(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024081996
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】高周波回路構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/18 20060101AFI20240612BHJP
C23C 18/20 20060101ALI20240612BHJP
C23C 18/31 20060101ALI20240612BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
H05K3/18 B
H05K3/18 E
C23C18/20 Z
C23C18/31 Z
C23C26/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195654
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】514015019
【氏名又は名称】エレファンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162341
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬崎 幸典
(72)【発明者】
【氏名】杉本 雅明
【テーマコード(参考)】
4K022
4K044
5E343
【Fターム(参考)】
4K022AA13
4K022AA31
4K022AA41
4K022BA01
4K022BA03
4K022BA07
4K022BA08
4K022BA18
4K022BA21
4K022CA22
4K022DA01
4K044AA16
4K044AB02
4K044BA06
4K044BA08
4K044BA10
4K044BA21
4K044BB03
4K044BB04
4K044BC04
4K044BC14
4K044CA15
4K044CA18
4K044CA53
5E343AA02
5E343AA16
5E343AA17
5E343AA18
5E343AA19
5E343BB22
5E343BB23
5E343BB24
5E343BB25
5E343BB45
5E343BB48
5E343BB49
5E343BB71
5E343DD33
5E343DD43
5E343ER01
5E343FF16
5E343GG02
5E343GG20
(57)【要約】
【課題】絶縁層と導電層の密着性を向上させながら、高周波伝送特性を向上させる。
【解決手段】硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層と、絶縁層表面に官能基を介して所定のパターン状に接合された触媒粒子群と、触媒粒子群に第1の膜厚で一体化された第1の導電層と、第1の導電層の上に第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層と、を備えた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層と、
前記絶縁層表面に前記官能基を介して接合された触媒粒子群と、
前記触媒粒子群に第1の膜厚で一体化された第1の導電層と、
前記第1の導電層の上に前記第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で前記第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層と、を備えた、
ことを特徴とする高周波回路構造。
【請求項2】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層と、
前記絶縁層表面に前記官能基を介して接合された触媒粒子群と、
前記触媒粒子群に周波数30GHzにおける界面導電率が純銅の80%以上となるように第1の膜厚で一体化された第1の導電層と、
前記第1の導電層の上に前記第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で前記第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層と、を備えた、
ことを特徴とする高周波回路構造。
【請求項3】
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子は、粒子径が100nm未満の金属ナノ粒子である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の高周波回路構造。
【請求項4】
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子の平均粒径より算出される変動係数が30%以下である、
ことを特徴とする請求項3に記載の高周波回路構造。
【請求項5】
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子は、非磁性の金属ナノ粒子である、
ことを特徴とする請求項4に記載の高周波回路構造。
【請求項6】
前記絶縁層と前記第1の導電層の間の界面の表面粗さRaが前記触媒粒子の前記粒子径の1/2よりも小さい、
ことを特徴とする請求項5に記載の高周波回路構造。
【請求項7】
前記第1の導電層が無電解めっき析出層である、
ことを特徴とする請求項6に記載の高周波回路構造。
【請求項8】
前記第2の導電層が電解めっき層である、
ことを特徴とする請求項7に記載の高周波回路構造。
【請求項9】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層にエッチング処理を行い配線を形成するステップと、
前記レジスト膜を除去するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項10】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に配線を形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項11】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜を剥離するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項12】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
触媒粒子コロイド溶液を前記所定のパターン上に塗布した後、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を配線パターンとして形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項13】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記所定のパターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記第1の導電層上に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜除去後に第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層が合わさった導電層に配線を形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項14】
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜を剥離するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項15】
導体の上に硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、
前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項16】
導体の上に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンで形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたレジスト膜を形成して前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
レジスト膜除去後にエッチングマスクを形成して前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項17】
導体の上に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層及び前記第2の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子及びプライマー層を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項18】
導体の上に接着された基材に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成して前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
エッチングマスク除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項19】
絶縁層にビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層及び前記第2の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【請求項20】
絶縁層にビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成して前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
エッチングマスク除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする高周波回路構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波回路構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
絶縁性基材と、プライマー層と、触媒金属層と、無電解メッキ層とが積層された電気回路の構造体において、当該絶縁性基材の一部に導体回路が形成され、当該絶縁性基材上に当該プライマー層が部分的に構成されており、当該プライマー層はアミノ基を有し、当該触媒金属層は粒径2~100nmの単分散貴金属ナノ粒子からなり、分子量200以下の糖アルコール水溶液中に当該単分散貴金属ナノ粒子群を均一に分散させた水溶液により当該プライマー層上に形成され、当該触媒金属層と当該プライマー層とがプライマー層上のアミノ基を介して接合され、かつ、当該無電解メッキ層が当該導体回路および当該触媒金属層と接続されている電気回路の構造体が知られている(特許文献1)。
【0003】
プラスチック基材表面に連続的な導体配線パターンが形成された導体配線構造体において、プラスチック基材内部に埋没した埋設状態、或いは/及び、該プラスチック基材表面に一部が露出した埋設状態にて所定のパターン状に形成された触媒粒子群と、該触媒粒子群に一体化された導体配線パターンと、を備えた導体配線構造体も知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-123909号公報
【特許文献2】特開2006-222408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、絶縁層と導電層の密着性を向上させながら、高周波伝送特性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に記載の高周波回路構造は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層と、
前記絶縁層表面に前記官能基を介して接合された触媒粒子群と、
前記触媒粒子群に第1の膜厚で一体化された第1の導電層と、
前記第1の導電層の上に前記第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で前記第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0007】
前記課題を解決するために、請求項2に記載の高周波回路構造は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層と、
前記絶縁層表面に前記官能基を介して接合された触媒粒子群と、
前記触媒粒子群に周波数30GHzにおける界面導電率が純銅の80%以上となるように第1の膜厚で一体化された第1の導電層と、
前記第1の導電層の上に前記第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で前記第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層と、を備えた、
ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の高周波回路構造において、
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子は、粒子径が100nm未満の金属ナノ粒子である、
ことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の高周波回路構造において、
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子の平均粒径より算出される変動係数が30%以下である、
ことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の高周波回路構造において、
前記触媒粒子群を構成する個々の触媒粒子は、非磁性の金属ナノ粒子である、
ことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の高周波回路構造において、
前記絶縁層と前記第1の導電層の間の界面の表面粗さRaが前記触媒粒子の前記粒子径の1/2よりも小さい、
ことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の高周波回路構造において、
前記第1の導電層が無電解めっき析出層である、
ことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の高周波回路構造において、
前記第2の導電層が電解めっき層である、
ことを特徴とする。
【0014】
前記課題を解決するために、請求項9に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記第1の導電層及び前記第2の導電層にエッチング処理を行い配線を形成するステップと、
前記レジスト膜を除去するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0015】
前記課題を解決するために、請求項10に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に配線を形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0016】
前記課題を解決するために、請求項11に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜を剥離するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0017】
前記課題を解決するために、請求項12に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
触媒粒子コロイド溶液を前記所定のパターン上に塗布した後、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を配線パターンとして形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0018】
前記課題を解決するために、請求項13に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記所定のパターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記第1の導電層上に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜除去後に第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層が合わさった導電層に配線を形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0019】
前記課題を解決するために、請求項14に記載の高周波回路構造の製造方法は、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層上に所定のパターンを形成するステップと、
前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより前記絶縁層表面に触媒粒子群からなる触媒層を形成するステップと、
前記触媒層が形成された前記絶縁層上にレジスト膜を形成し、前記レジスト膜を露光・現像して前記レジスト膜に配線パターンを形成するステップと、
前記配線パターンが形成された前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記レジスト膜を剥離するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0020】
前記課題を解決するために、請求項15に記載の高周波回路構造の製造方法は、
導体の上に硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップと、
前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、を含む、
ことを特徴とする。
【0021】
前記課題を解決するために、請求項16に記載の高周波回路構造の製造方法は、
導体の上に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンで形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたレジスト膜を形成して前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
レジスト膜除去後にエッチングマスクを形成して前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0022】
前記課題を解決するために、請求項17に記載の高周波回路構造の製造方法は、
導体の上に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層及び前記ビアホールに電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層及び前記第2の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子及びプライマー層を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0023】
前記課題を解決するために、請求項18に記載の高周波回路構造の製造方法は、
導体の上に絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層に前記導体に達するビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成して前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
エッチングマスク除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0024】
前記課題を解決するために、請求項19に記載の高周波回路構造の製造方法は、
絶縁層にビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
前記第2の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで前記第1の導電層及び前記第2の導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
前記エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【0025】
前記課題を解決するために、請求項20に記載の高周波回路構造の製造方法は、
絶縁層にビアホールを開口するステップと、
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層を前記ビアホールの内壁を含む前記絶縁層に所定のパターンに形成するステップと、
前記ビアホールの内壁及び前記絶縁層表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、前記触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成するステップと、
前記触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成するステップと、
前記第1の導電層に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成して前記第1の導電層に電解めっきで第2の導電層を一体形成するステップと、
エッチングマスク除去後に前記第1の導電層の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで前記第1の導電層と前記第2の導電層があわさった導電層に前記配線パターンを形成するステップと、
必要に応じて露出した触媒粒子を除去するステップを含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0026】
請求項1、2に記載の発明によれば、絶縁層と導電層の密着性を向上させながら、高周波伝送特性を向上させることができる。
【0027】
請求項3に記載の発明によれば、触媒粒子が均一に分散した平滑な触媒層を得ることができる。
【0028】
請求項4に記載の発明によれば、触媒粒子の凝集を抑制することができる。
【0029】
請求項5に記載の発明によれば、高周波特性を向上させることができる。
【0030】
請求項6に記載の発明によれば、絶縁層と導電層の界面の平滑性を向上させることができる。
【0031】
請求項7に記載の発明によれば、絶縁層の上に均一に導電層を形成することができる。
【0032】
請求項8に記載の発明によれば、厚い導電層を形成することができる。
【0033】
請求項9、10、11、12、13、14に記載の発明によれば、第2の導電層を第1の導電層の側壁を厚み方向において覆わないように形成するとともに、側壁及び上面が平滑な導電層を形成することができる。
【0034】
請求項15、16、17、18に記載の発明によれば、側壁及び上面が平滑な導電層を有する多層基板を得ることができる。
【0035】
請求項19、20に記載の発明によれば、側壁及び上面が平滑な導電層を有する多層基板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】第1実施形態に係る高周波回路構造の構成例を示す断面模式図である。
【
図2】流動化後の触媒粒子のプライマー層への埋まり込みを示す断面模式図である。
【
図3】第1実施形態に係る高周波回路構造の断面構成を比較例の高周波回路構造と併せて示す断面模式図である。
【
図4】第1実施形態に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図5】第1実施形態に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図6】変形例1に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図7】変形例1に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図8】変形例2に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図9】変形例2に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図10】変形例3に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図11】変形例3に係る高周波回路構造の第1の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図12】変形例3に係る高周波回路構造の第2の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図13】変形例4に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図14】変形例4に係る高周波回路構造の第1の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図15】変形例4に係る高周波回路構造の第2の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図16】変形例5に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図17】変形例5に係る高周波回路構造の第1の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図18】変形例5に係る高周波回路構造の第2の方法による製造過程を示す断面模式図である。
【
図19】第2実施形態に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図20】第2実施形態に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図21】第2実施形態に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図であるである。
【
図22】変形例1に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図23】変形例1に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図24】変形例2に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図25】変形例2に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図26】変形例3に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図27】変形例3に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図28】変形例4に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図29】変形例4に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【
図30】変形例5に係る高周波回路構造の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図である。
【
図31】変形例5に係る高周波回路構造の製造過程を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
次に図面を参照しながら、本発明の実施形態の具体例を説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
尚、以下の図面を使用した説明において、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。特に、図において、ナノオーダの触媒粒子については、説明のために適宜拡大して示すとともに、絶縁層、プライマー層、第1の導電層、第2の導電層等も、その厚みについては、比率を含めて適宜拡大して示している。
【0038】
「第1実施形態」
(1)高周波回路構造の全体構成
図1は本実施形態に係る高周波回路構造1の構成例を示す断面模式図、
図2は流動化後の触媒粒子のプライマー層2bへの埋まり込みを示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る高周波回路構造1の構成について説明する。
【0039】
高周波回路構造1は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2と、絶縁層2の表面に官能基を介して接合された触媒粒子群3と、触媒粒子群3に第1の膜厚で一体化された第1の導電層5と、第1の導電層5の上に第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で第1の導電層5の側壁5aを厚み方向において覆わないように形成された第2の導電層6とを備える。
ここで、第1の導電層5は、絶縁層2との境界領域4において、周波数30GHzにおける界面導電率が純銅の80%以上となるように触媒粒子群3に一体化されている。
尚、
図1において示した各層の厚さの比率や、第1の導電層5の厚さに対する境界領域4の厚さの比率はあくまで例示であり、本発明は図示の比率に限定されるものではない。
【0040】
(絶縁層)
本実施形態において絶縁層2として使用する絶縁性の基材2aは特にフィルム状の基材に限らないが、以下、フィルム状の基材として説明する。
基材2aの素材は、絶縁性の変形可能な熱可塑性樹脂であって、融点Tmが存在する場合は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましい。
融点が低すぎる場合、触媒粒子のコロイド溶液の溶媒除去が不十分であったり、プライマー層2bへの金属ナノ粒子の埋まり込みが不十分になる虞がある。一方、融点が高い分には問題とならない。
【0041】
基材2aの材質は、上記のような融点Tmおよびガラス転移点Tgの条件に該当すれば特に限定されないが、具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル(PE)、ナイロン6-10、ナイロン46などのポリアミド(PA)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ABS、PMMA、ポリ塩化ビニルなどの熱可塑性樹脂、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、及びポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体などの溶融成形可能なフッ素樹脂が挙げられる。
特に、数十ギガヘルツレベルの高周波領域の用途で用いられる高周波回路構造1には、誘電特性や吸湿性の観点からテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などのフッ素樹脂やポリイミド(PI)樹脂が好ましい。
【0042】
基材2aの厚みは、5μm~3mmが好ましく、12μm~1mmがより好ましく、50μm~200μmが最も好ましい。基材2aの厚みが薄すぎる場合、強度が不十分になるとともに、第1の導電層5のめっき工程時に基材2aの歪みが大きくなる虞がある。なお、この厚みは基材2aがフィルム状の基材である場合の条件であり、本発明が適用される絶縁性の基材2aはフィルム状の基材に限定されない。
【0043】
基材2aの表面には、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が発現したプライマー層2bが形成されている。本実施形態においては、官能基が発現したプライマー層2bとは、プライマー層形成時にプライマー層2b上に官能基が発現した状態をいい、プライマー層2b上に外部から官能基が付加されて形成された状態をいうものではない。官能基としては、チオール基、アミノ基、カルボキシル基、カテコール基、ヒドロキシル基、トリアゾール基、イミダゾール基等が挙げられる。
プライマー層2b形成時に発現する官能基は活性が高く、粒径のそろった触媒粒子群3と強固な吸着力が得られるので、第1の導電層5を形成する無電解めっきを施した場合、プライマー層2bと第1の導電層5の界面ではがれることはない。
官能基を発現させる架橋剤は、基材2aの樹脂材料の分子内及び分子間を架橋し、架橋反応によって官能基を生成してプライマーを不溶化するものであればいずれのものでも構わない。
【0044】
プライマー層2bの材料は、プライマー層2b形成時に官能基を有するように公知の化合物を組合せたもので、たとえば、ベース樹脂材料中に光酸発生剤(PAG)およびメラミン架橋剤またはアミン系架橋剤を含有する。
ベース樹脂には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂などがあり、エポキシ樹脂またはポリエステル樹脂が好ましい。
このようなプライマー材料は50nmから500nmの厚さでバーコート法、スピンコート法、コンマコート法、インクジェット法等の様々な方法で塗布されて形成されている。
【0045】
(触媒粒子群)
硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が発現したプライマー層2bが形成された基材2aの表面には触媒粒子群3が接合されている。
触媒粒子群3は、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、ルテニウム(Ru)、コバルト(Co)などからなる非磁性の金属ナノ粒子が用いられ、一種または複数の金属を含んでも良いが、導電性の観点から金(Au)、銀(Ag)、白金(Pt)またはパラジウム(Pd)が好ましく、より好ましくは、金(Au)、またはパラジウム(Pd)である。これらの金属はポリビニルピロリドンのような高分子分散剤や、糖アルコールのような低分子分散剤によって安定したコロイド状態で水溶液中あるいは有機溶媒液中に分散することができる。
【0046】
触媒粒子群3を構成する個々の触媒粒子の平均粒径は1~100nmであり、好ましくは3~80nmの範囲、より好ましくは5~50nmの範囲である。粒径が2nm未満では、触媒粒子が凝集しやすく、触媒粒子を官能基にうまく吸着させることができない。他方、粒径が100nmを超えても、触媒粒子が大きくなりすぎ、触媒粒子を官能基にうまく吸着させることができない。
【0047】
触媒粒子は粒径ができるだけ均一なものが好ましい。触媒粒子相互の斥力を均一にしてプライマー層2b上で触媒粒子群3を均一に整列させるためである。
触媒粒子群3を構成する個々の触媒粒子の平均粒径より算出される変動係数が60%以下であることが好ましく、30%以下であることがより好ましい。触媒粒子群3の粒径を揃え、プライマー層2b上で触媒粒子群3を均一に整列させると、触媒粒子がプライマー層2bに均一に取り囲まれ、プライマー層2bと第1の導電層5の間の空隙が発生しない。すなわち触媒粒子に金属結合した第1の導電層5のめっき析出膜とプライマー層2bが、金属ナノ粒子を介して噛み合った構造となり、強固な密着力が得られる。
【0048】
このような触媒粒子群3は、
図2に模式的に示すように、触媒粒子群3に無電解めっきにより第1の導電層5を一体形成した後(
図2(a) 参照)、基材2aを加熱してプライマー層2bを軟化させて触媒粒子群3を構成する個々の触媒粒子をプライマー層2bに粒子径の1/2以下を埋没させて第1の導電層5とプライマー層2bを密着させている(
図2(b) 参照)。例えば触媒粒子群3の平均粒径が20nmで、触媒粒子の形状が球形であると仮定した場合、プライマー層2bに10nm以下食い込んで触媒粒子表面がより多くプライマーと接触した状態で、かつ、触媒粒子の一端が露出していることになる。そして、第1の導電層5のめっき厚さが例えば100nm(0.1μm)以下の極薄層である場合であっても、触媒粒子の凹凸形状が第1の導電層5の表面に現れることはなく、平滑性が保たれることになる。
【0049】
(第1の導電層)
第1の導電層5としてのめっき層は、触媒粒子群3の上に無電解めっきにより形成される。
めっき金属としては、クロム(Cr)、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などを用いることができるが、導電性の観点から、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)を用いることが好ましく、経済性も加味すると銅(Cu)が最も好ましい。
【0050】
無電解めっきは、形成しようとする第1の導電層5を構成する金属のイオンを含有する溶液を用いて、化学反応によって金属イオンを析出させて、めっき金属を徐々に層状に形成することができる。
【0051】
めっき層としての膜厚は、無電解めっき液の金属塩、金属イオン濃度、無電解めっき液への浸漬時間、無電解めっき液の温度などにより制御することができる。
導電性及び平滑性を考慮すると、少なくとも触媒粒子の平均粒径Dの5倍程度であることが好ましく、例えば500nm以上であることが適している。
第1の導電層5としての膜厚が500nm以下の極薄層では、触媒粒子群3の凹凸形態が第1の導電層5表面の凹凸形状になって現れやすく平滑性が阻害され高周波回路構造1としての必要な高周波特性を十分に得ることができない虞がある。
また、膜厚が厚すぎる場合、触媒粒子群3との界面で剥離が起きやすくなる。さらに、第1の導電層5としての厚み方向と交差する側壁面の平滑性が低下して高周波回路構造1としての必要な高周波特性が悪化する虞がある。
【0052】
表面に硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が発現したプライマー層2bが形成され触媒粒子群3が接合された絶縁層2と第1の導電層5の間の界面の表面粗さRa(算術平均粗さ)は触媒粒子の粒径の1/2よりも小さくなっている。尚、表面粗さRaは、例えば、JIS B0601(1994)に準拠して測定することができる。本実施形態においては、触媒粒子の平均粒径が5~50nm、例えば50nm程度であった場合、絶縁層2と第1の導電層5の間の界面の表面粗さRaは20nmよりも小さくなる。このように、絶縁層2と第1の導電層5の間の界面が高い平滑性を有することで、高周波回路構造1としての必要な高周波特性を得ることが可能となる。
【0053】
また、第1の導電層5は、周波数30GHzにおける界面導電率が純銅の80%以上となるように、少なくとも触媒粒子の平均粒径の5倍程度の膜厚で触媒粒子群3に一体化されている。界面導電率を上記範囲に制御するためには、絶縁層2と第1の導電層5の間の界面の表面粗さRaは触媒粒子の粒径の1/2よりも小さくなっているのが良い。
絶縁層2と第1の導電層5の間の界面の表面粗さRaが上記の範囲であると、絶縁層である基材2aと導体層である第1の導電層5との間の界面導電率の低下を抑制することが可能になり、高周波回路構造1として有用なものになる。
【0054】
(第2の導電層)
本実施形態に係る高周波回路構造1においては、上述した無電解めっきによって形成される第1の導電層5の上に電解めっきによって形成される第2の導電層6が積層されている。このような積層構成の場合には、無電解めっきによる導電層と電解めっきによる導電層との間には、両者の金属間化合物層が形成され、両者の結合力をより高めることが可能となっている。
めっき金属としては、クロム(Cr)、銅(Cu)、錫(Sn)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などを用いることができるが、第1の導電層5の金属と同種の金属が好ましい。
【0055】
電解めっきにより得られる第2の導電層6の膜厚は第1の導電層5の膜厚よりも厚く、得られる高周波回路構造1の用途に応じて適宜設定することができ、めっき浴中に含まれる金属の種類、その金属の濃度、浸漬時間、電流密度などを調整することで制御することができる。具体的には、高周波回路構造1に用いる場合は、導電性の観点から、0.5μm以上、より好ましくは3μm以上である。
【0056】
図3には、本実施形態に係る高周波回路構造1の断面構成を比較例の高周波回路構造100(
図3(b) 参照)と併せて示している。
第2の導電層6は、積層される第1の導電層5の側壁5aを厚み方向において覆わないように形成されている。具体的には、
図3(a)に示すように、第1の導電層5の上に積層された第2の導電層6は、側壁6aが第1の導電層5の側壁5aを覆うことなく、第1の導電層5の側壁5aと面一で平滑に形成されている。これにより、高周波回路構造1としての必要な高周波特性を得ることが可能となっている。
【0057】
(2)高周波回路構造1の製造方法
図4は高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図5は高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
本実施形態に係る高周波回路構造1は、絶縁層2にプライマー層2bを形成し、プライマー層2bを触媒粒子付与処理し、絶縁層2の表面に導電層を形成することによって製造することができる。
すなわち、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S11と、絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S12と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S13と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S14と、第2の導電層6にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S15と、第1の導電層5及び第2の導電層6にエッチング処理を行い配線を形成する配線形成工程S16と、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S17と、を経て製造される。
【0058】
(絶縁層形成工程S11)
まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2aの表面にプライマー層2bを形成するために、プライマー塗布液を準備する。プライマー塗布液は、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなり、乾燥後の膜厚が50nm~500nmの厚さになるように、バーコート法、スピンコート法、コンマコート法、インクジェット法等の方法で塗布し、100℃で10分間乾燥して、プライマー層2bを形成する。
次いで、プライマー層2bにアニール処理を施してプライマー層2b上に官能基を発現させる(
図5(a) 参照)。
【0059】
(触媒層形成工程S12)
プライマー層2b上に官能基が発現した基材2aを触媒粒子を含有する溶液中に浸漬して触媒粒子をプライマー層2b上に触媒粒子群3として平均的に整列させる(
図5(b) 参照)。
この際の溶液としては、上述した触媒粒子を含有する溶液であればよく、例えば、触媒粒子、または触媒粒子の錯体を、金属塩又はイオンの状態で含有する溶液が挙げられ、適切な溶媒に溶解して金属イオンと塩基(陰イオン)とに解離されるもの等であればよい。具体的には、触媒粒子又はこの錯体の硝酸塩、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩の溶液が挙げられる。
【0060】
溶液中の触媒粒子の含有割合については、質量比で0.01から50%、0.1~30%が好ましい。含有割合が低すぎる場合、触媒粒子による導電層を形成するのに必要な触媒粒子が不足してピンホールが発生する虞があり、含有割合が高過ぎると溶液中で触媒粒子同士が凝集しやすくなるなど安定性が損なわれる虞がある。また、含有割合が高過ぎるとプライマー層2b上の触媒粒子の専有面積(被覆率)が高くなり、高周波特性を阻害する虞もある。
この触媒粒子付与処理は、例えば、20~100℃程度の温度範囲で、1秒~10時間程度、好ましくは数10秒~数10分間程度行う。
この処理により、触媒粒子自体の又は触媒粒子の錯体におけるカチオン性基が、基材2aのプライマー層2bにおけるアニオン性官能基と相互作用して、絶縁層2に、触媒粒子群3を導入することができる。
【0061】
(無電解めっき工程S13)
次に、触媒層が形成された基材2aを無電解めっき液に浸漬してめっき被膜を析出させ、第1の導電層5を形成する(
図5(c) 参照)。
無電解めっき液は、めっきの分野で一般的に知られているものを用いることができ、一般的な無電解めっき浴の組成としては、主として、得ようとするめっき層を構成する金属イオン、還元剤、ならびに安定剤および錯化剤等の添加剤を含有するものが挙げられる。
【0062】
還元剤としては、用いる金属イオンによって適宜選択することができ、例えば、HCOH、次亜リン酸ナトリウム、H2NNH2、DMAB(ジメチルアミンボラン)等が挙げられる。また、添加剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、EDTA、ロッシェル塩などのキレート剤、マロン酸ナトリウム、りんご酸ナトリウム、こはく酸ナトリウム等が挙げられる。
無電解めっき浴への浸漬時間は、例えば、1分~6時間程度であることが好ましく、1分~3時間程度であることがより好ましい。本実施形態においては、65℃に保温された無電解めっき液に、10分間浸漬してめっき被膜を析出させ、500nmの膜厚の第1の導電層5を形成した。
【0063】
(電解めっき工程S14)
無電解めっき工程S13で形成された第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する(
図5(d) 参照)。
電解めっきは、無電解めっきにより形成された第1の導電層5を電極として利用して、めっきの分野で一般的に知られている方法、条件を適用することにより行うことができる。具体的には、電解液に陽極であるめっき金属と陰極である第1の導電層5が形成された基材2aを浸し、直流の電気を通すことで、陽極では酸化反応によってめっき金属が液中に溶け出し、陰極では還元反応によりめっき金属が析出してめっき被膜に成長とする。
【0064】
(配線パターン形成工程S15)
まず、電解めっき工程S14で形成された第2の導電層6上にフォトレジスト液を均一、平坦に塗布する。フォトレジスト液の塗布は、スピンコータ、スプレーコータ等、フォトレジストの塗布に用いられる一般的な塗布方法で行なわれる。
【0065】
フォトレジストの塗布が完了したらフォトレジストの溶剤を除去するためにプリベイクを行い、露光装置を使用して紫外線を照射してフォトマスク上のパターンを第2の導電層6上のフォトレジストに転写する。
そして、パターン部以外のフォトレジストを現像液を用いて除去する。現像方式としては、ディップ(浸漬)現像、スプレー現像等があり、使用するフォトレジストに応じて選択される。現像後は、専用リンスや純粋で洗浄して乾燥させる。この現像処理により、感光しない部分のフォトレジストがレジスト膜RSとして残り、第2の導電層6に所定の配線パターンが形成される(
図5(e) 参照)。
【0066】
(配線形成工程S16)
そして、塩化第二鉄溶液を用いて、マスキングされていない部分の第2の導電層6を腐食溶融(エッチング処理)して配線を成形する(
図5(f) 参照)。
【0067】
(触媒除去工程S17)
続いて、塩化第二鉄溶液を用いて、配線間に表出する触媒層をエッチングして第1の導電層5上に積層された第2の導電層6を配線として残し、レジスト膜RSを剥離除去する(
図5(g) 参照)。
【0068】
本実施形態に係る高周波回路構造1の製造方法によれば、絶縁層2と第1の導電層5が充分な密着強度を保持しながら表面に触媒粒子群3が表出した絶縁層2と第1の導電層5の間の界面が高い平滑性を有して上面が平滑な導電層を得ることができる。また、第2の導電層6を第1の導電層5の側壁5aを厚み方向において覆わないように形成して、側壁が平滑な導電層を形成することができる。これにより、導電層に形成される配線パターンが矩形の断面形状で4辺が平滑となり高い高周波伝送特性を有する高周波回路構造1を得ることができる。
【0069】
「変形例1」
図6は変形例1に係る高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図7は変形例1に係る高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
変形例1に係る高周波回路構造1の製造方法は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S21と、絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S22と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S23と、第1の導電層5上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S24と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S25と、レジスト膜除去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった導電層に配線を形成する配線形成工程S26と、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S27と、からなる。
【0070】
このように、変形例1に係る高周波回路構造1の製造過程は、第1の導電層5上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成した後、第1の導電層5に第2の導電層6を一体形成し、レジスト膜除RS去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった導電層に配線を形成する点で、本実施形態に係る高周波回路構造1の製造過程と異なっている。
【0071】
まず、絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S21(
図7(a) 参照)、絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S22(
図7(b) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S23(
図7(c) 参照)を順次実施する。
【0072】
(配線パターン形成工程S24)
無電解めっき工程S23で形成された第1の導電層5上にフォトレジスト液を塗布した後、プリベイクを行い、露光装置を使用して紫外線を照射してフォトマスク上のパターンを第1の導電層5上のレジスト膜RSに転写する。
そして、パターン部以外のレジスト膜RSを現像液を用いて除去して、第1の導電層5上に所定の配線パターンを形成する(
図7(d) 参照)。
【0073】
次に、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S25を実施する(
図7(e) 参照)。
【0074】
(配線形成工程S26)
第1の導電層5上に残ったレジスト膜RSを現像液を用いて除去して、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線を形成する(
図7(f) 参照)。
【0075】
(触媒除去工程S27)
続いて、塩化第二鉄溶液を用いて、配線間に表出する触媒層をエッチングして第1の導電層5上に積層された第2の導電層6を配線として残す(
図7(g) 参照)。
【0076】
変形例1の製造方法によれば、配線をより狭ピッチで配置することが可能となる。
【0077】
「変形例2」
図8は変形例2に係る高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図9は変形例2に係る高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
変形例2に係る高周波回路構造1の製造方法は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S31と、絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S32と、触媒層が形成された絶縁層2上にレジスト膜を形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S33と、 配線パターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S34と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S35と、レジスト膜RSを剥離するレジスト膜除去工程S36と、必要に応じて露出した前記触媒粒子を除去する触媒除去工程S37と、からなる。
【0078】
このように、変形例2に係る高周波回路構造1の製造過程は、触媒層が形成された絶縁層2上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S33と、レジスト膜RSを剥離するレジスト膜除去工程S36とを含む点で、本実施形態に係る高周波回路構造1の製造過程と異なっている。
【0079】
まず、絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S31(
図9(a) 参照)、絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S32(
図9(b) 参照)を順次実施する。
【0080】
(配線パターン形成工程S33)
触媒層形成工程S32で触媒層が形成された絶縁層2上にフォトレジスト液を塗布する。変形例2においては、パターン露光された部分が残るネガレジストを塗布する。フォトレジスト液の塗布が完了したらプリベイクを行い、露光装置を使用して紫外線を照射してフォトマスク上のパターンを触媒層上のレジスト膜RSに転写する。
そして、露光されなかったパターン部のレジスト膜RSを現像液を用いて除去して、触媒層上に所定の配線パターンを形成する(
図9(c) 参照)。
【0081】
続いて、レジストパターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S34と(
図9(d) 参照)、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S35(
図9(e)参照)とを順次実施する。
【0082】
(レジスト膜除去工程S36)
電解めっき工程S35で第1の導電層5に第2の導電層6を一体形成した後、レジスト膜RSを剥離除去する(
図9(f) 参照)。
【0083】
(触媒除去工程S37)
最後に、塩化第二鉄溶液を用いて、配線間に表出する触媒層をエッチングして第1の導電層5上に積層された第2の導電層6を配線として残す(
図9(g) 参照)。
【0084】
「変形例3」
図10は変形例3に係る高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図11、
図12は変形例3に係る高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
変形例3に係る高周波回路構造1の製造方法は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2上に所定のパターンを形成する絶縁層形成工程S41と、触媒粒子コロイド溶液を所定のパターン上に塗布した後、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層表面に触媒粒子群3からなる触媒層を配線パターンとして形成する触媒層形成工程S42と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S43と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S44と、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S45と、からなる。
【0085】
このように、変形例3に係る高周波回路構造1の製造過程は、先に、絶縁層2上に所定のパターンを形成する絶縁層形成工程S41を含む点で、本実施形態に係る高周波回路構造1の製造過程と異なっている。
【0086】
(絶縁層形成工程S41)
本実施形態においては、絶縁層2上に所定のパターンを形成する方法として、
図11に示すように、プライマー層2b表面に発現させた官能基の一部を光照射(
図11(b)中 矢印UVで示す)によって失活させてパターンを形成する第1の方法と、
図12に示すように、基材2aの表面に、インクジェット法によりプライマーをパターンとして塗布してアニール処理を施すことによりプライマー層2b上に官能基を発現させる第2の方法とがあり、いずれを用いてもよい。
【0087】
(第1の方法)
まず、所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2aの表面に、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマーを塗布して乾燥させ、プライマー層2b表面に紫外線を露光した後、所定の加熱を行って、プライマー層2b上に官能基を発現させる(
図11(a)参照)。
そして、プライマー層2b上に所定のライン/スペース(配線幅及び配線間隔)にパターニングしたフォトマスクを置き、紫外線UVを所定の光量で照射し、マスクで遮蔽していないプライマー層2b上の官能基を失活させる(
図11(b)参照)。官能基が失活したプライマー層2b上には、触媒粒子は付着しない。
【0088】
(第2の方法)
所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2aの表面に、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマー塗布液を、インクジェット法で所定のパターンで塗布し、プライマー層2bにパターンを形成する(
図12(a)参照)。次いで、プライマー層2bに所定のアニール処理を施して、パターン状に形成されたプライマー層2b上に官能基を発現させる(
図12(a)参照)。
【0089】
以下、絶縁層表面に触媒粒子群3からなる触媒層を配線パターンとして形成する触媒層形成工程S42(
図11(c)、
図12(b) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S43(
図11(d)、
図12(c) 参照)、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S44(
図11(e)、
図12(d) 参照)、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S45を順次実施して高周波回路構造1を製造する。
【0090】
「変形例4」
図13は変形例4に係る高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図14、
図15は変形例4に係る高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
変形例4に係る高周波回路構造1の製造方法は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2上に所定のパターンを形成する絶縁層形成工程S51と、絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S52と、所定のパターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S53と、第1の導電層5が形成された絶縁層2上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S54と、配線パターンが形成された第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S55と、レジスト膜RS除去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった導電層に配線を形成する配線形成工程S56と、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S57と、からなる。
【0091】
このように、変形例4に係る高周波回路構造1の製造過程は、先に、絶縁層2上に所定のパターンを形成する絶縁層形成工程S51と、第1の導電層5が形成された絶縁層2上にレジスト膜を形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S54と、レジスト膜RS除去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった導電層に配線を形成する配線形成工程S56と、を含む点で、本実施形態に係る高周波回路構造1の製造過程と異なっている。
【0092】
(絶縁層形成工程S51)
絶縁層2上に所定のパターンを形成する方法として、
図14に示すように、プライマー層2b表面に発現させた官能基の一部を光照射によって失活させてパターンを形成する第1の方法(
図14(a)、(b) 参照)と、
図15に示すように、基材2aの表面に、インクジェット法によりプライマーをパターンとして塗布してアニール処理を施すことによりプライマー層2b上に官能基を発現させる第2の方法(
図15(a)参照)とがあり、いずれを用いてもよい。
【0093】
次に、絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S52(
図14(c)、
図15(b) 参照)、所定のパターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S53を順次実施する(
図14(d)、
図15(c) 参照)。
【0094】
(配線パターン形成工程S54)
無電解めっき工程S53で第1の導電層5が形成された絶縁層2上にフォトレジスト液を塗布する。フォトレジスト液の塗布が完了したらプリベイクを行い、露光装置を使用して紫外線を照射してフォトマスク上のパターンを触媒層上のレジスト膜RSに転写する。
そして、露光されなかったパターン部のレジスト膜RSを現像液を用いて除去して、触媒層上に所定の配線パターンを形成する(
図14(e)、
図15(d) 参照)。
【0095】
続いて、配線パターンが形成された第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S55を実施する(
図14(f)、
図15(e) 参照)。
【0096】
(配線形成工程S56)
続いて、第1の導電層5上に残ったレジスト膜RSを除去して、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線を形成する(
図14(g)、
図15(f) 参照)。
【0097】
「変形例5」
図16は変形例5に係る高周波回路構造1の製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図17、
図18は変形例5に係る高周波回路構造1の製造過程を示す断面模式図である。
変形例5に係る高周波回路構造1の製造方法は、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2上に所定のパターンを形成する絶縁層形成工程S61と、絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S62と、触媒層が形成された絶縁層2上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S63と、 配線パターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程64と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S65と、レジスト膜RSを剥離するレジスト膜除去工程S66と、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する触媒除去工程S67と、からなる。
【0098】
このように、変形例5に係る高周波回路構造1の製造過程は、触媒層が形成された絶縁層2上にレジスト膜RSを形成し、レジスト膜RSを露光・現像してレジスト膜RSに配線パターンを形成する配線パターン形成工程S63と、レジスト膜RSを剥離するレジスト膜除去工程S66とを含む点で、本実施形態に係る高周波回路構造1の製造過程と異なっている。
【0099】
(絶縁層形成工程S61)
絶縁層形成工程S61において、絶縁層2上に所定のパターンを形成する方法として、
図17に示すように、プライマー層2b表面に発現させた官能基の一部を光照射によって失活させてパターンを形成する第1の方法(
図17(a)、(b) 参照)と、
図18に示すように、基材2aの表面に、インクジェット法によりプライマーをパターンとして塗布してアニール処理を施すことによりプライマー層2b上に官能基を発現させる第2の方法(
図18(a)参照)とがあり、いずれを用いてもよい。
【0100】
続いて、絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S62(
図17(c)、
図18(b) 参照)を実施する。
【0101】
(配線パターン形成工程S63)
次に、触媒層形成工程S62で触媒層が形成された絶縁層2上にフォトレジスト液を塗布してレジスト膜RSを形成する。変形例4においては、パターン露光された部分が残るネガレジストを塗布する。
フォトレジスト膜を形成した後、露光装置を使用して紫外線を照射してフォトマスク上のパターンを第2の導電層6上のフォトレジストに転写する。
そして、露光されなかったパターン部以外のフォトレジストを現像液を用いて除去して、第2の導電層6に所定の配線パターンを形成する(
図17(d)、
図18(c)) 参照)。
【0102】
続いて、配線パターンが形成された触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S64(
図17(e)、
図18(d)) 参照)と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S65(
図17(f)、
図18(e) 参照)とを順次実施する。
【0103】
(レジスト膜除去工程S66)
最後に、電解めっき工程S65で、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成した後、レジスト膜RSを剥離除去する(
図17(g)、
図18(f) 参照)。
【0104】
「第2実施形態」
図19は第2実施形態に係る高周波回路構造1Aの構成例を示す断面模式図である。
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る高周波回路構造1Aの構成と製造方法について説明する。
【0105】
(1)高周波回路構造1Aの構成
第2実施形態に係る高周波回路構造1Aは、既設の導体7の上に第1実施形態の高周波回路構造1が形成され、第2の導電層6が導体7に達するビアホール8を埋めて既設の導体7と電気的に接続している。したがって、第1実施形態との共通部分については同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0106】
高周波回路構造1Aは、
図19(a)に示すように、導体7と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有する絶縁層2と、絶縁層2の表面に官能基を介して接合された触媒粒子群3と、触媒粒子群3に第1の膜厚で一体化された第1の導電層5と、第1の導電層5の上に第1の膜厚よりも厚い第2の膜厚で導体7と電気的に接続するように形成された第2の導電層6とを備える。
【0107】
(導体)
導体7は、基板の表面に形成された導電層であり、導体7を介して高周波回路構造1Aを接続して、例えば、両面基板や多層基板とすることが可能となる。導体7は金属メッキ層として形成され、表面7aにはビアホール8を埋めるように形成される第2の導電層6が電気的に接続される。
【0108】
(絶縁層)
絶縁層2は、
図19(b)に示すように、導体7の表面7aに、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が発現したプライマー層2bが形成され、絶縁層2には、導体7に達するビアホール8が形成されている。
【0109】
(触媒粒子群)
プライマー層2bが形成された導体7の表面には触媒粒子群3が接合されている。触媒粒子群3は、ビアホール8の内壁8aにも接合されている。
(第1の導電層)
第1の導電層5としてのめっき層は、触媒粒子群3の上に無電解めっきにより形成される。めっき層は、導体7に到達するようにビアホール8の内壁8aにも形成されている。
【0110】
(第2の導体層)
第2の導電層6は、第1の導電層5の上に電解めっきにより積層されている。また、ビアホール8を埋めて導体7に到達し導体7と電気的に接合されている。
【0111】
(2)高周波回路構造1Aの製造方法
図20は第2実施形態に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図21は第2実施形態に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
本実施形態に係る高周波回路構造1Aは、既設の導体7上に配置された絶縁層2にビアホール8を形成し、ビアホール8の内壁8aを含めて絶縁層2に触媒粒子付与処理をし、絶縁層2の表面及びビアホール8に導電層を形成することによって製造することができる。
すなわち、既設の導体7の上に硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S71と、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S72と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることによりビアホール8の内壁8a及び絶縁層2表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S73と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S74と、第1の導電層5に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで第1の導電層5に配線パターンを形成する配線パターン形成工程S75と、エッチングマスクを剥離して露出した触媒粒子を除去する剥離除去工程S76と、第1の導電層5及びビアホール8に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S77と、からなる。
【0112】
(絶縁層形成工程S71、ビアホール開口工程S72)
既設の導体7の表面7aに、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマー層塗布液を塗布する。このとき、インクジェット法でビアホール8をパターニングしながらプライマー層塗布液を塗布することで、プライマー層2bにビアホール8を同時に形成する。次いで、プライマー層2b表面に紫外線を露光した後、所定の加熱を行って、プライマー層2b上に官能基を発現させて導体7に達するビアホール8が開口した絶縁層2を形成する(
図21(a)参照)。
【0113】
(触媒層形成工程S73)
プライマー層2b上に官能基が発現した絶縁層2表面及びビアホール8の内壁8aに触媒粒子コロイド溶液を供給して触媒粒子をビアホール8の内壁8a及び絶縁層2表面に平均的に整列させる(
図21(b) 参照)。
この触媒粒子付与処理により、触媒粒子自体の又は触媒粒子の錯体におけるカチオン性基が、プライマー層2bにおけるアニオン性官能基と相互作用して、絶縁層2及びビアホール8の内壁8aに触媒粒子を導入することができる。
【0114】
(無電解めっき工程S74)
次に、触媒層が形成された絶縁層2を無電解めっき液に浸漬してめっき被膜を析出させ、第1の導電層5を形成する(
図21(c) 参照)。
【0115】
(配線パターン形成工程S75)
無電解めっき工程S73で形成された第1の導電層5上にフォトレジスト液を塗布する。フォトレジストの塗布が完了したらプリベイクを行い、露光装置を使用して紫外線を照射してエッチングマスク上のパターンを第1の導電層5の上に転写してレジスト膜RSを形成する。(
図21(d) 参照)。そして、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5の上に配線パターンを形成する(
図21(e) 参照)。
【0116】
(剥離除去工程S76)
配線パターン形成工程S75で形成されたレジスト膜RSを剥離し、必要に応じて露出した触媒粒子を除去する。露出した触媒粒子は、例えば、レーザ照射やプラズマ照射を行うことで除去することができる(
図21(f) 参照)。
【0117】
(電解めっき工程S77)
そして、配線パターンが形成された第1の導電層5及びビアホール8に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する(
図21(g) 参照)。
これにより、第1の導電層5の上に第2の導電層6が積層されるとともに、第2の導電層6がビアホール8を埋めて導体7と電気的に接続される。
【0118】
本実施形態に係る高周波回路構造1Aの製造方法によれば、ビアホール8の内壁8aにも触媒層を形成して既設の導体7と第2の導電層6を電気的に接続するとともに、上面が平滑な第2の導電層6を有する多層基板を得ることができる。
【0119】
「変形例1」
図22は変形例1に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図23は変形例1に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
変形例1に係る高周波回路構造1Aの製造方法は、既設の導体7の上に硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基が表層に発現した絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S81と、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S82と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることによりビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S83と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S84と、第1の導電層5上に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成して第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S85と、レジスト膜RS除去後にエッチングマスクEMを形成して第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6があわさった導電層に配線パターンを形成する配線形成工程S86と、エッチングマスクEMを剥離して露出した触媒粒子を除去する剥離除去工程S87と、からなる。
【0120】
このように、変形例1に係る高周波回路構造1Aの製造過程は、レジスト膜RS除去後にエッチングマスクEMを形成して第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6があわさった導電層に配線パターンを形成する配線形成工程S86を含む点で、本実施形態に係る高周波回路構造1Aの製造過程と異なっている。
【0121】
まず、絶縁層2を形成する絶縁層形成工程S21、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S82(
図23(a) 参照)、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S83(
図23(b) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S84(
図23(c) 参照)を順次実施する。
【0122】
(電解めっき工程S85)
続いて、無電解めっき工程S84で形成された第1の導電層5に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成して(
図23(d) 参照)、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する(
図23(e) 参照)。これにより、第1の導電層5の上に第2の導電層6が積層されるとともに、第2の導電層6がビアホール8を埋めて導体7と電気的に接続される。
【0123】
(配線形成工程S86)
次に、第1の導電層5上に残ったレジスト膜RSを除去して(
図23(f) 参照)、第2の導電層6の上にエッチングマスクEMを形成する(
図23(g) 参照)。そして、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線パターンを形成する(
図23(h) 参照)。
【0124】
(剥離除去工程S87)
配線形成工程S86で形成されたエッチングマスクEMを剥離し、必要に応じてレーザ照射やプラズマ照射を行い露出した触媒粒子を除去する(
図23(i) 参照)。
【0125】
変形例1の製造方法によれば、ビアホール8の内壁8aにも触媒層を形成して既設の導体7と第2の導電層6を電気的に接続するとともに、側壁及び上面が平滑な第2の導電層6をより狭ピッチで配置した多層基板を得ることができる。
【0126】
「変形例2」
図24は変形例2に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図25は変形例2に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
変形例2に係る高周波回路構造1Aの製造方法は、既設の導体7の上に絶縁層2として使用する絶縁性の基材2aを接着する絶縁層形成工程S91と、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S92と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層2bをビアホール8の内壁8aを含む絶縁層2に所定のパターンで形成するプライマー層形成工程S93と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることによりビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S94と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S95と、第1の導電層5上に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S96と、第2の導電層6上に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成してエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6があわさった導電層に配線パターンを形成する配線形成工程S97と、レジスト膜RSを剥離して露出した触媒粒子及びプライマーを除去する剥離除去工程S98と、からなる。
【0127】
(絶縁層形成工程S91)
まず、既設の導体7に所定の形状及び大きさに形成された実質的に平坦なフィルム状の基材2aを接着する。基材2aは、例えば、エポキシ系接着剤等の接着剤、接着シート、シート状プリプレグなどを用いた接着や、プレス処理による熱融着などによって導体7上に接着する(
図25(a) 参照)。
【0128】
(ビアホール開口工程S92)
そして、レーザを用いて基材2aに導体7に達するビアホール8を開口する(
図25(b) 参照)。ビアホール8の開口には、YAGレーザ、エキシマレーザや炭酸ガスレーザによる加工以外にも、レジストまたは銅箔をマスクとしたケミカルエチッチングやドライエッチングを用いることができる。
【0129】
(プライマー層形成工程S93)
ビアホール8が開口された基材2aに、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマー塗布液を塗布して乾燥させ、プライマー層2b表面に紫外線を露光した後、所定の加熱を行って、プライマー層2b上に官能基を発現させる(
図25(c)参照)。
【0130】
次に、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S94(
図25(d) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S95(
図25(e) 参照)、第1の導電層5上に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S96(
図25(f) 参照)を順次実施する。
【0131】
(配線形成工程S97)
第2の導電層6の上に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成する(
図25(g) 参照)。そして、露出した第2の導電層6及び第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線パターンを形成する(
図25(h) 参照)。
【0132】
(剥離除去工程S98)
配線形成工程S97で形成されたレジスト膜RSを剥離し(
図25(i) 参照)、必要に応じてレーザ照射やプラズマ照射を行い露出した触媒粒子を除去する(
図25(j) 参照)。
【0133】
変形例2の製造方法によれば、ビアホール8の内壁8aにも触媒層を形成して既設の導体7と第2の導電層6を電気的に接続するとともに、側壁及び上面が平滑な第2の導電層6をより狭ピッチで配置した多層基板を得ることができる。
【0134】
「変形例3」
図26は変形例3に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図27は変形例3に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
変形例3に係る高周波回路構造1Aの製造方法は、既設の導体7の上に絶縁層2として使用する絶縁性の基材2aを接着する絶縁層形成工程S101と、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S102と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層2bをビアホール8の内壁8aを含む絶縁層2に所定のパターンで形成するプライマー層形成工程S103と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることによりビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S104と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S105と、第1の導電層5に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成して第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S106と、レジスト膜RS除去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6があわさった導電層に配線パターンを形成する配線形成工程S107と、レジスト膜RSを剥離して露出した触媒粒子及びプライマーを除去する剥離除去工程S108と、からなる。
【0135】
まず、既設の導体7の上に基材2aを接着する絶縁層形成工程S101(
図27(a) 参照)と、絶縁層2に導体7に達するビアホール8を開口するビアホール開口工程S102(
図27(b) 参照)と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層2bをビアホール8の内壁8aを含む絶縁層2に所定のパターンで形成するプライマー層形成工程S103(
図27(c) 参照)と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S104(
図27(d) 参照)と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S105(
図27(e) 参照)、を順次実施する。
【0136】
(電解めっき工程S106)
次に、第1の導電層5に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成して(
図27(f) 参照)第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する(
図27(g) 参照)。
【0137】
(配線形成工程S107)
レジスト膜RSを除去する(
図27(h) 参照)。そして、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線パターンを形成する(
図27(i) 参照)。
【0138】
(剥離除去工程S108)
必要に応じてレーザ照射やプラズマ照射を行い露出した触媒粒子及びプライマーを除去する(
図27(j) 参照)。
【0139】
「変形例4」
図28は変形例4に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図29は変形例4に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
変形例4に係る高周波回路構造1Aの製造方法は、絶縁層2にビアホール8を開口するビアホール開口工程S111と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層2bをビアホール8の内壁8aを含む絶縁層2に所定のパターンに形成するプライマー層形成工程S112と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成する触媒層形成工程S113と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S114と、第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S115と、第2の導電層6に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成してエッチング処理を行うことで第1の導電層5及び第2の導電層6に配線パターンを形成する配線形成工程S116と、エッチングマスクを剥離して必要に応じて露出した触媒粒子及びプライマーを除去する剥離除去工程S117と、からなる。
【0140】
(ビアホール開口工程S111)
まず、レーザを用いて絶縁層2にビアホール8を開口する(
図29(a) 参照)。ビアホール8の開口には、YAGレーザ、エキシマレーザや炭酸ガスレーザによる加工以外にも、レジストまたは銅箔をマスクとしたケミカルエチッチングやドライエッチングを用いることができる。
【0141】
(プライマー層形成工程S112)
ビアホール8が開口された絶縁層2に、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマー塗布液を塗布して乾燥させ、プライマー層2b表面に紫外線を露光した後、所定の加熱を行って、プライマー層2b上に官能基を発現させる(
図29(b)参照)。
【0142】
次に、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S113(
図29(c) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層を一体形成する無電解めっき工程S114(
図29(d) 参照)、第1の導電層5上に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S115(
図29(e) 参照)を順次実施する。
【0143】
(配線形成工程S116)
第2の導電層6の上に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成する(
図29(f) 参照)。そして、露出した第2の導電層6及び第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線パターンを形成する(
図29(g) 参照)。
【0144】
(剥離除去工程S117)
配線形成工程S116で形成されたレジスト膜RSを剥離し、必要に応じてレーザ照射やプラズマ照射を行い露出した触媒粒子を除去する(
図29(h) 参照)。
【0145】
「変形例5」
図30は変形例5に係る高周波回路構造1Aの製造方法の概略の手順の一例を示すフローチャート図、
図31は変形例5に係る高周波回路構造1Aの製造過程を示す断面模式図である。
変形例5に係る高周波回路構造1Aの製造方法は、絶縁層2にビアホール8を開口するビアホール開口工程S121と、硫黄、酸素及び窒素から選ばれる少なくとも1種を含有する官能基を表層に有するプライマー層2bをビアホール8の内壁8aを含む絶縁層2に所定のパターンに形成するプライマー層形成工程S122と、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2表面に触媒粒子コロイド溶液を供給し、触媒粒子コロイド溶液の溶媒を揮発させることにより触媒層を形成する触媒層形成工程S123と、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S124と、第1の導電層5に配線パターンが形成されたエッチングマスクを形成して第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する電解めっき工程S125と、エッチングマスク除去後に第1の導電層5の厚み分だけ金属のエッチング処理を行うことで第1の導電層5と第2の導電層6があわさった導電層に配線パターンを形成する配線形成工程S126と、必要に応じて露出した触媒粒子及びプライマーを除去する剥離除去工程S127と、からなる。
【0146】
まず、レーザを用いて絶縁層2にビアホール8を開口するビアホール開口工程S121(
図31(a) 参照)、ビアホール8が開口された絶縁層2に、ベース樹脂、メラミン系架橋剤、光酸発生剤、溶剤等からなるプライマー塗布液を塗布して乾燥させ、プライマー層2b表面に紫外線を露光した後、所定の加熱を行って、プライマー層2b上に官能基を発現させるプライマー層形成工程S122(
図31(b) 参照)、ビアホール8の内壁8a及び絶縁層2の表面に触媒粒子群3からなる触媒層を形成する触媒層形成工程S123(
図31(c) 参照)、触媒層に無電解めっきで第1の導電層5を一体形成する無電解めっき工程S124(
図31(d) 参照)を順次実施する。
【0147】
(電解めっき工程S125)
次に、第1の導電層5に配線パターンが形成されたレジスト膜RSを形成して(
図31(e) 参照)第1の導電層5に電解めっきで第2の導電層6を一体形成する(
図31(f) 参照)。
【0148】
(配線形成工程S126)
レジスト膜RSを除去する(
図31(g) 参照)。そして、露出した第1の導電層5を金属エッチングで酸化溶解させて第1の導電層5と第2の導電層6が合わさった状態の配線パターンを形成する(
図31(h) 参照)。
【0149】
(剥離除去工程S127)
必要に応じてレーザ照射やプラズマ照射を行い露出した触媒粒子及びプライマーを除去する(
図31(i) 参照)。
【符号の説明】
【0150】
1、1A・・・高周波回路構造
2・・・絶縁層、2a・・・基材、2b・・・プライマー層
3・・・触媒粒子群、4・・・境界領域
5・・・第1の導電層、6・・・第2の導電層、7・・・導体、8・・・ビアホール
RS・・・レジスト膜