(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024082010
(43)【公開日】2024-06-19
(54)【発明の名称】電動車両
(51)【国際特許分類】
B60L 58/27 20190101AFI20240612BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20240612BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20240612BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240612BHJP
【FI】
B60L58/27
B60L50/60
B60L58/12
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022195683
(22)【出願日】2022-12-07
(71)【出願人】
【識別番号】521537852
【氏名又は名称】ダイムラー トラック エージー
(74)【代理人】
【識別番号】100187322
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】小林 忠雄
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB01
5G503BB02
5G503CB11
5G503DA04
5G503EA05
5G503FA06
5G503GD03
5G503GD06
5H125AA01
5H125AC12
5H125BA00
5H125BC19
5H125CD09
5H125EE25
5H125EE27
5H125EE30
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】バッテリが満充電となって回生ブレーキが効かなくなるような事態を未然に防ぐと共に、バッテリの温度を適正に調整することができる電動車両を提供する。
【解決手段】電動車両1は、バッテリ充電量検出部80によって検出されたバッテリ10の充電量が充電上限閾値よりも高い場合、圧縮ポンプ制御部100により、圧縮ポンプ40を作動させると共に、バッテリ温度検出部90によって検出されたバッテリ10の温度が所定温度未満の場合、通路切換弁制御部110により、通路切換弁60を制御して圧縮空気Aを圧縮空気通路50からバッテリ暖機通路70へ供給する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリと、
前記バッテリから供給される電力によって駆動する駆動モータと、
前記駆動モータから駆動力が伝達される駆動ユニットと、
前記駆動ユニットから取り出した動力によって駆動され、高温の圧縮空気を生成する圧縮ポンプと、
前記圧縮ポンプにて生成された圧縮空気を流通させて大気へ排出する圧縮空気通路と、
前記圧縮空気通路から分岐された通路であって、前記圧縮空気通路から供給される前記圧縮空気によって前記バッテリを温めるバッテリ暖機通路と、
前記圧縮空気通路上に設けられ、前記圧縮空気通路から前記バッテリ暖機通路に前記圧縮空気を供給するか否かを切り換える通路切換弁と、
前記通路切換弁を制御する通路切換弁制御部と、
前記バッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出部と
前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出部と、
前記圧縮ポンプの作動を制御する圧縮ポンプ制御部とを備えた電動車両であって、
前記バッテリ充電量検出部によって検出された前記バッテリの充電量が充電上限閾値よりも高い場合、前記圧縮ポンプ制御部により、前記圧縮ポンプを作動させると共に、前記バッテリ温度検出部によって検出された前記バッテリの温度が所定温度未満の場合、前記通路切換弁制御部により、前記通路切換弁を制御して前記圧縮空気を前記圧縮空気通路から前記バッテリ暖機通路へ供給することを特徴とする、電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷低減の観点から、トラック等の商用車の分野においても内燃機関を備えず、バッテリから供給される電力によって電動モータが駆動する電動車両の開発が行われている。電動車両は、降坂時や減速時に回生ブレーキによって減速力を得られることが知られている。しかし、バッテリが満充電となっている場合、回生ブレーキが効かないため、フットブレーキによって減速することになり、フットブレーキ部品が早期に摩耗することやフェード現象などの懸念がある。
【0003】
下記特許文献1に記載の技術では、ハイブリッド車両において、降坂時における路面勾配の程度に応じてモータからバッテリへの回生量を補正することにより、減速回生の機会が多い降坂中にバッテリが満充電状態になって回生制動ができなくなるようなことを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動トラックの場合、乗用車に比べて車両重量が重く、そして荷物を積載した場合は更に重量が増すことになるため、フットブレーキへの負担を減らすためにも、いかに回生ブレーキまたは回生ブレーキに相当する減速力を発生させるかが重要となっている。また、電動トラックでは、大容量のバッテリが搭載される。一般的にバッテリを暖機する場合にはPTCヒータなどが利用されるが、大容量のバッテリを効率的に暖機するという点では改善の余地がある。
【0006】
本発明は、バッテリが満充電となって回生ブレーキが効かなくなるような事態を未然に防ぐと共に、バッテリの温度を適正に調整することができる電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は前述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の態様又は適用例として実現することができる。
【0008】
本適用例に係る電動車両は、バッテリと、前記バッテリから供給される電力によって駆動する駆動モータと、前記駆動モータから駆動力が伝達される駆動ユニットと、前記駆動ユニットから取り出した動力によって駆動され、高温の圧縮空気を生成する圧縮ポンプと、前記圧縮ポンプにて生成された圧縮空気を流通させて大気へ排出する圧縮空気通路と、前記圧縮空気通路から分岐された通路であって、前記圧縮空気通路から供給される前記圧縮空気によって前記バッテリを温めるバッテリ暖機通路と、前記圧縮空気通路上に設けられ、前記圧縮空気通路から前記バッテリ暖機通路に前記圧縮空気を供給するか否かを切り換える通路切換弁と、前記通路切換弁を制御する通路切換弁制御部と、前記バッテリの充電量を検出するバッテリ充電量検出部と、前記バッテリの温度を検出するバッテリ温度検出部と、前記圧縮ポンプの作動を制御する圧縮ポンプ制御部とを備えた電動車両であって、前記バッテリ充電量検出部によって検出された前記バッテリの充電量が充電上限閾値よりも高い場合、前記圧縮ポンプ制御部により、前記圧縮ポンプを作動させると共に、前記バッテリ温度検出部によって検出された前記バッテリの温度が所定温度未満の場合、前記通路切換弁制御部により、前記通路切換弁を制御して前記圧縮空気を前記圧縮空気通路から前記バッテリ暖機通路へ供給することを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、バッテリの充電量が充電上限閾値よりも高い場合、バッテリから供給される電力によって駆動モータ及び駆動ユニットを駆動して圧縮ポンプを作動させるため、バッテリの充電量を充電上限閾値以下に調整することができる。
【0010】
また、本適用例によれば、圧縮ポンプを作動させた状態でバッテリの温度が所定温度未満となっている場合、圧縮ポンプにより生成した高温の圧縮空気をバッテリ暖機通路に供給することにより、圧縮空気によってバッテリの温度を適正範囲にまで上昇させることができる。
【0011】
よって、本発明によれば、バッテリが満充電となって回生ブレーキが効かなくなるような事態を未然に防ぐと共に、バッテリの温度を適正に調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る電動車両の一実施形態の構成を示すブロック図である。
【
図2】
図1に示す電動車両の動作を説明するためのフローチャートである。
【
図3】
図2に示す動作を補足説明するための表である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、
図1~
図3を適宜参照しつつ、本発明に係る電動車両の一実施形態における構成、動作及び効果について説明する。
【0014】
(電動車両の構成)
図1に示すように、電動車両1は、バッテリ10と、駆動モータ20と、駆動ユニット30と、圧縮ポンプ40と、圧縮空気通路50と、通路切換弁60と、バッテリ暖機通路70と、バッテリ充電量検出部80と、バッテリ温度検出部90と、圧縮ポンプ制御部100と、通路切換弁制御部110とを備えている。
【0015】
バッテリ10は、電動車両1の動力発生源である電池である。バッテリ10としては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池又は鉛畜電池等の二次電池が挙げられる。
【0016】
駆動モータ20は、バッテリ10から供給される電力P1によって駆動(回転)し、駆動力P2を生成する電動機である。
【0017】
駆動ユニット30は、駆動モータ20から伝達される駆動力P2により、電動車両1の前進及び後進又は変速段を切り換えてドライブシャフト(車輪を連結するシャフト)に動力を伝達する動力伝達機構(トランスミッションまたは減速機)である。
【0018】
圧縮ポンプ40は、回転運動部41と空気排出部42とを備えている。回転運動部41は、駆動ユニット30から取り出された動力P3によって回転(駆動)する回転部材(羽根車)である。空気排出部42は、ONにされるとバルブが閉じて高温の圧縮空気Aを生成及び排出し、OFFにされるとバルブが開いて圧縮空気Aを生成しないようにするバルブ部材である。つまり、空気排出部42がONであるときは空気を圧縮するために回転運動部41に負荷がかかり、圧縮されることで空気は高温となる。一方、空気排出部42がOFFであるときは、回転運動部41は空回りすることとなり、回転運動部41に負荷はかからない。
【0019】
圧縮空気通路50は、流通部51と排出部52とを備えている。流通部51は、圧縮ポンプ40の空気排出部42から排出した圧縮空気Aを流通させる通路である。排出部52は、大気中に連通している通路であり、流入してきた圧縮空気Aを大気中に排出可能なように構成されている。なお、排出部52の出口側には排出部52の管内圧力を調整するためのオリフィス52aが設けられている。
【0020】
通路切換弁60は、圧縮空気通路50上に設けられ、圧縮空気通路50からバッテリ暖機通路70に圧縮空気Aを供給するか否かを切り換えるものである。具体的には、通路切換弁60は、流通部51からの圧縮空気Aの供給先をバッテリ暖機通路70の暖機流入部70aと排出部52との間で切換可能に構成されている。通路切換弁60としては、例えば、三方切換弁を使用することができる。
【0021】
バッテリ暖機通路70は、圧縮空気通路50から分岐された通路であって、圧縮空気通路50から暖機流入部70aを介して供給される圧縮空気Aによってバッテリ10を温めるための通路である。バッテリ暖気通路70の出口側である暖機流出部70bは、排出部52と連通しており、バッテリ10と熱交換した後の圧縮空気Aが暖機流出部70bから排出部52を介して大気中に排出されるよう構成されている。バッテリ暖機通路70としては、例えば、バッテリ10を囲むように配管された熱交換パイプを使用することができる。
【0022】
バッテリ充電量検出部80は、バッテリ10の充電量(例えばSOC:State of Charge)を検出するためのものである。バッテリ充電量検出部80としては、例えば、電圧測定式又は電流測定式のものを使用することができる。バッテリ充電量検出部80は、バッテリ10の内部に収納されていても、バッテリ10の外部に設けられていてもよい。
【0023】
バッテリ温度検出部90は、バッテリ10の温度を検出するためのものである。バッテリ温度検出部90としては、例えば、バッテリ10の表面温度又は内部温度を測定可能なセンサが挙げられる。バッテリ温度検出部90は、バッテリ10の内部に収納されていても、バッテリ10の外部に設けられていてもよい。
【0024】
圧縮ポンプ制御部100は、バッテリ充電量検出部80から送信される信号に基づいて、圧縮ポンプ40の作動を制御するためのものであり、具体的には、圧縮ポンプ40の空気排出部42の開閉(ON及びOFF)を制御するためのものである。
【0025】
通路切換弁制御部110は、バッテリ温度検出部90から送信される信号S2に基づく通路切換弁60の制御によって、圧縮空気通路50の流通部51から圧縮空気Aをバッテリ暖機通路70に供給するか排出部52に供給するかを切り換えるものである。
【0026】
(電動車両の動作)
次に、本発明に係る電動車両の一実施形態における動作を説明する。
図2において、「Y」はYesを示しており、「N」はNoを示している。
図2に示すフローチャートを要約すると
図3に示す表のようになる。
【0027】
図2に示すように、ステップS1において、圧縮ポンプ制御部100は、バッテリ充電量検出部80によって検出されたバッテリ10の充電量(SOC)が充電上限閾値(例えばSOC90%)よりも高いか否かを判断する。ステップS1がYesである場合、圧縮ポンプ制御部100はステップS3に処理を進める。ステップS1がNoである場合、圧縮ポンプ制御部100はステップS2に処理を進める。
【0028】
ステップS2においては、通路切換弁制御部110は、バッテリ温度検出部90によって検出されたバッテリ10の温度が第1所定温度未満(例えば0℃未満)であるか否かを判断する。第1所定温度は、バッテリ10の温度を適正範囲とするために暖機が必要となる温度に設定される。ステップS2がYesである場合、ステップS3に処理を進める。ステップS2がNoである場合、ステップS4に処理を進める。
【0029】
ステップS3において、圧縮ポンプ制御部100は、圧縮ポンプ40の空気排出部42を「閉」(ON)にすることにより、圧縮ポンプ40を作動させる。
【0030】
一方、ステップS4において、圧縮ポンプ制御部100は、圧縮ポンプ40の空気排出部42を「開」(OFF)のままにしておくことにより、圧縮ポンプ40を非作動(空回り)の状態に維持しておく。そして、圧縮ポンプ制御部100は、後述するステップS7に処理を進める。
【0031】
ステップS5において、通路切換弁制御部110は、バッテリ温度検出部90によって検出されたバッテリ10の温度が第2所定温度未満(例えば50℃未満)であるか否かを判断する。第2所定温度は、第1所定温度よりも高い温度であり、第2所定温度以上となるとバッテリ10の適正温度範囲以上となる温度に設定されている。ステップS5がYesの場合、つまり、バッテリ10の温度が第2所定温度未満でバッテリ10を暖機可能な温度である場合は、ステップS6に処理を進める。
【0032】
ステップS6において、通路切換弁制御部110は、通路切換弁60をバッテリ暖機通路70側へ切り替える。つまり、通路切換弁制御部110によって通路切換弁60を制御し、圧縮空気Aを圧縮空気通路50の流通部51からバッテリ暖機通路70へ供給する。
【0033】
一方、上記ステップS5がNoの場合、つまり、バッテリ10の温度が第2所定温度以上でバッテリ10の暖機が困難である場合は、ステップS7に処理を進める。
【0034】
ステップS7においては、通路切換弁制御部110は、通路切換弁60を排出部52側へ切り換える。つまり、通路切換弁制御部110によって通路切換弁60を制御し、圧縮空気Aを圧縮空気通路50の流通部51から排出部52へ供給する。
【0035】
このようなフローチャートに基づく制御を表に要約すると
図3のようになる。前提として、電動車両1の動作においては、バッテリ10の充電量及び温度に関わらず、ブレーキペダルが踏まれたらフットブレーキによる減速力が発生する。
【0036】
同図に示すように、バッテリ10が満充電である場合は、回生制動(回生ブレーキ)は使えないため、圧縮ポンプ40の負荷を減速力として付与する。また、バッテリ10の充電量が満充電でない場合には、駆動モータ20の回生制動(回生ブレーキ)による減速力を付与する。一方、圧縮ポンプ40は、バッテリ10の充電量が上限閾値未満であり、バッテリ10の温度がバッテリ10の暖気を行う必要がない第1所定温度以上である場合には、非作動となってバッテリ10の電力を節約する。
【0037】
(電動車両の効果)
電動車両1によれば、バッテリ10の充電量が充電上限閾値よりも高い場合、バッテリ10から供給される電力によって駆動モータ20及び駆動ユニット30を駆動して圧縮ポンプ40を作動させるため、バッテリ10の充電量を消費させて充電上限閾値以下に調整することができる。また、圧縮ポンプ40の負荷を減速力に付与することもできる。
【0038】
また、圧縮ポンプ40を作動させた状態でバッテリ10の温度が所定温度未満となっている場合、圧縮ポンプ40により生成した圧縮空気Aをバッテリ暖機通路70に供給することにより、圧縮空気Aによってバッテリ10の温度を適正範囲にまで上昇させることができる。
【0039】
よって、バッテリ10が満充電となって回生ブレーキが効かなくなるような事態を未然に防ぐと共に、バッテリ10の温度を適正に調整することができる。
【0040】
(その他)
上記一実施形態において、排出部52は圧縮空気Aを大気に放出しているが、排出部52における圧縮空気Aを電動車両1の暖房等に利用してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 電動車両
10 バッテリ
20 駆動モータ
30 駆動ユニット
40 圧縮ポンプ
41 回転運動部
42 空気排出部
50 圧縮空気通路
51 流通部
52 排出部
60 通路切換弁
70 バッテリ暖機通路
80 バッテリ充電量検出部
90 バッテリ温度検出部
100 圧縮ポンプ制御部
110 通路切換弁制御部
A 圧縮空気
P1 電力
P2 駆動力
P3 動力