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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082008
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】壁面の仕上げ方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/07 20060101AFI20240612BHJP
   E04F 13/08 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
E04F13/07 E
E04F13/08 101K
E04F13/08 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195679
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】000159032
【氏名又は名称】菊水化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山内 秀樹
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA26
2E110AA47
2E110AA57
2E110AB04
2E110AB22
2E110AB23
2E110AB26
2E110AB27
2E110AB28
2E110CA03
2E110CA04
2E110DA12
2E110DC21
2E110GA15W
2E110GA34Y
2E110GA42Z
2E110GB01Y
2E110GB01Z
2E110GB16Y
2E110GB17Y
2E110GB23Y
2E110GB24Y
2E110GB26Z
2E110GB32Z
2E110GB42Z
2E110GB44Z
2E110GB45Z
2E110GB53Z
2E110GB55Z
2E110GB62Y
(57)【要約】
【課題】構造物の壁面の表面を一体化し、旧壁面を構成している材料の剥落を防止すると共に、その仕上げも比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる壁面の仕上げ方法を提供する。
【解決手段】構造物の壁面の仕上げ方法であって、仕上げ対象面の垂直方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に張付け、その後に水平方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に、垂直方向の帯状補強部材に張合せながら張付け、垂直方向に張付けられた帯状補強部材と水平方向に張付けられた複数本の帯状補強部材により仕上げ対象面を網目状に覆い、その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材を貼付けることで、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができ、その仕上げが帯状補強部材を基にして行うことができることで、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の壁面の仕上げ方法であって、
仕上げ対象面の垂直方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に張付け、
その後に水平方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に、垂直方向の帯状補強部材に張合せながら張付け、
垂直方向に張付けられた帯状補強部材と水平方向に張付けられた複数本の帯状補強部材により仕上げ対象面を網目状に覆い、
その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材を貼付ける壁面の仕上げ方法。
【請求項2】
構造物の壁面の仕上げ方法であって、
仕上げ対象面の水平方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に張付け、
その後に垂直方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に、水平方向の帯状補強部材に張合せながら張付け、
水平方向に張付けられた帯状補強部材と垂直方向に張付けられた複数本の帯状補強部材により仕上げ対象面を網目状に覆い、
その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材を貼付ける壁面の仕上げ方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の壁面の仕上げ方法であって、
垂直方向と水平方向とに張付けられた複数の帯状補強部材から形成された区画で、隣り合う2以上の区画を区画群として、区画又は区画群毎に接着材を塗布し、可撓型シート状表装材の端部が帯状補強部材の中心付近になるように貼付ける壁面の仕上げ方法。
【請求項4】
請求項3に記載の仕上げ方法であって、
帯状補強部材の長手方向の両側に離型紙により覆われた粘着部が3~15mmの範囲で間隔を設け、
隣り合う可撓型シート状表装材端部間に3~15mmの範囲で空間を設け、帯状補強部材を露出させる壁面の仕上げ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建物などの構造物の内外壁面などの壁面の仕上げ方法に関するもので、その利用分野は建築分野である。
【背景技術】
【0002】
従来から壁面の仕上げ方法は、多く提案されていて、その中でも特開平05-209453号公報には、可撓型シート状表装材の仕上げ方法が提案されている。
これには、表側から見た時に化粧材部,基材部,粘着材部,離型紙部からなる可撓性を有する表装材と表側から見た時に基材部,粘着材部,離型紙部からなるロール状や帯状の目地部材とを用い、目地部材を表装材の大きさと目地間隔を計算の上、先に貼り、次に可撓型シート状表装材を所定の位置に離型紙を剥がしながら粘着材により、接着させるものが記載されている。
【0003】
これにより、可撓型シート状表装材と目地部材を用意し、目地部材を目地形成位置に先貼りし、可撓型シート状表装材を所望の目地間隔を設けながら容易に壁面を仕上げることができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05-209453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような方法による壁面の仕上げ方法では、目地部材を貼った後にはどの部分からでも可撓型シート状表装材を貼ることができ効率的に仕上げ作業を行うことができる。
しかし、このような目地部材の貼り方では、目地部材とそれに隣接する目地部材との連結性がなく、壁面の強度や壁面の改修での効果を十分に得ることができないことがある。
【0006】
例えば、壁面にタイルや石材が張られている壁面の改修の場合、特許文献1にあるような仕上げ方法では、可撓型シート状表装材やそれに接着された目地部材が独立した状態になる場合があり、壁面全体が一体となる状態ではないことがある。
そのため、旧壁面のタイルや石材が剥がれた場合に、それらに張付けられた可撓型シート状表装材と一緒に剥落する場合がある。
【0007】
本開示は、構造物の壁面の表面を一体化し、旧壁面を構成している材料の剥落を防止すると共に、その仕上げも比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる壁面の仕上げ方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
構造物の壁面の仕上げ方法であって、仕上げ対象面の垂直方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に張付け、その後に水平方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に、垂直方向の帯状補強部材に張合せながら張付け、垂直方向に張付けられた帯状補強部材と水平方向に張付けられた複数本の帯状補強部材により仕上げ対象面を網目状に覆い、その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材を貼付けることである。
【0009】
このことにより、仕上げ対象面の垂直方向にある出隅や入隅などの隅角部、開口部の左右や対象面の垂直方向端部などの部位から帯状補強部材を張付け、それを起点として水平方向の帯状補強部材を張付けることができるため、相互の帯状補強部材を網目状に一体化し、垂直方向の帯状補強部材を起点として、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができ、その仕上げが帯状補強部材を基にして行うことができることで、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
【0010】
構造物の壁面の仕上げ方法であって、仕上げ対象面の水平方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に張付け、その後に垂直方向に複数本の帯状補強部材を一定間隔毎に、水平方向の帯状補強部材に張合せながら張付け、水平方向に張付けられた帯状補強部材と垂直方向に張付けられた複数本の帯状補強部材により仕上げ対象面を網目状に覆い、その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材を貼付けることである。
【0011】
このことにより、仕上げ対象面の水平方向にある階層部、庇、開口部の上下部分や対象面の水平方向の端部などの部位から帯状補強部材を張付け、それを起点として垂直方向の帯状補強部材を張付けることができるため、相互の帯状補強部材を網目状に一体化し、水平方向の帯状補強部材を起点として、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができ、その仕上げも帯状補強部材を基にして行うことができることで、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
【0012】
垂直方向と水平方向とに張付けられた複数の帯状補強部材から形成された区画で、隣り合う2以上の区画を区画群として、区画又は区画群毎に接着材を塗布し、可撓型シート状表装材の端部が帯状補強部材の中心付近になるように貼付けることである。
このことにより、可撓型シート状表装材と帯状補強部材との接着が左右均等になり、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
【0013】
帯状補強部材の長手方向の両側に離型紙により覆われた粘着部が3~15mmの範囲で間隔を設け、隣り合う可撓型シート状表装材端部間に3~15mmの範囲で空間を設け、帯状補強部材を露出させることである。
このことにより、その仕上げがより容易なものとなり、意匠的に優れた仕上げを得ることができ、可撓型シート状表装材と帯状補強部材との接着が左右均等になり、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】仕上げ対象面の仕上げ方法の一例を示す。
図2】帯状補強部材の一例を示す。
図3】可撓型シート状表層材の一例を示す。
図4】可撓型シート状表層材の裏面の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示の実施形態を説明する。壁面などの仕上げ対象面の仕上げ方法の一例を図1に示す。
【0016】
まず、A視方向の仕上げ対象面11の垂直方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に張付け、その後に水平方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に、垂直方向の帯状補強部材12に張合せながら張付け、垂直方向に張付けられた帯状補強部材12と水平方向に張付けられた複数本の帯状補強部材12により仕上げ対象面11を網目状に覆い、複数の区画13を形成し、その網目状に覆われた仕上げ対象面11に可撓型シート状表装材14を貼付けることである。
【0017】
また、B視方向の仕上げ対象面11の水平方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に張付け、その後に垂直方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に、水平方向の帯状補強部材12に張合せながら張付け、水平方向に張付けられた帯状補強部材12と垂直方向に張付けられた複数本の帯状補強部材12により仕上げ面を網目状に覆い、複数の区画13を形成し、その網目状に覆われた仕上げ対象面11に可撓型シート状表装材14を貼付けることである。
【0018】
A視方向の仕上げ対象面11では、垂直にある出隅15や入隅16などの隅角部、垂直方向の端部17、他に開口部の左右などの部位から帯状補強部材12を張付けることになる。
先に張付けた垂直方向の帯状補強部材12を起点として水平方向の帯状補強部材12を張付けることができるため、相互の帯状補強部材12を網目状に一体化し、仕上げ対象面11である旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
【0019】
また、その仕上げは、帯状補強部材12を基にして行うことができるため、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
B視方向の仕上げ対象面11では、水平にある階層部、庇、開口部の上下部分や対象面の水平方向の端部17などの部位から帯状補強部材12を張付けることになる。
【0020】
先に張付けた水平方向の帯状補強部材12を起点として垂直方向の帯状補強部材12を張付けることができるため、相互の帯状補強部材12を網目状に一体化し、仕上げ対象面11である旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
また、その仕上げは、帯状補強部材12を基にして行うことができるため、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
【0021】
この仕上げ対象面11は、多くの場合、建築構造物や土木構造物などの構築物の壁面となり、構成する基材には、コンクリート,モルタル,金属,木材,ガラス,壁板材やパネル類などとなる。
この壁板材には、窯業系サイディングボード,フレキシブルボード,ケイ酸カルシウム板,押し出し成型板,木片セメント板,プレキャストコンクリート板,軽量気泡コンクリート板及び石膏ボード等の壁板材や、アルミニウム,鉄及びステンレス等の金属材料で形成されたものがある。
【0022】
また、パネル類には、複数の基材や壁板材などにより構成されて、表面に化粧加工を施したものがある。
本開示では、その壁面を構成している基材が複数枚の壁板材やパネル類などにより構成されている壁面や、これらの表面に塗料などで塗装された塗装面や他に壁面の表面がタイルなどの定型物が張付けられた既存仕上げ面である場合に、よりその効果を発揮する。
【0023】
このような仕上げ対象面11の場合では、構造物の動きに伴い、壁面に割れなどが生じることがあり、場合によっては、壁面を構成している壁板材やタイルなどの剥落が生じることがある。
また、表面に塗料などにより着色や壁面保護のために塗膜などが形成されていて、その塗膜が部分的に経年劣化などの欠損部が生じ、塗膜の剥落などもあり、場合によっては、その壁面を構成している基材へ割れや欠けなど基材欠損が生じていることもある。
【0024】
帯状補強部材12を垂直及び水平方向に複数を張付け、相互の帯状補強部材12を網目状に一体化することで、仕上げ対象面11を構成している材料の剥落を防止することができ、その仕上げが帯状補強部材12を基にして行うことができることで、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができる。
【0025】
この帯状補強部材12は、柔軟性のあるものが好ましく、うねった状態に対応し易くなる。
この帯状補強部材12の張付け位置である仕上げ対象面11の中でも、経年劣化のある改修の場合では、真っ直ぐに通った状態が少なく、うねっている場合が多く、特に、出隅15や入隅16などの隅角部では、その傾向があり、真っ直ぐな場合が少ないことがある。
【0026】
そのため、この帯状補強部材12は、金属製やプラスチック製のものを用いることが可能であるが、好ましいものとしては、柔軟性のある織布,不織布,ガラスクロス,セラミックペーパー,合成紙などやこれらを目止処理したものなど比較的薄い1mm以下のものが用いられる。
1mmより厚い場合では、下地との段差ができ、仕上げ材を用いた場合に、その段差により可撓型シート状表装材14による意匠が劣ることがある。又、この段差を消す場合であっても、その段差が1mmを超える大きい場合では、その作業も手間が掛かり、難しくなる。
【0027】
1mm以下の薄く、柔軟性のあるものである場合では、帯状補強部材12をロール状にすることが可能となり、任意の長さに切断して使用することができ、作業が効率的に行うことができる。
さらに、図2に示すような帯状補強部材12の長手方向の両側に離型紙21により覆われた粘着部22が3~15mmの範囲で間隔を設けたものであっても良い。
【0028】
図2に示したような帯状補強部材12を用いた場合、後述される隣り合う可撓型シート状表装材14の端部間に3~15mmの範囲で空間を設け易くなり、その部分を目地として利用することができる。
この粘着部22を利用することで、離型紙21を剥がしながら、可撓型シート状表装材14を貼付けることになるため、可撓型シート状表層材14の端部の接着が確実になり、簡単に仕上げを行うことが可能となり、意匠的に優れた仕上げを得ることがでる。
【0029】
この帯状補強部材12に囲まれた範囲に接着材を塗布するため、粘着部の保護が離型紙21により可能になる。
また、帯状補強部材12の左右に均等な位置に粘着部22を設けることで、可撓型シート状表装材12と帯状補強部材14との接着が左右均等になり、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
【0030】
この粘着部22の幅は、5~30mmの範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、可撓型シート状表装材14の端を十分に接着できるものである。
その粘着部22の粘着剤は、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができ、その入手の容易性などにより、アクリルゴム系あるいは非加硫ブチルゴム系のものが特に良く、他にもシリコーンゴム系,スチレンブタジエンゴム系,ポリイソプレン系,ポリビニルエーテル系などが利用できる。
【0031】
離型紙21は、通常粘着テープ,ラベル等に用いられる公知材料である、紙にフッ素樹脂,シリコーン樹脂を塗布したものを利用することができる。粘着部22と離型紙21とが一体となったテープ類などを用いることが、その加工において簡単になることから好ましく用いられる。
このテープ類には、両面テープがあり、粘着部22と離型紙21とが一体となったものをもう片側に粘着材を利用して、帯状補強部材12の長手方向の両側に貼ることで、加工することができる。
【0032】
両面テープを使用する以外には、一定幅で粘着剤を塗布し、粘着部22を形成させたのちに離型紙21で、その粘着部22を覆い保護するなどの方法がある。
この帯状補強部材12は、一定幅を持つ長尺のものであり、その長さは、特に制限されるものではないが、図1のA視方向の場合では、仕上げ対象面11の高さや、B視方向の場合では、幅方向の長さであることが好ましい。
【0033】
また、仕上げ面11に窓などの開口部がある場合では、その開口部までの長さであることが好ましい。但し、構造物の仕上げ面11の垂直方向の長さ分あることが望ましいが、作業上の効率から、垂直方向であれば、少なくとも構造物の階層の長さがあることが好ましい。
また、A視方向の場合では、垂直方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に張付け、その後に水平方向に張付ける帯状補強部材12の長さを、垂直方向に張付けられた隣り合う帯状補強部材12を結ぶ長さであっても良い。
【0034】
B視方向の場合では、水平方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に張付け、その後に垂直方向に張付ける帯状補強部材12の長さを、水平方向に張付けられた隣り合う帯状補強部材12を結ぶ長さであっても良い。
さらに、このような帯状補強部材12が平らなものであれば、張付け前に、折り曲げることができるため、出隅15や入隅16の形状に加工することが簡単にでき、隅角部の形状に合わせ、仕上げ対象面11を補強することができ、効率的な作業を行うことができる。
【0035】
この帯状補強部材12の幅は、20~100mmの範囲が好ましく、20mmより狭い場合では、強度が少なくなり、仕上げ対象面11の表面を一体化し、仕上げ対象面11を構成している材料の剥落を防止の効果が少なくなる。
100mmより広い場合では、その貼付けの手間が掛かり、その後の仕上げ材との取り合いも難しい場合も生じる。
【0036】
このような帯状補強部材12を仕上げ対象面11に張付ける。この張付けには、前もって仕上げ対象面11に帯状補強部材12を張る位置を確認し、印をつける。
その印に沿って、接着材や粘着材などを用いて、張付けを行うことが多く、これらは、特に制限されるものではないが、合成ゴム系,酢酸ビニル系,ポリマーセメント系,アクリルゴム系,変性シリコン系など各種の接着材,粘着材が使用できる。
【0037】
この接着材などの形態としては、溶媒に有機溶剤を用いた溶剤型のものや水を用いた水系型のものやそれらを用いない無溶剤型のものがあり、作業環境の問題より水系型や無溶剤型のものが好ましく使用される。
この接着材は、ヘラ,コテや塗装などに用いられる塗装用のローラーなどにより塗布することが多く、帯状補強部材12を張付けたい部分に塗布を行う。このような器具を使うことで、効率的に作業を行うことができる。
【0038】
接着材を塗布した後に、帯状補強部材12を張付ける。接着材は、帯状補強部材12を確実に接着するため、その幅より少し広めに塗布することが多い。
帯状補強部材12よりはみ出した接着材は、段差が残らないように取り除くことが好ましい。ここで使用する接着材が残り、段差がある状態で、この後に仕上げを行うことになると、その段差を隠し切れないこともある。
【0039】
また、帯状補強部材12の裏面に前もって粘着加工を行い、それを仕上げ対象面11に張付けることも行われる。これにより接着の塗布時や帯状補強部材12の接着時の接着材などのはみ出しがなくなる。
このようにして、仕上げ対象面11に一定幅を持つ長尺の帯状補強部材12を張付ける。
【0040】
A視方向の仕上げ対象面11では、垂直方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に張付ける。この張付けの多くの場合では、出隅15、入隅16、端部17の順に張付けることや、左右どちらか側から順に張付けたりすることが多いが、その貼付け順序は、特に制限されるものではない。
その後に水平方向に複数本の帯状補強部材12を一定間隔毎に、垂直方向の帯状補強部材12に交差部18で張合せながら、仕上げ対象面11に張付ける。垂直及び水平方向に張付けられた複数の帯状補強部材12から形成された複数の区画13により仕上げ面を網目状に覆う。
【0041】
この交差部18の接着には、前記記載の接着材により接着することや粘着材、両面テープによる接着することも可能である。
次に、その網目状に覆われた仕上げ対象面に可撓型シート状表装材14を貼付ける。
【0042】
この可撓型シート状表装材14は、仕上げ対象面11に貼付けることにより、その面の仕上げを行い、壁面の保護や意匠的な要素を付加するものであり、建築構造物の内外壁面の仕上げに使用され、長方形や正方形などの四角形のものが一般的である。
その表面に印刷や塗装などの着色や凹凸状などの形状やこれらを複合したものが表現されているものである。
【0043】
この可撓型シート状表層材14は、可撓性があるため、貼付けられた仕上げ対象面11の経年での動きに追従することができ、旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
この可撓型シート状表装材14は、その壁面への貼り付け作業性や意匠的な1200×1200mm以下の大きさが好ましく、その重量は、m当たり1~10kgの範囲が好ましい。
【0044】
このm当たりの重量であれば、可撓型シート状表装材14もボリューム感のある意匠となり、ズレることなく接着することができるものである。
この可撓型シート状表装材14は、可撓性を有するものであり、この可撓性としては、直径60cmの円筒に沿って表装材を曲げ、その時に表装材の表面にクラックや割れなどの発生がないかにより判断し、異常がないものとする。
【0045】
この可撓型シート状表装材14の厚みは、2~15mmの範囲のものが好ましく、その大きさは、300~900mmの範囲のものがより好ましい。この範囲内であれば、その取扱いや施工性、仕上がった壁面の意匠性など良いものとなる。
この可撓型シート状表層材14は、図3に示したようなものが代表的で、表面側に化粧材部31があり、裏面側には、その化粧材部31を支持するための基材部32がある。
【0046】
この化粧材部31は、仕上げられた壁面の意匠を表現するもので、基材部32に塗装などを行い得ることができる。又、可撓性のある部材を基材部32に貼り付けるなどにより得ることもできる。
この塗装には、一般的な塗料や塗材を使うことができるが、乾燥後の塗膜に可撓性が必要である。好ましくは、その塗料や塗材により厚みを付けることができるものである。
【0047】
その一例として、天然石やその砕石,着色骨材,着色プラスチック粒,プラスチック砕粒などを、合成樹脂エマルションや溶剤型合成樹脂と混合させた着色骨材含有塗材を用いることである。
この着色骨材含有塗材を用いたことにより、可撓型シート状表装材14の意匠が向上し、それを用いて仕上げられた壁面の意匠感も向上する。
【0048】
基材部32は、化粧部材31を支持するものであるが、可撓型シート状表装材14を壁面に粘着材や接着材により貼り付ける場合の粘着材や接着材の吸い込み調整などの効果もある。
また、可撓型シート状表装材14全体の引張り,曲げ,引き裂き強度の向上のため、基材部32が重要な要素となる。
【0049】
基材部32は、織布,不織布,ガラスクロス,セラミックペーパー,合成紙などやこれらを目止め処理したものなど比較的薄いものやプラスチック製や金属製の板状のものやポリマーセメントモルタルをシート状に成型したものなどもある。
これらにより可撓型シート状表装材14は、基材部32に化粧材部31となる塗料などを塗布し、乾燥硬化させ、積層複合化することにより得ることができる。
【0050】
好ましい形態として、図4に示した可撓型シート状表装材14の裏面の四辺に粘着加工部41が有り、その粘着加工部41が離型紙部42により保護されているものである。
このような形態にすることで、その離型紙部42を剥がしながら、可撓型シート状表装材14を貼り付けることで、帯状補強部材12に粘着加工部41を貼付けることができ、より強固に瞬間的に可撓型シート状表装材14の四周を壁面に固定することができる。
【0051】
さらに、接着材が硬化乾燥するまでの間に可撓型シート状表装材14がズレることが無く、確実に接着することができる。
この粘着加工部41の幅は、5~30mmの範囲であることが好ましく、この範囲内であれば、可撓型シート状表装材14の端を十分に接着できるものである。その粘着部22の粘着剤は、特に制限されるものではなく、公知のものを用いることができる。
【0052】
この粘着剤は、上記記載の図2に示した帯状補強部材12に用いた粘着剤と同様なものを用いることができる。
また、離型紙部42は、通常粘着テープ,ラベル等に用いられる公知材料であり、上記記載の図2に示した帯状補強部材12に用いた離型紙21と同様なものを用いることができる。
【0053】
粘着加工部41と離型紙部42とが一体となったテープ類などを用いることが、その加工において簡単になることから好ましく用いられる。
このテープ類には、両面テープがあり、粘着加工部41と離型紙部42とが一体となったものをもう片側に粘着剤を利用して、可撓型シート状表装材14の裏面の基材部32の四辺に貼ることで、容易に加工することができる。
【0054】
両面テープを使用する以外には、一定幅で粘着剤を塗布し、粘着加工部41を形成させたのちに離型紙部42で、その粘着加工部41を覆い保護するなどの方法により得ることができる。
上記記載の図2に示した帯状補強部材12と可撓型シート状表装材14の裏面の基材部32の四辺に粘着加工を施した図4に示したものを用いることで、より可撓型シート状表層材12の四辺の粘着加工部41と帯状補強部材12の粘着部22との接着が十分なものとなる。
【0055】
この可撓型シート状表層材14を貼付けるための接着材は、特に制限されるものではないが、合成ゴム系,酢酸ビニル系,ポリマーセメント系,アクリルゴム系,変性シリコン系など各種の接着材が使用できる。
この接着材などの形態としては、溶媒に有機溶剤を用いた溶剤型のものや水を用いた水系型のものやそれらを用いない無溶剤型のものがあり、作業環境の問題より水系型や無溶剤型のものが好ましく使用される。
【0056】
この接着材を網目状に覆われた仕上げ対象面11の区画13に塗布し、可撓型シート状表層材14を貼付けることになる。この接着材の塗布には、ヘラ,コテや塗装などに用いられる塗装用のローラーなどにより塗布することが多く、これらの器具を使うことで、効率的に作業を行うことができる。
また、複数の区画13に塗布し、その塗布した区画13毎に可撓型シート状表層材14を貼付けることも可能であり、接着材のオープンタイム以内に貼付けが可能な枚数の可撓型シート状表層材14を接着材の塗布後に貼付けることになる。
【0057】
さらに、複数の区画13を区画群として、その区画群の大きさに相当する可撓型シート状表層材14を貼付けることも可能である。
この場合、区画群を構成した区画13の帯状補強部材12の表面に可撓型シート状表層材14を貼付ける部分も生じるため、この可撓型シート状表層材14を貼付けることになる帯状補強部材12にも接着材を塗布することになる。
【0058】
これにより、大きな可撓型シート状表層材14を貼付けることができ、効率的な貼付け作業となる。
また、区画13を小さな大きさの単位とすることもでき、これにより、帯状補強部材12を多くすることも可能になり、より旧壁面を構成している材料の剥落を防止することができる。
【0059】
上記記載の構成材料により本開示の壁面の仕上げ方法は行われ、詳細にその方法について説明する。
まず、図1に示した仕上げ対象面11は、コンクリートにより形成された壁面であり、その表面をより平滑にするために、セメントを主成分とした下地調整材を用いて、金鏝により平滑にした壁面であった。
【0060】
その平滑にした壁面に、帯状補強部材12及びシート状表層材14を接着材により貼付けを行うが、その前に、接着性を向上させるために、アクリル系合成樹脂エマルションを主成分とした一般的な水性プライマーの塗布を行った。
このようにして仕上げ対象面11を用意し、帯状補強部材12を張付ける位置に印を付け、この印に従って、A視方向の仕上げ対象面11の垂直方向に帯状補強部材12を出隅15と入隅16から張付け、出隅15から帯状補強部材12の中心が600mmの間隔になるように張付けた。
【0061】
その後に、この出隅15に張付けた帯状補強部材12を起点として、水平方向の上下の端部17から帯状補強部材12を張付け、上の端部17から帯状補強部材12の中心が600mmの間隔になるように張付けた。
このように帯状補強部材12を張付けることで、複数の区画13を形成し、仕上げ対象面11を網目状に覆うことができた。
【0062】
この帯状補強部材12は、ポリエステル系の不織布をアクリル系塗料により目止め処理をしたものであって、その幅が45mmで、厚みが300μmで、ロール状にした50mのものを用いた。ロール状であるため、仕上げ対象面11の高さや幅方向の長さ以上の適当な長さにハサミを使用し切断した。
出隅15に張付けた帯状補強部材12は、張付け前に、帯状補強部材12の幅方向の中心から半分に折り曲げ、出隅15の形状に加工し、その形状に合わせ、張付けを行った。
【0063】
この接着には、アクリル系合成樹脂エマルションをバインダーとした乾燥後にクリヤーとなる接着材を塗装用ローラーにより塗布し、帯状補強部材12を張付けた。
この接着材は、帯状補強部材12の幅より少し広めに塗布し、帯状補強部材12よりはみ出した接着材は、段差が残らないように取り除いた。
【0064】
これにより、帯状補強部材12を垂直及び水平方向に複数を張付け、相互の帯状補強部材12を網目状に一体化することができた。
次に、可撓型シート状表層材14を貼付ける。この可撓型シート状表層材14には、図3に示した表面側に化粧材部31があり、裏面側には、その化粧材部31を支持するための基材部32があるものを用いた。
【0065】
化粧材部31は、着色骨材含有塗材を基材部32に塗装することにより得られたものであった。基材部32は、ポリエステル系の不織布を用いた。
この可撓型シート状表層材14の貼付には、アクリル系合成樹脂エマルションをバインダーとし、充填材を含んだ接着材を塗装用ローラーにより、区画13毎に塗布し、貼付けた。
【0066】
この可撓型シート状表層材14の貼付けは、可撓型シート状表装材14の端部が帯状補強部材12の中心付近になるように貼付けを行い、その可撓型シート状表層材14の端が隣り合う可撓型シート状表層材14の端との間隔を3mmとなるようにした。
これにより、仕上げ対象面11の垂直方向にある出隅15に張付けた帯状補強部材14を張付け、それを起点として水平方向の可撓型シート状表層材14を貼付けることができ、相互の帯状補強部材を網目状に一体化することができ、仕上げ対象面11を構成している材料の剥落などを防止することができるものを得ることができた。
【0067】
また、可撓型シート状表装材14と帯状補強部材12との接着が左右均等になり、仕上げ対象面11を構成している材料の剥落防止がより良好なものとなり、比較的容易で、良好な仕上げを得ることができた。
次に、B視方向の仕上げ対象面11の水平方向に帯状補強部材12を仕上げ対象面11の上下の端部17に張付け、上の端部17から帯状補強部材12の中心が600mmの間隔になるように張付けた。
【0068】
その後に、この上の端部17に張付けた帯状補強部材12を起点として、垂直方向にある端部17に帯状補強部材12を張付け、そこから帯状補強部材12の中心が600mmの間隔になるように張付けた。
このように帯状補強部材12を張付けることにより、複数の区画13を形成し、仕上げ対象面11を網目状に覆うことができた。
【0069】
この帯状補強部材12は、ポリエステル系の不織布をアクリル系塗料により目止め処理をしたものであって、図2に示すような帯状補強部材12の長手方向の両側に離型紙21により覆われた粘着部22が5mmの範囲で間隔を設けたものであった。
その粘着部22と離型紙21は、両面テープを用い、その両面テープの幅は、20mmのものであり、それにより加工された帯状補強部材12であり、幅が45mmで、厚みが300μmで、ロール状にした50mのものを用いた。
【0070】
帯状補強部材12がロール状であるため、仕上げ対象面11の幅方向の長さ以上の適当な長さに切断し、使用し、垂直方向に張付ける帯状補強部材12の長さを、水平方向に張付けられた隣り合う帯状補強部材12を結ぶ長さに切断し、使用した。
この接着には、アクリル系合成樹脂エマルションをバインダーとし、充填材を含んだ接着材をヘラにより塗布し、帯状補強部材12を張付けた。
【0071】
この接着材は、帯状補強部材12の幅より少し広めに塗布し、帯状補強部材12よりはみ出した接着材は、段差が残らないように取り除いた。
これにより、帯状補強部材12を垂直及び水平方向に複数を張付け、相互の帯状補強部材12を網目状に一体化することができた。
【0072】
可撓型シート状表層材14は、上記同様に図3に示した表面側に化粧材部31があり、裏面側には、その化粧材部31を支持するための基材部32があるものを用い、その裏面には、図4に示した粘着加工部41と離型紙部42を備えたものを用いた。
この粘着加工部41と離型紙部42は、上記記載の帯状補強部材12に用いた幅が20mmの両面テープを用いた。
【0073】
この区画13に接着材を塗布する場合、周囲が離型紙により保護されているため、少々はみ出しても影響がないので区画13全体に斑なく確実に隅々まで塗布することができる。
このように接着材を規定量の範囲内に塗布し、可撓型シート状表装材14を貼付ける。可撓型シート状表装材14を貼付ける場合、帯状補強部材12にある離型紙21を剥がし、粘着部22を露出させ、可撓型シート状表装材14の四周を接着し、その他の部分は、接着材により接着する。
【0074】
これにより、仕上げ対象面11の水平方向にある上の端部17から帯状補強部材12を張付け、それを起点として、垂直方向の帯状補強部材12を張付けることができ、仕上げ対象面11を構成している材料の剥落を防止することができた。
また、その仕上げがより容易なものとなり、意匠的に優れた仕上げを得ることがで、可撓型シート状表装材14と帯状補強部材12との接着が左右均等になり、より剥落を防止することができるものを得た。
【符号の説明】
【0075】
11・・・仕上げ対象面
12・・・帯状補強部材
13・・・区画
14・・・可撓型シート状表装材
15・・・出隅
16・・・入隅
17・・・端部
18・・・交差部
21・・・離型紙
22・・・粘着部
31・・・化粧材部
32・・・基材部
41・・・粘着加工部
42・・・離型紙部

図1
図2
図3
図4