第1方向の第1側に向けて開口するマニホールド開口に連通する下流開口と、
前記第3方向に延びるとともに前記上流開口及び前記下流開口同士を接続する接続部と、を備え、
前記帰還プレートは、前記上流開口における開口縁の少なくとも一部が、前記チャネル開口の開口縁に対して前記第1方向から見て外側に配置されるように前記吐出部に接合されているヘッドチップ。
【請求項2】
前記上流開口の開口縁は、前記第3方向の一方側に位置する第1上流縁部を備え、
前記チャネル開口の開口縁は、前記第3方向の一方側に位置する第1チャネル縁部を備え、
前記第1上流縁部は、前記第1チャネル縁部に対して前記第1方向から見て前記第3方向の一方側に位置している請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記第1上流縁部は、前記第3方向の一方側に向かうに従い前記第1方向の寸法が増加している請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記第1上流縁部と前記第1チャネル縁部との前記第3方向の距離は、前記上流開口における前記第1方向の寸法よりも長い請求項2又は請求項3に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記上流開口の開口縁は、前記第3方向の他方側に位置する第2上流縁部を備え、
前記チャネル開口の開口縁は、前記第3方向の他方側に位置する第2チャネル縁部を備え、
前記第2上流縁部は、前記第2チャネル縁部に対して前記第1方向から見て前記第3方向の他方側に位置している請求項2又は請求項3に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記第1上流縁部と前記第1チャネル縁部との前記第3方向の距離は、前記第2上流縁部と前記第2チャネル縁部との前記第3方向の距離に比べて長い請求項5に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
前記電極は、前記噴射チャネルの内面のうち前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、
前記上流開口の開口縁のうち前記第2方向の寸法は、前記チャネル開口の開口縁のうち前記第2方向の寸法よりも小さい請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップ。
【請求項8】
請求項1から請求項3の何れか1項に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項9】
請求項8に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドとして、循環式のヘッドチップを備えたものが知られている。循環式のヘッドチップは、インクを加圧する複数の圧力室と、各圧力室に各別に連通する複数のノズル孔と、対応する圧力室及びノズル孔間に各別に設けられた循環路と、複数の循環路がまとめて接続された共通流路と、を備えている(例えば、下記特許文献1参照)。
この種のヘッドチップでは、各圧力室で加圧されたインクのうち、一部のインクは対応するノズル孔を通じて吐出される一方、残りのインクは循環路を通じて共通流路に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-56766号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術にあっては、圧力室及び循環路間でインクをスムーズに流通させる点で未だ改善の余地があった。
【0005】
本開示は、圧力室及び循環路間でインクをスムーズに流通させることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド及び液体噴射記録装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係る。
ヘッドチップは、第1方向に延びるとともに前記第1方向に交差する第2方向に並んだ複数の噴射チャネル、及び前記噴射チャネルの内面に形成された電極を有する吐出部と、複数の前記噴射チャネルに各別に連通する複数の噴射孔を有し、前記吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、複数の前記噴射チャネル及び複数の前記噴射孔間を各別に連通させる複数の連通路を有し、前記第1方向における前記吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、複数の前記連通路にまとめて連通するマニホールドを有し、前記吐出部に対して前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向の一方側に配置された流路プレートと、前記噴射チャネルの内面及び前記連通路の内面に亘って形成された保護膜と、を備え、前記連通路は、前記噴射チャネルのうち前記第1方向の第1側に向けて開口するチャネル開口に連通する上流開口と、前記マニホールドのうち前記第1方向の第1側に向けて開口するマニホールド開口に連通する下流開口と、前記第3方向に延びるとともに前記上流開口及び前記下流開口同士を接続する接続部と、を備え、前記帰還プレートは、前記上流開口における開口縁の少なくとも一部が、前記チャネル開口の開口縁に対して前記第1方向から見て外側に配置されるように前記吐出部に接合されている。
【0007】
本態様によれば、上流開口における開口縁の少なくとも一部が、噴射チャネルのチャネル開口の開口縁に対して第1方向から見て外側に配置されているので、上流開口の開口縁のうち噴射チャネルのチャネル開口縁に対して内側に張り出した部分(張出部分)が形成されることを抑制できる。そのため、噴射チャネルのチャネル開口縁と張出部分との間に液体が滞留ことを抑制できる。そのため、液体の滞留に起因する保護膜の消失を抑制できる。そのため、耐久性に優れたヘッドチップを提供できる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記上流開口の開口縁は、前記第3方向の一方側に位置する第1上流縁部を備え、前記チャネル開口の開口縁は、前記第3方向の一方側に位置する第1チャネル縁部を備え、前記第1上流縁部は、前記第1チャネル縁部に対して前記第1方向から見て前記第3方向の一方側に位置していることが好ましい。
第1上流縁部と第1チャネル縁部との境界部分は、液体が上流開口部から接続部に流入する際の内側コーナ部分を形成する。内側コーナ部分に張出部が形成されていると、液体の滞留が生じ易い。
これに対して、本態様では、第1上流縁部が第1チャネル縁部に対して第3方向の他方側に張り出すことを抑制できる。そのため、内側コーナ部分での液体の滞留を抑制できる。
【0009】
(3)上記(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1上流縁部は、前記第3方向の一方側に向かうに従い前記第1方向の寸法が増加していることが好ましい。
本態様によれば、第1上流縁部と第1チャネル縁部との間に形成される内側コーナ部分を緩やかにすることができ、内側コーナ部分を通過する液体の流れをスムーズにすることができる。これにより、内側コーナ部分での液体の滞留を抑制できる。
【0010】
(4)上記(2)又は(3)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1上流縁部と前記第1チャネル縁部との前記第3方向の距離は、前記上流開口における前記第1方向の寸法よりも長いことが好ましい。
本態様によれば、第1上流縁部を第1チャネル縁部から十分に離すことができるので、内側コーナ部分での液体の滞留を抑制できる。
【0011】
(5)上記(2)から(4)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記上流開口の開口縁は、前記第3方向の他方側に位置する第2上流縁部を備え、前記チャネル開口の開口縁は、前記第3方向の他方側に位置する第2チャネル縁部を備え、前記第2上流縁部は、前記第2チャネル縁部に対して前記第1方向から見て前記第3方向の他方側に位置していることが好ましい。
本態様によれば、第2上流縁部が第2チャネル縁部に対して第3方向の一方側に張り出すことを抑制できる。そのため、外側コーナ部分での気泡の滞留を抑制できる。
【0012】
(6)上記(5)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1上流縁部と前記第1チャネル縁部との前記第3方向の距離は、前記第2上流縁部と前記第2チャネル縁部との前記第3方向の距離に比べて長いことが好ましい。
液体は内側コーナ部分を回って上流開口から接続部に進入することから、内側コーナ部分の方が外側コーナ部分よりも液体が滞留し易い。そこで、本態様では、第1上流縁部と第1チャネル縁部との第3方向の距離を、第2上流縁部と第2チャネル縁部との第3方向の距離に比べて長くすることで、内側コーナ部分での液体の滞留をより確実に抑制できる。
【0013】
(7)上記(1)から(6)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記電極は、前記噴射チャネルの内面のうち前記第2方向で向かい合う内側面に形成され、前記上流開口の開口縁のうち前記第2方向の寸法は、前記チャネル開口の開口縁のうち前記第2方向の寸法よりも小さいことが好ましい。
本態様によれば、上流開口がチャネル開口に対して第2方向の内側に収まるように、帰還プレートと吐出部とを重ね合わせる。これにより、上流開口における第2方向の寸法をチャネル開口における第2方向の寸法と同等に設定した場合に比べ、加工精度等による各上流開口及び各チャネル開口との連通面積のばらつきを抑制できる。また、帰還プレートを吐出部に接合した後、レーザ加工等によって帰還プレートに連通路をする際に、帰還プレートを貫通したレーザ光が電極に到達することを抑制できる。そのため、高品質なヘッドチップを提供できる。
【0014】
(8)本開示の一態様に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(7)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えている。
本態様によれば、耐久性に優れた液体噴射ヘッドを提供できる。
【0015】
(9)本開示の一態様に係る液体噴射記録装置は、上記(8)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、耐久性に優れた液体噴射記録装置を提供できる。
【発明の効果】
【0016】
本開示の一態様によれば、圧力室及び循環路間でインクをスムーズに流通させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】第1実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】第1実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
図4図3のIV-IV線に沿う断面図である。
図5図3のV-V線に沿う断面図である。
図6図4のVI-VI線に対応する断面図である。
図7図4のVII部拡大図である。
図8図6のVIII-VIII線に対応する断面図である。
図9図6のIX-IX線に対応する断面図である。
図10図4のX-X線に対応する断面図である。
図11】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図12】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図13】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図14】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図15】第1実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図16】第1実施形態の他の構成に係る図7に対応する断面図である。
図17】第2実施形態に係る図7に対応する断面図である。
図18】第2実施形態の他の構成に係る図7に対応する断面図である。
図19】従来のヘッドチップに係る図7に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0019】
(第1実施形態)
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0020】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。第1実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0021】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクタンク4に収容されるインクは、溶剤に水を使用した水性インク(導電性インク)を用いることが可能である。
【0022】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0023】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0024】
走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、を備えている。
【0025】
<インクジェットヘッド5>
図1に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ29にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(図3参照)と、インク循環機構6及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0026】
<ヘッドチップ50>
図3は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
図3図5に示すように、ヘッドチップ50は、後述する吐出チャネル71におけるチャネル延在方向(Z方向)の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式(縦循環式)のものである。
【0027】
ヘッドチップ50は、第1チップモジュール51Aと、第2チップモジュール51Bと、帰還プレート52と、ノズルプレート(噴射孔プレート)53と、を備えている。以下の説明では、第1チップモジュール51Aを例にして、各チップモジュール51A,51Bの構成を説明する。したがって、第2チップモジュール51Bのうち、第1チップモジュール51Aと同様の構成については、第1チップモジュール51Aと同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0028】
<第1チップモジュール51A>
第1チップモジュール51Aは、第1アクチュエータプレート61と、第1カバープレート62と、第1バックプレート63と、を備えている。以下の説明では、第1チップモジュール51Aについて、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側として説明する。なお、第1アクチュエータプレート61及び第1カバープレート62によって、第1吐出部を構成している。
【0029】
第1アクチュエータプレート61は、分極方向が厚さ方向(Y方向)で異なる2枚の圧電基板を積層した積層基板とされている(いわゆる、シェブロンタイプ)。なお、圧電基板は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなるセラミックス基板が好適に用いられている。但し、第1アクチュエータプレート61は、分極方向が一方向に設定された1枚の圧電基板により形成されていてもよい(いわゆる、モノポールタイプ)。
【0030】
第1アクチュエータプレート61には、インクが充填される吐出チャネル(第1噴射チャネル、噴射チャネル)71、及びインクが充填されない非吐出チャネル72が形成されている。各チャネル71,72は、第1アクチュエータプレート61において、X方向(第2方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されることで、チャネル列70を構成している。本実施形態では、チャネル延在方向がZ方向(第1方向)に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がZ方向に交差していてもよい。
【0031】
図3図4に示すように、吐出チャネル71は、上端部が第1アクチュエータプレート61内で終端し、下端部が第1アクチュエータプレート61における下端面で開口している。吐出チャネル71の上部は、上方に向かうに従いY方向の深さが漸次浅くなっている。一方、吐出チャネル71の下部は、第1アクチュエータプレート61をY方向に貫通している。
図3図5に示すように、非吐出チャネル72は、第1アクチュエータプレート61をY方向に貫通するとともに、第1アクチュエータプレート61をZ方向に貫通している。非吐出チャネル72におけるY方向の深さは、Z方向の全長に亘って一様である。
【0032】
第1アクチュエータプレート61のうち、吐出チャネル71及び非吐出チャネル72間に位置する部分は、それぞれ駆動壁75を構成している。したがって、吐出チャネル71は、一対の駆動壁75によってX方向の両側が囲まれている。第1アクチュエータプレート61のうち、吐出チャネル71に対して上方に位置する部分は、尾部76を構成している。
【0033】
図3に示すように、第1アクチュエータプレート61には、共通配線81及び個別配線82が形成されている。各配線81,82は、Ti/AuやNi/Au等の電極材料を、例えば蒸着やスパッタ、めっき等により成膜することで形成される。
【0034】
図3図4に示すように、共通配線81は、共通電極84と、共通端子85と、を備えている。
共通電極84は、吐出チャネル71の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、共通電極84は、吐出チャネル71の内側面におけるY方向の全域に亘って形成されている。
【0035】
共通端子85は、尾部76の表面に形成されている。共通端子85は、尾部76の表面において、各吐出チャネル71に対応して設けられている。各共通端子85は、対応する吐出チャネル71の上方でZ方向に直線状に延びている。共通端子85における下端部は、共通電極84に連なっている。
【0036】
図3図5に示すように、個別配線82は、個別電極87と、個別端子88と、を備えている。
個別電極87は、各非吐出チャネル72の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極87は、非吐出チャネル72の内側面におけるY方向の全域に亘って形成されている。
【0037】
個別端子88は、尾部76における表面において、共通端子85よりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子88は、X方向に延びる帯状に形成されている。個別端子88は、吐出チャネル71を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル72の表面側開口縁において、吐出チャネル71を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極87同士を接続している。尾部76において、共通端子85と個別端子88との間に位置する部分には、区画溝79が形成されている。区画溝79は、尾部76において、X方向に延びている。区画溝79は、共通端子85と個別端子88とを分離している。
【0038】
尾部76の表面には、フレキシブルプリント基板(不図示)が圧着されている。フレキシブルプリント基板は、尾部76の表面において、共通端子85と個別端子88に接続されている。フレキシブルプリント基板は、第1チップモジュール51Aと制御部との間を接続している。
【0039】
<第1カバープレート62>
図3図5に示すように、第1カバープレート62は、第1アクチュエータプレート61の表面に接合されている。具体的に、第1カバープレート62は、尾部76の表面を露出させた状態で各チャネル71,72の表面側開口を閉塞している。第1カバープレート62の下端面は、第1アクチュエータプレート61の下端面と面一に配置されている。
【0040】
第1カバープレート62において、吐出チャネル71の上部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室90が形成されている。共通インク室90は、例えばチャネル列70を跨る長さでX方向に延びるとともに、第1カバープレート62の表面上で開口している。共通インク室90は、不図示の入口ポートを通じてインク供給管21に間接的に接続されている。
共通インク室90において、吐出チャネル71とY方向から見て重なり合う位置には、スリット91が形成されている。スリット91は、各吐出チャネル71の上部と、共通インク室90内と、の間を各別に連通している。したがって、共通インク室90は、各スリット91を通じて各吐出チャネル71にそれぞれ連通する一方、各非吐出チャネル72には連通していない。
【0041】
<第1バックプレート63>
第1バックプレート63は、第1アクチュエータプレート61の裏面に接合されている。第1バックプレート63は、Y方向から見て第1アクチュエータプレート61と同等の外形である。第1バックプレート63は、Y方向から見て第1アクチュエータプレート61の全体に重ね合わされている。すなわち、第1バックプレート63は、各チャネル71,72の裏面側開口を閉塞している。
【0042】
<第2チップモジュール51B>
第2チップモジュール51Bは、第2アクチュエータプレート101と、第2カバープレート102と、第2バックプレート(流路プレート)103と、を備えている。第2チップモジュール51Bは、第2バックプレート103、第2アクチュエータプレート101及び第2カバープレート102が+Y側から-Y側に順番に重ね合わされている。第2チップモジュール51Bは、表面側(-Y側)を第1チップモジュール51Aとは反対側に向けた状態で、第1チップモジュール51Aに重ね合わされている。具体的に、第1チップモジュール51Aと第2チップモジュール51Bは、第1バックプレート63及び第2バックプレート103の裏面同士が接合されることで、一体化されている。この場合、各チップモジュール51A,51Bの下端面は面一に配置されている。なお、第2アクチュエータプレート101及び第2カバープレート102によって、第2吐出部を構成している。
【0043】
第2チップモジュール51Bの吐出チャネル(第2噴射チャネル)71及び非吐出チャネル72は、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71及び非吐出チャネル72の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。すなわち、各チップモジュール51A,51Bの吐出チャネル71同士及び非吐出チャネル72同士は、千鳥状に配列されている。この場合、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71と、第2チップモジュール51Bの非吐出チャネル72と、がY方向で向かい合い、第1チップモジュール51Aの非吐出チャネル72と、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71と、がY方向で向かい合っている。なお、各チップモジュール51A,51Bのチャネル71,72のピッチは、適宜変更が可能である。
【0044】
<帰還プレート52>
帰還プレート52は、各チップモジュール51A,51Bの下端面に、接着剤を介してまとめて接合されている。帰還プレート52は、各チャネル71,72の下端開口部を閉塞している。帰還プレート52は、例えばポリイミド等により形成されている。帰還プレート52には、第1連通路110及び第2連通路111が複数ずつ形成されている。
【0045】
図6は、図4のVI-VI線に対応する断面図である。図7は、図4のVII部拡大図である。
図6図7に示すように、複数の第1連通路110は、第1チップモジュール51Aのうち各吐出チャネル71とX方向で同等の位置に各別に形成されている。本実施形態において、第1連通路110は、吐出チャネル71の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。各第1連通路110は、X方向から見た側面視において、U字状に形成されている。具体的に、各第1連通路110は、上流開口115と、下流開口116と、接続部117と、を備えている。各第1連通路110は、何れも同様の構成であるため、以下の構成では一の第1連通路110を例にして第1連通路110の詳細について説明する。
【0046】
上流開口115は、Z方向から見て吐出チャネル71と重なり合う位置に形成されている。上流開口115は、上端部が帰還プレート52の上面で開口し、下端部が帰還プレート52内で終端している。上流開口115は、吐出チャネル71の下端開口(チャネル開口)に連通している。本実施形態において、上流開口115の流路断面積(Z方向に直交する断面積)は、Z方向の全体に亘って一様である。但し、上流開口115の流路断面積は、Z方向の位置に応じて変化していてもよい。
【0047】
上流開口115の開口縁の少なくとも一部は、吐出チャネル71の下端開口縁に対してZ方向から見て外側に配置されている。具体的に、上流開口115のうちX方向の寸法は、吐出チャネル71の下端開口におけるX方向の寸法よりも小さい。上流開口115のうちY方向の寸法は、吐出チャネル71の下端開口におけるY方向の寸法よりも大きい。
【0048】
図8は、図6のVIII-VIII線に対応する断面図である。
ここで、図6図8に示すように、吐出チャネル71の下端開口縁は、X方向で向かい合う一対のチャネル側縁部71a,71bと、一対のチャネル側縁部71a,71bの+Y側端部同士を接続するチャネル奥縁部71cと、一対のチャネル側縁部71a,71bにおける-Y側端部同士を接続するチャネル手前縁部71dと、を備えている。また、上流開口115の開口縁は、X方向で向かい合う一対の上流側縁部115a,115bと、一対の上流側縁部115a,115bの+Y側端部同士を接続する上流奥縁部115cと、一対の側縁部115a,115bにおける-Y側端部同士を接続する上流手前縁部115dと、を備えている。
【0049】
図6図8に示すように、上流側縁部115aは、チャネル側縁部71aに対してX方向の内側(+X側)をY方向に直線状に延びている。
上流側縁部115bは、チャネル側縁部71bに対してX方向の内側(-X側)をY方向に直線状に延びている。
図6図7に示すように、上流奥縁部115cは、チャネル奥縁部71cに対してY方向の外側(+Y側)をX方向に直線状に延びている。
上流手前縁部115dは、チャネル手前縁部71dに対してY方向の外側(-Y側)をX方向に直線状に延びている。
【0050】
このように、上流奥縁部115c及び上流手前縁部115dは、吐出チャネル71の下端開口縁(チャネル奥縁部71c及びチャネル手前縁部71d)に対してZ方向から見て外側に配置されている。したがって、第1チップモジュール51Aの下端面のうち、吐出チャネル71に対してY方向の両側に位置する部分は、上流開口115を通じて露呈している。上流手前縁部115dのチャネル手前縁部71dに対するY方向の退避量は、上流奥縁部115cのチャネル奥縁部71cに対するY方向の退避量よりも大きいことが好ましい。本実施形態において、上流奥縁部115cの退避量は、可能な限り小さい方が好ましく、例えば30μm以下であることが好ましい。
【0051】
図9は、図6のIX-IX線に対応する断面図である。
図6図7図9に示すように、下流開口116は、Z方向から見て吐出チャネル71と重なり合う位置に形成されている。下流開口116は、上端部が帰還プレート52の上面で開口し、下端部が帰還プレート52内で終端している。下流開口116におけるZ方向の寸法は、上流開口115と同等になっている。本実施形態において、下流開口116の流路断面積(Z方向に直交する断面積)は、Z方向の全体に亘って一様である。但し、下流開口116の流路断面積は、Z方向の位置に応じて変化していてもよい。
【0052】
下流開口116の流路断面積は、上流開口115の流路断面積よりも小さい。図示の例において、下流開口116は、X方向の寸法が上流開口115と同等で、Y方向の寸法が上流開口115よりも小さくなっている。但し、下流開口116の流路断面積は、上流開口115の流路断面積以上であってもよい。
【0053】
接続部117は、上流開口115及び下流開口116同士を連通させている。接続部117は、帰還プレート52の下面で開口するとともに、Y方向に延びている。接続部117におけるZ方向の寸法は、Y方向の全域に亘って一様になっている。本実施形態において、接続部117におけるZ方向の寸法は、上流開口115及び下流開口116におけるZ方向の寸法よりも大きい。但し、接続部117におけるZ方向の寸法は、Y方向の位置に応じて異ならせてもよい。
【0054】
接続部117は、Z方向から見てX方向の寸法が上流開口115及び下流開口116よりも大きい。具体的に、接続部117は、上流幅広部117aと、下流幅広部117bと、を備えている。
上流幅広部117aは、Z方向から見て上流開口115と重なり合う位置に配置されている。上流幅広部117aは、Z方向から見て上流開口115よりも一回り大きくなっている。
下流幅広部117bは、上流幅広部117aから-Y側に延びている。下流幅広部117bは、Z方向から見て下流開口116と重なり合っている。下流幅広部117bは、Z方向から見て下流開口116よりも一回り大きくなっている。下流幅広部117bにおけるX方向の寸法は、上流幅広部117aよりも小さくなっている。
【0055】
帰還プレート52のうち、X方向から見て第1連通路110に囲まれた部分は、端面被覆部52aを構成している。端面被覆部52aは、第1バックプレート63の下端面に接着剤を介して接合された状態で、第1バックプレート63の下端面を覆っている。具体的に、端面被覆部52aにおける+Y側を向く端面は、上流手前縁部115dを構成している。すなわち、端面被覆部52aにおける+Y側を向く端面は、チャネル手前縁部71dに対してY方向の外側に位置するとともに、Z方向に直線状に延びている。
【0056】
図5に示すように、複数の第2連通路111は、第2チップモジュール51Bのうち各吐出チャネル71とX方向で同等の位置に各別に形成されている。本実施形態において、第2連通路111は、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。すなわち、第1連通路110及び第2連通路111は、X方向に間隔をあけて交互に配置されている。なお、第2連通路111は、第1連通路110と同様の構成をなしている。したがって、第2連通路111のうち、第1連通路110と同様の構成については同一の符号を付して、第2連通路111の詳細な説明は省略する。
【0057】
図10は、図4のX-X線に対応する断面図である。
図4図5図6図10に示すように、上述した第1バックプレート63及び第2バックプレート103は、本実施形態の流路プレート120を構成している。流路プレート120には、複数の第1接続路121、複数の第2接続路122及びマニホールド123が形成されている。
【0058】
複数の第1接続路121は、Z方向から見て各第1連通路110の下流開口116と重なり合う位置に各別に形成されている。第1接続路121は、第1連通路110と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。具体的に、第1接続路121は、第1バックプレート63の裏面上で開口している。第1接続路121における裏面側開口は、第2バックプレート103によって閉塞されている。
【0059】
第1接続路121は、Y方向から見てZ方向に直線状に延びている。第1接続路121における下端部は、第1バックプレート63の下端面上で開口している。これにより、第1接続路121の下端開口は、下流開口116に連通している。一方、第1接続路121における上端部は、第1バックプレート63内で終端している。
【0060】
図7図9に示すように、第1接続路121の下端開口は、X方向の寸法が下流開口116よりも大きく、下流幅広部117bよりも小さくなっている。この場合、下流開口116の開口縁は、第1接続路121の下端開口縁に対して内側に張り出している。但し、第1接続路121における下端開口は、X方向の寸法が下流幅広部117bよりも大きく、又は下流開口116よりも小さくなっていてもよい。
【0061】
図4図5に示すように、第1接続路121は、下端開口から上端開口に向かうに従い流路断面積(Z方向に直交する断面積)が漸次小さくなっている。具体的に、第1接続路121は、下方から上方に向かうに従いY方向の寸法が漸次小さくなっている。但し、第1接続路121は、下方から上方に向かうに従いX方向の寸法が小さくなっていてもよい。また、第1接続路121の流路断面積は、Z方向の全体に亘って一様であってもよい。
【0062】
図10に示すように、複数の第2接続路122は、Z方向から見て各第2連通路111の下流開口116と重なり合う位置に各別に形成されている。第2接続路122は、第2連通路111と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。すなわち、第1接続路121及び第2接続路122は、X方向に交互に配列されている。
【0063】
図5図6に示すように、各第2接続路122は、対応する第2連通路111の下流開口116に連通している。具体的に、第2接続路122は、第2バックプレート103の裏面(+Y側を向く面)上で開口している。第2接続路122における裏面側開口は、第1バックプレート63によって閉塞されている。第2接続路122は、Z方向に延びている。第2接続路122における下端部は、第2バックプレート103の下端面上で開口している。これにより、第2接続路122の下端開口は、第2連通路111の下流開口116に連通している。一方、第2接続路122における上端部は、第2バックプレート103内で終端している。なお、第2接続路122の寸法等は、第1接続路121と同様に設定することが可能である。
【0064】
マニホールド123は、流路プレート120において、各接続路121,122の上方に位置する部分に形成されている。マニホールド123は、第1バックプレート63に形成された第1凹部123aと、第2バックプレート103に形成された第2凹部123bと、が重ね合わされて形成されている。第1凹部123aは、第1バックプレート63の裏面上で開口するとともに、Z方向及びY方向に延びる凹部である。第2凹部123bは、第2バックプレート103の裏面上で開口するとともに、Z方向及びY方向に延びる凹部である。マニホールド123は、第1凹部123a及び第2凹部123bの裏面側開口同士が互いに連通することで形成されている。なお、図示の例において、第1凹部123a及び第2凹部123bの寸法は、同等である。但し、第1凹部123a及び第2凹部123bは、寸法を互いに異ならせてもよい。また、マニホールド123は、第1バックプレート63及び第2バックプレート103の何れか一方のバックプレートのみに形成された凹部を、他方のバックプレートの裏面によって閉塞する構成であってもよい。
【0065】
マニホールド123には、各接続路121,122がまとめて連通している。具体的に、各第1接続路121の上端開口は、第1凹部123aの下端面上で開口している。各第2接続路122の上端開口は、第2凹部123bの下端面上で開口している。なお、マニホールド123は、不図示の出口ポートを通じてインク排出管22に間接的に接続されている。
【0066】
ここで、チップモジュール51A,51B及び帰還プレート52は、保護膜125によって覆われている。本実施形態において、保護膜125は、共通インク室90の内面、スリット91の内面、吐出チャネル71の内面、各連通路110,111の内面、各接続路121,122の内面、及びマニホールド123の内面にも形成されている。保護膜125は、絶縁性を有する材料として、例えばパラキシリレン系樹脂材料(例えば、パリレン(登録商標))等の有機絶縁材料を含んでいる。保護膜125は、酸化タンタル(Ta2O5)、窒化シリコン(SiN)、炭化シリコン(SiC)、酸化シリコン(SiO2)又はダイヤモンドライクカーボン(Diamond-like carbon)等により構成されていてもよく、これらの少なくともいずれか一つを含んでいてもよい。
【0067】
<ノズルプレート53>
図3図5に示すように、ノズルプレート53は、帰還プレート52の下端面に接合されている。ノズルプレート53には、ノズルプレート53をZ方向に貫通するノズル孔(第1ノズル孔131及び第2ノズル孔132)が複数配列されている。
【0068】
複数の第1ノズル孔(噴射孔)131は、ノズルプレート53のうち、Z方向から見て各第1連通路110と重なり合う位置に各別に形成されている。すなわち、第1ノズル孔131は、第1連通路110と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。第1ノズル孔131は、対応する第1連通路110を通じて第1チップモジュール51Aの対応する吐出チャネル71に連通している。具体的に、各第1ノズル孔131は、各第1連通路110における+Y側端部において、吐出チャネル71及び上流幅広部117aにZ方向から見て重なり合う位置に形成されている。なお、第1ノズル孔131は、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71に対してY方向でずれた位置で第1連通路110に連通していてもよい。
【0069】
複数の第2ノズル孔(噴射孔)132は、ノズルプレート53のうち、Z方向から見て各第2連通路111と重なり合う位置に各別に形成されている。すなわち、第2ノズル孔132は、第2連通路111と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。第2ノズル孔132は、対応する第2連通路111を通じて第2チップモジュール51Bの対応する吐出チャネル71に連通している。具体的に、各第2ノズル孔132は、各第2連通路111における-Y側端部において、吐出チャネル71及び上流幅広部117aにZ方向から見て重なり合う位置に形成されている。なお、第2ノズル孔132は、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71に対してY方向でずれた位置で第2連通路111に連通していてもよい。
【0070】
[プリンタ1の動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0071】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pがローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ29がY方向に移動することで、キャリッジ29に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
【0072】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のような縦循環式のヘッドチップ50では、まず図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、入口ポートを通じて各チップモジュール51の共通インク室90に流入する。各共通インク室90に流入したインクは、スリット91を通って各吐出チャネル71内に供給される。各吐出チャネル71内に流入したインクは、各連通路110,111及び各接続路121,122を通してマニホールド123内で集合した後、出口ポートを通してインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0073】
そして、キャリッジ29によって往復移動が開始されると、フレキシブル基板を介して電極84,87に駆動電圧を印加する。この際、個別電極87を駆動電位Vddとし、共通電極84を基準電位GNDとして各電極84,87間に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル71を画成する2つ駆動壁75に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁75が非吐出チャネル72側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート61,101は、厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電基板が積層されているため、駆動電圧を印加することで、駆動壁75におけるY方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル71があたかも膨らむように変形する。
【0074】
2つの駆動壁75の変形によって、吐出チャネル71の容積が増大すると、共通インク室90内のインクがスリット91を通って吐出チャネル71内に誘導される。そして、吐出チャネル71の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル71の内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔131,132に到達したタイミングで、各電極84,87間に印加した駆動電圧をゼロにする。
これにより、駆動壁75が復元し、一旦増大した吐出チャネル71の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル71の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクをノズル孔131,132から吐出させることができる。この際、インクはノズル孔131,132を通過する際に、液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。すなわち、本実施形態のヘッドチップ50では、各連通路110,111を流れるインクのうち、一部のインクがノズル孔131,132を通じて吐出される一方、残りのインクが接続路121,122を通じてマニホールド123に戻される。
【0075】
[ヘッドチップ50の製造方法]
次に、上述したヘッドチップ50の製造方法について説明する。図11は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するためのフローチャートである。図12図15は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するための工程図である。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図11に示すように、ヘッドチップ50は、モジュール作成工程S1と、モジュール積層工程S2と、帰還プレート積層工程S3と、帰還プレート加工工程S4と、保護膜形成工程S5と、ノズルプレート積層工程S6と、を備えている。
【0076】
モジュール作成工程S1は、第1チップモジュール51Aと、第2チップモジュール51Bと、をそれぞれ作成する。
図12に示すように、モジュール積層工程S2では、チップモジュール作成工程S1で作成されたチップモジュール51A,51B同士を貼り合わせる。具体的には、各チップモジュール51A,51Bの下端面同士を一致させた状態で、バックプレート63,103の裏面同士を貼り合わせる。これにより、第1接続路121の裏面側開口が第2バックプレート103により閉塞され、第2接続路122の裏面側開口が第1バックプレート63によって閉塞されるとともに、第1凹部123a及び第2凹部123bによってマニホールド123が形成される。これにより、チップモジュール51A,51Bの積層体が形成される。
【0077】
図13に示すように、帰還プレート積層工程S3では、チップモジュール51A,51Bの積層体における下端面に帰還プレート52を貼り合わせる。
帰還プレート加工工程S4では、帰還プレート52のうちZ方向から見て吐出チャネル71と重なり合う部分に対して連通路110,111を形成する。連通路110,111は、帰還プレート52に対して例えばレーザ加工を施すことにより形成される。具体的に、帰還プレート加工工程S4では、接続部117を形成する第1加工工程を行った後、上流開口115及び下流開口116を形成する第2加工工程を行う。図14に示すように、第1加工工程では、接続部117の形成領域に対してX方向及びY方向にレーザを走査して、帰還プレート52の下面に対して窪む接続部117を形成する。図15に示すように、第2加工工程では、接続部117の底面のうち上流開口115及び下流開口116の形成領域に対してレーザを走査することで、帰還プレート52を貫通させる。これにより、接続部117が上流開口115を通じて吐出チャネル71に連通する一方、下流開口116を通じて接続路121,122に連通する。本実施形態のように、チップモジュール51A,51Bに帰還プレート52が積層された状態で、連通路110,111を形成することで、吐出チャネル71及び接続路121,122と、連通路110,111と、の位置精度を向上させることができる。なお、帰還プレート加工工程S4は、レーザ加工の他、エッチング等で行ってもよい。また、本実施形態では、帰還プレート52をチップモジュール51A,51Bに貼り合わせた後、連通路110,111を形成したが、この構成に限られない。レーザ加工やエッチング等により、帰還プレート52に対して予め連通路110,111を形成した後に、チップモジュール51A,51Bに貼り合わせてもよい。
【0078】
保護膜形成工程S5では、共通インク室90の内面、スリット91の内面、吐出チャネル71の内面、各連通路110,111の内面、各接続路121,122の内面、及びマニホールド123の内面に対して保護膜125を形成する。保護膜125は、例えば化学蒸着法(CVD)等を用いてパラキシリレン系樹脂材料を成膜することにより行う。
【0079】
ノズルプレート積層工程S6では、帰還プレート52の下面に対してノズルプレート53を貼り合わせる。
以上により、ヘッドチップ50が完成する。なお、ヘッドチップ50をウエハレベルで製造する場合には、アクチュエータプレート用ウエハ、カバープレート用ウエハ及びバックプレート用ウエハに対して、上述したチップモジュール作成工程S1と同様の工程を行って、ウエハの積層体を形成する。その後、ウエハの積層体を個片化することで、複数のチップモジュール51A,51Bが取り出される。その後、ウエハの積層体から取り出されたチップモジュール51A,51Bに対して、モジュール積層工程S3以降の工程を施すことで、ヘッドチップ50が完成する。
【0080】
図19は、従来のヘッドチップ50を示す図7に対応する拡大図である。なお、従来のヘッドチップ50について、本実施形態のヘッドチップ50と対応する構成には同一の符号を付して説明を省略する。
図19に示すように、従来のヘッドチップ50では、上流開口115の開口縁が、全周に亘って吐出チャネル71の下端開口縁に対して内側に配置されていた。そのため、上流開口115の開口縁は、Z方向から見て吐出チャネル71の下端開口から張り出すことで、吐出チャネル71の下端開口縁と上流開口115の開口縁との間に張出部分(例えば、図19中における上流奥縁部115cや上流手前縁部115d)が形成される。張出部分が形成されていると、インクの滞留が生じ易い。インクの滞留が発生すると、保護膜125の消失に繋がる可能性がある。
【0081】
これに対して、本実施形態のヘッドチップ50において、帰還プレート52は、上流開口115における開口縁の少なくとも一部が、吐出チャネル71の下端開口の開口縁に対してZ方向から見て外側に配置されるようにチップモジュール51A,51Bに接合されている構成とした。
この構成によれば、上流開口115における開口縁の少なくとも一部が、吐出チャネル71の下端開口縁に対してZ方向から見て外側に配置されているので、上流開口115の開口縁のうち吐出チャネル71の下端開口縁に対して内側に張り出した部分(張出部分)が形成されることを抑制できる。そのため、吐出チャネル71の下端開口縁と張出部分との間にインクが滞留ことを抑制できる。そのため、インクの滞留に起因する保護膜125の消失を抑制できる。そのため、耐久性に優れたヘッドチップ50を提供できる。
【0082】
ところで、チャネル手前縁部71dと上流手前縁部117dとの境界部分は、インクが吐出チャネル71から第1連通路110に流入する際の内側コーナ部分C1として機能する。内側コーナ部分C1に、張出部分が形成されていると、インクの滞留が生じ易い。
本実施形態のヘッドチップ50において、上流開口115の上流手前縁部(第1上流縁部)115dは、吐出チャネル71のチャネル手前縁部(第1チャネル縁部)71dに対して-Y側に位置している構成とした。
この構成によれば、上流手前縁部115dがチャネル手前縁部71dに対して+Y側に張り出すことを抑制できる。そのため、内側コーナ部分C1でのインクの滞留を抑制できる。
【0083】
本実施形態のヘッドチップ50において、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとのY方向の距離は、上流開口115におけるZ方向の寸法(端面被覆部52a)以上である構成とした。
この構成によれば、上流手前縁部115dをチャネル手前縁部71dから十分に離すことができるので、内側コーナ部分C1でのインクの滞留を抑制できる。特に、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとのY方向の距離を、端面被覆部52aにおけるZ方向の寸法に対して2倍以上に設定することで、仮に保護膜125の消失が起こったとしても、保護膜125のうち共通電極84を覆っている部分での消失を抑制できる。その結果、耐久性を確実に向上させることができる。一方、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとのY方向の距離は、第1バックプレート63の裏面と第1接続路121の底面とのY方向の寸法に対して20%以下であることが好ましく、10%以下であることがより好ましい。この場合には、端面被覆部52aと第1バックプレート63の下端面との接着領域を確保できるので、第1バックプレート63の下端面と帰還プレート52との界面を通じて共通電極84までインクが到達することを抑制できる。
【0084】
本実施形態のヘッドチップ50において、上流奥縁部(第2上流縁部)115cは、チャネル奥縁部71cに対して+Y側に位置している構成とした。
この構成によれば、上流奥縁部115cとチャネル奥縁部71cとの境界部分は、インクが吐出チャネル71の下端開口から上流開口115に流入する際の外側コーナ部分C2を形成する。本実施形態では、上流奥縁部115cがチャネル奥縁部71cに対して-Y側に張り出すことを抑制できる。そのため、外側コーナ部分C2でのインクの滞留を抑制できる。
【0085】
本実施形態のヘッドチップ50において、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとのY方向の距離は、上流奥縁部115cとチャネル奥縁部71cとのY方向の距離に比べて長い構成とした。
本実施形態のヘッドチップ50において、インクは内側コーナ部分C1を回って上流開口115から接続部117に進入することから、内側コーナ部分C1の方が外側コーナ部分C2よりもインクが滞留し易い。そこで、本実施形態のように、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとのY方向の距離は、上流奥縁部115cとチャネル奥縁部71cとのY方向の距離に比べて長くすることで、内側コーナ部分C1でのインクの滞留をより確実に抑制できる。
【0086】
本実施形態のヘッドチップ50において、上流開口115におけるX方向の寸法は、吐出チャネル71の下端開口におけるX方向の寸法よりも小さい構成とした。
この構成によれば、上流開口115の開口縁が吐出チャネル71の下端開口縁に対してX方向の内側に収まるように、帰還プレート52とチップモジュール51A,51Bとを重ね合わせる。これにより、上流開口115におけるX方向の寸法を吐出チャネル71の下端開口におけるX方向の寸法と同等に設定した場合に比べ、加工精度等による各上流開口115及び吐出チャネル71の下端開口との連通面積のばらつきを抑制できる。また、帰還プレート52をチップモジュール51A,51Bに接合した後、レーザ加工等によって帰還プレート52に連通路110,111を形成する際に、帰還プレート52を貫通したレーザ光が共通電極84に到達することを抑制できる。そのため、高品質なヘッドチップ50を提供できる。なお、吐出チャネル71の内側面には、共通電極84が形成される関係でレーザ加工による影響が生じ難い一方で、チャネル側縁部71a,71b及び上流側縁部115a,115b間では内側コーナ部分C1又は外側コーナ部分C2に比べてインクの滞留が生じ難い。そのため、本実施形態のように、内側コーナ部分C1又は外側コーナ部分C2での張出部分の発生を抑制することで、共通電極84の保護及びインクの滞留の双方を両立することができる。
【0087】
本実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1では、上述したヘッドチップ50を備えているので、耐久性に優れたインクジェットヘッド5及びプリンタ1を提供できる。
【0088】
なお、第1実施形態では、上流奥縁部115cがチャネル奥縁部71cに対してY方向の外側に位置し、上流手前縁部115dがチャネル手前縁部71dに対してY方向の外側に位置する構成について説明したが、この構成に限られない。図16に示すように、少なくとも上流手前縁部115dがチャネル手前縁部71dに対してY方向の外側に位置していればよい。
【0089】
(第2実施形態)
図17は、第2実施形態に係るヘッドチップ50における図7に対応する断面図である。
図17に示すヘッドチップ50において、上流手前縁部115dは、下方に向かうに従い-Y側に漸次延びる傾斜面に形成されている。
この構成によれば、上流手前縁部115dとチャネル手前縁部71dとの間に形成される内側コーナ部分を緩やかにすることができる。これにより、内側コーナ部分を通過するインクの流れをスムーズにすることができる。そのため、内側コーナ部分でのインクの滞留を抑制できる。
【0090】
なお、第2実施形態に係るヘッドチップ50では、上流手前縁部115dが傾斜面に形成される構成について説明したが、この構成に限られない。例えば、図18に示すように、上流手前縁部115dを段差状に形成してもよい。
【0091】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0092】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0093】
上述した実施形態では、各連通路110,111がY方向に直線状に延びている場合について説明したが、この構成に限られない。各連通路110,111は、Z方向から見てY方向に交差する方向に延びていてもよい。また、各連通路110,111は、Z方向から見て曲線状等に形成されていてもよい。
上述した実施形態では、少なくとも上流手前縁部115dがチャネル手前縁部71dに対してY方向の外側に位置する構成について説明したが、この構成に限られない。上流開口115の開口縁のうち、少なくとも一部が吐出チャネル71の下端開口縁よりも外側に位置していればよい。また、上流開口115の開口縁のうち、吐出チャネル71の下端開口縁に対する退避量等は、適宜変更が可能である。
上述した実施形態では、連通路110,111が接続路121,122を介してマニホールド123の下端開口(マニホールド開口)に連通する構成について説明したが、この構成に限られない。連通路110,111は、例えば下流開口116を介してマニホールド123の下端開口に直接連通する構成であってもよい。
【0094】
上述した実施形態では、チップモジュール51A,51Bが重ね合わされた構成について説明したが、この構成に限られない。第1チップモジュール51Aのみでヘッドチップ50を構成してもよい。
上述した実施形態では、複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士が、X方向に交互に形成されている構成について説明したが、この構成に限られない。複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士は、X方向から見て重なり合わない構成(Y方向に離間した構成)としてもよい。この場合には、複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士の寸法を調整し易い。
【0095】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
52:帰還プレート
53:ノズルプレート(噴射孔プレート)
61:第1アクチュエータプレート(吐出部)
62:第1カバープレート(吐出部)
71:吐出チャネル(噴射チャネル)
71c:チャネル奥側端縁(第2チャネル縁部)
71d:チャネル手前縁部(第1チャネル縁部)
84:共通電極(電極)
101:第2アクチュエータプレート(吐出部)
102:第2カバープレート(吐出部)
110:第1連通路(連通路)
111:第2連通路(連通路)
115:上流開口
115c:上流奥縁部(第2上流縁部)
115d:上流手前縁部(第1上流縁部)
116:下流開口
117:接続部
120:流路プレート
123:マニホールド
125:保護膜
図1
図2
図3
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図5
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