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特開2024-81968ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081968
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240612BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240612BHJP
   B41J 2/18 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B41J2/14 303
B41J2/14 603
B41J2/16 303
B41J2/16 511
B41J2/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195605
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】501167725
【氏名又は名称】エスアイアイ・プリンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】小谷野 高徳
(72)【発明者】
【氏名】西川 大地
(72)【発明者】
【氏名】久保田 禅
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056FA04
2C056KB16
2C057AG44
2C057AN01
2C057AP22
2C057AP54
2C057BA02
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】所望の吐出性能を確保した上で、吐出方向に直交する方向での小型化を図ることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の一態様に係るヘッドチップは、第1吐出部と、第1吐出部のうち第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、複数の第1噴射チャネル及び複数の第1噴射孔間を各別に連通させる複数の第1連通路を有し、第1方向における前記第1吐出部及び噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、複数の第1連通路に各別に連通して、対応する第1連通路とともに第1帰還路を構成する複数の第1接続路と、複数の第1接続路にまとめて連通するマニホールドと、を有し、第1吐出部に対して第3方向の第2側に配置された流路プレートと、を備えている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に延びる第1噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数形成された第1吐出部と、
複数の前記第1噴射チャネルに各別に連通する複数の第1噴射孔を有し、前記第1吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、
前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記第1噴射チャネル及び複数の前記第1噴射孔間を各別に連通させる複数の第1連通路を有し、前記第1方向における前記第1吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、
前記第1方向に延びるとともに複数の前記第1連通路のうち前記第3方向の第1側とは反対側に位置する第2側端部において各別に連通して、対応する前記第1連通路とともに第1帰還路を構成する複数の第1接続路と、複数の前記第1接続路にまとめて連通するマニホールドと、を有し、前記第1吐出部に対して前記第3方向の第2側に配置された流路プレートと、を備えているヘッドチップ。
【請求項2】
前記第1接続路における前記第1方向の寸法は、前記第1連通路における前記第3方向の寸法よりも大きい請求項1に記載のヘッドチップ。
【請求項3】
前記第1接続路のうち、前記第1連通路との接続部分である接続上流開口における流路断面積は、前記マニホールドとの接続部分である接続下流開口における流路断面積よりも大きい請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項4】
前記第1接続路の流路断面積は、前記接続上流開口から前記接続下流開口に向かうに従い漸次縮小している請求項3に記載のヘッドチップ。
【請求項5】
前記第1連通路のうち前記第1接続路との接続部分である連通下流開口と、前記第1接続路のうち前記第1連通路との接続部分である接続上流開口と、は前記第2方向での寸法が異なっている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項6】
前記第1方向に延びる第2噴射チャネルが前記第2方向に複数形成されるとともに、前記流路プレートに対して前記第1吐出部とは反対側に配置された第2吐出部を備え、
前記噴射孔プレートには、複数の前記第2噴射チャネルに各別に連通する複数の第2噴射孔が形成されており、
前記帰還プレートには、前記第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第2側端部において複数の前記第2噴射チャネル及び複数の前記第2噴射孔間を各別に連通させる複数の第2連通路が形成されており、
前記流路プレートには、前記第1方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記第2連通路に各別に連通して、前記第2連通路とともに第2帰還路を構成する複数の第2接続路が形成されており、
前記複数の第2接続路は、前記マニホールドにまとめて連通しており、
複数の前記第1連通路及び複数の前記第2連通路は、前記帰還プレートにおいて、前記第2方向に交互に形成されており、
複数の前記第1接続路及び複数の前記第2接続路は、前記流路プレートにおいて、前記第2方向に交互に形成されている請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップ。
【請求項7】
請求項1又は請求項2に記載のヘッドチップを備えている液体噴射ヘッド。
【請求項8】
請求項7に記載の液体噴射ヘッドを備えている液体噴射記録装置。
【請求項9】
第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数形成された吐出部と、
複数の前記噴射チャネルに各別に連通する複数の噴射孔を有し、前記吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、
前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記噴射チャネル及び複数の前記噴射孔間を各別に連通させる複数の連通路を有し、前記第1方向における前記吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、
前記第1方向に延びるとともに複数の前記連通路のうち前記第3方向の第1側とは反対側に位置する第2側端部において各別に連通して、対応する前記連通路とともに帰還路を構成する複数の接続路と、複数の前記接続路にまとめて連通するマニホールドと、を有し、前記吐出部に対して前記第3方向の第2側に配置された流路プレートと、を備えたヘッドチップの製造方法であって、
前記吐出部及び前記流路プレートを前記第3方向で重ね合わせる第1重ね合わせ工程と、
前記吐出部及び前記流路プレートに対して前記第1方向の一方側から前記帰還プレートを重ね合わせる第2重ね合わせ工程と、
前記帰還プレートに対して前記第1方向の一方側から前記噴射孔プレートを重ね合わせる第3重ね合わせ工程と、を備え、
前記第2重ね合わせ工程に先立ち、前記接続路の寸法を調整して、前記接続路内での流路抵抗を調整する調整工程を備えているヘッドチップの製造方法。
【請求項10】
前記調整工程は、前記流路プレートに対して前記第1方向を向く端面を切削加工することで、前記接続路における前記第1方向の長さを調整する請求項9に記載のヘッドチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタに搭載されるインクジェットヘッドとして、循環式のヘッドチップを備えたものが知られている。循環式のヘッドチップは、インクを加圧する複数の圧力室と、各圧力室に各別に連通する複数のノズル孔と、対応する圧力室及びノズル孔間に各別に設けられた複数の循環路と、複数の循環路がまとめて接続された共通流路と、を備える構成が開示されている(例えば、下記特許文献1,2参照)。各循環路は、液体の吐出方向に直交する方向のうち、ノズル孔の配列方向に交差する方向に延びている。
この種のヘッドチップでは、各圧力室で加圧されたインクのうち、一部のインクは対応するノズル孔を通じて吐出される一方、残りのインクは循環路を通じて共通流路に流入する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-56766号公報
【特許文献2】特表2015-509454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、循環式のヘッドチップにおいて、所望の吐出性能を得るためには、圧力室での消費電力や循環路での流路抵抗を最適化する必要がある。圧力室の消費電力や循環路の流路抵抗は、圧力室の寸法と循環路の寸法を変更することで調整可能である。
しかし、従来のヘッドチップでは、循環路が吐出方向に直交する方向のみに延びているため、仮に循環路を長くしようとした場合には、吐出方向に直交する方向でのヘッドチップの大型化に繋がる可能性がある。
【0005】
本開示は、所望の吐出性能を確保した上で、吐出方向に直交する方向での小型化を図ることができるヘッドチップ、液体噴射ヘッド、液体噴射記録装置及びヘッドチップの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示は以下の態様を採用した。
(1)本開示の一態様に係るヘッドチップは、第1方向に延びる第1噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数形成された第1吐出部と、複数の前記第1噴射チャネルに各別に連通する複数の第1噴射孔を有し、前記第1吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記第1噴射チャネル及び複数の前記第1噴射孔間を各別に連通させる複数の第1連通路を有し、前記第1方向における前記第1吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、前記第1方向に延びるとともに複数の前記第1連通路のうち前記第3方向の第1側とは反対側に位置する第2側端部において各別に連通して、対応する前記第1連通路とともに第1帰還路を構成する複数の第1接続路と、複数の前記第1接続路にまとめて連通するマニホールドと、を有し、前記第1吐出部に対して前記第3方向の第2側に配置された流路プレートと、を備えている。
【0007】
本態様によれば、第1噴射チャネルから噴射孔に向かって流れる液体のうち、一部の液体が第1帰還路(第1連通路及び第1接続路)を通じてマニホールドに流入する。この際、ヘッドチップの噴射性能を調整するにあたって、第1接続路の寸法を調整することで、第1帰還路の流路抵抗を調整することができる。これにより、従来のように、第1連通路の寸法を第1方向に交差する方向で調整することで、第1帰還路の流路抵抗を調整する場合に比べ、第1方向に交差する方向での大型化を抑制した上で、所望の噴射性能を発揮させることができる。
【0008】
(2)上記(1)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1接続路における前記第1方向の寸法は、前記第1連通路における前記第3方向の寸法よりも大きいことが好ましい。
本態様によれば、第1連通路における第3方向の寸法が、第1接続路における第1方向の寸法よりも大きい場合に比べ、第1方向に交差する方向でのヘッドチップの大型化を抑制できる。
【0009】
(3)上記(1)又は(2)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1接続路のうち、前記第1連通路との接続部分である接続上流開口における流路断面積は、前記マニホールドとの接続部分である接続下流開口における流路断面積よりも大きいことが好ましい。
本態様によれば、第1連通路から第1接続路に液体をスムーズに流入させることができる。この際、例えば第1接続路よりも上流側で発生した気泡を、第1接続路を通じてマニホールドに排出し易くなる。これにより、気泡が第1噴射孔を通じて外部に排出されることを抑制し、高精度な印刷を行うことができる。
しかも、第1接続路の流路断面積が上流側と下流側とで異なるため、第1帰還路の流路抵抗を調整するにあたって、第1接続路の第1方向の寸法を調整することで、第1接続路の流路断面積も調整することができる。これにより、第1帰還路の流路抵抗を調整する際における調整代を確保し易い。
【0010】
(4)上記(3)の態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1接続路の流路断面積は、前記接続上流開口から前記接続下流開口に向かうに従い漸次縮小していることが好ましい。
本態様によれば、第1接続路内において、接続上流開口から接続下流開口に向かうに従い液体の流速を徐々に速めることができる。これにより、第1接続路内で液体をよりスムーズに流すことができる。
【0011】
(5)上記(1)から(4)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1連通路のうち前記第1接続路との接続部分である連通下流開口と、前記第1接続路のうち前記第1連通路との接続部分である接続上流開口と、は前記第2方向での寸法が異なっていることが好ましい。
本態様によれば、連通下流開口と接続上流開口のうち第2方向での寸法が小さい開口を、第2方向での寸法が大きい開口の範囲内に収まるように、帰還プレートと流路プレートとを重ね合わせる。これにより、接続上流開口と連通下流開口との第2方向での寸法を同等に設定した場合に比べ、加工精度等による各第1連通路及び各第1接続路間での接続上流開口と連通下流開口との連通面積のばらつきを抑制できる。これにより、各帰還路内での流路抵抗を安定させ易い。
【0012】
(6)上記(1)から(5)の何れかの態様に係るヘッドチップにおいて、前記第1方向に延びる第2噴射チャネルが前記第2方向に複数形成されるとともに、前記流路プレートに対して前記第1吐出部とは反対側に配置された第2吐出部を備え、前記噴射孔プレートには、複数の前記第2噴射チャネルに各別に連通する複数の第2噴射孔が形成されており、前記帰還プレートには、前記第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第2側端部において複数の前記第2噴射チャネル及び複数の前記第2噴射孔間を各別に連通させる複数の第2連通路が形成されており、前記流路プレートには、前記第1方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記第2連通路に各別に連通して、前記第2連通路とともに第2帰還路を構成する複数の第2接続路が形成されており、前記複数の第2接続路は、前記マニホールドにまとめて連通しており、複数の前記第1連通路及び複数の前記第2連通路は、前記帰還プレートにおいて、前記第2方向に交互に形成されており、複数の前記第1接続路及び複数の前記第2接続路は、前記流路プレートにおいて、前記第2方向に交互に形成されていることが好ましい。
本態様によれば、第1連通路及び第2連通路同士、並びに第1接続路及び第2接続路同士をそれぞれ第2方向から見て重なり合うように配置することができる。そのため、第1連通路及び第2連通路同士、並びに第1接続路及び第2接続路同士をそれぞれ第3方向に離して形成する場合に比べ、ヘッドチップの第3方向での小型化を図ることができる。
【0013】
(7)本開示に係る液体噴射ヘッドは、上記(1)から(6)の何れかの態様に係るヘッドチップを備えていることが好ましい。
本態様によれば、所望の吐出性能を確保した上で、第1方向に交差する方向での小型化を図ることができる。
【0014】
(8)本開示に係る液体噴射記録装置は、上記(7)の態様に係る液体噴射ヘッドを備えている。
本態様によれば、所望の吐出性能を確保した上で、第1方向に交差する方向での小型化を図ることができる。
【0015】
(9)本開示の一態様に係るヘッドチップの製造方法は、第1方向に延びる噴射チャネルが前記第1方向に交差する第2方向に複数形成された吐出部と、複数の前記噴射チャネルに各別に連通する複数の噴射孔を有し、前記吐出部のうち前記第1方向の第1側に配置された噴射孔プレートと、前記第1方向から見て前記第2方向に交差する第3方向に延びるとともに、前記第3方向の第1側端部において複数の前記噴射チャネル及び複数の前記噴射孔間を各別に連通させる複数の連通路を有し、前記第1方向における前記吐出部及び前記噴射孔プレート間に配置された帰還プレートと、前記第1方向に延びるとともに複数の前記連通路のうち前記第3方向の第1側とは反対側に位置する第2側端部において各別に連通して、対応する前記連通路とともに帰還路を構成する複数の接続路と、複数の前記接続路にまとめて連通するマニホールドと、を有し、前記吐出部に対して前記第3方向の第2側に配置された流路プレートと、を備えたヘッドチップの製造方法であって、前記吐出部及び前記流路プレートを前記第3方向で重ね合わせる第1重ね合わせ工程と、前記吐出部及び前記流路プレートに対して前記第1方向の一方側から前記帰還プレートを重ね合わせる第2重ね合わせ工程と、前記帰還プレートに対して前記第1方向の一方側から前記噴射孔プレートを重ね合わせる第3重ね合わせ工程と、を備え、前記第2重ね合わせ工程に先立ち、前記接続路の寸法を調整して、前記接続路内での流路抵抗を調整する調整工程を備えている。
【0016】
(10)上記(9)の態様に係るヘッドチップの製造方法において、前記調整工程は、前記流路プレートに対して前記第1方向を向く端面を切削加工することで、前記接続路における前記第1方向の長さを調整することが好ましい。
本態様によれば、所望の吐出性能が発揮できるヘッドチップの理想パラメータに簡単に近付けることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示の一態様によれば、所望の吐出性能を確保した上で、吐出方向に直交する方向での小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係るプリンタの概略構成図である。
図2】実施形態に係るインクジェットヘッド及びインク循環機構の概略構成図である。
図3】実施形態に係るヘッドチップの分解斜視図である。
図4図3のIV-IV線に対応する断面図である。
図5図3のV-V線に対応する断面図である。
図6図4のVI-VI線に対応する断面図である。
図7図4のVII-VII線に対応する断面図である。
図8】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図9】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図10】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図11】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図12】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図13】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図14】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図15】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図16】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図17】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図18】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
図19】実施形態に係るヘッドチップの製造方法を説明するための工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照して説明する。以下で説明する実施形態や変形例において、対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。以下の説明において、例えば「平行」や「直交」、「中心」、「同軸」等の相対的又は絶対的な配置を示す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差や同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。以下の実施形態では、インク(液体)を利用して被記録媒体に記録を行うインクジェットプリンタ(以下、単にプリンタという)を例に挙げて説明する。以下の説明に用いる図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
[プリンタ1]
図1はプリンタ1の概略構成図である。
図1に示すように、第1実施形態のプリンタ(液体噴射記録装置)1は、一対の搬送機構2,3と、インクタンク4と、インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)5と、インク循環機構6と、走査機構7と、を備えている。
【0021】
以下の説明では、必要に応じてX,Y,Zの直交座標系を用いて説明する。この場合、X方向は被記録媒体P(例えば、紙等)の搬送方向(副走査方向)に一致している。Y方向は走査機構7の走査方向(主走査方向)に一致している。Z方向は、X方向及びY方向に直交する高さ方向(重力方向)を示している。以下の説明では、X方向、Y方向及びZ方向のうち、図中矢印側をプラス(+)側とし、矢印とは反対側をマイナス(-)側として説明する。実施形態において、+Z側は重力方向の上方に相当し、-Z側は重力方向の下方に相当する。
【0022】
搬送機構2,3は、被記録媒体Pを+X側に搬送する。搬送機構2,3は、例えばY方向に延びる一対のローラ11,12をそれぞれ含んでいる。
インクタンク4は、例えばイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクが各別に収容されている。各インクジェットヘッド5は、接続されたインクタンク4に応じてイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のインクをそれぞれ吐出可能に構成されている。なお、インクタンク4に収容されるインクは、溶剤に水を使用した水性インク(導電性インク)を用いることが可能である。
【0023】
図2は、インクジェットヘッド5及びインク循環機構6の概略構成図である。
図1図2に示すように、インク循環機構6は、インクタンク4とインクジェットヘッド5との間でインクを循環させる。具体的に、インク循環機構6は、インク供給管21及びインク排出管22を有する循環流路23と、インク供給管21に接続された加圧ポンプ24と、インク排出管22に接続された吸引ポンプ25と、を備えている。
【0024】
加圧ポンプ24は、インク供給管21内を加圧し、インク供給管21を通してインクジェットヘッド5にインクを送り出している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク供給管21側は正圧になる。
吸引ポンプ25は、インク排出管22内を減圧し、インク排出管22内を通してインクジェットヘッド5からインクを吸引している。これにより、インクジェットヘッド5に対してインク排出管22側は負圧になる。インクは、加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25の駆動により、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間を、循環流路23を通して循環可能となっている。
【0025】
走査機構7は、インクジェットヘッド5をY方向に往復走査させる。走査機構7は、Y方向に延びるガイドレール28と、ガイドレール28に移動可能に支持されたキャリッジ29と、を備えている。
【0026】
<インクジェットヘッド5>
図1に示すように、インクジェットヘッド5は、キャリッジ29に搭載されている。図示の例では、複数のインクジェットヘッド5が、一つのキャリッジ29にY方向に並んで搭載されている。インクジェットヘッド5は、ヘッドチップ50(図3参照)と、インク循環機構6及びヘッドチップ50間を接続するインク供給部(不図示)と、ヘッドチップ50に駆動電圧を印加する制御部(不図示)と、を備えている。
【0027】
<ヘッドチップ50>
図3は、ヘッドチップ50の分解斜視図である。図4は、図3のIV-IV線に沿う断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う断面図である。
図3図5に示すように、ヘッドチップ50は、後述する吐出チャネル71におけるチャネル延在方向(Z方向)の先端部からインクを吐出する、いわゆるエッジシュートタイプのうち、インクタンク4との間でインクを循環させる循環式(縦循環式)のものである。
【0028】
ヘッドチップ50は、第1チップモジュール51Aと、第2チップモジュール51Bと、帰還プレート52と、ノズルプレート(噴射孔プレート)53と、を備えている。以下の説明では、第1チップモジュール51Aを例にして、各チップモジュール51A,51Bの構成を説明する。したがって、第2チップモジュール51Bのうち、第1チップモジュール51Aと同様の構成については、第1チップモジュール51Aと同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0029】
<第1チップモジュール51A>
第1チップモジュール51Aは、第1アクチュエータプレート61と、第1カバープレート62と、第1バックプレート63と、を備えている。以下の説明では、第1チップモジュール51Aについて、+Y側を表面側とし、-Y側を裏面側として説明する。なお、第1アクチュエータプレート61及び第1カバープレート62によって、第1吐出部を構成している。
【0030】
第1アクチュエータプレート61は、分極方向が厚さ方向(Y方向(第3方向))で異なる2枚の圧電基板を積層した積層基板とされている(いわゆる、シェブロンタイプ)。なお、圧電基板は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等からなるセラミックス基板が好適に用いられている。但し、第1アクチュエータプレート61は、分極方向が一方向に設定された1枚の圧電基板により形成されていてもよい(いわゆる、モノポールタイプ)。
【0031】
第1アクチュエータプレート61には、インクが充填される吐出チャネル(第1噴射チャネル、噴射チャネル)71、及びインクが充填されない非吐出チャネル72が形成されている。各チャネル71,72は、第1アクチュエータプレート61において、X方向(第2方向)に間隔をあけた状態で交互に配列されることで、チャネル列70を構成している。本実施形態では、チャネル延在方向がZ方向(第1方向)に一致する構成について説明するが、チャネル延在方向がZ方向に交差していてもよい。
【0032】
図3図4に示すように、吐出チャネル71は、上端部が第1アクチュエータプレート61内で終端し、下端部が第1アクチュエータプレート61における下端面で開口している。吐出チャネル71の上部は、上方に向かうに従いY方向の深さが漸次浅くなっている。一方、吐出チャネル71の下部は、第1アクチュエータプレート61をY方向に貫通している。
図3図5に示すように、非吐出チャネル72は、第1アクチュエータプレート61をY方向に貫通するとともに、第1アクチュエータプレート61をZ方向に貫通している。非吐出チャネル72におけるY方向の深さは、Z方向の全長に亘って一様である。
【0033】
第1アクチュエータプレート61のうち、吐出チャネル71及び非吐出チャネル72間に位置する部分は、それぞれ駆動壁75を構成している。したがって、吐出チャネル71は、一対の駆動壁75によってX方向の両側が囲まれている。第1アクチュエータプレート61のうち、吐出チャネル71に対して上方に位置する部分は、尾部76を構成している。
【0034】
図3に示すように、第1アクチュエータプレート61には、共通配線81及び個別配線82が形成されている。各配線81,82は、Ti/AuやNi/Au等の電極材料を、例えば蒸着やスパッタ、めっき等により成膜することで形成される。
【0035】
図3図4に示すように、共通配線81は、共通電極84と、共通端子85と、を備えている。
共通電極84は、吐出チャネル71の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、共通電極84は、吐出チャネル71の内側面におけるY方向の全域に亘って形成されている。
【0036】
共通端子85は、尾部76の表面に形成されている。共通端子85は、尾部76の表面において、各吐出チャネル71に対応して設けられている。各共通端子85は、対応する吐出チャネル71の上方でZ方向に直線状に延びている。共通端子85における下端部は、共通電極84に連なっている。
【0037】
図3図5に示すように、個別配線82は、個別電極87と、個別端子88と、を備えている。
個別電極87は、各非吐出チャネル72の内面のうち、X方向で向かい合う内側面に形成されている。図示の例において、個別電極87は、非吐出チャネル72の内側面におけるY方向の全域に亘って形成されている。
【0038】
個別端子88は、尾部76における表面において、共通端子85よりも上方に位置する部分に形成されている。個別端子88は、X方向に延びる帯状に形成されている。個別端子88は、吐出チャネル71を間に挟んでX方向で向かい合う非吐出チャネル72の表面側開口縁において、吐出チャネル71を間に挟んでX方向で向かい合う個別電極87同士を接続している。尾部76において、共通端子85と個別端子88との間に位置する部分には、区画溝79が形成されている。区画溝79は、尾部76において、X方向に延びている。区画溝79は、共通端子85と個別端子88とを分離している。
【0039】
尾部76の表面には、フレキシブルプリント基板(不図示)が圧着されている。フレキシブルプリント基板は、尾部76の表面において、共通端子85と個別端子88に接続されている。フレキシブルプリント基板は、第1チップモジュール51Aと制御部との間を接続している。
【0040】
<第1カバープレート62>
図3図5に示すように、第1カバープレート62は、第1アクチュエータプレート61の表面に接合されている。具体的に、第1カバープレート62は、尾部76の表面を露出させた状態で各チャネル71,72の表面側開口を閉塞している。第1カバープレート62の下端面は、第1アクチュエータプレート61の下端面と面一に配置されている。
【0041】
第1カバープレート62において、吐出チャネル71の上部とY方向から見て重なり合う位置には、共通インク室90が形成されている。共通インク室90は、例えばチャネル列70を跨る長さでX方向に延びるとともに、第1カバープレート62の表面上で開口している。共通インク室90は、不図示の入口ポートを通じてインク供給管21に間接的に接続されている。
共通インク室90において、吐出チャネル71とY方向から見て重なり合う位置には、スリット91が形成されている。スリット91は、各吐出チャネル71の上部と、共通インク室90内と、の間を各別に連通している。したがって、共通インク室90は、各スリット91を通じて各吐出チャネル71にそれぞれ連通する一方、各非吐出チャネル72には連通していない。
【0042】
<第1バックプレート63>
第1バックプレート63は、第1アクチュエータプレート61の裏面に接合されている。第1バックプレート63は、Y方向から見て第1アクチュエータプレート61と同等の外形である。第1バックプレート63は、Y方向から見て第1アクチュエータプレート61の全体に重ね合わされている。すなわち、第1バックプレート63は、各チャネル71,72の裏面側開口を閉塞している。
【0043】
<第2チップモジュール51B>
第2チップモジュール51Bは、第2アクチュエータプレート101と、第2カバープレート102と、第2バックプレート(流路プレート)103と、を備えている。第2チップモジュール51Bは、第2バックプレート103、第2アクチュエータプレート101及び第2カバープレート102が+Y側から-Y側に順番に重ね合わされている。第2チップモジュール51Bは、表面側(-Y側)を第1チップモジュール51Aとは反対側に向けた状態で、第1チップモジュール51Aに重ね合わされている。具体的に、第1チップモジュール51Aと第2チップモジュール51Bは、第1バックプレート63及び第2バックプレート103の裏面同士が接合されることで、一体化されている。この場合、各チップモジュール51A,51Bの下端面は面一に配置されている。なお、第2アクチュエータプレート101及び第2カバープレート102によって、第2吐出部を構成している。
【0044】
第2チップモジュール51Bの吐出チャネル(第2噴射チャネル)71及び非吐出チャネル72は、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71及び非吐出チャネル72の配列ピッチに対して半ピッチずれて配列されている。すなわち、各チップモジュール51A,51Bの吐出チャネル71同士及び非吐出チャネル72同士は、千鳥状に配列されている。この場合、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71と、第2チップモジュール51Bの非吐出チャネル72と、がY方向で向かい合い、第1チップモジュール51Aの非吐出チャネル72と、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71と、がY方向で向かい合っている。なお、各チップモジュール51A,51Bのチャネル71,72のピッチは、適宜変更が可能である。
【0045】
<帰還プレート52>
帰還プレート52は、各チップモジュール51A,51Bの下端面にまとめて接合されている。帰還プレート52は、各チャネル71,72の下端開口部を閉塞している。帰還プレート52は、例えばポリイミド等により形成されている。帰還プレート52には、第1連通路110及び第2連通路111が複数ずつ形成されている。
【0046】
図6は、図4のVI-VI線に対応する断面図である。
図4図6に示すように、複数の第1連通路110は、第1チップモジュール51Aのうち各吐出チャネル71とX方向で同等の位置に各別に形成されている。本実施形態において、第1連通路110は、吐出チャネル71の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。具体的に、各第1連通路110は、帰還プレート52をZ方向に貫通するとともに、Y方向に直線状に延びている。第1連通路110における+Y側端部(第3方向の第1側端部)は、Z方向から見て少なくとも吐出チャネル71と重なり合っている。すなわち、第1連通路110は、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71と連通している。図示の例において、第1連通路110は、Z方向から見て第1アクチュエータプレート61におけるY方向の全体に亘って重なり合っている。なお、第1連通路110は、Z方向から見て第1カバープレート62と重なり合う位置まで延びていてもよい。
【0047】
第1連通路110における-Y側端部(第3方向の第2側端部)は、Z方向から見て第1バックプレート63と重なり合っている。具体的に、第1連通路110は、Z方向から見て第1バックプレート63におけるY方向の全域に亘って延びている。但し、第1連通路110は、Z方向から見て第2バックプレート103と重なり合う位置まで延びていてもよい。
【0048】
複数の第2連通路111は、第2チップモジュール51Bのうち各吐出チャネル71とX方向で同等の位置に各別に形成されている。本実施形態において、第2連通路111は、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71の配列ピッチに対応してX方向に間隔をあけて複数形成されている。すなわち、第1連通路110及び第2連通路111は、X方向に間隔をあけて交互に配置されている。各第2連通路111は、帰還プレート52をZ方向に貫通するとともに、Y方向に直線状に延びている。第2連通路111における-Y側端部は、Z方向から見て少なくとも吐出チャネル71と重なり合っている。すなわち、第2連通路111は、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71と連通している。図示の例において、第2連通路111は、Z方向から見て第2アクチュエータプレート101におけるY方向の全体に亘って重なり合っている。なお、第2連通路111は、Z方向から見て第2カバープレート102と重なり合う位置まで延びていてもよい。
【0049】
第2連通路111における+Y側端部は、Z方向から見て第2バックプレート103と重なり合っている。具体的に、第2連通路111は、Z方向から見て第2バックプレート103におけるY方向の全域に亘って延びている。但し、第2連通路111は、Z方向から見て第1バックプレート63と重なり合う位置まで延びていてもよい。
【0050】
連通路110,111におけるX方向の寸法は、Y方向の全体に亘って一様になっている。連通路110,111におけるX方向の寸法は、吐出チャネル71におけるX方向の寸法よりも小さい。但し、連通路110,111におけるX方向の寸法は、吐出チャネル71におけるX方向の寸法以上であってもよい。なお、連通路110におけるX方向の寸法は、Y方向に向かうに従い漸次変化してもよい。
【0051】
<ノズルプレート53>
図3図5に示すように、ノズルプレート53は、帰還プレート52の下端面に接合されている。ノズルプレート53には、ノズルプレート53をZ方向に貫通するノズル孔(第1ノズル孔115及び第2ノズル孔116)が複数配列されている。
【0052】
複数の第1ノズル孔(噴射孔)115は、ノズルプレート53のうち、Z方向から見て各第1連通路110と重なり合う位置に各別に形成されている。すなわち、第1ノズル孔115は、第1連通路110と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。第1ノズル孔115は、対応する第1連通路110を通じて第1チップモジュール51Aの対応する吐出チャネル71に連通している。具体的に、各第1ノズル孔115は、各第1連通路110における+Y側端部において、吐出チャネル71及び第1連通路110にZ方向から見て重なり合う位置に形成されている。なお、第1ノズル孔115は、第1チップモジュール51Aの吐出チャネル71に対してY方向でずれた位置で第1連通路110に連通していてもよい。
【0053】
複数の第2ノズル孔(噴射孔)116は、ノズルプレート53のうち、Z方向から見て各第2連通路111と重なり合う位置に各別に形成されている。すなわち、第2ノズル孔116は、第2連通路111と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。第2ノズル孔116は、対応する第2連通路111を通じて第2チップモジュール51Bの対応する吐出チャネル71に連通している。具体的に、各第2ノズル孔116は、各第2連通路111における-Y側端部において、吐出チャネル71及び第2連通路111にZ方向から見て重なり合う位置に形成されている。なお、第2ノズル孔116は、第2チップモジュール51Bの吐出チャネル71に対してY方向でずれた位置で第2連通路111に連通していてもよい。
【0054】
図7は、図4のVII-VII線に対応する断面図である。
ここで、図4図5図7に示すように、第1バックプレート63及び第2バックプレート103は、本実施形態の流路プレート120を構成している。流路プレート120には、複数の第1接続路121、複数の第2接続路122及びマニホールド123が形成されている。
【0055】
複数の第1接続路121は、対応する第1連通路110とともに、第1帰還路を構成する。複数の第1接続路121は、Z方向から見て対応する第1連通路110の-Y側端部と重なり合う位置に各別に形成されている。第1接続路121は、第1連通路110と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。第1接続路121は、対応する第1連通路110に連通している。具体的に、第1接続路121は、第1バックプレート63の裏面上で開口している。第1接続路121における裏面側開口は、第2バックプレート103によって閉塞されている。
【0056】
第1接続路121は、Y方向から見てZ方向に直線状に延びている。第1接続路121における下端部は、第1バックプレート63の下端面上で開口している。これにより、第1接続路121の下端開口は、第1連通路110に連通している。一方、第1接続路121における上端部は、第1バックプレート63内で終端している。第1接続路121の上端部は、吐出チャネル71の上端よりも下方に位置していることが好ましく、図示の例においてスリット91の下端縁と同等の高さに位置している。本実施形態において、第1接続路121におけるZ方向の寸法T1(図4参照)は、第1連通路110におけるY方向の寸法T2よりも大きい。本実施形態において、第1連通路110の寸法T2とは、吐出チャネル71の下端開口と、第1接続路121の下端開口と、の間の距離である。但し、第1接続路121におけるZ方向の寸法T1は、第1連通路110におけるY方向の寸法T2以下であってもよい。なお、第1接続路121は、X方向から見てZ方向に交差する方向に延びていてもよく、曲線状に延びていてもよい。
【0057】
第1接続路121の下端開口は、第1連通路110の-Y側端部において第1接続路121との接続部分(以下、連通下流開口という。)に対して、X方向の寸法が異なっている。図6に示すように、第1接続路121の下端開口におけるX方向の寸法Q1は、第1連通路110の連通下流開口におけるX方向の寸法Q2に対して大きい。この場合、第1連通路110の連通下流開口は、Z方向から見て第1接続路121の下端開口に対してY方向の内側に収まっていることが好ましい。但し、第1接続路121における下端開口は、第1連通路110の連通下流開口に対してX寸法が小さくてもよい。なお、図示の例において、連通下流開口の寸法Q2は、第1連通路110におけるX方向の寸法と同等である。
【0058】
また、第1接続路121は、下端開口(接続上流開口)から上端開口(接続下流開口)に向かうに従い流路断面積(Z方向に直交する断面積)が漸次小さくなっている。具体的に、第1接続路121は、下方から上方に向かうに従いY方向の寸法が漸次小さくなっている。但し、第1接続路121は、下方から上方に向かうに従いX方向の寸法が小さくなっていてもよい。また、第1接続路121の流路断面積は、Z方向の全体に亘って一様であってもよい。
【0059】
複数の第2接続路122は、対応する第2連通路111とともに、第2帰還路を構成する。複数の第2接続路122は、Z方向から見て各第2連通路111の+Y側端部と重なり合う位置に各別に形成されている。第2接続路122は、第2連通路111と同ピッチで、X方向に間隔をあけて配列されている。すなわち、第1接続路121及び第2接続路122は、X方向に交互に配列されている。
【0060】
各第2接続路122は、対応する第2連通路111に連通している。具体的に、第2接続路122は、第2バックプレート103の裏面(+Y側を向く面)上で開口している。第2接続路122における裏面側開口は、第1バックプレート63によって閉塞されている。第2接続路122は、Z方向に延びている。第2接続路122における下端部は、第2バックプレート103の下端面上で開口している。これにより、第2接続路122の下端開口は、第2連通路111に連通している。一方、第2接続路122における上端部は、第2バックプレート103内で終端している。なお、第2接続路122の寸法等は、第1接続路121と同様に設定することが可能である。
【0061】
マニホールド123は、流路プレート120において、各接続路121,122の上方に位置する部分に形成されている。マニホールド123は、第1バックプレート63に形成された第1凹部123aと、第2バックプレート103に形成された第2凹部123bと、が重ね合わされて形成されている。第1凹部123aは、第1バックプレート63の裏面上で開口するとともに、Z方向及びY方向に延びる凹部である。第2凹部123bは、第2バックプレート103の裏面上で開口するとともに、Z方向及びY方向に延びる凹部である。マニホールド123は、第1凹部123a及び第2凹部123bの裏面側開口同士が互いに連通することで形成されている。なお、図示の例において、第1凹部123a及び第2凹部123bの寸法は、同等である。但し、第1凹部123a及び第2凹部123bは、寸法を互いに異ならせてもよい。また、マニホールド123は、第1バックプレート63及び第2バックプレート103の何れか一方のバックプレートのみに形成された凹部を、他方のバックプレートの裏面によって閉塞する構成であってもよい。
【0062】
マニホールド123には、各接続路121,122がまとめて連通している。具体的に、各第1接続路121の上端開口は、第1凹部123aの下端面上で開口している。各第2接続路122の上端開口は、第2凹部123bの下端面上で開口している。なお、マニホールド123は、不図示の出口ポートを通じてインク排出管22に間接的に接続されている。
【0063】
[プリンタ1の動作方法]
次に、上述したように構成されたプリンタ1を利用して、被記録媒体Pに文字や図形等を記録する場合について以下に説明する。
なお、初期状態として、図1に示す4つのインクタンク4にはそれぞれ異なる色のインクが十分に封入されているものとする。また、インクタンク4内のインクがインク循環機構6を介してインクジェットヘッド5内に充填された状態となっている。
【0064】
このような初期状態のもと、プリンタ1を作動させると、被記録媒体Pがローラ11,12に挟み込まれながら+X側に搬送される。被記録媒体Pの搬送と同時にキャリッジ29がY方向に移動することで、キャリッジ29に搭載されたインクジェットヘッド5がY方向に往復移動する。
【0065】
ここで、各インクジェットヘッド5の動きについて、以下に詳細に説明する。
本実施形態のような縦循環式のヘッドチップ50では、まず図2に示す加圧ポンプ24及び吸引ポンプ25を作動させることで、循環流路23内にインクを流通させる。この場合、インク供給管21を流通するインクは、入口ポートを通じて各チップモジュール51A,51Bの共通インク室90に流入する。各共通インク室90に流入したインクは、スリット91を通って各吐出チャネル71内に供給される。各吐出チャネル71内に流入したインクは、各連通路110,111及び各接続路121,122を通してマニホールド123内で集合した後、出口ポートを通してインク排出管22に排出される。インク排出管22に排出されたインクは、インクタンク4に戻された後、再びインク供給管21に供給される。これにより、インクジェットヘッド5とインクタンク4との間でインクを循環させる。
【0066】
そして、キャリッジ29によって往復移動が開始されると、フレキシブル基板を介して電極84,87に駆動電圧を印加する。この際、個別電極87を駆動電位Vddとし、共通電極84を基準電位GNDとして各電極84,87間に駆動電圧を印加する。すると、吐出チャネル71を画成する2つ駆動壁75に厚み滑り変形が生じ、これら2つの駆動壁75が非吐出チャネル72側へ突出するように変形する。すなわち、本実施形態のアクチュエータプレート61,101は、厚さ方向(Y方向)に分極処理された2枚の圧電基板が積層されているため、駆動電圧を印加することで、駆動壁75におけるY方向の中間位置を中心にしてV字状に屈曲変形する。これにより、吐出チャネル71があたかも膨らむように変形する。
【0067】
2つの駆動壁75の変形によって、吐出チャネル71の容積が増大すると、共通インク室90内のインクがスリット91を通って吐出チャネル71内に誘導される。そして、吐出チャネル71の内部に誘導されたインクは、圧力波となって吐出チャネル71の内部に伝搬し、この圧力波がノズル孔115,116に到達したタイミングで、各電極84,87間に印加した駆動電圧をゼロにする。
これにより、駆動壁75が復元し、一旦増大した吐出チャネル71の容積が元の容積に戻る。この動作によって、吐出チャネル71の内部の圧力が増加し、インクが加圧される。その結果、インクをノズル孔115,116から吐出させることができる。この際、インクはノズル孔115,116を通過する際に、液滴状のインク滴となって吐出される。これにより、上述したように被記録媒体Pに文字や画像等を記録することができる。すなわち、本実施形態のヘッドチップ50では、各連通路110,111を流れるインクのうち、一部のインクがノズル孔115,116を通じて吐出される一方、残りのインクが接続路121,122を通じてマニホールド123に戻される。
【0068】
[ヘッドチップ50の製造方法]
次に、上述したヘッドチップ50の製造方法について説明する。図8は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するためのフローチャートである。図9図19は、ヘッドチップ50の製造方法を説明するための工程図である。以下の説明では、便宜上、ヘッドチップ50をチップレベルで製造する場合を例にして説明する。
図8に示すように、ヘッドチップ50は、モジュール作成工程S1と、モジュール積層工程S2と、切削工程S3と、帰還プレート積層工程S4と、帰還プレート加工工程S5と、ノズルプレート積層工程S6と、を備えている。
【0069】
モジュール作成工程S1は、第1チップモジュール51Aと、第2チップモジュール51Bと、をそれぞれ作成する。モジュール作成工程S1は、チャネル形成工程S11と、第1配線形成工程S12と、カバープレート積層工程S13と、チャネル切削工程S14と、第2配線形成工程S15と、バックプレート積層工程S16と、バックプレート加工工程S17と、を備えている。各チップモジュール51A,51Bは、何れも同様の方法で作成される。したがって、以下の説明では、第1チップモジュール51Aを例にして、モジュール作成工程S1を説明する。
【0070】
図9に示すように、チャネル形成工程S11では、第1アクチュエータプレート61のうち、吐出チャネル71及び非吐出チャネル72の形成領域をダイサーD1によって加工する。ダイサーD1は、X方向から見て円板状に形成されている。アクチュエータプレート加工工程S11において、非吐出チャネル72の形成領域は、吐出チャネル71の形成領域に対してダイサーD1のZ方向への走行量を多くする。これにより、X方向から見て、吐出チャネル71の底面は下方に向けて凸の円弧状に形成され、非吐出チャネル72の底面は直線状に形成される。
【0071】
図10に示すように、第1配線形成工程S12では、第1アクチュエータプレート61の表面側から斜め蒸着等を行うことで、電極材料を成膜する。これにより、第1アクチュエータプレート61の表面に共通端子85及び個別端子88が形成されるとともに、各チャネル71,72の内面に共通電極84及び個別電極87の一部が形成される。
【0072】
図11に示すように、カバープレート積層工程S13では、第1アクチュエータプレート61の表面に対し、第1カバープレート62を貼り付ける。
図12に示すように、チャネル切削工程S14では、第1アクチュエータプレート61の裏面に対して切削加工を施す。具体的に、吐出チャネル71及び非吐出チャネル72が第1アクチュエータプレート61の裏面上で開口するまで第1アクチュエータプレート61を切削する。
【0073】
図13に示すように、第2配線形成工程S15では、第1アクチュエータプレート61の裏面側から斜め蒸着等を行うことで、電極材料を成膜する。これにより、各チャネル71,72の内面に共通電極84及び個別電極87の一部が形成される。
図14に示すように、バックプレート積層工程S16では、第1アクチュエータプレート61の裏面に対し、第1バックプレート63を貼り付ける。
【0074】
図15図16に示すように、バックプレート加工工程S17では、第1バックプレート63に対して第1接続路121及び第1凹部123aを形成する。具体的に、図15に示すように、第1接続路121は、第1バックプレート63の裏面のうち、第1接続路121の形成領域をダイサーD2によって加工する。この際、ダイサーD2の軸線がX方向に沿うようにダイサーD2を進入させることで、第1接続路121は下方から上方に向かうに従いY方向の寸法が漸次小さくなるように形成される。
図16に示すように、第1凹部123aは、第1バックプレート63の裏面のうち、第1凹部123aの形成領域をダイサーD3によって加工する。この際、ダイサーDの軸線をZ方向に沿わせた状態で、第1バックプレート63の裏面に対してY方向に繰り返しダイサーD3を進入させることで、第1凹部123aをZ方向に加工していく。これにより、第1チップモジュール51Aが完成する。なお、第2アクチュエータプレート101等についても、上述したチップモジュール作成工程S1と同様の方法を経ることで、第2チップモジュール51Bが作成される。
【0075】
図17に示すように、モジュール積層工程S3では、チップモジュール作成工程S1で作成されたチップモジュール51A,51B同士を貼り合わせる。具体的には、各チップモジュール51A,51Bの下端面同士を一致させた状態で、バックプレート63,103の裏面同士を貼り合わせる。これにより、第1接続路121の裏面側開口が第2バックプレート103により閉塞され、第2接続路122の裏面側開口が第1バックプレート63によって閉塞されるとともに、第1凹部123a及び第2凹部123bによってマニホールド123が形成される。これにより、チップモジュール51A,51Bの積層体が形成される。
【0076】
図18に示すように、切削工程S4は、ヘッドチップ50の吐出性能に関わるパラメータ(寸法)を調整する、いわゆる調整工程の一種である。切削工程S4では、チップモジュール51A,51Bの積層体の下端面を切削して、チャネル71及び接続路121,122の流路長を調整することで、消費電力や流路抵抗を調整する。本実施形態では、所望の吐出性能が発揮できるヘッドチップ50の理想パラメータをシミュレーション結果等によって事前に取得しておく。続いて、モジュール積層工程S3を経た実機の現状パラメータと、理想パラメータと、を比較する。そして、現状パラメータが、理想パラメータに対して所定の範囲内に収まるように、チップモジュール51A,51Bの積層体の下端面を切削する(図18中鎖線参照)。なお、本実施形態では、接続路121が下方から上方に向かうに従いY方向の寸法が漸次小さくなるように形成されている。そのため、切削工程S4での切削量が増加するに従い、流路抵抗は減少する。
【0077】
図19に示すように、帰還プレート積層工程S5では、チップモジュール51A,51Bの積層体における下端面に帰還プレート52を貼り合わせる。
帰還プレート加工工程S6では、帰還プレート52のうちZ方向から見て吐出チャネル71と重なり合う部分に対して連通路110,111を形成する。なお、連通路110,111は、帰還プレート52に対して例えばレーザ加工等を施すことにより形成される。
【0078】
ノズルプレート積層工程S7では、帰還プレート52の下面に対してノズルプレート53を貼り合わせる。
以上により、ヘッドチップ50が完成する。なお、ヘッドチップ50をウエハレベルで製造する場合には、アクチュエータプレート用ウエハ、カバープレート用ウエハ及びバックプレート用ウエハに対して、上述したチップモジュール作成工程S1と同様の工程を行って、ウエハの積層体を形成する。その後、ウエハの積層体を個片化することで、複数のチップモジュール51A,51Bが取り出される。その後、ウエハの積層体から取り出されたチップモジュール51A,51Bに対して、モジュール積層工程S3以降の工程を施すことで、ヘッドチップ50が完成する。
【0079】
本実施形態では、モジュール積層工程S3の後、切削工程S4でチップモジュール51A,51Bの積層体の下端面を切削することで、チャネル71及び接続路121,122の流路長を調整する構成としたが、この構成に限られない。本実施形態のヘッドチップ50では、帰還プレート積層工程S5に先立って、接続路121,122のZ方向の寸法を調整できればよい。この場合、例えば図16に示すバックプレート加工工程S17において、凹部123a,123bの内面のうち+Z側を向く端面を切削してもよい。この場合、凹部123a,123bのZ方向の寸法を調整することで、結果として接続路121,122のZ方向の寸法(チップモジュール51A,51Bの下端面と凹部123a,123bの内面のうち+Z側を向く端面との距離)を調整することができる。この場合には、バックプレート加工工程S17が調整工程の一種となる。
【0080】
このように、本実施形態のヘッドチップ50は、複数の第1連通路110とマニホールド123との間に、各第1連通路110に各別に接続されるとともに、対応する第1連通路110とともに第1帰還路を構成する複数の第1接続路121を備える構成とした。
この構成によれば、吐出チャネル71からノズル孔115に向かって流れるインクのうち、一部のインクが第1帰還路(第1連通路110及び第1接続路121)を通じてマニホールド123に流入する。この際、ヘッドチップ50の吐出性能を調整するにあたって、第1接続路121の寸法を調整することで、第1帰還路の流路抵抗を調整することができる。これにより、従来のように、第1連通路110の寸法をZ方向に交差する方向で調整することで、第1帰還路の流路抵抗を調整する場合に比べ、Z方向に交差する方向でのヘッドチップ50の大型化を抑制した上で、所望の吐出性能を発揮させることができる。
【0081】
本実施形態のヘッドチップ50では、モジュール積層工程S3の後、チップモジュール51A,51Bの下端面を切削加工することで、第1接続路121及び第2接続路122のZ方向の寸法を調整することができる。これにより、所望の吐出性能が発揮できるヘッドチップ50の理想パラメータに簡単に近付けることができる。
【0082】
本実施形態のヘッドチップ50において、第1接続路121におけるZ方向の寸法は、第1連通路110におけるY方向の寸法よりも大きい構成とした。
この構成によれば、第1連通路110におけるY方向の寸法が、第1接続路121におけるZ方向の寸法よりも大きい場合に比べ、Z方向に交差する方向でのヘッドチップ50の大型化を抑制できる。
【0083】
本実施形態のヘッドチップ50において、第1接続路121のうち、第1連通路110との接続部分である接続上流開口における流路断面積は、マニホールド123との接続部分である接続下流開口における流路断面積よりも大きい構成とした。
この構成によれば、第1連通路110から第1接続路121にインクをスムーズに流入させることができる。この際、例えば第1接続路121よりも上流側で発生した気泡を、第1接続路121を通じてマニホールド123に排出し易くなる。これにより、気泡が第1ノズル孔115を通じて外部に排出されることを抑制し、高精度な印刷を行うことができる。
しかも、第1接続路121の流路断面積が上流側と下流側とで異なるため、第1帰還路の流路抵抗を調整するにあたって、第1接続路121のZ方向の寸法を調整することで、第1接続路121の流路断面積も調整することができる。これにより、第1帰還路の流路抵抗を調整する際における調整代を確保し易い。
【0084】
本実施形態のヘッドチップ50において、第1接続路121の流路断面積は、下端開口から上端開口に向かうに従い漸次縮小している構成とした。
この構成によれば、第1接続路121内において、下端開口から上端開口に向かうに従いインクの流速を徐々に速めることができる。これにより、第1接続路121内でインクをよりスムーズに流すことができる。
【0085】
本実施形態のヘッドチップ50において、第1連通路110のうち第1接続路121との接続部分である連通下流開口と、第1接続路121の下端開口と、はX方向での寸法が異なっている構成とした。
この構成によれば、第1連通路110の連通下流開口と第1接続路121の下端開口のうちX方向での寸法が小さい開口を、X方向での寸法が大きい開口の範囲内に収まるように、帰還プレート52と第1バックプレート63とを重ね合わせる。これにより、連通下流開口と下端開口のX方向での寸法を同等に設定した場合に比べ、加工精度等による各第1連通路110及び各第1接続路121間での連通下流開口と下端開口の連通面積のばらつきを抑制できる。これにより、各第1帰還路内での流路抵抗を安定させ易い。
【0086】
本実施形態のヘッドチップ50において、複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111は、帰還プレート52において、X方向に交互に形成されており、複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122は、バックプレート63,103において、X方向に交互に形成されている構成とした。
この構成によれば、第1連通路110及び第2連通路111同士、並びに第1接続路121及び第2接続路122同士をそれぞれX方向から見て重なり合うように配置することができる。そのため、第1連通路110及び第2連通路111同士、並びに第1接続路121及び第2接続路122同士をそれぞれY方向に離して形成する場合に比べ、ヘッドチップ50のY方向での小型化を図ることができる。
【0087】
本実施形態のインクジェットヘッド5及びプリンタ1は、上述したヘッドチップ50を備えているため、所望の吐出性能を確保した上で、Z方向に交差する方向での小型化を図ることができる。
【0088】
(その他の変形例)
なお、本開示の技術範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上述した実施形態では、液体噴射記録装置の一例として、インクジェットプリンタ1を例に挙げて説明したが、プリンタに限られるものではない。例えば、ファックスやオンデマンド印刷機等であってもよい。
上述した実施形態では、印刷時にインクジェットヘッドが被記録媒体に対して移動する構成(いわゆる、シャトル機)を例にして説明をしたが、この構成に限られない。本開示に係る構成は、インクジェットヘッドを固定した状態で、インクジェットヘッドに対して被記録媒体を移動させる構成(いわゆる、固定ヘッド機)に採用してもよい。
上述した実施形態では、被記録媒体Pが紙の場合について説明したが、この構成に限られない。被記録媒体Pは、紙に限らず、金属材料や樹脂材料であってもよく、食品等であってもよい。
上述した実施形態では、液体噴射ヘッドが液体噴射記録装置に搭載された構成について説明したが、この構成に限られない。すなわち、液体噴射ヘッドから噴射される液体は、被記録媒体に着弾させるものに限らず、例えば調剤中に配合する薬液や、食品に添加する調味料や香料等の食品添加物、空気中に噴射する芳香剤等であってもよい。
【0089】
上述した実施形態では、Z方向が重力方向に一致する構成について説明したが、この構成のみに限らず、Z方向を水平方向に沿わせてもよい。
上述した実施形態では、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が拡大する方向にアクチュエータプレートを変形させた後、アクチュエータプレートを復元させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、引き打ち)について説明したが、この構成に限られない。本開示に係るヘッドチップは、電圧の印加によって吐出チャネルの容積が縮小する方向にアクチュエータプレートを変形させることで、インクを吐出させる構成(いわゆる、押し打ち)であってもよい。押し打ちを行う場合、駆動電圧の印加により、アクチュエータプレートは、吐出チャネル内に向けて膨出するように変形する。これにより、吐出チャネル内の容積が減少することで、吐出チャネル内の圧力が増加し、吐出チャネル内のインクがノズル孔を通じて外部に吐出される。駆動電圧をゼロにすると、アクチュエータプレートが復元する。その結果、吐出チャネル内の容積が元に戻る。
【0090】
上述した実施形態では、接続路121,122のZ方向の寸法を調整することで、接続路121,122の流路抵抗を調整する構成について説明したが、この構成に限られない。接続路121,122の流路抵抗は、例えばカバープレート加工工程S17において、接続路121,122におけるX方向やY方向の寸法を調整することで調整してもよい。
上述した実施形態では、各連通路110,111がY方向に直線状に延びている場合について説明したが、この構成に限られない。各連通路110,111は、Z方向から見てY方向に交差する方向に延びていてもよい。また、各連通路110,111は、Z方向から見て曲線状等に形成されていてもよい。
上述した実施形態では、各連通路110,111がY方向の全長に亘って帰還プレート52をZ方向に貫通する構成について説明したが、この構成に限られない。各連通路110,111は、少なくとも吐出チャネル71、ノズル孔115及び接続路121,122間を連通する構成であれば、一部がZ方向に貫通していればよい。
【0091】
上述した実施形態では、接続路121,122におけるZ方向の寸法が、連通路110,111におけるY方向の寸法よりも大きい構成について説明したが、この構成に限られない。接続路121におけるZ方向の寸法は、連通路110,111におけるY方向の寸法以下であってもよい。
上述した実施形態では、各接続路121,122の流路断面積が下方から上方に向かうに従い漸次縮小する構成について説明したが、この構成に限られない。各接続路121,122の流路断面積は、下方から上方に向かうに従い漸次拡大する構成であってもよく、全長に亘って一様であってもよい。
上述した実施形態では、第1連通路110のうち第1接続路121との接続部分である連通下流開口と、第1接続路121のうち第1連通路110との接続部分である接続上流開口と、のX方向の寸法が異なっている構成について説明したが、この構成に限られない。第1連通路110のうち第1接続路121との接続部分である連通下流開口と、第1接続路121のうち第1連通路110との接続部分である接続上流開口と、のX方向の寸法等しくなっていてもよい。
【0092】
上述した実施形態では、チップモジュール51A,51Bが重ね合わされた構成について説明したが、この構成に限られない。第1チップモジュール51Aのみでヘッドチップ50を構成してもよい。
上述した実施形態では、複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士が、X方向に交互に形成されている構成について説明したが、この構成に限られない。複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士は、X方向から見て重なり合わない構成(Y方向に離間した構成)としてもよい。この場合には、複数の第1連通路110及び複数の第2連通路111同士、並びに複数の第1接続路121及び複数の第2接続路122同士の寸法を調整し易い。
【0093】
その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上述した各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0094】
1:プリンタ(液体噴射記録装置)
5:インクジェットヘッド(液体噴射ヘッド)
50:ヘッドチップ
52:帰還プレート
53:ノズルプレート(噴射孔プレート)
61:第1アクチュエータプレート(第1吐出部)
62:第1カバープレート(第1吐出部)
71:吐出チャネル(第1噴射チャネル、第2噴射チャネル、噴射チャネル)
101:第2アクチュエータプレート(第2吐出部)
102:第2カバープレート(第2吐出部)
110:第1連通路
111:第2連通路
115:第1ノズル孔(第1噴射孔)
116:第2ノズル孔(第2噴射孔)
120:流路プレート
121:第1接続路
122:第2接続路
123:マニホールド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
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